JP7088325B2 - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
自動車タイヤ用のゴム組成物としては、ポリブタジエンやブタジエン-スチレン共重合体などのジエン系ゴムと、オイルなどの軟化剤とを含有するゴム組成物などが用いられている。
また、特許文献1では、耐摩耗性等を改善する技術として、水素添加スチレンブタジエンゴムを用いる方法が提案されている。
特開平10-218920号公報
本発明者らが鋭意検討した結果、従来の技術では、タイヤを使用中にゴムの複素弾性率Eが高くなり、ウェットグリップ性能が低下するおそれがあることが判明した。すなわち、従来の技術では、経時的な複素弾性率E変化を抑制するという点では改善の余地があることが判明した。
本発明は、前記課題を解決し、経時的な複素弾性率E変化を抑制できるゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、
下記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であることを特徴とするゴム組成物に関する。
耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E-熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E×100 式(1)
ここで、上記複素弾性率Eは、ゴム組成物の0℃における複素弾性率Eであり、上記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
上記耐熱老化性指数が25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
上記ゴム組成物は、軟化剤を更に含有し、
上記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、
上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満であることが好ましい。
A=√(α+β+γ) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上であることが好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカを50質量部以上含有することが好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカを70質量部以下含有することが好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上含有することが好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以下であることが好ましい。
前記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有する空気入りタイヤに関する。
上記タイヤ部材がトレッドであることが好ましい。
本発明によれば、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、上記耐熱老化性指数が27以下であるゴム組成物であるので、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
本発明のゴム組成物は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、下記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であることを特徴とする。これにより、経時的な複素弾性率E変化を抑制でき、長期に渡って良好なタイヤ性能(ウェットグリップ性能など)を維持することが可能となる。
耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E-熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E×100 式(1)
ここで、上記複素弾性率Eは、ゴム組成物の0℃における複素弾性率Eであり、上記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
従来から、所定値以上のウェットグリップ性能を維持できるか否かを確かめる目的で、80℃、2週間の条件によりゴム組成物を熱処理し、硬度の変化を調査することが行われてきた。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、上記熱処理条件では実際のタイヤの使用時を再現した試験とはなっていないことが判明した。本発明者らが、この点について更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行うことにより、実際にタイヤを使用した際の状況を好適に再現でき、非常に相関性よく経時的な複素弾性率E変化を評価できることを見出した。
そして、本発明者らが更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率Eの変化が小さければ、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な複素弾性率E変化を抑制できることを見出した。より具体的には、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率Eにより算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であれば、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な複素弾性率E変化を抑制できることを見出した。
以上のとおり、本願特定の条件で行った熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率Eにより算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であれば、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
なお、本明細書において、ゴム組成物の複素弾性率Eは、加硫後のゴム組成物の複素弾性率Eを意味する。
次に、熱処理について説明する。
本明細書において、熱処理は、ゴム組成物(加硫後)を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う。
例えば、温度、酸素濃度を制御可能な恒温槽を用いて行えばよい。具体的には、恒温槽の温度、酸素濃度を上記条件とし、恒温槽内に加硫後のゴム組成物を上記時間、静置すればよい。
次に、複素弾性率Eの測定方法について説明する。
本明細書において、ゴム組成物(加硫後)の複素弾性率Eは、初期歪み10%、動的歪振幅(動歪み)1%、周波数10Hz、温度0℃で粘弾性測定を行った際の複素弾性率Eを意味する。
上記式(1)で表される耐熱老化性指数は、27以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは5以下、より最も好ましくは4以下、更に最も好ましくは3.5以下、特に最も好ましくは3以下、更には好ましくは2.8以下、更には好ましくは2以下、更には好ましくは1以下である。
なお、上記式(1)で表される耐熱老化性指数の下限は特に限定されず、0に近いほど好ましく、0であってもよい。
熱処理前のゴム組成物(上記ゴム組成物(加硫後))の複素弾性率Eは、式(1)を満たす範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上、更に好ましくは4.0MPa以上、特に好ましくは10MPa以上であり、また、好ましくは90MPa以下、より好ましくは60MPa以下、更に好ましくは30MPa以下、特に好ましくは25MPa以下、最も好ましくは20MPa以下である。
上記複素弾性率Eが上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
熱処理前のゴム組成物(上記ゴム組成物(加硫後))は、JIS K6251(2010)に基づいて、試験片として3号ダンベル型試験片を使用し、23℃において引張試験を実施して測定した300%伸張時応力(M300)が、好ましくは6MPa以上、より好ましくは7MPa以上、更に好ましくは8MPa以上であり、また、好ましくは30MPa以下、より好ましくは25MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。
上記M300が上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
熱処理前のゴム組成物(上記ゴム組成物(加硫後))は、JIS K6251(2010)に基づいて、試験片として3号ダンベル型試験片を使用し、23℃において引張試験を実施して測定した破断時の引張強度(TB)が、好ましくは15MPa以上、より好ましくは18MPa以上、更に好ましくは20MPa以上であり、また、好ましくは60MPa以下、より好ましくは50MPa以下、更に好ましくは45MPa以下、特に好ましくは40MPa以下である。
上記TBが上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
熱処理前のゴム組成物(上記ゴム組成物(加硫後))は、JIS K6251(2010)に基づいて、試験片として3号ダンベル型試験片を使用し、23℃において引張試験を実施して測定した破断時伸び(EB)が、好ましくは250%以上、より好ましくは280%以上、更に好ましくは320%以上であり、また、好ましくは700%以下、より好ましくは650%以下、更に好ましくは600%以下である。
上記EBが上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
なお、ゴム組成物の上記式(1)で表される耐熱老化性指数(複素弾性率E変化)は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、不飽和結合の少ないゴム成分を使用したり、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤を使用したり、充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすると複素弾性率E変化は小さくなる傾向がある。
通常のジエン系ゴムは、不飽和結合を多く含むため、再架橋により経時的な複素弾性率E変化(硬化)が生じるものの、不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
シリカは、カーボンブラックに比べて発熱が少ないため、再架橋の進行を抑制でき、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
また、硫黄と加硫促進剤の配合量を調整することによっても、複素弾性率E変化を調整できる。
より具体的に説明すると、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とするには、後述するゴム成分、軟化剤、シリカを適宜選択すること、これらの配合量を適宜調整すること、等により付与することが可能である。具体的には、ゴム成分として、水素添加共重合体(以下においては、水添共重合体ともいう)を使用する方法、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法等により付与できる。
水添共重合体は、不飽和結合が少ないため、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
なお、本明細書において、水添と、水素添加は同義である。
以下において、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法について更に説明する。
例えば、水素添加スチレンブタジエンゴム(本明細書においては、水添スチレンブタジエンゴム、水素添加SBR、水添SBRともいう)は二重結合が少ないため、通常のSBRに相溶する軟化剤を水素添加SBRと共に配合すると、相溶せずにブルームする可能性があり、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがある。
一方、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用すると、軟化剤がブルームしにくくなり、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。そして、このような水添共重合体と相溶性の高い軟化剤は、ハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて選択可能である。具体的には、水添共重合体(例えば、水素添加SBR)のHSP値に近いHSP値を有する軟化剤を選定すればよい。選定した軟化剤は、水添共重合体に相溶しやすく、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
より具体的には、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とするには、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体に加えて更に軟化剤を含有し、上記共重合体が水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて下記式(2)を用いて算出したA([(J/cm1/2])が4.5未満であることが好ましい。なお、上記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
上記Aは、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.1以下、最も好ましくは2.6以下、より最も好ましくは2.1以下、更に最も好ましくは1.9以下であり、下限は特に限定されず、0に近いほど好ましく、0であってもよい。
これにより、好適に上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とすることが可能となる。
ここで、ゴム成分、軟化剤として、複数の成分が存在する場合は、最も含有量の多い成分によりAを算出する。
A=√(α+β+γ) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値([(J/cm1/2])
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値([(J/cm1/2])
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値([(J/cm1/2])
δd:分子間の分散力によるエネルギー([(J/cm1/2])
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー([(J/cm1/2])
δh:分子間の水素結合によるエネルギー([(J/cm1/2])
なお、本明細書において、ハンセン溶解度パラメータδd、δp、δhは、Hansen solubility sphere法により算出された298.15K、101.3kPaにおける値である。
上記の通り、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法では、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用することが重要である。ここで、軟化剤としては、後述するように、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、樹脂などが使用できるが、軟化剤の配合量については、使用する軟化剤の種類により異なる。
ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有する軟化剤の場合、具体的には、液状ジエン系重合体の場合、その配合量は特に限定されない。
一方、ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有さない軟化剤の場合、具体的には、樹脂の場合、配合量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましい。
上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とする他の手段としては、軟化剤を減量する方法、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用する方法等が挙げられる。
ゴム組成物の複素弾性率E、M300、TB、EBは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、複素弾性率E、M300、TB、EBは、充填剤を増量したり、軟化剤を減量したりすると大きくなる傾向があり、複素弾性率E、M300、TB、EBは、充填剤を減量したり、軟化剤を増量したりすると小さくなる傾向がある。
前記複素弾性率E、前記M300、前記TB、前記EBを付与する手段としては、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とする手段に加えて、充填剤の種類や量を調整する方法等が挙げられる。
以下、使用可能な薬品について説明する。
ゴム成分として、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体(以下においては、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ともいう)を含む。共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の通り、水添共重合体を用いることにより、経時的な複素弾性率E変化を抑制しやすいことから、以下においては、共重合体が、水添共重合体である場合を中心に説明するが、共重合体として、非水添共重合体の使用を排除するものではない。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
ゴム成分として、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部が水素添加された水添共重合体を含むことが好ましい。
水添共重合体は、水添処理により二重結合部が減らされていることで、再架橋の反応点が少ない。これにより、経時的な複素弾性率E変化を抑制できる。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点及び効果がより好適に得られるという理由からスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点及び効果がより好適に得られるという理由から1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体としては、スチレン及び1,3-ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体(SBR))が好ましい。従って、共重合体としては、スチレンブタジエン共重合体が好ましく、水素添加スチレンブタジエン共重合体がより好ましい。
上記スチレンブタジエン共重合体は、スチレン及び1,3-ブタジエンを共重合させるものである限り、共重合させる順序に特に限定はなく、ランダム共重合でもブロック共重合でもよいが、ランダム共重合が好ましい。スチレンブタジエン共重合体以外の芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の場合も同様である。
共重合体の水素添加率(芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部に対して水素添加された割合)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは93モル%以上である。また、共重合体の水素添加率は、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上、より好ましくは40万以上である。また、共重合体のMwは、好ましくは200万以下、より好ましくは100万以下、更に好ましくは80万以下であり、特に好ましくは60万以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、-45℃以上が好ましく、-35℃以上がより好ましく、-30℃以上が更に好ましく、-25℃以上が更により好ましく、-24.5℃以上が特に好ましく、-24℃以上が最も好ましい。また、共重合体のTgは、-10℃未満が好ましく、-12.5℃未満がより好ましく、-13℃未満が更に好ましく、-15℃未満がより更に好ましく、-17.5℃未満が特に好ましく、-20℃未満が最も好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、共重合体のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例の記載の方法により測定される。
共重合体がスチレンブタジエン共重合体である場合、スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。また、スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。スチレン含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、スチレン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
共重合体は、非変性共重合体でもよいし、変性共重合体でもよい。
変性共重合体としては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有する共重合体であればよく、例えば、共重合体の少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性共重合体(末端に上記官能基を有する末端変性共重合体)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性共重合体や、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性共重合体(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性共重合体)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性共重合体等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
上記共重合体は、例えば、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を重合することで合成でき、具体的には以下の方法で合成できる。
また、上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を重合して得られた重合体に水素添加処理を施すことで合成でき、具体的には以下の方法で合成できる。
<共重合体の製造方法>
(重合方法)
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度(スチレンブタジエン共重合体の場合はスチレン、1,3-ブタジエンの合計)は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、溶媒中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
(アニオン重合における重合開始剤)
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。前記有機リチウム化合物としては、炭素数2~20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルーフェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn-ブチルリチウムまたはsec-ブチルリチウムが好ましい。
また、重合反応は、上記の有機リチウム化合物のうち少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(B1)とを混合して得られる化合物(R)の存在下で行ってもよい。当該化合物(R)の存在下で重合を行うことにより、共重合体の重合開始末端に、シリカと相互作用を有する官能基を導入することができる。これにより、開始末端が変性された共重合体が得られる。なお、本明細書において「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。また、「シリカと相互作用する官能基」は、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子などのシリカと相互作用する原子を少なくとも1つ有する基を示す。
上記化合物(R)としては、中でも有機リチウム化合物と、第2級アミン化合物などの窒素含有化合物との反応生成物であることが好ましい。当該窒素含有化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ドデカメチレンイミン、N,N’-ジメチル-N’-トリメチルシリル-1,6-ジアミノヘキサン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジ-(2-エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、モルホリン、N-(トリメチルシリル)ピペラジン、N-(tert-ブチルジメチルシリル)ピペラジン、1,3-ジトリメチルシリル-1,3,5-トリアジナン等が挙げられる。なお、化合物(R)の存在下で重合を行う場合、有機リチウム化合物と、化合物(B1)とを予め混合することにより化合物(R)を調製し、その調製した化合物(R)を重合系中に添加して重合を行ってもよい。あるいは、重合系中に、有機リチウム化合物と、化合物(B1)とを添加し、重合系中で両者を混合することにより化合物(R)を調製して重合を行ってもよい。
(アニオン重合の方法)
前記重合開始剤を用いてアニオン重合し、共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、例えばブチルリチウムを重合開始剤とし、必要に応じてランダマイザーの存在下でスチレン及び1,3-ブタジエン等をアニオン重合させることにより、スチレンブタジエン共重合体等の目的の共重合体を得ることができる。
(アニオン重合における炭化水素系溶剤)
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3~8のものが好ましく、例えばプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(アニオン重合におけるランダマイザー)
また、前記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2-結合、イソプレンにおける3,4-結合の増加など、あるいは共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばスチレンブタジエン共重合体におけるスチレン単位、ブタジエン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム-t-アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。
ランダマイザーの種類や使用量を調整することにより、共重合体のTgを調整することができる。例えば、テトラヒドロフランの量を減量することにより、共重合体のTgを低くできる。
(反応温度)
アニオン重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定はないが、通常-10℃~100℃であることが好ましく、25℃~70℃であることがより好ましい。
(反応停止)
上記アニオン重合は、この分野で通常使用する反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは酢酸などの活性プロトンを有する極性溶媒およびこれらの混液、またはそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒との混液が挙げられる。反応停止剤の添加量は、通常、アニオン重合開始剤に対し、同モル量もしくは2倍モル量程度で充分である。
なお、公知の方法により変性を行ってもよい。
<カップリング>
上記共重合体の製造方法においては、単量体の重合開始から、後述する重合体の回収までに、共重合体の炭化水素溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、下記式(3-1)で表される化合物を挙げることができる。
ML4-a (3-1)
(式(3-1)中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基またはアリール基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子またはヒドロカルビルオキシ基を表し、aは0~2の整数を表す。)
上記式(3-1)で表されるカップリング剤としては、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシランなどを挙げることができる。
カップリング剤の添加量は重合体の加工性を高めるために、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1mol当たり、好ましくは0.03mol以上、より好ましくは0.05mol以上である。また低燃費性を高めるために、好ましくは0.4mol以下、より好ましくは0.3mol以下である。
<水素添加方法>
水添共重合体の製造方法においては、これまでに説明した共重合体を水素添加して、水添共重合体を得る。
水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
これらのうち、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。具体的な例として、例えば、特開平1-275605号公報、特開平5-271326号公報、特開平5-271325号公報、特開平5-222115号公報、特開平11-292924号公報、特開2000-37632号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭63-5401号公報、特開昭62-218403号公報、特開平7-90017号公報、特公昭43-19960号公報、特公昭47-40473号公報に記載の水添触媒を挙げることができる。なお、これらの水添触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム成分100質量%中の共重合体(好ましくは水添共重合体)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴム(好ましくは水添スチレンブタジエンゴム)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
上記共重合体以外に使用できるその他のゴム成分としては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゴム組成物は、シリカを含んでもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上、好ましくは60m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下、特に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは55質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのジスルフィド結合を有するジスルフィド系シランカップリング剤がより好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上であり、また、好ましくは150m/g以下、より好ましくは130m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックを配合すると発熱が多くなり、再架橋の進行を促進するおそれがあるため、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0質量部である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、樹脂などが挙げられる。これら軟化剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
軟化剤のなかでも、オイル、液状ポリマー、及び樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、液状ポリマー及び/又は樹脂がより好ましく、液状ポリマー及び樹脂を併用することが更に好ましい。
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
上記液状ポリマー(液状ジエン系重合体)とは、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10以上であることが好ましく、3.0×10以上であることがより好ましく、5.0×10以上であることが更に好ましく、1.0×10以上であることが特に好ましく、2.0×10以上であることが最も好ましく、2.0×10以下であることが好ましく、1.0×10以下であることがより好ましく、5.0×10以下であることが更に好ましく、3.5×10以下であることが特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
液状ジエン系重合体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ファルネセン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の(共)重合体を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。なかでも、液状SBR、液状IRが好ましく、液状IRがより好ましい。
また、液状ジエン系重合体は、水添されていてもよい。
上記液状ポリマーとしては、例えば、CRAY VALLEY社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
上記樹脂としては、特に制限されないが、例えば、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂は、水添されていてもよい。
なかでも、水添共重合体と相溶性の高い樹脂、具体的には、水素添加SBRのHSP値に近いHSP値を有する樹脂、より具体的には、上記式(2)を用いて算出したAが4.5未満である樹脂、すなわち、テルペン系樹脂が好ましい。
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリテルペンが好ましい。
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
上記樹脂の軟化点は、-30℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、80℃以上が特に好ましく、100℃以上が最も好ましい。また、上記軟化点は、200℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、軟化剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
液状ポリマー(液状ジエン系重合体)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
樹脂の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
オイルはブルームしやすく、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがあるため、オイルの含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0質量部である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては特に限定されないが、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類が好ましい。
グアニジン類としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジンが好ましい。
スルフェンアミド類としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
チアゾール類としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モリホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。
チウラム類としては、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、三新化学工業(株)製等の製品を使用できる。
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
なお、上記空気入りタイヤのタイヤ部材(例えば、トレッド)は、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
n-ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3-ブタジエン
TMEDA:関東化学(株)製のN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン
n-ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n-ブチルリチウムヘキサン溶液
エタノール:関東化学(株)製
2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
また、得られた共重合体の評価方法について、以下にまとめて説明する。
(共重合体の共役ジエン部の水素添加率の測定)
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の溶液を調製して、100MHzのH-NMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
(スチレン含有量の測定)
25℃にてJEOL JNM-A 400NMR装置を用いてH-NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5~7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9~5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量を決定した。
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
<共重合体の製造例>
合成例1(SBR1の合成:水素添加率0モル%)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン2000ml、スチレン60g、ブタジエン140g、TMEDA0.93g、n-ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、エタノールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1gを添加後、再沈殿精製によりSBR1を得た。得られたSBR1は重量平均分子量(Mw)490,000、スチレン含有量30質量%であった。
合成例2(水添SBR1の合成:水素添加率95モル%)
得られた重合体を水素添加する以外は、SBR1と同様の処方にて水添SBR1を得た。すなわち、SBR1において重合転化反応後、エタノールを加えて重合反応を停止させず、次いで、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水添SBR1を得た。得られた水添SBR1の水素添加率は95モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
合成例3(水添SBR2の合成:水素添加率80モル%)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR2を得た。得られた水添SBR2の水素添加率は80モル%であり、重量平均分子量(Mw)は480,000であった。
合成例4(水添SBR3の合成:水素添加率60モル%)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR3を得た。得られた水添SBR3の水素添加率は60モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
Figure 0007088325000001
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:上記方法で合成した非水添SBR
水添SBR1~3:上記方法で合成した水添SBR
シリカ1:エボニックデグッサ社製のVN3(NSA:175m/g)
シリカ2:ソルベイジャパン(株)製の115GR(NSA:115m/g)
シリカ3:エボニックデグッサ社製の9000GR(NSA:235m/g)
軟化剤1:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24(アロマオイル)
軟化剤2:出光興産(株)製のPS-32(ミネラルオイル)
軟化剤3:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(αメチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
軟化剤4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C100(クマロンインデン樹脂、軟化点:95~105℃)
軟化剤5:クラレ社製のクラプレンLIR30(液状IR、重量平均分子量:29000)
軟化剤6:KRATON社製のsylvatraxx 4150(ポリテルペン樹脂、軟化点:150℃)
軟化剤7:サートマー社製のRICON100(液状SBR、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:70質量%、重量平均分子量:4500)
軟化剤8:DRT社製のDercolyte L120(ポリリモネン樹脂、軟化点:120℃)
シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤3:エボニックデグッサ社製のSi363(3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、下記式で表される化合物)
Figure 0007088325000002
老化防止剤:大内新興化学(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT(1,3-ジ-o-トリルグアニジン)
加硫促進剤4:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM-P(2-メルカプトベンゾチアゾール)
加硫促進剤5:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT-N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
加硫促進剤6:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
(熱処理)
更に、得られた加硫ゴム組成物を温度90℃、酸素濃度20%の条件下のオーブン中で336時間静置することにより熱処理を行い、熱処理後の加硫ゴム組成物を得た。
得られた加硫ゴム組成物、熱処理後の加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表2に示す。
(複素弾性率E
(株)上島製作所製スペクトロメータを用いて、初期歪み10%、動的歪振幅(動歪み)1%、周波数10Hz、温度0℃で加硫ゴム組成物(試験片)、熱処理後の加硫ゴム組成物(試験片)の複素弾性率Eを測定した。
同一の配合の試験用タイヤを5本用意し、そのうち4本の試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、5万km走行した。そして、未走行の試験用タイヤと、5万km走行後の試験用タイヤのトレッドから試験片を切り出し、それぞれの試験片について、上記方法に従って、複素弾性率Eを測定した。そして、以下の式に基づいて走行前後E変化代を算出した。走行前後E変化代が小さいほど、経時的な複素弾性率E変化を抑制できることを示す。
走行前後E変化代=|(5万km走行後の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E-未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E)|/未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E×100
(引張試験)
JIS K6251(2010)に基づいて、得られた加硫ゴム組成物から3号ダンベル型試験片を作製し、該試験片を用いて23℃において引張試験を実施して300%伸張時応力(M300)、破断時の引張強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。
Figure 0007088325000003
表2より、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含み、上記耐熱老化性指数が27以下である実施例は、経時的な複素弾性率E変化を抑制できることが分かった。

Claims (14)

  1. 芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、
    ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上含有し、
    ゴム成分100質量部に対する軟化剤であるオイルの含有量が0~5質量部であり、
    下記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であることを特徴とし、
    前記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、
    前記水素添加スチレンブタジエンゴムと、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満であるゴム組成物。
    耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E-熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E×100 式(1)
    ここで、前記複素弾性率Eは、ゴム組成物の0℃における複素弾性率Eであり、前記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
    A=√(α+β+γ) 式(2)
    α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値
    β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値
    γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値
    δd:分子間の分散力によるエネルギー
    δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
    δh:分子間の水素結合によるエネルギー
    ここで、ゴム成分、軟化剤として、複数の成分が存在する場合は、最も含有量の多い成分によりAを算出する。
  2. 前記耐熱老化性指数が25以下である請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記耐熱老化性指数が20以下である請求項1記載のゴム組成物。
  4. 前記耐熱老化性指数が15以下である請求項1記載のゴム組成物。
  5. 前記耐熱老化性指数が10以下である請求項1記載のゴム組成物。
  6. ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上である請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. ゴム成分100質量部に対して、シリカを50質量部以上含有する請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
  8. シリカを含み、ゴム成分100質量部に対して、シリカを70質量部以下含有する請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
  9. ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が0~3質量である請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
  10. シランカップリング剤を含有する請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物。
  11. 前記軟化剤として、樹脂を含む請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
  12. トレッド用ゴム組成物である請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物。
  13. 請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有する空気入りタイヤ。
  14. 前記タイヤ部材がトレッドである請求項13記載の空気入りタイヤ。
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