JP2021074740A - 溶接継手、及び自動車部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材が溶接され、かつ疲労強度に優れた溶接継手、及び、それを備える自動車部品の提供。【解決手段】少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材1,2と、前記一対の鋼母材1,2のうち、一方の鋼母材の面と他方の鋼母材の面とで形成される境界4に沿って延在する溶接金属3であって、溶接金属3の止端角度βが0°<β≦35°を満たし、かつ、(溶接金属3の表層硬さ)/(溶接金属3の内部硬さ)≧0.85を満たす溶接金属3と、を有する重ね溶接継手10、及び、それを備える自動車部品。【選択図】図1

Description

本発明は,溶接継手、及び自動車部品に関するものである。
例えば、自動車の分野では、環境保全のため、車体の軽量化による燃費の向上とともに、衝突安全性の向上が求められている。従来から、車体の軽量化と衝突安全性の向上を図るために、板厚の薄い高強度鋼板を車体の構造部材として使用するとともに車体構造の最適化を行うなど、様々な技術開発が行われている。なお、自動車部品のなかには、複数の高強度鋼板を母材として有する溶接継手も含まれる。
自動車分野では、溶接継手の製造方法として、鋼母材として2枚の鋼板を合わせた状態でアーク溶接を行うアーク溶接法が広く採用されている。
自動車部品は、振動又は繰返しの外力負荷を伴う環境で使用される。そのため、自動車部品には、通常の静的な引張強度の他に、繰り返し作用する力に耐えるように、十分な疲労強度が要求される。そして、鋼母材の疲労強度(疲労限)は、その引張強度に比例して上昇するが、アーク溶接継手の疲労強度は、鋼母材の疲労強度より低くなることが一般的に知られている。
そのため、従来から、アーク溶接継手の疲労強度を向上させる技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、アーク溶接により形成された鋼のすみ肉溶接継手であって、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)が400℃以上550℃以下、溶接止端部の止端半径ρを母材の板厚tで割った値(ρ/t)が0.25以上、かつ式:Ms(℃)≦375×[ρ/t]+320を満たし、かつ割れ欠陥のない、すみ肉溶接継手。」が開示されている。
また、特許文献2には、「C:0.01〜0.15%、Si:0.3〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.08%、N:0.003〜0.025%を含み、かつ、前記Al、TiおよびNは所定の関係で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼材と、該鋼材をガスシールドアークすみ肉溶接して得られた、所定の化学組成の溶接金属とからなる、疲労特性に優れるすみ肉溶接継手。」が開示されている。
特開2012−11429号公報 特開2002−224834号公報
ここで、アーク溶接継手の疲労強度は、溶接金属の止端部形状に対して依存性を有している。
溶接金属の止端部形状が急峻な形状の場合(溶接金属の止端角度βが、β≧35°を満たす場合)、止端部の応力集中が非常に高くなり、アーク溶接継手が繰り返し引張荷重を受け続けると、早期の段階で、溶接金属の止端部と鋼母材との境界(溶融境界)に疲労亀裂が発生する。
一方、溶接金属の止端部形状が「なだらか」な形状の場合(溶接金属の止端角度βが、0<β≦35°を満たす場合)、止端部の応力集中が緩やかになり、止端部の溶接金属の表面に疲労亀裂が発生する。
特許文献1の技術は、溶接金属の止端部形状が「なだらか」な形状とし、止端部の応力集中が緩やかにした上で、Ms点を高くして低温で変態を生じさせ、溶接金属の溶接残留応力を緩和して疲労強度向上させる技術である。
特許文献2の技術は、溶接金属の止端部形状が「なだらか」な形状とし、止端部の応力集中が緩やかにした上で、固溶Nを多く残してして溶接金属の疲労強度向上させる技術である。
しかし、特許文献1〜2の技術は、引張強度が780MPa程度の鋼母材を溶接したときの疲労強度向上させる技術であり、引張強度が980MPa以上の鋼母材を溶接したときの疲労強度向上について検討されていない。
そこで、本発明の課題は、少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材が溶接され、かつ疲労強度に優れた溶接継手、及び、それを備える自動車部品を提供することである。
課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材と、
前記一対の鋼母材のうち、一方の鋼母材の面と他方の鋼母材の面とで形成される境界に沿って延在する溶接金属であって、溶接金属の止端角度βが0°<β≦35°を満たし、かつ、(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)≧0.85を満たす溶接金属と、
を有する溶接継手。
<2>
前記鋼母材の板厚が、0.6〜4.0mmである<1>に記載の溶接継手。
<3>
前記溶接金属が、質量%で
C :0.01〜0.30%
Si:0.02〜2.00%
Mn:1.5〜4.0%
Ti:0.01〜2.00%
P :0.100%以下
S :0.0500%以下
Cr:0〜2.0%、および
Mo:0〜1.0%
を含む鋼で構成されている<1>又は<2>に記載の溶接継手。
<4>
下記式(1)を満たす<1>〜<3>のいずれか1項に記載の溶接継手。
Mn+3.33Cr+2.61Mo≧1.70・・・(1)
式(1)中、元素記号は、該当する元素の含有量(質量%)を示す。
<5>
<1>〜<4>のいずれか1項に記載の溶接継手を備える自動車部品。
本発明によれば、少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材が溶接され、かつ疲労強度に優れた溶接継手、及び、それを備える自動車部品を提供できる。
本発明の溶接継手の一例を示す断面図である。 本発明の溶接継手の一例を示す平面図である。 本発明の溶接継手において、溶接金属の表層硬さ、及び溶接金属の内部硬さの測定方法を説明する模式図である。 本発明の溶接継手において、溶接金属の表層硬さ、及び溶接金属の内部硬さを測定した後の、溶接金属の断面図(光学顕微鏡写真)である。
以下、本発明について説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「好ましい態様の組み合わせ」は、より好ましい態様である。
本発明の溶接継手は、
少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材と、
一対の鋼母材のうち、一方の鋼母材の面と他方の鋼母材の面とで形成される境界に沿って延在する溶接金属であって、溶接金属の止端角度βが0°<β≦35°を満たし、かつ、(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)≧0.85を満たす溶接金属と、
を有する。
本発明の溶接継手は、上記構成により、少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材が溶接されていても、疲労強度に優れる。
本発明の溶接継手は、次の知見により見出された。
溶接金属の止端部の応力集中が非常に高い場合,疲労強度に及ぼす溶接金属の組織の影響は小さくなり,疲労強度は低いものとなる.そのため、疲労亀裂が溶接金属から発生する程度に止端部の応力集中が緩やかである必要がある。つまり、溶接金属の止端角度βが0°<β≦35°を満たす必要がある。
一方、引張強度980MPa以上の鋼母材には、種々の合金元素が含まれており、鋼母材と溶接ワイヤとが溶融及び凝固してできる溶接金属は、軟鋼母材を溶接したときの溶接金属と比べ高強度になり易い。しかしながら、引張強度980MPa以上の鋼母材を溶接したときでは、その高強度な溶接金属に見合った疲労強度が得られない場合がある。
そこで、発明者らは、その原因について調査したところ、次の知見を得た。
980MPa以上の鋼母材を溶接したときにできる溶接金属は、溶接金属表面近傍の硬さが溶接金属内部に比べ軟らかくなっている。さらに、この原因は、溶接金属の表面から脱炭が生じ,溶接金属表面から炭素が失われることよるためである。
そこで、溶接金属表面近傍の軟化を防止し、溶接金属の表面からの亀裂発生を抑制するためには、(1)溶接金属の表層の焼入れ性を向上させることが有効である。(2)シールドガスによるシールド性を良好にすること、つまり、「溶接金属の表層硬さ」を「溶接金属の内部硬さ」に近づけることが有効である。
以上の知見から、本発明の溶接継手は、少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材が溶接され、かつ疲労強度に優れることが見出された。
以下、本発明の溶接継手について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1〜図2に示すように、本発明の溶接継手10は、例えば、互いに重ね合わされた一対の鋼母材(図1中、1は下側の第1鋼母材、2は上側の第2鋼母材を示す)と、第1鋼母材1の表面1aと第2鋼母材2の端面2aとで形成される境界4に沿って延在する溶接金属(溶接ビード)3と、を備える。
ここで、図1〜図2中、溶接金属3は、第1鋼母材1の表面1a(板厚方向に対向する面)と第2鋼母材2の端面2a(板厚方向と直交方向に対向する面)とで形成される境界4に沿って延在する態様を示しているが、本態様に限られるものではない。
例えば、溶接金属3は、第1鋼母材1と第2鋼母材2とをL字又はT字に配置し、第1鋼母材1と第2鋼母材2との互いの表面(板厚方向に対向する面)で形成される境界4に沿って延在する態様であってもよい。または、第1鋼母材1と第2鋼母材2とを端部を向い合せて同一面上に配置して突合せ継手とし、その境界4に沿って溶接金属3が延在する態様であってもよい。
なお、図1は、溶接継手10を、溶接金属3の溶接線W(図2参照)に直交する断面でみた図である。また、図1及び図2に示すように、溶接線Wに平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交し且つ第1鋼母材1の表面1aに平行な方向をX軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に直交し且つ第1鋼母材1の板厚方向に平行な方向をY軸方向とする。
<溶接金属>
[溶接金属3の止端部形状]
図1に示すように、第1鋼母材1の表面1aに存在する溶融境界の位置をA点とすると、溶接金属3は、A点から止端角度βをもって立ち上がり、A点からさらに第2鋼母材2の側に寄った位置からフランク角θをもって立ち上がる。フランク角θは、溶接金属3の止端部形状を表すパラメータとして一般的に用いられているが、本発明では、溶接金属3の止端部形状を表すパラメータとして止端角度βを用いる。止端角度βは以下のように定義される。
図1に示すように、X軸方向において上記A点から溶接金属3に向かって0.3mm離れた位置をC点とする。また、C点を通り且つ第1鋼母材1の板厚方向(つまりY軸方向)に延びる直線と溶接金属3の表面との交点をB点とする。このように、B点及びC点を定義したとき、A点とB点を結ぶ直線と、A点とC点を結ぶ直線との間の角度を、溶接金属3の止端角度βとして定義する。
止端角度βを定義したとき、溶接継手10の溶接金属3は、下記条件式(1)を満足する。条件式(1)を満たすことにより、溶接金属3の止端部形状はなだらかな形状になるので、溶接金属3の止端部に応力が集中することを抑制することができる。止端角度βが35°以上の場合、溶接金属3の止端部形状が急峻な形状となるため、溶接金属3の止端部に応力が集中しやすくなる。
0°<β≦35° …(1)
なお、図1では、説明の便宜上、境界4の位置を示すために、溶接金属3の内部に含まれる第1鋼母材1の表面1a及び第2鋼母材2の端面2aを点線で表している。しかしながら、実際には、上記の点線部分は溶接金属3に溶け込んでいるため、例えば、光学顕微鏡を用いて溶接金属3の断面写真を得たとしても、上記点線部分を観察することはできない。そこで、上記のように定義されたA点、B点及びC点の3点を溶接金属3の断面写真上で特定することにより、溶接金属3の断面写真から溶接金属3の止端角度βを容易に得ることができる。なお、溶接金属3の止端角度βを特定できる程度の写真を取得できさえすれば、光学顕微鏡に限らず、走査型電子顕微鏡(SEM)またはマイクロスコープ等を用いてもよい。溶接金属3の止端角度βは、溶接線W(z軸)方向で、終端と始端の長さの1/2付近で1か所測定する。
[溶接金属3の硬さ]
溶接金属3は、式:(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)≧0.85を満たす。溶接金属3の表層硬さを脱炭の影響を受けず比較的硬い内部硬さに近づければ、溶接金属3の疲労強度を向上させることができる。
(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)の下限は、溶接金属3の疲労強度向上の観点から、0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましい。
ここで、溶接金属3の疲労強度向上の観点から、溶接金属3の内部硬さは、120〜450HVが好ましく、150〜380HVがより好ましい。
溶接金属3の表層硬さは、次の通り測定する(図3〜図4参照)。
溶接金属3の断面(溶接線に直交方向に沿って切断した断面)において、溶接金属3の表面から深さ20μmの位置の溶融境界(図3中AA)を原点とし、溶接金属3の表面から深さ20μm位置を、溶接金属3の外形に沿って36μm間隔で、圧子の押込み荷重25gfで測定する。圧痕が大きすぎて表面にはみ出る場合や、隣の圧痕と隣接する場合には、さらに荷重を下げてもよい。また、圧痕が小さすぎて硬さの測定が困難な場合は荷重を上げてもよい。測定荷重が小さいとばらつきが大きい場合があるため、隣接する両隣の点との硬度差が共に100HV以上あればその点は測定結果から除外する。
そして、溶接金属3の表面から深さ20μmの位置の溶融境界(図中AA)を通り、かつ第1鋼母材1の表面と平行なX軸(ただし、鋼母材側を+、溶接金属側を−とする)を取ったとき、X座標−0.03mm〜−0.25mmの間の5点以上の測定値の平均値を、溶接金属3の表層硬さとして算出する。
溶接金属3の内部硬さは、次の通り測定する(図3〜図4参照)。
溶接金属3の断面(溶接線に直交方向に沿って切断した断面)において、溶接金属3の表面から深さ100μmの位置の溶融境界(図3中BB)を原点とし、第1鋼母材1の表面と平行な方向に沿って0.2mm間隔で、圧子の押込み荷重200gfで測定する。隣接する両隣の点との硬度差が共に100HV以上あればその点は測定結果から除外する。
そして、第1鋼母材1の表面から深さ20μmの位置の溶融境界(図中BB)を通り、かつ第1鋼母材1の表面と平行なX軸(ただし、鋼母材側を+,溶接金属側を−とする)を取ったとき、X座標−0.1mm〜−1.0mmの間の3点以上の測定値の平均値を、溶接金属3の内部硬さとして算出する。なお、内部硬さは、溶接線W(z軸)方向で、終端と始端の長さの1/2付近で1か所測定する。
なお、溶接金属3の硬さは、「ビッカース硬さ」である。そして、「ビッカース硬さ」は、JIS Z 2244(2009年)に準拠して測定する。荷重以外の条件は、圧子=対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子、押込み時間=20sとする。
[溶接金属3の化学組成]
溶接金属3の化学組成は、特に制限はないが、質量%で
C :0.01〜0.30%
Si:0.02〜2.00%
Mn:1.5〜4.0%
Ti:0.01〜2.00%
P :0.100%以下
S :0.0500%以下
Cr:0〜2.0%
Mo:0〜1.0%
を含む鋼で構成されていることが好ましい。
具体的には、例えば、溶接金属3は、C:0.01〜0.30%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.5〜4.0%、Ti:0.01〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%と、後述するCrおよびMo以外の任意元素と、を含み、残部がFeおよび不純物からなることがよい。
なお、溶接金属3の化学組成は、溶接金属3の表面および溶融境界から、各々、500μm以上離れた溶接金属3の内部の化学組成である。
−C:0.01〜0.30%−
Cは、溶接金属3の強度を確保するのに重要であり、少ないと溶接金属3の強度が担保できなくなる可能性がある。そのため、C量は、0.01%以上がよい。一方、溶接金属3の表層で脱炭により強度が低下し易くなる。そのため、C量は0.30%以下がよい。好ましいC量は、0.02〜0.2%である。
−Si:0.02〜2.00%−
Siは、脱酸元素の役割がある。そのため、Si量は、0.02%以上がよい.一方、Si量が多いとスケールおよびスラグ過多となりやすい。そのため、Si量は、2.00%以下がよい。好ましいSi量は、0.02〜1.5%である。
−Mn:1.5〜4.0%−
Mnは、溶接金属3の焼入れ性を増加させるのに重要である。そのため、Mn量は、1.5%以上がよい.Mn量が多いと硬くなり過ぎて溶接金属3の水素脆化割れの懸念がある。そのため、Mn量は、4.0%以下がよい。好ましいMn量は、1.5〜3.0%である。
−Ti:0.01〜2.00%−
Tiは、溶接金属3の組織を微細化し、溶接金属3の表層硬さの低下を防ぐ働きがある。そのため、Ti量は、0.01%以上がよい。過度なTi量は、過大な析出物を形成し、溶接金属3の靭性の低下を招く可能性がある。そのため、Ti量は、2.0%以下がよい。好ましいTi量は、0.05〜0.15%である。
−P:0.100%以下−
Pは、溶接金属3を強化する働きを有するが、溶接金属3の靱性を著しく劣化させる原因となる。そのため、P量は、0.100%以下がよい。一方、P量は0%でもよいが、鋼母材の原料などから混入するPを完全に除去することは経済的に不利である。そのため、P量は0.0001%以上とすることが好ましい。
−S:0.0500%以下−
Sは、Pと同様に溶接金属3の靱性を劣化させる元素であり、多量に含まれると溶接金属3の凝固割れの原因となる。そのため、S量は、0.0500%以下がよい、一方、鋼母材の原料などから混入するSを完全に除去することは経済的に不利である。そのため、S量は、0.0001%以上が好ましい。
−Cr:0〜2.0%−
Crは、任意元素であるが、Mnと同様に溶接金属3の焼入れ性を増加させる元素である。そして、過多なCr量は、経済性が悪い。そのため、Cr量は2.0%以下がよい。
−Mo:0〜1.0%−
Moは、任意元素であるが、Mnと同様に溶接金属3の焼入れ性を増加させる元素である。そして、過多なMo量は、経済性が悪い。そのため、Mo量は1.0%以下がよい。
−式(1)−
溶接金属3の化学組成は、溶接金属3の表層の焼入れ性を向上させ、溶接金属3の表層硬さを溶接金属3の内部硬さに近づける観点から、式(1)を満たすことが好ましく、式(1−2)、式(1−3)又は式(1−4)を満たすことがより好ましい。
ただし、「Mn+3.33Cr+2.61Mo」の上限は、13.26以下が好ましく、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
Mn+3.33Cr+2.61Mo ≧ 1.70・・・(1)
Mn+3.33Cr+2.61Mo ≧ 1.70・・・(1−2)
Mn+3.33Cr+2.61Mo ≧ 1.75・・・(1−3)
Mn+3.33Cr+2.61Mo ≧ 1.80・・・(1−4)
式(1)及び式(1−2)中、元素記号は、該当する元素の含有量(質量%)を示す。 なお、式(1)及び式(1−2)中、「Mn+3.33Cr+2.61Mo」は、含有しない元素は、0%として算出する。
溶接金属3の化学組成は、任意元素として、質量%で、Al:0〜1.0%、N:0〜0.1000%、B:0〜0.01%、Nb:0〜0.5%、Ni:0〜5.0%、Cu:0〜5.0%の1種以上を含んでもよい。
−Al:0〜1.0%−
Alは、脱酸元素として作用し、多くがスラグとして溶接金属3外に排出される。Alが過多であると、溶接金属3の靭性が劣化する傾向がある。そのため、Al量は、1.0%以下がよい。
−N:0〜0.1000%−
Nは、多量に含有するとブローホールなどの要因となる。そのため、N量の上限は、0.1%以下とする。
一方、Nは、Cと同様に溶接金属3の強度を強化する。そのため、N量は、0.0001%以上が好ましい。
−B:0〜0.01%−
Bは、多量に含有すると、溶接金属3の靭性の劣化を招く。そのため、B量の上限は、0.01%以下がよい。
−Nb:0〜0.5%−
Nbは、多量に含有すると、溶接金属3の靭性の劣化を招く可能性がある。そのため、Nb量は、0.5%以下がよい。
−Ni:0〜5.0%−
Niは、多量に含有すると、溶接金属3の靭性の劣化を招く可能性がある。そのため、Ni量は、5.0%以下がよい。
−Cu:0〜5.0%−
Cuは、多量に含有すると、溶接金属3の靭性の劣化を招く。そのため、Cu量は、5.0%以下がよい。
溶接金属3の化学組成は、上述した任意元素以外の任意元素として、溶接金属3の疲労硬度に影響を与えない範囲で、質量%で、
O :0〜0.04%、
Ca:0〜0.001%、
を1種以上を含んでもよい。
<鋼母材>
一対の鋼母材は、少なくとも一方が引張強度980MPa以上の鋼母材である。高引張強度を有する鋼母材は、特に軽量化及び衝突安全性の向上が強く要請される自動車用の重ね溶接継手10の鋼母材として好適である。この観点から、一対の鋼母材は、双方が、引張強度980MPa以上の鋼母材であることがよい。
なお、引張強度は、JIS Z2241(2011)に準じて測定される。
一対の鋼母材の化学組成は、引張強度980MPa以上の機械的特性を得る化学組成が好ましい。
一対の鋼母材の化学組成の一例としては、質量%で
C :0.002〜0.4%
Si:0.002〜2.0%
Mn:1.5〜5.0%
P :0.1%以下
S :0.05%以下
N :0〜0.01%、
Cr:0〜2.0%、
Mo:0〜1.0%、
Ni:0〜5.0%、
Ti:0〜0.3%、
Al:0〜0.5%、
残部:Fe及び不純物からなる化学組成が挙げられる。
一対の鋼母材の板厚は、1枚あたり0.6〜4.0mmが好ましく、0.8〜3.2mmがより好ましい。
板厚の厚い鋼母材では、溶接残留応力が疲労強度に対して支配的となり、溶接金属3の組織による影響が小さくなるためである。つまり、溶接継手の疲労強度に対する溶接金属3の疲労強度の影響が高くなる。一対の鋼母材を板厚0.6〜4.0mmの薄板を採用することで、(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)≧0.85を満たす溶接金属3の組織が有効な溶接継手の疲労強度の向上に寄与する。
<溶接継手の製造方法>
本発明の溶接継手の製造方法の一例は、下記条件を満たすアーク溶接による溶接継手の製造方法が挙げられる。
(1)溶接速度:50cm/min以上,110cm/min未満
(2)シールドガスの組成:CO濃度:20%以下、残部:Ar
(3)溶接電流:150〜250A
まず、本発明の溶接継手の製造方法において、溶接ワイヤは、溶接金属2が上記組織を満たすワイヤであれば、特に制限はない。
溶接ワイヤの化学組成の一例としては、質量%で
C :0.002〜0.4%
Si:0.002〜2.0%
Mn:1.5〜5.0%
P :0.1%以下
S :0.05%以下
N :0〜0.01%、
Cr:0〜2.0%、
Mo:0〜1.0%、
Ni:0〜5.0%、
Ti:0〜0.3%、
Al:0〜0.5%、
Cu:0〜3.0%
Nb:0〜1.0%
B :0〜0.02%
残部:Fe及び不純物からなる化学組成が挙げられる。
溶接速度は、110cm/min未満とすることがよく、100cm/min以下がより好ましい。これは、溶接速度が速すぎるとシールドガスによるシールド範囲から溶接金属3が外れてしまい、溶接金属3の表層の脱炭が促進され、表層硬さが低下し内部硬さとの差が大きくなるためである。その結果、溶接金属3の疲労強度が低下する。また、溶接作業効率の観点から、溶接速度は50cm/min以上とすることがよい。
シールドガスの組成(体積%)は、CO濃度:20%以下、残部:Arとするのが好ましい。これは、CO濃度が高い場合には、溶接金属3の表層の脱炭が促進され、表層硬さが低下し内部硬さとの差が大きくなるためである。その結果、溶接金属3の疲労強度が低下する可能性がある。
溶接電流は、150〜250Aが好ましい。溶接速度を上記範囲とすると共に、溶接金属3の止端部形状を「なだらか」にすることができる。つまり、溶接金属3の止端角度βを0°<β≦35°とすることができる。
<自動車部品>
本発明の自動車部品は、本発明の溶接継手を備える。
例えば、本発明の自動車部品は、図1〜図2に示す溶接継手を備える。
具体的には、本発明の自動車部品は、車体の骨格部品、パネル部品、足回り部品が例示され、具体的には、高い強度を必要とするサスペンションアーム、サスペンションフレーム、シャシーフレーム等が好適に挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例)
一対の鋼母材として、表1に示す化学組成及び引張強度を有する鋼板を用いて、重ね隅肉溶接を行った。
溶接条件は、溶接速度80cm/min、溶接電流235[A],シールドガスの組成=Ar+20%COとした。
溶接ワイヤは、JIS Z 3312(2009)のYGW16相当のワイヤ(表2参照)を用いた。
溶接した試験体から、平面曲げ疲労試験片を作製し,応力比R=−1の両振り載荷で平面曲げ疲労試験を実施した。
疲労限は1,000万回未破断となった応力振幅とした.
曲げ応力は、試験片の最小断面(幅20mm、板厚2.9mm)の表面における最大曲げ応力を基準とした。
得られた結果を表3に示す。なお、溶接金属の化学組成の分析は,疲労試験片を採取した試験体と同じ試験体の溶接金属から分析試料を採取し、化学分析を行い求めた。
Figure 2021074740
Figure 2021074740
Figure 2021074740
上記結果から、試験例1〜9、11は、試験例10に比べ、疲労限200MPa以上という高い疲労強度が得られることがわかる。
特に、試験例1、3〜4、6〜9、11は、疲労限210MPa以上という高い疲労強度が得られることがわかる。
1、2 鋼母材
3 溶接金属

Claims (5)

  1. 少なくとも一方が引張強度980MPa以上の一対の鋼母材と、
    前記一対の鋼母材のうち、一方の鋼母材の面と他方の鋼母材の面とで形成される境界に沿って延在する溶接金属であって、溶接金属の止端角度βが0°<β≦35°を満たし、かつ、(溶接金属の表層硬さ)/(溶接金属の内部硬さ)≧0.85を満たす溶接金属と、
    を有する溶接継手。
  2. 前記鋼母材の板厚が、0.6〜4.0mmである請求項1に記載の溶接継手。
  3. 前記溶接金属が、質量%で
    C :0.01〜0.30%
    Si:0.02〜2.00%
    Mn:1.5〜4.0%
    Ti:0.01〜2.00%
    P :0.100%以下
    S :0.0500%以下
    Cr:0〜2.0%、および
    Mo:0〜1.0%
    を含む鋼で構成されている請求項1又は請求項2に記載の溶接継手。
  4. 下記式(1)を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の溶接継手。
    Mn+3.33Cr+2.61Mo≧1.70・・・(1)
    式(1)中、元素記号は、該当する元素の含有量(質量%)を示す。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の溶接継手を備える自動車部品。
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