以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、全図面において共通である。
1.第1の実施形態
1.1 コイル部品10の全体構成
図1,2は、本発明の第1の実施形態に係るコイル部品10を示す図である。図1は、コイル部品10の斜視図である。図2は、コイル部品10の図1のA−A線に沿った断面図である。コイル部品10は、積層構造を有する積層インダクタとして構成される。コイル部品10は、本体部11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を有する。
コイル部品10は、X軸方向に幅W、Y軸方向に長さL、Z軸方向に高さHを有する直方体形状に形成されている。コイル部品10の幅W、長さL、及び高さHは、任意に決定可能である。例えば、コイル部品10では、長さLを1.6〜2mmとし、幅Wを0.8〜1.2mmとし、高さHを0.4〜1.0mmとすることができる。
外部電極14,15は、本体部11のY軸方向を向いた両端面を覆い、両端面を接続する4つの面に沿ってY軸方向に延出している。これにより、外部電極14,15のY軸方向に沿った断面はU字状となっている。外部電極14,15は、導電性材料で形成され、コイル部品10の一対の端子を構成する。
なお、外部電極14,15の形状は、これに限定されず、製品仕様などに応じて適宜変更可能である。例えば、外部電極14,15は、本体部11のZ軸方向上下面のうちいずれか一方のみに延出していてもよく、本体部11のX軸方向両面には延出していなくてもよい。
本体部11は、磁性体部12と、コイル部13と、を有する。磁性体部12は、本体部11の外形を形成している。コイル部13は、磁性体部12の内部に配置されている。磁性体部12のZ軸方向上部及び下部にはコイル部13が巻き回されていないカバー部12aが設けられている。
なお、カバー部12aは、本体部11のZ軸方向上部及び下部の両方に設けられていなくてもよい。つまり、カバー部12aは、本体部11のZ軸方向上部及び下部のいずれか一方のみに設けられていてもよい。また、カバー部12aには、必要に応じて追加の構成が設けられていてもよい。
コイル部13は、導電性材料によって形成され、Z軸に平行な軸を中心とする螺旋形状を有する。コイル部13の螺旋形状の両端部には、Y軸方向に引き出された引出端部13cが設けられている。Z軸方向上側の引出端部13cは第1外部電極14に接続され、Z軸方向下側の引出端部13cは第2外部電極15に接続されている。
磁性体部12は、軟磁気特性を有する軟磁性合金で形成された軟磁性体粒子(軟磁性体粉末)の集合体として構成される。具体的に、軟磁性体粒子は、Fe(鉄)及びSi(シリコン)を含み、かつCr(クロム)及びAl(アルミニウム)の少なくとも一方を更に含む軟磁性合金を主成分とする鉄合金粒子である。
より具体的に、軟磁性体粒子は、Feを88wt%以上含有することが好ましい。この場合、軟磁性体粒子は、Si、Cr、Alを合計で5wt%以上含有することが好ましい。軟磁性体粒子をこのような組成とすることによって、過剰な酸化を抑えつつ、良好な飽和特性を持つ磁性体部12を形成することができる
磁性体部12を構成する軟磁性体粒子の表面には、酸化物膜が形成されている。酸化物膜の厚さは、0.6μm以下であることが好ましい。軟磁性体粒子の酸化物膜は、内側に配置された第1酸化物膜と外側に配置された第2酸化物膜とを含む複層構造を有することが好ましい。この場合、第2酸化物膜が第1酸化物膜よりも厚いことが好ましい。
隣接する軟磁性体粒子は、酸化物膜において結合している。これにより、結合している軟磁性体粒子同士が電気的に絶縁されるため、磁性体部12では良好な絶縁性が得られる。酸化物膜が複層構造である場合、酸化物膜の最外層(例えば、上記の第2酸化物膜)において隣接する軟磁性体粒子が結合していることが好ましい。
酸化物膜を構成する酸化物は、特定のものに限定されない。一例として、第1酸化物膜は、Cr及びAlの少なくとも一方を含む酸化物(例えば、Cr−O組成物)を主成分とすることができる。また、第2酸化物膜は、Feと、Cr及びAlの少なくとも一方と、を含む酸化物(例えば、Fe−Cr−O組成物)を主成分とすることができる。
本実施形態に係るコイル部品10では、磁性体部12の各部分において異なる形状の軟磁性体粒子を利用することにより、インダクタンスの向上を図ることができる。磁性体部12を構成する軟磁性体粒子の詳細については、後述の「1.2 磁性体部12の構成」の項目において説明する。
図3は、本体部11の分解斜視図である。本体部11は、Z軸方向に積層されて一体化された層状部ML(MLU,ML1〜ML7,MLD)を有する。最上層の層状部MLU及び最下層の層状部MLDは、磁性体部12のカバー部12aを構成する。カバー部12aに挟まれた層状部ML1〜ML7によってコイル部13が形成されている。
コイル部13は、導体パターン13aと、ビア13bと、で構成されている。導体パターン13aは、層状部ML1〜ML7のZ軸方向上面に沿ってそれぞれ所定形状に形成されている。最上層の層状部ML1及び最下層の層状部ML7の導体パターン13aに、コイル部13を外部電極14,15に接続するための引出端部13cが形成されている。
ビア13bは、層状部ML1〜ML6にそれぞれ形成され、層状部ML1〜ML6をZ軸方向に貫通する貫通導体として構成される。層状部ML1〜ML7では、Z軸方向に隣接する導体パターン13aがビア13bを介して直列接続されることにより、Z軸方向を向いた中心軸を中心に螺旋状に巻き回されたコイル部13が形成される。
なお、コイル部13の構成は、上記に限定されない。例えば、コイル部13の巻き数は、層状部MLの積層数を変更することにより、任意に変更可能である。また、導体パターン13aは、図3に示す形状でなくてもよい。例えば、導体パターン13aの形状は、矩形状や多角形状などであってもよい。
また、引出端部13cの構成も、上記に限定されない。引出端部13cは、例えば、図4に示す構成であってもよい。この構成では、引出端部13cがY軸方向ではなくZ軸方向にコイル部13から引き出されて、本体部11のZ軸方向上面及び下面において外部電極14,15に接続されている。
つまり、図4に示す構成では、引出端部13cがカバー部12aをZ軸方向に貫通している。このような構成の引出端部13cは、例えば、図3に示すカバー部12aを構成する層状部MLU,MLDに、層状部ML1〜ML8のビア13bと同様のビアを設けることにより形成することができる。
更に、コイル部品10の本体部11における積層構造は、上記に限定されない。例えば、カバー部12aを構成する層状部MLU,MLDの枚数は任意に決定可能である。特に、カバー部12aの厚さに合わせて成形された単一の層状部MLU,MLDでカバー部12aを構成してもよい。
1.2 磁性体部12の構成
図5は、コイル部品10の図1のB−B線に沿った断面を示す模式図である。図5には、コイル部13によって生成される磁束の向きが、矢印によって模式的に示されている。勿論、コイル部13にこれとは反対方向の電流が流れているときには、磁束の向き(矢印の向き)が反対となる。
磁性体部12は、第1磁性体層12bと、第2磁性体層12cと、を有する。第2磁性体層12cは、導体パターン13aのXY平面に沿った周囲を覆い、導体パターン13aとともにXY平面に沿って延びている。第1磁性体層12bは、導体パターン13a及び第2磁性体層12cの間に配置されている。
第1磁性体層12bは、本体部11におけるXY平面に沿った全範囲にわたって延び、本体部11からX軸及びY軸方向に露出している。これにより、コイル部品10は、第1磁性体層を本体部におけるXY平面に沿った一部の範囲のみに配置する構成に比べて、シンプルな製造プロセスによって低コストで製造可能となる。
また、第1磁性体層を本体部におけるXY平面に沿った一部の範囲のみに配置する構成では、境界部に段差が生じやすくなるため、コイル部品のZ軸方向の寸法を1mm以下とする場合に精度を確保することが困難となる。この点、本実施形態に係るコイル部品10では、Z軸方向の寸法を1mm以下とする場合、更にはZ軸方向の寸法を0.8mm以下とする場合にも、高精度で製造可能である。
図6(A)は、カバー部12a及び第2磁性体層12cの断面の微細組織を示す模式図である。カバー部12a及び第2磁性体層12cは、球状の軟磁性体粒子G1によって構成されている。隣接する軟磁性体粒子G1は、その表面の酸化物膜において相互に結合している。軟磁性体粒子G1の平均粒径は、例えば、2〜30μmとすることができる。
なお、軟磁性体粒子G1をはじめとする球状粒子の平均粒径は、例えば、カバー部12aや磁性体層12b,12cのZ軸に平行な断面の所定の領域に存在する粒子の粒径の平均値とすることができる。また、粒子の粒径の平均値は、例えば、粒径の頻度の累積が50%となる粒径とすることができる。
また、図6(A)では軟磁性体粒子G1を均一な大きさで示しているが、軟磁性体粒子G1は所定の粒度分布を有していてもよい。また、カバー部12aを構成する軟磁性体粒子G1と、第2磁性体層12cを構成する軟磁性体粒子G1とで、平均粒径が異なっていてもよい。
カバー部12aは、Z軸方向外側への磁束の漏れを抑制するために、透磁率が高いことが要求される。このような観点から、カバー部12aを構成する軟磁性体粒子G1は大きいことが好ましい。例えば、カバー部12aを構成する軟磁性体粒子G1の平均粒径は、10μm程度とすることができる。
一方、第2磁性体層12cでは、高い透磁率を確保する点で軟磁性体粒子G1が大きいことが好ましいが、高い絶縁耐圧を確保する点で軟磁性体粒子G1が小さいことが好ましい。例えば、第2磁性体層12cを構成する軟磁性体粒子G1の平均粒径は、2μm以上6μm以下とすることができる。
図6(B)は、第1磁性体層12bの断面の微細組織を示す模式図である。第1磁性体層12bは、軟磁性体粒子G2,G3で構成されている。軟磁性体粒子G2は、扁平な形状を有し、その厚さ方向がZ軸方向に配向している。軟磁性体粒子G3は、軟磁性体粒子G2の厚さ方向の寸法よりも平均粒径の小さい微細な球状粒子である微粒子(微粉末)として構成される。
第1磁性体層12bは、配向している扁平な軟磁性体粒子G2が全領域にわたって配置されている扁平軟磁性体粒子含有層として構成される。そして、微粒子である軟磁性体粒子G3は、軟磁性体粒子G2の隙間を埋めるように配置されている。隣接する軟磁性体粒子G2,G3は、その表面の酸化物膜において相互に結合している。
なお、扁平な形状を有する軟磁性体粒子G2の厚さは、例えば、カバー部12aや磁性体層12b等のZ軸に平行な断面の所定の領域に存在する粒子の厚さの平均値とすることができる。また、この平均値は、例えば、厚さの頻度の累積が50%となる厚さとすることができる。
また、扁平な形状を有する軟磁性体粒子G2の平均最長径は、例えば、カバー部12aや磁性体層12b等のZ軸に平行な断面、もしくはZ軸に垂直な断面の所定の領域に存在する粒子の最長径の平均値とすることができる。また、この平均値は、例えば、最長径の頻度の累積が50%となる値とすることができる。
図7は、第1磁性体層12bの微細組織をZ軸方向から見たときの軟磁性体粒子G2,G3の位置を外形で示す模式図である。第1磁性体層12bでは、扁平な軟磁性体粒子G2の隙間に微粒子である軟磁性体粒子G3が充填されている。これにより、軟磁性体粒子G3が軟磁性体粒子G2の隙間を少なくとも部分的に閉塞する閉塞部として機能するため、第1磁性体層12bに大きい隙間が存在しなくなる。
したがって、第1磁性体層12bでは、導体パターン13aを形成する際に、導体ペーストが第1磁性体層12bの隙間に侵入しにくくなる。このため、導体パターン13a同士がZ軸方向にショートすることを防止することができる。これにより、コイル部品10では、製造歩留まりが向上するとともに、信頼性が向上する。
Z軸方向に薄い扁平な軟磁性体粒子G2を用いることにより、第1磁性体層12bをZ軸方向に薄く形成することが可能となる。また、扁平な軟磁性体粒子G2は、透磁率に異方性を有し、XY平面に沿った方向に透磁率が大きい。このため、第1磁性体層12bの透磁率は、XY平面に沿った方向に大きくなる。
したがって、第1磁性体層12bでは、扁平な軟磁性体粒子G2を用いることにより、透磁率を確保しつつ、Z軸方向の厚さを10μm未満まで薄くすることができる。第1磁性体層12bを薄くすることにより、図3に示す層状部MLの積層数を増加させることができる。これにより、コイル部品10のインダクタンスが向上する。
また、第1磁性体層12bでは、軟磁性体粒子G2の隙間に軟磁性体粒子G3を配置することにより、軟磁性体粒子G2の隙間にも磁性を持たせることができる。これにより、特に、軟磁性体粒子G3によって、第1磁性体層12bにおけるZ軸方向の透磁率を補うことができる。このため、コイル部品10のインダクタンスが更に向上する。
具体的に、第1磁性体層12bに軟磁性体粒子G2,G3を併用することで、平均粒径2μmの球状の軟磁性体粒子のみを用いた場合と同等の透磁率を2分の1の厚さで達成できることが確認されている。したがって、コイル部13の巻き数を増加させることにより、コイル部品10のインダクタンスを大幅に向上させることが可能である。
また、第1磁性体層12bでは、軟磁性体粒子G2同士の直接の結合に加え、軟磁性体粒子G2の隙間に配置された軟磁性体粒子G3を介した軟磁性体粒子G2同士の結合が形成される。これにより、第1磁性体層12bの結合強度が向上するため、コイル部品10の信頼性が向上する。
軟磁性体粒子G2は、厚さ方向に直交する長軸方向における寸法がなるべく均一であることが好ましく、つまり厚さ方向から見た形状が円形に近いことが好ましい。一例として、軟磁性体粒子G2の厚さを1μm程度とし、軟磁性体粒子G2の長軸方向の寸法を4μm程度とすることができる。
軟磁性体粒子G2の扁平形状による作用を良好に得るために、軟磁性体粒子G2のアスペクト比(図6(B)に示す平均最長径Dの平均厚さTに対する比率)は4以上であることが好ましい。また、均一な径の軟磁性体粒子G2を得るために、軟磁性体粒子G2のアスペクト比は10以下に留めることが好ましい。
軟磁性体粒子G3は、軟磁性体粒子G2の隙間に入ることが可能な大きさである。具体的に、軟磁性体粒子G3の平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。
なお、図6(B)、及び図7では、軟磁性体粒子G2,G3をそれぞれ同一形状で示している。しかし、軟磁性体粒子G2,G3はそれぞれ所定の粒度分布を有していてもよく、軟磁性体粒子G2,G3の形状はそれぞれ相互に異なっていてもよい。また、軟磁性体粒子G3の厚さ方向は、Z軸方向に対して多少傾いていてもよい。
第1磁性体層12bにおける軟磁性体粒子G2と軟磁性体粒子G3との合計量に対する軟磁性体粒子G3の量は、5vol%以上15vol%以下であることが好ましく、例えば、8vol%とすることができる。これにより、軟磁性体粒子G2の隙間に軟磁性体粒子G3が良好に充填されやすくなる。
なお、軟磁性体粒子G1,G2,G3の体積は、例えば、磁性体層12b,12cのX軸、Y軸、及びZ軸に垂直な各断面の所定の領域に存在する粒径の平均値を用いて算出することができる。
なお、磁性体部12の構成は、上記に限定されず、適宜変更することができる。例えば、磁性体部12における軟磁性体粒子G1,G2,G3の隙間には、樹脂材料が充填されていてもよい。また、軟磁性体粒子G1,G2,G3の表面には、リン酸塩化合物が析出していてもよい。これらにより、磁性体部12の絶縁性が更に向上する。
また、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、同一の材料ではなく、相互に異なる材料で形成されていてもよい。更に、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、Fe及びSiを含み、かつCr及びAlの少なくとも一方を更に含む軟磁性合金で形成されている構成に限定されず、他の軟磁性体で形成されていてもよい。
例えば、軟磁性体粒子G1,G2,G3の少なくとも1つが、アモルファス合金粒子であってもよい。これにより、コイル部品10における渦電流損失を低減することができる。また、軟磁性体粒子G1,G2,G3の少なくとも1つが、扁平化や微細化が容易なフェライト粒子であってもよい。
更に、第1磁性体層12bには、軟磁性体粒子G3を用いることが好ましいが、軟磁性体粒子G3に代えて磁性を有さない絶縁体微粒子を用いることも可能である。これにより、第1磁性体層12bの透磁率の観点では不利になるものの、第1磁性体層12bの絶縁性をより確実に得ることができる。
加えて、第2磁性体層12cは、図6(B)に示す第1磁性体層12bの組織を紙面に沿って90°回転させた組織を有していてもよい。この場合、第2磁性体層12cは、扁平な軟磁性体粒子G2がZ軸方向に立った組織となる。これにより、第2磁性体層12cでは、磁束の向きに沿ったZ軸方向における透磁率を向上させることができる。
1.3 コイル部品10の製造方法
以下、コイル部品10の製造方法の一例について説明する。図8は、本製造方法におけるコイル部品10の製造過程を示す断面図である。なお、コイル部品10の製造方法は、下記の構成に限定されず、コイル部品10の構成や設備上の事情などに応じて適宜変更可能である。
1.3.1 磁性シート作製工程
磁性シート作製工程では、図8(A)に示す第1磁性シート112aと、図8(B)に示す第2磁性シート112bと、を作製する。第1磁性シート112aは、図3に示す層状部MLU,MLDに対応する、未焼成の層状部MLU,MLDである。第2磁性シート112bは、図5に示す本体部11の第1磁性体層12bに対応する。
第1磁性シート112aを形成するために、例えば、5wt%Cr、3wt%Si、92%Feの組成を有する平均粒径10μmの球状の第1金属磁性粉を用いることができる。第1金属磁性粉は、図6(A)に示す軟磁性体粒子G1の原料となる。第1金属磁性粉とバインダ(PVB等)と溶剤とを混合し、第1磁性ペーストを作製する。
第1磁性ペーストは、ベースフィルムに塗工してシート状に成形される。第1磁性ペーストのベースフィルムへの塗工には、例えば、ドクターブレードやダイコータなどの塗工機を用いることができる。ベースフィルムとしては、例えば、PETなどの樹脂で形成されたフィルムを用いることができる。
ベースフィルムに塗工された第1磁性ペーストを乾燥させることにより、第1磁性シート112aが得られる。第1磁性ペーストの乾燥には、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用いることができる。乾燥機を用いた第1磁性ペーストの乾燥は、例えば、約80℃で約5分保持する条件で実施可能である。
第1磁性シート112aは、カバー部12aの厚さに対応し、例えば、100μmとすることができる。なお、図3に示す層状部MLU,MLDのように、第1磁性シート112aを複数枚積層することにより、カバー部12aを所定の厚さに調整することもできる。この場合、各第1磁性シート112aの組成などの構成は、相互に異なっていてもよい。
第2磁性シート112bを形成するために、例えば、5wt%Cr、3wt%Si、92%Feの組成を有する扁平な第2金属磁性粉及び平均粒径0.5μmの球状の第3金属磁性粉を用いることができる。第2金属磁性粉は図6(B)に示す軟磁性体粒子G2の原料となり、第3金属磁性粉は図6(B)に示す軟磁性体粒子G3の原料となる。
扁平な第2金属磁性粉は、例えば、球状の金属磁性粉に扁平化処理を施すことにより得られる。扁平化処理は、例えば、ボールミルで240hrの条件で攪拌することにより実施可能である。なお、扁平化処理はボールミルに限定されず、また扁平化処理を実施せずに直接扁平な第2金属磁性粉を得てもよい。
第2金属磁性粉と第3金属磁性粉とバインダ(PVB等)と溶剤とを混合し、第2磁性ペーストを作製する。第2及び第3金属磁性粉の合計量に対する第3金属磁性粉の量は、5vol%以上15vol%以下であることが好ましく、例えば、8vol%とすることができる。
第2磁性ペーストは、第1磁性ペーストと同様に、ベースフィルムに塗工してシート状に成形される。第2磁性ペーストのベースフィルムへの塗工には、扁平な第2金属磁性粉を良好に配向させることが可能な手法が用いられる。このような手法としては、例えば、ドクターブレード法が挙げられる。
ベースフィルムに塗工された第2磁性ペーストを乾燥させることにより、第2磁性シート112bが得られる。第2磁性ペーストの乾燥には、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用いることができる。乾燥機を用いた第2磁性ペーストの乾燥は、例えば、約80℃で約5分保持する条件で実施可能である。
第2磁性シート112bの厚さは、第1磁性体層12bの厚さに対応し、例えば、10μm未満とすることができる。また、第2磁性シート112bの厚さは、第2金属磁性粉の平均厚さの3倍〜10倍程度であり、第2金属磁性粉の平均最長径の10分の1程度であることが好ましい。これにより、第2金属磁性粉を良好に配向させることが可能である。
1.3.2 貫通孔形成工程
貫通孔形成工程では、第2磁性シート112bに、図3に示す層状部ML1〜ML6のビア13bに対応する貫通孔を形成する。第2磁性シート112bへの貫通孔の形成には、例えば、打ち抜き加工機やレーザ加工機などの穿孔機が用いられる。なお、図4に示す引出端部13cを形成する場合には、第1磁性シート112aにも貫通孔形成工程を実施する。
1.3.3 導体ペースト配置工程
導体ペースト配置工程では、図8(C)に示すように、第2磁性シート112bに、図3に示す層状部ML1〜ML7の導体パターン13aに対応するパターンで導体ペースト113を印刷する。層状部ML1〜ML6に導体ペースト113を印刷する際には、貫通孔形成工程で形成された貫通孔に導体ペーストを充填する。
導体ペーストとしては、例えば、Agペーストを用いることができる。Agペーストとしては、例えば、Ag充填率が91wt%以上のものを利用することができる。また、導体ペーストとしては、Agペースト以外にも、例えば、Cuペースト、Ptペースト、Auペーストなどを用いることも可能である。
第2磁性シート112bへの導体ペースト113の印刷には、例えば、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いることができる。
そして、このように第2磁性シート112bに配置された導体ペースト113を乾燥させる。導体ペースト113の乾燥には、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用いることができる。乾燥機を用いた導体ペースト113の乾燥は、例えば、約80℃で約5分保持する条件で実施可能である。
1.3.4 第3磁性ペースト配置工程
第3磁性ペースト配置工程では、図8(D)に示すように、第2磁性シート112bに、図5に示す第2磁性体層12cに対応するパターンで第3磁性ペースト112cを印刷する。つまり、導体ペースト113のパターンを反転させたパターンにて、第3磁性ペースト112cを印刷する。
第3磁性ペースト112cには、例えば、5wt%Cr、3wt%Si、92%Feの組成を有する平均粒径4μmの球状の第4金属磁性粉を用いることができる。第4金属磁性粉は、図6(A)に示す軟磁性体粒子G1の原料となる。第4金属磁性粉とバインダ(PVB等)と溶剤とを混合することで、第3磁性ペーストが得られる。
そして、このように第2磁性シート112bに配置された第3磁性ペースト112cを乾燥させる。第3磁性ペースト112cの乾燥には、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用いることができる。乾燥機を用いた第3磁性ペースト112cの乾燥は、例えば、約80℃で約5分保持する条件で実施可能である。
これにより、図3に示す層状部ML1〜ML7に対応する、未焼成の層状部ML1〜ML7が得られる。なお、第2磁性シート112bへの第3磁性ペースト112cの印刷には、導体ペースト113と同様に、例えば、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いることができる。
1.3.5 積層・圧着工程
積層・圧着工程では、未焼成の層状部MLU,ML1〜ML7,MLDを図3に示す順序で積み重ねて熱圧着することにより未焼成の本体部11を作製する。層状部MLU,ML1〜ML7,MLDの搬送には、吸着搬送機を用いることができる。また、層状部MLU,ML1〜ML7,MLDの熱圧着には、各種プレス機を用いることができる。
1.3.6 焼成工程
焼成工程では、上記のように得られた未焼成の本体部11を、大気などの酸化性雰囲気中で焼成する。未焼成の本体部11の焼成には、各種焼成炉のような加熱処理機を用いることができる。焼成工程には、以下に説明する脱脂プロセス及び酸化物膜形成プロセスが含まれる。
脱脂プロセスでは、金属磁性粉の間に存在するバインダなどが除去される。これにより、金属磁性粉の間におけるバインダなどが存在していた領域にはポア(空隙)が形成される。これと同時に、導体ペースト113からもバインダなどが除去される。脱脂プロセスは、例えば、約300℃で約1時間保持する条件で実施可能である。
酸化物膜形成プロセスは、脱脂プロセスに引き続いて昇温することにより、脱脂プロセスよりも高温で実施される。酸化物膜形成プロセスでは、金属磁性粉の間のポアを介して酸素が供給されることにより、金属磁性粉の表面が酸化される。これにより、金属磁性粉の表面に凹凸形状の酸化物膜が形成される。
つまり、酸化物膜形成プロセスにおいて、第1金属磁性粉がカバー部12aを構成する軟磁性体粒子G1となり、第2,3金属磁性粉が第1磁性体層12bを構成する軟磁性体粒子G2,G3となり、第4金属磁性粉が第2磁性体層12cを構成する軟磁性体粒子G1となる。これにより、磁性体部12が形成される。
また、酸化物膜形成プロセスでは、脱脂プロセスで導体ペースト113からバインダが除去されて残ったAg粒子が焼結して一体化することにより、コイル部13が形成される。酸化物膜形成プロセスは、例えば、約700℃で約2時間保持する条件で実施可能である。これにより、本体部11が完成する。
なお、焼成工程は、製造効率の観点から、多数の未焼成の本体部11について一括して実施することが好ましい。また、焼成プロセスは、上記以外の条件に適宜変更可能であり、脱脂プロセス及び酸化物膜形成プロセス以外のプロセスを含んでいてもよい。また、焼成工程の各プロセスは、各別に実施してもよい。
1.3.7 下地層形成工程
下地層形成工程では、バレル研磨工程後の本体部11に、図1,2に示す外部電極14,15の下地層を形成する。下地層形成工程では、本体部11の外部電極14,15が設けられる長手方向の両端部に導体ペーストを焼き付ける。下地層形成工程には、以下に説明する塗布プロセス及び焼き付けプロセスが含まれる。
塗布プロセスでは、予め用意した導体ペーストを、本体部11の長手方向の両端部に塗布する。導体ペーストの塗布には、例えば、ディップ塗布機やローラ塗布機などの公知の各種塗布機を用いることができる。導体ペーストとしては、例えば、Agペースト、Cuペースト、Niペースト、Pdペースト、Ptペースト、Auペースト、Alペーストなどを用いることができる。
Agペーストは、公知のものから適宜選択可能である。例えば、Agペーストとしては、85wt%以上のAgを含み、ガラス、ブチルカルビトール(溶剤)、ポリビニルブチラール(バインダ)を更に含むものを用いることができる。また、Agペーストに用いるAg粒子のd50(メディアン径)は、約5μmとすることができる。
焼き付けプロセスでは、塗布プロセスで塗布された導体ペーストが本体部11に焼き付けられる。焼き付けプロセスには、例えば、各種焼成炉のような加熱処理機を用いることができる。焼き付けプロセスは、例えば、大気中において約600℃で約20分保持する条件で実施可能である。
焼き付けプロセスによって、外部電極14,15の下地層において、溶剤及びバインダが除去されるとともに、Ag粒子が焼結する。これにより、外部電極14,15の下地層が完成する。なお、焼き付けプロセスの条件は、導体ペーストの種類などに応じて適宜変更可能である。
1.3.8 めっき処理工程
めっき処理工程では、下地層形成工程に引き続いて、本体部11に形成された下地層にめっき処理を行う。これにより、下地層にめっき膜が形成され、外部電極14,15が完成する。めっき処理は、一般的なNi(ニッケル)やSn(錫)などの電気めっきにより行うことができる。めっき膜は、単層であっても複層であってもよい。
以上により、本実施形態に係るコイル部品10を製造することができる。
1.3.9 その他の工程
コイル部品10の製造方法は、必要に応じ、上記以外の工程を含んでいてもよい。このような工程としては、例えば、(1)バレル研磨工程、(2)リン酸塩処理工程、(3)樹脂含浸処理工程が挙げられる。以下、これらの工程について説明するが、追加可能な工程はこれらの工程に限定されない。
(1)バレル研磨工程
バレル研磨工程は、焼成工程後の本体部11に実施することができる。バレル研磨工程では、本体部11にバレル研磨を施す。バレル研磨は、例えば、複数の本体部11をコンパウンド及び水とともにバレル容器に封入し、バレル容器に運動を与えることにより実施可能である。これにより、本体部11の角部や稜部が良好に面取りされる。
(2)リン酸塩処理工程
コイル部品10の製造過程において、磁性体部12を構成する軟磁性体粒子G1,G2,G3には、酸化物膜が途切れて、導電性を有する合金成分が露出した露出部が形成される場合がある。このような露出部は、焼成工程において酸素の供給が充分でなかった部分や、バレル研磨などによって酸化物膜が剥離した部分などに形成される。
磁性体部12を構成する軟磁性体粒子G1,G2,G3に導電性を有する露出部が存在すると、磁性体部12の絶縁性が低下する。磁性体部12の絶縁性が低下すると、コイル部品10の静電気耐圧が低下するため、コイル部品10が静電気によって損傷を受けやすくなる。
また、磁性体部12の表面の絶縁性が低下すると、めっき処理工程において下地層を超えて磁性体部12の表面までめっき膜が延伸することがある。このようなめっき延びが発生すると、外部電極14,15の間における絶縁耐圧が低下するため、コイル部品10の信頼性が低下する。
リン酸塩処理工程は、このような不具合を防止するために、例えば、下地層形成工程後の本体部11に実施することができる。リン酸塩処理工程では、下地層が形成された本体部11をリン酸塩処理液に浸漬させるリン酸塩処理を施す。リン酸塩処理液は、リン酸塩から作製され、リン酸イオン及び金属イオンを含む。
リン酸塩処理では、リン酸塩処理液中のリン酸イオンが、軟磁性体粒子G1,G2,G3の導電性を有する露出部に多く含まれるFeと選択的に反応する。これにより、露出部に絶縁性を有するリン酸塩化合物が析出する。これにより、露出部が絶縁性を有するリン酸塩化合物によって塞がれる。
したがって、本体部11に対してリン酸塩処理を適切な時間実行することにより、軟磁性体粒子G1,G2,G3の露出部がリン酸塩化合物によって完全に被覆されると、磁性体部12の表面に導電性を有する部分がなくなる。これにより、磁性体部12における高い絶縁性が確保される。
また、リン酸塩処理では、リン酸塩処理液が軟磁性体粒子G1,G2,G3の間のポアを通って磁性体部12の内部に浸透するため、磁性体部12の内部にある軟磁性体粒子G1,G2,G3の露出部もリン酸塩化合物によって被覆される。これにより、磁性体部12の内部の絶縁性も確保される。
リン酸塩処理液に用いるリン酸塩としては、例えば、リン酸マンガンを用いることが好ましい。しかしながら、リン酸塩処理液に用いるリン酸塩としては、リン酸マンガン以外を用いてもよく、例えば、リン酸鉄、リン酸カルシウム、及びリン酸亜鉛などを用いることもできる。
(3)樹脂含浸処理工程
樹脂含浸処理工程は、例えば、下地層形成工程後の本体部11に実施することができる。上記のリン酸塩処理工程を実施する場合には、樹脂含浸処理工程を実施するタイミングはリン酸塩処理工程の前後のいずれであってもよい。樹脂含浸処理工程では、軟磁性体粒子G1,G2,G3の間のポアに樹脂材料を充填する。
樹脂含浸処理工程には、以下に説明する、浸漬プロセス、拭き取りプロセス、及び乾燥プロセスが含まれる。浸漬プロセスでは、樹脂材料を含む溶液に本体部11を浸漬させることにより、樹脂材料を含む溶液を磁性体部12のポアに浸透させる。樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂を用いることができる。
樹脂材料としては、シリコン系樹脂以外にも、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、イミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂などを用いることができる。また、樹脂材料は、これらの樹脂を複数組み合わせたものであってもよい。
浸漬プロセスは、大気圧よりも低い減圧雰囲気中で行ってもよい。これにより、樹脂材料の溶液を、短時間で、磁性体部12の全体にわたって充分に浸透させることが可能となる。また、浸漬プロセスでは、樹脂材料を含む溶液に代えて、樹脂材料の液状物を用いることもできる。
拭き取りプロセスでは、浸漬プロセスにおいて磁性体部12の表面や外部電極14,15の下地層に付着した樹脂材料を含む溶液を拭き取る。乾燥プロセスでは、拭き取りプロセス後の磁性体部12の内部に充填された樹脂材料の溶液の溶媒成分を蒸発させる。乾燥プロセスは、例えば、約150℃にて60分保持する条件で実施可能である。
これにより、磁性体部12のポアを部分的に樹脂材料で埋めることができる。つまり、磁性体部12を構成する軟磁性体粒子G1,G2,G3の周囲に樹脂材料が配置される。したがって、隣接する軟磁性体粒子G1,G2,G3同士の導通が抑制されるため、磁性体部12の絶縁性が向上する。
また、磁性体部12のポアに樹脂材料を充填することにより、本体部11の機械的強度も向上する。更に、樹脂材料が充填されたポアには水分が進入しにくくなるため、磁性体部12の吸湿性が抑制される。これにより、磁性体部12内への水分の進入による、磁性体部12の絶縁性の低下が生じにくくなる。
なお、樹脂含浸処理工程の構成は上記に限定されない。例えば、樹脂含浸処理工程では、浸漬プロセス、拭き取りプロセス、及び乾燥プロセスの一連のプロセスを複数回にわたって繰り返してもよい。これにより、磁性体部12のポアにおける樹脂材料の充填率を向上させることができる。
1.4 変形例1
図9は、第1の実施形態の変形例1に係るコイル部品10の本体部11の一部を示す模式図である。図9では、1層の第1磁性体層12bと、これにZ軸方向上下に隣接する2層の第2磁性体層12cと、を抜き出して示している。変形例1に係るコイル部品10は、第1磁性体層12bの構成のみが上記実施形態とは異なる。
変形例1に係る第1磁性体層12bは、扁平軟磁性体粒子含有層12b1と、微粒子層12b2と、を有する。微粒子層12b2は、扁平軟磁性体粒子含有層12b1のZ軸方向上下面に配置されている。しかし、微粒子層12b2は、扁平軟磁性体粒子含有層12b1のZ軸方向上下面のいずれか一方のみに配置されていてもよい。微粒子層12b2の厚さは、例えば、1μm未満とすることができる。
図10(A)は、扁平軟磁性体粒子含有層12b1の断面の微細組織を示す模式図である。図10(B)は、扁平軟磁性体粒子含有層12b1の微細組織をZ軸方向から見たときの軟磁性体粒子G2の位置を外形で示す模式図である。扁平軟磁性体粒子含有層12b1は扁平な軟磁性体粒子G2で形成されており、軟磁性体粒子G2の隙間には微粒子である軟磁性体粒子G3が配置されていない。
このため、扁平軟磁性体粒子含有層12b1では、図10(B)に示すように、軟磁性体粒子G2の間に形成された隙間によって、Z軸方向に貫通する経路が形成されやすい。したがって、扁平軟磁性体粒子含有層12b1のみの構成では、軟磁性体粒子G2の隙間を介したZ軸方向のショートが発生しやすい。
図11(A)は、微粒子層12b2の断面の微細組織を示す模式図である。図11(B)は、微粒子層12b2の微細組織をZ軸方向から見たときの軟磁性体粒子G3の位置を外形で示す模式図である。図11(B)では、説明の便宜上、微粒子層12b2の表層にある軟磁性体粒子G3のみを示し、扁平軟磁性体粒子含有層12b1を構成する軟磁性体粒子G2の位置を破線で示している。
微粒子層12b2は、球状の微粒子である軟磁性体粒子G3で形成された球状粒子含有層である。このため、微粒子層12b2には、図11(B)に示すように、Z軸方向に貫通する経路を形成するような大きい隙間が存在しない。つまり、微粒子層12b2は、扁平軟磁性体粒子含有層12b1における軟磁性体粒子G2の隙間を少なくとも部分的にZ軸方向から閉塞する閉塞部として機能する。
このように、微粒子層12b2の作用によって第1磁性体層12bにZ軸方向に貫通する経路が発生しにくくなるため、第1磁性体層12bではZ軸方向のショートの発生を防止することができる。また、微粒子層12b2を構成する軟磁性体粒子G3も第1磁性体層12bの透磁率に寄与するため、コイル部品10のインダクタンスが向上する。
なお、微粒子層12b2には、軟磁性体粒子G3を用いることが好ましいが、軟磁性体粒子G3に代えて磁性を有さない絶縁体微粒子を用いることも可能である。これにより、第1磁性体層12bの透磁率の観点では不利になるものの、第1磁性体層12bの絶縁性をより確実に得ることができる。
また、図12に示すように、微粒子層12b2は、導体パターン13aと同様のパターンで、導体パターン13aに隣接する位置のみに設けられていてもよい。上述のとおり、第1磁性体層12bにおけるZ軸方向のショートは、導体パターン13aを形成するための導体ペーストが第1磁性体層12bの隙間に進入することによって発生しやすい。
したがって、図12に示すように、微粒子層12b2が少なくとも導体パターン13aに隣接する位置に配置されていれば、第1磁性体層12bにおけるZ軸方向のショートを効果的に防止することができる。なお、扁平軟磁性体粒子含有層12b1上における微粒子層12b2のパターンは、適宜変更可能である。
また、上記実施形態と同様に、扁平軟磁性体粒子含有層12b1における軟磁性体粒子G2の隙間に軟磁性体粒子G3が配置されていてもよい。これにより、第1磁性体層12bではZ軸方向のショートの発生を、更に効果的に防止することができる。また、第1磁性体層12bの透磁率が向上するため、コイル部品10のインダクタンスが向上する。
1.5 変形例2
図13は、第1の実施形態の変形例2に係る磁性体部12の断面の微細組織を示す模式図である。図13(A)に示すカバー部12a及び第2磁性体層12cは、軟磁性体粒子G1と、軟磁性体粒子G1を覆う樹脂Fと、で構成される。図13(B)に示す第1磁性体層12bは、軟磁性体粒子G2,G3と、軟磁性体粒子G2,G3を覆う樹脂Fと、で構成される。
変形例2に係る軟磁性体粒子G1,G2,G3には、上記実施形態とは異なり、酸化物膜が形成されていない。しかしながら、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、樹脂F中に分散されているため、相互に導通することなく樹脂Fによって絶縁されている。したがって、変形例2に係る磁性体部12においても絶縁性が確保される。
樹脂Fを形成する樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、イミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂などを用いることができる。また、樹脂Fは、これらの樹脂材料を複数組み合わせて形成されていてもよい。
変形例2に係る軟磁性体粒子G1,G2,G3の形状は上記実施形態と同様であるため、変形例2に係る磁性体部12を有するコイル部品10においても上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、酸化物膜が形成され、かつ樹脂Fによって覆われていてもよい。
1.6 実施例
実施例1−1〜1−6では、図5,6に示す構成の第1磁性体層12bを有するコイル部品10のサンプルを作製した。実施例1−1〜1−6では、第1磁性体層12bを形成するために用いる軟磁性体粒子G2,G3の合計量に対する軟磁性体粒子G3の量を様々に変更した。
実施例1−1〜1−6に係るサンプルでは、第1磁性体層12b以外を共通の構成とし、1.6×0.8×0.8mmの形状とした。また、すべてのサンプルにおいて、カバー部12aの合計の厚さを0.5mmとし、コイル部13が配置されたコイル周回部の厚さを0.3mmとした。したがって、コイル周回部を構成するシート厚が薄いサンプルほど、コイル部13の巻き数が多くなる。
実施例1−1〜1−6では、平均最長径Dが4μmで平均厚さTが1μmの軟磁性体粒子G2と、平均粒径が0.5μmの球状の軟磁性体粒子G3と、を用いた。具体的に、実施例1−1では、軟磁性体粒子G3の量を1vol%とした。実施例1−2では、軟磁性体粒子G3の量を3vol%とした。実施例1−3では、軟磁性体粒子G3の量を5vol%とした。実施例1−4では、軟磁性体粒子G3の量を10vol%とした。実施例1−5では、軟磁性体粒子G3の量を15vol%とした。実施例1−6では、軟磁性体粒子G3の量を17vol%とした。
また、実施例2−1では、図9,10に示す変形例1の構成の扁平軟磁性体粒子含有層12b1及び微粒子層12b2を含む第1磁性体層12bを有するコイル部品10のサンプルを作製した。実施例2−1に係るサンプルでは、第1磁性体層12b以外について、実施例1−1〜1−6に係るサンプルと共通の構成とした。
第1磁性体層12bの扁平軟磁性体粒子含有層12b1は、平均最長径Dが4μmで平均厚さTが1μmの軟磁性体粒子G2で6μmのシート厚に形成した。第1磁性体層12bの微粒子層12b2は、平均粒径が0.5μmの軟磁性体粒子G3で2μmのシート厚に形成し、各扁平軟磁性体粒子含有層12b1の両面に配置した。
また、実施例1−1,1−2,2−1に係るサンプルでは第1磁性体層12bのシート厚を10μmとし、実施例1−3〜1−6に係るサンプルでは第1磁性体層12bのシート厚を5μmとした。更に、実施例1−1,1−2,2−1に係るサンプルではコイル部13の巻き数を10.5ターンとし、実施例1−3〜1−6に係るサンプルではコイル部13の巻き数を13.5ターンとした。
実施例1−1〜1−6,2−1に係る各サンプルについて、インダクタンスL及びショート率の評価を行った。実施例1−1〜1−6,2−1についてのインダクタンスL及びショート率の評価結果を表1に示す。
インダクタンスLは、実施例1−1〜1−6,2−1のそれぞれについての複数のサンプルについて測定を行った平均値として算出される。ショート率は、実施例1−1〜1−6,2−1のそれぞれについての複数のサンプルについて電気抵抗測定を行い、サンプル全数のうちショートが発生しているサンプルの数の割合として算出される。
実施例1−1〜1−6,2−1に係るサンプルではいずれも、1.0μH以上のインダクタンスLが得られている。また、実施例1−1〜1−6,2−1ではいずれのサンプルにもショートの発生が見られなかった。したがって、実施例1−1〜1−6,2−1のいずれにおいても性能及び信頼性の高いコイル部品10が得られていることが確認された。
1.7 比較例
比較例1〜4では、扁平な軟磁性体粒子を用いずに、球状の軟磁性体粒子のみで形成された第1磁性体層を有するコイル部品のサンプルを作製した。また、比較例5,6では、扁平な軟磁性体粒子のみを用いて形成された第1磁性体層を有するコイル部品のサンプルを作製した。比較例1〜6に係るサンプルでは、第1磁性体層以外について、実施例1−1〜1−6,2−1に係るサンプルと共通の構成とした。
比較例1,2では平均粒径が4μmの軟磁性体粒子を用い、比較例3,4では平均粒径が2μmの軟磁性体粒子を用い、比較例5,6では平均最長径Dが4μmで平均厚さTが1μmの扁平な軟磁性体粒子を用いた。
また、比較例1では第1磁性体層のシート厚を15μmとし、比較例2,3,6では第1磁性体層のシート厚を10μmとし、比較例4,5では第1磁性体層のシート厚を5μmとした。更に、比較例1に係るサンプルではコイル部の巻き数を8.5ターンとし、比較例2,3,6に係るサンプルではコイル部の巻き数を10.5ターンとし、比較例4,5に係るサンプルではコイル部の巻き数を13.5ターンとした。
比較例1〜6に係る各サンプルについて、実施例1−1〜1−6,2−1と同様の方法によって、インダクタンスL及びショート率の評価を行った。比較例1〜4についてのインダクタンスL及びショート率の評価結果を表2に示す。
比較例1に係るサンプルでは、第1磁性体層のシート厚が厚く、コイル部の巻き数が少ないため、インダクタンスLが1μH未満の小さい値となった。比較例2に係るサンプルでは、シート厚を10μmまで薄くすることにより、コイル部の巻き数を増加させることができたものの、ショートが発生してしまった。
比較例3に係るサンプルでは、比較例1,2よりも平均粒径の小さい軟磁性体粒子を用いることにより、ショートを発生させることなくコイル部の巻き数を増加させることができた。しかし、比較例3では、軟磁性体粒子の平均粒径を小さくすることによって、各粒子の表面積が小さくなるため、シート成形の際にゲル状になり、ハンドリングが難しくなった。また、比較例3に係るサンプルでは、軟磁性体粒子の平均粒径を小さくすることによって、第1磁性体層における磁性を持つ部分の割合が減少し、インダクタンスLが1μH未満の小さい値となった。
比較例4に係るサンプルでは、インダクタンスLの向上のために、シート厚を5μmまで薄くすることにより、コイル部の巻き数を更に増加させたものの、ショートが発生してしまった。比較例1〜4の結果により、第1磁性体層を形成する球状の軟磁性体粒子の大きさを変更することによるインダクタンスLの向上には限界があることが確認された。
そこで、比較例5,6に係るサンプルでは、軟磁性体粒子の大きさではなく形状を変更し、扁平な軟磁性体粒子で第1磁性体層を形成した。これにより、比較例5,6では、扁平な軟磁性体粒子において大きい表面積が確保されるため、シート成形時にゲル状になるなどのハンドリング性の問題は生じなくなった。しかしながら、比較例5,6に係るサンプルでは、第1磁性体層において扁平な軟磁性体粒子の間に大きい隙間が発生しやすくなるため、ショートが発生してしまった。
以上のとおり、比較例1〜6のように、第1磁性体層を形成するために球状の軟磁性体粒子及び扁平な軟磁性体粒子のいずれか一方のみを用いる場合には、ショートが発生しない構成においても1μH以上のインダクタンスLが得られなかった。
一方、上記のとおり、実施例1−1〜1−6,2−1に係るサンプルではいずれも、ショートが発生せず、かつ1μH以上のインダクタンスLが得られている。つまり、第1磁性体層12bを形成するために扁平な軟磁性体粒子G2と球状の軟磁性体粒子G3とを併用することにより、ショートを発生させることなく、高いインダクタンスLが得られることが確認された。
2.第2の実施形態
2.1 全体構成
図14は、本発明の第2の実施形態に係るコイル部品10の本体部11の断面を示す模式図である。本実施形態に係るコイル部品10は、以下に説明する構成以外について第1の実施形態に係るコイル部品10と同様の構成されている。以下の説明では、第1の実施形態と対応する構成について、同一の符号を用いる。
本実施形態に係るコイル部品10では、カバー部12aの構成が第1の実施形態に係るコイル部品10とは異なる。本実施形態に係るコイル部品10のカバー部12aは、Z軸方向に積層された第1カバー層12a1、第2カバー層12a2、及び第3カバー層12a3を有する3層構造である。
カバー部12aにおいて、第1カバー層12a1は、Z軸方向の最も内側に配置され、コイル部13が配置された領域にZ軸方向外側に隣接している。第2カバー層12a2は、第1カバー層12a1のZ軸方向外側に隣接している。第3カバー層12a3は、第2カバー層12a2の更にZ軸方向外側に隣接している。
カバー層12a1,12a2,12a3は、本体部11におけるXY平面に沿った全範囲にわたって延び、本体部11からX軸及びY軸方向に露出している。これにより、コイル部品10は、各カバー層を本体部におけるXY平面に沿った一部の範囲のみに配置する構成に比べて、シンプルな製造プロセスによって低コストで製造可能となる。
また、各カバー層を本体部におけるXY平面に沿った一部の範囲のみに配置する構成では、コイル部品のZ軸方向の寸法を1mm以下とする場合に精度を確保することが困難となる。この点、本実施形態に係るコイル部品10では、Z軸方向の寸法を1mm以下とする場合、更にはZ軸方向の寸法を0.8mm以下とする場合にも、高精度で製造可能である。
図15は、カバー部12aの断面の微細組織を示す模式図である。図15(A)は第1カバー層12a1を示し、図15(B)は第2カバー層12a2を示し、図15(C)は第3カバー層12a3を示している。カバー層12a1,12a2,12a3では、これらを構成する軟磁性体粒子の形状が異なる。
図15(A)に示すように、カバー部12aの第1カバー層12a1は、比較的大きい平均粒径を有する球状の軟磁性体粒子G1で構成されている。隣接する軟磁性体粒子G1は、その表面の酸化物膜において相互に結合している。
図15(B)に示すように、カバー部12aの第2カバー層12a2は、配向している扁平な軟磁性体粒子G2が全領域にわたって配置されている扁平軟磁性体粒子含有層として構成される。隣接する軟磁性体粒子G2は、その表面の酸化物膜において相互に結合している。
第2カバー層12a2は、例えば、扁平な金属磁性粉を含む磁性シートから形成される。磁性シートの厚さは、金属磁性粉の平均厚さの3倍〜10倍程度であり、金属磁性粉の平均最長径の10分の1程度であることが好ましい。これにより、扁平な軟磁性体粒子G2が良好に配向した第2カバー層12a2が得られる。
図15(C)に示すように、カバー部12aの第3カバー層12a3は微粒子である軟磁性体粒子G3で構成されている。すなわち、第3カバー層12a3には、軟磁性体粒子G3が高密度で配置されている。隣接する軟磁性体粒子G3は、その表面の酸化物膜において相互に結合している。
なお、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、同一の材料ではなく、相互に異なる材料で形成されていてもよい。更に、軟磁性体粒子G1,G2,G3は、Fe及びSiを含み、かつCr及びAlの少なくとも一方を更に含む軟磁性合金で形成されている構成に限定されず、他の軟磁性体で形成されていてもよい。
例えば、軟磁性体粒子G1,G2,G3の少なくとも1つが、アモルファス合金粒子であってもよい。これにより、コイル部品10における渦電流損失を低減することができる。また、軟磁性体粒子G1,G2,G3の少なくとも1つが、扁平化や微細化が容易なフェライト粒子であってもよい。
2.2 カバー部12aの詳細
以下、本実施形態に係るカバー部12aのカバー層12a1,12a2,12a3の詳細について説明する。なお、カバー部12aは、必要に応じて、カバー層12a1,12a2,12a3以外の構成を含んでいても構わない。
2.2.1 第1カバー層12a1
第1カバー層12a1は、カバー部12aにおいて磁路を形成する機能などを有する。第1カバー層12a1では、適度な大きさの軟磁性体粒子G1を用いることにより、高い絶縁性を確保しつつ、高い透磁率が得られる。このような観点から、軟磁性体粒子G1の平均粒径は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
第1カバー層12a1の厚さは、磁路を確保する観点から、10μm以上であることが好ましい。また、第1カバー層の厚さは、第1カバー層12a1より外側の第2カバー層12a2まで磁束が到達しやすくするために、150μm以下に留めることが好ましく、60μm未満に留めることが更に好ましい。
なお、図15(A)では軟磁性体粒子G1を均一な形状で示しているが、軟磁性体粒子G1は所定の粒度分布を有していてもよく、軟磁性体粒子G1の形状は不均一であってもよい。
2.2.2 第2カバー層12a2
第2カバー層12a2を構成する扁平な軟磁性体粒子G2は、透磁率に異方性を有し、XY平面に沿った方向に透磁率が高く、Z軸方向に沿った方向の透磁率が低い。このため、第2カバー層12a2の透磁率は、XY平面に沿った方向において高くなり、Z軸方向において低くなる。
したがって、第2カバー層12a2に進入する磁束は、XY平面に沿った方向に向きを変えながら第2カバー層12a2を通過する。このため、第2カバー層12a2において磁束がZ軸方向内側に寄せられる。これにより、カバー部12aにおける磁束密度が高くなるため、コイル部品10のインダクタンスが向上する。
また、第2カバー層12a2では、Z軸方向の透磁率が低いため、磁束がZ軸方向外側に通過しにくい。したがって、第2カバー層12a2は、Z軸方向外側への磁束の漏れを抑制するシールドとして機能する。これにより、コイル部品10のインダクタンスが更に向上する。
軟磁性体粒子G2は、厚さ方向に直交する方向における径がなるべく均一であることが好ましく、つまり厚さ方向から見た形状が円形に近いことが好ましい。軟磁性体粒子G2の径は、例えば、10μm程度とすることができる。また、軟磁性体粒子G2のアスペクト比は、4以上であることが好ましい。
また、第2カバー層12a2では、図15(B)に示す構成に加えて、軟磁性体粒子G2の隙間に軟磁性体粒子G3を配置することにより、軟磁性体粒子G2の隙間にも磁性を持たせることができる。これにより、第2カバー層12a2における透磁率が更に向上するため、コイル部品10のインダクタンスが更に向上する。
軟磁性体粒子G3を用いる構成の第2カバー層12a2における軟磁性体粒子G2と軟磁性体粒子G3との合計量に対する軟磁性体粒子G3の量は、5vol%以上15vol%以下であることが好ましく、例えば、8vol%とすることができる。これにより、軟磁性体粒子G2の隙間に軟磁性体粒子G3が良好に充填されやすくなる。
第2カバー層12a2の厚さは、適宜決定可能であり、例えば、80μm程度とすることができる。なお、図15(B)では軟磁性体粒子G2を均一な形状で示しているが、軟磁性体粒子G2の形状は不均一であってもよい。
2.2.3 第3カバー層12a3
カバー部12aの最外層が第2カバー層12a2で構成され、カバー部12aの表面に扁平な軟磁性体粒子G2が露出していると、カバー部12aの表面の絶縁性が低下する。磁性体部12の表面の絶縁性が低下すると、めっき処理工程においてめっき延びが発生しやすくなる。これにより、コイル部品10の信頼性が低下する。
このような不具合を防止するために、カバー部12aの最外層として、第3カバー層12a3が設けられる。つまり、第3カバー層12a3は、微粒子である軟磁性体粒子G3で構成されているため、カバー部12aの表面に高い絶縁性を付与することができる。これにより、コイル部品10の信頼性が向上する。
また、カバー部12aの最外層として第3カバー層12a3を設けることにより、本体部11の内部に水分が進入しにくくなる。これにより、磁性体部12内への水分の進入による、磁性体部12の絶縁性の低下が生じにくくなる。これにより、コイル部品10の信頼性が更に向上する。第3カバー層12a3の厚さは5μm以下であることが好ましい。
なお、第3カバー層12a3を構成する軟磁性体粒子G3は、軟磁性合金で形成されている構成に限定されず、他の軟磁性体で形成されていてもよい。例えば、軟磁性体粒子G3は、フェライトで形成されたフェライト粒子であってもよい。フェライトは微粒子化が容易であるため、軟磁性体粒子G3を容易に得ることができる。
また、第3カバー層12a3には、軟磁性体粒子G3を用いることが好ましいが、軟磁性体粒子G3に代えて磁性を有さない絶縁体微粒子を用いることも可能である。これにより、第3カバー層12a3において磁路としての機能は得られなくなるものの、カバー部12aの表面の絶縁性をより確実に得ることができる。
更に、図15(C)では軟磁性体粒子G3を均一な形状で示しているが、軟磁性体粒子G3は所定の粒度分布を有していてもよく、軟磁性体粒子G3の形状は不均一であってもよい。また、カバー部12aの表面の絶縁性を確保できる場合には、カバー部12aに第3カバー層12a3を設けなくてもよい。この場合、カバー部12aには、軟磁性体粒子G3などの微粒子が含まれていなくても構わない。
加えて、本実施形態に係る第1磁性体層12b及び第2磁性体層12cの構成は、第1の実施形態に係る第1磁性体層12b及び第2磁性体層12cとは異なっていてもよく、任意に変更可能である。例えば、本実施形態に係る第1磁性体層12b及び第2磁性体層12cは、いずれも球状の軟磁性体粒子G1で形成されていてもよい。
3.第3の実施形態
本発明を適用可能なコイル部品10は、第1及び第2の実施形態に係る積層インダクタに限定されない。本発明の第3の実施形態では、積層インダクタ以外のコイル部品10の一例として、コモンモードチョークコイルについて説明する。以下の説明では、第1の実施形態と対応する構成について、同様の符号を用いる。
図16は、第3の実施形態に係るコイル部品10の斜視図である。図16に示すように、コイル部品10の本体部11には、2つの第1外部電極14a,14bと、2つの第2外部電極15a,15bと、で構成される4つの端子が設けられている。外部電極14a,15aが相互に対向し、外部電極14b,15bが相互に対向している。
図17は、コイル部品10の本体部11の分解斜視図である。図17に示すように、カバー部12aの間に層状部ML1〜ML3が配置された積層構造を有する。カバー部12aの構成は、第1及び第2の実施形態と同様とすることができ、単層構造であっても複層構造であってもよい。
層状部ML2,ML3には、Z軸方向上面に沿って、コイル部13を構成する渦巻き状の導体パターン13aが形成されている。また、層状部ML1には、第2外部電極15aに接続された引出端部13cと、第2外部電極15bに接続された引出端部13cと、が設けられている。
また、層状部ML2には、導体パターン13aの外側の端部を第1外部電極14aに接続するための引出端部13cが設けられている。また、層状部ML1には、層状部ML2の導体パターン13aの内側の端部を第2外部電極15aに接続された引出端部13cに接続するためのビア13bが設けられている。
更に、層状部ML3には、導体パターン13aの外側の端部を第1外部電極14bに接続するための引出端部13cが設けられている。また、層状部ML1,ML2には、層状部ML3の導体パターン13aの内側の端部を第2外部電極15bに接続された引出端部13cに接続するためのビア13bが設けられている。
このような構成により、コイル部品10では、外部電極14a,15aに印加される電圧によって層状部ML2の導体パターン13aに電流が流れ、外部電極14b,15bに印加される電圧によって層状部ML3の導体パターン13aに電流が流れる。これにより、コイル部品10では、コモンモードチョークコイルの機能が得られる。
図18は、コイル部品10の図16のC−C線に沿った断面を示す模式図である。本実施形態に係るコイル部品10は、磁性体部12が、カバー部12aと、第1磁性体層12bと、第2磁性体層12cと、で構成されている点で、第1及び第2の実施形態に係るコイル部品10と共通する。
したがって、本実施形態に係るコイル部品10では、第1磁性体層12bを第1の実施形態と同様の構成とすることにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態に係るコイル部品10では、カバー部12aを第2の実施形態と同様の構成とすることにより、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
4.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。