JP2021071166A - 歯車およびその製造方法 - Google Patents

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賢武 三宅
Kenbu Miyake
賢武 三宅
松本 伸彦
Nobuhiko Matsumoto
伸彦 松本
原 昌司
Masashi Hara
昌司 原
栄介 保科
Eisuke Hoshina
栄介 保科
将大 内村
Masahiro Uchimura
将大 内村
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Abstract

【課題】面圧疲労強度が大きい歯車を提供する。【解決手段】本発明は、母材からなる歯部と歯部の少なくとも歯面上に形成された硬質層とを有する歯車である。硬質層は母材と異なる材質である高速度工具鋼からなる。母材のビッカース硬さは400HV以下でも、硬質層のビッカース硬さは800HV以上となり、それらの硬さ比は2.5以上となる。硬質層は、例えば、母材上に高速度工具鋼粉をレーザメタルデポジション(LMD)して形成した肉盛部から形成される。肉盛部は、530〜600℃の高温焼戻が複数回なされることにより二次硬化して、非常に大きなビッカース硬さを示す。こうして得られた肉盛部を機械加工して所望の寸法や表面粗さに仕上げれば、面圧疲労強度が大きい歯部(特に歯面)を備えた歯車が得られる。【選択図】図1B

Description

本発明は歯車等に関する。
動力伝達や減速比の調整等を行う際に歯車が用いられる。その歯部(特に歯面)は、高荷重を繰り返し受けるため、高い耐ピッチングや耐疲労性等が要求される。この傾向は、歯車が軽量化または小型化されたり、歯車が高温環境下や過酷な潤滑環境下で高速運転される場合に顕著である。
このような歯車には、通常、所望形状に加工または成形された肌焼鋼等に、浸炭焼入れ、焼き戻し等の熱処理が施される。これに関連する記載が、例えば、下記の特許文献1、2にある。ちなみに、特許文献3〜6は、歯車と直接関係ないが、高速度工具鋼に関連する記載がある。特許文献7には、レーザビームを用いた肉盛に関連する記載がある。
特開2001−140020 WO2011/030827 特開2016−211022 特開2019−56160 特開2008−261040 特開2012−67325 特開2017−214909
特許文献1〜7のいずれにも、歯車の歯面に、高速度工具鋼からなる硬質層をもうける旨の記載は一切ない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来の歯車とは異なる新たな歯車等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し結果、噛み合う歯車間で摺接する歯面に、高速度工具鋼からなる硬質層を形成することを着想した。そして実際に、その硬質層が歯車の面圧疲労強度の向上に寄与することを確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《歯車》
(1)本発明の歯車は、母材からなる歯部と該歯部の少なくとも歯面上に形成された硬質層とを有する歯車であって、該硬質層は、該母材と異なる材質である高速度工具鋼からなる。
(2)本発明の歯車は、少なくとも歯面に高速度工具鋼からなる硬質層が形成されており、高い面圧疲労強度等を発揮し得る。このような本発明の歯車によれば、その小型化を図ったり、過酷な環境下における使用等が可能となる。
また本発明の歯車は、硬質層を除いて、高速度工具鋼以外の母材からなる。このため本発明の歯車によれば、母材に応じた製造コスト(材料費、加工費等)、靱性や耐衝撃性等の機械的特性が確保され得る。
《歯車の製造方法》
本発明は歯車の製造方法としても把握できる。本発明は、例えば、母材からなる歯部の少なくとも歯面上に、該母材と異なる材質である高速度工具鋼からなる肉盛部を形成する肉盛工程を備える歯車の製造方法でもよい。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、本明細書でいう「x〜ymm」はxmm〜ymmを意味する。他の単位系(MPa等)についても同様である。
硬質層を歯部に形成した平歯車を例示した斜視図と部分拡大図である。 レーザメタルデポジション(LMD)による硬質層の形成過程を示した模式図である。 組織観察用試料の造形方法を示す説明図と、実際に造形した試料の平面写真と、試料1の肉盛部の断面を示す光学顕微鏡写真である。 面圧疲労試験用試料の造形方法を示す説明図である。 各試料の金属組織を示すSEM像である。 各試料に係るビッカース硬さと面圧疲労強度の関係を示す散布図である。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、歯車のみならず、その製造方法にも適宜該当する。方法的な構成要素であっても、物に関する構成要素ともなり得る。
《歯車》
歯車はその種類を問わない。歯車には、例えば、平行軸歯車(平歯車、内歯車、はすば歯車、ラック等)、交差軸歯車(かさ歯車等)、食違軸歯車(ウォームギヤ等)などがある。転位の有無、歯形(インボリュート歯形、サイクロイド歯形、トロコイド歯形等なども問わない。
歯車は、所定数の歯部(ウォームギアのような連続した歯部を含む。)を有する。歯部は、歯先、歯底、それらの間にある歯面を有する。本発明に係る硬質層は、噛み合う歯車間で摺接する歯面(少なくともその一部)に形成されていれば足る。つまり硬質層は、必ずしも、歯車の外周全面に形成されていなくてもよい。例えば、摺接しない領域(歯先、歯底、側端面等)には形成されていなくてもよい。但し、摺接しない領域にも硬質層が形成されていと、その分、歯車は表面強化される。外周全面に硬質層が形成された平歯車の一例を図1Aに模式的に示した。
歯部(硬質層を除く)を構成する母材は、硬質層と異なる材質であれば、その種類を問わない。母材は、例えば、成形性、加工性または熱処理性等に適した鋼材(炭素鋼、合金鋼等)からなるとよい。母材は、溶製材でも焼結材でもよい。また本明細書でいう歯車には、シャフト等の付属体が一体化されたものも含まれる。この場合、部位により材質が異なってもよい。つまり、歯部以外は、本明細書でいう母材とさらに異なる材質でもよい。
《硬質層》
(1)材質
硬質層は高速度工具鋼からなる。高速度工具鋼は種々あり、歯車の所望特性に応じて選択されるとよい。高速度工具鋼は、炭素(C)および多くの合金元素(W、Mo、Cr、VまたはCo等)を含む鉄合金である。高速度工具鋼は、通常、WとMoの少なくとも一方を多く含む。WとMoは置換性があるため、MoとWの含有量はW当量(Weq.=W+2Mo)で評価され得る。
いずれにしても高速度工具鋼は、主に、Cと合金元素(W、Mo、Cr、V等)が結合した硬質な(複)炭化物により強化される。Coは炭化物をほとんど形成しないが、焼戻硬さや高温硬さの向上に寄与する。Coの含有は任意であるが、Coが過多になると、靱性の低下によりチッピング性が低下し得る。
各元素は、例えば、次のような範囲内で任意に含まれて、高速度工具鋼を構成するとよい。なお、本明細書では、特に断らない限り、高速度工具鋼全体に対する質量割合(単に「%」という。)で示す。Cは、例えば、0.85〜4%、1〜3.5%、1.5〜3%さらには2〜2.8%含まれ得る。高速度工具鋼は、一般的な炭素鋼よりも、合金元素量に見合った多くのCを含むとよい。
Crは、例えば、3〜10%、3.5〜9%さらには4〜5%含まれ得る。Vは、例えば、1〜8%、2〜7%さらには3〜6%含まれ得る。Wおよび/またはMoは、W当量で、例えば、6〜26%、10〜23%さらには15〜21%含まれ得る。Wでいえば、例えば、0.01〜20%さらには5〜15%含まれてもよい。Moでいえば、例えば、0.01〜10%さらには3〜9%含まれてもよい。Coは任意であるが、例えば、1〜12%、4〜11%さらには6〜9%含まれてもよい。
具体的な化学成分の一例として、高速度工具鋼は、その全体を100%として、C:2〜4%さらには2.1〜2.5%、Cr:3〜5%さらには3.5〜4.5%、W当量(W+2Mo):18〜23%さらには19〜22%、V:5.5〜7.5%さらには6〜7%、Co:9〜11%さらには9.5〜10.5%、残部:Feおよび不純物であってもよい。このとき、Mo:5.5〜8.5%さらには6〜8%、W:5〜8%さらには6〜7%としてもよい。
別例として、高速度工具鋼は、その全体を100%として、C:2〜4%さらには2.1〜2.5%、Cr:3〜5%さらには3.5〜4.5%、W当量(W+2Mo):18〜23%さらには19〜22%、V:5.5〜7.5%さらには6〜7%、Co:9〜11%さらには9.5〜10.5%、残部:Feおよび不純物であってもよい。このとき、Mo:5.5〜8.5%さらには6〜8%、W:5〜8%さらには6〜7%としてもよい。
他例として、高速度工具鋼は、その全体を100%として、C:1〜2%さらには1.1〜1.5%、Cr:3.5〜8.5%さらには4〜8%、W当量(W+2Mo):5〜18%さらには6〜17%、V:2.5〜4%さらには3〜3.5%、Co:0〜2.5%さらには1〜2%、残部:Feおよび不純物であってもよい。このとき、Mo:1〜7%さらには2〜6%、W:0.01〜8%さらには5〜7%としてもよい。
(2)硬さ
硬質層は、例えば、ビッカース硬さが800Hv以上、900Hv以上さらには1000Hv以上であるとよい。一方、硬質層が形成される母材は、例えば、ビッカース硬さが400Hv以下、350Hv以下、300Hv以下さらには250Hv以下でもよい。このような硬質層と母材の組み合わせにより、歯面における耐疲労性や耐ピッチング性等と共に、歯部の靱性や耐衝撃性等が確保される。
母材のビッカース硬さに対する硬質層のビッカース硬さの比率でいうなら、その硬さ比は2.5以上、3以上、3.5以上、4以上さらには4.5以上であってもよい。
なお、本明細書でいう硬さは次のようにして定める。硬質層の硬さは、少なくとも一つの歯部の断面について、硬質層の最端部を除く略均等な歯面に沿った3点について測定した各ビッカース硬さ(試験荷重:0.3kgf)の算術平均値とする。なお、複数箇所について同様な測定をしたときは、さらに、それらの算術平均値を採用する(以下同様)。
母材の硬さは、少なくとも一つの歯部の断面について、熱影響部(HAZ: Heat-Affected Zone)を除く領域(HAZの内側にある領域)で、歯面に沿った略均等な3点について測定した各ビッカース硬さ(試験荷重:0.3kgf)の算術平均値とする。
(3)形態
硬質層は、歯面に沿って形成されていればよい。硬質層の厚さは、例えば、0.5mm以上、1mm以上さらには1.5mm以上でもよい。その上限値は問わないが、例えば、3mm以下、2.5mm以下さらには2mm以下でもよい。その厚さが過小では高負荷時に母材から破壊して歯車の強度向上を図れず、その厚さが過大では原料や製造のコスト増となる。
硬質層の厚さは、少なくとも一つの歯部の断面を光学顕微鏡で観察して得られた画像を解析して求まる。具体的にいうと、硬質層が形成されている母材表面に沿って算出した硬質層の厚さ(図1C参照)の積分値を、その母材表面の長さで除して求まる。この算出は画像解析ソフト(A像君/旭化成エンジニアリング株式会社)により行える。なお、硬質層の形成が不十分な端部等は除いて算出するとよい。また、複数箇所について同様な測定をしたときは、さらに、それらの算術平均値を採用する(以下同様)。
《製造方法》
(1)肉盛
歯車は、例えば、母材を所望形状に成形または加工された歯部の少なくとも歯面上に、その母材とは異なる材質である高速度工具鋼を肉盛して製造される(肉盛工程)。このときできた肉盛部(肉盛層)が硬質層になる。通常、その肉盛部に熱処理や研削等の加工が施されて硬質層とされる。
肉盛工程は、例えば、高速度工具鋼となる原料粉末を溶融させ、歯面上で凝固させてなされる。肉盛工程は、レーザメタルデポジション(LMD)や溶射等によりなされる。特にLMDは制御性に優れ、例えば、肉盛部の厚さを管理し易い。
原料粉末は、所望組成に調製された1種類の粉末でもよいし、全体として所望組成になる2種以上の粉末(混合粉末には限らない。)でもよい。LMDによれば、複数の粉末でも、所望の混合比(所望組成)で溶解させ得る。
LMDに用いるレーザの種類は、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ、COレーザ等のいずれでもよい。また、原料粉末を搬送するキャリアガス、原料粉末(溶融滴を含む)の酸化等を抑止するシールドガスには、不活性ガス(He、Ar等の他、Nを含む。)が用いられるとよい。なお、LMDが真空雰囲気や不活性ガス雰囲気等でなされるとき、シールドガスの供給はなくてもよい。
(2)熱処理
高速度工具鋼からなる肉盛部は、熱処理により、所望の特性(硬さ等)を発現する。上述したように、溶融した高速度工具鋼が歯面上で急冷凝固してできた肉盛部は、通常、マルテンサイト(一部は残留オーステナイト)組織を既に有すると考えられる。このため、改めて焼き入れを行わなくてもよいが、再焼き入れがなされてもよい。再焼き入れは、例えば、少なくとも肉盛部を1100〜1250℃さらには1150〜1200℃に加熱するとよい。
肉盛部は、530〜600℃さらには540〜580℃に加熱する焼戻工程が施されるとよい。これにより残留オーステナイトの解消(マルテンサイトへの変態)、炭化物の析出、マルテンサイトの安定化等が図られる。高温焼戻により、通常、肉盛部は形成時(焼戻前)よりも硬化する(二次硬化)。焼戻は、少なくとも2回なされるとよく、3回以上なされてもよい。特に肉盛部がCoを多く含む場合、焼戻を3回以上行うとよい。
歯部(特に歯面)に比較的薄く形成されている硬質層の熱処理は、高周波誘導加熱等により、表面部だけ加熱してなされてもよい。この場合、効率的な熱処理が可能になると共に、母材側の組織変化が抑制され得る。
(3)加工
肉盛部は、例えば、機械加工が施されるとよい(加工工程)。加工は、所望する加工量、寸法精度、表面粗さ等に応じて、切削、研削、研磨等が選択される。加工は、焼戻前になされても焼戻後になされてもよい。焼戻後の肉盛部は硬質であるため、研削または研磨されるとよい。このような加工により、肉盛部は所望の形態(厚さ、寸法(幾何公差を含む。)、表面粗さ等)を有する硬質層とされる。
《用途》
歯車は、その用途を問わない。少なくとも歯面が硬質層で強化された歯車は、耐疲労性または耐ピッチング等に優れる。また高速度工具鋼からなる硬質層は、焼戻し軟化抵抗も大きい。このため本発明の歯車は、高温(例えば200〜400℃さらには250〜350℃)な環境下、流体潤滑のみならず混合潤滑や境界潤滑を生じ得る過酷な潤滑環境下等での使用に適する。なお、歯車の小型化や低粘度な潤滑油の使用等により、歯面の使用環境は一層過酷となる。
母材上に高速度工具鋼からなる肉盛部または硬質層を形成した試料を製作した。各試料を用いた組織観察と面圧疲労試験を行った。これらの具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)素材(原料)
母材として、SS400(JIS)とSCM420(JIS)とからなるバルク材を用意した。
肉盛に用いる原料粉末として、3種の高速度工具鋼粉(山陽特殊製鋼株式会社製SPM60、SPMR8およびSPM23)を用意した。それらの化学成分は表1に示した通りである(鋼種1〜3)。なお、表1中、鋼種3(SPMR8)の化学成分は分析値であり、それ以外の化学成分はメーカのカタログ値である。原料粉末は、篩い分けにより45〜150μmに分級したものを用いた。
比較材として、4種の高速度工具鋼(溶製材)からなるバルク材(山陽特殊製鋼株式会社製SPM60、SPMR8およびSPM23と、日立金属株式会社製HAP72)を用意した。これらの化学成分も表1に示した通りである(鋼種1〜4)。いずれのバルク材も焼入れ焼戻し済み鋼材であった。
一般的な歯車材料である市販の浸炭焼入れ焼戻し済みクロム鋼材(SCr420/溶製バルク材)も比較材として用意した。ちなみに、SCr420(JIS)の化学成分は、C:0.18〜0.23%、Cr:0.9〜1.2%、Mn:0.6〜0.9%、Si:0.15〜0.35%、残部:Feおよび不純物である。本実施例でいう化学成分は、特に断らない限り、すべて鋼全体に対する質量割合(%)である。
(2)組織観察用試料
先ず、組織観察用の試料をレーザメタルデポジション(LMD)により造形した。LMDによる造形の様子を図1Bに模式的に示した。母材にはSS400を用いた。原料粉末には3種の各高速度工具鋼粉(鋼種1〜3/単種粉末)を用いた。
組織観察用試料の造形は表2に示したLMD条件1により行い、母材上にビード(肉盛部)を繰り返し造形した。表2中にある「走査間隔」は、図1Cに示すように、母材表面上に造形する各ビードの間隔を意味し、「走査回数」はその表面上に走査間隔毎に造形したビード数を意味する(図1Cの上段左側に示した説明図を参照)。
各肉盛部に対して、二次硬化を目的とした焼戻しを行った(焼戻工程)。焼戻しは、肉盛部が形成された母材を加熱炉に入れて行った。このとき、炉内温度:550℃、処理時間:90分、焼戻回数:2回、炉内雰囲気:窒素雰囲気とした。
こうして、母材(厚さ8mmの板材)の表面上に、肉盛部(長さ20mm×幅10mm×厚さ0.5mm)が形成された組織観察用の各試料が得られた(図1Cの上段右側に示した写真を参照)。鋼種1〜3に対応して、各試料をそれぞれ試料1〜3という。一例として、試料1の肉盛部を光学顕微鏡で観察した断面写真を図1Cの下段に示した。
(3)面圧疲労試験用試料
次に、面圧疲労試験用の試験片を上述したLMD装置を用いて製作した。母材にはSCM420を用いた。原料粉末には高速度工具鋼粉(鋼種1/単種粉末)を用いた。
面圧疲労試験用試料の造形は表2に示したLMD条件2により行い、厚さ約2.5mmの肉盛部を母材(φ20mmの円筒形)の表面上に造形した。具体的にいうと、一定速度で回転すると共に長手方向へ移動する母材の表面へLMDを行った。こうして図1Dに示すように、母材表面には、硬質層がスパイラル状(展開図では斜め直線状)に肉盛造形される。本実施例では、その母材を長手方向に往復動させることにより、その表面に8層の硬質層を造形した。表2にある「積層回数」は、その厚さ(高さ)方向に繰り返した造形回数(層数)を意味する。また同表にある「積層間隔」は、硬質層を1層造形する毎に、母材(回転軸)位置を厚さ方向へ移動(下降)させるオフセットを意味する。
肉盛部に対して、二次硬化を目的とした焼戻しを行った(焼戻工程)。焼戻しは、肉盛部が形成された母材を加熱炉に入れて行った。このとき、炉内温度:550℃、処理時間:90分、焼戻回数:2回、炉内雰囲気:窒素雰囲気とした。
焼戻した肉盛部を機械加工により厚さ2mmの均一的な層状(つまり硬質層)とした。こうして得られた試験片を面圧疲労試験に供した。なお、混同を生じない限り、このような試験片も単に試料1という。
(4)組織観察用の比較試料
組織観察用の比較試料には、焼入れ焼戻し済み高速度工具鋼バルク材(鋼種1〜3)をそのまま用いた(試料C1〜C3に相当)。
(5)面圧疲労試験用の比較試料
面圧疲労試験用の比較試験片には、焼入れ焼戻し済み高速度工具鋼バルク材(鋼種3と鋼種4)および浸炭焼入れ焼戻し済みクロム鋼バルク材を、所定形状に機械加工した各試験片を用いた。なお、混同を生じない限り、このような試験片も試料C3、C4およびC0という。
《組織観察と硬さ測定》
組織観察用の各試料を用いて、走査型電子顕微鏡(SEM)によるミクロ組織観察と、ビッカース硬さの測定を行った。各試料の組織写真(SEM像)を図2にまとめて示した。試験荷重を0.3kgfとして測定した各試料のビッカース硬さを表3に示した。なお、試料1〜3と試料C0は、母材のビッカース硬さも併せて示した。試料C0の硬質層は浸炭層を意味する。
《面圧疲労試験》
ローラピッチング試験により、各試料の面圧疲労強度を評価した。ローラピッチング試験は、歯車の歯面に生じるすべりを模擬した転動疲労試験であり、周速の異なる一対のローラ試験片を用いて行われる。
この際、試料1(SPM60)は、硬さが近い鋼種4(HAP72)からなるバルク材を相手材とし、すべり率:−25%、油温:120℃として試験した。試料C3(SPRM8)、試料C4(HAP72)および試料C0(SCr420)は、相手材も同材質(同鋼種のバルク材)とし、すべり率:−40%、油温:120℃として試験した。
いずれの試験も、摺動面にピッチングが発生するか、または1×10回経過するまで行った。こうして得られたヘルツ(Hertz)の最大接触応力を面圧疲労強度とした。各試料の面圧疲労強度を表3に併せて示した。
《評価》
(1)肉盛部
図1Cから明らかなように、LMDにより、母材に一体化した肉盛部が造形されたことがわかる。なお、図1Cからわかるように、LMDに起因して、肉盛部には縞状のビード痕が認められた。
(2)金属組織と硬さ
図2から明らかなように、化学成分は同じでも、肉盛部(硬質層)はバルク材よりも金属組織が微細であり、粗大な炭化物が少なかった。このような金属組織の相違は、表3に示す硬さに反映されているといえる。すなわち、試料1〜3は、化学成分が同じ試料C1〜C3に対して、硬さが約10%程度大きかった。
表3に示した硬さ比からも明らかなように、試料1〜3は、母材に対する硬質層の硬さ比が3.5倍以上となった。これらの硬さ比は、浸炭焼入れされたクロム鋼(一般的な歯車材)よりも十分に大きかった。
(3)面圧疲労試験と硬さ
表3から明らかなように、試料1の面圧疲労強度は非常に大きくなった。この点は、類似する化学成分を有する試料C4(バルク材/HAP72)と比較しても明らかである。
表3に基づいて、各試料のビッカース硬さ(硬質層)と面圧疲労強度の関係を図3に示した。図3から明らかなように、両者はほぼ線形関係にあった。また、試料1は試料C0に対して面圧疲労強度が約2.3倍にもなった。
このように、歯車の一部(歯部、特に歯面)に高速度工具鋼からなる硬質層を形成するだけで、歯車の面圧疲労強度を大幅に高められることがわかった。
Figure 2021071166
Figure 2021071166
Figure 2021071166

Claims (10)

  1. 母材からなる歯部と該歯部の少なくとも歯面上に形成された硬質層とを有する歯車であって、
    該硬質層は、該母材と異なる材質である高速度工具鋼からなる歯車。
  2. 前記母材のビッカース硬さは400HV以下であり、
    前記硬質層のビッカース硬さは800HV以上である請求項1に記載の歯車。
  3. 前記母材のビッカース硬さに対する前記硬質層のビッカース硬さの比率である硬さ比は2.5以上である請求項1または2に記載の歯車。
  4. 前記硬質層は、厚さ0.1mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の歯車。
  5. 前記高速度工具鋼は、その全体を100質量%(以下、単に「%」という。)として、
    C:0.85〜4%、Cr:3〜10%、V:1〜8%、W当量(W+2Mo):6〜26%を少なくとも含む鋼材である請求項1〜4のいずれかに記載の歯車。
  6. 前記高速度工具鋼は、その全体を100%として、下記の化学成分からなる請求項1〜5のいずれかに記載の歯車。
    C:2〜4%、Cr:3〜5%、W当量(W+2Mo):18〜23%、
    V:5.5〜7.5%、Co:9〜11%、残部:Feおよび不純物
  7. 母材からなる歯部の少なくとも歯面上に、該母材と異なる材質である高速度工具鋼からなる肉盛部を形成する肉盛工程を備える歯車の製造方法。
  8. 前記肉盛工程は、レーザメタルデポジション法によりなされる請求項7に記載の歯車の製造方法。
  9. さらに、前記肉盛部を530〜600℃に加熱する焼戻工程を備える請求項7または8に記載の歯車の製造方法。
  10. さらに、前記焼戻工程後の肉盛部を機械加工する加工工程を備える請求項7〜9のいずれかに記載の歯車の製造方法。
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