JP2021070209A - 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体 - Google Patents

多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP2021070209A
JP2021070209A JP2019197545A JP2019197545A JP2021070209A JP 2021070209 A JP2021070209 A JP 2021070209A JP 2019197545 A JP2019197545 A JP 2019197545A JP 2019197545 A JP2019197545 A JP 2019197545A JP 2021070209 A JP2021070209 A JP 2021070209A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
multilayer film
resin
aliphatic
based resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019197545A
Other languages
English (en)
Inventor
一也 田中
Kazuya Tanaka
一也 田中
大輔 足立
Daisuke Adachi
大輔 足立
智彦 田中
Tomohiko Tanaka
智彦 田中
秋夫 北川
Akio Kitagawa
秋夫 北川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemical Group Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemical Holdings Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp, Mitsubishi Chemical Holdings Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2019197545A priority Critical patent/JP2021070209A/ja
Publication of JP2021070209A publication Critical patent/JP2021070209A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W90/00Enabling technologies or technologies with a potential or indirect contribution to greenhouse gas [GHG] emissions mitigation
    • Y02W90/10Bio-packaging, e.g. packing containers made from renewable resources or bio-plastics

Abstract

【課題】優れた耐ピンホール性、酸素バリア性を維持しながら、深絞り成形性に優れ、また、低温でのヒートシールが可能な多層フィルム及び深絞り成形用フィルムと、該深絞り成形用フィルムを成形してなる深絞り成形体を提供する。【解決手段】少なくともポリエステル系樹脂層(I)を有する多層フィルムであって、該ポリエステル系樹脂層(I)が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を50質量%以上含み、該ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度が80〜120℃で、結晶融解熱量が40〜90J/gである多層フィルム。この多層フィルムを用いてなる深絞り成形用多層フィルム。この深絞り成形用多層フィルムを用いた深絞り成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐ピンホール性、ガス(酸素)バリア性を維持しながら、深絞り成形性に優れ、また、低温でのヒートシールが可能な多層フィルム、この多層フィルムを用いた複合フィルム及び深絞り成形用フィルムと、該深絞り成形用フィルムを成形してなる深絞り成形体に関する。
各種機能を有する樹脂からなる多層フィルムを深絞り成形し、この中に内容物(食肉加工品など)を充填した後、蓋材となるフィルムとヒートシールした包装体が広く使用されている。
深絞り成形で得られた包装体は、流通や保管時に内容物を保護するため、ヒートシール面における良好な接着性と、内容物を取り出す際の適度な剥離性が要求される。また、近年、省エネルギー化の観点から、より低温でヒートシールできることが望まれている。
特許文献1には、シール層の材料としてエチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びアイオノマーから選択された樹脂と、ポリブテン及びポリプロピレンとの混合物が開示されている。また、特許文献2には、シール層がポリオレフィン樹脂とポリブテン−1との混合樹脂からなる多層フィルムが開示されている。
特開平02−108538号公報 特開平10−024517号公報
しかしながら、従来のポリオレフィン系樹脂からなるシール層では、ヒートシールのために130℃以上の温度が必要であり、例えば、120℃以下というような低温でのヒートシールを可能にするための、低融解温点と低融解熱量の両立が困難であった。
本発明の目的は、優れた耐ピンホール性、酸素バリア性を維持しながら、深絞り成形性に優れ、また、低温でのヒートシールが可能な多層フィルム、この多層フィルムを用いた複合フィルム及び深絞り成形用フィルムと、該深絞り成形用フィルムを成形してなる深絞り成形体を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のフィルムの構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下を要旨とする。
[1] 少なくともポリエステル系樹脂層(I)を有する多層フィルムであって、該ポリエステル系樹脂層(I)が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を50質量%以上含み、該ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度が80〜120℃で、結晶融解熱量が40〜90J/gである多層フィルム。
[2] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、ポリブチレンサクシネート及び/又はポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体である[1]に記載の多層フィルム。
[3] 前記ポリエステル系樹脂層(I)を少なくとも一方の表面層として有する[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4] 最外層、中間層、シール隣接層、及びシール層の少なくとも4層を含み、下記(i)〜(iv)を満たす[1]〜[3]のいずれかに記載の多層フィルム。
(i)該最外層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む層である。
(ii)該中間層は、ポリアミド系樹脂及び/又はポリビニルアルコール系樹脂を含む層である。
(iii)該シール隣接層は、ポリオレフィン系樹脂を含む層及び/又は熱可塑性エラストマーを含む層である。
(iv)該シール層は、前記ポリエステル系樹脂層(I)である。
[5] 前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂である[4]に記載の多層フィルム。
[6] 前記ポリビニルアルコール系樹脂が下記一般式(1)で表される構造単位を有する、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂である[5]に記載の多層フィルム。
Figure 2021070209
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の多層フィルムを用いてなる深絞り成形用多層フィルム。
[8] [7]に記載の深絞り成形用多層フィルムを用いた深絞り成形体。
[9] [1]〜[6]のいずれかに記載の多層フィルムを用いたラミネート用多層フィルム。
[10] [9]に記載のラミネート用多層フィルムの少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂フィルムをドライラミネート法または押出ラミネート法よってラミネートした複合フィルム。
[11] 前記熱可塑性樹脂フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかである[10]に記載の複合フィルム。
[12] [10]又は[11]に記載の複合フィルムを用いてなる深絞り成形用複合フィルム。
[13] [12]に記載の深絞り成形用複合フィルムを用いた深絞り成形体。
本発明の多層フィルム及びこの多層フィルムを用いた複合フィルムを用いることで、低温ヒートシール性に優れた深絞り成形用多層フィルム及び複合フィルムを提供することができ、これを用いて低温でのヒートシールが可能な深絞り成形体を提供することができる。
また、この多層フィルムに適宜機能性中間層を設けることで、深絞り成形性、低温ヒートシール性を損なうことなく、耐ピンホール性やガス(酸素)バリア性にも優れたものとすることができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム、及び深絞り成形体について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「主成分」とは、構成する組成物において最も多い質量比率を占める成分をさし、その割合は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。また、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
〔多層フィルム〕
本発明の多層フィルムは、ポリエステル系樹脂層(I)を有する多層フィルムであって、該ポリエステル系樹脂層(I)が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を50質量%以上含み、該ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度が80〜120℃で、結晶融解熱量が40〜90J/gであることを特徴とする。
本発明の多層フィルムにおいて、ポリエステル系樹脂層(I)は通常シール層として設けられる。本発明の多層フィルムは、シール層としてのポリエステル系樹脂層(I)の他に、最外層を設け、例えば最外層、シール層の順で構成される多層フィルムとしてもよいし、シール層に隣接したシール隣接層を配して、最外層、シール隣接層、シール層の順で構成される多層フィルムとしてもよい。また、各層の間に、ガスバリア層などの中間層や接着樹脂層などを配しても構わない。加えて、各々の層は複数層で構成されていても構わない。
本発明の多層フィルムを用いて包装体を作製した場合、包装体の外表面側に位置する層が最外層であり、通常、最外層の表面に商品ラベルや内容表示ラベル等の粘着ラベルが貼付される。また、逆に、包装体の内容物側に位置する層がシール層であり、シール層を最内層という場合がある。
また、深絞り成形体の場合、内容物側に位置するシール層は、内容物を収容した周囲が蓋材フィルムと密封される。よって、多層フィルムのシール層は、蓋材フィルムのシール層と共に熱融着シールする機能を有する。
[ポリエステル系樹脂層(I)]
ポリエステル系樹脂層(I)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を主成分として50質量%以上含む必要がある。
ポリエステル系樹脂層(I)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)をそれぞれ単独で含んでいてもよく、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の混合物を含んでいてもよい。
ポリエステル系樹脂層(I)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を主成分として単独で含むか、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、更に脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を含むことが好ましく、特に脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を単独で主成分として含むことがより好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、それぞれ繰返し単位を有する重合体であるが、それぞれの繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する化合物単位とも呼ぶ。例えば、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「芳香族ジカルボン酸単位」とも呼ぶ。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)中の「主構成単位」とは、通常、その構成単位が当該ポリエステル系樹脂中に80質量%以上含まれる構成単位のことであり、主構成単位以外の構成単位が全く含まれない場合もある。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
以下に本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)について説明するが、本発明では、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A)をブレンドして用いることができる。
(脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の構成単位)
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂である。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、全ジカルボン酸単位中のコハク酸単位の割合が5モル%以上100モル%以下であることが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、コハク酸単位の量が異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の混合物であってもよく、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含まない(脂肪族ジカルボン酸単位としてコハク酸単位のみを含む)脂肪族ポリエステル系樹脂と、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂とをブレンドして、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸単位量を上記好適範囲内に調整して使用することも可能である。
より具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、下記式(A−1)で表される脂肪族ジオール単位、及び下記式(A−2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル系樹脂である。
−O−R11−O− (A−1)
−OC−R12−CO− (A−2)
式(A−1)中、R11は、2価の脂肪族炭化水素基を表す。また、上記式(A−2)中、R12は、2価の脂肪族炭化水素基を表す。上記式(A−1)、(A−2)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であってもかまわないが、植物原料から誘導された化合物由来であることが望ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が共重合体である場合には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(A−1)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよく、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(A−2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。
前述の通り、式(A−2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位が、全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上100モル%以下含まれることが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸構成単位量を上記所定範囲内とすることで、成形性が向上するとともに耐熱性にも優れた多層フィルムを得ることが可能となる。同様の理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のコハク酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは64モル%以上、特に好ましくは68モル%以上である。
以下、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中の全ジカルボン酸単位に対するコハク酸単位の割合を「コハク酸単位量」と称す場合がある。
また、式(A−2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸の他に1種類以上の脂肪族ジカルボン酸単位が全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上50モル%以下含まれていることがより好ましい。コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を上記所定範囲内共重合することで、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の結晶化度を下げることが可能である。同様の理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のコハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上45モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
式(A−1)で表されるジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールがより好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
式(A−2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が特に好ましい。コハク酸以外の炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸がさらにより好ましい。尚、上記脂肪族ジカルボン酸成分は、2種類以上を用いることもでき、この場合、コハク酸とアジピン酸との組み合わせが好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位(脂肪族オキシカルボン酸単位)を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、成形性の観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であり、最も好ましくは0モル%(含まない)である。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度や成形品外観の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)がこのような3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、ジオール単位が1,4−ブタンジオール単位で脂肪族ジカルボン酸単位がコハク酸単位及び/又はアジピン酸単位を含むものが好ましい。本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、特にポリブチレンサクシネート及び/又はポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体であることが特に好ましい。
(脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造方法)
本発明に係る脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高める方法が採用される。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が目的とする組成を有するようにジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量で反応するが、ジオール成分は、エステル化反応中に留出することから、通常はジカルボン酸成分よりも1〜20モル%過剰に用いられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期及び方法に制限はなく、本発明に好適な脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期及び方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時に触媒を反応系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、或いは、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステル系樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られるポリマーに著しい着色を生じたり、耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、又は脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。更に、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。更に、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成で不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する全構成単位を100モル%とした場合の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、H−NMRや13C−NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
上記鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステル系樹脂についても従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステル系樹脂を製造することができる。ここで、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンによる換算値として求められる。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネート化合物を用いて、ポリエステル系樹脂を更に高分子量化する場合には、重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーを用いることが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、高分子量化するためのジイソシアネート化合物の使用量が多くなり耐熱性が低下する場合がある。このようなプレポリマーを用いてジイソシアネート化合物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステル系樹脂が製造される。
鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下、好ましくは0.05MPa以上0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下である。鎖延長を行う時間が短すぎる場合には、鎖延長剤の添加効果が発現しない傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
(脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の分子量)
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
(脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のMFR)
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以下である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
<脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)>
以下に本発明で用いる脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)について説明するが、本発明では、脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)をブレンドして用いることができる。
(脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の構成単位)
脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、上述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の繰り返し単位の少なくとも一部が、芳香族化合物単位に置き換えられたもの、好ましくは、上述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の脂肪族ジカルボン酸単位の一部が芳香族ジカルボン酸単位に置き換えられた、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位とを主構成単位として含むポリエステル系樹脂が例示される。
芳香族化合物単位としては、例えば、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族ジオール単位、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族ジカルボン酸単位、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族オキシカルボン酸単位等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、単環でもよいし、複数の環が互いに結合、又は縮合したものでもよい。芳香族炭化水素基の具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ジナフチレン基、ジフェニレン基等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物の誘導体でもよい。例えば、上記に例示した芳香族ジカルボン酸成分の誘導体が好ましく、中でも、炭素数1以上4以下である低級アルキルエステルや、酸無水物等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸化合物の誘導体の具体例としては、上記例示した芳香族ジカルボン酸成分のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の低級アルキルエステル;無水コハク酸等の上記例示した芳香族ジカルボン酸成分の環状酸無水物;等が挙げられる。中でも、ジメチルテレフタレートが好ましい。
芳香族ジオール単位を与える芳香族ジオール成分の具体例としては、例えば、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等が挙げられる。芳香族ジオール成分としては、芳香族ジオール化合物の誘導体でもよい。また、複数の脂肪族ジオール化合物及び/又は芳香族ジオール化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物であってもよい。
芳香族オキシカルボン酸単位を与える芳香族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸成分としては、芳香族オキシカルボン酸化合物の誘導体でもよい。また、複数の脂肪族オキシカルボン酸化合物及び/又は芳香族オキシカルボン酸化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物(オリゴマー)であってもよい。即ち、原料物質としてオリゴマーを用いてもよい。
これら芳香族化合物単位を与える芳香族化合物成分に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、及びラセミ体のいずれを用いてもよい。また、芳香族化合物成分としては、芳香族化合物単位を与えることができれば、上記の例に限定されるものではない。更に、芳香族化合物成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で併用してもよい。
脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、芳香族化合物単位を与える成分として芳香族ジカルボン酸成分を用いることが好ましく、この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、10モル%以上80モル%以下であることが好まししく、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用いることが好ましい。
脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の脂肪族成分としては、脂肪族ジオール成分として、1,4−ブタンジオール、脂肪族ジカルボン酸成分としてアジピン酸または、コハク酸とアジピン酸であることが好ましい。即ち、本発明で用いる脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、脂肪族成分としてポリブチレンサクシネート及び/又はポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体を含むことが好ましい。
(脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の製造方法)
脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、原料に少なくとも芳香族化合物成分を用いて、前述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を同様に製造することができる。
(脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の分子量)
本発明で用いる脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは30,000以上800,000以下、より好ましくは50,000以上600,000以下である。
(脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)のMFR)
脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
<その他の成分>
本発明に係るポリエステル系樹脂層(I)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を主成分として50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上含有するものであり、本発明の目的を損なわない範囲で脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)以外の他の成分を含有していてもよい。
本発明に係るポリエステル系樹脂層(I)が含有し得る他の成分としては後述の非相溶性樹脂やその他の添加剤が挙げられる。例えば、ポリエステル系樹脂層(I)を後述の多層フィルムのシール層(最内層)として用いる場合、シール層にイージーピール機能を付与する目的で、ポリエステル系樹脂層(I)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、これらと非相溶の樹脂との混合物で形成される場合がある。
本発明に係るポリエステル系樹脂層(I)は、これらのその他の成分の1種のみを含有するものであってもよく、2種以上を含有するものであってもよい。
<ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度・結晶融解熱量>
本発明の多層フィルムのポリエステル系樹脂層(I)は、結晶融解温度が80〜120℃で、結晶融解熱量が40〜90J/gであることが必要である。
ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度と結晶融解熱量がかかる範囲であることで、ポリエステル系樹脂層(I)を多層フィルムのシール層として用いたとき、低温でのヒートシール性に優れた多層フィルムを提供することができる。
このような観点から、ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度は、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。一方、ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度は、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。
また、ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解熱量は、85J/g以下であることが好ましく、80J/g以下であることがより好ましい。一方、ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解熱量は、45J/g以上であることが好ましく、50J/g以上であることがより好ましい。
ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度及び結晶融解熱量は後述の実施例の項に記載の方法に従って、通常ポリエステル系樹脂層(I)の構成材料について測定される。
[多層フィルムの総厚さ]
本発明の多層フィルムの総厚さは、本発明の多層フィルムの用途、例えば包装体として用いる場合の内容物の形状、重量、必要なガスバリア性能、包装形態等に応じて、適宜選定することができ特に限定はされないが、本発明の多層フィルムの総厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましい。
例えば、本発明の多層フィルムを深絞り成形用として用いる場合は、多層フィルムの総厚さは70μm以上500μm以下であることが好ましい。この場合における総厚さの下限は特に限定されないが、上限は450μm以下がより好ましく、400μm以下がより好ましい。上記範囲とすることで、フィルム強度と深絞り成形性を両立し易い。
また、本発明の多層フィルムをラミネート用として用いる場合は、多層フィルムの総厚さは10μm以上70μm以下であることが好ましい。この場合における総厚さの上限は特に限定されないが、下限は15μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。上記範囲とすることで、他の熱可塑性樹脂フィルムとラミネートする際の加工適性が良好となる傾向がある。
[多層フィルムの層構成]
本発明の多層フィルムは、ポリエステル系樹脂層(I)を少なくとも一方の表面層として有する多層フィルムであることが好ましい。ポリエステル系樹脂層(I)を少なくとも一方の表面層として有することで、多層フィルムに良好なヒートシール性を付与することができる。
本発明の多層フィルムにおいて、ポリエステル系樹脂層(I)以外の層構成には特に制限はないが、その好適な態様として、最外層、中間層、シール隣接層、及びシール層の少なくとも4層を含み、以下(i)〜(iv)を満たす多層フィルムが挙げられる。
(i)該最外層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む層である。
(ii)該中間層は、ポリアミド系樹脂を含む層及び/又はポリビニルアルコール系樹脂を含む層である。
(iii)該シール隣接層はポリオレフィン系樹脂を含む層及び/又は熱可塑性エラストマーを含む層である。
(iv)該シール層は、前記ポリエステル系樹脂層(I)である。
以下に最外層、中間層、シール隣接層及びシール層をこの順で含む本発明の多層フィルムの各層について説明する。
<最外層>
最外層は特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが、透明性、耐ピンホール性、機械的強度等の観点から好ましく、特にこれらの樹脂を主成分として含むことがより好ましい。最外層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。また、最外層は、1層に限らず2層以上であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂としては、特に制限はなく、単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体などが好適に使用できる。特に、プロピレンと炭素数2〜10(3を除く)のα−オレフィンとを共重合したランダムコポリマーが、透明性や耐ピンホール性の点で好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、ボイル殺菌に耐えられれば特に限定はないが、軟化点温度が100℃以上のものが好ましい。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体(PETI)、ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(PBTI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメタノール・エチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが用いられる。中でも、透明性、剛性の点からPET、PBT、ポリシクロヘキサンジメタノール・エチレンテレフタレート共重合体を用いることが好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、特に制限はないが、耐ピンホール性及び光沢の観点から、ポリアミド6やポリアミド6−66、ポリアミド12、ポリアミド11が好ましい。
最外層の厚さは、多層フィルムの総厚さに対して5%以上20%未満が好ましく、この割合の上限は15%未満がより好ましい。最外層の厚さ割合を5%以上とすることでフィルム強度が十分となり、20%未満とすることで、熱成形性が良好となる。
<中間層>
中間層は特に限定されないが、ポリアミド系樹脂及び/又はポリビニルアルコール系樹脂を含むことが好ましく、特にこれらを主成分として含むことがより好ましい。中間層がポリアミド系樹脂を含む層を有することで、多層フィルムの耐ピンホール性を高めることができる。また、中間層がポリビニルアルコール系樹脂を含む層を有することで、多層フィルムにガス(酸素)バリア性を付与することができる。中間層は、ポリアミド系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。また、中間層は、1層に限らず2層以上であってもよい。
中間層に用いられるポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6、ポリアミド6−66、ポリアミド6−610、ポリアミド6−611、ポリアミド6−12、ポリアミド6−612、ポリアミド6−6T、ポリアミド6−6I、ポリアミド6−66−610、ポリアミド6−66−12、ポリアミド6−66−612、ポリアミド66−6T、ポリアミド66−6I、ポリアミド6T−6I、ポリアミド66−6T−6I等が挙げられる。
中でも、耐ピンホール性の観点から、ポリアミド6やポリアミド6−66を用いることが好ましい。また、中間層は2層以上設けることもでき、その場合、各層が異なる種類のポリアミド系樹脂で形成されていてもよい。
ポリアミド系樹脂を中間層に用いる場合は、2層以上配する場合を含めて、多層フィルム中に配される中間層の合計厚が、フィルム総厚に対して、下限は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましい。また、上限は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。中間層の厚さ割合を30%以上とすることにより、フィルムに十分な耐ピンホール性を付与することができ、上限を70%以下とすることにより柔軟性を保持することができる。
本発明の多層フィルムの中間層には、ガスバリア性を付与する目的で、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層を有することが好ましい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂としては、側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることがより好ましい。
本発明で用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と未ケン化部分の酢酸ビニル構造単位と、側鎖に一級水酸基と有する構造単位を少なくとも有するものである。
本発明で用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂のケン化度(JIS K6726:1994に準拠して測定)は、60〜100モル%であることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、熱安定性の観点から90モル%以上であることが好ましく、ガスバリア性の観点から95モル%以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は柔軟性の観点から99.8モル%以下がより好ましく、更に好ましくは99.5モル%以下である。
本発明で用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度(JIS K6726:1994に準拠して測定)は、100〜3500であることが好ましく、より好ましくは150〜3000、更に好ましくは200〜2000、特に好ましくは300〜1000である。かかる平均重合度が小さすぎると強度が十分でない場合があり、大きすぎると溶融成形が困難となる傾向がある。
本発明で用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の融点は、140〜250℃であることが好ましく、より好ましくは150〜245℃、更に好ましくは160〜240℃、特に好ましくは170〜230℃である。融点が低すぎると溶融成形の際の形状安定性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコール系樹脂の融点が高すぎると溶融成形の際の加工温度が高くなり樹脂が劣化するおそれがある。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂の融点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量計(DSC)で昇降温速度10℃/minで測定した結晶融解温度の値である。
本発明で用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂中の変性率、すなわち共重合体中の側鎖に一級水酸基を有する構造単位の含有率は、通常0.1〜20モル%であり、好ましくは1〜12モル%、より好ましくは2〜10モル%である。かかる変性率が高すぎると、製造が困難になり、低すぎると溶融成形性が低下する。
本発明に用いられる側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂における側鎖の一級水酸基の数は、通常1〜5個であり、好ましくは1〜2個であり、特に好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
このような側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基構造単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。中でも、特に下記一般式(1)で表される構造単位を有する側鎖に1,2−ジオール構造を含有する変性ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「側鎖1,2−ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール系樹脂」と称することがある。)を用いることが好ましい。
なお、1,2−ジオール構造単位以外の部分は、通常のポリビニルアルコール系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
Figure 2021070209
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
上記一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R〜Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。当該アルキル基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が好ましく、当該アルキル基は必要に応じてハロゲノ基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で、単結合であることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。
かかる結合鎖としては、特に限定されず、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等が挙げられる。ここでRは各々独立して水素原子又は任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基(特に炭素数1〜4のアルキル基)が好ましい。また、mは自然数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
結合鎖は、これらの中でも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における特に好ましい構造は、R〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である。
なお、本発明における好ましい側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂である、側鎖1,2−ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール系樹脂の1,2−ジオール構造単位の含有率(変性率)は、ケン化度100モル%のポリビニルアルコール系樹脂のH−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2−ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、及びメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
上記した側鎖1,2−ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール系樹脂は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、特開2002−284818号公報、特開2004−285143号公報、特開2006−95825号公報に記載されている方法により製造することができる。
上記側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂を中間層に用いる場合は、2層以上配する場合を含めて、多層フィルム中に配される層の合計厚が、下限は1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、上限は30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を含む中間層の厚さを1μm以上とすることによりフィルムに十分なガスバリア性を付与することができ、20μm以下とすることにより、耐ピンホール性の低下や製造コストの増大を抑制することができる。
<シール隣接層>
本発明の多層フィルムには、最内層のシール層に隣接して、シール隣接層を配してもよい。シール隣接層は、ポリオレフィン系樹脂を含む層、及び/又は熱可塑性エラストマーを含む層であることが好ましく、これらを主成分として含むことがより好ましい。シール隣接層はポリオレフィン系樹脂及び熱可塑性エラストマー以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。また、シール隣接層は、1層に限らず2層以上であってもよい。
シール隣接層にポリオレフィン系樹脂を用いると、フィルム外観、フィルム強度を高めることができる。ここで用いるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、経済性、フィルム外観及びフィルム強度の観点から、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが主成分であることが耐ピンホール性の点でより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、特に制限はなく、単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体などが好適に使用できる。特に、プロピレンと炭素数2〜10(3を除く)のα−オレフィンとを共重合したランダムコポリマーが、透明性や耐ピンホール性の点で好ましい。
シール隣接層に熱可塑性エラストマーを用いると、フィルムに柔軟性を付与できる点で好ましい。熱可塑性エラストマーの種類や配合比率は、特に制限はないが、例えば、ダウケミカル社製バーシファイ、インフューズ、アフィニティ、旭化成ケミカルズ社製タフテック、三井化学社製タフマー、日本ポリプロ社製ウェルネックス等が好適に使用できる。
シール隣接層の厚さは、特に制限されないが、2層以上配する場合を含めて、多層フィルム中に配されるシール隣接層の合計厚さのフィルム総厚に対する割合が20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、この割合は70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。シール隣接層の厚さ割合を20%以上とすることにより、フィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、70%以下とすることにより、耐ピンホール性を保持できる。
<シール層(最内層)>
本発明の多層フィルムの最内層にシール層を有してもよく、シール層はポリエステル系樹脂層(I)であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂層(I)をシール層として有することにより、低温でのヒートシール性に優れた多層フィルムを提供することができる。
この場合、シール層の厚さは特に限定されないが、製膜性の観点から通常2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下とすることが望ましい。シール層の厚さをかかる範囲とすることで、安定した製膜性が得られる。
また、シール層をポリエステル系樹脂層(I)に含まれる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)と非相溶の樹脂(以下、単に「非相溶性樹脂」と称す場合がある。)を混合して構成することにより、シール層に、シール後に開封する際にシール層が凝集破壊し、手で容易に開封(イージーピール)できるイージーピール機能を付与することができる。
イージーピール機能を付与する場合、ポリエステル系樹脂層(I)を、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、非相溶性樹脂との混合物で構成し、ポリエステル系樹脂層(I)中の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)の含有割合を、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上で、95質量%以下、特に90質量%以下とすることが好ましい。
非相溶性樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体及びこれらのアイオノマー等のポリオレフィン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアミド等の樹脂が例示される。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<その他の層>
本発明の多層フィルムは、上述の最外層、中間層、シール隣接層、シール層の他にその他の層を有していても構わない。例えば、各層の層間剥離強度を高める目的で、必要に応じて接着樹脂層を設けてもよい。
接着樹脂層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
接着樹脂層を構成する接着性樹脂としては、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等のエチレン共重合体系樹脂が例示でき、その他、変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体若しくはエチレン系エラストマーに、アクリル酸若しくはメタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはマレイン酸、フマール酸若しくはイタコン酸等の二塩基性脂肪酸の無水物を化学的に結合させたものを例示できる。中でも、シール隣接層と中間層との間に設ける場合は、シール隣接層との接着性の点からポリエチレンをベースとした接着性樹脂を用いることが好ましい。
接着樹脂層の厚さは、作業性、経済性、取扱い性の観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。接着樹脂層の厚さの上限は特に制限はないが、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。接着樹脂層の厚さが3μm以上であれば、層間剥離強度を向上させることができる。接着樹脂層は厚過ぎると透明性の悪化を招くと共に、製造コストも嵩むため30μm以下とすることが望ましい。
<その他の添加剤>
本発明の多層フィルムを構成する各層には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性、意匠性等の諸性質を改良・調整する目的で、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤などの添加剤を、必要とする層に適宜添加できる。
<多層フィルムの層構成例>
本発明の多層フィルムの好ましい層構成としては、接着樹脂層の表記を省いて、最外層/(中間層)/(シール隣接層)/シール層の順に記すと、次の例が挙げられる。
尚、以下において、ポリアミド系樹脂を含む層をPA、ポリエチレン系樹脂を含む層をPE、ポリプロピレン系樹脂を含む層をPP、芳香族ポリエステル系樹脂を含む層をPET、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層をEVOH、シール層をSL、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む層をPEsと略記して記す。
(1) PA/PE/SL
(2) PA/EVOH/PE/SL
(3) PA/EVOH/PA/PP/SL
(4) PP/PA/SL
(5) PP/PA/EVOH/PE/SL
(6) PP/PA/SL
(7) EVOH/PA/SL
(8) EVOH/PA/PE/SL
(9) PE/PA/SL
(10)PE/EVOH/SL
(11)PE/EVOH/PA/SL
(12)PE/PA/PE/SL
(13)PET/EVOH/PE/SL
(14)PEs/EVOH/SL
(15)PEs/EVOH/PA/SL
<多層フィルムの製造方法>
本発明の多層フィルムは、公知の共押出法により作製することができる。共押出法としては、Tダイ法、インフレーション法が挙げられる。
[ラミネート用多層フィルム・複合フィルム]
本発明の多層フィルムは、他の熱可塑性樹脂フィルムとドライラミネート法または押出ラミネート法によりラミネートして複合フィルムとするためのラミネート用多層フィルムとして使用することもできる。
この場合、他の熱可塑性樹脂フィルムとしては、適度なコシを持たせるために、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の二軸延伸ポリエステルフィルムや、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく使用でき、熱成形性の観点からは、無延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。
本発明の多層フィルムは、これらの熱可塑性樹脂フィルムとラミネートすることにより複合フィルムとすることができる。
本発明の多層フィルムにラミネートする熱可塑性樹脂フィルムの厚さには特に制限はなく、得られる複合フィルムの用途に応じて適宜決定されるが、12μm以上、特に25μm以上で、400μm以下、特に300μm以下であることが、熱成形性の観点から好ましい。
[深絞り成形用フィルム、深絞り成形体]
本発明の多層フィルム及び本発明の多層フィルムを用いた本発明の複合フィルムは、深絞り成形性に優れ、特に、熱成形が要求される深絞り成形体に使用される深絞り成形用フィルムとして好適に使用することができる。
本発明の多層フィルム及び複合フィルムを熱成形することにより、深絞り包装体の底材用フィルムとして用いることができ、蓋材用フィルムと組み合わせることで深絞り包装体とすることができる。
本発明の多層フィルム又は複合フィルムを深絞り成形体(底材)として用いる場合、例えば、本発明の多層フィルム又は複合フィルムを深絞り成形型で所望の形状及び大きさに成形した後(フィルム供給工程及びフィルム成形工程)、その中に内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋材用フィルムでヒートシールして(蓋材用フィルム供給工程及びシール工程)、真空包装し(真空包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り包装体を作製することができる。
この際、本発明の多層フィルム及び複合フィルムは、低温でのヒートシール性に優れるため、例えば90〜120℃程度の低温でヒートシールすることができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
以下において、「部」、「%」は、特記しない限り、「質量部」、「質量%」を意味する。
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りである。
<ポリアミド系樹脂>
PA1:ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチック社製「ノバミッド2030MP」(ポリアミド6)
<接着樹脂>
接着樹脂1:三菱ケミカル社製「モディックM565」(ポリオレフィン系接着樹脂)
<ポリオレフィン系樹脂>
PE1:日本ポリエチレン社製「ノバテックSF240」(直鎖状低密度ポリエチレン、結晶融解温度:125℃、結晶融解熱量:100J/g)
PP1:日本ポリプロピレン社製「WINTEC WFX4TA」(メタロセン系ランダムポリプロピレン、結晶融解温度:124℃、結晶融解熱量:60J/g)
<脂肪族ポリエステル系樹脂>
PEs1:ピーティティエムシーシーバイオケム社製「BioPBS FD92」(ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、コハク酸単位量:74モル%、Mw:15,000、MFR:4.0g/10分、結晶融解温度:87℃、結晶融解熱量:56J/g)
PEs2:ピーティティエムシーシーバイオケム社製「BioPBS FZ91」(ポリブチレンサクシネート、コハク酸単位量:100モル%、Mw:170,000、MFR:5.0g/10分、結晶融解温度:114℃、結晶融解熱量:75J/g)
<ポリビニルアルコール系樹脂>
EVOH1:下記合成例により製造した側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂
EVOH2:三菱ケミカル社製「ソアノールET3803RB」(エチレン単位含有量:38モル%、結晶融解温度:174℃、結晶融解熱量:73J/g)
[合成例1]
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチルニトリルを0.3%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3、4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するEVOH1を作製した。
得られたEVOH1のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて、IS K6726に準じて分析を行ったところ、99.2モル%であった。また、EVOH1の平均重合度は、JIS K6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
また、前記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、H−NMR(300MHzプロトンNMR、溶媒:DMSO−d、内部標準物質;テトラメチルシラン、温度:50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。
[評価方法]
以下の実施例及び比較例における物性ないし特性の評価方法は以下の通りである。
(1) 結晶融解温度・結晶融解熱量
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で30℃から200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解温度と結晶融解熱量を求めた。
(2) ヒートシール性
縦方向に150mm、横方向に100mmに切り出した2枚の多層フィルム又は複合フィルムのサンプルのシール層同士を合わせた後、圧力1kgf/cm、温度120℃、シール時間1秒の条件で幅10mmの加熱バーによりサンプルの横方向と並行に、縦方向の中央部をヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを縦方向に150mm、横方向に15mmに切り出した後、引張試験機(インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201X)を用いて、雰囲気温度23℃、試験速度50mm/分で180度剥離試験を行った。測定された剥離強度の値から、下記基準でヒートシール性を評価した。
○:剥離強度が25N以上/15mm
×:剥離強度が25N未満/15mm
(3)深絞り成形性
多層フィルム又は複合フィルムを、シール層を内側にして、深絞り包装機で、成形温度90℃、成形加熱時間1.2秒、成形圧空時間1.2秒の条件で、縦200mm×横300mm×深さ25mmの容器形状に成形して、深絞り成形体を作製した。得られた深絞り成形体の外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:成形ムラがなく、外観が良好
×:成形ムラがあり、外観が悪い
[多層フィルムの実施例及び比較例]
<実施例I−1>
共押出により下記層構成の多層フィルムを得た。カッコ内はそれぞれの層の厚さを示す。以下の実施例及び比較例においても同様である。
PA1(15μm)/接着樹脂1(10μm)/PE1(85μm)/PEs1(10μm)
総厚さ:120μm
得られた多層フィルムのヒートシール性と深絞り成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例I−2>
共押出により下記層構成の多層フィルムを得た。
PA1(15μm)/接着樹脂1(10μm)/PE1(85μm)/PEs2(10μm)
総厚さ:120μm
得られた多層フィルムのヒートシール性と深絞り成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例I−3>
共押出により下記層構成の多層フィルムを得た。
PA1(15μm)/接着樹脂1(10μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂1(10μm)/PE1(85μm)/PEs1(10μm)
総厚さ:140μm
得られた多層フィルムのヒートシール性と深絞り成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例I−1>
実施例I−1において、PEs1のかわりにPP1を用いた以外は実施例I−1と同様の方法で多層フィルムを作製し、ヒートシール性及び深絞り成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例I−2>
実施例1において、PEs1のかわりにPE1を用いた以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを作製し、ヒートシール性及び深絞り成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[複合フィルムの実施例及び比較例]
<実施例II−1>
共押出により下記層構成のラミネート用多層フィルムを製膜した後、ドライラミネート法で、ラミネート用多層フィルムのEVOH2層側に無延伸ポリプロピレンフィルム(無延伸PP:50μm)を重ねてラミネートし、総厚さ100μmの複合フィルムを得た。
EVOH2(8μm)/PA1(12μm)/接着樹脂1(5μm)/PEs1(25μm)
総厚さ:100μm、
得られた複合フィルムのヒートシール性と深絞り成形性の評価を行った。結果を表2に示す。
<実施例II−2>
共押出により下記層構成のラミネート用多層フィルムを製膜した後、ドライラミネート法で、ラミネート用多層フィルムのEVOH2層側に無延伸ポリプロピレンフィルム(無延伸PP:50μm)を重ねてラミネートし、厚さ100μmの複合フィルムを得た。
EVOH2(8μm)/PA1(12μm)/接着樹脂1(5μm)/PEs2(25μm)
総厚さ:100μm
得られた複合フィルムのヒートシール性と深絞り成形性の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例II−1>
実施例II−1において、PEs1のかわりにPP1を用いた以外は実施例II−1と同様の方法で複合フィルムを作製し、ヒートシール性、深絞り成形性の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例II−2>
実施例II−1において、PEs1のかわりにPE1を用いた以外は実施例II−2と同様の方法で複合フィルムを製膜し、ヒートシール性、深絞り成形性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2021070209
Figure 2021070209
表1,2より、本発明の多層フィルム及び複合フィルムは低温でのヒートシール性、深絞り成形性に優れることが分かる。
なお、本発明の多層フィルムは、中間層としてポリアミド系樹脂層やポリビニルアルコール系樹脂層を設けたり、最外層としてポリプロピレン系樹脂層やポリエチレン系樹脂層を設けたりすることにより、必要とされる耐ピンホール性やガスバリア性をも十分に満たす多機能フィルムとすることができる。

Claims (13)

  1. 少なくともポリエステル系樹脂層(I)を有する多層フィルムであって、
    該ポリエステル系樹脂層(I)が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(B)を50質量%以上含み、
    該ポリエステル系樹脂層(I)の結晶融解温度が80〜120℃で、結晶融解熱量が40〜90J/gである多層フィルム。
  2. 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、ポリブチレンサクシネート及び/又はポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体である請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記ポリエステル系樹脂層(I)を少なくとも一方の表面層として有する請求項1又は2に記載の多層フィルム。
  4. 最外層、中間層、シール隣接層、及びシール層の少なくとも4層を含み、下記(i)〜(iv)を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
    (i)該最外層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む層である。
    (ii)該中間層は、ポリアミド系樹脂及び/又はポリビニルアルコール系樹脂を含む層である。
    (iii)該シール隣接層は、ポリオレフィン系樹脂を含む層及び/又は熱可塑性エラストマーを含む層である。
    (iv)該シール層は、前記ポリエステル系樹脂層(I)である。
  5. 前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項4に記載の多層フィルム。
  6. 前記ポリビニルアルコール系樹脂が下記一般式(1)で表される構造単位を有する、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項5に記載の多層フィルム。
    Figure 2021070209
    (式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層フィルムを用いてなる深絞り成形用多層フィルム。
  8. 請求項7に記載の深絞り成形用多層フィルムを用いた深絞り成形体。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層フィルムを用いたラミネート用多層フィルム。
  10. 請求項9に記載のラミネート用多層フィルムの少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂フィルムをドライラミネート法または押出ラミネート法よってラミネートした複合フィルム。
  11. 前記熱可塑性樹脂フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかである請求項10に記載の複合フィルム。
  12. 請求項10又は11に記載の複合フィルムを用いてなる深絞り成形用複合フィルム。
  13. 請求項12に記載の深絞り成形用複合フィルムを用いた深絞り成形体。
JP2019197545A 2019-10-30 2019-10-30 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体 Pending JP2021070209A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019197545A JP2021070209A (ja) 2019-10-30 2019-10-30 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019197545A JP2021070209A (ja) 2019-10-30 2019-10-30 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021070209A true JP2021070209A (ja) 2021-05-06

Family

ID=75712243

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019197545A Pending JP2021070209A (ja) 2019-10-30 2019-10-30 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021070209A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008155438A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Dainippon Printing Co Ltd バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム
JP2012250485A (ja) * 2011-06-06 2012-12-20 Mitsubishi Plastics Inc 深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体
JP2019181943A (ja) * 2018-03-30 2019-10-24 三菱ケミカル株式会社 生分解性積層体

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008155438A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Dainippon Printing Co Ltd バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム
JP2012250485A (ja) * 2011-06-06 2012-12-20 Mitsubishi Plastics Inc 深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体
JP2019181943A (ja) * 2018-03-30 2019-10-24 三菱ケミカル株式会社 生分解性積層体

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
堤主計、田所海彦、久保田信、早瀬伸樹、早川克彦、: "環境適応型分解性ポリエステル共重合体の酵素分解におけるpHの影響", 新居浜工業高等専門学校紀要(WEB)(MEMOIRS OF NIIHAMA NATIONAL COLLEGE OF TECHNOLOGY (WEB)), vol. 49巻, JPN7023001087, 2013, JP, pages 29 - 34, ISSN: 0005016518 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1963453B1 (en) Adhesive and coating compositions
AU750299B2 (en) Polyester resin compositions
JPH08283554A (ja) 共重合ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ、並びにそれからなる包装材料及び包装容器
JP3665192B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JP2021070209A (ja) 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム、複合フィルム、深絞り成形用複合フィルム及び深絞り成形体
JP2023017939A (ja) バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
JPH08269307A (ja) ポリエステル樹脂組成物およびシート
JP3645657B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JP7147195B2 (ja) 接着性樹脂組成物、積層体及び成形体
JP3736664B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JP3647566B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JPH0819303B2 (ja) 樹脂組成物
EP0390113B1 (en) Multilayered structure
JP6721028B2 (ja) バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
JP6818261B2 (ja) バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
JP6721017B2 (ja) バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
JP2555078B2 (ja) ガスバリア−性を有する耐熱性ポリエステル容器
JP7358727B2 (ja) ポリエチレン積層体およびこれを用いた包装材料
JP2716683B2 (ja) 耐熱性ポリエステル熱成形容器
WO2023190413A1 (ja) 変性ポリエステル系樹脂、接着性樹脂組成物及び積層体
JP2023176446A (ja) 多層フィルム、深絞り成形用多層フィルム及び深絞り成形体
JP2510602B2 (ja) ガスバリア−性を有する耐熱性多層ポリエステル容器
JPH01204738A (ja) ガスバリアー性を有する耐熱性容器
JPH08231835A (ja) ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる食品用フイルム
JP2024046112A (ja) ポリエステル系樹脂組成物及び積層体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220408

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230322

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230919