JP2021068621A - 固体電池、固体電池の正極活物質層製造用組成物、および固体電池の正極活物質層の製造方法 - Google Patents

固体電池、固体電池の正極活物質層製造用組成物、および固体電池の正極活物質層の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硫化物系固体電解質を正極活物質層中に用いなくても、正極が適度な充放電性能を発現する固体電池を提供すること。【解決手段】正極活物質層と、前記正極活物質層に隣接する固体電解質層と、を備える固体電池であって、前記正極活物質層は、正極活物質粒子と、前記正極活物質粒子間に介在する高分子系固体電解質と、を含有し、前記正極活物質のイオン伝導度は、前記高分子系固体電解質のイオン伝導度以上である、固体電池を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電池、固体電池の正極活物質層製造用組成物、および固体電池の正極活物質層の製造方法に関する。
電気自動車、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコンをはじめとする高電圧、高容量を必要とする電子機器に搭載される次世代の電池として、固体電池(全固体電池)が盛んに研究されている。固体電池では、正極と負極の間に、液状電解質(電解液)ではなく固体電解質が用いられる。現在知られている固体電解質材料は無機固体電解質と有機固体電解質(高分子系固体電解質)に大別され、無機固体電解質は硫化物系固体電解質と酸化物系固体電解質にさらに大別される。
固体電池は液系電池と異なり、正極活物質層内部の空隙に電解液が存在しない。そのため、液系電池に用いられる電極を固体電池に適用しようとしても、イオン伝導度が不足し、そのまま用いることができない。これを補うための工夫として、正極活物質層中にも固体電解質を共存させることが行われている。例えば、特許文献1や特許文献2では、正極活物質層中に硫化物系固体電解質のLiS−P系材料を加えている。一般的に硫化物系固体電解質はイオン伝導度が高いため、これを正極活物質層に加えることで、正極活物質層の隅々までリチウムイオンが行き渡り、厚さ35μmを超えても適切な正極容量を発現する正極活物質層を形成することが可能になる。しかしながら、硫化物系固体電解質は水分に対して反応性が高く、危険物である硫化水素ガスが生成されるため、安全性に課題がある。また、酸素雰囲気に晒されても材料が変質するため、生産工程を酸素非存在下で実施する必要があり、生産工程内に人が立ち入ることができないという問題点もある。
その点、酸化物系固体電解質や高分子系固体電解質は安定で安全性の高い化合物が多いが、イオン伝導度が10−4〜10−6S/cmオーダーと硫化物系固体電解質に比べて低く、材料が固いため成形性が悪い。そのため、固体電池として機能する正極活物質層を、酸化物系固体電解質や高分子系固体電解質を配合して設計することは、困難であった。
WO2010/038313号公報
特開2017−220339公報
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、硫化物系固体電解質を正極活物質層中に用いなくても、正極が適度な充放電性能を発現する固体電池を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記固体電池を製造するための電極材料およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、イオン伝導度について一定の関係を満たす正極活物質と高分子系固体電解質の組み合わせを正極活物質層中に用いることで、硫化物系固体電解質を正極活物質層中に用いなくても、正極が適度な充放電性能を発現し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は下記の通りである。
[1]正極活物質層と、前記正極活物質層に隣接する固体電解質層と、を備える固体電池であって、
前記正極活物質層は、正極活物質粒子と、前記正極活物質粒子間に介在する高分子系固体電解質と、を含有し、
前記正極活物質のイオン伝導度は、前記高分子系固体電解質のイオン伝導度以上である、固体電池。
[2]前記正極活物質層の厚さが30μm以下である、[1]に記載の固体電池。
[3]前記正極活物質層の厚さが5μm以上である、[1]または[2]に記載の固体電池。
[4]前記固体電解質層の厚さが3μm以上25μm以下である、[1]〜[3]の何れかの固体電池。
[5]前記高分子系固体電解質が、高分子材料、リチウム塩化合物および可塑剤を含有する、[1]〜[4]の何れかの固体電池。[1]〜[4]の何れかの固体電池。
[6]前記正極活物質層が導電助剤をさらに含有する、[1]〜[5]の何れかの固体電池。
[7]前記固体電解質層が、前記高分子系固体電解質と同一の、前記高分子材料、前記リチウム塩化合物および前記可塑剤を含有する、[1]〜[6]の何れかの固体電池。
[8]前記固体電解質層が、無機固体電解質をさらに含有する、[7]の固体電池。
[9]前記正極活物質粒子と、前記高分子系固体電解質とを含有する、[1]〜[8]の何れかの固体電池の正極活物質層製造用組成物。
[10][1]〜[8]の何れかの固体電池の正極活物質層を製造する方法であって、
前記高分子系固体電解質を溶剤中に溶解させてなる混合液を準備する工程と、
混合液中に前記正極活物質粒子を分散させて正極スラリーを得る工程と、
前記正極スラリーから正極活物質層を形成する工程と、
を含む、方法。
本発明によれば、イオン伝導度について一定の関係を有する正極活物質と固体電解質を正極活物質層中に用いることで、硫化物系固体電解質を正極活物質層中に用いなくても、正極が適度な充放電性能を発現することができる。
実施例1で得られたコインセルの充放電試験結果(放電曲線)を示したグラフ。
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
<<正極>>
正極は、正極活物質層と正極用集電箔とからなる。
<正極活物質層>
本発明の一実施態様によれば、正極活物質層は、少なくとも、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子間に介在する高分子系固体電解質(以下、「正極用固体電解質」ともいう。)とを含有しており、正極活物質のイオン伝導度は、正極用固体電解質のイオン伝導度以上とされる。理論に拘束されるものではないが、このような構成とすることにより、正極活物質層において、正極用固体電解質内ではなく正極活物質内で優先的にイオン(リチウムイオン)が動くようになり、正極の充放電性能が向上するものと考えられる。正極活物質のイオン伝導度を正極用固体電解質のイオン伝導度以上とすることは、イオン伝導度の低い電解質を用いながら正極活物質のイオン伝導性能や正極厚さに準じた適正な充放電性能を有する正極活物質層を実現する上でも好ましい。
イオン伝導度は、交流インピーダンス測定により求めることができる。正極活物質粒子は界面抵抗が大きい場合があるが、正極活物質粒子およびそれを含む層や積層体のイオン伝導度はこうした抵抗を含めたものである。正極活物質粒子の界面抵抗には、酸化被膜、結晶性の乱れ、電荷移動遷移によるもの等も包含される。
インピーダンス法によるイオン伝導度の測定のさらなる詳細はJ.Asano et al.,J.Electrochem.Soc.,164(2017)A3960に説明されている。
正極活物質のイオン伝導度(S/cm)と、正極用固体電解質のイオン伝導度(S/cm)との比率(正極活物質のイオン伝導度/正極用固体電解質のイオン伝導度)の範囲は、特に限定されないが、正極用固体電解質内部の抵抗を低減する観点から、好ましくは1〜100であり、より好ましくは1〜10であり、より一層好ましくは1である。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、十分な正極容量を得る観点からは、正極用固体電解質と同じかそれ以上であることが好ましい。正極活物質と正極用固体電解質との質量比は、好ましくは70:30〜99:1であり、より好ましくは95:5〜85:15である。
[正極活物質粒子]
正極活物質粒子は、公知の物を用いることができる。正極活物質の例としては、一般式LiMOで表される層状岩塩型正極活物質、一般式LiMで表されるスピネル型正極活物質、一般式LiMPOで表されるオリビン型正極活物質がある。より具体的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO等)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO等)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNiMnCo(x+y+zは1)等)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(LiNiCoAl(x+y+zは1)等)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム鉄リン複合酸化物(LiFePO等)等が挙げられる。
正極活物質のイオン伝導度は、好ましくは1×10−5S/cm以上であり、より好ましくは1×10−4S/cm以上であり、より一層好ましくは1×10−3S/cm以上である。正極活物質のイオン伝導度の上限は特に限定されないが、例えば、正極活物質のイオン伝導度は1×10−2S/cm以下であってよい。
正極活物質層において、正極活物質の含有量は、正極活物質層全量に対して、好ましくは70〜99質量%であり、より好ましくは85〜95質量%である。
正極活物質の平均粒子径(D50)は10μm以下が好ましい。正極活物質の平均粒子径を10μm以下とすることは、正極活物質層の平滑性を向上すると共に、正極活物質内へのリチウムイオンの収容を十分に可能とする上で有利である。なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法による累積平均粒子径(D50)を意味するものとする。平均粒子径は、原料の粉砕(解砕)する際の粉砕条件によって適宜調整することができる。なお、粉砕時間が短いと被粉砕物の粒径は大きく、粉砕時間が長いと粒径は小さくなる傾向がある。
[正極用固体電解質]
正極活物質層に用いられる固体電解質(正極用固体電解質)は、正極活物質粒子間に介在し、好ましくは正極活物質粒子同士を結合して、正極活物質粒子間におけるイオン伝導性を確保するために使用される。正極用固体電解質は、上述の通り、高分子系固体電解質であることが好ましい。ここで、高分子系固体電解質とは、高分子材料を含有する固体電解質を意味する。
正極用固体電解質のイオン伝導度は、正電活物質のイオン伝導度以下である限り特に限定されないが、好ましくは1×10−6〜1×10−3S/cmであり、より好ましくは5×10−5〜1×10−3S/cmである。
正極活物質層において、正極用固体電解質の含有量は、正極活物質層全量に対して、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
正極用固体電解質の好適な材料としては、高分子材料の他、リチウム塩化合物、可塑剤が挙げられるが、正極用固体電解質は、好ましくは高分子材料およびリチウム塩化合物を少なくとも含有することが好ましい。また、正極用固体電解質は、高分子材料、リチウム塩化合物、および可塑剤を含有することがより好ましい。
(高分子材料)
高分子材料は、正極活物質層中で電解質材料を固化し正極粒子同士を結合する特性を有することが好ましい。高分子材料の数平均分子量は、例えば、5千〜300万程度であり、より好ましくは3万〜200万程度である。また、高分子材料は、酸素、窒素およびフッ素から選択される1種または2種以上を含む高分子化合物であることが好ましく、酸素またはフッ素を含む高分子化合物であることがより一層好ましい。高分子材料の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)等のフッ素系高分子化合物、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール−ビニルアセタール共重合体等のポリビニルアルコール鎖を含む高分子化合物、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリオキシアルキレン鎖を含む高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖を含む高分子化合物等が挙げられる。高分子材料を構成する材料は単体であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。また、高分子系固体電解質の好適な例としては、ポリエチレンオキシド系、フッ素系、ポリビニルアルコール系またはポリオルガノシロキサン系の高分子化合物等が挙げられる。
正極活物質層において、高分子材料の含有量は、正極活物質層全量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは2〜10質量%である。
(リチウム塩化合物)
リチウム塩化合物は、正極用固体電解質中でアニオンとカチオンが乖離してリチウムイオンが生ずる限り、公知の材料を広く用いることができる。該リチウム塩化合物は、非水電解質系リチウムイオン電池に使用される材料であってもよく、具体的には、LiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF等を用いることができる。中でも、高分子材料および後述する可塑剤との相性の観点から、LiN(SOF)、LiN(SOCFが好ましい。
正極活物質層において、リチウム塩化合物の含有量は、正極活物質層全量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
(可塑剤)
可塑剤は、正極活物質層中で正極用固体電解質材料を柔軟な性状にすることで正極粒子間の結合を隙間なく結合すると同時に、正極用固体電解質材料中のイオン伝導性を向上させる上で好ましく用いられる。該可塑剤の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体;常温溶融塩等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、好ましくは常温溶融塩(イオン液体ともいう)である。
常温溶融塩の例としては、イミダゾリウム系常温溶融塩(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(EMI−FSI)等)、ピロリジニウム系溶融塩等の常温溶融塩(1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(MPPy−FSI)等)が挙げられる。常温溶融塩は蒸気圧がほぼゼロであり、揮発の恐れがなく、常温で液体であることから、安全に高容量の正極活物質層を製造する上で特に有利に利用することができる。
正極活物質層において、可塑剤の含有量は、正極活物質層全量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。
(正極用固体電解質中における各成分間の含有比率)
正極用固体電解質中における高分子材料と可塑剤との質量比は、80:20〜10:90が好ましい。
また、正極用固体電解質中におけるリチウム塩化合物の含有量(mоl)は、可塑剤と該リチウム塩化合物の重量の合計1kgに対して0.2〜2.0mоl(0.2〜2.0mol/kg)であることが好ましい。
(導電助剤)
正極活物質層は、正極用固体電解質に加えて、さらに導電助剤を含んでいることが好ましい。正極活物質層中に導電助剤を含有させることにより、正極活物質粒子同士間および正極集電体−正極活物質層間の電子の授受が容易になり、正極の高速充放電性能を高め、結果として正極容量をより高めることができる。
導電助剤の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、グラファイト、フラーレン等の炭素系導電性物質が挙げられる。
導電助剤を使用する場合、正極活物質と導電助剤との質量比は、90:10〜99.9:0.1が好ましく、93:7〜98:2がより好ましい。
正極活物質層の厚さは5〜30μmが好ましい。正極活物質層の厚さを5μm以上とすることは固体電池として必要な正極活物質の含有量とエネルギー密度を確保する上で有利である。また、正極活物質層の厚さを30μm以下とすることは充放電時のリチウムの移動速度を良好に保ち高速充放電を可能とする点から有利である。正極活物質層の厚さは、5〜25μmがより好ましい。これにより、高速充放電に加えて、正極活物質容量を十分に発現することが可能となる。
[正極用集電箔]
正極用集電箔は、公知のリチウムイオン電池や固体電池と同様、アルミニウム等の金属箔を用いることができる。正極用集電箔の厚さには特に制約はなく、例として5〜20μmが可能である。
<<固体電解質層>>
正極と負極の間には固体電解質層が存在する。固体電解質層は、固体電池の充放電時にリチウムの移動経路となると共に、正極と負極を電気的に絶縁するための絶縁層としても機能する。
固体電解質層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは3〜25μmである。固体電解質層の厚さを3μm以上とすることは、電気絶縁性が不足してショートを起こすのを回避する上で好ましい。また、固体電解質層の厚さを25μm以下とすることは、絶縁性を保ちつつ、インピーダンスを低減させてエネルギー容量を向上させる観点から好ましい。
固体電解質層に用いる固体電解質(以下、「固体電解質層用固体電解質」ともいう。)としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質等の無機固体電解質、高分子系固体電解質等、従来公知のものを用いることができるが、安全性の観点からは、硫化物系固体電解質は使用しないことが好ましい。したがって、好ましい態様によれば、固体電解質層は硫化物系固体電解質を含有しない。また、より好ましい態様によれば、固体電解質層は高分子系固体電解質を含有する。また、さらに好ましい態様によれば、固体電解質層は高分子系固体電解質に加えて無機固体電解質を含有する。
固体電解質層には、高分子系固体電解質が含まれることが好ましい。このような構成とすることは、正極および負極と固体電解質層との結着性およびリチウムイオン伝導性を向上させる上で好ましい。
固体電解質層用固体電解質に高分子系固体電解質が含まれる場合、高分子系固体電解質は、正極用固体電解質と同一組成の高分子系固体電解質であることが好ましい。したがって、当該高分子系固体電解質は、高分子材料とリチウム塩化合物と可塑剤とを含むことが好ましい。
固体電解質層用固体電解質に高分子系固体電解質が含まれる場合、ここに用いられる高分子材料は、正極用固体電解質と同一の高分子材料であることが好ましい。このような構成とすることによって、正極活物質層−固体電解質層の境界面におけるリチウムイオン伝導をスムーズに行い、正極の容量をより十分に引き出すことができる。
固体電解質層用固体電解質に高分子系固体電解質が含まれる場合、ここに用いられるリチウム塩化合物は、正極用固体電解質と同一のリチウム塩化合物であることが好ましい。このような構成とすることによって、リチウム塩化合物にリチウムイオンと共に含まれるカウンターアニオン(対アニオン)が正極活物質層と固体電解質層との間で混ざる懸念がなくなるため、固体電池の充放電性能を長期にわたって保持することができる。
固体電解質層用固体電解質に高分子系固体電解質が含まれる場合、ここに用いられる可塑剤は、正極用固体電解質と同一の可塑剤であることが好ましい。このような構成とすることによって、可塑剤に含まれるカチオンおよびアニオンが正極活物質層と固体電解質層との間で混ざる懸念がなくなるため、固体電池の充放電性能を長期にわたって保持することができる。
固体電解質層に対する、高分子材料、リチウム塩化合物および可塑剤の質量比はそれぞれ、正極活物質層に対する高分子材料、リチウム塩化合物および可塑剤の質量比と同様とすることが好ましい。
固体電解質層用固体電解質中の高分子系固体電解質に高分子材料とリチウム塩化合物と可塑剤とが含まれる場合、高分子材料と可塑剤との質量比は80:20〜10:90であることが好ましい。また、可塑剤およびリチウム塩化合物の重量の合計1kgに対する該リチウム塩化合物の含有量(mol)は、0.2〜2mol/kgであることが好ましい。
また、固体電解質層は高分子系固体電解質のみから構成されていてもよいが、高分子系固体電解質に加えて無機固体電解質がさらに含まれていてもよい。したがって、1つの態様によれば、固体電解質層は、高分子系固体電解質と、無機固体電解質とからなる。無機固体電解質のうち、酸化物系固体電解質としては、例えば、LISICON類、Thio−LISICON類、ペロブスカイト型構造を有するLa0.51Li0.34TiO2.94、NASICON型構造を有するLi1.3Al0.3Ti1.712、ガーネット型構造を有するLiLaZr12等が挙げられる。これら以外の無機固体電解質として、イオン伝導度が低いために従来は固体電解質としては実用に適さないとされていたLiN、LiPO、LiSiO、LiBO、LiSO、LiCO等の多結晶もしくはガラスを1種または2種以上用いることができる。
このような構成とすることは、固体電解質層が正極−負極間の電気絶縁性を保つ部材(いわゆるセパレータ)として機能するための十分な強度を付与する上で好ましい。また、固体電解質層に、無機固体電解質と高分子系固体電解質の双方が含まれる構成とすることは、固体電解質層用無機固体電解質の粒子同士の結着性を向上させる上でより好ましい。無機固体電解質と高分子系固体電解質との質量比は、90:10〜40:60が好ましく、80:20〜60:40がより好ましい。
<<負極>>
負極には、固体電池に使用しうる公知の材料と使用してよく、金属リチウム箔を用いることができる。負極にはまた、黒鉛等の負極活物質と必要に応じて導電助剤や増粘剤とをバインダーで結着させた負極活物質層を集電箔上に薄膜状に形成したものも用いることができる。
負極に金属リチウム箔を用いる場合、その厚さに制限はなく、例えば、充電前の厚さで5〜50μmを用いることができる
負極にリチウムを含有しない金属箔を用いる場合、充電時に金属箔上にリチウム金属が析出し、放電時にはこれが消失する。金属箔の厚さに制限はなく、例えば、5〜50μmを用いることができる。
負極に黒鉛等の負極活物質を含有する負極活物質層を用いる場合、負極は、負極活物質層と負極用集電箔とからなることが好ましい。
<負極活物質層>
負極活物質層の厚さは5〜25μmが好ましい。負極活物質層の厚さを5μm以上とすることは、負極活物質の含有量を確保して固体電池として十分な容量を得る上で好ましい。また、負極活物質層の厚さを25μm以下とすることは、充放電時のリチウムの移動速度の低下を抑制し、高速充放電を実施する上で好ましい。
負極活物質層は、少なくとも、負極活物質粒子と、該負極活物質粒子間に介在し、負極活物質粒子同士を結合する固体電解質材料(以下、「負極用固体電解質」ともいう。)とを含有することが好ましい。負極活物質層において、上述のような構成とすることは、負極活物質粒子同士間でのリチウムイオンの移動を容易にし、適度な充放電性能を発現する上で有利である。負極活物質層における負極活物質の含有量は、十分な負極容量を得る観点からは、負極用固体電解質と同じかそれ以上であることが好ましい。負極活物質と負極用固体電解質との質量比は、好ましくは70:30〜99:1であり、より好ましくは95:5〜85:15である。
<負極活物質粒子>
負極活物質粒子は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の公知の炭素材料を用いることができる。また、リチウムを収容可能な金属またはその酸化物も用いることができ、例としてケイ素、スズやそれらの酸化物が挙げられる。
<負極用固体電解質>
負極活物質層に用いられる負極用固体電解質は、正極用固体電解質と同様の固体電解質を使用してもよく、正極用固体電解質と同様、高分子系固体電解質を使うことが好ましい。負極活物質層における好ましい成分(高分子材料、リチウム塩化合物、可塑剤、導電助剤等)およびその組成は、正極用固体電解質の記載に準じて適宜決定することができる。
[負極用集電箔]
負極用集電箔は、公知のリチウムイオン電池や固体電池と同様、銅、ニッケル等の金属箔を用いることができる。
負極用集電箔の厚さには特に制約はなく、例として5〜15μmが可能である。
<<固体電池>>
以上に述べたような正極と固体電解質層と負極とからなる積層体が、コインセルケースの大きさに合うように形成されることで、コインセル状の固体電池が得られる。
また、正極集電箔の余剰部分に正極タブを、負極集電箔の余剰部分に負極タブが取り付けられ、正極(正極タブとの接続部分を含む)と固体電解質層と負極(負極タブとの接続部分を含む)とからなる積層体が2枚のアルミラミネートに挟まれ封止された構造とすることで、ラミネートセル状の固体電池が得られる。
<<固体電池の作製方法>>
本発明の固体電池の作製方法は、正極形成工程と、固体電解質層形成工程と、負極形成工程と、固体電池形成工程とを含む。
<正極形成工程>
一実施態様によれば、正極形成工程は、正極活物質と、高分子材料とリチウム塩化合物と可塑剤とを含む正極用固体電解質と、を含有する正極活物質層の製造用スラリー(以下、「正極スラリー」ともいう。)を準備する工程と、該スラリーからから正極活物質層を形成する工程と、を含む。
まず、正極スラリーを準備する工程では、高分子材料と、リチウム塩化合物と、可塑剤と、必要に応じて溶剤とを予め混合した原料組成物を調製することが望ましい。その後で、得られた原料組成物に正極活物質を追加し、プラネタリーミキサー等により混合することが望ましい。このような順序にすることにより、正極活物質をより安定的に正極スラリー中に分散させることができる。
正極スラリーの作製にあたり、溶剤を用いる場合は、先に可塑剤と溶剤とを混合し、可塑剤溶液を作製することが望ましい。次に、高分子材料とリチウム塩化合物とを、可塑剤または可塑剤溶液に加えて溶解させることが望ましい。
添加剤として導電助剤等を添加する場合、正極スラリーを準備する工程において、正極活物質の添加と同時に原料組成物に添加するか、正極活物質の粉体と導電助剤の粉体とを予め混合したものを原料組成物に添加することが望ましい。このような手順とすることにより、正極活物質と導電助剤との双方が均一に分散した正極スラリーを得ることができる。
溶剤を用いる場合、溶剤は従来公知の物を用いることができる。中でも、正極用固体電解質に用いる高分子材料を容易に溶解させる点で、N−メチルピロリドン(NMP)等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。溶剤の量は、後述する正極活物質層形成工程にて目的とする正極活物質層の厚さを容易に得られる正極スラリーの粘度となるように、適宜調整すればよい。
次に、正極活物質層を形成する工程では、正極用集電箔上に正極スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させることで正極活物質層を形成することができる。より具体的には、正極活物質層を形成する工程では、予め準備した正極用集電箔(ここではアルミニウム箔を用いるが、これに限られない)の上に、ダイコーター、グラビアコーター、ディップコーター、バーコーター等を用いて正極活物質層用スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させることにより実施してよい。
バーコーターを用いる場合、バーコーターのバーと正極用集電箔とのクリアランスは、正極スラリーの固形分濃度や、最終的に形成したい正極活物質層の厚さ等に応じて、適宜調整すればよい。溶剤を用いる場合、正極スラリー塗工後の乾燥温度や乾燥時間は、乾燥後に正極活物質層中に含有される溶剤の量が実質的にゼロとなるよう適宜調整すればよい。
このようにして、正極用集電箔上に正極活物質層が薄膜状に形成された正極が得られる。
<固体電解質層形成工程>
一実施態様によれば、固体電解質層は、無機固体電解質と、高分子材料とリチウム塩化合物と可塑剤を含む高分子系固体電解質と、を含有する正極活物質層の製造用スラリー(以下、「固体電解質層スラリー」ともいう。)を準備する工程と、該スラリーから固体電解質層を形成する工程と、を含む。
まず、固体電解質層スラリーを準備する工程では、高分子材料と、リチウム塩化合物と、可塑剤と、必要に応じて溶剤とを予め混合した原料組成物(高分子系固体電解質含有組成物)を調製することが望ましい。その後で、得られた原料組成物に無機固体電解質を追加し、プラネタリーミキサー等により混合することが望ましい。このような順序にすることにより、無機固体電解質をより安定的に固体電解質層スラリー中に分散させることができる。
固体電解質層スラリーの作製にあたり、溶剤を用いる場合は、先に可塑剤と溶剤とを混合し、可塑剤溶液を作製することが望ましい。次に、高分子材料とリチウム塩化合物とを、可塑剤または可塑剤溶液に加えて溶解させることが望ましい。
溶剤を用いる場合、溶剤は従来公知の物を用いることができる。中でも、高分子材料を容易に溶解させる点で、N−メチルピロリドン(NMP)等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。溶剤の量は、後述する固体電解質層形成工程にて目的とする固体電解質層の厚さを容易に得られる固体電解質層スラリーの粘度なるように、適宜調整すればよい。
次に、固体電解質層を形成する工程では、固体電解質用スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させて溶剤を揮発させることで固体電解質層を形成することができる。具体的には、正極形成工程で形成した正極の上に、正極活物質層側から、バーコーター等を用いて固体電解質層用スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させてもよい。
バーコーターを用いる場合、バーコーターのバーと正極とのクリアランスは、固体電解質層用スラリーの固形分濃度や、最終的に形成したい固体電解質層の厚さ等に応じて、適宜調整すればよい。溶剤を乾燥させる際の乾燥温度や乾燥時間は、乾燥後に固体電解質中に含有される溶剤の量が実質的にゼロとなるよう適宜調整すればよい。
このようにして、正極集電箔上に正極活物質層と固体電解質層がこの順序で薄膜状に形成された正極−固体電解質積層体が得られる。
なお、固体電解質層を直接正極上に形成するのではなく、PET等の離型フィルム上に形成してもよい。その場合、正極集電箔上に形成された正極活物質層と、離型フィルム上に形成された固体電解質層とが重なり合うように両者を重ね合わせ、離型フィルムの上からプレスをかけて正極活物質層と固体電解質層を接合させ、離型フィルムを固体電解質層からことで、正極集電箔上に正極活物質層と固体電解質層がこの順序で薄膜状に形成された正極−固体電解質積層体が得られる。
<負極形成工程>
一実施態様によれば、負極形成工程は、負極活物質と、高分子材料とリチウム塩化合物と可塑剤とを含む負極用固体電解質と、を含有する負極活物質層の製造用スラリー(以下、「負極スラリー」ともいう。)を準備する工程と、該スラリーからから負極活物質層を形成する工程と、を含む。
まず、負極スラリーを準備する工程では、高分子材料と、リチウム塩化合物と、可塑剤と、必要に応じて溶剤とを予め混合した原料組成物を調製することが望ましい。その後で、得られた原料組成物に負極活物質を追加し、プラネタリーミキサー等により混合することが望ましい。このような順序にすることにより、負極活物質をより安定的に負極スラリー中に分散させることができる。
負極スラリーの作製にあたり、溶剤を用いる場合は、先に可塑剤と溶剤とを混合し、可塑剤溶液を作製することが望ましい。次に、高分子材料とリチウム塩化合物とを、可塑剤または可塑剤溶液に加えて溶解させることが望ましい。
添加剤として導電助剤等を添加する場合、負極スラリーを準備する工程において、負極活物質の添加と同時に原料組成物に導電助剤等を添加するか、負極活物質の粉体と導電助剤の粉体とを予め混合したものを原料組成物に添加することが望ましい。このような手順とすることにより、負極活物質と導電助剤との双方が均一に分散した負極スラリーを得ることができる。
溶剤を用いる場合、溶剤は従来公知の物を用いることができる。中でも、負極用固体電解質に用いる高分子材料を容易に溶解させる点で、N−メチルピロリドン(NMP)等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。溶剤の量は、後述する負極活物質層形成工程にて目的とする負極活物質層の厚さを容易に得られる負極スラリーの粘度なるように、適宜調整すればよい。
次に、負極活物質層を形成する工程では、負極スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させることで負極活物質層を形成することができる。より具体的には、負極活物質層を形成する工程では、予め準備した負極用集電箔の上に、ダイコーター、グラビアコーター、ディップコーター、バーコーター等を用いて負極活物質層用スラリーを塗工し、常温または加熱下で乾燥させることにより実施してよい。
バーコーターを用いる場合、バーコーターのバーと負極用集電箔とのクリアランスは、負極スラリーの固形分濃度や、最終的に形成したい負極活物質層の厚さ等に応じて、適宜調整すればよい。溶剤を用いる場合、負極スラリー塗工後の乾燥温度や乾燥時間は、乾燥後に負極活物質層中に含有される溶剤の量が実質的にゼロとなるよう適宜調整すればよい。
このようにして、負極用集電箔上に負極活物質層が薄膜状に形成された負極が得られる。
さらに、正極上に形成された固体電解質層と、負極用集電箔上に形成された負極活物質層とが重なり合うように両者を重ね合わせ、負極用集電箔の上からプレスをかけて負極活物質層と固体電解質層を接合させることで、正極集電箔と負極活物質との間に正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とがこの順で薄膜状に形成された正極−固体電解質層−負極積層体が得られる。
なお、固体電解質層は、正極活物質層上ではなく先に負極活物質上に形成してもよい。すなわち、負極集電箔上に形成された負極活物質層の上に、固体電解質層を塗工により形成し、その上に正極活物質層と正極集電箔からなる正極を形成してもよい。また、負極集電箔上に形成された負極活物質層の上に、PET等の離型フィルム上に形成された固体電解質層を、負極活物資済層と固体電解質層が向き合うようにして裁置し、離型フィルムの上からプレスした後に離型フィルムをはがすことで負極−固体電解質積層体を形成し、その上に正極活物質層と正極集電箔からなる正極を形成してもよい。このようにして、正極集電箔と負極活物質との間に正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とがこの順で薄膜状に形成された正極−固体電解質層−負極積層体が得られる。
なお、正極集電体と負極集電体が触れ合わないよう、正極集電体または負極集電体の面積を固体電解質層の面積よりも小さくすることが好ましい。あるいは、正極集電体と負極集電体の間に、各層の端面が現れている周囲部分に絶縁薄膜を配置してショートを防止することが好ましい。正極集電体または負極集電体の端部は、固体電解質層の端部よりも、1mm以上内側になるよう成形されていることが好ましく、固体電解質層の端部より1〜2mm内側になるよう成形されていることがより好ましい。なお、上記固体電解質層の端部と、正極集電体または負極集電体の端部との間隔は、固体電解質層の端部と、当該端部と最も近接する正極集電体または負極集電体の端部との間隔を意味する。
以上の記載から、固体電池の作製においては、正極−固体電解質層−負極の積層構造を形成しうる限り、各層の形成方法およびその順序は限定されないことは当業者にとって明らかであろう。
したがって、一つの実施態様によれば、固体電池の作製は、以下の工程を含んでなる:
工程1:正極集電箔上に正極活物質層を塗工し、正極を形成する工程、
工程2:正極上に固体電解質層を塗工し、正極−固体電解質層積層体を形成する工程、
工程3:負極集電箔上に負極活物質層を塗工し、負極を形成する工程
工程4:正極−固体電解質層積層体の上に負極を積層する工程。
別の実施態様によれば、固体電池の作製は、以下の工程を含んでなる:
工程1:正極集電箔上に正極活物質層を塗工し、正極を形成する工程、
工程2:負極集電箔上に負極活物質層を塗工し、負極を形成する工程、
工程3:負極の上に固体電解質層を塗工し、負極−固体電解質層積層体を形成する工程、
工程4:負極−固体電解質層積層体の上に正極を積層する工程。
さらに別の実施態様によれば、固体電池の作製は、以下の工程を含んでなる:
工程1:負極集電箔上に負極活物質層を塗工し、負極を形成する工程、
工程2:負極の上に固体電解質層を塗工し、負極−固体電解質層積層体を形成
工程3:負極−固体電解質層積層体の上に正極活物質層を塗工する工程、
工程4:正極活物質層上に正極集電箔を裁置する工程。
なお、上記実施態様のいずれにおいても、工程4の後にプレス処理を実施することが好ましい。また、負極がLi箔または金属箔である場合、上記実施態様のいずれにおいても、負極集電箔上に負極活物質層を塗工し負極を形成する工程を実施しなくともよい。
上述の方法により得られた正極−固体電解質層−負極積層体を、コインセル用ケースの中に裁置し、上からコインセル用の蓋をかぶせて、コインセル型の固体電池を作製することができる。
また、得られた正極−固体電解質層−負極積層体の、正極集電箔の余剰部分に正極タブを、負極集電箔の余剰部分に負極タブを、溶接等の方法により接続し、正極タブと負極タブは完全に覆われないように正極−固体電解質層−負極積層体を2枚のアルミラミネートで覆い、アルミラミネートの外周部分を熱溶着等の方法により封止することで、ラミネート型の固体電池を作製することができる。
なお、正極タブと負極タブは、正極−固体電解質層−負極積層体形成後に正極集電箔および負極集電箔に接続するのではなく、正極活物質層形成前、負極活物質層形成前の時点で正極集電箔および負極集電箔に接続することもできる。
<<正極活物質層製造用組成物/正極活物質層の製造方法>>
本発明によれば、上述するような正極スラリーを固化させることにより、高容量の正極活物質層を安全に製造することができる。
したがって、一つの態様によれば、正極活物質粒子と、高分子系固体電解質と、を含有する、固体電池の正極活物質層製造用組成物が提供される。なお、正極活物質層製造用組成物は、スラリーのような液状や半固体状のみならず、乾燥等により固化した組成物も包含するものとする。
また、本発明の別の態様によれば、固体電池の正極活物質層の製造方法であって、
高分子系固体電解質を溶剤中に溶解させてなる混合液を準備する工程と、
混合液中に前記正極活物質粒子を分散させて正極スラリーを得る工程と、
前記正極スラリーから正極活物質層を形成する工程と、
を含む製造方法が提供される。
正極活物質層製造用組成物および正極活物質層の製造方法は、固体電池およびそれに用いる正極活物質層の記載に準じて当業者は実施することができる。
以上において、一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの例により本発明が限定されるものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書中の単位および測定方法はJIS(日本工業規格)の基準に従うものとする。
[実施例1]
(材料)
以下の材料を用いた。
正極活物質 LiMn(豊島製作所製、グレード3N)
高分子材料 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)イオン液体付加重合品(パイオトレック製、商品名Pioxcel CBC5010FP)
リチウム塩化合物 リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SOF)(LiFSI)、東京化成製)
可塑剤 N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(MPPy−FSI、キシダ化学製)
導電助剤 カーボンブラック(イメリス製、商品名Super−P)
溶剤 N−メチルピロリドン(NMP、キシダ化学製)
LiPO(豊島製作所製、グレード3N)
(固体電解質溶液の作製)
リチウム塩化合物(LiFSI)と可塑剤(MPPy−FSI)とを、MPPy−FSI 1kgに対してLiFSI量が0.8molとなるように混合した。この混合物と、高分子材料の5質量%NMP溶液とを、高分子材料とMPPy−FSIとの質量比が20:80となるように混合し、固体電解質溶液を得た。ここで得られた固体電解質溶液は、後述の正極スラリー作製用にも固体電解質層用スラリー作製用にも用いられた。
(正極スラリーの作製)
正極活物質(LiMn)と導電助剤(カーボンブラック)とを、両者の質量比が95:5となるように、粉体のまま混合し、粉体混合物を得た。
正極活物質と導電助剤との合計と、高分子材料とLiFSIとMPPy−FSIと(以下、高分子材料とリチウム塩化合物(LiFSI)と可塑剤(MPPy−FSI)とを合わせて「正極用固体電解質」ともいう。)の合計とが、質量比で80:20となるように、上記粉体混合物と固体電解質溶液とを混合した。さらに、正極活物質と導電助剤と正極用固体電解質との合計量と、NMPと、の質量比が31:69になるようにNMPを追加し、ボールミルにて1時間混合し、正極スラリーを得た。
こうして得られた正極スラリー10g中の組成物は、NMP6.91g、正極活物質2.37g、導電助剤0.12g、高分子材料0.11g、可塑剤0.42g、リチウム塩化合物0.06gとなった。
(固体電解質層用スラリーの作製)
無機固体電解質(LiPO)と上記固体電解質溶液とを、LiPOと、高分子材料とリチウム塩化合物(LiFSI)と可塑剤(MPPy−FSI)との合計と、の質量比が80:20となるように混合した。さらに、LiPOと高分子材料とリチウム塩化合物(LiFSI)と可塑剤(MPPy−FSI)との合計と、NMPと、の質量比が30:70になるようにNMPを追加し、ボールミルにて1時間混合し、固体電解質層用スラリーを得た。
こうして得られた固体電解質層用スラリー10gの組成は、NMP7.01g、無機固体電解質2.40g、高分子材料0.11g、可塑剤0.43g、リチウム塩化合物0.06gとなった。
(固体電池の作製)
厚さ10μmの銅箔(古川電気工業製)の上に、バーコーターにて正極スラリーを塗工し、10℃で20分間乾燥させることで、厚さ21μmの正極活物質層を銅箔上に作製した。その上から、バーコーターにて固体電解質層用スラリーを塗工し、100℃で8時間乾燥させることで、厚さ9μmの固体電解質層を正極活物質層上に作製し、固体電解質層/正極活物質層/銅箔の3層からなる多層膜を得た。この多層膜を直径16mmに打ち抜き、固体電解質層側が見えるようにコインセル容器にセットし、直径9mmに打ち抜いたリチウム箔を固体電解質層の上から押し付け、コインセルの蓋をしてかしめることにより、コインセルの固体電池を作製した。
(充放電評価)
得られたコインセルを、3.0Vまで定電流充電を実施した後、1.8Vまで定電流放電を実施した。充電および放電は25℃下、電流値6.6μA(0.03C相当)にて実施した。得られた放電曲線は図1の通りであり、LiMnの理論容量である110mAh/gが得られた。
(イオン伝導度評価)
上記コインセルとは別に、コインセル中の正極活物質層と同様の厚さとなるように、固体電解質層用スラリーを用いて固体電解質薄膜を作製し、交流インピーダンスによりイオン伝導度を測定したところ、高分子系固体電解質に由来する円弧と無機固体電解質に由来する円弧の2つが確認された。高分子系固体電解質に由来する円弧からイオン伝導度を算出したところ、2×10−6S/cmであった。正極用固体電解質は当該固体電解質層中の高分子系固体電解質層と同一の組成であることから、正極用固体電解質のイオン伝導度も2×10−6S/cmであると見積もった。
また、正極用固体電解質と同様の厚さとなるように、正極活物質材料のみで薄膜状サンプルを作製し、直流抵抗測定にて正極活物質のイオン伝導度を別途測定したところ、約1×10−5S/cmであった。従って、正極用固体電解質のイオン伝導度は正極活物質のイオン伝導度以下であった。
上記実験結果から、上記のようなイオン伝導度を有する正極活物質層と固体電解質層の組み合わせを電極材料として用いることで、硫化物系固体電解質を正極活物質層中に用いなくても、適度な充放電性能を発現する固体電池を提供し得ることがわかる。

Claims (10)

  1. 正極活物質層と、前記正極活物質層に隣接する固体電解質層と、を備える固体電池であって、
    前記正極活物質層は、正極活物質粒子と、前記正極活物質粒子間に介在する高分子系固体電解質と、を含有し、
    前記正極活物質のイオン伝導度は、前記高分子系固体電解質のイオン伝導度以上である、固体電池。
  2. 前記正極活物質層の厚さが30μm以下である、請求項1に記載の固体電池。
  3. 前記正極活物質層の厚さが5μm以上である、請求項1または2に記載の固体電池。
  4. 前記固体電解質層の厚さが3μm以上25μm以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の固体電池。
  5. 前記高分子系固体電解質が、高分子材料、リチウム塩化合物および可塑剤を含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の固体電池。
  6. 前記正極活物質層が導電助剤をさらに含有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の固体電池。
  7. 前記固体電解質層が、前記正極活物質層における高分子系固体電解質と同一の、高分子材料、リチウム塩化合物および可塑剤を含有する、請求項5に記載の固体電池。
  8. 前記固体電解質層が、無機固体電解質をさらに含有する、請求項7に記載の固体電池。
  9. 前記正極活物質粒子と、前記高分子系固体電解質とを含有する、請求項1〜8の何れか一項に記載の固体電池の正極活物質層製造用組成物。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の固体電池の正極活物質層を製造する方法であって、
    前記高分子系固体電解質を溶剤中に溶解させてなる混合液を準備する工程と、
    前記混合液中に前記正極活物質粒子を分散させて正極スラリーを得る工程と、
    前記正極スラリーから正極活物質層を形成する工程と、
    を含む、方法。
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