以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る薬剤ケースについて説明する。
図1は、本実施形態に係る薬剤ケース1の斜視図である。薬剤ケース1の外観は、ケース本体11、蓋12、横蓋13、セパレータ14等で構成されている。また、薬剤ケース1は、図1には示されていない回転部材20(図2参照)を備えている。後に詳細に説明するが、回転部材20は、ケース本体11の内部に配置されている。
ケース本体11は、多数(例えば、数百個)の薬剤を収容する。ケース本体11の上部には、薬剤の入口となる上部開口(不図示)が設けられている。ケース本体11の上部には、蓋12がヒンジ等を介して取り付けられており、蓋12はケース本体11の上部開口を開閉する。ケース本体11は、内部に収容される薬剤を確認できるよう、透明又は半透明の樹脂等で形成されている。なお、ケース本体11の半透明の度合いについては特に限定しないが、ケース本体11の半透明の度合いは、少なくとも、ケース本体11の内面に沿った位置に存在する薬剤の様子が外部から視認できる程度であることが好適である。
ケース本体11の上側部分は、ケース本体11の中心軸に垂直な断面がほぼ正方形の形状に形成されている。一方、ケース本体11の下側部分は、ケース本体11の中心軸に垂直な断面が円形状に形成されている。換言すれば、ケース本体11の下側部分は円筒形状を有する。回転部材20は、ケース本体11の下側部分の内部に配置される。
また、ケース本体11の側部には、側部開口(不図示)が設けられているとともに、この側部開口を覆うように横蓋13が取り付けられている。横蓋13には、水平方向に細長く延在する仕切り板挿入口13aが、上下に並ぶように複数設けられている。また、横蓋13の仕切り板挿入口13aより上側に、水平方向に細長く延在する固定部材挿入口13bが設けられている。固定部材挿入口13bの水平方向の長さは、仕切り板挿入口13aよりも短く形成されている。
図1に示すように、セパレータ14は固定板14aと仕切り板14bとを有する。図1には、複数の仕切り板挿入口13aの1つに仕切り板14bの一部が挿入された状態で、セパレータ14が固定された様子が示されている。セパレータ14は、後述するマグネット16(図6参照)によってケース本体11の側部に、横蓋13に沿うように固定される。
一方、固定部材挿入口13bには、固定板14aの一部が挿入可能である(図8,図9参照)。仕切り板挿入口13a、固定部材挿入口13b、及びセパレータ14については、後に詳細に説明する。
ケース本体11の側部開口とは異なる側部には、鉛直方向に整列する複数の目盛り15が設けられている。目盛り15の数は、上述した仕切り板挿入口13aの数と同じである。また、複数の目盛り15それぞれの高さは、複数の仕切り板挿入口13aそれぞれの高さと同じである。図1には、ケース本体11の一方の側部に目盛り15が設けられた様子が示されているが、円筒形状のケース本体11において、中心軸を挟む反対側の側部にも同様の目盛り15(図示は省略)が設けられていてもよい。
図示はしないが、目盛り15の横には、複数の目盛り15の下から上へ向かって目盛り15の数をカウントする番号が示されている。同様に、仕切り板挿入口13aの横にも、複数の複数の仕切り板挿入口13aの下から上へ向かって仕切り板挿入口13aの数をカウントする番号が示されている。複数の目盛り15に振られた番号は、同じ高さの仕切り板挿入口13aに振られた番号と同じである。なお、目盛り15及び仕切り板挿入口13aに設けられた番号は、上から下に向かって振られていてもよい。
次に、図2から図6を参照して、ケース本体11の内部構造、及び、ケース本体11の内部に配置される回転部材20について説明する。
図2は、ケース本体11及び回転部材20の鉛直方向における断面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、回転部材20を構成する部材の一部(後に説明する基部30及び歯車類)は図示されていない。図3は、回転部材20の斜視図である。図4は、回転部材20の内部構造を示す斜視図であり、具体的には、図3に示される回転部材20から、傾斜板24及び上部部材25が取り外された状態を示している。図5は、回転部材20の底面図である。図5においては、説明の便宜上、図5の下側に配置される第1の側壁部材21、第2の側壁部材22、第3の側壁部材23及び傾斜板24が図示されていない。図6は、図2におけるA−A断面を上から見た図である。
ケース本体11の底部11aには、薬剤が排出される排出口11b及び駆動軸挿入口11cが設けられている。上述したように、ケース本体11の下側部分は円筒形状を有するため、底部11aは平面視において円形状を有する(図6参照)。
排出口11bは、円形状の底部11aの外周側の一部分に設けられた開口である(図2参照)。排出口11bを介して、回転部材20に収容された薬剤が1つずつ排出される。
駆動軸挿入口11cは、ケース本体11内に回転部材20が配置された状態で、回転部材20を回転させる駆動軸(不図示)が挿入される開口である。回転部材20の回転軸と、この駆動軸の回転中心とは一致している。なお、駆動軸は、薬剤ケース1が取り付けられる薬剤供給装置が備える部材であり、この薬剤供給装置が備えるモータによって回転駆動される。
回転部材20は、底部11aの上に配置され、駆動軸挿入口11cを介して連結される駆動軸(不図示)により、自身の回転軸回りに回転する部材である。
回転部材20は、基部30と、基部30の周囲に配置された第1の側壁部材21、第2の側壁部材22、第3の側壁部材23を有している。また、回転部材20は、基部30の上方に配置された傾斜板24、上部部材25、第3の側壁部材23と傾斜板24とを連結する連結棒26、及び、被係合部27を有している。
第1の側壁部材21、第2の側壁部材22及び第3の側壁部材23と、ケース本体11又は横蓋13とによって、薬剤を排出口11bに案内する通路Pが構成される。詳しくは後述するが、通路Pの幅及び奥行きは、第1の側壁部材21、第2の側壁部材22及び第3の側壁部材23を移動させることにより、調整可能となっている。
回転部材20は、鉛直方向に延びる回転軸を有し、この回転軸回りに回転対称な形状を有している。具体的には、回転部材20は、回転軸を含む鉛直面を境に対象な2つの斜面を有する切り妻屋根状(逆V字状)に形成された上部部材25を備えている。上部部材25には、回転軸回りに180度離れた位置に2つの切り欠きが設けられている。
傾斜板24は、上部部材25の斜面に設けられている。傾斜板24は、円弧がケース本体11の内面側となるように設けられた扇形面を有する。傾斜板24の扇形面によって、上部部材25上に存在する薬剤Mは、後述する通路Pまで案内される。
上部部材25の下面には、被係合部27が設けられている。被係合部27は、通路Pの幅及び奥行きの少なくとも一方を調整する際に、後述する固定板14aの固定部14a1(図7参照)が係合されることで、回転部材20の回転を停止させるための棒状の部材である。被係合部27の詳細については、後述する。
回転部材20は、上部部材25及び基部30以外の部材、すなわち第1の側壁部材21、第2の側壁部材22、第3の側壁部材23、及び連結棒26を、それぞれ2つずつ有している。それらの部材は、回転軸を挟んで互いに対象となる位置に配置されている。従って、回転部材20は、自身の回転軸回りに180度回転する毎に、同じ部材が同じ位置に位置することになる。よって、回転部材20が180度回転する毎に、通路Pが排出口11b(図2参照)の上に位置する。
基部30は、回転部材20の回転軸と同軸のシャフト31を有している。シャフト31から、回転部材20の径方向且つ互いに反対方向に、一対の枝部材32が延在している。各枝部材32の先端付近から、互いに離れる方向に、一対の側壁支持部材33が延在している。
図5によく示されるように、枝部材32の延在方向と、側壁支持部材33の延在方向とは、鋭角をなしている。換言すると、一つの枝部材32の先端から延びる一方の側壁支持部材33の延在方向と他方の側壁支持部材33の延在方向とは、鈍角をなしている。つまり、枝部材32と一対の側壁支持部材33とは、底面視(つまり平面視)において、矢印状の形状を呈している。
また、シャフト31から、回転部材20の径方向であって、枝部材32の延在方向とは直交する方向、且つ、互いに反対方向に、一対の歯車支持部材34が延在している。
続いて、回転部材20を構成する部材であって、基部30に取り付けられている部材について説明する。
側壁支持部材33には、第1の側壁部材21及び第2の側壁部材22が取り付けられている。第1の側壁部材21は、第1の側壁部材本体21aと、第1のラック21bとから構成されている。第2の側壁部材22は、第2の側壁部材本体22aと、第2のラック22bとから構成されている。第2の側壁部材22は、第1の側壁部材21の鏡像形状である。よって、第1の側壁部材21について言えることは、第2の側壁部材22にも言える。そこで、以下、主に第1の側壁部材21について説明し、第2の側壁部材22については、適宜説明を省略する。
第1の側壁部材本体21aは、略平板状の部材であり、枝部材32の延在方向(つまり、回転部材20の回転軸を含む一つの平面)と平行な方向に延在している。第1の側壁部材本体21aには、図5に点線で示されるような形状の貫通孔が形成されている。つまり、水平であり、且つ、回転部材20の径方向と直交する方向に対して傾いた方向に延在するように、貫通孔が形成されている。この貫通孔の形状は、この貫通孔が延在する方向の一方から他方を見たときに長方形となる形状である。
この貫通孔を側壁支持部材33が貫通している。側壁支持部材33は、ある程度の厚みを有する直方体状とも言える板状部材である。側壁支持部材33は、第1の側壁部材本体21aに形成された貫通孔を貫通するときに、この貫通孔との間に隙間がほとんどできない形状に形成されている。従って、第1の側壁部材本体21aひいては第1の側壁部材21は、側壁支持部材33の延在方向に沿って、がたつきなくスライドすることができる。
第1の側壁部材本体21aの外径側端部には、水平面に沿って延在するスロットSが、上下に並ぶように複数設けられている。各スロットSが設けられる高さは、各仕切り板挿入口13a(図1,図2参照)が設けられる高さと一致している。よって、セパレータ14の仕切り板14bが仕切り板挿入口13aを介してケース本体11の内部に挿入された状態で回転部材20が回転すると、仕切り板14bは、第1の側壁部材本体21aに形成されたスロットSを通過する。同様に、仕切り板14bは、第2の側壁部材本体22aに形成されたスロットSも通過する。よって、回転部材20は、セパレータ14が取り付けられていても、何ら支障なく回転し続けることができる。
第1のラック21bは、第1の側壁部材本体21aの内側端部から、回転部材20の外径側に向けて、側壁支持部材33の延在方向と略平行な方向に延在している。
上記の通り、第2の側壁部材22は、第1の側壁部材21の鏡像形状を呈している。従って、第1の側壁部材本体21aと第2の側壁部材本体22aとは、互いに平行となっている。これらの部材が平行であるという関係は、第1の側壁部材21及び第2の側壁部材22が、側壁支持部材33に沿ってスライド移動してどの位置に位置していても常に維持される。
シャフト31の上には、回転部材20の回転軸回りにシャフト31に対して回転可能に、中央歯車40が配置されている。中央歯車40は、図示しない軸部を有しており、この軸部は、シャフト31に形成された穴の中に嵌められている。この軸部とこの穴の内面と間の摩擦力は比較的強く、回転部材20が回転する際は、シャフト31と中央歯車40は一体的に回転することが可能である。
中央歯車40の中央には、例えば六角棒レンチを係合させることができる第1係合部40aが設けられている。詳細には、第1係合部40aは、中心軸に垂直な断面が六角形の形状を有する穴である。後に説明するように、通路Pの幅(第1の側壁部材21と第2の側壁部材22との距離)の調整の際には、シャフト31と中央歯車40とを相対回転させる必要がある。第1係合部40aに六角棒レンチを係合させ、シャフト31を固定した状態で六角棒レンチにより比較的強いトルクを加えることで、シャフト31と中央歯車40とを相対回転させることが可能となる。第1係合部40aは、本発明の調整部材の一例である。
歯車支持部材34の上には、第1の歯車41及び第2の歯車42が回転可能に配置されている。中央歯車40と第2の歯車42はかみ合っている。第2の歯車42と第1の歯車41はかみ合っている。さらに、第1の歯車41は、第1のラック21bとかみ合っており、第2の歯車42は、第2のラック22bとかみ合っている。
従って、例えば、2つある第1の側壁部材21の内の一方が、側壁支持部材33に沿ってスライド移動すると、この第1の側壁部材21が有する第1のラック21bがスライド移動し、同時に、第1の歯車41の1つが回転する。すると、第2の歯車42の1つが回転し、第2のラック22bの1つがスライド移動するとともに、中央歯車40が回転する。すると、反対側の第2の歯車42が回転し、反対側の第2のラック22bがスライド移動する。さらに、反対側の第1の歯車41が回転し、反対側の第1のラック21bがスライド移動する。
つまり、2つの第1の側壁部材21及び2つの第2の側壁部材22は、いずれか1つが移動すると、同時に他の3つも移動するように構成されている。また、各歯車の歯ピッチ及び大きさは、2つの第1の側壁部材21及び2つの第2の側壁部材22の移動量が等しくなるように設定されている。よって、2つの第1の側壁部材21及び2つの第2の側壁部材22は、同時に同距離移動する。
第1の側壁部材21と第2の側壁部材22との間には、第3の側壁部材23が配置されている。第3の側壁部材23は、第3の側壁部材本体23a、第3のラック23b及び案内棒23c(図2参照)を有している。案内棒23cは、枝部材32に形成され径方向に延在する孔にスライド可能に挿入されている。よって、第3の側壁部材23は、回転部材20の径方向にスライド移動つまり進退可能となっている。
第3の側壁部材本体23aは、枝部材32の延在方向と同じ方向に延在するとともに、鉛直方向に延在しており、枝部材32の先端を覆っている。第3の側壁部材本体23aの外径側端部は、通路Pに面している。
第3の側壁部材本体23aの外径側端部には、水平面に沿って延在するスロットSが、上下に並ぶように複数設けられている。各スロットSが設けられる高さは、各仕切り板挿入口13a(図1,2参照)が設けられる高さと一致している。よって、第3の側壁部材本体23aが回転部材20の外周寄りに位置している状態で回転部材20が回転すると、仕切り板14bは、第3の側壁部材本体23aに形成されたスロットSを通過する。よって、回転部材20は、セパレータ14及び第3の側壁部材23の位置にかかわらず、回転し続けることができる。
第3の側壁部材本体23aの内側端部からクランクを介して第3のラック23bが枝部材32と平行な方向に延在している。
中央歯車40の上には、回転部材20の回転軸回りに、中央歯車40とは独立して回転可能に、第3の歯車43が配置されている。第3の歯車43は、第3のラック23bとかみ合っている。第3の歯車43の中央には、六角形の穴を有するレンチ等を係合させることができる第2係合部43aが設けられている。より詳細には、第2係合部43aは、中心軸に垂直な断面が六角形の棒である。第2係合部43aの先端は、第3の歯車43より上方向に延びており、図示は省略するが、上部部材25の中央に設けられた貫通孔(図2参照)の内部に入り込んでいる。
後に説明するように、第3の側壁部材23を回転部材20の径方向に沿って移動させる場合には、第3の歯車43を回転させる必要がある。薬剤ケース1の外部から、上部部材25中央の貫通孔内に配置された第2係合部43aにレンチを係合させ、当該レンチにより比較的強いトルクを加えることで、第3の歯車43を回転させることが可能である。第2係合部43aは、上述した第1係合部40aとともに、本発明の調整部材の一例である。
2つある第3の側壁部材23の内の一方が、枝部材32に沿って進退すると、この第3の側壁部材23が有する第3のラック23bが進退し、同時に、第3の歯車43が回転する。すると、反対側の第3のラック23bが進退する。
つまり、一方の第3の側壁部材23が進退すると、同時に他の第3の側壁部材23も進退するように構成されている。また、各歯車の歯ピッチ及び大きさは、2つの第3の側壁部材23の移動量が等しくなるように設定されている。よって、2つの第3の側壁部材23は、同時に同距離進退するように構成されている。
また、第3の側壁部材23は、連結棒26を介して連結された傾斜板24と連動して進退する。具体的には、第3の側壁部材23が進退すると、傾斜板24が、上部部材25の上面である傾斜面に沿って、つまり、傾斜板24の延在方向に沿って進退する。
次に、セパレータ14について説明する。
図7は、ケース本体11から取り外された状態のセパレータ14の斜視図である。セパレータ14は、固定板14aと、仕切り板14bと、を有する。
固定板14aは、セパレータ14が横蓋13に取り付けられる板部材である。固定板14aは、強磁性体材料で形成されており、ケース本体11の内部に配置されたマグネット16(図6参照)により、横蓋13の外面に密着するように吸着される。固定板14aは、マグネット16の吸着力に耐えて変形しないよう、比較的剛性が大きい材料で形成されている。固定板14aの一端部は、中央が凹んだ形状に形成されており、固定部14a1を構成する。
仕切り板14bは、断面L字状の板部材であり、外側板14b1と、内側板14b2と、を有する。仕切り板14bは、板バネのような、比較的弾性が大きい材料で形成されている。このため、仕切り板14bは、固定板14aよりも剛性が小さい材料で形成されている。
外側板14b1は、固定板14aと溶接等により接続されており、セパレータ14が横蓋13に取り付けられた状態で横蓋13の外部に配置される板部材である。一方、内側板14b2は、外側板14b1と直交して延びるように形成された板部材である。内側板14b2は、セパレータ14が横蓋13に取り付けられた状態で、図2に示すように仕切り板挿入口13a及び側部開口を介してケース本体11内に挿入されることができる。
図7に示すように、内側板14b2は、矩形部14b21と、接続部14b22と、仕切り部14b23と、を有する。矩形部14b21は、外側板14b1から直角に折れ曲がった部位である。仕切り部14b23は、平面視において、円弧状、より詳細には、大小2つの円弧で囲まれた領域のうちの一部分のような形状を有する。接続部14b22は、矩形部14b21の長手方向の中央と、内側板14b2の平面形状を構成する円弧のうち、より大きな円弧の中央と、を互いに接続する部位である。
また、セパレータ14をケース本体11に取り付けて固定させるため、ケース本体11における仕切り板挿入口13aの両側に、一対のマグネット16が配置されている。
このような構成を有するセパレータ14は、以下の2通りの態様で使用される。
セパレータ14の1つめの使用態様は、固定板14aの一端に設けられた固定部14a1がケース本体11の内部に挿入される態様である。セパレータ14の1つめの使用態様は、薬剤ケース1を実際に使用する前に、薬剤ケース1に収容する薬剤の大きさに合わせて、ケース本体11の通路Pの幅及び奥行きの少なくともいずれかを調整する際の使用態様である。
薬剤Mの大きさ及び形状に合わせて通路Pの幅及び奥行きを好適に設定するためには、実際に通路Pの内部に薬剤Mを配置した状態で設定作業が行われることが望ましい。しかしながら、回転部材20が回転可能な状態で薬剤Mを通路P内に配置してしまうと、何かの拍子で回転部材20が回転した際に、通路P内の薬剤Mが排出口11bから排出されてしまい、設定作業を好適に行うことが困難となる。従って、本実施形態の薬剤ケース1では、通路Pの幅及び奥行きを好適に設定するために、固定部14a1を被係合部27(図3参照)と係合させて、回転部材20の回転を抑制する。
図8は、ケース本体11及びセパレータ14の斜視図である。図9は、セパレータ14の固定部14a1と被係合部27とが係合された様子を示す図である。図9は、図8とほぼ同じ視点から、固定部材挿入口13bとその周囲における、横蓋13を透視してケース本体11の内部を示した図である。図9において、透視されている横蓋13及び横蓋13に設けられている複数の挿入口については点線で示されている。
図8に示すように、固定板14aの一部が固定部材挿入口13bからケース本体11へ挿入されている状態では、仕切り板14bはケース本体11の外部に存在しており、その機能を果たしていない。
図9に示すように、固定部14a1が被係合部27と係合されることで、回転部材20の回転を抑制する。固定部14a1の凹みの幅は、棒状の被係合部27の太さとほぼ同じ幅である。また、固定部14a1の最奥部はほぼ円弧状をなすように形成されており、棒状の被係合部27と好適に係合することができる。
なお、回転部材20の平面視において、横蓋13に設けられた固定部材挿入口13bの中央と、排出口11bの中央と、回転部材20の回転軸とは、一直線状に並ぶように配置されている。そして、回転部材20の平面視において、被係合部27の中心と回転部材20の回転軸とを結ぶ直線は、通路Pの中央と回転部材20の回転軸とを結ぶ直線と所定の角度、例えば90°で交差するようになっている(図3参照)。従って、セパレータ14の固定部14a1が被係合部27と係合された状態において、通路は排出口11bの上に位置しておらず、通路P内の薬剤が排出口11bから排出されることはない。
セパレータ14の2つめの使用態様は、仕切り板14bが仕切り板挿入口13aからケース本体11内に挿入される態様である。セパレータ14の2つ目の使用態様は、1つめの使用態様により通路Pの幅及び奥行きが好適に調整された後、薬剤ケース1に多数の薬剤が収容されて薬剤ケース1が実際に使用される際の使用態様である。
通路P内に複数の薬剤Mが案内された場合、図2に点線で示すように、複数の薬剤Mは、通路P内において縦に並んだ状態となる。この状態で、回転部材20が回転して通路Pが排出口11bの上に位置したとき、複数の薬剤Mが一度に排出されないようにするため、仕切り板14bの一部を、回転部材20の回転に伴って、最も下の薬剤Mとその上の薬剤Mとの間に入り込ませる。これにより、薬剤Mを、確実に1錠ずつ、薬剤ケース1から外部へ排出させることができる。
セパレータ14の2つめの使用態様において、薬剤の高さに合わせた仕切り板挿入口13aに仕切り板14bの先端を挿入し、固定板14aをケース本体11の外面近くに移動させるだけで、マグネット16の吸着力によって固定板14aが吸着され、セパレータ14がケース本体11に固定される。従って、例えばセパレータ14をネジ止めする等の作業の必要がなく、セパレータ14をケース本体11に少ない手間、かつ短時間で、しっかりと取り付けることができる。また、セパレータ14の取り外しの際にも、セパレータ14をマグネット16の吸着力より多少大きい力で引っ張るだけでよく、ネジを外す手間等が必要ないため、少ない手間かつ短時間での取り外しが可能となる。
図6に示すように、セパレータ14がケース本体11に取り付けられた状態では、内側板14b2の仕切り部14b23は、平面視において通路Pと重なる位置に配置される。これにより、通路Pに縦に並んだ薬剤のうち、最も下の薬剤以外の薬剤が排出口11bからケース本体11の外部に排出されることを確実に防止できる。
以上のように構成された薬剤ケース1は、次のように使用される。
まず、ケース本体11の内部に収容される薬剤Mの大きさ及び形状に合わせて、通路Pの幅及び奥行きが設定される。
通路Pの幅の設定方法について説明する。なお、通路Pの幅とは、第1の側壁部材21と第2の側壁部材22の間の距離である。
初めに、セパレータ14の固定板14aの一端である固定部14a1を横蓋13に設けられた固定部材挿入口13bからケース本体11内へ挿入し、回転部材20の位置を合わせて、固定部14a1と被係合部27とを係合させる。これにより、回転部材20の意図しない回転を抑制することができる。
なお、固定部14a1と被係合部27とが係合した状態では、上述したように、被係合部27と回転部材20の回転軸とを結ぶ直線は、通路Pの中央と回転軸とを結ぶ直線と90°で交差している。このため、通路Pが排出口11bの上に位置しない状態で、通路Pの幅の調整を行うことができる。
上述したようにケース本体11は透明又は半透明の材料で形成されており、ケース本体11の外部から通路P内の薬剤を視認可能である。このため、通路Pに薬剤ケース1に収容される薬剤を実際に配置することで、薬剤の大きさに合わせた通路Pの幅の調整を容易に、かつ正確に行うことができる。
この状態で、以下のようにして通路Pの幅が調整される。図5に示される、中央歯車40に形成された第1係合部40aは、図示は省略するが、ケース本体11の底部11aに設けられた駆動軸挿入口11cを介してケース本体11の外部からアクセス可能である。この第1係合部40aに六角棒レンチ(不図示)を係合させるとともに、シャフト31を固定した状態で六角棒レンチを回転させることにより、中央歯車40をシャフト31に対して相対回転させることができる。
中央歯車40をシャフト31に対して相対回転させると、第1の歯車41及び第2の歯車42が回転し、第1の側壁部材21及び第2の側壁部材22が、互いに平行な状態を維持したまま、回転部材20の径方向に直交する方向に対して傾いた方向に沿って、互いに接近又は離隔するようにスライド移動する。このような操作により、通路Pの幅が調整される。
このように、第1の側壁部材21と第2の側壁部材22は、互いに対向する面が平行な状態を維持したまま接近又は離隔する。よって、通路Pの幅は、回転部材20の径方向いずれの位置でも等しい。逆に言うと、通路Pの平面視形状は、例えば径方向内側が狭く径方向外側が広い扇形のような形状にならない。従って、通路Pはいずれの位置でも薬剤Mの幅に対応した幅となり、薬剤Mが通路Pをスムーズに上から下に通過することができる。
次に、通路Pの奥行きの設定方法について説明する。なお、通路Pの奥行きとは、第3の側壁部材23と横蓋13又はケース本体11との間の距離である。
図2に示されるように、上部部材25の中央には、鉛直方向に延在する貫通孔が形成されており、第3の歯車43に設けられた第2係合部43aがこの貫通孔の内部まで延在している。上部部材25の貫通孔にレンチ等を挿入して、第2係合部43aの先端にレンチの穴を係合させるとともに、レンチを回転させることにより、第3の歯車43を回転させることができる。第3の歯車43を回転させると、2つの第3の側壁部材及び2つの傾斜板24が、回転部材20の径方向に進退する。このような操作によって、通路Pの奥行き、及び、通路Pの入口の奥行きを設定することができる。
傾斜板24は、ケース本体11に収容されている薬剤Mを1つずつ通路Pに案内する。また、傾斜板24は、円弧が通路P側に位置する扇形である。よって、通路Pの幅に合う姿勢に薬剤Mの向きを調整する機能を有している。詳しく説明すれば、薬剤Mの断面形状が扁平(例えば楕円)である場合に、幅方向(長径方向)が回転部材20の径方向と一致する姿勢で薬剤Mが通路P内に落下することを、傾斜板24は防止する。換言すれば、薬剤Mの厚み方向(短径方向)が回転部材20の径方向と一致する姿勢で薬剤Mが通路P内に落下するように、傾斜板24は薬剤Mを案内する。
また、第3の側壁部材23の位置、つまり、通路Pの奥行きは、薬剤Mの厚さに合わせて調整される。従って、薬剤Mは、通路P内で径方向に移動することなく、通路Pをスムーズに上から下に通過することができる。このように通路Pの幅及び奥行きが薬剤Mの大きさに合わせて調整されることにより、複数の薬剤Mが通路Pに案内された場合でも、複数の薬剤が横に並ぶことなく、縦に並んだ状態で貯留される。
以上のように通路Pの幅及び奥行きの調整作業が行われる。なお、目盛り15(図1参照)は、ケース本体11の側部において、固定部14a1と被係合部27とが係合された状態における、通路Pに対応する位置に設けられている。すなわち、固定部14a1と被係合部27とが係合された状態では、通路P内部の薬剤の高さが、鉛直方向に複数並ぶ目盛り15のうち、下から何番目の目盛り同士の間に位置するかを、ケース本体11を透かして外部から容易に視認可能である。
固定部14a1と被係合部27とが係合された状態で、通路P内部の薬剤の高さが、鉛直方向に複数並ぶ目盛り15のうち、下から何番目の高さまで到達しているかを確認しておくと、この後のセパレータ14の取付作業がスムーズに進むため、好適である。
次に、通路P内に挿入されるセパレータ14の取り付けについて説明する。
まず、固定部材挿入口13bからケース本体11内に挿入されていたセパレータ14が、取り外される。この取り外しは、単にセパレータ14をケース本体11外部から引っ張ることで容易に行うことができる。これにより、回転部材20が自由に回転できるようになる。
この状態で、セパレータ14の仕切り板14bの一部が、あらかじめ確認された、通路P内の薬剤の高さに対応する目盛り15に振られた番号と同じ番号の仕切り板挿入口13aに挿入される。通路P内の薬剤の高さに対応する目盛り15とは、固定部14a1と被係合部27とが係合された状態で視認された、薬剤の最上部よりも上側に位置する目盛り15のうち、薬剤の最上部に最も近い目盛り15である。これにより、ケース本体11の底部11aの上面から仕切り板14bの下面までの距離が、通路P内に貯留される薬剤M1つ分の高さよりもわずかに大きくなるように、セパレータ14がケース本体11に取り付けられる。
よって、通路P内に縦に複数個の薬剤Mが並んだ状態で通路Pが排出口11bの上に位置しても、仕切り板14bが、一番下の薬剤Mとその上の薬剤Mの間に入り込むため、一番下の薬剤M以外の薬剤は、排出口11bから落下することができない。つまり、セパレータ14を、薬剤Mの高さに対応した適切な位置に取り付けることによって、薬剤Mを確実に1つずつ、排出口11bから排出させることができる。
以上のように通路Pの幅及び奥行きが設定されるとともに、セパレータ14が取り付けられた後、ケース本体11に多数の薬剤Mが収容される。続いて、シャフト31に駆動軸が挿入されるように、薬剤ケース1が薬剤供給装置に取り付けられる。
また、通路Pの幅の調整幅(通路Pの幅の最大値と最小値との差)は、通路Pの奥行きの調整幅(通路Pの奥行きの最大値と最小値との差)よりも大きい。よって、様々な大きさ及び形状の薬剤Mに合わせて、通路Pの幅及び奥行きを調整することができる。また、通路Pの高さ(つまり、第1の側壁部材本体21a及び第2の側壁部材本体22aの高さ)は、通路Pの幅の最大値よりも大きい。すなわち、通路Pは十分な高さを有している。よって、通路P内に2つ以上の薬剤Mを上下に並べることができ、通路Pが排出口11bの上に移動する度に、確実に1つずつ、薬剤Mを排出させることができる。
薬剤供給装置が備えるモータが回転すると、駆動軸が回転し、シャフト31も回転する。すると、回転部材20が回転し、傾斜板24及び上部部材25によって、薬剤Mが通路P内に案内される。
この状態で回転部材20が回転し、通路Pが排出口11bの近くに来ると、通路P内の薬剤Mのうち、一番下の薬剤Mとその上の薬剤Mとの間に仕切り板14bが進入する。このとき、一番下の薬剤Mは、底部11aの上に載っており、それ以外の薬剤Mは、直接又は間接に仕切り板14bの上に載る。さらに回転部材20が回転し、通路Pが排出口11bの上に来ると、一番下の薬剤Mだけが排出口11bを通じて底部11aの下方に落下する。
よって、薬剤供給装置は、薬剤ケース1が備える回転部材20を回転させることによって、薬剤Mを1つずつ、所望の位置、例えば、薬剤包装部に供給することができる。しかも、本実施形態に係る薬剤ケース1は、部材を交換することなく、通路Pの幅及び奥行きを無段階に調整することができる。従って、本実施形態に係る薬剤ケース1は、多種類の薬剤Mを取り扱うことができる。
<作用、効果>
本発明の実施形態に係る薬剤ケース1は、薬剤Mを収容し、薬剤Mの排出口11bが底部11aに設けられ、且つ、固定部材挿入口13bが側部に設けられたケース本体11と、鉛直な回転軸回りに回転するようにケース本体11の内部に配置され、薬剤Mを排出口11bに案内する通路Pを有し、且つ、固定部材挿入口13bを介して挿入された固定部14a1が係合する被係合部27を有する回転部材20と、回転軸回りに回転部材20に対して相対回転することにより、通路Pの幅及び奥行きの少なくとも一方を調整する調整部材(第1係合部40a、第2係合部43a)と、を備える。
このような構成により、通路Pの幅及び奥行きの少なくとも一方を調整する際には、固定部14a1により、回転部材20の回転を抑制することができる。このため、通路Pの調整作業を好適に行うことができる。
また、本発明の実施形態に係る薬剤ケース1において、回転部材20によって運ばれる薬剤Mの内の1つを他の薬剤Mから分けるセパレータ14を更に備え、セパレータ14の一部が、固定部14a1である。
このような構成により、回転部材20の回転を抑制するための部材を別途用意する必要がなく、簡単に、かつ低コストで、回転部材20の回転を抑制することができる。
また、本発明の実施形態に係る薬剤ケース1において、セパレータ14は、被係合部27に係合する固定部14a1が形成された固定板14aと、固定板14aに接続された仕切り板14bとを有する。
このような構成により、セパレータ14は、回転部材20の回転を抑制するための固定部としての機能と、仕切りとしての機能とを、両立させることができる。
また、本発明の実施形態に係る薬剤ケース1において、仕切り板14bの剛性は、固定板14aの剛性よりも小さい。このような構成により、仕切り板14bが薬剤Mの内の1つを他の薬剤Mから分けるとき、薬剤Mの外形に合わせてある程度撓むことで、薬剤Mを傷つけずに薬剤Mを分けることができる。
また、本発明の実施形態に係る薬剤ケース1において、平面視において、固定部材挿入口13bと、排出口11bと、回転部材20の回転軸とは、一直線に並んでおり、平面視において、被係合部27と回転軸とを結ぶ直線は、固定部14a1が被係合部27に係合するときに通路Pの中央と回転軸とを結ぶ直線と所定の角度、例えば90°で交差している。
このような構成により、固定部14a1が被係合部27に係合された状態で、通路Pが排出口11bの上に位置することがない。従って、例えば通路Pの調整作業を、実際に薬剤Mを通路P内に収容した状態で行ったとしても、通路P内の薬剤Mが排出口11bから排出されてしまうことがなく、通路Pの調整作業を好適に行うことができる。
また、本発明の実施形態に係る薬剤ケース1において、ケース本体11は透明または半透明であり、固定部14a1が被係合部27に係合するときに通路Pを介して回転部材20に対向するケース本体11bの部位には、鉛直方向に整列する複数の目盛り15が付されており、複数の目盛り15それぞれの近傍には番号が付されており、ケース本体11の側部には、固定部材挿入口13bと共に鉛直方向に整列し、仕切り板14bが挿入可能な複数の仕切り板挿入口13aが形成されており、複数の仕切り板挿入口13aそれぞれの近傍には、番号と一対一で対応する別の番号が付されている。
このような構成により、通路P内の薬剤Mをケース本体11の外部から視認しながら、通路Pの調整作業を行うことができる。このため、通路Pの調整作業を、薬剤Mの大きさに合わせて好適に行うことができる。また、目盛り15により、薬剤Mの高さに対応する仕切り板挿入口13aが容易に確認できるので、セパレータ14の取付け作業時に、複数の仕切り板挿入口13aのいずれにセパレータを取り付ければよいかを容易に把握することができる。
以上、一実施形態に係る薬剤ケース1及びこれを備える薬剤供給装置について説明してきたが、本発明に係る薬剤ケース1がこれまでに説明したものに限られないことは言うまでも無い。
上述した実施形態では、調整部材の一例としての第1係合部40aは断面六角形状の穴であり、六角棒レンチを挿入して中央歯車40を回転させていたが、本発明はこれに限定されない。また、上述した実施形態では、調整部材の一例としての第2係合部43aは断面六角形状の棒部材であり、六角形状の穴を有するレンチを用いて第3の歯車43を回転させていたが、本発明はこれに限定されない。第1係合部40a及び第2係合部43aの形状、及びこれらに係合されて歯車の回転操作を受け付ける操作部材の形状については、上述の実施形態で説明した例以外にも、種々の態様を取ることができる。
例えば、第1係合部40a及び第2係合部43aは、線状の穴に形成されており、操作部材としてのマイナスドライバーが係合されるように構成されていてもよい。また、第1係合部40a及び第2係合部43aは、十字形状の穴に形成されており、操作部材としてのプラスドライバーが係合されるように構成されていてもよい。さらに、第1係合部40a及び第2係合部43aは、それぞれ、穴を有する操作部材に係合される突起であってもよいし、突起を有する操作部材に係合される穴であってもよい。
上述した実施形態では、固定部材の一例としての固定部14a1はセパレータ14の一部であり、固定部材をセパレータ14が兼ねていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。固定部材は、セパレータとは全く別の部材、例えば単なる板の先端に、被係合部27と係合する凹みを設けた部材であってもよい。ただし、セパレータ14の一部を固定部14a1とすることにより、部品点数を低減でき、低コストで回転部材20の回転を抑制することができるため、より好適である。