JP2021063057A - 含フッ素シラン化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面処理剤に用いた場合に撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性において優れ、且つ非フッ素系有機溶媒に可溶な含フッ素シラン化合物を提供する。【解決手段】一般式(1)で表される含フッ素シラン化合物。CF3(CF2)q−O(CF2CF2O)m(CF2)p(CH2)nSiR1(3−a)(OR2)a(1)(一般式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、aは2〜3、pは1以上、qは0以上、mは1以上、nは2〜4、p+q+2m+1は5〜14、である。)【選択図】なし

Description

本発明は、含フッ素シラン化合物、表面処理剤、及び該表面処理剤を用いた物品に関する。
ある種の含フッ素化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素化合物を含む表面処理剤から得られる層は、いわゆる機能性薄膜として、例えば自動車ガラス用撥水層として自動車用ガラスに施される。自動車ガラス用撥水剤組成物から形成される撥水層には、高い撥水性(接触角、転落角)、耐摩耗性および耐侯性が要求される。
前記要求を満たす自動車ガラス用撥水剤組成物としては下記のものが提案されている。
(1)下式(I)で表される化合物及び溶媒を含む組成物(特許文献1)
(RfSi(R(NCO)4−a−b (I)
ただし、Rfは、炭素数8〜16のパーフルオロアルキル基を有する有機基であり、Rは、水素原子または炭素数1〜16の有機基であり、aは、1または2であり、bは0または1である。
パーフルオロアルキル基の炭素数が8〜12のテロマー化合物において、これらの性能が最も発現し易く、炭素数8のテロマー化合物が好んで使用されている。しかるに、近年炭素数8以上のパーフルオロカルボン酸は難分解性で、生体蓄積性が高く、生体毒性が疑われるなど環境に問題がみられるとの報告がなされている。これらの化合物は、今後はその製造や使用が困難になることが懸念されている。
しかし、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物からなる撥水層は、前記炭素数8のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物から形成された撥水層に比べ、パーフルオロアルキル基に基づく結晶性が劣る為、撥水性が低下する。
この欠点を補う方法として、前記炭素数6のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物と一般のシランカップリング剤を併用する方法が提案されている。
(2)下式(II)、(III)で表される化合物及び有機溶媒、水、酸を含む撥水液(特許文献2)
CF(CFm−1(CHSiX(CH3−p (II)
SiY (III)
式(II)中、mは2〜7の整数、nは1〜5の整数、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基であり、pは1〜3の整数である。
式(III)中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜20の炭化水素基である。また、Yはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。
一方、撥水性を有する別のフッ素化合物としてパーフルオロポリエーテル基が挙げられる。剛直なパーフルオロアルキル基を運動性の高い酸素原子によって分断した柔軟な構造を有しているため、撥水撥油性のほか、潤滑性や油脂汚れの除去性に優れる。パーフルオロポリエーテル基を含有するシラン化合物を主成分とする表面処理剤として、下記のものが提案されている。
(3)下式(IV)で表されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を主成分とする表面処理剤(特許文献3)。
Rf[(CH−O−(CH−SiR3−a (IV)
式(IV)中、Rfは2価の直鎖パーフルオロポリエーテル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基、Xは加水分解性基、nは0〜2の整数、mは1〜5の整数、aは2又は3である。
これらの実施例にあるパーフルオロポリエーテル基含有化合物は、高度な撥水性、潤滑性、防汚性を発揮するために平均分子量1000以上の高分子が用いられている。従って、自ら分子中のフッ素含有率が高くなり、これらの化合物を溶解する溶媒としては溶解性の点からフッ素系溶媒に限定されてしまう。しかしながら、フッ素系溶媒は高価なものであり、また、大気中に拡散した場合、オゾン層破壊や地球温暖化といった自然環境に悪影響を及ぼすという問題がある。
非フッ素系有機溶剤に溶解可能なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を主成分とする表面処理剤として、下記のものが提案されている。
(4)下式(V)で表されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を主成分とし、これを極性溶媒に溶解して成ることを特徴とする表面処理剤(特許文献4)。
F(CF(CF)CFO)CF(CF)CON−(QSiX 3−n)(QSiX 3−n) (V)
式(V)中、X、Xは同じ炭素数1〜4のアルコキシ基、R、Rは同じ炭素数1〜6の低級アルキル基又はフェニル基、Q、Qは同じ炭素数1〜5の窒素原子を介在してもよいアルキレン基、mは3〜5の整数、nは2又は3である。
式(V)で表される化合物を含む撥水液は一般有機溶媒に可溶で、撥水層の撥水撥油性良好であるが、パーフルオロポリエーテル部分の分岐構造による立体効果が影響し、耐摩耗性が不十分である。また、構造中にアミド結合を有するために、滑水性(転落角)、耐候性が不十分である。
(5)下式(VI)で表される含フッ素エーテル化合物と部分加水分解可能な化合物を必須成分とする表面処理剤(特許文献5)
F1O(CFCFO)CF((CHSiL3−p (VI)
式(VI)中、RF1は炭素数1〜20のパーフルオロ1価飽和炭化水素基、aは1〜200の整数、bは0又は1、Qは存在しない又は2〜3の連結基、cは1又は2、dは2〜6の整数、Lは加水分解性基、Rは水素原子又は1価炭化水素基、pは1〜3の整数である。

特許2800786号 特開2017−8284 特開2003−238577 特許5007812号 国際公開2009/008380号
含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、いわゆる機能性薄膜として、例えば自動車ガラス用撥水層として自動車用ガラスに施される。自動車ガラス用表面処理用の組成物から形成される撥水層には、高い撥水性(接触角、転落角)、耐摩耗性および耐侯性が要求される。
しかし、発明者らの検討により、特許文献2〜5においては少なくとも下記の点で要求される特性を満たさないことがわかった。
式(II)及び(III)で表される化合物を含む撥水層は、耐候性は良好であるが、フッ素含有率が小さく、撥水撥油性、滑水性及び耐摩耗性が不十分である。
式(IV)で表される化合物を含む撥水層は、撥水撥油性、滑水性は良好であるが、フッ素系溶媒にしか溶解しないので環境問題への懸念が残る。また被膜の耐候性が劣るという欠点を有する。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位にエーテル基を有しているため、紫外線に弱く耐候性に影響していると考えられた。
式(V)で表される化合物は一般有機溶媒に可溶で、撥水層の撥水撥油性が良好であるが、耐摩耗性に劣る。これは、パーフルオロポリエーテル部分の側鎖にCF基を有するためにパーフルオロポリエーテル基の運動性が制限されて潤滑性が悪くなっていると考えられた。また、滑水性、耐候性も劣る。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位に極性のあるアミド基を有するためと考えられた。
式(VI)の実施例にある化合物は、耐侯性に劣るという欠点を有する。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位にエーテル結合又はアミド結合を有しているため、紫外線に弱く耐候性に影響していると考えられた。
また、環境負荷及びコストの観点から、含フッ素シラン化合物はフッ素系有機溶媒ではなく、非フッ素系有機溶媒に溶解させて表面処理剤とすることが求められている。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、表面処理剤に用いた場合に撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性において優れ、且つ非フッ素系有機溶媒に可溶な含フッ素シラン化合物を提供するものである。また、本発明は撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性において優れた、非フッ素系有機溶媒含有表面処理剤及び該表面処理剤を用いた物品を提供するものである。
本発明によれば、下記一般式(1)で表される含フッ素シラン化合物が提供される。
CF(CF−O(CFCFO)(CF(CHSiR (3−a)(OR (1)
(一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、aは2〜3、pは1以上、qは0以上、mは1以上、nは2〜4、p+q+2m+1は5〜14、である。)
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有する含フッ素シラン化合物は、非フッ素系有機溶媒含有表面処理剤に用いた場合に優れた撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、一般式(1)中、aは2〜3の整数、pは1〜2の整数、qは0〜5の整数、mは1〜3の整数、nは2〜4の整数であり、p+q+2m+1は5〜14の整数である含フッ素シラン化合物。
本発明の別の観点からは、前記含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解物縮合物と、非フッ素系有機溶媒と、を含有する表面処理剤が提供される。
好ましくは、前記非フッ素系有機溶媒は、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1つである表面処理剤。
好ましくは、硬化触媒を、含フッ素シラン化合物100質量部に対して0.01〜6質量部含み、前記硬化触媒は、無機酸または有機酸である表面処理剤。
本発明の別の観点からは、基材の表面に前記表面処理剤を塗布、硬化させた撥水性被膜を有する物品が提供される。
好ましくは、輸送機用窓ガラス、輸送機のボディ、サニタリー製品又は一般産業用ガラスである物品。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.含フッ素シラン化合物
本発明の一実施形態に係る含フッ素シラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
CF(CF−O(CFCFO)(CF(CHSiR (3−a)(OR (1)
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基である。炭素数1〜4の1価炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基であり、中でもメチル基、エチル基が好ましく、合成の容易性等の観点からメチル基が特に好ましい。R1が一般式(1)中に複数存在する場合には、R1が同じ基でも異なる基でもよいが、同じ基であることが入手しやすさの点で好ましい。
aは、2〜3であり、好ましくは2〜3の整数である。得られる撥水性被膜と基材の密着性の観点からは、より好ましくは、aは3(すなわち、トリアルコキシシラン)である。
pは、1以上であり、好ましくは1〜2の整数である。合成の容易性等の観点からは、より好ましくは、pは1である。
qは、0以上であり、好ましくは0〜5の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、qは0〜3の整数である。
mは、1以上であり、好ましくは1〜3の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、mは1〜2の整数である。
nは、2〜4であり、好ましくは2〜4の整数である。得られる撥水層の撥水性及び含フッ素シラン化合物の合成の容易性の観点からは、より好ましくは、nは3である。
p+q+2m+1は、5〜14であり、好ましくは5〜14の整数であり、より好ましくは6〜11の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、p+q+2m+1は6〜9の整数である。p+q+2m+1は、具体的には例えば、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、好ましくは1000以下であり、撥水性及び溶解性確保による均一な被膜形成の観点から、好ましくは500〜900であり、さらに好ましくは500〜800である。また、一般式(1)で表される化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.00である。
一般式(1)で表される化合物中のフッ素含有率は、非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、好ましくは45〜58質量%である。
2.表面処理剤
上記含フッ素シラン化合物は、表面処理剤の成分として用いることができ、本発明の一実施形態に係る表面処理剤は、式(1)の含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解縮合物と、非フッ素系有機溶媒と、を含有する。
なお、式(1)の含フッ素シラン化合物の加水分解物とは、一般式(1)で表される化合物であるシラン化合物が部分的に加水分解されてシラノールになり、さらに縮合したものをいう。
また、表面処理剤に含まれる式(1)の含フッ素シラン化合物は、1種でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<含フッ素シラン化合物の含有量>
表面処理剤は、表面処理剤の総量に対し、含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解縮合物を、好ましくは0.1〜5質量%含み、より好ましくは0.1〜2質量%含む。0.1質量%以上とすることで、十分な被膜の厚さとなり、初期撥水性(接触角)、耐候性および耐摩耗性において優れる。また、10質量%以下とすることで、被膜の膜厚が厚くなりすぎず塗り伸ばす際の作業性がよく、また塗膜の均一性や透明性が優れる。また、表面処理剤のコストを抑えられる。
<非フッ素系有機溶媒>
非フッ素系有機溶媒は、含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解縮合物が可溶な有機溶媒であれば制限されないが、例えば、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。また、揮発性の観点から、炭素数は6以下が好ましい。
非フッ素系有機溶媒の具体例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類が挙げられる。中でもイソプロピルアルコール等の低級アルコールは含フッ素シラン化合物の溶解性が高く、さらに、表面処理剤の塗布性(塗り伸ばしやすさ)や乾燥時間(作業時間)が適度になるので特に好ましい。
また、非フッ素系有機溶媒は、必要に応じてフッ素系溶媒を混合して用いることもでき、任意の割合で混合してもよい。
<硬化触媒>
本発明の一実施形態に係る表面処理剤は、シラン化合物の重縮合反応促進の観点から、硬化触媒をさらに含有してもよい。
硬化触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、及び酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
表面処理剤は、含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解縮合物100質量部に対して、好ましくは硬化触媒を0.01〜6質量部、より好ましくは0.05〜5質量部含む。
<その他の添加剤>
表面処理剤は、ガラス層に撥水膜を形成させると同時に、過剰なシラン化合物を掻きとりやすくするために、シリカ、アルミナ、チタニアなどの無機系の微粒子を含有しても良い。
<表面処理剤の調製方法>
表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を有機溶媒に溶解させ、この混合物に必要に応じて酸を添加することにより得られる。
3.表面処理剤を用いた物品
本発明の一実施形態に係る物品は、基材と、基材上に設けられた撥水性被膜を備える撥水性物品である。撥水性被膜は、上記表面処理剤の硬化膜である。表面処理剤の硬化膜は、表面処理剤を基材表面に塗布し、硬化させたものである。
<撥水性被膜>
表面処理剤を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り法、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フローコート法、スピンコート法、ロールコート法が適宜採用され得る。これらの塗布方法の中では、手塗り法が、塗着効率が高く塗布ロスが少ない点、塗布設備の導入費用を削減できる点などから好ましい。なお、本発明で「手塗り法」とは、表面処理剤を塗布用部材に給液した後、該部材を基材に接触させる手段、及び、表面処理剤を基材に給液した後、該部材で該表面処理剤を塗り伸ばす手段から選ばれる少なくとも一つの手段で基材上に塗布液を塗布する技術手段のことを指す。表面処理剤を給液される部材、又は表面処理剤を塗り伸ばす部材としては、布、紙、不織布、ガーゼ、スポンジ、フェルトなどが挙げられる。塗布液を給液された部材を基材に接触させる手段、又は部材で塗布液を引き延ばす手段は、人の手によるもの、ロボットや機械などによるものなどがある。
撥水性物品は、表面処理剤の塗布後に室温〜100℃で硬化処理することにより得ることができる。室温でも硬化させることができ、必ずしも加熱は必要ないが、加熱することにより、シラノール基と、基材表面に存在する水酸基等の結合性基とを、加熱処理を行わなかった場合よりもより強く結合させることができる。この強い結合により、該基材表面に優れた耐久性を有する被膜(撥水層)を形成することができる。加熱は、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。なお、上記シラノール基は、含フッ素シラン化合物に含まれる加水分解物及び新たに加水分解されて生じた加水分解物に由来するものである。なお、室温とは、一実施形態においては、例えば10〜30℃を意味する。
表面処理剤の余剰分が乾固物となって基材上に残留した場合、この余剰分を有機溶剤又は水で湿らした紙タオルや布または乾いた紙タオルや布で払拭することができる。
<基材>
硬化処理温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、表面処理剤が塗布される基材は特に限定されるものではない。基材としては、例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されている板ガラスを使用できる。これら板ガラスを用いて形成される鏡等の反射性基材、擦りガラス、模様が刻まれたガラス等を使用することができる。ガラス基材の他にタイル、瓦、衛生陶器、食器等に使用されるセラミックス材料よりなる基材、ガラス窓等の枠体、調理器、流し、自動車のボディの塗装面などが挙げられる。
また、基材と撥水性被膜との接着強度を向上させる処理を基材表面に予め行うこともできる。そのような処理としては、各種研磨液による研磨・洗浄・乾燥、酸性溶液または塩基性溶液による表面改質処理、プライマー処理、プラズマ照射、コロナ放電、高圧水銀灯照射等により、基材表面に活性基を発生させることが挙げられる。特に、プライマー処理は、例えば基材上にシラノール基(活性基)を形成させて行うことができ、表面処理剤を塗布する表面のシラノール基の数を増やすことができるため好ましい。
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
検討に用いた表面処理剤の成分であるシラン化合物を以下に示す。なお、シラン1〜8及びシラン11は以下に示す方法により合成し、シラン9、10は市販品を用いた。各シラン化合物についての表1に示す。
シラン1:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン2:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン3:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン4:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン5:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
シラン6:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン7:F{CF(CF)CFO}CF(CF)CONHCHCHCHSi(OCH
シラン8:(CHO)SiCHCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
p/q=0.8〜1.0, p+q≒45
シラン9:C13CHCHSi(OCH
シラン10:C17CHCHSi(OCH
シラン11:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi{OCH(CH
Figure 2021063057
<合成例1>
(シラン1の合成)
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管を取り付けた500mL四口フラスコに下記式[1−1]で表される臭素体100g、アリルトリブチルスズ66.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.73g、メタキシレンヘキサフルオライド100gを混合し、乾燥窒素中90℃で7時間反応させた。蒸留により目的物を精製し、下記式[1−2]で表される無色透明液体84.1gを得た(収率90%)。
化合物[1−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFBr
化合物[1−2]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCH=CH
NMR測定の結果は下記の通りである。なお、各シフト値が対応する構造を""で示す。
[1−2]
H−NMR(CDCl,TMS,δ):2.8−2.9(2H,m,−CF"CH"CHCH),5.8−5.9(1H,m,−CFCH"CH"CH),5.3−5.4(2H,m,−CFCHCH"CH")
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,s,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−).
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた200mL四口フラスコに化合物[1−2]80g、1,5−ジクロロ(シクロオクタジエニル)白金0.1質量%を含むアセトン溶液2.82g、メタキシレンヘキサフルオライド40gを混合し窒素雰囲気下に80℃で30分撹拌した。次いで、トリメトキシシラン26.3gを滴下し、80℃で24時間反応させた。蒸留により目的物を精製し、シラン1の無色透明液体88.3gを得た(収率91%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン1:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン1
H−NMR(CDCl,TMS,δ):0.61−0.65(2H,t,−CFCHCH"CH"Si(OCH,1.7−1.8(2H,m,−CFCH"CH"CHSi(OCH),2.1−2.2(2H,m,−CF"CH"CHCHSi(OCH),3.5−3.6(9H,s,−CFCHCHCHSi(O"CH")).
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,m,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−).
<合成例2>
シラン2の合成
シラン1と同様の方法により、シラン2を合成した(2工程、収率85%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン2:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例3>
シラン3の合成
シラン1と同様の方法により、シラン3を合成した(2工程、収率87%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン3:CF(OCFCFCFCHCHCHSi(OCH
<合成例4>
シラン4の合成
シラン1と同様の方法により、シラン4を合成した(2工程、収率90%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン4:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例5>
シラン5の合成
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた1Lフラスコに化合物[5−1]500g、臭化アリル166g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩41.8gを混合し、55℃で30分間撹拌させた。次いで、30%水酸化ナトリウム水溶液182gを滴下し、55℃で6時間反応させた。生成物を水洗浄、脱水、濃縮させた後、蒸留により化合物[5−2]の無色透明液体483gを得た(収率90%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[5−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOH
化合物[5−2]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCH=CH
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロート取り付けた500mLフラスコに化合物[5−2]200g、1,5−ジクロロ(シクロオクタジエニル)白金0.1質量%を含むアセトン溶液6.70g、メタキシレンヘキサフルオライド100gを混合し、窒素雰囲気下に80℃で30分撹拌した。次いで、トリメトキシシラン62.4gを滴下し、80℃で24時間反応させた。その後、蒸留により目的物を精製し、シラン4の無色透明液体219gを得た(収率91%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン5:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
<合成例6>
シラン6の合成
シラン1と同様の方法により、シラン6を合成した(2工程、収率85%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン6:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例7>
シラン7の合成
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管を取り付けた500mLフラスコに化合物[7−1]200gと3−アミノプロピルトリメトキシシラン36.4gのエタノール溶液を60℃で15時間撹拌した。その後、反応物を蒸留により精製し、シラン7の無色透明液体214gを得た(収率94%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[7−1]:F{CF(CF)CFO}CF(CF)COOCH
シラン7:F{CF(CF)CFO}CF(CF)CONHCHCHCHSi(OCH
<合成例8>
シラン8の合成
化合物[8−1]を原料としてシラン5と同様の方法によりシラン8を合成した(2工程、収率80%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[8−1]:HOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOH
シラン8:(CHO)SiCHCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
p/q=0.8〜1.0,p+q≒45
<合成例9>
シラン11の合成
300mLSUS製耐圧容器に[1−2]100g、トリクロロシラン36.4g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと錯体形成したPt金属のキシレン溶液0.17g、メタキシレンヘキサフルオライド50gを仕込み、100℃で8時間加熱撹拌した。蒸留により目的物を精製し、化合物[9−1]を得た。撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた200mLフラスコに化合物[9−1]80g、オルト蟻酸トリイソプロピル、イソプロピルアルコールの混合溶液20g(オルト蟻酸トリイソプロピル:イソプロピルアルコール=25:1[mol:mol])を滴下し、窒素雰囲気下にて60℃で3時間撹拌した。溶媒等を留去し、残液に活性炭を加えて1時間撹拌した。その後、メンブランフィルターで濾過し、蒸留により目的物を精製し、シラン11の無色透明液体125.7gを得た(収率92%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[9−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSiCl
シラン11:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi{OCH(CH
シラン11
H−NMR(CDCl,TMS,δ):0.61−0.65(2H,t,−CFCHCH"CH"Si{OCH(CH),1.2−1.4(18H,d,−CFCHCHCHSi{OCH("CH")),1.7−1.8(2H,m,−CFCH"CH"CHSi{OCH(CH),2.1−2.2(2H,m,−CF"CH"CHCHSi{OCH(CH),3.8−3.9(1H,m,−CFCHCHCHSi{O"CH"(CH).
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,m,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−)
<表面処理剤の作製>
各シラン化合物0.2g、イソプロピルアルコール39.68gを混合し、良く振り混ぜた。次いで、5%硝酸−イソプロピルアルコール溶液0.12gを添加し、十分撹拌することで、シラン化合物濃度0.5質量%の表面処理剤を得た。
(基材の準備)
風冷強化ガラス(75x360mm)又は名刺サイズスライドガラス(26x76mm)の表面をシリカ系研磨剤で十分研磨した後、精製水で洗浄し、乾燥させた後不織布(ベンコット)で乾拭きし基材を準備した。
(撥水性ガラスの作製)
調製した表面処理剤0.4mLを基板上に滴下し、不織布(ベンコット)で基板全面に十分引き伸ばした後、5分間風乾した。この操作を同一基板に対しもう一度行った。次に目視で白くまだらに残留している余剰な成分を精製水で湿らせた不織布(ベンコット)で拭きあげた。最後に室温にて12時間風乾させ硬化させることで、目視観察で問題のない透明な撥水性ガラスを得た。
(各シラン化合物の溶解性の評価)
(1)溶解性試験
シラン化合物を濃度1.0質量%になるよう各種有機溶媒(IPA:イソプロピルアルコール、MIBK:メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン、THF:テトラヒドロフラン)と混合し、溶液の外観を目視判断した。評価基準は下記の4段階とした。
1:シランが完全に溶解し、無色透明液体になる
2:シランが概ね溶解するが、わずかに濁りが存在する
3:シランが殆ど溶解せず、濁りや沈殿が存在する
4:シランが全く溶解せず、2層になる
(表面処理剤の評価)
(2)接触角測定
接触角計(NICK社製LSE−B100W)を用いて、2μLの水滴を発生させ、上記撥水性ガラスに対する接触角又を測定した。測定は表面上の異なる5箇所にて行い、その平均値で示した。
(3)転落角測定
上記接触角計を用いて、20μLの水滴を滴下した後、水平に設置した上記撥水性ガラスを徐々に傾け、水滴が転落し始めた時の撥水性ガラスと水平面との角度を測定した。測定は表面上の異なる5箇所にて行い、その平均値で示した。滑水性を評価するための1つの指標である。
(4)ペン書込み試験(撥油性、防汚性試験)
上記撥水性ガラスに対し、油性のマーキングペン(品名:マッキー、ゼブラ株式会社製)の書込みを行い、インクの弾き性能を目視判断した。評価基準は下記の6段階とした。
1:インクを良く弾く
2:インクを弾くが凝集速度が遅い
3:インクの弾きが弱い
4:インクの弾きが弱く凝集速度も遅い
5:インクの殆ど弾かず、インクの筋が残る
6:インクを全く弾かない
(5)耐摩耗性試験
耐摩耗試験機(APIコーポレーション製API−3DT)に不織布(ベンコット)を取り付け、500gf/cmの荷重下、40mmx60往復/分の速度で上記撥水性ガラスの表面を摺動させた。1000往復摺動するごとに接触角を測定し、接触角が100度を下回るまで、又は摺動回数が5000往復に達するまで試験を行った。
(6)メタルハライドランプ式促進耐候性試験
メタリングウェザーメーター(スガ試験機株式会社製M6T)に上記撥水性ガラスをセットし、放射面照度2.00KW/mでメタルハライドランプを照射させた。また、照射中1時間ごとに18分間水を噴霧させた。照射72時間後にそれぞれの撥水性ガラスについて、水の接触角の測定及びペン書込み試験を行った。
(7)実車試験
車のフロントガラスをシリカ系研磨剤で十分研磨した後、マイクロファイバータオルで水拭きし、室温下で乾燥させた。その後、該ガラスに対し、各表面処理剤を10mL滴下し、不織布(ベンコット)でガラス全面に十分引き伸ばした後、5分間室温にて乾燥させた。最後に余剰な成分をマイクロファイバータオルで水拭きし、撥水膜を形成した。雨天の中、60km/hで走行して、フロントガラスの雨水の弾き性を目視判断した。評価基準は下記の4段階とした。
1:雨水を良く弾き、速やかに流れ落ちる
2:雨水を弾くが速やかに流れ落ちない
3:雨水を殆ど弾かない
4:雨水を全く弾かない
各実施例及び比較例について、上記溶解性試験及び表面特性の評価結果をそれぞれ表2、表3に示す。
Figure 2021063057
表2より、シラン1、2、3、4、11は非フッ素系有機溶媒への溶解性が良好であった。一方で、シラン8は、フッ素含有率が高く、分子量も大きいので、非フッ素系有機溶媒への溶解性が悪かった。
以降の表面特性の評価においては、シラン8はイソプロピルアルコールへの溶解性が悪く、良好な撥水性皮膜が形成できないので、評価より除外した。
Figure 2021063057
表3より、シラン1〜4、11は転落角、接触角、耐摩耗性、耐候性いずれにおいても良好な結果であった。
シラン5は転落角、接触角、耐摩耗性は良好な結果であったが、耐候性が不十分であった。耐候性が不十分であったのは、シラン5のパーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の結合部位に結合エネルギーの弱いエーテル結合が存在する為であると考えられる。
シラン6は耐摩耗性、耐侯性が不十分な結果であった。これはシラン6が分子量及びフッ素含有率が小さいためであると考えられる。
シラン7は転落角、耐摩耗性、耐侯性が不十分であった。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位に極性基のアミド基を有するためであると考えられる。
シラン9、10は初期の接触角、接触角に係る耐候性は良好な一方、初期の転落角、耐摩耗性、耐候性試験後の撥油性(ペン書込み試験)が不十分な結果であった。また、シラン9、10はフッ素鎖部分がパーフルオロアルキル基のみであるため、潤滑性に優れたパーフルオロポリエーテル基を有するシラン1〜4、11より滑水性、耐摩耗性が劣ると考えられる。
次にシラン1を表面処理剤に用い、硬化触媒の量に係る上記性能の評価を行った。
Figure 2021063057
表4より、本発明のシラン化合物は硬化触媒0.01〜6質量%において、十分な性能を発揮した。
以上のデータから判るように、本発明のシラン化合物は表面処理工程で用いられる非フッ素系有機溶媒への高い溶解性を有し、さらには処理物品には良好な撥水性と耐久性が付与される。このように本発明は、自動車などの窓ガラスなどの表面処理に対して優れた技術を提供する。
本発明の表面処理剤で処理した撥水性物品は、良好な撥水性、滑水性と耐摩耗性、耐候性を兼ね備えており、自動車や船舶、航空機など輸送機の窓ガラスやミラー、ボディの塗装面、あるいは建築用の窓ガラス等として用いることが出来る。また、該表面処理剤は、タイル、瓦、衛生陶器、食器等のセラミック基材に良好な撥水性を付与することが出来る。
本発明は、含フッ素シラン化合物に関する。
ある種の含フッ素化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素化合物を含む表面処理剤から得られる層は、いわゆる機能性薄膜として、例えば自動車ガラス用撥水層として自動車用ガラスに施される。自動車ガラス用撥水剤組成物から形成される撥水層には、高い撥水性(接触角、転落角)、耐摩耗性および耐侯性が要求される。
前記要求を満たす自動車ガラス用撥水剤組成物としては下記のものが提案されている。
(1)下式(I)で表される化合物及び溶媒を含む組成物(特許文献1)
(RfSi(R(NCO)4−a−b (I)
ただし、Rfは、炭素数8〜16のパーフルオロアルキル基を有する有機基であり、Rは、水素原子または炭素数1〜16の有機基であり、aは、1または2であり、bは0または1である。
パーフルオロアルキル基の炭素数が8〜12のテロマー化合物において、これらの性能が最も発現し易く、炭素数8のテロマー化合物が好んで使用されている。しかるに、近年炭素数8以上のパーフルオロカルボン酸は難分解性で、生体蓄積性が高く、生体毒性が疑われるなど環境に問題がみられるとの報告がなされている。これらの化合物は、今後はその製造や使用が困難になることが懸念されている。
しかし、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物からなる撥水層は、前記炭素数8のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物から形成された撥水層に比べ、パーフルオロアルキル基に基づく結晶性が劣る為、撥水性が低下する。
この欠点を補う方法として、前記炭素数6のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含む撥水撥油組成物と一般のシランカップリング剤を併用する方法が提案されている。
(2)下式(II)、(III)で表される化合物及び有機溶媒、水、酸を含む撥水液(特許文献2)
CF(CFm−1(CHSiX(CH3−p (II)
SiY (III)
式(II)中、mは2〜7の整数、nは1〜5の整数、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基であり、pは1〜3の整数である。
式(III)中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜20の炭化水素基である。また、Yはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。
一方、撥水性を有する別のフッ素化合物としてパーフルオロポリエーテル基が挙げられる。剛直なパーフルオロアルキル基を運動性の高い酸素原子によって分断した柔軟な構造を有しているため、撥水撥油性のほか、潤滑性や油脂汚れの除去性に優れる。パーフルオロポリエーテル基を含有するシラン化合物を主成分とする表面処理剤として、下記のものが提案されている。
(3)下式(IV)で表されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を主成分とする表面処理剤(特許文献3)。
Rf[(CH−O−(CH−SiR3−a (IV)
式(IV)中、Rfは2価の直鎖パーフルオロポリエーテル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基、Xは加水分解性基、nは0〜2の整数、mは1〜5の整数、aは2又は3である。
これらの実施例にあるパーフルオロポリエーテル基含有化合物は、高度な撥水性、潤滑性、防汚性を発揮するために平均分子量1000以上の高分子が用いられている。従って、自ら分子中のフッ素含有率が高くなり、これらの化合物を溶解する溶媒としては溶解性の点からフッ素系溶媒に限定されてしまう。しかしながら、フッ素系溶媒は高価なものであり、また、大気中に拡散した場合、オゾン層破壊や地球温暖化といった自然環境に悪影響を及ぼすという問題がある。
非フッ素系有機溶剤に溶解可能なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を主成分とする表面処理剤として、下記のものが提案されている。
(4)下式(V)で表されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を主成分とし、これを極性溶媒に溶解して成ることを特徴とする表面処理剤(特許文献4)。
F(CF(CF)CFO)CF(CF)CON−(QSiX 3−n)(QSiX 3−n) (V)
式(V)中、X、Xは同じ炭素数1〜4のアルコキシ基、R、Rは同じ炭素数1〜6の低級アルキル基又はフェニル基、Q、Qは同じ炭素数1〜5の窒素原子を介在してもよいアルキレン基、mは3〜5の整数、nは2又は3である。
式(V)で表される化合物を含む撥水液は一般有機溶媒に可溶で、撥水層の撥水撥油性良好であるが、パーフルオロポリエーテル部分の分岐構造による立体効果が影響し、耐摩耗性が不十分である。また、構造中にアミド結合を有するために、滑水性(転落角)、耐候性が不十分である。
(5)下式(VI)で表される含フッ素エーテル化合物と部分加水分解可能な化合物を必須成分とする表面処理剤(特許文献5)
F1O(CFCFO)CF((CHSiL3−p (VI)
式(VI)中、RF1は炭素数1〜20のパーフルオロ1価飽和炭化水素基、aは1〜200の整数、bは0又は1、Qは存在しない又は2〜3の連結基、cは1又は2、dは2〜6の整数、Lは加水分解性基、Rは水素原子又は1価炭化水素基、pは1〜3の整数である。
特許2800786号 特開2017−8284 特開2003−238577 特許5007812号 国際公開2009/008380号
含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、いわゆる機能性薄膜として、例えば自動車ガラス用撥水層として自動車用ガラスに施される。自動車ガラス用表面処理用の組成物から形成される撥水層には、高い撥水性(接触角、転落角)、耐摩耗性および耐侯性が要求される。
しかし、発明者らの検討により、特許文献2〜5においては少なくとも下記の点で要求される特性を満たさないことがわかった。
式(II)及び(III)で表される化合物を含む撥水層は、耐候性は良好であるが、フッ素含有率が小さく、撥水撥油性、滑水性及び耐摩耗性が不十分である。
式(IV)で表される化合物を含む撥水層は、撥水撥油性、滑水性は良好であるが、フッ素系溶媒にしか溶解しないので環境問題への懸念が残る。また被膜の耐候性が劣るという欠点を有する。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位にエーテル基を有しているため、紫外線に弱く耐候性に影響していると考えられた。
式(V)で表される化合物は一般有機溶媒に可溶で、撥水層の撥水撥油性が良好であるが、耐摩耗性に劣る。これは、パーフルオロポリエーテル部分の側鎖にCF基を有するためにパーフルオロポリエーテル基の運動性が制限されて潤滑性が悪くなっていると考えられた。また、滑水性、耐候性も劣る。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位に極性のあるアミド基を有するためと考えられた。
式(VI)の実施例にある化合物は、耐侯性に劣るという欠点を有する。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位にエーテル結合又はアミド結合を有しているため、紫外線に弱く耐候性に影響していると考えられた。
また、環境負荷及びコストの観点から、含フッ素シラン化合物はフッ素系有機溶媒ではなく、非フッ素系有機溶媒に溶解させて表面処理剤とすることが求められている。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、表面処理剤に用いた場合に撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性において優れ、且つ非フッ素系有機溶媒に可溶な含フッ素シラン化合物を提供するものである
本発明によれば、下記一般式(1)で表される含フッ素シラン化合物が提供される。
CF(CF−O(CFCFO)(CF(CHSiR (3−a)(OR (1)
(一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、aは2〜3、pは1以上、qは0以上、mは1以上、nは2〜4、p+q+2m+1は5〜14、である。)
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有する含フッ素シラン化合物は、非フッ素系有機溶媒含有表面処理剤に用いた場合に優れた撥水性、滑水性、耐候性、及び耐摩耗性を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、一般式(1)中、aは2〜3の整数、pは1〜2の整数、qは0〜5の整数、mは1〜3の整数、nは2〜4の整数であり、p+q+2m+1は5〜14の整数である含フッ素シラン化合物。
以下、本発明の実施形態について説明する
1.含フッ素シラン化合物
本発明の一実施形態に係る含フッ素シラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
CF(CF−O(CFCFO)(CF(CHSiR (3−a)(OR (1)
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基である。炭素数1〜4の1価炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基であり、中でもメチル基、エチル基が好ましく、合成の容易性等の観点からメチル基が特に好ましい。R1が一般式(1)中に複数存在する場合には、R1が同じ基でも異なる基でもよいが、同じ基であることが入手しやすさの点で好ましい。
aは、2〜3であり、好ましくは2〜3の整数である。得られる撥水性被膜と基材の密着性の観点からは、より好ましくは、aは3(すなわち、トリアルコキシシラン)である。
pは、1以上であり、好ましくは1〜2の整数である。合成の容易性等の観点からは、より好ましくは、pは1である。
qは、0以上であり、好ましくは0〜5の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、qは0〜3の整数である。
mは、1以上であり、好ましくは1〜3の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、mは1〜2の整数である。
nは、2〜4であり、好ましくは2〜4の整数である。得られる撥水層の撥水性及び含フッ素シラン化合物の合成の容易性の観点からは、より好ましくは、nは3である。
p+q+2m+1は、5〜14であり、好ましくは5〜14の整数であり、より好ましくは6〜11の整数である。非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、より好ましくは、p+q+2m+1は6〜9の整数である。p+q+2m+1は、具体的には例えば、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、好ましくは1000以下であり、撥水性及び溶解性確保による均一な被膜形成の観点から、好ましくは500〜900であり、さらに好ましくは500〜800である。また、一般式(1)で表される化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.00である。
一般式(1)で表される化合物中のフッ素含有率は、非フッ素系有機溶媒への溶解性及び撥水性等の観点からは、好ましくは45〜58質量%である。
上記含フッ素シラン化合物は、表面処理剤の成分として用いることができる
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
検討に用いた表面処理剤の成分であるシラン化合物を以下に示す。なお、シラン1〜8及びシラン11は以下に示す方法により合成し、シラン9、10は市販品を用いた。各シラン化合物についての分子量及びフッ素含有率を表1に示す。
シラン1:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン2:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン3:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン4:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン5:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
シラン6:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン7:F{CF(CF)CFO}CF(CF)CONHCHCHCHSi(OCH
シラン8:(CHO)SiCHCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
p/q=0.8〜1.0, p+q≒45
シラン9:C13CHCHSi(OCH
シラン10:C17CHCHSi(OCH
シラン11:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi{OCH(CH
Figure 2021063057
<合成例1>
(シラン1の合成)
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管を取り付けた500mL四口フラスコに下記式[1−1]で表される臭素体100g、アリルトリブチルスズ66.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.73g、メタキシレンヘキサフルオライド100gを混合し、乾燥窒素中90℃で7時間反応させた。蒸留により目的物を精製し、下記式[1−2]で表される無色透明液体84.1gを得た(収率90%)。
化合物[1−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFBr
化合物[1−2]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCH=CH
NMR測定の結果は下記の通りである。なお、各シフト値が対応する構造を""で示す。
[1−2]
H−NMR(CDCl,TMS,δ):2.8−2.9(2H,m,−CF"CH"CHCH),5.8−5.9(1H,m,−CFCH"CH"CH),5.3−5.4(2H,m,−CFCHCH"CH")
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,s,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−).
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた200mL四口フラスコに化合物[1−2]80g、1,5−ジクロロ(シクロオクタジエニル)白金0.1質量%を含むアセトン溶液2.82g、メタキシレンヘキサフルオライド40gを混合し窒素雰囲気下に80℃で30分撹拌した。次いで、トリメトキシシラン26.3gを滴下し、80℃で24時間反応させた。蒸留により目的物を精製し、シラン1の無色透明液体88.3gを得た(収率91%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン1:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
シラン1
H−NMR(CDCl,TMS,δ):0.61−0.65(2H,t,−CFCHCH"CH"Si(OCH,1.7−1.8(2H,m,−CFCH"CH"CHSi(OCH),2.1−2.2(2H,m,−CF"CH"CHCHSi(OCH),3.5−3.6(9H,s,−CFCHCHCHSi(O"CH")).
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,m,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−).
<合成例2>
シラン2の合成
シラン1と同様の方法により、シラン2を合成した(2工程、収率85%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン2:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例3>
シラン3の合成
シラン1と同様の方法により、シラン3を合成した(2工程、収率87%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン3:CF(OCFCFCFCHCHCHSi(OCH
<合成例4>
シラン4の合成
シラン1と同様の方法により、シラン4を合成した(2工程、収率90%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン4:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例5>
シラン5の合成
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた1Lフラスコに化合物[5−1]500g、臭化アリル166g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩41.8gを混合し、55℃で30分間撹拌させた。次いで、30%水酸化ナトリウム水溶液182gを滴下し、55℃で6時間反応させた。生成物を水洗浄、脱水、濃縮させた後、蒸留により化合物[5−2]の無色透明液体483gを得た(収率90%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[5−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOH
化合物[5−2]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCH=CH
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロート取り付けた500mLフラスコに化合物[5−2]200g、1,5−ジクロロ(シクロオクタジエニル)白金0.1質量%を含むアセトン溶液6.70g、メタキシレンヘキサフルオライド100gを混合し、窒素雰囲気下に80℃で30分撹拌した。次いで、トリメトキシシラン62.4gを滴下し、80℃で24時間反応させた。その後、蒸留により目的物を精製し、シラン4の無色透明液体219gを得た(収率91%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン5:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
<合成例6>
シラン6の合成
シラン1と同様の方法により、シラン6を合成した(2工程、収率85%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
シラン6:CFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
<合成例7>
シラン7の合成
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管を取り付けた500mLフラスコに化合物[7−1]200gと3−アミノプロピルトリメトキシシラン36.4gのエタノール溶液を60℃で15時間撹拌した。その後、反応物を蒸留により精製し、シラン7の無色透明液体214gを得た(収率94%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[7−1]:F{CF(CF)CFO}CF(CF)COOCH
シラン7:F{CF(CF)CFO}CF(CF)CONHCHCHCHSi(OCH
<合成例8>
シラン8の合成
化合物[8−1]を原料としてシラン5と同様の方法によりシラン8を合成した(2工程、収率80%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[8−1]:HOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOH
シラン8:(CHO)SiCHCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
p/q=0.8〜1.0,p+q≒45
<合成例9>
シラン11の合成
300mLSUS製耐圧容器に[1−2]100g、トリクロロシラン36.4g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと錯体形成したPt金属のキシレン溶液0.17g、メタキシレンヘキサフルオライド50gを仕込み、100℃で8時間加熱撹拌した。蒸留により目的物を精製し、化合物[9−1]を得た。撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管、滴下ロートを取り付けた200mLフラスコに化合物[9−1]80g、オルト蟻酸トリイソプロピル、イソプロピルアルコールの混合溶液20g(オルト蟻酸トリイソプロピル:イソプロピルアルコール=25:1[mol:mol])を滴下し、窒素雰囲気下にて60℃で3時間撹拌した。溶媒等を留去し、残液に活性炭を加えて1時間撹拌した。その後、メンブランフィルターで濾過し、蒸留により目的物を精製し、シラン11の無色透明液体125.7gを得た(収率92%)。得られた化合物の構造および純度はH−NMR及び19F−NMRにより確認した。
化合物[9−1]:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSiCl
シラン11:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi{OCH(CH
シラン11
H−NMR(CDCl,TMS,δ):0.61−0.65(2H,t,−CFCHCH"CH"Si{OCH(CH),1.2−1.4(18H,d,−CFCHCHCHSi{OCH("CH")),1.7−1.8(2H,m,−CFCH"CH"CHSi{OCH(CH),2.1−2.2(2H,m,−CF"CH"CHCHSi{OCH(CH),3.8−3.9(1H,m,−CFCHCHCHSi{O"CH"(CH).
19F−NMR(CDCl,CFCl,ppm):−70.4(2F,m,CFCFCFCFO(CFCFO)"CF"−),−81.8(3F,m,"CF"CFCFCFO(CFCFO)CF−),−83.7(2F,m,CFCFCF"CF"O(CFCFO)CF−),−88.9〜−89.3(4F,m,CFCFCFCFO("CFCF"O)CF−),−126.7(4F,m,CF"CFCF"CFO(CFCFO)CF−)
<表面処理剤の作製>
各シラン化合物0.2g、イソプロピルアルコール39.68gを混合し、良く振り混ぜた。次いで、5%硝酸−イソプロピルアルコール溶液0.12gを添加し、十分撹拌することで、シラン化合物濃度0.5質量%の表面処理剤を得た。
(基材の準備)
風冷強化ガラス(75x360mm)又は名刺サイズスライドガラス(26x76mm)の表面をシリカ系研磨剤で十分研磨した後、精製水で洗浄し、乾燥させた後不織布(ベンコット)で乾拭きし基材を準備した。
(撥水性ガラスの作製)
調製した表面処理剤0.4mLを基板上に滴下し、不織布(ベンコット)で基板全面に十分引き伸ばした後、5分間風乾した。この操作を同一基板に対しもう一度行った。次に目視で白くまだらに残留している余剰な成分を精製水で湿らせた不織布(ベンコット)で拭きあげた。最後に室温にて12時間風乾させ硬化させることで、目視観察で問題のない透明な撥水性ガラスを得た。
(各シラン化合物の溶解性の評価)
(1)溶解性試験
シラン化合物を濃度1.0質量%になるよう各種有機溶媒(IPA:イソプロピルアルコール、MIBK:メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン、THF:テトラヒドロフラン)と混合し、溶液の外観を目視判断した。評価基準は下記の4段階とした。
1:シランが完全に溶解し、無色透明液体になる
2:シランが概ね溶解するが、わずかに濁りが存在する
3:シランが殆ど溶解せず、濁りや沈殿が存在する
4:シランが全く溶解せず、2層になる
(表面処理剤の評価)
(2)接触角測定
接触角計(NICK社製LSE−B100W)を用いて、2μLの水滴を発生させ、上記撥水性ガラスに対する接触角又を測定した。測定は表面上の異なる5箇所にて行い、その平均値で示した。
(3)転落角測定
上記接触角計を用いて、20μLの水滴を滴下した後、水平に設置した上記撥水性ガラスを徐々に傾け、水滴が転落し始めた時の撥水性ガラスと水平面との角度を測定した。測定は表面上の異なる5箇所にて行い、その平均値で示した。滑水性を評価するための1つの指標である。
(4)ペン書込み試験(撥油性、防汚性試験)
上記撥水性ガラスに対し、油性のマーキングペン(品名:マッキー、ゼブラ株式会社製)の書込みを行い、インクの弾き性能を目視判断した。評価基準は下記の6段階とした。
1:インクを良く弾く
2:インクを弾くが凝集速度が遅い
3:インクの弾きが弱い
4:インクの弾きが弱く凝集速度も遅い
5:インクの殆ど弾かず、インクの筋が残る
6:インクを全く弾かない
(5)耐摩耗性試験
耐摩耗試験機(APIコーポレーション製API−3DT)に不織布(ベンコット)を取り付け、500gf/cmの荷重下、40mmx60往復/分の速度で上記撥水性ガラスの表面を摺動させた。1000往復摺動するごとに接触角を測定し、接触角が100度を下回るまで、又は摺動回数が5000往復に達するまで試験を行った。
(6)メタルハライドランプ式促進耐候性試験
メタリングウェザーメーター(スガ試験機株式会社製M6T)に上記撥水性ガラスをセットし、放射面照度2.00KW/mでメタルハライドランプを照射させた。また、照射中1時間ごとに18分間水を噴霧させた。照射72時間後にそれぞれの撥水性ガラスについて、水の接触角の測定及びペン書込み試験を行った。
(7)実車試験
車のフロントガラスをシリカ系研磨剤で十分研磨した後、マイクロファイバータオルで水拭きし、室温下で乾燥させた。その後、該ガラスに対し、各表面処理剤を10mL滴下し、不織布(ベンコット)でガラス全面に十分引き伸ばした後、5分間室温にて乾燥させた。最後に余剰な成分をマイクロファイバータオルで水拭きし、撥水膜を形成した。雨天の中、60km/hで走行して、フロントガラスの雨水の弾き性を目視判断した。評価基準は下記の4段階とした。
1:雨水を良く弾き、速やかに流れ落ちる
2:雨水を弾くが速やかに流れ落ちない
3:雨水を殆ど弾かない
4:雨水を全く弾かない
各実施例及び比較例について、上記溶解性試験及び表面特性の評価結果をそれぞれ表2、表3に示す。
Figure 2021063057
表2より、シラン1、2、3、4、11は非フッ素系有機溶媒への溶解性が良好であった。一方で、シラン8は、フッ素含有率が高く、分子量も大きいので、非フッ素系有機溶媒への溶解性が悪かった。
以降の表面特性の評価においては、シラン8はイソプロピルアルコールへの溶解性が悪く、良好な撥水性皮膜が形成できないので、評価より除外した。
Figure 2021063057
表3より、シラン1〜4、11は転落角、接触角、耐摩耗性、耐候性いずれにおいても良好な結果であった。
シラン5は転落角、接触角、耐摩耗性は良好な結果であったが、耐候性が不十分であった。耐候性が不十分であったのは、シラン5のパーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の結合部位に結合エネルギーの弱いエーテル結合が存在する為であると考えられる。
シラン6は耐摩耗性、耐侯性が不十分な結果であった。これはシラン6が分子量及びフッ素含有率が小さいためであると考えられる。
シラン7は転落角、耐摩耗性、耐侯性が不十分であった。これは、パーフルオロポリエーテル基とアルコキシシリル基の連結部位に極性基のアミド基を有するためであると考えられる。
シラン9、10は初期の接触角、接触角に係る耐候性は良好な一方、初期の転落角、耐摩耗性、耐候性試験後の撥油性(ペン書込み試験)が不十分な結果であった。また、シラン9、10はフッ素鎖部分がパーフルオロアルキル基のみであるため、潤滑性に優れたパーフルオロポリエーテル基を有するシラン1〜4、11より滑水性、耐摩耗性が劣ると考えられる。
次にシラン1を表面処理剤に用い、硬化触媒の量に係る上記性能の評価を行った。
Figure 2021063057
表4より、本発明のシラン化合物は硬化触媒0.01〜6質量%において、十分な性能を発揮した。
以上のデータから判るように、本発明のシラン化合物は表面処理工程で用いられる非フッ素系有機溶媒への高い溶解性を有し、さらには処理物品には良好な撥水性と耐久性が付与される。このように本発明は、自動車などの窓ガラスなどの表面処理に対して優れた技術を提供する。
本発明の表面処理剤で処理した撥水性物品は、良好な撥水性、滑水性と耐摩耗性、耐候性を兼ね備えており、自動車や船舶、航空機など輸送機の窓ガラスやミラー、ボディの塗装面、あるいは建築用の窓ガラス等として用いることが出来る。また、該表面処理剤は、タイル、瓦、衛生陶器、食器等のセラミック基材に良好な撥水性を付与することが出来る。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される含フッ素シラン化合物。
    CF(CF−O(CFCFO)(CF(CHSiR (3−a)(OR (1)
    (一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4の1価炭化水素基であり、aは2〜3、pは1以上、qは0以上、mは1以上、nは2〜4、p+q+2m+1は5〜14、である。)
  2. 一般式(1)中、aは2〜3の整数、pは1〜2の整数、qは0〜5の整数、mは1〜3の整数、nは2〜4の整数であり、p+q+2m+1は5〜14の整数である、
    請求項1に記載の含フッ素シラン化合物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の含フッ素シラン化合物及び/又はその加水分解物縮合物と、非フッ素系有機溶媒と、を含有する表面処理剤。
  4. 前記非フッ素系有機溶媒は、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、及びケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1つである請求項3に記載の表面処理剤。
  5. 硬化触媒を、含フッ素シラン化合物100質量部に対して0.01〜6質量部含み、前記硬化触媒は、無機酸または有機酸である、請求項3又は請求項4に記載の表面処理剤。
  6. 基材の表面に請求項3〜請求項5の何れか一項に記載の表面処理剤を塗布、硬化させた撥水性被膜を有する物品。
  7. 輸送機用窓ガラス、輸送機のボディ、サニタリー製品又は一般産業用ガラスである請求項6に記載の物品。
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