JP2021060153A - 昇華装置及び昇華方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、目的の試料の品質を低下させずに、また、昇華効率を効果的に速めることを可能とする昇華装置及び昇華方法を提供する。【解決手段】マイクロ波照射空間に配され、固体状の被処理対象物が収納される真空容器と、マイクロ波を照射してマイクロ波照射空間内に定在波を形成するマイクロ波加熱手段とを含み、前記被処理対象物の少なくとも一部が昇華中に、前記定在波により前記被処理対象物を加熱する、昇華装置及び昇華方法。【選択図】図1

Description

本発明は、昇華装置及び昇華方法に関する。
化学反応の前工程や後工程における原料や反応生成物の乾燥ないし濃縮のために、真空凍結乾燥や減圧濃縮が用いられている。また、食品やバイオテクノロジーの分野においては、食品や細胞、バイオ試料等の長期保存のため、細胞膜の破壊などのダメージを最小にして試料中の水分を減量・乾燥するため、真空凍結乾燥が行われている。
真空凍結乾燥は、凍結した試料を入れたチャンバー内を真空にして、試料中の水分等の不要な成分を昇華させて除去する。この真空凍結乾燥は、昇華対象物は液体状態を経ずに気体となるため、周囲を濡らすことがなく、目的の成分の劣化、分解等を抑えながら乾燥ないし濃縮ができる。
真空凍結乾燥は、乾燥を完了するまでに長時間を要する。これは、昇華により試料から熱が奪われ、十分な昇華熱を試料に供給できないことが一因と考えられる。真空凍結乾燥の処理時間を短縮するため、該チャンバー内にヒータを設置して試料を加熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、有機エレクトロルミネッセンス材料を用いた発光デバイスなどでは、有機エレクトロルミネッセンス材料中の微量の不純物が、発光デバイスの性能の低下を招く。したがって、材料をより高純度に精製するために昇華精製が行われる。昇華精製は、精製の目的成分を昇華対象とする。目的成分を含む固体状の試料を真空引きした状態の昇華管内に配し、昇華管に配した熱源により試料を高温に曝して目的の成分を昇華させる。昇華物は真空ポンプ側に流れながら冷やされ、一定温度以下で固化したものを回収し、目的の生成物を得る。この昇華精製においても、昇華熱の不足は、昇華精製後の目的成分の純度の低下を招く。
特開2017−020738号公報
真空凍結乾燥や昇華精製において、昇華中に、試料に外部から昇華熱を供給することにより、昇華効率を高めることが可能となる。しかし、昇華は一般に真空状態で生じさせるため、熱源から試料への熱伝導の効率化において課題がある。
また、例えば真空凍結乾燥では、特許文献1に記載されるように試料を配したチャンバー内にヒータを設置することにより昇華熱を供給すると、真空凍結乾燥中に昇華対象物が融解して液化し、乾燥品の品質に悪影響を及ぼすことがある。この融解を防ぐためにヒータの温度を下げると、昇華効率を十分に高めることができない。
本発明は、目的の試料の品質を低下させずに、また、昇華効率を効果的に高めることを可能とする昇華装置及び昇華方法を提供することを課題とする。
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
[1]
マイクロ波照射空間に配され、固体状の被処理対象物が収納される真空容器と、
マイクロ波を照射してマイクロ波照射空間内に定在波を形成するマイクロ波加熱手段とを含み、
前記被処理対象物の少なくとも一部を昇華中に、前記定在波により前記被処理対象物を加熱する、昇華装置。
[2]
前記真空容器内を真空にする真空排気手段を有する[1]に記載の昇華装置。
[3]
前記マイクロ波加熱手段は、前記マイクロ波照射空間を有する空胴共振器と、マイクロ波供給手段とを含む、[1]又は[2]に記載の昇華装置。
[4]
前記定在波の共振周波数の変化に基づき前記被処理対象物の少なくとも一部の融解を検知し、当該検知に基づき前記マイクロ波の出力を制御する制御部を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の昇華装置。
[5]
前記定在波は、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)のシングルモードである、[1]〜[4]のいずれかに記載の昇華装置。
[6]
前記昇華装置が真空凍結乾燥装置である、[1]〜[5]のいずれかに記載の昇華装置。
[7]
真空容器内に収納した固体状の被処理対象物の少なくとも一部を昇華中に、該被処理対象物にマイクロ波の定在波を照射して該被処理対象物を加熱する、昇華方法。
[8]
前記昇華で失われた前記被処理対象物の熱量を、前記定在波照射により該被処理対象物に供給する、[7]に記載の昇華方法。
[9]
前記昇華方法が真空凍結乾燥方法である、[7]又は[8]に記載の昇華方法。
[10]
前記被処理対象物中の氷を昇華対象とする、[7]〜[9]のいずれかに記載の昇華方法。
[11]
前記定在波の共振周波数の変化に基づき前記被処理対象物の少なくとも一部の融解を検知し、当該検知に基づいて前記マイクロ波の出力を制御する、[7]〜[10]のいずれかに記載の昇華方法。
[12]
前記定在波は、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)のシングルモードである、[7]〜[11]のいずれかに記載の昇華方法。
本発明の昇華装置及び昇華方法によれば、目的の試料の品質を低下させることなく、昇華効率を効果的に高めることが可能になる。
本発明の昇華装置の好ましい一実施形態である凍結乾燥装置を模式的に示した部分断面図である。 実施例1の結果を示した図面であり、左縦軸にマイクロ波出力及び真空度を表し、右縦軸に共振周波数を表し、横軸に処理時間を表した図面である。
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して以下に説明する。本発明は、本発明で規定されること以外、下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される装置の形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各構成部材のサイズおよび相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
[昇華装置]
本発明の昇華装置は、マイクロ波を照射してシングルモードの定在波を形成するマイクロ波照射空間に、被処理対象物の少なくとも一部を昇華させる真空容器を配し、該被処理対象物の昇華中に該定在波を照射して該被処理対象物を加熱するものである。
本発明における「真空」とは、日本工業規格(JIS 8126−1 2.1.1)によって定義される「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態」である。また「真空容器」とは上記のような空間状態を作り出すことができる容器をいう。
本発明の昇華装置としては、例えば、真空凍結乾燥装置、昇華精製装置等に用いることができる。しかし、本発明の昇華装置はこれらに限定されるものではなく、固体から気体への昇華を生じさせる装置であれば、当該昇華の効率化を目的として広く適用することができる。
本発明の昇華装置の一実施形態である真空凍結乾燥装置について、図1を参照してその詳細を説明する。
図1に示すように、真空凍結乾燥装置として用いる昇華装置1は、マイクロ波を照射してシングルモードの定在波をマイクロ波照射空間11Aに形成するマイクロ波加熱手段2を有する。該マイクロ波照射空間11Aには、一端が閉じられた管構造(管状ともいう)の真空容器20が配される。真空容器20は、その内部空間20Aに被処理対象物31が収納され、該被処理対象物31の少なくとも一部(被処理対象物31中に含まれる不要な成分)を昇華させるものである。この真空容器20がマイクロ波照射空間11Aに配されることによって、マイクロ波照射空間11A内に発生させた定在波により、真空容器20内に配した被処理対象物31を集中的にマイクロ波照射できる。その結果、被処理対象物31を、昇華中に効率的に加熱することができる。
通常、被加熱対象物31の昇華中には、昇華熱が消費される。すなわち、昇華により被処理対象物31から熱が奪われ、被処理対象物31の温度が低下して、昇華効率が低下する。しかし、上記のように定在波による集中的なマイクロ波照射によって被照射対象物31を加熱することにより、真空中においても効率的に、目的の部位に局所的に、かつ所望の熱量で、昇華熱を供給することができる。そして、昇華速度の低下を効果的に抑制することができる。すなわち、被加熱対象物31にマイクロ波の定在波を照射して加熱し、昇華によって失われた熱量分を非接触にて被加熱対象物31に供給することが可能になる。これによって、凍結乾燥時間の短縮が可能になる。
上記マイクロ波加熱手段2は、マイクロ波照射空間11Aを有する空胴共振器11を備えることが好ましい。また、マイクロ波照射空間11A内に定在波を形成することができる周波数のマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段を有することが好ましい。マイクロ波供給手段は、マイクロ波を出力するマイクロ波発生器12、出力したマイクロ波を空胴共振器11のマイクロ波照射空間11A内に供給するアンテナ13を含む。マイクロ波発生器12には、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器(図示せず)を備える。それとともにマイクロ波発振器を制御する制御部14を備えることが好ましい。さらに図示はしないが、マイクロ波の減衰レベルを調節する減衰器、マイクロ波電力を増幅する増幅器、反射波を吸収するアイソレータ、反射波を抑制する整合器等を備えてもよい。
空胴共振器11は、その内部のマイクロ波照射空間11Aに定在波を形成する。定在波は、電界強度又は磁界強度の分布が極大となる部分を作り出せるモードであれば特に制限されない。すなわち、定在波の電界によって被処理対象物31を加熱することもでき、磁界によって被処理対象物31を加熱することもできる。定在波のモードの選択は、被処理対象物31の物理・化学的組成等に応じて適宜に行われる。
なかでも定在波は、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)の定在波のシングルモードが好ましい。このようなシングルモードの定在波の形成により、例えば、マイクロ波照射空間11Aの中心軸Cにおいて、マイクロ波照射空間11A内に形成される定在波のエネルギー(電界強度)を極大とすることができる。また中心軸C方向に沿って、定在波のエネルギーが均一とすることができる。このエネルギーが極大でかつ均一となる部分及び/又はその近傍に沿って、管状の真空容器20が配される。真空容器20内(内部空間20A)には被処理対象物31が配される。例えば、TM010モードの定在波が発生する円筒形の空胴共振器11の場合、その中心軸Cにおける電界強度が極大となり、中心軸Cに沿って電界強度が均一になる。すなわち、被処理対象物31への効率的なエネルギー供給が可能となる。
このため、真空容器20の中心軸Ctは、空胴共振器11の中心軸Cに一致して配されることが好ましい。この真空容器20内の内部空間20Aに被処理対象物31が配される。被処理対象物31は、真空容器20の内部空間20A内のすべてを満たしていてもよく、または一部を満たしていてもよい。
空胴共振器11のマイクロ波供給口15には、高周波を印加することができるアンテナ13を有することが好ましい。アンテナ13は、ケーブル16を介してマイクロ波発生器12と接続される。なお、アンテナ13は、マイクロ波発生器12と電気的に接続されていれば、その接続形態は問わない。
マイクロ波発生器12から発せられたマイクロ波をアンテナ13から空胴共振器11内に供給することができる。マイクロ波発生器12では、増幅器(図示せず)によってマイクロ波電力を調節することができ、それによって空胴共振器11内に形成される定在波のエネルギー強度分布を制御することが可能となる。
定在波は、空胴共振器11内に上述したTMモードまたはTEモードの定在波が形成される周波数とすることができる。
また、アンテナ13のかわりに導波管を用いたマイクロ波供給口を設置した形態とすることもできる。供給するマイクロ波の周波数を伝送できる角筒型導波管もしくは円筒型導波管と空胴共振器とを適切な開口部を有したアイリスを介して配することで、マイクロ波発振器からのマイクロ波エネルギーを空胴共振器11に導入することができる。
なお、上記の各形態は、本発明の昇華装置1の一例を説明したものであり、本発明の昇華装置1は、本発明で規定すること以外は、上記の形態に何ら限定されるものではない。
上記のマイクロ波加熱手段2では、内部に被処理対象物31が配された真空容器20が存在する空胴共振器11に対して、マイクロ波発生器12からマイクロ波を供給し、空胴共振器11内に上記の定在波を形成する。例えば、マイクロ波照射空間11A内の電界強度が極大となる部分に沿って真空容器20を設けることにより、真空容器20内の被処理対象物31を高いエネルギー効率で加熱することができる。上記昇華装置1では、空胴共振器11に設けられたマイクロ波供給口15から定在波を形成するマイクロ波がマイクロ波照射空間11A内に供給される。
定在波の周波数は、例えば、2.45GHz帯の周波数であっても5.8GHz帯もしくは915MHz帯の周波数帯であってもよく、空胴共振器11内に定在波を形成できる周波数であればよい。例えば、上述のように、マイクロ波照射空間11Aに、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)のシングルモード定在波を形成することができる。TMmn0の具体例として、TM0n0モードの定在波が挙げられ、TM010、TM020、TM030のモードの定在波が形成されることがより好ましい。なかでも中心軸Cに電界強度のピークが位置するという理由から、円筒型空胴共振器におけるTM010モードの定在波が形成されることがさらに好ましい。TEm0nの具体的としては、TE10nモードの定在波が挙げられ、TE101、TE102、TE103のモードの定在波が形成されることがより好ましい。
上記昇華装置1において、マイクロ波発生器12から供給されるマイクロ波は、周波数を調節して供給することができる。周波数の調節により、空胴共振器11内に形成される定在波の電界ないし磁界の強度分布を所望の分布状態に制御することができる。またマイクロ波電力の出力によって定在波の強度を調節することができる。つまり、被処理対象物31の加熱状態を制御することが可能になる。
具体的には、下記の制御部14によって制御することができる。制御部14は、例えば、マイクロ波発生器に内蔵されていても、又は別体に構成されていてもよい。この制御部14は、空胴共振器11のマイクロ波照射空間11A内に形成された定在波の周波数(共振周波数)に基づいて、マイクロ波発生器12から発生するマイクロ波の周波数を調節する。そしてマイクロ波発振器12より調節された周波数のマイクロ波が発振される。
マイクロ波照射空間11A内の定在波の周波数(共振周波数)を検出するため、空胴共振器11には検出部17が配されていることが好ましい。検出部17は、マイクロ波照射空間11A内部のエネルギー強度を計測し、その信号を処理して周波数を検出するものであればよい。またマイクロ波発生器12は、真空容器20の温度を測定する温度測定器(図示せず)の値をもとにマイクロ波出力を制御することもできる。マイクロ波出力の制御方法として、マイクロ波発振器(図示せず)とマイクロ波増幅器(図示せず)との間に設置した減衰器(図示せず)の減衰率を制御することもできる。また、後述するように、検出部17によって被処理対象物31の状態(融解の有無等)を検知することもできる。
<真空容器>
一端が閉じられた管構造の真空容器20は、外径断面及び内径断面が円形であることが好ましく、例えば円管状を成す。真空容器20は、マイクロ波による加熱の場合、マイクロ波を透過する材料で構成されることが好ましく、このような材料として、石英等のガラス材料、フッ素樹脂等の樹脂材料、アルミナ等のセラミック材料等を挙げることができる。真空容器20は、その一端側から被処理対象物が供給され、取り出される形態を有する。上記真空容器20の上方の開口部21側には、該真空容器20内を密閉可能な蓋22が設けられていることが好ましい。
また、空胴共振器11自体を真空容器として用いることもできる。この場合、空胴共振器とは別に真空容器を用意する必要がない。
<真空排気手段>
真空排気手段としての真空ポンプ23は、上記開口部21側に、蓋22を通して該真空容器20内に通じる配管24を介して接続されることが好ましい。該配管24には真空容器20側から圧力計(例えば、真空計)25、真空圧力調節弁26が配されていることが好ましい。この真空圧力調節弁26の開度によって真空容器20内の圧力を調節することができる。
このように、真空ポンプ23によって真空容器20内を真空にすることによって、被処理対象物31を構成する不要成分の昇華が促進され、昇華成分が被処理対象物31内から除去される。上記真空ポンプ23は、例えば真空容器20内の気圧を10Pa、より好ましくは10Pa、さらに好ましくは10−1Paまで減圧させる能力があることが好ましい。
<冷却器・断熱容器>
上記昇華装置1には、真空容器20内の被処理対象物31を冷却し、もしくは冷却状態を維持する冷却器28を備えることが好ましい。この冷却器28は、冷却・固化した状態の被処理対象物31に含まれる昇華対象成分を、固体状態で維持できる冷却能力を有することが好ましい。真空凍結乾燥において昇華対象物は通常は水分であり、この場合、氷に相変化する温度以下であれば特に制限はなく、例えば、常圧(1気圧)において冷却温度は−5〜−200℃に設定される。
また、上記空胴共振器11と上記冷却器28とは、断熱容器29内に配されることが好ましい。断熱容器29は、一般的な断熱容器であり、外部温度を遮熱でき、内部の冷気を閉じ込めるものであればよい。例えば、発砲スチロール製の密閉容器が挙げられ、より好ましくは真空断熱容器が挙げられる。
上記冷却器28は、断熱容器29内部を冷却して、空胴共振器11を冷却できるものであればよく、その設置位置は問わない。例えば、冷却器28は、空胴共振器11の底部側に配し、空胴共振器11の底部側より冷却する構成としてもよい。また冷却器28は、断熱容器29の内面に張り巡らされた冷媒を通す配管で構成されてもよい。また冷却器28は、空胴共振器11の外周面全体または側周に張り巡らされた冷媒を通す配管で構成されてもよい。もしくは、空胴共振器11内を冷媒で満たすこともできる。冷媒としてはマイクロ波吸収の少ない物質が望ましい。当該マイクロ波周波数における誘電損失ε’’が10−1以下、より好ましくは10−2以下、さらに好ましくは10−3以下の冷媒が望ましい。たとえば、フロリナート(TM)、トルエン、ヘキサン、液体直鎖アルカン、液体窒素、液体酸素、液体CO、ドライアイスなどが挙げられる。
上記冷却器28は、上記のように冷媒を用いて冷却する構成のものの他に、ペルチエ効果を利用して冷却するものであってもよい。例えば、空胴共振器11の内面全体をペルチエ効果素子で覆う形態であってもよい。または、断熱容器29の壁面をペルチエ効果素子で形成した形態であってもよい。
本発明の昇華装置1では、冷却器28による被処理対象物31の固体状態の維持を前提としながら、マイクロ波の定在波照射により昇華熱に相当する熱量を集中的に供給し、効率的な昇華を実現するものである。この効率的な昇華は、被処理対象物31へのエネルギー供給量の制御を、マイクロ波の定在波照射により正確に、効率的に行うことができることにより実現される。
続いて、本発明のマイクロ波加熱手段2の構成について、以下に詳説する。
<空胴共振器>
マイクロ波加熱手段2に用いる空胴共振器(キャビティー)11は、一つ以上のマイクロ波供給口を有し、マイクロ波を供給した際にシングルモードの定在波が形成されるものであれば特に制限はない。例えば、一つのマイクロ波供給口(アンテナ13)を有する。この空胴共振器11は、マイクロ波を供給した際にTMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)モード又はTEm0nモード(m、nは1以上の整数)の定在波を形成できるものが好ましい。例えば、円筒型又は角筒型等の後述する種々の形状のマイクロ波照射空間11Aを有する空胴共振器11を用いることができる。本明細書において円筒形の空胴共振器とは、該空胴共振器の中心軸Cに垂直な内側断面形状が円形であるものの他、当該断面形状が楕円形もしくは長円形であるものを含む意味に用いる。また、角筒形の空胴共振器は、中心軸Cに直角な内側断面形状が多角形であるものを意味し、当該断面形状が例えば4〜10角形であることが好ましい。また、上面と下面とが面対称になる形状であってもよい。さらに、多角形の角が、丸みを帯びた形状であってもよい。
空胴共振器11は、電気抵抗率の小さいものが望ましく、通常は金属製であり、一例として、アルミニウム、銅、鉄、マグネシウム、黄銅、ステンレス、若しくはそれらの合金等を用いることができる。または、樹脂やセラミック、金属の表面に電気抵抗の小さい物質をめっき、蒸着などによりコーティングしてもよい。この場合は、空胴共振器の構造は樹脂やセラミックなど絶縁体で作製しその内面や外面に、一例として金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ロジウム若しくはそれらの合金等を0.1μmから1mm程度の厚さでコーティングして用いることができる。
空胴共振器11の大きさも上記説明した形態において、目的に応じて適宜に設計することができる。空胴共振器11において中心軸Cの方向の長さは特に限定されないが、短すぎると空胴共振器11内に十分なマイクロ波電力を供給できないことがある。また供給するマイクロ波の波長をλとしたとき、長さがλ以上の場合は、その方向に向かって電界分布が極大をもつ高次の定在波が形成される共振周波数と、目的の定在波の共振周波数を分離する必要がある。このため、中心軸C方向の空胴共振器の寸法はλ以下とすることが好ましい。
マイクロ波供給口が二つ以上の場合は、お互いの位相を制御することで形成される時間平均的な定在波を用いてもよい。
<マイクロ波発生器>
本発明の昇華装置1は、マイクロ波発生器12から発生したマイクロ波をマイクロ波供給口15からアンテナ13を介して空胴共振器11のマイクロ波照射空間11A内に供給することができる。マイクロ波発生器12は、前述したように、マイクロ波発振器(図示せず)を備え、またマイクロ波発振器を制御する制御部14を備えてもよく、さらに減衰器、増幅器、アイソレータ、整合器等を備えていてもよい。もしくは、空胴共振器11にアイリスを介して接続した導波管を用いてマイクロ波照射空間11A内にマイクロ波を供給してもよい。
<マイクロ波発振器>
上記マイクロ波発生器12に含まれるマイクロ波発振器としては、発振周波数を2.45GHz帯の範囲内にて調節できるマイクロ波発振器を挙げることができる。例えば、半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器や、マグネトロン等のマイクロ波発振器を用いることができる。マイクロ波の周波数を微調節できるという観点から、半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器を用いることが好ましい。半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器としては、例えばガンダイオード、アバランシェダイオード(インパットダイオード)、等を用いたマイクロ波発生器が挙げられる。もしくは、MHz帯ではコイルとコンデンサからなるLC回路による発振回路も用いることができる。また、これらの素子と周波数制御機構をパッケージ化したVCO(Voltage Controlled Oscillator)やPLL(Phase Lockd Loop)回路等も挙げることができる。マイクロ波発振器によって発生されるマイクロ波は、周波数が2.45GHz帯のマイクロ波に限定されるものではなく、915MHz帯、5.8GHz帯等、その他の周波数帯のマイクロ波を発生するものも、適宜、用いることができる。
上記のように、半導体式マイクロ波発生器として、半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器を用いたことから、マイクロ波発振器のマイクロ波出力の微調節が容易になる。
<減衰器>
減衰器(アッテネータ)は、被処理対象物の温度を調節するように減衰レベルを調節し、最終のマイクロ波電力を決定する。マイクロ波増幅器の入り口レベルを減衰器で調節することで、最終出力を調節するものである。減衰器を用いないマイクロ波の調節手段として、マイクロ波増幅器の増幅率を調節する方法もある。
<制御部>
制御部14は、検出部17によって検出される共振周波数の変化に基づいて、マイクロ波供給手段により供給するマイクロ波の周波数を制御する。この共振周波数の変化は、被処理対象物の、形状、組成、相及び温度等の状態の少なくともいずれかが変動することによって被処理対象物の誘電率が変化することによる。この誘電率の変化によって、電界が極大となる周波数が変化し得るため、電界が極大となる位置を一定位置に制御することができる。
電界の極大位置を一定位置に制御するには、マイクロ波発振器から発生するマイクロ波を、空胴共振器11のマイクロ波照射空間11A内に形成された定在波の周波数に一致するように調節する方法がある。この一致するとは、完全に一致することが好ましいが、ある範囲内、例えば1%以内の差がある場合も周波数が一致している範ちゅうに含むものとする。
例えば、検出部17によって、検出された信号を解析して、マイクロ波発振器へ送る周波数信号を決定する。そして、周波数を一致させたマイクロ波をマイクロ波発振器より発振させて、マイクロ波照射空間11A内に照射する。
制御部14の機能は上記に限定されることはなく、昇華装置の各種機能を制御することもできる。
上記制御部14における制御方法の具体的一例を説明する。検出部17によってマイクロ波照射空間11A内のマイクロ波のエネルギー強度に比例した出力信号を検出する。一方、マイクロ波照射空間11Aに供給するマイクロ波は、マイクロ波発振器から発振したマイクロ波もしくはマイクロ波発振器から発振したマイクロ波を増幅器によって増幅したマイクロ波である。このとき、マイクロ波発生器12から発生する周波数を例えば2.45GHz帯全域又は2.45GHz帯の一部の帯域で掃引すると、検出部17からのエネルギー強度の出力信号は極大値をもつ分布を得る。この極大値はマイクロ波照射空間11A内に定在波が形成できていることを意味しているので、あらかじめTM010モードの定在波の共振周波数と比較することで所定のモードの共振周波数を検出することができる。制御部14によって、このマイクロ波発生器12から発生するマイクロ波の周波数が、検出したマイクロ波の周波数に一致するように、マイクロ波発振器よりマイクロ波を発振する。
もしくは制御部14では、検出部17からの出力信号を用いず、マイクロ波発生器12と空胴共振器11の間に設置する反射波検出器(図示せず)からの反射波信号を用いることもできる。この場合、反射波が小さい、つまり反射波の周波数が極小値となることが、空胴共振器11内にエネルギーが供給され定在波が形成されていることを意味する。したがって、マイクロ波の反射波の極小値からマイクロ波の共振器周波数を導出することもできる。
このようにして、検出部17によって検出される極大値、もしくは反射波検出器によって検出される極小値から導出したマイクロ波の共振周波数に一致した周波数のマイクロ波を、マイクロ波発生器12のマイクロ波発振器から発振させるようにする。または検出したマイクロ波の共振周波数に一致した周波数のマイクロ波を増幅器から出力させるようにする。
そして、マイクロ波照射空間11A内に共振周波数に一致させた周波数のマイクロ波を供給する。
共振周波数を検出するための操作は定期的に行うことが望ましい。外乱が大きい場合や温度変化、体積変化、組成変化等の状態変化が大きい場合、マイクロ波照射を開始した直後は短い周期、例えば1秒以下の周期で行うことが望ましい。一方、外乱が少ない場合や、温度変化、流量変化、組成変化等の状態変化が少ない場合、マイクロ波照射を開始し十分な時間が経過し安定したのちは、長い周期、例えば1分おきに行ってもよい。
共振周波数を検出するためにマイクロ波発生器からのマイクロ波の周波数を掃引する場合、掃引周波数の幅は狭いほうが望ましい。しかし変動が大きく、掃引周波数の幅が狭すぎる場合には、掃引周波数内に極大値が見つからないことがある。その場合は掃引周波数幅を広げて、再度掃引することで共振周波数を検出することも望ましい。
制御部14によれば、マイクロ波の共振周波数の変化に基づき、被処理対象物31中の昇華対象成分の融解(液化)の有無を検知した結果からマイクロ波の出力を制御することができる。上記共振周波数の変化は、検出部17によって検出される共振周波数に基づいて検知することができる。例えば、真空凍結乾燥により水分を除去する場合、氷で存在していた水分が融解すると、共振周波数は低下する。
共振周波数の低下を検知した場合、制御部14によってマイクロ波の出力を低下させることにより、被処理対象物31へのエネルギー供給量を低減でき、融解の進行を抑えることができる。また、水分は固体の場合にはマイクロ波の吸収は少ないが、液体になるとマイクロ波の吸収が格段に高まる。したがって、マイクロ波の出力を低下させた場合でも、液状の水分はマイクロ波を効率的の吸収することができ、その結果、蒸発し、除去することができる。すなわち、真空凍結乾燥に、マイクロ波の定在波を利用して昇華熱を供給することにより、効率的な昇華熱の供給だけでなく、融解物が生じた場合にはその蒸発・除去も促進することができる。
例えば、上記の昇華対象物の融解とその素早い蒸発・除去とを交互に連続的に行えば、凍結乾燥の効率的な進行と、処理後の試料の高品質化とを両立することができる。すなわち、本発明の昇華装置1は、マイクロ波の出力を一定間隔で増減しながらマイクロ波の定在波を被処理対象物31に照射する形態とすることも好ましい。
もしくは、マイクロ波をパルス状にすることで出力を調整してもよい。パルスによる出力調整としてはPWM(Pulse Width Modulation)制御を用いることもできる。PWM制御においては、共振周波数変化を利用してパルス幅(Duty比)を制御することが好ましい。
上記の事項を被処理対象物31の観点からみて一般化すると、本発明の昇華装置1に適用する被処理対象物31は、その中に含まれる昇華対象成分が、固体状態におけるマイクロ波吸収量をP1、液体状態におけるマイクロ波吸収量をP2とした場合、P1<P2であることが好ましい。このような被処理対象物31を適用することにより、昇華中においてマイクロ波の出力を一定間隔で増減することによって、昇華効率を高めながら、昇華後の試料の高品質化も実現することができる。
<マイクロ波増幅器>
マイクロ波発生器には、マイクロ波発振器から発生したマイクロ波を増幅する増幅器を備えることが好ましい。このマイクロ波増幅器の構成に特に制限はないが、例えば、高周波用電界効果トランジスタ(FET)を有する高周波トランジスタ回路で構成されることが、例えば小型化において好ましい。またマイクロ波増幅器の出力電力は、適宜設定することができる。照射するマイクロ波電力を調節する手段として、マイクロ波増幅器の入力段手前に減衰器を設けてもよい。もしくはマイクロ波増幅器の増幅率を調節する手段を用いてもよい。
<アイソレータ>
アイソレータは、マイクロ波発振器にて発生する反射波の影響を抑制(例えば吸収)してマイクロ波増幅器を保護するものであり、一方向(アンテナ方向)にマイクロ波が供給されるようにするものである。このアイソレータの代わりにサーキュレータを用いることもできる。サーキュレータを用いる場合には3つのポートのうち一つのポートに終端抵抗(ダミーロード)を接続する。残りの2つのポートが入力と出力になる。マイクロ波増幅器や、配線、ケーブル、コネクタ類が反射波に対して損傷を受けないレベルであれば、アイソレータもしくはサーキュレータを設けなくてもよい。
<整合器>
整合器は反射波が発生しないように反射波を抑制する機能を有することが好ましい。整合器としては、可変式のスタブチューナやスラグチューナもしくはEHチューナ等用いることができる。また、被処理対象物のマイクロ波吸収特性が大きく変化しない場合は、固定式の整合器を用いることもできる。また、被処理対象物を設置した際、一時的に整合器を調節できる半固定式の整合器を用いることができる。
例えば、回路基板上にマイクロストリップラインによって構成された線路と、該線路のインピーダンス(例えば、Sパラメータ)を調節するコンデンサとを有する構成をとることができる。また、線路には、線路のインピーダンスを調節するための線路パターン調節部を配してもよい。
マイクロ波増幅器や配線、ケーブル、コネクタ類が反射波によって損傷を受けないレベルであれば、整合器を設けなくてもよい。
<アンテナ>
円筒形の空胴共振器11の中心軸Cに平行な壁面(円筒の内面)又はその近傍には、マイクロ波供給口15が設けられている。マイクロ波供給口15を通じてマイクロ波照射空間11Aには、高周波を印加することができるアンテナ13が配されていることが好ましい。アンテナ13としては磁界励起アンテナ、例えばループアンテナ、または電界励起アンテナ、例えばモノポールアンテナやダイポールアンテナ等を用いることが好ましい。アンテナ13の入力端は、整合器の線路の出力端に接続されている。
もしくは空胴共振器11にアイリスを設けた導波管を用いてマイクロ波供給口を構成することもできる。
通常、マイクロ波発振器から発せられたマイクロ波を、マイクロ波増幅器、アイソレータ、整合器を介してアンテナを通してマイクロ波照射空間11A内に供給する。
マイクロ波照射空間11A内の上記アンテナを磁界励起アンテナとなるループアンテナとする場合の端部は空胴共振器壁面など接地電位と接続することが好ましい。このアンテナにマイクロ波(高周波)を印加することで、例えばループアンテナのループ内に磁界が励振され空胴共振器内に定在波を形成する形態とすることができる。
マイクロ波照射空間11A内の上記アンテナを電界励起のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナとする場合、端部は空胴共振器壁面に接続せず、オープンとすることが好ましい。
上記アンテナをループアンテナとして構成する場合の端面は空胴共振器壁面など接地電位と接続することが好ましい。アンテナにマイクロ波(高周波)を印加することで、ループアンテナのループ内に磁界が励振され空胴共振器11内に定在波を形成する形態とすることができる。
例えば、上記の円筒状の空胴共振器11においてTM010のシングルモード定在波を形成させた場合、中心軸Cにおいて、電界強度が極大になり、中心軸C方向に電界強度が均一になる。したがって、真空容器20において、その内部に存在する被処理対象物31を、均一に、高効率にマイクロ波加熱することが可能になる。
なお、マイクロ波発生器12から導波管を用いてマイクロ波供給口15にマイクロ波を供給してもよい。
上記構成では、マイクロ波発振器とアンテナ13との間に配した整合器(図示せず)やアイソレータ(図示せず)は、反射波が問題とならない場合には設置しなくてもよい。
さらに上記構成では、装置を小型化するために、空胴共振器11と一体に構成された筐体内に、マイクロ波増幅器、アイソレータ、整合器、アンテナ等を配することも好ましい。
上記では、本発明の昇華装置の一実施形態として真空凍結乾燥装置を例にして説明した。本発明の昇華装置の別の実施形態の一例として、昇華精製装置が挙げられる。
昇華精製装置それ自体は公知であり、高純度が求められる有機材料の精製等に広く用いられている。この昇華精製装置は、一般的には、精製対象物が設置される昇華部と昇華精製物を捕集する捕集部とを備えた昇華管と、真空ポンプと、昇華管と真空ポンプとを繋ぐ配管とを備え、さらに昇華部を加熱するための熱源が配設される。熱源によって昇華部が加熱されると試料が昇華し、気化物は真空ポンプ側に流れながら冷やされ、一定温度以下になると固化する。目的物を捕集部で固化・捕集するために、精製対象物の種類に応じて、昇華管の軸方向に沿って適宜に温度勾配が設けられる。
このような形態の昇華装置において、昇華熱の不足は昇華効率を低下させ、昇華精製後の目的成分の純度の低下を招く。したがって、昇華精製装置においても、上述した昇華装置1と同様に、マイクロ波の定在波照射により昇華熱を供給することにより、昇華効率を高めて目的成分の純度の向上を実現することができる。昇華精製装置に適用するマイクロ波加熱手段としては、上記の昇華装置1で説明したものを適宜に適用することができる。
<被処理対象物>
本発明の昇華装置で処理する被処理対象物31に特に制限はなく、従来、真空凍結乾燥や昇華精製に付されるものを広く被処理対象物31として適用することができる。
[昇華方法]
本発明の昇華方法は、真空容器内に収納した固体状の被処理対象物の少なくとも一部を昇華中に、該被処理対象物にマイクロ波の定在波を照射して該被処理対象物を加熱する方法である。本発明の昇華方法は上述した本発明の昇華装置により実施することができ、その好ましい態様は、本発明の昇華装置の説明において説明した通りである。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図1に示した昇華装置1を用いた。昇華装置1の空胴共振器11には、内部に円筒型のマイクロ波照射空間11Aを有する金属製の空胴共振器を用いた。このマイクロ波照射空間11Aは、TM010モードの定在波が形成できるように、マイクロ波発振器の周波数帯に応じた内径に設定した。マイクロ波照射空間11Aの内径とは、円筒型のマイクロ波照射空間の中心軸Cに直交する方向の断面形状である円形の直径をいう。また、マイクロ波照射空間11A内部のエネルギー強度を計測するために、検出部17を取り付けた。
マイクロ波照射空間11Aの中心軸Cに沿って、真空容器20を設置した。真空容器20の開口部21には、該真空容器20内を密閉可能な蓋22が配され、蓋22を通して該真空容器20内を真空にする真空ポンプ23が配管24を介して接続されている。したがって、真空容器20内部を真空ポンプ23によって脱気が可能な構造となっている。真空容器20と真空ポンプ23との間の配管24には圧力計25と真空圧力調節弁26を設置し、真空容器20内の真空度を調節できるようにした。空胴共振器11および真空容器20は断熱容器29内に収納され、断熱容器29内には冷却器28を設けた。
マイクロ波発生器12に備えたマイクロ波発振器には、周波数を調節できるVCO発振器(Voltage Controlled Oscillator)を用いた。マイクロ波発振器の発振周波数は、空胴共振器11内にTM010モードの定在波が維持できる周波数となるように、検出部17からの信号を制御して調節した。
マイクロ波発生器12と空胴共振器11の大きさに関して、半導体式マイクロ波発生器(2.4〜2.5GHz、最大出力100W)を用い、内径91mm、真空容器20への照射長さは32mmの空胴共振器11を用いた。真空容器20には,遠心分離装置で用いるポリプロピレン製の内容量1.5mlのものを用い、電界が極大となる空胴共振器11の中心軸C上に真空容器20の中心軸Ctが沿うように設置した。
実施例1では、マイクロ波照射を行いながら氷を昇華させた。
真空容器20に純水1gを入れて冷凍庫で凍らせた。その後、これを約−5℃に保持されている断熱容器29内の空胴共振器11の中に、中心軸Cに真空容器20の中心軸Ctが一致するように素早く設置した。そして、真空度が約70Paとなるように真空圧力調節弁26を調節しながら脱気を行った。その後、真空圧力調節弁26の開度を固定した。真空容器20を断熱容器29内に設置してから約5分後にマイクロ波照射を開始した。
マイクロ波定在波の照射はその出力を一定間隔で増減しながら行った。具体的には、マイクロ波出力2Wにて3分間照射を行い、引き続きマイクロ波出力0.1Wにて3分間照射することを交互に繰り返した。
図2に、真空度、共振周波数およびマイクロ波出力の経時変化を示す。出力2Wでマイクロ波照射している間は共振周波数が低下し、出力0.1Wの間は共振周波数が上昇するといった挙動を繰り返した。この挙動は、マイクロ波出力2Wで照射されている間に、氷よりも誘電率が大きな値である水(液体)がごくわずかに生じたことを示している。そしてマイクロ波出力0.1Wで照射されている間に、マイクロ波を液体状の水が高効率に吸収して蒸発し、除去されたことを反映している。真空度に関しては、出力2Wの時は若干低下し、出力0.1Wの時は若干上昇するといった挙動を繰り返した。合計で70分間のマイクロ波照射後に真空容器20内を目視確認したところ、マイクロ波照射前よりも体積は小さくなっているものの、氷の状態のままであった。氷を含めた真空容器の質量を天秤で測定し、マイクロ波照射1時間あたりの氷の質量減少量を計算したところ、0.36g/hであった。
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同じ装置構成にて、マイクロ波照射を行わなかった以外、実施例1と同様にして氷を昇華させた。
真空容器20に純水1gを入れて冷凍庫で凍らせた。その後、これを約−5℃で保持されている断熱容器29内の空胴共振器11の中に、中心軸C上に真空容器20の中心軸Ctが一致するように素早く設置した。そして、真空度が約70Paとなるように真空圧力調節弁26を調節しながら脱気を行った。その後、真空度を一定に保つように真空圧力調節弁26の開度を固定した。
この状態を210分間保持した後、真空容器20内を目視確認したところ、氷の状態であった。氷を含めた真空容器20の質量を天秤で測定し、真空凍結乾燥1時間あたりの氷の質量減少量を計算したところ、0.21g/hであった。
上記の実施例1と比較例1との対比により、本発明の昇華装置ないし昇華方法により、氷の融解により周囲を濡らすことなく、昇華効率を格段に高められることがわかる。また、マイクロ波出力の微調節には半導体式マイクロ波発振器が有効であることもわかる。すなわち、マイクロ波照射を行う凍結乾燥装置を構成する上で、マイクロ波発振器には半導体式マイクロ波発振器を好適に用いることができる。
1 昇華装置
2 マイクロ加熱手段
20 真空容器
11 空胴共振器
11A マイクロ波照射空間
12 マイクロ波発生器
13 アンテナ
14 制御部
15 マイクロ波供給口
16 ケーブル
17 検出部
20 真空容器
20A 内部空間
21 開口部
22 蓋
23 真空ポンプ
24 配管
25 圧力計
26 真空圧力調節弁
28 冷却器
29 断熱容器
31 被処理対象物
C 空胴共振器の中心軸
Ct 真空容器の中心軸

Claims (12)

  1. マイクロ波照射空間に配され、固体状の被処理対象物が収納される真空容器と、
    マイクロ波を照射してマイクロ波照射空間内に定在波を形成するマイクロ波加熱手段とを含み、
    前記被処理対象物の少なくとも一部が昇華中に、前記定在波により前記被処理対象物を加熱する、昇華装置。
  2. 前記真空容器内を真空にする真空排気手段を有する請求項1に記載の昇華装置。
  3. 前記マイクロ波加熱手段は、前記マイクロ波照射空間を有する空胴共振器と、マイクロ波発生器とを含む請求項1又は2に記載の昇華装置。
  4. 前記定在波の共振周波数の変化に基づき前記被処理対象物の少なくとも一部の融解を検知し、当該検知に基づき前記マイクロ波の出力を制御する制御部を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇華装置。
  5. 前記定在波は、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)のシングルモードである請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇華装置。
  6. 前記昇華装置が真空凍結乾燥装置である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇華装置。
  7. 真空容器内に収納した固体状の被処理対象物の少なくとも一部を昇華中に、該被処理対象物にマイクロ波の定在波を照射して該被処理対象物を加熱する、昇華方法。
  8. 前記昇華で失われた前記被処理対象物の熱量を、前記定在波照射により該被処理対象物に供給する、請求項7に記載の昇華方法。
  9. 前記昇華方法が真空凍結乾燥方法である、請求項7又は8に記載の昇華方法。
  10. 前記被処理対象物中の氷を昇華対象とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の昇華方法。
  11. 前記定在波の共振周波数の変化に基づき前記被処理対象物の少なくとも一部の融解を検知し、当該検知に基づいて前記マイクロ波の出力を制御する請求項7〜10のいずれか1項に記載の昇華方法。
  12. 前記定在波は、TMmn0(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくは、TEm0n(m、nは1以上の整数)のシングルモードである請求項7〜11のいずれか1項に記載の昇華方法。
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