JP2021057436A - 太陽電池セル - Google Patents
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Abstract
【課題】微結晶シリコン層を備えた太陽電池セルにおいて、微結晶シリコン層の酸化を抑制して出力特性を向上させる。【解決手段】実施形態の一例である太陽電池セルは、結晶性シリコンウェーハと、結晶性シリコンウェーハの一方の面に形成されたパッシベーション層と、パッシベーション層上に形成された微結晶シリコン層と、微結晶シリコン層上に形成された非晶質シリコン層と、非晶質シリコン層上に形成された透明導電層と、透明導電層上に形成された集電極とを備える。非晶質シリコン層は、パッシベーション層および微結晶シリコン層よりも高濃度のドーパントを含有し、非晶質シリコン層の厚みは微結晶シリコン層の厚みよりも薄い。【選択図】図1
Description
本開示は、太陽電池セルに関する。
従来、単結晶シリコンウェーハの両面に非晶質シリコン層を形成した太陽電池セルが知られている。例えば、特許文献1には、単結晶シリコンウェーハの一方の面にn型非晶質シリコン層が形成され、当該ウェーハの他方の面にp型非晶質シリコン層が形成された太陽電池セルが開示されている。特許文献1に開示された太陽電池セルは、各非晶質シリコン層上に形成された透明導電層と集電極を備える。
また、シリコンウェーハに入射する光量を増やして出力特性を向上させるべく、n型非晶質シリコン層に代えて、より光透過性が高く光を吸収し難いn型微結晶シリコン層を設けた太陽電池セルも提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
上記のように、シリコンウェーハの表面に形成される非晶質シリコン層を微結晶シリコン層にすることでウェーハに入射する光量を増やしてセルの出力特性を改善できるが、微結晶シリコン層は表面および粒界が酸化し易いという課題がある。微結晶シリコン層が酸化すると、抵抗が上昇して出力特性の向上を図ることが困難になる。
本開示の目的は、微結晶シリコン層を備えた太陽電池セルにおいて、微結晶シリコン層の酸化を抑制して出力特性を向上させることである。
本開示の一態様である太陽電池セルは、結晶性シリコンウェーハと、前記結晶性シリコンウェーハの一方の面に形成されたパッシベーション層と、前記パッシベーション層上に形成された、前記結晶性シリコンウェーハと同じ導電型の微結晶シリコン層と、前記微結晶シリコン層上に形成された、前記結晶性シリコンウェーハと同じ導電型の非晶質シリコン層と、前記非晶質シリコン層上に形成された透明導電層とを備える。前記非晶質シリコン層は、前記パッシベーション層および前記微結晶シリコン層よりも高濃度のドーパントを含有し、前記非晶質シリコン層の厚みは、前記微結晶シリコン層の厚みよりも薄い。
本開示の一態様によれば、微結晶シリコン層の適用によりシリコンウェーハに入射する光量を増やしつつ、微結晶シリコン層の酸化を抑制して酸化に起因する抵抗損失の上昇を防止できる。本開示の一態様である太陽電池セルは、出力特性に優れる。
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池セルの実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示に係る太陽電池セルは以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態の説明で参照する図面は模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。
本明細書において「略〜」との記載は、略全域を例に挙げて説明すると、全域および実質的に全域と認められる状態を含む意図である。また、n型ドーパントとはドナーとして機能するリン(P)等の不純物を意味し、p型ドーパントとはアクセプターとして機能するボロン(B)等の不純物を意味する。
以下では、結晶性シリコンウェーハがn型単結晶シリコンウェーハ、微結晶シリコン層がn型微結晶シリコン層、微結晶シリコン層上に形成される非晶質シリコン層がn型非晶質シリコン層である場合を例に挙げて説明する。但し、本開示に係る太陽電池セルの構成はこれに限定されず、例えば、結晶性シリコンウェーハは多結晶シリコンウェーハであってもよく、p型結晶性シリコンウェーハであってもよい。結晶性シリコンウェーハがp型単結晶シリコンウェーハである場合、微結晶シリコン層にp型微結晶シリコン層が、微結晶シリコン層上の非晶質シリコン層にp型非晶質シリコン層がそれぞれ適用される。
図1は、実施形態の一例である太陽電池セル10の断面図である。図1に例示するように、太陽電池セル10は、n型単結晶シリコンウェーハ11と、n型単結晶シリコンウェーハ11の一方の面に形成された第1パッシベーション層12と、第1パッシベーション層12上に形成されたn型微結晶シリコン層13とを備える。太陽電池セル10は、さらに、n型微結晶シリコン層13上に形成されたn型非晶質シリコン層14を備える。n型微結晶シリコン層13上にn型非晶質シリコン層14を成膜することで、n型微結晶シリコン層13の表面および粒界における酸化を抑制でき、太陽電池セル10の出力特性が向上する。
また、太陽電池セル10は、n型非晶質シリコン層14上に形成された透明導電層15と、透明導電層15上に形成された集電極16とを備える。本実施形態では、第1パッシベーション層12を介してn型微結晶シリコン層13が形成されるn型単結晶シリコンウェーハ11の一方の面を受光面、n型単結晶シリコンウェーハ11の他方の面を裏面とする。微結晶層は非晶質層と比べて光透過性が高いので、n型微結晶シリコン層13をn型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側に設けることにより、ウェーハに入射する光量を増やすことができ、出力特性が向上する。
ここで、n型単結晶シリコンウェーハ11の「受光面」とは光が主に入射する面を意味し、n型単結晶シリコンウェーハ11に入射する光のうち、50%を超える光、例えば80%以上または90%以上の光が受光面側から入射する。n型単結晶シリコンウェーハ11は、例えば、4つの角が斜めにカットされた平面視略正方形状を有する。
太陽電池セル10は、n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面に形成された第2パッシベーション層17と、第2パッシベーション層17上に形成されたp型非晶質シリコン層18とを備える。また、太陽電池セル10は、p型非晶質シリコン層18上に形成された透明導電層19と、透明導電層19上に形成された集電極20とを備える。なお、太陽電池セル10は、本開示の目的を損なわない範囲で、上記各層以外の他の層をさらに有していてもよい。
透明導電層15,19は、各非晶質シリコン層上の略全域に形成されることが好ましい。例えば、1辺が120〜160mmの略正方形のn型単結晶シリコンウェーハ11を用いた場合、透明導電層15,19は各非晶質シリコン層上からはみ出さない範囲で、当該ウェーハの端縁から2mm以下の外周領域を除く範囲に形成される。
透明導電層15,19は、例えば酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、タングステン(W)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)等がドーピングされた透明導電性酸化物(IWO、ITO等)で構成される。透明導電層15,19の厚みは、例えば30〜500nmであるのが好ましく、50〜200nmであるのがより好ましい。
集電極16,20は、複数のフィンガー電極を含む。複数のフィンガー電極は、互いに略平行に形成された細線状の電極であって、n型単結晶シリコンウェーハ11の広範囲に形成されて生成したキャリアを収集する。集電極16,20は、フィンガー電極よりも幅が太く、各フィンガー電極と略直交するバスバー電極を含んでいてもよい。裏面側電極である集電極20は、受光面側電極である集電極16よりも大面積に形成されることが好ましく、透明導電層19上の略全域に形成される金属層であってもよい。
以下、n型単結晶シリコンウェーハ11、各パッシベーション層、n型微結晶シリコン層13、および各非晶質シリコン層について、特にn型微結晶シリコン層13およびn型非晶質シリコン層14について詳説する。
n型単結晶シリコンウェーハ11は、原子配列が規則的に揃ったシリコンウェーハである。n型単結晶シリコンウェーハ11のラマンスペクトルには、波数520cm-1にピークが検出される。n型単結晶シリコンウェーハ11等に含有されるn型ドーパントは特に限定されないが、一般的にはリン(P)が用いられる。n型ドーパントは、n型単結晶シリコンウェーハ11の全体に略均一に分布している。n型単結晶シリコンウェーハ11におけるn型ドーパントの濃度は、例えば、1×1014〜1×1017atoms/cm3である。
n型単結晶シリコンウェーハ11の表面およびその近傍には、ウェーハの他の領域よりもn型ドーパントの濃度が高くなったn+領域が形成されていてもよい。n型単結晶シリコンウェーハ11の表面に形成されるn+領域は、セルの出力向上に寄与する。n+領域は、例えば、n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面、裏面、および厚み方向に沿った側面を含むウェーハの表面全体に形成される。
n型単結晶シリコンウェーハ11、各パッシベーション層、n型微結晶シリコン層13、および各非晶質シリコン層におけるドーパント濃度は、2次イオン質量分析(SIMS)により測定される。本明細書では特に断らない限り、ウェーハおよび各層におけるドーパント濃度はSIMSにより測定されるものとする。また、ドーパント濃度は特に断らない限り、ウェーハまたは各層の全体における平均濃度を意味するものとする。
n型単結晶シリコンウェーハ11の厚みは、例えば50〜300μmである。n型単結晶シリコンウェーハ11には、一般的にチョクラルスキー法(Cz法)により製造されるウェーハが用いられるが、エピタキシャル成長法により製造されるウェーハを用いることも可能である。
n型単結晶シリコンウェーハ11の表面には、表面反射を抑制して光の吸収量を増大させるテクスチャ構造(図示せず)が形成されている。テクスチャ構造は、例えば、受光面および裏面のうちの一方に、または受光面および裏面の両方に形成される。テクスチャ構造は、アルカリ性溶液を用いて単結晶シリコンウェーハの(100)面を異方性エッチングすることで形成できる。この場合、単結晶シリコンウェーハの表面には、(111)面を斜面としたピラミッド形状の表面凹凸構造が形成される。
第1パッシベーション層12は、n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面とn型微結晶シリコン層13との間に介在し、太陽電池セル10の受光面側におけるキャリアの再結合を抑制する。n型単結晶シリコンウェーハ11には、受光面の略全域に第1パッシベーション層12が形成されることが好ましい。なお、第1パッシベーション層12は、受光面の端縁から2mm以下の範囲(外周領域)を避けて設けられていてもよい。
第1パッシベーション層12は、n型非晶質シリコン層14よりも低濃度のn型ドーパントを含有する非晶質シリコン層で構成される。第1パッシベーション層12は、ドーパントを実質的に含有しない真性な非晶質シリコン層であってもよいが、例えばn型微結晶シリコン層13の成膜時における拡散等により、低濃度のn型ドーパントを含む。第1パッシベーション層12におけるn型ドーパントの濃度は、例えば1×1017〜1×1019atoms/cm3であり、SIMSによる検出限界以下(一般的には、1×1017atoms/cm3以下)であってもよい。
第1パッシベーション層12の厚みは、光の透過性、パッシベーション性、および抵抗低減等の観点から、1〜25nmが好ましく、5〜10nmがより好ましい。第1パッシベーション層12の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたセルの断面観察により測定される(他の層についても同様)。第1パッシベーション層12は、さらに水素、酸素、および炭素を含有していてもよい。
n型微結晶シリコン層13は、第1パッシベーション層12を介してn型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側に形成される。n型微結晶シリコン層13は、第1パッシベーション層12上の略全域に形成されることが好ましい。n型微結晶シリコン層13は、非晶質シリコン層と比べて光透過率が高く光を吸収し難いため、n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側にn型微結晶シリコン層13を設けることで、n型単結晶シリコンウェーハ11に入射する光量を増やすことができる。
n型微結晶シリコン層13は、n型ドーパントを含有する微結晶シリコンで構成される。n型微結晶シリコン層13のラマンスペクトルには、波数520cm-1付近を中心としたピークが検出される。他方、n型非晶質シリコン層14のラマンスペクトルには、波数480cm-1付近にピークが検出されるが、結晶シリコンに起因する波数520cm-1のピークは検出されない。n型微結晶シリコン層13は、例えば、非晶質シリコン層のマトリックス中に単結晶シリコンが分散した構造を有する。
n型微結晶シリコン層13におけるn型ドーパントの濃度は、例えば1×1020〜1×1022atoms/cm3であり、好ましくは3×1020〜5×1021atoms/cm3である。n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側に形成される各層のn型ドーパント濃度は、第1パッシベーション層12<n型微結晶シリコン層13<n型非晶質シリコン層14の順で多くなる。n型微結晶シリコン層13には、n型ドーパントが略均一に含有されていてもよく、n型ドーパントの濃度勾配が存在していてもよい。
n型微結晶シリコン層13の厚みは、例えば5〜20nmであり、好ましくは8〜15nmである。n型微結晶シリコン層13は、第1パッシベーション層12およびn型非晶質シリコン層14よりも厚く形成されることが好ましい。n型微結晶シリコン層13は、さらに水素、酸素、および炭素を含有していてもよい。n型微結晶シリコン層13は、第1パッシベーション層12およびn型非晶質シリコン層14よりも水素濃度が高くてもよい。n型微結晶シリコン層13の水素濃度は、例えば1×1018〜1×1021atoms/cm3であり、好ましくは7×1018〜5×1020atoms/cm3である。
n型微結晶シリコン層13の屈折率は、355〜405nmの波長範囲において透明導電層15の屈折率の2.5倍以上であることが好ましく、一例としては2.5〜3.2倍である。この場合、太陽電池セル10の色むらが低減され、良好な外観が得られる。また、n型微結晶シリコン層13の吸収係数は、400〜600nmの波長範囲においてn型非晶質シリコン層14の吸収係数より低く、例えば波長420nmで5×104〜4×105cm−1である。各層の屈折率および吸収係数は、分光エリプソメトリーメータを用いて測定される。
太陽電池セル10は、n型微結晶シリコン層13上の略全域を覆って形成されたn型非晶質シリコン層14を備える。すなわち、太陽電池セル10は、n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側に、n型微結晶シリコン層13が2つの非晶質シリコンの薄膜層で挟まれた層構造を有する。n型微結晶シリコン層13の表面および粒界は酸化し易いが、n型非晶質シリコン層14でn型微結晶シリコン層13の表面を覆うことにより、n型微結晶シリコン層13の酸化が抑制され、酸化に起因する抵抗損失の上昇を防止できる。
n型非晶質シリコン層14は、第1パッシベーション層12およびn型微結晶シリコン層13よりも高濃度のn型ドーパントを含有する。また、n型非晶質シリコン層14の厚みは、n型微結晶シリコン層13の厚みよりも薄い。この場合、n型微結晶シリコン層13を設けたことによる低吸収化等の機能を確保しつつ、透明導電層15とのコンタクト抵抗を低減して太陽電池セル10の出力を向上させることができる。
n型非晶質シリコン層14の厚みは、n型微結晶シリコン層13の酸化抑制、光の透過性等の観点から、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましく、1nm以下であってもよい。n型非晶質シリコン層14は、n型微結晶シリコン層13の厚みの1/2以下の厚み、例えば1%〜50%の厚みで形成される。n型非晶質シリコン層14の厚みは、第1パッシベーション層12の厚みより薄くてもよい。n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面側に形成される各層の厚みは、例えば、n型非晶質シリコン層14<第1パッシベーション層12<n型微結晶シリコン層13である。
n型非晶質シリコン層14におけるn型ドーパントの濃度は、例えば1×1019〜1×1023atoms/cm3であり、好ましくは1×1020〜1×1022atoms/cm3である。n型非晶質シリコン層14は、さらに水素、酸素、および炭素を含有していてもよい。n型非晶質シリコン層14は、n型微結晶シリコン層13よりも水素濃度が低くてもよい。
n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面には、上記の通り、第2パッシベーション層17およびp型非晶質シリコン層18が形成される。
第2パッシベーション層17は、n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面とp型非晶質シリコン層18との間に介在し、太陽電池セル10の裏面側におけるキャリアの再結合を抑制する。第2パッシベーション層17は、n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面の略全域に形成されることが好ましい。なお、第1パッシベーション層12と同様に、第2パッシベーション層17は、裏面の端縁から2mm以下の範囲(外周領域)を避けて設けられていてもよい。
第2パッシベーション層17は、p型非晶質シリコン層18よりも低濃度のp型ドーパントを含有する非晶質シリコンで構成される。第2パッシベーション層17は、ドーパントを実質的に含有しない真性な非晶質シリコン層であってもよいが、例えばp型非晶質シリコン層18の成膜時における拡散等により、低濃度のp型ドーパントを含む。第2パッシベーション層17におけるp型ドーパントの濃度は、例えば1×1014〜1×1017atoms/cm3であり、SIMSによる検出限界以下であってもよい。p型ドーパントは特に限定されないが、一般的にはボロン(B)が用いられる。
第2パッシベーション層17の厚みは、パッシベーション性、抵抗低減等の観点から、1〜25nmが好ましく、5〜10nmがより好ましい。各パッシベーション層の厚みは、互いに略同一であってもよい。第2パッシベーション層17は、さらに水素、酸素、および炭素を含有していてもよい。
p型非晶質シリコン層18は、第2パッシベーション層17を介してn型単結晶シリコンウェーハ11の裏面側に形成される。p型非晶質シリコン層18は、第2パッシベーション層17上の略全域に形成されることが好ましい。p型非晶質シリコン層18の厚みは、キャリアの分離性、抵抗低減等の観点から、1〜25nmが好ましく、5〜10nmがより好ましい。p型非晶質シリコン層18は、第2パッシベーション層17よりも厚く形成されることが好適であり、例えば、第2パッシベーション層17の厚みの1.5〜5倍の厚みを有する。
p型非晶質シリコン層18は、第2パッシベーション層17よりも高濃度のp型ドーパントを含有する。p型非晶質シリコン層18におけるp型ドーパントの濃度は、例えば1×1019〜1×1023atoms/cm3であり、好ましくは1×1020〜1×1022atoms/cm3である。p型非晶質シリコン層18は、さらに水素、酸素、および炭素を含有していてもよい。
以下、図2を参照しながら、上記構成を備えた太陽電池セル10の製造方法の一例について詳説する。
図2に例示するように、太陽電池セル10の製造工程では、テクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンウェーハ11を準備し、当該ウェーハの一方の面に第1パッシベーション層12、n型微結晶シリコン層13、およびn型非晶質シリコン層14を順に形成し、他方の面に第2パッシベーション層17、およびp型非晶質シリコン層18を順に形成する。なお、n型単結晶シリコンウェーハ11の両面にパッシベーション層を形成した後、n型微結晶シリコン層13、n型非晶質シリコン層14、およびp型非晶質シリコン層18を形成してもよい。
n型単結晶シリコンウェーハ11には、両面または片面にテクスチャ構造が形成されたシリコンウェーハが用いられる。なお、テクスチャ構造を有さないウェーハを用いてもよい。n型単結晶シリコンウェーハ11に水素ラジカル処理を行いウェーハ表面のクリーニングを行ってもよい。
n型単結晶シリコンウェーハ11の一方の面には、第1パッシベーション層12として実質的にドーパントを含有しない真性な非晶質シリコン層(i型非晶質シリコン層)が形成される。なお、第1パッシベーション層12には、例えば、n型微結晶シリコン層13の成膜時にn型ドーパントが拡散する。シリコン層は、プラズマ化学気相成長法(PE−CVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、または触媒化学気相成長法(Cat−CVD:Catalytic Chemical Vapor Deposition)により形成されることが好ましい。
PE−CVDは、プラズマ源を搭載した真空チャンバに原料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給することで、真空チャンバ内に放電プラズマを発生させ、プラズマで原料ガスを分解反応させ、生成された反応種を対象物上に堆積させる方法である。Cat−CVDは、タングステン等により構成されるワイヤ(触媒体)を内部に配した真空チャンバに原料ガスを流入させ、電源により通電加熱されたワイヤで原料ガスを接触分解反応させ、生成された反応種(分解種)を対象物に堆積させる方法である。以下では、各シリコン層の成膜方法として、PE−CVDを例に挙げて説明する。
第1パッシベーション層12は、真空チャンバ1で成膜される。具体的には、n型単結晶シリコンウェーハ11が導入された真空チャンバ1に、原料ガスとしてシラン(SiH4)等のケイ素含有ガスを水素で希釈したガスを供給し、電源からプラズマ源に電力供給することで、真空チャンバ内に放電プラズマを発生させ、プラズマで原料ガスを分解反応させる。この分解されたガスを、加熱されたn型単結晶シリコンウェーハ11の一方の面に供給することにより、第1パッシベーション層12が形成される。このとき、例えばCO2プラズマ処理を行い、第1パッシベーション層12の表面に、第1パッシベーション層12よりも酸素濃度が高い酸素高濃度層を形成してもよい。
次に、第1パッシベーション層12上に、n型微結晶シリコン層13を形成し、続けてn型微結晶シリコン層13上にn型非晶質シリコン層14を形成する。本実施形態では、第1パッシベーション層12、n型微結晶シリコン層13、およびn型非晶質シリコン層14が、同じ真空チャンバ1において連続的に成膜される。n型微結晶シリコン層13とn型非晶質シリコン層14を真空チャンバ1で連続して成膜することにより、n型微結晶シリコン層13が酸素に曝されることが防止され、n型微結晶シリコン層13の酸化が抑制される。
PE−CVDによるn型微結晶シリコン層13およびn型非晶質シリコン層14の成膜には、例えば、シランにホスフィン(PH3)を添加し、水素で希釈した原料ガスを使用する。ホスフィンの混合濃度を変化させることによって、各層に含有されるn型ドーパント濃度を調整できる。成膜時の温度を200〜250℃として、n型微結晶シリコン層13を形成する。また、水素希釈濃度、ドーパント濃度等を制御することで、n型微結晶シリコン層13の結晶性を制御できる。
次に、n型単結晶シリコンウェーハ11の他方の面に、第2パッシベーション層17として実質的にドーパントを含有しない真性な非晶質シリコン層を形成する。なお、第2パッシベーション層17には、例えば、p型非晶質シリコン層18の成膜時にp型ドーパントが拡散する。図2で示す例では、真空チャンバ2で第2パッシベーション層17が成膜される。第2パッシベーション層17は、第1パッシベーション層12と同様に、シランを水素で希釈した原料ガスを用いたPE−CVDにより形成される。
続いて、第2パッシベーション層17上に、p型ドーパントを含有するp型非晶質シリコン層18を形成する。本実施形態では、第2パッシベーション層17、およびp型非晶質シリコン層18が、同じ真空チャンバ2において連続的に成膜される。PE−CVDによるp型非晶質シリコン層18の成膜には、例えば、シランにジボラン(B2H6)を添加し、水素で希釈した原料ガスを使用する。ジボランの混合濃度を変化させることによって、p型非晶質シリコン層18に含有されるp型ドーパント濃度を調整できる。
次に、n型非晶質シリコン層14上に透明導電層15を、p型非晶質シリコン層18上に透明導電層19をそれぞれ形成する。透明導電層15,19は、例えば、真空チャンバ3においてスパッタリングにより形成される。最後に、透明導電層15上に集電極16を、透明導電層19上に集電極20をそれぞれ形成することにより、上記構成を備えた太陽電池セル10が製造される。集電極16,20は、例えば、透明導電層15,19上に銀(Ag)粒子を含有する導電性ペーストをスクリーン印刷等により塗工して形成される。
以上のように、上記構成を備えた太陽電池セル10によれば、n型微結晶シリコン層13の適用によりn型単結晶シリコンウェーハ11に入射する光量を増やしつつ、薄いn型非晶質シリコン層14を設けることでn型微結晶シリコン層13の酸化を抑制して抵抗損失の上昇を防止できる。太陽電池セル10は、シリコンウェーハの受光面側に、パッシベーション層/微結晶シリコン層/透明導電層の積層構造を有するセル、或いはパッシベーション層/非晶質シリコン層/透明導電層の積層構造を有するセルと比べて出力特性に優れる。
図3は、実施形態の他の一例である太陽電池セル30の断面図である。図3に例示するように、太陽電池セル30は、n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面側のみに集電極31,32を備える点で、集電極16,20が受光面および裏面にそれぞれ形成された太陽電池セル10と異なる。集電極31,32は、それぞれ後述のn側領域およびp側領域からキャリアを収集する電極であって、櫛歯状に形成される。
太陽電池セル30は、n型単結晶シリコンウェーハ11の受光面に形成された絶縁層33を備える。なお、n型単結晶シリコンウェーハ11と絶縁層33の間に、パッシベーション層として、例えば、実質的に真性な非晶質シリコン層が形成されてもよい。絶縁層33の好適な一例は、窒化シリコン(SiN)層である。
太陽電池30は、太陽電池セル10と同様に、n型単結晶シリコンウェーハ11側から、第1パッシベーション層12、n型微結晶シリコン層13、およびn型非晶質シリコン層14が順に形成された積層構造と、第2パッシベーション層17、およびp型非晶質シリコン層18が順に形成された積層構造を有する。太陽電池セル30は、当該積層構造がn型単結晶シリコンウェーハ11の同じ面(裏面)に形成されている点で、太陽電池セル10と異なる。
n型単結晶シリコンウェーハ11の裏面には、第1パッシベーション層12と第2パッシベーション層17がそれぞれ直接形成されている。太陽電池セル30では、第1パッシベーション層12、n型微結晶シリコン層13、およびn型非晶質シリコン層14がn側領域を、第2パッシベーション層17、およびp型非晶質シリコン層18がp側領域をそれぞれ構成するものとする。n側領域(n型非晶質シリコン層14)上には透明導電層15を介して集電極31が、p側領域(p型非晶質シリコン層18)上には透明導電層19を介して集電極32がそれぞれ形成される。
n側領域とp側領域は、例えば、n型単結晶シリコンウェーハ11の端縁と略平行にストライプ状に配置され、互いに噛み合う櫛歯状パターンで形成される。p側領域の一部がn側領域の一部に重なり、n側領域およびp側領域がn型単結晶シリコンウェーハ11の裏面に隙間なく形成される。n側領域とp側領域が重なる部分には、各領域の間に絶縁層34が設けられている。絶縁層34には、絶縁層33と同様に、SiNを適用できる。
太陽電池セル30には、太陽電池セル10の場合と同様に、n型微結晶シリコン層13を覆うn型非晶質シリコン層14が形成されている。n型微結晶シリコン層13は第1パッシベーション層12およびn型非晶質シリコン層14に挟まれており、また当該3つの層は同じ真空チャンバで連続的に成膜されるため、n型微結晶シリコン層13の酸化が抑制され抵抗損失の上昇を防止できる。
なお、n型微結晶シリコン層13とn型非晶質シリコン層14を含むn側領域の構成に加えて、p側領域にp型微結晶シリコン層を設け、当該微結晶層を覆うp型非晶質シリコン層を形成してもよい。
1,2,3 真空チャンバ、10 太陽電池セル、11 n型単結晶シリコンウェーハ、12 第1パッシベーション層、13 n型微結晶シリコン層、14 n型非晶質シリコン層、15,19 透明導電層、16,20,31,32 集電極、17 第2パッシベーション層、18 p型非晶質シリコン層、33,34 絶縁層
Claims (6)
- 結晶性シリコンウェーハと、
前記結晶性シリコンウェーハの一方の面に形成されたパッシベーション層と、
前記パッシベーション層上に形成された、前記結晶性シリコンウェーハと同じ導電型の微結晶シリコン層と、
前記微結晶シリコン層上に形成された、前記結晶性シリコンウェーハと同じ導電型の非晶質シリコン層と、
前記非晶質シリコン層上に形成された透明導電層と、
を備え、
前記非晶質シリコン層は、前記パッシベーション層および前記微結晶シリコン層よりも高濃度のドーパントを含有し、
前記非晶質シリコン層の厚みは、前記微結晶シリコン層の厚みよりも薄い、太陽電池セル。 - 前記結晶性シリコンウェーハは、n型単結晶シリコンウェーハであり、
前記微結晶シリコン層は、n型微結晶シリコン層であり、
前記非晶質シリコン層は、n型非晶質シリコン層であり、
前記パッシベーション層は、前記n型非晶質シリコン層よりも低濃度のn型ドーパントを含有する非晶質シリコンで構成されている、請求項1に記載の太陽電池セル。 - 前記パッシベーション層と前記微結晶シリコン層との間に、前記パッシベーション層と前記n型微結晶シリコン層の少なくとも一方よりも酸素濃度が高い酸素高濃度層を更に備える、請求項1に記載の太陽電池セル。
- 前記n型単結晶シリコンウェーハの他方の面に形成された第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層上に形成されたp型非晶質シリコン層と、
前記p型非晶質シリコン層上に形成された第2透明導電層と、
前記第2透明導電層上に形成された第2集電極と、
をさらに備え、
前記第2パッシベーション層は、前記p型非晶質シリコン層よりも低濃度のp型ドーパントを含有する非晶質シリコンで構成されている、請求項2に記載の太陽電池セル。 - 前記n型単結晶シリコンウェーハの一方の面に形成された第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層上に形成されたp型非晶質シリコン層と、
前記p型非晶質シリコン層上に形成された第2透明導電層と、
前記第2透明導電層上に形成された第2集電極と、
前記n型単結晶シリコンウェーハの他方の面に形成された絶縁層と、
をさらに備え、
前記第2パッシベーション層は、前記p型非晶質シリコン層よりも低濃度のp型ドーパントを含有する非晶質シリコンで構成されている、請求項2に記載の太陽電池セル。 - 前記透明導電層上に集電極を更に備える、請求項1に記載の太陽電池セル。
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JP2019178308A JP2021057436A (ja) | 2019-09-30 | 2019-09-30 | 太陽電池セル |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115172481A (zh) * | 2022-09-08 | 2022-10-11 | 福建金石能源有限公司 | 异质结太阳能电池 |
JP7527429B2 (ja) | 2022-12-07 | 2024-08-02 | ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド | 太陽電池及び光起電力モジュール |
-
2019
- 2019-09-30 JP JP2019178308A patent/JP2021057436A/ja active Pending
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