JP2021055364A - コンクリート構造物補修用の積層シート、及びコンクリート構造物の補修方法 - Google Patents

コンクリート構造物補修用の積層シート、及びコンクリート構造物の補修方法 Download PDF

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将彦 江畠
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昌紀 島田
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Abstract

【課題】コンクリート構造物に防水性を付与する補修材料に用いるために好適な積層シート等を提供することを目的とする。【解決手段】マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、樹脂繊維シート部材とを含む積層シートであって、該積層シートの端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄いコンクリート構造物補修用の積層シート。【選択図】図1

Description

本開示は、コンクリート構造物補修用の積層シート、及びコンクリート構造物の補修方法に関する。
コンクリート構造物は、高強度で施工性及び耐久性に優れ、安価であるというメリットがあるため、日本では高度成長期を中心に、多くのコンクリート建造物が作られてきた。その一方、コンクリート建造物は、長年の使用で大気中の二酸化炭素が水分とともに浸透することによって中性化が引き起こされたり、海風や凍結防止剤飛沫に含まれる塩化物イオンが浸透することによって腐食膨張したり、特定のシリカ鉱物の骨材が水と反応して膨張したりして、ヒビ割れが生じることもある。このようなヒビ割れを起点として又はコンクリートに染み込んだ水分の凍結等が原因となり、コンクリート片が剥落することがある。
このようなコンクリートの剥落や劣化を防止する試みとして、特許文献1から3等には、メッシュシートと不織布を組み合わせた剥落防止用の積層シートに硬化組成物を含浸させた後に硬化させ、コンクリートの補修用材料とすることが提案されている。
特開2012−26238号公報 特開2013−019146号公報 特開2019−124053号公報
特に、特許文献3に開示されているように、剥落防止シートと硬化物を組み合わせた補修用材料は、優れた補強性能と剥落防止性能を備えるものの、防水性が不十分であり、補修箇所によっては、別途防水透湿層の施工が必要であった。しかし、鉄道高架等の大面積のコンクリート構造物に前記補修用材料を塗布、硬化した後に、防水透湿層を施工すると、当初想定通りの防水透湿性能が得られないことがある。
このような状況下、補強性能、剥落防止性能、防水性能を備えるコンクリート構造物の補修用材料及び補修方法が強く求められている。
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物に防水性を付与する補修材料に用いるために好適な積層シート等を提供することを目的とする。
本発明者らは従来の補修用材料及び補修方法を詳細に分析し、一面のコンクリート構造物に、複数枚の剥落防止シートを配置するようなコンクリート構造物の補修用材料及び補修方法に関して鋭意検討を行った結果、特に、2枚以上の剥落防止シートが重ね合わされた部分が、十分な厚みの防水透湿層が得られず、防水性能を低下させる要因であることを突き止めた。これに対して、本発明者等は中央部に比べ、端部の厚みを抑えた積層シートを、コンクリート構造物の補修材料に用いることによって、複数枚の積層シートの重ね合わされた部分に由来する防水性能の低下を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本開示における発明は、以下を含む。
(1)マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、
樹脂繊維シート部材とを含む積層シートであって、
該積層シートの端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄い、コンクリート構造物補修用の積層シート。
(2)前記中央部の厚みに対する、前記端部の厚みの比が0.9以下0.01以上である上記に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
(3)前記シート状部材は、その端部の少なくとも一部が、前記樹脂繊維シート部材の端部から1mm以上100mm以下の範囲において、前記樹脂繊維シート部材の端部よりも内側に配置されている上記に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
(4)前記積層シートが四角形状であり、4辺の端部全てにおいて前記中央部の厚みよりも薄い、上記に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
(5)コンクリート構造物の補修方法であって、
珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化組成物を上記に記載の積層シートに塗布又は含浸させて補修用基礎部材を準備する工程と、
該補修用基礎部材を前記コンクリート構造物に貼り付ける工程と、
前記補修用基礎部材を硬化させる工程と、
前記補修用基礎部材の表面に防水透湿材料を塗布して防水透湿層を形成する工程とを含むコンクリート構造物の補修方法。
本発明によれば、コンクリート構造物に防水性及び剥落防止性を付与する補修材料に用いるために好適な積層シート、補修部材及びコンクリート構造物の補修方法を提供することができる。
本発明の積層シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の積層シートの別の例を示す概略断面図である。 本発明の積層シートのさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明の積層シートのさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明の積層シートのさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明の積層シートのさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修部材(二層構造+防水透湿層)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修部材(三層構造+防水透湿層)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修部材(二層構造+防水透湿層)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修方法の一例を示すフロー図である。 実施例におけるコンクリート構造物の補修部材を用いたコンクリート構造物の補修方法の一工程を示す模式的な断面図である。 実施例におけるコンクリート構造物の補修部材を用いたコンクリート構造物の補修方法の一工程を示す模式的な断面図である。 比較例におけるコンクリート構造物の補修部材を用いたコンクリート構造物の補修方法の一工程を示す模式的な断面図である。
〔積層シート〕
本開示における積層シートは、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、このシート状部材に積層された樹脂繊維シート部材とを含む。この積層シートは、その端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄い。従来の積層シートの場合は、積層シートを重ね合わせた後に防水透湿層を施工すると、シートの重なり部分となる端部は直角であり、その重なり部分の防水透湿層の厚みが不十分になるという問題があった。
しかし、本開示における積層シートは、これらの積層シートを重ね合わせた部分の端部が鋭角となり、防水透湿層を均一な厚みで形成することができ、上述したようなシートの重なり部分における防水性能の低下を効果的に防止することができる。
なお、本開示における積層シートは、上述したマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材及び樹脂繊維シート部材をそれぞれ1層のみ含んでいてもよいし、これらをそれぞれ2層以上含んでいてもよいし、これらマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材及び樹脂繊維シート部材以外に、さらに第三の層等を1層以上含んでいてもよい。
(マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材)
マルチフィラメントは、長繊維を利用して構成されたものが好ましく、引張強度150N以上のものが好ましい。マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材の式(1)で表される値Xは2.0以上であることが好ましく、2.5以上、2.8以上又は3.0以上であることがより好ましい。
X=A×B (1)
ここで、Aは上記シート状部材の1方向の引張強度kN/50mmを表し、Bは上記シート状部材の軸数を表す。Aは、マルチフィラメントの50mm当たりの本数を変えることにより任意の値をとることができる。Bは、2から4の範囲を有するものが挙げられる。なかでも、Aは、0.75kN以上であることが好ましく、Bは2から3であるものが好ましい。
このようなシート状部材は、コンクリート構造物から落下するコンクリート片を受け止める耐力層(剥落防止層)としての機能を果たすことができる。
このようなシート状部材の材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ビニロンメッシュシート又はガラスメッシュシートからなることが好ましい。ガラス繊維は、ガラスヤーン又はロービングを用いることが好ましい。ガラスヤーンは、ガラス繊維に撚りをかけて合撚糸としたものであり、ロービングは、ガラス繊維を集束したものである。多軸メッシュの織り方は、平織り、綾織り、絡み織り、組布等が挙げられる。多軸メッシュの織り方の方向は、直交する二軸又はそれ以上の多軸織物であってもよい。
このシート部材の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1mm以下であることがより好ましい。
このシート部材は、50g/m2以上の目付量であることが好ましく、60g/m2以上であることがより好ましく、75g/m2以上であることがさらに好ましい。
このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修部材の十分な耐力を確保することができる。
このシート部材は、5mm以上25mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する樹脂繊維シートとコンクリート構造物等との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、このシート部材の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、このシート部材が樹脂繊維シートを破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
このシート部材は、5mm以上25mm以下の目開きで、50g/m2以上の目付量の二軸織物であることがより好ましい。また、二軸織物と同等の開口率の多軸織物であってもよい。特に、このシート部材は、引張強度150N以上のマルチフィラメントを、目開き5mm以上25mm以下で組み合わせた二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。
(樹脂繊維シート部材)
樹脂繊維シート状部材は、樹脂繊維からなる又は樹脂繊維を含むシート状の部材であり、織布、不織布等とすることができる。
樹脂繊維シート状部材は、引裂強度が2.0N以上であることが好ましい。引裂強度を2.0N以上とすることにより、樹脂繊維シート状部材は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート部材が樹脂繊維シート状部材を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を果たすことができる。
樹脂繊維シート状部材の材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましく、特に、長繊維不織布であることがより好ましい。ガラス不織布は、硬化組成物との相溶性に優れるため、硬化組成物が浸透しやすく、硬化組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、硬化組成物との相溶性を高めるため、繊維に親水化処理を行うこともできる。親水化処理は、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。
樹脂繊維シート状部材の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。このような厚みの範囲とすることにより、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート部材が樹脂繊維シート状部材を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を満たすとともに、硬化組成物の基材への含浸量を抑えることができ、経済的にも有利である。
樹脂繊維シート状部材は、30g/m2以上の目付量であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましく、60g/m2以上であることがさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
樹脂繊維シート状部材は、織物である場合、3mm以上30mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する他の層との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、樹脂繊維シート状部材の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材が樹脂繊維シート状部材を破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
樹脂繊維シート状部材は、引張強度10N以上のマルチフィラメントであることが好ましく、二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。また、引裂強度2.0N以上のシート状部材であることが好ましい。
積層シートが、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、樹脂繊維シート部材との二層構造の場合、樹脂繊維シート部材は引裂強度2.0N以上の樹脂繊維シート状部材であることが好ましく、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm以上25mm以下で多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、樹脂繊維シート部材が引裂強度2.0N以上の樹脂繊維シート状部材であることが好ましい。
例えば、図1及び2に示すように、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1と樹脂繊維シート部材2とは積層されて積層シート4を構成するが、この積層シート4は、少なくとも一部の端部の厚みD2が中央部の厚みD1よりも薄く設定されている。特に、中央部の厚みD1に対する端部の厚みD2は、0.9以下0.01以上であるものが好ましく、0.9以下0.1以上であるものがより好ましく、0.9以下0.15以上であるものがさら好ましく、0.8以下0.15以上であるもの又は0.7以下0.15以上であるものが特に好ましい。端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄く設定されているとは、積層シート4の端部、つまり端部の一部のみが、中央部よりも薄ければよいが、端部の全部が中央部よりも薄いことが好ましい。例えば、積層シートが、正方形、長方形等の四角形状である場合、そのうちの一辺のみの端部、好ましくは二辺の端部、より好ましくは四辺の端部の全てが、中央部よりも薄いことが好ましい。中央部よりも厚みの薄い端部は、積層シートの端部から1mm以上100mm以下の範囲に配置されていることが好ましく、1mm以上80mm以下の範囲であることがより好ましく、1mm以上50mm以下の範囲であることがさらに好ましい。なお、中央部よりも厚みの薄い端部の幅は、一定でなくてもよいが、一定であることが好ましい。また、中央部の厚み及び端部の厚みは、それぞれ一定であることが好ましいが、変動していてもよい。厚みは、図1及び2に示すように、段階的に異なっていてもよいし、傾斜的に異なっていてもよい。
例えば、図1に示すように、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1の端部Kが、樹脂繊維シート部材2の端部Gよりも、端部Gから端部までの距離Mの範囲で、内側に配置し、中央部の厚みD1に対して、端部の厚みD2(D2/D1)が0.9以下0.01以上の範囲となる積層シート4Aが好ましい。また、図2に示すように、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1の端部Gが、樹脂繊維シート部材2の端部Kよりも、端部Gから端部Kまでの距離Mの範囲で、外側に配置して、中央部の厚みD1に対して、端部の厚みD2(D2/D1)が0.9以下0.01以上の範囲となる積層シート4Bであってもよい。ここで、Mは1mm以上100mm以下とすることができる。
なお、積層シートの一つの端部において、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1の端部Kが、樹脂繊維シート部材2の端部Gよりも、端部Gから端部までの距離Mの範囲で、内側に配置し、他の端部において、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1の端部Kが、樹脂繊維シート部材2の端部Gよりも、端部Gから端部までの距離Mの範囲で、外側に配置するなど、端部の薄い形態は、積層シートにおける各シートの端部の位置を調整することによって、適宜設定することができる。
このように、積層シート4A、4Bに示すように、積層シートの端部の厚みが、中央部の厚みよりも薄い場合には、後述するように、これに硬化組成物を含浸又は塗布等して、コンクリート構造物に貼り付けた場合2枚以上の積層シートが重なった重なり部分においても均一に硬化組成物を含浸させることができる。また、硬化組成物の硬化後に後述するように、更なる防水透湿層を施工する場合には、図4及び5に示すように、積層シートの端部においても、適切な厚みで防水透湿層を形成することができ、図6に示すように、重なり部分の端部も均一又は適切な厚みで防水透湿層を形成することができる。その結果、それらの端部付近を起点とした機械物性の低下や防水透湿性の低下を防止することができ、特に、防水性能を効果的に発揮させることができる。
(第三の層等)
積層シートにおいては、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材及び樹脂繊維シート部材がそれぞれ1層でもよいし、2層以上でもよい。いずれか一方又は双方が2層以上積層される場合は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材同士及び/又は樹脂繊維シート部材同士が隣接して積層されてもよいが、それらが交互に積層されることが好ましい。また、積層シートは、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1及び樹脂繊維シート部材2以外の1以上の層が積層されたものであってもよい。
積層シートは、例えば、図3A〜3Dに示すように、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1及び樹脂繊維シート部材2に加えて、第三の層3を含む場合、上述したように、積層シートの端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄くなるように配置される限り、この第三の層3は、どこに何層配置されていてもよい。
例えば、図3A、3Bに示すように、第三の層3は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1の樹脂繊維シート部材2とは反対側に配置された積層シート14A、14Bであってもよいし、図3Cに示すように、第三の層3は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1と樹脂繊維シート部材2との間に配置された積層シート14Cであってもよいし、図3Dに示すように、第三の層3は、樹脂繊維シート部材2のマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1とは反対側に配置された積層シート14Dであってもよい。
また、第三の層は、必ずしもマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1及び樹脂繊維シート部材2と同じ形状及び大きさでなくてもよいが、いずれかと、同じ形状及び大きさであることが好ましい。例えば、図3A〜3Dに示すように、第三の層3が任意の位置に配置される場合においても、積層シートの中央部の厚みに対する端部の厚みが、上述した範囲であればよい。
このような積層構造により、補修材料の強度とコンクリート構造物への密着性を両立することができる。上述したマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1及び樹脂繊維シート部材2以外の第三の層3は、上述したマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材及び樹脂繊維シート部材のなかから選択してもよいし、当該分野で使用されるどのような層であってもよい。積層シートは、使い易さ、経済性等を考慮すると、2層構造又は3層構造が好ましい。
第三の層3は、気孔率が90%以上かつ樹脂繊維シート状部材であることが好ましい。これにより、硬化組成物の含浸性を確保することができるため、第三の層3が、補修部材とコンクリート構造物5との接着強度を向上させる接着層としての機能を果たすことができる。
第三の層の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがより好ましい。第三の層の厚みがこのような範囲とすることにより、補修部材とコンクリート構造物との接着強度が確保され、硬化組成物の積層シートへの含浸量を抑えることができ、経済的に有利である。
積層シートが、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1及び樹脂繊維シート部材2と、第三の層3の積層構造を有する場合、樹脂繊維シート部材2が引裂強度2.0N以上の樹脂繊維シート状部材であることが好ましく、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm以上25mm以下で多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、樹脂繊維シート部材2が引裂強度2.0N以上の樹脂繊維シート状部材であることが好ましい。
(積層シート)
上述したように、少なくとも二層のシート状部材を積層して構成される積層シートは、後述する硬化組成物を含浸することにより一体化してもよいが、予め一体化させておくことが好ましい。一体化させておくことにより、塗布含浸時の各シート部材のズレを防ぐことができる。
一体化の方法は、機械的な繊維交絡、化学的な接着等を利用することができ、例えば、縮絨、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡等が挙げられる。
積層シートの構成にかかわらず、積層シートへの硬化組成物の含浸量は、積層シートの全体にわたって均一に硬化組成物が保持されていればよく、硬化組成物の硬化によって積層シートの全体が強固に一体化させることができるように調整することが好ましい。例えば、積層シート硬化組成物の質量比は、14以上112以下であることが好ましく、14以上110以下であることがより好ましい。
〔補修部材〕
本開示のコンクリート構造物の補修部材は、コンクリート構造物の補修を行うために、硬化組成物と、上述した積層シートと、積層シート上に積層された防水透湿層とを含む。
例えば、図4に示すように、樹脂繊維シート部材2よりも、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1をコンクリート構造物5側に配置されるように貼り付けられ、樹脂繊維シート部材2の表面側に、防水透湿層6が配置される。また、図5に示すように、コンクリート構造物5側から順に、第三の層3、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1、樹脂繊維シート部材2及び防水透湿層6が配置されるように貼り付けられる。なお、図4及び5においては、積層シート4A又は14Bが用いられているが、図2に示す積層シート4B又は図3A、3C及び3Dに示す積層シート14A、14C及び14D等のいずれを用いてもよい。
このように、硬化組成物が含浸した積層シート及び防水透湿層6がコンクリート構造物5に配置された場合には、図4及び5に示すように、厚みの薄い端部が積層シートの端面を被覆するように積層シートの形状が適宜変形し、硬化組成物が適所に浸透及び分布することとなる。これによって、特に、防水性能等の低下を防止することができる。
なお、本願の補修部材は、コンクリートの補修後において、硬化組成物、積層シート及び防水透湿層が一体的に存在するのであれば、使用直前まで、つまり、コンクリート構造物に貼り付ける直前まで、別個に存在させてもよい。
このような補修部材は、コンクリート構造物の本来の耐火性能を維持して接着強度を確保することができ、透湿性を確保しながら防水性を高めることにより、補修性能を長期にわたり維持することができる。
(硬化組成物)
硬化組成物は、積層シートに塗布及び/又は含浸させるものであり、接着剤の役割を果たす。硬化組成物を積層シートに塗布及び/又は含浸させた上で、硬化組成物を硬化させることにより、コンクリート構造物と補修部材とを接着することができ、接着した補修部材により、コンクリート構造物の劣化部分からのコンクリート片の剥落を防止することができる。ただし、積層シートをコンクリート構造物に適用した後に、硬化組成物を積層シートに塗布、含浸、噴霧等してもよい。
硬化組成物は、25℃での粘度が400mPa・s以上3000mPa・s以下であるものが好ましい。このような粘度とすることにより、積層シートへの含浸性を確保することができる。また、コンクリート構造物に貼着した際の硬化組成物の液だれを防止することができる。
硬化組成物は、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂又はこれらの組み合わせ等の有機系材料、セメントスラリー、石膏、ガラス等の無機系材料等種々の材料を用いることができる。なかでも無機系材料を用いることにより、コンクリート構造物の耐火性能を確保することができる。
無機系硬化組成物としては、特に、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物の水溶液と、ポゾラン活性物質とを含む組成物(以下、「ジオポリマー」という場合がある)が好ましい。
特に、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムは、コンクリート構造物5の表面に適用されたときに、コンクリート中の水酸化カルシウムとC−S−Hゲルを生成することができるため、補修部材とコンクリート構造物の接着強度をより強固にすることができる。
ジオポリマーは、珪酸塩水溶液からなる液体成分とポゾラン活性物質とからなる固体成分の比重差が、セメントスラリーに含まれる水とセメントとの比重差に比べて小さいため、硬化組成物における成分の分離を抑制することができる。
硬化組成物においてジオポリマーを用いる場合、ポゾラン活性物質は、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるものが好ましく、0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、1.2mS/cm以上であることがさらに好ましい。このような電気伝導率差とすることにより、珪酸塩水溶液との反応性を十分に確保でき、補修部材とコンクリート構造物との接着強度を高めることができる。ここでの電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるポゾラン活性物質の反応性に関連する指標であり、後述する評価方法により得られる飽和水酸化カルシウム水溶液のポゾラン活性物質投入前後の電気伝導率の差を意味する。
ポゾラン活性物質は、水と酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は水酸化アルミニウム等とが反応して硬化する物質である。例えば、シリカダスト、珪藻土、タルク、アエロジル、ホワイトカーボン、カオリン、メタカオリン、活性白土、酸性白土等が挙げられる。なかでも、メタカオリンが好ましい。
ポゾラン活性物質は、通常、ポゾラン活性物質中のシリカの含有率が、硬化物の乾燥固形分に対し、SiO2換算した場合、40質量%以上であるものが好ましい。また、ポゾラン活性物質に由来するアルミニウムの含有率は、硬化物の乾燥固形分に対し、Al23に換算して、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
ポゾラン活性物質は、粉体をそのまま用いてもよいが、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーの作用等の方法を用いてもよい。これらの方法は併用してもよい。
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。その溶射技術は、好ましくは材料粉末が2000℃以上16000℃以下の温度で溶融され、30m/秒以上800m/秒以下の速度で噴霧されるものであり、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が可能である。得られた粉体の比表面積は、0.1m2/g以上100m2/g以下が好ましい。
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。つまり、粉砕の方法としてはジェットミル、ロールミル、ボールミル等による方法が挙げられる。また、分級の方法としては篩、比重、風力、湿式沈降等の方法が挙げられる。
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等が使用され、作用させる機械的エネルギーは0.5kwh/kg以上30kwh/kg以下が好ましい。このような機械的エネルギーの範囲とすることにより、粉体を十分に活性化することができるとともに、装置への負荷も抑制することができる。
例えば、ジオポリマーにおける珪酸塩水溶液に由来するナトリウム、カリウム、リチウム又はこれらの混合物は、その合計含有率が、硬化組成物から得られる硬化物の乾燥固形分に対し、M2O(Mはナトリウム、カリウム及びリチウム)に換算して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
また、珪酸塩水溶液を用いる場合、水溶液の下記数式で表される数値nが0.5以上1.1以下、さらに0.7以上1.0以下であることが好ましい。
n=S×M
(S水溶液に含まれるケイ素のモル数、M水溶液に含まれるアルカリ金属のモル数)
硬化組成物は、上記成分に加えて、特開2017−186825号、特開2017−226955号等に開示された成分及び当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。例えば、フィラー、改質剤、分散剤、硬化時間調整剤、顔料、酸化防止剤、ポリマーエマルション等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知のものを利用することができる。フィラーとしては、一般に充填剤として使用されるもののいずれであってもよい。例えば、カーボン、セルロース、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末などが挙げられる。改質剤としては珪酸塩水溶液と反応することができる各種金属塩が挙げられ、例えば軽焼酸化マグネシウム、亜鉛華等が挙げられる。ポリマーエマルションとしては、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの添加剤は、硬化組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。特に、ポリマーエマルションは、硬化組成物の乾燥固形分の全質量に対して、ポリマーの固形分質量が3質量%以上10質量%以下となるように配合されていることが好ましい。
これにより、硬化組成物の流動性を向上し、硬化物の接着強度を向上し、硬化物の乾燥収縮を抑制することができる。
(防水透湿層)
防水透湿層は、防水透湿材料が、適当なシート状の部材に含浸されて構成された層であってもよいし、硬化組成物を塗布及び/又は含浸させた積層シートに防水透湿材料を塗布することにより得られる層であってもよい。この場合、図4及び図5に示すように、防水透湿層6は、コンクリート構造物とは反対側の積層シートの表面に配置されていることが好ましい。このような防水透湿層を配置することにより、補修部材の透湿性を確保しながら、防水性を高めることができる。その結果、補修部材自体が、コンクリート構造物の劣化部分からのコンクリート片の剥落を長期にわたり防止することができる。
防水透湿材料は、公知のシリコーン骨格を形成する成分を含むものを利用することができる。
シリコーン骨格を形成する防水透湿材料は例えば、アクリルシリコーン、変成シリコーンなどの構造を含むものが挙げられる。
アクリルシリコーン系防水透湿材料は、具体的には、大日精化工業株式会社製、商品名ダイステンダー2000Bクリヤー等が挙げられる。
変成シリコーン系防水透湿材料は、接着剤樹脂組成物として、変成シリコーン樹脂と、エポキシ樹脂、シラノール縮合触媒と、エポキシ樹脂硬化剤とを含む混合物が挙げられる。変成シリコーン樹脂としては特に限定されないが、好ましくは湿気硬化型の変成シリコーン樹脂であり、この場合、加水分解性ケイ素基を有する。加水分解性ケイ素基を有する変成シリコーン樹脂はアルキレンオキサイド成分、オレフィン成分およびアクリル成分からなる群から選ばれるモノマーの重合体であってよい。この重合体は単独重合および共重合体のいずれでもよい。
防水透湿材料は、硬化組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の量で用いることができる。例えば、積層シートの大きさによって適宜設定することができ、塗布量を、積層シートの面積に対して、3g/m2以上1000g/m2以下とすることが挙げられ、5g/m2以上600g/m2以下が好ましい。また、別の観点から、24時間後の吸水率が75%以下を示すことが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。また、水蒸気透過量率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。さらに、24時間後の吸水率が75%以下かつ水蒸気透過量率が20%以上であることが好ましく、24時間後の吸水率が70%以下であり、かつ水蒸気透過量率が30%以上であることがより好ましく、24時間後の吸水率が60%以下であり、かつ水蒸気透過量率が50%以上であることがさらに好ましい。このような特性を有する防水透湿層を積層シートに積層することにより、上述した効果をより一層発揮させることができる。
なお、防水透湿層は、上述した防水透湿材料の塗布によって形成する場合、その大きさは、積層シートの外表面と同じ大きさであることが好ましい。また、防水透湿材料を、積層シートの端面(切断された側面)等に塗布して、その表面に形成してもよい。さらに、防水透湿材料を、積層シートの表面、端面に加えて、積層シートの外側のコンクリート構造物の表面に形成してもよい。
〔コンクリート構造物の補修方法〕
本願のコンクリート構造物の補修方法は、上述したコンクリート構造物の補修部材を用いて行うことができる。
つまり、図7に示すように、珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む組成物を積層シートに塗布又は含浸させて補修用基礎部材を準備する工程(ステップS10)と、この補修用基礎部材をコンクリート構造物に貼り付ける工程(ステップS20)と、補修用基礎部材を硬化させる工程(ステップS30)と、補修用基礎部材の表面に防水透湿材料を塗布して防水透湿層を形成する工程(ステップS40)とを含む。
このような補修方法によれば、従来のように、接着剤又は結合剤等の硬化性液状組成物の塗装及び乾燥を繰り返す必要がないことから、簡便かつ効率的に作業することができ、作業性に優れる。
特に、このコンクリート構造物の修復方法では、ステップS20において、複数の補修用基礎部材を、それよりも大面積を有するコンクリート構造物に対して、端部が重なるように貼り付けることが好ましい。これにより、大面積のコンクリート構造物に対して、複数枚の積層シートの重なり部分に由来する防水性能の低下もたらすことなく、補修を要するコンクリート構造物に対して、確実に、防水性を付与することができる。
(補修用基礎部材の準備)
複数の補修用基礎部材を準備するために、まず、上述した硬化組成物を調製する。また、積層シートを構成する材料を準備する。積層シートを形成してから硬化組成物を含浸又は塗布してもよいし、硬化組成物を含浸又は塗布してから積層シートを積層して形成してもよいし、積層シートを形成しながら硬化組成物を含浸又は塗布してもよい。また、積層シートを対象のコンクリート構造物に貼り付ける前後のいずれに硬化組成物を塗布又は含浸させてもよい。
硬化組成物を積層シートに塗布又は含浸させる方法としては、例えば、(1)ローラーを使って手作業で塗布するハンドレイアップ法、(2)スプレーにより塗布又は含浸させる方法、(3)金型により積層シートの厚みを規定した後に、圧入によって硬化組成物を積層シートに塗布及び含浸させる方法、(4)減圧により積層シートの厚みを規定した後、減圧注入によって硬化組成物を積層シートに塗布及び浸させる方法、(5)積層シートを硬化組成物に浸漬し、積層シートに硬化組成物を連続的に含浸させた後に、ロールによって積層シートの厚みを規定する方法、(6)ロール転写により連続的に塗布及び含浸を行う方法等が挙げられる。これらは組み合わせて利用してもよい。
含浸時の作業性を上げるため、また含浸シートへのゴミの付着、含浸シート同士の付着を防止するため、積層シートの表裏面を樹脂製の保護フィルムでカバーしてもよい。この保護フィルムはコンクリート構造物に貼り付ける際に除去すればよい。
(貼付工程)
得られた補修用基礎部材を、コンクリート構造物に貼り付ける。
例えば、図1及び2に示す積層シート4A、4Bを、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1が、樹脂繊維シート部材2よりも、コンクリート構造物5側に配置されるように貼り付けることができる。
また、図3A〜3Dに示す積層シート14A、14B、14C、14Dを、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1がコンクリート構造物5側、樹脂繊維シート部材2がその外側に配置され、第三の層3は任意の位置に配置し、貼り付けることができる。
特に、図1に示す積層シート4Aを、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1が、樹脂繊維シート部材2よりも、コンクリート構造物5側に配置されるように、図4に示すように貼り付けることが好ましい。
また、図3Bに示す積層シート14Bを、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1がコンクリート構造物5側、樹脂繊維シート部材2がその外側に配置され、第三の層3が、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1よりもコンクリート構造物5側に配置するように、図5に示すように貼り付けることが好ましい。
このような補修用基礎部材を、コンクリート構造物に貼り付けることにより、厚みの薄い端部が積層シートの端面を被覆するように積層シートの形状が適宜変形し、硬化組成物が適所に浸透及び分布することとなる。これによって、防水性能能等の低下を防止することができ、ひいては、補修材料の強度とコンクリート構造物への密着性を両立することができる。
補修用基礎部材を、コンクリート構造物に貼り付ける際、補修用基礎部材とコンクリート構造物の表面の間に入り込んだ気泡を取り除くことは、特に、補修用基礎部材とコンクリート構造物の表面との密着性を高めるために重要である。気泡除去の方法としては、ロール又はへらを使って気泡を補修用基礎部材の外側に追い出す方法が好適である。
補修用基礎部材は、複数を、積層シートの端部が互いに重なるように貼り付けることが好ましい。ここでの重なりの程度は特に限定されないが、重なりの程度が大きい場合には、コンクリート構造物をより強固に被覆することができる。例えば、積層シートの端部が薄い部分同士の一部が重なるように配置することができる。また、積層シートの端部が薄い部分同士が完全に重なるように配置することが好ましく、図6に示すように、各積層シートの端部が薄い部分が、他の積層シートのより内側の厚い部分上に重なるように配置することがより好ましい。図6に示すように、一面のコンクリート構造物に、複数枚の積層シートの端部が重なるように配置する場合、2枚以上の積層シートの重なり部分において、積層シートの薄い端部が他の積層シートに密着しやすくなる。その結果、それらの積層シート端部付近における硬化組成物の連続性を確保することができ、後述する防水透湿層の厚みを均一又は適切に形成することが可能となる。
(硬化工程)
補修用部材に含浸された硬化組成物の硬化は、コンクリート構造物に補修用基礎部材を密着させた状態で設置することによって行う。コンクリート構造物の表面に、硬化組成物を含浸させる時間を確保するという観点から、硬化組成物の硬化時間は30分間以上300分間以下であることが好ましく、45分間以上240分間以下であることがより好ましい。硬化時間は、有機系材料の場合は硬化触媒の量及び種類等によって、無機系材料の場合は含まれる水分量によって、特にジオポリマーの場合は珪酸塩水溶液に由来するナトリウム、カリウム、リチウム又はこれらの混合物の含有率や珪酸塩水溶液に由来するSiO2とM2O(Mはナトリウム、カリウム及びリチウム)の比率(SiO2/M2O)、そしてポゾラン活性物質の電気伝導率差、アルミニウムの含有率等によって調整することができる。硬化組成物の硬化が完了すると、コンクリート構造物に補修用基礎部材が固着されて、コンクリート構造物の補修を完了させることができる。
(防水透湿層の形成)
防水透湿層は、コンクリート構造物に、硬化組成物が含浸された積層シート(本実施の形態では補修用基礎部材とも述べている)を密着させた状態で、積層シートに塗工することによって形成することができる。なかでも、積層シートに硬化組成物が含浸され、硬化組成物の硬化が進行した後に防水透湿材料を塗工することが好ましい。図4〜6に示したように、硬化組成物が含浸された積層シート4A、14Bの表面に防水透湿材料を塗工することによって、防水透湿層6を、補修用基礎部材の表面に層状に配置することができる。ここでの防水透湿材料を塗工は、補修用基礎部材の全表面を被覆するのであれば、その近傍に位置するコンクリート構造物に及んでもよい。
例えば、硬化組成物の硬化物又は積層シートへ含浸性の観点から、硬化組成物の硬化が進み、表面含水率が8%を下回ってから行うことが好ましい。また別の観点からは、硬化組成物の作製直後から7日以内に行うことが好ましく、30分から24時間後に行うことがさらに好ましい。
塗工の方法は、一般的な方法を用いることができ、刷毛、ローラー、スプレーガン、左官等が挙げられる。
なお、防水透湿層の形成は、硬化組成物が完全に硬化する前に行ってもよい。また、防水透湿材料の塗工に代えて、防水透湿シートを、硬化組成物が完全に硬化する前又は後に、積層シートの表面に貼着することにより、防水透湿層を形成してもよい。
このように、積層シートに硬化組成物を含浸した補修用基礎部材の表面に防水透湿層を形成することによって、コンクリート構造物の表面に補修部材を設けることができ、コンクリート中の水分を逃がすことを可能としながら、コンクリート構造物の防水性を確保することができる。特に、2枚以上の補修用基礎部材の重なり部分において、積層シートの薄い端部が他の積層シートに密着しやすくなる。その結果、それらの積層シート端部付近における硬化組成物の連続性を確保することができるとともに、補修用基礎部材の重なり部分を含む、その表面の全体にわたった防水透湿層を均一又は適切な厚みで連続的に形成することができ、コンクリート構造物の防水性を確保することができる。
以下、本発明のコンクリート構造物の補修部材及び補修方法を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(積層シートAの形成)
ビニロンマルチフィラメントからなる三軸メッシュシート(目付量90g/m2、目開き8mm、厚み0.35mm、X=3.0)を100mm×45mmとし、100mm×50mmの親水化ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付量30g/m2、厚み0.2mm、引裂強度16N)に積層し、一片の端部から5mm部分に三軸メッシュシートを含まない積層シートを作製した。得られた積層シートの中央部厚みは0.55mmであり、三軸メッシュシートを含まない端部の厚みは0.2mmであり、その比は0.37であった。
図1において、三軸メッシュシートがマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材1に相当し、目付量30g/m2のスパンボンド不織布が樹脂繊維シート部材2に相当する。
(積層シートaの形成)
積層シート1と同様にビニロンマルチフィラメントからなる三軸メッシュシート(目付量90g/m2、目開き8mm、厚み0.35mm、X=3.0)を100mm×100mmとし、100mm×100mmの親水化ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付量30g/m2、厚み0.2mm、引裂強度16N)に積層した。得られた積層シートの中央部厚みは0.55mmであり、端部の厚みは0.55mmであり、その比は1.0であった。
(硬化組成物の調製)
続いて、JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名SR−151)15gを24時間攪拌して珪酸塩水溶液を得た。三菱重工業社製ウルトラファインミル(ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85%、粉砕助剤としてトリエタノールアミン25%、エタノール75%の混合液をメタカオリンの0.6%添加)にて、3.3KW/kgのエネルギーで、3時間処理した焼成カオリン(BASF社製 商品名SP−33 電気伝導率差1.1mS/cm)130gと10℃の環境条件において混合することにより、硬化組成物を調製した。得られた硬化組成物の粘度は1000Pa・sであった。
また、硬化物の全質量に対して、硬化物中のNa2O(換算値)の含有率は11.3質量%、Al23(換算値)の含有率は30.9質量%であった。
(コンクリート構造物の補修方法)
図8Aに示すように、100mm×100mm×30mmのコンクリート片15に対し、上記で作製した100mm×100mmの積層シートaを1枚設置した後に、100mm×50mmの積層シートAを積層シートaに重なるように配置した。積層シートAは、不織布がコンクリート辺5に接触するように、かつ三軸メッシュシートを含まない不織布端部が、コンクリート片15の中央に来るように配置した。積層シートA、aが2枚重なった重ね部は約50mmであった。
これら積層シートA、aに、11gの硬化組成物を23℃の環境下で含浸させ、23℃の環境下で硬化させた。その後、図8Bに示すように、アクリルシリコーン系防水透湿材料(大日精化工業株式会社 商品名ダイステンダー2000Bクリヤー)を2時間おきに1gずつ均一に3度、積層シートA、aの表面に塗布することにより防水透湿層26を形成した。このようにして、コンクリート構造物の補修部材25を作製し、コンクリート構造物を補修した。
比較例1
積層シートBとして、実施例1の積層シートAにおいて、端部と中央部との厚み差がないものを準備し、用いた以外は同様の条件で、コンクリート構造物の補修部材25Xを作製した。
その後、得られた補修部材25Xを用いて、実施例1と同様に、コンクリート構造物の補修方法を実行した。
(浸漬24時間後の透水量)
実施例及び比較例の吸水性能を、JIS A1404「建築用セメント防水剤の試験方法」7.5「吸水試験」を参考にして求めた。
具体的には、実施例1及び比較例1で作製した補修部材25、25Xにおいて、補修部材貼り付け面に接する側面をアルミテープ、端末をシリコーン(積水フーラー株式会社製、商品名シリコーンJX)によりシーリングすることで防水処置し、補修部材貼り付け面が水深20mmとなるように水中に半浸漬し、24時間後の吸水量を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2021055364
比較例1では、24時間後の吸水量が非常に大きいことが確認された。これは、図8Cに示すように、積層シートの重なり部分となる端部が直角となるため、塗布した防水透湿材料が、その部分で厚みが極端に薄くなるか、分断されるために、防水透湿層の機能を十分に発揮させることができないためである。
一方、実施例1のように、端部の厚みを薄くした積層シートを用いた場合には、同様の積層構造を有するものの、端部の厚み形状が異なる比較例1に対して、明らかに、水中への浸漬24時間後の吸水量が低減された。このことから、積層シートの重なり部分に起因する吸水を顕著に低減することができ、コンクリート構造物への十分な防水性を向上させることができることが確認された。
本発明の補修部材によれば、コンクリート構造物の寿命を延命することができる。
1 シート状部材
2 樹脂繊維シート部材
3 第三の層
4A、4B、14A、14B、14C、14D 積層シート
5 コンクリート構造物
6、26 防水透湿層
15 コンクリート片
25 補修部材

Claims (5)

  1. マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、
    樹脂繊維シート部材とを含む積層シートであって、
    該積層シートの端部の少なくとも一部の厚みが中央部の厚みよりも薄い、コンクリート構造物補修用の積層シート。
  2. 前記中央部の厚みに対する、前記端部の厚みの比が0.9以下0.01以上である請求項1に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
  3. 前記シート状部材は、その端部の少なくとも一部が、前記樹脂繊維シート部材の端部から1mm以上100mm以下の範囲において、前記樹脂繊維シート部材の端部よりも内側に配置されている請求項1又は2に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
  4. 前記積層シートが四角形状であり、4辺の端部全てにおいて前記中央部の厚みよりも薄い請求項1〜3の何れか1項に記載のコンクリート構造物補修用の積層シート。
  5. コンクリート構造物の補修方法であって、
    珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化組成物を請求項1〜3の何れか1項に記載の積層シートに塗布又は含浸させて補修用基礎部材を準備する工程と、
    該補修用基礎部材を前記コンクリート構造物に貼り付ける工程と、
    前記補修用基礎部材を硬化させる工程と、
    前記補修用基礎部材の表面に防水透湿材料を塗布して防水透湿層を形成する工程とを含むコンクリート構造物の補修方法。
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