JP2017226955A - コンクリート構造物の補修用材料 - Google Patents

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JP2017226955A JP2016121481A JP2016121481A JP2017226955A JP 2017226955 A JP2017226955 A JP 2017226955A JP 2016121481 A JP2016121481 A JP 2016121481A JP 2016121481 A JP2016121481 A JP 2016121481A JP 2017226955 A JP2017226955 A JP 2017226955A
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黒田 健夫
Takeo Kuroda
健夫 黒田
昌紀 島田
Masanori Shimada
昌紀 島田
治樹 堅田
Haruki Katada
治樹 堅田
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Abstract

【課題】コンクリート構造物に用いられる硬化性組成物における白色結晶の析出を防止し、外観を向上させることができるコンクリート構造物の補修材料を提供することを目的とする。【解決手段】既設のコンクリート構造物の補修に用いられる補修材料であって、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の珪酸塩と、アルコキシシラン、シロキサン及びアルキルシリコネートからなる群から選択される少なくとも1種の珪素化合物と、アルミニウムを含む化合物とを含む硬化性組成物、及び少なくとも1方向の引張強度が1kN/50cm以上であって、マルチフィラメントを組み合わせたメッシュシートを備えコンクリート構造物の補修材料。【選択図】なし

Description

本開示は、コンクリート構造物の補修用材料に関する。
コンクリート構造物は、高強度で施工性に優れ、安価であるというメリットがあるため、日本では高度成長期を中心に、多くのコンクリート建造物が作られてきた。コンクリート建造物は、耐久性に優れるが、長年の使用で大気中の二酸化炭素が水分とともに浸透することによって中性化が引き起こされたり、海風や凍結防止剤飛沫に含まれる塩化物イオンが浸透することによって腐食膨張したりして、ヒビ割れが生じることもある。
このようなコンクリートの剥落を防止する試みとして、特許文献1及び2等には、メッシュシートと不織布を組み合わせた剥落防止用積層基材を用いることが提案されている。
このような剥落防止用積層基材に用いられる接着剤等の硬化性組成物は、多湿環境下での使用において、空気中の二酸化炭素との反応により白色結晶が生じ、これが表面に析出し、外観を損ねることがある。
特開2012−26238号公報 特開2013−019146号公報
このような硬化性組成物における白色結晶の析出を防止し、外観を向上させることが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物に用いられる硬化性組成物における白色結晶の析出を防止し、外観を向上させることができるコンクリート構造物の補修材料を提供することを目的とする。
本願は以下の発明を含む。
(1)既設のコンクリート構造物の補修に用いられる補修材料であって、
珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の珪酸塩と、
アルコキシシラン、シロキサン及びアルキルシリコネートからなる群から選択される少なくとも1種の珪素化合物と、
アルミニウムを含む化合物とを含む硬化性組成物、及び
少なくとも1方向の引張強度が1kN/50cm以上であって、マルチフィラメントを組み合わせたメッシュシートを備えることを特徴とするコンクリート構造物の補修材料。
(2)前記硬化性組成物は、珪酸塩100質量部に対して、前記珪素化合物を0.3〜15質量部で含む上記のコンクリート構造物の補修材料。
(3)前記珪素化合物は、自己乳化性である上記のコンクリート構造物の補修材料。
(4)前記アルキルシリコネートが、炭素数1〜3のモノ、ジ又はトリアルキルシリコネートあるいはそれらのアルカリ金属塩である上記のコンクリート構造物の補修材料。
(5)前記アルミニウムを含む化合物がメタカオリンである上記のコンクリート構造物の補修材料。
(6)前記硬化性組成物が、さらにスチレンブタジエンゴムを、前記珪酸塩100質量部に対して、4〜50質量部で含まれている上記のコンクリート構造物の補修材料。
本発明によれば、コンクリート構造物に用いられる硬化性組成物における白色結晶の析出を防止し、外観を向上させることができるコンクリート構造物の補修材料を提供することができる。
<補修材料>
本願における補修材料は、既設のコンクリート構造物の補修に用いられるものであって、硬化性組成物と、メッシュシートとを備える。硬化性組成物とメッシュシートとは、別個に存在させてもよいが、補修の際に、後述するように硬化性組成物をメッシュシートに含浸させた状態として用いることが好ましい。
補修材料は、例えば、コンクリート構造物に貼り付けることにより、補修材料に含浸した硬化性組成物がコンクリート構造物の表面に塗布され、その組成物が硬化及びコンクリート構造物と結合することによって、コンクリート構造物の劣化部分からのコンクリート片の剥落を防止するなど、コンクリート構造物を効果的に補修し得るものである。
(硬化性組成物)
硬化性組成物は、珪酸塩と、珪素化合物と、アルミニウムを含む化合物とを含む。このような構成、つまり、特定の珪素化合物を加えることのみで、多湿環境下でのこのような硬化性組成物の使用において、空気中の二酸化炭素と、硬化性組成物中の成分との反応により生じる白色結晶の析出を効果的に防止することができる。
(珪酸塩)
硬化性組成物には、珪酸塩として、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムが、少なくとも1種が含有されていればよく、2種又は3種が含有されているものでもよい。
硬化性組成物における珪酸塩の合計含有率は、硬化性組成物から得られる硬化物の乾燥固形分に対し、M2O(Mはナトリウム、カリウム及びリチウム)に換算して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
珪酸塩は、硬化性組成物において、通常、水溶液の形態で含有される。この場合、これらの水溶液の下記数式で表される数値nが0.4〜1.1であるものが好ましく、0.5〜1.1であるものがより好ましく、0.5〜1.0であるものがさらに好ましい。
n=S/M
(式中、Sは水溶液に含まれるケイ素のモル数を表し、Mは水溶液に含まれるアルカリ金属のモル数を表す。)
珪酸塩は、例えば、コンクリート構造物の表面に塗布及び/又は含浸されたときに、コンクリート中の水酸化カルシウムとC-S-Hゲルを生成することができるため、コンクリート構造物への接着強度を強固にすることができる。
(珪素化合物)
硬化性組成物には、珪素化合物としては、アルコキシシラン、シロキサン及びアルキルシリコネートが少なくとも1種含有されていればよく、2種又は3種が含有されているものでもよい。
硬化性組成物における珪素化合物の合計含有率は、硬化性組成物から得られる硬化物の乾燥固形分において、珪酸塩100質量部に対して、1〜10質量部で含むものが好ましく、1〜8質量部で含むものがより好ましい。
アルコキシシランとしては、炭素数1〜12のアルコキシ基を含むものが好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基を含むものがより好ましい。
アルキルシリコネートは、例えば、式:
1 aSi(OR2b(OM)c
[式中、aは0以上の整数(好ましくは1)、bは0以上の整数(好ましくは1、2、3)、cは0以上の整数(好ましくは0、1)であり、a+b+c=4を満たす。R1は、同一または異なり、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R2は、同一または異なり、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。Mは、同一または異なり、アルカリ金属を表す。]
で表されるものが挙げられる。
1としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
2としては、水素原子の他、R1と同様の基が挙げられる。このうち、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
Mとしては、Li、Na、K等が挙げられ、特にNaが好ましい。
アルキルシリコネートとしては、例えば、ナトリウムメチルシリコネート〔CH3Si(OH)2(ONa)〕、カリウムエチルシリコネート〔C25Si(OH)2(OK)〕が挙げられる。
なかでも、アルキルシリコネートは、炭素数1〜3のモノ、ジ又はトリアルキルシリコネートあるいはそれらのアルカリ金属塩であることが好ましい。
これらの珪素化合物は、自己乳化性であるものが好ましい。ここで自己乳化性とは、大きな力が加わらない状態でも乳化作用を発揮するものであり、具体的にはホモミキサー等のせん断力を必要とせず、水と接触することで自発的に乳化するもので、水に滴下した際に数秒〜数十秒程度で乳化・拡散を示す性質を指す。
(アルミニウムを含む化合物)
硬化性組成物には、アルミニウムを含む化合物として、カオリン、メタカオリン、活性白土、酸性白土等の少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、メタカオリンがより好ましい。アルミニウムを含む化合物は、アルミニウムを含む化合物中のアルミニウムをAl23 換算した場合のアルミナ成分含有量が30質量%以上であるものが好ましい。
アルミニウムを含む化合物は、通常、塊又は粉末状であるが、これら塊状又は粉末状のものをそのまま用いてもよい。また、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーの作用等の方法を用いて、その状態を変化させたものを用いてもよい。
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。溶射技術は、例えば、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が挙げられる。好ましくは、材料粉末を2000〜16000℃の温度で溶融し、30〜800m/秒の速度で噴霧し、比表面積が0.1〜100m2/gの粉末とすることが好ましい。
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。粉砕は、ジェットミル、ロールミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。また、分級は、篩、比重、風力、湿式沈降等を用いる方法が挙げられる。これらの手段は任意に併用することができる。
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等を用いる方法が挙げられる。作用させる機械的エネルギーは、適度に活性化しつつ、負荷を最小限とするために、0.5kwh/kg〜30kwh/kgが好ましい。
硬化性組成物は、アルミニウムを含む化合物の含有率は、硬化物の乾燥固形分に対し、Al23に換算して、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがより好ましい。
特に、硬化性組成物において、アルミニウムを含む化合物は、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるものが好ましく、0.5mS/cm以上、0.6mS/cm以上又は0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、0.8mS/cm以上、1.0mS/cm以上、1.2mS/cm以上であるものがさらに好ましい。このような電気伝導率差とすることにより、珪酸塩水溶液との反応性を十分に確保でき、補修材料とコンクリート構造物との接着強度を高めることができる。ここでの電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるアルミニウムを含む化合物の反応性に関連する指標であり、アルミニウムを含む化合物について『Cement Concrete Research, Vol.19, pp.63−68, 1989』に従い、40±1℃の条件で、Ca(OH)2飽和水溶液200mlの電気伝導率を測定し、続いてメタカオリン5gを投入し、攪拌して2分後の電気伝導率を測定し、投入前の電気伝導率との差を意味する。
硬化性組成物は、通常、メッシュシートに塗布及び/又は含浸されて用いられる。硬化性組成物をメッシュシートに塗布及び/又は含浸させた上で、硬化性組成物を硬化させることにより、コンクリート構造物と補修材料とを接着することができる。
そのために、硬化性組成物は、25℃での粘度が400〜3000mPa・sであるものが好ましい。このような粘度とすることにより、メッシュシートへの含浸性を確保することができる。また、コンクリート構造物に貼着した際の硬化性組成物の液だれを防止することができる。硬化性組成物の粘度は、JIS K 7117に従い、ファンギラブ社製ビスコスタープラスR型を用い、R4ローターにて回転数50min-1、23℃の条件下で最初に粘度が安定し始めたタイミングでの測定により求めることができる。
このような構成の硬化性組成物とすることにより、この固体成分の比重差が、セメントスラリーに含まれる水とセメントの比重差に比べて小さいため、硬化性組成物における成分の分離を抑制することができる。また、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムは、コンクリート構造物の表面に塗布及び/又は含浸されたときに、コンクリート中の水酸化カルシウムとC-S-Hゲルを生成することができるため、補修用材料5とコンクリート構造物の接着強度をより強固にすることができる。
(その他の成分)
硬化性組成物は、上記成分に加えて、当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。例えば、フィラー、改質剤、分散剤、硬化時間調整剤、顔料、酸化防止剤、ポリマーエマルション、上述したアルミニウムを含む化合物以外のポゾラン活性物質等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知のものを利用することができる。フィラーとしては、一般に充填剤として使用されるもののいずれであってもよい。例えば、カーボン、セルロース、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末などが挙げられる。改質剤としては珪酸塩水溶液と反応することができる各種金属塩が挙げられ、例えば軽焼酸化マグネシウム、亜鉛華等が挙げられる。ポリマーエマルションとしては、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム又はこれらの混合物等が挙げられる。ポゾラン活性物質としては、シリカダスト、珪藻土、タルク、アエロジル、ホワイトカーボン等が挙げられる。
これらの添加剤は、硬化性組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。特に、ポリマーエマルションは、硬化性組成物の乾燥固形分の全質量に対して、ポリマーの固形分質量が3〜10質量%となるように、言い換えると、珪酸塩100質量部に対して、3〜20質量部で含まれていることが好ましい。これにより、硬化性組成物の流動性を向上し、硬化物の接着強度を向上し、硬化物の乾燥収縮を抑制することができる。
(メッシュシート)
メッシュシートは、補修材料において、硬化性組成物を含浸又は塗布して、被補修部位に貼り付ける基材として機能するものであり、本願の補修材料は、基材として、少なくとも1層のメッシュシートを含むものであれば、さらに他の基材層を1層又は複数層含むものであってもよい。基材が積層構造を有する場合、メッシュシートは、最表面に配置することが好ましい。これによって、メッシュシートを被補修部位に接触するように、補修材料を被補修部位に貼り付けることができる。
メッシュシートは、少なくとも1方向の引張強度が1kN/50cm以上であって、マルチフィラメントを組み合わせたものが好ましい。ここでの引張試験は、例えば、JIS L 1096に従って行うことができる。
メッシュシートは、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシートであることが好ましい。
マルチフィラメントは、長繊維を利用して構成されたものが好ましい。
材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ビニロンメッシュシート又はガラスメッシュシートからなることが好ましい。ガラス長繊維は、ガラスヤーン又はロービングを用いることが好ましい。ガラスヤーンは、ガラス繊維に撚りをかけて合撚糸としたものであり、ロービングは、ガラス繊維を集束したものである。多軸メッシュの織り方は、平織り、綾織り、絡み織り、組布等が挙げられる。また多軸メッシュの織り方の方向は、直交する二軸、もしくは、それ以上の多軸織物であってもよい。
メッシュシートの厚みは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましい。
メッシュシートは、50g/mm2以上の目付量であることが好ましく、60g/mm2以上がより好ましく、75g/mm2以上がさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
メッシュシートは、5mm以上25mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましく、5mm以上25mm以下の目開きで、50g/mm2以上の目付量の二軸織物であることがより好ましい。また、二軸織物と同等の開口率の多軸織物であってもよい。
特に、メッシュシートは、引張強度1kN/50cm以上のマルチフィラメントを、目間隔5mm〜25mmで組み合わせた二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。
また、メッシュシートは、式(1)で表される値Xが、2.0以上であることが好ましく、2.5以上、2.8以上又は3.0以上であることがより好ましい。
X=A×B (1)
ここで、Aはメッシュシートの1方向の引張強度kN/50mmを表し、Bはメッシュシートの軸数を表す。Aは、マルチフィラメントの50mm当たりの本数を変えることにより任意の値をとることができる。Bは、2〜4の範囲を有するものが挙げられる。
このような構成により、メッシュシートは、コンクリート構造物から落下するコンクリート片を受け止める耐力層としての機能を満たすことができる。
(他の基材層)
他の基材層として、例えば、透液性のシート状部材を用いることが好ましい。この透液性シート状部材の形状としては、織布、不織布等が挙げられる。材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましく、特に、長繊維不織布であることがより好ましい。ガラス不織布は、硬化性組成物との相溶性に優れるため、硬化性組成物が浸透しやすく、硬化性組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、硬化性組成物との相溶性を高めるため、繊維表面に表面処理を行うことが望ましい。
透液性のシート状部材の厚みは0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mm以上0.5mm以下である。このような厚みの範囲とすることにより、メッシュシートの補強層としての機能を果たすことができるとともに、硬化性組成物の含浸量を抑えることができ経済的に有利である。
さらに、別の透液性のシート状部材を用いることが好ましい。この別の透液性シート状部材は、例えば、気孔率が90%以上かつ透液性のシート状部材であることが好ましい。これにより、硬化性組成物の含浸性を確保することができるため、補修材料と被補修部位の接着強度を向上させる接着層としての機能を満たすことができる。
別の透液性のシート状部材の形状としては不織布が挙げられる。材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられ、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましい。ガラス不織布は、硬化性組成物との相溶性に優れるため、硬化性組成物が浸透しやすく、硬化性組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、硬化性組成物との相溶性を高めるため、繊維表面に表面処理を行うことが好ましい。
別の透液性のシート状部材の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下である。この範囲とすることにより、補修材料の接着強度が確保され、硬化性組成物の基材への含浸量を抑えることができ経済的に有利である。
(積層一体化)
メッシュシートが積層体として構成される場合、その積層体は、硬化性組成物を含浸することにより一体化してもよいが、予め一体化させておくことが好ましい。一体化させておくことにより、塗布含浸時の各シート部材のズレを防ぐことができる。
一体化の方法は、機械的な繊維交絡、化学的な接着等を利用することができ、例えば、縮絨、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡等が挙げられる。
<補修材料の使用方法>
本開示の補修材料は、例えば、上述した硬化性組成物を上述したメッシュシートを含む基材に塗布及び/又は含浸させ、硬化性組成物が塗布含浸された基材を被補修部位に貼り付け、硬化性組成物が塗布含浸された基材を硬化させることにより、コンクリート構造物等の被補修部位を補修するために使用できる。このような補修材料を用いることにより、従来のように塗装・乾燥を繰り返す必要もないことから、簡便かつ効率的に作業を行うことができ、作業性にも優れる。
塗布含浸は、硬化性組成物を基材に塗布含浸させることにより行う。基材は、被補修部位に貼り付ける前後のいずれに硬化性組成物を含浸させてもよい。
基材への硬化性組成物の含浸は、基材の全体にわたって均一に硬化性組成物が保持され、硬化性組成物の硬化によって基材の全体が強固に一体化させることができるように調整することが好ましい。例えば、基材:硬化性組成物の質量比は、1:4〜1:12程度とすることが好ましく、1:4〜1:10とすることがより好ましい。
硬化性組成物を含浸させる方法としては、例えば、(1)ローラー、ハケ、ヘラ、コテ等を使って手作業で塗布含浸を行うハンドレイアップ法、(2)スプレーにより塗布含浸する方法、(3)金型により基材の厚みを規定した後に、圧入によって硬化性組成物を基材に塗布含浸させる方法、(4)減圧により基材の厚みを規定した後、減圧注入によって硬化性組成物を基材に含浸させる方法、(5)基材を硬化性組成物に浸漬し、基材に硬化性組成物を連続的に含浸させた後に、ロールによって基材に厚みを規定する方法、(6)ロール転写により連続的に塗布含浸を行う方法等が挙げられる。これらは組み合わせて利用してもよい。
得られた補修材料を、被補修部位に貼り付ける。この際、補修材料と被補修部位との表面の間に入り込んだ気泡を取り除くことは、特に、補修材料と被補修部位の表面との密着性を高めるために重要である。気泡除去の方法としては、ロールや金ヘラを使って気泡を補修材料の外側に追い出す方法が好適である。
補修材料に含浸された硬化性組成物の硬化は、被補修部位に補修材料を密着させた状態で行われる。被補修部位の表面に、硬化性組成物を含浸させる時間を確保するという観点から、硬化性組成物の硬化時間は30〜300分とすることが好ましい。硬化性組成物の硬化が完了すると、被補修部位に補修材料が固着されて、その補修を完了させることができる。
以下、本願のコンクリート構造物の補修用材料を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100g(SiO2換算で29質量%のSiO2成分を含む)と30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)とを24時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、珪素化合物としてトリメトキシメチルシラン2g及びアルミニウムを含む化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)120gを混合することにより、硬化性液状組成物を作製した。
ビニロンマルチフィラメントからなる三軸メッシュシート(目付量90g/m2、目開き8mm、厚み0.35mm、X=3.0)を、親水化ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付量30g/m2、厚み0.2mm、引裂強度16N)に積層することにより基材としての積層体を作製した。
この積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(実施例2)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)とを2時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、珪素化合物としてとして自己乳化型シラン化合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製 商品名:SMK2101J)4g、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを加え、24時間攪拌して調整液を得た。
得られた調整液を、アルミニウムを含む化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を作製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(実施例3)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)とを2時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、珪素化合物としてカリウムシリコネート(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製 商品名:BS-16)5g及びラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを24時間攪拌して調整液を得た。
得られた調整液を、アルミニウムを含む化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を作製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(実施例4)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)を2時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、珪素化合物として、トリウムシリコネート(東レ・ダウコーニング株式会社製 商品名:OFS0772)5g、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを24時間攪拌して調整液を得た。
得られた調整液を、アルミニウムを含む化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を作製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(実施例5)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)を2時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、珪素化合物として、カリウムシリコネート(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製 商品名:BS-16)5g、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを24時間攪拌して調整液を得た。
得られた調整液を、アルミニウムを含む化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を調製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(比較例1)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)を24時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液を、アルミニウム含有化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を調製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH18時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
(比較例2)
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)を2時間攪拌して珪酸ナトリウム水溶液(珪酸塩水溶液)を得た。
得られた珪酸塩水溶液に、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを24時間攪拌して調整液を得た。
得られた調整液を、アルミニウム含有化合物である焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33)130gと混合することにより、硬化性液状組成物を調製した。
実施例1で作製した積層体400mm×400mmに、150gの硬化性液状組成物を含浸硬化させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
雰囲気条件を−20℃3時間、50℃3時間、23℃80%RH16時間を1サイクルとして30サイクル曝露を行い、30サイクル終了後の外観目視により結晶析出の有無の評価を行った。
これらの結果を以下の表に示す。
Figure 2017226955
上述したように、硬化性組成物に、特定の珪素化合物を加えることのみで、多湿環境下でのこのような硬化性組成物の使用において、空気中の二酸化炭素と、硬化性組成物中の成分との反応により生じる白色結晶の析出を効果的に防止することができることが確認された。
本開示の補修材料によれば、種々の被補修部位に対して、多湿環境下での長期間の使用においても、外観を維持しながら、その性能を効果的に発揮させることができ、その材料にかかわらず、被補修部位に利用することができる。

Claims (6)

  1. 既設のコンクリート構造物の補修に用いられる補修材料であって、
    珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の珪酸塩と、
    アルコキシシラン、シロキサン及びアルキルシリコネートからなる群から選択される少なくとも1種の珪素化合物と、
    アルミニウムを含む化合物とを含む硬化性組成物、及び
    少なくとも1方向の引張強度が1kN/50cm以上であって、マルチフィラメントを組み合わせたメッシュシートを備えることを特徴とするコンクリート構造物の補修材料。
  2. 前記硬化性組成物は、珪酸塩100質量部に対して、前記珪素化合物を0.3〜15質量部で含む請求項1記載のコンクリート構造物の補修材料。
  3. 前記珪素化合物は、自己乳化性である請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補修材料。
  4. 前記アルキルシリコネートが、炭素数1〜3のモノ、ジ又はトリアルキルシリコネートあるいはそれらのアルカリ金属塩である請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補修材料。
  5. 前記アルミニウムを含む化合物がメタカオリンである請求項1〜4のいずれか1つに記載のコンクリート構造物の補修材料。
  6. 前記硬化性組成物が、さらにスチレンブタジエンゴムを、前記珪酸塩100質量部に対して、4〜50質量部で含まれている請求項1〜5のいずれか1つに記載のコンクリート構造物の補修材料。
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