JP7389603B2 - ジオポリマー組成物及びその製造方法並びにコンクリート構造物の補修方法 - Google Patents

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Description

本開示は、ジオポリマー組成物及びその製造方法並びにコンクリート構造物の補修方法に関する。
従来から大量に生産されているポルトランドセメントは、その主原料は石灰石であることから、焼成して酸化カルシウムに分解される際、二酸化炭素を排出する。このため、ポルトランドセメントを使用しないコンクリートを製造する技術として、ジオポリマー法が注目されている。
ジオポリマー法は、ケイ酸の縮重合体をバインダとして利用し、粉末同士を接合する技術である。このジオポリマー法に利用されるジオポリマー組成物としては、フィラー、アルカリ溶液及び骨材で構成されるものが提案されている(例えば、特許文献1)。フィラーは、ケイ素とアルミニウムとを豊富に含有するものが使用され、例えば、カオリン、粘土、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ、もみ殻灰等のポゾラン活性物質と称されるものが挙げられる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムと、水ガラス(Na2SiO3)又はケイ酸カリウム(K2SiO3)との水溶液が一般的である。
より具体的な例として、特許文献2には、フライアッシュ及び高炉スラグを含む活性フィラーと、珪酸ナトリウム及び/又は水酸化ナトリウムを含むアルカリ溶液と、エトリンガイト系膨張材、石灰系膨張材等のセメント鉱物系膨張材を含むジオポリマー組成物が開示されている。
また、特許文献3には、珪酸ナトリウム、メタカオリン、高炉スラグを含むジオポリマー組成物が開示されている。
特開2008-239446号公報 国際公開第2018-150753号公報 特開2019-6661号公報
特許文献2及び特許文献3に記載されたスラグを用いたジオポリマー組成物は、反応性が高く、すぐに硬化するため、混合から使用までの間の可使時間が十分に確保できない、つまり施工性が悪いという問題があった。
本開示は、上記課題に鑑みて、常温硬化及び短期養生での初期強度等は保持しつつ、可使時間が長いジオポリマー組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、ジオポリマー組成物の各成分について鋭意検討した結果、ジオポリマー組成物に用いられるスラグの炭酸カルシウム含有量を特定の範囲に制御することで、機械特性に優れ、可使時間が長いジオポリマー組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本開示における発明は以下を含む。
(1)アルカリ金属塩を含む第1の成分と、
ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上である第2の成分と、
スラグからなる第3の成分を含み、
前記スラグは、0.1質量%以上3.0質量%以下の炭酸カルシウムを含むジオポリマー組成物。
(2)前記スラグは、水和物量が0.1質量%以上5.8質量%以下である上記に記載のジオポリマー組成物。
(3)前記第2の成分は、メタカオリンである上記に記載のジオポリマー組成物。
(4)スラグを二酸化炭素濃度1%以上の雰囲気下で、炭酸化処理を行う工程と、
アルカリ金属塩を含む第1の成分と、
ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上である第2の成分と、
前記炭酸化処理を経たスラグからなる第3の成分を混合する工程とを含むジオポリマー組成物の製造方法。
(5)上記に記載のジオポリマー組成物を、コンクリート構造物に塗布する工程を含むコンクリート構造物の補修方法。
本発明の一実施形態によれば、常温硬化及び短期養生で初期強度を発現し、可使時間が長いジオポリマー組成物を提供することができる。
〔ジオポリマー組成物及びその製造方法〕
本開示のジオポリマー組成物は、アルカリ金属塩を含む第1の成分と、ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上である第2の成分と、スラグからなる第3の成分を含み、前記スラグは、0.1%以上3.0%以下の炭酸カルシウムを含む。このような成分を備えることにより、常温で硬化しやすく、短期養生で初期強度等を保持し、機械特性に優れ、可使時間が長いジオポリマー組成物を得ることができる。
なお、このジオポリマー組成物は、使用時にこれらの成分が混合されればよく、保管及び輸送時等においては、各成分はそれぞれ分離していてもよいし、一部のみ、例えば、第2の成分と第3の成分とのみ、混合されていてもよい。このように、各成分を分離して保管及び輸送することにより、施工時に必要な量だけ各成分を混合してジオポリマー組成物として用いることができる。また、各成分を混合せずに保存することで、各成分の性質の劣化を抑制できるため、長期間の保存安定性を維持することができる。
(第1の成分)
アルカリ金属を含む第1の成分としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等の第1族に属する元素の塩を含むものであり、なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩を含むものが好ましい。特に、アルカリ金属珪酸塩を含むものが好ましい。アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム及び珪酸リチウムからなる群から選択される1種以上が挙げられ、なかでも、価格及び入手の容易さの観点から、珪酸ナトリウムが好ましい。アルカリ金属珪酸塩は、通常、その取り扱いの容易さから水溶液の形態のものを用いることが好ましい。例えば、市販されている、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物を用いることができる。特に、JIS規格(K1408)の1~3号珪酸ソーダ、4号珪酸ソーダ、メタ珪酸ナトリウム1種、2種を用いて調整することが容易である。
アルカリ金属珪酸塩である珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムは、一般にM2O・nSiO2の分子式で表され、nが0.5以上4.0以下の範囲にある組成物及びこれらの混合物を意味する。nは0.7以上3.0以下であることが好ましく、1.0以上2.0以下であることがより好ましい。nは、上述したアルカリ金属珪酸塩と、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を混合することにより任意に調整することができる。アルカリ金属の水酸化物は固形物、水溶液のいずれも用いることができる。
アルカリ金属を含む第1の成分は、例えば、10質量%以上60質量%以下のアルカリ金属珪酸塩の水溶液、15質量%以上50質量%以下の水溶液又は20質量%以上45質量%以下の水溶液であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下の水溶液であることがより好ましく、30質量%の水溶液であることがさらに好ましい。
アルカリ金属を含む第1の成分は、さらに、ポリマーエマルション(ラテックス)を含んでいてもよい。ポリマーエマルションとしては、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム又はこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、スチレンブタジエンゴムが好ましい。アルカリ金属を含む第1の成分中におけるポリマーエマルションの含有率は、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。また、ポリマーエマルションは、ジオポリマー組成物の乾燥固形分の全質量に対して、固形分質量として2質量%以上10質量%以下含まれることが好ましい。これにより、ジオポリマー組成物の硬化物の接着強度を向上させ、硬化物の乾燥収縮を抑制することができる。
アルカリ金属を含む第1の成分、例えば、アルカリ金属珪酸塩は、後述する第2の成分及び第3の成分と混合した際、脱水反応を誘起し、Si-O結合を形成することによって硬化が開始される。また、後述するように、硬化促進剤を利用することにより、アルカリ金属珪酸塩のアルカリ金属を二価以上の金属と置き換えることによってSi-O-金属-O-Siの結合を形成して硬化を促進することが可能である。
ジオポリマー組成物においては、第1の成分の含有量は、ジオポリマー組成物の全質量に対して、通常10質量%以上70質量%以下、好ましくは15質量%以上65質量%以下、より好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上55質量%以下である。上記範囲であると、得られるジオポリマー組成物の機械強度が向上する傾向にある。
(第2の成分)
第2の成分は、ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上である成分である。
ポゾラン活性を有する物質は、それ自体に水硬性はほとんど有さないが、水の存在下で、アルカリ金属塩、例えば、水酸化カルシウム等と常温で反応して、不溶性の化合物を生成して硬化する物質のことである。ポゾラン活性を有する物質としては、例えば、粘土、堆積物、鉱物、シリカ系粒子、炭灰等が挙げられる。具体的には、カオリン、メタカオリン、活性白土、酸性白土等の粘土;珪藻土等の堆積物;タルク等の鉱物;シリカダスト、シリカフューム、アエロジル等のシリカ系粒子;フライアッシュ、ホワイトカーボン、もみ殻灰等の炭灰等が挙げられる。
例えば、第2の成分は、酸素配位数5のアルミニウムを含むものを含有することが好ましい。酸素配位数5のアルミニウムは、ジオポリマー組成物に含まれる全アルミニウムに対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上となるように、第2の成分に含有させることが好ましい。酸素配位数5のアルミニウムは反応性に富むため、ジオポリマー組成物において、第1の成分、第2の成分及び第3の成分を、常温にて、十分に反応させることができる。よって、ジオポリマー組成物を、コンクリート構造物の補修に用いる場合に、補修用の材料とコンクリート構造物との接着強度を高めることができる。
第2の成分は、ジオポリマー組成物中に含まれるアルミニウムをAl23換算した場合に、アルミナ含有量が30質量%以上、好ましくは35質量%以上となる成分を含むことが好ましい。また、ジオポリマー組成物中に含まれる珪素をSiO2換算した場合に、シリカ含有量が40質量%以上、好ましくは45質量%以上となる成分を含むことが好ましい。なかでも、第2の成分は、ジオポリマー組成物中に含まれるアルミニウムをAl23換算した場合に、アルミナ含有量が30質量%以上であり、かつ珪素をSiO2換算した場合に、シリカ含有量が40質量%以上であるものが好ましい。
このようなアルミニウム及び珪素を含むために、例えば、第2の成分は、メタカオリンであることが好ましく、第2の成分に、メタカオリンが、30質量%以上100質量%以下で含有されるものが好ましく、40質量%以上80質量%以下で含有されるものがより好ましく、40質量%以上60質量%以下で含有されるものがさらに好ましい。
メタカオリンは、カオリンを約500℃以上900℃以下で焼成して結晶水を一部除去したものであり、非晶性で、ポゾラン活性を有する。メタカオリンは、粉体であることが好ましい。ここで、粉体とは、粉又は粒子が集まった集合体を意味する。例えば、メタカオリン粉体の数平均粒子径(D50)は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上15μm以下がより好ましい。粉体はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置にて測定することが可能である。メタカオリンは、より活性化させるために、粉体の比表面積を12m2/g以上とするものが好ましい。なお、粉体の比表面積は、例えば、BET法により算出した値を意味する。より活性化させる方法としては限定されないが、粉砕分級、機械的エネルギーの作用、溶射処理等の方法を用いることができる。
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。粉砕は、ジェットミル、ロールミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。また、分級は、篩、比重、風力、湿式沈降等を用いる方法が挙げられる。これらの手段は任意に併用することができる。
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等を用いる方法が挙げられる。作用させる機械的エネルギーは、適度に活性化しつつ、負荷を最小限とするために、0.5kwh/kg以上30kwh/kg以下が好ましい。このような範囲とすることにより、原料のメタカオリンによっては結晶構造の変性が十分となり、メタカオリン粉体の常温での反応性を向上させることができる。また、メタカオリン粉体中のスピネル及びムライト等の鉱物が再結晶化することを抑制して、常温での反応性を維持又は向上させることができる。
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。溶射技術は、例えば、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が挙げられる。好ましくは、材料粉末を2000℃以上16000℃以下の温度で溶融し、30m/秒以上800m/秒以下の速度で噴霧し、比表面積が12m2/g以上100m2/g以下の粉末とすることが好ましい。
ポゾラン活性を有する物質は、通常、塊又は粉末状であるが、塊状又は粉末状のものをそのまま用いてもよい。また、活性化させるために、粉砕分級、機械的エネルギーの作用、溶射処理等の方法を用いて、その状態を変化させたものを用いてもよい。粉砕分級する方法、機械的エネルギーを作用させる方法及び溶射処理する方法は、上記と同様の方法を利用することができる。なかでも、材料粉末を2000℃以上16000℃以下の温度で溶融し、30m/秒以上800m/秒以下の速度で噴霧し、比表面積が0.1m2/g以上100m2/g以下の粉末とすることが好ましい。微細で比表面積の大きいものは、反応性が高く、また吸着能が大きいため、金属に対する安定化効果を発揮することができる。例えば、その粒径は、50μm以下が挙げられ、20μm以下が好ましく、5nm以上10μm以下がより好ましい。
ポゾラン活性を有する物質は、電気伝導率差が0.4mS/cm以上である。珪酸塩水溶液との反応性の観点から、0.5mS/cm以上、0.6mS/cm以上又は0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、0.8mS/cm以上、1.0mS/cm以上、1.2mS/cm以上であるものがさらに好ましい。
このような電気伝導率差とすることにより、第1の成分における、例えば、珪酸塩水溶液との反応性を十分に確保することができる。電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるポゾラン活性物質の反応性に関連する指標であり、ポゾラン活性を有する物質について『Cement Concrete Research, Vol.19, pp.63-68, 1989』に従い、40±1℃の条件で、Ca(OH)2飽和水溶液200mlの電気伝導率を測定し、続いてメタカオリン5gを投入し、攪拌して2分後の電気伝導率を測定する。そして、投入前の電気伝導率と投入後の電気伝導率との差を算出し、電気伝導率差とした
た、第2の成分は、0.1%以上3.0%以下の炭酸カルシウム及び/又は0.1%以上5.8%以下の水和物を含むスラグを含まないことが好ましい。
ジオポリマー組成物においては、第2の成分の含有量は、ジオポリマー組成物の全質量に対して、通常5質量%以上60質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上30質量%以下である。上記範囲である場合には、得られるジオポリマー組成物の機械強度が向上する傾向にある。
(第3の成分)
第3の成分は、スラグからなる。スラグは、銑鉄を生成する際に生じるものであり、ポゾラン活性を有し、CaO、SiO2、Al23、MgOを主成分として含む。スラグは、例えば、カルシウムを、酸化カルシウム(CaO)換算で20質量%以上60質量%以下含有するものが挙げられる。このようなスラグを含むことにより、ジオポリマー組成物をより強靭に硬化させることができる。また、水が多い場所で使用する場合に、耐水性を向上させることができる。スラグの種類としては高炉スラグ用いられるが、粉末状の高炉スラグが珪酸塩溶液との反応性の観点から好ましく用いられる。
ここでのスラグは、炭酸カルシウムを0.1質量%以上3.0%質量以下で含有するものが挙げられ、0.15質量%以上2.8質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2.5%質量以下がより好ましい。
また、スラグは、水和物が含まれていてもよく、水和物量は、通常0.1質量%以上5.8質量%以下、好ましくは0.15質量%以上4.0質量%以下又は0.15質量%以上3.5質量%以下又は0.15質量%以上3.0質量%以下又は0.5質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上3.5質量%以下である。なお、本発明における水和物量とは、ゲーレナイト水和物の含有量を意味する。
スラグの炭酸カルシウムの含有率、水和物の含有率は、当該分野で公知の方法によって調整することができる。例えば、スラグを二酸化炭素濃度が1容量%以上含有する雰囲気下で、炭酸化処理を行なうことによって、炭酸カルシウムの含有率を調整することができる。炭酸化処理は、例えば、スラグを湿潤状態に維持するためにスラグへの水分を添加し、雰囲気中の相対湿度を調整し、炭酸ガス(例えば、二酸化炭素ガス)供給速度を調整する等の少なくとも1つ以上を制御することによって、常温(20℃±15℃)下又は加熱(百数十℃以下)下で、所定時間(例えば、数分以上数十時間以下、具体的には、24時間以上)で炭酸化処理を行なうことができる。上記条件は目的とする炭酸カルシウムの含有量に応じて、任意に設定することができる。また、水和物の含有率の調整は、雰囲気中の相対湿度、温度、反応時間を調整し、行なうことができる。
(ジオポリマー組成物)
ジオポリマー組成物は、上述した第1の成分と、第2の成分と、第3の成分とを有するが、上述したように、これらは、使用時において、均一に混合することが好ましい。これらの成分を混合することにより、反応が開始し、容易に常温でジオポリマー組成物を硬化させることができるとともに、初期及び長期にわたる高い強度を発現/維持することができ、かつ可使時間が長いジオポリマー組成物を得ることができる。そして、初期強度発現を、常温硬化及び短期養生で実現することができる。また、このようなジオポリマー組成物を用いることにより、耐燃焼性に優れたコンクリート構造物の剥落防止用の補修材料を提供することができる。
これらの成分の混合は、当該分野で通常行なわれている方法を利用すればよい。混合の順序は任意に設定することができる。
ジオポリマー組成物においては、第1の成分、つまり、アルカリ金属塩と、第2の成分であるポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上である物質と、0.1質量%以上3.0質量%以下の炭酸カルシウムを含むスラグの総和をジオポリマー組成物の全質量とした場合、スラグの含有量は通常5質量%以上60質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上30質量%以下である。上記範囲である場合には、得られるジオポリマー組成物の機械強度が向上する傾向にある。
また、ジオポリマー組成物は、第1の成分、第2の成分及び第3の成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
(その他の成分)
その他の成分としては、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。例えば、硬化促進剤、フィラー、改質剤、硬化遅延剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤は、第1の成分中、第2の成分中、第3の成分中及び/又はこれらの混合物中のいずれに添加してもよい。硬化促進剤、フィラー、改質剤、硬化遅延剤、界面活性剤等としては、公知のものを利用することができる。
硬化促進剤は、第1の成分、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物の硬化を促進するための成分が挙げられる。硬化促進剤は、脱水反応を促進させるために、pH中性付近に調整するものが好ましい。また、Si-O-金属-O-Siの結合を形成して硬化を促進するために、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物中のアルカリ金属を二価以上の金属と置き換えることができるものが好ましい。硬化促進剤としては、有機酸エステル、ジアルデヒド、無機酸エステル、有機酸金属塩、無機酸金属塩、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、有機酸エステル、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上の化合物を用いることがより好ましい。
有機酸エステルは、水溶液中で酸を発生させることによりSi-O結合の形成を促進することができるという利点がある。有機酸エステルとしては、例えば、炭酸エステル、酢酸エステル等が挙げられる。なかでも、トリアセチンが好ましい。
ジアルデヒドとしては、例えば、マロンジアルデヒド等が挙げられる。
無機酸エステルとしては、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸等のエステル、例えば、燐酸トリメチル等が挙げられる。
有機酸金属塩としては、蟻酸、酢酸、マロン酸、炭酸等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、例えば、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
無機酸金属塩としては、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、例えば、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
金属酸化物及び金属水酸化物は、金属イオンが溶け出すことにより、Si-O-金属-O-Si結合を形成し、第1の成分、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物を硬化させることができる。金属酸化物及び金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
硬化促進剤として、ジオポリマー組成物中での硬化剤の沈降を防止するという観点及びガラス繊維に含浸させやすいという観点においては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが好ましい。
フィラーとしては、有機フィラー(例えば、セルロース等)及び無機フィラー(例えば、カーボン、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末、炭酸カルシウム等)等が挙げられる。鉱物質微粉末としては、硬砂岩粉末、ケイ砂粉末、ゼオライト、ジルコニア、シリカの粉末等が挙げられる。
改質剤とは、ジオポリマー組成物を硬化させた硬化物の表面を改質して緻密化し、表面強度を向上させる物質が挙げられる。改質剤としては、例えば、珪酸塩水溶液と反応することができる各種金属塩が挙げられ、軽焼酸化マグネシウム、亜鉛華等が好ましい。
硬化遅延剤としてはショ糖、酒石酸ナトリウム、クエン酸、金属キレート剤等が挙げられる。
界面活性剤とは、ジオポリマー組成物の分散安定化に寄与する物質のことである。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性及び非イオン性のいずれでもよい。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエンチレンアルキルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。 これらの添加剤は、ジオポリマー組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。通常、ジオポリマー組成物の全質量に対して10質量%以下で配合されていることが好ましい。
〔コンクリート構造物の補修方法〕
上述したジオポリマー組成物は、コンクリート構造物の補修に好適に利用することができる。そのために、まず、上述したジオポリマー組成物に加えて、補修材料として、メッシュシートを準備することが好ましい。ジオポリマー組成物をコンクリート構造物にそのまま単独で適用するよりも、補修材料を用いることにより、ジオポリマー組成物の適所への配置、強度の補強等を助長することができる。
そして、ジオポリマー組成物を補修材料に塗布又は含浸させ、補修材料をコンクリート構造物に貼り付け、補修材料中のジオポリマー組成物を硬化させる工程を含む。なお、補修材料を対象のコンクリート構造物に貼り付ける前後のいずれにジオポリマー組成物を補修材料に塗布、含浸、噴霧等してもよい。
(メッシュシート又は積層体)
メッシュシートは、単層であってもよいが、少なくとも1層のメッシュシートを含む積層体であることが好ましい。メッシュシートは、少なくとも1層が、マルチフィラメントを組み合わせた多軸のメッシュシートであることが好ましい。マルチフィラメントは、長繊維を利用して構成されたものが好ましい。さらに他のメッシュシートと組み合わせて積層体とする場合には、必ずしもマルチフィラメントを組み合わせた多軸のメッシュシートでなくてもよい。
メッシュシートは、ポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等によって形成されたものが挙げられる。なかでも、ビニロンメッシュシート又はガラスメッシュシートからなることが好ましい。ガラス繊維は、ガラスヤーン又はロービングを用いることが好ましい。ガラスヤーンは、ガラス繊維に撚りをかけて合撚糸としたものであり、ロービングは、ガラス繊維を集束したものである。多軸メッシュの織り方は、平織り、綾織り、絡み織り、組布等が挙げられる。また多軸メッシュの織り方の方向は、直交する二軸、もしくは、それ以上の多軸織物であってもよい。
メッシュシートの厚みは、0.1mm以上5mm以下であるものが好ましく、0.3mm以上3mm以下であるものがより好ましい。メッシュシートは、目間隔5mm以上25mm以下でメッシュ状に組み合わせた二軸織物又は多軸織物であることが好ましい。
メッシュシートは、50g/m2以上の目付量であることが好ましく、60g/m2以上であることがより好ましく、75g/m2以上であることがさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
メッシュシートは、少なくとも1方向の引張強度が1kN/50mm以上であるものが好ましく、マルチフィラメントを組み合わせた多軸の、少なくとも1方向の引張強度が1kN/50mm以上であるものがより好ましく、マルチフィラメントを組み合わせた多軸の、少なくとも1方向の引張強度が1kN/50mm以上、かつ目間隔5mm以上25mm以下で組み合わせた二軸又は三軸メッシュシートであることがさらに好ましい。
なお、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせた積層体の式(1)で表される値Xは2.0以上であることが好ましく、2.5以上、2.8以上又は3.0以上であることがより好ましい。
X=A×B (1)
ここで、Aはメッシュシート又はシート状部材の1方向の引張強度kN/50mmを表し、Bはメッシュシート又はシート状部材の軸数を表す。Aは、マルチフィラメントの50mm当たりの本数を変えることにより任意の値をとることができる。Bは、2以上4以下の範囲を有するものが挙げられる。なかでも、Aは、1kN/50mm以上であることが好ましく、50kN/50mm以上であることがより好ましく、150kN/50mm以上であることがさらに好ましく、Bは2以上3以下であるものが好ましい。
このような構成により、メッシュシートが、コンクリート構造物から落下するコンクリート片を受け止める耐力層としての機能を満たすことができる。
補修材料は、メッシュシートの他に、例えば、シート状部材を含むことが好ましい。このシート状部材としては、例えば、織布、不織布等が挙げられる。材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましく、特に、長繊維不織布であることがより好ましい。ガラス不織布は、ジオポリマー組成物との相溶性に優れるため、ジオポリマー組成物が浸透しやすく、ジオポリマー組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、ジオポリマー組成物との相溶性を高めるため、繊維表面に表面処理を行うことが好ましい。
メッシュシート又は積層体の全厚みは0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。このような厚みの範囲とすることにより、メッシュシートの補強層としての機能を果たすことができるとともに、ジオポリマー組成物の含有量を抑えることができ、経済的に有利である。
メッシュシートが積層体として用いられる場合、積層体を予め一体化させておいてもよい。予め一体化させておくことにより、ジオポリマー組成物を、メッシュシートを含む積層体に含有させる際の各シートのズレを防ぐことができる。
一体化の方法は、機械的な繊維交絡、化学的な接着等を利用することができ、例えば、縮絨、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡等が挙げられる。
積層体は、例えば、2層構造、3層構造、4層以上であってもよく、積層数は特に限定されない。
ジオポリマー組成物をメッシュシート又は積層体へ含有させる方法は、ジオポリマー組成物を、メッシュシート又は積層体へ含ませる、例えば、塗布、噴霧、浸漬、圧入、減圧注入等種々の方法を利用して含ませることが挙げられる。この際の作業性を上げるため、また補修材料へのゴミの付着、補修材料同士の付着を防止するため、ジオポリマー組成物含有後のメッシュシート又は積層体の表裏面を樹脂製の保護フィルムでカバーしてもよい。この保護フィルムはコンクリート構造物に貼り付ける際に除去される。
ジオポリマー組成物のメッシュシートへの含有のタイミングとして、コンクリート構造物への貼付前に、現場にて含有させてもよいし、コンクリート構造物への貼付と含浸を同時に行ってもよい。また、ジオポリマー組成物の基材への含有は、コンクリート構造物の表面にジオポリマー組成物を塗布等し、その上に上述した基材(シート状部材又は積層体)を貼り付けることにより行ってもよいし、上述した基材をコンクリート構造物に接触させながら、ジオポリマー組成物を塗布、噴霧等することにより行ってもよいし、これらを1回以上行ってもよい。
メッシュシート又は積層体へのジオポリマー組成物の含有量は特に限定するものではなく、メッシュシート又は積層体の全体にわたって均一にジオポリマー組成物が保持され、ジオポリマー組成物の硬化によってメッシュシート又は積層体の全体が強固に一体化させることができるように調整することが好ましい。例えば、メッシュシート又は積層体の1m2に対し、ジオポリマー組成物が通常100g以上4000g以下であり、好ましくは200g以上3000g以下、より好ましくは500g以上2000g以下である。
(貼り付け)
上述したメッシュシート又は積層体にジオポリマー組成物を含有させることにより得られた補修材料をコンクリート構造物に貼り付ける。
補修材料をコンクリート構造物に貼り付ける方法としては、公知の方法によって行うことができる。例えば、貼り付けの際には、適度に押圧することが好ましい。また、補修材料とコンクリート構造物の表面の間に入り込んだ気泡を取り除くことが好ましい。これにより、補修材料とコンクリート構造物の表面との密着性を高めることができる。気泡除去の方法としては、ローラー、ヘラ等を使って気泡を補修材料の外側に追い出すことが好ましい。
また、コンクリート構造物への補修材料の貼り付けと、メッシュシート又は積層体へのジオポリマー組成物の含有とを同時に行う方法としては、特に限定されないが、例えば、A)コンクリート構造物へメッシュシート又は積層体を粘着テープ等で仮固定しその表面からジオポリマー組成物をローラー、ヘラ、コテ、ハケ等を用いて塗りこみ含有させる方法、B)コンクリート構造物表面に硬化組成物をローラー、ヘラ、コテ、ハケ等を用いて塗り、その上にメッシュシート又は積層体を貼り合せてローラー、ヘラ等でしごいて含有させる方法、C)Bの方法の後さらにメッシュシート又は積層体の上から硬化組成物をローラー、ヘラ、コテ、ハケ等を用いて塗りこみ含有させる方法等が挙げられる。
(硬化)
メッシュシート又は積層体に含有されたジオポリマー組成物の硬化は、コンクリート構造物に補修材料を密着させた状態で、その状態を維持することによって行うことができる。
組成物の硬化時間は10分以上180分以下が挙げられ、15分以上120分以下とすることができる。硬化時間は、組成物の組成比率、周辺温度等によって調整することができる。
本発明のジオポリマー組成物は、特定の3成分を含有することから、適度の可使時間を調整又は確保することができる。例えば、通常の環境下で、2m2のコンクリート壁に対して標準的な施工者が施工するために必要な時間は約30分間と設定することができる。従って、ここでの適度の可使時間としては、例えば、30分間以上が挙げられ、40分間以上が好ましく、45分間以上がより好ましい。可使時間が長いほど作業猶予が増え、少ない混合回数で、多くの施工を行うことができる。また、可使時間とは、通常の環境下で、例えば、ジオポリマー組成物を、コテ又はローラー等を用いて塗布する際に、施工できる限界粘度に達する時間を意味する。従って、通常、このような作業が可能な粘度における貯蔵弾性率を、例えば、50Paとすることができる。ここでの貯蔵弾性率は、例えば、市販の装置、例えば、粘弾性測定装置を利用して測定することができる。
組成物の硬化が完了すると、コンクリート構造物に補修材料が強固に固着されて、コンクリート構造物の補修が完了する。硬化のために補修材料を加熱してもよいが、周辺温度で維持してもよい。
なお、ジオポリマー組成物が硬化した補修材料の表面には、防水透湿性を確保するために、防水透湿性の材料等を塗布して、防水透湿層を形成してもよい。防水透湿層の材料及び形成方法は、当該分野で公知の方法を利用することができる。
以下、本発明の硬化性樹脂組成物及びコンクリート構造物の補修材料を、実施例を挙げてより詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(第1の成分の準備)
固形分27質量%、SiO2/Na2O(モル比)=1.6に調整された珪酸ナトリウム水溶液100質量部、ラテックス(日本ゼオン株式会社製 商品名:LX407 F43、スチレンブタジエンゴム(固形分50%))10質量部を混合した後、24時間撹拌して、水溶液組成物を作成した。
(第2の成分の準備)
メタカオリン粉体(イメリス社製、Polestar450)2kgと、粉砕助剤としてトリエタノールアミン25%及びエタノール75%の混合物10gとを、ウルトラファインミルAT-20(三菱重工業社製、10mmφジルコニアボール充填率85%)にて20kWh/kgのエネルギーで処理し、メタカオリン粉体を作成した。
(酸素配位数5のアルミニウムの存在割合の測定)
得られたメタカオリン粉体中のアルミニウムの酸素配位数スペクトルの測定を、27Al MAS NMRにて測定した。固体用4mmプローブ用ローターに試料を充填し、試料回転数15kHz、待ち時間2秒でDD/MAS法で測定した。スペクトルには酸素配位数4、5、6のピークが現れた。酸素配位数5のアルミニウムの存在割合はローレンツ関数でフィッティングし、面積比(酸素配位数4、5、6の全面積に対する酸素配位数5の面積)で算出した結果、酸素配位数5のアルミニウムの存在割合は34.4%であった。
(比表面積の測定)
各メタカオリン粉体の比表面積を、窒素吸着量測定装置(カンタクリーム社製:autosorb-1)にて各相対圧における窒素吸着量を測定し、BET法により求めた。結果は13.3m/gであった。
(第3の成分の準備)
スラグ1(高炉スラグ、日鉄住金株式会社製、商品名:エスメント40P)を50℃、相対湿度50%CO濃度5%の環境下で密閉し、7日間静置することにより、炭酸化処理を行なった。
得られた炭酸化処理済みスラグを、40℃にて18時間の真空乾燥を行った。
(炭酸カルシウム及び水和物の含有率の測定)
乾燥した炭酸化処理済みスラグを、熱質量示唆熱分析装置(製品名STA-7300)を用いて、室温から1000℃まで10℃/分の昇温速度で分析を行った。室温から500℃までに減少した質量をゲーレナイト水和物(2CaO・Al・SiO・8HO 分子量418.3)から脱離した水分量と推定し、スラグ中に含まれる水和物の含有率を算出した。また、500℃から700℃の間に減少した質量を、炭酸カルシウムから脱離した二酸化炭素によるものと推定し、500℃から700℃の間に減少した質量から炭酸カルシウムの含有率を算出した。それらの結果を表1に示す。
(ジオポリマー組成物の調製)
第1の成分である前記水溶液組成物110質量部に、メタカオリン粉体55質量部、炭酸化処理済みのスラグを55質量部混合し、ジオポリマー組成物を調製した。
得られたジオポリマー組成物について、以下の可使時間評価を行った。
(可使時間評価)
得られたジオポリマー組成物を、動的粘弾性測定装置(株式会社アントン・パールジャパン社製MCRXX2)に導入し、23℃湿度50%条件下で混合した時間を基点とした時、貯蔵弾性率が50Paを超えるまでの時間を可使時間とした。その結果を表1に示す。
(補修材料の作成)
ビニロン製マルチフィラメントからなる目間隔10mmのメッシュシート(厚み:1mm、目付量:100g/m2、引張強度150kN/50mm)に、ガラス不織布(目付量25g/m2、厚み0.2mm)をコンクリート貼付面側用に1枚積層し、反対側の最表面層にポリプロピレン不織布(目付量30g/m2、厚み0.2mm)を1枚積層することにより、3層のシート状部材を積層した繊維シート積層体を作製した。
作製したシート積層体300mm×300mmに、100gのジオポリマー組成物を含浸させることにより、コンクリート構造物の補修材料を作製した。
(コンクリートの補修方法)
上記で作製したコンクリート構造物の補修材料を300mm×300mm×厚み60mmのコンクリート平板(JIS A 5371)に貼り合せ、23℃50%RHの部屋に1日間静置し、硬化させ、評価サンプルを得た。
<比較例1>
スラグ1の炭酸化処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、ジオポリマー組成物及び補修材料を作製した。
<実施例2~13、比較例2~7>
表1に記載されたスラグ及び炭酸化処理条件とした以外は、実施例1と同様にして、ジオポリマー組成物及び補修材料を作製した。
<付着力評価>
・水浸漬後付着強度試験
得られた実施例及び比較例のサンプルに対して、40mm×40mmの鋼製付着子を2液エポキシ接着剤(商品名:ボンドE-250、コニシ社製)で取り付け、質量1kgのおもりをのせて23℃50%RH雰囲気下で24時間静置し、硬化させた。硬化させた前記サンプルを、23℃の水にサンプル全体が完全に浸る状態にして10日間静置した後、水からサンプルを取り出して23℃50%RH雰囲気下で16時間静置した。
その後、コンクリートカッターで鋼製付着子の周りに平板に達するまで切り込みを入れ、試験片に対し、簡易型単軸引張試験器(テクノスター R-10000ND)を用いて、JSCE-E545に準拠した付着強度試験を行った。この結果を表1に示す。
Figure 0007389603000001

表1の比較例1より、炭酸化処理を行っていない高炉スラグを用いたジオポリマー組成物は可使時間が極めて短いが、実施例1~13に示す様に炭酸カルシウム量が規定の範囲であると、40分間以上の可使時間を示した。また、実施例1~13では、硬化後も1.5N/mm2以上の優れた浸漬後付着強度を有するジオポリマー組成物が得られることが明らかになった。
一方、比較例2~7に記載の様に、炭酸カルシウム量が規定よりも増加すると十分な浸漬後付着強度が得られないことが明らかになった。
スラグは高いアルカリ性を有することから、通常であれば短時間で反応が生じ、可使時間が短くなるが、炭酸化処理によって、スラグ表面を中性化することによって、可使時間を調整できたものと考えられる。

Claims (4)

  1. アルカリ金属塩を含む第1の成分と、
    ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上であるメタカオリンと、
    炉スラグからなる第3の成分を含み、
    記高炉スラグは、0.1質量%以上3.0%質量以下の炭酸カルシウムを含むジオポリマー組成物。
  2. 高炉スラグを二酸化炭素濃度1%以上の雰囲気下で、炭酸化処理を行い、0.1重量%以上3.0質量%以下の炭酸カルシウムを含む炭酸化処理済み高炉スラグを作製する工程と、
    アルカリ金属塩を含む第1の成分と、
    ポゾラン活性を有し、かつ電気伝導率差が0.4mS/cm以上であるメタカオリンと、
    前記炭酸化処理を経たスラグからなる第3の成分を混合する工程とを含むジオポリマー組成物の製造方法。
  3. 請求項に記載のジオポリマー組成物を、コンクリート構造物に塗布する工程を含むコンクリート構造物の補修方法。
  4. 前記炭酸化処理済み高炉スラグは、水和物の含有率が0.1質量%以上5.8質量%以下であり、
    前記水和物の含有率は、乾燥した前記炭酸化処理済み高炉スラグを、10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温したときに減少した質量である、
    請求項に記載のジオポリマー組成物の製造方法。
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