JP2021054701A - 光学ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高屈折率であり、かつ耐失透性に優れ、大径化やモールドプレス成形が可能な新規な光学ガラスを提供する。【解決手段】モル%で、La2O310〜50%、Nb2O510〜70%、TiO20超〜60%、及び、B2O30超〜40%を含有することを特徴とする光学ガラス。【選択図】図2

Description

本発明はレンズ等の光学素子用途に好適な光学ガラスに関する。
近年、カメラ、顕微鏡及び内視鏡等に用いられる光学系の小型化や軽量化に伴い、使用される光学レンズに用いられるガラスの光学特性として、より高屈折率が求められている。
ガラスをより高屈折率にするためには、ガラス骨格成分であるSiOやBの含有量を少なくし、La、Gd、Ta等の希土類酸化物またはNbやTiOを多量に含有させる必要がある。しかしながら、この場合ガラス化が困難になる。これは、一般に、光学ガラスは原料を坩堝等の溶融容器内で溶融し、冷却することで作製されるため、ガラス骨格成分が少ないガラス系では、溶融容器との接触界面を起点として結晶化が進行しやすくなるからである。
ガラス化しにくい組成であっても、溶融容器との界面での接触をなくすことによりガラス化が可能となる。このような方法として、原料を浮遊させた状態で溶融、冷却する無容器浮遊法(無容器凝固法)が知られている。当該方法を用いると、溶融ガラスが溶融容器にほとんど接触することがないため、溶融容器との界面を起点とする結晶化を防止することができ、ガラス化が可能となる。例えば、特許文献1では、無容器浮遊法により、ガラス組成としてTiOとBaOのみを含有するガラスが作製されている。
特許第4789086号公報
特許文献1に記載のガラスは、比較的失透しやすいため、無容器浮遊法を用いた場合であっても、大径化(例えば長径2mm以上)は困難である。また、加熱により軟化変形する前に失透するため、モールドプレスによる成形も困難である。
以上に鑑み、本発明は、高屈折率であり、かつ耐失透性に優れ、大径化やモールドプレス成形が可能な新規な光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、La、Nb、TiO及びBを必須成分として所定範囲で含有する光学ガラスであれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
即ち、本発明の光学ガラスは、モル%で、La 10〜50%、Nb 10〜70%、TiO 0超〜60%、及び、B 0超〜40%を含有することを特徴とする。
本発明の光学ガラスは、モル%で、La+Nb+TiO 60%以上を含有することが好ましい。なお本明細書において「x+y+・・・」は該当する各成分の合量を意味する。
本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)が2.05〜2.35、アッベ数(νd)が10〜40であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、ガラス転移点(Tg)が750℃以下であることが好ましい。このようにすれば、モールドプレス成形を容易に行うことができる。
本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形用として好適である。
本発明によれば、高屈折率であり、かつ耐失透性に優れ、大径化やモールドプレス成形が可能な新規な光学ガラスを提供することができる。
本発明の光学ガラスを製造するための装置の一実施形態を示す模式的断面図である。 実施例におけるNo.8のガラス試料のプレス前後の外観写真である。
本発明の光学ガラスは、モル%で、La 10〜50%、Nb 10〜70%、TiO 0超〜60%、及び、B 0超〜40%を含有することを特徴とする。ガラス組成範囲をこのように限定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量の説明において、特に断りのない限り「%」は「モル%」を意味する。
Laは屈折率を高め、ガラス化の安定性を高める成分である。また、耐候性を向上させる効果もある。Laの含有量は10〜50%であり、好ましくは12〜40%、より好ましくは15〜35%、さらに好ましくは20〜30%である。Laの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、Laの含有量が多すぎると、ガラス転移点が高くなり、モールドプレス成形が困難になる。また、ガラス化しにくくなる。
Nbは屈折率を高める効果が大きい成分であり、ガラス化範囲を広げる効果もある。また、ガラス転移点を低下させる効果がある。Nbの含有量は10〜70%、好ましくは15〜67%、より好ましくは20〜65%である。Nbの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、Nbの含有量が多すぎると、かえってガラス化しにくくなる。
TiOは屈折率を高める効果が大きい成分であり、化学的耐久性を高める効果もある。TiOの含有量は0超〜60%であり、好ましくは1〜55%、より好ましくは3〜50%、さらに好ましくは5〜45%、特に好ましくは5〜40%、最も好ましくは5〜25%である。TiOの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、TiOの含有量が多すぎると、失透しやすくなり所望の大きさのガラス材を得にくくなる。なお、屈折率を高める効果を優先する場合は、TiOの含有量は40%超が好ましく、45%以上がより好ましい。
なお、高屈折率かつ高分散の光学特性を得る観点からは、La+Nb+TiOの含有量は60%以上、65%以上、特に70%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、多すぎるとガラス化しにくくなって大径化(例えば、長径が2mm以上、3mm以上、4mm以上、さらには5mm以上)が困難となったり、ガラス転移点が高くなってモールドプレス成形が困難になる傾向がある。よって、La+Nb+TiOの含有量は100%未満、99%以下、95%以下、特に90%以下であることが好ましい。
また、ガラスの熱安定性の観点から、NbとLaの含有量のモル比(Nb/La)は1〜3.5、1〜2.5未満、特に1〜2.4であることが好ましい。このようにすれば、モールドプレス成形時における失透を抑制することができる。
はガラス骨格となり、ガラス化範囲を広げる成分である。また、ガラス転移点を低下させる効果がある。Bの含有量は0超〜40%、好ましくは5〜35%、より好ましくは10〜30%である。Bの含有量が少なすぎると、上記効果を得にくくなる。一方、Bの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性を得にくくなる。
なお、高屈折率であり、かつ耐失透性に優れ、大径化やモールドプレス成形が可能なガラスを得る観点からは、La+Nb+TiO+Bの含有量は70%以上、75%以上、特に80%以上であることが好ましい。上限は100%であっても良いが、他の成分を含有させる場合は、100%未満、99%以下、95%以下、さらには90%以下としてもよい。
本発明の光学ガラスには、上記成分以外にも、以下の成分を含有させることができる。
Gdはガラス化の安定性を高め、屈折率を高める成分である。ただし、Gdの含有量が多すぎると、かえってガラス化しにくくなる。従って、Gdの含有量は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0.1〜10%である。
Taは屈折率を高める効果が大きい成分である。ただし、Taの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなり、また原料コストが高くなる傾向がある。従って、Taの含有量は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0.1〜5%である。
はガラス化の安定性を高め、屈折率を高める成分である。ただし、Yの含有量が多すぎると、かえってガラス化しにくくなる。従って、Yの含有量は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
Ybは屈折率を高める成分である。ただし、Ybの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。従って、Ybの含有量は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
ZrOは屈折率を高める成分であり、また化学的耐久性を高める効果も有する。ただしZrOの含有量が多すぎると、ガラス転移点が高くなる。また、ガラス化しにくくなる。従って、ZrOの含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
Alはガラス骨格を形成し、ガラス化範囲を広げる成分である。ただし、Alの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性を得にくくなる。また、ガラス転移点が高くなる。従って、Alの含有量は、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
SiOはガラス骨格となり、ガラス化範囲を広げる成分である。また、耐候性を向上させる効果もある。ただし、SiOの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性を得にくくなる。従って、SiOの含有量は、好ましくは0〜30%、より好ましくは0〜20%である。
GeOは屈折率を高める成分であり、ガラス化範囲を広げる効果もある。ただし、GeOの含有量が多すぎると、原料コストが高くなる傾向がある。従って、GeOの含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
WOは屈折率を高める効果がある。また、中間酸化物としてガラス骨格を形成するため、ガラス化範囲を広げる効果もある。ただし、WOの含有量が多すぎると、かえって失透しやすくなり大径化が困難になる傾向がある。従って、WOの含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
SnOは屈折率を高める効果が大きい成分である。ただし、還元により失透の原因となりやすい。従って、SnOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%である。
はガラス骨格を構成する成分であり、ガラス化範囲を広げる効果がある。ただし、その含有量が多すぎると、分相しやすくなる。従って、Pの含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜3%である。
ZnO、MgO、CaO、SrO及びBaOはガラス化の安定性を高めたり、化学的耐久性を高める効果がある。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性を得にくくなる。従って、これらの成分の含有量は、好ましくは各々0〜10%、より好ましくは各々0〜5%である。
LiO、NaO、KO及びCsOは溶融温度を低下させる効果があるが、屈折率を低下させるため、合量で0〜10%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
清澄剤としてSbを含有させることができる。ただし、着色を避けるため、あるいは環境面を考慮して、Sbの含有量は1%以下であることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
PbOは環境への負荷を考慮し、実質的に含有しないことが好ましい。
なお、本発明において「実質的に含有しない」とは、意図的に原料として含有させないことを意味し、不可避的不純物の混入まで排除するものではない。より客観的には、含有量が0.1%未満であることを意味する。
本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は、好ましくは2.05以上、より好ましくは2.07以上、さらに好ましくは2.10以上である。例えば、本発明の光学ガラスをレンズとして使用する場合、屈折率を高めるほどレンズを薄くすることが可能となり、光学デバイスを小型化する上で有利となる。なお、屈折率の上限は、ガラス化の安定性を考慮して、好ましくは2.35以下、より好ましくは2.30以下である。
本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は、ガラス化の安定性を考慮して、10〜40、12〜38、特に15〜37であることが好ましい。
本発明の光学ガラスのガラス転移点(Tg)は、好ましくは750℃以下、より好ましくは740℃以下、さらに好ましくは735℃以下である。ガラス転移点が高すぎるとモールドプレス成形が困難になる。具体的には、モールドプレス成形の際にプレス型とガラスが反応しやすくなったり、プレス型の劣化を促進しやすくなる。
本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形によりレンズやプリズムなどの光学素子に加工して使用することができる。
本発明の光学ガラスは例えば無容器浮遊法により作製することができる。図1は、無容器浮遊法によりガラス材を作製するための製造装置の一例を示す模式的断面図である。以下、図1を参照しながら、本発明の光学ガラスの製造方法について説明する。
ガラス材の製造装置1は成形型10を有する。成形型10は溶融容器としての役割も果たす。成形型10は、成形面10aと、成形面10aに開口している複数のガス噴出孔10bとを有する。ガス噴出孔10bは、ガスボンベなどのガス供給機構11に接続されている。このガス供給機構11からガス噴出孔10bを経由して、成形面10aにガスが供給される。ガスの種類は特に限定されず、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
製造装置1を用いてガラス材を製造するに際しては、まず、上記組成のガラスとなるように調製した原料塊12を成形面10a上に配置する。原料塊12としては、例えば、原料粉末のプレス成形体、原料粉末の焼結体、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体等が挙げられる。
次に、ガス噴出孔10bからガスを噴出させることにより、原料塊12を成形面10a上で浮遊させる。すなわち、原料塊12を、成形面10aに接触していない状態で保持する。その状態で、レーザー光照射装置13からレーザー光を原料塊12に照射する。これにより原料塊12を加熱溶融してガラス化させ、溶融ガラスを得る。その後、溶融ガラスを冷却することにより、ガラス材を得ることができる。原料塊12を加熱溶融する工程と、溶融ガラス、さらにはガラス材の温度が少なくとも軟化点以下となるまで冷却する工程とにおいては、少なくともガスの噴出を継続し、原料塊12、溶融ガラス、さらにはガラス材と成形面10aとの接触を抑制することが好ましい。なお、加熱溶融する方法としては、レーザー光を照射する方法以外にも、輻射加熱であってもよい。
以下、本発明の光学ガラスについて、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1及び2は本発明の実施例(No.1〜17)及び比較例(No.18〜20)を示す。
Figure 2021054701
Figure 2021054701
まず表に示す各ガラス組成となるように原料を調合して原料バッチを作製した。0.2〜0.7g秤量し、プレス成型した後、800〜1100℃で3〜12時間焼成することにより原料塊を作製した。
上記で得られた原料塊を用いて、図1に準じた装置を用いた無容器浮遊法によって略球形状のガラス試料(長径3.5〜6.5mm)を作製した。なお、熱源としては100W COレーザー発振器を用いた。また、原料塊を浮遊させるためのガスとして酸素ガスを用い、流量1〜15L/minで供給した。得られたガラス試料は680〜750℃でアニールした後、下記の方法により、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)の測定を行った。
屈折率(nd)、アッベ数(νd)は、ガラス試料に対して直角研磨を行い、KPR−2000(島津製作所製)を用いて測定した。屈折率(nd)はヘリウムランプd線(587.6nm)に対する測定値で評価した。アッベ数(νd)は上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)及びC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)={(nd−1)/(nF−nC)}の式から算出した。
ガラス転移点(Tg)は、ガラス試料を粉砕し、DTA(示差熱分析)により求めた。
また、No.8のガラス試料について、モールドプレス成形の簡易評価を行った。具体的には、φ8mmの円筒状の炭化タングステン製プレス型に長径6.5mm、短径3.5mmのガラス試料を入れ、上下方向からの一軸加圧、755℃(Tg+45℃)で加熱を行った。その結果、ガラス試料は長径8mm、短径2mmの形状に変形した。プレス前後の写真を図2に示す。プレス後に、ガラス試料及びプレス型の表面を確認したところ、プレス型の劣化やガラス試料とプレス型の反応等の異常は見られなかった。
表1、2に示すように、実施例であるNo.1〜17のガラス試料は、屈折率が2.1206〜2.2985、アッベ数が18.15〜22.01と所望の光学特性を有していた。また、ガラス転移点が654〜740℃と低く、モールドプレス成形に適していることがわかる。一方、比較例であるNo.18、19のガラス試料はガラス転移点が783℃以上と高く、モールドプレス成形に適さないものであった。またNo.18のガラス試料は屈折率が1.9510と、実施例と比較して光学特性に劣っていた。No.20のガラス試料はガラス化しなかった。

Claims (5)

  1. モル%で、La 10〜50%、Nb 10〜70%、TiO 0超〜60%、及び、B 0超〜40%を含有することを特徴とする光学ガラス。
  2. モル%で、La+Nb+TiO 60%以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
  3. 屈折率(nd)が2.05〜2.35、アッベ数(νd)が10〜40であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
  4. ガラス転移点(Tg)が750℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  5. モールドプレス成形用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
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