JP2021054362A - 車両用接合構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接着し得る技術を提供すること。【解決手段】第1部材2、前記第1部材2よりも線膨張係数の大きな第2部材3、および、前記第1部材2と前記第2部材3との隙間g1に配置され両者を接着する接着材4を有し、前記接着材4は、弾性変形可能な接着剤マトリックス40と、変形可能なシェル45と前記シェル45の内部にある流体46とを有し前記接着剤マトリックス40に分散されているフィラー粒子41と、を有し、前記流体46は温度に依存して体積変化し、前記流体46の体積変化に伴い前記フィラー粒子41および前記接着材4もまた体積変化する、車両用接合構造体1。【選択図】図4
Description
本発明は車両用の接合構造体に関する。
車両には、サンルーフ、フロントウインドウ、リアウインドウ等に代表される各種の固定窓が設けられている。これらの固定窓はボデーに設けられた開口に光透過性のパネル(所謂窓ガラス)が嵌め込まれたものであり、パネルの外周部はボデーにおける開口の周縁部に固定される。車両用の固定窓においては、接着剤を用いてパネルを開口の周縁部に接着し固定するのが一般的である(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
特許文献1〜特許文献4には、何れも、パネルを開口の周縁部に接着する技術が紹介されている。特許文献1および特許文献2には、パネルを開口の周縁部に接着するための接着剤として、ウレタン系接着剤が好適である旨が紹介されている。特許文献3には、パネルを開口の周縁部に接着し、かつ、パネルの端縁に成形ストリップを取付けて、パネルと開口の周縁部との間に当該成形ストリップを介在させる旨が紹介されている。特許文献4には、パネルを開口の周縁部に接着するための接着剤としてウレタン系接着剤が用いられる旨、および、プライマー層を不要とし得るウレタン系接着剤の組成が紹介されている。
近年、燃費向上等の観点から車両の軽量化が望まれており、各種の車両構成部材において、その材料を軽量な樹脂に変更する取り組みが進められている。車両用の固定窓についても、パネルの材料をケイ酸ガラスから樹脂に変更することが提案されている。
樹脂製パネルは、ケイ酸ガラス製パネルに比べて、線膨張係数が大きく、高温時における膨張量や低温時における収縮量が大きい。このような樹脂製パネルの体積変化に対応する為に、樹脂製パネルを開口の周縁部に接着する接着剤としては、硬化後にも変形可能なものを用いるのが一般的である。上記した特許文献で用いられているウレタン系接着剤は、硬化後に弾性変形可能であることが知られている。
極暑時または極寒時等、樹脂製パネルの温度が過度に上昇または低下した場合には、樹脂製パネルの体積変化量が過大となる。ここで、ボデーの材料としては、鋼鉄等の、樹脂製パネルよりも線膨張係数の小さなものが用いられるのが一般的である。したがって、樹脂製パネルの体積変化量が過大であれば、ボデーにおける開口の周縁部と樹脂製パネルとの体積変化量の差が大きくなり、樹脂製パネルと開口の周縁部との相対位置が大きくずれる。そしてその結果、樹脂製パネルを開口の周縁部に接着する接着剤には大きな応力が作用する。当該応力が過大であれば、接着剤が樹脂製パネルおよび/または開口の周縁部から剥離し、樹脂製パネルと開口の周縁部との接着状態に不具合が生じる虞がある。
接着剤が弾性変形可能であれば、接着剤が引張変形または圧縮変形して上記した樹脂製パネルと開口の周縁部との相対位置のずれに追従できる可能性がある。しかし、樹脂製パネルと開口の周縁部との体積変化量の差が過大である場合等には、このような接着剤の弾性変形だけでは、上記相対位置のずれに充分に対応できない場合がある。
したがって、上記したパネルとボデーの開口の周縁部とのように、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を接着するための新たな技術が望まれている。
したがって、上記したパネルとボデーの開口の周縁部とのように、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を接着するための新たな技術が望まれている。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接着し得る技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の車両用接合構造体は、
第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接着する接着材を有し、
前記接着材は、弾性変形可能な接着剤マトリックスと、変形可能なシェルと前記シェルの内部にある流体とを有し前記接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子と、を有し、
前記流体は温度に依存して体積変化し、前記流体の体積変化に伴い前記フィラー粒子および前記接着材もまた体積変化する、車両用接合構造体である。
第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接着する接着材を有し、
前記接着材は、弾性変形可能な接着剤マトリックスと、変形可能なシェルと前記シェルの内部にある流体とを有し前記接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子と、を有し、
前記流体は温度に依存して体積変化し、前記流体の体積変化に伴い前記フィラー粒子および前記接着材もまた体積変化する、車両用接合構造体である。
本発明の車両用接合構造体によると、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接着し得る。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の車両用接合構造体は、第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接着する接着材を有する。
本発明の車両用接合構造体が既述した固定窓であれば、樹脂製パネルが第2部材に相当し、当該樹脂製パネルが嵌め込まれる開口が設けられたボデーの全体または一部が第1部材に相当する。
なお、本発明の車両用接合構造体における第2部材は固定窓の樹脂製パネルに限定されず、第1部材もまたボデーに限定されない。例えば、バンパやフロントグリル、加飾パネルや各種のガーニッシュ等を第2部材としても良い。そして、車両においてこれら各種の第2部材が接着される部材を第1部材としても良い。
なお、本発明の車両用接合構造体における第2部材は固定窓の樹脂製パネルに限定されず、第1部材もまたボデーに限定されない。例えば、バンパやフロントグリル、加飾パネルや各種のガーニッシュ等を第2部材としても良い。そして、車両においてこれら各種の第2部材が接着される部材を第1部材としても良い。
本発明の車両用接合構造体は、第2部材の体積変化量が大きくなる環境で用いられるものであるのが好ましく、特に、車両の外装部材であるのが好ましい。また、第2部材が大型である程、第2部材全体としての体積変化量が大きくなるため、第2部材は大型の部材であるのが好ましい。具体的には、第2部材は、サンルーフ、フロントウインドウ、リアウインドウ等の固定窓用の樹脂製パネルや、バンパ、フロントグリルとして好ましく具現化できる。
本発明の車両用接合構造体は、上記した第1部材および第2部材に加えて、第1部材と第2部材との隙間に配置され両者を接着する接着材を有する。
接着材は、弾性変形可能な接着剤マトリックス、および、当該接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子を有し、フィラー粒子は、変形可能なシェル、および、当該シェルの内部にある流体を有する。
本発明の車両用接合構造体においては、フィラー粒子の流体が温度に依存して体積変化し、当該流体の体積変化に伴いフィラー粒子の全体が体積変化し、その結果、当該フィラー粒子を有する接着材もまた体積変化する。本発明の車両用接合構造体は、この接着材の体積変化に因り、第1部材と第2部材との相対位置のずれに対応することが可能である。理由を以下に説明する。
接着材は、弾性変形可能な接着剤マトリックス、および、当該接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子を有し、フィラー粒子は、変形可能なシェル、および、当該シェルの内部にある流体を有する。
本発明の車両用接合構造体においては、フィラー粒子の流体が温度に依存して体積変化し、当該流体の体積変化に伴いフィラー粒子の全体が体積変化し、その結果、当該フィラー粒子を有する接着材もまた体積変化する。本発明の車両用接合構造体は、この接着材の体積変化に因り、第1部材と第2部材との相対位置のずれに対応することが可能である。理由を以下に説明する。
例えば、後述する実施例のように、本発明の車両用接合構造体が車両のサンルーフであり、第2部材が樹脂製パネルであり、第1部材が開口を有する車両のボデーである場合には、図1、図3に示すように、第2部材3の外周部30がその周方向に沿って第1部材2に接着される。
図5に示すように、図中実線で示す第2部材3が、高温時において、図中二点鎖線で示すように自身の径方向に膨張変形すると、第2部材3の外周部30もまた大きくなる。
図5に示すように、図中実線で示す第2部材3が、高温時において、図中二点鎖線で示すように自身の径方向に膨張変形すると、第2部材3の外周部30もまた大きくなる。
既述したように、従来は、弾性変形可能なウレタン系接着剤を用いて第2部材3を図略の第1部材に接着していた。第2部材3が径方向に膨張変形すると、第2部材3の外周部30を第1部材に接着する図略の接着剤は、第2部材3の膨張方向すなわち第2部材3の径方向外側に引っ張られて、弾性的に引張変形すると考えられる。
しかしこのとき接着剤は単に引っ張られるだけであるため、当該接着剤には引張方向の応力等が作用し、また、接着剤における第1部材や第2部材3との界面には剪断応力が作用する。
しかしこのとき接着剤は単に引っ張られるだけであるため、当該接着剤には引張方向の応力等が作用し、また、接着剤における第1部材や第2部材3との界面には剪断応力が作用する。
また従来は、図6に示すように、第2部材3の外周部30は、第2部材3よりも線膨張係数の小さい第1部材2に対して、接着剤94によって接着される。このため、高温時において膨張した第2部材3は、接着剤94および第1部材2によって径方向内方に向けて相対的に引っ張られる。このため、第2部材3の径方向外方への膨張は干渉され、その結果、図6中の二点鎖線および図7中の実線で示すように、第2部材3は径方向外方に膨張するだけでなく上方向にも反り変形する。このため、第1部材2と第2部材3とを接着する接着剤94には、径方向外方に向けた応力(図6中矢印a)に加えて、接着剤94を中心とする回転方向の応力(図6中矢印b)も作用する。
このように、高温時において第2部材3が膨張する際には、接着剤94には様々な方向の応力が作用する。単に弾性変形するだけの従来の接着剤94では、これらの応力に十分に対応するのは困難であり、当該応力が大きい場合に、接着剤94が第1部材2や第2部材3から剥離する虞がある。
これに対して本発明の車両用接合構造体における接着材は、既述したように、温度に依存して体積変化する。つまり、高温時においては、本発明の車両用接合構造体における接着材は体積増大する。このため本発明の車両用接合構造体における接着材は、高温時において、膨張した第2部材に引っ張られて引張変形するだけでなく、自身が膨張する。これにより、本発明の車両用接合構造体では、第2部材が膨張した際に接着材に作用する引張方向の応力は低減する。そしてその結果、接着材における第1部材や第2部材との界面に作用する剪断応力もまた低減する。よって、本発明の車両用接合構造体では、第1部材や第2部材からの接着材の剥離等を抑制することが可能である。また、このことにより、本発明の車両用接合構造体では、第1部材と第2部材との隙間をシールするためのシール部材、例えば、既述した特許文献3に紹介されている成形ストリップ等を省略し得る利点もある。
以下、必要に応じて、本発明の車両用接合構造体における接着材を、本発明の接着材と称する場合がある。
本発明の車両用接合構造体における第1部材および第2部材は、互いに線膨張係数の異なるものであれば良く、第1部材の材料は当該第1部材に組み合わせる第2部材の材料に応じて適宜選択すれば良い。第2部材の材料についても同様に、当該第2部材に組み合わせる第1部材の材料に応じて適宜選択すれば良い。例えば、第2部材はポリカーボネート等の樹脂製とすることができる。また、第2部材は、樹脂製の基体の表面にコート層を形成した所謂樹脂ガラス製としても良い。ポリカーボネートの線膨張係数は6.5〜6.6×10−5℃程度であり、樹脂ガラスの線膨張係数も同程度である。
他方、第1部材の材料は、炭素鋼等の鋼鉄やアルミニウム合金、または、ガラス繊維や炭素繊維等にエポキシ樹脂やフェノール樹脂を含浸させた繊維強化プラスチック(FRP)等とすることができる。鋼鉄の線膨張係数は1.2×10−5℃程度、アルミニウム合金の線膨張係数は2.3×10−5℃程度、FRPの線膨張係数は概ね1.0×10−5℃以下である。
本発明の車両用接合構造体は、第1部材と第2部材との線膨張係数の差が大きい場合に特に効果的である。具体的には、第2部材の線膨張係数の好ましい範囲として、第1部材の線膨張係数の1.5倍以上、1.75倍以上、2倍以上、2.25倍以上、2.5倍以上、3倍以上の各範囲を例示できる。第2部材の線膨張係数の好ましい範囲に上限はないが、強いていえば、第1部材の線膨張係数の10倍以下とすることができる。
第2部材が樹脂ガラス製である場合、基体の材料およびコート層の材料は、本発明の車両用接合構造体の用途に応じて、適宜選択すれば良い。例えば、第2部材が固定窓用の樹脂製パネルであれば、基体の材料としては、上記したポリカーボネートの他にも、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂等を好ましく使用できる。基体は、射出成形や射出プレス成形等の一般的な方法で成形し得る。
当該基体に形成するコート層は、第2部材の硬度や耐擦傷性等を向上させて第2部材を汚れや損傷から保護するためのハードコート層とすることができる。
ハードコート層としては、例えば、シリコン系化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものや、フッ素化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものを例示することができる。ハードコート層は、紫外線硬化型に限らず熱硬化型のものであっても良いし、アクリル樹脂系のものに限らずメラミン樹脂系やウレタン樹脂系のものであっても良い。
コート層を形成する方法は特に限定されず、フロー塗装やディップ塗装等の一般的な方法を採用し得る。
ハードコート層としては、例えば、シリコン系化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものや、フッ素化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものを例示することができる。ハードコート層は、紫外線硬化型に限らず熱硬化型のものであっても良いし、アクリル樹脂系のものに限らずメラミン樹脂系やウレタン樹脂系のものであっても良い。
コート層を形成する方法は特に限定されず、フロー塗装やディップ塗装等の一般的な方法を採用し得る。
さらに、コート層の上層に接着材用のプライマー層を形成しても良い。プライマー層は、基体の材料、コート層の材料および接着材に用いる接着剤マトリックスの材料に応じて適宜適切に選択すれば良い。例えば、基体がポリカーボネート製であり、コート層がアクリル樹脂系のハードコート層であり、接着材の接着剤マトリックスがウレタン系接着剤である場合には、ウレタンプライマーによりプライマー層を形成するのが好ましい。
本発明の接着材は、接着剤マトリックス、および、当該接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子を有する。
接着剤マトリックスとしては、弾性変形可能であり、かつ、第1部材と第2部材とを接着し得る接着剤を用いれば良い。具体的には、接着剤マトリックスの材料としては、ウレタン樹脂を主成分とするウレタン系接着剤、シロキサン結合を主鎖に有しアルキル基を側鎖に有するシリコーン系接着剤や変性シリコーン系接着剤、エーテル結合を主鎖に有しシリル基を側鎖に有する変成シリコーン系接着剤等を例示できる。
接着剤マトリックスがウレタン系接着剤である場合、当該ウレタン系接着剤は一液型、二液型、ホットメルト型の何れであっても良い。また、当該ウレタン系接着剤は発泡していても良いし、発泡していなくても良い。
接着剤マトリックスがウレタン系接着剤である場合、当該ウレタン系接着剤は一液型、二液型、ホットメルト型の何れであっても良い。また、当該ウレタン系接着剤は発泡していても良いし、発泡していなくても良い。
なお、上記したプライマー層を形成するかわりに、接着剤マトリックスとして、例えば特許文献4に紹介されているような、プライマー層を不要とし得るウレタン系接着剤を用いても良い。
本発明の接着材において、接着剤マトリックスにはフィラー粒子が分散されている。ここでいう「分散」とは、複数のフィラー粒子が接着剤マトリックス中に浮遊または懸濁している状態を意味し、フィラー粒子の密度や粒子径等を限定するものではない。
フィラー粒子は、変形可能なシェルと、当該シェルの内部にある流体とを有するものであり、このうち流体は温度に依存して体積変化する。
温度に依存して体積変化する流体としては、第2部材が膨張する温度域において体積が増大するものを用いれば良い。
より好ましくは、当該流体としては、上記温度域付近に沸点を有する炭化水素等を用いるのが良い。このような流体は、第2部材が膨張する温度域において相転移し、その体積が大きく増大する。
より好ましくは、当該流体としては、上記温度域付近に沸点を有する炭化水素等を用いるのが良い。このような流体は、第2部材が膨張する温度域において相転移し、その体積が大きく増大する。
流体として好ましく用いられる炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖状炭化水素、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソドデカン等の分岐状炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環状炭化水素、石油エーテル等を例示できる。これらの炭化水素は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
温度に依存して体積変化する流体としては、第2部材が膨張する温度域において体積が増大し、かつ、第2部材が収縮する温度域において体積が減少するものを用いるのも好ましい。このような流体としては、第2部材が膨張する温度域から第2部材が収縮する温度域にかけて相転移せず気体の状態を維持し得るものが挙げられる。この種の流体として、具体的には、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン等が例示される。
本発明の接着材におけるフィラー粒子は、上記した流体の体積変化に伴って体積変化する。したがって、フィラー粒子のシェルは、流体を内部に封入できる中空構造であり、かつ、流体の体積変化に伴って変形可能なものであるといい得る。
このようなフィラー粒子のシェルとしては、熱可塑性樹脂やエラストマを含むものが好ましく用いられる。
このようなフィラー粒子のシェルとしては、熱可塑性樹脂やエラストマを含むものが好ましく用いられる。
当該熱可塑性樹脂に用いられるモノマーとしては、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル化合物モノマー、塩化ビニリデンモノマー等が例示される。
上記したニトリル化合物モノマー、塩化ビニリデンモノマー以外のモノマーを用いても良い。当該モノマーとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー、α−メチルスチレン等が例示される。これらのモノマーは、ニトリル化合物モノマーおよび/または塩化ビニリデンモノマーと併用するのが好ましい。
これら各種のモノマーの1種または2種以上を重合させることで得られる熱可塑性樹脂を、シェル用の熱可塑性樹脂として用いることができる。
上記したニトリル化合物モノマー、塩化ビニリデンモノマー以外のモノマーを用いても良い。当該モノマーとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー、α−メチルスチレン等が例示される。これらのモノマーは、ニトリル化合物モノマーおよび/または塩化ビニリデンモノマーと併用するのが好ましい。
これら各種のモノマーの1種または2種以上を重合させることで得られる熱可塑性樹脂を、シェル用の熱可塑性樹脂として用いることができる。
熱可塑性樹脂を構成するモノマーは、ニトリル化合物モノマーを必須とするのが好ましい。ニトリル化合物モノマーは熱可塑性樹脂を構成するモノマーの合計を100質量%としたときに、15質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるのが好ましい。
具体的なエラストマとしては、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等に代表される気密性を有するものが例示される。シェルの材料としては、これらのエラストマの1種または2種以上を用いても良いし、上記の熱可塑性樹脂とエラストマとを併用しても良い。
なお、流体およびシェルを有するフィラー粒子としては、国際公開第2016/159046号等に開示されている公知の熱発泡性マクロスフェアーや、国際公開第2017/141653号等に開示されている公知の熱膨張性微小球を用いることも可能である。そして、流体およびシェルとしては、それぞれ、これらの文献に開示されている発泡剤および外殻を適宜組み合わせて使用することもできる。
本発明の接着材におけるフィラー粒子の含有量は特に限定しないが、好ましい範囲として、接着材全体を100質量%としたときに1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下の各範囲を例示できる。
フィラー粒子の体積平均粒子径は、特に限定しないが、0.5〜1000μm、1〜500μm、10〜300μm等の範囲を例示できる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。また、実施形態及び以下の実施例を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施することができる。
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例等によって限定されるものではない。
(実施例)
実施例の車両用接合構造体は、固定窓の一種であるサンルーフである。
実施例の車両用接合構造体を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例の車両用接合構造体を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す説明図を図2に示す。図2の要部拡大図を図3に示す。第2部材が膨張した際の実施例の車両用接合構造体を説明する説明図を図4に示す。以下、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を指すものとする。また、前後方向は車両の進行方向と一致し、左右方向は車両の車幅方向と一致する。
実施例の車両用接合構造体は、固定窓の一種であるサンルーフである。
実施例の車両用接合構造体を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例の車両用接合構造体を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す説明図を図2に示す。図2の要部拡大図を図3に示す。第2部材が膨張した際の実施例の車両用接合構造体を説明する説明図を図4に示す。以下、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を指すものとする。また、前後方向は車両の進行方向と一致し、左右方向は車両の車幅方向と一致する。
実施例の車両用接合構造体1は、第1部材2、第2部材3および接着材4を有する。
図1に示すように、車両9のボデー90におけるルーフ91には、開口10が設けられている。第1部材2は、ボデー90における当該開口10の周縁部であり、略枠状をなす。第2部材3は、当該開口10に嵌め込まれた樹脂製パネルである。開口10は長手方向を前後に向ける略矩形をなし、当該開口10の周縁部である第1部材2、および、当該開口10に嵌め込まれる第2部材3もまた、その長手方向を前後に向ける。
図1に示すように、車両9のボデー90におけるルーフ91には、開口10が設けられている。第1部材2は、ボデー90における当該開口10の周縁部であり、略枠状をなす。第2部材3は、当該開口10に嵌め込まれた樹脂製パネルである。開口10は長手方向を前後に向ける略矩形をなし、当該開口10の周縁部である第1部材2、および、当該開口10に嵌め込まれる第2部材3もまた、その長手方向を前後に向ける。
図2に示すように、第1部材2と第2部材3との間には隙間g1があり、第1部材2と第2部材3とは当該隙間g1に配置される接着材4によって接着されている。
第1部材2は、全体として、開口10の周方向に沿って延びる環状をなす。図3に示すように、第1部材2は、開口10に隣接する連結接着部20と、当該連結接着部20に隣接する対向部21と、当該対向部21に隣接する一般部22とを有する。連結接着部20は、開口10の周方向に連続する環状をなし、開口10の外縁を区画し、当該開口10の径方向に延びる。対向部21は、連結接着部20における径方向外側の端部に連続し、連結接着部20の周方向に連続する環状をなし、上下方向に延びる。一般部22は、対向部21の上端に連続し、開口10および対向部21の径方向に延びる。換言すると、連結接着部20は、一般部22よりも一段下がった位置にあり、上下方向に延びる対向部21によって一般部22に接続されている。このため、第1部材2における開口10の周縁部分は略階段状をなす。
第1部材2は鋼鉄製である。
第1部材2は鋼鉄製である。
第2部材3は、開口10より僅かに大きい略矩形の板状をなす。第2部材3は、既述したように樹脂製パネルであり、より具体的には、ポリカーボネート製の基体にハードコート層が形成された、所謂樹脂ガラス製である。
図3に示すように、接着材4は、接着剤マトリックス40と当該接着剤マトリックス40に分散されているフィラー粒子41とを有する。接着剤マトリックス40を構成する接着剤は、ウレタン系接着剤である。フィラー粒子41は、中空のシェル45と、当該シェル45の内部に封入されている流体46とを有する。流体46はイソオクタンであり、シェル45は流体46すなわちイソオクタンの沸点よりも軟化温度の低い熱可塑性樹脂製である。
実施例の車両用接合構造体1では、第2部材3における外周部30と、第1部材2における開口10の周縁部(すなわち連結接着部20)とが、接着材4で接着される。図3に示すように、このとき、連結接着部20の上面である連結接着面20sは第2部材3における外周部30の下面30sに対向し、当該連結接着面20sと外周部30の下面30sとは各々接着材4に接触する。また、このとき、対向部21の内周面である対向面21sは、第2部材3の外周端面3sに対向する。対向面21sと外周端面3sとの隙間g2は、5mm以下と非常に小さい。
高温時において第2部材3が膨張変形すると、第2部材3の外周が大きくなる。図4に示すように、このとき第2部材3は径方向すなわち対向面21sに向けて膨張し、かつ、上方向にも反り変形する。
ここで、実施例の車両用接合構造体1における接着材4は、シェル45と流体46とを有するフィラー粒子41が、接着剤マトリックス40に分散されたものである。高温時には、流体46が体積増大し、かつ、熱可塑性樹脂製のシェル45が軟化し変形可能となることで、フィラー粒子41全体が体積増大する。当該フィラー粒子41が分散された接着剤マトリックス40は、弾性変形可能であるため、フィラー粒子41の体積増大に追従して変形し、その結果、接着材4自体の体積が増大する。既述したように、第2部材3の膨張に因り接着材4には各種の応力が作用する可能性があるが、実施例の車両用接合構造体1において、当該応力は、接着材4自体が膨張することで低減されるか、または、相殺される。よって、実施例の車両用接合構造体1によると、高温時にも、第1部材2と第2部材3とを接着材4により安定して接着し得る。
ここで、実施例の車両用接合構造体1における接着材4は、シェル45と流体46とを有するフィラー粒子41が、接着剤マトリックス40に分散されたものである。高温時には、流体46が体積増大し、かつ、熱可塑性樹脂製のシェル45が軟化し変形可能となることで、フィラー粒子41全体が体積増大する。当該フィラー粒子41が分散された接着剤マトリックス40は、弾性変形可能であるため、フィラー粒子41の体積増大に追従して変形し、その結果、接着材4自体の体積が増大する。既述したように、第2部材3の膨張に因り接着材4には各種の応力が作用する可能性があるが、実施例の車両用接合構造体1において、当該応力は、接着材4自体が膨張することで低減されるか、または、相殺される。よって、実施例の車両用接合構造体1によると、高温時にも、第1部材2と第2部材3とを接着材4により安定して接着し得る。
実施例の車両用接合構造体1においては、第2部材3をその周方向全周で第1部材2に接着したが、本発明の車両用接合構造体1においては、第2部材3の一部のみを接着材4により第1部材2に接着しても良い。第2部材3の他の部分については、必要に応じて、通常の接着剤等で第1部材またはその他の相手部材に接着しても良い。この場合には、第2部材3のうち長手方向の端部(実施例においては前後方向の端部)を、当該第2部材3の短辺に沿って、接着材4により接着するのが良い。第2部材3における長手方向の端部は、第2部材3のうち、全体としての体積変化量が特に大きく顕れる部分である。このような部分を接着材4により接着することで、第2部材3の体積変化に効果的に対応することが可能である。
1:車両用接合構造体 2:第1部材
3:第2部材 4:接着材
40:接着剤マトリックス 41:フィラー粒子
45:シェル 46:流体
g1:第1部材と第2部材との隙間
3:第2部材 4:接着材
40:接着剤マトリックス 41:フィラー粒子
45:シェル 46:流体
g1:第1部材と第2部材との隙間
Claims (3)
- 第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接着する接着材を有し、
前記接着材は、弾性変形可能な接着剤マトリックスと、変形可能なシェルと前記シェルの内部にある流体とを有し前記接着剤マトリックスに分散されているフィラー粒子と、を有し、
前記流体は温度に依存して体積変化し、前記流体の体積変化に伴い前記フィラー粒子および前記接着材もまた体積変化する、車両用接合構造体。 - 前記第2部材は樹脂ガラス製である、請求項1に記載の車両用接合構造体。
- 前記接着剤マトリックスはウレタン系接着剤を含み、
前記シェルは熱可塑性樹脂またはエラストマを含む、請求項1または請求項2に記載の車両用接合構造体。
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JP2019181752A JP2021054362A (ja) | 2019-10-01 | 2019-10-01 | 車両用接合構造体 |
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