JP2007261362A - 自動車用リアスポイラー - Google Patents

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幸作 橋本
Yukitane Kimoto
幸胤 木本
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Abstract

【課題】
表面の外観品位を確保するとともに、軽量、高剛性であり、量産性の高い自動車用リアスポイラーを提供する。
【解決手段】
自動車用リアスポイラーの外観品位を確保するために、炭素繊維の重量含有率が0〜5%の前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物で形成した成形体と、自動車用リアスポイラーの剛性を確保するために、炭素繊維の重量含有率が10〜20%の前記熱可塑性樹脂組成物で形成した成形体から構成される自動車用リアスポイラー。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車の後部に装着され、空気の流れを制御して高速走行時の自動車の走行安定性を向上させる自動車用リアスポイラーに関する。
自動車のリアスポイラーは、自動車の後部に装着され、走行に伴う空気の流れを制御して高速時における自動車の走行安定性を向上させるものであるが、人目に触れやすい部分でもあるため、本来の目的である空気の流れを制御する性能に加えて、表面の外観品位も重要視される。
さらに近年環境への排出ガス削減対策として自動車材料の軽量化が検討されており、自動車用リアスポイラーにおいても、軽量化が求められている。
一方、上述したような製品の性能上要求される特性に加え、自動車は大量生産される関係上、その製造方法に関しては、量産性が高いことも要求される。
軽量化に関しては、樹脂化による検討がされている。例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂の低圧プレス成形により形成された2枚の成形体を貼り合わせたものが提案されている。本発明は、外観品位や、量産性には問題がないものの、熱可塑性樹脂は、一般に弾性率が小さいため、リアスポイラーに必要とされる剛性を確保しようとすると肉厚を厚くせざるを得ず、樹脂化による軽量化効果には限界がある。
また近年、比較的軽量で高剛性のものが得られるという理由で、強化繊維を用いたFRP(繊維強化プラスチック)が注目されるようになってきた。
FRP製のリアスポイラーとしては、例えば、ガラス繊維のSMC(Sheet Molding Compound:ガラス繊維のカット糸と不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂とを複合した成形材料)を用いて成形してなるものが知られている。リアスポイラーに限らず、一般にSMCを用いるFRPの成形においては、金型のキャビティにSMCを流動させて充填する。そのため成形性に優れており、これによるリアスポイラーは、翼端部のような小さい曲率を有する部位でも綺麗に仕上げることができ、表面外観品位・量産性とも優れている。しかしながら、SMCにおいても、成形時の流動性を確保するための充填剤の比重が高いうえに、ガラス繊維の含有率が低いことから、必要な剛性を確保するためには、やはりある程度肉厚を厚くせざるを得ず、十分な軽量化効果を得るには至っていない。
また炭素繊維のSMCを用いて成形した場合、ガラス繊維のSMCより剛性は確保しやすいことから、軽量化の観点では効果が大きいものの、成形品の表面外観品位は低く、外観品位を良好なものとしようとすると表面研磨や表面修正の仕上げ工数がかかることから量産性が低下するという問題がある。
また特許文献2では、FRP中空体のリアスポイラーが提案されている。これにより軽量、高剛性かつ外観品位が良好なリアスポイラーが形成できるが、プリプレグを用いたオートクレーブ成形に対しては量産性が良いものの、上述した例で採用されているような射出成形やプレス成形による樹脂(あるいは繊維強化樹脂)成形品と比較すると、成形時間がかかるため、量産性に若干の問題があると考えられる。
特開平6−321142号公報 特開2006−036057号公報
射出成形やプレス成形による樹脂(あるいは繊維強化樹脂)成形品並の高い量産性を有し、軽量かつ高剛性な自動車用リアスポイラーを提供する。
さらには、上記特性に加え、表面の外観品位の良好なリアスポイラーを提供する。
本発明者らは、量産性を前提として、必要な剛性と軽量性を両立すべく、炭素繊維を含有した熱可塑性樹脂組成物に成形時間の短い射出成形を適用して、リアスポイラーを作成することを検討したところ、特定の構造と炭素繊維の重量含有率とすることで、かかる特性を両立できることを見出し、さらには、炭素繊維の重量含有率を増やすことでリアスポイラーの剛性はあがる一方、炭素繊維が成形品表面に露出しやすく、外観不良の原因となりやすい現象があることを見出し、これら相反する特性を両立する構成をも見出したものである。すなわち
(1)水平翼部分が、前後端部の曲率半径が3〜50mmの翼断面を有する中空の自動車用リアスポイラーであって、前記水平翼は前後端部の曲率半径が3〜50mm部分に、接合部を有する少なくとも第1の部材と第2の部材を含む2つ以上の部材で構成され、前記部材のうち、少なくとも1つは炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物で形成された自動車用リアスポイラー。
(2)前記水平翼が第1の部材と第2の部材からなる2つの部材で構成され、第1の部材が炭素繊維の重量含有率が10〜20%の前記熱可塑性樹脂組成物で形成され、第2の部材が炭素繊維の重量含有率が0〜5%の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物で形成された(1)に記載の自動車用リアスポイラー。
(3)前記水平翼を構成する第1の部材と第2の部材を、接着、振動溶着により一体化した(1)または(2)に記載の自動車用リアスポイラー。
(4)前記第1の部材には、山形もしくは台形断面を有するリブが配置される(3)に記載の自動車用リアスポイラー。
(5)前記リブは、車両幅方向に沿って配置されかつトラス形状に配置されている(4)に記載の自動車用リアスポイラー。
(6)前記水平翼断面の空隙体積率が50〜90%である(1)〜(5)にいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
本発明によるリアスポイラーは、必要とされる剛性や強度を確保することができる。
さらには、第1の部材と第2の部材の炭素繊維の重量含有率を規定した範囲とすることにより、上記の効果に加え、例えばトランクリッドに取り付けられるスポイラーであれば水平翼上面、ルーフに取り付けられるスポイラーでは水平翼下面のように、ユーザーの目に良く晒されるため外観品位の要求厳しい部分に、要求される外観品位を確保することも可能とするものである。さらに第1の部材にリブを配置することで、リアスポイラーの外観品位を損なうことなく高剛性化ができ、さらなる軽量化が可能となる。
また本発明の水平翼を構成する部材は、成型時間の短い射出成形で作成が可能であり、量産性の高いリアスポイラーが提供できる。
本発明の一形態に係る自動車用リアスポイラーについて、図を用いて説明する。
リアスポイラーの水平翼部分は、図2のように前後端部の曲率半径が3〜50mmの部分を有し、それら前後端部は曲率半径が大きいなだらかな曲線によって結ばれた翼断面形状となっている。本発明の水平翼は、前後端部部分に接合部を有している2つ以上の部材によって構成され、中空構造を形成している。ここで、図1では典型的な例として、2つの部材から構成されるものを挙げており、これで説明を進めていくが、図8のように、3つの部材からなるものも可能である。
また本発明の一形態である図1のように、水平翼を構成する上面部材5a、下面部材5bの2つの部材のうち少なくとも1つについては、通常射出成形に使用される熱可塑性樹脂よりも、高剛性な材料である炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物を使用することで、リアスポイラーに必要とされる剛性を確保することが出来る。ここで炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物からなる部材を第1の部材と定義するが、第1の部材においては、炭素繊維の重量含有率が10%より低い熱可塑性樹脂組成物で形成された場合、射出成形性は優れるものの材料の剛性が低いため、リアスポイラーに必要な剛性を確保するために厚肉となり重量が増加する。また炭素繊維の重量含有率が20%を超えると、剛性を確保することは容易となるものの射出成形時に部材表面に炭素繊維が流動した跡や穴(ボイド)が発生し、成形後に表面の研磨作業や成形品の廃棄が発生し量産性が犠牲となる。
水平翼を上面部材5a,下面部材5bの接合部を前後端部部分に有し、かつ少なくとも1つの部材が炭素繊維の重量含有率の高い熱可塑性樹脂組成物で形成されることにより、水平翼前後方向の剛性の不均一箇所での局部変形を防ぐことが可能となる。これは水平翼の前後方向に対して一部分に、剛性が低い箇所が存在した場合、高速走行時におけるリアスポイラーに加わる空力により、剛性の低い部分に局所変形が発生し、水平翼断面形状が変化する。その結果空気の流れが乱れ、リアスポイラーの要求される整流性能が低下する。本発明は上述の問題を防止することを可能とする。
水平翼を構成する上面部材5a、下面部材5bに使用される熱可塑性樹脂として、ナイロン6,ナイロン6,6、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリプロピレン等が考えられが、耐候性に優れていることから自動車外装部品等に一般的に使用されていることからABSであることが望ましい。
本発明において例えば、トランクリッドに取り付けるリアスポイラーの水平翼の下面部材5bや、ルーフ・バックドアに取り付けられるリアスポイラーの水平翼下面部材5aのような部材は、車体との取付部を有しているため、炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物で成形することで、取付部の剛性を確保することも可能となる。またこの部材はリアスポイラーの取り外し作業等、特別な場合以外では一般ユーザーの目に晒されることは少ない。しかし前記部材以外は一般ユーザーの目に晒される機会が多いので、外観品位を確保できる部材によって形成すること必要となる。例えば炭素繊維の重量含有率が0〜5%の熱作塑性樹脂にて成形することで外観品位を確保することも可能となる。
外観品位を確保する部材に剛性を要求されることは少ないため、炭素繊維の重量含有率が0%の熱可塑性樹脂で問題はないが、少しでもリアスポイラーの剛性を確保する必要がある場合は、外観品位が確保できる炭素繊維の重量含有率が5%以下の熱可塑性樹脂組成物で形成することも可能である。
また本発明の水平翼を構成する上面部材5a、下面部材5bの接合には、振動溶着や接着剤を使用して接合される。通常接着剤には、ウレタン系が適用できる。
また本発明では、例えばトランクリッドに取り付けられるリアスポイラーにおける水平翼の下部部材5bのような炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物で成型された部材には、図3のような山形もしくは台形断面を有するリブを配置することで、リアスポイラーの剛性をあげることが可能となり、さらには軽量化のため水平翼を構成する部材の薄肉化も可能となる。さらに外観品位の要求が小さい下部部材1bにリブを配置することで、リブによる樹脂ヒケは発生するものの、リアスポイラーの外観品位は上部部材1aによって確保しているため、製品不良を防ぐことが可能である。
また本発明において水平翼の剛性を確保する部材である下面部材5bには、空力等で発生する曲げ力(図4)による変形を、曲げ中心に対して垂直方向にリブ6aを配置することで、抑制できる。またねじり力(図5)による変形は、車両前後方向に対して±45°傾斜したトラス形のリブ6bを配置することで、抑制できる。
この結果下面部材5bの厚みを最適化することが可能となり、不要な厚肉化が必要が無く軽量化に効果がある。また、このような構造を採ることにより、水平翼断面の空隙体積率が50〜90%の軽量な水平翼を得ることができる。
また本発明は図6のように、トランクリッドにボルト留めされた垂直翼3に、水平翼5をボルト留めしたリアスポイラーにも適用できる。
さらに図7のように垂直翼と水平翼が一体形状のリアスポイラーにおいても、本発明の適用は可能である。上面部材5a’は炭素繊維の重量含有率が0〜5%の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物にて形成されている。また下面部材5b’は炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物にて形成されている。これらの部材および垂直翼を構成する部材を振動溶着、接着剤にて取付られる。
実施例として図3のL=1200mm、図2のH=20mm、B=150mmの長さを有する水平翼に対して、ABS樹脂製中実断面水平翼と本発明を用いた水平翼の、曲げ剛性(図4に対する)・ねじり剛性(図5に対する)および重量のコンピュータによるシミュレーション結果の比較を表2に示す。なおここで使用した本発明での水平翼は、水平翼上面1aは、炭素繊維の重量含有率5%を有するABS樹脂(東レ製:長繊維ペレットTLP5010)を、また水平翼下面1bは、炭素繊維の重量含有率10%(東レ製:長繊維ペレットTLP5020)または炭素繊維の重量含有率20%(東レ製:長繊維ペレットTLP5040)を射出成形し、振動溶着させたものを使用した。さらに水平翼下面部材1bには、図4の6a、図5の6bのようなリブを配置している。またシミュレーションの際使用した、ABS樹脂・TLP5010・TLP5020・TLP5040の材料特性値については表1に示す。
Figure 2007261362
Figure 2007261362
本発明では、ABS樹脂中実断面水平翼に対して、重量約1/4で、曲げ剛性で約2倍・ねじり剛性同等以上の性能を有していることが分かる。
水平翼の概略斜視図である。 水平翼の概略断面図である。 水平翼のリブ概略断面図である。 水平翼に加わる曲げ力を示した図である。 水平翼に加わるねじり力を示した図である。 本発明の一形態に係わるリアスポイラーの概略断面図である。 本発明の他の形態に係わるリアスポイラーの分解図である。 本発明の他の形態に係わる水平翼の概略斜視図である。
符号の説明
1:トランクリッド
2:ボルト
3:垂直翼
4:ボルト
5:水平翼
5a、5a’:上面部材
5b、5b’:下面部材
6a、6b:リブ

Claims (6)

  1. 水平翼部分が、前後端部の曲率半径が3〜50mmの翼断面を有する中空の自動車用リアスポイラーであって、前記水平翼は前後端部の曲率半径が3〜50mm部分に、接合部を有する少なくとも第1の部材と第2の部材を含む2つ以上の部材で構成され、前記部材のうち、少なくとも1つは炭素繊維の重量含有率が10〜20%の熱可塑性樹脂組成物で形成された自動車用リアスポイラー。
  2. 前記水平翼が第1の部材と第2の部材からなる2つの部材で構成され、第1の部材が炭素繊維の重量含有率が10〜20%の前記熱可塑性樹脂組成物で形成され、第2の部材が炭素繊維の重量含有率が0〜5%の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物で形成された請求項1に記載の自動車用リアスポイラー。
  3. 前記水平翼を構成する第1の部材と第2の部材を、接着、振動溶着により一体化した請求項1または2に記載の自動車用リアスポイラー。
  4. 前記第1の部材には、山形もしくは台形断面を有するリブが配置される請求項3に記載の自動車用リアスポイラー。
  5. 前記リブは、車両幅方向に沿って配置されかつトラス形状に配置されている請求項4に記載の自動車用リアスポイラー。
  6. 前記水平翼断面の空隙体積率が50〜90%である請求項1〜5にいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
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