JP2021052870A - 固形製剤を注入するための装置、およびその設計方法 - Google Patents

固形製剤を注入するための装置、およびその設計方法 Download PDF

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Seiji Haruna
誠司 春名
和弘 落合
Kazuhiro Ochiai
和弘 落合
結香 脇阪
Yuka Wakisaka
結香 脇阪
勝也 田口
Katsuya Taguchi
勝也 田口
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Abstract

【課題】製剤を生体内に注入することに適した装置を提供する。【解決手段】この装置はシリンジ、ニードル、およびピストンを備える。ニードルはシリンジに接続される。ピストンは、シリンジの中心軸の方向においてシリンジとニードルの内部を移動する。シリンジは、内表面に少なくとも三つのリブを有する。中心軸に垂直な断面において、リブは放射状に配置されてもよい。また、中心軸に垂直な断面において、中心軸とリブの一つを結ぶ直線と中心軸とリブの他の一つを結ぶ直線とがなす角度は120°±5°とすることができる。【選択図】図3

Description

本発明の実施形態の一つは、固形製剤などの固形物を生体内に注入するための装置に関する。
薬剤を生体内に投与する方法としては、口から投与する経口投与、皮膚・粘膜への湿布、筋肉や皮下への注射によって体内に直接投与する方法などが挙げられる。注射による方法では、液体の薬剤を用いる場合以外に、固形状の薬剤や移植片などを生体内に注入する場合がある。後者の代表的な例では、固形状の薬剤(以下、製剤またはデポ製剤と記す)が生体内に注入される。この方法では、デポ製剤に含まれる薬効成分が生体内で徐々に放出されるため、長期間にわたって薬効成分の作用を維持することができる。さらにこの方法は、経口投与などと比べて服薬頻度を減少させることができること、服薬を忘れがちな、あるいは服薬を嫌う患者に対しても有効に薬剤を投与できるなどのメリットを有している。
デポ製剤の注射においても注射器型の装置が用いられることが多い。デポ製剤はシリンジとピストンの間の空間に充填され、ピストンをニードル方向に押し込むことによってデポ製剤がシリンジからニードルへ移動し、最終的に生体内に注入される。このようなデポ製剤を注入するための装置には、デポ製剤をシリンジ内に確実に保持するだけでなく、デポ製剤の注入時にはニードルを介してデポ製剤を円滑に外部に排出させるという、相反する二つの性能が要求される。例えば特許文献1から5には、これらの性能を満たすための構造を備えた様々なデポ製剤注入用の装置が開示されている。
特許第3542822号公報 特許第4954084号公報 特許第5461004号公報 特開2011−87940号公報 特許第5886826号公報
本発明に係る実施形態の一つは、デポ製剤を生体内に注入することに適した装置を提供することを課題の一つとする。
本発明に係る実施形態の一つは、製剤を注入するための装置である。この装置はシリンジ、ニードル、およびピストンを備える。ニードルはシリンジに接続される。ピストンは、シリンジの中心軸の方向においてシリンジとニードルの内部を移動する。シリンジは、内表面に少なくとも三つのリブを有する。
本発明の実施形態により、製剤を生体内に注入することに適した装置を提供することができる。例えば製剤を確実に保持し、かつ、生体内に円滑に注入可能な装置を提供することができる。
本発明の実施形態の一つに係る装置の模式的側面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置のリブの模式的斜視図と断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置のリブの模式的斜視図と断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置のシリンジの模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置のシリンジの模式的斜視図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の動作機構を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の設計方法を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の設計方法を示す概念図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の設計方法を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る装置の設計方法を示す模式的断面図。 実施例におけるリブの、最小変形長さαminと最大変形長さαmaxの角度θ2に対するプロット。
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、以下に述べる実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
1.注入装置の構造
本発明の実施形態の一つである、デポ製剤130を注入するための装置(以下、注入装置と記す)100の模式的側面図を図1(A)に、模式的断面図を図2(A)、図2(B)に示す。図1(A)に示すように、注入装置100はシリンジ102、シリンジの先端に接続・固定されるニードル104、およびピストン(プランジャ)108を基本的な構成として備える。
1−1.シリンジ
図1(A)、図2(A)に示すように、シリンジ102は内部に空洞102cを有する円筒状の構造を有し、この空洞102cの中心軸102dがシリンジ102の長軸方向と一致する、または平行になるように構成される。以下、シリンジ102の長軸と平行な軸を便宜上x軸とし、空洞102cの表面、すなわちシリンジ102の内表面から中心軸102dに向かう方向(半径方向)をy軸とする。したがって図2(A)、図2(B)はx軸に平行な、中心軸102dを含む断面模式図である。見やすさを考慮し、図2(A)ではピストン108は図示されていない。
空洞102cのx軸に垂直な断面は円、あるいは実質的に円であり、空洞102c内にデポ製剤130が充填される。図2(A)、図2(B)に示すように、空洞102cは、シリンジ102の末端部102bではその内径がシリンジ102の末端に近づくにつれて徐々に大きくなるように構成してもよい。これにより、デポ製剤130の充填が容易となる。シリンジ102はポリシクロオレフィン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカルボナート、アクリル樹脂などの高分子によって形成することができる。ポリシクロオレフィンとしては、ノルボルネンやその誘導体をルテニウム触媒やモリブデン触媒を用いる開環メタセシス重合して得られるポリマーが例示される。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリナフタレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリカルボナートとしては、例えばビスフェノールAなどの二つのフェノール基を有するモノマーから誘導される芳香族ポリカルボナートが例示される。
1−2.ニードル
ニードル104はステンレスやアルミニウムなどの金属、または合金を含む円筒状の構造を有しており、シリンジ102の先端部102aに挿入、接続される。ニードル104はx軸に垂直な断面が円、または実質的に円形の空洞を有しており、その空洞の中心軸はシリンジ102の中心軸102dと一致する。
1−3.ピストン
ピストン108はステンレスやアルミニウムなどの金属、または合金を含む棒状の構造体であり、空洞102cとニードル104の空洞内において中心軸102d上を移動可能なように構成される。注入装置100が使用される際、ニードル104の少なくとも一部が生体内に挿入され、空洞102cに充填されるデポ製剤130は、ピストン108がシリンジ102内部をニードル104方向に移動することによってニードル104を介してシリンジ102から排出される(図2(A)、図2(B))。図2(B)は、ピストン108が操作されて中心軸102d上でニードル104側へ移動した状態を示す。この図に示すように、ピストン108が最もニードル104側に位置するように操作した際、ピストン108の先端がニードル104の先端から露出するよう、ピストン108の長さが調整されることが好ましい。これにより、より確実にデポ製剤130を外部に排出し、生体内に注入することができる。
1−4.その他の構成
任意の構成として、注入装置100はさらにフランジ106やタブ110、保護キャップ112、エンドストッパ114を備えてもよい(図1(A)、図2(A)参照)。フランジ106はシリンジ102の末端部102bに接続される。フランジ106はシリンジ102とは独立した部品として設けられてもよく、シリンジ102と同時に形成されて一体化されていてもよい。フランジ106を設けることで、片手(例えば人差し指、中指、親指)で注入装置100を保持し、ピストン108を操作することが容易となる。タブ110はピストン108の末端に設けられ、ピストン108を操作するための補助機構として機能する。フランジ106と同様、タブ110もピストン108とは独立した部品として設けられてもよく、ピストン108と同時に形成されて一体化されていてもよい。エンドストッパ114はシリンジ102の末端部102bに備えられ、シリンジ102とは独立した部品として設けられる。エンドストッパ114は空洞102cの末端を部分的に塞ぎ、かつピストン108が貫通可能な貫通孔を有するように構成される。貫通孔は、その直径がピストン108の外径よりも小さく、かつ、充填されるデポ製剤130の外径よりも小さくなるように設けられる。エンドストッパ114を設けることで、空洞102cに充填されるデポ製剤130が末端部102b側から落下することを防止し、さらに異物の混入を防ぐことができる。保護キャップ112はニードル104やシリンジ102とは独立した部品であり、ニードル104とシリンジ102の先端部102aを覆い、先端部102aとの摩擦力で固定されるように構成される。これにより、ニードル104を物理的な力や汚染から保護するとともに、ニードル104によるけがを防止することができる。
保護キャップ112は、上述した高分子を含むことができる。一方、エンドストッパ114は、天然ゴム、あるいはシリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素化ゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、チオコール(登録商標)などの合成ゴムを含むことができる。あるいは、エンドストッパ114は、ポリシクロオレフィン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカルボナート、アクリル樹脂などを含んでもよい。
図1(B)に示すように、注入装置100はさらに安全装置120を備えてもよい。安全装置120はシリンジ102やニードル104の一部を収容する円筒状の筐体122、および筐体122の末端部に接続されるフランジ124を有することができる。フランジ124は筐体122とは独立した部品として設けられてもよく、筐体122と同時に形成され、一体化されていてもよい。筐体122の内部には、x軸に垂直な断面が円、あるいは実質的に円形の空洞が設けられ、この空洞内にシリンジ102が収容される。ニードル104の一部は筐体122の先端部から露出される。安全装置120内にシリンジ102を収容することで、人の手に適合した大きさを注入装置100に付与することができ、注入装置100の操作性が向上する。また、フランジ124を設けることで、デポ製剤130を容易に注入することができる。
2.デポ製剤の保持と排出
2−1.リブ
図3(A)と図3(B)に注入装置100の先端部102aの断面模式図を示す。前者はx軸に平行な断面の模式図であり、後者は図3(A)の鎖線A−A´に沿った、x軸に垂直な断面の模式図である。これらの図に示されるように、注入装置100には、デポ製剤130をシリンジ102内に確実に保持し、かつ、デポ製剤130を破壊することなくピストン108の動きに連動してニードル104から円滑に排出するための機構として、少なくとも三つのリブ116がシリンジ102の内表面に接するよう、先端部102aに設けられる。複数のリブ116のそれぞれとニードル104までの距離は実質的に同じである。したがって図3(B)に示すように、複数のリブ116のうち一つを含むx軸に垂直な断面には残りの他のリブ116も存在する。リブ116の数は三以上であれば特に制約はなく、例えば四つ以上のリブ116を設けてもよい。
リブ116もシリンジ102で使用可能な高分子を含むことができる。リブ116はシリンジ102とは独立した部品として設けられてもよいが、シリンジ102と同時に形成されて一体化されていることが好ましい。また、リブ116は外力が加えられた際、塑性変形、あるいは弾性変形するように構成される。前者の場合、116は外力によって変形した場合、元の形状には戻らず、変形された形状が維持されるように構成される。後述するように、リブ116が塑性変形するように構成することにより、デポ製剤130を確実に注入装置100内に保持し、かつ、生体内に円滑に注入することができるだけでなく、厳格に衛生管理された注入装置100を低コストで提供することができる。リブ116の具体的な設計方法については後述する。
2−2.リブの配置
複数のリブ116はシリンジ102の内表面上に等間隔で配置されることが好ましい。より具体的には、リブ116の数をnとすると、注入装置100はシリンジ102とリブ116に関してCn回転軸を有し、そのCn回転軸がシリンジ102の中心軸102dと一致することが好ましい。例えばリブ116の数が三の場合、シリンジ102の中心軸102dはシリンジ102とリブ116に関するC3回転軸であることが好ましい。したがってこの場合、中心軸102dに垂直な断面において、中心軸102dとリブ116の一つを結ぶ直線と中心軸102dとリブ116の他の一つを結ぶ直線とがなす角度θ1は120°となる(図3(B)参照)。ただし、製造工程上のばらつきが存在するため、角度θ1は120°±5°、あるいは120°±10°であってもよい。
2−3.リブの形状
図4(A)に一つのリブ116の模式的斜視図を、図4(B)から図4(D)に模式的断面図を示す。図4(B)はx軸に対して垂直な断面の模式図であり、図4(C)と図4(D)はx軸に平行な断面の模式図である。図4(A)に示すように、各リブ116はシリンジ102の内表面の一部を底面116aとする疑似的な四角錘台の形状を有することができる。底面116aはシリンジ102の内表面の形状が反映された曲面である。上面116bは底面116aからy軸方向へ位置し、y軸に垂直、または実質的に垂直な平面である。これらの底面116aと上面116bの間に、側面116c、側面116e、および一対の互いに対向する側面116dが位置する。側面116cはニードル104側に位置し、これに対向する側面116eは側面116cと比較して末端部102b側に位置する。側面116dは側面116cと側面116eを互いに接続する面である。側面116cと側面116eは、シリンジ102の内表面の一部を下底とする疑似的な台形であり、一方、側面116dは台形となる。なお、シリンジ102の空洞102cの内径とリブ116の大きさを考慮すると、この疑似的な四角錘台は、底面116aが平面であり、側面116cと116eが台形である四角錘台として扱うことも可能である。
図4(B)に示すように、リブ116のx軸に垂直な断面は、シリンジ102の内表面の一部を下底116fとする疑似的な台形である。この疑似的な台形は下底116fとそれに対向する上底116g、および上底116gと下底116fを接続する一対の脚116hによって定義される。一対の脚116hは互いに長さが同一であってもよく、異なってもよいが、同一、または実質的に同一であることが好ましい。リブ116における一対の脚116hがなす角度θ2、およびリブ116の高さh、すなわち、上底116gと下底116f間のy軸に沿った最大距離は、デポ製剤130の断面直径、シリンジの内径、およびそれぞれを製造する際のばらつきの幅によって異なり、その具体的な設計方法、好ましい範囲は後述の通りである。ここで、一対の脚116hの延長線が交差する点を疑似頂点117とし、上底116gと疑似頂点117までの距離をカットオフαとする。
図4(C)に示すように、リブ116のx軸に平行な断面の形状は、シリンジ102の内表面の一部を下底116jとする台形であり、下底116jとこれに対向する上底116k、下底116jと上底116kを接続する二つの脚116m、116nによって定義される。ここで、脚116mがニードル104側に位置し、脚116nが脚116mよりもニードル104から遠いとする。脚116nと脚116mの長さは互いに異なり、下底116fと脚116mがなす角度θ3は、下底116fと脚116nがなす角度θ4よりも大きい。換言すると、デポ製剤130が接する脚116n(すなわち図4(A)に示す側面116e)は、それに対向する脚116m(すなわち図4(A)に示す側面116c)と比較して緩やかな傾斜を有する。角度θ4は、例えば10°以上60°以下、あるいは20°以上50°以下とすることができる。図4(D)に示すように、角度θ3は90°でもよい。
後述するように、このような形状を有するリブ116を空洞102c内に三つ、あるいはそれ以上配置することにより、デポ製剤130をシリンジ102内に確実に保持することができる。このため、デポ製剤130がニードル104から意図せず落下することを防ぐことができる。同時に、充填されたデポ製剤130を破壊することなくピストン108の動きに連動してニードル104から円滑に排出することができる。このため、デポ製剤130を確実に生体内に注入することが可能となる。
2−4.変形例
上述した例では、各リブ116は疑似的な四角錘台の形状を有するが、各リブ116は疑似的な四角錘の形状を有してもよい。具体的には図5(A)の模式的斜視図に示すように、各リブ116はシリンジ102の内表面の一部を底面116pとする疑似的な四角錘形状を有することができる。底面116pはシリンジ102の内表面の形状が反映された曲面である。この四角錘は、底面116p、ニードル104側に位置する側面116r、シリンジ102の末端部102b側に位置する側面116q、およびこれらの側面116r、116qの間に位置する一対の側面116sによって定義される。側面116r、116q、116sの全てが接する点が四角錘の頂点116vとなる。側面116rと側面116qは、シリンジ102の内表面の一部を底辺とする疑似的な三角形であり、一方、側面116sは三角形である。なお、シリンジ102の空洞102cの内径とリブ116の大きさを考慮すると、この疑似的な四角錘は、底面116pが平面であり、側面116q、116r、116sがいずれも三角形である四角錘として扱うことも可能である。
図5(B)と図5(C)にそれぞれx軸に対して垂直な断面とx軸に平行な断面を模式的に示す。図5(B)に示すように、リブ116のx軸に垂直な断面は、シリンジ102の内表面の一部を底辺116tとして有する疑似的な三角形である。この三角形は底辺116tと二つの辺116uによって定義される。二つの辺116uは互いに長さが同一であってもよく、異なってもよいが、同一、または実質的に同一であることが好ましい。疑似的な台形の断面を有する場合と同様、二つの辺116uがなす角θ2、およびリブ116の高さh、すなわち、頂点116vから底辺116t間のy軸に沿った最大距離は、デポ製剤130の断面直径、シリンジの内径、およびそれぞれを製造する際のばらつきの幅によって異なり、その具体的な設計方法、好ましい範囲は後述の通りである。
図5(C)に示すように、本変形例においては、リブ116のx軸に平行な断面の形状は、シリンジ102の内表面の一部を底辺116wとして有する三角形である。この三角形は底辺116wと二つの辺116x、116yによって定義される。ここで、辺116xがニードル104側に位置し、辺116yが辺116xよりもニードル104から遠いとする。辺116xと辺116yの長さは互いに異なり、底辺116wと辺116xがなす角度θ3は、底辺116wと辺116yがなす角度θ4よりも大きい。換言すると、デポ製剤130が接する辺116y(すなわち側面116q)は、それに対向する辺116x(すなわち側面116r)と比較して緩やかな傾斜を有する。角度θ4は、10°以上60°以下、あるいは20°以上50°以下とすることができる。図示しないが、角度θ3は90°でもよい。
このような形状を有する変形例を適用しても、デポ製剤130をシリンジ102内に確実に保持することができ、充填されたデポ製剤130をピストン108の動きに連動してニードル104から円滑に排出することができる。
2−5.リブによるデポ製剤の保持と排出のメカニズム
上述したように、デポ製剤130はシリンジ102の空洞102c内に充填される(図2(A)参照)。シリンジ102には、その末端部102bからピストン108が挿入され、末端部102b側には任意の構成であるエンドストッパ114を設けることができるため、デポ製剤130が末端部102b側から落下することは比較的容易に防止することができる。本発明の実施形態の一つである注入装置100では、リブ116がデポ製剤130のニードル104側からの意図しない落下が効果的に防止される。さらにリブ116は、ピストン108がニードル104側へ移動する際、デポ製剤130がシリンジ102からニードル104を介して外部へ円滑に排出されることも許容する。このような相反する性能が同時に達成されるメカニズムを図6(A)から図9(C)を用いて説明する。
図6(A)、図6(B)はシリンジ102の先端部102aのx軸に垂直な断面模式図である。以下、これらの図に示されるように、シリンジ102の空洞102cの内径のうち、リブ116が設けられる部分の内径(以下、単にシリンジ内径と記す)をD1とする。一方、すべてのリブ116の疑似頂点117(図5(A)参照)と接する円の直径(以下、リブ内径と記す)をD2とする(図6(A))。ただし、図6(B)に示すように、リブ116が疑似的四角錘の形状を有する場合には(図5(A)から図5(C)参照)、全ての頂点116vに接する円の直径をリブ内径D2と定義する。また、デポ製剤130の大きさを表すパラメータとして、x軸に垂直な断面の最大直径(以下、単に断面直径と記す)D3とする。デポ製剤130の製造にはばらつきが存在するため、最大の断面直径D3をD3max、最小の断面直径D3をD3minとする。リブ116が疑似的四角錘台の場合には、以下の式(1)が成立する。
1=D2+2(h+α) (1)
一方、リブ116が疑似的四角錘の場合には、以下の式(2)が成立する。
1=D2+2h (2)
図7はシリンジ102の先端部102a、およびシリンジ102内に充填されたデポ製剤130を模式的に示した斜視図であり、図8(A)から図8(C)はx軸に平行な断面の模式図である。図8(A)から図8(C)には、一つのリブ116、およびシリンジ102とデポ製剤130の一部が描かれている。
(1)デポ製剤の保持
後述するように、シリンジ102のシリンジ内径D1は、デポ製剤130がシリンジ102内を移動できるように調整される。デポ製剤130がシリンジ102内を移動して一つのリブ116と接触すると、上述したようにリブ116は緩やかな傾きを有する側面116eあるいは116qを有するため(図4(A)、図5(A)参照)、デポ製剤130にはシリンジ102の内表面から離れる方向に力が働く(図8(A)の点線矢印参照)。この時、複数のリブ116はシリンジ102の内表面に等間隔で配置されるため、デポ製剤130はすべてのリブ116と接触し、これらの側面116eあるいは116qの傾斜に誘導されてデポ製剤130の中心軸がシリンジ102の中心軸102dに近づく。その結果、デポ製剤130はすべてのリブ116と接触し、その移動が止められる(図7)。
この時、リブ116はデポ製剤130に掛かる重力などの力によって塑性変形することがある(図8(B))。しかしながら後述するように、ピストン108を用いてデポ製剤130をニードル104側へ押し込まない場合には、塑性変形によってリブ116の高さhが変化してもその変化量Δhが小さく、変形後のリブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径がデポ製剤130の最小断面直径D3minよりも大きくならないようにリブ116が設計される。このため、複数のリブ116がストッパとして機能する(図7)。その結果、ピストン108を用いてデポ製剤130をニードル104側へ移動させるための力を付加しない限り、デポ製剤130はリブ116を超えてニードル104側へ移動することは無い。このようなメカニズムに従い、デポ製剤130がシリンジ102内に確実に保持される。
(2)デポ製剤の排出
ピストン108に対してニードル104側に力が加えられた場合、デポ製剤130を介してリブ116に力が伝達される。その結果、リブ116はさらに変形する、あるいは変形を開始し、高さhが減少する、あるいは変化量Δhが増大する。変化量Δhが増大してリブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径が使用するデポ製剤130の断面直径D3よりも大きくなるとリブ116はストッパとしての機能を失い、これによりデポ製剤130がニードル104側へ移動することができる(図8(C))。上述したように、デポ製剤130はリブ116のすべての側面116eあるいは116qに沿って移動するため、シリンジ102の内表面から離れるように空洞102c内を移動する。したがって、デポ製剤130とシリンジ102の内表面との接触面積が低下し、その結果これらの間に働く摩擦力が低下する。このため、デポ製剤130をニードル104を介して円滑に排出し、生体内に注入することができ、デポ製剤130が空洞102c内で破壊されることを防止することができる。なお、リブ116が塑性変形する場合、もとの形状には戻らないため、一度デポ製剤130を注入すると注入装置100はデポ製剤130を保持する能力を失う。このため、一度使用した注入装置100を再度利用することができなくなり、注入装置100を再利用する動機を与えない。このことは、注入装置100の再利用による感染症の拡大を未然に防ぐための安全機構として機能する。
本発明の実施形態の一つの注入装置100は、デポ製剤130の保持と排出を制御するための部品点数が少なく、構造が極めてシンプルであり、複雑な機械的動作を請け負う構成を必要としない。このため、滅菌・消毒を確実に行うことができるため、無菌状態を容易に維持することができる。また、シリンジ102とリブ116は一体化されるので、鋳型に溶融した高分子を注入して固化するだけで容易にシリンジ102を製造することができる。したがって、本実施形態を適用することにより、厳格に衛生管理されたデポ製剤用の注入装置100を低コストで提供することが可能となる。
3.注入装置の設計方法
以下、デポ製剤130の使用に適した注入装置100の設計方法を述べる。
3−1.シリンジとニードル
シリンジ102やニードル104のx軸方向の長さは、デポ製剤130の長さ、注入部位などを考慮して任意に決定することができる。操作性を考慮すると、シリンジ102の長さは3cm以上10cm以下、あるいは4cm以上8cm以下とすればよい。ニードル104の長さは、ニードル104がシリンジ102から露出する部分が1.5cm以上4cm以下、あるいは1.8cm以上3cm以下、典型的には2.0cmとなるように調整すればよい。
シリンジ内径D1は、使用するデポ製剤130の断面直径D3によって決定される。断面直径D3はデポ製剤130の大きさによって左右されるが、例えば1.00mm以上2.0mm以下の範囲である。デポ製剤130はシリンジ102内で大きな抵抗なく移動するように調整される。したがって、シリンジ内径D1は、デポ製剤130の大きさのばらつきを考慮し、最大断面直径D3max以上になるように設計される。あるいは断面直径D3の平均値、もしくは中心値の105%以上130%以下、あるいは110%以上120%以下となるように設計すればよい。例えば断面直径D3がD3min1.13mmからD3max1.19mmの範囲にばらつくデポ製剤130を使用する場合、シリンジ内径D1は1.19mm以上1.55mm以下、典型的には1.45mmとすることができる。断面直径D3がD3min1.42mmからD3max1.48mmの範囲にばらつくデポ製剤130を使用する場合には、シリンジ内径D1は1.49mm以上1.92mm以下、典型的には1.65mmとすることができる。ニードル104の内径はシリンジ内径D1と同一、または実質的に同一とすればよい。
3−2.リブ
リブ116は、デポ製剤130がシリンジ102の空洞102c内に保持でき、かつ、ピストン108の操作によってデポ製剤130を容易に排出できるように調整される。より具体的には、実施例において示すように、リブ116の高さhと幅(上底116gの長さ(図4(B)参照))は、角度θ2とカットオフαを設計パラメータとして利用することで設定することができる。この方法を以下に述べる。
まず、シリンジ102の末端部102bからデポ製剤130を充填する。その後ニードル104が下になるようにシリンジ102の中心軸102dを鉛直に配置し、一定の高さ(5cmから20cmの範囲から選択される高さ、例えば10cm程度)からシリンジ102を複数回(例えば30回)繰り返し落下させ、シリンジ102内にデポ製剤130が保持できるかどうかを判断する(操作A)。この操作Aにおけるデポ製剤130とリブ116の状態を図9(A)から図9(C)に模式的に示す。これらの図は、x軸に沿った断面模式図である。
デポ製剤130を保持するため、リブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径がデポ製剤130の最小断面直径D3min以下となるようにシリンジ内径D1とリブ116の高さhが調整される。このため、操作Aにおいてはデポ製剤130はリブ116の少なくとも一つに接し、側面116eあるいは116qの傾斜に誘導されてデポ製剤130の中心軸はシリンジ102の中心軸102dに近づき、最終的にすべてのリブ116と接する(図9(A))。この時、リブ116が塑性変形し、高さhが減少する。高さhの変化量Δhが大きくなりすぎると、デポ製剤130はリブ116によって保持することができない(図9(B))。
しかしながら角度θ2を大きくする、換言するとリブ116の幅を大きくすると、リブ116の体積も増大するためリブ116は固くなり、高さhの変化量Δhが小さくなる。その結果、塑性変形後も、リブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円は最小断面直径D3minよりも小さい直径を維持することができ、デポ製剤130をシリンジ102内に保持することができる(図9(C))。
断面直径の異なる複数のデポ製剤130とリブの形状の異なる複数のシリンジ102を用いて、これらの組み合わせを変えて操作Aを行い、シリンジ102内に保持可能なデポ製剤130の最小の断面直径D´3minを取得する。さらに以下の式(3)に従って最小変形長さαminを算出する。種々の角度θ2を有するリブ116を備えるシリンジを用いてαminを算出し、角度θ2に対してプロットすることで、図10に示す曲線140が得られる。
αmin=(D´3min−D2)/2 (3)
次に、シリンジ102の末端部102bからデポ製剤130を充填する。その後ピストン108をシリンジ102に挿入し、ニードル104方向へ移動させ、デポ製剤130が排出できるかどうかを判断する(操作B)。この操作Bにおけるデポ製剤130とリブ116の状態を図11(A)から図11(C)に模式的に示す。これらの図は、x軸に沿った断面模式図である。
デポ製剤130を保持するため、リブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径は、デポ製剤130の最大断面直径D3maxよりも小さくなるようにシリンジ102とリブ116が調整される。このため、デポ製剤130がピストン108に押されてニードル104方向に移動すると、デポ製剤130はリブ116の少なくとも一つに接し、側面116eあるいは116qの傾斜に誘導されてデポ製剤130の中心軸はシリンジ102の中心軸102dに近づき、最終的にすべてのリブ116と接する(図11(A))。リブ116が外部から力が加えられた場合に塑性変形するように構成される場合、図11(B)に示すようにリブ116が変形し、その高さhが減少する。塑性変形後においてリブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径が使用するデポ製剤130の断面直径D3以上になるとデポ製剤130はリブ116を超えてニードル104内へ挿入され、さらにピストン108によって排出することができる。
しかしながら角度θ2を大きくする、換言するとリブ116の幅を大きくすると、リブ116の体積も増大するためリブ116は固くなり、高さhの変化量Δhは小さくなる。その結果、リブ116が塑性変形しても、デポ製剤130を排出することができなくなる(図11(C))。
断面直径の異なる複数のデポ製剤130とリブの形状の異なる複数のシリンジ102を用いて、これらの組み合わせを変えて操作Bを行い、シリンジ102内から排出可能な最大の断面直径D´3maxを取得する。さらに以下の式(4)に従って最大変形長さαmaxを算出する。種々の角度θ2を有するリブ116を備えるシリンジを用いてαmaxを算出し、角度θ2に対してプロットすることで、図10に示す曲線142が得られる。
αmax=(D´3max−D2)/2 (4)
図10における曲線140は、αminの角度θ2依存性である。ある角度θ2においてαminがこの曲線140よりも下の場合、操作Aによってリブ116が曲がることで、リブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径が、シリンジ102内に保持可能なデポ製剤130の最小の断面直径D´3minよりも大きくなることを意味している。したがって、この曲線140より下の領域はデポ製剤130を保持できない領域であることを意味する。
一方、曲線142は、αmaxの角度θ2依存性である。ある角度θ2においてαmaxがこの曲線142よりも上の場合、操作Bによってリブ116は曲がらず、リブ116の上底116g、あるいは頂点116vの全てに接する円の直径が、シリンジ102内から排出可能なデポ製剤130の最大の断面直径D´3maxよりも大きくならないことを意味している。したがって、この曲線142より上の領域はデポ製剤130を排出できない領域であることを示唆する。これらの曲線140、142の間の領域がデポ製剤130を保持することができ、かつピストン108の操作によって排出することができる領域に相当する。
デポ製剤130を保持し、かつ、ピストン108の操作によって排出可能とするためには、以下の二つの式(5)、(6)を満たすことが必要である。
D´3min≦D3min (5)
3max≦D´3max (6)
これらを図で説明すると、図12に示すように、リブ116のうち操作Aによって曲がる部分、すなわちデポ製剤130の重さだけで曲がる部分(領域118a)の最小の長さがαminに相当する。一方、操作Bによって曲がる部分、すなわちピストン108の操作によって曲がる部分(領域118b)の最大の長さがαmaxに相当する。ピストン108の操作によっても曲がらない部分が領域118cである。
式(3)と式(4)から、以下の式(7)が導かれる。
αmax−αmin=(D´3max−D´3min)/2 (7)
用いるデポ製剤130の断面直径D3のばらつきとシリンジ102のばらつきに基づいて目標とするD´3maxとD´3minを適宜設定し、式(7)からαmax−αminを求め、図10のグラフからαmax−αminを満たす角度θ2を選択する。この時、角度θ2が小さいほどリブ116のx軸に垂直な断面の面積が小さくなり、体積も減少するため、リブ116が折れ、一部が分離しやすくなる。このため、リブ116の一部が分離するデポ製剤130の排出時に異物として同時に排出される恐れがある。したがって、大きな角度θ2を選択することが好ましく、例えば角度θ2は40°以上の範囲から選択される。角度θ2が40°以上であれば、リブ116の一部が分離しないことが実験的にも確認されている。
上記で選択した角度θ2におけるαminをカットオフαとして採用することが望ましい。この理由は以下の通りである。まず、カットオフαをαminより大きくした場合、目標とするD´3max−D´3minの範囲を満たす事ができず、デポ製剤130が意図せずシリンジ102から抜け落ちてしまう場合や、ピストン108を操作してもシリンジ102からデポ製剤130を押し出せない場合が生じる可能性がある。よって、カットオフαはαmin以下であることが望ましい(α≦αmin)。さらに、領域118aは、物理的強度が低いため折れやすく、例えばデポ製剤130との接触によってリブ116から折れて分離することがあり、これはデポ製剤130の排出時に異物として排出される可能性がある。よって、カットオフαはαminとするのが望ましい(α=αmin)。αminをαとした場合、式(1)と式(3)から、以下の式(8)が導かれ、これにより高さhが決定される。また、式(1)からリブ内径D2が決定される。
h=(D1−D´3min)/2 (8)
以上の方法によって角度θ2とカットオフα(=αmin)がパラメータとして得られ、このパラメータに従ってリブ116を設計することで、リブ116はピストン108の操作によっても曲がらない領域118cとともに、デポ製剤130の重さでは曲がらず、ピストン108の操作によって曲がる領域118bを併せ持つことになる。同時に、リブ116から分離しやすく、異物混入の原因となる領域118aを持たない。このため、デポ製剤130の断面直径D3のばらつきに影響を受けることなく、デポ製剤130を保持可能であり、かつ、異物混入を招くことなく生体内へ円滑に注入可能な注入装置を提供することが可能となる。
以上のとおり、リブ116の形状を決定するパラメータである角度θ2とリブの高さhは、デポ製剤130とシリンジ102との関係性から定められる。例えば、あるデポ製剤130が、その断面直径D3が±0.03mmのばらつきの範囲内となるように製造することが可能であり、シリンジ102の各部位も同じく±0.03mmのばらつきの範囲で製造することが可能である場合、シリンジ102内から排出可能な最大の断面直径D´3maxとシリンジ102内に保持可能なデポ製剤130の最小の断面直径D´3minの差は0.12mm以上、すなわち最大変形長さαmax−最小変形長さαminは0.06mm以上となる。
この条件を満たす角度θ2の範囲は、上記の手順で作成した最小変形長さαminと最大変形長さαmaxの角度θ2に対するプロット図から確認することができ、角度θ2は85°以下、さらに好ましくは84°以下であることがわかる。プロット図から明らかなとおり、角度θ2が小さいほど最大変形長さαmax−最小変形長さαminは大きくなる傾向があり、デポ製剤130やシリンジの製造のばらつきを許容することができる。一方で、上述のとおり、角度θ2が小さいほどリブ116の体積が小さくなるため、リブ116が折れ、デポ製剤130の排出時に異物として同時に排出される恐れがある。このため、デポ製剤130やシリンジ102の大きさによって、上記のプロット図から導き出された範囲から角度θ2を適宜選択することが望ましい。
例えば、デポ製剤130の断面直径D3が1.13mm以上1.19mm以下のばらつきの範囲で、デポ製剤130が製造される場合(すなわち、D3min=1.13mm、D3max=1.19mm)、好ましいシリンジの内径D1は1.19mm以上1.55mm以下であり、例えば、1.45±0.03mmとすることができる。上記のとおり、リブ116の形状を決めるパラメータである角度θ2は、84°以下となり、60°以上80°以下、例えば70°とすることができる。また、リブ116の高さhは、0.10mm以上0.20mm以下、例えば0.14mmとすることができる。
また、デポ製剤130の断面直径D3が1.42mm以上1.48mm以下のばらつきの範囲で、デポ製剤130が製造される場合(すなわち、D3min=1.42mm、D3max=1.48mm)、好ましいシリンジの内径D1は1.49mm以上1.92mm以下であり、例えば、1.65±0.03mmとすることができる。この場合、リブ116の形状を決めるパラメータである角度θ2は、同じく84°以下となり、例えば40°とすることができる。また、リブ116の高さhは、0.10mm以上0.20mm以下であり、好ましくは0.18mmである。
なお、リブの長さL、すなわち、x軸に平行な断面における下底116jの長さL(図4(C)参照)は任意であり、0.1mm以上2.0mm以下、例えば0.5mmとすればよい。また、上底116kの長さも0.05mm以上1.0mm以下、例えば0.2mmとすればよい。これは、リブ116の塑性変形する部分は領域118bであり、塑性変形する際の高さhの変化量Δhは長さLに大きく影響されないためである。
本実施例では、最小変形長さαminと最大変形長さαmaxの角度依存性を検討した結果を述べる。
1.実験
デポ製剤130としては、人の体内で約1ヶ月効能を維持する1ヶ月製剤と約3ヶ月効能を維持する3ヶ月製剤を用いた。1ヶ月製剤の断面直径D3はD3min1.13mmからD3max1.19mmであり、3ヶ月製剤のそれはD3min1.42mmからD3max1.48mmであった。注入装置として、異なる角度θ2を有するリブ116を三つ備える注入装置100を用いた。図3に示すように、角度θ1は120°であった。1ヶ月製剤用のシリンジ102の空洞102cのシリンジ内径D1は1.45mmであり、リブの長さLは0.5mmであった。3ヶ月製剤用のシリンジ102の空洞102cのシリンジ内径D1は1.65mmであり、リブの長さLは0.5mmであった。リブの高さは以下の表1に示す通りであった。なお、シリンジ102の各部位は製造時に±0.03mmのばらつきが生じた。
注入装置100のシリンジ102内にデポ製剤130を充填し、ニードル104が下になるよう、シリンジ102の中心軸102dを鉛直方向に配置し、10cmの高さから実験台の上に30回繰り返し自由落下させ、デポ製剤130が保持されるかどうかを観察した(操作A)。また、注入装置100のシリンジ102内にデポ製剤130を充填し、ピストン108をシリンジ102内に挿入し、ニードル104方向へ移動させ、デポ製剤130が排出されるかどうかを観察した(操作B)。
2.結果
操作Aと操作Bから最小断面直径D´3minと最大断面直径D´3maxを決定し、式(3)と(4)に従って最小変形長さαminと最大変形長さαmaxを求めた。これらの結果を表1にまとめる。また、最小変形長さαminと最大変形長さαmaxの角度θ2に対するプロットを図13に示す。図13には、それぞれのプロットの対数近似曲線も示されている。表1において最小変形長さαmin、最大変形長さαmaxの「−」は、操作Aや操作Bを行ったものの、デポ製剤130やシリンジ102の設計上、臨界点が計測できなかったことを意味する。
Figure 2021052870
図13から理解されるように、角度θ2が大きくなるにつれて最小変形長さαminと最大変形長さαmaxは共に減少する。また、これらの差は角度θ2が小さいほど大きくなる傾向にあることが確認された。
本実施例で使用したデポ製剤130の断面直径D3にはばらつきがあり、その最大値D3maxとD3minの差は0.06mmであった。また、シリンジ102についても、各部位は製造時に±0.03mmのばらつきが生じた。したがって、シリンジ102内に保持可能なデポ製剤130の最小の断面直径D´3min とシリンジ102内から排出可能な最大の断面直径D´3maxの差が0.12mm以上であること、すなわち、最小変形長さαminと最大変形長さαmaxの差が0.06mm以上が好ましく、これを満たす角度θ2として84°以下が図13のプロット曲線より求まる。上記デポ製剤130を使用する場合には、84°以下の角度を角度θ2とし、この時のαminをカットオフαとして採用し、カットオフαとシリンジ内径D1から得られる高さhを有するリブを形成することで、断面直径D3のばらつき、シリンジの各部位のばらつきに左右されることなく、デポ製剤130を保持し、かつ、円滑に排出可能である。
以上述べたように、本発明の実施形態を適用することにより、構造が単純であり、かつデポ製剤を確実に保持するとともに円滑に排出可能なデポ製剤用注入装置を提供することができる。
100:注入装置、102:シリンジ、102a:先端部、102b:末端部、102c:空洞、102d:中心軸、104:ニードル、106:フランジ、108:ピストン、110:タブ、112:保護キャップ、114:エンドストッパ、116:リブ、116a:底面、116b:上面、116c:側面、116d:側面、116e:側面、116f:下底、116g:上底、116h:脚、116j:下底、116k:上底、116m:脚、116n:脚、116p:底面、116q:側面、116r:側面、116s:側面、116t:底辺、116u:辺、116v:頂点、116w:底辺、116x:辺、116y:辺、117:疑似頂点、118a:領域、118b:領域、118c:領域、120:安全装置、122:筐体、124:フランジ、130:デポ製剤、140:曲線、142:曲線

Claims (14)

  1. シリンジ、
    前記シリンジに接続されるニードル、および
    前記シリンジの中心軸の方向において前記シリンジと前記ニードルの内部を移動するピストンを備え、
    前記シリンジは、内表面に少なくとも三つのリブを有する、製剤を注入するための装置。
  2. 前記中心軸に垂直な断面において、前記リブは放射状に配置される、請求項1に記載の装置。
  3. 前記中心軸に垂直な断面において、前記中心軸と前記リブの一つを結ぶ直線と前記中心軸と前記リブの他の一つを結ぶ直線とがなす角度は120°±5°である、請求項1に記載の装置。
  4. 前記リブの前記中心軸に平行な断面の各々は、上底、下底、前記ニードルにより近い第1の脚、および前記ニードルからより遠い第2の脚を含む台形であり、
    前記下底と前記第1の脚がなす角度は、前記下底と前記第2の脚がなす角度よりも大きい、請求項1に記載の装置。
  5. 前記リブの前記中心軸に垂直な断面の各々は、前記内表面の一部を下底とする疑似台形である、請求項1に記載の装置。
  6. 前記リブの前記中心軸に平行な断面の各々は、底辺、ニードルにより近い第1の辺、および前記ニードルからより遠い第2の辺を含む三角形であり、
    前記底辺と前記第1の辺がなす角度は、前記底辺と前記第2の辺がなす角度よりも大きい、請求項1に記載の装置。
  7. 前記リブの前記中心軸に垂直な断面の各々は、前記内表面の一部を底辺とする疑似三角形である、請求項1に記載の装置。
  8. 前記リブは、外力によって塑性変形するように構成される、請求項1に記載の装置。
  9. 前記シリンジと前記リブは一体化される、請求項1に記載の装置。
  10. 前記シリンジと前記リブは、シクロオレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
  11. 前記断面の各々において、前記シリンジの内径は1.22mm以上1.51mm以下であり、前記疑似台形の高さは0.1mm以上0.2mm以下であり、前記疑似台形の二つの脚がなす角度が60°以上85°以下である、請求項5に記載の装置。
  12. 前記断面の各々において、前記シリンジの内径は1.52mm以上1.89mm以下であり、前記疑似台形の高さは0.1mm以上0.2mm以下であり、前記疑似台形の二つの脚がなす角度が40°以上85°以下である、請求項5に記載の装置。
  13. 前記シリンジを収納する安全装置をさらに含む、請求項1に記載の装置。
  14. 前記リブは疑似的四角錘台の形状を有し、
    前記疑似的四角錘台は、前記中心軸に垂直な断面において上底、下底、および前記上底と下底を接続する一対の脚を有し、
    以下の式が実質的に満たされる、請求項1に記載の装置:
    h=(D1−D´3min)/2
    ここで、hは前記シリンジの半径方向における前記上底と前記下底間の最大距離であり、D1は前記シリンジの前記リブが設けられる部分の内径であり、D´3minは前記シリンジ内に保持可能な製剤の前記中心軸に垂直な断面の直径の最小値である。
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