実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るロボット遠隔操作システムの構成概要図である。ロボット遠隔操作システム100は、クローラ移動ロボット(ロボットと略す)1、オペレータ90が装着するヘッドマウントディスプレイ2、遠隔操作装置3、現場カメラ4を主に有して構成される。オペレータ90は、ロボット1を遠隔操作する操作者である。ロボット1は、2本の腕部を有してクローラ(キャタピラ)で移動するタイプのロボットである。現場カメラ4は、ロボット1の上部に搭載されて、ロボット1が活動する現場の画像を撮影する。現場カメラ4が撮影した画像は、ヘッドマウントディスプレイ2に表示される。
遠隔操作装置3では、オペレータ90が操作指示を入力するための入力装置や制御演算装置が電動車イス5に搭載される。オペレータ90は、電動車イス5に座って操作指示を入力する。操作指示とは、ロボット1の各部の動きについてのオペレータ90の指示である。操作指示の例は、右手を上げる、前進するなどである。実際にロボット1を動かす信号は、操作指示から生成された制御信号である。制御信号は、アクチュエータの長さを例えば30cmにする、肘関節のサーボモータを30度回転させるなどの、実際にロボット1を動かす信号である。制御信号により、アクチュエータや肘関節のサーボモータなどは、制御される。制御信号は、操作指示から生成される。
オペレータ90は、電動車イス5に座って足および手を使用してロボット1を遠隔操作する。入力装置として、足操作入力装置6、指示読取カメラ7A、7B、マイク8を有する。遠隔操作装置3は、オペレータ90が入力した操作指示から、ロボット1を制御する制御信号を生成する。足操作入力装置6は、オペレータ90が足で操作指示を入力する。指示読取カメラ7A、7Bは、オペレータ90の上半身を撮影する。遠隔操作装置3が、指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像を画像解析して、ロボット1の腕部に対する操作指示を読み取る。遠隔操作装置3が、読み取った操作指示から制御信号を生成する。
マイク8は、ヘッドマウントディスプレイ2に取り付けられる。マイク8は、オペレータ90の口に近い位置に設けられる。つまり、マイク8は、オペレータ90が発する音声を入力できる位置に設けられる。遠隔操作装置3は、入力装置により入力された操作指示からロボット1を遠隔操作する制御信号を生成する。なお、オペレータ90が居る場所を指令所と呼ぶ。
図2を参照して、ロボット1を遠隔操作する遠隔操作装置3の構成を説明する。遠隔操作装置3が有する制御演算装置60は、例えば電動車イス5の背もたれの後側に搭載される。電動車イス5には、オペレータ90が座る。オペレータ90の足元には、足入力装置6が設置される。オペレータ90は、足を使用して腕以外のロボット1の部分を遠隔操作するための指示を入力する。電動車イス5の前方上側の左右には、指示読取カメラ7A、7Bが設置される。指示読取カメラ7A、7Bが、オペレータ90の上半身を撮影する。遠隔操作装置3は、撮影した画像から腕部10についてオペレータ90が入力する操作指示を読み取る。
オペレータ90は、頭部にヘッドマウントディスプレイ2を装着する。ヘッドマウントディスプレイ2には、現場カメラ4が撮影した画像が表示される。また、ヘッドマウントディスプレイ2にはヘッドホンが付属しており、オペレータ90は、現場の音声を聞くことができる。現場の音声をヘッドホンに出力しないようにもできる。マイク8から、オペレータ90は、音声によりロボット1を停止や動作させる指示を入力することもできる。
制御演算装置60は、CPU81、メモリ部82などを含む電子計算機により実装される。メモリ部82は、CPU81で実行されるプログラムやデータを記憶する。データには、処理に使用するデータあるいは処理の結果で得られるデータなどが含まれる。メモリ部82は、フラッシュメモリのような半導体メモリおよびハードディスクである。メモリ部82は、揮発性の記憶装置および不揮発性の記憶装置を含む。
図3から図14を参照して、ロボット1の構造を説明する。図3から図7は、ロボット1の全体の斜視図、正面図、右側面図、背面図、平面図である。図8から図12は、ロボット1の腕部を有する部分を拡大した斜視図、正面図、右側面図、背面図、平面図である。図13は、ロボット1の別の姿勢での斜視図である。図14は、ロボット1の腕部10を有する部分を拡大した別の姿勢での斜視図である。図3から図12に示す姿勢をロボット1がとる状態を、ロボット1の基準状態と呼ぶ。
ロボット1は、車両部9、2本の腕部10、胴体部11、胴体支持アーム12、胴体接続部13、アーム接続部14を有する。車両部9は、クローラで移動するタイプの車両である。車両部9は、小型のパワーショベルが有するようなクローラを有する。腕部10は、人の腕と同様な形状である。腕部10は、5本指の手部26(符号を図16に示す)を有する。腕部10については、後で説明する。胴体部11は、2本の腕部10がその上部に接続する。胴体部11と2本の腕部10は、人間の胴体と腕と同様な位置関係および同様な大きさを有している。そのため、ロボット1は、人間と同様な細かな作業が可能である。
胴体支持アーム12は、車両部9から伸びて胴体部11を支持する。胴体支持アーム12は、車両部9に対する位置を変更可能に胴体部11を支持する。胴体支持アーム12は、両端に設けられた円筒状の部分と、円筒状の部分をつなぐ部分を有する。胴体支持アーム12の上側の円筒状の部分に、胴体接続部13が設けられる。胴体接続部13は、胴体部11を胴体支持アーム12に2回転自由度で回転可能に接続する。胴体支持アーム12の下側の円筒状の部分に、アーム接続部14が設けられる。アーム接続部14は、胴体支持アーム12を車両部9に2回転自由度で回転可能に接続する。胴体支持アーム12は、胴体部11を作業に適した位置および姿勢で配置することができる。胴体支持アーム12の長さは、ロボット1が作業する位置の想定する高さや、車両部9が近づける場所から想定する最大距離などを考慮して決める。
車両部9は、その左右にクローラ移動部15が設けられている。左側をクローラ移動部15L、右側をクローラ移動部15Rと表記する。左右を特定しない場合は、クローラ移動部15と表記する。車両部9が有する左右で2個ある他の構成要素に関しても、同様に添え字LまたはRを付加して表記する。クローラ移動部15は、駆動される車輪16と、車輪16にかけ渡されたクローラ17を有する。車輪16は、例えば5軸の車輪16が前後に並んで配置される。クローラ17は、金属製の板がつなげられた輪状である。クローラ17を構成する金属製の板材には、回転方向に直交する方向に突起が設けられている。水などが前後に流れやすいように、クローラ17には中央部に間隔をあけて2列の突起を設けている。車輪16が回転するとクローラ17も回転する。クローラ17が、地面などに接触する。地面などに接触しながらクローラ17が回転することで、車両部9が移動する。そのため、地面などに凸凹があっても車両部9は移動できる。左右のクローラ移動部15L、15Rは、互いに独立に動く。例えば、右側のクローラ移動部15Rを前進させ、左側のクローラ移動部15Lを後進させることができる。車両部9の上面の後方には、電源となるバッテリ18を搭載している。
胴体部11は、肩フレーム19、胴上部20、胴下部21を有する。胴上部20および胴下部21を、胴本体部と呼ぶ。肩フレーム19は円柱状である。肩フレーム19の左右の端に、2本の腕部10が接続する。肩フレーム19は、2本の腕部10が接続する腕接続部である。胴上部20は、肩フレーム19が貫通する部分を有する。胴上部20は、肩フレーム19を回転可能に保持する。胴上部20と肩フレーム19とが回転可能に接続する部分を、肩フレーム回転部22と呼ぶ。肩フレーム回転部22を回転させる回転軸を肩フレーム回転軸と呼ぶ。胴上部20は、肩フレーム19が貫通する部分の下側にも存在する。胴下部21は、胴上部20の下側に回転可能に接続する。胴上部20と胴下部21とが回転可能に接続する部分を、胴体交差回転部23と呼ぶ。胴体交差回転部23を回転させる回転軸を胴体交差回転軸と呼ぶ。肩フレーム回転軸と胴体交差回転軸は、直交する。胴下部21には、下側から胴体支持アーム12が回転可能に接続する。胴体交差回転軸は、肩フレーム回転軸および胴下部21と交差する。
肩フレーム19の胴下部21に対する角度は、2回転自由度で変更できる。肩フレーム回転部22は、肩フレーム19を胴上部20に回転可能に接続する。さらに、胴体交差回転部23が、肩フレーム回転部22とは直交する方向で、胴上部20を胴下部21に回転可能に接続する。肩フレーム回転部22と胴体交差回転部23は、胴体支持アーム12に対する胴体部11の姿勢を変更する姿勢変更部である。肩フレーム回転部22は、胴上部20に対して肩フレーム19を回転させる腕接続部回転部である。なお、ねじれの関係にある2つの部材(厳密にはその中心線)が直交するとは、一方を平行移動させて同一平面上に存在するようにした状態で直交することを意味する。
胴体交差回転部23は、肩フレーム19および胴上部20を、胴体支持アーム12が延在する方向とは異なる方向に向けることができる。そのため、肩フレーム19および2本の腕部10を、作業に適した角度に胴体支持アーム12に対して傾けることができる。肩フレーム回転部22は、現場カメラ4、肩フレーム19および2本の腕部10を、胴上部20が向く方向とは異なる方向に向けることができる。そのため、例えば、上を向いた腕部10を遠隔操作する場合でも、オペレータ90は腕を前に出して腕部10を遠隔操作できる。胴体交差回転部23および肩フレーム回転部22があるので、ロボット1が胴体部11を傾けた姿勢をとる場合や、人間では向けることができにくい方向に腕部10を向ける場合でも、オペレータ90は自然な姿勢でロボット1を遠隔操作できる。
胴上部20は、上部輪部20A、水平円柱20B、胴連結フレーム20Cを有する。上部輪部20Aは、肩フレーム19が貫通する円筒状の部分である。上部輪部20Aが有する貫通穴に肩フレーム19が回転可能に挿入されている。上部輪部20Aと肩フレーム19とが、肩フレーム回転部22を構成する。肩フレーム19を上部輪部20Aに対して回転させ、また回転角度を維持するためのモータやギアは、肩フレーム19の内部に設けられている。他の回転可能に接続する部分に関しても同様である。
水平円柱20Bは、上部輪部20Aの下側に存在し、上部輪部20Aよりも前方に突き出た円筒状の部材である。胴連結フレーム20Cは、上部輪部20Aと水平円柱20Bとをその背面側で接続する。上部輪部20Aの背面側に、基準状態で上下方向に胴連結フレーム20Cが接続する。胴連結フレーム20Cの下端で、前側に水平円柱20Bが出ている。肩フレーム19と水平円柱20Bとは、直交する。
胴下部21は、正面輪部21Aと、垂直円柱21Bとを有する。胴下部21の上部に存在する正面輪部21Aは、ロボット1の正面方向から見ると輪状である。正面輪部21Aが有する輪の中に、水平円柱20Bが回転可能に挿入されて、胴体交差回転部23を構成する。垂直円柱21Bは、正面輪部21Aの下側に垂直に設けられた円柱状の部分である。基準状態では、垂直円柱21Bは上下方向に延在する。
胴体接続部13は、胴下部21すなわち垂直円柱21Bを2回転自由度で回転可能に胴体支持アーム12の上部に接続する。胴体接続部13は、上部円柱13A、回転軸保持ヨーク13Bおよび回転軸部材13Cを有する。上部円柱13Aは、外形が円柱状であり、上面に垂直円柱21Bが回転可能に挿入される接続穴部を有する。回転軸保持ヨーク13Bは、上部円柱13Aの下側に接続する。回転軸部材13Cは、回転軸保持ヨーク13Bに回転可能に保持される軸部材である。回転軸保持ヨーク13Bは、回転軸部材13Cを挟んで保持する2枚の板状の部材が上部で連結したような形状である。ここで、ヨークとは、他の部材を回転可能に保持する穴または突起が設けられた互いに対向する部材である。ヨークに設けられた穴に保持される部材を、軸部材と呼ぶ。
胴下部21が有する垂直円柱21Bが、胴体接続部13が有する上部円柱13Aに回転可能に挿入されている。つまり、垂直円柱21Bは胴体部11を通る胴体回転軸の回りに回転可能である。回転軸部材13Cは、胴体支持アーム12の上部に設けられた貫通穴に回転可能に挿入される。回転軸部材13Cを通る回転軸を、胴体傾斜回転軸と呼ぶ。胴体傾斜回転軸は、胴体回転軸および胴体支持アーム12に対して垂直な回転軸である。
胴体支持アーム12は、上部輪部12A、アーム部12B、下部輪部12C、転動部12Dを有する。上部輪部12Aおよび下部輪部12Cは、外形が円柱状である。上部輪部12Aの円柱の半径は、下部輪部12Cの円柱の半径よりも小さい。上部輪部12Aおよび下部輪部12Cには、側面(円柱の端面)に貫通穴が設けられる。上部輪部12Aの貫通穴の方が、下部輪部12Cの貫通穴よりも径が小さい。上部輪部12Aに、胴体傾斜回転軸となる回転軸部材13Cが回転可能に挿入される。そうすることで、胴下部21は、胴体支持アーム12に対して仰角を変更できる。下部輪部12Cの貫通穴に、仰角回転軸となる回転軸部材14Cが挿入される。そうすることで、胴体支持アーム12は車両部9に対して仰角を変更できる。アーム部12Bは、上部輪部12Aと下部輪部12Cを結ぶ部材である。アーム部12Bは、側面から見ると、上部輪部12Aと下部輪部12Cとを連結する3枚の板材である。アーム部12Bは、正面から見ると長方形である。アーム部12Bの外形は、略台形の側面を有する柱体である。下部輪部12Cのアーム接続部14の側の側面には、円筒面の外面を有する転動部12Dが接続する。
アーム接続部14は、台座部14A、回転軸保持ヨーク14B、回転軸部材14C、駆動モータ14D、駆動ベルト14Eを有する。アーム接続部14は、2回転自由度で回転可能に胴体支持アーム12を車両部9に接続する。アーム接続部14では、車両部9に垂直な方位回転軸と、方位回転軸および胴体支持アーム12に垂直な仰角回転軸の回りに回転可能である。台座部14Aは、径が異なる2個の円柱が中心を合わせて回転可能に重ねられた形状である。台座部14Aでは、大きな径の円筒が車両部9の上面に設けられ、小さな径の円筒に回転軸保持ヨーク14Bが接続する。2個の円柱の中心軸が、方位回転軸である。台座部14Aは、方位回転軸の回りに回転可能に車両部9に支持される。台座部14Aの上面には、転動部12Dが転動する転動窪み14Gが設けられる。転動窪み14Gは、転動部12Dと同じ曲率半径の円筒面を有する窪みである。
回転軸保持ヨーク14Bは、回転軸部材14Cを保持する2枚の板状の部材である。回転軸保持ヨーク14Bは、台座部14Aに垂直にかつ枚の板状の部材が互いに平行に台座部14Aの上面と接続する。回転軸保持ヨーク14Bで挟まれる部分の台座部14Aの上面に、転動窪み14Gが設けられる。回転軸保持ヨーク14Bが保持する回転軸部材14Cが、下部輪部12Cに設けられた貫通穴に挿入される。また、転動部12Dが転動窪み14Gの中で転動可能に収容される。このようなアーム接続部14により、胴体支持アーム12は、仰角回転軸の回りに回転できる。
駆動モータ14Dは、台座部14Aの後方に配置される。駆動モータ14Dが駆動ベルト14Eを回転させることで、台座部14Aおよび支持アーム12を回転させる。
ロボット1の姿勢を表現するため、3種類の直交座標系を使用する。3種類の直交座標系は、車両部9を基準とする第1の座標系、胴体接続部13を基準とする第2の座標系、肩フレーム19および現場カメラ4を基準とする第3の座標系である。車両部9を基準とする第1のXYZ座標系を、以下のように定義する。第1のXYZ座標系により、車両部9に対する胴体支持アーム12および胴体接続部13の位置を表現する。
X1軸:車両部9の左右方向に平行な軸。
Y1軸:車両部9の前後方向に平行な軸。
Z1軸:車両部9の高さ方向に平行な軸。方位回転軸。
X1軸、Y1軸、Z1軸は、互いに直交する。方位回転軸および仰角回転軸の交点を、第1のXYZ座標系の原点とする。なお、仰角回転軸は、X1軸およびY1軸を含むX1Y1平面に平行な軸である。右方をX1軸の正の向きとし、前方を1軸の正の向きとし、上方をZ1軸の正の向きとする。X1軸およびY1軸は、車両部9の上面に平行である。Z1軸は、車両部9の上面と直交する。
胴体接続部13を基準とする第2のXYZ座標系を以下のように定義する。第2のXYZ座標系により、胴体接続部13に対する肩フレーム19の位置を表現する。
X2軸:胴体接続部13が有する胴体傾斜回転軸に平行な軸。
Y2軸:X2軸およびZ2軸に直交する軸。
Z2軸:胴体接続部13が有する胴体回転軸に平行な軸。
X2軸、Y2軸、Z2軸は、互いに直交する。胴体傾斜回転軸および胴体回転軸の交点を、第2のXYZ座標系の原点とする。基準状態では、X1軸とX2軸、Y1軸とY2軸、Z1軸とZ2軸は、それぞれ互いに平行である。基準状態での車両部9の右方をX2軸の正の向きとし、前方をY2軸の正の向きとし、上方をZ2軸の正の向きとする。
肩フレーム19および現場カメラ4を基準とする第3のXYZ座標系を、以下のように定義する。第3のXYZ座標系により、肩フレーム19に対する腕部10の位置を表現する。
X3軸:肩フレーム回転部22が有する肩フレーム回転軸に平行な軸。
Y3軸:X3軸およびZ3軸に直交する軸。
Z3軸:肩フレーム19に対して現場カメラ4が延在する方向に平行な軸。
X3軸、Y3軸、Z3軸は、互いに直交する。肩フレーム回転軸に直交して肩フレーム19の中央を通る平面と肩フレーム回転軸との交点を、第3のXYZ座標系の原点とする。基準状態での肩フレーム19の右方をX3軸の正の向きとし、前方をY3軸の正の向きとし、上方をZ3軸の正の向きとする。
現場カメラ4は、肩フレーム19の上に固定されている。基準状態で現場カメラ4は、Y3軸に平行な方向を向く。現場カメラを、肩フレームに対して回転可能にしてもよい。現場カメラは、カメラ接続部により肩フレーム19に回転可能に接続されてもよい。現場カメラの回転軸は、例えばZ3軸に平行にする。現場カメラの回転軸は、Z3軸に平行でなくてもよい。現場カメラの回転軸は、面対称である肩フレーム19の対称面上に存在すればよい。現場カメラの回転軸が延在する方向は、Z3軸との角度が決められた範囲内であればよい。現場カメラの光軸の方向が、対称面上で変化できるように、現場カメラを上下方向にも回転可能に肩フレームに接続してもよい。
図15を参照して、ロボット1が有する回転軸について説明する。ロボット1は、以下に示す6個の回転軸を有する。
AZ1軸:アーム接続部14での方位回転軸。
EL1軸:アーム接続部14での仰角回転軸。
EL2軸:胴体接続部13での胴体傾斜回転軸。
AZ2軸:胴体接続部13での胴体回転軸。
XEL軸:胴体交差回転部23での胴体交差回転軸
EL3軸:肩フレーム回転部22での肩フレーム回転軸
AZ1軸は、Z1軸に平行である。EL1軸は、AZ1軸と直交し、X2軸に平行である。EL2軸は、AZ1軸と直交し、EL1軸およびX2軸に平行である。AZ2軸は、EL2軸およびX2軸と直交し、Z2軸に平行である。XEL軸は、AZ2軸およびZ2軸と直交し、Y2軸に平行である。EL3軸は、AZ2軸およびXEL軸と直交する。EL3軸は、X3軸と平行である。
AZ1軸は、Z1軸に平行でなくてもよい。AZ1軸は、X1Y1平面と交差していればよい。AZ1軸とEL1軸は、直交でなくてもよく、交差していればよい。EL1軸とEL2軸は、角度差が小さければ平行でなくてもよい。EL1軸とEL2軸の角度差は、決められた範囲(ゼロ度を含む)内にあればよい。2本の直線の角度差がゼロ度を含む決められた範囲内である場合に、2本の直線は略平行であるという。なお、ねじれの関係にある2本の直線の角度差は、一方の直線を平行移動させて2本の直線が同じ平面上にある場合での角度差である。AZ2軸とEL2軸は、直交でなくてもよく、交差していればよい。EL3軸は、AZ2軸およびXEL軸と交差していればよい。
ロボット1が有する6個の回転軸の回りの回転角度を以下のように定義する。
θAZ1:AZ1軸すなわち方位回転軸の回りの回転角度。
θEL1:EL1軸すなわち仰角回転軸の回りの回転角度。
θEL2:EL2軸すなわち胴体傾斜回転軸の回りの回転角度。
θAZ2:AZ2軸すなわち胴体回転軸の回りの回転角度。
θXEL:XEL軸すなわち胴体交差回転軸の回りの回転角度。
θEL3:EL3軸すなわち肩フレーム回転軸の回りの回転角度。
θAZ1は、X1Y1平面に射影した胴体支持アーム12とY1軸とがなす角度である。θAZ1を、方位角と呼ぶ。上から見て胴体支持アーム12がY1軸に対して右に位置する場合に、θAZ1>0である。
θEL1は、胴体支持アーム12とX1Y1平面とがなす角度である。θEL1を、仰角と呼ぶ。胴体支持アーム12がX1Y1平面よりも上に位置する場合に、θEL1>である。なお、胴体支持アーム12がX1Y1平面と直交する場合に、θEL1=90度である。θEL1>90度では、胴体部11の前面が斜め上を向くことになる。
θEL2は、胴下部21と胴体支持アーム12との間の角度である。θEL2を、胴体傾斜回転角と呼ぶ。θEL1<90度であり、かつθEL2>0である場合に、胴下部21が胴体支持アーム13よりも上に位置する。Z2軸とZ1軸との間の角度は、90−(θEL1+θEL2)になる。
θAZ2を、胴体回転角と呼ぶ。胴上部20が存在する側から見て、Y2軸の正の方向に対して胴下部21の正面方向が右に位置する場合に、θAZ2>0である。Y2軸の正の方向は、胴体接続部13が有する上部円柱13Aの正面方向である。胴下部21の正面方向は、水平円柱20Bが突出する方向である。上部円柱13Aの正面方向は、回転軸保持ヨーク13Bがカタカナの「コ」の字状に見える方向である。
θXELは、肩フレーム19とX2Y2平面とがなす角度である。θXELを、胴体交差回転角と呼ぶ。右の腕部10が接続する側で肩フレーム19が下がる場合に、θXEL>0である。
θEL3は、現場カメラ4からX3軸に下ろした垂線とZ3軸との間の角度である。θEL3を、肩フレーム回転角と呼ぶ。X3軸の正の方から見て、現場カメラ4がZ3軸よりも右に位置する場合に、θEL3>0である。
図16および図17を参照して、腕部10の構造を説明する。図16は、腕部を拡大した正面図、右側面図、背面図である。図17は、腕部を拡大した斜視図である。2本の腕部10は、胴上部20の上部の左右にそれぞれ接続する。腕部10は、上腕部24、前腕部25および手部26が直列に胴上部20に接続する。腕部10は、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29を有する。肩関節部27は、上腕部24を2回転自由度で回転可能に胴上部20に接続する。肘関節部28は、前腕部25を2回転自由度で回転可能に上腕部24に接続する。手首関節部29は、手部26を3回転自由度で回転可能に前腕部25に接続する。肩関節部27は、腕部10が肩フレーム19に接続する箇所である。2個の肩関節部27を結ぶ直線は、肩フレーム回転軸と平行である。なお、厳密に平行でなくてもよく、略平行であればよい。肩フレーム回転軸を、腕接続部回転軸とも呼ぶ。
腕部10では、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29は、その関節部での回転自由度の次数と同数のリンクにより駆動される。リンクは、可変長リンクまたは一端が移動する固定長リンクである。肩関節部27は、2本の可変長リンクで駆動される。肘関節部28は、1端がリニアアクチュエータにより移動する2本固定長リンクで駆動される。手首関節部29は、3本の可変長リンクで駆動される。肘関節部を可変長リンクで駆動するようにしてもよい。肩関節部および肘関節部の何れか一方または両方を、3回転自由度で駆動されるようにしてもよい。
ロボット1は、可変長リンクをそれぞれ有する肩主アクチュエータ30および肩補助アクチュエータ31を有する。肩主アクチュエータ30および肩補助アクチュエータ31は、肩関節部27の回転角度を変更し維持するためのものである。肩主アクチュエータ30は、可変長リンクである肩主リンク30L、肩主リンク30Lの長さを変更する力を発生するモータ30Mを有する。肩補助アクチュエータ31は、可変長リンクである肩補助リンク31L、肩補助リンク31Lの長さを変更する力を発生するモータ31Mを有する。アクチュエータは、ネジ機構を利用するものでも、油圧を利用するものでもよい。
肩主リンク30Lの一端は、肩フレーム19に設けられた肩リンク支持フレーム19Aの前側に接続する。肩リンク支持フレーム19Aは、肩フレーム19の下側の左右に1個ずつ設ける。肩リンク支持フレーム19Aは、側面から見ると底辺を有しない長方形の上側の角を斜めに切った形状である。肩リンク支持フレーム19Aは、一定の幅を有する板状部材を折り曲げたような形状である。肩リンク支持フレーム19Aの前側に、肩主リンク30Lの一端を2回転自由度で回転可能に取り付けられる肩主リンク取付部J1が設けられる。肩リンク支持フレーム19Aの後ろ側に、肩補助リンク31Lの一端を2回転自由度で回転可能に取り付けられる肩補助リンク取付部J2が設けられる。
肩主リンク30Lの他端は、上腕部24に2回転自由度で回転可能に接続する。肩補助リンク31Lの他端は、肩主リンク30Lに2回転自由度で回転可能に接続する。肩主リンク30Lおよび肩補助リンク31Lは、軸回りの1回転自由度を有する。軸回りの1回転自由度とは、リンクの両端で軸の回りの回転角度が異なるようにできることを意味する。他の可変長リンクおよび固定長リンクも、軸回りの1回転自由度を有する。
上腕部24には、肩主リンク30Lが取り付けられる上腕リンク取付部J3が設けられる。上腕リンク取付部J3と肩関節部27の間の距離は、予め決められており、変化しない。肩主リンク30Lには、肩補助リンク31Lが取り付けられる肩主リンク補助リンク取付部J4が設けられる。上腕リンク取付部J3と肩主リンク補助リンク取付部J4の間の距離は、予め決められており、変化しない。
肩主リンク30Lおよび肩補助リンク31Lの長さを決めると、肩関節部27に対する上腕部24の接続角度を決めることができる。肩主リンク30Lおよび肩補助リンク31Lの長さをどちらも長くすると、上腕部24が上に移動する。肩主リンク30Lおよび肩補助リンク31Lの長さをどちらも短くすると、上腕部24が下に移動する。肩主リンク30Lだけを長くすると、上腕部24が後側に移動する。肩補助リンク31Lだけを長くすると、上腕部24が前側に移動する。
腕部10は、肘関節部28の回転角度を変更し維持するために、肘内側リンク32L、肘外側リンク33L、肘内側アクチュエータ32および肘外側アクチュエータ33を有する。腕部10の内側は、胴体部11に近い側である。腕部10の外側は、胴体部11から遠い側である。肘内側リンク32Lおよび肘外側リンク33Lは、固定長のリンクである。肘内側アクチュエータ32および肘外側アクチュエータ33は、移動部材32Dおよび移動部材33Dをそれぞれ移動させるリニアアクチュエータである。移動部材32Dに、肘内側リンク32Lの他端が接続する。移動部材33Dに、肘外側リンク33Lの他端が接続する。肘内側アクチュエータ32および肘外側アクチュエータ33は、上腕部24に設けられる。
肘内側リンク32Lの一端は、前腕部25に2回転自由度で回転可能に接続する。前腕部25には、肘内側リンク32Lの一端が回転可能に取り付けられる前腕リンク取付部J5が設けられる。肘内側リンク32Lの他端は、移動部材32Dに回転可能に取り付けられる。移動部材32Dには、肘内側リンク32Lの他端が回転可能に取り付けられる上腕内側リンク取付部J6が設けられる。移動部材32Dは、肘内側アクチュエータ32により移動する。
肘外側リンク33Lの一端は、肘内側リンク32Lに2回転自由度で回転可能に取り付けられる。肘内側リンク32Lには、肘外側リンク33Lの一端が回転可能に取り付けられる肘内側リンク外側リンク取付部J7が設けられる。肘外側リンク33Lの他端は、移動部材33Dに回転可能に取り付けられる。移動部材33Dには、肘外側リンク32Lの他端が回転可能に取り付けられる上腕外側リンク取付部J8が設けられる。移動部材33Dは、肘外側アクチュエータ33により移動する。
前腕リンク取付部J5は、肘関節部28から決められた距離の位置に前腕部25に設けられる。肘内側リンク外側リンク取付部J7は、前腕リンク取付部J5から決められた距離の位置に肘内側リンク32Lに設けられる。モータ32Mは、移動部材32Dの位置を移動させる力を発生する。モータ33Mは、移動部材33Dの位置を移動させる力を発生する。
移動部材32Dおよび移動部材33Dの位置が決まると、肘関節部28の角度が決まる。移動部材32Dおよび移動部材33Dを肩関節部27の方に移動させると、前腕部25が上に移動する。移動部材32Dおよび移動部材33Dを肘関節部28の方に移動させると、前腕部25が下に移動する。移動部材32Dだけを肩関節部27の方に移動させると、前腕部25が肩フレーム19の中央の方へ斜め上に移動する。移動部材32Dだけを肘関節部28の方に移動させると、前腕部25が肩フレーム19の外側の方へ斜め下に移動する。移動部材33Dだけを肩関節部27の方に移動させると、前腕部25が肩フレーム19の外側の方へ斜め上に移動する。移動部材33Dだけを肘関節部28の方に移動させると、前腕部25が肩フレーム19の中央の方へ斜め下に移動する。
腕部10は、手首関節部29の回転角度を変更し維持するために、可変長リンクをそれぞれ有する前腕正面アクチュエータ34、前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36を有する。
3本の可変長リンクである前腕正面リンク34L、前腕外側リンク35Lおよび前腕内側リンク36Lは、一端が前腕部25に2回転自由度で回転可能に接続し、他端が手部26に2回転自由度で回転可能に接続する。
前腕部25は、手首関節部29から決められた距離の位置に3方向の突起を有する。前腕部25が延在する方向に垂直な平面において、突起の間の角度は、90度、90度、180度である。90度の角度で他の突起に挟まれた突起に、前腕正面リンク取付部J9が設けられる。前腕正面リンク取付部J9が設けられた突起よりも前腕部25において外側に位置する突起に、前腕外側リンク取付部J10が設けられる。内側に位置する突起には、前腕内側リンク取付部J11が設けられる。前腕正面リンク取付部J9は、基準状態で回転軸保持ヨーク13Bと対向する位置に設けられる。
板状の手部26には、手首関節部29を中心にして等距離の位置に、手正面リンク取付部J12、手外側リンク取付部J13および手内側リンク取付部J14が設けられる。手正面リンク取付部J12、手外側リンク取付部J13および手内側リンク取付部J14は、手首関節部29を結ぶ線分が互いに120度の角度を有する位置に設けられる。基準状態では、手正面リンク取付部J12は、前腕部25および前腕正面リンク取付部J9が存在する平面上に存在する位置に設けられる。
前腕正面リンク取付部J9には、前腕正面リンク34Lの一端が回転可能に取り付けられる。手正面リンク取付部J12には、前腕正面リンク34Lの他端が回転可能に取り付けられる。前腕外側リンク取付部J10には、前腕外側リンク35Lの一端が回転可能に取り付けられる。手外側リンク取付部J13には、前腕外側リンク35Lの他端が回転可能に取り付けられる。前腕内側リンク取付部J11には、前腕内側リンク36Lの一端が回転可能に取り付けられる。手内側リンク取付部J14には、前腕内側リンク36Lの他端が回転可能に取り付けられる。前腕正面リンク取付部J9、前腕外側リンク取付部J10および前腕内側リンク取付部J11は、前腕部25に設けられる。手正面リンク取付部J12、手外側リンク取付部J13および手内側リンク取付部J14は、手部26に設けられる。
前腕正面リンク34L、前腕外側リンク35Lおよび前腕内側リンク36Lの長さを決めると、手首関節部29の角度が決まる。手首関節部29は、手部26を前腕部25に対して2回転自由度で傾けることができ、かつ前腕部25が延在する方向の回りを回転させることもできる。
手部26は、人間の手と同様な形状で5本指である。5本の指のそれぞれは、3個の指関節部を有する。なお、手部は少なくとも3本の指部を有すればよい。手部25を含む腕部10の構造は、特許文献1で開示されている人型ロボットが有する上肢部と同様である。手部26の構造および制御方法は、周知の技術を使用する。そのため、手部については、詳しくは説明しない。
図18を参照して、足入力装置6の構造を説明する。図18(A)に足入力装置6の平面図を、図18(B)に正面図を、図18(C)に右側面図を示す。足入力装置6は、ベース板41、脚部42、足入力ユニット431、432、433、434を有する。足入力ユニット431、432、433、434は、ベース板41の上面に固定される。2個の脚部42は、ベース板41の両側に接続し、ベース板41を支持する。足入力装置6を電動車イス5に搭載する場合には、脚部42が電動車イス5と接触する。足入力ユニット43は、オペレータ90の左足の側から足入力ユニット431、432、433、434と、番号をつける。一般的に足入力ユニット43を意味する場合には、添え字j(jは、1,2,3,4のどれか)を付加しない符号43を使用する。
図19から図21を参照して、足入力ユニット43の構造を説明する。図19は、足入力装置6で使用する足入力ユニット43の斜視図である。図19(A)に、足載置部も含めた足入力ユニット43の斜視図を示す。図19(B)に、足載置部を透視した足入力ユニット43の斜視図を示す。図20は、足入力ユニットの構造を説明する足載置部を除いた状態での図である。図20(A)は、足入力ユニットの斜視図である。図20(B)が、足入力ユニットの正面図であり、図20(A)に示す矢視方向Cから見た図である。図20(C)が、足入力ユニットの右側面図であり、図20(A)に示す矢視方向Dから見た図である。図21は、足入力ユニットの断面図である。図21(A)は、図20(C)に示すA−A断面での断面図である。図21(B)は、図20(B)に示すB−B断面での断面図である。
足入力装置6に関して、以下のようにXYZ座標を定義する。X軸は、足入力ユニット431、432、433、434が並ぶ方向である。番号が小さい足入力ユニット43jから大きい番号に向かう方向をX軸の正の向きとする。Z軸は高さ方向であり、高さが高くなる方向をZ軸の正の向きとする。Y軸は、X軸およびY軸と直交する方向である。足入力ユニット43にオペレータ90が足を載せた際に、つま先側の方向をY軸の正の向きとする。
足入力ユニット43は、3軸のジンバル構造を有する。足入力ユニット43は、足載置部44、十字部材45、Y軸保持部材46、X軸保持部材47、垂直回転軸48、垂直軸保持部材49、前後傾斜角計測部50、左右傾斜角計測部51および回転角計測部52を有する。足載置部44は、オペレータ90が足を載せる板状の部材である。足載置部44は、オペレータ90の足が入る凹部を設けている。サンダルのように、足の甲にひっかけるストラップを足載置部44に設けてもよい。足載置部44は、オペレータ90が足を載せることができれば板状でなくてもよい。
十字部材45は、直交する回転軸であるX軸およびY軸になる2本の円柱が十字状に組み合わさった部材である。Y軸保持部材46は、Y軸を回転可能に上側から保持する部材である。Y軸保持部材46は、足載置部44の下側に接続する。X軸保持部材47は、X軸を回転可能に下側から保持する部材である。Y軸保持部材46およびX軸保持部材47は、直方体状の外形を有する。Y軸保持部材46はY軸となる円柱を回転可能に保持する2枚の対向する板材と、2枚の板材をつなぐ板材とを有する。X軸保持部材47はX軸となる円柱を回転可能に保持する2枚の対向する板材と、2枚の板材をつなぐ板材とを有する。Z軸の方向から見ると、Y軸保持部材46とX軸保持部材47は直交する。
垂直回転軸48は、X軸保持部材47の下面に垂直に接続する。垂直回転軸48は、足載置部44と交差する回転軸である。垂直軸保持部材49は、垂直回転軸48を回転可能に保持する。垂直軸保持部材49は、垂直回転軸48の下に存在する板状の部材である。垂直軸保持部材49に設けられた貫通穴に、垂直回転軸48の下端の部分が回転可能に挿入される。垂直回転軸48と垂直軸保持部材49の間には、回転を円滑にするベアリングが設けられている。十字部材45、Y軸保持部材46、X軸保持部材47、垂直回転軸48および垂直軸保持部材49は、足載置部を支持する回転支持部である。回転支持部は、3回転自由度で回転可能に足載置部を支持する。3回転自由度で回転可能とは、足載置部の前後方向に傾斜可能であり、かつ足載置部の左右方向に傾斜可能であり、かつ足載置部と交差する回転軸の回りに回転可能であることである。
足載置部44は、その前後方向において前部が低くなるように傾くことができ、かつ後部が低くなるように傾くことができるように回転支持部に支持される。足載置部44は、その左右方向において左側が低くなるように傾くことができ、かつ右側が低くなるように傾くことができるように回転支持部に支持される。足載置部44は、垂直回転軸の回りの回転に関して、左回転も右回転もできるように回転支持部に支持される。
垂直軸保持部材49は、垂直回転軸48をベース板41に対して垂直に回転可能に保持する。前後傾斜角計測部50は、X軸の回りの回転により足載置部44が前後方向に傾斜する角度である前後傾斜角を計測する。左右傾斜角計測部51は、Y軸の回りの回転により足載置部44が左右方向に傾斜する角度である左右傾斜角を計測する。回転角計測部52は、足載置部44が垂直回転軸48の回りに回転する角度である足回転角を計測する。
前後傾斜角および左右傾斜角では、足載置部44が水平な状態(ベース板41に対して平行な状態)での角度がゼロ度である。前後傾斜角および左右傾斜角は、正負の値をとることができる。足回転角では、足載置部44が前方を向く状態での角度をゼロ度とする。足回転角は、正負の値をとることができる。
前後傾斜角計測部50、左右傾斜角計測部51および回転角計測部52は、前後傾斜角、左右傾斜角および足回転角を検出する角度検出部である。前後傾斜角計測部50、左右傾斜角計測部51および回転角計測部52のそれぞれは、ポテンショメータである。ポテンショメータは、検出する回転変位に比例する電圧を発生する。前後傾斜角計測部50、左右傾斜角計測部51および回転角計測部52は、3軸ジャイロセンサを使用するものでもよい。3軸ジャイロセンサを使用する場合には、足載置部の裏面などに3軸ジャイロセンサを設置する。
中央の2個の足入力ユニット432、433では、左右傾斜角および足回転角をロボット1の遠隔操作に使用しない。足入力ユニット432、433では、左右に傾斜しないようにストッパを付加し、垂直回転軸48の回りに回転しないようにストッパを付加している。なお、足入力ユニット432、433を、足載置部44が左右に傾斜できず、垂直回転軸48の回りに回転もできない構造にしてもよい。
前後傾斜角計測部50が計測する前後傾斜角は、変数δELで表す。水平である場合にδEL=0度とし、前側が低くなる場合をδEL>0とする。
左右傾斜角計測部51が計測する左右傾斜角は、変数δXELで表す。水平である場合にδXEL=0度とし、右側が低くなる場合をδXEL>0とする。
回転角計測部52が計測する足回転角は、変数δAZで表す。足載置部44が前方(Y軸方向)を向く場合をδAZ=0度とし、時計回り(右回り)の回転をδAZ>0とする。
図22は足入力ユニットで入力される動作と検出する角度の関係を説明する図である。図22(A)に、δEL>0が検出される状態を示す。図22(B)に、δXEL>0が検出される状態を示す。図22(C)に、δAZ>0が検出される状態を示す。
足入力ユニット431が計測する前後傾斜角、左右傾斜角、足回転角をδEL1、δXEL1、δAZ1とする。足入力ユニット432、433、434についても、δEL2、δXEL2、δAZ2、δEL3、δXEL3、δAZ3、δEL4、δXEL4、δAZ4と表現する。
足入力ユニット43jが計測する前後傾斜角δELj、左右傾斜角δXELj、足回転角δAZjは、ロボット1の駆動機構または回転軸のどれかに割り当てられて、ロボット1を駆動機構を駆動させる、あるいは回転軸を回転させる。
図23を参照して、遠隔操作装置3のソフトウェア構成を説明する。図23は、実施の形態1に係るロボット遠隔操作システムの機能構成を説明するブロック図である。制御演算装置60は、通信回線83を介してロボット1と接続される。制御演算装置60とロボット1は、通信回線83を介して互いに通信する。通信回線83により、制御演算装置60からロボット1を制御する制御信号が送られる。ロボット1からは、現場カメラ4が撮影した画像や音声などが送られる。通信回線83は、有線回線でも無線回線でもよく、公衆回線でも専用回線でもよい。通信回線83には、用途に合わせた通信回線を使用する。ロボット1と制御演算装置60との間の距離は、任意である。距離は、何千kmも離れていてもよいし、1mでもよい。ヘッドマウントディスプレイ2、足入力装置6および指示読取カメラ7A、7Bと制御演算装置60との間は、LAN84で結ぶ。この明細書における遠隔操作とは、遠隔で機械を操作する方法で機械を制御(操作)するという意味である。遠隔操作する際には、遠隔操作される機械に操作指示または制御信号を送信する。ロボット1と制御演算装置60の実際の距離は、遠隔でなくてもよい。足入力装置6と制御演算装置60とを、LAN10を介さないで接続してもよい。
ロボット1は、現場カメラ4、胴体支持アーム12などの骨格部71、アーム接続部14などの関節部72、車両部9、モータ73、アクチュエータ74、制御部75および通信部76を、主に有して構成される。
骨格部71は、胴体支持アーム12、胴下部21、胴上部20、肩フレーム19、上腕部24、前腕部25および手部26である。関節部72は、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23、肩フレーム回転部22、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29である。
モータ73は、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23および肩フレーム回転部22を、回転および静止させる動力を発生させる。アクチュエータ74は、腕部10の関節部を回転および静止させる動力を発生させる。アクチュエータ74は、肩主アクチュエータ30などである。
遠隔操作されるロボットにおいて、遠隔操作される部位を被操作部と呼ぶ。ロボット1では、アーム接続部14、胴体接続部13、胴体交差回転部23、肩フレーム回転部22、肩関節部27、肘関節部28、手首関節部29および手部26が被操作部になる。操作指示により遠隔操作されるロボットの1の部位を、操作対象部と呼ぶ。操作指示は、足入力ユニット43などの入力ユニットまたは入力装置により入力される。操作対象部は、被操作部の少なくとも一部である。
制御部75は、制御演算装置60からの制御信号を基にモータ73およびアクチュエータ74を制御する。制御部75は、内部に記憶部77を有する。記憶部77は、制御信号などを記憶する。通信部76は、制御演算装置60と双方向に通信する。
制御演算装置60は、通信部61、構造データ記憶部62、状態データ記憶部63、操作指示生成部64、足入力装置インターフェイス部65、音声処理部66および制御信号生成部67を主に有して構成される。足入力装置インターフェイス部は、図および以後の説明では、足入力装置IF部と表記する。通信部61は、ロボット1などと通信する。構造データ記憶部62は、ロボット1を遠隔操作中には変化しないデータを記憶する。状態データ記憶部63は、現場カメラ4や指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像や、操作指示データ(後で説明する)などの変化するデータを記憶する。構造データ記憶部62には、指示動作対応データ65Pを記憶しておく。指示動作対応データ65Pは、足入力装置6で検出する角度と、ロボット1の動作の対応を表現するデータである。
操作指示データ生成部64は、指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像を画像解析して操作指示データを生成する。生成される操作指示データは、腕部10がすべき動作を指示するデータである。足入力装置IF部65は、足入力装置6が検出する前後傾斜角などを受信して、状態データ記憶部63に書き込む。制御信号生成部67は、状態データ記憶部63を参照して操作指示データおよび前後傾斜角などに基づき制御信号を生成する。
構造データ記憶部62および状態データ記憶部63は、ハードウェアとしてはメモリ部82に対応する。通信部61、操作指示データ生成部64、足入力装置IF部65、音声処理部66および制御信号生成部67は、メモリ部82に記憶した専用プログラムをCPU81で実行させることにより実現する。
操作指示データ生成部64は、指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像からオペレータ90の腕の姿勢を読取る。腕の姿勢とは、特徴点の互いの位置関係を意味する。特徴点は、胴体、肩、肘、手首などに設定される。操作指示データ生成部64は、2個の画像から特徴点を抽出し、オペレータ90の体格から決まる特徴点間の距離も利用して、特徴点の3次元位置を決める。
操作指示データ生成部64は、特徴点の3次元位置から関節部72の接続角度を決めて、操作指示データとする。操作指示データは、状態データ記憶部63に書き込まれる。構造データ記憶部62は、オペレータ90の体格に関するデータ、指示読取カメラ7A、7Bの位置や撮影方向などを記憶する。なお、指示読取カメラ7A、7Bの撮影方向を変更できる場合は、その撮影方向は状態データ記憶部63に記憶する。制御信号生成部67は、構造データ記憶部62および状態データ記憶部63を参照して制御信号を生成する。
現場カメラ4が肩フレーム19に対して回転可能な場合は、指示読取カメラ7A、7Bがオペレータ90の頭部を含んで撮影し、頭部が向く方向に現場カメラ4を向ける操作指示データを生成する。その場合には、現場カメラ4は、頭部を含んでオペレータ90を撮影する操作者撮影カメラである。操作指示データ生成部64は、指示読取カメラ7A、7Bで撮影された操作者画像を画像解析して、オペレータ90の頭部が向く方向である頭部指向方向を抽出する画像解析部である。制御信号生成部67は、頭部指向方向に現場カメラ4が向くようにカメラ接続部を制御する制御信号を生成するカメラ制御部である。
足入力装置IF部65は、足入力装置6が検出する前後傾斜角などを、決められた周期で取り込んで状態データ記憶部63に書き込む。制御信号生成部67は、足入力装置IF部65が書き込んだデータから構造データ記憶部62を参照して制御信号を生成する。足入力装置6が検出する前後傾斜角などは、制御信号生成部67に入力される。制御信号生成部67は、状態データ記憶部63に格納された前後傾斜角などに基づき制御信号を生成する。
足入力装置6が検出する角度情報とロボット1の各部の動作との対応は、以下のようになる。中央の二つの足入力ユニット432、433により、車両部9を駆動するように遠隔操作する。両端の2つの足入力ユニット431、434により、アーム接続部14、胴体接続部13、肩フレーム回転部22、胴体交差回転部23を遠隔操作する。アーム接続部14、胴体接続部14、肩フレーム回転部22および胴体交差回転部23を、胴体回転駆動部と呼ぶ。足入力ユニット431により、アーム接続部14および肩フレーム回転部22を遠隔操作する操作指示を入力する。足入力ユニット434により、胴体接続部13および胴体交差回転部23を遠隔操作する操作指示を入力する。肩フレーム回転部22は、姿勢変更部の1回転自由度を変更する。胴体交差回転部23は、姿勢変更部の他の1回転自由度を変更する。
(ア)δEL1により、胴体接続部13の胴体傾斜角を変更する。つまり、δEL1により、EL2軸すなわち胴体傾斜回転軸の回りの回転角度であるθEL2を変更する。δEL1=0である場合に、θEL2=0であり、胴下部21と胴体支持アーム12とが同じ方向を向く。δEL1>0である場合に、θEL2<0である。θEL1<90度、かつθEL2<0である場合に、胴下部21が胴体支持アーム12よりも下に位置する。δEL1<0である場合に、θEL2>0である。θEL1<90度、かつθEL2>0である場合に、胴下部21が胴体支持アーム12よりも上に位置する。δEL1とθEL2とが比例する。δEL1とθEL2との間の比例係数は、適切に決める。他の角度に関しても、比例係数は適切に決める。
(イ)δAZ1により、胴体接続部13の胴体回転角を変更する。つまり、δAZ1により、AZ2軸すなわち胴体回転軸の回りの回転角度であるθAZ2を変更する。δAZ1=0である場合に、θAZ2=0である。θAZ2=0である場合に、胴上部20が存在する側から見て、胴下部21の正面方向が、胴体接続部13が有する上部円柱13Aの正面方向と同じ方向になる。δAZ1>0である場合に、θAZ2>0である。θAZ2>0である場合に、胴下部21の正面方向が、胴体接続部13が有する上部円柱13Aの正面方向よりも右側に位置する。δAZ1<0である場合に、θAZ2<0である。θAZ2<0である場合に、胴下部21の正面方向が、胴体接続部13が有する上部円柱13Aの正面方向よりも左側に位置する。δAZ1とθAZ2とが比例する。
(ウ)δXEL1により、肩フレーム19と胴上部20との間の角度(肩フレーム回転角)を変更する。つまり、δXEL1により、EL3軸すなわち肩フレーム回転軸の回りの回転角度であるθEL3を変更する。δXEL1とθEL3とが比例する。δXEL1=0である場合に、θEL3=0である。θEL3=0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準状態における基準角度である。基準状態では腕部10が鉛直下向きに向いており、肩フレーム19と胴上部20との間の基準角度は、腕部10を鉛直下向きに向ける角度である。δXEL1>0である場合に、θEL3>0である。θEL3>0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準角度よりも小さい。基準角度よりも小さい場合に、腕部10が胴上部20よりも前側に存在する。δXEL1<0である場合に、θEL3<0である。θEL3<0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準角度よりも大きい。基準角度よりも大きい場合に、腕部10が胴上部20よりも後ろ側に存在する。
(エ)δEL2により、左のクローラ移動部15Lの前進または停止または後進を遠隔操作する。δEL2=0である場合に、クローラ移動部15Lの車軸16Lにブレーキがかけられて、クローラ17Lは回転しない。δEL2>0である場合に、|δEL2|に応じた速度で、クローラ17Lが前進する方向に回転する。δEL2<0である場合に、|δEL2|に応じた速度で、クローラ17Lが後進する方向に回転する。
δAZ2およびδXEL2は、ロボット1を遠隔操作する上で使用しない。
(オ)δEL3により、右のクローラ移動部15Rの前進または停止または後進を遠隔操作する。δEL3=0である場合に、右のクローラ移動部15Rの車軸16Rにブレーキがかけられて、クローラ17Rは回転しない。δEL3>0である場合に、|δEL3|に応じた速度で、クローラ17Rが前進する方向に回転する。δEL3<0である場合に、|δEL3|に応じた速度で、クローラ17Rが後進する方向に回転する。
δAZ3およびδXEL3は、ロボット1を遠隔操作する上で使用しない。
(カ)δEL4により、胴体支持アーム12の仰角を変更する。つまり、δEL4により、EL1軸すなわち仰角回転軸の回りの回転角度であるθEL1を変更する。δEL4と90−θEL1とが比例する。δEL4=0である場合に、θEL1=90度である。θEL1=90度である場合に、胴体支持アーム12は、車両部9の上面に垂直である。δEL4>0である場合に、θEL1<90度であり、胴体支持アーム12は前方に傾く。δEL4<0である場合に、θEL1>90度であり、胴体支持アーム12は後方に傾く。
(キ)δAZ4により、胴体支持アーム12の方位角を変更する。つまり、δAZ4により、AZ1軸すなわち方位回転軸の回りの回転角度であるθAZ1を変更する。δAZ4とθAZ1とが比例する。δAZ4=0である場合に、θAZ1=0であり、胴体支持アーム12が車両部9の真正面を向く。|θAZ1|<90度である場合に、胴体支持アーム12は、車両部9の前方に向いている。δAZ4>0である場合に、θAZ1>0であり、胴体支持アーム12は右に回転する。δAZ4<0である場合に、θAZ1<0であり、胴体支持アーム12は左に回転する。
(ク)δXEL4により、胴体交差回転部23において胴上部20の胴下部21に対する回転角度(胴体交差回転角)を変更する。つまり、δXEL4により、XEL軸すなわち胴体交差回転軸の回りの回転角度であるθXELを変更する。δXEL4とθXELとが比例する。δXEL4=0である場合に、θXEL=0である。θXEL=0である場合に、胴上部20と胴下部21が1直線上に延在し、肩フレーム19と胴下部21とは直交する。δXEL4>0である場合に、θXEL>0である。θXEL>0である場合に、胴体部11を前から見て、胴上部20が胴下部21よりも右側に位置する。肩フレーム19の右側が下がる。δXEL4<0である場合に、θXEL<0である。θXEL<0である場合に、胴体部11を前から見て、胴上部20が胴下部21よりも左側に位置する。肩フレーム19の左側が下がる。
この実施の形態1では、足入力ユニット431は、胴体接続部13を操作対象部とする胴体操作ユニットである。足入力ユニット431は、姿勢変更部の1回転自由度も操作対象部に含む。足入力ユニット432は、クローラ移動部15Lを操作対象部とする左走行部操作ユニットである。足入力ユニット433は、クローラ移動部15Rを操作対象部とする右走行部操作ユニットである。足入力ユニット434は、アーム接続部14を操作対象部とするアーム操作ユニットである。足入力ユニット434は、姿勢変更部の他の1回転自由度も操作対象部に含む。
上で説明した足入力装置6で検出する角度とロボット1の動作との対応は、指示動作対応データ65Pとして構造データ記憶部62に記憶されている。指示動作対応データ65Pには、比例係数も記憶する。指示動作対応データ65Pを変更することで、ロボット1の制御方法を容易に変更することができる。図24に、実施の形態1での指示動作対応データ65Pを示す。比例係数は、足入力ユニット43で検出する角度範囲と、操作対象部の制御範囲に応じて決める。足入力ユニット43で検出する角度と、制御される角度または速度の間の関係を、折れ線や2次関数などで近似してもよい。
足入力装置6によるクローラ移動部15L、15Rの遠隔操作方法を説明する。車両部9を前進させる場合には、オペレータ90は左足を足入力ユニット432に載せ、右足を足入力ユニット433に載せる。両足をつま先側が低くなるように踏み込む。両足でつま先側の高さが同じように低くなるようにする。そうすることで、クローラ移動部15L、15Rが同じ速度で前進する方向に移動して、車両部9は前進する。かかと側が低くなるように、両足で同じように踏み込むと、クローラ移動部15L、15Rが同じ速度で後進する方向に移動して、車両部9は後進する。
車両部9にゆるやかな左回転をさせる場合は、右足と左足でつま先側が低くなるように踏み込むが、右足が左足よりもつま先がより低くなるようにする。クローラ移動部15Rが、クローラ移動部15Lよりも速く前進するので、車両部9は前進しながら左に回転する。回転の速さは、クローラ移動部15R、15Lの速度差が大きいほど速くなる。
左回転する場合で説明したが、右回転させる場合は、左足の踏み込み量を大きくすればよい。
前後移動なしで、その場所で車両部9を左回転させる場合には、右足はつま先が低くなるように踏み込み、左足はかかとが低くなるように踏み込む。そうすることで、クローラ移動部15Rは前進し、クローラ移動部15Lは後進する。その結果、車両部9は、前後移動なしで左回転する。前後移動なしで車両部9を右回転させることもできる。
足入力装置6により、胴体回転駆動部を遠隔操作する方法を説明する。車両部9を停止または定速で移動させている状態で、左足で足入力ユニット431を操作して、胴体接続部13および肩フレーム回転部22を遠隔操作する。右足で足入力ユニット434を操作して、アーム接続部14と胴体交差回転部23を遠隔操作する。
左足を足入力ユニット431の足載置部44に載せて、つま先が低くなるように踏み込むと、胴体部11が胴体支持アーム12に対して前側に傾斜する。左足をかかとが低くなるように踏み込むと、胴体部11が胴体支持アーム12に対して後側に傾斜する。左足のつま先を左側に回転させると、胴体部11が胴体回転軸の回りに胴体支持アーム12に対して左へ回転する。つま先を右側に回転させると、胴体部11が胴体支持アーム12に対して右へ回転する。左足を左側の側面が低くなるように傾けると、肩フレーム回転部22が胴上部20に対して上側に回転する。左足を右側の側面が低くなるように傾けると、肩フレーム回転部22が胴上部20に対して下側に回転する。
左足の前後方向の傾斜角度と足回転角の変化と、胴体部11の胴体支持アーム12に対する動きが、左足を動かした方向に胴体部11が動くような関係(動きの相似関係と呼ぶ)にあるので、オペレータ90が操作しやすい。
右足を足入力ユニット434の足載置部44に載せて、つま先が低くなるように踏み込むと、胴体支持アーム12が車両部9に対して前側に傾斜する。右足をかかとが低くなるように踏み込むと、胴体支持アーム12が車両部9に対して後側に傾斜する。右足のつま先を左側に回転させると、胴体支持アーム12が車両部9に対して左へ回転する。つま先を右側に回転させると、胴体支持アーム12が車両部9に対して右へ回転する。右足を左側の側面が低くなるように傾けると、胴体交差回転部23が左の腕部10が低くなるように回転する。右足を右側の側面が低くなるように傾けると、胴体交差回転部23が右の腕部10が低くなるように回転する。
右足の前後方向の傾斜角度と足回転角の変化と、胴体支持アーム12の車両部に対する動きが、動きの相似関係にあるので、オペレータ90が操作しやすい。
左足の左右方向の傾斜角度の変化により胴体部11を回転させてもよい。同様に、右足左右方向の傾斜角度の変化により胴体支持アーム12を回転させてもよい。左足で胴体支持アーム12を操作し、右足で胴体部11を操作してもよい。
音声処理部66は、音声認識部68と音声制御部69とを有する。音声認識部68は、オペレータ90の音声から予め決められた特定の語句を抽出する。オペレータ90の音声は、マイク8から入力される。音声制御部69は、抽出した語句に応じた操作指示データを生成する。音声制御部69が生成した操作指示データは、状態データ記憶部63に書き込まれる。制御信号生成部67は、状態データ記憶部63を参照して操作指示データに応じた制御信号を生成する。
特定の語句は、例えば、ストップ、右、左、上、下、キープ、キープ解除などである。語句と、語句から生成される操作指示データの対応は、例えば、以下のようになる。
ストップからは、ロボット1の動作を停止させる操作指示データが生成される。右、左、上、下からは、手部26を決められた移動距離だけ右、左、上、下の指示された方向に移動させる操作指示データが生成される。キープからは、指示読取カメラ7A、7Bからの操作指示の読取を停止して、腕部10を静止させる操作指示データが生成される。キープ解除からは、指示読取カメラ7A、7Bからの操作指示の読取を開始する操作指示データが生成される。
右、左、上、下などの移動させる語句は、移動対象を指示する語句とともに使用してもよい。その場合には、移動対象を指示する語句も、音声認識できる特定の語句に含める。移動対象を指示する語句は、例えば、右手、左手、右肘、左肘などである。
音声認識部68は、上記とは異なる語句を認識できたり、上記の語句の中で認識しない語句があったりしてもよい。音声制御部69は、音声認識部68が抽出した語句に応じてロボット1を停止または動作させることができれば、どのようなものでもよい。
図示していないが、電動車イス5には、その移動を制御する操縦桿などが設けられている。オペレータ90は電動車イス5の操縦を開始する前には、キープと発声する。そうすると、腕部10がその時点の状態を保持して、オペレータ90が腕を動かしてもロボット1Cの腕部10は動かなくなる。その状態で、オペレータ90は電動車イス5を操縦桿などで操縦して所望の位置へ移動させる。その後、オペレータ90が腕部10を操作する姿勢を取った後に、キープ解除と発声する。オペレータ90は、腕部10の遠隔操作を再開できる。電動車イス5は、オペレータ90を乗せて移動する操作者移動部である。
動作を説明する。オペレータ90が電動車イス5に座り、ロボット1の遠隔操作を開始する。オペレータ90が両腕を動かすと、指示読取カメラ7A、7Bが両腕の動きを読み取り、ロボット1の2本の腕部が、オペレータ90の両腕の動きに応じて移動する。オペレータ90は、両腕を動かしながら、足を使って足入力装置6から車両部9、アーム接続部14、胴体接続部13、肩フレーム回転部22および胴体交差回転部23を遠隔操作できる。
足入力装置6により車両部9を遠隔操作して、胴体部11および腕部10を作業する位置に移動させる。足入力装置6により、胴体回転駆動部を遠隔操作して、胴体部11および腕部10を作業に適した位置に配置し、作業に適した姿勢を取らせる。胴体回転駆動部および腕部10を遠隔操作して、ロボット1を遠隔操作して作業をする。ロボット1および遠隔操作装置3では、このような遠隔操作を1人のオペレータ90で実施できる。1人でのロボットの遠隔操作を可能とすることで、省人化の効果が大きい。
足入力装置6を備えない遠隔操作システムでは、ロボット1を遠隔操作するには、2人のオペレータ90が必要である。例えば、ロボット1の腕部および手部を1人が遠隔操作し、車両部9および胴体部11などをもう1人が遠隔操作する。足入力装置6を備えない遠隔操作システムにおいて1人で遠隔操作する場合には、車両部で移動している状態では、腕部を使うことができないなどの操作上の制約が非常に多くなる。
これに対して、遠隔操作装置3を使用する場合には、ロボット1を1人のオペレータで制約を少なくして遠隔操作できる。今まで2人のオペレータが必要だった操作を、1人で実行できる。その結果、人員削減、省力化、操作自由度の向上などのメリットが生まれる。2人作業の場合は、2人の操作のタイミング合わせなどが難しい場合があり、ロボットを遠隔操作する上で、オペレータの負担が大きい。本開示に係るロボット遠隔操作システムによれば、1人でロボットを遠隔操作できる。1人作業となることで、オペレータは自分のペースで作業できるようになり、作業品質が向上することが期待される。遠隔操作システムを1つに統合したことで、システムが簡素化されて、製造コストも低減できる。
特に、対象物を把持した状態で、クローラを有する車両部で移動させたい場合など、ロボット側と車両部側の遠隔操作のタイミングを、1人のオペレータが適切に決めることができる。その結果、さまざまな遠隔操作の作業環境において、オペレータの負担を少なくして効率的に遠隔操作ができるようになる。
本開示に係る遠隔操作システムでは、予期しない事象が発生する状況でも、その状況に適した動作をロボットが取れるように、オペレータの判断により高度な遠隔操作が可能である。人工知能技術を応用した自律型のロボットでは対応できないような多様な環境において、本開示に係るロボット遠隔操作システムによれば、オペレータが非常に臨機応変な作業指示ができるようになる。
オペレータ90は、電動車イス5に着座した状態で足および手を使用して、ロボットを遠隔操作する。状況に応じて、オペレータ自身が移動した方が円滑な操縦が可能であると想定される場合には、入力装置からオペレータが離れることなく、自由に場所を移動しながら、遠隔操作できる。例えば、ロボットとの位置関係、距離関係などを補正しながら、ロボットを遠隔操作できる。また、無線の電波状態の変化などに応じて、電波状態がよい位置にオペレータが移動することができる。限られたエリアの中に制約されることなく、自由に移動しながら、ロボットの遠隔操作が可能となる。従来の遠隔操作システムでは、オペレータが自由に動き回ることはできない。オペレータが移動したことを把握するための位置センサーの検出範囲内でだけ、オペレータが移動することを許容している。
オペレータ90はヘッドマウントディスプレイ2を装着して、現場カメラ4が撮影する画像を見ながらロボット1を遠隔操作できる。現場カメラ4が撮影する画像は、ロボット1の位置にオペレータ90が居る場合に、オペレータ90が見る画像である。現場の状況を視覚的に把握しながら、ロボット1を遠隔操作できる。現場の音声をオペレータ90が聞くことができ、現場の状況をより正確に、オペレータ90が把握できる。
音声によりロボット1を遠隔操作することもでき、足や手の動きでは入力しにくい微小な動きなどもロボット1にさせることができる。また、音声により、足や手の動きによる遠隔操作の一時停止などもできる。つまり、音声によってもロボットを遠隔操作できるようにしているので、オペレータの意図通りの操作をロボットにさせることがより容易になる場合がある。
本開示に係るロボットの遠隔操作システムの適用先は、非常に多岐にわたる。例えば、以下が考えられる。
・人命に係る危険作業において人間の代替作業を必要とされる分野。
・省人化を要求される分野。介護分野や農業分野など。
・テレワークの実現を図る遠隔操作事業分野。
例えば、以下のような作業に使用することが期待される。
・地雷、爆弾などを処理する作業。
・テロ対応時の人命に関わる危険な作業。
・事故が発生した原子力発電所での作業。
・化学物質等での長時間作業が不可能な作業環境での作業。塗装作業など。
上に例を示したどの作業も、ロボットだけでは対応できないような作業である。ロボットが人工知能を有していたとしても、ロボットだけでは対応することは難しい。これらの作業では、作業内容を予め決めることができない。予測不可能な事態が発生し、臨機応変な判断が必要となる作業である。そのような作業では、人の判断を利用する遠隔操作が必要である。両手を使用する細かい作業まで、人がロボットを遠隔操作できるようになれば、社会的に非常に有益である。本開示に係るロボットの遠隔操作システムは、両手を使用する細かい作業まで、人がロボットを遠隔操作できるようにするものである。
また、重要施設などを警備する分野でも、ロボットの遠隔操作システムは活用できる。無人通信局での、24時間警備などに適用できる。必要な場合に、人によりロボットを遠隔操作することで、例えば、監視、警備業務での業務の質を向上させることができる。
足入力装置6から入力する動作と、ロボット1の動きとの対応関係は変更してもよい。例えば、4個の中の両側の足入力ユニット431、434で車両部9を遠隔操作してもよい。足入力ユニット431でアーム接続部14を操作して、足入力ユニット434で胴体接続部13を操作してもよい。足入力ユニット431で胴体交差回転部23を操作し、足入力ユニット434で肩フレーム回転部22を操作してもよい。足入力ユニット431で姿勢変更部の1回転自由度を変更するように遠隔操作し、足入力ユニット434で姿勢変更部の1回転自由度を変更するように遠隔操作してもよい。姿勢変更部の少なくとも1回転自由度を、足入力ユニット431、434とは異なる足入力ユニットで遠隔操作するようにしてもよい。
足入力ユニットは、前後傾斜角、左右傾斜角、足回転角のどれか1個または2個だけを検出するものを使用してもよい。足入力ユニットを使用する遠隔操作装置は、ロボット以外を遠隔操作するために使用してもよい。その場合には、操作対象を制御する制御装置に、足入力ユニットが検出する角度情報を入力すればよい。足入力ユニットが検出する角度情報とは、前後傾斜角、左右傾斜角および足回転角の何れか少なくとも1つである。
前後傾斜角および左右傾斜角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を前後方向に傾斜可能に、かつ左右方向に傾斜可能に支持する。前後傾斜角および足回転角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を前後方向に傾斜可能に、かつ足交差回転軸の回りに回転可能に支持する。左右傾斜角および足回転角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を左右方向に傾斜可能に、かつ足交差回転軸の回りに回転可能に支持する。
前後傾斜角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を前後方向に傾斜可能に支持する。左右傾斜角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を左右方向に傾斜可能に支持する。足回転角を検出する足入力ユニットでは、回転支持部は足載置部を足交差回転軸の回りに回転可能に支持する。
前後傾斜角、左右傾斜角および足回転角を検出できる足入力ユニットを使用し、検出しない角度情報に関しては傾斜または回転しないように、回転支持部にロックをかけてもよい。検出しない角度情報に関しては傾斜または回転できる構造を有さず、前後傾斜角、左右傾斜角および足回転角の中の1個または2個の角度情報を検出できる構造を有する足入力ユニットを使用してもよい。2個の角度情報を検出できる足入力ユニットを使用して、検出しない角度情報に関しては傾斜または回転できないようにロックをかけてもよい。
足入力ユニットは、3個以下でも5個以上でもよい。遠隔操作に必要な個数の足入力ユニットを、備えればよい。遠隔操作に必要な足入力ユニットの個数は、ロボット1の動きの中でオペレータが足で遠隔操作する部位の個数と、1個の足入力ユニットで遠隔操作できる部位の数などに応じて決めればよい。足入力ユニットの配置は横1列でなくてもよく、2列にしたり、1列でも中央を前に出したり、後ろに配置したりしてもよい。図25に、4個の足入力ユニットの配置の変形例を示す。図25(A)は、2個を2列の正方形状に配置した場合である。図25(B)は、両端の2個の足入力ユニットを前に出した場合である。図25(C)は、中央の2個の足入力ユニットを前に出した場合である。図25に示す以外の配置で、足入力ユニットを配置してもよい。
ロボット1が有する胴体接続部、アーム接続部、車両部、胴体交差回転部および肩フレーム回転部を足入力装置で遠隔操作したが、一部は足入力装置による遠隔操作の対象から除外してもよい。胴体接続部、アーム接続部、車両部および姿勢変更部の何れか少なくとも一つを含む被操作部を足入力装置で遠隔操作すればよい。なお、姿勢変更部は、胴体交差回転部および肩フレーム回転部を有する。足入力装置が有する足入力ユニットは、被操作部の少なくとも一部である操作対象部を遠隔操作する。足入力ユニットの操作対象部をオペレータが変更する操作対象切替部を備えるようにしてもよい。姿勢変更部を有しないロボットを足入力装置で遠隔操作する場合には、胴体接続部、アーム接続部および車両部の何れか少なくとも一つを被操作部が含むことになる。
姿勢変更部は、胴体交差回転部および肩フレーム回転部のどちらか一方だけを有するものでもよい。ロボットは、姿勢変更部を備えなくてもよい。ロボットが姿勢変更部を備えない場合は、足入力装置が検出する角度信号に基づき遠隔操作される被操作部は、胴体接続部、アーム接続部および車両部の何れか少なくとも一つを含むことになる。ロボットは、少なくとも2本の腕部、肩フレーム、胴本体部および肩フレーム回転部を有し、車両部を有さないようにしてもよい。車両部を有さないロボットでは、胴本体部の下側に存在して胴本体部が接続する部材を胴基部と呼ぶ。腕部、肩フレーム、胴本体部、胴体交差回転部および肩フレーム回転部の少なくとも一つは、実施の形態1に示す構造とは異なる構造を有するものでもよい。
ロボットが通常の道路を移動する場合には、車両部はクローラを使用しない通常の自動車でもよい。車両部は、車輪を使用して車輪の回転により移動する車両であればよい。
遠隔操作装置は、電動車イスではなく、電動以外の動力源による車イス、人が動かす車イスに搭載されてもよい。車イスではなく、オープンカーなどの車両に搭載してもよい。電動車イスとは異なる車両も、オペレータを乗せて移動する操作者移動部である。遠隔操作装置は、移動する手段を備えないイスに搭載してもよい。
遠隔操作装置は、腕部を遠隔操作する機能を有しなくてもよい。足入力装置を有して、オペレータが足でロボットを遠隔操作するようにしてもよい。
腕部を遠隔操作するために、オペレータが腕部に装着するような入力装置を使用してもよい。また、他の方法で腕部を遠隔操作する操作指示を、オペレータが入力するようにしてもよい。
以上のことは、他の実施の形態でも当てはまる。
実施の形態2.
実施の形態2は、ロボット1が大きな段差を乗り越えて移動できるように、クローラの前側にクローラに対する角度が変更可能なサブクローラを備えるように、実施の形態1を変更した場合である。図26から図30を参照して、実施の形態2に係るロボット1Aの構造を説明する。図26から図30は、ロボット1Aの全体の斜視図、正面図、右側面図、背面図および平面図である。図26から図30について、実施の形態1の場合の図2から図7と異なる点を説明する。
車両部9Aは、左右のクローラ移動部15の外側かつ前側にそれぞれ1個のサブクローラ移動部37を有する。サブクローラ移動部37は、隣接するクローラ移動部15と連動して停止および移動する副走行部である。サブクローラ移動部37は、車輪38、サブクローラ39およびサブクローラ角度変更部40を有する。車輪38は、少なくとも2個の車輪軸により駆動される。サブクローラ移動部37の1個の車輪軸は、クローラ移動部15が有する車輪16と共通である。残りの車輪軸は、車輪38だけを駆動する。サブクローラ39は、車輪38にかけ渡される。サブクローラ39も、クローラ17と同様に、金属製の板がつなげられた輪状である。車輪38が回転すると、サブクローラ39が回転する。サブクローラ角度変更部40は、サブクローラ39のクローラ17に対する上下方向の角度を変更する。
左のサブクローラ移動部37Lおよびクローラ移動部15Lは、連動して動く。連動して動くとは、車輪38Lが車輪16Lと連動して停止および回転することである。右のサブクローラ移動部37Rおよびクローラ移動部15Rは、連動して動く。連動して動くとは、車輪38Rが車輪16Rと連動して停止および回転することである。クローラ移動部15Lおよびサブクローラ移動部37Lと、クローラ移動部15Rおよびサブクローラ移動部37Rとは、互いに独立に駆動できる。サブクローラ角度変更部40Lとサブクローラ角度変更部40Rは、互いに独立に駆動できる。サブクローラ角度変更部40Lは、サブクローラ39Lのクローラ17Lに対する上下方向の角度を変更する左副走行部角度変更部である。サブクローラ39Lのクローラ17Lに対する上下方向の角度は、サブクローラ移動部37Lのクローラ移動部15Lに対する上下方向の角度である。サブクローラ角度変更部40Rは、サブクローラ39Rのクローラ17Rに対する上下方向の角度を変更する右副走行部角度変更部である。サブクローラ39Rのクローラ17Rに対する上下方向の角度は、サブクローラ移動部37Rのクローラ移動部15Rに対する上下方向の角度である。サブクローラ39Lのクローラ17Lに対する角度とサブクローラ39Rのクローラ17Rに対する角度は、異なる角度にできる。
車両部9Aが大きな段差を登る際には、サブクローラ39をクローラ17に対して上げる。そうすることで、段差の上面にサブクローラ39が接触して、サブクローラ39が段差の上で前進し、クローラ17が段差の下側で前進して、車両部9Aが段差を登ることができる。車両部9Aが大きな段差を降りる際には、サブクローラ39をクローラ17に対して下げる。そうすることで、段差の下側の面にサブクローラ39が接触して、サブクローラ39が段差の下側の面で前進し、クローラ17が段差の上で前進して、車両部9Aが段差を降りることができる。なお、車両部9Aを後進させて段差の登り降りができるように、クローラ17の後側にもサブクローラ移動部を設けてもよい。サブクローラ移動部はクローラ移動部の少なくとも前側に設ければよい。
図31を参照して、ロボット遠隔操作システム100Aが有する遠隔操作装置3Aのソフトウェア構成を説明する。図31は、実施の形態2に係るロボット遠隔操作システムの機能構成を説明するブロック図である。図31について、実施の形態1の場合の図23とは異なる点を説明する。
ロボット1Aは、サブクローラ移動部37も有する車両部9Aを有する。足入力装置6Aが有する足入力ユニット432、433では、前後傾斜角および足回転角をロボット1Aの遠隔操作に使用し、左右傾斜角をロボット1Aの遠隔操作に使用しない。足入力ユニット432、433では、左右に傾斜しないようにストッパを付加している。足入力ユニット432、433を、前後に傾斜かつ回転ができ、左右には傾斜できない構造にしてもよい。
制御演算装置60Aは、構造データ記憶部62A、状態データ記憶部63A、足入力装置IF部65A、音声処理部66Aおよび制御信号生成部67Aを変更している。構造データ記憶部62Aは、サブクローラ駆動部37を含むロボット1Aの構造データと、指示動作対応データ65Qを記憶する。状態データ記憶部63Aは、サブクローラ駆動部37に対する操作指示なども記憶する。足入力装置IF部65Aは、足入力ユニット432、433から入力されるδAZ2、δAZ3も処理するように変更する。制御信号生成部67Aは、サブクローラ駆動部37への制御信号も生成する。音声処理部66Aが有する音声制御部69Aは、サブクローラ駆動部37への操作指示データも作成する。
足入力装置6Aが検出する角度情報とロボット1Aの各部の動作との対応は、図32に示すようになる。図32には、指示動作対応データ65Qの内容を示す。中央の二つの足入力ユニット432、433により、車両部9Aを駆動するように遠隔操作する。両端の2つの足入力ユニット431、434でのロボット1Aの制御方法は、実施の形態1の場合と同じである。
足入力ユニット432、433により入力されるδEL2、δAZ2、δEL3、δAZ3に対するロボット1Aの動作は、以下のようになる。
(エ2)δEL2により、左のクローラ移動部15Lおよびサブクローラ移動部37Lの前進または停止または後進を遠隔操作する。δEL2=0である場合に、クローラ移動部15Lの車軸16Lおよびサブクローラ移動部37Lの車軸38Lにブレーキがかけられて、クローラ17Lおよびサブクローラ39Lは回転しない。δEL2>0である場合に、|δEL2|に応じた速度で、クローラ17Lおよびサブクローラ39Lが前進する方向に回転する。δEL2<0である場合に、|δEL2|に応じた速度で、クローラ17Lおよびサブクローラ39Lが後進する方向に回転する。
(ケ)δAZ2により、左のサブクローラ角度変更部40Lを遠隔操作する。δAZ2=0である場合に、サブクローラ39Lの下面がクローラ17Lの下面と同一平面になるように、サブクローラ角度変更部40Lを遠隔操作する。地面の凸凹により、クローラ17Lおよびサブクローラ39Lの下面の一部が平面から外れる場合も、クローラ17Lの下面とサブクローラ39Lの下面とが同一平面にあるとする。右のクローラ17Rおよびサブクローラ39Rに関しても同様である。δAZ2>0である場合に、|δAZ2|に応じた角度で、サブクローラ39Lの下面がクローラ17Lの下面よりも上に位置するように、サブクローラ角度変更部40Lを遠隔操作する。δAZ2<0である場合に、|δAZ2|に応じた角度で、サブクローラ39Lの下面がクローラ17Lの下面よりも下に位置するように、サブクローラ角度変更部40Lを遠隔操作する。
(オ2)δEL3により、右のクローラ移動部15Rおよびサブクローラ移動部37Rの前進または停止または後進を遠隔操作する。δEL3=0である場合に、クローラ移動部15Rの車軸16Rおよびサブクローラ移動部37Rの車軸38Rにブレーキがかけられて、クローラ17Rおよびサブクローラ39Rは回転しない。δEL3>0である場合に、|δEL3|に応じた速度で、クローラ17Rおよびサブクローラ39Rが前進する方向に回転する。δEL3<0である場合に、|δEL3|に応じた速度で、クローラ17Rおよびサブクローラ39Rが後進する方向に回転する。
(コ)δAZ3により、右のサブクローラ角度変更部40Rを遠隔操作する。δAZ3=0である場合に、サブクローラ39Rの下面がクローラ17Rの下面と同一平面になるように、サブクローラ角度変更部40Rを遠隔操作する。δAZ3>0である場合に、|δAZ3|に応じた角度で、サブクローラ39Rの下面がクローラ17Rの下面よりも上に位置するように、サブクローラ角度変更部40Rを遠隔操作する。δAZ3<0である場合に、|δAZ3|に応じた角度で、サブクローラ39Rの下面がクローラ17Rの下面よりも下に位置するように、サブクローラ角度変更部40Rを遠隔操作する。
この実施の形態2では、足入力ユニット431は、胴体接続部13を操作対象部とする胴体操作ユニットである。足入力ユニット431は、姿勢変更部の1回転自由度も操作対象部に含む。足入力ユニット432は、クローラ移動部15L、サブクローラ移動部37Lおよびサブクローラ角度変更部40Lを操作対象部とする左走行部操作ユニットである。足入力ユニット433は、クローラ移動部15R、サブクローラ移動部37Rおよびサブクローラ角度変更部40Rを操作対象部とする右走行部操作ユニットである。足入力ユニット434は、アーム接続部14を操作対象部とするアーム操作ユニットである。足入力ユニット434は、姿勢変更部の他の1回転自由度も操作対象部に含む。
ロボット1Aは、遠隔操作装置3Aにより、実施の形態1の場合と同様に遠隔操作できる。サブクローラ駆動部37を有する場合でも、ロボット1Aを1人で遠隔操作できる。ロボット1Aはサブクローラ駆動部37も有するので、ロボット1が乗り越えられないような段差がある場所でも移動できる。左右のサブクローラ角度変更部40L、40Rを異なる角度を取らせることができるので、地面の凹凸の状態に応じてより適切に車両部9Aが移動できる。
左走行部操作ユニットである足入力ユニット432により、クローラ移動部15Lおよびサブクローラ移動部37Lの前後への移動と、サブクローラ39Lのクローラ17Lに対する角度を変更することに関して、遠隔操作ができる。右走行部操作ユニットである足入力ユニット433により、クローラ移動部15Rおよびサブクローラ移動部37Rの前後への移動と、サブクローラ39Rのクローラ17Rに対する角度を変更することに関して、遠隔操作ができる。左走行部操作ユニットを右走行部操作ユニットの左側に配置しているので、左走行部操作ユニットを左足で操作し、右走行部操作ユニットを右足で操作できる。そのため、左右のクローラ移動部15およびサブクローラ移動部37を容易に操作できる。
実施の形態3.
実施の形態3は、車両部9Aを1個の足入力ユニットで遠隔操作し、肩フレーム回転部および胴体交差回転部を1個の足入力ユニットで遠隔操作するように、実施の形態2を変更した場合である。実施の形態3でも、実施の形態2の場合と同じロボット1Aを、遠隔操作の対象とする。
図33を参照して、ロボット遠隔操作システム100Bが有する遠隔操作装置3Bのソフトウェア構成を説明する。図33は、実施の形態3に係るロボット遠隔操作システムの機能構成を説明するブロック図である。図33について、実施の形態2の場合の図31とは異なる点を説明する。
足入力装置6Bが有する足入力ユニット431により、胴体接続部13を遠隔操作する。足入力ユニット432により、肩フレーム回転部22および胴体交差回転部23を遠隔操作する。足入力ユニット433により、車両部9Aを遠隔操作する。足入力ユニット434により、アーム接続部14を遠隔操作する。足入力ユニット431、434では、前後傾斜角および足回転角をロボット1Aの遠隔操作に使用し、左右傾斜角は遠隔操作に使用しない。足入力ユニット432では、前後傾斜角および左右傾斜角をロボット1Aの遠隔操作に使用し、足回転角は遠隔操作に使用しない。足入力ユニット431、434では、左右に傾斜しないようにストッパを付加している。足入力ユニット432では、垂直回転軸48の回りに回転しないようにストッパを付加している。
足入力装置6Bが検出する角度情報とロボット1Aの各部の動作との対応は、以下のようになる。足入力ユニット431では、実施の形態1および2の場合と同様に、前後傾斜角δEL1により、胴体接続部13の胴体傾斜角を遠隔操作する。足回転角δAZ1により、胴体接続部13の胴体回転角を遠隔操作する。左右傾斜角δXEL1は、使用しない。
足入力ユニット432により、以下に示すように、肩フレーム回転部22および胴体交差回転部23を遠隔操作する。
(エ3)δEL2により、肩フレーム回転部22を遠隔操作する。つまり、δEL2により、EL3軸すなわち肩フレーム回転軸の回りの回転角度である肩フレーム回転角θEL3を変更する。δEL2とθEL3とが比例する。δEL2=0である場合に、θEL3=0である。θEL3=0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準状態における基準角度である。基準状態では腕部10が鉛直下向きに向いており、肩フレーム19と胴上部20との間の基準角度は、腕部10を鉛直下向きに向ける角度である。δEL2>0である場合に、θEL3>0である。θEL3>0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準角度よりも小さい。基準角度よりも小さい場合に、腕部10が胴上部20よりも前側に存在する。δEL2<0である場合に、θEL3<0である。θEL3<0である場合に、肩フレーム19と胴上部20との間の角度は、基準角度よりも大きい。基準角度よりも大きい場合に、腕部10が胴上部20よりも後ろ側に存在する。
(サ)δXEL2により、胴体交差回転部23を遠隔操作する。つまり、δXEL2により、XEL軸すなわち胴体交差回転軸の回りの回転角度である胴体交差回転角θXELを変更する。δXEL2とθXELとが比例する。δXEL2=0である場合に、θXEL=0である。θXEL=0である場合に、胴上部20と胴下部21とが1直線上に延在する。δXEL2>0である場合に、θXEL>0である。θXEL>0である場合に、胴体部11を前から見て、胴上部20が胴下部21よりも右側に位置する。肩フレーム19の右側が下がる。δXEL2<0である場合に、θXEL<0である。θXEL<0である場合に、胴体部11を前から見て、胴上部20が胴下部21よりも左側に位置する。肩フレーム19の左側が下がる。
足入力ユニット433により、車両部9Aを遠隔操作する。車両部9Aを遠隔操作するとは、クローラ移動部15L、15R、サブクローラ移動部37L、37Rおよびサブクローラ角度変更部40L、40Rを遠隔操作することである。足入力ユニット433の操作対象部は、クローラ移動部15L、15R、サブクローラ移動部37L、37Rおよびサブクローラ角度変更部40L、40Rである。
(オ3)δEL3により、車両部9Aの移動速度を遠隔操作する。車両部9Aの移動速度とは、クローラ移動部15L、15Rの回転速度の平均値CRAVである。なお、サブクローラ移動部37Lは、クローラ移動部15Lと同じ回転速度CRLで回転する。サブクローラ移動部37Rは、クローラ移動部15Rと同じ回転速度CRRで回転する。δEL3=0である場合に、CRAV=0である。δEL3>である場合に、CRAV>0であり、|CRAV|は|δEL3|に応じた値になる。CRAV>0である場合に、車両部9Aは前進する。δEL3<0である場合に、CRAV<0であり、|CRAV|は|δEL3|に応じた値になる。CRAV<0である場合に、車両部9Aは後進する。
(コ2)δAZ3により、車両部9Aの移動方向を遠隔操作する。車両部9Aの移動方向とは、クローラ移動部15L、15Rの回転速度の差分CRDFである。クローラ移動部15L、15Rの回転速度CRL、CRRは、以下のようになる。
CRL=CRAV+CRDF
CRR=CRAV−CRDF
δAZ3=0である場合に、CRDF=0である。CRDF=0である場合に、CRL=CRRとなる。車両部9Aは、前または後ろに直進する。δAZ3>0である場合に、CRDF>0であり、|CRDF|は|δAZ3|に応じた値になる。CRDF>0である場合に、車両部9Aは右に曲がる。δAZ3<0である場合に、CRDF<0であり、|CRDF|は|δAZ3|に応じた値になる。CRDF<0である場合に、車両部9Aは左に曲がる。
サブクローラ移動部37Lの回転速度は、クローラ移動部15Lの回転速度と同じである。サブクローラ移動部37Rの回転速度は、クローラ移動部15Rの回転速度と同じである。差分CRDFは、サブクローラ移動部37Lの回転速度とサブクローラ移動部37Rの回転速度の差分でもある。
(シ)δXEL3により、サブクローラ角度変更部40L、40Rを遠隔操作する。サブクローラ移動部37Lのクローラ移動部15Lに対する角度と、サブクローラ移動部37Rのクローラ移動部15Rに対する角度は、一律に同じ角度になるように遠隔操作される。δXEL3=0である場合に、サブクローラ39L、39Rの下面がクローラ17L、17Rの下面と同一平面になるように、サブクローラ角度変更部40L、40Rを遠隔操作する。δXEL3>0である場合に、|δXEL3|に応じた角度で、サブクローラ39L、39Rの下面がクローラ17L、17Rの下面よりも上に位置するように、サブクローラ角度変更部40L、40Rを遠隔操作する。δXEL3<0である場合に、|δXEL3|に応じた角度で、サブクローラ39L、39Rの下面がクローラ17L、17Rの下面よりも下に位置するように、サブクローラ角度変更部40L、40Rを遠隔操作する。
足入力ユニット433および他の足入力ユニット43を使用して、サブクローラ角度変更部40Lとサブクローラ角度変更部40Rを個別に操作してもよい。車両部が移動方向を制御する装置を有する場合は、足入力ユニット433が検出する足回転角あるいは左右傾斜角により、車両部が移動方向を制御する装置を制御してもよい。
足入力ユニット434では、実施の形態1および2の場合と同様に、δEL4により、アーム接続部14の仰角を遠隔操作する。δAZ4により、アーム接続部14の方位角を遠隔操作する。δXEL4は、使用しない。
この実施の形態3では、足入力ユニット431は、胴体接続部13を操作対象部とする胴体操作ユニットである。足入力ユニット432は、姿勢変更部を操作対象部とする姿勢操作ユニットである。足入力ユニット433は、車両部9Aを操作対象部とする車両操作ユニットである。足入力ユニット434は、アーム接続部14を操作対象部とするアーム操作ユニットである。クローラを使用しない車両部を操作対象部とする1個の足入力ユニット43である車両操作ユニットを備えるようにしてもよい。
制御演算装置60Bは、構造データ記憶部62B、足入力装置IF部65Bおよび制御信号生成部67Bを変更している。構造データ記憶部62Bは、指示動作対応データ65Rを記憶する。足入力装置IF部65Bは、足入力ユニット431、432、434が計測するδXEL1、δAZ2、δXEL4を処理せず、足入力ユニット432、433が計測するδXEL2、δXEL3を処理するように変更する。制御信号生成部67Bは、指示動作対応データ65Rを参照して、胴体接続部13、アーム接続部14、車両部9Aおよび姿勢変更部を制御する制御信号を生成する。指示動作対応データ65Rの内容を、図34に示す。
実施の形態3の遠隔操作装置3Bでも、オペレータ90は1人でロボット1Aを遠隔操作できる。オペレータ90は、一方の足だけで車両部9Aを遠隔操作できる。足を前後方向に傾けることで、車両部9Aの前進または停止または後進を遠隔操作できる。足を回転させることで、左回転または右回転の移動方向を遠隔操作できる。回転の曲率半径は、前後傾斜角と足回転角の比により決まる。車両部9Aを前後には移動させない場合に、回転の曲率半径は最小になる。足回転角が大きい場合に、回転の速度が速くなる。足載置部44に載せたを左右方向に傾けることで、サブクローラ39のクローラ17に対する上下方向の角度を変更できる。サブクローラ39Lのクローラ17Lに対する角度とサブクローラ39Rのクローラ17Rに対する角度とは、同じ角度になる。
遠隔操作装置3Bでは、動きの相似関係を持たせて操作対象部を遠隔操作するので、遠隔操作しやすい。オペレータ90が、足をつま先が下がるように踏み込むと、現場カメラ4が下を向く方向に肩フレーム回転部が回転する。足をかかとが下がるように踏み込むと、現場カメラ4が上を向く方向に肩フレーム回転部が回転する。左側が下になるように足を傾けると、胴上部および肩フレームの左側が下がる。右側が下になるように足を傾けると、胴上部および肩フレームの右側が下がる。
実施の形態4.
実施の形態4は、操作者が装着する上体入力装置により腕部を遠隔操作する操作指示を入力するように、実施の形態2を変更した場合である。また、現場カメラ4が肩フレーム19に回転可能に接続されている。指示読取カメラがオペレータの頭部を撮影した画像からは、現場カメラ4の撮影方向を変更する操作指示を生成する。
図35と図36を参照して、ロボット1Cの構造を説明する。図35は、実施の形態4で遠隔操作されるロボット1Cの斜視図である。図36は、ロボット1Cの右側面図である。ロボット1Cは、現場カメラ4を肩フレーム19に回転可能に接続するカメラ接続部4Cを有する。カメラ接続部4Cは、現場カメラ4をZ3軸の回りに回転可能に肩フレーム19に接続する。
図37を参照して、ロボット遠隔操作システム100Cが有する遠隔操作装置3Cのソフトウェア構成を説明する。図37は、実施の形態4に係るロボット遠隔操作システムの機能構成を説明するブロック図である。図37について、実施の形態2の場合の図31とは異なる点を説明する。
ロボット1Cが有するモータ73Cには、カメラ接続部4Cを回転させるモータも含まれる。
遠隔操作装置3Cは、オペレータ90が装着する上体入力装置53を有する。上体入力装置53を装着したオペレータ90が腕を動かすと、上体入力装置53の各部はオペレータ90の腕の動きに応じて動く。上体入力装置53は、上体入力装置53の決められた複数の点の間の距離の変化を計測する。決められた複数の点の間の距離の変化から、ロボット1Aの腕部10を動かす操作指示が生成される。腕部10を動かす操作指示とは、より具体的には、右および左の腕部10での、肩関節部27、肘関節部28および手首関節部29の回転角度を決める操作指示である。上体入力装置53は、LAN10に接続される。上体入力装置53を、LAN10を介さないで制御演算装置60Cに接続してもよい。
制御演算装置60Cは、上体入力装置インターフェイス部(図および以後の説明では、上体入力装置IF部と表記する)70を有する。また、制御演算装置60Cは、構造データ記憶部62C、状態データ記憶部63C、操作指示データ生成部64C、音声処理部66Cおよび制御信号生成部67Cを変更している。上体入力装置IF部70は、上体入力装置53が計測したデータを、決められた周期で取り込んで状態データ記憶部63Cに書き込む。操作指示データ生成部64Cは、上体入力装置53が計測したデータも参照して制御信号を生成する。
構造データ記憶部62Cは、カメラ接続部4Cを含むロボット1Cの構造データと、上体入力装置53の構造データと、操作指示生成用データ70Pも記憶する。操作指示生成用データ70Pは、上体入力装置53が計測したデータからロボット1Cの腕部10を動かす操作指示を生成する際に使用される定数である。状態データ記憶部63Cは、カメラ接続部4Cの状態を表すデータおよび上体入力装置53が計測したデータも記憶する。
操作指示データ生成部64Cは、指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像を画像解析してカメラ接続部4Cを操作する操作指示データを生成する。操作指示データ生成部64Cは、画像解析によりオペレータ90の顔(頭部)が向く方向を抽出する。そして、操作指示データ生成部64Cは、現場カメラ4がオペレータ90の顔が向いている方向を向くような操作指示データを生成する。
操作指示データ生成部64Cは、操作指示生成用データ70Pおよび状態データ記憶部63Cを参照して、腕部10への操作指示データを生成する。腕部10への操作指示データの生成方法は、後で説明する。
音声処理部66Cが有する音声制御部69Cは、ストップなどの語句に応じて、カメラ接続部4Cへの操作指示データも生成して、状態データ記憶部63Cに書き込む。制御信号生成部67Cは、操カメラ接続部4Cへの操作指示データからカメラ接続部4Cを制御する制御信号を生成する。音声処理部66Cが、カメラ接続部4Cを音声で遠隔操作しないようにしてもよい。
制御信号生成部67Cは、実施の形態2の場合と同様に、足入力装置6Aが計測する前後傾斜角などに基づき車両部9Aおよび胴体回転駆動部を制御する制御信号を生成する。制御信号生成部67Cは、カメラ接続部4Cおよび腕部10への操作指示データに基づき、カメラ接続部4Cおよび腕部10を制御する制御信号を生成する。
図38および図39を参照して、上体入力装置53の構造を説明する。図38は、実施の形態4の遠隔操作装置の正面図および右側面図である。図39は、上体入力装置53の正面図である。図39では、上体入力装置53は、腕に装着される部分はオペレータ90の左腕に装着される側だけを示す。上体入力装置53は、イス取付部54、肘装着部55、手装着部56、肩関節計測部57、肘関節計測部58および手首関節計測部59を有する。イス取付部54は、上体入力装置53を電動車イス5に取り付ける部材である。イス取付部54は、取り付けるイスに応じた形状を有する。取り付けるイスを変更する場合には、イス取付部54だけを変更すればよい。肘装着部55は、上体入力装置53をオペレータ90の肘付近に装着する部材である。手装着部56は、上体入力装置53をオペレータ90の手に装着する部材である。手装着部56は、オペレータ90の手首関節の接続角度を計測できるように、手首関節から十分な距離を有する手装着部56の箇所をオペレータ90の手に装着する。
肩関節計測部57は、ロボット1Cの肩関節部27を駆動する操作指示を生成するためのデータを計測する。肘関節計測部58は、ロボット1Cの肘関節部28を駆動する操作指示を生成するためのデータを計測する。手首関節計測部59は、ロボット1Cの手首関節部29を駆動する操作指示を生成するためのデータを計測する。肩関節計測部57、肘関節計測部58および手首関節計測部59は、イス取付部54に直列に接続する。
肩関節計測部57は、胴体構造部57A、上腕構造部57B、肩計測関節57C、肩主変位計57Dおよび肩補助変位計57Eを有する。胴体構造部57Aは、オペレータ90の胴体に相当する部材である。胴体構造部57Aは、オペレータ90の上体に近接して配置される。上腕構造部57Bは、オペレータ90の上腕に相当する部材である。肩計測関節57Cは、上腕構造部57Bを胴体構造部57Aに、肩関節部27と同じ回転自由度で回転可能に接続する。同じ回転自由度とは、回転軸の数と関節の両側の部材に対する回転軸の方向がすべて同じという意味である。肩計測関節57Cは、2回転自由度を有する。
肩主変位計57Dおよび肩補助変位計57Eは、両端の間の長さが変更可能で長さを計測できる直線変位計である。直線変位計は、基準状態での長さからの変化を計測して出力する。肩主変位計57Dおよび肩補助変位計57Eのそれぞれは、一端が胴体構造部57Aに接続され、他端が上腕構造部57Bに接続される。
胴体構造部57Aは、イス取付部54に近い部分でほぼ垂直に延在する部分と、ほぼ水平に延在する部分とを有する部材である。水平に延在する部分の端に、肩計測関節57Cが設けられる。垂直に延在する部分に、肩主変位計取付部K1および肩補助変位計取付部K2が設けられる。肩主変位計取付部K1には、肩主変位計57Dの一端が3回転自由度で回転可能に取り付けられる。肩補助変位計取付部K2には、肩補助変位計57Eの一端が3回転自由度で回転可能に取り付けられる。
上腕構造部57Bは、棒状の部材である。上腕構造部57Bには、肩計測関節57Cから決められた距離の位置に、上腕主変位計取付部K3が設けられる。上腕主変位計取付部K3に、肩主変位計57Dの他端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。肩主変位計57Dには、肩計測関節57Cから決められた距離の位置に、上腕補助変位計取付部K4が設けられる。上腕補助変位計取付部K4に、肩補助変位計57Eの他端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。
肩主変位計57Dは、一端および他端が少なくとも2回転自由度で接続され、5回転自由度を有すればよい。肩主変位計57Dに軸回りの1回転自由度を持たせ、一端および他端を2回転自由度で接続してもよい。肩補助変位計57Eおよび他の直線変位計に関しても同様である。
肘関節計測部58は、上腕構造部57B、前腕構造部58A、肘計測関節58B、肘内側変位計58Cおよび肘外側変位計58Dを有する。前腕構造部58Aは、オペレータ90の前腕に相当する部材である。肘計測関節58Bは、前腕構造部58Aを上腕構造部57Bに、肘関節部28と同じ回転自由度で回転可能に接続する。肘計測関節58Bは、上腕構造部57Bの回りの回転と、前腕構造部58Bと上腕構造部57Bとの角度を変更する2回転自由度を有する。
肘内側変位計58Cおよび肘外側変位計58Dも、直線変位計である。肘内側変位計58Cおよび肘外側変位計58Dのそれぞれは、一端が上腕構造部57Bに接続され、他端が前腕構造部58Aに接続される。
上腕構造部57Bは、主要な部分である棒状の部分と、棒状の部分に直交する直交部材を有する。直交部材は、肘計測関節57Cから決められた距離の位置に設けられる。直交部材の内側の端に、上腕内側変位計取付部K6が設けられる。直交部材の外側の端に、上腕外側変位計取付部K8が設けられる。上腕内側変位計取付部K6には、肘内側変位計58Cの一端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。上腕外側変位計取付部K8には、肘外側変位計58Dの一端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。
前腕構造部58Aは、棒状の部材である。前腕構造部58Aは、主要な部分である棒状の部分と、棒状の部分に直交する直交部材を有する。直交部材は、肘計測関節57Cから決められた距離の位置に設けられる。直交部材の内側の端に、前腕内側変位計取付部K5が設けられる。直交部材の外側の端に、前腕外側変位計取付部K7が設けられる。前腕内側変位計取付部K5には、肘内側変位計58Cの他端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。前腕外側変位計取付部K7には、肘外側変位計58Dの他端が2回転自由度で回転可能に取り付けられる。
手首関節計測部59は、前腕構造部58A、手構造部59A、手首計測関節59B、手首正面変位計59C、手首外側変位計59Dおよび手首内側変位計59Eを有する。手構造部59Aは、板状の部材である。手構造部59Aは、オペレータ90の手首関節に近い部分の手に相当する。手首計測関節59Bは、手構造部59Aを前腕構造部58Aに、手首関節部29と同じ回転自由度で回転可能に接続する。手首計測関節59Bは、3回転自由度を有する。
手首正面変位計59C、手首外側変位計59D、および手首内側変位計59Eも、直線変位計である。手首正面変位計59C、手首外側変位計59D、および手首内側変位計59Eのそれぞれは、一端が前腕構造部58Aに接続され、他端が手構造部59Aに接続される。
前腕構造部58Aは、手首計測関節59Bから決められた距離の位置に3方向の突起を有する。突起の間の角度は、90度、90度、180度である。90度の角度で他の突起に挟まれた突起に、前腕正面変位計取付部K9が設けられる。前腕正面変位計取付部K9が設けられた突起よりも前腕構造部58Aにおいて外側に位置する突起に、前腕外側変位計取付部K10が設けられる。外側とは、オペレータ90の体から遠い側である。内側に位置する突起には、前腕内側変位計取付部K11が設けられる。
板状の手構造部59Aには、手首計測関節59Bを中心にして等距離の位置に、手正面変位計取付部K12、手外側変位計取付部K13および手内側変位計取付部K14が設けられる。手正面変位計取付部K12、手外側変位計取付部K13および手内側変位計取付部K14は、手首計測関節59Bを結ぶ線分が互いに120度の角度を有する位置に設けられる。前腕構造部58Aおよび前腕正面変位計取付部K9が存在する平面上に手正面変位計取付部K12が存在する場合に、ロボット1Aの手首関節部29が基準状態になるように、上体入力装置53はオペレータ90に装着される。
2組の上腕構造部57B、前腕構造部58Aおよび手構造部59Aは、直列に胴体構造部57Aに接続される。1組の上腕構造部57B、前腕構造部58Aおよび手構造部59Aは、肘装着部55および手装着部56により、オペレータ90の右または左の腕に装着される。
前腕正面変位計取付部K9、前腕外側変位計取付部K10、前腕内側変位計取付部K11、手正面変位計取付部K12、手外側変位計取付部K13および手内側変位計取付部K14の間での互いの位置関係は、前腕正面リンク取付部J9、前腕外側リンク取付部J10、前腕内側リンク取付部J11、手正面リンク取付部J12、手外側リンク取付部J13および手内側リンク取付部J14の間での位置関係と同様である。
手首正面変位計59Cは、一端が前腕正面変位計取付部K9に2回転自由度で回転可能に取り付けられ、他端が手正面変位計取付部K12に2回転自由度で回転可能に取り付けられる。手首外側変位計59Dは、一端が前腕外側変位計取付部K10に2回転自由度で回転可能に取り付けられ、他端が手外側変位計取付部K13に2回転自由度で回転可能に取り付けられる。手首内側変位計59Eは、一端が前腕内側変位計取付部K11に2回転自由度で回転可能に取り付けられ、他端が手内側変位計取付部K14に2回転自由度で回転可能に取り付けられる。
操作指示データ生成部64Cが、腕部10への操作指示データを生成する方法を説明する。操作指示データ生成部64Cは、肩関節部27を駆動する肩主アクチュエータ30および肩補助アクチュエータ31への操作指示データを、肩主変位計57Dおよび肩補助変位計57Eが計測する長さの変化の値であるリンク長変位と、操作指示生成用データ70Pに記憶されたパラメータとに基づき作成する。
肩関節部27における操作指示データを生成する処理を説明するため、以下の変数を定義する。
ΔLM1:肩主変位計57Dが計測するリンク長変位。
ΔLM2:肩補助変位計57Eが計測するリンク長変位。
LA1:操作指示データとなる肩主アクチュエータ30の長さ。
LA2:操作指示データとなる肩補助アクチュエータ31の長さ。
操作指示生成用データ70Pに記憶されたパラメータを、以下の変数で表現する。
LA10:肩主アクチュエータ30の基準状態での長さ。
LA20:肩補助アクチュエータ31の基準状態での長さ。
α11:ΔLM1とLA1の間の比例係数。
α12:ΔLM2とLA1の間の比例係数。
α21:ΔLM1とLA2の間の比例係数。
α22:ΔLM2とLA2の間の比例係数。
α11などの値は、肩主アクチュエータ30および肩補助アクチュエータ31の配置と、肩主変位計57Dと肩補助変位計57Eの配置を考慮して決める。
操作指示データ生成部64Cは、肩主アクチュエータ30への操作指示データLA1と、肩補助アクチュエータ31への操作指示データLA2を、以下の式で計算する。
LA1=α11・ΔLM1+α12・ΔLM2+LA10
LA2=α21・ΔLM1+α22・ΔLM2+LA20
肘関節部28における操作指示データを生成する処理を説明するため、以下の変数を定義する。
ΔLM3:肘内側変位計58Cが計測するリンク長変位。
ΔLM4:肘外側変位計58Dが計測するリンク長変位。
LA3:肘内側アクチュエータ32での移動部材32Dの位置。
LA4:肘外側アクチュエータ33での移動部材33Dの位置。
肘関節部28における操作指示データを生成するために使用するパラメータは、以下である。
LA30:肘内側アクチュエータ32での移動部材32Dの基準状態での位置。
LA40:肘外側アクチュエータ33での移動部材33Dの基準状態での位置。
α33:ΔLM3とLA3との間の比例係数。
α34:ΔLM4とLA3との間の比例係数。
α43:ΔLM3とLA4との間の比例係数。
α44:ΔLM4とLA4との間の比例係数。
α33などの値は、肘内側アクチュエータ32および肘外側アクチュエータ33の配置と、肘内側アクチュエータ32および肘外側アクチュエータ33の配置を考慮して決める。
操作指示データ生成部64Cは、肘内側アクチュエータ32への操作指示データLA3および肘外側アクチュエータ33のへの操作指示データLA3を、以下の式で計算する。
LA3=α33・ΔLM3+α34・ΔLM4+LA30
LA4=α43・ΔLM3+α44・ΔLM4+LA40
手首関節部29における操作指示データを生成する処理を説明するため、以下の変数を定義する。
ΔLM5:手首正面変位計59Cが計測するリンク長変位。
ΔLM6:手首外側変位計59Dが計測するリンク長変位。
ΔLM7:手首内側変位計59Eが計測するリンク長変位。
LA5:前腕正面アクチュエータ34の長さ。
LA6:前腕外側アクチュエータ35の長さ。
LA7:前腕内側アクチュエータ36の長さ。
手首関節部29における操作指示データを生成するために使用するパラメータは、以下である。
LA50:前腕正面アクチュエータ34の基準状態での長さ。
LA60:前腕外側アクチュエータ35の基準状態での長さ。
LA70:前腕内側アクチュエータ36の基準状態での長さ。
α55:ΔLM5とLA5との間の比例係数。
α56:ΔLM6とLA5との間の比例係数。
α57:ΔLM7とLA5との間の比例係数。
α65:ΔLM5とLA6との間の比例係数。
α66:ΔLM6とLA6との間の比例係数。
α67:ΔLM7とLA6との間の比例係数。
α75:ΔLM5とLA7との間の比例係数。
α76:ΔLM6とLA7との間の比例係数。
α77:ΔLM7とLA7との間の比例係数。
α55などの値は、前腕正面アクチュエータ34、前腕外側アクチュエータ35および前腕内側アクチュエータ36の配置と、手首正面変位計59C、手首外側変位計59Dおよび手首内側変位計59Eの配置を考慮して決める。
操作指示データ生成部64Cは、肘内側アクチュエータ32への操作指示データLA3および肘外側アクチュエータ33のへの操作指示データLA3を、以下の式で計算する。
LA5=α55・ΔLM5+α56・ΔLM6+α57・ΔLM7+LA50
LA6=α65・ΔLM5+α66・ΔLM6+α67・ΔLM7+LA60
LA7=α75・ΔLM5+α76・ΔLM6+α77・ΔLM7+LA70
比例係数α11などの値を適切に決めておけば、簡単な計算で直線変位計が計測するリンク長変位から各関節部への操作指示データを計算できる。関節部の角度を計算する必要がなく、計算量を少なくして、各関節部を駆動する各アクチュエータへの操作指示データを計算できる。
比例係数は常に同じでなくてもよく、リンク長変位の大きさにより異なる値の比例係数を使用するようにしてもよい。リンク長変位の2次の項も考慮して、操作指示データを計算するようにしてもよい。他の関節部での直線変位計が計測するリンク長変位を使用して、操作指示データを計算するようにしてもよい。例えば、肘内側アクチュエータ32への操作指示データであるLA3を計算するのに、肩主変位計57Dが計測するΔLA1を使用してもよい。
肩主変位計57D、肩補助変位計57E、肘内側変位計58C、肘外側変位計58D、手首正面変位計59C、手首外側変位計59Dおよび手首内側変位計59Eは、リンク長変位を計測する計測可変長リンクである。計測可変長リンクは、5回転自由度を有するものである。一端および他端が2回転自由度で取り付けられ、軸回りの1回転自由度を有する計測可変長リンクを使用してもよい。
動作を説明する。オペレータ90が電動車イス5に座り、上体入力装置53を装着する。オペレータ90が、ロボット1の遠隔操作を開始する。オペレータ90は、足入力装置6Aにより、実施の形態2と同様にして、車両部9Aおよび胴体回転駆動部を遠隔操作する。
オペレータ90が腕を動かすと、肩主変位計57D、肩補助変位計57E、肘内側変位計58C、肘外側変位計58D、手首正面変位計59C、手首外側変位計59Dおよび手首内側変位計59Eは、リンク長変位を計測する。操作指示データ生成部64Cは、計測されたリンク長変位に基づき、操作指示生成用データ70Pを参照して腕部10への操作指示データを生成する。制御信号生成部67Cは、腕部10への操作指示データに基づき、腕部10を制御する制御信号を生成する。制御信号により制御されて、ロボット1の腕部10は、オペレータ90の腕と同様に動く。
制御信号生成部67Cは、肩関節計測部57が有する計測可変長リンクが計測する長さの変化であるリンク長変位から肩関節部27を制御する制御信号を生成し、肘関節計測部58が有する計測可変長リンクが計測するリンク長変位から肘関節部28を制御する制御信号を生成し、手首関節計測部59が有する計測可変長リンクが計測するリンク長変位から手首関節部29を制御する制御信号を生成する腕制御信号生成部である。
オペレータ90が自分の頭部を向ける方向を変化させると、指示読取カメラ7A、7Bがオペレータ90の頭部を含む画像を撮影する。指示読取カメラ7A、7Bが撮影した画像を画像解析して、操作指示データ生成部64Cがカメラ接続部4Cへの操作指示データを生成する。制御信号生成部67Cは、カメラ接続部4Cへの操作指示データに基づきカメラ制御部4Cを制御する制御信号を生成する。制御信号により制御されて、現場カメラ4の撮影方向は、オペレータ90の頭部が向く方向に変更される。
この実施の形態4の遠隔操作装置3Cでも、オペレータ90は1人でロボット1Aを遠隔操作できる。実施の形態2と同様な効果が得られる。
上体入力装置は、肩関節部での接続角度である肩関節角度を計測する肩関節計測部、肘関節部での接続角度である肘関節角度を計測する肘関節計測部および手首関節部の接続角度である肩関節角度を計測する肩関節計測部を備えるものでもよい。その場合には、制御信号生成部は、肩関節角度に基づき肩関節部27を制御する制御信号を生成し、肘関節角度に基づき肘関節部28を制御する制御信号を生成し、手首関節角度に基づき手首関節部29を制御する制御信号を生成する腕制御信号生成部である。
実施の形態5.
実施の形態5は、車両部、腕部、胴体部、胴体支持アーム、胴体接続部、アーム接続部、カメラ部を変更したロボットを操縦するように実施の形態1を変更した場合である。ロボット1Pおよび現場カメラ4P以外の部分は、実施の形態1の場合と同様である。なお、遠隔操作装置3Pは、ロボット1Pに対応するために変更している。ロボット1Pは、車両部9P、車両部9Pに搭載されるヒューマノイド部1HPを有する。ヒューマノイド部1HPは、アーム接続部14Pを含んで2本の腕部10Pが存在する側のロボット1Pの部分である。ヒューマノイド部1HPは、2本の腕部10Pを含む。ヒューマノイド部1HPは、車両部9Pに対して位置と姿勢を変更できる。
図40から図52を参照して、ロボット1Pの構造を説明する。図40から図45は、ロボット1Pの全体の斜視図、正面図、右側面図、背面図、左側面図および平面図である。図46から図52は、ヒューマノイド部1HPの斜視図、正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。図40から図52に示す姿勢をロボット1Pがとる状態を、ロボット1Pの基準状態と呼ぶ。
ロボット1Pは、車両部9P、頭部4AP、2本の腕部10P、胴体部11P、胴体支持アーム12P、胴体接続部13Pおよびアーム接続部14Pを有する。車両部9Pは、クローラ移動部15L、15Rの側面および前後面を覆うクローラカバー9PA有する。車両部9Pの上面後方には、バッテリ18を収納するバッテリ収納部9PBが設けられる。
ヒューマノイド部1HPは、頭部4AP、2本の腕部10P、胴体部11P、胴体支持アーム12P、胴体接続部13Pおよびアーム接続部14Pを含む。
腕部10Pは、人の腕と同様な形状である。腕部10Pの構造は、後で説明する。胴体部11Pは、2本の腕部10Pがその上部に接続する。胴体部11Pと2本の腕部10Pは、人間の胴体と腕と同様な位置関係および同様な大きさを有している。そのため、ロボット1Pは、人間と同様な細かな作業が可能である。胴体部11Pの下側には、胴体支持アーム12Pが接続する。胴体支持アーム12Pを移動させると、車両部9Pに対する胴体部11Pの位置を変更できる。
胴体部11Pは、腕接続部19P、胴上部20P、胴下部21Pおよび胴体交差回転部23Pを有する。腕接続部19Pには、2本の腕部10Pが接続する。胴下部21Pには、胴体支持アーム12Pが接続する。胴上部20Pは、腕接続部19Pと胴下部21Pの間に存在する。胴体交差回転部23Pは、胴上部20Pを胴下部21Pに対して回転させる。腕接続部19Pは、胴上部20Pにより回転可能に支持される。
ロボット1Pは、車両部9Pの下端から頭部4APの上端までの高さが約1.8m、車両部9Pの前後方向の長さが約1.4m、腕接続部19Pおよび腕部10Pの最小の横幅は約0.55mである。重量は、ヒューマノイド部1HPだけで約150kg、ロボット1P全体で約300kgである。腕部10Pを水平に伸ばした状態で、片手で約3kg、両手で約6kgの重量の物体を把持できる。腕部10Pを鉛直下方に伸ばした状態では、片手で約10kg、両手で約20kgの重量の物体を把持できる。物体を把持した状態で、胴体支持アーム12Pを移動させることができる。
図53を参照して、ロボット1Pが有する回転軸について説明する。ロボット1Pは、以下に示す6個の回転軸を有する。EL3軸の替わりにAZ3軸を有する点で、ロボット1Pはロボット1と異なる。
AZ1軸:アーム接続部14Pでの方位回転軸。
EL1軸:アーム接続部14Pでの仰角回転軸。
EL2軸:胴体接続部13Pでの胴体傾斜回転軸。
AZ2軸:胴体接続部13Pでの胴体回転軸。
XEL軸:胴体交差回転部23Pでの胴体交差回転軸
AZ3軸:腕接続部19Pを回転させる回転軸。腕接続部回転軸と呼ぶ。
AZ2軸とXEL軸は同じ平面上で交差し、AZ3軸がAZ2軸とXEL軸の交点を通る。つまり、胴体部11Pが有する3個の回転軸AZ2軸、XEL軸およびAZ3軸は1点で交差する。基準状態では、胴上部20Pが胴下部21Pの真上に存在し、AZ2軸とAZ3軸が同じ直線上に存在する。XEL軸は、AZ2軸が存在する平面と直交し、AZ3軸が存在する平面と直交する。XEL軸が回転すると、AZ2軸とAZ3軸が交差するようになる。AZ2軸、XEL軸およびAZ3軸は1点で交差しなくてもよい。
ロボット1PはAZ3軸を有するので、ロボット1Pでは、XEL軸の向きを腕接続部19Pに対して変更できる。基準状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19Pが前後方向に回転する。AZ3軸を90度回転させた状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19Pがその左右のどちらかが高くなるように回転する。AZ3軸を45度回転させた状態では、XEL軸を回転させると、腕接続部19Pがその左右のどちらかが高くなるように回転し、かつ前後方向にも回転する。AZ1軸とAZ3軸を反対方向に同じ角度だけ回転させると、胴体部11Pにおいて腕接続部19Pが向く方向を変化させずXEL軸の回転により腕接続部19Pが回転する方向を変更できる。
実施の形態5でのアーム接続部14Pおよび胴体接続部13Pでの6個の回転軸の配置は、1本の腕部を有する一般の産業用ロボットの回転軸の配置と同じである。アーム接続部14Pおよび胴体接続部13Pの制御は、一般の産業ロボットと同様に制御することができる。
実施の形態5では、腕接続部19Pを基準とする第3のXYZ座標系を以下のように定義する。
X3軸:腕部10Pがそれぞれ接続する腕接続部19Pの2箇所を通る直線に平行な軸。
Y3軸:X3軸およびZ3軸に直交する軸。
Z3軸:X3軸およびY3軸に直交する軸。AZ3軸と同じ方向の軸。
X3軸およびY3軸に平行なX3Y3平面は、AZ3軸と直交し、XEL軸と平行である。AZ3軸の回りに腕接続部19Pが回転すると、XEL軸とX3軸とがなす角度が変化する。
ロボット1Pが有する6個の回転軸の回りの回転角度は、ロボット1の場合と同様である。ただし、θEL3の替わりに以下のθAZ3を、以下のように定義する。
θAZ3:AZ3軸すなわち腕接続部回転軸の回りの回転角度。
θAZ3は、X3軸とXEL軸との間の角度である。θAZ3を、腕接続部回転角と呼ぶ。Z3軸の正の方から見て、右の腕部10Pが腕接続部19Pに接続する箇所がXEL軸よりも後ろにある場合に、θAZ3>0である。
図47などに示すように、頭部4APは、腕接続部19Pの上側に接続する。頭部接続部4APCは、頭部4APを腕接続部19Pに対して3回転自由度で回転可能に接続する。頭部4APは、板状である。頭部4APの前側で高さ方向のほぼ中間の位置に、数cm程度の間隔を空けて2個の現場カメラ4Pを搭載している。2個の現場カメラ4Pの視差を計算することで、物体などへの距離を把握できる。基準状態では、頭部4APはZ3軸の方向を向く。現場カメラ4PはY3軸の方向を向く。頭部接続部4APCは、胴体部11Pに対する角度を変更可能に、現場カメラ4Pを胴体部11Pに接続する。現場カメラ4Pは、胴体部11Pに搭載される。
頭部接続部4APCは、頭部4APをX3軸の回りに例えば−90度から90度、Y3軸の回りに例えば−30度から30度、Z3軸の回りに例えば−90度から90度、回転させることができる。基準状態では、X3軸、Y3軸、Z3軸の回りの回転角度は、いずれも0度である。頭部4APを上に向ける場合に、X3軸の角度は正である。頭部4APを左に傾ける場合に、Y3軸の角度は正である。Z3軸の回転は、上から見て時計回りの場合に、Z3軸の回りの回転角度が正である。
腕接続部19Pは、円盤状の胴接続部19PA(図49に図示)、外形が直方体状である2個の腕回転部19PB、厚い板状の腕接続構造部19PCを有する。胴接続部19PAは、胴上部20Pに回転可能に支持される。腕接続構造部19PCは、胴接続部19PAの上側に垂直に接続する。腕接続構造部19PCの両側の主面は、左右方向を向く。腕接続構造部19PCの両側の主面の前側の部分に、それぞれ直方体状の腕回転部19PBが接続する。腕回転部19PBは、腕部10Pを回転させる機構を収納する。腕接続構造部19PCの下を向く側面の後側の部分に、円盤状の胴接続部19PAが接続する。
2本の腕部10Pは、腕接続部19Pを回転させるAZ3軸よりも前に存在する。そのため、腕接続部19Pが回転する場合に、腕部10Pが回転を妨げることはない。
胴上部20Pは、腕接続部回転部20PAと、回転軸接続ヨーク20PBとを有する。腕接続部回転部20PAは、胴接続部19PAの下方に存在し、胴接続部19PAを回転可能に支持する。腕接続部回転部20PAは、円柱状である。腕接続部回転部20PAは、胴接続部19PAをAZ3軸の回りに回転させる。AZ3軸は、X3軸と交差する軸である。X3軸は、2本の腕部10Pのそれぞれが接続する腕接続部19Pの2箇所を結ぶ直線に平行な軸である。腕接続部回転部20PAは、胴上部20Pに対して腕接続部19PをAZ3軸の回りに回転させる。
回転軸接続ヨーク20PBは、胴体交差回転部23Pが有する回転軸部材23PAに腕接続部回転部20PAを接続する部材である。回転軸接続ヨーク20PBは、回転軸部材23PAが貫通して接続する2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する形状である。回転軸接続ヨーク20PBの上部の板状の部分の上側に、腕接続部回転部20PAが接続する。回転軸接続ヨーク20PBは、回転軸部材23PAが回転すると、回転軸部材23PAと共に回転する。
胴下部21Pは、回転軸保持ヨーク21PAと、垂直円柱部21PBとを有する。回転軸保持ヨーク21PAは、回転軸部材23PAを回転可能に保持する。回転軸保持ヨーク21PAは、2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の下部を接続する板状の部分とを有する形状である。2枚の対向する板状の部分が、回転軸部材23PAを回転可能に支持する。垂直円柱部21PBは、回転軸保持ヨーク21PAの下側に接続する円柱状の部材である。
胴体交差回転部23Pは、回転軸部材23PA、回転軸ギア23PB、モータ23PC、駆動ギア23PDおよびギアカバー23PEを有する。回転軸部材23PAは、XEL軸を構成する部材である。XEL軸は、基準状態ではX1軸およびX2軸に平行である。回転軸部材23PAは、回転軸保持ヨーク21PAに回転可能に保持される。回転軸部材23PAには、胴上部20Pが有する回転軸接続ヨーク20PBが接続する。回転軸部材23PAが回転すると、胴上部20Pも回転する。回転軸ギア23PBは、回転軸部材23PAに固定されたギアである。回転軸ギア23PBは、回転軸部材23PAにおいて右の腕部10Pが存在する側に存在する。モータ23PCは、回転軸ギア23PBを回転させる動力を発生させる。モータ23PCは、回転軸保持ヨーク21PAの内側の上に載置される。駆動ギア23PDは、モータ23PCが回転することで回転するギアである。駆動ギア23PDは、回転軸ギア23PBと噛み合う。駆動ギア23PDが回転すると、回転軸ギア23PBも回転する。ギアカバー23PEは、回転軸ギア23PBおよび駆動ギア23PDを覆うカバーである。
胴体支持アーム12Pは、2枚の側板12PAと、側板12PAを連結する連結板12PBとを有する。2枚の側板12PAの上端部には、胴体接続部13Pの回転軸部材13PCが回転可能に保持される。2枚の側板12PAの下端部には、アーム接続部14Pの回転軸部材14PCが接続する。胴体支持アーム12Pは、胴体部11Pを車両部9Pに対して決められた位置に配置する。胴体支持アーム12Pは、人間では脚の部分に対応する。
胴体接続部13Pは、胴体部11Pを2回転自由度で回転可能に胴体支持アーム12Pに接続する。胴体接続部13Pは、AZ2軸およびEL2軸の回りに回転可能に胴体部11Pを胴体支持アーム12Pに接続する。胴体接続部13Pは、胴体支持アーム12Pに対する胴体部11Pの角度を変更する。胴体接続部13Pは、人間では腰の部分に対応する。
胴体接続部13Pは、胴体回転部13PA、回転軸接続ヨーク13PB、回転軸部材13PC、回転軸ギア13PD、モータ13PE、駆動ギア13PFおよびギアカバー13PGを有する。胴体回転部13PAは、外形が円筒状である。胴体回転部13PAは、AZ2軸の回りに回転可能に垂直円柱部21PBを支持する。垂直円柱部21PBは、胴下部21Pの最も下に位置する円柱状の部分である。胴体回転部13PAの内部には、垂直円柱部21PBを回転させるためのモータやギアが存在する。回転軸接続ヨーク13PBは、胴体回転部13PAの下側に接続する。回転軸接続ヨーク13PBは、2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する形状である。回転軸接続ヨーク13PBの上部の板状の部分の上側に、胴体回転部13PAが接続する。回転軸接続ヨーク13PBの2枚の対向する板状の部分は、回転軸部材13PCに接続する。回転軸接続ヨーク13PBは、その下側が前方に出ている。基準状態では、胴体回転部13PAは胴体支持アーム12Pよりも背面側に位置する。回転軸部材13PCが回転すると、回転軸接続ヨーク13PBおよび胴体回転部13PAが共に回転する。回転軸部材13PCには、回転軸ギア13PDが接続する。回転軸ギア13PDは、回転軸部材13PCにおいて右の腕部10Pが存在する側に存在する。モータ13PEは、回転軸ギア13PDを回転させる動力を発生する。モータ13PDは、胴体支持アーム12Pの連結板12PBの上側に載置される。駆動ギア13PFは、モータ13PDにより駆動されるギアである。駆動ギア13PFは回転軸ギア13PDと噛み合う。駆動ギア13PFが回転すると、回転軸ギア13PDが回転する。回転軸ギア13PDが回転すると、回転軸部材13PCおよび胴体接続部13Pの胴体11P側の部材が回転する。
アーム接続部14Pは、胴体支持アーム12Pを2回転自由度で回転可能に車両部9Pに接続する。アーム接続部14Pは、胴体支持アーム12PをAZ1軸およびEL1軸の回りに回転可能に車両部9Pに接続する。AZ1軸は、車両部9Pの高さ方向に平行な回転軸である。EL1軸は、胴体支持アーム12PとAZ1軸とがなす角度を変更する回転軸である。アーム接続部14Pは、アーム回転部14PA、アーム基部14PB、回転軸保持ヨーク14PC、回転軸部材14PD、回転軸ギア14PE、モータ14PF、駆動ギア14PGおよびギアカバー14PHを有する。アーム回転部14PAは、外形がフランジを有する円筒状である。アーム回転部14PAは、車両部9Pの上面に設けられた窪みに設置される。アーム回転部14PAの円筒状の部分が、車両部9Pの内部に入る。アーム回転部14PAのフランジが、車両部9Pの窪みの底面の上に出る。アーム回転部14PAは、その上に存在するアーム基部14PBをAZ1軸の回りに回転可能に支持する。アーム回転部14PAは、アーム基部14PBを回転させるためのモータやギアを収納する。アーム基部14PBは、円盤状の部材の上に略長方形の板材が接続した部材である。アーム基部14PBの円盤状の部材が、アーム回転部14PAに回転可能に支持される。
回転軸保持ヨーク14PCは、アーム基部14PBの上側に接続した2枚の対向する板材である。回転軸保持ヨーク14PCは、回転軸部材14PDを回転可能に保持する。回転軸ギア14PEは、回転軸部材14PDに接続する。回転軸ギア14PEは、回転軸部材14PDにおいて右の腕部10Pが存在する側に存在する。モータ14PFは、回転軸ギア14PEを回転させる動力を発生する。モータ14PFは、アーム基部14PBに載置される。駆動ギア14PGは、モータ14PFの回転により駆動する。駆動ギア14PGは回転軸ギア14PEと噛み合う。駆動ギア14PGが回転すると、回転軸ギア14PEおよび回転軸部材14PDが回転する。ギアカバー14PHは、回転軸ギア14PEおよび駆動ギア14Pを覆うカバーである。
アーム接続部14Pでは、AZ1軸の回りに例えば−160度から180度の範囲で回転可能である。EL1軸の回りには、例えば−70度から95度の範囲で回転可能である。ここで、AZ1軸の回りの回転角度は、ヒューマノイド部1HPが向く方向が車両部9Pの向く方向と平行になる場合に、0度とする。AZ1軸の角度は、上から見て時計回りに回転する場合に、角度を正とする。胴体支持アーム12Pが車両部9Pの上面と直交する場合に、EL1軸の回りの回転角度を0度とする。胴体支持アーム12Pが前に傾く場合に、EL1軸の角度を正とする。
胴体接続部13Pでは、EL2軸の回りに例えば−105度から150度の範囲で回転可能である。AZ2軸の回りには、例えば−95度から95度の範囲で回転可能である。ここで、EL2軸の回りの回転角度は、胴体支持アーム12Pが延在する方向とAZ2軸の方向とが平行になる場合に、0度とする。胴下部21Pが胴体支持アーム12Pに対して前に傾く場合に、EL2軸の角度を正とする。AZ2軸の回りの回転角度は、胴体部11Pが向く方向が胴体支持アーム12Pの向く方向と平行になる場合に、0度とする。上から見て時計回りに胴体部11Pが回転する場合に、AZ2軸の角度を正とする。
胴体交差回転部23Pでは、XEL軸の回りに例えば−95度から95度の範囲で回転可能である。ここで、XEL軸の回りの回転角度は、AZ3軸がAZ2軸と平行になる場合に、0度とする。基準状態では、XEL軸の角度は0度である。胴上部20Pが胴下部21Pよりも前側に移動する場合に、XEL軸の角度を正とする。
腕接続部回転部20PAでは、AZ3軸の回りに例えば−185度から185度の範囲で回転可能である。腕接続部19Pが向く方法と胴上部20Pが向く方向と同じになる場合に、AZ3軸の回りの回転角度を0度とする。上から見て時計回りに腕接続部19Pが回転する場合に、AZ3軸の角度を正とする。
図54から図58は、ロボット1Pの別の姿勢1から5での斜視図である。図54に示す別の姿勢1は、ヒューマノイド部1HPが、車両部9Pの前端付近で車両部9Pの上面よりも少し高い位置にある物体を両方の手部26Pでつかもうとしている姿勢である。図55に示す別の姿勢2は、別の姿勢1をAZ3軸の回りに90度回転させた姿勢である。別の姿勢1および2では、胴体支持アーム12Pが背面側に傾き、胴体接続部13Pは車両部9Pの上面に対してほぼ平行である。胴下部21Pが上を向き、胴上部20Pおよび腕接続部19Pが図54における左側を向いている。腕部10Pは、上腕部24Pが水平に対して約15度の角度で斜め後ろ下に向き、肘関節部28Pが約35度の角度をとり、前腕部25Pが斜め前下に向く。手部26Pは、5本の指部が伸びた状態である。
図56に示す別の姿勢3は、車両部9Pの前端から1.5m程度離れて車両部9Pの上面より少し高い位置にある物体を両手でつかもうとしている姿勢である。胴体支持アーム12Pが車両部9Pの上面に対して約30度の角度で前方斜め上を向く。胴体接続部13Pおよび胴体部11Pは、別の姿勢1と同じ回転角度である。腕部10Pは、上腕部24Pが下を向き、肘関節部28Pが約90度の角度である。前腕部25Pおよび手部26Pは、前方を向く。図57に示す別の姿勢4は、別の姿勢3からAZ2軸を90度回転させた姿勢である。別の姿勢4では、上腕部24Pが水平な方向を向く。
図58に示す別の姿勢5は、車両部9Pの前端から2.0m程度離れて車両部9Pの下端より少し高い位置にある物体を両手でつかもうとしている姿勢である。胴体支持アーム12Pは車両部9Pの上面に対して下方約10度の角度の方向を向き、胴体接続部13Pおよび胴体部11Pは下方約20度の方向を向く。腕部10Pは、車両部9Pの上面にほぼ平行な方向を向く。胴体支持アーム12P、胴体部11Pおよび腕部10Pが、直列に連なる。
図54から図58に示すように、ロボット1Pでは、2本の腕部10Pを車両部9Pに対して大きく動かすことができ、作業に適した方向に2本の腕部10Pを向けることができる。障害物などがある場合などは、障害物などを避けるような姿勢を、ロボット1Pは取ることができる。つまり、把持または操作する対象へのアプローチの自由度が高く、障害物などのために作業難易度が高い場合でも、ロボット1Pは柔軟に対応可能である。また、アプローチする駆動範囲も拡大できて、より広範囲な空間で作業することが可能となる。胴体支持アーム12Pにより、腕接続部19Pの位置を決められた範囲の3次元空間内の任意の位置に配置できる。さらに、2本の腕部10Pの位置を、腕接続部19Pに対して決められた範囲の3次元空間内の任意の位置に配置できる。
図54から図58に示す別の姿勢では、カメラ部4Pの視野に手部26Pが入らない。頭部接続部4APCを制御することで、手部26Pが存在する方向にカメラ部4Pを向けることができる。
図59から図66を参照して、腕部10Pの構造を説明する。図59は、腕部10Pの斜視図である。図60は、腕部10Pの別の斜視図である。図61から図66は、腕部10Pの正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。
腕部10Pは、腕基部24AP、上腕部24P、前腕部25Pおよび手部26Pが直列に接続する。腕基部24APは、腕接続部19Pに回転可能に支持される。上腕部24Pは、肩関節部27Pにより腕基部24APに2回転自由度で回転可能に接続する。前腕部25Pは、肘関節部28Pにより上腕部24Pに2回転自由度で回転可能に接続する。手部26Pは、手首関節部29Pにより前腕部25Pに2回転自由度で回転可能に接続する。
図67を参照して、腕部10Pが有する回転軸について説明する。図67(A)は腕部10Pの左側面図であり、図67(B)は腕部10Pの正面図である。
腕部10Pは、以下に示す7個の回転軸を有する。
AZ4軸:腕部10Pを腕接続部19Pに対して回転させる回転軸。腕基部24APを通り、腕基部24APを回転させる回転軸。AZ4軸を、腕基部回転軸と呼ぶ。
EL4軸:上腕部24Pと腕基部24APとがなす角度を変更させる回転軸。EL4軸は、AZ4軸と直交する。
AZ5軸:上腕部24Pを通り、かつ上腕部24Pを回転させる回転軸。AZ5軸は、EL4軸と直交する。AZ5軸を、上腕部回転軸と呼ぶ。
EL5軸:前腕部25Pと上腕部24Pがなす角度を変更させる回転軸。EL5軸は、AZ5軸と直交する。
AZ6軸:前腕部25Pを通り、かつ前腕部25Pを回転させる回転軸。AZ6軸は、EL5軸と直交する。AZ6軸を、前腕部回転軸と呼ぶ。
EL6軸:手部26Pと前腕部25Pとがなす角度を、AZ6軸およびXEL2軸を含む平面(前後方向回転平面)において回転させる回転軸。EL6軸は、AZ6軸およびXEL2軸と直交する。
XEL2軸:手部26Pと前腕部25Pとがなす角度を、AZ6軸およびEL6軸を含む平面(左右方向回転平面)において回転させる回転軸。XEL2軸は、AZ6軸およびEL6軸と直交する。
AZ4軸は、腕基部24APを腕接続部19Pに対して回転させる回転軸である。EL4軸とAZ5軸は、肩関節部27Pにおいて腕基部24APと上腕部24Pとの接続角度を変更する回転軸である。EL5軸とAZ6軸は、肘関節部28Pにおいて上腕部24Pと前腕部25Pとの接続角度を変更する回転軸である。EL6軸とXEL2軸は、手首関節部29Pにおいて前腕部25Pと手部26Pとの接続角度を変更する回転軸である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、前腕部25Pを通る互いに直交する2平面である。
腕基部24APは、円柱状である。腕基部24APは、腕回転部19PBに設けられた穴に回転可能に挿入される。腕回転部19PBには、背面側からモータ19Dが挿入される。腕回転部19PBの内部には、モータ19Dが出す回転トルクを腕基部24APに伝えるウォームギア機構が収納される。腕基部24APの端部には、図示しないウォームホイールが設けられる。ウォームホイールは、モータ19Dの回転により回転する図示しないウォームと噛み合う。モータ19Dおよびウォームが回転すると、ウォームホイールおよび腕基部24APおよび腕部10Pが回転する。腕部10Pは、ヒューマノイド部1HPの前後方向に回転する。腕基部24APの肩関節部27P側の端には、フランジが設けられる。腕基部24APのフランジに、肩関節部27Pが接続する。腕基部24APは、AZ4軸の回りを回転する。AZ4軸は、円柱状である腕基部24APの中心を通る。腕回転部19PBに設けられた穴と、この穴に回転可能に挿入される腕基部24APは、腕基部24APを胴体部11Pに少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する腕基部関節部である。
腕基部24APの回転可能範囲は、例えば−35度から180度の範囲である。ここで、腕基部24APがAZ4軸の回りに回転する角度(AZ4軸の角度と略す)は、上腕部24Pが下を向く場合にAZ4軸の角度を0度とし、上腕部24Pが前方に回転する場合に、AZ4軸の角度を正とする。腕基部24APの回転により、上腕部24Pを前方に上げて真上に向けることができる。また、上腕部24Pを真下から後ろに35度まで回転できる。
肩関節部27Pは、上腕部24Pを2回転自由度で回転可能に腕基部24APに接続する。肩関節部27Pは、上腕部24Pを通る上腕部回転軸(AZ5軸)の回りの回転と、上腕部24Pと腕基部24APとがなす角度を変更する回転軸(EL4軸)の回りの回転とを可能にする。AZ5軸の回りの回転は、上腕部24Pを含めて前腕部25Pを回転させる。AZ5軸の回りに上腕部24Pを回転させる場合には、肘関節部28Pで前腕部25Pを捻り回転させる場合よりも、構造が簡単になる。
肩関節部27Pは、EL4軸の回りの1回転自由度で上腕部24Pを回転可能に上腕基部24APに接続すると考えてもよい。上腕部回転軸(AZ5軸)の回りに上腕部24Pを回転可能にする機構は、肩関節部27Pではなく、上腕部24Pに設けられていると考えてもよい。そのように考える場合には、肩関節部27Pは、上腕部24Pを上腕基部24APに少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する。また、上腕部24Pを通る上腕部回転軸の回りに上腕部24Pは回転可能である。
肩関節部27Pでは、EL4軸の回りの回転可能範囲は、例えば−10度から75度である。ここで、肩関節部27PにおけるEL4軸の回転角度は、上腕部24Pが腕基部24APと直交する場合に角度を0度とする。上腕部24Pと腕基部24APとの間の角度が小さくなる、すなわち上腕部24Pが胴体部11Pから離れるように回転する場合に、EL4軸の角度を正とする。肩関節部24Pでは、基準状態では上腕部24Pを横方向の外側に75度まで上げることができ、上腕部24Pが胴体部11Pに近づく方向には、10度まで回転できる。
AZ5軸の回りの回転可能範囲は、例えば−90度から20度である。ここで、AZ5軸の回りの回転角度は、基準状態で0度であり、上腕部24Pが胴体部11Pの側に回転する場合に角度を負とする。上腕部24Pを通るA5軸の回りの回転により、上腕部24Pを下に向けて肘関節部28Pを90度に曲げた状態では、前腕部25Pを腕接続部19Pの前面に平行になるまで内側に回転でき、外側には腕接続部19Pの正面方向に対して20度まで回転できる。
肘関節部28Pは、前腕部25Pを2回転自由度で回転可能に上腕部24Pに接続する。肘関節部28Pは、前腕部25Pを通る前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転と、前腕部25Pと上腕部24Pとがなす角度を変更する回転軸(EL5軸)の回りの回転とを可能とする。AZ6軸の回りの回転は、前腕部25Pを含めて手部26Pを回転させる。AZ6軸の回りに前腕部25Pを回転させる場合には、手首関節部29Pで手部26Pを捻り回転できるようにする場合よりも、構造が簡単になる。
肘関節部28Pは、EL5軸の回りの1回転自由度で前腕部25Pを回転可能に上腕部24Pに接続すると考えてもよい。前腕部回転軸(AZ6軸)の回りに前腕部25Pを回転可能にする機構は、肘関節部28Pではなく、前腕部25Pに設けられていると考えてもよい。そのように考える場合には、肘関節部28Pは、前腕部25Pを上腕部24Pに少なくとも1回転自由度で回転可能に接続する。また、前腕部25Pを通る前腕部回転軸の回りに前腕部25Pは回転可能である。
EL5軸の回りの回転可能範囲は、例えば10度から125度である。ここで、EL5軸の回りの回転角度は、前腕部25Pと上腕部24Pとが同一直線に存在する場合を0度とする。つまり、上腕部24Pを肘関節部28Pよりも前腕部25Pの側に延長した直線と前腕部25Pとがなす角度が、EL5軸の回りの回転角度である。前腕部25Pが上腕部24Pの前側に存在する場合に、EL5軸の回りの回転角度を正とする。肘関節部28Pは、前腕部25Pと上腕部24Pとがなす角度が約170度から約55度である範囲で、曲げ伸ばしできる。
肘関節部28Pでは、AZ6軸の回りの回転可能範囲は、例えば−100度から100度までである。基準状態では、前後方向回転平面がX3軸と平行になる。AZ6軸の回りの回転角度は、基準状態ではAZ6軸の角度を0度とする。前後回転平面が外側に傾く場合に、AZ6軸の角度を正とする。
手首関節部29Pは、手部26Pを2回転自由度で回転可能に前腕部25Pに接続する。手首関節部29Pは、2軸ジンバルである。手首関節部29Pは、前後方向回転平面および左右方向回転平面のそれぞれで前腕部25Pと手部26Pとがなす角度を変更できる。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、どちらも前腕部25Pを含む平面であり、互いに直交する。EL6軸は、前後方向回転平面に直交する。EL6軸は、前後方向回転平面において手部26Pの回転を可能にする回転軸である。XEL2軸は、左右方向回転平面に直交する。XEL2軸は、左右方向回転平面において手部26Pの回転を可能にする回転軸である。前後方向回転平面が、AZ6軸を含む第1前腕平面である。左右方向回転平面が、AZ6軸を含み前後方向回転平面と直交する第2前腕平面である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、直交しなくともよく、交差していればよい。
手首関節部29Pでは、前後方向回転平面では、手部26Pを例えば−45度から60度まで回転でき、左右方向回転平面では、手部26Pを例えば−60度から60度まで回転できる。EL6軸およびXEL2軸の回りの回転角度は、手部26Pと前腕部25Pが同一の直線上に存在する場合に、角度を0度とする。前後方向回転平面で手部26Pが前側に存在する場合に、EL6軸の角度を正とする。左右方向回転平面で手部26Pが外側に存在する場合に、XEL2軸の角度を正とする。
腕基部関節部は、2回転自由度を有してもよい。肩関節部27Pは、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。肘関節部28Pは、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。手首関節部29Pは、1回転自由度あるいは3回転自由度を有してもよい。腕基部関節部の回転自由度、肩関節部27Pの回転自由度、肘関節部28Pの回転自由度、手首関節部29Pの回転自由度の合計は、6回転自由度あるいは8回転自由度でもよい。
肩関節部27Pは、肩関節構造部27PA、モータ27PB、モータ設置部27PCおよび回転軸部材27PDを有する。回転軸部材27PDは、EL4軸に平行な棒状の部材である。回転軸部材27PDに、上腕部24Pが接続する。回転軸部材27PDが回転すると、上腕部24PがEL4軸の回りを回転する。上腕部24Pを、AZ5軸の回りに回転させる機構は、上腕部24Pに設けられる。
肩関節構造部27PAおよびモータ設置部27PCは、回転軸部材27PDを回転可能に保持する部材である。回転軸部材27PDは、肩関節構造部27PAに垂直である。肩関節構造部27PAは、フランジを有する円筒と、腕接続部19P側に接続した直方体とを有する形状である。肩関節構造部27PAの円筒を前方から見ると、フランジの部分は、円の対向する部分を直線で切り取った形状である。モータ設置部27PCも、フランジを有する円筒状の形状である。フランジは、肩関節構造部27PAおよびモータ設置部27PCで同じ形状である。肩関節構造部27PAの円筒のフランジおよびモータ設置部27PCのフランジは、互いに接合する。モータ設置部27PCには、その内部にモータ27PBが設置される。モータ27PBは、回転軸部材27PDを回転させる動力を発生する。モータ設置部27PCの内部には、モータ27PBの回転トルクを回転軸部材27PDに伝えるギアも収納される。
上腕部24Pは、関節接続部24PA、中間円筒部24PB、フタ24PCおよび下側円柱24PDを有する。関節接続部24PAは、肩関節部27Pが有する回転軸部材27PDと接続する四角い棒状の部分を有する部材である。回転軸部材27PDと関節接続部24PAは、一体に形成される。関節接続部24PAは、四角い棒状の部分の下側に円柱状の部分を有する。円柱状の部分は、中間円筒部24PBの内部に回転可能に挿入される。中間円筒部24PBが関節接続部24PAに対して回転することで、上腕部24PがAZ5軸の回りを回転する。
関節接続部24PAは、肩関節構造部27PAに設けられた開口を通る。肩関節構造部27PAに設けられた開口は、基準状態では下側を向く。関節接続部24PAの角棒の部分が開口と接触することで、肩関節部27Pの左右方向の回転角度が制限される。肩関節部27Pは、上腕部27Pを下に向けた状態から左右方向の外側に回転させる場合は、上腕部27Pが水平に近い角度になるまで回転できる。
中間円筒部24PBには、背面側に開口が設けられる。背面側の開口は、中間円筒部24PBの内部のモータなどをメンテナンスなどするために設けている。フタ24PCは、中間円筒部24PBの開口をふさぐ。中間円筒部24Pの上側の内部には、関節接続部24PAに対して中間円筒部24PBを回転させるモータやギアが収納される。肘関節部28Pで使用するモータ24PE(図示せず)も、中間円筒部24Pの下側の内部に収納される。モータ24PEの回転軸は、中間円筒部24Pの下側から外部に出る。
下側円柱24PDは、中間円筒部24PBの下側に接続する。下側円柱24PDは、中間円筒部24Pよりも径が小さい円筒である。関節接続部24PA、中間円筒部24PBおよび下側円柱24PDは、1本の直線上に存在する。下側円柱24PDは、肘関節部28Pが有する回転軸保持ヨーク28PAに接続する。
肘関節部28Pは、2回転自由度で前腕部25Pを上腕部24Pに接続する。肘関節部28Pは、前腕部25Pを通る前腕部回転軸(AZ6軸)の回りの回転と、上腕部24Pと前腕部25Pとがなす角度を変更する回転とを可能にする。肘関節部28Pは、回転軸保持ヨーク28PA、回転軸部材28PB、ウォームホイール28PC、ウォーム28PD、ギア部28PE、モータ28PF、ギア部28PG、モータ収納部28PHおよびギアカバー28PJを有する。ウォームギア機構を使用しているので、肘関節部28Pにおいて前腕部25Pと上腕部24Pとがなす角度は、電力の供給が途絶えた場合でも維持できる。
回転軸部材28PBは、前腕部25Pと上腕部24Pとの間の角度を変更する回転軸(EL5軸)を構成する部材である。回転軸部材28PBに前腕部25Pが接続する。回転軸部材28PBは、上腕部24Pに対して直交する方向に延在する。回転軸保持ヨーク28PAは、回転軸部材28PBを回転可能に保持する。回転軸保持ヨーク28PAは、回転軸部材28PBが貫通する2枚の対向する板状の部分と、2枚の板の上部を接続する板状の部分を有する形状である。回転軸保持ヨーク28PAは、上側の板状の部分で下側円柱24PDに接続する。
図64に示すように、ウォームホイール28PC、ウォーム28PDおよびギア部28PEは、上腕部24Pの内部に収納されたモータ24PEにより回転軸部材28PBを回転させる機構を構成する。ウォームホイール28PCは、回転軸部材28PBに取り付けられている。ウォームホイール28PCが回転することで、回転軸部材28PBが回転する。ウォームホイール28PCは、肘関節部28Pの左右方向の外側に存在する。ギア部28PEは、モータ24PEの回転により回転する。ギア部28PEは、中間円筒部24PBの下面に平行に設置される。ギア部28PEは、モータ24PEの回転軸と噛み合うギアと、ウォーム28PDと噛み合うギアとを有する。ウォーム28PDは、中間円筒部24PBが延在する方向に存在する。ウォーム28PDは、中間円筒部24PBに近い側でギア部28PEと噛み合う。また、中間円筒部24PBから遠い側で、ウォーム28PDはウォームホイール28PCと噛み合う。ギアカバー28PJは、ウォームホイール28PC、ウォーム28PDおよびギア部28PEを覆うカバーである。
モータ24PEが回転すると、モータ24PEの回転がギア部28PEによりウォーム28PDに伝えられて、ウォーム28PDが回転する。ウォーム28PDが回転すると、ウォームホイール28PCおよび回転軸部材28PBが回転して、前腕部25Pと上腕部24Pとがなす角度が変化する。
図63に示すように、モータ28PF、ギア部28PGおよびモータ収納部28PHは、前腕部25Pに設けられる。モータ28PF、ギア部28PGおよびモータ収納部28PHは、肘関節部28Pの前腕部25Pを通る前腕部回転軸の回りに前腕部25Pを回転させる機構を構成する。モータ28PFは、前腕部25Pを回転させる動力を発生する。ギア部28PGは、モータ28PFの回転により前腕部25Pを回転させるためのギアである。モータ収納部28PHは、モータ28PFを収納する。ギア部28PGの外形は、フランジを有する円筒状である。モータ収納部28PHは、ギア部28PGの手首側に接続する。モータ収納部28PHは、モータ28PFを挟む2個の側面と、側面をつなぐ底面を有する部材である。ギア部28PGは、モータ28PFと前腕基部25PB(後述)の間に存在する。ギア部28PGの内部には、回転軸接続部25PA(後述)、ギア機構およびモータ28PFの回転軸が存在する。ギア機構は、モータ28PFの回転により、前腕基部25PBを回転軸接続部25PAに対して回転させる機構である。
前腕部25Pは、回転軸接続部25PA、前腕基部25PB、前腕骨部25PC、アクチュエータ構造部25PD、ねじ棒保持部25PEおよびねじ棒保持部25PFを有する。回転軸接続部25PAは、回転軸部材28PBともに回転する部材である。回転軸接続部25PAと回転軸部材28PBは、一体に形成する。回転軸接続部25PAは、関節接続部24PAと同様な形状を有する。回転軸接続部25PAの形状は、肘関節部28Pの回転軸部材28PBと接続する円柱状の部分と、円柱状の部分の下側に接続する円筒状の部分とを有する形状である。前腕基部25PBは、フランジを有する円筒状の形状である。前腕基部25PBの上面の円形の開口に、回転軸接続部25PAの円筒状の部分が回転可能に挿入される。前腕基部25PBのフランジとギア部28PGのフランジとが接合されるギア部28PGは、前腕基部25PBよりも手部26Pの側に存在する。モータ28PFが回転すると、ギア部28PGの内部に設けられたギア機構により、前腕基部25PBが回転軸接続部25PAに対して回転する。
前腕骨部25PCは、前腕基部25PBの手部26Pの側に接続する角柱状の部材である。前腕骨部25PCの先端に、手首関節部29Pが設けられる。前腕基部25PBの下側には、外形が円筒状のギア部28PGが接続する。前腕骨部25PCは、ギア部28PGを貫通して手首側に延在する。
アクチュエータ構造部25PDは、手首関節部29Pの接続角度を変更する2個のアクチュエータを設置するための構造部材である。アクチュエータ構造部25PDは、前腕骨部25PCに固定される。アクチュエータ構造部25PDが固定される面は、基準状態において前腕骨部25PCの前側を向く面である。アクチュエータ構造部25PDは、手首関節部29Pの半分の断面がT字状であり、肘関節部28P側がTの縦棒だけである形状を有する部材である。Tの縦棒だけの部分(縦板部)は、外形が円筒状のギア部28PGの外側およびフランジに接続する。ねじ棒保持部25PEは、アクチュエータ構造部25PDの断面がT字状である手部26P側の端部に取り付けられる。ねじ棒保持部25PFは、アクチュエータ構造部25PDの縦板部の端部および前腕基部25PBのフランジに接続する。ねじ棒保持部25PEおよびねじ棒保持部25PFの間に、2本のねじ棒が回転可能に保持される。
手首関節部29Pは、2回転自由度で手部26Pを前腕部25Pに接続する。手首関節部29Pは、交線が前腕部25Pを通る直交する2平面のそれぞれにおいて、手部26Pと前腕部25Pとの間の角度を変更する。交線が前腕部25Pを通る直交する2平面は、前後方向回転平面および左右方向回転平面である。前後方向回転平面および左右方向回転平面は、アクチュエータ構造部25PDにより決まる平面に対して45度の角度をなす。図68に、手首関節部25Pの断面図を示す。図68は、図64に示すA−A断面での断面図である。
手首関節部29Pは、T字部材29PA、T字部材保持ヨーク29PB、T字部材保持部29PCおよび手首基部29PDを有する。T字部材29PAは、2回転自由度の接続を可能とするT字状の部材である。T字部材29PAは、前腕骨部25PCと手首基部29PDとを2回転自由度で接続する。T字部材保持ヨーク29PBは、前腕骨部25PCの先端に設けられる。T字部材保持部29PCは、手首基部29PDに設けられる。T字部材29PAのTの横棒がEL6軸になり、Tの縦棒がXEL2軸になる。T字部材保持ヨーク29PBは、2枚の対向する板材と、前腕骨部25PC側で2枚の板材をつなぐ板材とを有する部材である。T字部材保持ヨーク29PBは、T字部材29PAのTの横棒の両端を回転可能に保持する。ベアリング29PE(図68に図示)は、T字部材保持ヨーク29PBとT字部材29PAとの間に存在して、両者を回転可能にする。T字部材保持部29PCは、T字部材29PAのTの縦棒を回転可能に保持する部材である。ベアリング29PF(図68に図示)は、T字部材保持部29PCとT字部材29PAとの間に存在して、両者を回転可能にする。T字部材保持部29PCは、等脚台形のような断面を有する部材である。T字部材保持部29PCの台形の下底側の側面に、T字部材29PAが挿入される。手首基部29PDは、円盤状の部材である。手部26Pが存在する側とは反対側の手首基部29PDの面に、T字部材保持部29PCが接続する。
T字部材保持部29PCには、前腕外側アクチュエータ35Pおよび前腕内側アクチュエータ36Pが有する固定長リンクの他端が回転可能に接続する。
前腕外側アクチュエータ35Pおよび前腕内側アクチュエータ36Pは、手首関節部29Pでの回転角度を変更する。前腕外側アクチュエータ35Pと前腕内側アクチュエータ36Pは、同様な形状である。前腕外側アクチュエータ35Pおよび前腕内側アクチュエータ36Pは、それぞれ移動部材と、移動部材に一端が接続する固定長リンクを有する。2本の固定長リンクの他端が手首関節部29Pに接続する。手首関節部29Pは、一端が移動部材により移動する2本の固定長リンクにより駆動される。前腕外側アクチュエータ35Pおよび前腕内側アクチュエータ36Pは、前腕部25Pに設けられる。
前腕外側アクチュエータ35Pの構造を説明する。前腕外側アクチュエータ35Pは、ねじ棒35PA、移動部材35PB、レール35PC、リンク35PD、モータ設置板35PE、モータ35PF、ベルト35PG、プーリ35PHおよびプーリ35PJを有する。ねじ棒35PAの両端は、ねじ棒保持部25PEおよびねじ棒保持部25PFに回転可能に保持される。ねじ棒保持部25PEおよびねじ棒保持部25PFでは、ねじ棒35PAを保持する部分に直方体状の部材を設けている。移動部材35PBは、ねじ棒35PAの雄ねじに噛み合う雌ねじが設けられた貫通穴を有する。レール35PCは、アクチュエータ構造部25PDの縦板部の側面に、ねじ棒35PAと平行に設けられる。移動部材35PBは、レール35PCを挟む部分を有する。移動部材35PBはレール35PCを挟むので、ねじ棒35PAが回転すると、移動部材35PBが回転することなくねじ棒35PAに沿って移動する。
モータ設置板35PEは、手部26P側に存在するねじ棒保持部25PEに設けられる。モータ設置板35PEは、前腕部25Pが延在する方向に対して略垂直に設けられる。モータ設置板35PEに垂直に、かつねじ棒35PAに平行に、モータ35PFがモータ設置板35Pに取り付けられる。ねじ棒35PAおよびモータ35PFの回転軸は、モータ設置板35Pに設けられた開口を通る。ベルト35PG、プーリ35PHおよびプーリ35PJは、モータ35PFの回転をねじ棒35PAに伝える。プーリ35PHは、ねじ棒35PAに取り付けられる。プーリ35PJは、モータ35PFの回転軸に取り付けられる。ベルト35PGは、プーリ35PHおよびプーリ35PJにかけ渡される。モータ設置板35Pのモータ35PFが存在しない側に、プーリ35PH、プーリ35PJおよびベルト35PGが設けられる。ベルト35PGにより連結されているので、モータ35PFの回転軸が回転すると、ねじ棒35PAが回転する。
移動部材35PBは、ねじ棒35PAが延在する方向から見ると、1個の角を共有して直交する2個の長方形を組み合わせて、共有する角を凹な円弧面により除いたような形状である。移動部材35PBの2個の長方形の部分の厚さは、同じである。別の言い方をすると、移動部材35PBは、2個の直方体を連結部材で結合したような形状を有する部材である。連結部材は、凹な円弧状の側面と2個の直交する平面とを有する形状を有する部材である。移動部材35PBの1個の長方体には、ねじ棒35PAが貫通する。もう1個の長方体は、レール35PCを挟む。レール35PCを挟む側の直方体の部分にリンク35PDの一端が2回転自由度で回転可能に接続する。リンク35PDの長さは、一定で変化しない。リンク35PDは、ねじれを可能とする1回転自由度を有する。
リンク35PDの一端が移動部材35PBに回転可能に接続する箇所を、前腕外側リンク取付部J10Pと呼ぶ。前腕外側リンク取付部J10Pは、実施の形態1の移動部材3Dに設けられる上腕外側リンク取付部J8と同様な構造である。前腕外側リンク取付部J10Pは、2軸ジンバルである。前腕外側リンク取付部J10Pでは、移動部材35PBに回転可能に設けられたヨークがリンク35PDの一端に設けられた軸部材を回転可能に保持する。前腕外側リンク取付部J10Pのヨークは、アクチュエータ構造部25PDの縦板部に垂直に設けられる。
リンク35PDの他端は、手部26P(厳密には、T字部材保持部29PC)に2回転自由度で回転可能に接続する。リンク35PDの一端が手部26Pに接続する箇所を、手外側リンク取付部J13Pと呼ぶ。手外側リンク取付部J13Pは、前腕外側リンク取付部J10Pと同様な構造である。
前腕内側アクチュエータ36Pは、ねじ棒36PA、移動部材36PB、レール36PC、リンク36PD、モータ設置板36PE、モータ36PF、ベルト36PG、プーリ36PHおよびプーリ36PJを有する。リンク36PDの一端は、前腕内側リンク取付部J11Pにより、2回転自由度で回転可能に移動部材36PDに接続する。リンク36PDの他端は、手内側リンク取付部J14Pにより、2回転自由度で回転可能に移動部材36PDに接続する。
前腕内側アクチュエータ36Pは、前腕外側アクチュエータ35Pと同様な構造を有する。前腕内側アクチュエータ36Pについては、詳細な構造の説明を省略する。
前腕部25Pの裏側に、モータ35PF、モータ28PFおよびモータ36PFを並行して配置している。そうすることで、前腕部25Pの幅および厚みを小さくできる。
腕部10Pでは、ギア駆動による関節部とリンク駆動による関節部とを組み合わせるハイブリッド方式の駆動方式を採用している。2回転自由度を持たせる肩関節部では、1回転自由度は、上腕部を通り上腕部を回転させる。2回転自由度を有する肘関節部では、1回転自由度は、前腕部を通り前腕部を回転させる。そのため、腕部10Pをコンパクトにでき、駆動範囲を人間と同等以上にできる。ハイブリッド駆動方式は、必要なパワーを出すことができ、かつ静かである。また、関節部を高精度に駆動することが可能になる。
図69から図76を参照して、手部26Pの構造を説明する。図69は、手部26Pの斜視図である。図70は、手部26Pの別の方向から見た斜視図である。図71から図76は、手部26Pの正面図、右側面図、背面図、左側面図、平面図および底面図である。図69から図76では、親指部93を手の平側に回転移動させた状態を示している。
手部26Pは、人間の手と同様に5本指である。手部26Pは、手首取付部91、手基部92、親指部93、第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97を有する。手首取付部91は、手部26Pを手首関節部29Pに接続する。手基部92は、手の平に相当する。手基部92から5本の指部が出る。親指部93は親指に対応し、第1指部94が人差し指に対応し、第4指部97が小指に対応する。第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97は、並行して延在する。手基部92から第1指部94などの指先に向かう方向を指先方向と呼ぶ。第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97が並ぶ方向を手幅方向と呼ぶ。第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97のそれぞれを、普通指部と呼ぶ。手部26Pは、4本の普通指部と1本の親指部を有する。4本の普通指部は、ほぼ同じ方向を向いて並ぶ。
親指部93は、指先方向に平行な回転軸の回りを回転可能である。第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97は、手幅方向に平行な回転軸を有する指関節部の回りに曲げることができる。手幅方向は、手首関節部29Pにおける前後方向回転面に平行である。指先方向は、前後方向回転面に対して、約17度の角度で外側に開いている。
手首取付部91は、折れ曲がった板材である。手首取付部91は、取付板部91Aおよび手接続部91Bを有する。手首関節部29P側の取付板部91Aは、手首基部29PDと接続する。手首基部29PDと取付板部91Aの間に、別の部材がある。手首基部29PDと取付板部91Aの間の部材は、無くてもよい。手接続部91Bは、手基部92の手の甲側に接続する。なお、普通指部が曲がる側を手の平側と呼び、その反対側を手の甲側と呼ぶ。手部26Pでは、手の平側を正面とし、手の甲側を裏面とする。
手基部92は、手基部フレーム92A、掌肉部92B、親指基部フレーム92Cおよび凸平面部92Dを有する。手基部92は、手の平に相当する部分である。手基部フレーム92Aは、4本の普通指部が有する指関節部を回転させるためモータなどを収納する。手基部フレーム92Aは、外形が略長方形である。手基部フレーム92Aは、手の甲側に4個の開口があり、両側面にもそれぞれ1個の開口がある。手基部フレーム92Aは、指先側に段差を有する。第2指部95が接続する部分が手首取付部91から最も遠く、第3指部96、第4指部97が接続する部分では少しずつ近くなる。第1指部94が接続する部分と、第3指部95が接続する部分とでは、手首取付部91からの距離が同じぐらいである。
手基部フレーム92Aの手の平側に、掌肉部92Bがある。掌肉部92Bは、物体などを手部26Pで把持しやすくするための窪みなどを有する形状である。掌肉部92Bは、樹脂製であり、適度な弾力を持たせる。掌肉部92Bは、普通指部の指元の部分、親指基部フレーム92Cの手の平側にも存在する。親指基部フレーム92Cは、親指部93を回転させる機構などを収納する。親指基部フレーム92Cは、手基部フレーム92Aの手首側に接続する。親指基部フレーム92Cは、手基部フレーム92Aよりも厚い。手の平側で、親指基部フレーム92Cと手基部フレーム92Aの間には段差がある。掌肉部92Bは、この段差を滑らかにつなぐ曲面形状を有する。
掌肉部92Bには、第1指部94、第2指部95および第3指部96の指の付け根の少し手首側に、それぞれ1個の凸平面部92Dが設けられる。凸平面部92Dは、周囲の掌肉部92Bよりも3mm程度出ている。凸平面部92Dは、幅が5mm程度で長さが15mm程度の略長方形の平面形状で、周囲から突出している。凸平面部92Dは、第1指部94、第2指部95および第3指部96のそれぞれを曲げた時に指先が接触する位置に設けている。凸平面部92Dを設けているので、指先と掌肉部92Bの間に薄い紙などを把持できる。
親指基部フレーム92Cは、第3指部96および第4指部97の根元のあたりでは、手基部フレーム92Aよりも厚い。親指基部フレーム92Cは、第1指部94および第2指部95の根元のあたりでは、手基部フレーム92Aよりも薄い。親指基部フレーム92Cが有する厚みが小さい部分は、指先方向の長さも短くなっている。親指基部フレーム92Cと手基部フレーム92Aの間に、親指部93の親指元部93Aが回転可能に接続する。親指元部93Aは、手幅方向に回転可能である。親指基部フレーム92Cの内部には、親指元部93Aを回転させるためのモータおよびウォームギア機構が収納されている。
親指部93は、親指元部93A、親指回転関節部93D、第2指節部93B、爪部93C、第2指関節部93Eおよびモータ93Gを有する。指先方向から見ると、親指元部93Aは長方形の1個の角を切り取った略5角形の形状である。親指元部93Aの厚さは一定であり、親指元部93Aは略5角柱の外形を有する。親指回転関節部93Dは、親指元部93Aを親指基部フレーム92Cに対して回転可能に接続する。親指部93は、伸ばした4本の普通指部と略同一平面にある位置から、手基部92に対向する位置まで回転できる。
第2指節部93Bは、親指元部93Aの手の平側かつ親指基部フレーム92Cから遠い側に、親指元部93Aに接続する。第2指関節部93Eは、第2指節部93Bを親指元部93Aに回転可能に接続する。モータ93Gは、第2指関節部93Eを回転させる動力を発生する。モータ93Gが発生する動力は、ウォームギア機構により伝えられて、第2指関節部93Eを回転させる。
第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97は、同様な構造である。図では、符号が付けやすい、第1指部94または第4指部97に符号をつける。ここでは、第1指部94の構造を説明する。第1指部94は、第1指節部94A、第2指節部94B、爪部94C、第1指関節部94D、第2指関節部94E、モータ94G、アイドラギア94Hおよびアイドラギア94Jを有する。第2指節部94Bは、人間の指において指先から2個の指節に相当する長さを有する。第2指節部94Bの腹側の面は、2個の指節部が微小な角度を有して接続している状態の形状である。
第1指部94は、手基部92に近い側からウォーム収納部94F、第1指節部94Aおよび第2指節部94Bが直列に接続する。ウォーム収納部94Fは、手基部92に対して指先方向に接続する。ウォーム収納部94Fと第1指節部94Aの間には、第1指関節部94Dが存在する。第1指関節部94Dは、第1指節部94Aをウォーム収納部94Fに回転可能に接続する。第1指節部94Aと第2指節部94Bの間には、第2指関節部94Eが存在する。第2指関節部94Eは、第2指節部94Bを第1指節部94Aに回転可能に接続する。第1指関節部94Dと第2指関節部94Eは、連動して同じ方向に回転する。そうすることで、1本の普通指部あたり1個のモータで2個の指関節部を曲げ伸ばしできる。第2指関節部94Eの回転角度の第1指関節部94Dの回転角度に対する比の値は、例えば50%である。
第1指関節部94Dおよび第2指関節部94Eを曲げると、第2指節部94Bの指先が第1指部94の付け根の付近に設けられた凸平面部92Dに接触する。第2指部95、第3指部96に関しても、指先がその指の付け根の近くの凸平面部92Dに接触する。そのため、第1指部94、第2指部95、第3指部96の何れか少なくとも1本の普通指部の指先と凸平面部92Dの間で、薄い紙などを持つことができる。第1指部94を最も伸ばした状態では、第1指関節部94Dは約170度に開き、第2指関節部94Eは約175度で開く。
ウォーム収納部94Fは、手首関節部29P側から見ると長方形の形状である。ウォーム収納部94Fは指先方向に延在して、第1指関節部94Dよりも指先側にまで伸びる。第1指節部94Aは、略直方体の形状である。第1指節部94Aの根元の手の甲側および手首関節部29P側にはウォーム収納部94Fが存在する。第2指節部94Bは、指先側の面が斜めになった略直方体の形状である。第2指節部94Bの指先には、指先方向および手幅方向に微小な格子状の突起が設けられている。第2指節部94Bの指先の手の甲側には、爪部94Cが設けられる。
モータ94Gは、第1指関節部94Dと第2指関節部94Eを回転させる動力を発生させる。モータ94Gは、手基部フレーム92Aの内部に存在する。モータ94Gが発生する動力を第1指関節部94Dに伝えるためのウォームギア機構は、ウォーム収納部94Fの内部に存在する。第1指節部94Aには、2個のアイドラギア94Hおよびアイドラギア94Jが設けられる。アイドラギア94Hおよびアイドラギア94Jは、第1指関節部94Dの回転軸に設けられたギアの回転を、第2指関節部94Eの回転軸に設けられたギアに伝える。手部26Pでは、親指部93に2個のモータ、4本の普通指部に各1個のモータを備える。
手部26Pでは、親指部93、第1指部94、第2指部95、第3指部96および第4指部97を、それぞれ独立に曲げ伸ばしできる。親指部93は、手基部92の側面の位置から手基部92と対向する位置に回転移動できる。親指部93を手基部92の側面の位置にして、5本の指部および手基部92を水平に上に向けると、大きな物体をその上に載せることができる。親指部93を基部92と対向する位置にすると、手基部92または普通指部と親指部93との間で、物体をつかむことができる。
手部26Pでは、指関節部を駆動するためのすべての機構が手部26Pの内部に設けられている。そのため、手部26Pだけを取外してメンテナンスや故障の修理などができる。手部26Pでは、指関節部および親指回転関節部ではウォームギア機構を利用している。そのため、電力の供給が停止した場合でも、指関節部および親指回転関節部では、電力の供給が停止した時点での角度を維持できる。そのため、停電が発生した際にロボット1Pが物体を把持していた場合も、ロボット1Pは物体を手から離すようなことはない。
図77を参照して、遠隔操作装置3Pのソフトウェア構成を説明する。図77は、実施の形態5に係るロボット遠隔操作システムの機能構成を説明するブロック図である。制御演算装置60Pは、ロボット1Pを遠隔制御するために、構造データ記憶部62P、状態データ記憶部63P、操作指示データ生成部64Pを変更している。
ロボット1Pは、現場カメラ4P、胴体支持アーム12Pなどの骨格部71P、アーム接続部14Pなどの関節部72P、車両部9P、モータ73P、アクチュエータ74P、制御部75Pおよび通信部76を、主に有して構成される。
骨格部71Pは、胴体支持アーム12P、胴下部21P、胴上部20P、腕接続部19P、上腕部24P、前腕部25P、手部26Pである。関節部72Pは、アーム接続部14P、胴体接続部13P、胴体交差回転部23P、腕接続部回転部20PA、肩関節部27P、肘関節部28Pおよび手首関節部29Pである。
ロボット1Pの被操作部は、アーム接続部14P、胴体接続部13P、胴体交差回転部23P、腕接続部回転部20PA、肩関節部27P、肘関節部28P、手首関節部29Pおよび手部26Pである。
モータ73Pは、アーム接続部14P、胴体接続部13P、胴体交差回転部23P、腕接続部回転部20PA、手首関節部29P以外の腕部10Pの関節部、および手部26Pの指関節部を、回転させる動力を発生させる。アクチュエータ74Pは、前腕外側アクチュエータ35Pおよび前腕内側アクチュエータ36Pであり、手首関節部29Pを回転および静止させる。
制御部75Pは、制御演算装置60Pからの制御信号を基にモータ73Pおよびアクチュエータ74Pを制御する。
構造データ記憶部62Pは、ロボット1Pの構造を表現する構造データを記憶する。構造データ記憶部62Pには、指示動作対応データ65PPを記憶しておく。指示動作対応データ65PPは、足入力装置6で検出する角度と、ロボット1Pの動作の対応を表現するデータである。状態データ記憶部63Pは、ロボット1Pの状態を表す状態データを記憶する。操作指示データ生成部64Pは、ロボット1Pの被操作部を制御する操作指示データを生成する。
図78に、実施の形態5での指示動作対応データ65PPを示す。指示動作対応データ65PPでは、δXEL1を使用しない。車両部9Pが移動していない場合に、δAZ3をAZ3軸の回りの回転角度であるθAZ3に対応させる。車両部9Pが移動していない場合かどうかは、オペレータ90が操作する何らかのスイッチの状態により判断する。
この実施の形態5では、足入力ユニット431は、胴体接続部13Pを操作対象部とする胴体操作ユニットである。足入力ユニット432は、クローラ移動部15Lを操作対象部とする左走行部操作ユニットである。足入力ユニット433は、クローラ移動部15Rを操作対象部とする右走行部操作ユニットである。足入力ユニット433は、姿勢変更部の腕接続部回転部20PAも操作対象部に含む。足入力ユニット434は、アーム接続部14を操作対象部とするアーム操作ユニットである。足入力ユニット434は、姿勢変更部の胴体交差回転部23Pも操作対象部に含む。
実施の形態5に係るロボット遠隔操作システムによれば、実施の形態1の場合と同様に、ロボット1Pを1人のオペレータ90が遠隔操作できる。
指示動作対応データでは、θAZ3を、δXEL1に対応させてもよい。θAZ3を、δAZ2に対応させてもよい。θAZ2とθAZ3とを同じ角度だけ反対方向に回転させる操作を、δAZ2またはδAZ3に対応させてもよい。ロボット1Pの車両部9P、アーム支持部14P、胴体支持部13P、胴体部11Pを操作できれば、指示動作対応データはどのように定義してもよい。車両部がサブクローラを有するものでもよい。
実施の形態4に係るロボット遠隔操作システムで使用するような上体入力装置により、腕部10Pを遠隔操作するようにしてもよい。上体入力装置は、腕基部関節部および肩関節部での接続角度である肩関節角度を計測する肩関節計測部、肘関節部および上腕回転軸での接続角度である肘関節角度を計測する肘関節計測部、手首関節部および前腕部回転軸の接続角度である手首関節角度を計測する手首関節計測部および腕制御信号生成部を備えるものであればよい。肩関節計測部が有する肩計測関節は、腕基部関節部および肩関節部と同じ回転自由度で回転可能に上腕構造部を胴体構造部に接続する。肘関節計測部が有する肘計測関節は、肘関節部および上腕回転軸と同じ回転自由度で回転可能に前腕構造部を上腕構造部に接続する。手首関節計測部が有する手首計測関節は、手首関節部および前腕部回転軸と同じ回転自由度で回転可能に手構造部を前腕構造部に接続する。腕制御信号生成部は、肩関節角度に基づき腕基部関節部および肩関節部を制御する制御信号を生成し、肘関節角度に基づき上腕部回転軸の回りの回転および肘関節部を制御する制御信号を生成し、手首関節角度に基づき前腕部回転軸の回りの回転および手首関節部を制御する制御信号を生成する。
腕制御信号生成部である制御信号生成部は、肩関節角度に基づき腕基部関節部および肩関節部27Pを制御する制御信号を生成し、肘関節角度に基づき上腕部回転軸の回りの回転および肘関節部28Pを制御する制御信号を生成し、手首関節角度に基づき前腕部回転軸の回りの回転および手首関節部29Pを制御する制御信号を生成するようにすればよい。
各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の変形や一部の構成要素を省略すること、あるいは一部の構成要素の省略や変形をした各実施の形態の自由な組み合わせが可能である。