JP2021048033A - 電解質膜用支持体 - Google Patents

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Abstract

【課題】取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現可能な、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体の提供を目的とする。【解決手段】ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量が38万よりも高いときに、そして、繊維集合体における前記値の最低値が5.8より大きいときに、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現可能な、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体を提供できることを見出した。【選択図】 なし

Description

本発明は、電解質膜用支持体に関する。
近年、燃料電池の開発が活発化している。そして、当該開発において薄型化した燃料電池や内部抵抗の低い燃料電池を提供できることから、燃料電池の両電極間に設ける電解質膜として厚さの薄い電解質膜が求められている。しかし、厚さの薄い電解質膜は、取り扱い時や燃料電池の製造過程中における形状安定性や、燃料電池の使用中における寸法安定性に劣ることから、電解質膜を繊維集合体などの電解質膜用支持体で補強することが試みられている。
このような電解質膜用支持体として、例えば、特表2019−517111号公報(特許文献1)や特開2017−050163号公報(特許文献2)あるいは特開2013−062240号公報(特許文献3)などにも開示されているように、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体が検討されてきた。
特表2019−517111号公報(特許請求の範囲、0008など) 特開2017−050163号公報(特許請求の範囲、0017など) 特開2013−062240号公報(特許請求の範囲、0044−0047など)
本願発明者らは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体へ、電解質膜を構成可能な樹脂を付与してなる電解質膜について検討を行った。
検討の結果、当該電解質膜は、燃料電池に組み込み使用するなど湿潤した際に膨潤して意図せず寸法変化し易いという問題を有していた。
更に、取り扱い時や燃料電池の製造過程中に外力を受け伸張し、その後、外力から開放されると収縮するが、元の形状まで戻らないことがあるという問題を有していた。同様に、燃料電池に組み込み使用するなど湿潤すると膨潤(伸張)し、その後、乾燥すると収縮するが、元の形状まで戻らないことがあるという問題を有していた。
特にこれらの問題は、薄い電解質膜であるときに顕著に発生する傾向があった。
そして、このような問題を有する電解質膜は、取扱い性や燃料電池の製造効率に劣るものであり、更には、燃料電池の性能低下を招く原因となる恐れがあった。
本発明は、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現可能な、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体の提供を目的とする。
本発明は、「ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体であって、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量は38万より大きく、前記繊維集合体における目付(単位:g/m)あたりの伸度(単位:%/15mm)の最低値が5.8より大きい、電解質膜用支持体。」である。
本願発明者らが検討を続けた結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量と、当該繊維集合体における目付(単位:g/m)あたりの伸度(単位:%/15mm)の値に着目することで、前述の問題を解決できることを見出した。
具体的には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量が38万よりも高いときに、そして、繊維集合体における前記値の最低値が5.8より大きいときに、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現可能な、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体を提供できることを見出した。
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。また、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
本発明の電解質膜用支持体は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備えている。
本発明でいうポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維とは、直鎖構造中に−(CHCF−構造を備える樹脂であるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有した繊維を指す。なお、当該構造が連続して構成されている樹脂(ホモポリマー)であっても、他の構造と共重合してなる体樹脂であってもよい。以降、ポリフッ化ビニリデン系樹脂をPVDF、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維をPVDF繊維と称することがある。
分子量が38万よりも高いPVDFを採用することによって、湿潤することに伴い発生する意図しない寸法変化が抑制された、より寸法変化が小さい電解質膜を提供可能な電解質膜用支持体を実現できる。そのため、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現できる。
当該分子量は38万よりも高いのであれば適宜調整でき、分子量が57万以上のPVDFを採用することができ、分子量が75万以上のPVDFを採用することができる。
なお、本発明にかかるPVDF繊維は、分子量が38万よりも高いPVDFを含んでいるのであれば、分子量が38万以下のPVDFを含んでいてもよい。しかし、上述した効果が発揮され易いように、PVDF繊維を構成するPVDFは、分子量が38万よりも高いPVDFのみであるのが好ましい。
本発明でいう分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーに基づき測定した値である。なお、カタログや論文などに採用するPVDFの分子量が記載されている場合には、その分子量を当該PVDFの分子量とすることができる。
当該PVDFとして、例えばソルベイ社製PVDF−HFP(HFP構造との共重合体樹脂)、ソルベイ社製PVDF−CTFE(CTFE構造との共重合体樹脂)などを採用できる。
また、PVDF繊維を構成する、PVDFの種類は一種類あるいは複数種類であってもよい。
PVDF繊維中に含まれるPVDFの割合は適宜調整できるが、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現できる電解質膜用支持体を提供できるよう、PVDF繊維を構成する樹脂はPVDFのみであるのが好ましい。
PVDF繊維の平均繊維径は、細いほど前述した効果が発揮され易くなることから、平均繊維径が4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのより好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、500nm以下であるのがより好ましい。なお、下限値も適宜調整できるが、0.1μm以上であるのが現実的である。なお、本発明でいう「繊維径」は、繊維を撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいい、測定対象となる50本の繊維における各繊維径の平均値を「平均繊維径」という。
また、PVDF繊維の繊維長も本発明の効果が発揮されるよう適宜調整するが、0.1mm以上であることができ、0.5mm以上であることができ、1mm以上であることができる。繊維長が長いPVDF繊維を含んだ繊維集合体を備えることで、表面平滑な電解質膜用支持体を提供し易い。その結果、より取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現できる電解質膜用支持体を提供できる。そのため、PVDF繊維は連続長を有するのが好ましく、構成繊維が連続長を有するPVDF繊維のみである繊維集合体がより好ましい。このような繊維集合体は、直接紡糸法を用いることで調製可能である。なお、「繊維長」は、繊維を撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した、測定対象となる50本の繊維における各長さ方向の長さの平均値を「繊維長」という。また、当該測定において、測定対象となる繊維の繊維長が長過ぎるため、繊維における長さ方向の長さを測定することが困難である場合、当該繊維は連続長を有すると判断できる。
本発明でいう繊維集合体とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛である。本発明の電解質膜用支持体は、繊維集合体(特に、不織布)を含んでいるため柔軟であり、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れる電解質膜用支持体である。
繊維集合体に含まれるPVDF繊維の割合は適宜調整できるが、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現できる電解質膜用支持体を提供できるよう、電解質膜用支持体の構成繊維はPVDF繊維のみであるのが好ましい。
繊維集合体は構成繊維として、前述したPVDF繊維以外にも、他の有機樹脂を含有した他の繊維を含んでいても良い。有機樹脂として例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、他のフッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を採用できる。
なお、PVDFならびにこれらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
繊維集合体の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
構成繊維は、一種類の有機樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の有機樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
繊維集合体が、低融点成分のみからなる熱融着性繊維、あるいは、高融点成分と低融点成分を備えた一部融着型の熱融着性繊維を含み構成されている場合には、低融点成分によって繊維同士を熱融着して繊維集合体に強度を付与でき好ましい。
また、繊維集合体は機能材(例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ粒子、金属有機構造体(MOF)、各種ポリマー粒子)を含んでいても良い。繊維集合体の構成繊維中に含有されていても、構成繊維同士の間(繊維集合体の空隙中)に存在する態様であっても良い。
また、他の繊維の平均繊維径は、細いほど前述した効果が発揮され易くなることから、20μm以下であるのが好ましく、17μm以下であるのがより好ましく、15μm以下であるのが更に好ましく、13μm以下であるのが更に好ましい。上限は特に限定するものではないが、0.1μm以上であるのが適当である。
他の繊維の繊維長も、本発明の効果が発揮されるよう適宜調整するが、0.1mm以上であることができ、0.5mm以上であることができ、1mm以上であることができる。ステープルファイバーであっても、連続長を有する繊維であってもよい。
PVDF繊維と他の繊維を備えた繊維集合体において、PVDF繊維の質量と他の繊維の質量の比率は適宜調整するが、前述した効果が発揮され易いよう、99質量%:1質量%〜20質量%:80質量%、95質量%:5質量%〜30質量%:70質量%、85質量%:15質量%〜40質量%:60質量%であるのが好ましい。
繊維集合体が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
特に、厚さが薄く構成繊維が均一に分散し均一な孔径を有する繊維集合体を調製可能であることから、直接紡糸法により調製された繊維集合体であるのが好ましい。
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製してもよい。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは熱融着性繊維によって、構成繊維同士を接着一体化あるいは熱融着させる方法などを挙げることができる。
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射する方法などを用いることができる。
使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)、アクリル系樹脂などを使用できる。
繊維集合体が織物や編物である場合、前述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など繊維集合体を、前述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
繊維集合体の、例えば、目付、厚さ、空隙率、強度、伸度などの諸物性は、本発明の効果が発揮される電解質膜用支持体を提供できるように、適宜調整する。
目付は、0.1〜50g/mであることができ、0.3〜45g/mであることができ、0.5〜40g/mであることができる。この「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙―坪量測定法)に規定されている方法に基づいて得られる坪量をいう。
厚さの薄い電解質膜用支持体を提供できるよう、繊維集合体の厚さは300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが更に好ましい。一方、厚さが薄過ぎる繊維集合体であると強度に劣る恐れがあるため、繊維集合体の厚さは0.5μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましく、2μm以上であるのが更に好ましい。この「厚さ」は、JIS B7502に規定されている外側マイクロメータ―(測定可能厚さ:0〜25mm)を用いて測定した値をいう。
繊維集合体の空隙が多い程、柔軟性に富み取扱い性や燃料電池の製造効率に優れる電解質膜用支持体を実現できることから、繊維集合体の空隙率は40%以上が好ましく、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
一方、空隙が多過ぎると強度に劣る恐れがあるため、空隙率は99%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがより好ましく、90%以下であるのが更に好ましい。
この「空隙率」は次の式により得られる値をいう。
P=[1−M/(T×d)]×100
ここで、Mは繊維集合体の目付(単位:g/m)、Tは繊維集合体の厚さ(単位:μm)、dは繊維集合体を構成する各種有機樹脂の平均密度(単位:g/cm)を、それぞれ意味する。
繊維集合体の生産方向(MD方向)ならびに生産方向と垂直を成す方向(CD方向)における強度は適宜調整でき、0.7N/15mm幅以上であることができ、0.8N/15mm幅以上であることができ、0.9N/15mm幅以上であることができ、1.0N/15mm幅以上であることができる。この「強度」は、以下に述べる方法へ繊維集合体を供することで測定できる。
(強度の測定方法)
(1)測定対象から長方形の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):15mm)を採取した。このとき、測定対象の生産方向が判明している場合には、当該生産方向と長辺方向が平行を成すようにして、試料を採取した。
(2)引張り試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン(登録商標)、TM−111−100)を使用し、チャック間の初期つかみ間隔100mm、引張り速度50mm/min.の条件で、試料に破断が生じるまで長辺方向へ引張った。試料が破断するまでに測定される最大応力を、強度(N/15mm)とした。
(3)同様に合計10枚の試料について各々強度を求め、得られた値の平均値を、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(MD方向)の強度(N/15mm)とした。
(4)前記試料の長辺方向と平行を成す方向に対し、短辺方向が平行を成すようにして測定対象から新たに長方形の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):15mm)を採取した。
(5)前述した(4)の工程で採取した試料を(2)〜(3)の工程へ供することで、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(CD方向)の強度(N/15mm)を求めた。
繊維集合体のMD方向ならびにCD方向における伸度は適宜調整でき、5〜300%であることができ、10〜290%であることができ、15〜280%であることができ、20〜270%であることができ、25〜260%であることができ、30〜150%であることができる。この「伸度」は、以下に述べる方法へ繊維集合体を供することで測定できる。
(伸度の測定方法)
(1)測定対象から長方形の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):15mm)を採取した。このとき、測定対象の生産方向が判明している場合には、当該生産方向と長辺方向が平行を成すようにして、試料を採取した。
(2)引張り試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン(登録商標)、TM−111−100)を使用し、チャック間の初期つかみ間隔100mm、引張り速度50mm/min.の条件で、試料に破断が生じるまで長辺方向へ引張った。
(3)この時、次の式から得られる値を「伸度」とした。
L={(D−100)/100}×100
ここで、Lは伸度(単位:%/15mm)、Dは試料が破断した時のつかみ間隔の長さ(単位:mm)をそれぞれ意味する。このようにして、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(MD方向)の伸度(単位:%/15mm)を測定した。
(4)前記試料の長辺方向と平行を成す方向に対し、短辺方向が平行を成すようにして測定対象から新たに長方形の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):15mm)を採取した。
(5)前述した(4)の工程で採取した試料を(2)〜(3)の工程へ供することで、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(CD方向)の伸度(単位:%/15mm)を測定した。
なお、上述した(強度の測定方法)および(伸度の測定方法)において、測定対象のMD方向ならびにCD方向が不明である場合には、測定対象の様々な方向から短冊状の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):15mm)を、各方向につき3枚ずつ採取した。そして、各方向から採取した3枚の試料の各伸度を測定しその算術平均値を求めた。求めた各算術平均値の内で、最も低い値を示した試料における長辺方向を、測定対象のMD方向あるいはCD方向とした。
本発明の電解質膜用支持体は、電解質膜用支持体を構成する繊維集合体における目付(単位:g/m)あたりの伸度(単位:%/15mm)の最低値が5.8より大きいことを特徴とする。当該値は、繊維集合体の伸度(単位:%/15mm)の数値を目付(単位:g/m)の数値で除し算出した値(単位なし)である。
本構成を備える電解質膜用支持体によって、上述した課題を解決できる理由は完全には明らかにできていないが、本願出願人は以下の理由によるものであると考えた。
電解質膜の伸長し易さは主として電解質膜用支持体に影響を受け、また、伸張した電解質膜の収縮し易さは主として電解質膜を構成する樹脂に影響を受ける。しかし、電解質膜が伸長する際に電解質膜用支持体に破損が発生した場合、具体的には、電解質膜用支持体が備えている繊維集合体に破断や構成繊維の切断が発生した場合、当該破損の発生によって電解質膜は元の形状まで戻らなくなる。
つまり、元の形状まで収縮し得る電解質膜であるか否かは、電解質膜用支持体が破損することなく伸張できる性質を有するか否かに左右される。
本願出願人は、破損することなく伸張できる性質を有する電解質膜用支持体であるか否かは、電解質膜用支持体が備えている繊維集合体の伸度の高低のみでは評価できないことを見出した。そして、電解質膜用支持体が備えている繊維集合体の伸度をその目付(繊維集合体における、その物性に寄与している諸構成物の総量を意味すると考えられる)で除し算出される値を指標とすることで、繊維集合体の破損することなく伸張できる能力、つまり、当該繊維集合体を備える電解質膜用支持体の破損することなく伸張できる能力を、正確に評価できることを見出した。
そして、当該値の最低値が5.8より大きい繊維集合体を備える電解質膜用支持体によって、伸張後に元の形状まで戻る電解質膜を提供できることを見出したものである。
より上述の効果が発揮された電解質膜を実現できるよう、当該最低値は6以上であるのが好ましく、6.5より大きいのがより好ましく、7以上であるのがより好ましく、8以上であるのがより好ましく、9以上であるのが更に好ましく、10以上であるのが更に好ましい。一方、当該最低値の上限は適宜調整できるが、過剰に大きい場合には電解質膜を調製し難くなる恐れがあるため、100以下であるのが現実的である。
次いで、本発明にかかる電解質膜用支持体の製造方法について、例示し説明する。なお、既に説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
本発明にかかる電解質膜用支持体の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
(1)分子量が38万よりも高いPVDFを溶媒に溶解させてなる紡糸液、あるいは、分子量が38万よりも高いPVDFを溶媒に分散させてなる紡糸液を用意する工程、
(2)紡糸液を細径化することで紡糸し、得られた繊維を捕集して繊維ウェブを調製する工程、
(3)繊維ウェブから紡糸液を構成する溶媒あるいは分散媒を除去する工程、
を備える繊維集合体の製造方法を用いることができる。
まず、工程(1)について説明する。
溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択するものであるが、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。なお、溶媒あるいは分散媒は一種類であっても、複数種類混合してなる混合溶媒あるいは混合分散媒であってもよい。
紡糸液中に含まれるPVDFの質量(固形分質量)は、求める繊維集合体を調製できるよう適宜調整するが、1〜50質量%であることができ、5〜40質量%であることができ、10〜35質量%であることができる。
また、紡糸液中に機能材を含んでいても良い。紡糸液中に含まれる機能材の質量(固形分質量)は、求める繊維集合体を調製できるよう、適宜選択するが、0.1〜30質量%であることができ、0.5〜20質量%であることができ、1〜15質量%であることができる。
紡糸液の温度や粘度は求める繊維集合体を調製できるよう、適宜選択する。紡糸液の温度は5〜40℃であることができ、10〜35℃であることができ、15〜30℃であることができる。また、紡糸液の粘度は0.05〜8Pa・sであることができ、0.1〜6Pa・sであることができ、0.2〜5Pa・sであることができる。なお、この「粘度」は粘度測定装置を用い、温度25℃で測定したシェアレート100s−1時の値をいう。
次いで、工程(2)について説明する。
紡糸液を細径化することで紡糸する方法は、求める繊維集合体を調製できるよう適宜選択するが、例えば、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を採用できる。静電紡糸法を採用する場合、紡糸液に電圧を付与すると共に、該紡糸液の吐出部分と離間させ設けた金属板などの対抗電極へ該電圧と反対の電圧を付与することで、紡糸液を対抗電極へ向け飛翔させ細径化させる。そして、細径化した紡糸液を捕集体へ捕集することで、捕集体上に繊維ウェブを形成する。なお、上述した金属板などの対抗電極を捕集体としてもよい。
そして、工程(3)について説明する。
繊維ウェブ中に含まれている溶媒あるいは分散媒を除去する方法は適宜選択できるが、一例として、繊維ウェブを加熱処理へ供する方法を採用できる。なお、加熱装置の種類は適宜選択でき、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する装置、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機、赤外線を照射し加熱できる装置などを用いた方法を採用できる。加熱装置による加熱温度は適宜選択するが、残留している溶媒あるいは分散媒を揮発させ除去可能であると共に、構成繊維などの構成成分が意図せず分解や変性しない温度であるように適宜調整する。
なお、繊維ウェブの構成繊維中に接着成分や架橋可能な樹脂が存在する場合は、加熱処理へ供することで接着成分による繊維接着を行っても、当該架橋可能な樹脂を架橋させても良い。
以上の製造方法によって、本発明にかかる構成を満足する繊維集合体を製造できる。調製した繊維集合体はそのまま電解質膜用支持体として使用してもよいが、表面を平滑化あるいは空隙率などを調整するためカレンダーなどの加圧装置へ供する、親水化処理へ供する、使用態様に合わせて形状を打ち抜くなど、各種の加工工程へ供してから電解質膜用支持体として使用してもよい。
また、別の多孔体、フィルム、発泡体などの他の構成部材を繊維集合体に積層し、当該積層体を電解質膜用支持体として使用してもよい。
本発明にかかる電解質膜用支持体を用いて、電解質膜を調製する方法は適宜選択できるが、電解質膜用支持体に電解質膜を構成する樹脂(膜構成樹脂)の溶液あるいは分散液を付与する方法を採用できる。付与する方法は適宜選択でき、ドクターブレードを用いる方法、グラビアロールを用いる方法など周知の方法を採用できる。なお、電解質膜用支持体に担持させる膜構成樹脂の量は適宜調整できる。
なお、膜構成樹脂として用途に合わせ周知の樹脂を採用できる。特に、燃料電池用電解質膜を調製する場合には、燃料電池用電解質膜の膜構成樹脂として使用可能であることが知られている(例えば、特開2004−119223などに開示されている)パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂、アルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂や、特開2018−018684や特開2017−195087などに開示されている無機−有機複合系樹脂などを採用するのが好ましい。
膜構成樹脂の溶液あるいは分散液が付与された電解質膜用支持体から、溶媒あるいは分散媒を除去する方法は適宜選択できるが、一例として、加熱処理へ供する方法を採用できる。なお、加熱装置の種類は上述した加熱装置から適宜選択できる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(紡糸液の調製方法)
分子量が75万のPVDFをジメチルホルムアミド(沸点:153℃)に溶解させ、紡糸液A(固形分濃度:14%、粘度:3Pa・s)を調製した。
分子量が38万のPVDFをジメチルホルムアミド(沸点:153℃)に溶解させ、紡糸液B(固形分濃度:20%、粘度:6Pa・s)を調製した。
分子量が57万のPVDFをジメチルホルムアミド(沸点:153℃)に溶解させ、紡糸液C(固形分濃度:16%、粘度:4Pa・s)を調製した。
(静電紡糸装置と静電紡糸条件)
・金属製ノズル(紡糸液吐出部分)における、紡糸液吐出部分の形状:内径0.44mmの円形状
・金属製ノズルの先端と、繊維捕集体(金属板)との距離:4cm
・紡糸液へ印加した電圧:8kV
・金属製ノズルから吐出された紡糸液:1g/時間
・静電紡糸環境の雰囲気:温度25℃、湿度35%RH
(比較例1)
紡糸液Aを、上述した(静電紡糸装置と静電紡糸条件)に基づき静電紡糸装置を用いて細径化することで紡糸した。そして、得られた繊維を捕集体である金属板の表面上に捕集して、繊維ウェブを調製した。
その後、調製した繊維ウェブを、表面温度を160℃に調整した加熱ロールと10分間接触させ、繊維ウェブから溶媒を除去して不織布を調製した。
更に、塗布装置(スリット厚さ:400μm)を用いて、不織布へナフィオン樹脂分散液(登録商標、固形分濃度:20質量%)を塗布した。この状態のまま加熱温度を80℃に調整したオーブンへ1時間供することで、ナフィオン樹脂中に電解質膜用支持体として不織布を備えてなる電解質膜を調製した。
(比較例2)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、そして、加熱ロールの表面温度を180℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(比較例3)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を5cmに変更したこと以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(実施例1)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を7cmに変更したこと、また紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(比較例4)
紡糸液Aの替わりに紡糸液Bを用いたこと、また金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、そして、紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(実施例2)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、そして、紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(実施例3)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、また湿度を45%に変更したこと、そして、紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(実施例4)
金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、そして、紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
(実施例5)
紡糸液Aの替わりに紡糸液Cを用いたこと、また金属製ノズルの先端と繊維捕集体(金属板)との距離を10cmに変更したこと、そして、紡糸液の総吐出量が異なること以外は、比較例1と同様にして不織布を調製した。
また、調製した不織布を用いたこと以外は比較例1と同様にして、電解質膜を調製した。
調製した各不織布ならびに各電解質膜の諸物性を評価し、表1まとめた。
なお、電解質膜の強度(単位:N/5mm)と伸度(単位:%/5mm)は、調製した電解質膜から長方形の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):5mm)を採取し、採取した試料を上述した(強度の測定方法)と(伸度の測定方法)へ供することで求めた。
また、調製した電解質膜の「寸法変化率」ならびに「延伸永久歪伸度」は、以下の方法で測定ならびに評価した。
(寸法変化率の測定方法)
(1)電解質膜から長方形の試料(MD方向:40mm、CD方向:30mm)を採取し、25℃、25%RH雰囲気に1日放置した。
(2)試料を80℃に調整した純水中に、30分間浸漬した。
(3)純水から試料を取り出した後、浸漬後の試料のMD方向及びCD方向の長さを測定した。
(4)測定値を次の式へ代入し、算出した値を絶対値で評価することでMD方向およびCD方向の各寸法変化率(単位:%)を算出した。
MD方向の寸法変化率(単位:%)=|{(L1−L0)/L0}|×100
L1:MD方向の浸漬後の長さ(mm)、L0:MD方向の浸漬前の長さ(mm)
CD方向の寸法変化率(単位:%)=|{(L3−L2)/L2}|×100
L3:CD方向の浸漬後の長さ(mm)、L2:CD方向の浸漬前の長さ(mm)
そして、算出したMD方向およびCD方向の各寸法変化率の平均値を求め、寸法変化率(単位:%)とした。
なお本測定は、電解質膜が膨潤した際に発生する寸法変化の程度を評価したものであり、測定値が小さいほど寸法変化し難い電解質膜であることを意味する。
(延伸永久歪伸度の測定方法)
(1)電解質膜から長方形の試料(MD方向:80mm、CD方向:40mm)を採取した。なお、電解質膜のMD方向と電解質膜を構成している電解質膜用支持体のMD方向が平行をなすようにした。
(2)手動延伸機(チャック間の初期つかみ間隔:50mm)を使用し、試料をMD方向へ5mm延伸した。
(3)その後、手動延伸機のチャックを開放して電解質膜を取り外し、電解質膜における延伸した方向の長さ(L4)を、マイクロノギスを用いて測定した。
(4)測定値を次の式へ代入し、算出した値を延伸永久歪伸度(単位:%)とした。
延伸永久歪伸度(単位:%)={(L4−80)/50}×100
なお、延伸永久歪伸度が0.0%でない電解質膜は、伸張後に元の形状まで戻ることができなかった電解質膜であることを意味する。そのため、当該電解質膜を用いて調製した燃料電池では、電解質膜の強度やガスバリア性や耐久性などが低下することに起因して、発電性能の低下が発生する恐れがあると考えられた。
また、本測定において試料をMD方向へ延伸している間に試料に破断が発生した場合、当該電解質膜は伸張後に元の形状まで戻ることができない電解質膜であると考えられる。更に、取扱い性や燃料電池の製造効率に劣るものであり、当該電解質膜を用いて調製した燃料電池では、電解質膜の強度やガスバリア性や耐久性などが低下することに起因して、発電性能の低下が発生する恐れがあると考えられた。
本測定において破断が発生した電解質膜であった場合には、表1の延伸永久歪伸度(%)欄に「破断」と記載した。
Figure 2021048033
比較例4と、比較例1〜3および実施例とを比較した結果から、PVDF繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体において、前記PVDFの分子量が38万より大きいことによって、湿潤した場合であっても寸法変化し難い(寸法変化(%)が小さい)電解質膜を提供できることが判明した。
また、比較例1〜3と、比較例4および実施例とを比較した結果から、電解質膜用支持体を構成する繊維集合体における目付(単位:g/m)あたりの伸度(単位:%/15mm)の最低値が5.8より大きいことによって、伸張後に元の形状まで戻ることができる(延伸永久歪伸度が0.0%である)電解質膜を提供できることが判明した。
以上から、本発明の構成を満足する電解質膜用支持体によって、取扱い性や燃料電池の製造効率に優れ、燃料電池の性能低下が防止された電解質膜を実現可能な、PVDF繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体を提供できる。
本発明は、電解質膜用支持体として好適に使用することができる。
なお、本発明に係る電解質膜用支持体は、電解質膜を構成するという用途以外にも、様々な産業用途(例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、水など液体の電気分解を行う際に用いる分離膜、医療用材料、イオン交換膜や透析膜、燃料電池の高分子電解質膜などといった様々な産業用途に使用可能な複合膜の支持体として、あるいは、キャパシタや一次/二次電池などの電気化学素子用セパレータ、プリプレグ、気体フィルタや液体フィルタなど)に使用できる。
また、本発明に係る電解質膜用支持体に粒子を担持させた構造体は、電解質膜以外にも、様々な産業用途(例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、医療用材料、イオン交換膜や透析膜、燃料電池の高分子電解質膜などといった様々な産業用途に使用可能な複合膜として、あるいは、キャパシタや一次/二次電池などの電気化学素子用セパレータ、プリプレグ、気体フィルタ膜や液体フィルタ膜など)に使用できる。

Claims (1)

  1. ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体を備える電解質膜用支持体であって、
    前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量は38万より大きく、
    前記繊維集合体における目付(単位:g/m)あたりの伸度(単位:%/15mm)の最低値が5.8より大きい、
    電解質膜用支持体。
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