以下、図面を参照しながら実施形態の避難誘導システム100について説明する。図1に示すように、避難誘導システム100は、コモンサーバ10と、イベント情報サーバ20と、ユーザ30或いは被誘導者40の携帯端末30a,40aと、複数の配送車両50と、複数の乗合車両60とで構成されている。なお、図1では、配送車両50、乗合車両60については、それぞれ1台のみ図示する。以下の説明では、避難誘導システム100のコモンサーバ10は、イベントの発生がない通常時には、複数の配送車両50と協働して配送機能を実行すると共に、複数の乗合車両60と協働して乗合輸送機能を実行するとして説明するが、イベントの発生がない場合にこれら以外の機能を実行していてもよい。
コモンサーバ10は、内部に情報処理を行うCPU等のプロセッサとメモリとを含むコンピュータである。コモンサーバ10には、地図情報データベース12、建物データベース13、位置情報データベース14を含むデータベース部11が接続されている。地図情報データベース12は、複数の配送車両50、複数の乗合車両60が走行する地域の道路、建物配置等の地図データが格納されている。建物データベース13は、配送車両50、乗合車両60が走行する地域の建物のフロア配置、エレベーター、エスカレータ等の昇降設備の配置、各フロアの什器、仕切り等の配置等、その建物の内部データを格納している。建物データベース13は、例えば、その建物のBIM(Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング))のデータとその建物内部の状態をスキャンしたスキャンデータとを組み合わせたものでもよい。位置情報データベース14は、ユーザ30或いは被誘導者40の携帯端末30a,40aから発信された位置情報を格納するものである。以下、複数の配送車両50、複数の乗合車両60がコモンサーバ10と通信しながら走行して、配送機能、乗合輸送機能を実行する地域をコモンサーバ10の管理エリアという。
イベント情報サーバ20は、消防、警察、自治体、気象庁、ガス会社、電気会社、セキュリティ会社等のデータ通信システムに接続されており、管理エリア内での火災、交通事故、停電、ガス漏れ等のイベントの発生情報を取得し、インターネット25を経由して取得したイベントの発生情報をコモンサーバ10に発信する。
ユーザ30,31,32は、イベントの発生がない通常時に避難誘導システム100が配送機能を実行する場合に、配送機能を利用して図2に示す荷物35の発送を依頼したり、配送された荷物35を受け取ったりする者である。また、被誘導者40は、イベントが発生した際にイベントの発生した地域或いは建物の中におり、避難場所まで誘導される者である。ユーザ30,31,32と被誘導者40とはそれぞれ携帯端末30a,31a,32a,40aを有している。各携帯端末30a,31a,32a,40aは、GPS等を利用した位置情報を発信する。各携帯端末30a,40aが発信した位置情報はインターネット25介してコモンサーバ10に送信され、位置情報データベース14に格納される。
図1において、配送車両50は、イベントの発生がない通常時には、ユーザ30から預かった荷物を他のユーザ30に配送する配送機能を有する電動車両である。配送車両50は、本体51とモータが内蔵された駆動輪52とを備えて自律走行する。本体51は、荷物を保持する荷受け部と、駆動輪52を駆動するためのバッテリと、電力制御装置と、コモンサーバ10との間で情報の授受を行う通信部と、コモンサーバ10から受信した情報に基づいて配送車両50を自律走行させる走行制御部とが収容されている。走行制御部は、内部に情報処理を行うCPU等のプロセッサとメモリとを含むコンピュータで構成されている。本体51は、外面である側面53と前後面54にディスプレイを備えており、コモンサーバ10と協働して配送機能を実行している際には、配送会社のロゴ55等を表示したり、広告を表示したりすることができる。
乗合車両60は、イベントの発生がない通常時には、乗客を乗せて所定の経路に沿って乗客を輸送する機能を有する電動車両である。乗合車両60は、乗客を乗せるボデー61とモータにより駆動される駆動輪62とを備えて自律走行して乗客の輸送を行う。ボデー61の内部には、配送車両50と同様、バッテリと、電力制御装置と、通信部と、走行制御部とが収容されている。また、乗合車両60も外面にディスプレイを備え、乗合輸送機能を実行する場合には、バス会社のロゴ65を表示したり、広告を表示したりできる。
次に、図2を参照しながらイベントの発生がない通常時の配送機能と乗合輸送機能の実行について簡単に説明する。以下の説明では、複数の配送車両50をパレットm1〜m3、乗合車両60をバスe1として説明する。なお、配送車両50と乗合車両60の台数は、この例に限らず、もっと多くてよい。また、図2においては紙面上側を北、紙面下側を南、紙面右側を東、紙面左側を西として説明する。図6,7についても同様である。
複数のパレットm1〜m3が配送機能を実行するコモンサーバ10の管理エリアの中には、複数の建物81,82が建設されている。建物81,82の周囲にはそれぞれ車道70と歩道71とが設けられている。コモンサーバ10は、建物81の中のユーザ31から荷物35の建物82のユーザ32への集荷配送依頼を受信すると、ユーザ31の携帯端末31aから発信される位置情報に基づいて、ユーザ31の近隣に位置しているパレットの検索を行う。そして、図2に示すように、建物81のすぐ近くの車道70を走行しているパレットm1に対し集荷配送指令を発信する。また、同時に、コモンサーバ10は、ユーザ31の現在の位置情報及び建物81の中でのユーザ31の位置情報、並びに建物81の周囲の地図情報、建物81の内部構成データをパレットm1に送信する。更に、コモンサーバ10は、パレットm1に配送先情報を送信する。
パレットm1は、コモンサーバ10から受信したデータに基づいて、ユーザ31までの走行経路を演算し、演算した走行経路に従って自律走行してユーザ31のところまで走行していく。パレットm1がユーザ31のところに到着するとユーザ31はパレットm1に荷物35を搭載する。パレットm1は荷物35が搭載されたことを確認したら、配送先に向かって自律走行を開始する。そして、図2に示すように、建物81を出て車道70を建物82に向かって走行する。この際、パレットm1は、建物82の内部構成データをコモンサーバ10から受信する。そして、パレットm1は、建物82の中に入り、ユーザ32の携帯端末32aの位置情報を受信しながら建物82の中にいるユーザ32のところまで自律走行していく。ユーザ32に荷物35を受け渡すと、パレットm1は、次のユーザ30に向かって自律走行する。パレットm2,m3もパレットm1と同様に配送機能を実行する。
また、バスe1は、コモンサーバ10の管理エリアの中の所定の経路を自動運転によって運行し、各バス停に停車して乗客を乗降させる。なお、バスe1は、コモンサーバ10と通信して地図データ、交通渋滞データ等を取得し、各バス停間の最適経路を計算し、その最適経路に従って自律走行して次のバス停まで走行してもよい。
次に、図3〜図8を参照しながら、イベントが発生した際のコモンサーバ10、複数の配送車両50、複数の乗合車両60の動作について説明する。以下の説明では複数の配送車両50は、パレットm1〜m20で構成され、複数の乗合車両60はバスe1〜e2で構成されるとして説明する。また、以下の説明では、一例として、コモンサーバ10の管理エリアの中の建物82で火災が発生し、建物82にいる者を屋外に避難させる場合について説明する。
図3のステップS101に示すように、コモンサーバ10は、イベントの発生がない場合には、管理エリアの中で先に図2を参照して説明した配送機能と乗合輸送機能を実行している。
図6に示すように、管理エリアの中には、建物81〜84が建設されており、各建物81〜84の周囲には、歩道71が配置されている。また、各建物81〜84の間には、車道70が通っている。建物82,83は、東側に隣接して前庭82a,83aが設けられている。また、建物82,83の東側には車道70を挟んで公園85が設けられている。建物82でイベントとしての火災が発生する直前、建物82の北側にはパレットm1とパレットm2とが走行しており、建物82の前庭82aの東側にはパレットm3が走行している。また、公園85の東側の車道70をバスe1、e2が走行している。
図6に示す様に、建物82でイベントとしての火災が発生した場合、イベント情報サーバ20は、建物82で火災が発生したというイベント発生情報を出力する。図3のステップS102でコモンサーバ10がこのイベント情報を受信して、図3のステップS103においてイベントが発生したと判断した場合、コモンサーバ10は、図3のステップS104に進んで、車両機能切り替え指令と乗合車両機能切り替え指令とを出力する。そして、コモンサーバ10は、図3のステップS105,S106に進んで、避難誘導路形成機能と避難輸送機能を実行する。
一方、パレットm1〜m20は、図4のステップS201,202に示す様に、コモンサーバ10から車両機能切り替え指令を受信するまでは、コモンサーバ10と協働して先に説明した配送機能を実行している。そして、コモンサーバ10からの車両機能切り替え指令を受信したら、図4のステップS202でYESと判断して図4のステップS203に進み、配送機能の実行を停止し、機能を避難誘導路形成機能に切り替えてコモンサーバ10と協働して避難誘導路形成機能を実行する。
また、バスe1〜e2は、図5のステップS301,302に示す様に、コモンサーバ10から乗合車両機能切り替え指令を受信するまでは、コモンサーバ10と協働して先に説明した乗合輸送機能を実行している。そして、コモンサーバ10からの乗合車両機能切り替え指令を受信したら、図5のステップS302でYESと判断して図5のステップS303に進み、乗合輸送機能の実行を停止し、機能を避難輸送機能に切り替えてコモンサーバ10と協働して避難輸送機能を実行する。
コモンサーバ10とパレットm1〜m20とは、以下のように協働して避難誘導路形成機能を実行する。コモンサーバ10は、図3のステップS105において、建物データベース13から建物82の内部データを読み出し、地図情報データベース12から建物82の周囲の車道70、歩道71、前庭82a,83a,公園85等の地図情報を読み出す。また、コモンサーバ10は、位置情報データベース14から建物82の中にいる被誘導者40の現在位置の位置データを読み出す。そして、コモンサーバ10は、建物82の出口と、避難可能スペースを特定し、図7に示す様に、建物82の内部から屋外に延びる避難誘導路45の設置位置、方向を設定する。
そして、コモンサーバ10は、設定した避難誘導路45の情報を建物82の内部データ、建物82の周囲の地図情報と共にインターネット25を介して各パレットm1〜m20に送信する。また、コモンサーバ10は、火災発生時の建物82の中にいる被誘導者40の位置情報を各パレットm1〜m20に送信する。
各パレットm1〜m20は、図4のステップS203において、コモンサーバ10から受信した地図情報と、イベント発生情報と、被誘導者40の現在位置情報、並びに、被誘導者40の携帯端末40aから受信した被誘導者40の現在の位置情報と、に基づいて、設定された避難誘導路45の両側で避難誘導路45を区画する位置に停車するように自律走行を開始する。例えば、図7に示す様に建物82の北側の一番近くに位置しているパレットm1は、図7に示す矢印91のように自律走行して、建物82の中に入り、建物82の出口近傍の避難誘導路45の北側の西側端に停車する。また、建物82の北側でパレットm1よりも建物82から少し離れた場所にいるパレットm2は、図7に示す矢印92に示す様に自律走行して避難誘導路45の北側のパレットm1の東側に停車する。同様に、建物82の東側にいるパレットm3は、矢印93に示す様に自律走行してパレットm2の東側に停車する。
一方、建物82の南側で建物82の一番近くを走行しているパレットm11は、図7に示す矢印94のように自律走行して、建物82の中に入り、建物82の出口近傍の避難誘導路45の南側の西側端に停車する。また、建物82の南側でパレットm11よりも建物82から少し離れた場所にいるパレットm12は、図7に示す矢印95に示す様に自律走行して避難誘導路45の南側のパレットm11の東側に停車する。
以下、同様に建物82の北側に位置しているパレットm4〜パレットm10は、それぞれ自律走行して避難誘導路45の北側に並んで停車していく。また、建物82の南に位置しているパレットm13〜パレットm20はそれぞれ自律走行して避難誘導路45の南側に並んで停車していく。
図8に示す様に、各パレットm1〜m20は、車両前後方向が避難誘導路45に沿うように停車し、避難誘導路45の両側で避難誘導路45を区画する。そして、各パレットm1〜m20は、側面53のディスプレイに、避難方向である東側を示す矢印のサイン56を表示する。被誘導者40は、各パレットm1〜m20が形成した避難誘導路45に従って東に向かって避難していく。この際、パレットm1〜m20を前後方向に近接して停車させて連続する壁を形成して避難誘導路45を区画してもよいし、パレットm1〜m10をパレットm1〜m3、m4〜6、m7〜m10のように3つのグループに分けて、各グループが連続した壁を形成し、各グループ間は前後方向に間が空いた断続的な壁として避難誘導路45を区画してもよい。更に、停車した前後のパレットm1〜m20の間にレーザ光等を照射してレーザビームによって避難誘導路45の一部を区画するようにしてもよい。また、北側と南側とでパレットm1〜m10とパレットm11〜m20の配置が同一でもよいし異なっていてもよい。
この際、各パレットm1〜m20は相互に通信して自律走行経路を調整してもよい。また、時間に従って変化する被誘導者40の位置情報に基づいて適宜、避難誘導路45の幅、方向を修正しながら避難誘導路45を形成してもよい。
また、コモンサーバ10とバスe1,e2とは、以下のように協働して避難輸送機能を実行する。コモンサーバ10は、図3のステップS105で避難誘導路45を設定したら、図3のステップS106において、避難誘導路45の終点付近にバスe1,e2が停車し、バスe1,e2が被誘導者40を乗せた後、バスe1,e2が最終避難場所に向かって走行するような指令をバスe1,e2に送信する。バスe1,e2はこの指令に基づいて、図5のステップS303において図7に示す様に、避難誘導路45の東端近傍の車道70に停止し、被誘導者40を乗車させる。バスe1,e2は、被誘導者40を乗車させた場所から最終避難場所までの最適ルートを計算し、自律運転により最終避難場所まで被誘導者40を輸送する。
以上説明したように、実施形態の避難誘導システム100は、イベントが発生した場合に、被誘導者40をスムーズに避難誘導することができる。
なお、パレットm1〜m20を避難誘導路45の両側に停車させて避難誘導路45を区画することとして説明したが、これに限らず、パレットm1〜m20が避難誘導路45の両側に沿って移動しながら避難誘導路45を区画するようにしてもよい。
また、各パレットm1〜m20は、避難方向を示すサイン56として矢印を表示することとして説明したがこれに限らず、例えば、複数の光の点を後方から前方に向かって移動するように発光させて避難方向を示してもよいし、避難方向を示すサインの表示をしなくてもよい。
また、以上の説明では、避難誘導路45は、建物82の中から屋外の公園85まで延びるものとして説明したが、これに限らず、建物82の外側の屋外にのみ形成するようにしてもよい。また、コモンサーバ10が建物データベース13を含まない場合に、避難誘導路45を建物82の外側の屋外にのみ形成してもよい。
また、実施形態の避難誘導システム100では、バスe1,e2により避難輸送機能を実行することとして説明したが、最終避難場所がイベント発生場所に近く、避難輸送の必要がない場合には、避難輸送機能を実行しなくてもよい。
なお、以上の説明では、イベントとして建物82に火災が発生した場合を例として説明したが、避難誘導システム100は、これ以外の例えば、交通事故、停電、ガス漏れ等の他のイベントにも適用することができる。また、パレットm1〜m20は、イベントが発生していない通常時には、配送機能を実行しているとして説明したが、これに限らず、自律走行可能な汎用ロボットとして様々な機能を実行していてもよい。