本発明に係る燃料電池システム及びその制御方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
図1に示す本実施形態に係る燃料電池システム10は、例えば、燃料電池電気自動車等の燃料電池車両(不図示)に搭載することができる。また、燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と、燃料ガス給排部14と、酸化剤ガス給排部16と、冷却媒体給排部18と、インピーダンス測定部20と、温度測定部22と、制御部24(ECU)とを備える。なお、燃料電池システム10は、エネルギ貯蔵装置であるバッテリ(不図示)をさらに備えてもよい。
図2に示すように、燃料電池スタック12は、複数の発電セル26が水平方向(矢印A1、A2方向)又は重力方向(矢印C1、C2方向)に積層された積層体28を備える。積層体28の積層方向の一端側(矢印A1側)には、ターミナルプレート30a、インシュレータ32a及びエンドプレート34aがこの順に積層される。積層体28の積層方向の他端側(矢印A2側)には、ターミナルプレート30b、インシュレータ32b及びエンドプレート34bがこの順に積層される。
矩形状からなるエンドプレート34a、34bの各辺間には、連結バー(不図示)が配置される。各連結バーは、両端をエンドプレート34a、34bの内面にボルト(不図示)等を介して固定され、複数の積層された発電セル26に積層方向(矢印A1、A2方向)の締め付け荷重を付与する。なお、不図示ではあるが、燃料電池スタック12では、エンドプレート34a、34bを端板とする筐体を備え、前記筐体内に積層体28等を収容するように構成してもよい。
図1に示すように、本実施形態では、発電セル26は、第1セパレータ36と、電解質膜・電極構造体38と、第2セパレータ40と、電解質膜・電極構造体38と、第3セパレータ42とがこの順に積層されて構成される。第1セパレータ36、第2セパレータ40及び第3セパレータ42(これらを総称して「セパレータ」ともいう)のそれぞれは、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板等により構成され、平面が矩形状であるとともに、プレス加工等により、断面凹凸形状に成形される。
図1のセパレータ36、40、42には、図2に示すように、その長辺方向の一端側(矢印B1側)の縁部に、それぞれ矢印A1、A2方向(積層方向)に個別に連通して、酸化剤ガス入口連通孔44a及び燃料ガス出口連通孔46bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔44aには、例えば、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。燃料ガス出口連通孔46bには、例えば、水素含有ガス等の燃料ガスが排出される。これらの酸化剤ガス及び燃料ガスを総称して「反応ガス」ともいう。
図1のセパレータ36、40、42には、図2に示すように、その長辺方向の他端側(矢印B2側)の縁部に、それぞれ矢印A1、A2方向に個別に連通して、燃料ガスが供給される燃料ガス入口連通孔46a及び酸化剤ガスが排出される酸化剤ガス出口連通孔44bが設けられる。なお、これらの酸化剤ガス入口連通孔44a、燃料ガス出口連通孔46b、燃料ガス入口連通孔46a、酸化剤ガス出口連通孔44bを総称して「反応ガス連通孔」ともいう。
図1のセパレータ36、40、42には、図2に示すように、その短辺方向(矢印C1、C2方向)両端縁部の矢印B1側に、矢印A1、A2方向に個別に連通して、冷却媒体が供給される一対の冷却媒体入口連通孔48aがそれぞれ設けられる。冷却媒体としては、純水やエチレングリコール、オイル等を用いることができる。図1のセパレータ36、40、42には、図2に示すように、その短辺方向の両端縁部の矢印B2側に、矢印A1、A2方向に個別に連通して、冷却媒体が排出される一対の冷却媒体出口連通孔48bがそれぞれ設けられる。
図1の第1セパレータ36の矢印A1側の面及び第3セパレータ42の矢印A2側の面には、図2の冷却媒体入口連通孔48aと冷却媒体出口連通孔48bとを連通する図1の冷却媒体流路50が形成される。図1の第1セパレータ36の矢印A2側の面及び第2セパレータ40の矢印A2側の面には、図2の酸化剤ガス入口連通孔44aと酸化剤ガス出口連通孔44bとに連通する酸化剤ガス流路52が形成される。酸化剤ガス流路52は、互いに並列する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)からなる。
図1の第2セパレータ40の矢印A1側の面及び第3セパレータ42の矢印A1側の面には、図2の燃料ガス入口連通孔46aと燃料ガス出口連通孔46bとに連通する図1の燃料ガス流路54が形成される。燃料ガス流路54は、互いに並列する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)からなる。
積層体28で互いに隣接する発電セル26において、第3セパレータ42の矢印A2側の面の冷却媒体流路50と、第1セパレータ36の矢印A1側の面の冷却媒体流路50とが対向して、その内部を冷却媒体が流通可能となっている。すなわち、積層体28では隣接する発電セル26同士の間に冷却媒体が流通する冷却媒体流路50が設けられる。なお、各発電セル26を構成するセパレータ36、40、42及び電解質膜・電極構造体38の個数は特に上記に限定されるものではなく、例えば、不図示の2枚のセパレータと1個の電解質膜・電極構造体38から発電セル26が構成されてもよい。
図1に示すように、電解質膜・電極構造体38は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)56を備える。なお、電解質膜56は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。電解質膜56は、カソード電極58及びアノード電極60により挟持される。なお、電解質膜・電極構造体38の外周には、不図示の樹脂枠部材が接合されてもよい。
カソード電極58は、不図示ではあるが、電解質膜56の一端側(矢印A1側)の面に接合されるカソード電極触媒層と、該カソード電極触媒層に積層されるカソードガス拡散層とを有する。アノード電極60は、不図示ではあるが、電解質膜56の他端側(矢印A2側)の面に接合されるアノード電極触媒層と、該アノード電極触媒層に積層されるアノードガス拡散層とを有する。
カソード電極触媒層は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにカソードガス拡散層の表面に一様に塗布して形成される。アノード電極触媒層は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにアノードガス拡散層の表面に一様に塗布して形成される。カソードガス拡散層及びアノードガス拡散層は、カーボンペーパ又はカーボンクロス等の導電性多孔質体から形成される。
図2に示すように、ターミナルプレート30a、30bは、導電性を有する材料から構成され、例えば、銅、アルミニウム又はステンレススチール等の金属で構成される。ターミナルプレート30a、30bの略中央には、積層方向外方に延在する端子部62a、62bがそれぞれ設けられる。
端子部62aは、絶縁性筒体64aに挿入されてインシュレータ32aの孔部66a及びエンドプレート34aの孔部67aを貫通し、該エンドプレート34aの外部に突出する。端子部62bは、絶縁性筒体64bに挿入されてインシュレータ32bの孔部66b及びエンドプレート34bの孔部67bを貫通し、該エンドプレート34bの外部に突出する。
インシュレータ32a、32bは、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等の絶縁性材料から形成される。インシュレータ32a、32bの中央部には、積層体28に向かって開口される凹部68a、68bが形成され、該凹部68a、68bは、孔部66a、66bに連通する。インシュレータ32a及びエンドプレート34aには、反応ガス連通孔が設けられる。一方、インシュレータ32b及びエンドプレート34bには、冷却媒体入口連通孔48a及び冷却媒体出口連通孔48bが設けられる。
凹部68aには、ターミナルプレート30a及び断熱体70が収容され、凹部68bには、ターミナルプレート30b及び断熱体70が収容される。断熱体70は、一対の導電性を有する断熱プレート72間に導電性を有する断熱部材74が挟持されて構成される。断熱プレート72は、例えば、平坦な形状を有する多孔性カーボンプレートで構成されるとともに、断熱部材74は、断面波板状の金属製のプレートで構成される。
図2に示すように、積層体28の積層方向の端部側に配設される発電セル26の電解質膜・電極構造体38(図1)は、その近傍に配設されるターミナルプレート30a、30b、エンドプレート34a、34b等を介して放熱が促され易い。このため、積層体28の積層方向の端部に配設された少なくとも1個の電解質膜・電極構造体38(図1)は、積層体28の積層方向の中央側の電解質膜・電極構造体38(図1)に比して、外気温の影響等を受けて低温となり易い。このように積層体28の積層方向の端部に配設されることで、該積層方向の中央側に比して低温となり易い少なくとも1個の電解質膜・電極構造体38(図1)を端部発電部76とする。
本実施形態では、図2に示すように、積層体28の積層方向の一端側に配設される2個の電解質膜・電極構造体38(図1)と、積層体28の積層方向の他端側に配設される2個の電解質膜・電極構造体38(図1)との合計4個から端部発電部76が構成されることとする。しかしながら、端部発電部76は、上記の4個の電解質膜・電極構造体38から構成されることに限定されるものではない。すなわち、端部発電部76は1個の電解質膜・電極構造体38を有してもよいし、4個以外の複数個の電解質膜・電極構造体38を有してもよい。なお、端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の個数の上限は、積層体28を構成する電解質膜・電極構造体38の全個数の1〜5%程度、又は、積層体28を構成する発電セル26の全枚数の1〜5%程度であることが好ましい。
図1に示すように、燃料電池スタック12には、燃料ガス供給口78aと、燃料排ガス排出口78bと、酸化剤ガス供給口80aと、酸化剤排ガス排出口80bと、冷却媒体供給口82aと、冷却媒体排出口82bとが設けられる。燃料ガス供給口78aを介して燃料ガス入口連通孔46a(図2)に燃料ガスが供給される。燃料ガス入口連通孔46aに供給された燃料ガスは、燃料ガス流路54に沿って移動することにより積層体28の各発電セル26のアノード電極60(図1)に供給される。
また、図1の酸化剤ガス供給口80aを介して図2の酸化剤ガス入口連通孔44aに酸化剤ガスが供給される。図2の酸化剤ガス入口連通孔44aに供給された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路52に沿って移動することにより積層体28の各発電セル26のカソード電極58(図1)に供給される。燃料電池スタック12では、上記のようにして供給された燃料ガス及び酸化剤ガスが、アノード電極60及びカソード電極58での電気化学反応(発電反応)に消費されることで発電が行われる。
図1に示すように、燃料電池スタック12に供給された燃料ガスのうち、上記の発電反応で消費されなかった残余の燃料ガスは、燃料排ガスとして、燃料ガス出口連通孔46b(図2)から燃料排ガス排出口78bに排出される。また、燃料電池スタック12に供給された酸化剤ガスのうち、上記の発電反応で消費されなかった残余の酸化剤ガスは、酸化剤排ガスとして、酸化剤ガス出口連通孔44b(図2)から酸化剤排ガス排出口80bに排出される。
図1の冷却媒体供給口82aを介して図2の冷却媒体入口連通孔48aに冷却媒体が供給される。図2の冷却媒体入口連通孔48aに供給された冷却媒体は、積層体28の各発電セル26の冷却媒体流路50に沿って流通する。このようにして、冷却媒体流路50を流通することで各発電セル26と熱交換した後の冷却媒体は、冷却媒体出口連通孔48bから図1の冷却媒体排出口82bに排出される。
燃料ガス給排部14は、水素タンク84と、燃料ガス供給路86と、インジェクタ88と、エゼクタ90と、燃料排ガス排出路92と、気液分離器94と、ドレイン路96と、ドレイン弁98と、気体側排出路100と、燃料ガス循環路102と、水素ポンプ104と、パージ路106と、パージ弁108とを有する。
水素タンク84は、燃料ガスを貯蔵し、該燃料ガスを燃料ガス供給路86に供給可能に設けられる。燃料ガス供給路86は、水素タンク84から供給された燃料ガスを燃料電池スタック12の燃料ガス供給口78a(積層体28)に導く燃料ガスの流路である。燃料ガス供給路86には、その上流側から、インジェクタ88と、エゼクタ90とがこの順に設けられ、インジェクタ88を介してエゼクタ90に燃料ガスが供給される。エゼクタ90から排出された燃料ガスは、燃料ガス供給口78aに供給される。
燃料排ガス排出路92は、燃料排ガス排出口78bから排出された燃料排ガスを気液分離器94に導く。燃料排ガスには、燃料電池スタック12で消費されなかった燃料ガスの未消費分や、カソード電極58から電解質膜56を介してアノード電極60に移動してきた水分等が含まれる。気液分離器94では、燃料排ガスを、燃料ガスの未消費分を主に含む排出ガスと、水分(液水)等を主に含む排出流体とに分離する。
排出ガスを排出する気液分離器94の気体側排出口94aには、気体側排出路100が接続されている。このため、排出ガスは、気体側排出口94aから気体側排出路100に排出される。気体側排出路100の下流側は、燃料ガス循環路102とパージ路106とに分岐する。燃料ガス循環路102の下流側はエゼクタ90に接続され、燃料ガス循環路102の途上には水素ポンプ104が設けられている。水素ポンプ104は、燃料ガス循環路102の排出ガスをエゼクタ90に送る。エゼクタ90には、上記の通りインジェクタ88を介して燃料ガスが供給されるため、排出ガスは燃料ガスとともに、燃料ガス供給口78aを介して燃料電池スタック12に供給される。
パージ路106の下流は、酸化剤ガス給排部16の後述する酸化剤排ガス排出路122に連通する。また、パージ路106の途上には、パージ弁108が設けられる。排出ガスは、必要に応じて、パージ弁108の開放作用下にパージ路106及び酸化剤排ガス排出路122を介して燃料電池システム10の外部に排出される。
排出流体を排出する気液分離器94の液体側排出口94bには、ドレイン路96が接続されている。このため、排出流体は、液体側排出口94bからドレイン路96に排出される。ドレイン路96の下流は、酸化剤排ガス排出路122に連通する。また、ドレイン路96の途上にはドレイン弁98が設けられる。排出流体は、必要に応じて、ドレイン弁98の開放作用下にドレイン路96及び酸化剤排ガス排出路122を介して燃料電池システム10の外部に排出される。
酸化剤ガス給排部16は、エアポンプ110と、酸化剤ガス供給路112と、供給側開閉弁(入口封止弁)114と、加湿器116と、加湿バイパス路118と、加湿バイパス弁120と、酸化剤排ガス排出路122と、排出側開閉弁(出口封止弁)124と、背圧弁126と、排出側バイパス路128と、排出側バイパス弁130と、酸化剤ガス循環路132と、循環ポンプ134とを有する。
エアポンプ110は、大気から酸化剤ガス供給路112に酸化剤ガスとして空気を取り込み圧縮した状態でその下流側に供給する。酸化剤ガス供給路112は、エアポンプ110を介して取り込まれた酸化剤ガスを燃料電池スタック12の酸化剤ガス供給口80a(積層体28)に導く酸化剤ガスの流路である。酸化剤ガス供給路112には、その上流側から供給側開閉弁114と、加湿器116とがこの順に設けられている。
また、酸化剤ガス供給路112の供給側開閉弁114と加湿器116との間には、加湿バイパス路118の上流側の端部が接続されている。加湿バイパス路118の下流側の端部は、加湿バイパス路118の加湿器116の下流側と酸化剤ガス供給口80aとの間に接続されている。加湿バイパス路118には、該加湿バイパス路118を流通する空気の流量を調整する加湿バイパス弁120が配設される。なお、加湿バイパス弁120は、加湿バイパス路118を開閉する開閉弁であってもよい。
酸化剤排ガス排出路122は、酸化剤排ガス排出口80bから排出された酸化剤排ガスが流通する酸化剤排ガスの流路である。酸化剤排ガス排出路122には、加湿器116と、排出側開閉弁124と、背圧弁126とが下流側に向かってこの順に配設される。酸化剤排ガスは、燃料電池スタック12で消費されなかった酸化剤ガスの未消費分や、発電反応によって生じる生成水等が含まれる。また、酸化剤排ガスは、発電反応によって生じる熱等によって、燃料電池スタック12に供給される前の酸化剤ガスよりも昇温している。加湿器116は、酸化剤ガス供給路112の酸化剤ガス(燃料電池スタック12に供給される前の酸化剤ガス)と、酸化剤排ガス排出路122の酸化剤排ガス(燃料電池スタック12から排出された後の酸化剤排ガス)との間で水分及び熱を交換させる。
このため、加湿器116を通過した酸化剤ガスは、酸化剤排ガスによって加湿されるとともに昇温された後に、燃料電池スタック12の酸化剤ガス供給口80aに供給される。従って、加湿バイパス弁120の開度を大きくすると(弁開度を100%とすることを含む)、加湿バイパス路118を流通することで、加湿器116を介さずに酸化剤ガス供給口80aに供給される酸化剤ガスの量が増大する。すなわち、加湿器116による加湿が行われない分、乾燥した酸化剤ガスが酸化剤ガス供給口80aに供給される割合が増大する。
一方、加湿バイパス弁120の開度を小さくすると(弁開度を0%とすることを含む)、加湿器116を介して酸化剤ガス供給口80aに供給される酸化剤ガスの量が増大する。すなわち、加湿器116による加湿が行われる分、湿度が高い酸化剤ガスが酸化剤ガス供給口80aに供給される割合が増大する。
排出側バイパス路128は、酸化剤ガス供給路112のエアポンプ110及び供給側開閉弁114の間を、酸化剤排ガス排出路122の背圧弁126の下流側に連通させる。排出側バイパス路128には、該排出側バイパス路128を流通する酸化剤ガスの流量を調整する排出側バイパス弁130が配設される。エアポンプ110により酸化剤ガス供給路112に取り込まれた酸化剤ガスは、必要に応じて、排出側バイパス弁130が開放することで、排出側バイパス路128及び酸化剤排ガス排出路122を介して燃料電池システム10の外部に排出される。
酸化剤ガス循環路132は、酸化剤排ガス排出路122の加湿器116及び排出側開閉弁124の間を、酸化剤ガス供給路112の供給側開閉弁114と加湿器116との間に連通させる。酸化剤ガス循環路132には、循環ポンプ134が設けられる。加湿器116を通過した酸化剤排ガスを、循環ポンプ134が必要に応じて酸化剤ガス供給路112に送ることで、酸化剤排ガスは、酸化剤ガスとともに、加湿器116を介して酸化剤ガス供給口80aに供給される。
排出側開閉弁124の開放作用下に、排出側開閉弁124を通過した酸化剤排ガスは、背圧弁126の設定圧力に調整された状態で、酸化剤排ガス排出路122の下流側に向かう。酸化剤排ガス排出路122の下流側(酸化剤排ガス排出路122の排出側バイパス路128との接続部よりも下流側)には、燃料ガス給排部14のパージ路106及びドレイン路96が接続されている。このため、パージ弁108が開状態であるとき、パージ路106内の排出ガスは酸化剤排ガス排出路122に流入する。また、ドレイン弁98が開状態であるとき、ドレイン路96内の排出流体は酸化剤排ガス排出路122に流入する。これらの排出ガス及び排出流体は、酸化剤排ガス排出路122を流れる酸化剤排ガスによって希釈されてから燃料電池システム10の外部に排出される。
冷却媒体給排部18は、燃料電池スタック12の冷却媒体供給口82aに接続される冷却媒体供給路136と、冷却媒体排出口82bに接続される冷却媒体排出路138とを備える。冷却媒体供給路136の上流側の端部及び冷却媒体排出路138の下流側の端部には、ラジエータ140が接続される。冷却媒体供給路136の途上には水ポンプ142が設けられる。水ポンプ142を駆動することにより、燃料電池スタック12と、冷却媒体排出路138と、ラジエータ140と、冷却媒体供給路136との間で冷却媒体が循環する。
インピーダンス測定部20は、燃料電池スタック12の積層体28の全体のインピーダンスを測定して得られたインピーダンス測定値を制御部24に出力する。温度測定部22は、例えば、冷却媒体排出口82b近傍の冷却媒体排出路138(冷却媒体)の温度を測定して得られる温度測定値を、積層体28の温度測定値として制御部24に出力する。
なお、温度測定部22は、積層体28の温度測定値を検出可能に設けられればよいため、例えば、積層体28自体の温度を直接検出してもよい。また、温度測定部22は、冷却媒体排出路138に代えて、燃料排ガス排出路92や、酸化剤排ガス排出路122に設けられてもよい。つまり、温度測定部22は、燃料排ガス排出口78b近傍の燃料排ガスの温度測定値や、酸化剤排ガス排出口80b近傍の酸化剤排ガスの温度測定値を、積層体28の温度測定値として検出してもよい。
制御部24は、不図示のCPUやメモリ等を備えたコンピュータとして構成され、該CPUは、制御プログラムに従って所定の演算を実行し、燃料電池システム10の運転等に関する種々の処理や制御を行う。具体的には、制御部24は、端部インピーダンス推定部144と、含水制御部146とを有する。端部インピーダンス推定部144は、インピーダンス測定部20で検出された積層体28の全体のインピーダンス測定値と、温度測定部22で検出された積層体28の温度測定値とを用いて、積層体28の端部発電部76のインピーダンスの推定値(以下、単に推定値ともいう)を求める。
推定値を求める方法の一例として、端部インピーダンス推定部144は、実験やシミュレーション等によって予め求められた、積層体28の全体のインピーダンスと、積層体28の温度と、積層体28の全体のインピーダンス及び端部発電部76のインピーダンスの差分(以下、単に「差分」ともいう)と、の関係を用いる。この関係に基づき、先ず、インピーダンス測定部20で得られたインピーダンス測定値及び温度測定部22で得られた温度測定値に対応する差分を求める。
本実施形態では、上記の関係を、図3に示すように、積層体28の温度に応じた差分を、例えば、A〜Cの積層体28の全体のインピーダンスごとに示したマップMの形式で、制御部24が備える不図示の記憶部に記憶することとする。A、B、Cは、例えば、所定の間隔でこの順に大きくなり、燃料電池システム10の運転時に、積層体28の全体のインピーダンスが取り得る範囲内で設定される。なお、図3では、A〜Cの3個の積層体28の全体のインピーダンスごとに、積層体28の温度に応じた差分を示すこととしたが、3個以上又は3個未満の積層体28の全体のインピーダンスごとに、積層体28の温度に応じた差分を示すこととしてもよい。
なお、記憶部は、上記の関係を図3に示すマップMの形式で記憶することに代えて、例えば、上記の関係を関数の形式で記憶してもよい。また、端部インピーダンス推定部144は、上記の関係を記憶部に記憶することに代えて、例えば、燃料電池システム10の外部から取得するようにしてもよい。
次に、端部インピーダンス推定部144は、インピーダンス測定部20で得られたインピーダンス測定値から、上記のようにして求めた差分を引いた値を端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の個数(本実施形態では4個)で除す。これによって、端部発電部76のインピーダンスの推定値を求めることができる。すなわち、ここでの推定値は、端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の平均のインピーダンスに相当するが、特にこれには限定されない。
含水制御部146は、端部インピーダンス推定部144で得られた推定値に基づいて、積層体28の含水量を制御する。積層体28の全体のインピーダンスは、積層体28(電解質膜56)の含水量が低下して乾燥傾向となると上昇し、積層体28の含水量が上昇して湿潤傾向となると低下する。このため、含水制御部146は、推定値に基づき、例えば、燃料電池システム10が置かれた環境の温度や、燃料電池システム10の運転状況や、積層体28の温度等に応じた適切な大きさとなるように積層体28の含水量を制御する。これによって、電解質膜56を、プロトン伝導を良好に生じさせることが可能な湿潤状態に維持したり、カソード電極58やアノード電極60における滞留水の発生を抑制したり、外気温が氷点下である場合等における積層体28内の水分の凍結を抑制したりすることが可能になる。
本実施形態では、含水制御部146は、積層体28の含水量を低下させる制御を行う場合には、加湿バイパス弁120を開く方向に動作させ(加湿バイパス弁120の開度を大きくし)、積層体28の含水量を増大させる制御を行う場合には、加湿バイパス弁120を閉じる方向に動作させる(加湿バイパス弁120の開度を小さくする)。
基本的には、上記のように構成される燃料電池システム10の制御方法について、図4も併せて参照しつつ説明する。
例えば、不図示ではあるが、燃料電池システム10を搭載する燃料電池車両のイグニッションスイッチ(IG)がオンされると、燃料電池システム10を所定の動作温度まで暖機するための暖機運転が開始される。これとともに、インピーダンス測定部20により、積層体28の全体のインピーダンス測定値を得るインピーダンス測定工程と、温度測定部22により、積層体28の温度測定値を得る温度測定工程とを行う(図4のステップS1)。
次に、図4のステップS2に示すように、インピーダンス測定値と温度測定値とを用いて、端部インピーダンス推定部144により、端部発電部76のインピーダンスの推定値を求める端部インピーダンス推定工程を行う。
例えば、端部インピーダンス推定工程では、端部インピーダンス推定部144は、図3のマップMのA〜Cから、インピーダンス測定部20で得られたインピーダンス測定値に対応する1個を選択する。そして、選択した積層体28の全体のインピーダンスに応じた、積層体28の温度と差分との関係から、温度測定部22で得られた温度測定値に対応する差分を検出する。次に、インピーダンス測定部20で得られた積層体28の全体のインピーダンス測定値から、上記のようにして求めた差分を減じた値を、端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の個数である4で除す。これによって、端部発電部76のインピーダンスの推定値が求められる。
次に、図4のステップS3に示すように、端部インピーダンス推定工程で求めた端部発電部76のインピーダンスの推定値に基づいて、含水制御部146により積層体28の含水量を制御する含水制御工程を行う。
例えば、この含水制御工程では、含水制御部146は、推定値と、予め定められた所定の閾値とを比較し、推定値が閾値よりも大きいときには、積層体28が乾燥傾向にあると判断し、加湿バイパス弁120の開度を小さくする。これによって、加湿器116で加湿された後に酸化剤ガス供給口80aに供給される酸化剤ガスの量が増大するため、積層体28の含水量を増大させる加湿制御が行われる。
一方、推定値が閾値以下であるときには、積層体28が過加湿傾向にあると判断し、加湿バイパス弁120の開度を大きくする。これによって、加湿器116で加湿されずに酸化剤ガス供給口80aに供給される酸化剤ガスの量が増大するため、積層体28の含水量を低減させる乾燥制御が行われる。
上記のステップS1〜ステップS3までの各工程を、例えば、燃料電池スタック12での電気化学反応等により、燃料電池システム10が所定の動作温度に昇温するまで繰り返した後、図4のフローチャートを終了する。なお、上記のステップS1〜ステップS3までの各工程を、燃料電池車両のIGをオフするまで繰り返し行った後に図4のフローチャートを終了してもよい。
以上から、本実施形態に係る燃料電池システム10及びその制御方法では、積層体28の全体のインピーダンス測定値及び温度測定値を用いて、端部発電部76のインピーダンスの推定値を求め、該推定値に基づいて積層体28の含水量を制御する。このため、端部発電部76が、例えば、積層体28の中央側よりも低温となっているような場合であっても、端部発電部76の含水量が過剰となることを抑制できる。
すなわち、例えば、積層体28の端部発電部76のインピーダンスが所定の閾値以下であるにも関わらず、積層体28の中央部又は積層体28の全体のインピーダンスが所定の閾値よりも大きいことで、含水制御部146による乾燥制御を終了する事態が生じることを回避できる。その結果、積層体28の端部発電部76に滞留水が生じること等を効果的に抑制できるため、端部発電部76の電解質膜56の劣化を抑制したり、端部発電部76における反応ガスの拡散性が阻害されることを抑制したりできる。つまり、積層体28の含水量を適切に制御して、燃料電池システム10の発電安定性を良好に維持することが可能となる。
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、端部インピーダンス推定部144は、積層体28のインピーダンスと、積層体28の温度と、積層体28のインピーダンス及び端部発電部76のインピーダンスの差分との関係に基づき、インピーダンス測定値及び温度測定値に対応する差分を求め、インピーダンス測定値から差分を引いた値を端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の個数で除すことで推定値を求めることとした。
また、上記の実施形態に係る燃料電池システム10の制御方法では、端部インピーダンス推定工程では、積層体28のインピーダンスと、積層体28の温度と、積層体28のインピーダンス及び端部発電部76のインピーダンスの差分との関係に基づき、インピーダンス測定値及び温度測定値に対応する差分を求め、インピーダンス測定値から差分を引いた値を端部発電部76が有する電解質膜・電極構造体38の個数で除すことで推定値を求めることとした。
これらの場合、上記の関係を、実験やシミュレーション等によって予め求めておくことで、インピーダンス推定値を容易に求めることができ、該インピーダンス推定値に基づき積層体28の含水量を精度良く制御することができる。その結果、燃料電池システム10の発電安定性を簡単な構成で良好に維持することが可能となる。なお、推定値を得る方法は特に限定されるものではない。
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、積層体28に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給路112と、酸化剤ガス供給路112に設けられ、酸化剤ガスを加湿する加湿器116と、酸化剤ガス供給路112に設けられ、加湿器116をバイパスすることで、加湿前の酸化剤ガスを加湿器116の下流側に供給する加湿バイパス路118と、加湿バイパス路118を開閉する加湿バイパス弁120と、を備え、含水制御部146は、含水量を低下させる場合には、加湿バイパス弁120を開く方向に動作させ、含水量を増大させる場合には、加湿バイパス弁120を閉じる方向に動作させることとした。
また、上記の実施形態に係る燃料電池システム10の制御方法では、燃料電池システム10は、積層体28に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給路112と、酸化剤ガス供給路112に設けられ、酸化剤ガスを加湿する加湿器116と、酸化剤ガス供給路112に設けられ、加湿器116をバイパスすることで、加湿前の酸化剤ガスを加湿器116の下流側に供給する加湿バイパス路118と、加湿バイパス路118を開閉する加湿バイパス弁120と、を備え、含水制御工程では、含水量を低下させる場合には、加湿バイパス弁120を開く方向に動作させ、含水量を増大させる場合には、加湿バイパス弁120を閉じる方向に動作させることとした。
これらの場合、含水制御部146によって、加湿バイパス弁120を開閉する簡単な構成によって、積層体28の含水量を容易に調整することが可能となる。
上記の実施形態に係る燃料電池システム10では、含水制御部146は、少なくとも、積層体28(燃料電池システム10)の起動開始から、積層体28が所定の動作温度に達するまでの間、推定値に基づいて、積層体28の含水量を制御することとした。
また、上記の実施形態に係る燃料電池システム10の制御方法では、含水制御工程は、少なくとも、積層体28(燃料電池システム10)の起動開始から、積層体28が所定の動作温度に達するまでの間に行われることとした。
特に、積層体28の起動を開始してから、積層体28が所定の動作温度に達するまでの期間は、端部発電部76と積層体28の中央部との間で、インピーダンスの差が大きくなり易い傾向にある。このため、上記の期間に、含水制御部146による含水制御工程を行うことで、端部発電部76に滞留水が生じることを効果的に抑制することができる。ひいては、燃料電池システム10の発電安定性を良好に維持することが可能となる。
また、例えば、氷点下等の低温環境下で燃料電池システム10を起動する場合、外気温の影響を受けて、端部発電部76の温度は、積層体28の中央部の電解質膜・電極構造体38の温度よりも低くなり易い。このため、端部発電部76では、結露が生じて含水量が過剰になり易い。端部発電部76の含水量が過剰となると、端部発電部76内の水分が凍結する懸念がある。このような場合であっても、上記の通り、端部発電部76のインピーダンスの推定値に基づいて積層体28の含水量を制御することで、端部発電部76の含水量を適切に維持することができる。これによって、水分の凍結等を抑制できるため、燃料電池システム10の発電安定性や耐久性を良好に維持することができる。
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、含水制御部146は、積層体28の含水量を低下させる制御を行う場合には、加湿バイパス弁120を開く方向に動作させ、積層体28の含水量を増大させる制御を行う場合には、加湿バイパス弁120を閉じる方向に動作させることとした。しかしながら、含水制御部146によって積層体28の含水量を制御する方法は、特にこれに限定されるものではない。
例えば、図1に示すように、エアポンプ110の回転数や、背圧弁126の開度を調整し、燃料電池スタック12内の酸化剤ガスの圧力を制御することによって、積層体28の含水量を制御してもよい。この場合、例えば、エアポンプ110の回転数を上げたり、背圧弁126の開度を小さくしたりすること等によって、燃料電池スタック12内の酸化剤ガスの圧力を増大させると、酸化剤ガスに含まれる水蒸気が凝縮し易くなり、これによって生成された凝縮水によって積層体28の含水量を増大させることができる。これとは逆に、エアポンプ110の回転数を下げたり、背圧弁126の開度を大きくしたりすることで、積層体28の含水量を低減させることができる。
また、例えば、水ポンプ142の回転数を調整して、燃料電池スタック12の冷却媒体流路50を流通する冷却媒体の流量を制御することによって、積層体28の含水量を制御してもよい。例えば、積層体28の温度が冷却媒体より低い場合には、冷却媒体流路50を流通する冷却媒体の流量を増大させることで、積層体28の温度上昇を促すことができる。ひいては、結露の発生を抑制して、積層体28の含水量を低減させることができる。