図5は、従来のサイド化粧板16の取付方法を説明する図である。図5(a)は、サイド化粧板16を天板12の下に納めた状態を示していて、図5(b)は、サイド化粧板16を天板12の横に納めた状態を示している。図5(a)および(b)に示すように、サイド化粧板16は、キャビネット14a・キャビネット14b・キャビネット14cのうち、キャビネット14cのオープンな側面にネジ18によって取り付けられることが一般である。
ここで、天板12は、製造誤差によって幅が若干変化することがある。しかしながら、製造誤差によって天板12の幅がキャビネット14a・14b・14cの和より狭くなると、キャビネット14cの上面が露出してしまう。このため、天板12はキャビネット14a・14b・14cの和よりも広くなるように若干の余裕をもってプラス公差で幅が設計される。
上記のように天板12の幅がキャビネット14a・14b・14cよりも広い場合、図5(a)に示すようにサイド化粧板16をネジ18によってキャビネット14cの側面に取り付けると、天板12は幅W1分だけサイド化粧板16から飛び出した状態となる。しかし、外観向上の観点からは、天板12の端部とサイド化粧板16の側面とは面一(つらいち)になっている方が好ましい。
天板12の端部とサイド化粧板16の側面とを面一にするためには、サイド化粧板16を天板12の端部までずらした状態(浮いた状態)でキャビネット14cの側面に取り付ける必要がある。この場合、サイド化粧板16の位置決めを行うこととなるが、寸法誤差に応じたスペーサをその都度作成しなくてはならないことになるため、位置決め作業に非常に手間がかかってしまう。
図5(b)では、サイド化粧板16を天板12の端部に突き当てた状態で、かかるサイド化粧板16をネジ18によってキャビネット14cの側面に取り付けている。上側のネジ18はサイド化粧板16が天板12の端部に突き当たっていることにより位置決めを正確に行うことができる。しかし、下側のネジ18はサイド化粧板16の後ろに幅W2の隙間があるため、位置決めすることができない。このため、サイド化粧板16が傾斜した状態になってしまうおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑み、サイド化粧板をキャビネットの側板に取り付ける際にそれらの位置決めを良好且つ容易に行うことが可能なキャビネットを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるキャビネットの代表的な構成は、サイド化粧板を備えたキャビネットにおいて、キャビネットの側板に設けられた取り付け穴と、側板に取り付けられるサイド化粧板と、一部が飛び出した状態でサイド化粧板に埋め込まれた埋込ナットと、埋込ナットの飛び出した部分が挿通されたワッシャと、側板の内側から取り付け穴を通して埋込ナットに締結されたネジと、を備えることを特徴とする。
上記構成では、埋込ナットを設けることにより、木材からなるサイド化粧板に雌ネジが形成される。そして、埋込ナットの一部(頭)が飛び出していることにより、そこにワッシャが挿通可能となる。ワッシャを挿通したら、側板の取付穴を通して埋込ナットにネジを締結することにより、サイド化粧板がキャビネットの側板に取り付けられる。このとき、上述したワッシャの枚数を変えれば、キャビネットの側板とワッシャとの間隙の幅を任意に調節することができる。すなわち、キャビネットに対するサイド化粧板の離接方向の位置決めを良好かつ容易に行うことが可能となる。したがって、天板の端部とサイド化粧板の側面(表面)とを面一に調整することが可能となる。
上記取り付け穴の径は、埋込ナットの径よりも大きいとよい。かかる構成によれば、埋込ナットにネジを締結していった際に埋込ナットが取り付け穴の内部に挿通されるため、埋込ナットがキャビネットの側板に引っかからない。したがって、キャビネットの側板とサイド化粧板の両方にワッシャだけが当接することとなり、ワッシャの枚数によって間隙の幅を正確に調節することができる。さらに、取り付け穴の径を埋込ナットの径よりも充分に(大幅に)大きくすることにより、キャビネットに対してサイド化粧板を上下左右方向にも位置調整することが可能となる。
上記埋込ナットは、中途位置に位置出し用のフランジを有し、フランジの一方側にサイド化粧板に埋め込まれる部分を有し、フランジの他方側に前記サイド化粧板から飛び出す部分を有しているとよい。これにより、サイド化粧板からの埋込ナットの飛び出し量を正確に規定することが可能となる。
本発明によれば、サイド化粧板をキャビネットの側板に取り付ける際に、キャビネットに対するサイド化粧板の離接方向の位置決めを良好且つ容易に行うことが可能なキャビネットを提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態のキャビネットの側板104へサイド化粧板102を取り付ける際に用いられる取付部材200を説明する図であり、図1(a)は、取付部材200の斜視図であり、図1(b)は、取付部材200の使用態様図である。図1(a)に示すように、取付部材200は、埋込ナット210、ワッシャ220およびネジ230を含んで構成される。
埋込ナット210は、外側にテーパネジ212が形成されていて、内側には雌ネジ214が形成されている。そして、埋込ナット210の六角穴216に六角レンチ(不図示)を差し込み、六角レンチによって埋込ナット210を回転させることにより、埋込ナット210がサイド化粧板102(図1(b)参照)に埋め込まれる。なおサイド化粧板102には、埋込ナット210を埋め込むのに適した大きさの下穴を設けておく。
なお、上記の取付方法は一例である。例えば、外側にテーパネジが形成されていない埋込ナットを用いる場合には、下穴を埋込ナットと同径とし、かかる下穴に埋込ナットをたたき込みながら挿入していく方法を用いてもよい。
ワッシャ220は、上述した埋込ナット210が挿通される部材である。言い換えると、ワッシャ220は埋込ナット210の飛び出した部分210b(頭)に引っ掛けられる部材である。ネジ230は埋込ナット210に挿通されることにより、後述するようにサイド化粧板102をキャビネットの側板104に取り付ける。
なお、本実施形態では、ネジ230側に対してもワッシャ222を使用している。これにより、ネジ230の頭が取り付け穴104aよりも小さい場合でも締め付け強度を確保することができる。ただし、これに限定するものではなく、本実施形態のキャビネット100では、少なくとも埋込ナット210側にワッシャ220を設ければよい。ネジ230側のワッシャ222は、ネジ230の頭と取り付け穴104aの大きさの関係や、側板104の剛性を考慮して、必要に応じて用いることができる。
サイド化粧板102をキャビネット104に取り付ける際には、まず埋込ナット210をサイド化粧板102に埋め込む。これにより、木材からなるサイド化粧板102に雌ネジ214が形成される。このとき、埋込ナット210は半埋込とし、頭218が飛び出した状態とする。埋込ナット210は、半分程度を埋め込まれた部分210aと、頭側の半分程度を飛び出した部分210bとからなる。これにより、埋込ナット210がワッシャ220に挿通可能となる。ワッシャ220に埋込ナット210が挿通されたら、キャビネットの側板104に形成されている取り付け穴104aに対して、キャビネットの側板104の内側からネジを通す。そして、ネジ230を埋込ナット210に締結する。
上述したように、埋込ナット210がワッシャ220に挿通されていることにより、ワッシャ220の枚数を変えれば、キャビネットの側板104とワッシャ220との間隙の幅を任意に調節することができる。したがって、サイド化粧板102をキャビネットの側板104に取り付ける際に、キャビネットに対するサイド化粧板の離接方向の位置決めを良好且つ容易に行うことが可能となる。
なお、取り付け穴104aの径は、埋込ナット210の径よりも大きいとよい(いわゆるバカ穴)。これにより、埋込ナット210にネジ230を締結していった際に埋込ナット210が取り付け穴104aの内部に挿通されるため、埋込ナット210がキャビネットの側板104に引っかからない。したがって、キャビネットの側板104とサイド化粧板102の両方にワッシャ220だけが当接することとなり、ワッシャの枚数によって間隙の幅を正確に調節することができる。
さらに、取り付け穴104aの径を埋込ナット210の径よりも充分に(大幅に)大きくすることにより、キャビネット14cに対してサイド化粧板102を上下左右方向にも位置調整することが可能となる。これによりキャビネット14cとサイド化粧板102の中心を合わせたり、目立つ側の端面を一致させたりするなどして、外観の向上を図ることができる。
図2は、本実施形態のキャビネットを説明する図である。図2(a)は、サイド化粧板102を天板12の下に納めた状態を示していて、図2(b)は、サイド化粧板102を天板12の横に納めた状態を示している。本実施形態では図2(a)および図2(b)に示すキャビネット14cは、サイド化粧板102を備え、サイド化粧板102は、キャビネットの側板104に取り付けられる。
図2(a)に示すように、本実施形態では、サイド化粧板102は、天板12の端部に配置されつつ、キャビネットの側板104とサイド化粧板102との間の間隙W3は上下方向で均一である。そして離接方向の位置決めをワッシャ220の枚数で調節することができるから、天板12の端部とサイド化粧板102の側面(表面)とを面一に調整することが可能となる。また図2(b)においては、キャビネットの側板104とサイド化粧板102との間の間隙W4をワッシャ220の枚数で埋めることができるため、上下方向で均一の間隙W4を位置決めして、サイド化粧板102を容易に直立させることが可能である。このことから、上述したように取付部材200を用いることにより、サイド化粧板102をキャビネットの側板104に取り付ける際にそれらの位置決めを良好に行うことが可能であることが理解できる。
図3および図4は、本実施形態の取付部材およびキャビネットの他の例を説明する図である。図3に示す例では、取付部材の1つである埋込ナット250は、長さ方向の中途位置に位置出し用のフランジ252を有している。フランジ252の一方側にサイド化粧板102に埋め込まれる部分250aを有し、フランジ252の他方側にサイド化粧板102から飛び出す部分250bを有している。埋め込まれる部分250aは外周面にテーパネジ212を備えている。飛び出す部分250bはワッシャ220を引っ掛ける部位であり、その外周面は例えば円筒や六角柱などでよい。これにより、サイド化粧板102へ埋込ナット250を埋め込む際に、その埋め込み量を正確に規定することが可能となる。
図4に示す例では、側板104に形成される取り付け穴104bは、サイド化粧板102側に径が大きい大径部104cを有し、ネジの頭232側に径が小さい小径部104dを有している。大径部104cは埋込ナット210の径よりも充分に(大幅に)大きく形成されていて、キャビネット14cに対してサイド化粧板102を上下左右方向にも位置調整することが可能である。小径部104dはネジ230の径よりも充分に大きく形成されていて、埋込ナット210と同程度に上下左右方向に移動可能となっている。ただし、図1(b)の構成と比べてネジの頭232側を小径にしたことにより、ネジの頭232を支えやすくなり、剛性を向上させることが可能となる。