JP2021042173A - クルクミン固体分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、クルクミンの経口摂取による生物学的利用能が改善された固体分散体、及びその製造方法を提供することである。【解決手段】上記課題を解決するために、クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、溶解した状態で多孔質粒子に担持されたことを特徴とする、固体分散体を提供する。この固体分散体は、クルクミンやクルクミン類縁体の経口摂取による生物学的利用能を向上させることができる。【選択図】図2

Description

本発明は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体、及びその製造方法に関するものである。
クルクミンは、ウコンの根茎などから得られる黄色のポリフェノール化合物であるクルクミノイドの一つである。クルクミン及びクルクミン類縁体は、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、コレステロール低下作用、体脂肪抑制作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗炎症作用、腫瘍形成阻害作用、循環器疾患改善作用、脳疾患予防作用、殺菌作用、美肌作用などを発揮することが明らかとなっている。クルクミンは、このような生理活性を有することから、医薬品、化粧品、食品、飲料、飼料などへの利用が検討されている。
しかしながら、クルクミン及びクルクミン類縁体は難水溶性であり、経口摂取による体内への吸収効率が著しく低いことから、人体に有用な生理活性を十分に得られない問題がある。そこで、水系組成物にクルクミンを添加する方法の開発が所望されている。
特許文献1では、クルクミンの分散性を向上させるために乳化剤と水系溶媒を添加したクルクミン組成物が記載されている。
一方、難溶性ポリフェノール類の水への溶解性を向上させる方法として、例えば、特許文献2では、難水溶性のポリフェノール類を非晶質形態で水溶性担体中に分散させて水溶性や体内吸収性を高め、体内での有効性を向上させる固体分散体化技術が開示されている。
特開2009−201371号公報 特開2016−49105号公報
これまで、クルクミン及びクルクミン類縁体を機能性物質として含有する水系組成物が開発されてきたが、経口摂取による体内への吸収性は十分といえない。また、その製造方法は特殊な装置や複雑な操作を必要とするものである。そのため、高い体内への吸収性を示すクルクミン及びクルクミン類縁体を含む組成物を簡便に製造する方法の開発が望まれている。
したがって、本発明の課題は、クルクミンの経口摂取による生物学的利用能が改善された固体分散体、及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、クルクミン及びクルクミン類縁体を溶解した状態で特定の多孔質粒子に担持することによって、クルクミン及びクルクミン類縁体の経口摂取による生物学的利用能を改善することができるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1]クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、溶解した状態で多孔質粒子に担持されたことを特徴とする、固体分散体。
この固体分散体によれば、クルクミンやクルクミン類縁体が溶解した状態で特定の全細孔容積を有する多孔質粒子に担持されたため、クルクミンやクルクミン類縁体が非晶質形態となり、経口摂取による生物学的利用能を向上させることができる。
[2]前記溶解した状態は、加熱溶解した状態であることを特徴とする、[1]に記載の固体分散体。
この固体分散体によれば、クルクミンやクルクミン類縁体を加熱により溶解するため、溶媒等を除去する必要がなく、簡素な製造工程により、本発明の固体分散体を得ることができる。
[3]クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、非晶質形態であることを特徴とする、固体分散体。
この固体分散体によれば、クルクミンやクルクミン類縁体が非晶質形態であるため、経口摂取による生物学的利用能を向上させることができる。
[4]前記多孔質粒子は、多孔性二酸化ケイ素及び/又は多孔性ケイ酸カルシウムであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の固体分散体。
この固体分散体によれば、クルクミンやクルクミン類縁体を担持する多孔質粒子として、入手が容易な多孔性二酸化ケイ素、多孔性ケイ酸カルシウムを採用することができる。
[5]前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体の含有量は、20.0〜60.0質量%であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の固体分散体。
この固体分散体によれば、多孔質粒子が担持するクルクミンやクルクミン類縁体を高含有量とすることができる。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の固体分散体を含有することを特徴とする、錠剤又はカプセル剤。
この錠剤、又はカプセル剤によれば、多孔質粒子がクルクミンやクルクミン類縁体を担持し、経口摂取による生物学的利用能が向上した固体分散体を摂取するうえでの利便性を向上させることができる。
[7]クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体の製造方法であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、
(i)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と前記多孔質粒子を混合する工程、
(ii)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体を溶解する工程、
を含むことを特徴とする、固体分散体の製造方法。
この固体分散体の製造方法によれば、多孔質粒子がクルクミンやクルクミン類縁体を担持し、経口摂取による生物学的利用能が向上した固体分散体を簡便に作製することができる。
本発明によれば、クルクミンやクルクミン類縁体の経口摂取による生物学的利用能を向上させた固体分散体、及びその製造方法を提供することができる。
本発明固体分散体の粉末X線回折パターンについて示す図である。 本発明固体分散体の経口摂取による血中のクルクミン濃度変化について示す図である。(A)血中クルクミン濃度の経時変化について示す図である。(B)クルクミンの血中濃度曲線下面積(AUC)について示す図である。
以下、本発明の固体分散体、固体分散体からなる粉体、固体分散体を含有する顆粒剤、固体分散体を含有する錠剤、カプセル剤、医薬品組成物、化粧品組成物、食品組成物、飲料組成物、飼料組成物、及び固体分散体の製造方法について説明する。
本発明の固体分散体は、クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、溶解した状態で多孔質粒子に担持されたことを特徴とするもの、又は本発明の固体分散体は、クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、非晶質形態であることを特徴とするものであれば特に限定されるものではない。
本発明の固体分散体の製造方法は、クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体の製造方法であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、(i)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と前記多孔質粒子を混合する工程、(ii)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体を溶解する工程、を含むことを特徴とするものであれば特に限定されるものではない。
[固体分散体の構成]
次に、本発明の固体分散体を構成する各成分について、詳細に説明する。なお、固体分散体とは、不活性担体である多孔質粒子にクルクミン及び/又はクルクミン類縁体が非晶質形態として担持した固体を意味する。また、各成分の含有量について、特に断りがない場合は固体分散体中の含有量を示す。
(クルクミン及びクルクミン類縁体)
クルクミン及びクルクミン類縁体は、天然物由来であっても化学合成されたものであってもよい。また、クルクミンやクルクミン類縁体であるデメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンを含有する市販のウコン色素などが入手のしやすさから適しているが、これらに限定されるものではない。
クルクミン類縁体は、クルクミンと同様の基本骨格を有し、クルクミンと相違するクルクミノイド化合物であれば、特に制限されるものではない。クルクミン類縁体の具体例としては、例えば、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ジヒドロクルクミン、ジヒドロデメトキシクルクミン、ジヒドロビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロデメトキシクルクミン、テトラヒドロビスデメトキシクルクミン、ジヒドロキシテトラヒドロクルクミン、ジ−O−デメチルクルクミン、O−デメチルデメトキシクルクミンなどが挙げられる。
また、これらのクルクミン及びクルクミン類縁体は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
クルクミン及びクルクミン類縁体の固体分散体あたりの含有量は、特に制限されるものではない。例えば、固体分散体におけるクルクミン及びクルクミン類縁体の固体分散体あたりの担持量としては、10.0質量%以上90.0質量%以下であってもよい。下限値としては、好ましくは20.0質量%以上、更に好ましくは30.0質量%以上、特に好ましくは40.0質量%以上である。一方、上限値としては、好ましくは80.0質量%以下、更に好ましくは70.0質量%以下、特に好ましくは60.0質量%以下である。
クルクミン及びクルクミン類縁体の固体分散体あたりの担持量を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体の生理作用を更に発揮することができる。
(多孔質粒子)
多孔質粒子は、微細な空間を多数形成した広い表面積を有する粒子であれば、物質の種類や形状や大きさ等が特に制限されるものではない。多孔質粒子の物質の種類としては、例えば、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、含水二酸化ケイ素、カオリン、合成ヒドロタルサイト、乾燥水酸化アルミニウムゲル、沈降炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの多孔質粒子の中でも、好ましくは多孔性の二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明の多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であることを特徴とするものである。全細孔容積が0.5mL/g以上であることにより、クルクミン及びクルクミン類縁体を非晶質形態として担持することができる。多孔質粒子の全細孔容積の下限値としては、好ましくは0.8mL/g以上、より好ましくは1.0mL/g以上、更に好ましくは1.2mL/g以上、特に好ましくは1.5mL/g以上である。一方、上限値としては、特に制限されないが、例えば、3.0mL/g以下、好ましくは2.5mL/g以下、特に好ましくは2.0mL/g以下である。
多孔質粒子の比表面積は、クルクミン及びクルクミン類縁体を担持できれば、特に制限されるものではない。例えば、多孔質粒子の比表面積としては、50m/g以上1000m/g以下であってもよい。下限値としては、好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上、特に好ましくは200m/g以上である。一方、上限値としては、好ましくは900m/g以下、更に好ましくは700m/g以下、特に好ましくは500m/g以下である。
多孔質粒子の比表面積を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体に対する担持能をより発揮することができる。
多孔質粒子の平均細孔径は、クルクミン及びクルクミン類縁体を担持できれば、特に制限されるものではない。例えば、多孔質粒子の平均細孔径としては、0.5nm以上50nm以下であってもよい。下限値としては、好ましくは1nm以上、更に好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。一方、上限値としては、好ましくは40nm以下、更に好ましくは35nm以下、特に好ましくは30nm以下である。
多孔質粒子の平均細孔径を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体に対する担持能をより発揮することができる。
多孔質粒子において細孔径が12nm未満である細孔の合計容積は、クルクミン及びクルクミン類縁体を担持できれば、特に制限されるものではない。例えば、多孔質粒子において細孔径が12nm未満である細孔の合計容積としては、0.01mL/g以上1.0mL/g以下であってもよい。下限値としては、好ましくは0.02mL/g以上、更に好ましくは0.05mL/g以上、特に好ましくは0.1mL/g以上である。一方、上限値としては、好ましくは0.5mL/g以下、更に好ましくは0.4mL/g以下、特に好ましくは0.2mL/g以下である。
多孔質粒子において細孔径が12nm未満である細孔の合計容積を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体に対する担持能を更に発揮することができる。
多孔質粒子において細孔径が12nm以上28nm未満である細孔の合計容積は、クルクミン及びクルクミン類縁体を担持できれば、特に制限されるものではない。例えば、多孔質粒子において細孔径が12nm以上28nm未満である細孔の合計容積としては、0.001mL/g以上1.5mL/g以下であってもよい。下限値としては、好ましくは0.01mL/g以上、更に好ましくは0.1mL/g以上、特に好ましくは0.3mL/g以上である。一方、上限値としては、好ましくは1.3mL/g以下、更に好ましくは1.2mL/g以下、特に好ましくは1.1mL/g以下である。
多孔質粒子において細孔径が12nm以上28nm未満である細孔の合計容積を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体に対する担持能を更に発揮することができる。
多孔質粒子において細孔径が28nm以上である細孔の合計容積は、クルクミン及びクルクミン類縁体を担持できれば、特に制限されるものではない。例えば、多孔質粒子において細孔径が28nm以上である細孔の合計容積としては、0.01mL/g以上1.5mL/g以下であってもよい。下限値としては、好ましくは0.1mL/g以上、更に好ましくは0.3mL/g以上、特に好ましくは0.5mL/g以上である。一方、上限値としては、好ましくは1.3mL/g以下、更に好ましくは1.2mL/g以下、特に好ましくは1.1mL/g以下である。
多孔質粒子において細孔径が28nm以上である細孔の合計容積を上記範囲とすることで、クルクミン及びクルクミン類縁体に対する担持能を更に発揮することができる。
本発明の多孔質粒子の商品としては、例えば、サイロページ720(富士シリシア化学株式会社)、CARPLEX FPS−500(DSL.ジャパン株式会社)、AEROSIL 200FDA(日本アエロジル株式会社)、フローライトPS−10(富田製薬株式会社)、フローライトR(富田製薬株式会社)などが挙げられる。
また、これらの多孔質粒子は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
(非晶質形態)
固体分散体に担持されるクルクミン及びクルクミン類縁体は、結晶構造を有しない不定形の非晶質形態(アモルファスとも呼ばれる。)である。ここで、「非晶質形態」とは、X線回折パターンにおいて、クルクミン及びクルクミン類縁体の結晶形態に特徴的なピークの強度と、ベースラインとなる強度の比で表すことができる。例えば、晶質形態に特徴的な2θ=16°付近のピーク強度と、ベースライン(例えば、2θ=13°)の強度の比(16°/13°)が5.0以下である場合に、非晶質形態であると認められる。この強度の比(16°/13°)が小さいほど非晶質形態の割合が高くなることから、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
多固体分散体に担持されるクルクミン及びクルクミン類縁体における非晶質形態の割合を高めることで、クルクミン及びクルクミン類縁体の経口摂取による生物学的利用能を向上させることができる。
以上の特徴により、本発明の固体分散体は、多孔質粒子に担持されたクルクミンやクルクミン類縁体の溶解性を高め、経口摂取による生物学的利用能を向上させることができる。
[固体分散体の調製]
次に、本発明の固体分散体の調製について、詳細に説明する。固体分散体の調製方法としては、加熱溶解法、溶媒法、粉砕法、吸着法、超臨界法などが挙げられる。本発明の固体分散体の製造方法は、簡便性に優れるという観点から、特に加熱溶解法であることが好ましい。
(加熱溶解法)
加熱溶解法は、クルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の物理混合物を加熱することにより、多孔質粒子の細孔内に非晶質形態のクルクミン及びクルクミン類縁体を担持させる方法である。
加熱溶解する温度は、クルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の物理混合物が溶解する温度であれば、特に制限されるものではない。例えば、物理混合物を加熱溶解する温度としては、170℃以上250℃以下であってもよい。下限値としては、好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上である。一方、上限値としては、好ましくは230℃以下、更に好ましくは220℃以下、特に好ましくは210℃以下である。
クルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の物理混合物を加熱溶解する温度を上記範囲とすることで、クルクミンを多孔質粒子の細孔内に担持した固体分散体を効率よく作製することができる。
加熱溶解に使用される手段は、クルクミン及びクルクミン類縁体を多孔質粒子の存在下で加熱することができるオーブンであれば、特に制限されるものではない。加熱溶解に使用される手段の具体例としては、例えば、乾燥器、オイルバス、電気炉などが挙げられる。
また、クルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の物理混合物を加熱溶解処理する時間は、加熱溶解する温度や加熱溶解に使用される手段により適宜選択される。例えば、物理混合物を加熱溶解処理する時間としては、1分以上30分以下であってもよい。下限値としては、好ましくは3分以上、更に好ましくは4分以上、特に好ましくは5分以上である。一方、上限値としては、好ましくは15分以下、更に好ましくは10分以下、特に好ましくは7分以下である。
クルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の物理混合物を加熱溶解する時間を上記範囲とすることで、クルクミンを多孔質粒子の細孔内に担持した固体分散体を効率よく作製することができる。
加熱溶解処理をしたクルクミン及びクルクミン類縁体と多孔質粒子の溶融物の冷却方法は、固体分散体の構造を維持できるものであれば、特に制限されるものではない。一般的には、溶解状態にある溶融物を放冷して室温に戻せばよいが、必要に応じて、冷却手段を用いて急冷する操作を行ってもよい。冷却手段としては、例えば、室温以下に設定された冷蔵庫や、クーラーなどが挙げられる。冷却手段を用いて急冷することにより、非晶質形態の割合を高めることができる。
(溶媒法)
溶媒法は、クルクミン及びクルクミン類縁体を有機溶媒に溶解し、その中に多孔質粒子を加えて溶媒を留去させることにより、多孔質粒子の細孔内に非晶質形態のクルクミン及びクルクミン類縁体を担持させる方法である。
有機溶媒は、クルクミン及びクルクミン類縁体を溶解できるものであれば、特に制限されるものではない。有機溶媒の具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、エタノール、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサンなどが挙げられる。なお、アセトン、エタノール、メタノール、アセトニトリルなど水と混じり合う有機溶媒を用いる場合には、必要に応じて適宜の量の水を加えてもよい。
また、これらの有機溶媒は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
有機溶媒を留去する方法は、溶液から有機溶媒を除去できるものであれば、特に制限されるものではない。有機溶媒の留去方法の具体例としては、例えば、噴霧乾燥、減圧乾燥、蒸発乾燥、凍結乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、風乾などが挙げられる。
以上の特徴により、クルクミン及びクルクミン類縁体が担持された固体分散体の製造工程を簡便にするとともに、小規模の製造設備においても実施することができる。。
[固体分散体の形態、及び用途]
次に、本発明の固体分散体の形態、及び用途について、詳細に説明する。固体分散体の形態としては、粉体、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などが挙げられる。また、本発明の固体分散体の用途としては、医薬品組成物、化粧品組成物、食品組成物、飲料組成物、又は飼料組成物などへの添加が挙げられる。
(粉体)
固体分散体は、必要に応じて粉体化してもよく、その後の製剤化工程に用いることができる。
固体分散体を粉体化する方法は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。固体分散体を粉体化するための粉砕機の具体例としては、例えば、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミルなどが挙げられる。
粉末の粒径は、目的とする製剤に使用することができれば、特に制限されるものではない。例えば、粉末の粒径としては、1μm以上100μm以下であってもよい。下限値としては、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。一方、上限値としては、好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
以上の特徴により、本発明の粉体は、経口摂取によるクルクミンやクルクミン類縁体の生物学的利用能が向上した固体分散体の汎用性を向上させることができる。
(顆粒剤)
固体分散体は、顆粒の形態とすることができる。固体分散体を顆粒化する方法は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。固体分散体を顆粒化するための造粒機の具体例としては、例えば、流動層造粒機、撹拌造粒機、押し出し造粒機などが挙げられる。
顆粒の粒径は、目的とする製剤に使用することができれば、特に制限されるものではない。例えば、顆粒の粒径としては、100μm以上2mm以下であってもよい。上限値としては、好ましくは1mm以下、更に好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。
顆粒とする際には、バインダーを使用してもよい。バインダーとしては、例えば、でんぷん、デキストリン、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ショ糖、マルチトール、ソルビトールなどが挙げられる。
以上の特徴により、本発明の顆粒剤は、経口摂取によるクルクミンやクルクミン類縁体の生物学的利用能が向上した固体分散体の汎用性を向上させることができる。
(錠剤)
固体分散体は、錠剤の形態とすることができる。錠剤は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。錠剤の具体例としては、糖衣錠、徐放錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、舌下錠、トローチ、チュアブル錠などが挙げられる。また、錠剤は、素錠のみからなるものでもよい。
錠剤の製造方法は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。錠剤の製造方法の具体例としては、混合機で組成成分を混合し、打錠機で打錠して作製する方法などが挙げられる。また、打錠工程前に、造粒機を用いて造粒し、乾燥、整粒する工程を行ったり、打錠工程後にコーティング機で錠剤をコーティングする工程を設けたりしてもよい。
以上の特徴により、本発明の錠剤は、多孔質粒子がクルクミンやクルクミン類縁体を担持し、経口摂取による生物学的利用能が向上した固体分散体を摂取するうえでの利便性を向上させることができる。
(カプセル剤)
固体分散体は、カプセル剤の形態とすることができる。カプセル剤は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。カプセル剤の具体例としては、寒天、ゼラチン、ジェランガムなどを基材とするソフトカプセル、ゼラチン、セルロース誘導体、プルランなどを基材とするハードカプセル、寒天、ゼラチン、アクリル、ウレタンなどを基材とするシームレスカプセルなどが挙げられる。
カプセル剤の基材として用いるゼラチンの具体例としては、例えば、ゼラチン、酸性ゼラチン、アルカリ性ゼラチン、ペプタイドゼラチン、低分子ゼラチン、ゼラチン誘導体などが挙げられる。
カプセル剤の基材として用いるセルロース誘導体の具体例としては、例えば、メチルセルロースなどのアルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどが挙げられる。
以上の特徴により、本発明のカプセル剤は、多孔質粒子がクルクミンやクルクミン類縁体を担持し、経口摂取による生物学的利用能が向上した固体分散体を摂取するうえでの利便性を向上させることができる。
(医薬品組成物、化粧品組成物)
本発明が医薬品組成物、化粧品組成物である場合は、クルクミンを担持する固体分散体を有効成分として含有する。さらに、医薬品組成物、化粧品組成物は、クルクミンの血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、コレステロール低下作用、体脂肪抑制作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗炎症作用、腫瘍形成阻害作用、循環器疾患改善作用、脳疾患予防作用、殺菌作用、美肌作用などの機能が失われない限り、他の有効成分や添加剤など任意の成分を含有してもよい。例えば、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤などが挙げられる。
また、これらの他の有効成分や添加剤など任意の成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの含有量については、使用する添加成分の種類や剤形などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
有効成分としては、高血圧治療剤、糖尿病治療剤、脂質代謝異常改善剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、循環器疾患治療剤、脳機能改善剤、殺菌剤、皮膚機能改善剤などが挙げられる。薬学的に許容される基剤としては、水、エタノールのような極性溶媒、油性基剤などが挙げられる。担体、賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロースなどが挙げられる。結合剤としては、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルク、マクロゴールなどが挙げられる。着色剤としては、医薬品や化粧品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。pH調節剤としては、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、乳酸などが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられる。安定化剤としては、アルギニン、ポリソルベート80、マクロゴール4000などが挙げられる。保存剤としては、安息香酸、フェノキシエタノール、チメロサールなどが挙げられる。
医薬組成物の形態は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。医薬組成物の形態の具体例としては、例えば、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、丸剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤などの液剤、トローチ剤などが挙げられる。
化粧品組成物の形態は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。化粧品組成物の形態の具体例としては、例えば、飲む化粧品(oral cosmetic)として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、チューインガム、多糖膜、ゼリー、ゼラチンなどが挙げられる。
医薬組成物、化粧品組成物におけるクルクミンを担持する固体分散体の含有量は、クルクミン、及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、医薬組成物、化粧品組成物におけるクルクミンを担持する固体分散体の含有量としては、成人であれば、10μg〜10g/kg/日、好ましくは、0.1g〜1g/kg/日を経口的に、1日1回または2〜4回以上に分割して、適宜の間隔をあけて投与することができる。
以上の特徴により、本発明のクルクミンやクルクミン類縁体を担持する固体分散体を含有する医薬組成物、化粧品組成物は、クルクミンの種々の作用効果を利用し、疾患の治療や改善、美容効果を向上させることができる。
(食品組成物、飲料組成物、飼料組成物)
本発明が食品組成物、飲料組成物、飼料組成物である場合は、クルクミンを担持する固体分散体を有効成分として含有する。さらに、食品組成物、飲料組成物、飼料組成物は、クルクミンの血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、コレステロール低下作用、体脂肪抑制作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗炎症作用、腫瘍形成阻害作用、循環器疾患改善作用、脳疾患予防作用、殺菌作用、美肌作用などの機能が失われない限り、他の成分を含有してもよい。例えば、高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常、アレルギー、炎症、腫瘍、循環器疾患、脳機能疾患、感染症、皮膚疾患に対する改善効果を有する他の活性成分、抗酸化成分、油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、その他食品として利用され得る食品添加物や食品材料などが挙げられる。
また、これらの他の成分は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの含有量については、使用する添加成分の種類や剤形などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
なお、飼料組成物とは、ウシ、ブタ、トリなどの非ヒト動物用の飲食物として使用するものをいう。
抗酸化成分としては、トコフェロール類やトコトリエノール類、それらの誘導体、セサミン、β−カロチンなどのカロテノイド類、その誘導体、没食子酸やエラグ酸などのタンニン類、それらの誘導体、フラボン、カテキンなどのフラボノイド類、ユビキノンやビタミンKなどのキノン類、オリーブ抽出物などが挙げられる。油性成分としては、脂肪酸エステル、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコールなどが挙げられる。ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。アミノ酸類としては、アスパラギン酸、アラニン、グルタミン酸などが挙げられる。
食品組成物、飲料組成物、飼料組成物の形態は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。食品組成物、飲料組成物、飼料組成物の形態の具体例としては、例えば、加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、菓子、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品、飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
また、食品組成物、飲料組成物、飼料組成物の形状や性状は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。食品組成物、飲料組成物、飼料組成物の形状や性状の具体例としては、例えば、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状などが挙げられる。特に、健康食品やサプリメントとして使用する場合は、継続的で簡便な摂取ができるように、顆粒、カプセル、錠剤、チュアブル剤、飲料パウダー、ドリンク剤、スムージー、ゼリー、グミなどの形態で調製することが好ましい。
食品組成物、飲料組成物、飼料組成物におけるクルクミンを担持する固体分散体の含有量は、クルクミン及びクルクミン類縁体を含む固体分散体の目的とする特性が維持できるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、食品組成物、飲料組成物、飼料組成物におけるクルクミンを担持する固体分散体の含有量としては、成人であれば、10μg〜10g/kg/日、好ましくは、0.1g〜1g/kg/日を経口的に、1日1回または2〜4回以上に分割して、適宜の間隔をあけて摂取することである。本発明の固体分散体に担持されているクルクミンは、天然物由来であり、医薬品のように副作用を有するものでないので、1日あたりの摂取量に制限はない。
食品組成物、飲料組成物、飼料組成物は、高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常、アレルギー、炎症、腫瘍、循環器疾患、脳機能疾患、感染症、皮膚疾患に対して有益な作用をもたらす可能性があることの表示を付してもよい。
なお、これらの表示は、公知の方法で容器包装手段に付すことができ、これによって本発明の食品組成物、飲料組成物、飼料組成物は、高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常、アレルギー、炎症、腫瘍、循環器疾患、脳機能疾患、感染症、皮膚疾患の改善のために用いられるものであることが明示されるので、通常の飲食物、飼料との区別が明確となる。
以上の特徴により、本発明のクルクミンやクルクミン類縁体を担持する固体分散体を含有する食品組成物、飲料組成物、飼料組成物は、クルクミンの種々の作用効果を利用し、疾患の治療や改善に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
[実施例1]
クルクミン1g、及び細孔容積が1.766mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合した。得られた混合物0.5gを、予め約200℃に設定したオーブンで5分間加熱した。加熱した混合物を室温になるまで放冷して粉末状の固体分散体を得た。
[実施例2]
クルクミン1.2g、及び細孔容積が1.766mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学株式会社)0.8gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合した。得られた混合物0.5gを、予め約200℃に設定したオーブンで5分間加熱した。加熱した混合物を室温になるまで放冷して粉末状の固体分散体を得た。
[実施例3]
クルクミン1g、及び細孔容積が1.257mL/gであるケイ酸カルシウム(フローライトPS−10、富田製薬株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合した。得られた混合物0.5gを、予め約200℃に設定したオーブンで5分間加熱した。加熱した混合物を室温になるまで放冷して粉末状の固体分散体を得た。
[実施例4]
クルクミン1.2g、及び細孔容積が1.257mL/gであるケイ酸カルシウム(フローライトPS−10、富田製薬株式会社)0.8gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合した。得られた混合物0.5gを、予め約200℃に設定したオーブンで5分間加熱した。加熱した混合物を室温になるまで放冷して粉末状の固体分散体を得た。
[比較例1]
クルクミン1g、及び細孔容積が1.766mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合し、物理混合物を得た。
[比較例2]
クルクミン1.2g、及び細孔容積が1.766mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学株式会社)0.8gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合し、物理混合物を得た。
[比較例3]
クルクミン1g、及び細孔容積が1.257mL/gであるケイ酸カルシウム(フローライトPS−10、富田製薬株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合し、物理混合物を得た。
[比較例4]
クルクミン1.2g、及び細孔容積が1.257mL/gであるケイ酸カルシウム(フローライトPS−10、富田製薬株式会社)0.8gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合し、物理混合物を得た。
[比較例5]
クルクミン1g、及び細孔容積が0.3628mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ760、富士シリシア化学株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合し、物理混合物を得た。
[比較例6]
クルクミン1g、及び細孔容積が0.3628mL/gである微粒二酸化ケイ素(サイロページ760、富士シリシア化学株式会社)1gを、めのう乳鉢を用いて均一になるように混合した。得られた混合物0.5gを、予め約200℃に設定したオーブンで5分間加熱した。なお、加熱後は、粉末状態を維持できずに固着していた。
[試験例1]結晶形の評価
(測定方法)
実施例1〜4、及び比較例1〜6の結晶形を明らかにするために、粉末X線回折装置(MiniFlex600、株式会社リガク)を用いた。測定条件は、X線出力を40kV−15mA、開始角度を10°、終了角度を40°、スキャン速度を10°/分とした。
(結果1)
図1は、実施例1と比較例1の粉末X線回折パターンを示したものである。図中の縦軸は回折強度(相対強度)を表すが、各検体の粉末X線回折パターンを比較しやすくするために、各々を縦方向に適宜移動させているため表示していない。なお、クルクミン原末単独、微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学株式会社)単独の試料についても粉末X線回折パターンを測定した。
クルクミン原末単独では、結晶構造を有する物質に特有のピークが検出された。晶質形態に特徴的な2θ=16°付近のピーク強度と、ベースライン(2θ=13°)の強度の比(16°/13°)は、11.0(38516.667/3508.333=11.0)であった。
比較例1の物理混合物では、クルクミン原末単独と同様の結晶構造を有する物質に特有のピークが検出された。晶質形態に特徴的な2θ=16°付近のピーク強度と、ベースライン(2θ=13°)の強度の比(16°/13°)は、8.6(30358.333/3516.667=8.6)であった。
また、比較例2〜6についても、結晶構造を有する物質に特有のピークが検出され、晶質形態であった。
一方、実施例1の固体分散体では、比較例1やクルクミン原末で測定されたピークが検出されなかった。晶質形態に特徴的な2θ=16°付近のピーク強度と、ベースライン(2θ=13°)の強度の比(16°/13°)は、1.4(4916.667/3616.667=1.4)であった。
また、実施例2〜4についても、結晶構造を有する物質に特有のピークが検出されず、非晶質形態であった。
なお、結晶状態にない微粒二酸化ケイ素もピークが検出されなかった。
したがって、クルクミンと全細孔容積が0.5mL/g以上の多孔質粒子の混合物を加熱して得られる固体分散体は、非晶質形態のクルクミンを担持していることが示された。
[試験例2]クルクミン非晶質固体分散体の経口投与による血中クルクミン濃度の測定
実施例1の固体分散体の経口投与による体内への吸収性を確認するために、雄性SD系ラットを用いた経口投与試験を行った。
(投与方法)
普通固形飼料で飼育した8週齢の雄性SD系ラットを実施例1投与群、比較例1投与群、クルクミン原末投与群、セラクルミン投与群(各群4匹)に分け、投与16時間前より絶食させた。なお、セラクルミン(株式会社セラバリューズ)は、高吸収クルクミン製剤である。
各試料は、クルクミン100mg/kgとなる量を水10mL/kgに分散させた溶液として、ラット用胃ゾンデ管を用いて強制的に胃内投与した。
(血液サンプルの調製)
採血は、試料の投与前、投与後0.5、1、2、4、6、24時間後にイソフルラン吸引麻酔下で外側尾静脈より行った。採取した血液は、直ちに微量のヘパリンナトリウムと混和し、12,000rpm、4℃の条件で10分間遠心分離処理して、上清を血漿として分取した。
(血漿中クルクミン濃度の測定)
分取した血漿は、スルファターゼ溶液(Sulfatase Type H-1 4mg/mL(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0))と等量(v/v)混合し、37℃で4時間インキュベートした。スルファターゼ溶液と混合した血漿は、アセトニトリルに溶解させ、ボルテックスミキサーで10分間攪拌した後に、10,000rpm、4℃の条件で10分間遠心分離処理して、上清を測定用サンプルとして回収した。
測定用サンプルをHPLC分析することによりクルクミン濃度を測定した。なお、HPLCの測定条件は、逆相カラムがInertSustain C18分析カラム(シリカゲル粒子径3μmHP、内径3.0mm、長さ100mm、ジーエルサイエンス株式会社)、カラム温度が40℃、流速が0.5mL/分、移動相が0.1%ギ酸含有アセトニトリルと0.1%ギ酸水溶液の等量(v/v)混合溶液とし、検出器は、吸光光度検出器(検出波長425nm)を用いた。
(統計解析)
統計解析は、統計処理ソフト(EXCEL統計Ver.7.0、株式会社エスミ)を用いて、チューキー・クレーマー検定により行った。P値が0.05未満である場合に有意差ありと判定し、値は平均±標準偏差で示した。
(結果2)
図2(A)は、実施例1投与群、比較例1投与群、クルクミン原末投与群、セラクルミン投与群における各試料の経口摂取による血中のクルクミン濃度の経時変化を示したグラフである。
比較例1投与群、及びクルクミン原末投与群では、血中クルクミン濃度の有意な上昇がみられなかった。
一方、実施例1投与群では、投与後2時間以内に速やかな血中クルクミン濃度の上昇を誘導した。この速やかな血中クルクミン濃度の上昇は、高吸収クルクミン製剤を用いたセラクルミン投与群と同等であると認められる。また、実施例1投与群は、セラクルミン投与群と比較して、24時間にわたり高い血中クルクミン濃度を維持した。
さらに、図2(B)に示すように、実施例1投与群におけるクルクミンの血中濃度曲線下面積(AUC)は、セラクルミン投与群と比較して顕著に増加した。
したがって、クルクミンと多孔質粒子の混合物を加熱して得られる固体分散体の経口摂取は、クルクミンの生物学的利用能を改善することが示された。
本発明は、経口摂取による生物学的利用能が改善されたクルクミン非晶質固体分散体を簡便に製造できるので、クルクミンが有する血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、コレステロール低下作用、体脂肪抑制作用、抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗炎症作用、腫瘍形成阻害作用、循環器疾患改善作用、脳疾患予防作用、殺菌作用、美肌作用などを利用した医薬品組成物、化粧品組成物、食品組成物、飲料組成物、飼料組成物などを提供することができる。

Claims (7)

  1. クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、
    前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、
    前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、溶解した状態で多孔質粒子に担持されたことを特徴とする、固体分散体。
  2. 前記溶解した状態は、加熱溶解した状態であることを特徴とする、請求項1に記載の固体分散体。
  3. クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体であって、
    前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、
    前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体は、非晶質形態であることを特徴とする、固体分散体。
  4. 前記多孔質粒子は、多孔性二酸化ケイ素及び/又は多孔性ケイ酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体分散体。
  5. 前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体の含有量は、20.0〜60.0質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体分散体を含有することを特徴とする、錠剤又はカプセル剤。
  7. クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と、多孔質粒子と、を含む固体分散体の製造方法であって、前記多孔質粒子は、全細孔容積が0.5mL/g以上であり、
    (i)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体と前記多孔質粒子を混合する工程、
    (ii)前記クルクミン及び/又はクルクミン類縁体を溶解する工程、
    を含むことを特徴とする、固体分散体の製造方法。


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