JP2021042100A - SiC基複合材料、BN被覆SiC繊維、およびSiC基複合材料の製造方法 - Google Patents

SiC基複合材料、BN被覆SiC繊維、およびSiC基複合材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の複合材料では、マトリックス材料より強度が高いものの、伸びが小さく、より一層強度の高いSiC基複合材料が望まれていた。【解決手段】SiCを主成分とする繊維と、SiCを主成分とするマトリックスから構成されるSiC基複合材料であって、前記繊維表面に形成された結晶性BN層と、前記マトリックスと、の間に、結晶性カーボン層が形成されていることを特徴とするSiC基複合材料。【選択図】図1

Description

本発明は、SiCを主成分とする繊維間にSiCを主成分とするマトリックスが形成されたSiC基複合材料、およびSiC基複合材料に用いられるBN被覆SiC繊維、およびSiC基複合材料の製造方法に関する。
世界的な環境保全への関心の高まりや、原油価格の高騰に対応するために、ジェットエンジンの燃焼効率を高めて、燃費を改善することが検討されている。燃焼効率を高めるには、燃焼ガスをより高温にする必要があり、高温に晒される部材には、耐熱性の高いNi基超合金とともに、新たな材料として、セラミックス基複合材料が注目されている。
このようなセラミックス基複合材料としては、SiCを主成分とする繊維間にSiCを主成分とするマトリックスが形成されたSiC基複合材料が知られている。SiC基複合材料として、例えば特許文献1に、表面に炭化ケイ素からなる繊維上に窒化ホウ素の相間層を形成し、これを用いてマトリックスを形成することで、繊維/マトリックス間に強固な窒化ホウ素の相間層、すなわちBN界面層を形成できることが開示されている。これによれば、BN界面層はBN界面層/繊維間、BN界面層/マトリックス間、のそれぞれの結合力が高まり、マトリックス材料より強度の高い複合材料にできる、とされている。
特表2001−505864号公報
しかし、特許文献1の複合材料では、マトリックス材料より強度が高いものの、伸びが小さく、より一層強度の高いSiC基複合材料が望まれていた。
そこで、本発明では、延性と強度の高いSiC基複合材料、およびSiC基複合材料に用いられるBN被覆SiC繊維、およびSiC基複合材料の製造方法を提供する。
本発明のSiC基複合材料は、SiCを主成分とする繊維と、SiCを主成分とするマトリックスから構成されるSiC基複合材料であって、前記繊維表面に形成された結晶性BN層と、前記マトリックスと、の間に、結晶性カーボン層が形成されていることを特徴とする。
また、本発明のBN被覆SiC繊維は、SiCを主成分とする繊維表面に、最外層となる第1のBN被覆層と前記第1のBN被覆層の内側の第2のBN被覆層とを備え、前記第1のBN被覆層に含まれる酸素量が、前記第2のBN被覆層に含まれる酸素量よりも高いことを特徴とする。
また、本発明のBN被覆SiC繊維は、前記第1のBN被覆層の結晶化度が、前記第2のBN被覆層の結晶化度よりも低いことが好ましい。
また、本発明のBN被覆SiC繊維は、前記第1のBN被覆層に含まれる酸素量が、3原子パーセント以上であることが好ましい。
また、本発明のSiCの製造方法は、前記BN被覆SiC繊維を製造する工程と、前記BN被覆SiC繊維にSiCを主成分とするマトリックスを形成する間に、結晶性カーボン層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明のSiCの製造方法は、前記SiCを主成分とするマトリックスを形成する方法が、化学気相含浸(CVI)法であることが好ましい。
本発明によれば、延性と強度の高いSiC基複合材料にすることができる。
本発明の第1実施形態であるSiC基複合材料の模式図である。 本発明の第1実施形態であるSiC基複合材料におけるSiCを繊維と、SiCマトリックスと、SiC繊維表面に形成された結晶性BN層、マトリックスと、の間に、結晶性カーボン層を含む領域の(a)断面TEM像、(b)結晶性BN層および結晶性カーボン層の制限視野電子回折図形である。 本発明の第1実施形態であるSiC基複合材料におけるSiC繊維と、結晶性BN層を含む領域の(a)断面TEM像および(b)その高分解能TEM像である。 本発明の第1実施形態であるSiC基複合材料における結晶性カーボン層と、SiCマトリックスを含む領域の(a)断面TEM像、および(b)その高分解能TEM像である。 ナノインデンターによる単繊維引抜き試験で得られた本発明のSiC基複合材料の代表的な変位―荷重曲線と、圧子と繊維およびマトリクスの配置を示した模式図である。 繊維とマトリクス間の界面せん断強度のCVIによるマトリクス形成前のBN被覆層厚さ依存性を調査した結果である。 本発明の第2実施形態であるBN被覆SiC繊維断面の模式図である。 本発明の第2実施形態であるBN被覆SiC繊維の(a)断面TEM像と(b)第1のBN被覆層の高分解能TEM像および(c)第2のBN被覆層の高分解能TEM像である。 連続式成膜装置の模式図である。 比較例のSiC繊維上に形成したBN被覆SiC繊維の(a)断面TEM像、(b)BN層の制限視野電子回折図形、(c)BN層断面の高分解能TEM像である。 比較例のSiC基複合材料のSiC繊維/界面層/SiCマトリックス界面近傍の(a)断面TEM像、(b)結晶性BN層の制限視野電子回折図形、(c)結晶性BN層とマトリクスを含む領域の高分解能TEM像である。 本発明のSiC基複合材と比較サンプルの室温曲げ応力−変位曲線である。 本発明のSiC基複合材と比較サンプルの曲げ試験後の破断面のSEM像である。 本発明のSiC基複合材と比較サンプルの室温引張応力−歪み曲線である。 本発明のSiC基複合材と比較サンプルの引張試験後の破断面のSEM像である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態として、図1のSiC基複合材料100について説明する。
SiC基複合材料100は、SiCを主成分とする繊維10の繊維と、SiCを主成分とするマトリックス40と、を含み、SiC繊維10表面に形成された結晶性BN層20と、マトリックス40と、の間に、結晶性カーボン層30を含む。すなわち、結晶性BN層20と、マトリックス40と、の間に、結晶性カーボン層30が形成されている。
図2はSiC基複合材料100におけるSiCを主成分とする繊維10と、SiCを主成分とするマトリックス40と、SiC繊維10表面に形成された結晶性BN層20と、マトリックス40と、の間に、結晶性カーボン層30を含む領域のTEM像である。図2(b)(1)に示す結晶性BN層20の電子回折図形より、六方晶系のBNに起因する微細斑点からなるデバイリングが現れており、結晶化度が高いことがわかる。更に、以下の表1における結晶性BN層20のEDX元素分析領域2、3からB、Nが主として検出されている。また、図2(b)(2)に示す結晶性カーボン層30の電子回折図形において、六方晶系のグラファイト(黒鉛)に起因する微細斑点からなるデバイリングが現れており、結晶化度が高いことがわかる。更に、以下の表1に示す通り結晶性カーボン層30のEDX元素分析領域4からCが主として検出されている。
Figure 2021042100
ここで、SiC繊維10とは、SiCを主成分とする直径7〜15μm程度の繊維である。主成分として、80質量パーセントから99.8質量パーセントのSiCを含有し、酸素やTi、Zr、Alなどの金属成分あるいはTiBやBCなどのセラミックス成分を含んでも良いものとする。なお、機械特性および耐熱性の観点からSiC含有量が高く、酸素含有量が低く、結晶質であることが好ましい。また、通常、単繊維が500〜1600本程度束なった繊維束の形で用いられる。
また、SiCマトリックス40は、SiCを主成分とするバルク体であり、空隙率は2〜20体積パーセント程度である。主成分としては、80質量パーセント以上のSiCを含有し、酸素、炭素、シリコン等の不純物を含んでも良いものとする。なお、機械特性および耐熱性の観点からSiC含有量が高く、結晶質であることが好ましい。特に、繊維近傍のSiCマトリックスは高結晶化度であることが好ましい。
また、結晶性BN層20は、図3(b)の点線に示すような数ナノメートル幅の紐状結晶からなる乱層構造を呈する。乱層構造とは単原子面におけるBN六方晶底面の並進と回転によって二次元的に規則化したまま三次元的に不規則化した(C軸方向の積層構造が乱れた)構造であり、C軸方向の面間隔が通常の六方晶BNの場合よりも若干大きい。
また、結晶性カーボン層30は、図4(b)に示すような数ナノメートル幅の紐状結晶からなっており、結晶性BN層20と同様、通常の六方晶グラファイトではなく、C軸方向の積層構造が乱れた乱層構造になっていると考えられる。
第1実施形態であるSiC基複合材料100には、SiCマトリックス20よりもせん断強度の低い結晶性BN層20および結晶性カーボン層30から構成される界面層50が形成されている。SiC基複合材料100に引張応力が加わると、界面層50が優先的に破壊し、SiCマトリックス40からSiC繊維10の引抜きが生じる。これにより、SiC繊維10の脆性破壊が抑制され、延性と強度の高いSiC基複合材料100が得られる。
このSiC繊維10の引抜きメカニズムについて、詳細に説明する。SiC基複合材料100に引張応力が加わると、マトリクス中にクラックが生じ、繊維10を破断させずに通過すると、繊維がクラックを繋ぎ止めるブリッジングと呼ばれる状況が発生する。この場合、繊維10とマトリクス40間の界面が強固に結合していると、クラック進展時に繊維破断が生じ、脆性破壊に至る。一方、クラック進展時に繊維10とマトリクス40間の界面で一定長さの界面剥離が生じると、繊維10とマトリクス40間で滑りが発生し、繊維10のブリッジングが発生することにより延性が発現する。このため、界面の剥離抵抗(せん断強度)を小さくし、滑り抵抗を最適化することが重要となる。最近、この界面層として、熱CVDにより形成されるBN層が適用されている。特許文献1によると、僅かな異方性(ランダムに並べられている15nm未満のサイズの異方性領域を呈する)を示すナノメートルの配列によって形成されるBN相間層が開示されている。
しかしながら、本発明者等がBN界面層について種々研究したところ、僅かな異方性を有するBN相間層は、相間層内、相間層/繊維間および相間層/マトリクス間の結合力が高いため、引張応力負荷状態での破断時に相間層内、相間層/繊維間あるいは相間層/マトリクス間で破壊が生じ難く、該BN相間層のみではマトリクスからの繊維引抜けが不十分となり、十分な延性および強度が得られないことがわかった。
そこで、界面層50を結晶性カーボン層30と結晶性BN層20の2層構造とした。結晶性カーボン層30のせん断強度は結晶性BN層20よりも低く、SiC基複合材料100に引張応力が加わると、結晶性カーボン層30、または、結晶性カーボン層30と結晶性BN層20との界面が優先的に破壊すると考えられる。このため、結晶性BN層20のみからなる界面層50を有するSiC基複合材料100よりも優れた繊維引抜き性を発現すると推察される。
本発明のSiC基複合材料100における繊維引抜き性を検証するために、ナノインデンターによる単繊維引抜き試験を実施した。島津製ダイナミック超微小硬度計(DUH−211S)を用い、図5に示すように、ダイヤモンド製の三角錐バーコビッチ圧子(稜間角115°)を繊維断面に押し込み、圧子の変位―荷重曲線を得た。変位―荷重曲線における領域Iでは圧子60が繊維10に押し込まれ、領域IIでは繊維10がマトリクス40から引き抜かれる。その後、領域IIIにおいて、最大設定荷重まで圧子60の稜線がマトリクス40に押し込まれた後、領域IVにおいて除荷される。ここで、繊維10がマトリクス40から引き抜かれるために必要な界面せん断強度τは以下の式により算出される。
式1
Figure 2021042100
ここで、F:図5で示した変位―荷重曲線の領域IIで生じる繊維引抜きに必要な荷重
r:繊維10の半径、t:試料厚さ、である。
繊維10とマトリクス40間の界面せん断強度のCVIによるマトリクス形成前のBN被覆層厚さ依存性を図6に示す。BN被覆層厚さが130nm以上になると、BN被覆がない場合に比べ、界面せん断強度が急激に低下し、230nm厚で最小となり、それ以上の厚さでは再増加した。BN被覆層厚さが130〜230nm厚程度で繊維引抜け性が良好になることを確認した。
以上のように、SiC繊維10表面に形成された結晶性BN層20と、SiCを主成分とするマトリックス40と、の間に、結晶性カーボン層30が形成されているSiC基複合材料100とすることで、繊維引抜け性が良好な延性と強度の高いSiC基複合材料にすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態として、第1実施形態のSiC基複合材料100を容易に製造可能なBN被覆SiC繊維200、すなわち、延性と強度の高いSiC基複合材料を、容易に製造可能なBN被覆SiC繊維200と、それを用いたSiC基複合材料100の製造方法について説明する。
図7に示すように、BN被覆SiC繊維200は、SiCを主成分とする繊維201上に、最外層となる第1のBN被覆層(1)202(以降、BN層(1)と称することがある)と、BN被覆層(1)202の内側の第2のBN被覆層(2)203(以降、BN層(2)と称することがある)と、の2層のBN被覆層を備えている。そして、BN層(1)202に含まれる酸素量を、BN層(2)203に含まれる酸素量よりも高くしていることが好ましい。また、BN層(1)202の結晶化度が、BN層(2)203のBN被覆層の結晶化度よりも低いことが好ましい。
BN被覆SiC繊維200の断面TEM像を図8(a)に示す。BN被覆層(1)の(b)高分解能TEM像において、所々、矢印で示した部分に格子縞が現れているが、その殆どが非晶質である。一方、(c)BN被覆層(2)の高分解能TEM像においては、前記したような結晶性の高い乱層構造(図中の点線部分)を呈している。さらに、以下の表2に示すEDX組成分析結果より、BN被覆層(1)の酸素含有量はBN被覆層(2)の4倍程度高いことがわかる。
Figure 2021042100
また、このようなBN被覆層(1)とBN被覆層(2)は、例えば、図9に示すような連続式成膜装置301を用いて形成できる。巻き出し室302からボビンに巻かれた繊維束が巻き出された後、加熱ヒーター308が設置されたサイジング除去室303において、繊維に付着しているサイジング剤が加熱除去される。その後、繊維束がCVD(Chemical Vapor Deposition)炉309から構成される成膜室304を通過する間に、繊維表面にBN層が被覆され、繊維束が巻取り室305においてボビンに巻き取られる。なお、CVDプロセスガスは、B/NH/H混合ガスやBCl/NH/Ar混合ガス等であり、プロセスガス導入口307から供給され、成膜室304で消費されなかった残ガスは排気口306から炉外へ排出される。
ここで、BN被覆層が第1のBN被覆層(1)202と、第2のBN被覆層(2)203から成る二層構造になるメカニズムについて考察する。BN膜の結晶化度は成膜温度に依存し、成膜温度が低いほど結晶化度は低下する。高結晶化度のBN被覆層(2)203は前記連続式成膜装置301における成膜室304のCVD炉309を通過する間に、繊維表面に形成され、低結晶化度のBN被覆層(1)202はCVD炉309内よりも温度の低い炉外(プロセスガス導入側のCVD炉309端とプロセスガス導入口307の間)で形成されると考えられる。
これまで説明した、BN被覆SiC繊維200を用いることで、例えば以下のように第1の実施形態に説明したSiC基複合材料を製造できる。
まず、前記した成膜方法により作製したBN被覆SiC繊維200束を製織して2次元あるいは3次元の織物を作製する。次に、前記織物を構成するBN被覆SiC繊維200の間に、SiCを主成分とするマトリックスを形成する。
SiCを主成分とするマトリックスを形成する方法として、CVI(Chemical Vapor Infiltration)法を用いる例を以下に説明する。バッチ式のCVI炉を用い、プロセスガスとしては、SiCl/CH(C)/H混合ガスを用いる。なお、2次元織物の場合、織物シート積層体を部分的に仮固定した状態でCVIを行う。
また、CVIによりある程度マトリクスを形成した後、SiC前駆体であるポリカルボシランの熱分解によりSiCマトリクスを形成させるPIP(Polymer Impregnation and Pyrolysis)により残りのSiCマトリクスを形成しても良い。
このような、BN被覆SiC繊維200とSiC基複合材料の製造方法により、SiCを主成分とするマトリックス、すなわち、CVIによりSiCマトリックス40を形成する際、SiCマトリックス40あるいはプロセスガスと、酸素含有量の高いBN被覆層(1)202との反応により、高結晶性カーボン層30が形成されると考えられる。
この反応について、詳細に説明すると、SiCマトリックス40あるいはCVIプロセスガスとBN被覆層(1)202に含まれる酸素との化学反応により、B−Si−O系ガラスと高結晶性カーボン層30が形成されると考えられる。B−Si−O系ガラスはCVI中にプロセスガスの熱分解生成物であるHClとの反応によりハロゲン化して揮発し、高結晶性カーボン層30のみが残存したものと推察される。
以上のように、BN被覆SiC繊維200、および、上記製造方法を用いることで、結晶性BN層20と結晶性カーボン層30とを有するSiC基複合材料100を、容易に作製することができる。すなわち、延性と強度の高いSiC基複合材料を容易に作製することができる。
なお、BN被覆SiC繊維200は、BN層(1)202の結晶化度が、BN層(2)203の結晶化度より低いことが好ましい。結晶化度が低いほどBN層はより多くの酸素を取り込みやすくなる。このようにBN層の結晶化度を制御することにより、酸素含有量が異なる、BN層(1)202とBN層(2)203を、容易に作製でき、延性と強度の高いSiC基複合材料を、容易に作製することができる。
また、BN被覆SiC繊維200におけるBN層(1)202に含まれる酸素量が、3原子パーセント以上であることが好ましい。3原子パーセント未満の酸素含有量では、CVIによるマトリックス形成後に結晶性カーボン層30が形成されない。
(実施例)
第2の実施形態に基づきSiC基複合材料100を作製し、室温での曲げ特性および引張特性を評価した。
(実施例1)
サンプルは、本発明の結晶化度および酸素含有量の異なる2層構造のBN層被覆SiC繊維200からなる繊維束を製織して三次元織物(幅70mm×長さ70mm×厚さ4mm、XY方向の繊維配列ピッチ:3mm、繊維配向比X:Y:Z=1:1.1:0.2、繊維体積率=29%)にし、繊維束間および繊維間の空隙にCVI法によりSiCマトリックス20を形成して、SiC基複合材100とした。なお、BN被覆SiC繊維200のBN層(1)202とBN層(2)203は、前記連続成膜装置301により形成した。BN層全体の厚さを約400nm以下とし、BN層全体の厚さと曲げ特性および引張特性の関係を調査した。
(比較例)
また、比較サンプルとして、高結晶化度かつ酸素含有量の低いBN層(2)203のみを被覆したSiC繊維とSiCマトリクス40からなるSiC基複合材400を作製した。ここで、高結晶化度かつ低い酸素含有量のBN層(2)203のみをSiC繊維表面へ形成するため、低結晶化度かつ高い酸素含有量のBN層(1)202の成膜を防止した。具体的には、図9に示すように、プロセスガス導入側のCVD炉309端とプロセスガス導入口307の間に、繊維がプロセスガスへ暴露されるのを防止するための保護チューブ310を設けて成膜した。次に、高結晶化度かつ低酸素含有のBN層のみを被覆したSiC繊維からなる繊維束を製織して三次元織物(幅70mm×長さ70mm×厚さ4mm、XY方向の繊維配列ピッチ:3mm、繊維配向比X:Y:Z=1:1.1:0.2、繊維体積率=29%)にし、繊維束間および繊維間の空隙にCVI法によりSiCマトリックス20を形成して、SiC基複合材400とした。BN層全体の厚さを約200nm以下とし、BN層全体の厚さと曲げ特性および引張特性の関係を調査した。
(比較サンプル用に作製したBN被覆繊維の観察及び組成評価)
比較サンプル400に用いたBN層(2)203のみを被覆したSiC繊維の断面TEM像およびEDX成分分析結果を図10に示す。BN層(2)203領域の(c)高分解能TEM像において明瞭な格子像が現れているとともに、(b)BN層の制限視野電子回折図形においても微細斑点からなるデバイリングが現れており、結晶化度が高いことを確認した。また、表3に示す通り、BN層(2)203領域のEDX成分分析結果からも酸素含有量が3原子パーセント未満と十分低いことを確認した。
Figure 2021042100
(比較サンプルの観察及び組成評価)
比較サンプル400におけるSiC繊維10/結晶性BN層20/SiCマトリックス40界面部のTEM像を図11に示す。また、EDX成分分析結果を表4に示す。(c)結晶性BN層20領域の高分解能TEM像において明瞭な格子像が現れていると伴に、(b)結晶性BN層20の制限視野電子回折図形においても微細斑点からなるデバイリングが現れていることから、マトリクス形成後も高結晶化度が維持されていることを確認した。一方、SiCマトリックス40と結晶性BN層20の間には、図2で示したような結晶性カーボン層の存在は認められなかった。
Figure 2021042100
(室温曲げ特性評価)
本発明のSiC基複合材100と比較サンプル400について、SHIMADZU AG−IS 10KNを用いて、試験規格ASTM C1341−13にて評価した。その室温曲げ応力−変位曲線を図12に示す。なお、SiCマトリクス形成前のBN層全体厚さを約200nmとした。本発明のSiC基複合材100の曲げ破断強度が533MPaであり、比較サンプル400の297MPaに比べて高い曲げ強度を示すことを確認した。また、各複合材の曲げ試験後の破断面のSEM像を図13に示す。本発明のSiC基複合材100の破断面(a)において、SiCマトリックス30との間に滑りが発生した証拠である「繊維の引抜け」が多数確認できた。この滑りにより、強度と伸びが高い、SiC基複合材100になっていることが確認された。一方、比較サンプルの破断面(b)においては、「繊維の引抜け」が余り生じていなかった。特に、点線で囲んだ部分においては繊維の引抜けが殆ど確認できなかった。
(室温引張特性評価)
本発明のSiC基複合材100と前記比較サンプル400について、INSTRON 5982を用いて、試験規格ASTM C1275−16にて評価した。その室温引張応力−歪み曲線を図14に示す。なお、SiCマトリクス形成前のBN層全体厚さを約200nmとし、試験片サイズは70mm×10mm×1mmとした。本発明のSiC基複合材100は、引張強度が249MPa、破断歪みが0.5%と、比較サンプルの引張強度:55MPa、破断歪み:0.04%に比べて高い強度と伸びを示すことを確認した。また、各サンプルの引張試験後の破断面のSEM像を図15に示す。本発明のSiC基複合材100の破断面(a)において、SiCマトリックス30との間に滑りが発生した証拠である「繊維の引抜け」が多数確認できた。この滑りにより、強度と伸びが高い、SiC基複合材100になっていることが確認できた。一方、比較サンプルの破断面(b)においては、「繊維の引抜け」が余り生じていなかった。
(BN膜厚と室温機械特性の関係)
本発明と比較サンプルのSiC基複合材におけるSiCマトリクス形成前のBN層全体厚さと、繊維とマトリクス間の界面せん断強度、曲げ強度および引張特性の関係を表5に纏めた。本発明のSiC基複合材においては、BN膜厚が230nm程度で繊維とマトリクス間の界面せん断強度が最小となり、曲げ強度および引張強度は最大となった。
Figure 2021042100
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない、特許請求の範囲の技術範囲において、変更することが可能である。
202:第1のBN層
203:第2のBN層
10、201:SiC繊維
20:結晶性BN層
30:結晶性カーボン層
40:SiCマトリックス
50:界面層
60:ナノインデンター
100:SiC基複合材料
200:BN被覆SiC繊維
400:比較サンプルのSiC基複合材料
301:連続式成膜装置
302:巻き出し室
303:サイジング除去室
304:成膜室
305:巻取り室
306:排気口
307:プロセスガス導入口
308:加熱ヒーター
309:CVD炉

Claims (6)

  1. SiCを主成分とする繊維と、SiCを主成分とするマトリックスと、を含むSiC基複合材料であって、
    前記繊維表面に形成された結晶性BN層と、前記マトリックスと、の間に、結晶性カーボン層を含むことを特徴とするSiC基複合材料。
  2. SiCを主成分とする繊維表面に、最外層となる第1のBN被覆層と前記第1のBN被覆層の内側の第2のBN被覆層とを備え、前記第1のBN被覆層に含まれる酸素量が、前記第2のBN被覆層に含まれる酸素量よりも高いことを特徴とするBN被覆SiC繊維。
  3. 前記第1のBN被覆層の結晶化度が、前記第2のBN被覆層の結晶化度よりも低いことを特徴とする請求項2に記載のBN被覆SiC繊維。
  4. 前記第1のBN被覆層に含まれる酸素量が、3原子パーセント以上であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のBN被覆SiC繊維。
  5. 請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のBN被覆SiC繊維を製造する工程と、
    前記BN被覆SiC繊維にSiCを主成分とするマトリックスを形成する間に、結晶性カーボン層を形成する工程と、
    を有することを特徴とするSiC基複合材料の製造方法。
  6. 前記SiCを主成分とするマトリックスを形成する方法が、化学気相含浸(CVI)法であることを特徴とする請求項5に記載のSiC基複合材料の製造方法。

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