JP2021038415A - 成膜装置、成膜ワーク製造方法、膜評価方法 - Google Patents

成膜装置、成膜ワーク製造方法、膜評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスバリア性に優れた膜を形成できる成膜装置及び成膜ワーク製造方法を提供する。【解決手段】実施形態に係る成膜装置は、内部を真空とすることが可能であり、スパッタリングにより成膜処理を行うための処理空間41を有するチャンバ20と、処理空間41に設けられ、Zn及びSnを含む成膜材料からなるターゲット42と、処理空間41へスパッタガスG1を導入するスパッタガス導入部49と、チャンバ内を減圧する排気部80と、処理空間が0.3Pa以下となるように、スパッタガス導入部及び排気部80を制御する制御部と、処理空間41のスパッタガスG1をプラズマ化することにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワーク10に形成するプラズマ発生器と、を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、成膜装置、成膜ワーク製造方法、膜評価方法に関する。
各種の製品において、大気中の酸素や水蒸気等のガスを透過し難くして、外部からの影響を低減する働きであるガスバリア性を有する薄膜が、安全性の確保、耐腐食性、耐久性の向上等において極めて重要な役割を果たしている。このような製品としては、例えば、ポリマーフィルムを使用した食品、医薬品のパッケージがある。また、柔軟性、可撓性のある部材に電子回路等を構成したり、このような電子回路を含む電子機器を製造する技術であるフレキシブルエレクトロニクスの分野においても、ガスバリア性は重要である。
より具体的には、フレキシブル有機ディスプレイ等においては、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPC(ポリカーボネート)などのガスバリア性が低いポリマーフィルムを基板として用いる場合がある。この場合、有機層の劣化を防ぐために、極めて低い酸素透過率と水蒸気透過率を持つ高性能なガスバリア薄膜が必要とされる。
特開2006−105713号公報
ガスバリア性の高い薄膜の材料としては、酸化した亜鉛(Zn)及び錫(Sn)からなるZinc Tin Oxide (以下、ZTOとする)、窒化シリコンからなるSiN等がある。また、ガスバリア性を高めるためには、原子間の隙間を低減して、緻密な膜を形成する必要がある。このために、薄膜は、不規則な配列構造をもつ非晶質(以下、アモルファスとする)の状態とすることが好ましい。つまり、ガスバリア性に優れた薄膜とするには、薄膜をアモルファスZTO(a−ZTO)やアモルファスSiN(a−SiN)により形成することが好ましい。
そこで、ガスバリア性に優れたアモルファスな薄膜を形成するための成膜装置及び成膜方法が求められていた。また、このような成膜装置の開発のために、薄膜のバリア特性を、簡便に定量的に評価する方法が求められていた。
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、ガスバリア性に優れた膜を形成できる成膜装置及び成膜ワーク製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、ガスバリア性に優れた膜を評価する膜評価方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の成膜装置は、内部を真空とすることが可能であり、スパッタリングにより成膜処理を行うための処理空間を有するチャンバと、前記処理空間に設けられ、Zn及びSnを含む成膜材料からなるターゲットと、前記処理空間へスパッタガスを導入するスパッタガス導入部と、前記チャンバ内を減圧する排気部と、前記処理空間が0.3Pa以下となるように、前記スパッタガス導入部及び前記排気部を制御する制御部と、前記処理空間の前記スパッタガスをプラズマ化することにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワークに形成するプラズマ発生器と、を有する。
また、本発明の成膜ワーク製造方法は、スパッタガスを導入することにより処理空間を0.3Pa以下として、前記処理空間の前記スパッタガスをプラズマ化し、前記処理空間に設けられたZn及びSnを含む成膜材料からなるターゲットをスパッタリングすることにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワークに形成する。
また、本発明の評価方法は、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜を形成した透明導電膜のキャリア密度と、前記透明導電膜を加熱させて酸化処理した後のキャリア密度と、に基づいて、前記膜の酸素透過量を算出し、前記膜のガスバリア性を評価する。
本発明の成膜装置、成膜ワーク製造方法によれば、ガスバリア性に優れた膜を形成できる成膜装置及び成膜ワーク製造方法を提供することができる。また、本発明の評価方法によれば、ガスバリア性に優れた膜を評価する膜評価方法を提供できる。
本実施形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す透視平面図である。 図1中のA−A断面図であり、図1の実施形態の成膜装置の側面から見た内部構成の詳細図である。 本実施形態に係る成膜装置による処理のフローチャートである。 本実施形態に係る成膜装置によるワークの処理過程を示す模式図である。 焼成前の試料と焼成後の試料の電気特性を示すグラフである。 試料の膜厚と酸素透過率との関係を示すグラフである。
本発明に係る成膜装置の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
[概要]
図1に示す成膜装置100は、スパッタリングにより、成膜対象であるワーク10上にZn及びSnを含むアモルファス膜を形成する装置である。本実施形態の成膜装置100は、酸化されたZn及びSnの膜を形成する。このような膜を、以下、ZTО(Zinc Tin Oxide:酸化亜鉛スズ)膜と呼ぶ。酸化された膜とするのは、酸化させることにより、透明な膜を形成することができるためである。
また、成膜されるZTO膜は非晶質、つまりアモルファスZTO(a‐ZTO)膜であり、ガスバリア性に優れた膜である。ガスバリア性とは、大気中の酸素、水蒸気等のガスを透過し難くすることにより、成膜対象を保護することができる性質である。ワーク10は、有機ELディスプレイの基板である。
[構成]
成膜装置100は、チャンバ20、搬送部30、成膜処理部40、酸化処理部50、ロードロック部60及び制御部70を有する。チャンバ20は内部を真空とすることが可能な容器である。チャンバ20は円柱形状であり、その内部は区切部22によって仕切られ、扇状に複数区画に分割されている。区画の一つに成膜処理部40が配置され、区画の他の一つに酸化処理部50が配置され、区画の更に他の一つにロードロック部60が配置される。つまり、チャンバ20内において、成膜処理部40、酸化処理部50、ロードロック部60は、別々の区画に配置されている。
成膜処理部40と酸化処理部50は1区画ずつ配置されている。ワーク10は、チャンバ20内を周方向に沿って何周も周回することで、成膜処理部40と酸化処理部50を交互に巡回して通過することになり、ワーク10上でZnとSnの合金膜であるZn−Sn合金膜の形成とZn−Sn合金膜の酸化が交互に繰り返されて所望の厚みのZTO膜が成長していく。なお、酸素濃度を上げる場合には、成膜処理部40に対して2以上の酸化処理部50を配置してもよい。つまり、酸化処理部50を2以上の区画に配置してもよい。なお、酸化処理部50が2以上配置されていても、成膜→酸化処理→酸化処理→成膜・・・のように、酸化処理と成膜処理の間に、成膜処理や酸化処理以外を含まなければ、「成膜処理部と酸化処理部とを交互に通過する」という態様に含まれる。
図2に示すように、チャンバ20は、円盤状の天井20a、円盤状の内底面20b、及び環状の内周面20cにより囲まれて形成されている。区切部22は、円柱形状の中心から放射状に配設された方形の壁板であり、天井20aから内底面20bに向けて延び、内底面20bには未達である。即ち、内底面20b側には円柱状の空間が確保されている。
この円柱状の空間には、ワーク10を搬送する回転テーブル31が配置されている。区切部22の下端は、搬送部30に載せられたワーク10が通過する隙間を空けて、回転テーブル31におけるワーク10の載置面と対向している。この区切部22によって、成膜処理部40及び酸化処理部50においてワーク10の処理が行われる処理空間41、59が仕切られる。つまり、成膜処理部40、酸化処理部50は、それぞれチャンバ20よりも小さく、互いに離隔した処理空間41、59を有している。このように区切部22によって処理空間41、59が仕切られることにより、成膜処理部40のスパッタガスG1及び酸化処理部50のプロセスガスG2がチャンバ20内に拡散することを抑制できる。
また、後述するように、成膜処理部40及び酸化処理部50においては処理空間41、59においてプラズマが生成されるが、チャンバ20よりも小さい空間に仕切られた処理空間における圧力を調整すればよいため、圧力調整を容易に行うことができ、プラズマの放電を安定化させることができる。したがって、前述した効果が得られるのであれば、平面視において、最低でも成膜処理部40を挟む2つの区切部22、酸化処理部50を挟む2つの区切部22があればよい。
なお、チャンバ20には排気口21が設けられている。排気口21には排気部80が接続されている。排気部80は配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。排気口21を通じた排気部80による排気により、チャンバ20内を減圧し、真空とすることができる。
搬送部30は、回転テーブル31、モータ32及び保持部33を有し、ワーク10を円周の軌跡である搬送経路Lに沿って循環搬送させる。回転テーブル31は円盤形状を有し、内周面20cと接触しない程度に大きく拡がっている。モータ32は、回転テーブル31の円中心を回転軸として連続的に所定の回転速度で回転させる。保持部33は、回転テーブル31の上面に円周等配位置に配設される溝、穴、突起、治具、ホルダ等であり、ワーク10を載せたトレイ34をメカチャック、粘着チャックによって保持する。ワーク10は、例えばトレイ34上にマトリクス状に整列配置され、保持部33は、回転テーブル31上に60°間隔で6つ配設される。つまり、成膜装置100は、複数の保持部33に保持された複数のワーク10に対して一括して成膜することができるため、非常に生産性が高い。
成膜処理部40は、プラズマを生成し、成膜材料から構成されるターゲット42を該プラズマに曝す。これにより、成膜処理部40は、プラズマに含まれるイオンを成膜材料に衝突させることで叩き出された粒子をワーク10上に堆積させて成膜を行う。図2に示すように、この成膜処理部40は、ターゲット42、バッキングプレート43及び電極44で構成されるスパッタ源と、電源部46とスパッタガス導入部49で構成されるプラズマ発生器を備える。
ターゲット42は、ワーク10上に堆積されて膜となる成膜材料で構成された板状部材である。本実施形態の成膜材料はZn及びSnを含む材料であり、ターゲット42はワーク10に堆積させるZn、Snの粒子の供給源となる。即ち、ターゲット42はZn−Sn合金材料から構成されている。Zn粒子、Sn粒子を供給可能なスパッタリングターゲットであれば、Zn、Sn以外を含んでいても許容される。
ターゲット42は、回転テーブル31に載置されたワーク10の搬送経路Lに離隔して設けられている。ターゲット42の表面は、回転テーブル31に載置されたワーク10に対向するように、チャンバ20の天井20aに保持されている。ターゲット42は例えば3つ設置される。3つのターゲット42は、平面視で三角形の頂点上に並ぶ位置に設けられている。
バッキングプレート43はターゲット42を保持する支持部材である。このバッキングプレート43は各ターゲット42を個別に保持する。電極44は、チャンバ20の外部から各ターゲット42に個別に電力を印加するための導電性の部材であり、ターゲット42と電気的に接続されている。各ターゲット42に印加する電力は、個別に変えることができる。その他、スパッタ源には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
電源部46は、例えば、高電圧を印加するDC電源であり、電極44と電気的に接続されている。電源部46は、電極44を通じてターゲット42に電力を印加する。尚、回転テーブル31は、接地されたチャンバ20と同電位であり、ターゲット42側に高電圧を印加することにより、電位差が発生する。電源部46は、高周波スパッタを行うためにRF電源とすることもできる。
スパッタガス導入部49は、図2に示すように、チャンバ20にスパッタガスG1を導入する。スパッタガス導入部49は、図示しないボンベ等のスパッタガスG1の供給源と、配管48と、ガス導入口47を有する。配管48は、スパッタガスG1の供給源に接続されてチャンバ20を気密に貫通してチャンバ20の内部に延び、その端部がガス導入口47として開口している。本実施形態のスパッタガス導入部49は、処理空間41が0.3Pa以下、0.1Pa以上となるように、処理空間41にスパッタガスを導入する。
ガス導入口47は、回転テーブル31とターゲット42との間に開口し、回転テーブル31とターゲット42との間に形成された処理空間41に成膜用のスパッタガスG1を導入する。スパッタガスG1としては希ガスが採用でき、アルゴン(Ar)ガス等が好適である。
このような成膜処理部40では、スパッタガス導入部49からスパッタガスG1を導入し、電源部46が電極44を通じてターゲット42に高電圧を印加すると、回転テーブル31とターゲット42との間に形成された処理空間41に導入されたスパッタガスG1がプラズマ化し、イオン等の活性種が発生する。プラズマ中のイオンはZn−Sn合金材料で構成されたターゲット42と衝突してZn粒子、Sn粒子を叩き出す。
また、この処理空間41を回転テーブル31によって循環搬送されるワーク10が通過する。叩き出されたZn粒子、Sn粒子は、ワーク10が処理空間41を通過するときにワーク10上に堆積して、Zn粒子、Sn粒子による膜がワーク10上に形成される。ワーク10は、回転テーブル31によって循環搬送され、この処理空間41を繰り返し通過することで成膜処理が行われていく。
このZn−Sn合金膜の膜厚は、酸化処理部50の一定時間内での酸化量、つまり酸化レートに依るが、例えば、1〜2原子程度であると良い。つまり、処理空間41をワーク10が通過する毎に、Zn、Snが1又は2原子ずつ積層されることによりZn−Sn合金膜が形成される。
酸化処理部50は、酸素ガスを含むプロセスガスG2が導入された処理空間59内で誘導結合プラズマを生成する。即ち、酸化処理部50は、酸素ガスをプラズマ化して化学種を発生させる。発生した化学種に含まれる酸素原子は、成膜処理部40によってワーク10上に成膜されたZn−Sn合金膜に衝突してZn原子、Sn原子と結合することで、化合物膜である酸化膜を形成する。つまり、例えば、ZnО、SnОなどを含む膜を形成する。
図2に示すように、この酸化処理部50は、筒状体51、窓部材52、アンテナ53、RF電源54、マッチングボックス55及びプロセスガス導入部58により構成されるプラズマ発生器を有する。
筒状体51は、処理空間59の周囲を覆う部材である。筒状体51は、図1と図2に示すように水平断面が角丸長方形状の筒であり、開口を有する。筒状体51は、その開口が回転テーブル31側に離隔して向かうように、チャンバ20の天井20aに嵌め込まれ、チャンバ20の内部空間に突き出る。この筒状体51は、回転テーブル31と同様の材質とする。窓部材52は、筒状体51の水平断面と略相似形の石英等の誘電体の平板である。この窓部材52は、筒状体51の開口を塞ぐように設けられ、チャンバ20内の酸素ガスを含むプロセスガスG2が導入される処理空間59と筒状体51の内部とを仕切る。
処理空間59は、酸化処理部50において、回転テーブル31と筒状体51の内部との間に形成される。この処理空間59を回転テーブル31によって循環搬送されるワーク10が繰り返し通過することで酸化処理が行われる。なお、窓部材52は、アルミナ等の誘電体であってもよいし、シリコン等の半導体であってもよい。
アンテナ53は、コイル状に巻回された導電体であり、窓部材52によってチャンバ20内の処理空間59とは隔離された筒状体51の内部空間に配置され、交流電流が流されることで電界を発生させる。アンテナ53から発生させた電界が窓部材52を介して処理空間59に効率的に導入されるように、アンテナ53は窓部材52の近傍に配置されることが望ましい。アンテナ53には、高周波電圧を印加するRF電源54が接続されている。RF電源54の出力側には整合回路であるマッチングボックス55が直列に接続されている。マッチングボックス55は、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。
プロセスガス導入部58は、図2に示すように、処理空間59に酸素ガスを含むプロセスガスG2を導入する。プロセスガス導入部58は、図示しないボンベ等のプロセスガスG2の供給源と、配管57、ガス導入口56を有する。配管57は、プロセスガスG2の供給源に接続されて、チャンバ20を気密に封止しつつ貫通してチャンバ20の内部に延び、その端部がガス導入口56として開口している。
ガス導入口56は、窓部材52と回転テーブル31との間の処理空間59に開口し、プロセスガスG2を導入する。プロセスガスG2としては、希ガスが採用でき、アルゴンガス等が好適である。また、本実施形態のプロセスガスG2には、酸素ガスが添加されている。
このような酸化処理部50では、RF電源54からアンテナ53に高周波電圧が印加される。これにより、アンテナ53に高周波電流が流れ、電磁誘導による電界が発生する。電界は、窓部材52を介して、処理空間59に発生し、プロセスガスG2に誘導結合プラズマが発生する。このとき、酸素原子を含む酸素の化学種が発生し、ワーク10上のZn−Sn合金膜に衝突することにより、Zn原子、Sn原子と結合する。その結果、ワーク10上のZn−Sn合金膜は酸化され、ZTO膜が形成される。
ロードロック部60は、チャンバ20の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理のワーク10を搭載したトレイ34を、チャンバ20内に搬入し、処理済みのワーク10を搭載したトレイ34をチャンバ20の外部へ搬出する装置である。このロードロック部60は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
制御部70は、排気部80、スパッタガス導入部49、プロセスガス導入部58、電源部46、RF電源54、搬送部30など、成膜装置100を構成する各種要素を制御する。この制御部70は、PLC(Programmable Logic Controller)や、CPU(Central Processing Unit)を含む処理装置であり、制御内容を記述したプログラムが記憶されている。具体的に制御される内容としては、成膜装置100の初期排気圧力、ターゲット42及びアンテナ53への印加電力、スパッタガスG1及びプロセスガスG2の流量、導入時間及び排気時間、成膜時間、モータ32の回転速度などが挙げられる。これにより、制御部70は、多種多様な成膜仕様に対応可能である。
さらに、本実施形態の制御部70は、成膜処理部40の処理空間41が0.3Pa以下となるように、スパッタガス導入部49及び排気部80を制御する。より具体的には、処理空間41の圧力を測定する図示しないセンサが設けられ、制御部70は、センサにより検出される圧力が、あらかじめ記憶部等に設定された0.3Pa以下となるように、スパッタガスG1の導入量、排気量を調整する。また、制御部70は、あらかじめ記憶部等に設定された0.1Pa、より好ましくは0.2Pa以上となるように、スパッタガスG1の導入量、排気量を調整する。
[動作]
次に、制御部70により制御される成膜装置100の全体動作を説明する。図3は、本実施形態に係る成膜装置100による処理のフローチャートである。まず、搬送手段によって、ワーク10を搭載したトレイ34がロードロック部60からチャンバ20内に順次搬入される(ステップS01)。ステップS01においては、回転テーブル31は、空の保持部33を、順次、ロードロック部60からの搬入箇所に移動させる。保持部33は、搬送手段により搬入されたトレイ34を、それぞれ個別に保持する。このようにして、ZTO膜が成膜されるワーク10を搭載したトレイ34が、回転テーブル31上に全て載置される。
チャンバ20内は、排気部80によって排気口21から排気されて常に減圧されている。チャンバ20内が所定の圧力まで減圧されると(ステップS02)、ワーク10を載せた回転テーブル31が回転して、所定の回転速度に達する(ステップS03)。
所定の回転速度に達すると、まず成膜処理部40でワーク10上にZn−Sn合金膜を成膜する(ステップS04)。即ち、スパッタガス導入部49が、ガス導入口47を通じてスパッタガスG1を供給する。スパッタガスG1は、Zn−Sn合金材料から構成されたターゲット42の周囲に供給される。このとき、処理空間41の圧力は0.3Pa以下、0.1Pa以上に維持される。電源部46はターゲット42に電圧を印加する。これにより、スパッタガスG1をプラズマ化させる。プラズマにより発生したイオンは、ターゲット42に衝突してZn粒子、Sn粒子を叩き出す。
未処理のワーク10(図4(A))には、成膜処理部40を通過する際に、表面にZn粒子、Sn粒子が堆積したZn−Sn合金の薄膜12(図4(B))が形成される。本実施形態では、成膜処理部40を一回通過する毎に、膜厚が0.5nm以下、つまり、Zn原子、Sn原子1〜2個を含み得るレベルで堆積させることができる。
このように、回転テーブル31の回転により成膜処理部40を通過し、薄膜12が形成されたワーク10は、酸化処理部50を通過し、その過程で薄膜12のZn原子、Sn原子が酸化される(ステップS05)。即ち、プロセスガス導入部58がガス導入口56を通じて酸素ガスを含むプロセスガスG2を供給する。酸素ガスを含むプロセスガスG2は、窓部材52と回転テーブル31に挟まれた処理空間59に供給される。RF電源54はアンテナ53に高周波電圧を印加する。高周波電圧の印加により高周波電流が流れたアンテナ53が発生させた電界は、窓部材52を介して、処理空間59に発生する。そして、この電界により、この空間に供給された酸素ガスを含むプロセスガスG2を励起させてプラズマを発生させる。更にプラズマによって発生した酸素の化学種は、ワーク10上に薄膜12に衝突することにより、Zn原子、Sn原子を結合し、薄膜12がZTO膜11に変換される(図4(C))。
このように、ステップS04、ステップS05では、稼働している成膜処理部40の処理空間41をワーク10が通過することで成膜処理が行われ、稼働している酸化処理部50の処理空間59をワーク10が通過することで酸化処理が行われる。なお、「稼働している」とは、各処理部の処理空間41、59においてプラズマを発生させるプラズマ生成動作が行われていることと同義とする。
酸化処理部50の稼働、換言するとプラズマ生成動作(プロセスガス導入部58によるプロセスガスG2の導入及びRF電源54によるアンテナ53への電圧印加)は、成膜処理部40で最初の成膜が行われたワーク10が酸化処理部50に到達するまでの間に開始すればよい。成膜が行われる前のワーク10の表面に酸化処理を行っても問題なければ、成膜処理部40の稼働、換言すると成膜処理部40のプラズマ生成動作(スパッタガス導入部49によるスパッタガスG1の導入及び電源部46によるターゲット42への電圧印加)と酸化処理部50のプラズマ生成動作を同時に開始させてもよいし、成膜処理部40のプラズマ生成動作が開始される前に酸化処理部50のプラズマ生成動作を開始させてもよい。
回転テーブル31は、所定の厚みのZTO膜11がワーク10上に成膜されるまで、即ちシミュレーションや実験などで予め得られた所定の時間が経過するまで(ステップS06 No)、回転を継続する。換言すると、所定の厚みのZTO膜11が成膜されるまでの間、ワーク10は成膜処理部40と酸化処理部50とを循環し続け、ワーク10上にZn粒子、Sn粒子を堆積させる成膜処理(ステップS04)と、堆積させたZn粒子、Sn粒子の酸化処理(ステップS05)とが交互に繰り返される(図4(D)〜(I))。
所定の時間が経過したら(ステップS06 Yes)、まず成膜処理部40の稼働を停止させる(ステップS07)。具体的には、スパッタガス導入部49によるスパッタガスG1の導入を停止し、電源部46によるターゲット42への電圧印加を停止する。次に、酸化処理部50の稼働を停止させる(ステップS08)。具体的には、プロセスガス導入部58によるプロセスガスG2の導入を停止し、RF電源54によるアンテナ53への高周波電力の供給を停止する。そして、回転テーブル31の回転を停止させ、ロードロック部60からワーク10が載せられたトレイ34を排出する(ステップS09)。
ステップS07及びステップS08では、成膜処理部40と酸化処理部50の稼働停止を行い、一連の成膜処理を終了させる。
成膜処理が行われた後、酸化処理が行われずに一連の成膜処理が終了することがないように、成膜処理部40、酸化処理部50、搬送部30の各要素が制御される。換言すると、成膜処理と酸化処理のうち、酸化処理を最後に行って一連のZTOの成膜処理が終了するように各要素が制御される。本実施形態では、成膜処理部40を通過したワーク10が、酸化処理部50を通過して再び成膜処理部40に到達するまでの間に、成膜処理部40の稼働、換言すると成膜処理部40におけるプラズマ生成動作(スパッタガス導入部49によるスパッタガスG1の導入及び電源部46によるターゲット42への電圧印加)を停止させる。
このように、成膜装置100では、ワーク10を成膜処理部40と酸化処理部50に交互に搬送し、また交互搬送を複数回繰り返す。これにより、成膜処理と酸化処理が交互に複数回行われる。図4に示すように、成膜処理では、Zn−Sn合金材料をスパッタリングし、叩き出されたZn粒子、Sn粒子が堆積したZn−Sn合金の薄膜12がワーク10上に成膜される。酸化処理では、酸素を含むプロセスガスG2をプラズマ化して酸素の原子を含む化学種を生成し、ワーク10上の薄膜12を化学種に曝し、薄膜12を形成するたびに酸化することで、ZTO膜11を生成する。
成膜処理と酸化処理が交互に複数回行われることで、成膜処理と酸化処理が交互に繰り返され、Zn粒子、Sn粒子を堆積させることで形成された薄膜12を酸化してZTO膜11を形成し、ZTO膜11の上に更にZn粒子、Sn粒子を堆積させることで新たに成膜されたZn−Sn合金の薄膜12を酸化する。この一連のZTO膜の成膜処理により、厚み方向に均一に酸化されたZTO膜11がワーク10上に形成される。このZTO膜が大気中の酸素、水蒸気等のガスを透過し難くするガスバリア性を有するバリア膜として機能する。
[評価手法]
成膜されたバリア膜であるZTО膜の評価手法を説明する。従来のバリア膜の評価手法としては、バリア膜を挟むチャンバに圧力差を設け、低圧側に透過するガス量を測定する差圧法、各チャンバの圧力を等圧にし、分圧差によって透過するガスの量を測定する等圧法が知られている。しかしながら、バリア膜のガスバリア性が高いほど評価時間がかかり、また圧力調整のための大がかりな装置を利用するのでコストを要しており、より簡便で短時間にガスバリア性が評価できる評価手法が求められていた。本評価手法においては、ZTO膜の成膜対象となるワークとして、透明導電膜によってコートされたガラス基板を用いる。透明導電膜としては、IZO(Indium Zinc Oxide):インジウム酸化亜鉛)を用いる。なお、透明導電膜としては、ITО(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide:アルミニウムが添加された酸化亜鉛)を用いてもよい。使用する成膜装置は、ワークを成膜処理部と酸化処理部とを交互に通過させるのではなく、チャンバ内の処理空間内に静止したワークに対して、Zn、Snを含む成膜材料からなるターゲットを用いたスパッタリングにより、ZTО膜を形成する装置である。そして、このような成膜装置によって、透明導電膜上にZTОの薄膜を成膜したものを試料として、薄膜の酸素や水蒸気に対するガスバリア特性を定量的に評価する。
以下、評価試験例を説明する。試料は、ガラス基板に形成した透明導電膜に対して、ZTОのターゲットを用いて、RFマグネトロンスパッタ法により、ZTО膜を成膜した。具体的な成膜条件は、以下の通りである。
ターゲット:ZnO、SnО焼結体(質量比 Zn:Sn:О=2:1:4)
スパッタガス:Ar(99.999%)
基板:IZO膜を形成したガラス基板
全圧[Pa]:0.3、0.5、1.0
背圧「Pa」:8.0×10−4未満
膜厚[mm]:0(ZTО膜無)、20、80、200
基板温度[℃]:無加熱
投入電力[W]:50
T−S間距離[mm]:55
全圧は、成膜時の処理空間内の圧力である。背圧は、「ベース圧力」とも言われ、成膜前の、スパッタガスを処理空間内に導入する前のチャンバの圧力である。より具体的には、チャンバにワークを搬入して搬入口を閉じてから、排気装置によって予め設定された時間で排気を行った後の圧力である。
無加熱とは、スパッタリングによる温度上昇はあるが、別途加熱等はしていないという意味である。投入電力は、ターゲットに印加される電力である。T−S間距離は、ターゲットと基板との距離である。
上記の条件で成膜した試料に対して、酸素を含む雰囲気下で、加熱させて酸化処理を行った。より具体的には、大気雰囲気下、250℃で1時間程度、焼成を行った後、以下の手法によって評価した。
(1)電気特性の測定
「ホール効果測定」による電気特性の測定を行った。つまり、透明導電膜(IZO膜)のx方向に電流を流し、かつx方向に直交するy方向に磁界をかけると、x方向及びy方向と直交するz方向に起電力が発生するホール効果を利用して、透明導電膜のキャリア密度(Carrier Density)、移動度(Mobility)、抵抗率(Registivity)などの電気特性を測定した。
その結果を、図5に示す。図5(A)は成膜時の処理空間内の圧力が0.3Pa、図5(B)は成膜時の処理空間内の圧力が0.5Pa、図5(C)は成膜時の処理空間内の圧力が1.0Paの場合である。なお、図5のグラフの横軸は、膜厚(film thickness)である。
キャリア密度は、体積あたりの電荷キャリアの個数であり[cm−3]、図5に示すように、焼成前に比べて、焼成後はキャリア密度が減少する。これは、焼成による酸化処理を行うことで透明導電膜中に入り込んだ酸素原子により、透明導電膜のキャリアである酸素空孔が埋められるためであると考えられる。したがって、透明導電膜上に薄膜を成膜した場合には、薄膜を透過して透明導電膜中に入り込んだ酸素原子の量が少ないほど、キャリア密度の減少量が少なくなる。換言すれば、キャリア密度の減少量が少ないほど酸素原子の透過量が少ない、つまり薄膜のガスバリア性が高いと評価できる。そして、図5に示すように、ZTO膜を成膜した場合には、キャリア密度の減少が抑制されていることがわかる。特に、成膜時の圧力が低くなるほど、焼成後のキャリア密度の減少量が少なく、高いガスバリア性があることがわかった。
(2)酸素透過量
キャリア密度から酸素透過量を算出する手法は以下の通りである。なお、「酸素透過量」とは、薄膜を透過した酸素原子の量を指す。酸素透過量は、単位面積当たりの酸素透過量、つまり酸素透過率(oxygen transmission rate)として算出される。
まず、1cm−2当たりで減少したキャリアの量Aを求める。
キャリア密度の減少量×膜厚(cm)=A(cm−2)
酸素原子が1つ入るとキャリアが2つ減少するので、A÷2=B(cm−2)
次に以下のように単位を変換する。
B×100×100=C(m−2)
C/(6.02×1023)=D(mol/m)
D×22.4×1000=E(cc/m)・・・酸素透過量
上記の手法によってキャリア密度から酸素透過量を算出した結果を、図6に示す。成膜時の圧力が低いほど、膜厚(film thickness)が厚いほど、酸素透過量が低く、高いガスバリア性があることがわかる。例えば、ZTO(0.3Pa,20nm)を成膜することで、酸素透過量は0.914cc/m から0.359cc/mに減少している。
このように、酸化処理前の透明導電膜のキャリア密度と、酸化処理後の透明導電膜のキャリア密度とを比較することで、酸素原子が薄膜を透過した量を間接的に求めることができ、薄膜のガスバリア性を評価することができる。
なお、酸化処理では、加熱することで強制的に酸素を導入するが、透明導電膜中に入り込んだ酸素原子により、透明導電膜のキャリアである酸素空孔が埋められるという現象が生じる大気雰囲気中の温度は、IZOの場合150〜250℃であり、例えば他の透明導電膜であるITOの場合300〜400℃であった。すなわちIZOは、上記の現象が起こる温度が低いので、他の透明導電膜であるITOと比較してより低い加熱温度で酸化処理を行うことができる。
ここで、ZTOのような酸化膜の評価を行うために酸化処理を行う場合、酸化処理を行うために400℃程度の高い温度で加熱すると、酸化膜中に存在している酸素原子が透明導電膜中に拡散する。このため、外部雰囲気からZTO膜を透過して透明導電膜に到達した酸素原子の増加量(酸素透過量)を算出してガスバリア性について精密な評価を行うためには、より低い温度で加熱して酸化処理を行うことが好ましい。上記のように評価に使用する透明導電膜の中でも、IZOでは他の透明導電膜よりも低い加熱温度で上記の現象を引き起こすことができる。このため、酸化膜中に含まれている酸素からの拡散を防ぐことができ、ZTOのような酸化膜に対しても精密なガスバリア性の評価を行うことができる。
また、IZOは、キャリアが酸素空孔のみであるので、キャリアが酸素空孔のほかにSn(スズ)原子が存在するITOと比較して、キャリア密度の減少が酸素空孔の有無によって引き起こされるものであると推定でき、より精度よく酸素原子の増加量(酸素透過量)を評価できると考えられる。
[作用効果]
(1)以上のように、本実施形態に係る成膜装置100は、内部を真空とすることが可能であり、スパッタリングにより成膜処理を行うための処理空間41を有するチャンバ20と、処理空間41に設けられ、Zn及びSnを含む成膜材料からなるターゲット42と、処理空間41へスパッタガスG1を導入するスパッタガス導入部49と、チャンバ内を減圧する排気部80と、処理空間が0.3Pa以下となるように、スパッタガス導入部及び排気部80を制御する制御部70と、処理空間41のスパッタガスG1をプラズマ化することにより、Zn及びSnを含むアモルファスな膜をワーク10に形成するプラズマ発生器と、を有する。
また、本実施形態に係る成膜ワーク製造方法は、スパッタガスG1を導入することにより処理空間41を0.3Pa以下として、処理空間41のスパッタガスG1をプラズマ化し、処理空間41に設けられたZn及びSnを含む成膜材料からなるターゲット42をスパッタリングすることにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワーク10に形成する。
このように、0.3Pa以下の低圧で成膜を行うことにより、ターゲット42から叩き出されたZn、Snの粒子がエネルギーを損なわれにくくなり、ワーク10上に到達して均一に広がるため、緻密であり、且つアモルファスな膜が形成される。このため、ガスバリア性に優れた膜を形成できる。
一般的には、膜を厚くすれば高いバリア性が得られるが、膜を厚くするとコスト高や、光の透過性の低下を招く。本実施形態の成膜装置100によれば、膜を薄くしても高いガスバリア性が得られるので、低コスト化が可能となり、光の透過性も向上する。光の透過性が向上すると、透明性が高くなるためガスバリア膜で覆われている内容物の視認性が向上する。
(2)制御部70は、処理空間41が0.1Pa以上となるように、スパッタガス導入部49及び排気部80を制御する。このため、形成された膜の内部応力が高くなり過ぎることがなく、ひび割れの発生を防止できる。なお、より好ましくは0.2Pa以上とすることにより、膜の内部応力が高くなるのを抑制し、さらにひび割れ防止の効果を向上させることができる。
なお、バリア性を得るためには、圧縮応力がかかることにより緻密性が維持されていることが必要となるので、ZTО膜の内部応力(圧縮応力)は、ある程度必要となる。但し、内部応力が高過ぎると、膜のひび割れ等に繋がるので好ましくはない。膜にひび割れ等が発生すると、ひび割れた部分から酸素や水蒸気等のガスが透過するため、ガスバリア性が低くなる。本実施形態では、ZTО膜の内部応力を、−50MPa〜−250MPaの範囲とすることで、ガスバリア性を高くすることができる。この範囲以下の内部応力だと、膜の緻密性が低くなり、ガスバリア性が低くなる。この範囲以上の内部応力となると、内部応力が高すぎることによって膜のひび割れが生じ、ひび割れた部分から酸素や水蒸気等のガスが透過しやすくなり、ガスバリア性が低くなる。なお、ZTO膜の内部応力は、測定対象となるZTO膜が成膜された、例えばガラス基板などの基材の反り量を測定する。内部応力が大きいほど、反り量が大きくなる。なお、内部応力は、予め求めた基材の反り量と、その反り量を得るために加える必要がある応力との比例関係に基づいて算出することができる。
(3)また、本実施形態の成膜装置100は、ワーク10を循環搬送する回転テーブル31を有する搬送部30と、チャンバ20内に設けられ、酸化処理を行うための処理空間59と、処理空間59に酸素ガスを含むプロセスガスG2を導入するプロセスガス導入部58と、プロセスガスG2をプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、ワーク10に形成されたZn及びSnを含む膜を酸化させる酸化処理部50と、を備える。搬送部30は、ワーク10が成膜処理を行う処理空間41と酸化処理を行う処理空間59とを交互に通過するように搬送する。
このため、回転テーブル31によってワーク10を循環搬送しながら、成膜処理部40と酸化処理部50とを交互に通過させてスパッタリングによる成膜と酸化を繰り返すことができる。つまり、成膜処理部40においてスパッタリングにより堆積したZn原子、Sn原子を、酸化処理部50でプラズマ化されたプロセスガスG2に晒すことで、効率良く酸化させることができる。
チャンバ内でワーク10を静止させた状態でスパッタリングにより成膜する場合には、成膜が進行しやすく膜厚が成長し易い。膜厚が厚くなると、プラズマ化された酸素ガスを含むプロセスガスG2に晒しても、表層の部分は酸化されるが、膜中には酸化しないZn原子、Sn原子が残存することになる。本実施形態では、ワーク10を循環搬送しながら、成膜処理部40と酸化処理部50とを交互に通過させてスパッタリングにより堆積したZn原子、Sn原子をプロセスガスG2に晒すので、薄膜を成膜し、膜厚が薄い状態で表層を酸化し、これを繰り返すことで最終的に成膜された膜中に存在するZn原子、Sn原子は酸化された状態となる。そのため、Zn−Sn合金膜の厚み方向に均一に酸化することができるので、Zn−Sn合金膜全体の酸化の均一性を向上させることができる。
(4)また、本実施形態の膜評価方法は、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜を形成した透明導電膜のキャリア密度と、前記透明導電膜を加熱させて酸化処理した後のキャリア密度と、に基づいて、酸素透過量を算出する。バリア膜であるZn及びSnを含むアモルファス状態の膜を形成した透明導電膜そのもののキャリア密度を測定するため、従来の差圧法や等圧法のような、試料の周囲の圧力雰囲気を調整するためのチャンバ装置を不要とすることができる。また加熱させて強制的に酸素を導入する酸化処理を行うことで、酸化処理前と処理後とのキャリア密度の変化を測定すればよいので、短時間で評価結果を得ることができる。このため、簡便に、短時間でガスバリア性を評価することができる。また、ごく微量の酸素原子の存在にも反応するキャリア密度を測定することで、高い精度で酸素透過性を評価することができる。なお、このような膜評価方法により、上記のような成膜装置100及び成膜ワーク製造方法により製造されたワークに対して、評価を行う方法も、本発明の一態様である。
[他の実施形態]
本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
上記のように、ワーク10を成膜処理部40に繰り返し通過させて成膜をする成膜装置100であって、スパッタガスG1に酸素ガスを添加することにより、成膜とともに酸化を行うことも可能である。この場合、さらに酸化処理部50による酸化を行ってもよいし、酸化処理部50を省略した構成としてもよい。酸化処理部50による酸化を行う場合には、スパッタガスG1とプロセスガスG2を共通化できる。また、酸化処理部50を省略した場合、装置を簡略化できる。但し、ターゲット42の表面の酸化による成膜速度の低下の可能性を考慮すると、成膜処理部40においては成膜のみとして、その後に酸化させることが好ましい。
また、例えば、ワーク10を成膜処理部40に繰り返し通過させて成膜をする成膜装置100であっても、ワーク10を静止させた状態で成膜する成膜装置100であっても、上記の評価方法で示したように、ターゲット42は、酸化したZn及びSnを含んでいてもよい。これにより、成膜処理部40のみによって、ZTО膜を形成でき、酸化を行うための処理空間を別に設けることなく装置構成を簡略化できる。例えば、チャンバ内の空間を、成膜を行うための処理空間として、チャンバを成膜処理部として機能させる成膜装置100を構成することもできる。
また、例えば、上述した実施の形態では、ステップS07で成膜処理部40の稼働を停止させた後、ステップS08で酸化処理部50の稼働を停止させ、ステップS09で回転テーブル31の回転を停止させていたが、これに限るものではなく、成膜処理部40と酸化処理部50のうち、稼働している酸化処理部50を最後に通過させてワーク10の搬送を停止するように、搬送部30、成膜処理部40、酸化処理部50を制御すればよい。この場合、例えば、酸化処理部50を最後に通過させてワーク10の搬送を停止するように回転テーブル31の回転を停止させた後、成膜処理部40の稼働及び酸化処理部50の稼働を停止させてもよい。また例えば、稼働していない成膜処理部40では成膜処理は行われないため、成膜処理部40の稼働を停止させた後であれば、酸化処理部50を通過した後に成膜処理部40を通過させてワーク10の搬送を停止させてもよい。
また、例えば、上述した実施の形態では、成膜処理部40の稼働の停止、すなわちプラズマ生成動作を停止するには、スパッタガスG1の導入の停止とともに電源部46による電圧印加の停止を行っていたが、これに限るものではなく、スパッタガス導入部49によるスパッタガスG1の導入または電源部46による電圧印加の少なくともいずれかの動作を停止させればよい。同様に、酸化処理部50の稼働の停止におけるプラズマ生成動作を停止するには、プロセスガスG2の導入またはRF電源54による電圧印加の少なくともいずれかの動作を停止させればよい。
また、多層の膜を積層する場合、チャンバ20内に、さらに成膜処理部、プラズマ処理部を設置してもよい。この場合、上記の成膜処理部40に加えて、これと異種のターゲット材料による成膜処理部を追加しても、同種のターゲット材料による成膜処理部を追加してもよい。また、上記の酸化処理部50と異種のプロセスガスを用いるプラズマ処理部を追加してもよい。
また、バリア膜として成膜する膜は、ガスバリア性が得られればよいため、光の透過性が低く透明でなくてもよい。このため、酸化させない膜を成膜する成膜装置100も、本発明の一態様である。この場合にも、ワーク10を成膜処理部40に繰り返し通過させて成膜をする成膜装置100であって、酸化処理部50を有しないものを構成することができる。また、チャンバ内の処理空間内に静止したワーク10に成膜する場合に、酸化していない材料、例えば、Zn−Sn合金のターゲット42を用いてもよい。
また、評価手法で用いる酸化処理は、加熱させて強制的に酸素を導入することで、成膜された膜が酸化されればよい。このため、酸化処理を、大気雰囲気下での焼成以外の方法で行ってもよい。例えば、純水などの液中で煮沸してもよい。なお、ITO、IZOのような他の透明導電膜と比較してAZOは煮沸することで比抵抗が変わり、1気圧下100℃の純水で1時間程度、煮沸を行うことでキャリア密度の減少という現象が引き起こされる。このため、液中で低温度でガスバリア性の評価に用いることが可能である。
ワーク10については、上記の態様で例示したものには限定されない。各種の電子部品、電子回路、食品、医薬品、医療器具及びこれらのパッケージ等、ガスバリア性が要求される種々の製品を、ワーク10として用いることができる。
10 ワーク
11 ZTO膜
12 薄膜
20 チャンバ
20a 天井
20b 内底面
20c 内周面
21 排気口
22 区切部
30 搬送部
31 回転テーブル
32 モータ
33 保持部
34 トレイ
40 成膜処理部
41 処理空間
42 ターゲット
43 バッキングプレート
44 電極
46 電源部
47 ガス導入口
48 配管
49 スパッタガス導入部
50 酸化処理部
51 筒状体
52 窓部材
53 アンテナ
54 RF電源
55 マッチングボックス
56 ガス導入口
57 配管
58 プロセスガス導入部
59 処理空間
60 ロードロック部
70 制御部
80 排気部
100 成膜装置
G1 スパッタガス
G2 プロセスガス

Claims (8)

  1. 内部を真空とすることが可能であり、スパッタリングにより成膜処理を行うための処理空間を有するチャンバと、
    前記処理空間に設けられ、Zn及びSnを含む成膜材料からなるターゲットと、
    前記処理空間へスパッタガスを導入するスパッタガス導入部と、
    前記チャンバ内を減圧する排気部と、
    前記処理空間が0.3Pa以下となるように、前記スパッタガス導入部及び前記排気部を制御する制御部と、
    前記処理空間の前記スパッタガスをプラズマ化することにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワークに形成するプラズマ発生器と、
    を有する成膜装置。
  2. 前記制御部は、前記処理空間が0.1Pa以上となるように、前記スパッタガス導入部及び前記排気部を制御することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  3. 前記ターゲットは、酸化したZn及びSnを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の成膜装置。
  4. 前記ワークを循環搬送する回転テーブルを有する搬送部と、
    前記チャンバ内に設けられ、酸化処理を行うための処理空間と、前記酸化処理を行うための処理空間に酸素ガスを含むプロセスガスを導入するプロセスガス導入部と、前記プロセスガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記ワークに形成されたZn及びSnを含む膜を酸化させる酸化処理部と、
    を備え、
    前記搬送部は、前記ワークが前記成膜処理を行う処理空間と前記酸化処理を行う処理空間とを交互に通過するように搬送すること、
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜装置。
  5. スパッタガスを導入することにより処理空間を0.3Pa以下として、
    前記処理空間の前記スパッタガスをプラズマ化し、前記処理空間に設けられたZn及びSnを含む成膜材料からなるターゲットをスパッタリングすることにより、Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜をワークに形成すること、
    を特徴とする成膜ワーク製造方法。
  6. Zn及びSnを含むアモルファス状態の膜を形成した透明導電膜のキャリア密度と、前記透明導電膜を加熱させて酸化処理した後のキャリア密度と、に基づいて、前記膜の酸素透過量を算出し、前記膜のガスバリア性を評価することを特徴とする膜評価方法。
  7. 前記透明導電膜は、IZОであることを特徴とする請求項6記載の膜評価方法。
  8. 前記透明導電膜は、ITО又はAZОであることを特徴とする請求項6記載の膜評価方法。
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