JP2021038184A - 難水溶性薬物の複合体及びその製造方法 - Google Patents

難水溶性薬物の複合体及びその製造方法 Download PDF

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光央 梅津
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Abstract

【課題】分散性及び/又は標的分子に対する特異性が高い新規な難水溶性薬物の複合体を提供すること。【解決手段】 ペプチドが結合された難水溶性薬物からなる複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、難水溶性薬物の複合体及びその製造方法に関する。
現在の医薬品の主流は低分子医薬品と抗体医薬品である。低分子医薬品は、細胞内外の様々な生体分子を標的にできる一方で、一般に選択性と親和性が低く標的以外の分子に対しても相互作用してしまい、副作用を生じやすい欠点を持つ。抗体医薬品は、高い標的特異性を有し、副作用が生じにくいという利点がある一方で、作用機序が中和活性か免疫細胞に依存した細胞障害活性に限られ、対象となる疾患に限界がある。その中で、低分子医薬品の多彩な作用機序と抗体医薬品の高い標的特異性を併せ持つ医薬品として、抗体−薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)が開発されてきた。これは、抗体の特定のアミノ酸に対して低分子医薬品を化学修飾することで達成されており、現在までに二種類のADCが上市に至っている。その一つが、ブレンツキシマブとモノメチルアウリスタチンEの複合体であるアドセトリス(登録商標)(特許文献1)であり、もう一つが、トラスツズマブとエムタンシンの複合体であるカドサイラ(登録商標)(特許文献2)である。
ADCにおける抗体へのアミノ酸特異的な化学修飾は、抗体の機能又は活性の喪失や、溶解性および熱安定性の低下が生じやすいことが指摘されており、高い確率でADC医薬品は臨床試験前に脱落してしまう。さらに、抗体は巨大な生体分子であるため、高コストな動物細胞で生産する必要があることや品質保持期限が短いため、高額な医療費を招いている現状がある。
特許第4741838号 特許第4780633号
抗体医薬品に対し、低分子医薬品は幅広い疾患に対して適応できる多彩な作用機序を有し、しかも製造コストも一般に低廉である。しかしながら、従来の低分子医薬品の多くは水に不溶性又は難溶性であるため、分散性が乏しい。また、従来の低分子医薬品は標的特異性が低いため、標的となる疾患領域以外にも作用してしまう可能性があり、副作用の課題がある。低分子医薬品の分散性及び/又は標的分子に対する特異性を高めることができれば、低分子医薬品の利点を生かし得る。
本発明の課題は、分散性及び/又は標的分子に対する特異性を高めた難水溶性薬物の複合体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、大部分の低分子医薬品が水に不溶性又は難溶性であることに着目し、低分子医薬品から構成される固体結晶に対して親和性を有するペプチド分子をファージディスプレイ法で取得し、かかる親和性ペプチドが難水溶性薬物のナノ粒子表面に提示された、ペプチドと難水溶性薬物とからなる複合体を作製し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下に記載の実施形態を包含する。
[1]ペプチドが結合された難水溶性薬物からなる複合体。
[2]難水溶性薬物が低分子医薬品である[1]に記載の複合体。
[3]難水溶性薬物が抗腫瘍薬である[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]前記ペプチドにおける難水溶性薬物と結合する部位以外の部位に、追加の分子が取り付けられている[1]〜[3]のいずれか一項に記載の複合体。
[5]前記ペプチドが標的分子を認識する部位を有するか、又は前記ペプチドが前記標的分子を認識する分子と直接又はリンカーを介して結合されている[1]〜[3]のいずれか一項に記載の複合体。
[6]難水溶性薬物が粒子である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の複合体。
[7]ペプチドを提示したファージライブラリを難水溶性薬物に接触させ、難水溶性薬物に結合するペプチドを同定すること、及び
前記同定されたぺプチドと前記難水溶性薬物とを結合させること
を含む、ペプチド及び難水溶性薬物からなる複合体を製造する方法。
本発明の複合体は、難水溶性薬物単体よりも、分散性及び/又は標的分子に対する特異性を向上させることが可能となる。
本発明の複合体の製造方法によれば、難水溶性薬物に対して高い親和性を有するペプチドを結合させるため、難水溶性薬物単体よりも、分散性及び/又は標的分子に対する特異性を向上させた難水溶性薬物の複合体を製造することができる。
パニング操作の概略を説明する略図。 (A)パニングの各ラウンドの条件を示す表。(B)各ラウンド毎の溶出ファージ数 (Output) を投入ファージ数 (Input) で割ったグラフ。 CPT P4とカンプトテシン粒子との吸着実験におけるLangmuirの吸着等温式による解析結果を示すグラフ。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
本発明の一態様によれば、ペプチドが結合された難水溶性薬物からなる複合体が提供される。
本明細書において、ペプチドとは、50個以下のアミノ酸配列がペプチド結合したものを指す。本明細書において、タンパク質とは、51個以上のアミノ酸配列がペプチド結合したものを指す。
ペプチドは、難水溶性薬物に対し、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用等の非共有結合により結合される。ペプチドが非共有結合により難水溶性薬物に結合されるため、ペプチドとの結合時に難水溶性薬物が化学修飾によりその機能又は活性を喪失することが防止される。
本明細書において、難水溶性薬物とは、水への溶解性が低い薬物を意味する。難水溶性薬物は、治療学的に有効な活性成分、あるいは予防学的に有効な活性成分であれば制限的に解釈されず、例えば、水への溶解度が1,000μg/mL以下、好ましくは100μg/mL以下、更に好ましくは10μg/mL以下、より更に好ましくは1μg/mL以下である薬物を挙げることができる。
かかる薬物として例えば、トフィソパム、ガンマオリザノール、スルピリド、チアミンジスルフィド、ナプロキセン、カルバマゼピン、インドメタシン等の神経系及び感覚器官用医薬;塩酸バルニジピン、塩酸ニカルジピン、塩酸インデノロール、塩酸アモスラロール、塩酸アモスラロール、硝酸イソソルビド、硝酸グアネチジン、フェロジピン、ニフェジピン、フロセミド、スピロノラクトン、レセルピン、メトプロロール、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、リシノプリル、ピロカルピン、ダナゾール、プレドニゾロン、テオフィリン、ケトプロフェン、塩酸タムスロシン等の循環器・呼吸器・ホルモン剤等の個々の器官系医薬品;ビタミンA、ビタミンK、ベラプロストナトリウム等の代謝性医薬品;エトポシド、カンプトテシン、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、メトトレキサート、ブスルファン、メルカプトプリン水和物、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ダサチニブ水和物、ボスチニブ水和物、ポナチニブ塩酸塩、ニロチニブ塩酸塩水和物等の抗がん剤及びシクロスポリン、タクロリムス等の免疫抑制剤をはじめとする組織細胞機能用医薬品;クロラムフェニコール、リファンピシン、ケトコナゾールをはじめとする病原生物に対する医薬品;等が挙げられる。
難水溶性薬物は低分子医薬品であることが好ましい。低分子医薬品とは、分子量が500以下の医薬品を指す。
また難水溶性薬物は、抗腫瘍薬であることが好ましい。抗腫瘍薬の例としては、アルキル化薬、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、プラチナ製剤、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管重合阻害薬、微小管脱重合阻害薬、ホルモン製剤、分子標的薬等が挙げられる。
アルキル化薬としては、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン(1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート)、テオテパ等のナイトロジェンマスタード;ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、プロカルバシン、テモゾロマイド、カルムスチン、ストレプトゾトシン、ベンダムスチン等のニトロソウレア;又はそれらの塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
代謝拮抗剤としては、フルオロウラシル、メルカプトプリン、クラドリビン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フルダラビンリン酸エステル、ゲノシタビン塩酸塩、ヒドロキシカルバミド、メソトレキサート、ネララビン、ペメトレキセドナトリウム水和物、ペントスタチン、テガフール、又はそれらの塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
抗腫瘍性抗生物質としては、マイトマイシンC、アントラサイクリン(例:ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン)、ブレオマイシン等が挙げられるがこれらに限定されない。
プラチナ製剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、又はそれらの塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
トポイソメラーゼ阻害薬としては、カンプトテシンとその誘導体(例:イリノテカン、ノギテカン)、アンスラサイクリン(例:ドキソルビシン)、エピポドフィロトキシン(例:エトポシド)、キノロン系阻害剤(例:レボフロキサシン、シプロフロキサシン)、又はそれらの塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
微小管重合阻害薬としては、ビンカアルカロイド(例:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン)、又はそれらの塩等が挙げられるがこれに限定されない。
微小管脱重合阻害薬としては、タキサン系製剤(例:パクリタキセル、ドセタキセル)等が挙げられるがこれに限定されない。
ホルモン製剤としては、アナストロゾール、エキセメエスタン、レトロゾール、タモキシフェン、トレミフェン、ファドロゾール、エストラムスチン、フルタミド、リュープロレリン、メドロキシプロゲステロン、メピチオスタン、又はそれらの塩等が挙げられるがこれに限定されない。
分子標的薬としては、低分子分子標的薬、核酸医薬、TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬、T細胞阻害薬、mTOR阻害薬、ラパマイシン誘導体静注薬、カルシニューリン阻害薬等が挙げられるがこれらに限定されない。
低分子分子標的薬としては、キナーゼ阻害剤(例:スタウロスポリン、イマチニブ、ニロチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、スニチニブ、ダサチニブ、イブルチニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、トラメチニブ、パルボシクリブ)、PARP阻害剤(例:オラパリブ)、プロテアソーム阻害剤阻害剤(例:ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、HDAC阻害剤(例:ボリノスタット他)、又はそれらの塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
難水溶性薬物は、本発明の医薬の有効成分として有用な化合物として、酸付加物塩を形成する場合もあり、かかる塩も製薬学的に許容される塩である限りにおいて本発明における難水溶性薬物に包含される。
具体的には、難水溶性薬物の、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。
難水溶性薬物との結合に適用されるペプチドは、多種のペプチドを有するファージライブラリに難水溶性薬物を呈示して、難水溶性薬物に結合するペプチドを同定することにより選択することができる。
難水溶性薬物の分散剤として、ファージ提示法により取得した難水溶性薬物の結晶表面に結合するペプチドを用いる。ファージ提示法とは、多様なアミノ酸配列を持つファージ群(ファージライブラリー)を難水溶性薬物結晶と接触、未結合ファージの洗浄、難水溶性薬物結晶からの残留ファージの溶出、溶出ファージの大腸菌への感染及び増幅の一連の操作を一定回数繰り返すことにより難水溶性薬物結晶に特異的に結合するペプチド配列を取得することを指す。ファージライブラリーは、Ph.D.-12TM Phage Display Peptide Library Kit (BioLabs社) を利用する。このファージライブラリーは、大腸菌に感染する繊維状ウイルスであるM13ファージのpIIIタンパク質のN末端にリンカー配列 (GGGS) を介して12アミノ酸残基のペプチドを提示しており、F繊毛を持つ大腸菌に感染し増殖する。
ペプチドの長さは限定されないが、難水溶性薬物との結合のためには、2〜20個のアミノ酸からなることが好ましい。
上記同定されたペプチドと、上記難水溶性薬物とを結合させて、ペプチド及び薬物からなる複合体を製造することができる。
難水溶性薬物との結合に適用されるペプチドは、難水溶性薬物の水中分散性(水分散性とも言う)を高めるため、塩基性、酸性、中性等の親水性アミノ酸を有することが好ましい。さらには、該ペプチドは、他の機能性分子(蛍光標識分子やタンパク質)との連結を実現できる特徴を有することが望ましい。好ましい実施形態では、難水溶性薬物との結合に適用されるペプチドは、難水溶性薬物の水中分散性を高めるため、塩基性、酸性、中性等の親水性アミノ酸を有し、かつ他の機能性分子(蛍光標識分子やタンパク質)との連結を実現できる特徴を有する。酸性の親水性アミノ酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。塩基性の親水性アミノ酸としてはリシン、ヒスチジン、アルギニンが挙げられる。中性の親水性アミノ酸としてはアスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システインが挙げられる。
難水溶性薬物は、標的特異的な薬物送達の点から結晶またはアモルファスに集合した粒子であることが好ましく、難水溶性薬物はナノ粒子又はマイクロ粒子であることがより好ましい。ナノ粒子とは、約1nm以上1000nm未満の平均直径を有する粒子を指す。マイクロ粒子とは、1μm以上1000μm未満の平均直径を有する粒子を指す。例えばマイクロ粒子は、1μm以上100μm以下の平均直径を有することができる。平均直径とは、十分な数、すなわち50個以上の粒子の直径の平均を指す。
難水溶性薬物は、難水溶性薬物単独で粒子を形成することもできるし、製薬の分野において周知の賦形剤を添加して薬剤組成物として粒子を形成してもよい。
本発明の一態様の、ペプチドが結合した難水溶性薬物からなる複合体は、ペプチドにおける難水溶性薬物と結合する部位以外の部位に、追加の分子が取り付けられていてもよい。かかる追加の分子の例としては、蛍光標識分子、脂質、糖鎖、ペプチド、タンパク質又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。ペプチドへの追加の分子の結合は、化学的に連結させる手法、遺伝子工学的に連結させる手法、特定のタンパク質の機能により連結させる手法を始めとする当業者に周知の方法を用いて達成できる。
上記態様の複合体によれば、例えば、追加の分子が蛍光標識分子である場合、生体内、細胞内、又は溶媒中における複合体の特定が容易となる。また、追加の分子が、被験体の体液又は細胞を初めとする生体試料中の標的分子を特異的に認識又は結合する分子である場合、該標的分子と複合体の特異的認識又は結合が可能となる。
本発明の別の態様の、ペプチドが結合された難水溶性薬物からなる複合体は、標的分子を認識するよう構成することができる。具体的には、上記ペプチドは、標的分子を認識する部位を有するか、又は標的分子を認識する分子と結合される。標的分子は、例えば被験体の体液又は細胞を初めとする生体試料中の標的分子である。標的分子を認識する分子の例としては、脂質、糖鎖、ペプチド、タンパク質又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。ペプチドと標識分子を認識する分子との結合は、直接でもリンカーを介してもよく、化学的に連結させる手法、遺伝子工学的に連結させる手法、特定のタンパク質の機能により連結させる手法を始めとする当業者に周知の方法を用いて達成できる。
上記態様の複合体によれば、標的分子に対する複合体の特異性を、難水溶性薬物単体の場合に比べて向上させることが可能となる。
本発明の一態様によれば、ペプチドを提示したファージライブラリを難水溶性薬物に接触させ、難水溶性薬物に結合するペプチドを同定すること、及び前記同定されたぺプチドと前記難水溶性薬物とを結合させることを含む、ペプチド及び難水溶性薬物からなる複合体を製造する方法が提供される。上記難水溶性薬物は、好ましくは粒子である。
上記態様の複合体の製造方法によれば、難水溶性薬物に対して高い親和性を有するペプチドが結合されているため、難水溶性薬物単体よりも分散性及び/または標的分子に対する特異性の高い複合体を製造することができる。標的分子は、例えば被験体の体液又は細胞を初めとする生体試料中の標的分子である。
特に、上記ペプチドが、疾患特異的な標的分子を認識する部位を有するか、又は標的分子を認識する分子と直接又はリンカーを介して結合するように設計することで、ペプチド−難水溶性薬物複合体を疾患特異的に送達することができる。標的分子を認識する分子の例としては、脂質、糖鎖、ペプチド、タンパク質又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
かかるペプチド−難水溶性薬物複合体は、多様な作用機序を有し得るが、難水溶性薬物単体よりも、分散性が向上し、標的分子に対する特異性が向上し、及び/又は同量を投与しても副作用が低減又は排除されている点で有利である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1 ファージ提示法による薬物粒子結合性ペプチドの取得
(材料及び方法)
本実施例では、12アミノ酸残基のランダムなペプチド配列をpIIIタンパク質に提示したM13ファージのファージライブラリーを用い、4ラウンドのパニング操作を行うことで、カンプトテシンの粒子に結合するペプチドを取得した。カンプトテシンは下記の構造式(I)で表される抗がん剤として使われるトポイソメラーゼ阻害薬の一種である。本実施例では、富士フイルム和光純薬株式会社から購入したカンプトテシン(粒子状態)を利用した。
パニング操作の概略図を図1に示す。まず、1 mLの1011 pfu/mL (pfu: plaque forming unit) のファージライブラリーのトリスバッファーサリン(TBS)溶液と5 mgのカンプトテシン粒子とをマイクロチューブに入れ、室温で30分間緩やかに振盪後、遠心分離によりカンプトテシン粒子を沈殿させ、上清の未結合ファージを含む溶液を除去した。次に、1 mLのTBS又は界面活性剤Tween20を0.05-0.1%含む(TBS-T) をカンプトテシン粒子を含むマイクロチューブに添加し、室温で5分間緩やかに振盪し、遠心分離と上清を除去を行うことでカンプトテシン粒子を洗浄した。この洗浄操作を5-10回行った。その後、遠心分離し上清の溶液を除去した洗浄済みカンプトテシンを含むマイクロチューブに対し、100 mMトリエチルアミンを添加し、室温で5分間静置した。遠心分離により固液分離し、上清を別のマイクロチューブに回収し、1 Mトリス緩衝液を加えた。ここで、溶出ファージ数を数えるため溶液を二つに分け、一方を溶出ファージのカウント用、もう一方を次のラウンド用とした。溶出ファージカウント用のファージ溶液は、大腸菌溶液に添加しファージを大腸菌に感染させ、プレート培地を用いて溶出ファージ数を算出した。もう一方の次のラウンド用のファージ溶液は、大腸菌溶液に添加後、37°Cで4.5時間振盪させた。この溶液を遠心分離し、上清を別の遠沈管に回収し、20 % PEG6000 / 2.5 M NaClを添加して12 時間4 ℃で静置した。その後、遠心分離して上清を除去し、沈殿にTBS溶液を添加することでファージ溶液を取得した。このファージ溶液に対して、溶出ファージ数のカウント時と同様の操作を行うことで、ファージ数を算出した。以上の操作を4ラウンド繰り返した後、ファージのDNA配列を解析することで、濃縮されたペプチド配列を同定した。
パニングの各ラウンドの条件を図2Aに示し、各ラウンド毎の溶出ファージ数 (Output) を投入ファージ数 (Input) で割ったグラフを図2Bに示す。これより、ラウンドを重ねる毎にOutput/Inputの値が増加していることがわかる。この結果は、投入したファージの内、カンプトテシン粒子に結合を示すファージが増加していることを示しており、ラウンドを重ねる毎に結合力を持つペプチドが増加していることを示唆するものである。
(結果)
パニング法による4ラウンドのパニング後、ペプチドが結合したファージクローンの増加が認められ、55個のクローンのペプチドを解析したところ、下記の7種のペプチドが同定された。
実施例2 ペプチドの標識化、及び標識化ペプチドの薬物に対する特異的結合の評価
(材料及び方法)
実施例1で同定されたペプチド配列がカンプトテシン粒子に対し結合能を保持しているかを吸着実験により調査した。同定された7種のペプチド配列のうち4種類 (CPT P1, CPT P2, CPT P3, CPT P4) をFmoc固相合成により調製した。この時、ペプチド配列のC末端に蛍光基 (フルオレセイン) をリンカー配列 (GS) を介して付加した。フルオレセインでラベル化されたペプチドの10 mMのリン酸溶液 (pH 7.0) を5 mgのカンプトテシン粒子と混合し、室温遮光下で5分間激しく攪拌した。その後、遠心分離し、上清を回収し、その蛍光強度を蛍光光度計により測定することで、吸着したペプチド量を算出した。カンプトテシン粒子に対してパニング操作を行い、取得したCPTペプチド候補の結合力をカンプトテシンとの吸着実験により評価した。
(結果)
その結果、調製した4種類のCPTペプチド全てで吸着が確認できた。なかでも、CPT P4は特に強く結合し、Langmuirの吸着等温式による解析の結果、100 nMの解離定数を持つことが明らかとなった(図3)。以上の結果から、取得したCPTペプチドはカンプトテシン粒子の表面に結合能を持つことが証明され、加えてカンプトテシンにCPTペプチドを介して蛍光基を固定化できることが示された。
実施例3 標識化ペプチドが結合された薬物の溶液分散性の評価
更に、カンプトテシンの水中分散性を評価するため、上記CPTP4ペプチドが溶解した水溶液にカンプトテシン溶液を勢い良く添加し、CPTP4ペプチド被覆カンプトテシン粒子を作製した。CPTP4ペプチド含む溶液ではカンプトテシンが水溶液中に分散しているのに対し、CPTペプチド無しの溶液ではカンプトテシンが沈殿していることが確認された。カンプトテシンは難水溶性薬物であるが、CPTP4ペプチドがカンプトテシン表面に結合することにより、溶液分散性を高めていることが示唆される。さらに、走査型電子顕微鏡によりカンプトテシン粒子を観察したところ、粒径は100-300 nmであることがわかった。
実施例4 標的分子に対するペプチド結合薬物の特異的結合の評価
癌組織へのターゲティング能をカンプトテシン粒子へ付与するため、フィブロネクチン等の細胞接着タンパク質が持つRGD配列 (アルギニン-グリシン-アスパラギン酸) を、CPTP4ペプチドのC末端にリンカー配列 (GS) を介して融合させた。RDG配列はフィブロネクチン等の細胞接着タンパク質に共通しており、腫瘍組織への輸送に利用されている。RGD配列融合CPTP4ペプチドを担癌マウスの尾静脈から注入し、腫瘍体積の変化を観察した。陰性対照として、CPTP4ペプチドを結合させない同量のカンプトテシン粒子を注射した。その結果、RGD配列融合CPTP4ペプチド被覆カンプトテシンは少量でも腫瘍抑制効果が認められたのに対し、陰性対照のRGD配列を提示していないCPTP4ペプチド被覆カンプトテシンでは腫瘍抑制効果が僅かであった。以上の結果から、RGD配列融合CPTP4ペプチドはカンプトテシン粒子の溶液分散性を向上させ、かつ癌組織特異的な輸送を達成できることが示された。

Claims (7)

  1. ペプチドが結合された難水溶性薬物からなる複合体。
  2. 難水溶性薬物が低分子医薬品である請求項1に記載の複合体。
  3. 難水溶性薬物が抗腫瘍薬である請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記ペプチドにおける難水溶性薬物と結合する部位以外の部位に、追加の分子が取り付けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
  5. 前記ペプチドが標的分子を認識する部位を有するか、又は前記ペプチドが前記標的分子を認識する分子と直接又はリンカーを介して結合されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
  6. 難水溶性薬物が粒子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合体。
  7. ペプチドを提示したファージライブラリを難水溶性薬物に接触させ、難水溶性薬物に結合するペプチドを同定すること、及び
    前記同定されたぺプチドと前記難水溶性薬物とを結合させること
    を含む、ペプチド及び難水溶性薬物からなる複合体を製造する方法。
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