JP2021035109A - 慣性推定装置、慣性推定プログラム及び慣性推定方法 - Google Patents

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【課題】異常時における電力系統の慣性だけではなく、正常時における電力系統の慣性も推定すること。【解決手段】慣性推定装置は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得部と、前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、慣性推定装置、慣性推定プログラム及び慣性推定方法に関する。
電力系統により供給される電力の周波数は、当該電力系統に連系し、互いに同期して運転している発電機や電源の慣性の合計に依存しており、主に同期発電機の慣性により維持されていた。
ところが、近年、小規模発電機や擬似的な慣性を有するように制御されている再生可能エネルギー電源が電力系統に連系されるケースが増加している。また、電力系統に連系する発電機や電源の数の増加や電力自由化により、個々の発電機や電源の諸元や運転状況を一元的に把握することが困難なケースも増加している。
したがって、電力系統により供給される電力の周波数の維持に使用する目的で当該電力系統に連系している発電機や電源の慣性の合計を推定する技術が注目を集めている。このような技術の一例としては、非特許文献1に開示されている慣性推定方法が挙げられる。
しかし、この慣性推定方法は、電力系統から大規模な発電機が脱落した場合等の異常時に発生する大きな周波数の変動を使用して慣性を推定するものであるため、正常時における電力系統の慣性を推定することができない。
そこで、本発明は、異常時における電力系統の慣性だけではなく、正常時における電力系統の慣性も推定することができる慣性推定装置、慣性推定プログラム及び慣性推定方法を提供することを課題とする。
本発明の一態様は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得部と、前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定部と、を備える慣性推定装置である。
また、本発明の他の態様は、慣性推定装置において、前記取得部が前記第二の計測値として前記電力系統の周波数の計測値を取得する構成が用いられてもよい。
また、本発明の他の態様は、慣性推定装置において、前記取得部が前記第二の計測値として前記電力系統の位相角の計測値を更に取得する構成が用いられてもよい。
また、本発明の他の態様は、慣性推定装置において、前記推定部が前記第一の計測値及び前記第二の計測値に拡張カルマンフィルタを適用して前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する構成が用いられてもよい。
本発明の一態様は、コンピュータに、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得機能と、前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定機能と、を実現させる慣性推定プログラムである。
本発明の一態様は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得工程と、前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定工程と、を含む慣性推定方法である。
本発明によれば、異常時における電力系統の慣性だけではなく、正常時における電力系統の慣性も推定することができる。
第一の実施形態に係る慣性推定装置の一例を示す図である。 第一の実施形態に係る計測装置が計測する電力系統の出力、周波数及び周波数変化率の関係を示す図である。 第一の実施形態に係る慣性推定装置が電力系統の慣性を推定する枠組みの一例を示す図である。 第一の実施形態に係る電力系統の慣性の動的モデルの一例を示すブロック図である。 第一の実施形態に係る慣性推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。 第一の実施形態に係る電力系統における消費電力の合計の一例を示す図である。 第一の実施形態に係る電力系統の周波数の一例を示す図である。 第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 第一の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統の周波数の一例を示す図である。 図9のうち0秒から1秒の範囲を拡大して表示した図である。 第一の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統での消費電力の合計の一例を示す図である。 図11のうち0秒から1秒の範囲を拡大して表示した図である。 送電線事故が継続している期間及びその前後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統に連系している同期発電機への機械的入力の一例を示す図である。 第二の実施形態に係る計測装置が計測する電力系統の出力、周波数、周波数変化率及び相対位相角の関係を示す図である。 第二の実施形態に係る慣性推定装置が電力系統の慣性を推定する枠組みの一例を示す図である。 第二の実施形態に係る電力系統の慣性の動的モデルの一例を示すブロック図である。 第二の実施形態に係る電力系統における正常時の相対位相角の一例を示す図である。 第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 第二の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統の相対位相角の平均の一例を示す図である。 送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。 送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。
[第一の実施形態]
まず、第一の実施形態に係る慣性推定装置を説明する準備として、電力系統の慣性、周波数及び周波数変化率について説明する。
電力系統に連系している同期発電機が備える回転体は、いずれも他の同期発電機の回転体と同期して回転しており、慣性を有する。以下の説明では、同期発電機が備える回転体の運動エネルギーを当該同期発電機の慣性と定義する。この定義の下では、単位慣性定数は、運動エネルギーを適当なベース容量で除算することにより算出される。また、電力系統に連系している再生可能エネルギー電源は、同期発電機が有する慣性を擬似的に持たせるように制御されていることがある。
電力系統に供給される電力の周波数は、同期発電機や再生可能エネルギー電源が有する慣性により、定格周波数又はその近傍で維持されている。したがって、電力系統に連系している同期発電機や電源の慣性の合計を電力系統の慣性と考えることができる。ただし、ここで言う電力系統は、実際に運用されている電力系統の少なくとも一部であってもよいし、シミュレーション上で仮定される電力系統の少なくとも一部であってもよい。
ここで、一般に、同期発電機の回転体の運動方程式は、回転体の慣性モーメントJ、回転速度ω、時間t及びトルクの変化量ΔTを含む次の式(1)となる。
Figure 2021035109
この式(1)の両辺に回転速度ωを掛けると、同期発電機の機械的入力Pから当該同期発電機の出力Pを差し引いた量ΔPsysを含む次の式(2)が得られる。
Figure 2021035109
ここで言う機械的入力は、例えば、同期発電機の回転体を回転させるための水蒸気や水の流れであり、水蒸気や水が流れる経路に設けられている弁の開度を調整する速度ガバナ等により調整される。また、この機械的入力は、直接計測することができない。さらに、この機械的入力は、同期発電機の出力P、電力系統の周波数f等に比べて時間的な変化が十分に遅いため、高速な変化や大きな変化を伴わない準定常的な外乱として取り扱うことが可能である。
一方、電力系統の慣性Esysは、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源を一つの同期発電機に置き換えて考えた場合、次の式(3)で表される。
Figure 2021035109
上述した式(2)及び式(3)から電力系統の周波数f及び電力系統の定格周波数fを含む次の式(4)が得られる。ここで、電力系統の周波数fは、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の周波数の平均又は加重平均であり、電圧の周波数であってもよいし、電流の周波数であってもよい。また、この荷重平均で使用される重みは、電力系統に与える影響が大きな同期発電機や再生可能エネルギー電源程、大きな値となる。式(4)の二つ目の等号は、電力系統の周波数fが常に電力系統の定格周波数f又はその近傍の値に等しく、電力系統の慣性Esysに与える影響が小さいという理由により成立している。式(4)は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源を一つの同期発電機に置き換えて考えた場合、当該同期発電機の回転体を回転させるための機械的入力Pから当該同期発電機の出力Pを差し引いた値ΔPsys及び電力系統の周波数変化率df/dtから電力系統の慣性Esysが推定され得ることを意味している。
Figure 2021035109
次に、図1から図16を参照しながら、第一の実施形態に係る慣性推定装置について説明する。図1は、第一の実施形態に係る慣性推定装置の一例を示す図である。図1に示すように、慣性推定装置1は、取得部11と、推定部12とを備える。慣性推定装置1が設置される場所は、特に限定されない。
慣性推定装置1が有する機能の少なくとも一部は、回路部(circuitry)を含むハードウェアがソフトウェアプログラムを実行することにより実現される。ここで言うハードウェアは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)である。また、上述したプログラムは、記憶媒体を備える記憶装置に格納されている。ここで言う記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)である。さらに、上述したプログラムは、慣性推定装置1が有する機能の少なくとも一部を実現する差分プログラムであってもよい。
取得部11は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得する。例えば、取得部11は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源の出力の計測値の合計を第一の計測値として複数取得する。同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の出力は、任意の場所、例えば、各発電機の端子、発電所の母線、変電所の母線に設置された計測装置により計測され、取得部11に送信される。
また、取得部11は、電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する。取得部11は、第二の計測値として電力系統の周波数の計測値を取得する。例えば、取得部11は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源の周波数の計測値の平均又は加重平均を第二の計測値として複数取得する。同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の周波数は、任意の場所、例えば、各発電機の端子、発電所の母線、変電所の母線に設置された計測装置により計測され、取得部11に送信される。
図2は、第一の実施形態に係る計測装置が計測する電力系統の出力、周波数及び周波数変化率の関係を示す図である。同期発電機の出力Pは、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源の出力の計測値の合計である。電力系統の周波数fは、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の周波数の平均又は加重平均であり、同期発電機の出力Pを図2に示した伝達関数F(s)の出力として得られる。ここで、伝達関数F(s)は、電力系統に連系している同期発電機、再生可能エネルギー電源及び上述した計測装置を含むシステムの伝達関数である。また、図2において伝達関数F(s)に負号が付いている理由は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源を一つの同期発電機に置き換えて考えた場合における当該同期発電機の出力Pが増加すると電力系統の周波数が低下することによる。なお、電力系統の周波数変化率df/dtは、電力系統の周波数fを伝達関数sで時間微分して得られる。ここで、伝達関数sによる微分は、例えば、計測装置に補助機能の一つとして内蔵されている数値微分である。
図3は、第一の実施形態に係る慣性推定装置が電力系統の慣性を推定する枠組みの一例を示す図である。図3に示した伝達関数F(s)は、電力系統の出力−Pを電力系統の周波数を推定した値fに変換する伝達関数である。伝達関数F(s)に関わる拡張状態ベクトルXの要素bが適切に調整された後、後述する方法により電力系統の慣性Esysが算出される。また、図3に示すように、電力系統の周波数を推定した値fは、拡張カルマンフィルタの計算手順の一部として電力系統の慣性Esysの推定に使用される。
図4は、第一の実施形態に係る電力系統の慣性の動的モデルの一例を示すブロック図である。図4に示したブロック図は、図3に示した伝達関数F(s)に相当する。図4に示すように、電力系統の出力Pと電力系統に連系している同期発電機への機械的入力Pとの差分と電力系統の周波数fとの間には、比例定数f/2Esys及び積分要素1/sが存在する。
推定部12は、第一の計測値及び第二の計測値に基づいて、電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。具体的には、推定部12は、第一の計測値及び第二の計測値に拡張カルマンフィルタ(EKF:Extended Kalman Filter)を適用して電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。
拡張カルマンフィルタは、線形システムに適用可能であるカルマンフィルタ(KF:Kalman Filter)を非線形システムに適用可能なように拡張したものであり、オブザーバの一種である。オブザーバは、状態推定器とも呼ばれ、制御等の対象システムの状態を示す量のうち直接計測していない量又は直接計測することができない量を直接計測した量から推定するものである。ここで言う直接計測した量は、例えば、対象システムの入力値や出力値である。また、カルマンフィルタは、対象システムの入力値にノイズが重畳されること及び出力を計測する際にノイズが重畳されることを考慮し、最も確からしい対象システムの状態を示す量を推定するものである。
拡張カルマンフィルタは、次の式(5)及び式(6)で表される非線形システムに適用可能である。式(5)は、状態方程式と呼ばれ、対象とする非線形システムの特性を表す多入力かつ多出力の非線形関数g、状態ベクトルx、推定するパラメータのベクトルp、入力ベクトルu、入力雑音ベクトルw及び時間tを含む。また、式(6)は、出力方程式と呼ばれ、出力ベクトルy、出力行列C、状態ベクトルx及び観測雑音ベクトルvを含む。非線形システムでは、電力系統の慣性Esysは、推定するパラメータのベクトルpの一要素として扱われる。
Figure 2021035109
Figure 2021035109
推定部12は、電力系統の慣性Esysの推定に拡張カルマンフィルタを使用する場合、入力ベクトルu及び出力ベクトルyのみを取得することができる。また、推定部12は、入力雑音ベクトルw及び観測雑音ベクトルvが白色雑音である場合、拡張カルマンフィルタにより最適な電力系統の慣性Esysを推定することができる。
上述した式(5)は、非線形システムが連続的時間システムである場合を対象としたものであるが、離散時間システムにも拡張カルマンフィルタを適用して電力系統の慣性Esysを推定することができる。ただし、拡張カルマンフィルタは、サンプリングによる計測を前提に計算機上に実装されるのが現実的であるため、以下の説明では拡張カルマンフィルタが離散時間システムに適用されるものとして説明する。
まず、推定部12は、入力雑音ベクトルwの共分散行列Qを与える。この処理は、入力雑音ベクトルwの特性を与えることに相当する。同様に、推定部12は、観測雑音ベクトルvの共分散行列Rを与える。この処理は、観測雑音ベクトルvの特性を与えることに相当する。第一の実施形態では、共分散行列Q及び共分散行列Rは、いずれもノイズの性状や推定対象の特性を踏まえて決定すべきものである。なお、ノイズや対象に関する十分な知識が事前に無い場合には、適当な対角行列を共分散行列Qや共分散行列Rとしてもよい。ただし、ここで決定した共分散行列Qや共分散行列Rは、推定計算の安定性や推定精度に影響を与えることがある。
次に、推定部12は、次の式(7)で表される拡張状態ベクトルXの初期値Xoldを適当に与える。ただし、推定部12は、初期値Xoldが真の値から大きく離れている場合、真の値に近い値を推定し得なくなることに留意して初期値Xoldを与える必要がある。
Figure 2021035109
また、推定部12は、誤差行列Pの初期値Poldを適当に与える。ここで、誤差行列Pは、行及び列のサイズが拡張状態ベクトルXの要素の数に等しい正方行列である。誤差行列Pは、推定するパラメータのベクトルpを含む拡張状態ベクトルXを推定した結果に含まれる誤差に相当するものであり、逐次更新されていくため、初期値Poldが必要になる。第一の実施形態では、初期値Poldは、推定誤差を想定して設定することが望ましいが、推定誤差に関する事前の知識が無い場合には、単位行列を使用してもよい。ただし、ここで設定された初期値Poldは,推定計算の安定性や推定精度に影響を与えることがある。
推定部12は、当該時点での拡張状態ベクトルX、誤差行列P等の既知の情報に基づいて次の時刻での拡張状態ベクトルXを予測し、修正ステップで取得された出力ベクトルyに基づいて当該拡張状態ベクトルXを修正する。
推定部12は、予測ステップにおいて次の式(8)及び式(9)を使用する。ここで、式(8)及び式(9)に含まれる左向きの矢印は、計算機プログラム上の変数への代入を表している。また、式(8)は、時間刻みΔtを含む。
Figure 2021035109
Figure 2021035109
推定部12は、修正ステップにおいて次の式(10)から式(14)を使用する。ここで、式(10)から式(12)に含まれる左向きの矢印は、計算機プログラム上の変数への代入を表している。また、式(10)から式(12)は、カルマンゲインKを含む。カルマンゲインKは、カルマンフィルタの動きそのものを左右し、前段階で予測した拡張状態ベクトルXに対して、出力ベクトルyによる修正をどの程度適用するかを決定する。カルマンゲインKが大きい場合、出力ベクトルyが重視され、カルマンゲインKが小さい場合、出力ベクトルyは軽視されるとともに予測値Xnewが重視される。カルマンゲインKは、拡張カルマンフィルタの手順の中において、式(10)により自動的かつ最適に決定される。
Figure 2021035109
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Figure 2021035109
Figure 2021035109
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なお、上述した式(8)から(14)を使用して拡張状態ベクトルXを予測する方法が拡張カルマンフィルタである。なお、上述した式(8)は、次のステップにおける拡張状態ベクトルXを予測するものであり、予測のための数値手法としてオイラー法を使用している。式(8)のステップでは、オイラー法に代えて後退オイラー法や台形法等、任意の積分手法を使用してもよい。慣性推定装置1は、第一の計測値−P及び第二の計測値fをリアルタイムに取得して拡張カルマンフィルタを適用することにより、電力系統の慣性Esysをリアルタイムに推定することができる。ただし、慣性推定装置1は、第一の計測値−P及び第二の計測値fを取得し終えた後に推定部12による処理を実行してもよい。
上述した入力ベクトルu、状態ベクトルx、推定するパラメータのベクトルp、拡張状態ベクトルX、出力ベクトルy、非線形関数g、行列A、行列Cは、それぞれ次の式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、式(20)、式(21)及び式(22)で表される。ここで、式(17)、式(18)及び式(20)に含まれる要素bは、f/2Esysを推定した値である。また、式(16)、式(18)は、周波数の変化量を推定した値fを含む。また、式(21)は、単位行列Iを含む。
Figure 2021035109
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推定部12は、上述した方法で要素bを推定し、次の式(23)で表される関係を使用して電力系統の慣性Esysを推定する。
Figure 2021035109
次に、図5を参照しながら第一の実施形態に係る慣性推定装置が実行する処理の一例を説明する。図5は、第一の実施形態に係る慣性推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS10において、取得部11は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する。
ステップS20において、推定部12は、第一の計測値及び第二の計測値に基づいて、電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。
以上、第一の実施形態に係る慣性推定装置1について説明した。慣性推定装置1は、第一の計測値及び第二の計測値に拡張カルマンフィルタを適用して電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。ここで、第一の計測値は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である。また、第二の計測値は、電力系統の周波数の計測値である。これにより、慣性推定装置1は、異常時における電力系統の慣性だけではなく、正常時における電力系統の慣性も推定することができる。
また、慣性推定装置1は、第二の計測値として周波数変化率ではなく周波数を取得している。周波数は、種々の計測方法により計測され得るが、周波数変化率と異なり時間微分されていないことが多いと考えられるため、ノイズが含まれていたとしても周波数変化率程、ノイズの影響を受けない。すなわち、慣性推定装置1は、第二の計測値として周波数を取得することにより、ノイズの影響により電力系統の慣性の推定結果が真の値から大きく離れてしまうおそれを回避することができる。
また、慣性推定装置1は、電力系統の慣性を推定する際に当該慣性の推定に必要なパラメータ、例えば、電力系統に連系している同期発電機への機械的入力を推定する。したがって、慣性推定装置1は、実際に運用されている電力系統の慣性の推定に使用し易くなっている。
次に、図6から図15を参照しながら、慣性推定装置1により推定された慣性の具体例、すなわち慣性推定装置1が奏する効果の具体例について説明する。
図6は、第一の実施形態に係る電力系統における消費電力の合計の一例を示す図である。
図6に示した消費電力の合計は、電力系統から電力の供給を受ける線形負荷を無作為に変化させるシミュレーションにより得られたものである。当該シミュレーションでは、線形負荷は、例えば、ホワイトノイズに一次遅れローパスフィルタを適用して得られた値を当該線形負荷のアドミッタンスに加えられることにより無作為に時間変化している。
図7は、第一の実施形態に係る電力系統の周波数の一例を示す図である。図7に示した電力系統の周波数は、電力系統における消費電力の合計が図6に示すように振る舞った場合の周波数である。ここで、実際に運用されている電力系統の周波数は、例えば、定格周波数±0.2[Hz]の範囲内に収まるように制御されていることが多い。図7に示した電力系統の周波数は、このような運用実態に合致している。
まず、図8を参照しながら、電力系統において事故が発生していないことを仮定した場合に推定された慣性の一例を説明する。図8は、第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統の慣性の一例を示す図である。ここで言う正常時とは、電力系統において事故が発生しておらず、通常通りに電力が供給されている場合をいう。図8に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図8に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。
図8に示すように、慣性推定装置1は、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]に近い値を推定し得ている。なお、図8に示すように、慣性推定装置1による電力系統の慣性の推定が開始してから20秒程度の間、慣性推定装置1により推定された慣性が真の値9090[MWs]と大きく異なっている。これは、上述した拡張状態ベクトルXの初期値Xold及び誤差行列Pの初期値Poldの少なくとも一方が必ずしも真の値に近い慣性を与えるものとは限らないことによる。
次に、図9から図15を参照しながら、電力系統において送電線事故が発生していることを仮定した場合に推定された慣性の一例を説明する。ここで言う送電線事故は、三相短絡事故が発生し、70ミリ秒後に当該三相短絡事故が発生した箇所を電力系統から切り離した場合を意味している。
図9は、第一の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統の周波数の一例を示す図である。図10は、図9のうち0秒から1秒の範囲を拡大して表示した図である。図9及び図10に示すように、電力系統で三相短絡事故が発生した場合、例えば、当該三相短絡事故が発生した時点から約0.1秒間、同期発電機の回転体が加速することにより電力系統の周波数が増加する。そして、当該三相短絡事故が発生した箇所が電力系統から切り離された後、電力系統の周波数は、動揺するが、約10秒から20秒後には定格周波数近傍にほぼ収束する。
図11は、第一の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統での消費電力の合計の一例を示す図である。図12は、図11のうち0秒から1秒の範囲を拡大して表示した図である。図11及び図12に示すように、電力系統で上述した三相短絡事故が発生した場合、例えば、当該三相短絡事故が発生した時点から0.1秒が経過するまでの間に、電力系統に供給される電力が低下する。そして、当該三相短絡事故が発生した箇所が電力系統から切り離された後、電力系統に供給される電力は、動揺するが、約10秒から20秒後には三相短絡事故が発生する前に供給されていた電力近傍にほぼ収束する。
図13から図15に示した慣性が推定される前提として、電力系統の周波数が図9及び図10に示すように振る舞い、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源により供給される電力が図11及び図12に示すように振る舞うことが仮定されている。
図13は、送電線事故が継続している期間及びその前後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。図13に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図13に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。図13に示すように、慣性推定装置1は、上述した送電線事故が発生し、送電線事故が継続している期間及びその前後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して電力系統の慣性を推定した場合、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]に近い値を推定し得ている。
図14は、送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。図14に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図14に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。図14に示すように、慣性推定装置1は、上述した送電線事故が発生し、送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して電力系統の慣性を推定した場合、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]に近い値を推定し得ている。
図15は、送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。図15に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図15に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。図15に示すように、慣性推定装置1は、上述した送電線事故が発生し、送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して電力系統の慣性を推定した場合、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]の二倍に近い値を推定している。ただし、慣性推定装置1は、共分散行列Q、共分散行列R、拡張状態ベクトルXの初期値Xold等として好適な行列や値を使用することにより、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]により近い値を推定することができる。
したがって、取得部11は、送電線事故が継続している期間及びその前後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を取得することが好ましい。また、取得部11は、送電線事故が継続している期間の後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を取得することが更に好ましい。慣性推定装置1は、このような第一の計測値や第二の計測値を取得した場合、電力系統の慣性をより的確に推定することができる。
図16は、第一の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統に連系している同期発電機への機械的入力の一例を示す図である。ここで言う正常時も上述した正常時と同様に、電力系統において事故が発生しておらず、通常通りに電力が供給されている場合をいう。また、図16に示した機械的入力が推定される前提として、電力系統における消費電力の合計が図6に示すように振る舞い、電力系統の周波数が図7に示すように振る舞うことが仮定されている。
図16に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統に連系している同期発電機への機械的入力の真の値を示している。図16に示した実線は、慣性推定装置1により推定された電力系統に連系している同期発電機への機械的入力を示している。図16に示すように、慣性推定装置1は、略一定の差と僅かな遅れを伴っているものの、機械的入力を的確に推定し得ている。
[第二の実施形態]
まず、第一の実施形態に係る慣性推定装置を説明する準備として、電力系統の位相角について説明する。
電力系統の定格周波数fによる位相角θは、電力系統の定格周波数fと次の式(24)で表される関係を満たす。
Figure 2021035109
この式(24)を時間積分すると位相角θが次の式(25)で表されることが分かる。
Figure 2021035109
相対位相角θは、電力系統の定格周波数fによる位相角θからのずれを示しており、次の式(26)で表される。
Figure 2021035109
次に、図17から図21を参照しながら、第二の実施形態に係る慣性推定装置について説明する。なお、以下の説明では、第一の実施形態と重複する内容の説明を適宜省略する。
取得部11は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得する。例えば、取得部11は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源の出力の計測値の合計を第一の計測値として複数取得する。
また、取得部11は、第二の計測値として電力系統の周波数の計測値に加えて、電力系統の位相角の計測値を更に取得する。例えば、取得部11は、電力系統の位相角の計測値として電力系統の相対位相角の計測値を取得する。具体的には、取得部11は、電力系統に連系している同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の相対位相角の計測値の平均を第二の計測値として複数取得する。同期発電機及び再生可能エネルギー電源各々の相対位相角は、任意の場所に設置された計測装置により計測され、取得部11に送信される。
図17は、第二の実施形態に係る計測装置が計測する電力系統の出力、周波数、周波数変化率及び相対位相角の関係を示す図である。電力系統の出力P、電力系統の周波数f及び電力系統の周波数変化率df/dtは、第一の実施形態において図2を参照しながら説明したものと同様である。電力系統の相対位相角θは、電力系統の周波数fと電力系統の定格周波数fとの差分を積分要素2π/sで積分して得られる。
図18は、第二の実施形態に係る慣性推定装置が電力系統の慣性を推定する枠組みの一例を示す図である。図18に示した伝達関数F(s)は、電力系統の出力−Pを電力系統の周波数を推定した値f及び電力系統の相対位相角を推定した値θに変換する伝達関数である。伝達関数F(s)に関わる拡張状態ベクトルXの要素bが適切に調整された後、後述する方法により電力系統の慣性Esysが算出される。また、図18に示すように、電力系統の周波数を推定した値f及び電力系統の相対位相角を推定した値θは、拡張カルマンフィルタの計算手順の一部として電力系統の慣性Esysの推定に使用される。
図19は、第二の実施形態に係る電力系統の慣性の動的モデルの一例を示すブロック図である。図19に示すように、当該動的モデルは、図4に示した動的モデルに積分要素1/sの後に設けられた電力系統の定格周波数fの入力及び積分要素2π/sを加えたモデルとなっており、出力が電力系統の周波数f及び電力系統の相対位相角θとなっている。これは、取得部11が第二の計測値として電力系統の周波数及び電力系統の位相角の計測値を取得することによる。
推定部12は、第一の計測値及び第二の計測値に拡張カルマンフィルタを適用して電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。
拡張カルマンフィルタに関する入力ベクトルu、状態ベクトルx、推定するパラメータのベクトルp、拡張状態ベクトルX、出力ベクトルy、非線形関数g、行列A、行列Cは、それぞれ次の式(27)、式(28)、式(29)、式(30)、式(31)、式(32)、式(33)及び式(34)で表される。ここで、式(29)、式(30)、式(32)及び式(33)に含まれる要素bは、f/2Esysを推定した値である。また、式(19)、式(21)は、周波数の変化量を推定した値Δfを含む。また、式(33)は、単位行列Iを含む。
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
Figure 2021035109
推定部12は、上述した方法で要素bを推定し、次の式(35)で表される関係を使用して電力系統の慣性Esysを推定する。
Figure 2021035109
以上、第二の実施形態に係る慣性推定装置1について説明した。慣性推定装置1は、第一の計測値及び第二の計測値に拡張カルマンフィルタを適用して電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び電力系統の慣性を推定する。ここで、第一の計測値は、電力系統に連系している発電機の出力の計測値である。また、第二の計測値は、電力系統の周波数の計測値及び電力系統の位相角の計測値である。これにより、慣性推定装置1は、異常時における電力系統の慣性だけではなく、正常時における電力系統の慣性も推定することができる。
また、慣性推定装置1は、第二の計測値として周波数変化率ではなく周波数を取得している。周波数は、種々の計測方法により計測され得るが、周波数変化率と異なり時間微分されていないことが多いと考えられるため、ノイズが含まれていたとしても周波数変化率程、ノイズの影響を受けない。すなわち、慣性推定装置1は、第二の計測値として周波数を取得することにより、ノイズの影響により電力系統の慣性の推定結果が真の値から大きく離れてしまうおそれを回避することができる。
次に、図20から図24を参照しながら、慣性推定装置1により推定された慣性の具体例、すなわち慣性推定装置1が奏する効果の具体例について説明する。
図20は、第二の実施形態に係る電力系統における正常時の相対位相角の一例を示す図である。図20に示した相対位相角は、図7に示した電力系統の周波数及び上述した式(26)を使用して算出されたものである。図21に示した慣性が推定された場合においては、電力系統の相対位相角が図20に示すように振る舞うことが仮定されている。また、図21に示した慣性が推定された場合においては、第一の実施形態と同様に、電力系統における消費電力の合計が図6に示すように振る舞い、電力系統の周波数が図7に示すように振る舞うことが仮定されている。
まず、図21を参照しながら、電力系統において事故が発生していないことを仮定した場合に推定された慣性の一例を説明する。図21は、第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した正常時の電力系統の慣性の一例を示す図である。ここで言う正常時とは、電力系統において事故が発生しておらず、通常通りに電力が供給されている場合をいう。図21に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図21に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。
図21に示すように、慣性推定装置1は、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]に近い値を推定し得ている。なお、図21に示すように、慣性推定装置1による電力系統の慣性の推定が開始してから20秒程度の間、慣性推定装置1により推定された慣性が真の値9090[MWs]と大きく異なっている。これは、上述した拡張状態ベクトルXの初期値Xold及び誤差行列Pの初期値Poldの少なくとも一方が必ずしも真の値に近い慣性を与えるものとは限らないことによる。
次に、図22から図24を参照しながら、電力系統において送電線事故が発生していることを仮定した場合に推定された慣性の一例を説明する。ここで言う送電線事故は、三相短絡事故が発生し、70ミリ秒後に当該三相短絡事故が発生した箇所を電力系統から切り離した場合を意味している。
図22は、第二の実施形態に係る電力系統で送電線事故が発生した後における電力系統の相対位相角の平均の一例を示す図である。図22に示すように、電力系統で三相短絡事故が発生した場合、電力系統の相対位相角が約3[rad]まで上昇した後、5秒前後で動揺し、その後増加していく。図23及び図24に示した慣性が推定される前提として、電力系統の周波数が図9及び図10に示すように振る舞い、電力系統の周波数が図7に示すように振る舞い、電力系統に供給される電力図20に示すように振る舞うことが仮定されている。
図23は、送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。図23に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図23に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。図23に示すように、慣性推定装置1は、上述した送電線事故が発生し、送電線事故が継続している期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して電力系統の慣性を推定した場合、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]に近い値を推定し得ている。
図24は、送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して第二の実施形態に係る慣性推定装置が推定した送電線事故時の電力系統の慣性の一例を示す図である。図24に示した破線は、当該シミュレーションにおける電力系統の慣性の真の値9090[MWs]を示している。図24に示した実線は、慣性推定装置1により推定された慣性を示している。図24に示すように、慣性推定装置1は、上述した送電線事故が発生し、送電線事故が除去された後の期間に計測された第一の計測値及び第二の計測値を使用して電力系統の慣性を推定した場合、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]の二倍に近い値を推定している。ただし、慣性推定装置1は、共分散行列Q、共分散行列R、拡張状態ベクトルXの初期値Xold等として好適な行列や値を使用することにより、電力系統の慣性の真の値9090[MWs]により近い値を推定することができる。
なお、第一の実施形態及び第二の実施形態では、慣性推定装置1が電力系統の慣性の推定に拡張カルマンフィルタを使用する場合を例に挙げたが、これに限定されない。第二の実施形態に係る慣性推定装置1は、例えば、最尤法、H無限大制御理論を使用して電力系統の慣性を推定してもよい。
以上、本発明の第一の実施形態及び第二の実施形態について図面を参照しながら説明した。ただし、慣性推定装置1は、第一の実施形態及び第二の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ又は設計変更を加えることができる。
1…慣性推定装置、11…取得部、12…推定部

Claims (6)

  1. 電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得部と、
    前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定部と、
    を備える慣性推定装置。
  2. 前記取得部は、前記第二の計測値として前記電力系統の周波数の計測値を取得する、
    請求項1に記載の慣性推定装置。
  3. 前記取得部は、前記第二の計測値として前記電力系統の位相角の計測値を更に取得する、
    請求項2に記載の慣性推定装置。
  4. 前記推定部は、前記第一の計測値及び前記第二の計測値に拡張カルマンフィルタを適用して前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する、
    請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の慣性推定装置。
  5. コンピュータに、
    電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得機能と、
    前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定機能と、
    を実現させる慣性推定プログラム。
  6. 電力系統に連系している発電機の出力の計測値である第一の計測値を取得し、前記電力系統の周波数に関連する値の計測値である第二の計測値を取得する取得工程と、
    前記第一の計測値及び前記第二の計測値に基づいて、前記電力系統に連系している同期発電機への機械的入力及び前記電力系統の慣性を推定する推定工程と、
    を含む慣性推定方法。
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