本開示の実施形態の蓋体および光学装置について、添付の図面を参照して説明する。なお、以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際に蓋体および光学装置が使用されるときの上下を限定するものではない。
図1は蓋体の一例を示す斜視図であり、図1(a)は蓋体の第2面(上面)側からの斜視図であり、図1(b)は蓋体の第1面(下面)側からの斜視図である。図2は図1(a)に示す蓋体を分解して示す分解斜視図である。図3(a)は図1(a)のA−A線における断面図であり、図3(b)は図3(a)の第1面(下面)側からの平面図(下面図)である。図4は蓋体の他の一例を示す斜視図であり、図4(a)は蓋体の第2面(上面)側からの斜視図であり、図4(b)は蓋体の第1面(下面)側からの斜視図である。図5は図4(a)に示す蓋体を分解して示す分解斜視図である。図6(a)は図4(a)のA−A線における断面図であり、図6(b)は図6(a)の第1面(下面)側からの平面図(下面図)である。図7は図6(a)におけるA部の一例を拡大して示す断面図である。図8〜図11は、いずれも蓋体の他の一例の要部を拡大して示す断面図である。図12は光学装置の一例を示す断面図である。図13および図14は光学装置の他の一例を示す断面図である。図12および図13は図1〜図3に示す例の蓋体を用いた光学装置の一例を示し、図14は図4〜図6に示す例の蓋体を用いた光学装置の一例を示している。なお、図1〜図6の斜視図および平面図においては、他と区別しやすいように接合材にドット状の網掛けを施している。
本開示の1つの態様の蓋体100は、第1面1a、該第1面1aとは反対側の第2面1b、前記第1面1aから前記第2面1bに向って窪んだ凹部11、および該凹部11の底面11aから前記第2面1bにかけて貫通する貫通孔12を有している基板1と、前記凹部11の底面11a上に位置して前記貫通孔12を塞ぐ板状の透光性部材2と、該透光性部材2と前記基板1とを接合する接合材3と、を備え、前記透光性部材2は、前記透光性部材2の側面21のみで前記接合材3により前記凹部11の内面に接合されている。
このような蓋体100によれば、接合材3によって透光性が低下することがなく、所定の光学特性を得ることができる。透光性部材2は板状であり、その厚み方向に光を透過させるものである。板状の透光性部材2の2つの主面(板面)が透光面22となる。接合材3は透光性部材2の側面21と接合されており、透光面22とは接合されていない。透光性部材2は凹部11の底面11a上にあり底面11aに接している。透光性部材2の透光面22と基板1の凹部11の底面11aとの間に接合材3がないため、接合材3の厚みば
らつきによって透光性部材2が傾いて接合される可能性が低減されている。また、透光面22に接合材3が付着していないため、光学特性(透光性)が低下する可能性が低減されている。また、透光性部材2の透光面22に光学膜が設けられる場合には、光学膜による所定の光学特性を得ることができる。また、透光面22上の光学膜に対して接合材3を介して応力が直接加わって光学膜が剥がれてしまい、所定の光学特性が得られなくなる可能性が低減されている。
図1〜図3に示す例の蓋体100の基板1は平板状である。これに対して、図4〜図6に示す例のように、基板1が、凹部11を取り囲んで第1面1aから突出している枠部13を有している蓋体100とすることができる。このような構成の蓋体100によれば、透光性部材2が基板1から突出しないため、透光性部材2が他の物品と接触して破損する可能性が低減される。そのため、気密封止性に優れた蓋体100となる。
枠部13は基板1の第1面1aの外縁部に位置して、凹部11を取り囲んでいる。そのため、基板1は、第1面1aを底面とする、凹部11より大きい凹部を有する形状となる。この大きい凹部は、蓋体100(枠部13の端面)を配線基板200に接合した際に、光学素子300を収容する空間を形成することができる。そのため、配線基板200として、キャビティ203を有さない平板状のものを用いることができる。
図7に示す例のように、接合材3の露出する表面31が凹曲面である蓋体100とすることができる。このような構成の場合には、接合材3に加わる応力が凹曲面である表面31で分散されて緩和されるので、接合材3が破損し難くなる。そのため、基板1への透光性部材2の接合信頼性に優れ、気密封止性に優れた光学装置600を得ることができる蓋体100となる。
図7に示す例の蓋体100における凹部11の内側面11bは平坦である。これに対して、図8に示す例のように、凹部11の内側面11bが凸部11cを有している蓋体100とすることができる。これにより、接合材3と内側面11bとの接合面積が増えて接合強度が高くなる。そのため、基板1への透光性部材2の接合信頼性に優れ、気密封止性に優れた光学装置600を得ることができる蓋体100となる。凸部11cは、内側面11bの深さ方向および平面方向の少なくとも1方向において複数個配置することができる。このときの内側面11bは、例えば図3に示す例のような平面視が正方形である凹部11においては、正方形の4つの辺部に位置する1つの内側面11bのそれぞれのことである。図8に示す例では、内側面11bは、深さ方向に複数個(多数の)の凸部11cを有している。そのため、接合材3が深さ方向に動き難くなり、接合材3とともに透光性部材2が基板1からより外れ難いものとなる。
接合材3は凹部11の底面11aにも接合しているので、底面11aもまた凸部11cを有するものであってもよいが、その場合は底面11aにおける透光性部材2より外側(内側面11b側)の部分、透光性部材2の透光面22と重ならない(接しない)部分とすることができる。底面11aの透光性部材2と重なる部分に凸部11cがあると、透光面22と底面11aとの間に接合材3が入り込みやすくなり、接合材3の入り込む量のばらつきによって透光面22が底面11aに対して傾いて接合される可能性があるためである。
図7および図8に示す例の蓋体100における接合材3の、透光性部材2の側面21における凹部11の底面11aからの高さ(図7〜図11に示すH)と、透光性部材2の厚み(図7〜図11に示すT)とは同じである。また、接合材3の高さHは凹部11の深さ(図7〜図11に示すD)とも同じであり、透光性部材2の厚みTと凹部11の深さDとは同じである。これに対して、図9に示す例のように、接合材3の、透光性部材2の側面
21における凹部11の底面11aからの高さが透光性部材2の厚みTより小さい蓋体100とすることができる。透光性部材2の厚みTよりも小さくなるように接合材3の量を調整することで、蓋体100の作製時に溶融した接合材3が透光性部材2の透光面22上へ広がり難くなるため、透光面22に接合材3が付着していない蓋体100となり、光学特性(透光性)が低下する可能性が低減されたものとなる。
図9に示す例の蓋体100における接合材3は、底面11aからの高さHが凹部11の深さDよりも小さいものである。これに対して、図10に示す例のように、透光性部材2の厚みTが凹部11の深さDより大きい蓋体100とすることができる。この場合も接合材3の、透光性部材2の側面21における凹部11の底面11aからの高さは透光性部材2の厚みTより小さい。そして、接合材3の高さを凹部11の深さDと同じにしても、透光性部材2の側面21における接合材3の高さHは透光性部材2の厚みTよりも小さくなるので、透光面22へ広がり難くなる。一方、接合材3の高さHは、凹部11の深さDと同じにすることができるので、図9に示す例と比較すると凹部11の内側面11bとの接合面積が大きくなる。よって、光学特性に優れるとともに、基板1への透光性部材2の接合信頼性に優れ、気密封止性に優れた光学装置600を得ることができる蓋体100となる。なお、透光性部材2の厚みTが凹部11の深さDより大きいと、透光性部材2が第1面1aから突出することになる。基板1が枠部13を有している場合には、透光性部材2よりも枠部13の方が第1面1aからの突出が大きいので、透光性部材2が他の物品と接触して破損する可能性が低減され、より気密封止性に優れた蓋体100となる。
図6〜図10に示す例の蓋体100における透光性部材2は、2つの透光面22,22(主面)が平行な平板であり、厚みが均一である。そのため、透光面22と側面21との間はほぼ直角である。これに対して、図11に示す例のように、透光性部材2の側面21が、透光面22と交差する傾斜面21aを有している蓋体100とすることができる。傾斜面21aは、透光面22の内側(中央側)へ傾斜している面であり、図11に示す例では平坦面であるが、全体として内側へ傾斜した面であればよく、湾曲した面、例えば凸曲面とすることもできる。図11に示す例における透光性部材2の側面21は、透光性部材2の一方の透光面22と交差する傾斜面21aと他方の透光面22と交差する傾斜面21aの二つを有している。透光性部材2は、この二つのうちいずれか一つの傾斜面21aを有するものとすることもできる。このような傾斜面21aを有していると、傾斜面21aと凹部11の底面11aとの間、傾斜面21aの第1面1a側に空間が形成される。蓋体100の作製時に接合材3の高さを凹部11の深さDと同じにしても、溶融した接合材3は、傾斜面21aで形成された空間に収まって透光面22へ広がり難くなる。透光性部材2の透光面22上へ広がり難くなるため、透光面22に接合材3が付着していない蓋体100となり、光学特性(透光性)が低下する可能性が低減されたものとなる。また、透光性部材2の側面21における接合材3の高さHが同じであっても、図7あるいは図9に示す例のような透光性部材2の側面21が傾斜面21aを有さない(側面21が透光面22に対して垂直である)場合に比較して、接合材3と側面21との接合面積が大きくなるため、基板1への透光性部材2の接合信頼性に優れ、気密封止性に優れた光学装置600を得ることができる蓋体100となる。なお、図11に示した例においては、接合材3は傾斜面21aによる空間内においては凹部11の底面11aのみと接合されているが、傾斜面21aにも接合されていてもよい。
図7〜図11は基板1が図4〜図6に示す例のような枠部13を有している場合の要部拡大図であるが、これら図7〜図11を用いて説明した構成は、基板1が図1〜3に示す例のような平板状である場合にも適用することができる。
このような蓋体100は、図12〜図14に示す例のように、配線基板200上に搭載された光学素子300を覆うように配線基板200に接合され、光学素子300を気密封
止することができる。すなわち、上記構成の蓋体100と、配線基板200と、配線基板200に搭載された光学素子300とを備える光学装置600とすることができる。上記構成の蓋体100を備えていることから、光学特性に優れた光学装置600となる。
図12に示す例の光学装置600および図13に示す例の光学装置600は、いずれも図1〜図3に示す、平板状の基板1を有する蓋体100を用いたものである。図12に示す例の光学装置600では、蓋体100の基板1における第1面1aが接合部材110によって配線基板200に接合されている。これに対して、図13に示す例の光学装置600では、蓋体100の基板1における第2面1bが接合部材110によって配線基板200に接合されている。また、図14に示す例の光学装置600は、図4〜図6に示す、枠部13を有する蓋体100を用いたものである。図14に示す例の光学装置600では、蓋体100の基板1における枠部13の端面が接合部材110によって配線基板200に接合されている。
図12および図13に示す例においては、配線基板200は、光学素子300を収容して搭載することができるキャビティ203(凹部)を有している。キャビティ203の底面に光学素子300が搭載され、平板状の蓋体100でキャビティ203の開口を蓋体100で塞いで光学素子300を気密封止している。平板状の蓋体100を用いる場合でも、キャビティ203を有さない平板状の配線基板200を用いることができる。この場合には光学素子300の搭載領域を取り囲む枠体を備えている配線基板200を用いればよい。キャビティ203を有する配線基板200は、枠体と平板状の配線基板が一体化されたものということもできる。図14に示す例においては、配線基板200は平板状であるが、キャビティ203を有する配線基板200を用いることもできる。
図12〜図14に示す例の光学装置600においては、配線基板200に光学素子300が搭載され、ボンディングワイヤ310により光学素子300の電極(不図示)と配線基板200の配線導体202とが電気的に接続されている。配線導体202のうち配線基板200の蓋体100に覆われない外表面(図12〜図14においては、蓋体100が接合されている上面とは反対側の下面)に設けられた外部電極が外部電気回路と電気的に接続されると、搭載された光学素子300が外部電気回路と電気的に接続される。すなわち、光学素子300と外部電気回路とが、ボンディングワイヤ310および配線導体202を介して互いに電気的に接続される。
蓋体100は、基板1、透光性部材2および基板1と透光性部材2とを接合する接合材3を備えている。
基板1は、第1面1aおよび第1面1aとは反対側の第2面1bとを有し、第1面1aの中央部に凹部11を有している。凹部11は第1面1aから第2面1bに向って窪んでいる。そして、この凹部11の底面11aから第2面1bにかけて貫通する貫通孔12を有している。言い換えれば、第1面1aから第2面1bにかけて貫通し、第1面1aにおける開口が第2面1bにおける開口よりも大きく、第1面1aと第2面1bとの間に段差部を有している貫通孔12を有している。
上述したように、図1〜図3に示す例の蓋体100の基板1は平板状であるのに対して、図4〜図6に示す例の基板1は、凹部11を取り囲んで第1面1aから突出している枠部13を有している。枠部13は基板1の第1面1aの外縁部に沿った枠形状であり、凹部11を取り囲んでいる。基板1は、第1面1aを底面とする、凹部11より大きい凹部を有する形状であるということもできる。
基板1は、光学素子300が発光または受光する光、例えば光学素子300がデジタル
カメラ用のイメージセンサである場合には可視光を透過しない材料からなるものとすることができる。光学素子300から出射された光は基板1の貫通孔12を通って外部へ放射され、外部からの光は貫通孔12を通って光学素子300へ入射する。基板1が光を透過しない材料からなるものであると、基板1によって光学素子300に出入りする光を、貫通孔12の大きさや形状によって制限することが可能な、遮光部材として機能させることができる。
このような基板1の材質としては、上述したように光学素子300が発光または受光する光を遮光することができるものであればよく、例えば、金属、セラミックス、樹脂等を用いることができ、これらの複合材料、複数種の樹脂等からなるものであってもよい。
また、光学素子300が受光素子である場合に、受光素子の表面において反射した光が、蓋体100の表面で反射して再度受光素子に入射しないようにするとよい。基板1における光学素子300に対向する面(対向面)に光の反射を抑える処理を施すとよい。光学素子300に対向する対向面は、図12に示す例では第1面1aであり、図13に示す例では第2面1bであり、図14に示す例では、第1面1aである。図14に示す例では、枠部13の内側面にも同様の処理を施すとよい。反射を抑える処理としては、例えば、表面の色を黒色や褐色等の暗色にする、反射防止膜を設ける、面を荒らす、あるいはこれらを組みあわせるというような方法が挙げられる。
基板1の少なくとも対向面は絶縁性とすることができる。基板1を絶縁性のセラミックスや樹脂で形成してもよいし、金属板の下面に例えば絶縁性樹脂の膜を設けてもよい。このような構成にすると、ボンディングワイヤ310に蓋体100が接触しても、複数のボンディングワイヤ310間で短絡してしまうことがない。そのため、光学装置600を低背化するのに効果的である。
基板1は、耐湿性、耐熱性、剛性が高く、これらによって高い気密封止性を有する蓋体100とすることが容易なセラミックスからなるものとすることができる。
基板1の外形の形状および寸法は、配線基板200に接合部材110を介して接合することで光学素子300を封止することができるような寸法および形状であればよく、配線基板200および光学素子300の形状および寸法と対応する形状および寸法に設定することができる。
貫通孔12の形状および寸法は、光学素子300の寸法および光学装置600に求められる光学特性により設定することができる。図1〜図6に示す例の蓋体100における基板1は1つの貫通孔12を有しているが、貫通孔12の数は少なくとも1つあればよく、複数の光学素子300が搭載される場合には、これに対応するように複数の貫通孔12を有するものすることができる。光学素子300が複数である場合でも、大きい貫通孔12を1つ設けることができるが、複数の光学素子300のそれぞれに対応する位置に複数の貫通孔12を設けると、基板1の剛性、上述した遮光性等の観点で有利である。
凹部11の形状および寸法もまた、光学素子300の寸法および光学装置600に求められる光学特性により設定することができる。貫通孔12が複数ある場合は、それに応じて複数個の凹部11を設けることができるが、1つの凹部11の底面11aに複数の貫通孔12を設けることもできる。いずれの場合であっても、凹部11の平面視の大きさは貫通孔12の平面視の大きさよりも大きいものであり、貫通孔12の周囲に凹部11の底面11aが存在するものである。複数個の凹部11を設けて、それぞれの凹部11の底面11aから第2面1bにかけて貫通する貫通孔12を設け、複数の貫通孔12を塞ぐ複数の透光性部材2の側面21と各凹部11の内側面11bとを接合材3で接合することができ
る。このようにすることで透光性部材2の大きさが小さくなり、透光性部材2と基板1との間の熱応力等が小さくなるため、気密封止の信頼性がより高いものとなる。
蓋体100の基板1の寸法は、配線基板200および光学素子300の寸法に応じて設定されるものである。図1〜図6に示す例のような、1つの光学素子300を封止する蓋体100であり、1つの凹部11および貫通孔12を有する場合には、蓋体100の基板1の寸法は、例えば以下のように設定することができる。基板1は、一辺の長さが5mm〜20mmの矩形状で、厚みが0.5mm〜1.5mmの板状とすることができる。この場合の凹部11は一辺の長さが3mm〜15mmの矩形状で深さが0.2mm〜1mmとし、貫通孔12は一辺の長さが1mm〜10mmの矩形状とすることができる。矩形状とは、厳密な矩形ではなく、図1〜図3に示す例の基板1の外形および貫通孔12の形状のような、矩形の角部が丸められた形状等も含むものである。また、矩形状に限られるものではなく、円形や楕円形とすることもできる。凹部11および貫通孔12が、角が丸められた矩形状あるいは円形状であると、応力が集中しやすい角がないので角を起点とするクラックが発生する可能性が低減され、気密封止の信頼性が高いものとなる。
基板1は、例えば以下のようにして作製することができる。基板1が金属からなる場合であれば、金属板を切削加工あるいは金型によるプレス加工することで作製することができる。基板1がセラミックスからなる場合であれば、セラミック粉末を金型プレス等で成型加工して焼成することで作製することができる。あるいはセラミックグリーンシートを積層して形成した積層体を焼成することで作製することができる。セラミックスからなる板を切削加工で所定形状にすることで基板1を作製することもできる。基板1が樹脂からなる場合であれば、例えば射出成型等の金型成形によって作製することができる。いずれの場合であっても、凹部11、凹部11の内側面11bの凸部11c、貫通孔12および枠部13も同時に形成することができる。金型で成型する場合は金型により形成することができる。グリーンシートを用いる場合は、積層する前に、凹部11や貫通孔12となる孔を金型等でグリーンシートに形成しておけばよい。凹部11となる孔を形成する際に、金型のギャップを調整することで、孔の内面すなわち凹部11の内側面11bを荒れた面にすることができ、これにより凹部11の内側面11bが図8に示す例のような細かい凸部11cを有するものとなる。切削加工によって基板1を作製する場合には、加工粗さが粗くなるようにして凹部11の内側面11bを形成すればよい。凸部11cの高さは、例えば、接合材3の幅より小さく、0.05mm〜0.3mmとすることができる。あるいは、表面粗さRzを、例えば30μm〜100μmとすることができる。
透光性部材2は、例えばガラス、サファイアまたは樹脂等の光学素子300が受光または発光する光を透過する材料からなるものである。透光性部材2がガラスやサファイア等の無機材料であると、耐熱性、耐湿性、硬度に優れており、また上述したセラミックスからなる基板1との熱膨張係数の差が小さいため、気密封止の信頼性がより高いものとなる。
透光性部材2の平面視の寸法は、貫通孔12より大きく凹部11より小さい寸法である。透光性部材2の厚みTは、図1〜図3に示す例のように凹部11の深さDより小さい厚みであってもよいし、図4〜図9および図11に示す例のように凹部11の深さDと同じであってもよいし、図10に示す例のように凹部11の深さDより大きい厚みであってもよい。透光性部材2の厚みTが凹部11の深さDより大きいと、透光性部材2が第1面1aから突出することになる。図1〜図3に示す例のように基板1が枠部13を有さない場合は、透光性部材2が他の物品と接触して破損する可能性があるため、透光性部材2の厚みTを凹部11の深さDより小さいものとすることができる。基板1が枠部13を有している場合には、透光性部材2よりも枠部13の方が第1面1aからの突出が大きいので、透光性部材2が他の物品と接触して破損する可能性が低減される。また、透光性部材2の
厚みTを大きくして、接合材3との接合面である側面21の面積を大きくすることができ、接合信頼性を高めることができるため、より気密封止の信頼性に優れた蓋体100となる。
透光性部材2の平面視の形状は、基板1の凹部11の平面視の形状と相似形であると、透光性部材2の側面21と凹部11の内側面11bとの間の距離、すなわち接合材3の平面方向の幅を透光性部材2の周りにおいて同程度にすることができる。これにより、これらの間の接合強度に偏りがなくなるので接合信頼性が高まる。図1〜図3に示す例においては、凹部11および透光性部材2の平面視の形状はいずれも正方形でこれらは相似であるある。これに対して、厳密な相似形でなくてもよく、例えば図4〜6に示す例においては、凹部11の平面視の形状は角を丸めた正方形であるのに対して、透光性部材2の平面視の形状は、正方形の4つの角部が隅切り角である。このように透光性部材2が方形などの角部を有する形状である場合には、角部を落とした形状とすることができる。これにより、透光性部材2の角部を起点として接合材3にクラックが入る可能性が低減される。また、応力が集中しやすい角部における接合材3の幅が大きくなるので、接合信頼性が高くなる。
透光性部材2は、上記材料の大型の板材から所定寸法、所定形状に切り出すことによって作製することができる。図11に示す例のように、透光性部材2の側面21が、透光面22と交差する傾斜面21aを有している場合には、切り出した板材の主面と側面の間の角を研磨加工等によって研磨することで、側面21が傾斜面21aを有する透光性部材2とすることができる。
透光性部材2は、透光面22に光学膜を有するものとすることができる。光学膜としては、蓋体100が適用される光学装置600の光学素子300に必要とされる光学特性に応じて選択され、例えば、反射防止膜、赤外線カットフィルタ、遮光膜などが挙げられる。反射防止膜、赤外線カットフィルタは、例えば多層の誘電体薄膜で透光面22を被覆することで、遮光膜は透光用の孔を有する樹脂膜で透光面22を被覆することで形成することができる。光学膜は、2つの透光面22・22のうちの一方だけに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
接合材3は、上述した透光性部材2と基板1とを接合して気密封止することができるものであればよく、樹脂またはガラスを用いることができる。耐熱性、耐湿性および接合強度の観点からはガラスを用いることができる。はんだやろう材のような金属製の接合材3を用いることもできるが、金属製の接合材3はガラスからなる透光性部材2およびセラミックスからなる基板1を直接接合することができない。そのため、透光性部材2の側面および基板1の凹部11の内側面11bおよび底面11aの透光性部材2の側面より外側に位置する部分に接合用の金属膜を形成する必要がある。このような金属膜は、金属粉末を焼結させたいわゆるメタライズ金属、金属薄膜で形成することができる。このような金属膜の形成が不要で、耐熱性、耐湿性、接合強度および上述したガラス等からなる透光性部材2およびセラミックスからなる基板1と熱膨張係数の近いガラスを用いることで、低コストで気密封止の信頼性に優れた蓋体100とすることができる。
透光性部材2と基板1とは、例えば以下のようにして接合材3で接合することができる。接合材3がガラスである場合には、所定形状のガラス(接合材3)を透光性部材2の側面21と基板1の凹部11の内側面11bとの間に配置して加熱処理して、溶融したガラス(接合材3)で接合することができる。図7〜図10に示す例のように、接合材3の露出する表面を凹曲面とするには、例えば、ガラス粉末または有機バインダーと混合されたガラス粉末をプレス成型で枠状にしたプリフォーム、あるいはガラス粉末と有機溶剤および有機バインダーを含むガラスペーストを用いて作製することができる。このとき、プリ
フォームの厚み、ガラスペーストの量は凹部11の深さDまたは透光性部材2の厚みTと同じであると、溶融したガラス(接合材3)は、凹部11の内側面11bおよび透光性部材2の側面21の全面に接合される。そのため、凹部11の内側面11bにおける接合材3の高さは、内側面11bの高さ(=凹部11の深さD)と同程度になり、透光性部材2の側面21における接合材3の高さは、透光性部材2の厚みTと同程度となる。そして、凹部11の内側面11bと透光性部材2の側面21と間における接合材3の高さは、内側面11bの高さ(=凹部11の深さD)および透光性部材2の厚みTより小さくなる。プリフォームあるいはガラスペースト中に含まれ、加熱処理で消失する有機バインダーあるいは空隙の分だけ高さが小さくなり、溶融したガラスの表面張力によって表面は凹曲面となる。接合材3が樹脂である場合にも、樹脂製プリフォームや樹脂ペーストを用いると、加熱処理の際の軟化、硬化収縮等によって同様の凹曲面を形成することができる。接合材3がろう材等の金属材料である場合にも、ろう材プリフォームやろう材ペーストを用いると加熱処理の際の溶融等によって同様の凹曲面を形成することができる。
光学装置600は、このような構成の蓋体100と、配線基板200と、配線基板200に搭載された光学素子300とを備える。上述したように、配線基板200に光学素子300が搭載され、光学素子300の電極(不図示)と配線基板200の配線導体202とが電気的に接続されている。この光学素子300を保護するため、また光学膜により所定の光学特性を付与するために、蓋体100(の透光性部材2)が光学素子300を覆うようにして配線基板200に接合されている。
配線基板200は、絶縁基板201と配線導体202とを含んでおり、光学素子300を支持し、光学素子300と外部回路とを電気的に接続するためのものである。
絶縁基板201は、例えば、図12〜図14に示す例のように、複数の絶縁層201aが積層されて一体化されたものである。絶縁基板201は、図12および図13に示す例のような上面に開口するキャビティ203を有するものとすることができる。このキャビティ203の開口を塞ぐように蓋体100を固定することで、キャビティ203内に搭載した光学素子300の封止が容易にできる。図12に示す例のキャビティ203は、開口と底面の大きさが同じである。これに対して図13に示す例のキャビティ203は、開口の大きさが底面の大きさより大きく、開口と底面との間に段部を有するキャビティ203とすることができる。この段部に光学素子300の電極と接続する配線導体202を設けることで、ボンディングワイヤ310による接続性が向上する。図12および図13に示す例では、図1〜図3に示す例の平板状の基板1を備える蓋体100を用いた例であるが、キャビティ203を有する配線基板200に対して、図4〜図6に示す例のような枠部13を有する基板1を備える蓋体100を用いることもできる。
また、絶縁基板201は、図14に示す例のような、キャビティ203を有さない平板状のものとすることができる。この場合は、蓋体100の枠部13によって光学素子300を収容する空間が形成される。平板状の配線基板200の上と平板状の蓋体100との間に枠体を設けることでもこのような空間を形成することができる。枠部13を有する蓋体100を用いると、接合箇所が少ないので、接合時の加熱の光学素子300への影響、気密封止の信頼性、コストの点で有利である。
絶縁基板201の寸法は、搭載される光学素子300の寸法に応じて設定されるものである。例えば、矩形の一辺の長さが5mm〜25mmで、厚みが0.8mm〜3mmとすることができる。キャビティ203の寸法は、キャビティ203に収容されて底面に搭載される光学素子300の大きさによるが、例えば矩形の一辺の長さが3mm〜12mmで、深さが0.5mm〜2mmとすることができる。キャビティ203が段部を有する場合は、段部の幅(キャビティ203の内側面からの長さ)が、例えば0.5mm〜1.5m
mで、キャビティ203の底面からの高さが0.2mm〜1.2mmである。
絶縁基板201は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体、ムライト質焼結体または窒化アルミニウム質焼結体等のセラミック焼結体からなる複数の絶縁層201aが積層されて形成されている。図12〜図14に示す例では絶縁層201aは4層であるが、絶縁層201aの層数はこれらに限られるものではない。
絶縁基板201は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作することができる。すなわち、まず、絶縁層201aとなるセラミックグリーンシートを作製する。酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末を適当な有機バインダーおよび有機溶剤とともにシート状に成形して四角シート状の複数のセラミックグリーンシートを作製する。次にこれらのセラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する。キャビティ203は、セラミックグリーンシートに金型等を用いて貫通孔を設けておけばよい。その後、この積層体を1300〜1600℃の温度で焼成することによって絶縁基板201を製作することができる。
絶縁基板201を含む配線基板200は、このような配線基板200となる複数の基板領域が母基板に配列された多数個取り基板として製作することもできる。複数の基板領域を含む母基板を、基板領域毎に分割して複数の配線基板200をより効率よく製作することもできる。この場合には、母基板のうち基板領域の境界に沿って分割用の溝が設けられていてもよい。また、多数個取り基板の各基板領域に光学素子300を搭載した後に、これを分割して複数の光学装置600を得るようにしてもよい。
絶縁基板201の表面および内部には配線導体202が設けられている。例えば、図12〜図14に示す例においては、絶縁基板201の上面またはキャビティ203内には光学素子300と接続するための接続パッドが設けられている。また、絶縁基板201の下面には、外部電気回路と接続するための外部電極が設けられている。これら接続パッドと外部電極とは、絶縁基板201の内部に設けられた貫通導体および内部配線層を含む内部配線によって電気的に接続されている。貫通導体は絶縁層201aを貫通し、内部配線層は絶縁層201a間に配置されている。外部電極は絶縁基板201の下面ではなく、下面から側面にかけて、あるいは側面に設けられていてもよい。
配線導体202は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)等の金属、またはこれらの金属を含む合金の金属材料を導体材料として主に含むものである。このような金属材料は、メタライズ層またはめっき層等の金属層として絶縁基板の表面に設けられている。この金属層は、1層でもよく、複数層でもよい。また、メタライズで絶縁基板の内部に設けられている。
配線導体202の接続パッド、内部配線層および外部電極は、例えば、タングステンのメタライズ層である場合には、タングステンの粉末を有機溶剤および有機バインダーと混合して作製した金属ペーストを絶縁基板となるセラミックグリーンシートの所定位置にスクリーン印刷法等の方法で印刷して焼成する方法で形成することができる。また、このうち、接続パッドおよび外部電極となるメタライズ層の露出表面には、電解めっき法または無電解めっき法等のめっき法でニッケルおよび金等のめっき層がさらに被着されていてもよい。この場合、前述したように多数個取り基板の形態で配線基板200または光学装置600を製作する際に、複数の基板領域の配線導体を互いに電気的に接続させておけば、複数の配線基板200の配線導体202に一括してめっき層を被着させることもできる。また、内部配線の貫通導体は、上記の金属ペーストの印刷に先駆けてセラミックグリーンシートの所定の位置に貫通孔を設け、上記と同様の金属ペーストをこの貫通孔に充填して
おくことで形成することができる。
なお、配線基板200の絶縁基板201は、絶縁層201aを樹脂で形成することもできる。この場合でも上記と同様の効果を奏する光学装置600を得ることができる。従来周知の樹脂製配線基板の製造方法を用いて作製することができる。セラミック焼結体からなる絶縁層201aで構成された絶縁基板201は、耐熱性、耐湿性、剛性が高いので気密封止性、光学素子300の搭載精度に優れている。
光学素子300は、光信号を電気信号に変換する素子である、例えばフォトダイオード、ラインセンサ、イメージセンサ等の受光素子、および発光ダイオード(Light Emitting
Diode:LED)、レーザーダイオード等の発光素子が挙げられる。
光学素子300は、例えば、図12および図13に示す例のように配線基板200のキャビティ203の底面に載置され、接合材(不図示)によって接合されて固定される。光学素子300の上面の外周部の電極(不図示)と、配線基板200に設けられた配線導体202(接続パッド)とは、Auまたはアルミニウム(Al)等からなるボンディングワイヤ310により電気的に接続される。光学素子300で変換された電気信号は、ボンディングワイヤ310および配線導体202を介して配線基板200の下面等の外表面に電気的に導出される。
光学素子300を配線基板200に接合固定するための接合材は、はんだを含むろう材、ガラスまたはエポキシ樹脂等の樹脂接着剤を用いることができる。接合材が樹脂接着剤の場合には、シリコーンゴムやウレタンゴム等のより柔軟なものを用いることで接合材によって熱応力等を吸収することもできる。接合材がはんだを含むろう材である場合は、配線基板200のキャビティ203の底面にめっき膜やメタライズ層等の金属膜で形成される接合金属層を設ける。
光学素子300と配線導体202との電気的な接続はワイヤボンディングに限られず、いわゆるフリップチップ接続であってもよい。この場合の光学素子300は、はんだや導電性接着剤等の導電性接続材および樹脂を主成分とするアンダーフィル材等で配線基板200に固定される。
光学素子300は、蓋体100で封止されるとともに保護されている。蓋体100は接合部材110を介して配線基板200に接合されている。
蓋体100を配線基板200に接合する接合部材110は、樹脂接着剤、ガラス、はんだを含むろう材を用いることができる。接合部材110がろう材である場合には、配線基板200の上面外縁部にめっき膜やメタライズ層等の金属膜で形成される接合金属層を設ける。また蓋体100(の基板1)が樹脂やセラミックスのような、ろう材の濡れ性(接合性)が低い材料からなる場合であれば、上述したように蓋体100にも接合金属層を設ける。接合部材110が樹脂またはガラスからなる場合はこのような接合金属層を設ける必要はない。樹脂に比較して、ガラスおよびろう材は耐湿性、耐熱性、強度に優れており気密封止性および気密封止の信頼性の点では有利である。
接合部材110による蓋体100と配線基板200との接合は、例えば以下のようにして行なうことができる。接合部材110となる液状の樹脂接着剤またはガラスペーストあるいはろう材ペースト等の前駆体を配線基板200の上面に、クリーン印刷あるいはディスペンサにより塗布する。その上に蓋体100を載置し、加熱または紫外線照射による硬化、あるいは加熱による溶融後の冷却によって、前駆体を硬化することによって、接合部材110を介して蓋体100と配線基板200とが接合され、光学装置600となる。液
状の樹脂接着剤またはガラスペーストあるいはろう材ペーストの代わりに、半硬化の樹脂シートあるいは板(箔)状のろう材プリフォーム、ガラスプリフォームを用いることもできる。