JP2021031728A - 貴金属の回収方法 - Google Patents

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Koichiro Takao
康一朗 鷹尾
池田 泰久
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泰久 池田
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Abstract

【課題】本発明の貴金属の回収方法は、簡便な還元処理によって、貴金属イオン含有水溶液から直接に貴金属を回収することができ、生産性とコスト面から優れている。また、貴金属イオンから直接に貴金属を回収するから、廃棄物発生量が少なく、環境に優しい。【解決手段】本発明の貴金属回収方法はカルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理する還元工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、貴金属の回収方法に関する。
自動車、携帯電話器、自動販売機、パチンコ台、パソコンやテレビあるいはテレビゲーム機その他、およそ自動機能を有する機器類の殆どすべてに電子機器を有しており、その電子機器には、金、プラチナ(白金)、パラジウムなどの貴金属等を含有している。また、自動車排気ガス浄化用触媒には種々の貴金属(特に白金、パラジウム及びロジウム)が用いられている。これらは「都市鉱山」とも呼ばれる貴重な資源である。都市鉱山から貴金属をリサイクルすることにより貴金属資源の安定的かつ持続的供給が可能となる。加えて、天然鉱石の採掘・製錬は自然環境へ深刻なダメージを与えるため、地球全体における自然環境保護・保全のためにも都市鉱山からの貴金属リサイクルが大変望ましい。
一方、都市鉱山からの貴金属資源回収・リサイクルにおける最も基本的な流れは溶解、分離、回収の3工程である。実際には各工程に複雑な化学処理およびそれらに付随する各種操作が含まれる(例えば、特許文献1と2)。
また、亜硫酸ナトリウム等の無機硫黄酸化物が含まれるパラジウム含有廃液からパラジウムを回収する方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
特開2005−194546号公報 特開2010−077510号公報 特開2014−019921号公報
しかしながら、従来の回収方法では、多段かつ複雑な化学処理を必要としており、コストおよび廃棄物の点において依然として課題があった。特許文献3に開示されている方法では、酸性溶液中のパラジウムなどを還元せずに凝集沈殿させるため、モリブデン酸など除去困難な金属元素を含む特定の凝集剤を添加する工程が必須である点において課題があった。
本発明者は、貴金属の電気化学的な特性を最大限活用し、簡便な還元処理によって、貴金属イオン含有水溶液から直接に貴金属を回収する方法を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の要旨は、以下のものである。
〔1〕 カルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理する還元工程を含むことを特徴とする、貴金属の回収方法。
〔2〕 前記カルコゲン元素がSe元素及びTe元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である〔1〕に記載の貴金属の回収方法。
〔3〕 前記還元剤がヒドラジンおよびその誘導体である〔1〕又は〔2〕に記載の貴金属の回収方法。
〔4〕 前記カルコゲン元素がカルコゲン化合物である
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
〔5〕 前記貴金属含有水溶液に含まれる貴金属イオンの濃度が、貴金属換算して10ppm以上であり、
前記カルコゲン元素の濃度が、単体カルコゲン換算して、貴金属イオン1に対して0.0005以上であり、
前記還元剤の添加量が貴金属イオン1に対して1以上である〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
〔6〕 前記還元工程において得られた貴金属を凝集させ、沈殿させる凝集沈殿工程を更に含む〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
〔7〕 前記凝集沈殿工程において得られたカルコゲン含有貴金属を精製する精製工程を更に含む〔6〕に記載の貴金属の回収方法。
〔8〕 前記精製工程が、前記凝集沈殿したルコゲン含有貴金属を熱分解させる熱分解工程を含む〔7〕に記載の貴金属の回収方法。
〔9〕 カルコゲン元素と貴金属とを含むカルコゲン含有貴金属であって、
前記カルコゲン含有貴金属がコア―シェル構造を有するナノ粒子であり、
前記コア―シェル構造の中心部が単体カルコゲンを含み、
前記コア―シェル構造の外周部が貴金属を含む
ことを特徴とするカルコゲン含有貴金属。
〔10〕 カルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理して得られたものである〔9〕に記載のカルコゲン含有貴金属。
〔11〕 〔1〕〜〔6〕の何れか1項に記載の貴金属の回収方法で得られたものである〔9〕又は〔10〕に記載のカルコゲン含有貴金属。
本発明の貴金属の回収方法は、簡便な還元処理によって、貴金属イオン含有水溶液から直接に貴金属を回収することができ、生産性とコスト面から優れている。また、貴金属イオンから直接に貴金属を回収するから、廃棄物発生量が少なく、環境に優しい。
実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)、及び1000℃、2時間加熱処理後で得られた貴金属について波長分散型蛍光X線分析結果を示す図である(Pd)。 実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)、及び1000℃、2時間加熱処理後で得られた貴金属について波長分散型蛍光X線分析結果を示す図である(Se)。 実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)、及び1000℃、2時間加熱処理後で得られた貴金属について粉末X線回折の結果を示す図である。 実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)についてSTEM−EDSの分析結果を示す図である。 実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)のSEM観察結果を示す図である。 実施例26において、実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)を1000℃、2時間加熱処理後で得られた貴金属のSEM観察結果を示す図である。 実施例19で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)、及び1000℃、2時間加熱処理後で得られた貴金属について波長分散型蛍光X線分析結果を示す図である(Au、Se)。 1M塩酸水溶液系におけるカルコゲン(Se、Te)、各種貴金属(Pd、Pt、Au、Ru、Rh)およびヒドラジン(強酸性溶液中ではN として存在)の酸化還元電位を示す図である。 本実施形態の還元処理工程の一例において、還元反応メカニズムを示す予測図である(Se:単体Se;PM:貴金属)。 セレン(Se)と貴金属(PM)とを含むカルコゲン含有貴金属の熱分解装置及びSeリサイクル装置を示す原理図である(Se:単体Se;PM:貴金属)。
本発明について以下に詳細に説明する。
本発明の一実施形態(以下、本実施形態ということがある。)の貴金属回収方法は、カルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理する還元工程を含む。カルコゲン元素がSe元素及びTe元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。還元剤がヒドラジンであることが好ましい。すなわち、本実施形態の貴金属回収方法は、Se元素及びTe元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とヒドラジンとの存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理する還元工程を含むことが好ましい。
(貴金属イオン溶液)
本実施形態の貴金属回収方法において処理の対象とする貴金属イオンを含む溶液(以下、貴金属含有溶液ということがある)とは、各種工業の過程(リサイクル処理過程も含む)において得られる貴金属ないしその化合物を含む液をいう。これは、水性の液が普通であるが、有機性のものを排除しない。本実施形態の貴金属回収方法において処理の対象とする貴金属含有溶液は、pHが1以下である強酸溶液であることが好ましく、1〜6Mの強酸を含む水溶液であることがより好ましい。1〜4Mの強酸を含む水溶液であることが更に好ましい。強酸が、塩酸又は硝酸もしくはその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の強酸であることが好ましい。強酸の具体例は、1M〜3Mの塩酸、1M〜3Mの硝酸、2〜4Mの硝酸と0.1〜1Mの塩酸とを含む混合酸などを含む。なお、本実施形態の好ましい範囲以外の貴金属含有溶液は、必要に応じて、各種慣用の手段を利用して、予め強酸を添加したり、濃縮したり、或いは、希釈したりした後、本実施形態の好ましい範囲に調製して、本発明の方法に付してもよい。
本発明でいう貴金属(PM)としては、白金族金属、金が挙げられる。白金族金属としては、例えば、パラジウムPd、ルテニウムRu、ロジウムRh、オスミウムOs、イリジウムIr、および白金Ptが例示される。本実施形態の貴金属イオンは、金Auイオン、パラジウムPdイオン、ルテニウムRuイオン、ロジウムRhイオン、白金Ptイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。本実施形態の貴金属イオンは、金Auイオン、パラジウムPdイオン、白金Ptイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
本実施形態に係る貴金属含有溶液濃度は、溶液中に少なくとも貴金属イオンが含まれているのであれば、いずれの濃度であっても良い。例えば、10〜46000ppmであることが好ましく、30〜46000ppmであることがより好ましく、50〜46000ppmであることが更に好ましい。また、本実施形態に係る貴金属含有溶液濃度は、濃縮処理せず直接に回収することができる観点から10〜100ppmであることが好ましく、30〜100ppmであることがより好ましい。また、本実施形態に係る貴金属含有溶液濃度は、希釈処理せず直接に回収することができる観点から100〜46000ppmであることが好ましく、300〜46000ppmであることがより好ましい。具体例は、40〜60ppmのPdイオン溶液、400〜600ppmのPdイオン溶液、400〜600ppmのAuイオン溶液を含む。また、250ppmのPdイオンと250ppmのAuイオンと250ppmのPtイオンとを含む混合イオン溶液なども挙げられる。
なお、本発明の濃度単位「ppm」は、貴金属分で換算して、「1ppm=1x10−6g/g(貴金属質量/溶液質量)」である。
なお、このような貴金属含有溶液は、必要に応じて、各種慣用の濃縮もしくは希釈手段を利用して、予め濃縮もしくは希釈させた後、本発明の方法に付してもよい。
本発明において処理対象とされる貴金属含有溶液が使用済みの触媒液である場合、或いは、各種の電子機器の廃棄物からリサイクル前処理後の処理液である場合には、種々の夾雑物が貴金属含有溶液に混じっている場合が多い。従って、本発明の処理対象とされる貴金属含有溶液は、種々の夾雑物を含むのが普通である。
(カルコゲン元素)
本実施形態の貴金属回収方法で用いるカルコゲン元素がSe元素及びTe元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。
本実施形態に係るカルコゲン元素は、カルコゲン化合物或いはカルコゲンイオンあっても、単体(simple substance)カルコゲンであってもよい。本発明の反応溶液中に、貴金属イオンを還元する還元剤を含むことから、カルコゲン化合物或いはカルコゲンイオンである場合、反応溶液中に、単体カルコゲンに還元することができる。その観点から、本実施形態に係るカルコゲン元素は、カルコゲン化合物或いはカルコゲンイオンであることが好ましい。
カルコゲン化合物としては、例えば、カルコゲンの水素化物、カルコゲンの酸化物、カルコゲンの塩化物、カルコゲンのフッ化物、カルコゲン化物、その以外のカルコゲン間化合物、カルコゲン酸もしくはその塩、有機カルコゲン化合物などが挙げられる。カルコゲンの酸化物の具体例は、二酸化セレン(SeO)、三酸化セレン(SeO)、二酸化テルル(TeO)、三酸化テルル(TeO)等が挙げられる。カルコゲン酸もしくはその塩としては、例えば、亜セレン酸もしくはその塩、セレン酸もしくはその塩、亜テルル酸もしくはその塩、テルル酸もしくはその塩が挙げられる。
イオン状態のカルコゲン元素は、例えば、亜セレン酸イオン、セレン酸イオン、亜テルル酸イオン、テルル酸イオンなどのオキシアニオン又はセレン化物イオン(Se2−)やテルル化物イオン(Te2−)などが挙げられる。
単体カルコゲンは、例えば、セレン(Se)、テルル(Te)が挙げられる。カルコゲン元素が単体カルコゲンである場合、反応溶液中に、還元剤による還元反応がなくても、金属イオンの還元反応に寄与することができる。後述に予想した反応メカニズムから、カルコゲン元素の単体表面で触媒的に還元反応に寄与すると考えられているため、反応溶液に添加するカルコゲン元素単体は、反応溶液に分散できる粉末状又は溶液中で沈降する塊状であることが好ましい。
本実施形態の貴金属回収方法で用いるカルコゲン元素の濃度は、特に限定されない。回収対象の金属イオン溶液の濃度、回収速度、回収量などを考慮しながら、適宜で選択することができる。後述の貴金属の精製工程において、処理しやすくなる観点から、低い濃度であることが好ましい。例えば、単体カルコゲン分で計算したカルコゲン元素の濃度は、0.1ppm以上であることが好ましく、0.3ppm以上であることがより好ましく、0.4ppm以上であることが更に好ましく、4ppm以上であることがもっとも好ましい。また、カルコゲン単体分で計算したカルコゲン元素の濃度は、回収対象溶液中に含まれている貴金属イオンの合計濃度の10倍以下であることが好ましく、合計濃度1倍以下であることがより好ましく、半分以下であることが更に好ましく、特に1/10以下であることが最も好ましい。また、カルコゲン単体分で計算したカルコゲン元素の濃度は、回収対象溶液中に含まれている貴金属イオンの合計濃度1に対して、0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましい。
カルコゲン元素の濃度の具体例は、単体カルコゲン分で計算して、0.5ppm、5ppm、50ppmのSeを含む。
(還元剤)
本実施形態の貴金属回収方法で用いる還元剤としては、その還元作用によって、貴金属イオンを還元して貴金属を形成することができるものであれば、いずれの物質も使用可能である。従って、このような還元剤の例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドラジン塩(例えば硫酸ヒドラジン等)及びその誘導体、ヒドロキシルアミン及びその誘導体、ヒドロキシルアンモニウム塩及びその誘導体、普通の原子価より低い原子価を持つ元素の酸化物または酸素酸とその塩(例えばCO、SO、亜硫酸塩)、電子を与え易い金属(例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、Zn、Cu、Hg)およびそのアマルガム、低原子価金属イオン(例えばFe2+、Sn2+、Ti3+、Cr2+)を含む塩、硫黄化合物(例えば硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等)、ギ酸、シュウ酸、アルデヒド、ピロガロール、アスコルビン酸等の有機物などが例示される。
本実施形態の貴金属回収方法で用いるカルコゲン元素は単体カルコゲンではなく、還元する必要なカルコゲン化合物である場合、例えば、二酸化セレン(SeO)、三酸化セレン(SeO)、二酸化テルル(TeO)、三酸化テルル(TeO)等の酸化物;亜セレン酸イオン、セレン酸イオン、亜テルル酸イオン、テルル酸イオン、セレン化物イオン、テルル化物イオンなどのカルコゲンイオンである場合、それらのカルコゲン元素を還元することができる還元剤であることが好ましい。
本実施形態の還元剤としてより好ましいのは、ヒドラジンもしくはその水和物、ヒドラジン塩もしくはその水和物、ヒドロキシルアミン及びその誘導体、ヒドロキシルアンモニウム塩及びその誘導体、水素などである。
上記のような還元剤を使用する場合、還元剤が固体状で入手できる場合には、そのまま、または粉砕し、それをそのまま触媒液中に投入してもよい。しかしながら、本発明において好ましい還元剤は、回収対象の貴金属含有溶液に可溶性のもの、具体的には水溶性のものであることが好ましい。例えば、還元剤がヒドラジンもしくはその水和物、ヒドラジン塩もしくはその水和物である場合には、液体もしくは水溶液の状態にして回収対象溶液に添加するのが好ましい。これは、取扱い容易性並びに反応性の観点からも有利であるといえる。従って、本発明で使用される特に好ましい還元剤は、室温で液状のヒドラジン1水和物もしくはその水溶液である。
本実施形態の貴金属回収方法で用いる還元剤の添加量は、貴金属イオンを貴金属に還元するために必要な理論量の1〜5000倍当量の範囲が適当である。また、使用するカルコゲン元素が単体カルコゲンではなく、カルコゲン化合物である場合、貴金属イオンを貴金属に還元するために必要な理論量及びカルコゲン化合物をカルコゲン単体に還元するために必要な理論量の合計量の1〜5000倍当量の範囲が適当である。また、上記合計量の1〜5000倍当量の範囲であることが好ましく、上記合計量の1〜1000倍当量の範囲であることがより好ましく、上記合計量の1〜400倍当量の範囲であること更に好ましい。また、本発明の効果をより発揮する観点から、還元剤は過剰添加することが好ましい。例えば、還元剤の添加量は、使用するカルコゲン元素がカルコゲン化合物である場合、貴金属イオンを貴金属に還元するために必要な理論量及びカルコゲン化合物をカルコゲン単体に還元するために必要な理論量の合計量の10〜5000倍当量の範囲が好ましく、100〜5000倍当量の範囲がより好ましい。
本実施形態の還元剤がヒドラジン1水和物であり、回収対象貴金属イオン濃度が10〜46000ppmであり、カルコゲン元素の濃度が0.1〜1000ppmである場合、回収対象溶液100体積部に対して、2体積部以上であることが好ましく、5体積部以上であることがより好ましく、8体積部以上であることが更に好ましい。また、回収対象溶液100体積部に対して、100体積部以下であることが好ましく、50体積部以下であることがより好ましく、20体積部以下であることが更に好ましく、10体積部以下であることが最も好ましい。
本実施形態の回収対象貴金属イオン濃度が50〜500ppmであり、カルコゲン元素の濃度が0.4〜50ppmであり、本実施形態の還元剤がヒドラジン1水和物である場合、その添加量の具体例は、回収対象溶液100体積部に対して、8体積部(15mlの溶液に対して1.2mlのヒドラジン1水和物を添加する)、13体積部(1.5mlの溶液に対して200μlのヒドラジン1水和物を添加する)、20体積部(1.5mlの溶液に対して300μlのヒドラジン1水和物を添加する)を含む。
また、このような還元剤としては、還元剤等の目的で市販されている製品を、供給元から入手して、それをそのまま、または必要により水等の溶媒に溶解/希釈させて、使用してもよい。
(還元処理工程)
本実施形態の貴金属回収方法は上記還元処理工程を含むことが特徴とする。本実施形態の還元処理工程は、貴金属イオン溶液を調製する工程、カルコゲン元素と貴金属イオン溶液とを混合する工程、還元剤を添加する工程を含むことが好ましい。それらの工程の順は特に限定されないが、貴金属イオン溶液を調製する工程、カルコゲン元素と貴金属イオン溶液とを混合する工程、還元剤を添加する工程の順で含むことが好ましい。また、カルコゲン元素と貴金属イオンの混合溶液を調製する工程、還元剤を添加する工程を含むことができる。その際、それらの順に特に限定されないが、混合溶液を調製する工程、還元剤を添加する工程の順で行いことが好ましい。
また、カルコゲン元素がカルコゲン化合物である場合、本実施形態の還元処理工程は、カルコゲン元素の溶液に還元剤を添加して先に単体カルコゲンを生成して単体カルコゲンを含む溶液を調製する工程と、その単体カルコゲンを含む溶液を、貴金属イオンを含む溶液に混合する工程とを含んでもよい。混合した後、必要に応じて更にこの混合液に還元剤を添加してもよい。
還元剤を添加する工程において、還元剤の添加に際しては、予め必要投入量を用意し、これを処理する液に一度にあるいは一定の投入速度で加えてもよいが、処理する液の凝集状態の進行状況に応じて還元剤を加減して投入してもよい。
なお、還元剤を添加する工程においては、カルコゲン元素存在下で、通常は、還元剤のみの添加により目的の貴金属を充分に凝集・析出することが可能であるが、必要に応じて、さらに凝集剤のような補助剤を添加することも可能である。このような補助剤は、使用される還元剤、還元剤投入により生じた粒子の状態、あるいは分離回収手段の形式等に応じて、慣用のものから種々選択することができる。後述のように、析出物としてカルコゲン含有貴金属が得られるので、凝集剤のような補助剤を添加しなくても優れた凝集効果が得られる。従って、回収方法の簡単化の観点から、凝集剤のような補助剤を添加しないことが好ましい。
還元剤投入後は、還元剤が処理溶液全体と充分に接触する程度に、充分に撹拌するのが好ましい。撹拌後はその溶液を、好ましくは生じた粒子等がある程度沈降するまで(例えば1〜3時間程度)静置させてもよい。
還元剤を添加する工程において、還元剤の種類等によるが、常温で行ってもよく、必要があれば加熱してもよい。例えば、還元剤がヒドラジンである場合、還元反応を促進する観点から、還元剤を添加する前に、添加対象溶液を30〜90℃に加熱することが好ましい。40〜90℃で加熱することがより好ましく、50〜90℃で加熱することが更に好ましい。
(凝集沈殿工程)
本実施形態の貴金属回収方法は、上記還元処理工程で還元剤を添加する後、前記還元工程において得られた貴金属を凝集沈殿させる凝集沈殿工程を含むことが好ましい。本実施形態にかかる凝集沈殿工程は、上記還元処理工程で還元剤を添加する後、得られた混合溶液を、常温〜90℃の温度で静置することが好ましい。30〜90℃で静置することがより好ましく、40〜90℃で静置することがより好ましい。静置時間は、特に限定されなく、1〜1.5時間であることが好ましく、1〜2時間であることより好ましく、1〜3時間であることが更に好ましい。静置した後、公知の方法で固液分離する。固液分離方法の例は、遠心分離法、分離濾過法、吸引濾過法等を含む。また、必要に応じて、例えば、圧濾器、真空濾過器、連続式の濾過器等のような種々の他の汎用濾過装置を使用することもできる。さらに、濾過に際して、濾過速度を大きくするために、別途圧力を加えたり、または、例えば濾過助剤のような補助剤を使用してもよい。また、濾紙、濾布等を使用する場合には、汎用のものを使用することができる。凝集沈殿工程で、カルコゲン含有貴金属の析出物が得られる。
(カルコゲン含有貴金属)
本実施形態の貴金属回収方法で得られた、カルコゲン含有貴金属の析出物の一例は、単体カルコゲンと貴金属とを含む複合材料である。この複合材料は、中心部の単体カルコゲン粒子と外周部の貴金属粒子とを含む二次粒子を有する。この複合材料は、特に、中心部の単体カルコゲン粒子と外周部の貴金属粒子とを含むコア―シェル構造を含む。
中心部の単体カルコゲン粒子サイズは、本実施形態の貴金属回収方法で使用するカルコゲン元素の種類に異存する。カルコゲン元素が単体カルコゲンである場合、添加する単体カルコゲンの粒子サイズと同じ範囲である。本実施形態の貴金属回収方法で使用するカルコゲン元素がカルコゲン化合物である場合、回収対象の貴金属イオン溶液中において、貴金属イオンとともに単体カルコゲン粒子を析出する。その場合、ナノサイズの単体カルコゲン粒子であることが好ましい。貴金属は単体カルコゲン粒子の外周部で析出する。ナノサイズの貴金属粒子であることが好ましい。ここの「ナノサイズ」とは、粒子径が0.1〜100nm、0.1〜20nm、もしくは0.5〜10nmのサイズである。
本実施形態の貴金属回収方法において、カルコゲン含有貴金属の析出物が単体カルコゲン粒子を含むことによって、還元された貴金属を凝集することを促進する効果がある。カルコゲン元素を含まない溶液において、還元剤で貴金属イオンを還元することができなく(後述のカルコゲン元素の還元促進効果)、また、仮にできても、還元した貴金属粒子が小さく、溶液中に分散され、凝集して析出することが困難である。例えば、その際に、陽イオン界面活性剤などの凝集促進剤を添加する必要がある。本実施形態の貴金属回収方法は、カルコゲン元素を存在するため、還元された貴金属粒子は、単体カルコゲン粒子とともに凝集し、析出することができ、界面活性剤などの凝集促進剤を添加しなくてもよい。
(貴金属精製工程)
本実施形態の貴金属回収方法は、上記凝集沈殿工程で得られた貴金属を精製する精製工程を更に含むことが好ましい。
前記凝集沈殿工程により、還元剤で処理された溶液を、固体(固体残渣)と液体(濾液)とに分離することができる。この内、濾液側には、目的の貴金属は、僅かしか若しくはほとんど存在しないのが普通である。一方、固体残渣の側には、処理前の液中にあった貴金属とカルコゲンのほとんど若しくはほぼ全量が存在しているのが普通である。得られた固体残渣は、必要に応じてさらに焼成してもよいし、また、得られた固体残渣にさらに王水を加えて、貴金属を溶解させて、これにより目的の貴金属を回収してもよい。なお、回収された貴金属の単離については、溶融電解等の慣用の分離操作により分離して単離品を得ることもできる。以上のようにして、本発明に従って、形成された固体残渣を採取することにより、処理前の貴金属含有溶液から、そこに含有される貴金属のほとんど若しくはほぼ全量を回収することができる。
本実施形態の貴金属回収方法に用いる精製工程は、前記凝集沈殿工程において凝集沈殿したカルコゲン含有貴金属を熱分解させる熱分解工程を含むことがより好ましい。
熱分解の温度は、カルコゲン含有貴金属に含まれるカルコゲンを揮発して除くことができれば特に限定されない。例えば、大気圧で、単体のSeおよびTeの沸点はそれぞれ685°Cおよび988°Cであるため、カルコゲン元素がSe及びTeからなる群から少なくとも1種の元素である場合、大気圧において、500〜1500℃であることが好ましく、700〜1200℃の範囲であることがより好ましい。また、低気圧では、より低い沸点になるので、大気圧より低い加熱温度でもよい。しかし、熱分解装置の簡単化の観点から、大気圧で熱分解することが好ましい。
本実施形態の貴金属回収方法において、前記精製工程が、更に揮発したカルコゲンをトラップ後にプロセス内でリサイクルするカルコゲンリサイクル工程を含むことが好ましい。回収したカルコゲンを最初の還元処理工程のカルコゲン元素として再利用することができる。例えば、回収した単体カルコゲンを硝酸で処理し、酸化カルコゲンを生じ、次の処理対象の貴金属イオン溶液に添加することができる。
図9は、熱分解装置及びカルコゲンリサイクル装置の例示図である。カルコゲン元素がSeであり、貴金属イオン含有溶液を前記還元処理工程及び凝集沈殿工程で処理して得られた単体Se含有貴金属(PM)を熱分解炉に配置し、700℃以上の温度で加熱しながら、空気を吹き込み、Seを除去することを示す。揮発したカルコゲンについては、図9のように熱分解炉下流側でのトラップ後にプロセス内でリサイクルすることができる。
(還元処理の反応メカニズム)
図8は、本発明の回収方法において、還元処理工程での反応メカニズムを説明する例示図である。図7は、1M塩酸水溶液系におけるカルコゲン(Se、Te),各種貴金属(Pd、Pt、Au、Ru、Rh)およびヒドラジン(強酸性溶液中ではN として存在)の酸化還元電位を示す図である。図7は、既知の熱力学データに基づき算出した結果である。
この電位の序列に基づくと、ここで挙げたいずれの貴金属元素もカルコゲンの有無にかかわらず熱力学的にはヒドラジン還元によるメタル化が可能である。克服すべきは活性化エネルギー、即ち速度論の方であることは明らかである。すなわち、カルコゲン添加により初めて貴金属の還元が進行することができる。
カルコゲン添加により初めて貴金属の還元が進行する理由(反応メカニズム)については、まだ解明されていない。まずヒドラジン還元によりカルコゲン単体微粒子が生成し、次いでカルコゲン微粒子表面で触媒的に貴金属イオンのヒドラジン還元が進行することにより図8に示したようなコア−シェル(Core−Shell)型構造を持つ析出物が生成するのではないかと、本特許出願時で予想される。
下記は、本発明の例を示して本発明を具体的に説明するものである。本発明は、これらに限定されるものではない。
下記例において、溶液中の貴金属の濃度、カルコゲンの濃度、貴金属の回収率、貴金属の純度は次の測定法により求めた。
(カルコゲン濃度の測定方法)
使用装置: ThermoScientific iCAP7200Duo 高周波誘導結合プラズマ発光分析装置
測定条件:アルゴンプラズマ中でのカルコゲン元素からのICP発光強度より定量
サンプル処理方法:試料溶液を1M塩酸に100倍希釈
(貴金属濃度の測定方法)(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)
使用装置: ThermoScientific iCAP7200Duo 高周波誘導結合プラズマ発光分析装置
測定条件:アルゴンプラズマ中での貴金属元素からのICP発光強度より定量
サンプル処理方法: 試料溶液を1M塩酸に100倍希釈
(Pd純度の測定方法)
使用装置:Rigaku Supermini200 波長分散型蛍光X線分析装置
測定条件:蛍光X線強度の比較から純度測定
サンプル処理方法:試料を直接測定
(貴金属回収率の測定方法)
使用装置:ThermoScientific iCAP7200Duo 高周波誘導結合プラズマ発光分析装置
測定条件:アルゴンプラズマ中での貴金属元素からのICP発光強度より溶液中に残留する貴金属濃度を定量
サンプル処理方法:試料溶液を1M塩酸に100倍希釈
実施例などで得られたカルコゲン含有貴金属、熱分解後で得られた貴金属については次の方法で評価した。
(波長分散型蛍光X線分析(XRF)方法)
使用装置:Rigaku Supermini200 波長分散型蛍光X線分析装置
測定条件:蛍光X線強度より定量
サンプル処理方法:試料を直接測定
(粉末X線回折(XRD)方法)
使用装置:Bruker D2PHASER 粉末X線回折装置
測定条件:X線回折パターンより定性し、回折線幅より平均粒子径を算出
サンプル処理方法:試料を直接測定
(STEM−EDS分析方法)
使用装置:日本電子 JEM−2100F透過電子顕微鏡
測定条件:200 kVの加速電圧における透過電子像撮影
サンプル処理方法:試料を直接測定
(走査型電子顕微鏡(SEM)の観察方法)
使用装置:日本電子 JCM−6000PLUS走査電子顕微鏡
測定条件:15kVの加速電圧における二次電子像撮影
サンプル処理方法:試料を直接測定
(実施例1)
3Mの硝酸(富士フィルム和光純薬製、特級試薬)を含む水溶液15mLに、Pdイオン濃度がPd金属換算して53ppm(7.5μmol)になるように、Pd(富士フィルム和光純薬製、液状、1000ppm パラジウム標準液)を溶解した。また、Se元素濃度が単体Se換算して39ppm(7.5μmol、Pdに対して1当量)になるように、SeO 2−(富士フィルム和光純薬製、液状、1000ppm セレン標準液)を溶解した。この溶液をドライバス中で90℃に加熱し、還元剤として、ヒドラジン1水和物(関東化学製、液状、純度98.0%以上、特級試薬)1.2mL(25mmol、Pdに対して3300当量)をこの溶液に加えたところ、カルコゲン含有パラジウム(黒色析出物)の生成を確認した。試料を撹拌後、90℃で1時間静置した。遠心分離による固液分離後、試料の上澄み液中に残留するPd濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析法により求めた。得られた結果をPd初期濃度と比較したところ、Pd回収率は99.6%となった。その結果を表1に示す。
(実施例2)
Se元素39ppmの代わりにHTeO(富士フィルム和光純薬製、液状、1000ppm テルル標準液)64ppm(7.5μmol、Pdに対して1当量)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でPdを回収した。実施例1と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.8%であった。その結果を表1に示す。
(実施例3)
3Mの硝酸の代わりに3Mの塩酸(富士フィルム和光純薬製、液状、特級試薬)を用いた以外は、実施例1と同様な方法でPdを回収した。実施例1と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が66.1%であった。その結果を表1に示す。
(実施例4)
Se元素39ppmの代わりにTe元素64ppmを用いた以外は、実施例3と同様な方法でPdを回収した。実施例1と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が98.9%であった。その結果を表1に示す。
(比較例1)
Se元素を含まなかった以外は、実施例1と同様な方法でPdを回収した。実施例1と同様な測定方法でPd回収率を測定した。この場合のPd回収率は0%であった。その結果を表1に示す。
(比較例2)
Se元素を含まなかった以外は、実施例3と同様な方法でPdを回収した。実施例1と同様な測定方法でPd回収率を測定した。この場合のPd回収率は0%であった。その結果を表1に示す。
(実施例5)
3.4Mの硝酸および0.5Mの塩酸を含む水溶液1.5mLに、Pdイオン500ppmおよびSe元素を0.5ppmとなるように溶解した。この溶液をドライバス中で90℃に加熱し、ヒドラジン1水和物300μLをそれぞれの溶液に加えたところ、黒色析出物の生成を確認した。試料を撹拌後、90℃で1時間静置した。遠心分離による固液分離後、試料の上澄み液中に残留するPd濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析法により求めた。得られた結果をPd初期濃度と比較したところ、Pd回収率は99.6%であった。その結果を表2に示す。
(実施例6)
Se元素0.5ppmの代わりにSe元素5ppmを用いた以外は、実施例5と同様な方法でPdを回収した。実施例5と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.6%であった。その結果を表2に示す。
(実施例7)
Se元素0.5ppmの代わりにSe元素50ppmを用いた以外は、実施例5と同様な方法でPdを回収した。実施例5と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.6%であった。その結果を表2に示す。
実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)について波長分散型蛍光X線分析,粉末X線回折,電子顕微鏡観察(STEM−EDS及びSEM)を行った。
波長分散型蛍光X線分析結果を図1A及び図1Bに示す。波長分散型蛍光X線分析結果より、このカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)中にはPd(図1A)およびSe(図1B)が含まれる。
粉末X線回折結果を、図2に示す。粉末X線回折結果より、このカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)の主成分は金属Pdである。各回折ピークの広がりから、金属Pdの粒径は5nm程度である。
STEM−EDS分析の結果を、図3に示す。STEM−EDS分析の結果より数nm程度の粒子の凝集が見られ、Seが中心部、Pdが外周部を含めた二次粒子全体にそれぞれ分布している。
SEM観察結果を図4に示す。SEM観察においても数nm程度の粒子が凝集することにより析出物が形成されている様子が認められる。
(実施例8)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素0.5ppmを用いた以外は、実施例5と同様な方法でPdを回収した。実施例5と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例9)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素5ppmを用いた以外は、実施例5と同様な方法でPdを回収した。実施例5と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例10)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素50ppmを用いた以外は、実施例5と同様な方法でPdを回収した。実施例5と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例11)
3Mの塩酸を含む水溶液1.5mLに、Pd 500ppmおよびSe元素を0.5ppmとなるように溶解した。これらの溶液をドライバス中で90℃に加熱し、ヒドラジン1水和物200μLを溶液に加えたところ、黒色析出物の生成を確認した。各試料を撹拌後、90℃で1時間静置した。遠心分離による固液分離後、各試料の上澄み液中に残留するPd濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析法により求めた。得られた結果をPd初期濃度と比較したところ、Pd回収率は99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例12)
Se元素0.5ppmの代わりにSe元素5ppmを用いた以外は、実施例11と同様な方法でPdを回収した。実施例11と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例13)
Se元素0.5ppmの代わりにSe元素50ppmを用いた以外は、実施例11と同様な方法でPdを回収した。実施例11と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.6%であった。その結果を表2に示す。
(実施例14)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素0.5ppmを用いた以外は、実施例11と同様な方法でPdを回収した。実施例11と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.0%であった。その結果を表2に示す。
(実施例15)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素5ppmを用いた以外は、実施例11と同様な方法でPdを回収した。実施例11と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例16)
Se元素0.5ppmの代わりにTe元素50ppmを用いた以外は、実施例11と同様な方法でPdを回収した。実施例11と同様な測定方法でPd回収率を測定した。その結果が99.8%であった。その結果を表2に示す。
(実施例17)
3Mの塩酸を含む水溶液1.5mLに、Au(富士フィルム和光純薬、液状、1000ppm 金標準液) 500ppmおよびSe元素を0.4ppmとなるようにそれぞれ溶解した。これらの溶液をドライバス中で90℃に加熱し、ヒドラジン1水和物120μLを溶液に加えたところ、黒色析出物の生成を確認した。試料を撹拌後、90℃で1時間静置した。遠心分離による固液分離後、試料の上澄み液中に残留するAu濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析法により求めた。得られた結果をAu初期濃度と比較したところ、Au回収率は100%であった。その結果を表2に示す。
(実施例18)
Se元素0.4ppmの代わりにSe元素4ppmを用いた以外は、実施例17と同様な方法でAuを回収した。実施例17と同様な測定方法でAu回収率を測定した。その結果が100%であった。その結果を表2に示す。
(実施例19)
Se元素0.4ppmの代わりにSe元素40ppmを用いた以外は、実施例17と同様な方法でAuを回収した。実施例17と同様な測定方法でAu回収率を測定した。その結果が100%であった。その結果を表2に示す。
実施例19で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)について波長分散型蛍光X線分析を行った。
波長分散型蛍光X線分析結果は、図6に示す。波長分散型蛍光X線分析結果より、このカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)中にはAuおよびSeが含まれる。
(実施例20)
Se元素0.4ppmの代わりにTe元素0.4ppmを用いた以外は、実施例17と同様な方法でAuを回収した。実施例17と同様な測定方法でAu回収率を測定した。その結果が99.9%であった。その結果を表2に示す。
(実施例21)
Se元素0.4ppmの代わりにTe元素4ppmを用いた以外は、実施例17と同様な方法でAuを回収した。実施例17と同様な測定方法でAu回収率を測定した。その結果が100%であった。その結果を表2に示す。
(実施例22)
Se元素0.4ppmの代わりにTe元素40ppmを用いた以外は、実施例17と同様な方法でAuを回収した。実施例17と同様な測定方法でAu回収率を測定した。その結果が100%であった。その結果を表2に示す。
(実施例23)
3Mの塩酸を含む水溶液1.5mLに、Pd 250ppm,Au 250ppm,Pt 250ppmを溶解し、更にSe元素を0.4ppmとなるように加えた。これらの溶液をドライバス中で90℃に加熱し、ヒドラジン1水和物120μLをそれぞれの溶液に加えたところ、黒色析出物の生成を確認した。各試料を撹拌後、90℃で1時間静置した。遠心分離による固液分離後、各試料の上澄み液中に残留するPd、Au、Pt各濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析法により求めた。得られた結果をPd、Au、Pt各初期濃度と比較したところ、Pd回収率は99.5%、Au回収率は100%、Pt回収率は33.3%であった。その結果を表2に示す。
(実施例24)
Se元素0.4ppmの代わりにSe元素4ppmを用いた以外は、実施例23と同様な方法でPd、Au、Ptを回収した。実施例22と同様な測定方法でPd、Au、Pt各回収率を測定した。Pd回収率は100%、Au回収率は100%、Pt回収率は40.8%であった。その結果を表2に示す。
(実施例25)
Se元素0.4ppmの代わりにSe元素40ppmを用いた以外は、実施例23と同様な方法でPd、Au、Ptを回収した。実施例22と同様な測定方法でPd、Au、Pt各回収率を測定した。Pd回収率は100%、Au回収率は99.9%、Pt回収率は70.7%であった。その結果を表2に示す。
(実施例26)
実施例7で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)を大気雰囲気、1000℃において2時間処理したところ、金属光沢を示す銀色の物質(貴金属)が得られた。この物質を波長分散型蛍光X線分析法、粉末X線回折法、SEM観察法で評価した。
波長分散型蛍光X線分析結果を図1に示す。波長分散型蛍光X線分析結果よりSeの消失が確認された。蛍光X線強度から分析した結果、Pd純度は99.99%以上であった。従って、熱分解によるPdとSeの分離を達成した。
粉末X線回折結果を図2に示す。粉末X線回折結果よりこの物質は金属Pdであった。
SEM観察結果を図5に示す。SEM観察においても熱処理による粒子径の増大が確認されており、また、気化したSeの抜け道と思われる細孔が所々に確認された。
(実施例27)
実施例19で得られたカルコゲン含有貴金属(黒色析出物)を大気雰囲気、1000℃において2時間処理したところ、金属光沢を示す金色の物質が得られた。この物質を波長分散型蛍光X線分析法で評価した。
波長分散型蛍光X線分析結果を図6に示す。波長分散型蛍光X線分析結果よりSeの消失が確認された。蛍光X線強度から分析した結果、Au純度は99.99%以上であった。従って、熱分解によるAuとSeの分離を達成した。
表1及び表2、図1〜図7の結果から、本発明の貴金属回収方法は、カルコゲン元素を添加することにより強酸性水溶液中であっても貴金属元素をヒドラジンなどの還元剤によりカルコゲン含有貴金属析出物として簡易かつ高収率で回収することを達成するものである。得られたカルコゲン含有貴金属析出物は、カルコゲン元素単体粒子の周囲に貴金属が析出したコア−シェル構造を持つナノ粒子である。またこのカルコゲン含有貴金属析出物は、熱分解により容易にカルコゲン元素と貴金属に分離することができ、得られる貴金属は高純度である。

Claims (11)

  1. カルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理する還元工程を含むことを特徴とする、貴金属の回収方法。
  2. 前記カルコゲン元素がSe元素及びTe元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である
    請求項1に記載の貴金属の回収方法。
  3. 前記還元剤がヒドラジン、ヒドラジン誘導体又はそれらの塩である
    請求項1又は請求項2に記載の貴金属の回収方法。
  4. 前記カルコゲン元素がカルコゲン化合物である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  5. 前記貴金属含有水溶液に含まれる貴金属イオンの濃度が、貴金属換算して10ppm以上であり、
    前記カルコゲン元素の濃度が、単体カルコゲン換算して、0.1ppm以上であり、かつ、貴金属イオン濃度1に対して0.0005以上であり、
    前記還元剤の添加量が、貴金属イオン1当量に対して1当量以上である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  6. 前記還元処理工程において得られた貴金属を凝集させ、沈殿させる凝集沈殿工程を更に含む
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の貴金属の回収方法。
  7. 前記凝集沈殿工程において得られたカルコゲン含有貴金属を精製する精製工程を更に含む
    請求項6に記載の貴金属の回収方法。
  8. 前記精製工程が、前記凝集沈殿したカルコゲン含有貴金属を熱分解させる熱分解工程を含む
    請求項7に記載の貴金属の回収方法。
  9. カルコゲン元素と貴金属とを含むカルコゲン含有貴金属であって、
    前記カルコゲン含有貴金属がコア―シェル構造を有するナノ粒子であり、
    前記コア―シェル構造の中心部が単体カルコゲンを含み、
    前記コア―シェル構造の外周部が貴金属を含む
    ことを特徴とするカルコゲン含有貴金属。
  10. カルコゲン元素と還元剤との存在下で、貴金属イオンを含む溶液を還元処理して得られたものである請求項9に記載のカルコゲン含有貴金属。
  11. 請求項1〜6の何れか1項に記載の貴金属の回収方法で得られたものである請求項9又は10に記載のカルコゲン含有貴金属。
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