JP2021031626A - 多孔質膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐ファウリング性能が高く、かつその性能が使用により低下しにくい多孔質膜の提供。【解決手段】ポリスルホン及びポリエーテルスルホンからなる群から選択されるポリマーからなる骨格を有し、さらにポリビニルピロリドンを含み、所定の分子構造のモノマーユニットを含む重合体からなる親水性材料を分子構造の骨格内部に含み、親水性材料が孔表面に偏在している、多孔質膜。【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質膜に関する。
ポリスルホンなどのポリマーを材料とする多孔質膜は水浄化用途などのろ過膜として工業的に有用であり、プリーツ加工して一定の容量のカートリッジ中に収めた製品も市販されている。しかし、ポリスルホンなどのポリマーは疎水性であるため表面にタンパク質が吸着しやすく、ろ過膜が目詰まりするファウリングが生じやすい。そのため、従来から、多孔質膜を親水化するための様々な方法が検討されている。
特許文献1には、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンを含有する分離膜に対し、ポリメトキシアクリレート(PMEA)を溶解した液をコーティングすることで、親水化を行い、血液適合性に優れた血液処理用分離膜を形成した例が開示されている。
特許文献2には、ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、特定の疎水性および親水性の側鎖構造からなるアクリル系共重合体を膜中に含有する中空糸膜が記載されている。
特開2016−77570号公報 特開2019−18193号公報
特許文献1に記載の方法では、分離膜形成後にPMEAをコーティングするため、膜使用中にPMEAが流出しやすく、耐久性が低い。
特許文献2に記載の方法では、血液中へのポリマー溶出を防ぐために共重合体に導入されている疎水性構造に起因して、ファウリング耐性が低く、使用により透水性が低下しやすい。
本発明は、耐ファウリング性能が高く、かつその性能が使用により低下しにくい多孔質膜を提供することである。
本発明者らが、上記課題の解決のため鋭意検討を重ねていたところ、ポリスルホン系高分子を含む多孔質膜の製造時の製膜原液に特定の構造を有する親水性材料を添加(原液添加)して製造された多孔質膜において上記の課題が解決されていることを見出し、この知見に基づき、さらに検討を重ねて上記課題の解決に至った。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<10>を提供するものである。
<1>ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーからなる骨格を有し、さらにポリビニルピロリドンを含む多孔質膜であって、
一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体または一般式(II)もしくは
一般式(III)で表される重合体からなる親水性材料を上記骨格内部に含み、
上記親水性材料が孔表面に偏在している上記多孔質膜;
一般式(I)中、
1は水素原子またはメチル基を表し、
2は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、または、PO324N(CH33を表し、
3は水素原子を表し、ただし、R2とR3とが結合してR2が結合する酸素原子およびR3が結合する炭素原子とともに5員環を形成していてもよく、
tは1〜9の整数であり、
一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体は一般式(I)で示されるモノマーユニットを60mol%以上含む重合体であり、
一般式(II)中、mおよびnは、それぞれ独立に整数であり、以下の式を満たし;
m/(n+m)=0.3〜0.7
一般式(III)中、nは整数である。
<2>飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた孔表面からの深さ方向分析において、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択される上記ポリマーのイオンが初めて観測された深さからその深さから140nm深い深さまでの上記ポリマーのイオン強度の平均値をIA、上記ポリマーのイオンが初めて観測された深さでの上記親水性材料のイオン強度をIB0、上記ポリマーのイオンが初めて観測された深さから100nm深い深さでの上記親水性材料のイオン強度をIB100としたとき、以下の式を満たす、<1>に記載の多孔質膜;
B0/IB100>2;
B100/IA>0.05。
<3>上記親水性材料の重量平均分子量が10,000以上である<1>または<2>に記載の多孔質膜。
<4>上記親水性材料が一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体からなる<1>〜<3>のいずれかに記載の多孔質膜。
<5>上記親水性材料が一般式(II)で表される重合体からなる<1>〜<3>のいずれかに記載の多孔質膜。
<6>上記親水性材料が一般式(III)で表される重合体からなる<1>〜<3>のいずれかに記載の多孔質膜。
<7>厚みが10〜1000μmである<1>〜<6>のいずれかに記載の多孔質膜。
<8>厚み方向で孔径分布を有する<1>〜<7>のいずれかに記載の多孔質膜。
<9>孔径が最小となる層状の緻密部位を内部に有し、
上記緻密部位から上記多孔質膜の少なくとも一方の膜表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している<1>〜<8>のいずれかに記載の多孔質膜。
<10>上記緻密部位の平均孔径が0.01〜10μmである<9>に記載の多孔質膜。
本発明により、耐ファウリング性能が高く、かつその性能が使用により低下しにくい多孔質膜が提供される。
本発明の多孔質膜のTOF−SIMSスペクトルの例である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
<多孔質膜>
多孔質膜は複数の孔を有する膜をいう。孔は、例えば膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影画像または透過型電子顕微鏡(TEM)撮影画像で確認することができる。
本発明の親水性多孔質膜は、多孔質膜骨格と、上記骨格内部にある親水性材料とを含み、この親水性材料は多孔質膜の各孔表面に偏在している。本明細書において、多孔質膜の骨格とはそれのみで多孔質膜を形成できる部分を意味し、親水性材料等を保持する基材として機能する部分を意味する。本明細書において、親水性材料を骨格内部に含むとは、親水性材料の少なくとも一部が骨格内部に存在することを意味し、親水性材料が単に骨格表面を被覆する場合、すなわち、孔表面および膜表面を被覆しているのみである場合を含まない意味である。各孔表面とは、多孔質膜内部の各孔に面している多孔質膜の面を意味し、多孔質膜の膜表面(膜のおもて面または裏面)とは区別される。本明細書において、「偏在する」とは他の部分と比較して多くが存在することを意味し、その部分のみに存在することを含む。
本発明の親水性多孔質膜は、親水性材料を多孔質膜の骨格内部に含むことにより、多孔質膜の使用によっても親水性材料が溶出しにくい。また親水性材料が各孔表面に偏在していることによって、各孔の表面を効率良く親水化することができる。
上記の構成は、例えばポリマーおよびポリビニルピロリドンを含む製膜原液に下記で説明する親水性材料を添加(原液添加)して多孔質膜骨格を形成することにより実現することができる。
[多孔質膜の骨格]
本発明の多孔質膜はポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーからなる骨格で形成されている。
ポリスルホンは一般式(1)で表される構造単位の繰り返しからなるポリマーであり、ポリエーテルスルホンは一般式(2)で表される構造単位の繰り返しからなるポリマーである。
本発明の多孔質膜の骨格を形成する、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーは、一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を含む共重合体であってもよい。また、本発明の多孔質膜の骨格を形成するポリマーは、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンの混合物であってもよい。
非水溶性樹脂から形成される多孔質膜は、一般的に、耐水性、耐薬品性、機械耐性が高く、フィルターとしての工業的使用にも適している。非水溶性樹脂としてポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマー、特にポリスルホンを用いるとさらに耐水性、耐薬品性、機械耐性が高い多孔質膜を得ることができる。
ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーとしては数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000,000であるものが好ましく、5,000〜1,000,000であるものがより好ましい。ここで、ポリマーの数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めたものである。
[親水性材料]
本発明の多孔質膜において、親水性材料としては、一般式(I)で表されるモノマーユ
ニットを含む重合体または一般式(II)もしくは一般式(III)で表される重合体が用いられる。これらの重合体は、同一分子内に、相対的に親水性を示す部位として、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、カルボキシル基、カルボニル基、アミド結合、アミノ基、ベタイン構造からなる群より選択される基または構造と、相対的に疎水性を示す部位として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフロロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミドからなる群より選択される構造とを有する。このような構造を有する親水性材料は、多孔質膜の形成時の製膜原液に加えられると、疎水性である多孔質膜骨格と、取り込まれた水分およびポリビニルピロリドンとの中間に位置し、多孔質膜骨格内部の孔表面側に均一に固定化され、偏在する。また、親水性材料は少なくともその一部が骨格内部に含まれる構成となり、流れ出しにくくなり、耐久性の高い膜を形成することができる。
以下、一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体または一般式(II)も
しくは一般式(III)で表される重合体について説明する。
一般式(I)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。
2は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、または、PO324N(CH33を表す。
3は水素原子を表し、ただし、R2とR3とが結合してR2が結合する酸素原子およびR3が結合する炭素原子とともに5員環を形成していてもよい。5員環としては、テトラヒドロフランが挙げられる。R2と結合して上記5員環を形成するR3はtが2以上であるとき、最もR2側末端にあるR3である。R2とR3とが結合してR2が結合する酸素原子およびR3が結合する炭素原子とともに5員環を形成するとき、tは1であることが特に好ましい。
tは1〜9の整数であり、1〜3が好ましい。
一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体は一般式(I)で示されるモノマーユニットを60mol%以上、好ましくは80mol%以上含む重合体であり、より好ましくは一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体は一般式(I)で表されるモノマーユニットの繰り返しからなることが好ましい。一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体に含まれている一般式(I)で表されるモノマーユニット以外のモノマーユニット(以下「他のモノマーユニット」という)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタリレート等のメタクリレート類が挙げられる。
一般式(I)で表されるモノマーユニットと他のモノマーユニットとの重合は、ブロック共重合であってもよく、ランダム共重合であってもよく、または例えば2つ以上の一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む連続単位と他のモノマーユニットとが交互に重合したものであってもよい。
一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体の例としては以下が挙げられる。
一般式(II)中、mおよびnは、それぞれ独立に整数(重合体における各構造単位の数(重合度)を示す整数)であり、以下の式を満たす。
m/(n+m)=0.3〜0.7
一般式(II)で表される重合体は、すなわち、n個の式II−1で表されるモノマーユニットとm個の式II−2で表されるモノマーユニットとがランダム共重合またはブロック共重合した重合体である。
一般式(III)中、nは整数(重合体における構造単位の数(重合度)を示す整数)である。
一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体または一般式(II)もしくは
一般式(III)で表される重合体の重量平均分子量は、いずれも、10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることがさらに好ましい。
上記重合体の重量平均分子量は、以下の分析条件でGPC測定を行なって評価することができる。
カラム: Shodex OHpak KB805HQ
移動相: 0.1M酢酸ナトリウム緩衝液
流速 : 1.0 mL/min
温度 : 40℃
検出器: RI(示差屈折計)
なお、分子量の算出には標準プルラン標品Shodex Pullulan P−5、P−10、P−20、P−50、P−82、P−100、P−200、P−400、P−800、P−1600を使用することができる。
[飛行時間型二次イオン質量分析:TOF−SIMS]
本発明の多孔質膜が上記いずれかの重合体である親水性材料を多孔質膜の骨格内部に含み、かつ、上記親水性材料が各孔表面に偏在していることについては、以下の手段で確認することができる。
なお、上述のように、多孔質膜の孔表面とは、多孔質膜のおもて面または裏面などの直接手で触れられる部分ではなく、膜内部の孔の表面を指す。孔表面は、多孔質膜を破壊することで露出させることができる。上記破壊は例えば、多孔質膜を液体窒素等で凍結させた後、孔表面が露出するように多孔質膜を切断することにより行えばよい。
上記のように露出させた孔表面について、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)装置を用いた深さ方向分析を行う。この分析においてポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーのイオンが初めて観測された深さからその深さから140nm深い深さまでの上記ポリマーのイオン強度の平均値をIA、上記ポリマーのイオンが初めて観測された深さでの上記親水性材料のイオン強度をIB0、上記ポリマーのイオンが初めて観測された深さから100nm深い深さでの上記親水性材料のイオン強度をIB100としたとき、以下の2つの式を満たすときに少なくとも、親水性材料を多孔質膜の骨格内部に含み、かつ、上記親水性材料が各孔表面に偏在していると判断することができる。
B0/IB100>2
B100/IA>0.05
B0/IB100>2であることは親水性材料が各孔表面に偏在していることを意味し、表面が効率的に親水化され、多孔質膜へのタンパク質の付着抑制の効果が高い。
また、IB100/IA>0.05であることは、親水性材料が多孔質膜の骨格内部に存在することを意味し、膜使用中に親水性材料が流出しにくく、耐久性が向上する。
例えば、特許文献1に記載の多孔質膜では骨格を形成した後に親水性材料をコーティングするため、基材中に親水性材料が存在せずIB100/IA>0.05は満たさない。
上記2つの式を満たす多孔質膜の飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた深さ方向分析結果(TOF−SIMSスペクトル)の例および測定および算出されるIA、IB0、およびIB100を図1に示す。
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)装置としては、例えば、アルバック・ファイ社製、TRIFT V nano TOF等を用いることができる。
一次イオン源はAu、Biを用いることができ、Biを用いることが好ましい。
深さ方向の分析は、スパッタイオン銃を用いたスパッタ処理を行うことにより実現することができる。スパッタイオンとしては、フラーレン(C60)やアルゴンガスクラスターイオン(Ar−GCIB)を用いることができ、Ar−GCIBを用いることが好ましい。例えば、10〜100nm/min程度のスパッタ速度でTOF−SIMS測定を行い、スパッタ速度を深さに換算することで深さ方向に応じた各成分由来のイオンの強度の分析が可能になる。
また、深さ方向の分析のためのスパッタ処理およびTOF−SIMSは孔表面から行なうが、この際の孔は、多孔質膜の表面ではなく、例えば、多孔質膜の膜厚に応じて多孔質膜の表面から1〜20μm程度、好ましくは10μm程度の部位の孔を選択することが好ましい。また後述のように孔径分部を有する多孔質膜の場合は上記の多孔質膜の表面としては1次面を選択し、緻密部位以外の部位の孔を選択することが好ましい。
また、IA、IB0、IB100の各値としては、1つの多孔質膜について上記部位の複数の孔において分析を行って得られた値の平均値を用いることが好ましい。
[ポリビニルピロリドン]
本発明の多孔質膜は、さらにポリビニルピロリドンを含む。このとき、ポリビニルピロリドンは多孔質膜に保持されている状態であってもよい。ポリビニルピロリドンを含むことにより本発明の多孔質膜の親水性はさらに高くなる。ポリビニルピロリドンは、例えば、特開昭64−34403号公報に記載があるようにポリスルホン膜またはポリエーテルスルホン膜の製膜原液中に孔形成剤として添加されるものである。製膜原液中のポリビニルピロリドンは製膜過程でそのほとんどが凝固水中に溶解して除去されるが、一部が膜表面に残留するものである。
[その他の添加剤]
多孔質膜は上記ポリマー、親水性材料、およびポリビニルピロリドン以外の他の成分を添加剤として含んでいてもよい。
上記添加剤としては、食塩、塩化リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム等の有機酸の金属塩、ポリエチレングリコール等の高分子、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の高分子電解質、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム等のイオン系界面活性剤等を挙げることができる。添加剤は多孔質構造のための膨潤剤として作用していてもよい。
[多孔質膜の構造]
上述のように多孔質膜は複数の孔を有する膜である。
多孔質膜の孔の孔径は、ろ過対象物の大きさによって適宜選択することができるが、0.005μm〜25μmであればよく、0.01μm〜20μmであることがより好ましい。孔径分布を有する場合はこの範囲で分布していればよい。孔径は電子顕微鏡によって得られた膜断面の写真から測定すればよい。多孔質膜はミクロトーム等により切断し、断面が観察できる薄膜の切片として、多孔質膜断面の写真を得ることができる。
多孔質膜は、厚み方向に孔径分布を持つ構造であっても、厚み方向に孔径分布を持たない均質構造であってもよい。また、厚み方向に孔径分布を持つ構造においては、膜のおもて面の孔径および裏面の孔径が異なるように孔径分布を有する厚み方向に非対称である構造(非対称構造)であってもよい。非対称構造の例としては、一方の膜表面から他方の膜表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している構造、孔径が最小となる層状の緻密部位を内部に有し、この緻密部位から多孔質膜の少なくとも一方の膜表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している構造などが挙げられる。
本明細書において、非対称構造の多孔質膜の、孔径の大きい側の面を1次面、孔径の小さい側の面を2次面と呼ぶ。
特に、多孔質膜は、孔径が最小となる層状の緻密部位を内部に有し、この緻密部位から多孔質膜の少なくとも一方の膜表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している構造であることが好ましい。ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーは、このような多孔質膜を製造する場合に好ましく用いることができるポリマーとしてよく知られている。
本明細書において、膜の厚み方向の孔径の比較を行なう場合、膜断面のSEM撮影写真を膜の厚み方向に分割して行なうものとする。分割数は膜の厚みに応じて適宜選択できる。分割数は少なくとも5以上とし、例えば、200μm厚の膜では後述する表面Xから20分割する分割線を19本引き、各分割線と交差または接する孔(閉孔)をデジタイザーでなぞり、連続する50個の孔の平均孔径を求めて行う。なお、分割幅の大きさは、膜における厚み方向の幅の大きさを意味し、写真での幅の大きさを意味するものではない。膜の厚み方向の孔径の比較において、孔径は、各区分の平均孔径として比較される。各区分の平均孔径は、例えば、膜断面図の各区分の50個の孔の平均値であればよい。この場合の膜断面図は例えば80μm幅(表面と平行な方向において80μmの距離)で得てもよい。このとき、孔が大きく、50個測定できない区分については、その区分でとれる数だけ測定したものであればよい。また、このとき、孔が大きくその区分に収まるものでない場合は、ほかの区分にわたってその孔の大きさを計測する。
孔径が最小となる層状の緻密部位は、上記膜断面の区分のうちで平均孔径が最小となる区分に相当する多孔質膜の層状の部位をいう。緻密部位は1つの区分に相当する部位からなっていても、2つ、3つなどの、平均孔径が最小となる区分の1.1倍以内の平均孔径を有する複数の区分に相当する部位からなっていてもよい。緻密部位の厚みは、0.5μm〜50μmであればよく、0.5μm〜30μmであることが好ましい。
工業用途のろ過膜として使用される多孔質膜、特にビール等の飲料のろ過のためのろ過膜として使用される多孔質膜においては、高い流量と液中夾雑物の確実な捕捉の両立が重要であるため、最小孔径の適切な設定が求められる。
本明細書においては、緻密部位の平均孔径を多孔質膜の最小孔径とする。多孔質膜の最小孔径は0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、緻密部位の平均孔径はASTM F316−80により測定したものとする。
多孔質膜は、緻密部位を内部に有することが好ましい。内部とは膜の表面に接していないことを意味し、「緻密部位を内部に有する」とは、緻密部位が、膜のいずれかの表面にもっとも近い区分ではないことを意味する。緻密部位を内部に有する構造の多孔質膜を用いることによっては、同じ緻密部位を表面に接して有する多孔質膜を用いた場合よりも、透過させることが意図された物質の透過性が低下しにくい。いかなる理論にも拘泥するものではないが、緻密部位が内部にあることによりタンパク質などの物質の吸着が起こりにくくなっているためと考えられる。
緻密部位は、多孔質膜の厚みの中央部位よりもいずれか一方の表面側に偏っていることが好ましい。具体的には、緻密部位が多孔質膜のいずれか一方の表面から多孔質膜の厚みの3分の1以内の距離にあることが好ましく、5分の2以内の距離にあることがより好ましく、4分の1以内の距離にあることがさらに好ましい。この距離は上述の膜断面写真において判断すればよい。本明細書において、緻密部位がより近い側の多孔質膜の表面を「表面X」という。
多孔質膜においては緻密部位から少なくともいずれか一方の表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加していることが好ましい。多孔質膜において、緻密部位から表面Xに向かって厚み方向で孔径が連続的に増加していてもよく、緻密部位から表面Xと反対側の表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加していてもよく、緻密部位から多孔質膜のいずれの表面に向かうときも厚み方向で孔径が連続的に増加していてもよい。これらのうち、少なくとも緻密部位から表面Xと反対側の表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加していることが好ましく、緻密部位から多孔質膜のいずれの表面に向かうときも厚み方向で孔径が連続的に増加していることがより好ましい。「厚み方向で孔径が連続的に増加」とは、厚み方向に隣り合う区分の間の平均孔径の差異が、最大平均孔径(最大孔径)と最小平均孔径(最小孔径)の差異の50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下となるように増加していることをいう。「連続的に増加」は、本質的には、減少がなく一律に増加することを意味するものであるが、減少している部位が偶発的に生じていてもよい。例えば、区分を表面から2つずつ組み合わせたときに、組み合わせの平均値が、一律に増加(表面から緻密部位に向かう場合は一律に減少)している場合は、「緻密部位から膜の表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している」と判断できる。
多孔質膜の最大孔径は0.1μm超であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm超であることがさらに好ましく、また、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることがより好ましく、21μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、上記膜断面の区分のうちで平均孔径が最大となる区分のその平均孔径を多孔質膜の最大孔径とする。
緻密部位の平均孔径と多孔質膜の最大孔径との比(多孔質膜の最小孔径と最大孔径との比であって最大孔径を最小孔径で割った値、本明細書において「異方性比」ということもある。)は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。緻密部位以外の平均孔径を大きくし、多孔質膜の物質透過性を高くするためである。また、異方性比は、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。上記の多段濾過のような効果は異方性比が25以下の範囲で効率よく得られるためである。
平均孔径が最大となる区分は膜のいずれかの表面にもっとも近い区分またはその区分に接する区分であることが好ましい。
膜のいずれかの表面にもっとも近い区分においては、平均孔径が0.05μm超25μm以下であることが好ましく、0.08μm超23μm以下であることがより好ましく、0.1μm超21μm以下であることがさらに好ましい。また、膜のいずれかの表面にもっとも近い区分の平均孔径と緻密部位の平均孔径との比は、1.2以上20以下であることが好ましく、1.5以上15以下であることがより好ましく、2以上13以下であることがさらに好ましい。
多孔質膜の厚みは、特に限定されないが、膜強度、取扱性、ろ過性能、およびろ過寿命の観点から、10μm〜1000μmであればよく、10μm〜500μmであることが好ましく、30μm〜300μmであることがより好ましい。
多孔質膜は単一の層として1つの組成物から形成された膜であることが好ましく、複数層の積層構造ではないことが好ましい。
<多孔質膜の製造方法>
本発明の多孔質膜の製造方法は特に限定されず、通常のポリマー膜形成方法をいずれも用いることができる。ポリマー膜形成方法としては延伸法および流延法などが挙げられるが、多孔質膜の製造には、流延法を用いることが特に好ましい。流延法において、製膜原液に用いる溶媒の種類および量や流延後の乾燥方法を調節することにより孔径分布を有する多孔質膜を作製することができる。
流延法による多孔質膜の製造は、例えば以下(1)〜(4)をこの順で含む方法で行なうことができる。
(1)ポリマー、親水性材料、ポリビニルピロリドン、および必要に応じて、その他の添加剤および溶媒を含む製膜原液を溶解状態で支持体上に流延する。
(2)流延された液膜の表面に調温湿風を当てる。
(3)調温湿風を当てた後に得られる膜を凝固液に浸漬する。
(4)必要に応じて支持体を剥離する。
調温湿風の温度は、4℃〜60℃、好ましくは10℃〜40℃であればよい。調温湿風の相対湿度は、15%〜100%、好ましくは25%〜95%であればよい。調温湿風は、0.1m/秒〜10m/秒の風速で0.1秒間〜30秒間、好ましくは1秒間〜10秒間、当てていればよい。
また、緻密部位の平均孔径および位置も、調温湿風中に含まれる水分濃度、調温湿風を当てる時間によって制御することができる。なお、緻密部位の平均孔径は、製膜原液中の含有水分量によっても制御することができる。
上記のように液膜の表面に調温湿風を当てることによって、溶媒の蒸発の制御を行い、液膜の表面から膜内に向かってコアセルベーションを起こすことができる。この状態でポリマーの溶解性が低いがポリマーの溶媒に相溶性を有する溶媒を収容する凝固液に浸漬することによって、上記のコアセルベーション相を微細孔として固定させ微細孔以外の細孔も形成することができる。
上記の凝固液に浸漬する過程において凝固液の温度は−10℃〜80℃であればよい。この間で温度を変化させることによって、緻密部位から支持体面側に向けてのコアセルベーション相の形成から凝固に至るまでの時間を調節し、支持体面側に至るまでの孔径の大きさを制御することが可能である。凝固液の温度を高くすると、コアセルベーション相の形成が早くなり凝固に至るまでの時間が長くなるため、支持体面側へ向かう孔径は大きくなりやすい。一方、凝固液の温度を低くすると、コアセルベーション相の形成が遅くなり凝固に至るまでの時間が短くなるため、支持体面側へ向かう孔径は大きくなりにくい。
支持体としては、プラスチックフィルムまたはガラス板を用いればよい。プラスチックフィルムの材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、シリコーンなどが挙げられる。支持体としてはガラス板またはPETが好ましく、PETがより好ましい。
製膜原液は溶媒を含んでいてもよい。溶媒は使用するポリマーの溶解性が高い溶媒(以下、「良溶媒」ということがある)を用いればよい。溶媒は膜を凝固液に浸漬した場合速やかに凝固液と置換されるものが好ましい。溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドあるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。これらのうち、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
製膜原液は良溶媒に加えて、ポリマーの溶解性が低いが良溶媒に相溶性を有する溶媒(以下、「非溶媒」ということがある)を含むことが好ましい。非溶媒としては、水、セルソルブ類、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらのうち、水を用いることが好ましい。
製膜原液におけるポリマー濃度は、5質量%以上35質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下であればよい。35質量%以下であることにより、得られる多孔質膜に十分な透過性(例えば水の透過性)を与えることができ、5質量%以上とすることにより選択的に物質を透過する多孔質膜の形成を担保することができる。添加剤の添加量は添加によって製膜原液の均一性が失われることが無い限り特に制限は無いが、溶媒に対して通常0.5容量%以上10容量%以下である。製膜原液が非溶媒と良溶媒とを含む場合、非溶媒の良溶媒に対する割合は、混合液が均一状態を保てる範囲であれば特に制限はないが、1.0質量%〜50質量%が好ましく、2.0質量%〜30質量%がより好ましく、3.0質量%〜10質量%がさらに好ましい。
また、多孔質膜を製造するための製膜原液においては、親水性材料は、上記ポリマーの総質量に対し、0.1質量%〜10質量%で含まれていることが好ましく、0.3質量%〜5質量%で含まれていることがより好ましい。
また、多孔質膜を製造するための製膜原液においては、ポリビニルピロリドンは、上記ポリマーの総質量に対し、50質量%〜120質量%で含まれていることが好ましく、80質量%〜110質量%で含まれていることがより好ましい。このような製膜原液を用いることにより、ポリビニルピロリドンを0.05〜8.0質量%程度含む多孔質膜が得られる。ポリビニルピロリドンの量が減っているのは、ポリビニルピロリドンは、洗浄工程で大部分が除かれるためである。
さらに、製膜原液が添加剤として塩化リチウムを含むとき、塩化リチウムは、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンの総質量に対し、5質量%〜20質量%で含まれていることが好ましく、10質量%〜15質量%で含まれていることがより好ましい。
凝固液としては、ポリマーの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類;エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;グリセリン等のグリセロール類などが挙げられる。好ましい凝固液の例としては、水、アルコール類またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、水を用いることが好ましい。
凝固液への浸漬の後、使用した凝固液とは異なる溶媒で洗浄を行なうことも好ましい。洗浄は、溶媒に浸漬することにより行なうことができる。洗浄溶媒としてはジエチレングリコールが好ましい。多孔質膜の製膜原液にポリビニルピロリドンを添加する場合において、洗浄溶媒としてジエチレングリコールを用い、膜を浸漬するジエチレングリコールの温度および浸漬時間のいずれか一方または双方を調節することにより、ポリビニルピロリドンの膜への残量を制御することができる。ジエチレングリコールを用いた洗浄の後さらに、水で洗浄してもよい。
多孔質膜の製造方法については、特開昭63−141610号公報、特開平4−349927号公報、特公平4−68966号公報、特開平04−351645号公報、特開平9−227714号公報、特開2010−235808号公報等を参照することができる。
[滅菌処理]
多孔質膜には滅菌処理を行なってもよい。多孔質膜の滅菌処理として、例えば、高圧蒸気滅菌処理を行うことができる。特にオートクレーブを用いた高温高圧の水蒸気による処理を行うことが好ましい。通常、プラスチックに対する高圧蒸気滅菌処理は、飽和水蒸気によって加圧され110〜140℃程度の環境下で10〜30分間処理することによって行われるが、本発明の親水性多孔質膜の滅菌処理も同様の条件で行うことができる。滅菌処理に用いられるオートクレーブとしては、例えば、株式会社トミー精工製のSS325が挙げられる。
<多孔質膜の用途>
本発明の多孔質膜はろ過膜として各種用途で使用することができる。ろ過膜は、種々の高分子、微生物、酵母、微粒子を含有あるいは懸濁する液体の分離、精製、回収、濃縮などに適用され、特にろ過を必要とする微細な微粒子を含有する液体からその微粒子を分離する必要のある場合に適用することができる。例えば、微粒子を含有する各種の懸濁液、発酵液あるいは培養液などの他、顔料の懸濁液などから微粒子を分離するときにろ過膜を使用することができる。本発明の多孔質膜は、具体的には、製薬工業における薬剤の製造、食品工業におけるビールなどのアルコール飲料製造、電子工業分野での微細な加工、精製水の製造などにおいて必要となる精密ろ過膜として使用することができる。
孔径分布を有する本発明の多孔質膜をろ過膜として用いるとき、より孔径が小さい部位がろ過液の出口側(アウトレット側)に近くなるように配置してろ過を行うことにより、微粒子を効率よく捕捉することができる。また、孔径分布を有する多孔質膜では、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着または付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高いろ過効率を維持することができる。
本発明の多孔質膜は、用途に応じた形状に加工して、種々の用途に用いることができる。多孔質膜の形状としては、平膜状、管状、中空糸状、プリーツ状、繊維状、球状粒子状、破砕粒子状、塊状連続体状などが挙げられる。多孔質膜の親水化処理前に用途に応じた形状に加工してもよく、多孔質膜の親水化処理後に用途に応じた形状に加工してもよい。
多孔質膜は、各種用途に用いられる装置において容易に取り外し可能であるカートリッジに装着されてもよい。カートリッジにおいて多孔質膜はろ過膜として機能しうる形態で保持されていることが好ましい。多孔質膜を保持したカートリッジは、公知の多孔質膜カートリッジと同様に製造することができ、例えば、国際公開2005/037413号、特開2012−045524号公報を参照することができる。
例えば、フィルターカートリッジは、以下のように製造することができる。
長尺の多孔質膜を短辺(幅)方向で折り目がつくようにプリーツ加工する。例えば、通常2枚の膜サポートの間に挟んで、公知の方法でプリーツ加工することができる。膜サポートとしては不織布、織布、ネットなどを使用すればよい。膜サポートは、ろ過圧変動に対してろ過膜を補強すると同時に、ひだの奥に液を導入するために機能する。プリーツひだの幅は例えば5mmから25mmであればよい。プリーツ加工した多孔質膜は円筒状に丸め、その合わせ目をシールすればよい。
円筒状の多孔質膜はエンドプレートにエンドシールされる、エンドシールはエンドプレート材質にしたがって公知の方法で行えばよい。エンドプレートに熱硬化性のエポキシ樹脂を使用する時は、調合したエポキシ樹脂接着剤の液体をポッティング型中に流し込み、予備硬化させて接着剤の粘度が適度に高くなってから、円筒状ろ材の片端面をこのエポキシ接着剤中に挿入し、その後加熱して完全に硬化させればよい。エンドプレートの材質がポリプロピレンやポリエステルの如き熱可塑性樹脂の時は、熱溶融した樹脂を型に流し込んだ直後に円筒状ろ材の片端面を樹脂の中に挿入する方法を行ってもよい。一方、既に成形されたエンドプレートのシール面のみを熱板に接触させたり赤外線ヒーターを照射したりしてプレート表面だけを溶融し、円筒状ろ材の片端面をプレートの溶融面に押しつけて溶着してもよい。
組み立てられたフィルターカートリッジはさらに公知の洗浄工程に付してもよい。
なお、多孔質膜におけるヒドロキシアルキルセルロースは、フィルターカートリッジにおいて、一部または全てが洗浄工程等で用いられる溶剤に溶解して除去されていてもよい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[多孔質膜の形成]
(実施例1〜18)
N−メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製、特級)68.7質量%に表1に記載の親水性材料を0.3質量%混合し、200rpmで30分間撹拌した。次に、ポリビニルピロリドン(ピッツコールk−50)を15.6質量%混合し、300rpmで25分間撹拌した。次にポリスルホン(Solvay社、ユーデルP−3500LCD、実施例18のみ、ポリエーテルスルホン(スミカエクセルPES 5200P))を14.5質量%混合し、300rpmで120分間撹拌した。最後に塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、分子生物学用)を1質量%添加し300rpmで30分間撹拌した。撹拌はすべてスリーワンモーター(新東科学社製、BL600)を用いて行った。
調製した液は、常温で15時間静置し脱泡を行った。PET基材(東洋紡社製、A4300)上にアプリケータを用いて、乾燥厚みが140μmになるように液を塗布した。塗布しながら、露点15℃の湿度風を1.9m/sの風速で15秒間あてた。次に、4℃の水槽に20分間浸漬し、膜を凝固させた。PET基材から多孔質膜を剥離し、80℃のオーブンで10分間乾燥させ、多孔質膜を得た。膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影画像から測定した乾燥後の多孔質膜の厚みは、いずれも概ね140μmであり、また、多孔質膜は緻密部位を内部に有する非対称構造を有していた。
(比較例1)
N−メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製、特級)68.9質量%にポリビニルピロリドン(ピッツコールk−50)を15.6質量%混合し、300rpmで25分間撹拌した。次にポリスルホン(Solvay社、ユーデルP−3500LCD)を14.5質量%混合し、300rpmで120分間撹拌した。最後に塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、分子生物学用)を1質量%添加し300rpmで30分間撹拌した。撹拌はすべてスリーワンモーター(新東科学社製、BL600)を用いて行った。
親水性材料溶液は、水(orエタノール)99.3質量%と表1に記載の親水性材料0.7質量%とを混合し、スターラーで30分間撹拌した。
調製した液は、常温で15時間静置し脱泡を行った。PET基材(東洋紡社製、A4300)上にアプリケータを用いて、乾燥厚みが140μmになるように液を塗布した。塗布しながら、露点15℃の湿度風を1.9m/sの風速で20sあてた。次に、4℃の水槽に20分間浸漬し、膜を凝固させた。PET基材から多孔質膜を剥離し、80℃のオーブンで10分間乾燥させ、多孔質膜を得た。得られた多孔質膜を親水性材料溶液に30秒間浸漬し、引き上げた。膜重量が孔に溶液が100%充填された状態になるように、多孔質膜の表面の余分な溶液をキムタオルでふき取った。これを80℃のオーブンで10分間乾燥させ、多孔質膜を得た。膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影画像から測定した乾燥後の多孔質膜の厚みは、概ね140μmであり、また、多孔質膜は緻密部位を内部に有する非対称構造を有していた。
(比較例2〜6)
N−メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製、特級)68.7質量%に表1に記載の親水性材料を0.3質量%混合し、200rpmで30分間撹拌した。次に、ポリビニルピロリドン(ピッツコールk−50)を15.6質量%混合し、300rpmで25分間撹拌した。次にポリスルホン(Solvay社、ユーデルP−3500LCD)を14.5質量%混合し、300rpmで120分間撹拌した。最後に塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、分子生物学用)を1質量%添加し300rpmで30分間撹拌した。撹拌はすべてスリーワンモーター(新東科学社製、BL600)を用いて行った。
調製した液は、常温で15時間静置し脱泡を行った。PET基材(東洋紡社製、A4300)上にアプリケータを用いて、乾燥厚みが140μmになるように液を塗布した。塗布しながら、露点15℃の湿度風を1.9m/sの風速で15秒間あてた。次に、4℃の水槽に20分間浸漬し、膜を凝固させた。PET基材から多孔質膜を剥離し、80℃のオーブンで10分間乾燥させ、多孔質膜を得た。膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影画像から測定した乾燥後の多孔質膜の厚みは、いずれも概ね140μmであり、また、多孔質膜は緻密部位を内部に有する非対称構造を有していた。
(比較例7)
N−メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬社製、特級)68.9質量%にポリビニルピロリドン(ピッツコールk−50)を15.6質量%混合し、300rpmで25分間撹拌した。次にポリスルホン(Solvay社、ユーデルP−3500LCD)を14.5質量%混合し、300rpmで120分間撹拌した。最後に塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、分子生物学用)を1質量%添加し300rpmで30分間撹拌した。撹拌はすべてスリーワンモーター(新東科学社製、BL600)を用いて行った。
調製した液は、常温で15時間静置し脱泡を行った。PET基材(東洋紡社製、A4300)上にアプリケータを用いて、乾燥厚みが140μmになるように液を塗布した。塗布しながら、露点15℃の湿度風を1.9m/sの風速で15秒間あてた。次に、4℃の水槽に20分間浸漬し、膜を凝固させた。PET基材から多孔質膜を剥離し、80℃のオーブンで10分間乾燥させ、多孔質膜を得た。膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影画像から測定した乾燥後の多孔質膜の厚みは、概ね140μmであり、また、多孔質膜は緻密部位を内部に有する非対称構造を有していた。
[TOF−SIMS測定]
各実施例および比較例の多孔質膜を液体窒素で凍結させ、厚み方向で1次面から10μm付近を剃刀を用いて押し切りで割断し、膜内部の孔の表面を露出させた。露出した孔から任意に選んだ5つの孔の表面サンプルをTOF−SIMS装置(アルバック・ファイ社製、TRIFT V nano TOF)に導入し、測定領域1×1μm、スパッタ速度:70nm/min、1次イオン銃:Bi3++(30kV,DC2.0nA)を照射し、2次イオンを質量分析し、孔表面からの深さ(nm)に対する、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンの由来のイオン強度および親水性材料のイオン強度のTOF−SIMSスペクトルを得た。なお、観測したフラグメントは以下のとおりである。
ポリスルホンまたはポリエーテルスルホン:C65 +(m/z=77)
一般式(I):C33+(m/Z=55)もしくは、C45+(m/z=69)
一般式(II):C610NO+(m/z=112.3)
一般式(III):C33+(m/z=55)
上記のTOF−SIMSスペクトルから、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンのイオンが初めて観測された深さからその深さから140nm深い深さまでの上記ポリマーのイオン強度の平均値(IA)、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンのイオンが初めて観測された深さでの親水性材料のイオン強度(IB0)、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンのイオンが初めて観測された深さから100nm深い深さでの親水性材料のイオン強度(IB100)を得て、それぞれの値について上記の5つのサンプルの値の平均値を求めた。IA、IB0、IB100の各値、およびこれらの値に基づき計算した「IB0/IB100」および「IB100/IA」を表1に示す。
実施例はいずれも以下の2つの式をいずれも満たしていた。
B0/IB100>2
B100/IA>0.05
[耐ファウリング性の評価]
超純水に牛血清アルブミン(シグマアルドリッチ社製)を4g/Lとなるように添加し、30分間撹拌した。この液を27℃に温調し、50kPaの圧力で100mlずつ10回、1次面から多孔質膜に通水した。1回目の通水量(初期通水量)RIと10回目の通水量(後期通水量)RFを比較し、RF/RIを耐ファウリング性能の指標として評価した。RF/RIの値が大きいほど多孔質膜の耐ファウリング性能が高い。RI、RF、およびRF/RIを表1に示す。

Claims (10)

  1. ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択されるポリマーからなる骨格を有し、さらにポリビニルピロリドンを含む多孔質膜であって、
    一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体または一般式(II)もしくは一
    般式(III)で表される重合体からなる親水性材料を前記骨格内部に含み、
    前記親水性材料が孔表面に偏在している前記多孔質膜;
    一般式(I)中、
    1は水素原子またはメチル基を表し、
    2は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、または、PO324N(CH33を表し、
    3は水素原子を表し、ただし、R2とR3とが結合してR2が結合する酸素原子およびR3が結合する炭素原子とともに5員環を形成していてもよく、
    tは1〜9の整数であり、
    一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体は一般式(I)で示されるモノマーユニットを60mol%以上含む重合体であり、
    一般式(II)中、mおよびnは、それぞれ独立に整数であり、以下の式を満たし;
    m/(n+m)=0.3〜0.7
    一般式(III)中、nは整数である。
  2. 飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた孔表面からの深さ方向分析において、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンからなる群より選択される前記ポリマーのイオンが初めて観測された深さからその深さから140nm深い深さまでの前記ポリマーのイオン強度の平均値をIA、前記ポリマーのイオンが初めて観測された深さでの前記親水性材料のイオン強度をIB0、前記ポリマーのイオンが初めて観測された深さから100nm深い深さでの前記親水性材料のイオン強度をIB100としたとき、以下の式を満たす、請求項1に記載の多孔質膜;
    B0/IB100>2;
    B100/IA>0.05。
  3. 前記親水性材料の重量平均分子量が10,000以上である請求項1または2に記載の多孔質膜。
  4. 前記親水性材料が一般式(I)で表されるモノマーユニットを含む重合体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  5. 前記親水性材料が一般式(II)で表される重合体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  6. 前記親水性材料が一般式(III)で表される重合体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  7. 厚みが10〜1000μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  8. 厚み方向で孔径分布を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  9. 孔径が最小となる層状の緻密部位を内部に有し、
    前記緻密部位から前記多孔質膜の少なくとも一方の膜表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔質膜。
  10. 前記緻密部位の平均孔径が0.01〜10μmである請求項9に記載の多孔質膜。
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