JP2021025494A - エンジンシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】黒煙の発生を抑えつつ排気ガスを昇温させることのできるエンジンシステムを提供する。【解決手段】エンジンシステムは、排気側動弁機構を有するエンジンとエンジンを制御する制御装置とを備える。制御装置は、触媒が活性状態にあるときに通常モードを、触媒が不活性状態にあるときに昇温モードを選択する。排気側動弁機構は、通常モードに通常排気動作を実行させる排気用カムと、排気用カムに対して開弁期間が重なるように構成され、昇温モードにおいて膨張行程に排気バルブを開弁させる第1昇温用カムと、昇温モードにおいて第1昇温排気動作の後に少なくとも一部が排気行程に含まれる閉弁期間を経て排気バルブを開弁させる第2昇温用カムと、を有する。制御装置は、昇温モードへの切り替え時、第1昇温用カムおよび第2昇温用カムによる開閉動作を有効化してから排気用カムと第1昇温用カムとを進角させ、排気用カムによる開閉動作を無効化する。【選択図】図6
Description
本発明は、エンジンシステムに関する。
例えば特許文献1のように、エンジンを用いたエンジンシステムには、例えば排気ガスに還元剤を添加し、その添加した還元剤を用いて排気ガスのNOxを還元する触媒を有する排気浄化装置が搭載されている。
上述した排気浄化装置においては、触媒が活性状態にあるときに排気ガスの浄化が可能である。そのため、触媒が不活性状態にある場合には早期に触媒を活性化することが求められる。触媒の活性化は、燃料噴射量を増量して排気ガスを昇温することにより実現されるが、燃料噴射量の増量に際して黒煙の発生を抑えることが求められる。本発明は、黒煙の発生を抑えつつ排気ガスを昇温させることのできるエンジンシステムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するエンジンシステムは、燃焼室を開閉する排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気側動弁機構を有するエンジンと、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒を有する排気浄化装置と、前記エンジンを制御する制御装置と、を備えたエンジンシステムであって、前記制御装置は、ドライバーからの要求トルクと前記触媒の状態とを取得する取得部と、前記エンジンの出力トルクが前記要求トルクとなるように前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御部と、前記エンジンシステムの制御モードを選択するモード選択部と、前記排気側動弁機構を制御するバルブ制御部と、を備え、前記モード選択部は、前記触媒が活性状態にあるときに制御モードとして通常モードを選択し、前記触媒が不活性状態にあるときに前記制御モードとして昇温モードを選択し、前記排気側動弁機構は、前記通常モードにおいて通常排気動作を実行する排気用カムと、前記排気用カムに対して開弁期間が重なるように構成され、前記昇温モードにおいて膨張行程に前記排気バルブが開弁する第1昇温排気動作を実行する第1昇温用カムと、前記昇温モードにおいて前記第1昇温排気動作の後に少なくとも一部が排気行程に含まれる閉弁期間を経て前記排気バルブが開弁する第2昇温排気動作を実行する第2昇温用カムとを有し、前記バルブ制御部は、前記通常モードから前記昇温モードへの切り替え時、前記第1昇温用カムおよび前記第2昇温用カムによる開閉動作を有効化したのちに前記排気用カムと前記第1昇温用カムとを進角させ、その後、前記排気用カムによる開閉動作を無効化する。
上記構成によれば、膨張行程においては、第1昇温排気動作によって燃焼室から排気ガスが流出することでエンジンに出力損失が生じる。また、排気行程においては、第1昇温排気動作完了時に燃焼室に残っている排気ガスが閉弁期間に圧縮されることでエンジンに出力損失が生じる。そのため、要求トルクを具現化するうえで必要となる燃料噴射量をエンジンの出力損失の分だけ増量することができる。
また、第1昇温排気動作の実行中に燃焼室から流出する排気ガスは、第1昇温排気動作を実行せずに燃焼室から流出する排気ガスよりもエンタルピの高い排気ガスである。そのため、第1昇温排気動作の実行中は高エンタルピの排気ガスを排気浄化装置に供給することができる。そのうえ、第1昇温排気動作が第2昇温排気動作よりも最大リフト量が大きく、かつ、開弁期間が長いことで、より多くの高エンタルピの排気ガスを排気浄化装置に供給することができる。
また、第1昇温排気動作完了時に燃焼室に残っている排気ガスは、閉弁期間において圧縮されたのち第2昇温排気動作によって燃焼室から排出される。そのため、該排気ガスの逆流に基づく排気再循環、いわゆる内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)に起因するEGR率の上昇を抑えることができる。その結果、エンジンが吸入する新気量が多くなることから、より高いエンタルピの排気ガスを排気浄化装置に供給することができる。
すなわち、上記構成によれば、触媒が不活性状態にあるとき、ドライバーの要求トルクを満足しつつ排気浄化装置に供給される排気エネルギーを効果的に高めることができる。その結果、触媒を早期に活性化させることができる。
そのうえ、通常モードから昇温モードへの切り替え時、排気バルブが閉状態に制御されることがないから、モード変更時にともなって燃料噴射量が増加したとしても黒煙の発生を抑えることができる。
上記構成のエンジンシステムにおいて、前記排気用カム、前記第1昇温用カム、および、前記第2昇温用カムが同じカムシャフトに形成されていてもよい。
上記構成のように、排気用カム、第1昇温用カム、および、第2昇温用カムを1つのカムシャフトに形成することができる。
上記構成のように、排気用カム、第1昇温用カム、および、第2昇温用カムを1つのカムシャフトに形成することができる。
上記構成のエンジンシステムにおいて、前記第2昇温排気動作は、進角前は前記通常モードにおける吸気バルブの開閉動作である通常吸気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作であり、進角後は前記進角前の通常排気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作であることが好ましい。上記構成によれば、排気バルブとピストンとの干渉をより確実に抑えつつ第2昇温排気動作を実行することができる。
上記構成のエンジンシステムにおいて、前記排気用カムおよび前記第1昇温用カムが形成されたカムシャフトと第2昇温用カムが形成されたカムシャフトとが互いに異なっていてもよい。上記構成のように、排気用カムおよび第1昇温用カムが形成されたカムシャフトと第2昇温用カムが形成されたカムシャフトとを異なるものとすることができる。
上記構成のエンジンシステムにおいて、前記通常排気動作および前記第1昇温排気動作の進角前、前記第2昇温排気動作は、前記通常排気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作であることが好ましい。上記構成によれば、排気バルブとピストンとの干渉をより確実に抑えつつ第2昇温排気動作を実行することができる。
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、エンジンシステムの第1実施形態について説明する。まず、図1を参照してエンジンシステムの概略構成について説明する。
図1〜図10を参照して、エンジンシステムの第1実施形態について説明する。まず、図1を参照してエンジンシステムの概略構成について説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、ディーゼルエンジン10(以下、エンジン10という。)を備える。エンジン10は、複数のシリンダー11を有するエンジンブロック12を備える。各シリンダー11には、コモンレールから所定圧力の燃料が供給されるインジェクター13から燃料が噴射される。エンジンブロック12には、インテークマニホールド14とエキゾーストマニホールド15とが接続されている。インテークマニホールド14にはエンジン10が吸入する空気が流れる吸気通路16が接続され、エキゾーストマニホールド15にはエンジン10が排出した排気ガスが流れる排気通路17が接続されている。
図2に示すように、エンジンブロック12は、シリンダー11が形成されたシリンダーブロック12Aとシリンダーブロック12Aに連結されるシリンダーヘッド12Bとを有している。シリンダーヘッド12Bは、シリンダーブロック12Aに形成されたシリンダー11の開口を塞いでいる。エンジン10は、各シリンダー11に対して上下動可能に収容されるピストン20を有している。シリンダーブロック12A、シリンダーヘッド12B、および、ピストン20で囲まれる空間は、インジェクター13が燃料を噴射するとともに該燃料が燃焼する燃焼室21である。ピストン20は、コネクションロッド22を介して図1に示すクランクシャフト23に連結されている。クランクシャフト23は、ピストン20がシリンダー11内を上下動することにより回転駆動される。シリンダーヘッド12Bには、インテークマニホールド14に接続される吸気ポート25とエキゾーストマニホールド15に接続される排気ポート26とがシリンダー11ごとに形成されている。
エンジン10は、吸気バルブ27と排気バルブ28とを有している。吸気バルブ27は、吸気側動弁機構29によって駆動され、吸気ポート25を開閉することによりインテークマニホールド14に対して燃焼室21を開閉する。排気バルブ28は、排気側動弁機構30によって駆動され、排気ポート26を開閉することによりエキゾーストマニホールド15に対して燃焼室21を開閉する。各動弁機構29,30は、駆動対象のバルブのリフト量や開閉タイミングを変更可能に構成された可変バルブ機構である。各動弁機構29,30は、カム切り替え型の可変バルブ機構であってもよいし、電子制御式のアクチュエーターによってリフト量や開閉タイミングが変更可能な可変バルブ機構であってもよい。
図1に示すように、エンジンシステムは、ターボチャージャー35を備えている。ターボチャージャー35は、コンプレッサー36、インタークーラー37、およびタービン38を有している。コンプレッサー36およびインタークーラー37は、吸気通路16に配設されている。コンプレッサー36はエアクリーナー39を通過した空気を圧縮し、インタークーラー37はコンプレッサー36が圧縮した空気を冷却する。タービン38は、排気通路17に配設されている。タービン38は、排気ガスのエネルギーである排気エネルギーを利用してコンプレッサー36を回転させる。
エンジンシステムは、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置40を備えている。EGR装置40は、エキゾーストマニホールド15と吸気通路16とを接続するEGR通路41を通じて排気側から吸気側へ排気ガスを還流する外部EGRを実行可能に構成されている。EGR通路41には、EGRクーラー42とEGR弁43とが設けられている。EGR弁43が開状態にあるとき、シリンダー11には、EGRガスと吸入空気との混合気体が作動ガスとして供給される。EGR弁43が閉状態にあるとき、シリンダー11には、吸入空気が作動ガスとして供給される。シリンダー11では、作動ガスとインジェクター13が噴射した燃料との混合気が燃焼する。シリンダー11からの排気ガスは、エキゾーストマニホールド15を通じて排気通路17へと流入したのちタービン38に流入する。なお、エンジン10が吸入する作動ガスにおけるEGRガスの割合をEGR率という。
エンジンシステムは、排気浄化装置45を備えている。排気浄化装置45には、タービン38を通過した排気ガスが流入する。排気浄化装置45は、添加部46及び選択還元型触媒47を有している。選択還元型触媒47は、排気通路17を構成する拡径部17Aに収容されている。
添加部46は、拡径部17Aに流入する排気ガスに対して還元剤を添加する。添加部46は、還元剤を貯留するタンク48に接続された還元剤通路49を備える。還元剤通路49には、ポンプ50が配設されている。ポンプ50は、タンク48内の還元剤を所定圧力で添加弁51に圧送する。添加弁51は、弁機構を内蔵した電子制御式の噴射弁であり、弁機構が開状態にあるときに排気ガスに還元剤を添加する。
選択還元型触媒47は、添加部46の添加した還元剤を利用して排気ガスに含まれるNOxを窒素や水へと還元する。選択還元型触媒47は、例えば耐熱性に優れたセラミックやステンレスを素材としたフロースルー型のモノリス担体に対して各種の触媒金属を胆持させたものである。選択還元型触媒47は、その温度である触媒温度Tcが所定の温度範囲にあるときに活性状態となる。この温度範囲の下限値は下限活性温度TcLである。
選択還元型触媒47の一例は、尿素SCR触媒である。この場合、添加部46は還元剤として尿素水を添加し、選択還元型触媒47は尿素水が加水分解したアンモニアと排気ガスに含まれるNOxとを反応させてNOxを窒素や水へと還元する。選択還元型触媒47は、モノリス担体に対して、例えば銅系、鉄系、バナジウム系の各種の触媒金属を胆持させることにより構成される。選択還元型触媒47は、例えば150℃〜350℃の温度範囲を活性温度として有する。
なお、排気浄化装置45は、排気通路17における添加弁51の上流に、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するフィルターや排気ガスに含まれている未燃燃料を酸化する前段酸化触媒などを有していてもよい。また、排気浄化装置45は、排気通路17における選択還元型触媒47の下流に、選択還元型触媒47を通過した排気ガスに含まれるアンモニアなどを酸化する後段酸化触媒などを有していてもよい。また、排気浄化装置45は、選択還元型触媒47として、エンジン10の燃料である軽油を還元剤としてNOxを還元する触媒、いわゆるHC−SCR触媒を備えていてもよい。
エンジンシステムは、添加弁51とターボチャージャー35のタービン38との間に排気絞り弁52を有している。排気絞り弁52は、排気通路17の流路断面積を変更可能に構成されている。排気絞り弁52は、排気通路17の流路断面積を小さくして排気抵抗を高めることで補助ブレーキの1つとして機能する。補助ブレーキは、ドライバーが操作可能な作動スイッチSがオン状態にあるときに作動するように構成されている。作動スイッチSは、制御装置60に対して操作状況を示す操作信号を出力する。
エンジンシステムは、各種センサーを備えている。エンジンシステムは、クランク角度センサー55、触媒温度センサー56、アクセル開度センサー57、排気ガス温度センサー58、および、車速センサー59を備えている。クランク角度センサー55は、エンジン10によって駆動されるクランクシャフト23の回転角度であるクランク角度を検出する。触媒温度センサー56は、選択還元型触媒47の温度である触媒温度Tcを検出する。アクセル開度センサー57は、ドライバーによって操作されるアクセルペダル57aの踏込み量に基づくアクセル開度ACCを検出する。排気ガス温度センサー58は、選択還元型触媒47に流入する排気ガスの温度である排気ガス温度Texを検出する。車速センサー59は、車両の速度である車速vを検出する。各種センサーは、検出した値を示す信号をエンジンシステムを統括制御する制御装置60に出力する。
図3〜図6を参照して制御装置60について説明する。制御装置60は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
図3に示すように、制御装置60は、各種コンピュータプログラムの実行により機能する機能部として、取得部61、モード選択部62、燃料噴射制御部63、EGR制御部64、添加制御部65、バルブ制御部66、および排気ブレーキ制御部70を有している。
取得部61は、図示されない入力インターフェースを通じて各種情報を取得する。取得部61は、クランク角度センサー55が出力した検出信号に基づいてクランク角度を取得する。取得部61は、触媒温度センサー56が出力した検出信号に基づいて触媒温度Tcを選択還元型触媒47の状態として取得する。取得部61は、アクセル開度センサー57が出力した検出信号に基づいてアクセル開度ACCを取得する。取得部61は、クランク角度の変化量に基づいてエンジン回転数Neを演算し、その演算したエンジン回転数Neとアクセル開度ACCとに基づいてドライバーからの要求トルクLを取得する。取得部61は、排気ガス温度センサー58が出力した検出信号に基づいて排気ガス温度Texを取得する。取得部61は、車速センサー59が出力した検出信号に基づいて車速vを取得する。取得部61は、作動スイッチSからの操作信号に基づいて作動スイッチSの操作状況を取得する。
モード選択部62は、エンジンシステムの制御モードを選択する。モード選択部62は、取得部61が取得した各種情報に基づいて、インジェクター13による燃料の噴射、吸気バルブ27の吸気動作、排気バルブ28の排気動作、および、排気絞り弁52の動作などについての制御モードを選択するモード選択処理を実行する。モード選択部62は、モード選択処理を通じて、昇温モード、保温モード、ブレーキモード、および、通常モードのなかから制御モードを択一的に選択する。昇温モードは、排気浄化装置45に供給される排気エネルギーを増大させて選択還元型触媒47の昇温を優先させる制御モードである。保温モードは、選択還元型触媒47の触媒温度Tcを下限活性温度TcL以上に保持する制御モードである。ブレーキモードは、吸気バルブ27や排気バルブ28の開閉を制御して制動力を発生させる制御モードである。通常モードは、排気ガスの浄化や燃料消費量の低減を優先させる制御モードである。
図4を参照して、モード選択部62が実行するモード選択処理について説明する。
図4に示すように、モード選択処理にて、モード選択部62は、取得部61が取得する触媒温度Tcが下限活性温度TcL以上であるか否かを判断する(ステップS201)。
図4に示すように、モード選択処理にて、モード選択部62は、取得部61が取得する触媒温度Tcが下限活性温度TcL以上であるか否かを判断する(ステップS201)。
触媒温度Tcが下限活性温度TcL未満である場合(ステップS201:NO)、モード選択部62は、例えば、要求トルクLとエンジン回転数Neとに基づくエンジン負荷ELが昇温選択負荷EL1以下であるか否かを判断する(ステップS202)。昇温選択負荷EL1は、燃料噴射量を増量したとしても排気ガスに含まれる未燃燃料が抑えられ、かつ、ドライバーからの要求トルクLを具現化可能な値に設定される。昇温選択負荷EL1は、予め行った実験やシミュレーションの結果等に基づき設定される。昇温選択負荷EL1は、例えば20%以下の値から設定されることが好ましく、その一例は15%である。エンジン負荷ELが昇温選択負荷EL1以下である場合(ステップS202:YES)、モード選択部62は、昇温モードを選択して(ステップS203)一連の処理を一旦終了する。
ステップS201において、触媒温度Tcが下限活性温度TcL以上である場合(ステップS201:YES)、モード選択部62は、取得部61が取得する排気ガス温度Texが保温可能温度Tex1以上であるか否かを判断する(ステップS204)。保温可能温度Tex1は、その温度よりも低い温度の排気ガスが選択還元型触媒47に所定期間だけ供給された場合に触媒温度Tcが下限活性温度TcLまで低下する可能性が高いと判断される温度である。換言すれば、保温可能温度Tex1は、触媒温度Tcを下限活性温度TcL以上に保持することが可能な温度である。保温可能温度Tex1は、例えば、下限活性温度TcL以上の値であり、かつ、エンジンシステムが備える各種センサーの1つとして外気温を検出する外気温センサーの検出値が低いほど高くなるように設定されてもよい。外気温が低いほど保温可能温度Tex1が高くなることにより、その時々の走行環境に応じた適切な保温可能温度Tex1を設定できる。その結果、触媒温度Tcが下限活性温度TcLまで低下することがより確実に抑えられる。
排気ガス温度Texが保温可能温度Tex1未満である場合(ステップS204:NO)、モード選択部62は、エンジン負荷ELが保温選択負荷EL2以下であるか否かを判断する(ステップS205)。保温選択負荷EL2は、例えばアイドリング状態などエンジン負荷ELが軽負荷であると判断される値である。保温選択負荷EL2は、昇温選択負荷EL1よりも低い値が設定される。エンジン負荷ELが保温選択負荷EL2以下である場合(ステップS205:YES)、モード選択部62は、保温モードを選択し(ステップS206)、一連の処理を一旦終了する。すなわち、保温モードは、排気ガス温度Texが触媒温度Tcを下限活性温度TcLに到達させる可能性の高い状態にあり(ステップS204:NO)、かつ、エンジン負荷ELが軽負荷にあることで排気ガス温度Texが上昇する可能性の低い状態(ステップS205:YES)において、触媒温度Tcを下限活性温度TcLよりも高い温度に保持するモードである。
一方、排気ガス温度Texが保温可能温度Tex1以上である場合(ステップS204:YES)、モード選択部62は、取得部61が取得するアクセル開度ACCが0%以上であるか否かを判断する(ステップS207)。
アクセル開度ACCが0%未満である場合(ステップS207:NO)、すなわち要求トルクLが減速を要求する減速要求トルクにある場合、モード選択部62は、補助ブレーキの作動条件が成立しているか否かを判断する(ステップS208)。作動条件は、アクセル開度ACCが0%未満にあるときに、作動スイッチSがオン状態にあり、かつ、車速vが作動速度v1以上にあることである。作動速度v1は、補助ブレーキによる制動力が有効に作用する車速vに設定される。作動速度v1の一例は、30km/hである。
作動条件が成立している場合(ステップS208:YES)、モード選択部62は、ブレーキモードを選択し(ステップS209)、一連の処理を一旦終了する。ブレーキモードにおいて、制御装置60は、補助ブレーキの1つである圧縮開放ブレーキが作動するように吸気側動弁機構29および排気側動弁機構30を制御する。
一方、アクセル開度ACCが0%以上である場合(ステップS207:YES)、エンジン負荷ELが昇温選択負荷EL1以下でない場合(ステップS202:NO)、エンジン負荷ELが保温選択値EL2以下でない場合(ステップS205:NO)、補助ブレーキの作動条件が成立していない場合(ステップS208:NO)、モード選択部62は、通常モードを選択し(ステップS210)、一連の処理を一旦終了する。
図3に示すように、燃料噴射制御部63は、図示されない出力インターフェースを通じて制御信号を出力することにより、各インジェクター13による燃料の噴射を制御する。燃料噴射制御部63は、取得部61が取得したアクセル開度ACC及びエンジン回転数Ne、ならびに、モード選択部62が選択した制御モードなどに基づいて各インジェクター13による燃料の噴射を制御する。燃料噴射制御部63は、アクセル開度ACCおよびエンジン回転数Neごとに燃料噴射量が規定された燃料マップをメモリの所定領域に保持している。燃料噴射制御部63は、通常モードにおいて使用する燃料マップである通常マップ67、昇温モードにおいて使用する燃料マップである昇温マップ68、および、保温モードにおいて使用する燃料マップである保温マップ69をメモリの所定領域に保持している。燃料噴射制御部63は、モード選択部62が選択した制御モードに対応する燃料マップを用いて燃料噴射量を制御する。燃料噴射制御部63は、要求トルクLが減速要求トルクにあるブレーキモードにおいては、エンジン回転数Neに応じて燃料の噴射を一時的に停止する燃料カット制御を実行する。
EGR制御部64は、図示されない出力インターフェースを通じて制御信号を出力することにより、EGR装置40、具体的にはEGR弁43の開度を制御する。EGR制御部64は、モード選択部62が選択した制御モードに基づいてEGR弁43を制御し、EGRガスの量であるEGR量を制御する。EGR制御部64は、制御モードが通常モードである場合、その時々のエンジン10の運転状態に適したEGR量だけ排気ガスが還流されるようにEGR弁43の開度を制御する。制御モードが昇温モード、保温モード、および、ブレーキモードのいずれかである場合、EGR制御部64は、EGR弁43を閉状態に維持することで外部EGRを禁止する。
添加制御部65は、図示されない出力インターフェースを通じて制御信号を出力することにより、排気浄化装置45の添加部46、具体的には添加弁51の開閉を制御する。添加制御部65は、モード選択部62が選択した制御モードに基づいて添加弁51による尿素水の添加量や添加タイミングを制御する。添加制御部65は、制御モードが通常モード、保温モード、および、ブレーキモードのいずれかである場合、その時々のエンジン10の運転状態に適した量の尿素水が添加されるように添加弁51の開閉を制御する。添加制御部65は、制御モードが昇温モードである場合、添加弁51を閉状態に維持することで尿素水の添加を禁止する。
バルブ制御部66は、図示されない出力インターフェースを通じて制御信号を出力することにより、吸気側動弁機構29を通じて吸気バルブ27の開閉動作を制御するとともに、排気側動弁機構30を通じて排気バルブ28の開閉動作を制御する。バルブ制御部66は、モード選択部62が選択した制御モードに基づいて吸気バルブ27および排気バルブ28の各々についてリフト量及び開閉タイミングを制御する。
バルブ制御部66は、吸気バルブ27に対し、通常モードにおいては通常吸気動作、昇温モードにおいては昇温吸気動作、保温モードにおいては保温吸気動作、ブレーキモードにおいてはブレーキ吸気動作を実行させる。バルブ制御部66は、排気バルブ28に対し、通常モードにおいては通常排気動作、昇温モードにおいては昇温排気動作、保温モードにおいては保温排気動作、ブレーキモードにおいてはブレーキ排気動作を実行させる。
図5〜図8を参照して排気側動弁機構30について説明する。
図5に示すように、排気側動弁機構30は、排気カムシャフト75、排気カムフェーザー79、および、排気側駆動部80を有している。
図5に示すように、排気側動弁機構30は、排気カムシャフト75、排気カムフェーザー79、および、排気側駆動部80を有している。
排気カムシャフト75は、クランクシャフト23に従動回転するシャフトである。排気カムシャフト75には、各シリンダー11の排気バルブ28に対応する排気用カム76と昇温用カム78とが形成されている。排気カムシャフト75の一端部には、排気カムフェーザー79が設けられている。
排気カムフェーザー79は、排気カムシャフト75の位相を変更可能に構成されている。排気カムフェーザー79は、排気側駆動部80の排気カムフェーザー駆動部81から進角油圧が供給されることにより排気カムシャフト75を所定の進角角度だけ進角させる。排気カムフェーザー駆動部81は、制御装置60のバルブ制御部66からの制御信号を受けて排気カムシャフト75の位相を通常位相と進角位相との間で切り替える。
排気側駆動部80は、各シリンダー11に対して各別に対応する排気用動弁部82と昇温用動弁部84を有している。
排気用動弁部82は、排気用カム76の回転にともなって揺動する図示されないロッカーアームを有するロストモーション式の動弁機構である。排気用動弁部82は、排気バルブ28に通常排気動作を実行させる作動状態と排気用カム76に基づく排気バルブ28の開閉を閉状態に維持する非作動状態とを有する。排気用動弁部82は、制御装置60のバルブ制御部66からの制御信号を受けて作動状態と非作動状態とが切り替えられる。制御装置60は、通常モードにおいて排気用動弁部82を作動状態に制御し、昇温モード、保温モード、および、ブレーキモードにおいて非作動状態に制御する。
排気用動弁部82は、排気用カム76の回転にともなって揺動する図示されないロッカーアームを有するロストモーション式の動弁機構である。排気用動弁部82は、排気バルブ28に通常排気動作を実行させる作動状態と排気用カム76に基づく排気バルブ28の開閉を閉状態に維持する非作動状態とを有する。排気用動弁部82は、制御装置60のバルブ制御部66からの制御信号を受けて作動状態と非作動状態とが切り替えられる。制御装置60は、通常モードにおいて排気用動弁部82を作動状態に制御し、昇温モード、保温モード、および、ブレーキモードにおいて非作動状態に制御する。
昇温用動弁部84は、昇温用カム78の回転にともなって揺動する図示されないロッカーアームの揺動を受けて昇温油圧を発生させる油圧回路を有する。昇温用動弁部84は、その昇温油圧を排気バルブ28に伝達することにより昇温排気動作を実行させる。昇温用動弁部84は、排気バルブ28が昇温排気動作を実行可能な作動状態と、排気バルブ28を閉状態に維持する非作動状態とを有する。制御装置60は、昇温モードおよび保温モードにおいて昇温用動弁部84を作動状態に制御し、通常モード、および、ブレーキモードにおいて非作動状態に制御する。
なお、吸気側動弁機構29は、吸気カムシャフト105、吸気カムフェーザー109、および、吸気側駆動部110を有している。吸気カムシャフト105は、クランクシャフト23に従動回転するシャフトであり、各シリンダー11の吸気バルブ27に対応する吸気用カム106が形成されている。吸気カムフェーザー109は、吸気カムシャフト105の一端部に設けられており、吸気側駆動部110により吸気カムシャフト105の位相を変更可能に構成されている。
図6に示すように、通常排気動作は、排気カムフェーザー79が通常位相にあるときに実行される開閉動作である。通常排気動作は、膨張行程の下死点である膨張下死点(=180°CA)付近において開弁して排気行程の上死点である排気上死点(=360°CA)付近において閉弁する開閉動作である。
昇温排気動作は、排気カムフェーザー79が進角位相にあるときに実行される開閉動作である。昇温排気動作は、膨張行程に開弁する第1昇温排気動作と、少なくとも一部が排気行程に含まれる閉弁期間を経て開弁する第2昇温排気動作とで構成される。
第1昇温排気動作は、第2昇温排気動作よりも最大リフト量が大きく、かつ、開弁期間が長い排気動作である。第1昇温排気動作は、通常排気動作よりも開弁時期が早く、かつ、開弁期間が短い開閉動作である。例えば、第1昇温排気動作は、最大リフト量及び開弁期間の各々について通常排気動作の半分以下に設定される。第1昇温排気動作は、圧縮行程の上死点(=0°CA)である圧縮上死点後40°CA以降に開弁し、膨張行程において閉弁する開閉動作である。
第2昇温排気動作は、排気上死点(=360°CA)付近において開閉する開閉動作である。例えば、第2昇温排気動作は、最大リフト量及び開弁期間の各々が第1昇温排気動作の半分以下に設定される。昇温排気動作は、排気ガスを昇温させて排気浄化装置45に供給される排気エネルギーを増大させる。
昇温排気動作は、排気カムフェーザー79が通常位相にあるときに実行される開閉動作である。第1昇温排気動作は、進角前の開弁期間が通常排気動作の開弁期間に重なるように構成されている。また、第2昇温排気動作は、進角前の開弁期間が通常吸気動作の開弁期間と重なるように構成されている。「開弁期間が重なる」とは、同時期に開弁させるように動作していることをいう。排気側駆動部80は、開弁期間が重なるとき、その時々における最大リフト量だけ排気バルブ28をリフトさせるように構成されている。すなわち、通常排気動作と進角前の第1昇温排気動作とが重なるときは通常排気動作を実行する。
図6〜図8を参照して、第1実施形態のエンジンシステムの作用、すなわち通常モードから昇温モードへの切り替え時における排気バルブ28のリフト態様について説明する。
図6に示すように、バルブ制御部66は、制御モードが通常モードから昇温モードに切り替わると、まず、昇温用動弁部84を非作動状態(無効化状態)から作動状態(有効化状態)に制御する。このとき、進角前の第1昇温排気動作が通常排気動作に重なっていることから、排気バルブ28は、通常開閉動作と進角前の第2昇温排気動作とを実行する。
図6に示すように、バルブ制御部66は、制御モードが通常モードから昇温モードに切り替わると、まず、昇温用動弁部84を非作動状態(無効化状態)から作動状態(有効化状態)に制御する。このとき、進角前の第1昇温排気動作が通常排気動作に重なっていることから、排気バルブ28は、通常開閉動作と進角前の第2昇温排気動作とを実行する。
図7に示すように、次に、バルブ制御部66は、排気カムフェーザー駆動部81を通じて、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相に変更する。これにより、通常排気動作、第1昇温排気動作、および、第2昇温排気動作がそれぞれ進角する。
図8に示すように、最後に、バルブ制御部66は、排気用動弁部82を作動状態から非作動状態に制御する。これにより、進角後の通常排気動作が消失し、排気バルブ28は第1昇温排気動作と第2昇温排気動作とで構成された昇温排気動作を実行する。
昇温排気動作においては、第1昇温排気動作の実行中に燃焼室21から流出する排気ガスは、第1昇温排気動作を実行せずに燃焼室21から排出される排気ガスよりもピストン20を押下する仕事をしていない分だけエンタルピの高い排気ガスである。そのため、第1昇温排気動作の実行中は、より高いエンタルピを有する排気ガスを排気浄化装置45に供給することができる。そのうえ、第1昇温排気動作が第2昇温排気動作よりも最大リフト量が大きく、かつ、開弁期間の長い開閉動作であることにより、より多くの高エンタルピの排気ガスを排気浄化装置45に供給することができる。その結果、排気浄化装置45に供給される排気エネルギーを効果的に増大させることができる。
第1昇温排気動作完了時に燃焼室21に残っている排気ガスは、第2昇温排気動作によって燃焼室21から排気ポート26へと流出する。これにより、排気上死点における燃焼室21の圧力を低下させることができ、該排気ガスの逆流に基づくEGR、いわゆる内部EGRに起因するEGR率の上昇を抑えることができる。その結果、エンジン10が吸入する新気量が多くなることで第1昇温排気動作の実行中により高いエンタルピの排気ガスを排気浄化装置45に供給することができる。
第1昇温排気動作の実行中は、高エンタルピの排気ガスがターボチャージャー35のタービン38に流入することから、ターボチャージャー35を効率よく駆動できる。また、第1昇温排気動作と第2昇温排気動作との間の閉弁期間において排気ガスが圧縮されることで、第2昇温排気動作において燃焼室21から流出する排気ガスの温度である排出温度を高めることができる。これにより、ターボチャージャー35を効率よく駆動させることができる。このようにターボチャージャー35が効率よく駆動されることでエンジン10が吸入する空気量が多くなり、さらなる排気エネルギーの増大を図ることができる。
第1実施形態のエンジンシステムの効果について説明する。
(1−1)制御モードから昇温モードへの切り替え時、制御装置60は、排気用動弁部82を作動状態に維持したまま、昇温用動弁部84を非作動状態から作動状態に制御する。そして制御装置60は、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相へと制御したのち、排気用動弁部82を作動状態から非作動状態に制御する。こうした構成によれば、モード変更時における各サイクルにおいて排気バルブ28が閉状態に制御されることがないから、吸入行程において多量の排気ガスが吸入されることがなくなる。その結果、モード変更時における黒煙の発生を抑えることができる。
(1−1)制御モードから昇温モードへの切り替え時、制御装置60は、排気用動弁部82を作動状態に維持したまま、昇温用動弁部84を非作動状態から作動状態に制御する。そして制御装置60は、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相へと制御したのち、排気用動弁部82を作動状態から非作動状態に制御する。こうした構成によれば、モード変更時における各サイクルにおいて排気バルブ28が閉状態に制御されることがないから、吸入行程において多量の排気ガスが吸入されることがなくなる。その結果、モード変更時における黒煙の発生を抑えることができる。
(1−2)昇温排気動作は、排気カムシャフト75の進角前、通常排気動作と開弁期間が重なる第1昇温排気動作と、通常吸気動作と開弁期間が重なる第2昇温排気動作と、によって構成されている。そのため、通常モードから昇温モードへの切り替え時における排気バルブ28とピストン20との干渉を防止することができる。
(1−3)排気カムシャフト75の進角時、排気バルブ28は、進角後の通常排気動作を仮想的な第1昇温排気動作とする開閉動作を行う。そのため、排気ガスの昇温効果をより早い時期に得ることができる。
(第2実施形態)
図9〜図12を参照してエンジンシステムの第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態のエンジンシステムは、第1実施形態のエンジンシステムと主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
図9〜図12を参照してエンジンシステムの第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態のエンジンシステムは、第1実施形態のエンジンシステムと主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
図9に示すように、排気カムシャフト75には、第1昇温排気動作用のカムプロファイルを有する第1昇温用カム78aが形成されている。吸気カムシャフト105には、第2昇温排気動作用のカムプロファイルを有する第2昇温用カム78bが形成されている。
昇温用動弁部84は、図示されない第1油圧回路と第2油圧回路とを有する。第1油圧回路は、第1昇温用カム78aの回転にともなって揺動する図示されないロッカーアームの揺動を受けて第1昇温排気動作が実行される第1昇温油圧を発生させる。第2油圧回路は、第2昇温用カム78bの回転にともなって揺動する図示されないロッカーアームの揺動を受けて第2昇温排気動作が実行される第2昇温油圧を発生させる。
昇温用動弁部84は、作動状態および非作動状態のほか、排気バルブ28が第1昇温排気動作のみを実行可能な第1作動状態(第1有効化状態)と排気バルブ28が第2昇温排気動作のみを実行可能な第2作動状態(第2有効化状態)とを有する。
図10に示すように、第1昇温排気動作は、進角前の開弁期間が進角前の通常排気動作の開弁期間に重なるように構成されている。第2昇温排気動作は、最大リフト量を含めた大部分の開弁期間が進角前の通常排気動作の開弁期間に重なるように構成されている。
図10〜図12を参照して第2実施形態のエンジンシステムの作用、すなわち通常モードから昇温モードへの切り替え時の排気バルブ28のリフト態様について説明する。
図10に示すように、バルブ制御部66は、制御モードが通常モードから昇温モードに切り替わると、まず、昇温用動弁部84を非作動状態から第1作動状態および第2作動状態を含む作動状態に制御する。このとき、進角前の第1昇温排気動作が通常排気動作に重なっているから、排気バルブ28は、主に通常開閉動作を実行する。
図10に示すように、バルブ制御部66は、制御モードが通常モードから昇温モードに切り替わると、まず、昇温用動弁部84を非作動状態から第1作動状態および第2作動状態を含む作動状態に制御する。このとき、進角前の第1昇温排気動作が通常排気動作に重なっているから、排気バルブ28は、主に通常開閉動作を実行する。
図11に示すように、次に、バルブ制御部66は、排気用動弁部82を作動状態から非作動状態に制御する。これにより、通常排気動作が消失し、排気バルブ28は、進角前の第1昇温排気動作と、第2昇温排気動作とを実行する。
図12に示すように、最後に、バルブ制御部66は、排気カムフェーザー駆動部81を通じて、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相に変更する。これにより、進角前の第1昇温排気動作が進角し、排気バルブ28は、昇温排気動作を実行する。
第2実施形態のエンジンシステムの効果について説明する。
(2−1)制御モードから昇温モードへの切り替え時、制御装置60は、排気用動弁部82を作動状態に維持したまま、昇温用動弁部84を作動状態に制御する。そして制御装置60は、排気用動弁部82を非作動状態に制御したのち、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相へと制御する。こうした構成によれば、モード変更時における各サイクルにおいて排気バルブ28が閉状態に制御されることがないから、吸入行程において多量の排気ガスが吸入されることがなくなる。その結果、モード変更時における黒煙の発生を抑えることができる。
(2−1)制御モードから昇温モードへの切り替え時、制御装置60は、排気用動弁部82を作動状態に維持したまま、昇温用動弁部84を作動状態に制御する。そして制御装置60は、排気用動弁部82を非作動状態に制御したのち、排気カムシャフト75の位相を通常位相から進角位相へと制御する。こうした構成によれば、モード変更時における各サイクルにおいて排気バルブ28が閉状態に制御されることがないから、吸入行程において多量の排気ガスが吸入されることがなくなる。その結果、モード変更時における黒煙の発生を抑えることができる。
(2−2)昇温排気動作は、排気カムシャフト75の進角前、通常排気動作と開弁期間が重なる第1昇温排気動作と、通常排気動作の開弁期間に最大リフト量を有する第2昇温排気動作と、によって構成されている。そのため、通常モードから昇温モードへの切り替え時における排気バルブ28とピストン20との干渉を防止することができる。
(2−3)排気カムシャフト75に排気用カム76と第1昇温用カム78aとが配設され、吸気カムシャフト105に第2昇温用カム78bが配設されている。これにより、排気用カム76の状態変化、第1昇温用カム78aの状態変化、および、第2昇温用カム78bの状態変化、これらを2つのカムシャフトで実現することができる。その結果、排気側動弁機構30の構成の簡素化を図ることができる。
上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・排気用カム76、第1昇温用カム78a、および、第2昇温用カム78bは、互いに異なるカムシャフトに形成されていてもよい。
・排気用カム76、第1昇温用カム78a、および、第2昇温用カム78bは、互いに異なるカムシャフトに形成されていてもよい。
・排気浄化装置45が複数の触媒を有する場合、モード選択処理の触媒温度Tcに関する判断は、最上流に位置する触媒温度に基づいて行われてもよい。こうした構成によれば、少なくとも最上流に位置する触媒を作用させることができる。また、触媒温度Tcに関する判断は、複数の触媒のなかから予め選択された触媒の触媒温度に基づいて行われてもよい。こうした構成によれば、予め選択された触媒を作用させることができる。
・エンジンシステムは、ターボチャージャー35およびEGR装置40の少なくとも一方を備えていなくてもよい。
・エンジン10は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンであってもよいし、ガスエンジンであってもよい。
・エンジン10は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンであってもよいし、ガスエンジンであってもよい。
10…エンジン、11…シリンダー、12…エンジンブロック、12A…シリンダーブロック、12B…シリンダーヘッド、13…インジェクター、14…インテークマニホールド、15…エキゾーストマニホールド、16…吸気通路、17…排気通路、17A…拡径部、20…ピストン、21…燃焼室、22…コネクションロッド、23…クランクシャフト、25…吸気ポート、26…排気ポート、27…吸気バルブ、28…排気バルブ、29…吸気側動弁機構、30…排気側動弁機構、35…ターボチャージャー、36…コンプレッサー、37…インタークーラー、38…タービン、39…エアクリーナー、40…EGR装置、41…EGR通路、42…EGRクーラー、43…EGR弁、45…排気浄化装置、46…添加部、47…選択還元型触媒、48…タンク、49…還元剤通路、50…ポンプ、51…添加弁、52…排気絞り弁、55…クランク角度センサー、56…触媒温度センサー、57…アクセル開度センサー、57a…アクセルペダル、58…排気ガス温度センサー、59…車速センサー、60…制御装置、61…取得部、62…モード選択部、63…燃料噴射制御部、64…EGR制御部、65…添加制御部、66…バルブ制御部、67…通常マップ、68…昇温マップ、69…保温マップ、70…排気ブレーキ制御部、75…排気カムシャフト、76…排気用カム、77…ブレーキ用カム、78…昇温用カム、78a…第1昇温用カム、78b…第2昇温用カム、79…排気カムフェーザー、80…排気側駆動部、81…排気カムフェーザー駆動部、82…排気用動弁部、84…昇温用動弁部、105…吸気カムシャフト、106…吸気用カム、109…吸気カムフェーザー、110…吸気側駆動部。
Claims (5)
- 燃焼室を開閉する排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気側動弁機構を有するエンジンと、
前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒を有する排気浄化装置と、
前記エンジンを制御する制御装置と、を備えたエンジンシステムであって、
前記制御装置は、
ドライバーからの要求トルクと前記触媒の状態とを取得する取得部と、
前記エンジンの出力トルクが前記要求トルクとなるように前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御部と、
前記エンジンシステムの制御モードを選択するモード選択部と、
前記排気側動弁機構を制御するバルブ制御部と、を備え、
前記モード選択部は、前記触媒が活性状態にあるときに制御モードとして通常モードを選択し、前記触媒が不活性状態にあるときに前記制御モードとして昇温モードを選択し、
前記排気側動弁機構は、
前記通常モードにおいて通常排気動作を実行する排気用カムと、
前記排気用カムに対して開弁期間が重なるように構成され、前記昇温モードにおいて膨張行程に前記排気バルブが開弁する第1昇温排気動作を実行する第1昇温用カムと、
前記昇温モードにおいて前記第1昇温排気動作の後に少なくとも一部が排気行程に含まれる閉弁期間を経て前記排気バルブが開弁する第2昇温排気動作を実行する第2昇温用カムと、を有し、
前記バルブ制御部は、
前記通常モードから前記昇温モードへの切り替え時、前記第1昇温用カムおよび前記第2昇温用カムによる開閉動作を有効化したのちに前記排気用カムと前記第1昇温用カムとを進角させ、その後、前記排気用カムによる開閉動作を無効化する
エンジンシステム。 - 前記排気用カム、前記第1昇温用カム、および、前記第2昇温用カムが同じカムシャフトに形成されている
請求項1に記載のエンジンシステム。 - 前記第2昇温排気動作は、進角前は前記通常モードにおける吸気バルブの開閉動作である通常吸気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作であり、進角後は前記進角前の通常排気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作である
請求項2に記載のエンジンシステム。 - 前記排気用カムおよび前記第1昇温用カムが形成されたカムシャフトと第2昇温用カムが形成されたカムシャフトとが互いに異なる
請求項1に記載のエンジンシステム。 - 前記通常排気動作および前記第1昇温排気動作の進角前、前記第2昇温排気動作は、前記通常排気動作の開弁期間に最大リフト量をとる開閉動作である
請求項4に記載のエンジンシステム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019145588A JP2021025494A (ja) | 2019-08-07 | 2019-08-07 | エンジンシステム |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2019145588A JP2021025494A (ja) | 2019-08-07 | 2019-08-07 | エンジンシステム |
Publications (1)
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