以下、本発明に係るステアリング装置の実施の形態及びその変形例について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態及び変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態及び変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ及びステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態及び変形例における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、図面は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、及び比率とは異なる場合がある。さらに、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行である、とは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
図1は、実施の形態に係るステアリング装置100の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係るステアリング装置100の機能構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係るステアリング装置100は、例えば手動運転と自動運転とを切り替えることができる自動車、バス、トラック、建機、または農機などの車両に搭載される装置である。
ステアリング装置100は、図1に示すように、操作部材110と、操作部材110を支持する支持部材115と、エアバッグ収容部120と、回転機構部130とを備えている。本実施の形態では、操作部材110は、例えば、ステアリングホイールにおけるリムに相当する部材であり、支持部材115は、ステアリングホイールにおけるスポークに相当する部材である。
操作部材110は、運転者の操作によりステアリング軸Aa(車両の前後方向に延びる仮想軸、本実施の形態ではX軸に平行)を中心に回転し、その回転量等に基づいて、車両の1以上のタイヤが転舵される。具体的には、ステアリング装置100は、いわゆるステアバイワイヤと言われるシステムに組み込まれる装置であり、操作部材110とタイヤとは機械的には接続されていない。ステアリング装置100から出力される、操作部材110の操舵角等を示す情報に基づいて、転舵用モータが1以上のタイヤを駆動する。
また、操作部材110は、例えば転舵輪が直進状態となる中立状態において、回転機構部130の、車両の幅方向(本実施の形態ではY軸方向)の両側から延設された支持部材115に支持されており、操作部材110のステアリング軸Aaまわりの回転に伴って、回転機構部130もステアリング軸Aaまわりに回転する。また、本実施の形態では、回転機構部130の運転者側(X軸プラス側)にエアバッグ収容部120が固定されており、操作部材110を運転者側から見た場合、操作部材110の中央部分にエアバッグ収容部120が位置する。エアバッグ収容部120にはエアバッグ200が展開可能に収容されており、エアバッグ200は、例えば車両の衝突時にエアバッグ収容部120を押し破って展開する。
回転機構部130は、車両の幅方向に延びる回転軸Abを中心に、支持部材115をエアバッグ収容部120に対して回転させる装置である。回転機構部130は、支持部材115を回転させるための回転用モータ131等を備えている。なお、本実施の形態において、1つの支持部材115についての説明は、回転機構部130に接続された一対の支持部材115の両方に適用される。例えば、「支持部材115を回転させる」という場合、回転機構部130に接続された一対の支持部材115を一体的に回転させることを意味する。また、操作部材110は一対の支持部材115で支持されている必要はなく、少なくとも1つの支持部材115で支持されていればよい。
回転機構部130の駆動力により支持部材115が回転軸Abまわりに回転することで、支持部材115に支持された操作部材110も、回転軸Abを中心として回転し、これにより、回転機構部130に固定されたエアバッグ収容部120に対して回転する。操作部材110の回転は、操作部材110の出退動作に伴って行われる。操作部材110の回転に関する詳細な説明は、図3A〜図9を用いて後述する。
本実施の形態に係るステアリング装置100はさらに、図1に示すように、回転機構部130の前側(X軸マイナス側)に配置されたスイッチ保持部140及び反力発生装置150を備える。スイッチ保持部140は、ウインカーを差動させるスイッチ等を保持する部材であり、図示しないウインカーレバー等と接続される。
反力発生装置150は、運転者が操作部材110を操作して操舵する際に、運転者の力に反するトルクを操作部材110に付与する装置であり、反力を発生する反力モータ151等を有する。この反力発生装置150は、タイヤと操作部材とが機械的に接続されている従来の車両において、運転中に操作部材に生じる力などを反力として再現する装置である。つまり、本実施の形態では、一端が回転機構部130に固定され、かつ、スイッチ保持部140に挿し通された軸体であって、ステアリング軸Aaまわりに回転する軸体の他端が、反力発生装置150と接続されている。反力発生装置150は、この軸体を介して操作部材110に反力を付与する。また、反力発生装置150は、操作部材110のステアリング軸Aa周りの回転位置を制御する。
ステアリング装置100はさらに、上述の、操作部材110、支持部材115、エアバッグ収容部120、回転機構部130、スイッチ保持部140、及び反力発生装置150を含むステアリング機構部101の位置及び姿勢を変化させる機構を有している。これにより操作部材110の、運転者との間の距離の変更、及び、運転者に対する傾きの変更が可能である。
具体的には、ステアリング装置100は、図1に示すように、ステアリング機構部101の、前後方向の位置を移動させるスライド機構部170を有している。スライド機構部170は、第一移動機構部の一例である。本実施の形態において、ステアリング機構部101は、可動体162を介して基礎ガイド161に支持されており、可動体162は基礎ガイド161に摺動可能に保持されている。基礎ガイド161は、例えば図示しないブラケットを介して車両に固定される。基礎ガイド161には、図1に示すようにスライド駆動軸173が固定されており、スライド機構部170が有するスライド用モータ172の駆動力によりスライド用モータ172を含む本体がスライド駆動軸173に沿って移動する。これにより、スライド機構部170の本体に接続された可動体162が、基礎ガイド161に沿って前後方向に移動する。その結果、エアバッグ収容部120及び回転機構部130等を含むステアリング機構部101が前後方向に移動する。
また、ステアリング装置100は、図1に示すように、ステアリング機構部101の傾きを変化させるチルト機構部180を備えている。チルト機構部180は、第二移動機構部の一例である。なお、図1では、チルト機構部180を明示するために、チルト機構部180をステアリング機構部101から下方に離して図示している。チルト機構部180は、チルト用モータ181の駆動力により、ステアリング機構部101を下方から上限位置まで押し上げることができ、また、押し上げたステアリング機構部101を下限位置まで戻すことができる。本実施の形態では、ステアリング機構部101は、可動体162に、チルト軸Acまわりの回動が可能な状態で支持されており、チルト機構部180の昇降駆動により、チルト軸Acまわりの傾き角を変化させる。これにより、ステアリング機構部101の運転者側に位置する操作部材110、エアバッグ収容部120、及び回転機構部130の、車両の上下方向の位置が変化する。なお、図1に示すチルト軸Acの位置は例示であり、チルト軸Acは、図1に示す位置よりも前方(X軸マイナス側)に位置していてもよい。
以上説明した、回転機構部130、反力発生装置150、スライド機構部170、及び、チルト機構部180は、ステアリング装置100が備える制御部190(図2参照)によって制御される。これにより、スライド機構部170及びチルト機構部180が、ステアリング機構部101の位置及び姿勢を変化させる動作を行う。これらの動作は、操作部材110の前後方向の位置及び高さ(傾き)の、運転者の好みに応じた調整の際に実行される。また、回転機構部130は、支持部材115を回転させることで操作部材110を回転軸Abまわりに回転させる動作を行う。反力発生装置150、スライド機構部170、チルト機構部180及び回転機構部130による上記の動作は、操作部材110が、ダッシュボード内の格納領域に対する出退(格納領域からの突出、及び、格納領域への格納)を行う場合に実行される。なお、操作部材110の格納領域に対する出退については、図8及び図9を用いて後述する。
また、制御部190は、これら回転機構部130等から当該機構部等の状態を示す情報を取得する。例えば、制御部190は回転機構部130から支持部材115の回転位置を示す情報を取得する。これにより、制御部190は、支持部材115に支持された操作部材110の、エアバッグ収容部120に対する相対的な位置等を随時検出することができる。また、制御部190はさらに、スライド機構部170及びチルト機構部180のそれぞれから取得する情報を用いることで、操作部材110の、車両における位置等を随時認識することができる。
なお、上記の制御を行う制御部190は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等の記憶装置、および情報の入出力のためのインタフェース等を備えたコンピュータによって実現される。制御部190は、例えば、記憶装置に格納された所定のプログラムをCPUが実行することで、上位制御部300等から送信される制御信号、及び、センサの検出結果等に応じたステアリング装置100の動作制御を行うことができる。制御部190は、目標回転速度をセンサの検出結果等から演算し、回転機構部130の回転速度を目標回転速度に従うように制御する。
ここで、本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110を出退させる場合における、回転機構部130の制御、つまり、操作部材110の回転制御について一つの特徴を有している。そこで、図3A〜図7を用いて、操作部材110の回転制御について説明する。
本実施の形態に係る操作部材110は、具体的には、図3A〜図3Cに示すように、回転機構部130によって、エアバッグ収容部120に対して回転する。図3Aは、実施の形態に係る操作部材110の通常時の位置及び姿勢を示す図である。図3Bは、実施の形態に係る操作部材110の回転途中の位置及び姿勢を示す図である。図3Cは、実施の形態に係る操作部材110の格納時の位置及び姿勢を示す図である。なお、図3A〜図3Cのそれぞれでは、操作部材110のエアバッグ収容部120に対する相対的な位置及び姿勢が簡易的に図示されており、回転機構部130より前方の構成要素の図示は省略されている。これらの補足事項は、後述する図6、図7、及び図10〜図12のそれぞれについても適用される。
図3Aに示すように、運転者が操作部材110を握って操作することが可能な通常時では、エアバッグ収容部120が、操作部材110の中央部に位置する状態である。この状態において、操作部材110は、例えば運転者の操作に応じてステアリング軸Aaを中心として回転する。
操作部材110が図3Aに示す位置及び姿勢である場合、制御部190は、例えば、車両に搭載された上位制御部300(図2参照)からの指示により、回転機構部130を制御し、これにより、支持部材115が回転軸Abまわりに回転を開始する。その結果、操作部材110は、下方に向けて回転を始め、例えば図3Bに示すように操作部材110の一部が、エアバッグ収容部120の運転者側(X軸プラス側)を通過する。その後、回転機構部130は、制御部190からの指示により、例えば図3Cに示す位置(格納位置)で、操作部材110の回転を停止する。
また、操作部材110が格納位置にある場合、制御部190は、例えば上位制御部300(図2参照)からの指示により、回転機構部130を制御することで、操作部材110を通常位置に戻す。つまり、操作部材110の位置及び姿勢は、図3C、図3B、及び図3Aの順に変化する。
エアバッグ収容部120に収容されたエアバッグ200は、車両に搭載されたエアバッグ制御部210(図2参照)の指示に応じて動作する。エアバッグ制御部210は、例えば、車両が何等かの物体に衝突した場合、エアバッグ200に展開の指示を行う。エアバッグ制御部210は、例えば、加速度センサ250から受け取った車両の加速度情報に基づき、エアバッグ200を展開させるか否かを判断する。例えば、車両が何等かの物体に衝突した場合など、加速度に閾値以上の急速な変化があった場合、エアバッグ制御部210は、エアバッグ200に展開の指示を行い、エアバッグ200は、インフレータを作動させることで展開する。つまり、エアバッグ200は瞬時に膨らむ。
このような動作を行うエアバッグ収容部120の運転者側には、運転者の安全を確保するために、図3A〜図3Cに示すように、エアバッグ200の正常な展開のための第一領域11が規定される。つまり、第一領域11は、その領域内に運転者以外の物体が存在した場合に、運転者の安全確保のためのエアバッグ200の展開が阻害される領域である。例えば、実験またはシミュレーション等により求められた、エアバッグ200の通過領域が、第一領域11として規定される。または、エアバッグ200と何等かの物体とが干渉しても実質的にエアバッグ200の展開に影響がない場合を考慮し、当該通過領域よりも小さい領域、または、当該通過領域からずれた領域を第一領域11として規定してもよい。さらに、第一領域11以外の領域は、第二領域12として規定される。
このように第一領域11及び第二領域12を規定した場合、図3A及び図3Cに示すように、操作部材110が通常位置及び格納位置に存在する場合、操作部材110は、第一領域11には存在せず、第二領域12に存在する。
つまり、例えば運転者が操作部材110を操作して車両を運転している最中に、衝突事故が発生した場合、エアバッグ200が展開することで、エアバッグ200による運転者の保護が実行される。また、例えば、自動運転によって車両が走行している最中、つまり、操作部材110が図3Cに示す位置(格納位置)に存在する期間に衝突事故が発生した場合も、エアバッグ200が展開することで、エアバッグ200による運転者の保護が実行される。
このように、本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110が運転者側の突出している場合(通常位置にある場合)、及び、所定の領域に格納されている場合のいずれの場合でも、1つのエアバッグ200によって、緊急時における運転者の保護が図られる。
しかしながら、操作部材110が、出退のための回転を行っている期間(出退動作中)中は、図3Bに示すように、操作部材110の一部が、第一領域11に存在し得る。そのため、出退動作中において、衝突等の緊急事象が生じた場合、エアバッグ200の展開が、操作部材110の一部によって妨げられ、エアバッグ200の本来的な衝撃吸収能が発揮されない可能性が高くなる。そこで、本実施の形態に係るステアリング装置100では、制御部190は、車両の衝突等が生じた場合または生じそうな場合、操作部材110を第二領域12に退避させるための緊急退避制御を実行する。
なお、操作部材110の少なくとも一部が第一領域11内に存在するか否かの判断は、例えば、制御部190が記憶している第一領域11の範囲を示す情報と、制御部190が検出した操作部材110の位置を示す情報とを用いて制御部190が行う。また、例えば、予め、操作部材110及び支持部材115のサイズ及び形状等から、操作部材110の少なくとも一部が第一領域11内に存在する場合の、支持部材115の回転位置(回転角度)の範囲(干渉範囲)を算出しておいてもよい。この場合、制御部190は、例えば回転機構部130から取得する、支持部材115の回転位置(回転角度)が干渉範囲内に含まれるか否かで、第一領域11内に存在するか否かの判断を行うことができる。
図4は、実施の形態に係るステアリング装置100の緊急退避制御に関する基本的な動作の流れを示すフロー図である。図5は、図4に示す動作の流れのより具体的な例を示すフロー図である。
例えば図4に示すように、制御部190は、エアバッグ200が展開すること、または、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象を検出し、かつ、操作部材110の少なくとも一部が第一領域11内に存在する場合(S10でYes)、緊急退避制御を実行する(S20)。例えば、制御部190は、回転機構部130を制御すること(回転機構部130への制御信号の送信、または、回転機構部130への供給電圧の変更など)で、操作部材110を出退させる際の通常速度よりも早い速度で操作部材110を回転させる。これにより、操作部材110を第二領域12に退避させる。緊急退避制御の他の例は図6及び図7等を用いて後述する。
なお、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象とは、例えば、自動ブレーキの作動である。つまり、車両が、カメラ等の検出結果に基づいて自動ブレーキを作動させる被害軽減ブレーキシステムを備える場合、制御部190は、上位制御部300と通信することで、自動ブレーキの作動を検出することができる。つまり、制御部190は、エアバッグ200の展開の可能性が高まり、かつ、操作部材110が第一領域11内に存在する場合(S10でYes)に、緊急退避制御を実行する(S20)。また、制御部190は、被害軽減ブレーキシステムの有無にかかわらず、例えば、加速度センサ250等のセンサから取得する情報に基づいて、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象を検出してもよい。また、制御部190は、被害軽減ブレーキシステムの有無にかかわらず、例えば、カメラ等の検出結果に基づいて、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象を検出してもよい。
また、例えば、車両が何等か物体に衝突したことにより、エアバッグ制御部210(図2参照)が、エアバッグ200に展開の指示を行う場合、当該指示は、制御部190にも送られる。これにより、制御部190は、エアバッグ200が展開すること、すなわち、緊急事象を検出することができる。
また、制御部190は、緊急事象を検出し、かつ、操作部材110が第一領域11内に存在しない場合(S10でNo)、回転機構部130を制御することで、操作部材110の回転を停止させる(S30)。
ここで、制御部190は、操作部材110の位置を随時認識(監視)することができるため、ステアリング装置100の緊急退避制御に関するより具体的な動作は、例えば図5のように説明される。
すなわち、制御部190は、操作部材110の少なくとも一部が第一領域11内に存在することを検出し(S10でYes)、さらに、緊急事象を検出した場合(S15でYes)、緊急退避制御を実行する(S20)。また、操作部材110の少なくとも一部が第一領域11内に存在することを検出し(S10でYes)、緊急事象を検出しない場合(S15でNo)は、制御部190は、回転機構部130による操作部材110の回転を継続させる(S25)。
また、制御部190は、操作部材110が第一領域11内に存在しないこと(言い換えると操作部材110が第二領域12内に存在すること)を検出し(S10でNo)、さらに、緊急事象を検出した場合(S25でYes)、回転機構部130を制御することで、操作部材110の回転を停止させる(S30)。また、制御部190は、操作部材110が第一領域11内に存在しないことを検出し(S10でNo)、かつ、緊急事象を検出しない場合(S25でNo)、操作部材110の位置の監視(S10)を継続する。
以上説明したように、本実施の形態に係るステアリング装置100は、エアバッグ200を展開可能に収容するエアバッグ収容部120と、操作部材110を支持する支持部材115と、車両の幅方向に延びる回転軸Abを中心に、支持部材115を、エアバッグ収容部120に対して回転させる回転機構部130と、回転機構部130を制御する制御部190と、を備える。制御部190は、操作部材110の少なくとも一部が、エアバッグ200の展開を妨げる領域である第一領域11内に位置し、かつ、エアバッグ200の展開、または、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象を検出した場合、回転機構部130を制御することで、操作部材110を、第一領域11の外側の第二領域12に退避させる。
この構成によれば、ステアリング装置100は、操作部材110を、回転軸Abを中心に回転させることができ、これにより、運転者の前方空間を大きく広げることができる。また、図3A及び図3Cに示したように、操作部材110が運転者側に突出している場合、及び、所定の領域に格納されている場合のいずれの場合でも、エアバッグ200を運転者の安全確保に使用することができる。さらに、制御部190は、エアバッグ200が展開する、または、エアバッグ200の展開が予想されることを示す緊急事象を検出することができる。これにより、操作部材110が、回転軸Abを中心に回転している途中において、操作部材110の一部が第一領域11内に存在し、かつ、緊急事象が検出された場合、制御部190は、操作部材110を第二領域12に退避させる制御(緊急退避制御)を行うことができる。つまり、エアバッグ200が展開した場合において、エアバッグ200と操作部材110との干渉が未然に防止される、または、エアバッグ200と操作部材110との干渉の度合いが軽減される。従って、エアバッグ200が、本来の衝撃吸収能を発揮できる可能性が向上し、これにより、衝突安全性が向上される。
また、本実施の形態では、制御部190はさらに、回転機構部130が支持部材115を回転させている期間中に、操作部材110が第二領域12内に位置し、かつ、緊急事象を検出した場合、回転機構部130を制御することで、支持部材115の回転位置を前記緊急事象を検出した時点の回転位置に保持させる。
つまり、制御部190は、操作部材110が、エアバッグ200の展開を阻害しない位置に存在することが確認された場合、回転機構部130の動作を停止させる。例えば、操作部材110が、エアバッグ200の展開を阻害しない通常位置に存在するときに、回転機構部130の動作が停止された場合、操作部材110を、エアバッグ200の土台として利用することができる。その結果、エアバッグ200が展開した場合において、エアバッグ200の衝撃吸収能をより確実に発揮させることができる。
ここで、制御部190が実行する緊急退避制御とは、通常時における操作部材110の出退の際の態様とは異なる態様で操作部材110を第二領域12に退避させる制御である。つまり、緊急退避制御の内容としては、上述の操作部材110の回転速度の向上の他にも、回転方向の変更、及び、慣性力または重力等の外力の利用など、各種の制御内容が例示される。そこで、以下に緊急退避制御の各種の例について説明する。
図6は、実施の形態に係る操作部材110の一部が第一領域11内に存在する第1の例を示す図であり、図7は、実施の形態に係る操作部材110の一部が第一領域11内に存在する第2の例を示す図である。
図6及び図7では、側面視において第一領域11の上下のそれぞれの第二領域12を区別するために、第一領域11の上の第二領域12を、第二領域12Aとし、第一領域11の下の第二領域12を、第二領域12Bとして表している。
また、図6及び図7では、第一領域11を上下に分ける中心線Laが描かれており操作部材110の、第一領域11内を通過する部分が、上端部110a(斜線を付した領域)として表されている。
操作部材110の上端部110aは、支持部材115の回転軸Abを中心として円運動する。そのため、図6に示すように、上端部110aが中心線Laよりも上に位置する場合、上端部110aは、第二領域12B内に移動するよりも、第二領域12A内に移動する方が移動距離は短い。従って、仮に、操作部材110が、通常位置(図3A参照)から格納位置(図3B参照)まで移動する途中で緊急事象が検出された場合、制御部190は、操作部材110を逆向きに移動させる。つまり、制御部190は、操作部材110を、図6における反時計まわりに回転させ、これにより、上端部110aは、第二領域12Aに退避される。すなわち、操作部材110を、緊急事象の検出時点の移動方向(回転方向)とは逆向きに移動(回転)させることで、操作部材110の上端部110aをより迅速に第二領域12に退避させることができる。このことは、操作部材110が、格納位置から通常位置まで移動する途中で緊急事象が検出された場合も同様である。すなわち、この場合において、図7に示すように、上端部110aが中心線Laよりも下に位置する場合、制御部190は、第二領域12A及び第二領域12Bのうちの、上端部110aにより近い第二領域12Bに上端部110aを退避させる。
このように、制御部190は、操作部材110の位置に基づいて、操作部材110を第二領域12に退避させる際の、回転機構部130による支持部材115の回転方向を決定してもよい。この場合、回転機構部130は、決定された回転方向で支持部材115を回転させることで、操作部材110を第二領域12に退避させる。
これにより、例えば、エアバッグ200の展開が必要となった時点における、操作部材110の、第一領域11内に存在する部分の位置に基づいて、適応的に操作部材110の回転方向が決定される。その結果、操作部材110の第二領域12への退避をより迅速に行うことが可能となり、これにより、エアバッグ200が、本来の衝撃吸収能を発揮できる可能性が向上する。
また、制御部190は、操作部材110の位置に基づいて、操作部材110を第二領域12に退避させる際の支持部材115の目標回転速度を決定してもよい。この場合、回転機構部130は、決定された目標回転速度に従って支持部材115を回転させることで、操作部材110を第二領域12に退避させる。
これにより、例えば、緊急事象を検出した時点での操作部材110の位置が、第二領域12まで遠い場合は、第二領域12まで近い場合よりも操作部材110の退避のための回転速度が速くされる。その結果、エアバッグ200が、操作部材110と干渉する可能性が低減され、エアバッグ200が、本来の衝撃吸収能を発揮できる可能性が向上する。
ここで、本実施の形態では、制御部190は、上述のように、支持部材115の、回転軸Abを中心とする回転位置を示す情報を取得し、取得した情報を用いて操作部材110の位置を検出する。回転機構部130は、例えば回転用モータ131の回転量及び回転速度等を検出するロータリエンコーダを有しており、制御部190は、ロータリエンコーダの検出結果を用いて、支持部材115に固定された操作部材110の位置を検出することができる。これにより、制御部190は、操作部材110の位置を随時かつ精度よく検出することができる。
なお、制御部190が操作部材110の位置を検出する手法に特に限定はなく、制御部190は、例えば、操作部材110を撮像することで得られる撮像データを画像解析することで操作部材110の位置を検出してもよい。この画像解析は、制御部190が行う必要はなく、例えば、操作部材110を撮像する撮像装置が画像解析を行い、制御部190は、その解析結果を取得することで操作部材110の位置を検出してもよい。また、例えば、回転機構部130が、操作部材110の位置を算出する処理部を有し、制御部190は、当該処理部の算出結果を取得することで操作部材110の位置を検出してもよい。
また、制御部190が緊急事象を検出した場合における操作部材110の回転方向の決定に、車両の状態が考慮されてもよい。例えば、制御部190は、緊急事象が検出された時点の車両の加速度から、操作部材110に働く慣性力の方向を算出し、算出した方向に応じて、操作部材110の回転方向を決定してもよい。
例えば、車両が自動ブレーキによって急減速している場合、または、停車中に後方から他の車両に衝突された場合、操作部材110には前方または後方への慣性力が働く。そのため、この慣性力を利用できる回転方向に操作部材110を回転させることで、操作部材110の第二領域12への退避をより迅速に行うことが可能となる。
また、制御部190は、例えば車両が坂道を上っている途中に、緊急事象を検出した場合、操作部材110が下向きに回転(図6における時計まわりに回転)するように、回転方向を決定してもよい。これにより、操作部材110にかかる重力を利用して操作部材110の第二領域12への退避をより迅速に行うことが可能となる。
また、例えば運転者の指示によるチルト機構部180の動作によって、操作部材110が比較的に低い位置にされている場合を想定する。この場合、制御部190は、緊急事象を検出した場合、操作部材110と運転者の膝との干渉を避けるために、操作部材110が上向きに回転(図6における反時計まわりに回転)するように、回転方向を決定してもよい。これにより、操作部材110が運転者に干渉する可能性が低減され、かつ、エアバッグ200の正常な展開の可能性が向上される。
このように、制御部190は、操作部材110を第二領域12に退避させることを検出した際の車両の状態に基づいて、回転機構部130による支持部材115の回転方向を決定してもよい。この場合、回転機構部130は、決定した回転方向で支持部材115を回転させることで、操作部材110を第二領域12に退避させる。
すなわち、車両が停止している場合も含み、車両がどのような状態であるかによって、操作部材110及び支持部材115に働く慣性力もしくは重力等の外力の大きさもしくは方向、または、操作部材110の移動が運転者に与える影響度合いが異なる。従って、操作部材110を第二領域12に退避させる場合の操作部材110の回転方向の決定に、車両の走行状態を考慮することで、操作部材110のより迅速なまたはより安全な退避を可能とすることができる。その結果、エアバッグ200が展開する場合における、運転者の安全確保がより確実に実行される。
また、緊急事象の検出時において操作部材110を第二領域12に退避させる場合、操作部材110に働く慣性力または重力等の外力のみを利用して操作部材110を回転させてもよい。つまり、制御部190は、操作部材110を第二領域12に退避させる場合、回転機構部130を制御することで、支持部材115を回転機構部130に対して回転自在な状態にさせてもよい。
具体的には、制御部190は、回転用モータ131の駆動のための信号をOFFとし、回生電流が流れないように回転用モータ131の駆動回路を切り替える。これにより支持部材115は回転自在となる。また、例えば、回転機構部130が電動クラッチ(不図示)を有し、制御部190が、電動クラッチによる回転用モータ131の出力軸と支持部材115間の連結を遮断する。これにより支持部材115は回転自在となる。その結果、支持部材115は、ギア及び軸体等による拘束を受けずに、支持部材115及び操作部材110に働く慣性力または重力等の外力によって回転することができる。これにより、操作部材110の一部が第一領域11内に存在する状態で操作部材110が固定されている場合よりも、エアバッグ200の正常な展開の可能性が向上され、その結果、衝突安全性も向上される。
また、この場合、エアバッグ200から直接的に与えられる外力、または、エアバッグ200に押されるエアバッグ収容部120を介して与えられる外力によって、操作部材110が、エアバッグ200から逃げるように回転することも考えられる。つまり、操作部材110が、比較的に小さな外力で回転可能な状態にされることで、エアバッグ200は、操作部材110を押しのけながら展開することができる。これにより、操作部材110の一部が第一領域11内に存在する状態で操作部材110が固定されている場合よりも、エアバッグ200の正常な展開の可能性が向上され、その結果、衝突安全性も向上される。
以上、操作部材110の回転制御に着目し、エアバッグ200が展開した場合におけるエアバッグ200と操作部材110との干渉の可能性をどのようにして低減させるかについて説明した。しかし、本実施の形態に係るステアリング装置100では、操作部材110が通常位置と格納位置との間で回転する期間には、上述のように、スライド機構部170及びチルト機構部180による、操作部材110の車両に対する相対的な位置及び姿勢の変化が生じる。そのため、本実施の形態に係るステアリング装置100は、操作部材110を第二領域12に退避させる場合に、スライド機構部170及びチルト機構部180を制御することで、退避中の操作部材110が他の物体に干渉しないように操作部材110を退避させることができる。この制御について図8及び図9を用いて説明する。
図8は、実施の形態に係る操作部材110がダッシュボード400内に格納される際の操作部材110の位置及び姿勢の遷移の一例を示す図である。具体的には、図8の(a)〜(e)は、操作部材110がダッシュボード400内に格納される際の操作部材110の第1〜第5の状態を示す図である。図9は、実施の形態に係る操作部材110がダッシュボード400内から通常位置に戻される際の操作部材110の位置及び姿勢の遷移の一例を示す図である。具体的には、図9の(a)〜(e)は、操作部材110が通常位置に戻される際の操作部材110の第1〜第5の状態を示す図である。
なお、図8及び図9では、運転者の存在領域における操作部材110側の一部が、斜線を付された運転者領域500として表されており、ダッシュボード400は、格納領域410を示すために断面で図示されている。また、図8及び図9では、操作部材110、ダッシュボード400及び運転者領域500の位置関係を表すために、これら以外の要素についての図示は省略されている。さらに、図8及び図9内の矢印は、操作部材110のおおよその移動方向または回転方向を表している。
また、以下の説明において、操作部材110の前後方向(図1におけるX軸方向)の移動は、スライド機構部170によって駆動され、操作部材110の上下方向の移動は、チルト機構部180によって駆動され、操作部材110の回転は、回転機構部130によって駆動される。
本実施の形態に係るステアリング装置100では、通常位置にある操作部材110をダッシュボード400内に格納する場合、まず、図8の(a)に示すように、操作部材110を上方(Z軸プラス側)に移動させながら、前方(X軸マイナス側)へ移動させる。これにより、運転者の膝と操作部材110との干渉が避けられる。次に、操作部材110がダッシュボード400に近づいた場合、図8の(b)に示すように、操作部材110を前方にゆっくり移動させながら操作部材110を図8における時計まわりに回転させる。次に、操作部材110とダッシュボード400との間の指の挟みこみの可能性を考慮し、図8の(c)に示すように、操作部材110の回転を継続させながら、前方にゆっくり移動させ、かつ、下方に移動させる。その後、ダッシュボード400内に操作部材110が進入し、指の挟みこみの可能性がなくなった場合、図8の(d)に示すように、操作部材110を前方に速く移動させながら下方に速く移動させ、かつ、操作部材110を速く回転させる。これにより、図8の(e)に示すように、操作部材110が、ダッシュボード400内の格納領域410に格納される。なお、操作部材110の全体が格納領域410に収容される必要はなく、一部が格納領域410から突出していてもよい。
図8の(e)に示す状態では、操作部材110は第二領域12内に位置し、エアバッグ収容部120(図1参照)は、運転者領域500に向けられた姿勢である。従って、エアバッグ200を、衝突等の発生時における運転者の保護に用いることができる。
また、本実施の形態に係るステアリング装置100では、ダッシュボード400内に格納されている操作部材110を通常位置まで戻す場合、まず、図9の(a)に示すように、操作部材110を後方へ速く移動させながら、操作部材110の回転を開始させる。次に、操作部材110の一部が格納領域410の開口部から出た後に、図9の(b)に示すように、操作部材110の回転を継続させながら、後方にゆっくり移動させ、かつ、上方に移動させる。つまり、操作部材110を運転者の側に突出させながら、操作部材110と運転者の膝との干渉を避けるように、操作部材110が上方に移動される。次に、図9の(c)に示すように、操作部材110の回転を継続させながら、後方にゆっくり移動させる。次に、操作部材110が、エアバッグ収容部120に対する通常位置に至るまで回転された後に回転は停止され、図9の(d)に示すように、操作部材110は後方に移動し、かつ、下方に移動する。これにより、図9の(e)に示すように、操作部材110がエアバッグ収容部120に対する通常位置であって、かつ、運転者による操作が可能な通常位置に戻される。この状態では、操作部材110は第二領域12内に位置し、エアバッグ収容部120(図1参照)は、運転者領域500に向けられた姿勢である。従って、エアバッグ200を、衝突等の発生時における運転者の保護に用いることができる。
以上のように、ステアリング装置100では、操作部材110の出退、つまり、格納領域410への格納、及び、格納領域410からの突出の際に、操作部材110の回転に加えて、操作部材110の車両に対する相対位置も変化させることができる。これにより、運転者及びダッシュボード400等の他の物体との干渉を避けながら、操作部材110の出退を行うことができる。
つまり、ステアリング装置100は、図4及び図5等を用いて説明した、操作部材110の緊急退避制御においても、上述の操作部材110と他の物体との干渉を避けるための制御を実行することができる。
すなわち、本実施の形態に係るステアリング装置100は、エアバッグ収容部120及び回転機構部130の、車両の前後方向の位置を移動させるスライド機構部170を備える。制御部190は、操作部材110を第二領域12に退避させる場合、さらに、スライド機構部170を制御することで、操作部材110が他の物体に干渉しない経路で、操作部材110を移動させてもよい。
また、本実施の形態に係るステアリング装置100は、エアバッグ収容部120及び回転機構部130の、車両の上下方向の位置を移動させるチルト機構部180を備える。制御部190は、操作部材110を第二領域12に退避させる場合、さらに、チルト機構部180を制御することで、操作部材110が他の物体に干渉しない経路で、操作部材110を移動させてもよい。
このように、ステアリング装置100において、制御部190は、緊急事象を検出した場合、基本的な制御として、操作部材110を回転させることで操作部材110を第二領域12に退避させることができる。制御部190は、さらに、第二領域12内に位置するダッシュボード400及び運転者などの他の物体の存在を考慮し、他の物体と操作部材110との干渉を避けながら操作部材110を出退させることもできる。これにより、エアバッグ200を正常に展開させるための操作部材110の退避のための動作の確実性、または、運転者についての安全性が向上される。
なお、図8の(a)〜(e)、及び図9の(a)〜(e)に示される操作部材110の位置及び姿勢の遷移は、ダッシュボード400のサイズ及び形状、並びに、推定される運転者の存在領域に基づいて、予め、プログラミングされていてもよい。また、操作部材110の位置及び姿勢の遷移は、例えば、カメラ等のセンサによる運転者の存在領域の検出結果に基づいて、運転者ごとに変化してもよい。また、操作部材110の緊急退避制御における操作部材110の最終的な停止位置は、図8の(e)に示す位置及び図9の(e)に示す位置である必要はない。つまり、緊急退避制御は、操作部材110の全体を第二領域12に収めることを目的として実行される。そのため、緊急退避制御の結果として、操作部材110が、図8の(e)に示す格納位置に到達する必要はなく、また、図9の(e)に示す通常位置に到達する必要もない。
また、操作部材110と他の部材との干渉を避けるための制御は、緊急退避制御に取り入れることは必須ではない。例えば、緊急事象が検出された場合において、エアバッグ200の正常な展開を優先し、操作部材110の回転軸Abまわりの回転のみを実行させ、スライド機構部170及びチルト機構部180による操作部材110の移動を行わなくてもよい。この場合、例えば操作部材110が他の部材と干渉することで完全に第二領域12内に退避できないことも考えられるが、少なくとも、操作部材110の第一領域11内の存在範囲は減少するため、操作部材110がエアバッグ200の展開を阻害する可能性は低減する。
以上、実施の形態に係るステアリング装置100について説明したが、ステアリング装置100は、図1〜図9に示す構成とは異なる構成を有してもよい。そこで、以下に、ステアリング装置100についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
(変形例1)
図10は、実施の形態の変形例1に係るステアリング装置100aの特徴的な構成を示す第1の図であり、図11は、実施の形態の変形例1に係るステアリング装置100aの特徴的な構成を示す第2の図である。
本変形例に係るステアリング装置100aでは、操作部材110に変形部111が設けられている。変形部111は、操作部材110における他の部分よりも変形やすい部分であり、例えば、図10に示すように切欠き部(または薄肉部)によって実現される。つまり、変形部111は、図11に示すように、操作部材110とエアバッグ200との干渉で変形させる部分として操作部材110に設けられている。
このように、本変形例に係るステアリング装置100aにおいて、操作部材110は、展開した場合のエアバッグ200と操作部材110とが干渉することで変形する変形部111を有する。これにより、図10及び図11に示すように、第一領域11内に存在する操作部材110の上端部110aが、第二領域12への移動中に、展開中のエアバッグ200と干渉した場合、変形部111が変形する。その結果、エアバッグ200を、運転者の保護に役立つ程度に展開させることができる。すなわち、操作部材110の緊急的な退避が間に合わない場合であっても、エアバッグ200が、本来の衝撃吸収能を発揮できる可能性が向上し、これにより、衝突安全性が向上される。
なお、変形部111は、薄肉部等の、操作部材110における他の部分とは異なる形状で実現するだけでなく、例えば、他の部分よりも剛性の低い、または、柔軟性の高い部材で実現することもできる。
(変形例2)
図12は、実施の形態の変形例2に係るステアリング装置100bの特徴的な構成を示す図である。
本変形例に係るステアリング装置100bでは、操作部材110を支持する支持部材115に変形部116が設けられている。変形部116は、支持部材115における他の部分よりも変形やすい部分であり、例えば、図12に示すように切欠き部(または薄肉部)によって実現される。つまり、変形部116は、操作部材110とエアバッグ200との干渉で変形させる部分として、支持部材115に設けられている。
このように、本変形例に係るステアリング装置100bにおいて、支持部材115は、展開を開始した場合のエアバッグ200と操作部材110とが干渉することで変形する変形部116を有する。これにより、第一領域11内に存在する操作部材110の上端部110aが展開中のエアバッグ200と干渉した場合、図12に示すように、変形部116が変形することで、エアバッグ200を、運転者の保護に役立つ程度に展開させることができる。すなわち、操作部材110の緊急的な退避が間に合わない場合であっても、エアバッグ200が、本来の衝撃吸収能を発揮できる可能性が向上し、これにより、衝突安全性が向上される。
なお、変形部116は、薄肉部等の、支持部材115における、他の部分とは異なる形状で実現するだけでなく、例えば、他の部分よりも剛性の低い、または、柔軟性の高い部材で実現することもできる。
(他の実施の形態)
以上、本発明に係るステアリング装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、操作部材110は、図1に示すような円環状である必要はない。例えば、操作部材110の、図1における上端部または/及び下端部などの一部を欠いたようなU字状またはH字状であってもよい。この場合であっても、操作部材110が回転軸Abを中心に下方に向けて回転する場合、操作部材110の一部が第一領域11を通過する。そのため、操作部材110を第二領域12に退避させるための緊急退避制御は、衝突安全性の向上に有用である。
また、通常位置にある操作部材110を所定の領域に格納させる場合において、操作部材110を下方に向けて回転させることは必須ではない。例えば、通常位置にある操作部材110を、上方にむけて回転させることで、ダッシュボード400の上部に、操作部材110の少なくとも一部を格納してもよい。この場合であっても、操作部材110の一部が第一領域11を通過するため、操作部材110を第二領域12に退避させるための緊急退避制御は、衝突安全性の向上に有用である。
また、ステアリング装置100は、運転者が操作するための、操作部材110の前後方向の位置及び上下方向の位置の変更が不可能であってもよい。また、操作部材110の前後方向の位置及び上下方向の位置の変更は、電動式である必要はなく手動式であってもよい。いずれの場合であっても、ステアリング装置100は、回転機構部130を備えることで、操作部材110の出退は可能であり、かつ、制御部190による緊急退避制御は可能である。