概要
概して添付図を参照すると、居住者不快感を調整するためのシステム及び方法が示される。建物空間、部屋、ゾーンなどにおいては、温度差が居住者を不快にさせ得る。居住者は寒くなり過ぎ又は暖かくなり過ぎ得る。コントローラは、居住者快適性を維持するために空間へ加熱及び/又は冷却を提供するために建物機器を運転するように構成され得る。コントローラは、どのように建物機器を運転するか(例えば、空間を加熱する、空間を冷却する、スタンバイなど)を決定するためにフィードバック制御(例えば、オン/オフ制御)を行い得る。居住者は、居住者快適性を維持するためにコントローラが使用する許容可能温度範囲又は快感温度範囲を規定し得る。しかし、温度差、居住者嗜好変動、室外温度、季節などに起因して、居住者は温度範囲が不快であると最終的に分かる。
コントローラは、どれだけ頻繁に居住者が温度設定点を変更するかを観察することにより居住者快適性を監視し得る。例えば、コントローラは、居住者が温度設定点を定期的に増加すれば温度設定点又は温度設定点境界が増加されるべきであると決定し得る。同様に、コントローラは、居住者が温度設定点を定期的に低減すれば温度設定点又は温度設定点境界が低減されるべきであると決定し得る。
コントローラは、一定期間(例えば1か月、一週間、2か月など)にわたって居住者設定点調整データ/情報を受信及び収集し得る。コントローラは、居住者不快感を指示する居住者設定点変更を識別するために居住者設定点調整データを濾過し得る。コントローラは、居住者設定点変更データのそれぞれの日を日タイプ(例えば平日及び週末)へ区画化し得る。コントローラはさらに、居住者設定点変更データを日常期間(例えば4日常期間、8日常期間など)へ区画化し得る。次に、コントローラは、両方の日タイプのそれぞれの日の日常期間毎の居住者設定点増加及び居住者設定点低下の数を計数し得る。次に、コントローラは、居住者設定点増加の数及び/又は居住者設定点低下の数に基づき温度設定点又は温度設定点境界を調整し得る。コントローラは、すべての日常期間の設定点又は設定点の境界を調整してもよいし、すべての日常期間の設定点又は設定点の境界を独立に調整してもよい。例えば、コントローラは、特定の日タイプの1つ又は複数の日常期間の居住者設定点増加の数又は居住者設定点低下に基づき特定の日タイプのすべての日の第1の日常期間を増加し得る。
有利には、これは、コントローラ及びシステムが居住者の嗜好へ適応化して変化することを可能にする。コントローラはまた、空間が占有された場合の快適な条件又は一日の暖かい/冷たい時間中の快適な条件を提供するようにされ得る。例えば、空間内の温度が夜間に暖かく朝涼しいことを居住者が一般的に好めば、コントローラは、居住者の嗜好を識別し、設定点及び設定点の境界にこれらの嗜好を反映させるようにし得る。有利には、空間の占有が変化すれば、コントローラは、システムに新しい居住者の快適性を学習するようにさせ、これに応じて設定点及び/又は設定点境界を調整するようにさせ得る。
HVACシステムの構築及び建物管理システムの構築
次に図1〜5を参照すると、本開示のシステム及び方法が実装され得るいくつかの建物管理システム(BMS)及びHVACシステムがいくつかの実施形態に従って示される。要約すると、図1はHVACシステム100を備えた建物10を示す。図2は建物10にサービスを提供するように使用され得る水供給側システム200のブロック図である。図3は建物10にサービスを提供するように使用され得る空気供給側システム300のブロック図である。図4は建物10を監視及び制御するために使用され得るBMSのブロック図である。図5は建物10を監視及び制御するために使用され得る別のBMSのブロック図である。
建物及びHVACシステム
特に図1を参照すると、建物10の斜視図が示される。建物10はBMSによりサービスが提供される。BMSは、一般的には、建物又は建物領域内の又はその周囲の機器を制御、監視、及び管理するように構成されるデバイス群のシステムである。BMSは例えば、HVACシステム、セキュリティシステム、照明システム、火事警報システム、建物機能又はデバイスを管理することができる任意の他のシステム、又はそれらの任意の組合せを含み得る。
建物10にサービスを提供するBMSはHVACシステム100を含む。HVACシステム100は、建物10への暖房、冷房、換気又は他のサービスを提供するように構成された多数のHVACデバイス(例えば、加熱機、冷凍機、空気処理ユニット、ポンプ、ファン、熱エネルギー貯蔵など)を含み得る。例えば、HVACシステム100は、水供給側システム120及び空気供給側システム130を含むように示される。水供給側システム120は、空気供給側システム130の空気処理ユニットに加熱又は冷却流体を提供することができる。空気供給側システム130は、加熱又は冷却流体を使用して、建物10に提供される気流を加熱又は冷却することができる。HVACシステム100で使用することができる例示的な水供給側システム及び空気供給側システムの例は、図2〜3を参照してさらに詳細に説明する。
HVACシステム100は、冷凍機102、ボイラ104及び屋上空気処理ユニット(AHU)106を含むように示される。水供給側システム120は、ボイラ104及び冷凍機102を使用して動作流体(例えば、水、グリコールなど)を加熱又は冷却することができ、動作流体をAHU 106まで循環させることができる。様々な実施形態では、水供給側システム120のHVACデバイスは、建物10内又は建物10の周りに位置することも(図1に示されるように)、中央プラントなどの現場を離れた場所に位置することも(例えば、冷却プラント、蒸気プラント、熱プラントなど)可能である。動作流体は、建物10において暖房が必要か又は冷房が必要かに応じて、ボイラ104で加熱することも、冷凍機102で冷却することもできる。ボイラ104は、可燃性物質(例えば、天然ガス)を燃やすことによって又は電熱要素を使用することによって循環流体に熱を加えることができる。冷凍機102は、循環流体から熱を吸収するために、循環流体と熱交換器(例えば、蒸発器)内の別の流体(例えば、冷媒)とを熱交換関係に置くことができる。冷凍機102及び/又はボイラ104からの動作流体は、配管108を介してAHU 106に輸送することができる。
AHU 106は、動作流体とAHU 106中を流れる気流とを熱交換関係に置くことができる(例えば、冷却コイル及び/又は加熱コイルの1つ又は複数の段を介して)。気流は、例えば、外気、建物10内からの還気又は両方の組合せであり得る。AHU 106は、気流に対する加熱又は冷却を提供するために、気流と動作流体との間で熱を伝達することができる。例えば、AHU 106は、動作流体を含む熱交換器上又は熱交換器中で気流を通過させるように構成された1つ又は複数のファン又はブロワを含み得る。次いで、動作流体は、配管110を介して、冷凍機102又はボイラ104に戻ることができる。
空気供給側システム130は、給気ダクト112を介して、AHU 106によって供給された気流(すなわち、給気流)を建物10に送ることができ、還気ダクト114を介して、建物10からAHU 106に還気を提供することができる。いくつかの実施形態では、空気供給側システム130は、複数の可変空気量(VAV)ユニット116を含む。例えば、空気供給側システム130は、建物10の各階又はゾーンに別個のVAVユニット116を含むように示される。VAVユニット116は、建物10の個々のゾーンに提供される給気流の量を制御するように動作することができるダンパ又は他のフロー制御要素を含み得る。他の実施形態では、空気供給側システム130は、中間VAVユニット116又は他のフロー制御要素を使用することなく、給気流を建物10の1つ又は複数のゾーンに送る(例えば、給気ダクト112を介して)。AHU 106は、給気流の属性を測定するように構成された様々なセンサ(例えば、温度センサ、圧力センサなど)を含み得る。AHU 106は、建物ゾーンのセットポイント条件を達成するために、AHU 106内及び/又は建物ゾーン内に位置するセンサから入力を受信し、AHU 106中の給気流の流速、温度又は他の属性を調整することができる。
水供給側システム
次に図2を参照すると、水供給側システム200のブロック図がいくつかの実施形態に従って示される。様々な実施形態では、水供給側システム200は、HVACシステム100内の水供給側システム120を補完又は置換し得る、又はHVACシステム100から離れて実装され得る。HVACシステム100内に実装される際、水供給側システム200は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えばボイラ104、冷凍機102、ポンプ、バルブなど)を含み得、加熱又は冷却された流体をAHU106へ供給するように動作し得る。水供給側システム200のHVACデバイスは、建物10内に(例えば水供給側システム120の部品として)又は中央プラントなどの現場を離れた場所に位置し得る。
図2において、水供給側システム200は、多数のサブプラント202〜212を有する中央プラントとして示される。サブプラント202〜212は、加熱機サブプラント202、熱回収冷凍機サブプラント204、冷凍機サブプラント206、冷却塔サブプラント208、温熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント210及び冷熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント212を含むように示される。サブプラント202〜212は、建物又はキャンパスの熱エネルギー負荷(例えば、湯水、冷水、加熱、冷却など)を提供するために、公益事業から資源(例えば、水、天然ガス、電気など)を消費する。例えば、加熱機サブプラント202は、加熱機サブプラント202と建物10との間で温水を循環させる温水ループ214において水を加熱するように構成することができる。冷凍機サブプラント206は、冷凍機サブプラント206と建物10との間で冷水を循環させる冷水ループ216において水を冷却するように構成することができる。熱回収冷凍機サブプラント204は、温水の追加の加熱及び冷水の追加の冷却を提供するために、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成することができる。復水器水ループ218は、冷凍機サブプラント206の冷水から吸熱し、冷却塔サブプラント208の吸熱を排熱するか又は吸熱を温水ループ214に伝達することができる。温熱TESサブプラント210及び冷熱TESサブプラント212は、後の使用のために、温熱及び冷熱エネルギーをそれぞれ貯蔵することができる。
温水ループ214及び冷水ループ216は、建物10の屋上に位置するエアハンドラーに(例えば、AHU 106)又は建物10の個々の階若しくはゾーンに(例えば、VAVユニット116)加熱及び/又は冷却水を送ることができる。エアハンドラーは、空気の加熱又は冷却を提供するために水が流れる熱交換器(例えば、加熱コイル又は冷却コイル)を通り過ぎる形で空気を押し進める。加熱又は冷却された空気は、建物10の熱エネルギー負荷を供給するために、建物10の個々のゾーンに送ることができる。次いで、水は、さらなる加熱又は冷却を受けるためにサブプラント202〜212に戻る。
サブプラント202〜212は建物への循環のために水を加熱及び冷却するものとして示され、説明されているが、熱エネルギー負荷を供給するために、水の代わりに又は水に加えて、他のいかなるタイプの動作流体(例えば、グリコール、CO2など)も使用できることが理解されよう。他の実施形態では、サブプラント202〜212は、中間熱伝達流体を必要とすることなく、建物又はキャンパスに加熱及び/又は冷却を直接提供することができる。水供給側システム200のこれらの又は他の変形形態は、本開示の教示の範囲内である。
サブプラント202〜212の各々は、サブプラントの機能を促進するように構成された様々な機器を含み得る。例えば、加熱機サブプラント202は、温水ループ214において温水に熱を加えるように構成された多数の加熱要素220(例えば、ボイラ、電気加熱機など)を含むように示される。また、加熱機サブプラント202は、いくつかのポンプ222、224を含むようにも示されており、いくつかのポンプ222、224は、温水ループ214において温水を循環させ、個々の加熱要素220中を流れる温水の流速を制御するように構成される。冷凍機サブプラント206は、冷水ループ216において冷水から熱を除去するように構成された多数の冷凍機232を含むように示される。また、冷凍機サブプラント206は、いくつかのポンプ234、236を含むようにも示されており、いくつかのポンプ234、236は、冷水ループ216において冷水を循環させ、個々の冷凍機232中を流れる冷水の流速を制御するように構成される。
熱回収冷凍機サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成された多数の熱回収熱交換器226(例えば、冷蔵回路)を含むように示される。また、熱回収冷凍機サブプラント204は、いくつかのポンプ228、230を含むようにも示されており、いくつかのポンプ228、230は、熱回収熱交換器226を通じて温水及び/又は冷水を循環させ、個々の熱回収熱交換器226中を流れる水の流速を制御するように構成される。冷却塔サブプラント208は、復水器水ループ218において復水器水から熱を除去するように構成された多数の冷却塔238を含むように示される。また、冷却塔サブプラント208は、いくつかのポンプ240を含むようにも示され、いくつかのポンプ240は、復水器水ループ218において復水器水を循環させ、個々の冷却塔238中を流れる復水器水の流速を制御するように構成される。
温熱TESサブプラント210は、後の使用のために温水を貯蔵するように構成された温熱TESタンク242を含むように示される。また、温熱TESサブプラント210は、温熱TESタンク242への又は温熱TESタンク242からの温水の流速を制御するように構成された1つ又は複数のポンプ又はバルブも含み得る。冷熱TESサブプラント212は、後の使用のために冷水を貯蔵するように構成された冷熱TESタンク244を含むように示される。また、冷熱TESサブプラント212は、冷熱TESタンク244への又は冷熱TESタンク244からの冷水の流速を制御するように構成された1つ又は複数のポンプ又はバルブも含み得る。
いくつかの実施形態では、水供給側システム200のポンプ(例えば、ポンプ222、224、228、230、234、236及び/又は240)又は水供給側システム200のパイプラインの1つ又は複数は、それらのポンプ又はパイプラインと関連付けられた遮断バルブを含む。遮断バルブは、水供給側システム200の流体の流れを制御するために、ポンプと統合することも、ポンプの上流又は下流に配置することもできる。様々な実施形態では、水供給側システム200は、水供給側システム200の特定の構成及び水供給側システム200によって供給される負荷のタイプに基づいて、より多くの、より少ない又は異なるタイプのデバイス及び/又はサブプラントを含み得る。
空気供給側システム
次に図3を参照すると、空気供給側システム300のブロック図がいくつかの実施形態に従って示される。様々な実施形態では、空気供給側システム300は、HVACシステム100内の空気供給側システム130を補完又は置換し得る、又はHVACシステム100から離れて実装され得る。HVACシステム100内に実装される際、空気供給側システム300は、HVACシステム100内のHVACデバイスのサブセット(例えばAHU106、VAVユニット116、ダクト112−114、ファン、ダンパなど)を含み得、建物10内又はその周囲に位置し得る。空気供給側システム300は、水供給側システム200により供給される加熱又は冷却された流体を使用することにより、建物10へ供給される気流を加熱又は冷却するように動作し得る。
図3において、空気供給側システム300は、エコノマイザタイプの空気処理ユニット(AHU)302を含むように示される。エコノマイザタイプのAHUは、加熱又は冷却のために空気処理ユニットによって使用される外気及び還気の量を変動させる。例えば、AHU 302は、還気ダクト308を介して建物ゾーン306から還気304を受け取り、給気ダクト312を介して給気310を建物ゾーン306に送ることができる。いくつかの実施形態では、AHU 302は、建物10の屋根に位置する屋上ユニットでも(例えば、図1に示されるようなAHU 106)、還気304と外気314の両方を受け取るように別の方法で配置することも可能である。AHU 302は、組み合わせて給気310を形成する外気314及び還気304の量を制御するように排気ダンパ316、混合ダンパ318及び外気ダンパ320を操作するように構成することができる。混合ダンパ318を通過しないいかなる還気304も、排気322として排気ダンパ316を通じてAHU 302から排気することができる。
ダンパ316〜320の各々は、アクチュエータによって操作することができる。例えば、排気ダンパ316は、アクチュエータ324によって操作することができ、混合ダンパ318は、アクチュエータ326によって操作することができ、外気ダンパ320は、アクチュエータ328によって操作することができる。アクチュエータ324〜328は、通信リンク332を介してAHUコントローラ330と通信することができる。アクチュエータ324〜328は、AHUコントローラ330から制御信号を受信し、AHUコントローラ330にフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、例えば、現在のアクチュエータ若しくはダンパ位置の表示、アクチュエータによって与えられるトルク若しくは力の量、診断情報(例えば、アクチュエータ324〜328によって実行された診断テストの結果)、ステータス情報、試運転情報、構成設定、較正データ、及び/又は、アクチュエータ324〜328によって収集、格納若しくは使用することができる他のタイプの情報若しくはデータを含み得る。AHUコントローラ330は、1つ又は複数の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例・積分(PI)制御アルゴリズム、比例・積分・微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用してアクチュエータ324〜328を制御するように構成されたエコノマイザコントローラであり得る。
依然として図3を参照すると、AHU 302は、給気ダクト312内に配置された冷却コイル334、加熱コイル336及びファン338を含むように示される。ファン338は、給気310に強制的に冷却コイル334及び/又は加熱コイル336を通過させ、建物ゾーン306に給気310を提供するように構成することができる。AHUコントローラ330は、給気310の流速を制御するために、通信リンク340を介してファン338と通信することができる。いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、ファン338の速度を変調することによって、給気310に適用される加熱又は冷却の量を制御する。
冷却コイル334は、配管342を介して水供給側システム200から(例えば、冷水ループ216から)冷却流体を受け取り、配管344を介して水供給側システム200に冷却流体を戻すことができる。バルブ346は、冷却コイル334中を流れる冷却流体の流速を制御するために、配管342又は配管344に沿って配置することができる。いくつかの実施形態では、冷却コイル334は、給気310に適用される冷却の量を変調するために独立して起動及び解除を行うことができる(例えば、AHUコントローラ330によって、BMSコントローラ366によってなど)冷却コイルの複数の段を含む。
加熱コイル336は、配管348を介して水供給側システム200から(例えば、温水ループ214から)加熱流体を受け取り、配管350を介して水供給側システム200に加熱流体を戻すことができる。バルブ352は、加熱コイル336中を流れる加熱流体の流速を制御するために、配管348又は配管350に沿って配置することができる。いくつかの実施形態では、加熱コイル336は、給気310に適用される加熱の量を変調するために独立して起動及び解除を行うことができる(例えば、AHUコントローラ330によって、BMSコントローラ366によってなど)加熱コイルの複数の段を含む。
バルブ346及び352の各々は、アクチュエータによって制御することができる。例えば、バルブ346は、アクチュエータ354によって制御することができ、バルブ352は、アクチュエータ356によって制御することができる。アクチュエータ354〜356は、通信リンク358〜360を介してAHUコントローラ330と通信することができる。アクチュエータ354〜356は、AHUコントローラ330から制御信号を受け取り、コントローラ330にフィードバック信号を提供することができる。いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、給気ダクト312(例えば、冷却コイル334及び/又は加熱コイル336の下流)に配置された温度センサ362から給気温度の測定値を受信する。また、AHUコントローラ330は、建物ゾーン306に配置された温度センサ364から建物ゾーン306の温度の測定値を受信することもできる。
いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、給気310に提供される加熱又は冷却の量を変調するために(例えば、給気310のセットポイント温度を達成するか又は給気310の温度をセットポイント温度範囲内に維持するために)、アクチュエータ354〜356を介してバルブ346、352を操作する。バルブ346、352の位置は、冷却コイル334又は加熱コイル336によって給気310に提供される加熱又は冷却の量に影響を及ぼし、所望の給気温度を達成するために消費されるエネルギーの量と相関し得る。AHU330は、コイル334〜336を起動若しくは解除することによって、ファン338の速度を調整することによって、又は、両方の組合せによって、給気310及び/又は建物ゾーン306の温度を制御することができる。
依然として図3を参照すると、空気供給側システム300は、建物管理システム(BMS)コントローラ366及びクライアントデバイス368を含むように示される。BMSコントローラ366は、空気供給側システム300、水供給側システム200、HVACシステム100、及び/又は建物10に資源供給する他の制御可能システム用のシステムレベルコントローラ、アプリケーション又はデータサーバ、ヘッドノード或いはマスタコントローラとして機能する1つ又は複数のコンピュータシステム(例えば、サーバ、監視コントローラ、サブシステムコントローラなど)を含み得る。BMSコントローラ366は、同様の又は異種のプロトコル(例えば、LON(登録商標)、BACnet(登録商標)など)に従って、通信リンク370を介して、複数の下流建物システム又はサブシステム(例えば、HVACシステム100、セキュリティシステム、照明システム、水供給側システム200など)と通信することができる。様々な実施形態では、AHUコントローラ330及びBMSコントローラ366は、分離することも(図3に示されるように)、統合することもできる。統合された実装形態では、AHUコントローラ330は、BMSコントローラ366のプロセッサによって実行するように構成されたソフトウェアモジュールであり得る。
いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、BMSコントローラ366から情報(例えば、コマンド、セットポイント、動作境界など)を受信し、BMSコントローラ366に情報(例えば、温度測定値、バルブ又はアクチュエータ位置、動作ステータス、診断など)を提供する。例えば、AHUコントローラ330は、温度センサ362〜364からの温度測定値、機器オン/オフ状態、機器動作能力、及び/又は、建物ゾーン306内の可変状態若しくは条件のモニタ及び制御を行うためにBMSコントローラ366によって使用することができる他の任意の情報をBMSコントローラ366に提供することができる。
クライアントデバイス368は、HVACシステム100、そのサブシステム、及び/又はデバイスを制御、閲覧又は別の方法で相互作用するための1つ又は複数のヒューマンマシンインターフェース又はクライアントインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース、報告用のインターフェース、テキストベースのコンピュータインターフェース、顧客に直接対応するウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を含み得る。クライアントデバイス368は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、リモート若しくはローカルインターフェース、又は、他の任意のタイプのユーザインターフェースデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、据置型端末でも、モバイルデバイスでもよい。例えば、クライアントデバイス368は、デスクトップコンピュータ、ユーザインターフェースを有するコンピュータサーバ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA、又は、他の任意のタイプのモバイル若しくは非モバイルデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、通信リンク372を介して、BMSコントローラ366及び/又はAHUコントローラ330と通信することができる。
建物管理システム
ここで図4を参照すると、いくつかの実施形態による、建物管理システム(BMS)400のブロック図が示される。BMS 400は、様々な建物機能の自動的なモニタ及び制御を行うために建物10において実装することができる。BMS 400は、BMSコントローラ366及び多数の建物サブシステム428を含むように示される。建物サブシステム428は、建物電気サブシステム434、情報通信技術(ICT)サブシステム436、セキュリティサブシステム438、HVACサブシステム440、照明サブシステム442、エレベータ/エスカレータサブシステム432及び火災安全サブシステム430を含むように示される。様々な実施形態では、建物サブシステム428は、より少ない、追加の又は代替のサブシステムを含み得る。例えば、建物サブシステム428は、冷蔵サブシステム、広告若しくは看板サブシステム、調理サブシステム、自動販売サブシステム、プリンタ若しくはコピーサービスサブシステム、又は、建物10のモニタ及び制御を行うために制御可能な機器及び/又はセンサを使用する他の任意のタイプの建物サブシステムを同様に含むことも、それらを代替として含むこともできる。いくつかの実施形態では、建物サブシステム428は、図2〜3を参照して説明されるような、水供給側システム200及び/又は空気供給側システム300を含む。
建物サブシステム428の各々は、その個々の機能及び制御活動を完了するためのいかなる数のデバイス、コントローラ及び接続も含み得る。HVACサブシステム440は、図1〜3を参照して説明されるような、HVACシステム100と同じコンポーネントの多くを含み得る。例えば、HVACサブシステム440は、冷凍機、ボイラ、任意の数の空気処理ユニット、エコノマイザ、フィールドコントローラ、監視コントローラ、アクチュエータ、温度センサ、及び、建物10内の温度、湿度、気流又は他の可変条件を制御するための他のデバイスを含み得る。照明サブシステム442は、任意の数の照明器具、バラスト、照明センサ、調光器、又は、建物空間に提供される光の量を制御可能に調整するように構成された他のデバイスを含み得る。セキュリティサブシステム438は、占有センサ、映像監視カメラ、デジタル映像レコーダ、映像処理サーバ、侵入検出デバイス、アクセス制御デバイス及びサーバ又は他のセキュリティ関連デバイスを含み得る。
依然として図4を参照すると、BMSコントローラ366は、通信インターフェース407及びBMSインターフェース409を含むように示される。インターフェース407は、BMSコントローラ366及び/又はサブシステム428のユーザ制御、モニタリング及び調整を可能にするために、BMSコントローラ366と外部のアプリケーション(例えば、モニタリング及び報告アプリケーション422、企業制御アプリケーション426、リモートシステム及びアプリケーション444、クライアントデバイス448上に存在するアプリケーションなど)との間の通信を容易にすることができる。また、インターフェース407は、BMSコントローラ366とクライアントデバイス448との間の通信を容易にすることもできる。BMSインターフェース409は、BMSコントローラ366と建物サブシステム428(例えば、HVAC、照明セキュリティ、エレベータ、配電、ビジネスなど)との間の通信を容易にすることができる。
インターフェース407、409は、建物サブシステム428又は他の外部のシステム若しくはデバイスとのデータ通信を実施するための有線又は無線通信インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、トランシーバ、ワイヤ端子など)であることも、それらを含むことも可能である。様々な実施形態では、インターフェース407、409を介する通信は、直接的であることも(例えば、ローカル有線又は無線通信)、通信ネットワーク446を介することも(例えば、WAN、インターネット、セルラーネットワークなど)可能である。例えば、インターフェース407、409は、イーサネット(登録商標)ベース通信リンク又はネットワークを介してデータを送信及び受信するためのイーサネットカード及びポートを含み得る。別の例では、インターフェース407、409は、無線通信ネットワークを介して通信するためのWi−Fiトランシーバを含み得る。別の例では、インターフェース407、409の一方又は両方は、セルラーフォン又は携帯電話通信トランシーバを含み得る。一実施形態では、通信インターフェース407は送電線通信インターフェースであり、BMSインターフェース409はイーサネットインターフェースである。他の実施形態では、通信インターフェース407及びBMSインターフェース409は両方とも、別個のイーサネットインターフェースであるか又は同じイーサネットインターフェースである。
依然として図4を参照すると、BMSコントローラ366は、処理回路404を含むように示されており、処理回路404は、プロセッサ406及びメモリ408を含む。処理回路404は、処理回路404及びその様々なコンポーネントがインターフェース407、409を介してデータの送信及び受信を行えるように、BMSインターフェース409及び/又は通信インターフェース407に通信可能に接続することができる。プロセッサ406は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理コンポーネントのグループ、又は、他の適切な電子処理コンポーネントとして実装することができる。
メモリ408(例えば、メモリ、メモリユニット、記憶装置など)は、本出願で説明される様々なプロセス、層及びモジュールを完了及び/又は促進するためのデータ及び/又はコンピュータコードを格納するための1つ又は複数のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置など)を含み得る。メモリ408は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであることも、それらを含むことも可能である。メモリ408は、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、又は、他の任意のタイプの様々な活動をサポートするための情報構造及び本出願で説明される情報構造を含み得る。いくつかの実施形態によれば、メモリ408は、処理回路404を介してプロセッサ406に通信可能に接続することができ、本明細書で説明される1つ又は複数のプロセスを実行する(例えば、処理回路404及び/又はプロセッサ406によって)ためのコンピュータコードを含む。
いくつかの実施形態では、BMSコントローラ366は、単一のコンピュータ(例えば、1つのサーバ、1つのハウジングなど)内で実装される。様々な他の実施形態では、BMSコントローラ366は、複数のサーバ又はコンピュータ(例えば、分散した場所に存在することができる)にわたって分散させることができる。さらに、図4はBMSコントローラ366の外部に存在するものとしてアプリケーション422、426を示しているが、いくつかの実施形態では、アプリケーション422、426は、BMSコントローラ366内(例えば、メモリ408内)でホストすることができる。
依然として図4を参照すると、メモリ408は、企業統合層410、自動化測定及び検定(AM&V)層412、需要応答(DR)層414、欠陥検出及び診断(FDD)層416、統合制御層418及び建物サブシステム統合層420を含むように示される。層410〜420は、建物サブシステム428及び他のデータ源から入力を受信し、入力に基づいて建物サブシステム428の最適な制御動作を決定し、最適な制御動作に基づいて制御信号を生成し、生成された制御信号を建物サブシステム428に提供するように構成することができる。以下の段落は、BMS 400の層410〜420の各々によって実行される一般機能のいくつかを説明する。
企業統合層410は、様々な企業レベルのアプリケーションをサポートするために情報及びサービスをクライアント又はローカルアプリケーションに供給するように構成することができる。例えば、企業制御アプリケーション426は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)又は任意の数の企業レベルビジネスアプリケーション(例えば、会計システム、ユーザ識別システムなど)にサブシステム全体に及ぶ制御を提供するように構成することができる。企業制御アプリケーション426は、BMSコントローラ366を構成するための構成GUIを提供するように同様に構成することも、そのように代替として構成することもできる。さらなる他の実施形態では、企業制御アプリケーション426は、インターフェース407及び/又はBMSインターフェース409で受信された入力に基づいて建物性能(例えば、効率、エネルギー使用、快適性又は安全性)を最適化するために、層410〜420と連動することができる。
建物サブシステム統合層420は、BMSコントローラ366と建物サブシステム428との間の通信を管理するように構成することができる。例えば、建物サブシステム統合層420は、建物サブシステム428からセンサデータ及び入力信号を受信し、建物サブシステム428に出力データ及び制御信号を提供することができる。また、建物サブシステム統合層420は、建物サブシステム428間の通信を管理するように構成することもできる。建物サブシステム統合層420は、多数のマルチベンダ/マルチプロトコルシステムにわたって通信(例えば、センサデータ、入力信号、出力信号など)を翻訳する。
需要応答層414は、建物10の需要を満たすことに応答して、資源使用量(例えば、電気使用、天然ガス使用、水使用など)及び/又はそのような資源使用量の金銭的費用を最適化するように構成することができる。最適化は、使用時間価格、削減信号、エネルギー利用可能性、又は、ユーティリティプロバイダ、分散型エネルギー生成システム424、エネルギー貯蔵427(例えば、温熱TES 242、冷熱TES 244など)若しくは他の供給源から受信された他のデータに基づき得る。需要応答層414は、BMSコントローラ366の他の層(例えば、建物サブシステム統合層420、統合制御層418など)から入力を受信することができる。他の層から受信される入力は、温度、二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、大気質センサ出力、占有センサ出力、部屋スケジュール及び同様のものなどの環境又はセンサ入力を含み得る。また、入力は、電気使用(例えば、kWhで表現される)、熱負荷測定値、価格情報、予想価格、平準化価格、公益事業からの削減信号及び同様のものなどの入力も含み得る。
いくつかの実施形態によれば、需要応答層414は、受信したデータ及び信号に応答するための制御論理を含む。これらの応答は、統合制御層418の制御アルゴリズムと通信すること、制御戦略を変更すること、セットポイントを変更すること、又は、制御の下で建物機器若しくはサブシステムを起動/解除することを含み得る。また、需要応答層414は、貯蔵されたエネルギーをいつ利用するかを決定するように構成された制御論理も含み得る。例えば、需要応答層414は、ピーク使用時間が始まる直前に、エネルギー貯蔵427からのエネルギーの使用を開始すると決定することができる。
いくつかの実施形態では、需要応答層414は、需要(例えば、価格、削減信号、需要レベルなど)を表す1つ又は複数の入力に基づいて又は同需要に基づいてエネルギー費用を最小化する制御動作を能動的に開始する(例えば、自動的にセットポイントを変更する)ように構成された制御モジュールを含む。いくつかの実施形態では、需要応答層414は、制御動作の最適なセットを決定するために、機器モデルを使用する。機器モデルは、例えば、建物機器の様々なセットによって実行される入力、出力及び/又は機能を説明する熱力学モデルを含み得る。機器モデルは、建物機器の集合体(例えば、サブプラント、冷凍機アレイなど)又は個々のデバイス(例えば、個々の冷凍機、加熱機、ポンプなど)を表し得る。
需要応答層414は、1つ又は複数の需要応答ポリシ定義(例えば、データベース、XMLファイルなど)をさらに含むことも、それらを活用することも可能である。ポリシ定義は、ユーザのアプリケーション、所望の快適レベル、特定の建物機器に合わせて又は他の関心事に基づいて、需要入力に応答して開始された制御動作を調整できるように、ユーザによって(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを介して)編集又は調整することができる。例えば、需要応答ポリシ定義は、特定の需要入力に応答してどの機器をオン又はオフにするか、システム又は機器の部品をどのくらいの時間オフにするべきか、どのようなセットポイントを変更することができるか、許容セットポイント調整範囲はどれほどか、通常のスケジューリングされたセットポイントに戻る前に高需要セットポイントをどのくらいの時間保持するか、能力限界にどれほど近づいているか、どの機器モードを利用するか、エネルギー貯蔵デバイス(例えば、熱貯蔵タンク、バッテリバンクなど)への及びエネルギー貯蔵デバイスからのエネルギー伝達料金(例えば、最大料金、警報料金、他の料金限界情報など)、現場生成されたエネルギーをいつ送り出すか(例えば、燃料電池、電動発電機セットを介して)を指定することができる。
統合制御層418は、制御決定を行うために建物サブシステム統合層420及び/又は需要応答層414のデータ入力又は出力を使用するように構成することができる。建物サブシステム統合層420によって提供されるサブシステム統合により、統合制御層418は、サブシステム428が単一の統合上位体系として挙動するように、サブシステム428の制御活動を統合することができる。いくつかの実施形態では、統合制御層418は、別個のサブシステムが単独で提供できる快適性及びエネルギー節約と比べて、より優れた快適性及びエネルギー節約を提供するために、多数の建物サブシステムからの入力及び出力を使用する制御論理を含む。例えば、統合制御層418は、第2のサブシステムに対するエネルギー節約制御決定を行うために、第1のサブシステムからの入力を使用するように構成することができる。これらの決定の結果は、建物サブシステム統合層420に送り返すことができる。
統合制御層418は、論理的には、需要応答層414の下であるように示される。統合制御層418は、需要応答層414と協力して建物サブシステム428及びそれらのそれぞれの制御ループの制御を可能にすることによって、需要応答層414の有効性を強化するように構成することができる。この構成は、有利には従来のシステムと比べて、破壊的な需要応答挙動を低減することができる。例えば、統合制御層418は、冷却水温度のセットポイントの需要応答駆動上方調整(又は温度に直接若しくは間接的に影響を及ぼす別の成分)が、冷凍機で保存されたものより多くの総建物エネルギー使用をもたらすことになるファンエネルギー(又は空間を冷却するために使用される他のエネルギー)の増加をもたらさないことを保証するように構成することができる。
統合制御層418は、需要負荷制限が進行中の間でさえも制約(例えば、温度、照明レベルなど)が適切に維持されることを需要応答層414がチェックするように、需要応答層414にフィードバックを提供するように構成することができる。また、制約は、安全性、機器動作制限及び性能、快適性、消防規則、電気工事規定、エネルギー規定及び同様のものに関連するセットポイント又は検知境界も含み得る。また、統合制御層418は、論理的には、欠陥検出及び診断層416及び自動化測定及び検定層412の下でもある。統合制御層418は、複数の建物サブシステムからの出力に基づいて、これらのより高いレベルに計算済みの入力(例えば、集計)を提供するように構成することができる。
自動化測定及び検定(AM&V)層412は、統合制御層418又は需要応答層414によって命令される制御戦略が正しく機能していることを検証するように構成することができる(例えば、AM&V層412、統合制御層418、建物サブシステム統合層420、FDD層416によって集計されたデータを使用して又は別の方法で)。AM&V層412によって行われる計算は、建物システムエネルギーモデル及び/又は個々のBMSデバイス若しくはサブシステムに対する機器モデルに基づき得る。例えば、AM&V層412は、モデルの精度を決定するために、モデル予測出力を建物サブシステム428からの実際の出力と比較することができる。
欠陥検出及び診断(FDD)層416は、建物サブシステム428、建物サブシステムデバイス(すなわち、建物機器)、並びに、需要応答層414及び統合制御層418によって使用される制御アルゴリズムに対する進行中の欠陥検出を提供するように構成することができる。FDD層416は、統合制御層418から、1つ若しくは複数の建物サブシステム若しくはデバイスから直接、又は、別のデータ源から、データ入力を受信することができる。FDD層416は、検出された欠陥を自動的に診断し、応答することができる。検出又は診断された欠陥への応答は、ユーザ、保守スケジューリングシステム、又は、欠陥の修理を試みるか若しくは欠陥に対処するように構成された制御アルゴリズムに警告メッセージを提供することを含み得る。
FDD層416は、建物サブシステム統合層420で利用可能な詳細なサブシステム入力を使用して、欠陥コンポーネントの具体的な識別又は欠陥の原因(例えば、緩んだダンパリンク機構)を出力するように構成することができる。他の例示的な実施形態では、FDD層416は、統合制御層418に「欠陥」事象を提供するように構成され、統合制御層418は、受信された欠陥事象に応答して、制御戦略及びポリシを実行する。いくつかの実施形態によれば、FDD層416(又は、統合制御エンジン又はビジネスルールエンジンによって実行されるポリシ)は、エネルギー浪費を低減するため、機器の寿命を延ばすため又は正しい制御応答を保証するために、欠陥デバイス又はシステムの周りのシステム又は直接制御活動を停止することができる。
FDD層416は、様々な異なるシステムデータストア(又はライブデータ用のデータポイント)に格納するか又はアクセスするように構成することができる。FDD層416は、データストアの何らかのコンテンツを使用して、機器レベル(例えば、特定の冷凍機、特定のAHU、特定の端末ユニットなど)で欠陥を識別することができ、他のコンテンツを使用して、コンポーネント又はサブシステムレベルで欠陥を識別することができる。例えば、建物サブシステム428は、BMS 400及びその様々なコンポーネントの性能を示す時間的な(すなわち、時系列)データを生成することができる。建物サブシステム428によって生成されるデータは、統計特性を呈する測定済みの又は計算済みの値を含み得、対応するシステム又はプロセス(例えば、温度制御プロセス、フロー制御プロセスなど)がそのセットポイントからの誤差の観点からどのように機能しているかについての情報を提供することができる。これらのプロセスは、システムの性能がいつ劣化し始めるかを暴露し、その劣化がより深刻になる前に欠陥を修理するようにユーザに警告するために、FDD層416によって検査することができる。
ここで図5を参照すると、いくつかの実施形態による、別の建物管理システム(BMS)500のブロック図が示される。BMS 500は、HVACシステム100、水供給側システム200、空気供給側システム300、建物サブシステム428のデバイス、並びに、他のタイプのBMSデバイス(例えば、照明機器、セキュリティ機器など)及び/又はHVAC機器のモニタ及び制御を行うために使用することができる。
BMS 500は、自動機器発見及び機器モデル分散を促進するシステムアーキテクチャを提供する。機器発見は、複数の異なる通信バス(例えば、システムバス554、ゾーンバス556〜560、564、センサ/アクチュエータバス566など)にわたって及び複数の異なる通信プロトコルにわたってBMS 500の複数のレベルで起こり得る。いくつかの実施形態では、機器発見は、各通信バスに接続されたデバイスのステータス情報を提供するアクティブノードテーブルを使用して遂行される。例えば、各通信バスは、新しいノードに対して対応するアクティブノードテーブルをモニタすることによって、新しいデバイスに対するモニタを行うことができる。新しいデバイスが検出されると、BMS 500は、ユーザが対話することなく、新しいデバイスとの相互作用を開始することができる(例えば、制御信号を送信する、デバイスからのデータを使用する)。
BMS 500のいくつかのデバイスは、機器モデルを使用して、それら自体をネットワークに提示する。機器モデルは、他のシステムとの統合のために使用される機器オブジェクト属性、ビュー定義、スケジュール、傾向及び関連BACnet値オブジェクト(例えば、アナログ値、2進値、多状態値など)を定義する。BMS 500のいくつかのデバイスは、それら自体の機器モデルを格納する。BMS 500の他のデバイスは、外部(例えば、他のデバイス内)に格納された機器モデルを有する。例えば、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528の機器モデルを格納することができる。いくつかの実施形態では、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528又はゾーンバス558の他のデバイスの機器モデルを自動的に作成する。また、他のゾーンコーディネータも、それらのゾーンバスに接続されたデバイスの機器モデルを作成することができる。デバイスの機器モデルは、ゾーンバスのデバイスによって暴露されたデータポイントのタイプ、デバイスタイプ及び/又は他のデバイス属性に基づいて自動的に作成することができる。自動機器発見及び機器モデル分散のいくつかの例は、以下でさらに詳細に論じる。
依然として図5を参照すると、BMS 500は、システムマネージャ502、いくつかのゾーンコーディネータ506、508、510、518及びいくつかのゾーンコントローラ524、530、532、536、548、550を含むように示される。システムマネージャ502は、データ通信リンク574(例えば、BACnet IP、イーサネット、有線又は無線通信など)を介してクライアントデバイス504(例えば、ユーザデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイスなど)と通信することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574を介してクライアントデバイス504にユーザインターフェースを提供することができる。ユーザインターフェースは、ユーザがクライアントデバイス504を介してBMS 500のモニタ及び/又は制御を行えるようにする。
いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506〜510、518と接続される。システムマネージャ502は、マスタスレーブトークンパッシング(MSTP)プロトコル又は他の任意の通信プロトコルを使用して、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506〜510、518と通信するように構成することができる。また、システムバス554は、システムマネージャ502を、定容(CV)屋上ユニット(RTU)512、入力/出力モジュール(IOM)514、サーモスタットコントローラ516(例えば、TEC5000シリーズサーモスタットコントローラ)、及び、ネットワークオートメーションエンジン(NAE)又は第三者コントローラ520などの他のデバイスと接続することもできる。RTU 512は、システムマネージャ502と直接通信するように構成することができ、システムバス554に直接接続することができる。他のRTUは、中間デバイスを介してシステムマネージャ502と通信することができる。例えば、有線入力562は、第三者RTU 542をサーモスタットコントローラ516に接続することができ、サーモスタットコントローラ516は、システムバス554に接続される。
システムマネージャ502は、機器モデルを含むいかなるデバイスに対するユーザインターフェースも提供することができる。ゾーンコーディネータ506〜510、518及びサーモスタットコントローラ516などのデバイスは、システムバス554を介してシステムマネージャ502にそれらの機器モデルを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、機器モデルを含まない接続バイス(例えば、IOM 514、第三者コントローラ520など)の機器モデルを自動的に作成する。例えば、システムマネージャ502は、デバイス木要求に応答するいかなるデバイスの機器モデルも作成することができる。システムマネージャ502によって作成された機器モデルは、システムマネージャ502内に格納することができる。次いで、システムマネージャ502は、システムマネージャ502によって作成された機器モデルを使用して、それら自体の機器モデルを含まないデバイスに対するユーザインターフェースを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介して接続された機器の各タイプのビュー定義を格納し、格納されたビュー定義を使用して機器に対するユーザインターフェースを生成する。
各ゾーンコーディネータ506〜510、518は、ゾーンバス556、558、560、564を介してゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550のうちの1つ又は複数と接続することができる。ゾーンコーディネータ506〜510、518は、MSTPプロトコル又は他の任意の通信プロトコルを使用してゾーンバス556〜560、564を介してゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550と通信することができる。また、ゾーンバス556〜560、564は、ゾーンコーディネータ506〜510、518を、可変空気量(VAV)RTU 522、540、切替バイパス(COBP)RTU 526、552、バイパスダンパ528、546及びPEAKコントローラ534、544などの他のタイプのデバイスと接続することもできる。
ゾーンコーディネータ506〜510、518は、様々なゾーニングシステムに対するモニタ及び命令を行うように構成することができる。いくつかの実施形態では、各ゾーンコーディネータ506〜510、518は、別個のゾーニングシステムに対するモニタ及び命令を行い、別個のゾーンバスを介してゾーニングシステムに接続される。例えば、ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU 522及びゾーンコントローラ524に接続することができる。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU 526、バイパスダンパ528、COBPゾーンコントローラ530及びVAVゾーンコントローラ532に接続することができる。ゾーンコーディネータ510は、ゾーンバス560を介してPEAKコントローラ534及びVAVゾーンコントローラ536に接続することができる。ゾーンコーディネータ518は、ゾーンバス564を介してPEAKコントローラ544、バイパスダンパ546、COBPゾーンコントローラ548及びVAVゾーンコントローラ550に接続することができる。
ゾーンコーディネータ506〜510、518の単一のモデルは、複数の異なるタイプのゾーニングシステム(例えば、VAVゾーニングシステム、COBPゾーニングシステムなど)を処理するように構成することができる。各ゾーニングシステムは、RTU、1つ若しくは複数のゾーンコントローラ及び/又はバイパスダンパを含み得る。例えば、ゾーンコーディネータ506、510は、VAV RTU 522、540にそれぞれ接続されたVerasys(登録商標)VAVエンジン(VVE)として示される。ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU 522に直接接続されるのに対して、ゾーンコーディネータ510は、PEAKコントローラ534に提供された有線入力568を介して第三者VAV RTU 540に接続される。ゾーンコーディネータ508、518は、COBP RTU 526、552にそれぞれ接続されたVerasys COBPエンジン(VCE)として示される。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU 526に直接接続されるのに対して、ゾーンコーディネータ518は、PEAKコントローラ544に提供された有線入力570を介して第三者COBP RTU 552に接続される。
ゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550は、センサ/アクチュエータ(SA)バスを介して個々のBMSデバイス(例えば、センサ、アクチュエータなど)と通信することができる。例えば、VAVゾーンコントローラ536は、SAバス566を介してネットワーク接続センサ538に接続されるように示される。ゾーンコントローラ536は、MSTPプロトコル又は他の任意の通信プロトコルを使用してネットワーク接続センサ538と通信することができる。図5では1つのSAバス566しか示されていないが、各ゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550は異なるSAバスに接続できることを理解すべきである。各SAバスは、ゾーンコントローラを、様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、光センサ、占有センサなど)、アクチュエータ(例えば、ダンパアクチュエータ、バルブアクチュエータなど)及び/又は他のタイプの制御可能な機器(例えば、冷凍機、加熱機、ファン、ポンプなど)と接続することができる。
各ゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550は、異なる建物ゾーンのモニタ及び制御を行うように構成することができる。ゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550は、それらのSAバスを介して提供された入力及び出力を使用して、様々な建物ゾーンのモニタ及び制御を行うことができる。例えば、ゾーンコントローラ536は、温度制御アルゴリズムにおけるフィードバックとして、SAバス566を介してネットワーク接続センサ538から受信された温度入力(例えば、建物ゾーンの測定温度)を使用することができる。ゾーンコントローラ524、530〜532、536、548〜550は、様々なタイプの制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例・積分(PI)制御アルゴリズム、比例・積分・微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用して、建物10内又は建物10の周りの可変状態又は条件(例えば、温度、湿度、気流、照明など)を制御することができる。
設定点境界調整
設定点調整システム
次に図6と図7を参照すると、制御システム600が示される。制御システム600は空間内の快適性のレベルを維持するために設定点境界(例えば最小及び最大許容可能設定点境界)を調整するように構成され得る。制御システム600は設定点調整コントローラ604、建物機器612及びモデル予測制御(MPC:model predictive control)システム630を含む。いくつかの実施形態では、MPCシステム630は遠隔サーバである。いくつかの実施形態では、MPCシステム630は局所に在るすなわち現場に在る。MPCシステム630は、加熱及び/又は冷却を建物10へ提供するために機器を運転することに関連する費用を最小化する最適設定点境界を決定するためにモデル予測制御を行うように構成される。いくつかの実施形態では、MPCシステム630は、参照のためその開示全体を本明細書に組み入れる2017年3月29日出願の米国特許出願第15/473,496号に詳細に説明されるシステム、技術、方法などのうちの任意のものを使用することにより設定点境界を決定するように構成される。
制御システム600は設定点、設定点境界などをMPCシステム630から受信するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はMPCシステム630と通信可能に接続される。MPCシステム630の機能の任意のものが設定点調整コントローラ604により実施され得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、現場外に在り、そして建物機器612の制御信号を生成し、この制御信号を建物機器612へ無線で提供するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は建物機器612と有線で通信可能に接続される。
設定点調整コントローラ604は、部屋607として示された部屋、ゾーン、空間などをサービスするように建物機器612を運転するための制御信号を生成するように構成される。部屋607はいくつかの実施形態によると内部606を含む。部屋607の様々なシステムパラメータ(例えば、どこに建物機器612が在るか、窓620を通しての放射熱伝達、どのように部屋607が熱を蓄えるか、建物10の配向など)に依存して、不均一温度分布が部屋607内に存在し得る。部屋607は、内部606全体にわたり熱を不均一に蓄え得、これにより部屋607全体にわたる温度差を生じる。いくつかの実施形態では、環境条件(例えば温度、湿度、日光など)もまた部屋607全体にわたる温度差に影響を与え得る。部屋607は水平方向又は第1の方向608と垂直方向又は第2の方向610とを含んで示される。図6に示すように、部屋607全体にわたる様々な位置における温度は変化する。
建物機器612は加熱及び/又は冷却を部屋607へ提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、建物機器612は、設定点調整コントローラ604から制御信号を受信し、そして通気孔632を介し加熱及び/又は冷却を部屋607へ提供するように構成される。例えば、建物機器612は、可変冷媒流量(VRF:variable refrigerant flow)システム、可変風量(VAV:variable air volume)システム、室空調システム(RAC:room air conditioning system)、パッケージ化空調システム(PAC:packaged air conditioning system)などであり得る。いくつかの実施形態では、建物機器612は暖気又は冷気を通気孔632へ供給し、この暖気又は冷気は、部屋607を加熱又は冷却するために部屋607の内部606へ放出又は再循環される。建物機器612は部屋607を加熱又は冷却するように構成された任意のHVAC機器であり得る。
設定点調整コントローラ604は部屋607のサーモスタット622として示されるサーモスタット、ゾーンコントローラなどと通信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、サーモスタット622と設定点調整コントローラ604は同じ装置である。例えば、設定点調整コントローラ604はサーモスタット622の機能のうちの任意のものを行うように構成され得る。同様に、サーモスタット622は設定点調整コントローラ604の機能のうちの任意のものを行うように構成され得る。いくつかの実施形態では、サーモスタット622は、部屋607の設定点に対する居住者調整を受信するように構成されたユーザインターフェース616を含む。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースはまた最小所望許容可能温度及び最大所望許容可能温度を受信し得る。例えば、居住者は、快適である部屋607の最小温度及び快適である部屋607の最大温度を指示し得る。いくつかの実施形態では、サーモスタット622は設定点調整コントローラ604に居住者定義温度設定点並びに/又は最小及び最大許容可能/所望温度を与えるように構成される。いくつかの実施形態では、サーモスタット622及び/又は設定点調整コントローラ604はサーモスタット622を介し居住者により入力される最小及び最大温度値のいずれもMPCシステム630に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、MPCシステム630は、MPC中に制約として居住者により指示される最小及び最大許容可能温度値を使用する。
いくつかの実施形態では、サーモスタット622は温度センサ618を含む。温度センサ618は任意のサーミスタ、熱電対など又は任意の他の温度センサであり得る。いくつかの実施形態では、温度センサ618は、部屋607の温度Tzoneを測定し、そして測定された温度Tzoneを設定点調整コントローラ604に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はフィードバックとして、部屋607の測定された温度Tzoneを使用する。設定点調整コントローラ604は、建物機器612の制御信号を生成するために、測定された温度Tzoneと設定点温度(そして最小及び最大所望/許容可能温度)とを使用し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はフィードバックコントローラを含み、測定された温度Tzoneを性能変数の値として使用する。例えば、設定点調整コントローラ604のフィードバックコントローラは、PIコントローラ、PIDコントローラ、極値探索コントローラ、自己最適化コントローラなど又は任意の他のフィードバックコントローラであり得る。
いくつかの実施形態では、サーモスタット622は湿度センサを含む。湿度センサは部屋607内の湿度又は相対湿度を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、湿度センサは、温度センサ618の位置とほぼ同じである位置において部屋607の湿度を測定する。サーモスタット622はまた、部屋607の内部606の粒状物質(例えばPM2.5)の濃度を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、サーモスタット622及び/又は設定点調整コントローラ604は部屋607の周りに配置されたセンサ(例えば温度センサ、湿度センサなど)からセンサ測定結果を受信する。
いくつかの実施形態では、居住者は、過度に高い若しくは低い温度又は湿度値により部屋607のいくつかのエリア内で不快になり得る。例えば、サーモスタット622は、様々な環境条件(例えば温度、湿度など)が快適範囲内にある一方で部屋607の様々な部分が不快な環境条件に在り得るということを測定し得る。いくつかの実施形態によると、これは部屋607全体にわたる温度差による。温度差は、限定しないが通気孔632の位置、建物機器612の加熱又は冷却モード、部屋607の壁絶縁、窓620を通しての放射熱伝達、部屋607内の電気器具、窓620及びドアなどを通しての又はその周囲の熱損失又は熱伝達を含む多様な要因に起因し得る。
図7を参照すると、面グラフ700はいくつかの実施形態によると部屋607全体にわたる温度差又は環境条件差を示す面702を含む。面702は様々なピーク及び谷を含む。サーモスタット622がピーク又は谷の1つにおける温度又は湿度を測定するように構成されれば、温度又は湿度測定結果は部屋内の平均温度を代表しないかもしれない。これは、居住者が不快となり、サーモスタット622における温度設定点を変更することを生じ得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、居住者主導設定点変更を監視するとともに部屋607の設定点又は部屋607の許容可能温度の境界を調整するように構成される。有利には、制御システム600は居住者好み環境条件へ適応化し得る。加えて、設定点調整コントローラ604はまた、様々な日タイプ、一日の時間などの居住者快適性嗜好(例えば好ましい温度)を学習し得る。有利には、これは、居住者快適性を改善し、居住者嗜好に適応化する環境条件制御システムを提供する。
図8を参照すると、グラフ800は時間(x軸)に対する設定点温度(Y軸)を示す。いくつかの実施形態によると、グラフ800は系列802及び系列808を含む。系列802は部屋、空間、ゾーンなどの実際の設定点温度である。いくつかの実施形態によると、系列808はMPCシステム630により決定される又は提供される部屋の設定点温度である。TMPC(MPCシステム630から受信される設定点)に等しい系列808のY軸値が示される。
いくつかの実施形態によると、系列802のY軸値は設定点調整コントローラ604がサービスする部屋のうちの1つの部屋の実際の設定点Tspである。グラフ800に示すように、部屋607の実際の設定点Tspは部屋607の居住者により時間t1において増加され、これにより系列802と系列808との間の差を生じる。この差は、時間t1から、実際の設定点Tspが推定設定点TMPCへリセットされる時間t2までの時間間隔804中存続し得る。いくつかの実施形態では、これは時間t1と時間t2との間の実際の設定点Tspが最大許容可能温度境界の外側に在ることに起因する。
設定点調整コントローラ604は、図8に示すように設定点変更を監視及び計数し、そして、居住者快適性を改善するために設定点Tspの最小及び最大境界に対する調整を決定し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はまた設定点Tspを調整する。設定点調整コントローラ604は、歴史的データを使用し、居住者快適性嗜好へ時間の経過と共に適応化し得る。
ここで図9を参照すると、環境制御システム900は設定点調整コントローラ604、MPCシステム630及び気象サービス902を含む。気象サービス902は設定点調整コントローラ604に様々な外部環境条件を提供し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、気象サービス902から室外気温Toa、室外相対湿度RH、雲量%CC及び日射量SIのうちの任意のものを受信するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、一定期間にわたり室外気温Toa、室外相対湿度RH、雲量%CC及び日射量SIの時系列データを収集する。例えば、設定点調整コントローラ604は一か月にわたり気象時系列データを収集し得る。いくつかの実施形態では、気象サービス902は遠隔装置又はネットワーク(例えば米国気象局)である。いくつかの実施形態では、気象サービス902は、本明細書において説明される気象データのうちの任意のものを測定するように構成された様々なセンサの集合であり、気象データを設定点調整コントローラ604へ提供する。設定点調整コントローラ604は一定期間にわたり気象データを収集し、そして、設定点又は設定点境界調整を決定するためにこの気象データを使用し得る。
図9を依然として参照すると、設定点調整コントローラ604は様々なゾーン又は部屋607からデータを受信している状態で示される。いくつかの実施形態では、ゾーン607は建物又はキャンパスの部屋、空間、エリアなどである。例えば、設定点調整コントローラ604は任意のn個のゾーン607からDataiを受信し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、n個のゾーン607のうちの任意のi番目のゾーン607のサーモスタット622からDataiを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、サーモスタット622からDataiのデータのいくつかをそしてMPCシステム630からDataiのいくつかを受信する。
いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はサーモスタット622から実際の設定点Tsp,iを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はサーモスタット622から最小及び最大設定点境界Tsp,min,i及びTsp,max,iを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はゾーン607からゾーン温度(温度センサ618及び/又はサーモスタット622により測定される)Tzone,iを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はMPCシステム630から推定設定点TMPC,iを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、快適性調整(例えば設定点調整コントローラ604の機能)がi番目のゾーン607に関して有効にされるか否かの2進値を受信する。快適性調整が有効にされるか否かを指示する2進値はpiと呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、piはブール量である。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はゾーン607又はサーモスタット622からpiを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は、ゾーン607(例えばサーモスタット622)及び/又はMPCシステム630からモデルトレーニングスケジュールを受信する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はサーモスタット622から2進モード変数(例えば加熱又は冷却モード)Bmode,iを受信する。いくつかの実施形態では、Bmode,iは、i番目のゾーン607をサービスする建物機器612が加熱モードに在るか冷却モードに在るかを指示する。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラはサーモスタット622及び/又はMPCシステム630からMPC動作モード変数Mmode,iを受信する。MPC動作モード変数は、MPCシステム630が助言モード又は自動モードで動作しているかを指示する2値変数であり得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はサーモスタット622からユニット有効化変数Eiを受信する。いくつかの実施形態では、ユニット有効化変数Eiは、サーモスタット622が活性状態か否か(例えば、建物機器612が活性状態か否か)を指示する2値変数である。
設定点調整コントローラ604は、持続時間Δtにわたる上に述べた変数、データ、センサデータ、スケジュールなどのうちの任意のものを受信し収集し得る。いくつかの実施形態では、持続時間Δtは一か月である。他の実施形態では、持続時間Δtは一か月超又は一か月未満(例えば2か月、1週間など)である所定値である。設定点調整コントローラ604は、上に述べたデータ、変数、センサデータ、スケジュールなどのうちの任意のものの時系列データベクトルを受信及び生成し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はまた、持続時間Δtにわたる時間ベクトルを生成する。例えば、設定点調整コントローラ604は一か月にわたり第1のゾーン607から実際の設定点Tsp,1を受信し、そして持続時間Δtにわたって受信された実際の設定点Tsp,1のすべての値を含むベクトルTsp,1を構築し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604はまた時間ベクトルtを生成する。時間ベクトルt及びベクトルTsp,1は同じ長さ又はサイズを有し得る。このようにして、設定点調整コントローラ604は、ベクトルTsp,1から様々な実際の設定点値と、実際の設定点値が時間ベクトルtから記録された時間とを格納及び取り出し得る。設定点調整コントローラ604は上に述べた他のデータのうちの任意のデータのベクトルを同様に構築し得る。
設定点調整コントローラ
次に図10を参照すると、設定点調整コントローラ604がより詳細に示される。設定点調整コントローラ604は、一定持続時間にわたる図9を参照して上に詳細に説明されたデータのうちの任意のものを受信し、そして設定点境界に対する変更を決定するために受信データを解析するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は居住者設定点変更を識別するために受信データを解析するように構成される。設定点調整コントローラ604は、居住者快適性を改善するために設定点境界に対する適切な変更を決定するために、識別された居住者設定点変更を使用し得る。
図10を依然として参照すると、設定点調整コントローラ604は通信インターフェース1008を含んで示される。通信インターフェース1008は、プラントのゾーン607、又は部品、装置、機器、センサなどのうちの任意のものの制御及び監視を可能にするための設定点調整コントローラ604と外部アプリケーション(例えばMPCシステム630、サーモスタット622、建物機器612など)との間の通信を容易にし得る。通信インターフェース1008はまた、設定点調整コントローラ604とクライアント装置との間の通信を容易にし得る。通信インターフェース1008は設定点調整コントローラ604と建物サブシステム、サーモスタット、センサ、他のシステム、装置などとの間の通信を容易にし得る。
通信インターフェース1008は建物機器612、サーモスタット622、MPCシステム630など又は他の外部システム又は装置とのデータ通信を行うための有線又は無線通信インターフェース(例えばジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、ワイヤ端子など)であり得る又はそれを含み得る。様々な実施形態では、通信インターフェース1008を介した通信は直接的で(例えばローカル有線又は無線通信)あってもよいし通信ネットワーク(例えばWAN、インターネット、セルラーネットワークなど)を介してもよい。例えば、通信インターフェース1008は、イーサネットベース通信リンク又はネットワークを介しデータを送受信するためのイーサネットカード及びポートを含み得る。別の例では、通信インターフェース1008は無線通信ネットワークを介し通信するためのWi−Fi送受信機を含み得る。別の例では、通信インターフェース1008はセルラー又はモバイルフォン通信送受信機を含み得る。一実施形態では、通信インターフェース1008は電力線通信インターフェースである。他の実施形態では、通信インターフェース1008はイーサネットインターフェースである。
図10を依然として参照すると、設定点調整コントローラ604はプロセッサ1004及びメモリ1006を含む処理回路1002を含むように示される。処理回路1002は、処理回路1002とその様々な部品とが通信インターフェース1008を介しデータを送受信し得るように通信インターフェース1008と通信可能に接続され得る。プロセッサ1004は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、1つ又は複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、一群の処理部品、又は他の適切な電子処理部品として実現され得る。
メモリ1006(例えば、メモリ、メモリユニット、ストレージ装置など)は、本出願で説明される様々なプロセス、層及びモジュールを完成又は容易にするためのデータ及び/又はコンピュータコードを格納するための1つ又は複数の装置(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクストレージなど)を含み得る。メモリ1006は揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよいしそれを含んでもよい。メモリ1006は、本出願において説明される様々な活動及び情報構造を支援するためのデータベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、又は任意の他のタイプの情報構造を含み得る。いくつかの実施形態によると、メモリ1006は、処理回路1002を介しプロセッサ1004と通信可能に接続されており、本明細書で説明される1つ又は複数のプロセスを実行する(例えば、処理回路1002及び/又はプロセッサ1004により)ためのコンピュータコードを含む。
いくつかの実施形態では、設定点調整コントローラ604は単一コンピュータ(例えば、1つのサーバ、1つの筐体など)内に実装される。様々な他の実施形態では、設定点調整コントローラ604は複数のサーバ又はコンピュータ全体にわたって分散され得る(例えば、分散された場所に存在し得る)。
図10を依然として参照すると、設定点調整コントローラ604はいくつかの実施形態によるとデータ収集器/集積器1010を含む。いくつかの実施形態では、データ収集器1010は図9を参照して上に詳細に説明されたデータのうちの任意のものを受信するように構成される。いくつかの実施形態では、データ収集器1010はMPCシステム630及びサーモスタット622から受信されるゾーン及びMPCデータのうちの任意のものを収集するように構成される。いくつかの実施形態では、データ収集器1010はまた機器運転データを建物機器612から受信する。例えば、データ収集器1010は電力消費、効率、動作点などのデータを建物機器612から受信し得る。
データ収集器1010は、持続時間Δtにわたる受信データのうちの任意のものを収集し、そして図9を参照して上に詳細に説明された時系列データベクトルのうちの任意のものを生成するように構成される。例えば、データ収集器1010は受信データのうちの任意のデータの時系列データベクトルを生成し得る。データ収集器1010はまた時間ベクトルtを生成し得る。
いくつかの実施形態によると、データ収集器1010は時系列データを居住者調整識別器1012及び居住者調整マネージャ1020へ提供し得る。いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012は居住者がサーモスタット622の設定点を調整した時間を識別するように構成される。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020は、設定点に対する居住者調整が「居住者が不快である」ということを指示するか否かを決定するために居住者調整時に様々な条件を解析するように構成される。
いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012はサーモスタット622の設定点に対する居住者調整(例えば増加又は低下)の数を計数する。いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012は、居住者設定点増加又は低下のインスタンスの数を設定点に対する変更/調整の大きさにかかわらず計数する。例えば、居住者が特定時間に設定点を華氏70度から華氏80度へ変更すれば、居住者調整識別器1012は単一設定点調整としてこの設定点変更を計数し得る。同様に、居住者が設定点を華氏80度から華氏75度へ後で低減すれば、居住者調整識別器1012は変更の大きさにかかわらず追加設定点変更を計数し得る。このようにして、設定点に対するいかなる変更も(変更の大きさにかかわらず)居住者調整識別器1012により単一居住者設定点増加又は低下として(調整/変更の方向に依存して)計数され得る。変更の大きさは、居住者が設定点を増加又は低減すれば新しい設定点は居住者が快適であると分かる温度を必ずしも指示しないがむしろ部屋内の現在温度が居住者にとって不快であるということを指示するので必ずしも考慮されない。
データ収集器1010はまた、性能変数としてゾーン温度Tzone,iをフィードバックコントローラ1022へ提供するように構成される。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1022は、建物機器612の動作を調整するための操作変数uの値を決定するためにゾーン温度を使用し得る。いくつかの実施形態では、データ収集器1010はゾーン温度Tzone,iのリアルタイム値をフィードバックコントローラ1022へ提供する。
居住者調整識別器1012は推定設定点時系列ベクトルTMPC,iをデータ収集器1010から受信し得る。いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012はまた時間ベクトルtと実際の設定点の時系列データベクトルTsp,iとを受信する。居住者調整識別器1012は、ベクトルTsp,iの任意の値がベクトルTMPC,iの対応値から逸脱するか否かを決定するためにベクトルTMPC,iのすべての値とベクトルTsp,iのすべての値とを比較し得る。ベクトルTMPC,iとTsp,iは同じ長さを有し得る。例えば、ベクトルTsp,iとTMPC,iがkの長さを有すれば、居住者調整識別器1012はTsp,iのすべての値とTMPC,iの対応値とを比較し得る。
居住者調整識別器1012はTsp,iのすべての値とTMPC,iのすべての値との差ベクトルΔTsp(j)=Tsp,i(j)−TMPC,i(j)を決定し得る(すなわちj=1からj=kまで)。ΔTspのj番目の値が零より大きければ、これはTsp,iのj番目の値がTMPC,iのj番目の値より大きい(居住者設定点増加から生じ得る)ということを指示する。同様に、ΔTspのj番目の値が零未満であれば、これはTsp,iのj番目の値がTMPC,iのj番目の値未満である(居住者設定点低下から生じ得る)ということを指示する。
いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012は、居住者が設定点Tsp,iを調整したか否かを決定するためにTsp,iの連続値とTsp,iの以前の値とを比較する。例えば、居住者調整識別器1012は居住者が設定点を手動で調整したか否かを決定するためにTsp,i(j)とTsp,i(j−1)とを比較し得る。いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012は、j=2からj=kまでのすべての連続する整数値のTsp,i(j)とTsp,i(j−1)とを比較する。
居住者調整識別器1012は、居住者が設定点Tsp,iを手動で調整した(例えば、増加又は低減した)時間を決定するために、持続時間Δtにわたる様々な値に関してTsp,iの変化とTsp,iとTMPC,iとの差とを使用する。いくつかの実施形態では、居住者調整識別器1012は調整時間tadjのベクトルを構築又は生成する。居住者調整識別器1012は、設定点が居住者により調整された時間を識別し、時間ベクトルtの対応値を取り出し得る。例えば、設定点がj=5、j=14及びj=50において調整されたということを居住者調整識別器1012が決定すれば、ベクトルtadjはtadj=[t(5)t(14)t(50)]として定義され得る。いくつかの実施形態によると、ベクトルtadjの長さは居住者調整の数である。ベクトルtadjの値は、設定点に対する居住者調整が発生する時間ベクトルtの対応値である。いくつかの実施形態では、ベクトルtadjはベクトルTsp,i及びTMPC,iと同じ長さを有する。ベクトルtadjは、居住者が設定点を調整した時間を指示する2進値(例えば1又は0)のベクトルであり得る。例えば、居住者がj=5、j=14及びj=50において設定点を調整すれば、ベクトルtadjは零の値のベクトルであり得る(設定点がこれらの時間において居住者により調整されないということを指示する)。tadj(5)=tadj(14)=tadj(50)=1(設定点がt(5)、t(14)、及びt(50)において居住者により調整されたということを指示する)。
いくつかの実施形態によると、居住者調整マネージャ1020は居住者調整識別器1012からベクトルtadjを受信し、居住者調整が調整時間において不快感を指示するか否かを決定する。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020は、データ収集器1010からゾーン温度Tzone,iの値のベクトル及び設定点Tsp,iの値のベクトルを受信する。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020はまた、MPCの値すなわち推定設定点TMPC,iのベクトルを受信する。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020はまた、データ収集器1010からユニット有効化ベクトルEi及びモードベクトルBmode,iを受信する。
居住者調整マネージャ1020は、ゾーン温度と、居住者設定点調整がなされたということを居住者調整識別器1012が決定する時間に対応する設定点値とを使用する。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020は調整時間の濾過ベクトル(filtered vector):tadj,filteredを決定する。いくつかの実施形態では、調整時間tadj,filteredの濾過ベクトルは、いくつかの居住者設定点変更を除去又は無視するtadjの濾過版(filtered version)である(例えば不快感を指示しない居住者設定点変更)。
居住者調整マネージャ1020はベクトルtadjにより指示される調整時間毎に以下の手順を行い得る。例えば、ベクトルtadjが5つの調整時間を含めば、居住者調整マネージャ1020はベクトルTzone,i、Tsp,i、TMPC,i、Ei及びBmode,iの対応値を有するtadjの調整時間毎に以下の技術を行う(例えば、調整時間毎に5回、1回)。居住者調整マネージャ1020は調整時間においてTzone,i、TMPC,i及びTsp,iの対応値を取り出し得る。例えば、居住者調整マネージャ1020は、tadjの様々な値に関してTzone,i、TMPC,i及びTsp,iの値を取り出し得る。
建物機器612が居住者設定点変更の時点に冷却動作モードに在るということをBmode,iの値が指示すれば、いくつかの実施形態によると、居住者調整マネージャ1020はゾーン温度と推定されたものすなわちMPC設定点との差を決定する。居住者調整マネージャ1020は、建物機器612が冷却動作モードに在る場合に居住者設定点変更のTzone,i−TMPC,iを決定し得る。居住者調整マネージャ1020はまた、推定/MPC設定点値が実際の設定点温度未満か又はそれより大きい(又は等しい)かを決定するためにTMPC,iの対応値とTspの対応値とを互いに比較し得る。Tzone,i−TMPC,iの両方が所定閾値(例えば摂氏1℃)より大きくかつTMPC,iがTsp,iより大きければ、居住者調整マネージャ1020は「居住者設定点変更はゾーン温度が移行段階に在るかシステムが飽和するかのいずれかであるので無視されるべきである」ということを決定する。居住者調整マネージャ1020は、居住者設定点変更のどれが除去されるべきかを決定するために、識別された調整時間毎に(例えばtadjの値のすべてに関し)この処理を行い得る。
建物機器612が居住者設定点変更の時点に加熱動作モードに在るということをBmode,iの値が指示すれば、いくつかの実施形態によると、居住者調整マネージャ1020は推定されたものすなわちMPC設定点とゾーン温度との差を決定する。居住者調整マネージャ1020は、建物機器612が加熱動作モードにある場合、居住者設定点変更に関してTMPC,i−Tzone,iを決定し得る。居住者調整マネージャ1020はまた、推定/MPC設定点値が実際の設定点温度未満か又はそれより大きい(又は等しい)かを決定するためにTMPC,iの対応値とTspの対応値とを互いに比較し得る。TMPC,i−Tzone,iの両方が所定閾値(例えば摂氏1℃)より大きくかつTMPC,iがTsp,i未満であれば、居住者調整マネージャ1020は「居住者設定点変更はゾーン温度が移行段階に在るかシステムが飽和するかのいずれかであるので無視されるべきである」ということを決定する。居住者調整マネージャ1020は、居住者設定点変更のどれが除去されるべきかを決定するために、識別された調整時間毎に(例えばtadjの値のすべてに関し)この処理を行い得る。
いくつかの実施形態によると、設定点Tsp,iがゾーン温度Tzone,iとMPC設定点TMPC,iとの間にあれば居住者調整マネージャ1020はこれらの居住者設定点変更を無視する。これらの居住者設定点変更は建物機器612の動作モードにかかわらず居住者調整マネージャ1020により除去され得る。居住者調整マネージャ1020は、低減又は濾過された組/ベクトルの居住者設定点変更tadj,filteredを生成するために様々な居住者設定点変更を除去するこれらの処理を行う。いくつかの実施形態では、居住者調整マネージャ1020は縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredをサブセットマネージャ1016及び設定点調整器1018へ提供する。
サブセットマネージャ1016は、居住者調整マネージャ1020から、縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredを受信するだけでなく、データ収集器1010から時間ベクトルtも受信する。サブセットマネージャ1016は、これらの日タイプ中に発生する様々な日タイプ及び設定点変更を識別するために時間ベクトルtを解析するように構成される。いくつかの実施形態では、サブセットマネージャ1016は縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredを日タイプによりサブセットへ区画化する。サブセットマネージャ1016は、平日又は週末、曜日、祝日、占有スケジュール、居住者仕事スケジュールなどに基づき日タイプを定義し得る。例えば、サブセットマネージャ1016が、縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredを平日及び週末サブセットへ区画化すれば、サブセットマネージャ1016は、週末期間に発生する(例えば、土曜日及び日曜日に発生する)居住者設定点変更tadj,filteredの第1のサブセットと平日期間に発生する(例えば、月曜日、火曜日、水曜、木曜又は金曜のうちのいずれかに発生する)居住者設定点変更tadj,filteredの第2のサブセットとを生成し得る。同様に、サブセットマネージャ1016は、居住者設定点変更tadj,filteredを平日サブセットへ区画化するために居住者設定点変更tadj,filteredの7つのサブセットを生成し得る。
いくつかの実施形態では、サブセットマネージャ1016はさらに、各サブセット(日タイプにより区画化された)を、それぞれの日の様々な期間へ分割する。例えば、サブセットマネージャ1016はそれぞれの日をndaily量の期間へ区画化し得る。いくつかの実施形態では、ndaily期間は日タイプに依存する。例えば、平日が4つの期間へ区画化され得る一方で、週末は12の期間へ区画化され得る。いくつかの実施形態では、ndaily期間はすべての日タイプに関し同じである。
いくつかの実施形態では、サブセットマネージャ1016はそれぞれの日の縮小された組の居住者変更tadj,filteredを日タイプにかかわらず同じndaily量の期間へ分割する。例えば、縮小された組の居住者変更tadj,filteredは2つの組(平日及び週末)へ分割され得る。いくつかの実施形態によると、2組の平日及び週末居住者設定点変更はそれぞれの日の4つの期間(例えば真夜中から午前6時までの第1の期間、午前6時から正午までの第2の期間、正午から午後6時までの第3の期間、及び午後6時から真夜中までの第4の期間)へ分割される。いくつかの実施形態では、期間は長さ/持続時間が等しい(例えば24/4=6時間)。いくつかの実施形態では、それぞれの日の期間は長さ/持続時間が等しくない。例えば、第1の期間は6時間(真夜中から午前6時まで)であり得、第2の期間は6時間(午前6時から正午まで)であり得、第3の期間は9時間(正午から午後9時まで)であり得、第4の期間は3時間(午後9時から真夜中まで)であり得る。いくつかの実施形態では、同様な日タイプ及び同様な期間中に発生する居住者設定点変更が集計される。例えば、平日の第1の期間の居住者設定点変更のすべてが集計され得、平日の第2の期間の居住者設定点変更のすべてが集計され得る。
サブセットマネージャ1016は、日タイプ及び日常期間により分割又は区画化された縮小された組の居住者変更tadj,filteredを設定点調整器1018へ提供する。設定点調整器1018は、日タイプ及び日常期間に従って分割/区画化された縮小された組の居住者変更tadj,filteredを受信するように、そして設定点境界を調整する(すなわちTsp,min,i及びTsp,max,iを同時に又は独立に増加又は低減する)ために、縮小された組の居住者変更tadj,filteredを使用するように構成される。
いくつかの実施形態によると、設定点調整器1018は縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredのそれぞれの日タイプの日常期間毎の居住者設定点増加及び低下の数を計数するように構成される。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、以前の設定点境界調整(例えば、tsp,adjust時)以来の縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredのそれぞれの日タイプの日常期間毎の設定点増加及び低下の数を計数する。
いくつかの実施形態によると、週末日タイプの第1の期間に計数された居住者設定点増加の数はn1,we,incと呼ばれる。いくつかの実施形態によると、週末日タイプの第2の期間に計数された居住者設定点増加の数はn2,we,incと呼ばれる。いくつかの実施形態によると、週末日タイプの第2の期間に計数された居住者設定点増加の数はn3,we,incと呼ばれる。いくつかの実施形態によると、週末日タイプの第2の期間に計数された居住者設定点増加の数はn4,we,incと呼ばれる。いくつかの実施形態によると、週末日タイプの様々な期間に計数された居住者設定点低下の数は同様に変数n1,we,dec、n2,we,dec、n3,we,dec、及びn4,we,decと呼ばれる。同様な変数が、第2の下付き文字として「wd」を使用して、設定点調整器により計数される平日居住者設定点増加/低減に関して定義される。
一般的に、縮小された組の居住者設定点変更tadj,filteredに基づき設定点調整器1018により計数される居住者設定点変更の数は変数nx,y,zと呼ばれる、ここで、第1の下付き文字xは、計数が一日のどの期間に関連するかを指示する整数(例えば第1の期間に関し1、第2の期間に関し2)であり、第2の下付き文字yは日タイプ(例えば週末日タイプに関し「we」、平日日タイプに関し「wd」)であり、第3の下付き文字zは計数が居住者設定点増加又は低下(例えば、「inc」又は「dec」)かを指示する。
いくつかの実施形態では、それぞれの日の期間の期間毎に、設定点調整器1018は設定点増加を正値そして設定点低下を負値(例えば+1又は−1)と見做す。このようにして、設定点調整器1018により計数される居住者設定点変更の数は変数nx,yと呼ばれ得、ここで、第1の下付き文字xは、計数が一日のどの期間に関連するかを指示する整数であり(例えば第1の期間に対して1、第2の期間に対し2など)、第2の下付き文字yは日タイプ(例えば週末日タイプに関し「we」、平日日タイプに関し「wd」)であり、nの値は対応する日常期間全体にわたる設定点増加又は低下の合計であり、設定点増加はnx,yをいくらかの所定量だけ増加し、設定点低下はnx,yを所定量だけ低減する。
いくつかの実施形態では、カウンタn
x,y,z及び/又はカウンタn
x,yは日タイプの一定割合の持続時間に基づき正規化される。例えば、t
adj,filteredが一週間にわたって収集され、平日/週末日タイプに従って区画化/分割されれば、カウンタは5/7又は2/7の係数により正規化され得る。一般的に、カウンタは、全時間に対する一定割合の日タイプ時間に従って正規化され得る。週の場合には、t
adj,filteredが収集される合計持続時間は7日であり、一方、週末日タイプの持続時間は2日であり、平日日タイプの持続時間は5日である。したがって、カウンタは
及び
のように正規化され得る。
例えば、設定点調整器1018が特定の平日の第2の日常期間にわたって10回の設定点増加をそして特定の平日の第2の日常期間にわたって5回の設定点低下を計数すれば、n2,wd,inc=10、n2,wd,dec=2及びn2,wd,inc=n2,wd,inc−n2,wd,dec=8となる。設定点調整器1018は、設定点増加及び低下を累積的に計数してもよいし(例えば設定点増加は正値であり、設定点低下は負値である)、設定点増加及び低下を別個に計数してもよい。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018はnx,y,z及び/又はnx,yと所定閾値とを比較する。いくつかの実施形態では、所定閾値は設定点境界変更を引き起こす最小量の設定点変更である。所定閾値は、設定点増加及び設定点低下に関し同じであってもよいし、設定点増加及び低減に関し異なってもよい。いくつかの実施形態では、所定閾値は、増加閾値と低下閾値とが異なれば、nthreshold(又はnthreshold,inc及びnthreshold,dec)と呼ばれる。
いくつかの実施形態によると、特定の日タイプの特定の日常期間(例えば第1の日常期間)のnx,y,zが特定の日タイプの任意の日のnthresholdを越えれば、設定点調整器1018はTsp,min,iとTsp,max,iとの両方を設定点変更の方向に増加する。例えば、n2,we,incが複数日のうちの任意の日のnthresholdより大きければ(又はそれ以上であれば)、設定点調整器1018はTsp,min,iとTsp,max,iとの両方を設定点変更(例えば、この例では増加)の方向に増加する。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、Tsp,min,iとTsp,max,iとの両方をすべての同様な日タイプ及び期間に関し設定点変更の方向に増加する。
例えば、日タイプが週末及び平日に従って分割され、それぞれの日が4つの期間に分割されるケースでは、設定点調整器1018は、任意の同様な日タイプの第1の期間のうちの任意の期間の設定点増加又は低下のいずれかが対応閾値を越えるかどうかを識別し得る。任意の平日のn1,wd,incがnthresholdを越えれば、設定点調整器1018はすべての平日(すべての同様な日タイプ)の第1の期間の設定点境界を所定量だけ増加し得る。同様に、n1,wd,decがnthresholdを越えれば、設定点調整器1018はすべての平日(すべての同様な日タイプ)の第1の期間の設定点境界を所定量だけ低減し得る。n1,wd,incとn1,wd,decとの両方が閾値nthresholdを越えれば、設定点境界は、n1,wd,incとn1,wd,decとのいずれか大きい方の方向に所定量だけ増加又は低減される。いくつかの実施形態によると、n1,wd,incとn1,wd,decが互いに等しければ設定点境界は変更されない。
いくつかの実施形態によると、設定点調整器1018は、あらゆる期間(例えば第1、第2、第3、及び第4の期間)に関して及び日タイプ(例えば平日及び週末)毎にこの処理を繰り返す。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、設定点境界Tsp,min,iとTsp,max,iとの両方を所定量ΔTspだけ増加又は低減することへ進む。いくつかの実施形態では、所定量ΔTspは摂氏1℃である。このようにして、設定点境界は、居住者快適性を維持するために同様な日タイプの同様な期間について増加又は低減され得る。設定点境界が調整される際、いくつかの実施形態によると、設定点調整器1018は時間tsp,adjustを現在の時間(設定点境界が調整される時間)として書き換える又は再定義する。設定点調整器1018は、日常期間毎に設定点境界Tsp,min,iとTsp,max,iとを独立に増加又は低減してもよいし(例えば、いくつかの第1の期間を増加するが他の第1の期間を増加しない)、特定タイプの期間のすべての期間の設定点境界を増加/低減してもよい(例えば、第1の期間のすべての期間の設定点境界を増加する)。
いくつかの実施形態では、設定点境界(すなわちTsp,min,iとTsp,max,i)は設定点境界間のオフセット(例えばデルタ値)が同じままであるように同じ方向に同じ量だけ調整される。いくつかの実施形態では、設定点境界は設定点境界間のオフセットが変化するように独立に調整される(例えば、増加又は低減される)。例えば、Tsp,min,iとTsp,max,iは互いに独立に又は異なる量だけ(例えば、異なる量だけ及び/又は異なる方向に)増加又は低減され得る。例えば、設定点調整器1018は、特定の日常期間の最小設定点境界が平日に関して増加されるべきであるが特定の日常期間の最大設定点境界はすべての平日に関して低減されるべきであるということを決定し得る。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は部屋607の設定点境界又は設定点を変更又は更新することに応答して時間tsp,adjustを現在の時間により更新する。次に、設定点調整器1018は、更新された時間tsp,adjustを設定点境界調整又は設定点調整の将来反復と将来決定のために使用し得る。
設定点調整器1018は調整された設定点境界(すなわちTsp,min,iとTsp,max,i)をフィードバックコントローラ1022及びMPCシステム630へ提供し得る。いくつかの実施形態では、MPCシステム630は最適化を行うために調整済み設定点境界を使用する。例えば、MPCシステム630は制約として調整済み設定点境界を費用関数へ適用し得る。MPCシステム630は、費用を最小化するが調整済み設定点境界内にある部屋607のMPC設定点を決定し得る。いくつかの実施形態では、MPCシステム630はMPC設定点をフィードバックコントローラ1022へ提供する。
フィードバックコントローラ1022は、建物機器612を運転するためにMPC設定点及び調整済み設定点境界を使用し得る。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1022は調整済み設定点境界及びMPC設定点に基づき操作変数uの値を生成するように構成される。操作変数uは建物機器612の動作モード(例えば加熱モード、冷却モード、スタンバイなど)を指示し得る。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1022は操作変数uの値を制御信号生成器1024へ提供する。いくつかの実施形態によると、フィードバックコントローラ1022はまた、データ収集器/集積器1010からゾーン温度を受信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1022はデータ収集器/集積器1010から受信されるゾーン温度を性能変数yとして使用する。フィードバックコントローラ1022は任意の閉ループフィードバック制御方式を行うように構成され得る。例えば、フィードバックコントローラ1022はPI制御方式、PID制御方式、自己最適化制御方式、極値探索制御方式などを使用し得る。
いくつかの実施形態によると、制御信号生成器1024は、操作された変数uの値を受信し、操作された変数uに基づき建物機器612の制御信号を生成する。いくつかの実施形態では、制御信号生成器1024は、部屋607の環境条件又は可変状態に影響を与えるように建物機器612を操作するために制御信号を建物機器612へ提供する。いくつかの実施形態では、建物機器612は、部屋607内の温度に影響を与えるために加熱又は冷却を部屋607へ提供するために制御信号を使用する。
図10を依然として参照すると、設定点調整器1018は設定点境界を独立に調整するように構成され得る。いくつかの実施形態では、上に詳細に説明された設定点境界(すなわちTsp,min,i及びTsp,max,i)は、費用最適化を行うためにMPCシステム630により使用される設定点境界である。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は新しい設定点境界を定義し、新しい設定点境界を調整する。いくつかの実施形態では、新しい設定点境界(例えば新しい最小及び最大許容可能温度境界)は、MPC設定点境界(例えばTsp,min,i及びTsp,max,i)がこれらの調整済み境界内に維持されるということを保証するために設定点調整器1018により使用される。
設定点調整器1018は、新しい境界を調整するために、上に詳細に説明された技術、機能、方法、処理、手法などのうちの任意のものを使用し得る。それぞれの期間に関して、設定点増加の数又は設定点低下の数のいずれかが対応閾値を越えれば、設定点調整器1018は新しい設定点境界のうちの1つを居住者調整の方向に調整/オフセットする(例えば、設定点調整器1018は、設定点増加の数が対応閾値を越えることに応答して新しい設定点境界のうちの1つを摂氏1℃だけ増加する又は設定点低下の数が対応閾値を越えることに応答して新しい設定点境界のうちの1つを摂氏1℃だけ低減する)。いくつかの実施形態によると、(例えば居住者により調整された)設定点増加の数と設定点低下の数とが等しければ設定点調整器1018は新しい設定点境界を変更しない。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、建物機器712の動作モードに基づき新しい設定点境界のうちの1つを増加又は低減する。例えば、建物機器712が加熱動作モードに在れば、設定点調整器1018は、新しい設定点境界の上側境界を増加/低減することを決定し得、一方、建物機器が冷却動作モードに在れば、設定点調整器1018は新しい設定点境界の下側境界を増加/低減することを決定し得、逆も同様である。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は新しい設定点境界間の差を増加又は低減する。例えば、設定点調整器1018は、新しい設定点境界の上側境界をある量だけ増加し得、一方、新しい設定点境界の下側境界を同じ量だけ低減し得る。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は新しい設定点境界の下側境界を増加する一方で新しい設定点境界の上側境界を低減する。
新しい設定点境界に対する変更のいずれかが、所定閾値未満となる新しい設定点境界の上側境界と下側境界との差(例えば、内部パラメータとして規定され得る摂氏2度)を生じれば、設定点調整器1018は、新しい設定点境界の下側境界又は上側境界のどちらが現在調整中であるかに依存して、所定閾値を維持するために新しい設定点境界の下側又は上側境界を増加又は低減し得る。
有利には、快適性のための別個の設定点境界を使用することにより、MPCシステム630は、居住者が設定点境界パターンを規定することを可能にする一方で、設定点調整コントローラ604がユーザ指定設定点境界パターンを維持するために設定点境界を調整することも可能にする。新しい設定点境界を使用することにより、MPC設定点境界(例えばTsp,min,i及びTsp,max,i)は設定点調整器1018により調整され得る。
新しい設定点境界の下側/最小境界が最小MPC設定点境界(すなわちTsp,min,i)を越えれば、設定点調整器1018は最小MPC設定点境界(すなわちTsp,min,i)を新しい設定点境界の下側/最小境界に等しくなるように増加し得る。同時に、設定点調整器1018は、最大MPC設定点境界(すなわちTsp,max,i)を(1)最大MPC設定点境界(例えばTsp,max,i)+最小MPC設定点境界(Tsp,min,i)が増加される量又は(2)新しい設定点境界の最大/上側境界の小さい方まで増加し得る。
新しい設定点境界の上側/最大境界が最大MPC設定点境界(すなわちTsp,max,i)を越えれば、設定点調整器1018は最大MPC設定点境界を新しい設定点境界の上側/最大境界に等しくなるように低減し得る。同時に、設定点調整器1018は、最小MPC設定点境界(すなわちTsp,min,i)を(1)最小MPC設定点境界(すなわちTsp,min,i)−最大MPC設定点境界が増加される量又は(2)新しい設定点境界の最小/下側境界の大きい方まで低減し得る。
設定点調整器1018は、上に述べた技術を使用してMPC設定点境界を調整し、調整/更新されたMPC設定点境界(例えばTsp,min,i及びTsp,max,i)をMPCシステム630へ提供する。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は居住者設定点調整データ(例えば濾過された設定点データ)を期間ビン(例えば日常期間及び日タイプ)へ区画化するように構成される。いくつかの実施形態では、各ビンは、特定の日タイプ(例えば週末日タイプ、平日日タイプなど)に固有であるだけでなく当該日タイプ内の特定の日常期間(例えば午前9時から午前10時まで)にも固有である。いくつかの実施形態では、対応する又は同じ日タイプを有する日の対応日常期間中に収集された居住者快適性データは同じ期間ビンへ仕分けられる。いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、設定点データ及び/又は濾過された設定点データを、本明細書において説明される技術の任意の技術を使用することにより又は参照によりその開示全体を本明細書に組み入れる2012年4月4日出願の米国特許出願第13/439,779号(今は特許文献1)を参照して詳細に説明される技術の任意の技術を使用することによりビンへ区画化、仕分け、分割等々を行う。設定点調整器1018は共通期間ビンの設定点、設定点境界、新しい設定点境界などを調整し得る。例えば、居住者設定点調整/オーバーライドの数が特定の期間ビンの対応閾値を越えることに応答して、設定点調整器1018は共通時間属性(例えば、同じ日タイプ及び/又は同じ日常期間)を共有するすべての他の期間ビンの設定点境界を増加又は低減し得る。
サンプルグラフ
ここで図11を参照すると、グラフ1100はいくつかの実施形態によると設定点調整器1018が居住者主導の設定点調整を計数し得る様々な期間を示す。グラフ1100は週末時間間隔1102及び平日時間間隔1104を示す。いくつかの実施形態によると、週末時間間隔1102は2日(すなわち土曜及び日曜)を含む。いくつかの実施形態によると、平日時間間隔1104は5日(すなわち月曜、火曜、水曜、木曜及び金曜)を含む。週末時間間隔1102が週末日タイプ(「we」)を含む一方で平日時間間隔1104は平日日タイプ(「wd」)を含む。週末時間間隔1102及び平日時間間隔1104のそれぞれの日は所定数の日常期間へ分割又は区画化され得る。例えば、グラフ1100は、週末時間間隔1102と平日時間間隔1104との両方のそれぞれの日が4つの日常期間へ分割又は区画化されるということを示す。
設定点調整器1018は、それぞれの日タイプの日常期間毎の不快感を指示する設定点の居住者主導増加又は低下の数を計数するように構成される。例えば、設定点調整器1018はそれぞれの日タイプの日常期間毎に図11に示すようにカウンタnx,y,zを生成し得る。設定点調整器1018はカウンタが所定閾値を越えることに応答して設定点境界(例えばMPC設定点境界又は新しい設定点境界)を調整し得る。
例えば、設定点調整器1018は、居住者不快感を指示する土曜日の第1の期間全体にわたる5つの設定点増加(すなわちn1,we,inc=5)を計数し得る。居住者不快感を指示する土曜日の第1の期間全体にわたる5つの設定点増加を計数することに応答して(閾値/トリガ値が5未満であれば)、設定点調整器1018は、(1)すべての週末日タイプの第1の日常期間に関連する設定点境界を調整し得る、(2)すべての日(平日と週末タイプ日との両方)の第1の日常期間に関連する設定点境界を調整し得る、又は(3)週末日タイプの任意の期間に関連する設定点境界を調整し得る。同様に、設定点調整器1018が、居住者不快感を指示する火曜日の第2の期間全体にわたる10の設定点増加(すなわちn2,wd,dec)を計数し、そして閾値/トリガ値が10未満であれば、設定点調整器1018は平日タイプ日の第2の日常期間のすべての期間に関連する設定点境界を調整し得る。
いくつかの実施形態では、設定点調整器1018は、特定の日タイプの特定期間のカウンタの少なくとも1つが閾値を越えることに応答して設定点境界を調整する。居住者設定点変更が矛盾する設定点調整(例えば、カウンタの1つn3,wd,dec=10そしてカウンタの1つn3,wd,inc=10、ここでトリガ値/閾値は10以下である)を生じれば、設定点調整器1018は日タイプの定義を変更し得る(例えば、日タイプの粒度を増加する)。例えば、この場合、設定点調整器1018は、週のあらゆる曜日が日タイプ(例えば7つの日のタイプ)であるように日タイプの粒度を増加し得る。
ここで図12を参照すると、時間の経過に伴う温度設定点を示すグラフ1200は系列1208及び系列1210を含む。いくつかの実施形態によると、系列1208はTsp,min,iを表し、系列1210はTsp,max,iを表す。グラフ1200に示すように、Tsp,min,iとTsp,max,iとの両方はオフセット量1202だけ調整される(例えば、増加される)。設定点調整器1018は、居住者不快感を指示する居住者設定点変更の数が対応閾値を越えることに応答して、Tsp,min,iとTsp,max,iとの両方を調整し得る(例えばオフセット量1202だけ増加又は低減する)。
次に図13〜14を参照すると、いくつかの実施形態によると、グラフ1300、1400は、どのように設定点調整コントローラ604がMPC設定点境界1302、1304を時間の経過と共に調整し得るかを示す。グラフ1300では、最小及び最大許容可能設定点境界1306、1308はMPC境界1302、1304の外側に在り、したがって設定点調整コントローラ604はMPC境界1302、1304を調整しない。設定点調整コントローラ604は、最小設定点境界1306が最小MPC境界1302より大きくなるまで及び/又は最大設定点境界1308が最大MPC境界1304未満となるまで最小設定点境界1306及び最大設定点境界1308を調整し得る。グラフ1400では、一期間中、最小設定点境界1306は最小MPC境界1302を越え、したがって、MPC境界1302、1304は図10を参照して上に詳細に説明された技術、方法、手法などのうちの任意のものを使用して調整される。
次に図15と図16を参照すると、グラフ1500、1600は、いくつかの実施形態によると、設定点調整器1018が使用し得るオフセットベース手法(例えば最小及び最大設定点境界を単純にオフセットすることによる)と最小/最大許容可能設定点手法との差を示す。いくつかの実施形態によると、グラフ1500は最小MPC設定点境界1502及び最大MPC設定点境界1504を含む。グラフ1500はまた調整済み最小MPC設定点境界1508及び調整済み最大MPC設定点境界1506を含む。設定点調整器1018は、居住者設定点変更を考慮するように境界1502及び1504を所定量(例えば摂氏1℃)だけオフセットすることにより最小MPC設定点境界1502及び最大MPC設定点境界1504を調整し得る。有利には、境界1502、1504を調整することは、居住者快適性を維持することとMPCシステム630を居住者嗜好に合わせることとを容易にする。
設定点調整プロセス
ここで図17を参照すると、居住者設定点オーバーライドに基づき設定点境界を調整するためのプロセス1700が示される。プロセス1700は工程1702〜1728を含む。プロセス1700は設定点調整コントローラ604により行われ得る。プロセス1700は、空間内の居住者快適性を維持するように設定点境界を増加又は低減するために行われ得る。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は気象サービスから気象データを収集すること(工程1702)を含む。気象データは、相対湿度、外部温度、外気温度、日射量、雲量などのうちの任意のものを含み得る。気象データは気象サービス(例えば気象サービス902)又はセンサから収集され得る。いくつかの実施形態では、歴史的気象データが収集される。いくつかの実施形態では、工程1702はデータ収集器/集積器1010により行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700はゾーンコントローラ又はサーモスタットからゾーンデータを収集すること(工程1704)を含む。いくつかの実施形態では、ゾーンデータは、温度設定点、設定点調整、ゾーン温度、建物機器などの動作モードのうちの任意のものを含む。工程1704はデータ収集器/集積器1010により行われ得る。いくつかの実施形態では、ゾーンコントローラ又はサーモスタットから収集されるゾーンデータは歴史的データである。いくつかの実施形態では、ゾーンデータはサーモスタット622から収集される。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は居住者がゾーン設定点を調整した時間を識別すること(工程1706)を含む。いくつかの実施形態では、居住者がゾーン設定点を調整した時間は工程1704において受信されたゾーン設定点データに基づき決定される。いくつかの実施形態によると、工程1706は居住者がゾーン設定点を増加したか低減したかを決定することを含み得る。いくつかの実施形態では、工程1706は、図10を参照して上に詳細に説明された技術、機能、方法、手法などのうちの任意のものを使用して居住者調整識別器1012により行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700はゾーン設定点に対する居住者調整が居住者不快感を指示するかどうかを決定すること(工程1708)を含む。いくつかの実施形態では、工程1708は図10を参照して上に詳細に説明された技術、機能などのうちの任意のものを使用して居住者調整マネージャ1020により行われる。いくつかの実施形態では、工程1708は居住者不快感を指示しない居住者調整を除去することによりゾーン設定点データを濾過することを含む。いくつかの実施形態では、工程1708は、居住者不快感を指示する居住者設定点調整/オーバーライドを識別することと、居住者不快感を指示しない他の居住者設定点調整/オーバーライドを除去することとを含む。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は期間を日タイプへ区画化すること(工程1710)を含む。いくつかの実施形態では、期間は、居住者不快感を指示しない居住者設定点変更を含まない濾過された設定点データの持続時間である。いくつかの実施形態では、工程1710の居住者設定点変更/オーバーライドは日タイプへ区画化される。日タイプは、平日、週末、曜日、祝日、居住者スケジュールなどのうちの任意のものを含み得る。いくつかの実施形態では、工程1710はサブセットマネージャ1016により行われる。
プロセス1700は、いくつかの実施形態によると、それぞれの日を期間へ区画化すること(工程1712)を含む。濾過された設定点データは日常期間へさらに区画化され得る。例えば、濾過された設定点データは4つの日常期間へ区画化され得る。いくつかの実施形態では、日常期間は同じ持続時間を有する。他の実施形態では、日常期間のいくつかはそれぞれ他のものより長い又は短い。工程1712はサブセットマネージャ1016により行われ得る。居住者オーバーライドはサブセットマネージャ1016により日常期間へ濾過され得る。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は、以前のオフセット変更時間以来のそれぞれの日タイプの期間毎の居住者不快感を指示する設定点増加及び低下を計数すること(工程1714)を含む。工程1714は設定点増加及び設定点低下を(例えば別個のカウンタにより)独立に計数することを含み得る。工程1714は、それぞれの日タイプの日常期間毎の設定点増加及び低下を計数することを含み得る。工程1714は設定点調整器1018により行われ得る。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点増加の数が設定点低下の数に等しいかどうかを決定すること(工程1716)を含む。工程1716はそれぞれの日タイプの日常期間毎に行われ得る。例えば、工程1716はそれぞれの日タイプの日毎に4回行われ得る(4つの日常期間が使用されれば)。工程1716は設定点調整器1018により行われ得る。
設定点増加の数が設定点低下の数に等しいということに応答して(工程1716「YES」)、いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点境界を同じに保つこと(工程1722)に進む。いくつかの実施形態では、工程1716及び1722はそれぞれの日タイプのそれぞれの日の日常期間毎に行われる。いくつかの実施形態では、設定点増加及び低下のすべてが特定の日タイプの特定の日常期間に関して等しければ(工程1716「YES」)、プロセス1700は工程1722に進む。いくつかの実施形態では、工程1722は設定点調整器1018により行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点増加の数が閾値より大きいかどうかを照査すること(工程1718)を含む。いくつかの実施形態では、工程1718は工程1716と同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程1718は設定点増加の数が設定点低下の数に等しくないこと(工程1716「NO」)に応答して行われる。いくつかの実施形態では、工程1718は設定点調整器1018により行われる。いくつかの実施形態では、工程1718はそれぞれの日タイプのそれぞれの日の日常期間毎に行われる。いくつかの実施形態では、特定の日タイプの1つ又は複数の日の任意の日常期間の設定点増加の数のうちのいずれかが閾値を越えれば(工程1718「YES」)、プロセス1700は工程1724に進む。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は、設定点増加の数が閾値を越えること(工程1718「YES」)に応答して特定の日タイプの特定の日常期間の設定点境界を増加すること(工程1724)を含む。いくつかの実施形態では、工程1724は、同様な日常期間の設定点増加の数の1つ又は複数が閾値を越えることに応答して特定の日タイプのすべての同様な日常期間の最小設定点境界と最大設定点境界との両方を増加することを含む。例えば、平日日タイプの1つ又は複数の第1の日常期間のうちの設定点増加の数が閾値を越えれば(工程1718「YES」)、工程1724は、平日日タイプのすべての第1の日常期間の設定点境界(例えば、最小設定点境界と最大設定点境界との両方)を所定量だけ増加することを含み得る。いくつかの実施形態では、工程1724は設定点調整器1018により行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点低下の数が閾値より大きいかどうかを照査すること(工程1720)を含む。いくつかの実施形態では、工程1720の閾値は工程1718の閾値と同じである。いくつかの実施形態では、工程1720の閾値は工程1718の閾値より大きいか小さい。工程1720は工程1718と同時に行われ得る。いくつかの実施形態では、工程1720は設定点調整器1018により行われる。いくつかの実施形態では、設定点低下の数が特定の日タイプの任意の日の任意の日常期間の閾値より大きければ(工程1720「YES」)、プロセス1700は工程1722に進む。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点低下の数が閾値を越えること(工程1720「YES」)に応答して設定点境界を低減すること(工程1726)を含む。いくつかの実施形態では、最小設定点境界と最大設定点境界との両方は設定点低下の数が閾値を越えることに応答して低減される。いくつかの実施形態では、工程1726は対応日常期間の設定点境界を低減することを含む。例えば、週末日タイプの第2の日常期間の設定点低下の数が閾値を越えれば(工程1720「YES」)工程1726はすべての週末日タイプの第2の日常期間の設定点境界を低減することを含み得る。
いくつかの実施形態によると、プロセス1700は設定点低下の数が閾値を越えないこと(工程1720「NO」)に応答して設定点境界を同じに保つこと(工程1722)を含む。いくつかの実施形態では、工程1722は設定点増加/低減の数が対応閾値未満であることに応答してそれぞれの日タイプの日常期間毎に行われる。例えば、平日日タイプの第3の日常期間のすべての設定点増加及び低下が対応閾値未満であれば、プロセス1700は工程1722に進み、設定点境界を同じに保ち得る。
いくつかの実施形態では、プロセス1700は設定点境界を調整すること(例えば、増加又は減少すること)に応答して以前のオフセット変更時間を現在の時間により更新することを含む。具体的には、プロセス1700は、工程1724又は工程1726を行うことに応答して以前のオフセット変更時間を現在の時間により更新することを含み得る。いくつかの実施形態では、工程1724及び1726は設定点境界を所定量(例えば摂氏1℃)だけ増加又は低減することを含む。
プロセス1700は、設定点境界を居住者嗜好に調整又は仕立てるために設定点調整コントローラ604により行われ得る。いくつかの実施形態では、設定点境界は、占有スペースの環境条件を調整する又はそれに影響を与えるように機器を制御するために使用される。いくつかの実施形態では、設定点境界はMPCシステム630へ提供されMPCシステム630により使用される。特定の日常期間の設定点増加の数と設定点低下の数との両方が、対応閾値を越えれば(例えば工程1718、1720「YES」)、設定点境界は設定点がより頻繁に増加又は低減されたかに基づき増加又は低減され得る。例えば、設定点増加の数と設定点低下の数との両方が閾値を越えるが設定点増加の数が設定点低下の数より大きければ、プロセス1700は工程1724に進み得る。同様に、設定点増加の数と設定点低下の数との両方が対応閾値を越えるが設定点低下の数が設定点増加の数より大きければ、プロセス1700は工程1726に進み得る。
次に図18A〜18Bを参照すると、設定点境界を調整するためのプロセス1800が示される。いくつかの実施形態によると、プロセス1800は工程1802〜1832を含む。いくつかの実施形態では、プロセス1800はプロセス1700内の工程と同じ又は同様な工程を含む。プロセス1800は設定点調整コントローラ604により行われ得る。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は工程1702〜1714又はプロセス1700を行うこと(工程1802)を含む。いくつかの実施形態では、プロセス1700の工程1702〜1714は、居住者主導である設定点調整(例えば増加又は低下)を識別、区画化、及び計数するために行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は新しい許容可能設定点境界を定義すること(工程1804)を含む。いくつかの実施形態では、新しい許容可能設定点境界は居住者により又は居住者の好ましいスケジュールにより定義される。いくつかの実施形態では、工程1804はTmin,new及びTmax,newを定義することを含む。いくつかの実施形態では、新しい最小及び最大境界は居住者快適性を維持するために設定点調整コントローラ604により使用される。いくつかの実施形態では、新しい最小及び最大境界は、占有スペースの環境条件に影響を与えるように構成された建物機器を運転するために使用される。MPCシステム630により使用される境界はTmin,MPC及びTmax,MPCと呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、工程1804は設定点調整器1018により行われる。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は工程1806〜1818を含む。いくつかの実施形態では、工程1806〜1818はプロセス1700の工程1716〜1722と同じ又は同様である。いくつかの実施形態では、プロセス1800は工程1806〜1810のいくつか又はすべてを同時に行う。いくつかの実施形態では、プロセス1800は工程1806、1810及び1814を同時に行う。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は設定点増加の数が設定点低下の数(工程1806)に等しいかどうかを決定/照査することを含む。いくつかの実施形態では、工程1806は工程1716と同じ又は同様である。特定の日タイプの特定の日常期間の設定点増加の数が設定点低下の数に等しければ(工程1806「YES」)、プロセス1800は工程1808に進み、新しい許容可能設定点境界を同じに保つ。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は設定点増加の数が対応閾値より大きいかどうかを決定すること(工程1810)を含む。いくつかの実施形態では、工程1810はプロセス1700の工程1716と同じ又は同様である。いくつかの実施形態によると、設定点増加の数が対応閾値を越えれば(工程1810「YES」)、プロセス1800は工程1812に進む。いくつかの実施形態によると、プロセス1800は、設定点増加の数が対応閾値以上であるということを決定すること(工程1810「YES」)に応答してTmin,newとTmax,newとの間の設定点境界範囲を増加すること(工程1812)を含む。いくつかの実施形態では、新しい許容可能設定点境界のうちの1つが増加される(例えば、Tmin,new又はTmax,newだけが増加される)。いくつかの実施形態では、新しい許容可能設定点境界は互いに独立に増加される。いくつかの実施形態では、新しい許容可能設定点境界は所定量(例えば摂氏1℃だけ)増加される(又は工程1816において低減される)。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は設定点低下の数が対応閾値を越えるか否かを決定すること(工程1814)を含む。いくつかの実施形態では、工程1814はプロセス1700の工程1720と同じ又は同様である。いくつかの実施形態では、設定点低下の数が対応閾値を越えれば(工程1814「YES」)、プロセス1800は工程1816に進む。プロセス1800は、設定点低下の数が対応閾値を越えること(工程1814「YES」)に応答して設定点境界範囲を低減する(例えば、工程1816においてTmin,new又はTmax,newの一方又は両方を減少する)ことを含む。いくつかの実施形態によると、プロセス1800は設定点低下の数が対応閾値を越えない(例えば、未満である)こと(工程1814「NO」)に応答して設定点境界範囲を同じに保つこと(工程1818)を含む。
工程1806〜1818を行うことに応答して、いくつかの実施形態によると、プロセス1800は新しい最小設定点境界Tmin,newがTmin,MPCより大きいか否かを決定すること(工程1820)に進む。いくつかの実施形態では、新しい最小設定点境界Tmin,newがTmin,MPCより大きければ(工程1820「YES」)プロセス1800は工程1822に進む。新しい最小設定点境界Tmin,newがTmin,MPC未満であればプロセス1800は工程1826に進む。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800はTmin,MPCをTmin,newに等しくなるように設定又は増加すること(工程1822)を含む。いくつかの実施形態では、工程1822は新しい最小設定点境界Tmin,newがTmin,MPCより大きいこと(工程1820、「はい」)に応答して行われる。プロセス1800はまた、Tmax,MPCを(1)Tmax,MPC+Tmin,MPC,inc又は(2)Tmax,newのうちの小さい方に等しくなるように増加すること(工程1824)を含む。ここで、いくつかの実施形態によると、Tmin,MPC,incはTmin,MPCが工程1822においてTmin,newに等しくなるように増加された量である。いくつかの実施形態では、工程1824は工程1822に応答して行われる。
いくつかの実施形態では、プロセス1800は、工程1824を行うことに応答して又は新しい最小設定点境界Tmin,newがTmin,MPC未満であること(工程1820「NO」)に応答して工程1826に進む。いくつかの実施形態によると、工程1826は新しい最大許容可能設定点境界Tmax,newがTmax,MPC未満であるか否かを決定することを含む。いくつかの実施形態では、Tmax,newがTmax,MPC未満であれば(工程1826「YES」)、プロセス1800は工程1828に進む。いくつかの実施形態では、Tmax,newがTmax,MPC以上であれば(例えば、それより大きい又はそれ以上であるなど:工程1826「NO」)、プロセス1800は工程1832に進み終了する。
いくつかの実施形態によると、プロセス1800は、Tmax,MPCがTmax,newより大きいということ(工程1826「YES」)に応答してTmax,MPCをTmax,newに等しくなるように設定又は低減すること(工程1828)を含む。いくつかの実施形態では、プロセス1800は工程1828を行うことに応答して工程1830に進む。工程1830は、Tmin,MPCを(1)Tmin,MPC−Tmax,MPC,dec又は(2)Tmin,newのうちの大きい方に等しくなるように低減することを含む。ここで、Tmax,MPC,decは、Tmax,MPCがTmax,newに等しくなるように工程1828において低減された量である。工程1830を行うことに応答して、プロセス1800は工程1832に進み終了する。いくつかの実施形態では、工程1820〜1830は設定点調整器1018により行われる。
システム識別
再び図10を参照すると、設定点調整コントローラ604はシステム識別実験を行うように構成され得る。設定点調整コントローラ604は設定点境界及び設定点などを調整するように構成されるので、設定点調整コントローラ604はまた、システム識別実験中に最小及び最大温度設定点境界を調整するように拡張され得る。システム識別実験は対応建物(例えば建物10)、部屋、空間、ゾーン、エリアなどが占有されていない期間中にしばしば実行され、広範囲の温度値が(例えば設定点調整コントローラ604により)考慮されることを可能にする。システム識別実験の1つのゴールは、HVAC機器(例えば建物機器612)が建物へ/から顕熱を提供/除去しているということを指示するシステム識別アルゴリズム(例えば、設定点調整コントローラ604により行われる又は設定点調整コントローラ604と協同して行われる)へ豊富なデータ組のトレーニングデータを提供することである。トレーニングデータは、HVAC機器及び建物空間の一定範囲の状態を捕捉し、そしてHVAC機器により提供される加熱/冷却に応答して空間の温度動力学を実証すれば最も有用である。したがって、温度動力学を最も良く捕捉するために建物空間が過渡状態(すなわち加熱又は冷却が活性状態)に在るということを保証するようにHVAC機器を運転することが有益かもしれない。
豊富な一組のトレーニングデータがシステム識別実験のために生成されるということを保証するために、設定点調整コントローラ604の機能のうちの任意のものがシステム識別実験中に建物又は部屋の温度設定点を調整するために使用され得、HVACシステムが建物/空間へ加熱/冷却を提供しているということを保証するようにする。換言すれば、温度設定点は、HVAC機器が活性状態でありそして空間の温度がシステム動特性を捕捉するために変化しているということを保証するためにシステム識別実験の一部分として人為的に調整され得る。具体的には、最小及び最大許容可能温度ベース手法(図10及び図18A〜18Bを参照して上に詳細に説明された)に関連する同じデータを使用することにより、設定点調整コントローラ604はまたHVAC加熱及び/又は冷却負荷を入力するために修正され得る。
次に、設定点調整コントローラ604は、現在の設定点範囲内で著しい加熱/冷却必要性(すなわち多大な加熱/冷却負荷)があるか否かを決定し得る。多大な加熱/冷却負荷がなければ、設定点調整コントローラ604は、追加の加熱/冷却が空間へ提供されるように設定点境界をそれにしたがって調整し得る。この場合、設定点調整コントローラ604は、設定点範囲を監視し、そして場合によっては、日常ベース又は低粒度ベースとは対照的に一時間毎又は高粒度ベースで設定点範囲を調整し得る。
ユーザオーバーライド強化
図9と図10を依然として参照すると、設定点調整コントローラ604は、どのようにMPCシステム630がユーザオーバーライド又は居住者設定点調整を扱うかをユーザがカスタム化することを可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、別のアルゴリズムが、MPCポストプロセッサ(例えば15分毎に走る)として機能するとともに、予測MPC結果と共に1日の歴史的データを必要とする設定点調整コントローラ604により行われる。この別のアルゴリズムは、どのようにMPCシステム630が居住者設定点調整を扱うかをユーザがカスタム化することを可能にし得、これにより追加柔軟性を提供する。いくつかの実施形態によると、ゾーングループ内のゾーン607毎にMPCポストプロセッサにより使用される入力データは、最大居住者設定点オーバーライド持続性、前日+予測1時間のMPC設定点、及び前日に関する実際の温度設定点を含み得る。いくつかの実施形態では、最大居住者設定点オーバーライド持続性のデフォルト値は零である。
設定点調整コントローラ604及び/又はMPCシステム630は、居住者設定点調整を照査し、これら照査された居住者設定点調整を、最大居住者設定点オーバーライド持続性値により規定される限り持続し得る。いくつかの実施形態によると、ゾーングループ内のゾーン607毎に、設定点調整コントローラ604及び/又はMPCシステム630は、実際の設定点がMPC設定点と現在異なる(これは居住者が設定点を調整したということを意味する)か否かを決定し得る。いくつかの実施形態によると、次に、設定点調整コントローラ604及び/又はMPCシステム630は設定点がオーバーライドされた持続時間を計算する。いくつかの実施形態によると、この持続時間が最大居住者設定点オーバーライド持続性値未満であれば、設定点調整コントローラ604及び/又はMPCシステム630は設定点を以前の居住者規定設定点へオーバーライドする。いくつかの実施形態によると、持続時間が最大居住者設定点オーバーライド持続性値以上であれば、設定点調整コントローラ604及び/又はMPCシステム630は現在のMPC設定点を維持する。次に、この設定点は設定点調整コントローラ604により使用され建物機器612へ提供され得る(例えば、VRF屋内ユニット)。
例示的な実施形態の構成
様々な例示的な実施形態に示されるようなシステム及び方法の構築及び配列は単なる例示である。この開示ではほんのわずかの実施形態のみを詳細に説明してきたが、多くの変更形態(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの値、取り付け方法、材料の使用、色、配向などの変化)が可能である。例えば、要素の位置を逆にするか又は別の方法で変化させることができ、個別の要素又は位置の性質又は数を変更するか又は変化させることができる。それに従って、そのような変更形態はすべて本開示の範囲内に含まれることが意図される。いかなるプロセス又は方法ステップの順序又は順番も代替の実施形態に従って変化させるか又は並べ替えることができる。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件及び配列における他の置換、変更、変化及び省略を行うことができる。
本開示は、様々な動作を遂行するためのいかなる機械可読媒体における方法、システム及びプログラム製品をも企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、この又は別の目的のために組み込まれた適切なシステム用の専用コンピュータプロセッサによって、或いは、配線接続されたシステムによって実装することができる。本開示の範囲内の実施形態は、格納された機械実行可能命令又はデータ構造を保持するか又は有するための機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは専用コンピュータ又はプロセッサを伴う他の機械によるアクセスが可能な利用可能ないかなる媒体でもあり得る。例示として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、或いは、機械実行可能命令又はデータ構造の形態の所望のプログラムコードを保持又は格納するために使用することができ、汎用若しくは専用コンピュータ又はプロセッサを伴う他の機械によるアクセスが可能な他の任意の媒体を含み得る。上記の組合せもまた、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、ある特定の機能又は機能グループを汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は専用処理機械に実行させる命令及びデータを含む。
添付図面は方法工程の特定の順序を示すが、工程の順序は描写されたものと異なり得る。また、2つ以上の工程が同時に又は部分的に同時に行われ得る。このような変形形態は、選ばれるソフトウェア及びハードウェアシステムと設計者選択とに依存する。すべてのこのような変形形態は本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェア実施形態は、様々な接続工程、処理工程、比較工程及び決定工程を遂行するために、規則ベース論理及び他の論理を有する標準プログラミング技法により遂行される可能性がある。