一般に図を参照すると、いくつかの実施形態による、建物の暖房・換気および空調(HVAC)システムが示されている。HVACシステムは、水供給側システムと、複数の空気供給側サブシステムを有する空気供給側システムとを含む。HVACシステムは、水供給側システムおよび空気供給側サブシステムの各々のHVAC機器に対する最適なセットポイントを生成するために、モデル予測制御(MPC)システムを使用する。
MPCは、システム入力(例えば、制御動作、セットポイントなど)をシステム状態およびシステム出力(例えば、測定値、プロセス変数など)と関連付けるために、制御されたシステムのモデルを使用する制御技法である。モデルは、最適化期間の間の各時間ステップにおいてコントローラが取った動作に基づいてシステム状態およびシステム出力を予測するために使用することができる。各時間ステップでは、MPCは、機器能力および安全性の限界などのプロセス制約(例えば、温度制約、機器切替制約など)に配慮しながら目的(例えば、追跡誤差を最小化すること、エネルギー費用を最小化することなど)を達成する制御動作のシーケンスを決定するために、システムモデルを使用してオンライン最適化問題を解く。シーケンスにおける第1の制御動作が実装され、新しい測定値が得られた後、次の時間ステップにおいて再び最適化問題が解かれる。
本明細書で説明されるHVACシステムは、建物またはキャンパスへの暖房および/または冷房を提供するために使用されるエネルギーの総費用を最適化する(例えば、最小化する)ことができる。多くの研究では、MPCは、将来を見通すその能力や、事象が起こる前にそれを見越すその能力により、既存の制御システムより性能が優れていることが示されている。MPCは、パッシブ熱エネルギー貯蔵(TES)に対する建物の質量を使用することによって、ピーク時間からオフピーク時間へのエネルギー負荷のシフトを可能にする。また、負荷シフトをさらに促進するために、アクティブ熱エネルギー貯蔵(例えば、冷却水タンク、温水タンクなど)を使用することもできる。アクティブおよびパッシブ貯蔵システムの組合せを通じて、すべてが各建物内の快適性制限を維持しながら、低資源価格の時間に機器使用量を集中させることによって、エネルギー費用を減少することができる。
いくつかの実施形態では、HVACシステムは、MPC層および規制層を含む。MPC層は、規制層から測定値を受信したり、規制層にセットポイントを提供したりすることができる。MPC層は、様々な決定変数の最適値(例えば、ゾーン温度セットポイント、機器オン/オフ決定およびTES充電/放電率を含む)を生成することができる。MPC層は、ゾーン温度から冷却/加熱デューティへのモデル、冷却/加熱デューティから温度セットポイントへのモデル、機器モデルおよびアクティブTESモデルなどのシステムモデルを使用して、決定変数の最適値を決定することができる。MPC層は、いくつかの制約を受けることを条件として、最適化プロセスを実行することによって、決定変数の最適値を決定することができる。制約は、ゾーン空気温度の快適性限界、機器能力制約、TESタンクサイズおよび規制層の機器の変化率限界を含み得る。
すべての決定変数の最適値を決定するために単一のMPC問題を解くことは、大規模なアプリケーションでは難しい可能性がある。例えば、いくつかの空気供給側システムは、数千の離散ゾーンを含み得、いくつかの水供給側システムは、数千の独特のHVACデバイスを含み得る。離散決定(例えば、機器をオン/オフにする)は、混合整数最適化問題をもたらし得、それにより、複雑性がさらに増す。MPC問題の困難性およびコンピュータ処理の複雑性により、MPC層は、MPC問題全体をより小さく且つより扱い易い最適化問題に分解することができる。
HVACシステムは、MPC問題全体を高次元最適化問題および低次元最適化問題に分解することができる。高次元問題は、複数の低次元空気供給側サブシステムの各々に対する負荷プロファイルおよび水供給側システムに対する需要プロファイルを決定するために、高次元モデル予測コントローラによって解くことができる。いくつかの実施形態では、高次元コントローラは、コンピュータ処理の複雑性の低減のために、各空気供給側サブシステムに対するアクティブTESモデルおよび集計低次元モデルを使用する。高次元コントローラは、最適化期間にわたるMPCシステムの総動作費用を最適化する(例えば、最小化する)負荷プロファイルを決定することができる。各負荷プロファイルは、最適化期間の各時間ステップに対する負荷値を含み得る。高次元コントローラは、複数の低次元空気供給側モデル予測コントローラに負荷プロファイルを提供することができる。低次元空気供給側コントローラは、最適化期間の各時間ステップに対する各空気供給側サブシステムに対する最大許容負荷値を定義する制約として負荷プロファイルを使用することができる。
低次元最適化問題は、低次元水供給側最適化問題および1つ以上の低次元空気供給側最適化問題にさらに分解することができる。各低次元空気供給側問題は、各空気供給側サブシステムの空気供給側機器に対するゾーン温度セットポイントを決定するために、低次元空気供給側コントローラのうちの1つによって解くことができる。各低次元空気供給側コントローラは、定義された温度制限内にゾーン温度を維持しながら、高次元コントローラによって提供された負荷値を超えることなく、対応する空気供給側サブシステムのエネルギー消費量を最適化する(例えば、最小化する)ゾーン温度セットポイントを決定することができる。あるいは、各低次元空気供給側コントローラは、高次元最適化問題から平均建物温度(例えば、予測建物温度状態)を追跡する温度セットポイントを決定することができる。HVACシステムのこれらのおよび他のコンポーネントは、以下でさらに詳細に説明する。
建物およびキャンパスHVACシステム
ここで図1A~1Bを参照すると、建物またはキャンパス(すなわち、建物の集合体)の暖房・換気および空調(HVAC)システムの実施形態が示されている。図1Aは、水供給側システム30および空気供給側システム50を含む大規模なHVACシステム20の概略図である。水供給側システム30は、ボイラ32、冷凍機34、熱回復冷凍機36、冷却塔38、冷熱エネルギー貯蔵(TES)タンク40、温熱TESタンク42およびポンプ44を有する中央プラントとして示されている。水供給側システム30の機器は、動作流体(例えば、水、グリコールなど)を加熱または冷却し、動作流体を空気供給側システム50に提供するように動作することができる。空気供給側システム50は、水供給側システム30からの加熱流体または冷却流体を使用して、様々な建物ゾーンに提供される気流を加熱または冷却することができる。HVACシステム20で使用することができる水供給側システムおよび空気供給側システムの例は、図2~3を参照してさらに詳細に説明する。
図1Aに示されるキャンパス規模の実装形態では、空気供給側システム50は、複数の建物11~17にわたって分散させることができる。空気供給側システム50は、建物11~17にわたって分散させた複数の空気処理ユニット(AHU)を含み得る。いくつかの実施形態では、AHUは、建物11~17の屋上に位置する屋上AHUである。他の実施形態では、AHUは、建物11~17の複数の階またはゾーンにわたって分散させることができる。建物11~17の各々は、1つ以上のAHUを含み得る。例えば、建物11は、1階53に位置する第1のAHU52、2階55に位置する第2のAHU54、3階57に位置する第3のAHU56、4階59に位置する第4のAHU58および5階61に位置する第5のAHU60を含むように示されている。
空気供給側システム50の各AHUは、水供給側システム30から加熱流体および/または冷却流体を受け取り、そのような流体を使用して様々な建物ゾーンへの暖房または冷房を提供することができる。各AHUは、単一の建物ゾーンまたは複数の建物ゾーンに気流を提供するように構成することができる。例えば、AHU52は、建物ゾーン62、64、66および68に気流を提供するように構成することができる。HVACシステム20などの大規模なHVACシステムでは、空気供給側システム50は、大多数(例えば、数十、数百など)の建物を含み得、各建物は、複数のAHUおよび大多数の建物ゾーンを有する。各建物ゾーンは、独立して制御することができ(例えば、ダンパまたは可変空気量(VAV)ユニットを介して)、異なる温度セットポイントを有することができる。いくつかの実施形態では、HVACシステム20の制御目的は、建物ゾーンのすべてに対して適切な温度セットポイントを決定すること、および、対応する負荷を満たすように水供給側システム30および空気供給側システム50の機器を操作することである。
ここで図1Bを参照すると、建物10の斜視図が示されている。建物10は、HVACシステム100によって資源供給され、HVACシステム100は、HVACシステム20より比較的小さな規模で動作する。HVACシステム100は、建物10への暖房、冷房、換気または他のサービスを提供するように構成された複数のHVACデバイス(例えば、加熱機、冷凍機、空気処理ユニット、ポンプ、ファン、熱エネルギー貯蔵など)を含み得る。例えば、HVACシステム100は、水供給側システム120および空気供給側システム130を含むように示されている。水供給側システム120は、空気供給側システム130の空気処理ユニットに加熱または冷却流体を提供することができる。空気供給側システム130は、加熱または冷却流体を使用して、建物10に提供される気流を加熱または冷却することができる。HVACシステム100で使用することができる例示的な水供給側システムおよび空気供給側システムの例は、図2~3を参照してさらに詳細に説明する。
HVACシステム100は、冷凍機102、ボイラ104および屋上AHU106を含むように示されている。水供給側システム120は、ボイラ104および冷凍機102を使用して動作流体(例えば、水、グリコールなど)を加熱または冷却することができ、動作流体をAHU106まで循環させることができる。様々な実施形態では、水供給側システム120のHVACデバイスは、建物10内または建物10の周りに位置することも(図1Bに示されるように)、中央プラントなどの現場を離れた場所に位置することも(図1Aに示されるように)可能である。動作流体は、建物10において暖房が必要かまたは冷房が必要かに応じて、ボイラ104で加熱することも、冷凍機102で冷却することもできる。ボイラ104は、可燃性物質(例えば、天然ガス)を燃やすことによってまたは電熱要素を使用することによって循環流体に熱を加えることができる。冷凍機102は、循環流体から熱を吸収するために、循環流体と熱交換器(例えば、蒸発器)内の別の流体(例えば、冷媒)とを熱交換関係に置くことができる。冷凍機102および/またはボイラ104からの動作流体は、配管108を介してAHU106に輸送することができる。
AHU106は、動作流体とAHU106中を流れる気流とを熱交換関係に置くことができる(例えば、冷却コイルおよび/または加熱コイルの1つ以上の段を介して)。気流は、例えば、外気、建物10内からの還気または両方の組合せであり得る。AHU106は、気流に対する加熱または冷却を提供するために、気流と動作流体との間で熱を伝達することができる。例えば、AHU106は、動作流体を含む熱交換器上または熱交換器中で気流を通過させるように構成された1つ以上のファンまたはブロワを含み得る。次いで、動作流体は、配管110を介して、冷凍機102またはボイラ104に戻ることができる。
空気供給側システム130は、給気ダクト112を介して、AHU106によって供給された気流(すなわち、給気流)を建物10に送ることができ、還気ダクト114を介して、建物10からAHU106に還気を提供することができる。いくつかの実施形態では、空気供給側システム130は、複数の可変空気量(VAV)ユニット116を含む。例えば、空気供給側システム130は、建物10の各階またはゾーンに別個のVAVユニット116を含むように示されている。VAVユニット116は、建物10の個々のゾーンに提供される給気流の量を制御するように動作することができるダンパまたは他のフロー制御要素を含み得る。他の実施形態では、空気供給側システム130は、中間VAVユニット116または他のフロー制御要素を使用することなく、給気流を建物10の1つ以上のゾーンに送る(例えば、供給ダクト112を介して)。AHU106は、給気流の属性を測定するように構成された様々なセンサ(例えば、温度センサ、圧力センサなど)を含み得る。AHU106は、建物ゾーンのセットポイント条件を達成するために、AHU106内および/または建物ゾーン内に位置するセンサから入力を受信し、AHU106中の給気流の流速、温度または他の属性を調整することができる。
水供給側システム
ここで図2を参照すると、いくつかの実施形態による、水供給側システム200のブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、水供給側システム200は、HVACシステム20の水供給側システム30またはHVACシステム100の水供給側システム120を補完または交換することができる。水供給側システム200は、HVACシステム20のHVACデバイス(例えば、ボイラ32、冷凍機34、熱回収冷凍機36など)またはHVACシステム100のHVACデバイス(例えば、ボイラ104、冷凍機102、ポンプ、バルブなど)のいくつかまたはすべてを含み得、加熱または冷却流体を空気供給側システム50または空気供給側システム130に供給するように動作することができる。水供給側システム200のHVACデバイスは、建物10内に位置することも(図1Bに示されるように)、中央プラントなどの現場を離れた場所に位置することも(図1Aに示されるように)可能である。
水供給側システム200は、複数のサブプラント202~212を有する中央プラントとして示されている。サブプラント202~212は、加熱機サブプラント202、熱回収冷凍機サブプラント204、冷凍機サブプラント206、冷却塔サブプラント208、温熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント210および冷熱エネルギー貯蔵(TES)サブプラント212を含むように示されている。サブプラント202~212は、建物またはキャンパスの熱エネルギー負荷(例えば、湯水、冷水、加熱、冷却など)を提供するために、公益事業から資源(例えば、水、天然ガス、電気など)を消費する。例えば、加熱機サブプラント202は、加熱機サブプラント202と建物10~17との間で温水を循環させる温水ループ214において水を加熱するように構成することができる。冷凍機サブプラント206は、冷凍機サブプラント206と建物10~17との間で冷水を循環させる冷水ループ216において水を冷却するように構成することができる。熱回収冷凍機サブプラント204は、温水の追加の加熱および冷水の追加の冷却を提供するために、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成することができる。復水器水ループ218は、冷凍機サブプラント206の冷水から吸熱し、冷却塔サブプラント208の吸熱を排熱するかまたは吸熱を温水ループ214に伝達することができる。温熱TESサブプラント210および冷熱TESサブプラント212は、後の使用のために、温熱および冷熱エネルギーをそれぞれ貯蔵することができる。
温水ループ214および冷水ループ216は、建物10の屋上に位置するAHUに(図1Bに示されるように)または建物11~17の個々の階もしくはゾーンに(図1Aに示されるように)加熱および/または冷却水を送ることができる。AHUは、空気の加熱または冷却を提供するために水が流れる熱交換器(例えば、加熱コイルまたは冷却コイル)を通り過ぎる形で空気を押し進める。加熱または冷却された空気は、建物10~17の熱エネルギー負荷を供給するために、建物10~17の個々のゾーンに送ることができる。次いで、水は、さらなる加熱または冷却を受けるためにサブプラント202~212に戻る。
サブプラント202~212は建物への循環のために水を加熱および冷却するものとして示され、説明されているが、熱エネルギー負荷を供給するために、水の代わりにまたは水に加えて、他のいかなるタイプの動作流体(例えば、グリコール、CO2など)も使用できることが理解されよう。他の実施形態では、サブプラント202~212は、中間熱伝達流体を必要とすることなく、建物またはキャンパスに加熱および/または冷却を直接提供することができる。水供給側システム200のこれらのまたは他の変形形態は、本開示の教示の範囲内である。
サブプラント202~212の各々は、サブプラントの機能を促進するように構成された様々な機器を含み得る。例えば、加熱機サブプラント202は、温水ループ214において温水に熱を加えるように構成された複数の加熱要素220(例えば、ボイラ、電気加熱機など)を含むように示されている。また、加熱機サブプラント202は、いくつかのポンプ222、224を含むようにも示されており、いくつかのポンプ222、224は、温水ループ214において温水を循環させ、個々の加熱要素220中を流れる温水の流速を制御するように構成される。冷凍機サブプラント206は、冷水ループ216において冷水から熱を除去するように構成された複数の冷凍機232を含むように示されている。また、冷凍機サブプラント206は、いくつかのポンプ234、236を含むようにも示されており、いくつかのポンプ234、236は、冷水ループ216において冷水を循環させ、個々の冷凍機232中を流れる冷水の流速を制御するように構成される。
熱回収冷凍機サブプラント204は、冷水ループ216から温水ループ214に熱を伝達するように構成された複数の熱回収熱交換器226(例えば、冷蔵回路)を含むように示されている。また、熱回収冷凍機サブプラント204は、いくつかのポンプ228、230を含むようにも示されており、いくつかのポンプ228、230は、熱回収熱交換器226を通じて温水および/または冷水を循環させ、個々の熱回収熱交換器226中を流れる水の流速を制御するように構成される。冷却塔サブプラント208は、復水器水ループ218において復水器水から熱を除去するように構成された複数の冷却塔238を含むように示されている。また、冷却塔サブプラント208は、いくつかのポンプ240を含むようにも示されており、いくつかのポンプ240は、復水器水ループ218において復水器水を循環させ、個々の冷却塔238中を流れる復水器水の流速を制御するように構成される。
温熱TESサブプラント210は、後の使用のために温水を貯蔵するように構成された温熱TESタンク242を含むように示されている。また、温熱TESサブプラント210は、温熱TESタンク242へのまたは温熱TESタンク242からの温水の流速を制御するように構成された1つ以上のポンプまたはバルブも含み得る。冷熱TESサブプラント212は、後の使用のために冷水を貯蔵するように構成された冷熱TESタンク244を含むように示されている。また、冷熱TESサブプラント212は、冷熱TESタンク244へのまたは冷熱TESタンク244からの冷水の流速を制御するように構成された1つ以上のポンプまたはバルブも含み得る。
いくつかの実施形態では、水供給側システム200のポンプ(例えば、ポンプ222、224、228、230、234、236および/または240)または水供給側システム200のパイプラインの1つ以上は、それらのポンプまたはパイプラインと関連付けられた遮断バルブを含む。遮断バルブは、水供給側システム200の流体の流れを制御するために、ポンプと統合することも、ポンプの上流または下流に配置することもできる。様々な実施形態では、水供給側システム200は、水供給側システム200の特定の構成および水供給側システム200によって供給される負荷のタイプに基づいて、より多くの、より少ないまたは異なるタイプのデバイスおよび/またはサブプラントを含み得る。
空気供給側システム
ここで図3を参照すると、いくつかの実施形態による、空気供給側システム300のブロック図が示されている。いくつかの実施形態では、空気供給側システム300は、HVACシステム20の空気供給側システム50またはHVACシステム100の空気供給側システム130を補完または交換することができる。空気供給側システム300は、HVACシステム20のHVACデバイス(例えば、AHU52~60)またはHVACシステム100のHVACデバイス(例えば、AHU106、VAVユニット116、ダクト112~114、ファン、ダンパなど)のいくつかまたはすべてを含み得、建物10~17内または建物10~17の周りに位置することができる。空気供給側システム300は、水供給側システム200によって提供される加熱または冷却流体を使用して、建物10~17に提供される気流を加熱または冷却するように動作することができる。
空気供給側システム300は、エコノマイザタイプのAHU302を含むように示されている。エコノマイザタイプのAHUは、加熱または冷却のために空気処理ユニットによって使用される外気および還気の量を変動させる。例えば、AHU302は、還気ダクト308を介して建物ゾーン306から還気304を受け取り、給気ダクト312を介して給気310を建物ゾーン306に送ることができる。いくつかの実施形態では、AHU302は、建物10の屋根に位置する屋上ユニットでも(例えば、図1Bに示されるようなAHU106)、還気304と外気314の両方を受け取るように別の方法で配置することも可能である。AHU302は、組み合わせて給気310を形成する外気314および還気304の量を制御するように排気ダンパ316、混合ダンパ318および外気ダンパ320を操作するように構成することができる。混合ダンパ318を通過しないいかなる還気304も、排気322として排気ダンパ316を通じてAHU302から排気することができる。
ダンパ316~320の各々は、アクチュエータによって操作することができる。例えば、排気ダンパ316は、アクチュエータ324によって操作することができ、混合ダンパ318は、アクチュエータ326によって操作することができ、外気ダンパ320は、アクチュエータ328によって操作することができる。アクチュエータ324~328は、通信リンク332を介してAHUコントローラ330と通信することができる。アクチュエータ324~328は、AHUコントローラ330から制御信号を受信し、AHUコントローラ330にフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、例えば、現在のアクチュエータもしくはダンパ位置の表示、アクチュエータによって与えられるトルクもしくは力の量、診断情報(例えば、アクチュエータ324~328によって実行された診断テストの結果)、ステータス情報、試運転情報、構成設定、較正データ、および/または、アクチュエータ324~328によって収集、格納もしくは使用することができる他のタイプの情報もしくはデータを含み得る。AHUコントローラ330は、1つ以上の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例・積分(PI)制御アルゴリズム、比例・積分・微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御(MPC)アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用してアクチュエータ324~328を制御するように構成されたエコノマイザコントローラであり得る。
依然として図3を参照すると、AHU302は、給気ダクト312内に配置された冷却コイル334、加熱コイル336およびファン338を含むように示されている。ファン338は、給気310に強制的に冷却コイル334および/または加熱コイル336を通過させ、建物ゾーン306に給気310を提供するように構成することができる。AHUコントローラ330は、給気310の流速を制御するために、通信リンク340を介してファン338と通信することができる。いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、ファン338の速度を変調することによって、給気310に適用される加熱または冷却の量を制御する。
冷却コイル334は、配管342を介して水供給側システム200から(例えば、冷水ループ216から)冷却流体を受け取り、配管344を介して水供給側システム200に冷却流体を戻すことができる。バルブ346は、冷却コイル334中を流れる冷却流体の流速を制御するために、配管342または配管344に沿って配置することができる。いくつかの実施形態では、冷却コイル334は、給気310に適用される冷却の量を変調するために独立して起動および解除を行うことができる(例えば、AHUコントローラ330によって、BMSコントローラ366によってなど)冷却コイルの複数の段を含む。
加熱コイル336は、配管348を介して水供給側システム200から(例えば、温水ループ214から)加熱流体を受け取り、配管350を介して水供給側システム200に加熱流体を戻すことができる。バルブ352は、加熱コイル336中を流れる加熱流体の流速を制御するために、配管348または配管350に沿って配置することができる。いくつかの実施形態では、加熱コイル336は、給気310に適用される加熱の量を変調するために独立して起動および解除を行うことができる(例えば、AHUコントローラ330によって、BMSコントローラ366によってなど)加熱コイルの複数の段を含む。
バルブ346および352の各々は、アクチュエータによって制御することができる。例えば、バルブ346は、アクチュエータ354によって制御することができ、バルブ352は、アクチュエータ356によって制御することができる。アクチュエータ354~356は、通信リンク358~360を介してAHUコントローラ330と通信することができる。アクチュエータ354~356は、AHUコントローラ330から制御信号を受け取り、コントローラ330にフィードバック信号を提供することができる。いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、給気ダクト312(例えば、冷却コイル334および/または加熱コイル336の下流)に配置された温度センサ362から給気温度の測定値を受信する。また、AHUコントローラ330は、建物ゾーン306に配置された温度センサ364から建物ゾーン306の温度の測定値を受信することもできる。
いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、給気310に提供される加熱または冷却の量を変調するために(例えば、給気310のセットポイント温度を達成するかまたは給気310の温度をセットポイント温度範囲内に維持するために)、アクチュエータ354~356を介してバルブ346、352を操作する。バルブ346、352の位置は、冷却コイル334または加熱コイル336によって給気310に提供される加熱または冷却の量に影響を及ぼし、所望の給気温度を達成するために消費されるエネルギーの量と相関し得る。AHUコントローラ330は、コイル334~336を起動もしくは解除することによって、ファン338の速度を調整することによって、または、両方の組合せによって、給気310および/または建物ゾーン306の温度を制御することができる。
依然として図3を参照すると、空気供給側システム300は、建物管理システム(BMS)コントローラ366およびクライアントデバイス368を含むように示されている。BMSコントローラ366は、空気供給側システム300、水供給側システム200、HVACシステム100、HVACシステム20および/または建物10~17に資源供給する他の制御可能システム用のシステムレベルコントローラ、アプリケーションまたはデータサーバ、ヘッドノードあるいはマスタコントローラとして機能する1つ以上のコンピュータシステム(例えば、サーバ、監視コントローラ、サブシステムコントローラなど)を含み得る。BMSコントローラ366は、同様のまたは異種のプロトコル(例えば、LON、BACnetなど)に従って、通信リンク370を介して、複数の下流建物システムまたはサブシステム(例えば、HVACシステム20または100、セキュリティシステム、照明システム、水供給側システム200など)と通信することができる。様々な実施形態では、AHUコントローラ330およびBMSコントローラ366は、分離することも(図3に示されるように)、統合することもできる。統合された実装形態では、AHUコントローラ330は、BMSコントローラ366のプロセッサによって実行するように構成されたソフトウェアモジュールであり得る。
いくつかの実施形態では、AHUコントローラ330は、BMSコントローラ366から情報(例えば、コマンド、セットポイント、動作境界など)を受信し、BMSコントローラ366に情報(例えば、温度測定値、バルブまたはアクチュエータ位置、動作ステータス、診断など)を提供する。例えば、AHUコントローラ330は、温度センサ362~364からの温度測定値、機器オン/オフ状態、機器動作能力、および/または、建物ゾーン306内の可変状態もしくは条件のモニタおよび制御を行うためにBMSコントローラ366によって使用することができる他の任意の情報をBMSコントローラ366に提供することができる。
クライアントデバイス368は、HVACシステム20、HVACシステム100および/またはその様々なデバイスを制御、閲覧または別の方法で相互作用するための1つ以上のヒューマンマシンインタフェースまたはクライアントインタフェース(例えば、グラフィカルユーザインタフェース、報告用のインタフェース、テキストベースのコンピュータインタフェース、顧客に直接対応するウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を含み得る。クライアントデバイス368は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、リモートもしくはローカルインタフェース、または、他の任意のタイプのユーザインタフェースデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、据置型端末でも、モバイルデバイスでもよい。例えば、クライアントデバイス368は、デスクトップコンピュータ、ユーザインタフェースを有するコンピュータサーバ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA、または、他の任意のタイプのモバイルもしくは非モバイルデバイスであり得る。クライアントデバイス368は、通信リンク372を介して、BMSコントローラ366および/またはAHUコントローラ330と通信することができる。
建物管理システム
ここで図4を参照すると、例示的な実施形態による、建物管理システム(BMS)400のブロック図が示されている。BMS400は、様々な建物機能の自動的なモニタおよび制御を行うために1つ以上の建物10~17において実装することができる。BMS400は、BMSコントローラ366および複数の建物サブシステム428を含むように示されている。建物サブシステム428は、建物電気サブシステム434、情報通信技術(ICT)サブシステム436、セキュリティサブシステム438、HVACサブシステム440、照明サブシステム442、エレベータ/エスカレータサブシステム432および火災安全サブシステム430を含むように示されている。様々な実施形態では、建物サブシステム428は、より少ない、追加のまたは代替のサブシステムを含み得る。例えば、建物サブシステム428は、冷蔵サブシステム、広告もしくは看板サブシステム、調理サブシステム、自動販売サブシステム、プリンタもしくはコピーサービスサブシステム、または、建物10~17のモニタおよび制御を行うために制御可能な機器および/またはセンサを使用する他の任意のタイプの建物サブシステムを同様に含むことも、それらを代替として含むこともできる。いくつかの実施形態では、建物サブシステム428は、図2~3を参照して説明されるような、水供給側システム200および/または空気供給側システム300を含む。
建物サブシステム428の各々は、その個々の機能および制御活動を完了するためのいかなる数のデバイス、コントローラおよび接続も含み得る。HVACサブシステム440は、図1A~3を参照して説明されるような、HVACシステム20またはHVACシステム100と同じコンポーネントの多くを含み得る。例えば、HVACサブシステム440は、冷凍機、ボイラ、任意の数の空気処理ユニット、エコノマイザ、フィールドコントローラ、監視コントローラ、アクチュエータ、温度センサ、および、建物10~17内の温度、湿度、気流または他の可変条件を制御するための他のデバイスを含み得る。照明サブシステム442は、任意の数の照明器具、バラスト、照明センサ、調光器、または、建物空間に提供される光の量を制御可能に調整するように構成された他のデバイスを含み得る。セキュリティサブシステム438は、占有センサ、映像監視カメラ、デジタル映像レコーダ、映像処理サーバ、侵入検出デバイス、アクセス制御デバイスおよびサーバまたは他のセキュリティ関連デバイスを含み得る。
依然として図4を参照すると、BMSコントローラ366は、通信インタフェース407およびBMSインタフェース409を含むように示されている。インタフェース407は、BMSコントローラ366および/またはサブシステム428のユーザ制御、モニタリングおよび調整を可能にするために、BMSコントローラ366と外部のアプリケーション(例えば、モニタリングおよび報告アプリケーション422、企業制御アプリケーション426、リモートシステムおよびアプリケーション444、クライアントデバイス448上に存在するアプリケーションなど)との間の通信を容易にすることができる。また、インタフェース407は、BMSコントローラ366とクライアントデバイス448との間の通信を容易にすることもできる。BMSインタフェース409は、BMSコントローラ366と建物サブシステム428(例えば、HVAC、照明セキュリティ、エレベータ、配電、ビジネスなど)との間の通信を容易にすることができる。
インタフェース407、409は、建物サブシステム428または他の外部のシステムもしくはデバイスとのデータ通信を実施するための有線または無線通信インタフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、トランシーバ、ワイヤ端子など)であることも、それらを含むことも可能である。様々な実施形態では、インタフェース407、409を介する通信は、直接的であることも(例えば、ローカル有線または無線通信)、通信ネットワーク446を介することも(例えば、WAN、インターネット、セルラネットワークなど)可能である。例えば、インタフェース407、409は、イーサネット(登録商標)ベース通信リンクまたはネットワークを介してデータを送信および受信するためのイーサネットカードおよびポートを含み得る。別の例では、インタフェース407、409は、無線通信ネットワークを介して通信するためのWiFiトランシーバを含み得る。別の例では、インタフェース407、409の一方または両方は、セルラフォンまたは携帯電話通信トランシーバを含み得る。一実施形態では、通信インタフェース407は送電線通信インタフェースであり、BMSインタフェース409はイーサネットインタフェースである。他の実施形態では、通信インタフェース407およびBMSインタフェース409は両方とも、別個のイーサネットインタフェースであるかまたは同じイーサネットインタフェースである。
依然として図4を参照すると、BMSコントローラ366は、処理回路404を含むように示されており、処理回路404は、プロセッサ406およびメモリ408を含む。処理回路404は、処理回路404およびその様々なコンポーネントがインタフェース407、409を介してデータの送信および受信を行えるように、BMSインタフェース409および/または通信インタフェース407に通信可能に接続することができる。プロセッサ406は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理コンポーネントのグループ、または、他の適切な電子処理コンポーネントとして実装することができる。
メモリ408(例えば、メモリ、メモリユニット、記憶装置など)は、本出願で説明される様々なプロセス、層およびモジュールを完了および/または促進するためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置など)を含み得る。メモリ408は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであることも、それらを含むことも可能である。メモリ408は、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、または、他の任意のタイプの様々な活動をサポートするための情報構造および本出願で説明される情報構造を含み得る。例示的な実施形態によれば、メモリ408は、処理回路404を介してプロセッサ406に通信可能に接続することができ、本明細書で説明される1つ以上のプロセスを実行する(例えば、処理回路404および/またはプロセッサ406によって)ためのコンピュータコードを含む。
いくつかの実施形態では、BMSコントローラ366は、単一のコンピュータ(例えば、1つのサーバ、1つのハウジングなど)内で実装される。様々な他の実施形態では、BMSコントローラ366は、複数のサーバまたはコンピュータ(例えば、分散した場所に存在することができる)にわたって分散させることができる。さらに、図4はBMSコントローラ366の外部に存在するものとしてアプリケーション422、426を示しているが、いくつかの実施形態では、アプリケーション422、426は、BMSコントローラ366内(例えば、メモリ408内)でホストすることができる。
依然として図4を参照すると、メモリ408は、企業統合層410、自動化測定および検定(AM&V)層412、需要応答(DR)層414、欠陥検出および診断(FDD)層416、統合制御層418および建物サブシステム統合後420を含むように示されている。層410~420は、建物サブシステム428および他のデータ源から入力を受信し、入力に基づいて建物サブシステム428の最適な制御動作を決定し、最適な制御動作に基づいて制御信号を生成し、生成された制御信号を建物サブシステム428に提供するように構成することができる。以下の段落は、BMS400の層410~420の各々によって実行される一般機能のいくつかを説明する。
企業統合層410は、様々な企業レベルのアプリケーションをサポートするために情報およびサービスをクライアントまたはローカルアプリケーションに供給するように構成することができる。例えば、企業制御アプリケーション426は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)または任意の数の企業レベルビジネスアプリケーション(例えば、会計システム、ユーザ識別システムなど)にサブシステム全体に及ぶ制御を提供するように構成することができる。企業制御アプリケーション426は、BMSコントローラ366を構成するための構成GUIを提供するように同様に構成することも、そのように代替として構成することもできる。さらなる他の実施形態では、企業制御アプリケーション426は、インタフェース407および/またはBMSインタフェース409で受信された入力に基づいて建物性能(例えば、効率、エネルギー使用、快適性または安全性)を最適化するために、層410~420と連動することができる。
建物サブシステム統合層420は、BMSコントローラ366と建物サブシステム428との間の通信を管理するように構成することができる。例えば、建物サブシステム統合層420は、建物サブシステム428からセンサデータおよび入力信号を受信し、建物サブシステム428に出力データおよび制御信号を提供することができる。また、建物サブシステム統合層420は、建物サブシステム428間の通信を管理するように構成することもできる。建物サブシステム統合層420は、複数のマルチベンダ/マルチプロトコルシステムにわたって通信(例えば、センサデータ、入力信号、出力信号など)を翻訳する。
需要応答層414は、建物10~17の需要を満たすことに応答して、資源使用量(例えば、電気使用、天然ガス使用、水使用など)および/またはそのような資源使用量の金銭的費用を最適化するように構成することができる。最適化は、使用時間価格、削減信号、エネルギー利用可能性、または、ユーティリティプロバイダ、分散型エネルギー生成システム424、エネルギー貯蔵427(例えば、温熱TES 242、冷熱TES 244など)もしくは他の供給源から受信された他のデータに基づき得る。需要応答層414は、BMSコントローラ366の他の層(例えば、建物サブシステム統合層420、統合制御層418など)から入力を受信することができる。他の層から受信される入力は、温度、二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、大気質センサ出力、占有センサ出力、部屋スケジュールおよび同様のものなどの環境またはセンサ入力を含み得る。また、入力は、電気使用(例えば、kWhで表現される)、熱負荷測定値、価格情報、予想価格、平準化価格、公益事業からの削減信号および同様のものなどの入力も含み得る。
例示的な実施形態によれば、需要応答層414は、受信したデータおよび信号に応答するための制御論理を含む。これらの応答は、統合制御層418の制御アルゴリズムと通信すること、制御戦略を変更すること、セットポイントを変更すること、または、制御の下で建物機器もしくはサブシステムを起動/解除することを含み得る。また、需要応答層414は、貯蔵されたエネルギーをいつ利用するかを決定するように構成された制御論理も含み得る。例えば、需要応答層414は、ピーク使用時間が始まる直前に、エネルギー貯蔵427からのエネルギーの使用を開始すると決定することができる。
いくつかの実施形態では、需要応答層414は、需要(例えば、価格、削減信号、需要レベルなど)を表す1つ以上の入力に基づいてまたは同需要に基づいてエネルギー費用を最小化する制御動作を能動的に開始する(例えば、自動的にセットポイントを変更する)ように構成された制御モジュールを含む。いくつかの実施形態では、需要応答層414は、制御動作の最適なセットを決定するために、機器モデルを使用する。機器モデルは、例えば、建物機器の様々なセットによって実行される入力、出力および/または機能を説明する熱力学モデルを含み得る。機器モデルは、建物機器の集合体(例えば、サブプラント、冷凍機アレイなど)または個々のデバイス(例えば、個々の冷凍機、加熱機、ポンプなど)を表し得る。
需要応答層414は、1つ以上の需要応答ポリシー定義(例えば、データベース、XMLファイルなど)をさらに含むことも、それらを活用することも可能である。ポリシー定義は、ユーザのアプリケーション、所望の快適レベル、特定の建物機器に合わせてまたは他の関心事に基づいて、需要入力に応答して開始された制御動作を調整できるように、ユーザによって(例えば、グラフィカルユーザインタフェースを介して)編集または調整することができる。例えば、需要応答ポリシー定義は、特定の需要入力に応答してどの機器をオンまたはオフにするか、システムまたは機器の部品をどのくらいの時間オフにするべきか、どのようなセットポイントを変更することができるか、許容セットポイント調整範囲はどれほどか、通常のスケジューリングされたセットポイントに戻る前に高需要セットポイントをどのくらいの時間保持するか、能力限界にどれほど近づいているか、どの機器モードを利用するか、エネルギー貯蔵デバイス(例えば、熱貯蔵タンク、バッテリバンクなど)へのおよびエネルギー貯蔵デバイスからのエネルギー伝達料金(例えば、最大料金、警報料金、他の料金限界情報など)、現場生成されたエネルギーをいつ送り出すか(例えば、燃料電池、電動発電機セットを介して)を指定することができる。
統合制御層418は、制御決定を行うために建物サブシステム統合層420および/または需要応答層414のデータ入力または出力を使用するように構成することができる。建物サブシステム統合層420によって提供されるサブシステム統合により、統合制御層418は、サブシステム428が単一の統合上位体系として挙動するように、サブシステム428の制御活動を統合することができる。例示的な実施形態では、統合制御層418は、別個のサブシステムが単独で提供できる快適性およびエネルギー節約と比べて、より優れた快適性およびエネルギー節約を提供するために、複数の建物サブシステムからの入力および出力を使用する制御論理を含む。例えば、統合制御層418は、第2のサブシステムに対するエネルギー節約制御決定を行うために、第1のサブシステムからの入力を使用するように構成することができる。これらの決定の結果は、建物サブシステム統合層420に送り返すことができる。
統合制御層418は、論理的には、需要応答層414の下であるように示されている。統合制御層418は、需要応答層414と協力して建物サブシステム428およびそれらのそれぞれの制御ループの制御を可能にすることによって、需要応答層414の有効性を強化するように構成することができる。この構成は、従来のシステムと比べて、破壊的な需要応答挙動を低減することができる。例えば、統合制御層418は、冷却水温度のセットポイントの需要応答駆動上方調整(または温度に直接もしくは間接的に影響を及ぼす別の成分)が、冷凍機で保存されたものより多くの総建物エネルギー使用をもたらすことになるファンエネルギー(または空間を冷却するために使用される他のエネルギー)の増加をもたらさないことを保証するように構成することができる。
統合制御層418は、需要負荷制限が進行中の間でさえも制約(例えば、温度、照明レベルなど)が適切に維持されることを需要応答層414がチェックするように、需要応答層414にフィードバックを提供するように構成することができる。また、制約は、安全性、機器動作制限および性能、快適性、消防規則、電気工事規定、エネルギー規定および同様のものに関連するセットポイントまたは検知境界も含み得る。また、統合制御層418は、論理的には、欠陥検出および診断層416および自動化測定および検定層412の下でもある。統合制御層418は、複数の建物サブシステムからの出力に基づいて、これらのより高いレベルに計算済みの入力(例えば、集計)を提供するように構成することができる。
自動化測定および検定(AM&V)層412は、統合制御層418または需要応答層414によって命令される制御戦略が正しく機能していることを検証するように構成することができる(例えば、AM&V層412、統合制御層418、建物サブシステム統合層420、FDD層416によって集計されたデータを使用してまたは別の方法で)。AM&V層412によって行われる計算は、建物システムエネルギーモデルおよび/または個々のBMSデバイスもしくはサブシステムに対する機器モデルに基づき得る。例えば、AM&V層412は、モデルの精度を判断するために、モデル予測出力を建物サブシステム428からの実際の出力と比較することができる。
欠陥検出および診断(FDD)層416は、建物サブシステム428、建物サブシステムデバイス(すなわち、建物機器)、ならびに、需要応答層414および統合制御層418によって使用される制御アルゴリズムに対する進行中の欠陥検出を提供するように構成することができる。FDD層416は、統合制御層418から、1つ以上の建物サブシステムもしくはデバイスから直接、または、別のデータ源から、データ入力を受信することができる。FDD層416は、検出された欠陥を自動的に診断し、応答することができる。検出または診断された欠陥への応答は、ユーザ、保守スケジューリングシステム、または、欠陥の修理を試みるかもしくは欠陥に対処するように構成された制御アルゴリズムに警告メッセージを提供することを含み得る。
FDD層416は、建物サブシステム統合層420で利用可能な詳細なサブシステム入力を使用して、欠陥コンポーネントの具体的な識別または欠陥の原因(例えば、緩んだダンパリンク機構)を出力するように構成することができる。他の例示的な実施形態では、FDD層416は、統合制御層418に「欠陥」事象を提供するように構成され、統合制御層418は、受信された欠陥事象に応答して、制御戦略およびポリシーを実行する。例示的な実施形態によれば、FDD層416(または、統合制御エンジンまたはビジネスルールエンジンによって実行されるポリシー)は、エネルギー浪費を低減するため、機器の寿命を延ばすためまたは正しい制御応答を保証するために、欠陥デバイスまたはシステムの周りのシステムまたは直接制御活動を停止することができる。
FDD層416は、様々な異なるシステムデータストア(またはライブデータ用のデータポイント)に格納するかまたはアクセスするように構成することができる。FDD層416は、データストアの何らかのコンテンツを使用して、機器レベル(例えば、特定の冷凍機、特定のAHU、特定の端末ユニットなど)で欠陥を識別することができ、他のコンテンツを使用して、コンポーネントまたはサブシステムレベルで欠陥を識別することができる。例えば、建物サブシステム428は、BMS400およびその様々なコンポーネントの性能を示す時間的な(すなわち、時系列)データを生成することができる。建物サブシステム428によって生成されるデータは、統計特性を呈する測定済みのまたは計算済みの値を含み得、対応するシステムまたはプロセス(例えば、温度制御プロセス、フロー制御プロセスなど)がそのセットポイントからの誤差の観点からどのように機能しているかについての情報を提供することができる。これらのプロセスは、システムの性能がいつ劣化し始めるかを暴露し、その劣化がより深刻になる前に欠陥を修理するようにユーザに警告するために、FDD層416によって検査することができる。
ここで図5を参照すると、いくつかの実施形態による、別の建物管理システム(BMS)500のブロック図が示されている。BMS500は、建物10~17の1つ以上において実装することができ、HVACシステム20、100、水供給側システム200、空気供給側システム300、建物サブシステム428のデバイス、ならびに、他のタイプのBMSデバイス(例えば、照明機器、セキュリティ機器など)および/またはHVAC機器のモニタおよび制御を行うために使用することができる。
BMS500は、自動機器発見および機器モデル分散を促進するシステムアーキテクチャを提供する。機器発見は、複数の異なる通信バス(例えば、システムバス554、ゾーンバス556~560、564、センサ/アクチュエータバス566など)にわたっておよび複数の異なる通信プロトコルにわたってBMS500の複数のレベルで起こり得る。いくつかの実施形態では、機器発見は、各通信バスに接続されたデバイスのステータス情報を提供するアクティブノードテーブルを使用して遂行される。例えば、各通信バスは、新しいノードに対して対応するアクティブノードテーブルをモニタすることによって、新しいデバイスに対するモニタを行うことができる。新しいデバイスが検出されると、BMS500は、ユーザが対話することなく、新しいデバイスとの相互作用を開始することができる(例えば、制御信号を送信する、デバイスからのデータを使用する)。
BMS500のいくつかのデバイスは、機器モデルを使用して、それら自体をネットワークに提示する。機器モデルは、他のシステムとの統合のために使用される機器オブジェクト属性、ビュー定義、スケジュール、傾向および関連BACnet値オブジェクト(例えば、アナログ値、2進値、多状態値など)を定義する。BMS500のいくつかのデバイスは、それら自体の機器モデルを格納する。BMS500の他のデバイスは、外部(例えば、他のデバイス内)に格納された機器モデルを有する。例えば、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528の機器モデルを格納することができる。いくつかの実施形態では、ゾーンコーディネータ508は、バイパスダンパ528またはゾーンバス558の他のデバイスの機器モデルを自動的に作成する。また、他のゾーンコーディネータも、それらのゾーンバスに接続されたデバイスの機器モデルを作成することができる。デバイスの機器モデルは、ゾーンバスのデバイスによって暴露されたデータポイントのタイプ、デバイスタイプおよび/または他のデバイス属性に基づいて自動的に作成することができる。自動機器発見および機器モデル分散のいくつかの例は、以下でさらに詳細に論じる。
依然として図5を参照すると、BMS500は、システムマネージャ502、いくつかのゾーンコーディネータ506、508、510、518およびいくつかのゾーンコントローラ524、530、532、536、548、550を含むように示されている。システムマネージャ502は、データ通信リンク574(例えば、BACnet IP、イーサネット、有線または無線通信など)を介してクライアントデバイス504(例えば、ユーザデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイスなど)と通信することができる。システムマネージャ502は、データ通信リンク574を介してクライアントデバイス504にユーザインタフェースを提供することができる。ユーザインタフェースは、ユーザがクライアントデバイス504を介してBMS500のモニタおよび/または制御を行えるようにする。
いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506~510、518と接続される。システムマネージャ502は、マスタスレーブトークンパッシング(MSTP)プロトコルまたは他の任意の通信プロトコルを使用して、システムバス554を介してゾーンコーディネータ506~510、518と通信するように構成することができる。また、システムバス554は、システムマネージャ502を、定容(CV)屋上ユニット(RTU)512、入力/出力モジュール(IOM)514、サーモスタットコントローラ516(例えば、TEC5000シリーズサーモスタットコントローラ)、および、ネットワークオートメーションエンジン(NAE)または第三者コントローラ520などの他のデバイスと接続することもできる。RTU512は、システムマネージャ502と直接通信するように構成することができ、システムバス554に直接接続することができる。他のRTUは、中間デバイスを介してシステムマネージャ502と通信することができる。例えば、有線入力562は、第三者RTU542をサーモスタットコントローラ516に接続することができ、サーモスタットコントローラ516は、システムバス554に接続される。
システムマネージャ502は、機器モデルを含むいかなるデバイスに対するユーザインタフェースも提供することができる。ゾーンコーディネータ506~510、518およびサーモスタットコントローラ516などのデバイスは、システムバス554を介してシステムマネージャ502にそれらの機器モデルを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、機器モデルを含まない接続バイス(例えば、IOM 514、第三者コントローラ520など)の機器モデルを自動的に作成する。例えば、システムマネージャ502は、デバイス木要求に応答するいかなるデバイスの機器モデルも作成することができる。システムマネージャ502によって作成された機器モデルは、システムマネージャ502内に格納することができる。次いで、システムマネージャ502は、システムマネージャ502によって作成された機器モデルを使用して、それら自体の機器モデルを含まないデバイスに対するユーザインタフェースを提供することができる。いくつかの実施形態では、システムマネージャ502は、システムバス554を介して接続された機器の各タイプのビュー定義を格納し、格納されたビュー定義を使用して機器に対するユーザインタフェースを生成する。
各ゾーンコーディネータ506~510、518は、ゾーンバス556、558、560、564を介してゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550のうちの1つ以上と接続することができる。ゾーンコーディネータ506~510、518は、MSTPプロトコルまたは他の任意の通信プロトコルを使用してゾーンバス556~560、564を介してゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550と通信することができる。また、ゾーンバス556~560、564は、ゾーンコーディネータ506~510、518を、可変空気量(VAV)RTU522、540、切替バイパス(COBP)RTU526、552、バイパスダンパ528、546およびPEAKコントローラ534、544などの他のタイプのデバイスと接続することもできる。
ゾーンコーディネータ506~510、518は、様々なゾーニングシステムに対するモニタおよび命令を行うように構成することができる。いくつかの実施形態では、各ゾーンコーディネータ506~510、518は、別個のゾーニングシステムに対するモニタおよび命令を行い、別個のゾーンバスを介してゾーニングシステムに接続される。例えば、ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522およびゾーンコントローラ524に接続することができる。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526、バイパスダンパ528、COBPゾーンコントローラ530およびVAVゾーンコントローラ532に接続することができる。ゾーンコーディネータ510は、ゾーンバス560を介してPEAKコントローラ534およびVAVゾーンコントローラ536に接続することができる。ゾーンコーディネータ518は、ゾーンバス564を介してPEAKコントローラ544、バイパスダンパ546、COBPゾーンコントローラ548およびVAVゾーンコントローラ550に接続することができる。
ゾーンコーディネータ506~510、518の単一のモデルは、複数の異なるタイプのゾーニングシステム(例えば、VAVゾーニングシステム、COBPゾーニングシステムなど)を処理するように構成することができる。各ゾーニングシステムは、RTU、1つ以上のゾーンコントローラおよび/またはバイパスダンパを含み得る。例えば、ゾーンコーディネータ506、510は、VAV RTU522、540にそれぞれ接続されたVerasys VAVエンジン(VVE)として示されている。ゾーンコーディネータ506は、ゾーンバス556を介してVAV RTU522に直接接続されるのに対して、ゾーンコーディネータ510は、PEAKコントローラ534に提供された有線入力568を介して第三者VAV RTU540に接続される。ゾーンコーディネータ508、518は、COBP RTU526、552にそれぞれ接続されたVerasys COBPエンジン(VCE)として示されている。ゾーンコーディネータ508は、ゾーンバス558を介してCOBP RTU526に直接接続されるのに対して、ゾーンコーディネータ518は、PEAKコントローラ544に提供された有線入力570を介して第三者COBP RTU552に接続される。
ゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550は、センサ/アクチュエータ(SA)バスを介して個々のBMSデバイス(例えば、センサ、アクチュエータなど)と通信することができる。例えば、VAVゾーンコントローラ536は、SAバス566を介してネットワーク接続センサ538に接続されるように示されている。ゾーンコントローラ536は、MSTPプロトコルまたは他の任意の通信プロトコルを使用してネットワーク接続センサ538と通信することができる。図5では1つのSAバス566しか示されていないが、各ゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550は異なるSAバスに接続できることを理解すべきである。各SAバスは、ゾーンコントローラを、様々なセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、光センサ、占有センサなど)、アクチュエータ(例えば、ダンパアクチュエータ、バルブアクチュエータなど)および/または他のタイプの制御可能な機器(例えば、冷凍機、加熱機、ファン、ポンプなど)と接続することができる。
各ゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550は、異なる建物ゾーンのモニタおよび制御を行うように構成することができる。ゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550は、それらのSAバスを介して提供された入力および出力を使用して、様々な建物ゾーンのモニタおよび制御を行うことができる。例えば、ゾーンコントローラ536は、温度制御アルゴリズムにおけるフィードバックとして、SAバス566を介してネットワーク接続センサ538から受信された温度入力(例えば、建物ゾーンの測定温度)を使用することができる。ゾーンコントローラ524、530~532、536、548~550は、様々なタイプの制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御(ESC)アルゴリズム、比例・積分(PI)制御アルゴリズム、比例・積分・微分(PID)制御アルゴリズム、モデル予測制御アルゴリズム、フィードバック制御アルゴリズムなど)を使用して、建物10内または建物10の周りの可変状態または条件(例えば、温度、湿度、気流、照明など)を制御することができる。
分散型モデル予測制御システム
ここで図6を参照すると、いくつかの実施形態による、分散型モデル予測制御(MPC)システム600のブロック図が示されている。MPCシステム600は、時間ホライズンにわたる空気供給側システムおよび水供給側システムの機器に対する最適なセットポイントを決定するためにMPC技法を使用する。MPCシステム600は、図1A~5を参照して説明されるように、HVACシステム20、水供給側システム20、空気供給側システム50、HVACシステム100、水供給側システム120、空気供給側システム130、水供給側システム200、空気供給側システム300、BMS400および/またはBMS500と組み合わせて使用することができる。例えば、MPCシステム600は、空気供給側システム50および/または空気供給側システム300の空気供給側機器622~626に対する最適な温度セットポイントを決定することができる。同様に、MPCシステム600は、水供給側システム30および/または水供給側システム200の水供給側機器628に対する最適なセットポイントを決定することができる。
MPCは、システム入力(例えば、制御動作、セットポイントなど)をシステム状態およびシステム出力(例えば、測定値、プロセス変数など)と関連付けるために、制御されたシステムのモデルを使用する制御技法である。モデルは、最適化期間の間の各時間ステップにおいてコントローラが取った動作に基づいてシステム状態およびシステム出力を予測するために使用することができる。各時間ステップでは、MPCは、機器能力および安全性の限界などのプロセス制約(例えば、温度制約、機器切替制約など)に配慮しながら目的(例えば、追跡誤差を最小化すること、エネルギー費用を最小化することなど)を達成する制御動作のシーケンスを決定するために、システムモデルを使用してオンライン最適化問題を解く。シーケンスにおける第1の制御動作が実装され、新しい測定値が得られた後、次の時間ステップにおいて再び最適化問題が解かれる。
経済的なMPCでは、最適化問題の目的は、費用関数によって定義されるような総費用を最小化することである場合が多い。多くの研究では、MPCは、将来を見通すその能力や、事象が起こる前にそれを見越すその能力により、既存の制御システムより性能が優れていることが示されている。MPCは、パッシブ熱エネルギー貯蔵(TES)に対する建物の質量を使用することによって、ピーク時間からオフピーク時間へのエネルギー負荷のシフトを可能にする。また、負荷シフトをさらに促進するために、アクティブ熱エネルギー貯蔵(例えば、冷却水タンク、温水タンクなど)を使用することもできる。アクティブおよびパッシブ貯蔵システムの組合せを通じて、すべてが各建物内の快適性制限を維持しながら、低資源価格の時間に機器使用量を集中させることによって、エネルギー費用を減少することができる。
依然として図6を参照すると、分散型MPCシステム600は、MPC層610および規制層620を含むように示されている。MPC層610は、高次元モデル予測コントローラ608およびいくつかの低次元モデル予測コントローラ612~618を含むように示されている。コントローラ612、614、616は、低次元空気供給側モデル予測コントローラとして示されるのに対して、コントローラ618は、低次元水供給側モデル予測コントローラとして示されている。MPC層610は、最適な温度セットポイントおよび機器動作セットポイントを決定して規制層620の機器に提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、MPC層610は、BMSの空気供給側機器および水供給側機器に対するセットポイント最適化を提供するために、任意の既存のBMSに組み込むことができる。
規制層620は、空気供給側機器622~626および水供給側機器628を含むように示されている。空気供給側機器622~626は、図1A~1Bおよび図3を参照して説明されるような、空気供給側システム50、空気供給側システム130および/または空気供給側システム300の機器のいくつかまたはすべてを含み得る。水供給側機器628は、図1A~2を参照して説明されるような、水供給側システム30、水供給側システム120および/または水供給側システム200の機器のいくつかまたはすべてを含み得る。いくつかの実施形態では、規制層620は、図4~5を参照して説明されるような、BMS400および/またはBMS500の機器のいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、規制層620は、PIDコントローラ、操作可能な機器(例えば、冷凍機、ボイラ、空気処理ユニットなど)および/またはプロセス変数をセットポイントに制御するように構成された他のシステムもしくはデバイスを含み得る。
いくつかの実施形態では、分散型MPCシステム600は、負荷/料金予測器602を含む。負荷/料金予測器602は、負荷および料金予測(例えば、外乱予測、電気価格、デマンドチャージ価格および外気温度を含む)をMPC層610に提供することができる。負荷/料金予測器602は、気象サービス604から気象予報を受信するように示されている。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器602は、気象予報の関数として外乱予測を生成する。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器602は、規制層620からのフィードバックを使用して外乱予測を生成する。規制層620からのフィードバックは、様々なタイプの感覚入力(例えば、温度、流れ、湿度、エンタルピなど)または制御される建物もしくはキャンパスに関連する他のデータ(例えば、建物占有データ、建物電気負荷など)を含み得る。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器602は、最適化期間内の各時間ステップに対する予測外乱値を含む外乱予測を生成する。
いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器602は、外乱予測を生成するために、負荷データ履歴から訓練された決定論的モデルに確率論的モデルを加えたものを使用する。負荷/料金予測器602は、様々な予測方法(例えば、決定論的部分に対する線形回帰および確率論的部分に対する自己回帰モデル)のいずれかを使用して外乱予測を生成することができる。負荷/料金予測器602は、建物またはキャンパスに対して1つ以上の異なるタイプの外乱を予測することができる。例えば、負荷/料金予測器602は、建物内の空気と建物の壁を通じる外気との間の熱伝達から生じる熱負荷を予測することができる。負荷/料金予測器602は、建物内の内部熱生成(例えば、建物内の電子機器によって生成された熱、建物占有物によって生成された熱)から生じる熱負荷を予測することができる。いくつかの実施形態では、負荷/料金予測器602は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる「Building Management System for Forecasting Time Series Values of Building Variables」と称する2015年5月20日に出願された米国特許出願第14/717,593号明細書で説明される技法を使用して、負荷/料金予測を行う。
負荷/料金予測器602は、公益事業606から公共料金を受信するように示されている。公共料金は、最適化期間の各時間ステップにおいて公益事業606によって提供された単位資源(例えば、電気、天然ガス、水など)当たりの費用または価格を示し得る。いくつかの実施形態では、公共料金は、時間変化料金である。例えば、電気の価格は、ある時間または日にち(例えば、需要が高い期間の間)には高く、他の時間または日にち(例えば、需要が低い期間の間)には低いものであり得る。公共料金は、様々な期間および各期間の間の単位資源当たりの費用を定義することができる。公共料金は、公益事業606から受信された実際の料金または負荷/料金予測器602によって推定された予測公共料金であり得る。
いくつかの実施形態では、公共料金は、公益事業606によって提供された1つ以上の資源に対するデマンドチャージを含む。デマンドチャージは、デマンドチャージ期間の間の特定の資源の最大使用量(例えば、最大エネルギー消費量)に基づいて公益事業606によって課された別個の費用を定義することができる。公共料金は、様々なデマンドチャージ期間および各デマンドチャージ期間と関連付けられた1つ以上のデマンドチャージを定義することができる。いくつかの例では、デマンドチャージ期間は、互いにおよび/または最適化期間と部分的にまたは完全に重複し得る。有利には、MPC層610は、高次元モデル予測コントローラ608によって実行された高次元最適化プロセスにおけるデマンドチャージを説明することができる。公益事業606は、時間変化(例えば、1時間ごと)価格、最大サービスレベル(例えば、物理的なインフラによってまたは契約によって認められた最大消費レート)、そして、電気の事例では、デマンドチャージまたはある期間内のピーク消費レートに対する料金によって定義することができる。負荷/料金予測器602は、予測負荷および公共料金をメモリに格納することならびに/あるいは予測負荷および公共料金を高次元MPC608に提供することができる。
MPC層610は、規制層620から測定値を受信したり、規制層620にセットポイントを提供したりすることができる。MPC層610は、様々な決定変数の最適値(例えば、ゾーン温度セットポイント、機器オン/オフ決定およびTES充電/放電率を含む)を生成することができる。MPC層610は、ゾーン温度から冷却/加熱デューティへのモデル、冷却/加熱デューティから温度セットポイントへのモデル、機器モデルおよびアクティブTESモデルなどのシステムモデルを使用して、決定変数の最適値を決定することができる。MPC層610は、いくつかの制約を受けることを条件として、最適化プロセスを実行することによって、決定変数の最適値を決定することができる。制約は、ゾーン空気温度の快適性限界、機器能力制約、TESタンクサイズおよび規制層620の機器の変化率限界を含み得る。
上記で論じられるように、決定変数の最適値を決定するために単一のMPC問題を解くことは、大規模なアプリケーションでは難しい可能性がある。例えば、空気供給側システム50は、数千の離散ゾーンを含み得、水供給側システム30は、数千の独特のHVACデバイスを含み得る。離散決定(例えば、機器をオン/オフにする)は、混合整数最適化問題をもたらし得、それにより、複雑性がさらに増す。MPC問題の困難性およびコンピュータ処理の複雑性により、MPC層610は、MPC問題全体をより小さく且つより扱い易い最適化問題に分解することができる。
図6に示されるように、分散型MPCシステム600は、MPC問題全体を高次元最適化問題および低次元最適化問題に分解することができる。高次元問題は、各低次元空気供給側サブシステム632~636に対する負荷プロファイルおよび水供給側システム30に対する需要プロファイルを決定するために、高次元コントローラ608によって解くことができる。いくつかの実施形態では、高次元コントローラ608は、コンピュータ処理の複雑性の低減のために、各空気供給側サブシステム632~636に対してアクティブTESモデルおよび集計低次元モデルを使用する。高次元コントローラ608は、最適化期間にわたるMPCシステム600の総動作費用を最適化する(例えば、最小化する)負荷プロファイルを決定することができる。各負荷プロファイルは、最適化期間の各時間ステップに対する負荷値を含み得る。低次元空気供給側コントローラ612~616は、最適化期間の各時間ステップに対する各空気供給側サブシステム632~636に対する最大許容負荷値を定義する制約として負荷プロファイルを使用することができる。高次元コントローラ608は、低次元空気供給側コントローラ612~616の各々に負荷プロファイルを提供することができる。高次元コントローラ608によって実行される高次元最適化は、図7を参照してさらに詳細に説明する。
低次元最適化問題は、低次元水供給側最適化問題および1つ以上の低次元空気供給側最適化問題にさらに分解することができる。各低次元空気供給側問題は、各空気供給側サブシステム632~636の空気供給側機器622~626に対するゾーン温度セットポイントを決定するために、低次元空気供給側コントローラ612~616のうちの1つによって解くことができる。各低次元空気供給側コントローラ612~616は、定義された温度制限内にゾーン温度を維持しながら、高次元コントローラ608によって提供された負荷値を超えることなく、対応する空気供給側サブシステム632~636のエネルギー消費量を最適化する(例えば、最小化する)ゾーン温度セットポイントを決定することができる。あるいは、各低次元空気供給側コントローラ612~616は、高次元最適化問題から平均建物温度(例えば、予測建物温度状態)を追跡する温度セットポイントを決定することができる。低次元コントローラ612~616によって実行される低次元最適化は、図8を参照してさらに詳細に説明する。
低次元水供給側問題は、低次元水供給側コントローラ618によって解くことができる。いくつかの実施形態では、低次元水供給側問題は、混合整数線形計画である。低次元水供給側コントローラ618は、高次元コントローラ608からの需要プロファイルを満たしながら動作費用を最小化する水供給側機器628に対する最適なセットポイントを決定することができる。低次元水供給側コントローラ618によって最適化される決定変数は、例えば、機器オン/オフ状態、冷凍機の熱負荷、ポンプの流速、他の補助水供給側機器に対するセットポイントおよびTES充電/放電率を含み得る。低次元水供給側コントローラ618は、最適化期間の各時間ステップにおいて水供給側システム30によって満たすべき総需要を指定する入力として、高次元コントローラ608からの需要プロファイルを使用することができる。
いくつかの実施形態では、低次元水供給側コントローラ628は、低次元水供給側最適化問題を第1の水供給側最適化問題および第2の水供給側最適化問題に分解する。第1の水供給側最適化問題は、水供給側システムの複数のサブプラント(例えば、加熱機サブプラント202、熱回収冷凍機サブプラント204、冷凍機サブプラント206、冷却塔サブプラント208、温熱TESサブプラント210および冷熱TESサブプラント212)にわたって高次元コントローラ608によって指定された需要を割り当てることができる。第2の水供給側最適化問題は、水供給側機器628に対する最適な機器オン/オフ状態および機器セットポイントを決定するために、各サブプラントに対する混合整数最適化問題に分解することができる。低次元水供給側コントローラ628によって使用することができる水供給側最適化技法の例は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる2015年2月27日に出願された米国特許出願第14/634,609号明細書で詳細に説明されている。
図6に示されるように、各低次元空気供給側モデル予測コントローラ612~616は、空気供給側システム50全体のサブシステム632~636を制御することができる。各低次元空気供給側コントローラ612~616は、対応する空気供給側サブシステム632~636の空気供給側機器622~626に対する最適な温度セットポイントを決定するために、別個の空気供給側最適化プロセスを実行することができる。各空気供給側サブシステム632~636(例えば、各建物)は、複数のAHUを含み得、その各々は、空気を複数の建物ゾーンに送るように構成することができる。それに従って、各空気供給側システム632~636は、多くの建物ゾーンを含み得る。
いくつかの実施形態では、高次元コントローラ608は、各空気供給側サブシステム632~636の集計モデルを使用し、熱エネルギー負荷を各空気供給側サブシステム632~636に割り当てる。低次元空気供給側コントローラ612~626は、対応する空気供給側サブシステムの各建物ゾーンに対する最適な温度セットポイントを決定するために、低次元最適化プロセス中に、より詳細なゾーン・レベルモデルを使用することができる。別個の空気供給側サブシステム632~636への空気供給側システム50の分解は、コンピュータ処理の性能を改善し、低次元MPC問題を解くために必要な時間の量を実質的に減少することができる。例えば、低次元MPC問題はすべて、数分以内に解くことができる。
いくつかの実施形態では、各空気供給側サブシステム632~636は、別個の建物を表す。空気供給側サブシステム632~636間の有意な結合(例えば、サブシステム632~636間の熱交換)は性能に影響を及ぼし得るが、その理由は、低次元コントローラ612~616はそれらの解を調整する必要がないためである。サブシステム632~636間の結合がないことを保証するために空気供給側システム50を分解するための方法の1つは、建物ごとに分解することであるが、その理由は、別個の建物は互いに熱交換を行わないためである。この理由のため、各空気供給側サブシステム632~636が別個の建物を表すように空気供給側サブシステム632~636を選択することが望ましい場合がある。他の実施形態では、各空気供給側サブシステム632~636は、単一の建物ゾーン、建物内のゾーンの集合体または複数の建物でさえも表し得る。
MPCシステム600では、高次元モデル予測コントローラ608は、各空気供給側サブシステム632~636(例えば、各建物)に割り当てるための熱エネルギー負荷と、水供給側システム30に対する需要プロファイルとを決定する。各空気供給側サブシステム632~636は、その空気供給側サブシステム632~636の各ゾーン(例えば、建物の各ゾーン)に対する温度セットポイントを演算する別個の低次元空気供給側コントローラ612~616を含み得る。各低次元空気供給側サブシステム632~636が別個の建物を表す場合は、低次元空気供給側問題は、別個の建物間の熱伝達は存在しないため、分散方式で解くことができる。低次元空気供給側問題は、コンピュータ処理の複雑性を増大することなく、大規模な産業およびキャンパス規模の実装形態を処理するために容易に拡張することができる。
分散型MPCシステム600は、代替の制御戦略にわたっていくつかの利点を提供する。例えば、高次元コントローラ608は、各低次元コントローラ612~616に提供された負荷プロファイルを介して、低次元空気供給側サブシステム632~636の動作を調節することができる。デマンドチャージを高次元目的関数に含めることにより、高次元コントローラ608は、低次元空気供給側サブシステム632~636の動作をベテランである負荷プロファイルを生成することができる。言い換えれば、高次元コントローラ608は、低次元空気供給側サブシステム632~636がすべて同時に電力を消費しないことを保証する負荷プロファイルを生成することができる。これにより、高次元コントローラ608は、低次元空気供給側コントローラ612~616間の通信を必要とすることなく、低次元空気供給側サブシステム632~636の動作を調節し、デマンドチャージを説明することができる。また、すべての空気供給側サブシステム632~636に対する単一の水供給側システム30の存在によって生じる結合も、高次元コントローラ608によって対処される。従って、低次元制御問題は、低次元コントローラ612~616間の反復および通信が必要とされないように、完全に分離される。
また、MPC層610と規制層620との間のデータ通信は、大いに低減することができる。例えば、MPC層610と規制層620との間のデータ通信は、図6に示されるように、測定値およびセットポイントに制限され得る。これにより、MPCシステム600を任意の既存のBMSと統合することができる。高次元コントローラ608は、高次元最適化の間のコンピュータ処理の複雑性を低減するために、各空気供給側サブシステム632~636および水供給側システム30の集計モデルを使用することができる。各低次元空気供給側コントローラ612~616は、対応する空気供給側サブシステム632~636に対する集計外乱推定、集計建物温度および集計システムパラメータ(例えば、熱キャパシタンス、熱伝達係数など)を高次元コントローラ608に提供することができる。
分散型MPCシステム600は、例えば、冷凍機プラント、空気処理ユニット、屋上ユニット、可変冷媒流量システム、空気供給側システム、水供給側システム、建物管理システム、および/または、電力消費量もしくは熱エネルギー負荷を異なるサブシステムに割り当てることができる他のタイプのシステムを含む、様々な異なるシステムを制御するために使用することができる。ほとんどの建物温度規制方法は、水供給側機器628の詳細モデルまたは整数決定変数を考慮せず、それにより、エネルギー費用計算の忠実性が減少する。しかし、MPCシステム600は、ヒューリスティクスに頼るというよりむしろ、機器をいつオンおよびオフにするかを決定するために、水供給側最適化問題において整数変数を含み得る。アクティブTESもまた、水供給側最適化問題において使用することができ、それにより、負荷シフトおよび費用節約の最大の可能性が可能になる。しかし、MPCシステム600は、依然として、アクティブTESが利用可能か否かにかかわらず、一般的に適用することができる。
高次元モデル予測コントローラ
ここで図7を参照すると、いくつかの実施形態による、高次元モデル予測コントローラ(MPC)608をさらに詳細に示すブロック図が示されている。高次元MPC608は、通信インタフェース702および処理回路704が示されている。通信インタフェース702は、様々なシステム、デバイスまたはネットワークとのデータ通信を実施するための有線または無線インタフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、トランシーバ、ワイヤ端子など)を含み得る。例えば、通信インタフェース702は、イーサネットベースの通信ネットワークを介してデータを送信および受信するためのイーサネットカードおよびポートならびに/あるいは無線通信ネットワークを介して通信するためのWiFiトランシーバを含み得る。通信インタフェース702は、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワーク(例えば、インターネット、建物WANなど)を介して通信するように構成することができ、様々な通信プロトコル(例えば、BACnet、IP、LONなど)を使用することができる。
通信インタフェース702は、高次元MPC608と様々な外部のシステムまたはデバイス(例えば、気象サービス604、公益事業606、低次元コントローラ612~618、BMS機器など)との間の電子データ通信を容易にするように構成されたネットワークインタフェースであり得る。例えば、高次元MPC608は、気象サービス604から気象予報を受信すること、公益事業606から公共料金を受信することおよび/または負荷/料金予測器602から負荷および料金予測を受信することができる。高次元MPC608は、制御される建物またはキャンパスの1つ以上の測定状態(例えば、温度、湿度、電気負荷など)および水供給側システム30の1つ以上の状態(例えば、機器ステータス、電力消費量、機器利用可能性など)を示す測定値をBMSから受信することができる。いくつかの実施形態では、高次元MPC608は、TESタンクの現在の充填レベルを示すTES状態の測定値を水供給側システム30から受信する。
高次元MPC608は、各低次元空気供給側コントローラ612~616から建物外乱推定を受信することができる。建物外乱推定は、各空気供給側サブシステム632~636に対して推定された熱エネルギー負荷を示し得る。高次元MPC608は、集計システム曲線、集計建物パラメータおよび/または性能係数を各低次元コントローラ612~618から受信することができる。高次元MPC608は、通信インタフェース702で受信された情報を使用して、各低次元空気供給側サブシステム632~636に対する負荷プロファイルおよび水供給側システム30に対する需要プロファイルを生成することができる。高次元MPC608は、負荷プロファイルおよび需要プロファイルを低次元コントローラ612~618に提供することができる。
処理回路704は、プロセッサ706およびメモリ708を含むように示されている。プロセッサ706は、汎用もしくは専用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1群の処理コンポーネントまたは他の適切な処理コンポーネントであり得る。プロセッサ706は、メモリ708に格納されるかまたは他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワーク記憶装置、リモートサーバなど)から受信されるコンピュータコードまたは命令を実行するように構成することができる。
メモリ708は、本開示で説明される様々なプロセスの完了および/または促進のためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上のデバイス(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、記憶装置など)を含み得る。メモリ708は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブストレージ、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光メモリ、あるいは、ソフトウェアオブジェクトおよび/またはコンピュータ命令を格納するための他の任意の適切なメモリを含み得る。メモリ708は、本開示で説明される様々な活動および情報構造をサポートするためのデータベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素または他の任意のタイプの情報構造を含み得る。メモリ708は、処理回路704を介してプロセッサ706に通信可能に接続することができ、本明細書で説明される1つ以上のプロセスを実行する(例えば、プロセッサ706によって)ためのコンピュータコードを含み得る。プロセッサ706がメモリ708に格納された命令を実行する際、プロセッサ706は、一般に、そのような活動を完了するように高次元MPC608(より具体的には、処理回路704)を構成する。
依然として図7を参照すると、高次元MPC608は、建物温度モデラ714を含むように示されている。建物温度モデラ714は、各空気供給側サブシステム632~636に対する温度モデルを生成することができる。建物温度モデラ714によって生成された温度モデルは、各空気供給側サブシステム632~636が別個の建物を表すという想定の下で、建物温度モデルと呼ばれる。しかし、建物温度モデラ714によって生成された温度モデルは、空気供給側サブシステム632~636が他のタイプの空間を表す場合は、他のタイプのサブシステムに対する温度モデルであり得る。建物温度モデラ714は、各建物に対する温度モデルを生成することができる。図6では3つの空気供給側サブシステム632~636しか示されていないが、いかなる数の建物および空気供給側サブシステム632~636も存在し得ることを理解すべきである。一般に、建物温度モデラ714は、nb個の建物温度モデルを生成することができ、nbは、建物および/または空気供給側サブシステム632~636の総数である。
いくつかの実施形態では、建物温度モデラ714は、建物熱伝達モデルを使用して各建物の温度をモデル化する。単一の建物ゾーンの暖房または冷房の動力学は、エネルギーバランス
によって説明され、式中、Cは、建物ゾーンの熱キャパシタンスであり、Hは、建物ゾーンに対する周囲の熱伝達係数であり、Tは、建物ゾーンの温度であり、T
aは、建物ゾーン外の周囲温度(例えば、外気温度)であり、
は、建物ゾーンに適用された冷房の量(すなわち、冷却負荷)であり、
は、建物ゾーンによって経験された外部負荷、放射線または他の外乱である。以前の方程式では、
は、HVACシステムによって建物ゾーンから出る熱伝達(すなわち、冷却)を表し、従って、負号を有する。しかし、冷房というよりむしろ、暖房が建物ゾーンに適用される場合は、
の符号は、正号に切り替えることができ、その結果、
は、HVACシステムによって建物ゾーンに適用された暖房(すなわち、加熱負荷)の量を表す。
以前の方程式は、建物ゾーンのすべての質量および空気プロパティを組み合わせて単一のゾーン温度にする。建物温度モデラ714によって使用することができる他の熱伝達モデルは、以下の空気および質量ゾーンモデルを含み、
式中、C
zおよびT
zは、建物ゾーンの空気の熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、周囲の空気温度であり、H
azは、建物ゾーンの空気と建物ゾーン外の周囲の空気(例えば、建物ゾーンの外部壁を通じる)との間の熱伝達係数であり、C
mおよびT
mは、建物ゾーン内の非空気質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
mzは、建物ゾーンの空気と非空気質量との間の熱伝達係数である。
以前の方程式は、建物ゾーンのすべての質量プロパティを組み合わせて単一のゾーン質量にする。建物温度モデラ714によって使用することができる他の熱伝達モデルは、以下の空気、浅部質量(shallow mass)および深部質量(deep mass)ゾーンモデルを含み、
C
zおよびT
zは、建物ゾーンの空気の熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、周囲の空気温度であり、H
azは、建物ゾーンの空気と建物ゾーン外の周囲の空気(例えば、建物ゾーンの外部壁を通じる)との間の熱伝達係数であり、C
sおよびT
sは、建物ゾーン内の浅部質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
szは、建物ゾーンの空気と浅部質量との間の熱伝達係数であり、C
dおよびT
dは、建物ゾーン内の深部質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
dsは、浅部質量と深部質量との間の熱伝達係数である。
いくつかの実施形態では、建物温度モデラ714は、以下の建物温度モデルを使用して各建物の温度をモデル化し、
式中、C
bおよびT
bは、建物インデックスbによって指定された建物の熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、建物b外の周囲の空気温度(例えば、外気温度)であり、H
bは、建物bと周囲の空気との間の熱伝達係数であり、
は、MPCシステム600によって建物に適用された冷房の量(すなわち、建物から除去された熱の量)であり、
は、建物bによって経験された外部負荷、放射線または外乱である。冷房というよりむしろ、暖房が建物に提供される場合は、
の符号は、負号から正号に切り替えることができる。
建物温度モデラ714は、低次元空気供給側コントローラ612~616から受信された建物外乱推定を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各建物bに対する外部外乱
の適切な値を特定することができる。いくつかの実施形態では、建物温度モデラ714は、気象サービス604からの気象予報ならびに/あるいは負荷/料金予測器602によって提供された負荷および料金予測を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各建物bに対する周囲の空気温度T
aおよび/または外部外乱
の適切な値を決定する。C
bおよびH
bの値は、建物bの低次元空気供給側コントローラから受信された、ユーザから受信された、メモリ708から回収されたまたは建物温度モデラ714に別の方法で提供された建物bのパラメータとして指定することができる。建物温度モデラ714は、各建物bに対して建物温度モデルを生成することができ、b=1…n
bであり、n
bは、建物の総数である。
依然として図7を参照すると、高次元MPC608は、熱エネルギー貯蔵(TES)モデラ724を含むように示されている。TESモデラ724は、TESタンク42、40によって提供されたアクティブ熱エネルギー貯蔵に対するモデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、TESモデラ724は、以下の方程式を使用してアクティブ熱エネルギー貯蔵をモデル化し、
式中、sは、所定のTESタンクに貯蔵された熱エネルギーの量(例えば、加熱または冷却潜在量)であり、σは、TESタンクの減衰定数であり、
は、熱エネルギーがTESタンクに貯蔵されるレートである。TESモデラ724は、各TESタンクに対するアクティブTESモデルを生成することができる。
高次元MPC608は、水供給側需要モデラ722を含むように示されている。水供給側需要モデラ722は、最適化期間の各時間ステップにおける各建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷
および熱エネルギー貯蔵量
の関数として水供給側システム30における需要を表すモデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、水供給側需要モデラ722は、以下の方程式を使用して水供給側需要をモデル化し、
式中、
は、時間ステップkにおける水供給側需要(例えば、時間ステップkにおける水供給側システム30の熱エネルギー生産)であり、
は、時間ステップkにおける建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷であり、
は、時間ステップkの間にTESタンクに貯蔵された熱エネルギーの量である。以前の方程式は、水供給側システム30における総需要
が各建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷
とTESタンクに貯蔵された熱エネルギー
との総和であることを示す。この方程式は、各時間ステップkにおける建物負荷および熱エネルギー貯蔵をカバーするのに十分な熱エネルギーを水供給側システム30が生成することを保証するために、高次元MPC608によって、エネルギーバランス制約として使用することができる。
高次元MPC608は、制約モデラ710を含むように示されている。制約モデラ710は、最適化制約を生成し、高次元オプティマイザ712によって実行される最適化手順に課すことができる。制約モデラ710によって課される制約は、例えば、機器能力制約および建物温度制約を含み得る。いくつかの実施形態では、制約モデラ710は、各時間ステップkにおける水供給側需要
が水供給側システム30の最大能力
以下であることを保証するために、以下の制約
を課す。同様に、制約モデラ710は、任意の時間ステップkにおけるTESタンクに貯蔵された熱エネルギーの量がTESタンクの最小可能レベル(すなわち、0)とTESタンクの最大可能レベル(すなわち、s
max)との間にあることを保証するために、
以下の制約
0≦s
k≦s
max
を課すことができる。
いくつかの実施形態では、制約モデラ710は、建物温度Tbに対する制約を課す。例えば、制約モデラ710は、以下の方程式に示されるように、建物温度Tbを最小温度Tminと最大温度Tmaxとの間に制約することができ、
Tmin≦Tb≦Tmax
式中、TminおよびTmaxの値は、建物の温度セットポイントに基づいて調整することができる。いくつかの実施形態では、制約モデラ710は、建物の低次元空気供給側コントローラおよび/またはBMSから受信された情報に基づいてTminおよびTmaxの値を自動的に調整する。例えば、制約モデラ710は、建物に対する温度セットポイントスケジュールおよび/または占有スケジュールを使用して、各時間ステップkに対するTminおよびTmaxの値を自動的に調整することができる。これにより、制約モデラ710は、建物温度Tbが時間に応じた温度制限(Tmin~Tmax)内に維持されるように、建物に対する時間変動セットポイント温度範囲に基づいて温度制限を使用することができる。
依然として図7を参照すると、高次元MPC608は、エネルギー費用モデラ720およびデマンドチャージモデラ718を含むように示されている。エネルギー費用モデラ720は、MPCシステム600によって消費されたエネルギーの費用を表すエネルギー費用モデルを生成することができる。エネルギーの費用は、最適化期間の間にMPCシステム600によって消費された単位エネルギー資源(例えば、電気、水、天然ガスなど)当たりの費用と、最大電力消費量に基づくデマンドチャージの両方を含み得る。エネルギー費用モデルのデマンドチャージコンポーネントは、デマンドチャージモデラ718によってモデル化し、デマンドチャージ制約を介して実施することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー費用モデルは、水供給側システム30によって消費されたエネルギー資源のみを説明する。他の実施形態では、エネルギー費用モデルは、空気供給側システム50の電力消費量も説明し、空気供給側システム50の電力消費量は、空気供給側電力消費量モデラ716によってモデル化することができる。両方のシナリオの例は、以下で説明する。
例1:空気供給側電力消費量を含まないエネルギー費用モデル
いくつかの実施形態では、エネルギー費用モデラ720は、空気供給側電力消費量を含まない水供給側システム30のエネルギー消費量を説明するエネルギー費用モデルを生成する。例えば、エネルギー費用モデラ720は、以下の方程式を使用して、最適化期間の間の総エネルギー費用をモデル化することができる。
エネルギー費用モデルの第1の項は、最適化期間の各時間ステップkの間に消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。いくつかの実施形態では、c
kは、時間ステップkにおける水供給側総需要
を満たすために時間ステップkにおいて消費された単位エネルギー当たりの費用であり、パラメータη
totは、空気供給側/水供給側システムの集計性能の逆係数であり(例えば、0.1≦η
tot≦0.25)、Δは、時間ステップkの持続時間である。それに従って、
の項は、水供給側需要
を満たすために時間ステップkの間に消費されたエネルギーの総量(例えば、kWh)を表す。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)を乗じることにより、時間ステップkの間に消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。エネルギー費用モデルは、最適化期間にわたるエネルギー消費量の総費用を決定するために、各時間ステップkの間のエネルギー費用の総和を含み得る。
エネルギー費用モデルの第2の項は、デマンドチャージを説明する。いくつかの実施形態では、c
peakは、デマンドチャージ料金(例えば、$/kW)であり、
は、デマンドチャージ期間の間のピーク水供給側需要であり、例えば、
の最大であり、η
totは、空気供給側/水供給側システムの集計性能の逆係数である。それに従って、
の項は、ピーク水供給側需要
を満たすためのピーク電力消費量を表す。デマンドチャージ料金c
peakを乗じることにより、デマンドチャージの総費用(例えば、$)が得られる。
いくつかの実施形態では、デマンドチャージモデラ718は、
が適切な値を有することを保証するために、デマンドチャージ制約を生成する。デマンドチャージ期間が最適化期間(例えば、時間ステップk=0とk=N-1との間)内に完全に含まれる場合は、
の適切な値は、単に、最適化期間の間の
の最大である。デマンドチャージモデラ718は、ピーク水供給側需要
が各時間ステップにおいて常に水供給側需要
以上であることを保証するために、以下のデマンドチャージ制約を実装することができる。
これにより、ピーク水供給側需要
は最適化期間の間の最大水供給側需要と少なくとも同じ程度であることが強いられる。
最適化期間の前にデマンドチャージ期間が始まる場合は、最適化期間が始まる前のデマンドチャージ期間の間に
の最大値が起こり得る。デマンドチャージモデラ718は、現在の最適化期間が始まる前に最大水供給側需要が起こった場合であっても、ピーク水供給側需要
が常に同じデマンドチャージ期間の間に起こった最大水供給側需要
以上であることを保証するために、以下のデマンドチャージ制約
を実装することができる。いくつかの実施形態では、デマンドチャージモデラ718は、電力公益事業によって課されるデマンドチャージをエネルギー費用モデルが正確に表すことを保証するために新しい最大水供給側需要が設定される度に
を更新する。
高次元オプティマイザ712は、エネルギー費用モデル、デマンドチャージモデル、建物温度モデル、熱エネルギー貯蔵モデル、水供給側需要モデルおよび最適化制約を使用して最適化問題を公式化することができる。いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、建物温度制約および本明細書で説明される高次元モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、水供給側システム30によって消費されるエネルギーの総費用(すなわち、エネルギー費用およびデマンドチャージ)を最小化しようと努める。例えば、高次元オプティマイザ712は、
として高次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、高次元最適化問題での使用のために、上記で識別されたモデルおよび/または制約のうちの1つ以上を状態・空間形態に変換する。例えば、高次元オプティマイザ712は、先行方程式を以下の形態の離散化状態・空間モデルに変換することができ、
x
k+1=Ax
k+Bu
k+B
dd
k
y
k=Cx
k+Du
k
式中、x
kは、時間ステップkにおけるシステム状態のベクトルであり、u
kは、時間ステップkにおけるシステム入力のベクトルであり、y
kは、時間ステップkにおける測定値またはシステム出力のベクトルであり、d
kは、時間ステップkにおける外乱のベクトルであり、x
k+1は、時間k+1におけるシステム状態(予測されたもの)のベクトルである。表1は、これらのベクトルの各々に含めることができる変数を示す。
表1に示されるように、システム状態ベクトルxは、建物温度T
bおよびTES貯蔵レベルsを含む。いくつかの実施形態では、システム状態ベクトルxは、システム状態ベクトルxの変数の総数nがn
b+1と等しくなるように、n
b個の建物の各々に対する建物温度T
bおよびTES貯蔵レベルsを含む。入力ベクトルuは、各建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷
と、熱エネルギー貯蔵に割り当てられた熱エネルギー負荷
とを含み得る。いくつかの実施形態では、入力ベクトルuは、入力ベクトルuの変数の総数mがn
b+1と等しくなるように、n
b個の建物の各々に対する熱エネルギー負荷
およびTES負荷
を含む。外乱ベクトルdは、各建物に対する周囲の空気温度T
aおよび推定外乱
を含み得る。いくつかの実施形態では、外乱ベクトルdは、外乱ベクトルdの変数の総数n
dがn
b+1と等しくなるように、n
b個の建物の各々に対する推定外乱
および単一の周囲の空気温度T
aを含む。
いくつかの実施形態では、測定値ベクトルyは、システム状態ベクトルxと同じである。これは、すべてのシステム状態が直接測定され(すなわち、y
k=x
k)、状態・空間モデルの行列CおよびDの値がC=IおよびD=0であることを示す。他の実施形態では、システム状態xは、測定値yから構築または予測することができる。例えば、高次元MPC608は、カルマンフィルタまたは他の予測技法を使用して、測定値yからシステム状態xを構築することができる。それに従って、システム状態xは、
および
と置き換えることができ、ハット記号は、そのような状態が予測されることを示す。状態・空間表現における行列A、B、CおよびDの値は、システム識別技法を使用して識別することができる。高次元MPC608によって使用することができる状態予測およびシステム識別技法の例は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる「System Identification and Model Development」と称する2013年3月13日に出願された米国特許第9,235,657号明細書で詳細に説明されている。
例2:空気供給側電力消費量を含むエネルギー費用モデル
いくつかの実施形態では、エネルギー費用モデラ720は、水供給側システム30のエネルギー消費量および空気供給側システム50のエネルギー消費量の両方を説明するエネルギー費用モデルを生成する。例えば、エネルギー費用モデルは、割り当てられた熱エネルギー負荷
を建物に送るために、ファンおよび他のタイプの空気供給側機器622によって消費された電力
を説明することができる。いくつかの実施形態では、各空気供給側サブシステム632~636の電力消費量
は、その空気供給側サブシステムに割り当てられた熱エネルギー負荷
の関数である。
空気供給側電力消費量モデラ716は、空気供給側電力消費量
を熱エネルギー負荷
と関係付ける空気供給側電力消費量モデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、空気供給側電力消費量モデラ716は、以下の方程式を使用して、空気供給側電力消費量をモデル化する。
式中、
は、熱エネルギー負荷
を送るために建物bの空気供給側機器622によって消費された電力の量である。変換係数η
airは、空気供給側機器622の性能の係数の関数(例えば、性能の逆係数)であり得る。いくつかの実施形態では、η
airは定数であり、それは、空気供給側電力消費量
と熱エネルギー負荷
との関係が線形であることを示す。他の実施形態では、η
airは、動作データを使用して負荷および他のパラメータの非線型関数として空気供給側電力消費量モデラ716によって計算することができる。
いくつかの実施形態では、空気供給側電力消費量モデラ716は、AHUのタイプ、時刻、快適性限界、周囲条件、冷却水供給温度、冷却水供給流速および/または空気供給側システム50もしくは空気供給側サブシステム632~636のいずれかを特徴付ける他のパラメータなどの様々な空気供給側システムパラメータの関数として変換係数ηairを計算する。例えば、空気供給側電力消費量モデラ716は、空気供給側機器622および/または低次元空気供給側コントローラ612から動作データを収集し、動作データを使用してηairの適切な値を決定することができる。
いくつかの実施形態では、空気供給側電力消費量モデラ716は、熱エネルギー負荷
および個々のファン電力モデルの関数としてη
airを計算する。例えば、20℃の空気は、以下の方程式に示されるように、密度ρ
airおよび熱容量C
p,airを有し得る。
気流によって提供される熱エネルギー負荷
は、以下のモデルを使用して表すことができる。
式中、
は、建物ゾーンへの給気の体積流量であり、T
roomは、建物ゾーンの温度であり、T
supplyは、給気の温度である。給気温度T
supplyはおよそ55°Fであり、部屋の気温T
roomはおよそ72°Fであると想定すると、空気供給側電力消費量モデラ716は、以下のように、単位気流量当たりの熱エネルギー負荷(例えば、空気の冷却能力)を計算することができる。
空気供給側電力消費量モデラ714は、冷却能力のこの値
および典型的な空気供給側ファンの単位体積当たりの推定電力消費量を使用して、η
airの値を推定することができる。例えば、典型的なHVACファンは、1000立方フィート/分(CFM)~1500 CFMの気流を提供するために、およそ1馬力(hp)を消費する。これらの値は、以下のように、メトリック値に変換することができる。
これらの値を空気供給側電力消費量モデルに代入すると、
が得られ、これは、各空気供給側サブシステム622~626の空気供給側電力消費量
は空気供給側サブシステムによって送られる熱エネルギー負荷
のおよそ10%であることを示す。
空気供給側電力消費量
を
としてモデル化できることを考慮すると、エネルギー費用モデラ720は、以下の方程式を使用して、最適化期間の間の総エネルギー費用をモデル化することができる。
エネルギー費用モデルの第1の部分は、最適化期間の各時間ステップkの間に水供給側システム30によって消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。いくつかの実施形態では、c
kは、時間ステップkにおいて消費された単位エネルギー当たりの費用であり、Δは、時間ステップkの持続時間であり、η
HVACは、水供給側システム30の性能の逆係数である(例えば、η
HVAC≒0.2)。
の項は、水供給側需要
を満たすための時間ステップkの間の水供給側システム30による電力消費量(例えば、kW)を表す。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)および持続時間Δ(例えば、時間)を乗じることにより、時間ステップkの間に水供給側システム30によって消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。エネルギー費用モデルの第1の部分は、最適化期間の間に水供給側システム30によって消費された総エネルギーを決定するために、最適化期間のすべての時間ステップk=0…N-1にわたる総和を求めることができる。
エネルギー費用モデルの第2の部分は、最適化期間の各時間ステップkの間に各空気供給側サブシステム(例えば、各建物b)によって消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。上記で説明されるように、η
airは、空気供給側サブシステムの性能の逆係数であり(例えば、η
air≒0.1)、
は、時間ステップkにおいて建物bに対する空気供給側サブシステムによって送られた熱エネルギー負荷である。
の項は、建物bに対する空気供給側機器の電力消費量
を表す。エネルギー費用モデルの第2の部分は、最適化期間の間のすべての空気供給側サブシステムの総電力消費量を決定するために、すべての建物b=1…n
bにわたるおよびすべての時間ステップk=0…N-1にわたる総和を求めることができる。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)および持続時間Δ(例えば、時間)を乗じることにより、最適化期間の間に空気供給側サブシステムによって消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。
エネルギー費用モデルの第3の部分は、デマンドチャージを説明する。いくつかの実施形態では、c
peakは、デマンドチャージ料金(例えば、$/kW)であり、
は、適用可能なデマンドチャージ期間の間のピーク集計空気供給側および水供給側電力消費量である。デマンドチャージ料金c
peakを乗じることにより、デマンドチャージの総費用(例えば、$)が得られる。いくつかの実施形態では、デマンドチャージモデラ718は、
が適切な値を有することを保証するために、デマンドチャージ制約を生成する。デマンドチャージ期間が最適化期間(例えば、時間ステップk=0とk=N-1との間)内に完全に含まれる場合は、
の適切な値は、最適化期間の間の任意の時間ステップkにおける組み合わされた水供給側/空気供給側電力消費量の最大である。デマンドチャージモデラ718は、ピーク電力消費量
が各時間ステップにおいて常に水供給側電力消費量
および空気供給側電力消費量
の総和以上であることを保証するために、以下のデマンドチャージ制約を実装することができる。
これにより、ピーク電力消費量
は最適化期間の間の最大の組み合わされた空気供給側/水供給側需要と少なくとも同じ程度であることが強いられる。
最適化期間の前にデマンドチャージ期間が始まる場合は、最適化期間が始まる前のデマンドチャージ期間の間に最大ピーク電力消費量が起こり得る。デマンドチャージモデラ718は、現在の最適化期間が始まる前に最大電力消費量が起こった場合であっても、ピーク電力消費量
が常に同じデマンドチャージ期間の間に起こった最大電力消費量
以上であることを保証するために、以下のデマンドチャージ制約
を実装することができる。いくつかの実施形態では、デマンドチャージモデラ718は、電力公益事業によって課されるデマンドチャージをエネルギー費用モデルが正確に表すことを保証するために新しい最大電力消費量が設定される度に
を更新する。
高次元オプティマイザ712は、エネルギー費用モデル、空気供給側電力消費量モデル、デマンドチャージモデル、建物温度モデル、熱エネルギー貯蔵モデル、水供給側需要モデルおよび最適化制約を使用して最適化問題を公式化することができる。いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、建物温度制約および本明細書で説明される高次元モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、集計空気供給側/水供給側システムによって消費されるエネルギーの総費用を最小化しようと努める。例えば、高次元オプティマイザ712は、
として高次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、高次元最適化問題での使用のために、上記で識別されたモデルおよび/または制約のうちの1つ以上を状態・空間形態に変換する。例えば、高次元オプティマイザ712は、先行方程式を以下の形態の離散化状態・空間モデルに変換することができ、
xk+1=Axk+Buk+Bddk
yk=Cxk+Duk
式中、xkは、時間ステップkにおけるシステム状態のベクトルであり、ukは、時間ステップkにおけるシステム入力のベクトルであり、ykは、時間ステップkにおける測定値またはシステム出力のベクトルであり、dkは、時間ステップkにおける外乱のベクトルであり、xk+1は、時間k+1におけるシステム状態(予測されたもの)のベクトルである。各ベクトルに含まれる変数は、上記の表1に示されるものと同じものであり得る。
高次元オプティマイザ712は、最適化期間の各時間ステップkにおけるベクトルuの各入力変数に対する最適値を決定するために、最適化手順を実行することができる。例えば、高次元オプティマイザ712は、各時間ステップkにおける各建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷
および各時間ステップkにおける熱エネルギー貯蔵に割り当てられた熱エネルギー負荷
の各々に対する最適値を決定することができる。同じ建物インデックスbを有する熱エネルギー負荷
の各セットは、特定の空気供給側サブシステムに対する負荷プロファイルを形成し、最適化期間の各時間ステップkに対する負荷値を含む。同様に、TES負荷
のセットは、TESタンクに対する負荷プロファイルを形成し、最適化期間の各時間ステップkに対する負荷値を含む。高次元オプティマイザ712は、低次元空気供給側コントローラ612~616に空気供給側サブシステム負荷プロファイルを提供し、低次元水供給側コントローラ618にTES負荷プロファイルを提供することができる。
いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、各低次元空気供給側サブシステム632~636に対する予測温度状態
のベクトルを生成する。予測温度状態
の各ベクトルは、最適化期間の間の各時間ステップkに対する予測建物温度状態
を含み得る。温度状態
は、例えば、米国特許第9,235,657号明細書で説明されるようなカルマンフィルタを含む、様々な予測技法のいずれかを使用して予測することができる。高次元オプティマイザ712は、対応する低次元空気供給側サブシステム632~636の低次元空気供給側コントローラ612~616に予測温度状態
の各ベクトルを提供することができる。いくつかの実施形態では、低次元空気供給側コントローラ612~616は、予測温度状態
を使用して、各時間ステップkにおける予測温度状態
を追跡するゾーン温度セットポイントを生成する。
いくつかの実施形態では、高次元オプティマイザ712は、各時間ステップkにおける建物熱エネルギー負荷
およびTES負荷
の総和として、各時間ステップkにおける水供給側システム30における総需要
を計算する。水供給側需要値のセットは、水供給側システム30に対する需要プロファイルを形成し、最適化期間の各時間ステップkに対する需要値を含む。特定の時間ステップkに対する需要値
は、その時間ステップkにおいて水供給側システム30によって満たさなければならない総需要を表す。高次元オプティマイザ712は、低次元水供給側コントローラ618に水供給側需要プロファイルを提供することができる。
低次元空気供給側モデル予測コントローラ
ここで図8を参照すると、いくつかの実施形態による、低次元モデル予測コントローラ(MPC)612をさらに詳細に示すブロック図が示されている。たった1つの低次元空気供給側MPC612しか詳細に示されていないが、制御システム600の他のいかなる低次元空気供給側MPC(例えば、低次元空気供給側MPC614~616)も、低次元空気供給側MPC612と同じコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得ることを理解すべきである。制御システム600は、いかなる数の低次元空気供給側MPCも含み得、その各々は、別個の低次元空気供給側サブシステム(例えば、空気供給側サブシステム632~636)のモニタおよび制御を行うために、独立して動作することができる。
低次元空気供給側MPC612は、通信インタフェース802および処理回路804が示されている。通信インタフェース802は、様々なシステム、デバイスまたはネットワークとのデータ通信を実施するための有線または無線インタフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、トランシーバ、ワイヤ端子など)を含み得る。例えば、通信インタフェース802は、イーサネットベースの通信ネットワークを介してデータを送信および受信するためのイーサネットカードおよびポートならびに/あるいは無線通信ネットワークを介して通信するためのWiFiトランシーバを含み得る。通信インタフェース802は、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワーク(例えば、インターネット、建物WANなど)を介して通信するように構成することができ、様々な通信プロトコル(例えば、BACnet、IP、LONなど)を使用することができる。
通信インタフェース802は、低次元空気供給側MPC612と様々な外部のシステムまたはデバイス(例えば、気象サービス604、高次元MPC608、空気供給側機器622など)との間の電子データ通信を容易にするように構成されたネットワークインタフェースであり得る。例えば、低次元空気供給側MPC612は、気象サービス604から気象予報を受信することおよび/または負荷/料金予測器602から負荷予測を受信することができる。低次元空気供給側MPC612は、制御される建物またはキャンパスの1つ以上の測定状態(例えば、温度、湿度、電気負荷など)および空気供給側サブシステム632の1つ以上の状態(例えば、機器ステータス、電力消費量、機器利用可能性など)を示す測定値をBMSから受信することができる。低次元空気供給側MPC612は、予測温度状態および/または負荷プロファイルを高次元MPC608から受信することができる。低次元空気供給側MPC612は、通信インタフェース802で受信された情報を使用して、低次元空気供給側サブシステム632のゾーン温度セットポイント各ゾーンを生成することができる。低次元空気供給側MPC612は、空気供給側機器622にゾーン温度セットポイントを提供することができる。
処理回路804は、プロセッサ806およびメモリ808を含むように示されている。プロセッサ806は、汎用もしくは専用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1群の処理コンポーネントまたは他の適切な処理コンポーネントであり得る。プロセッサ806は、メモリ808に格納されるかまたは他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワーク記憶装置、リモートサーバなど)から受信されるコンピュータコードまたは命令を実行するように構成することができる。
メモリ808は、本開示で説明される様々なプロセスの完了および/または促進のためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上のデバイス(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、記憶装置など)を含み得る。メモリ808は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブストレージ、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光メモリ、あるいは、ソフトウェアオブジェクトおよび/またはコンピュータ命令を格納するための他の任意の適切なメモリを含み得る。メモリ808は、本開示で説明される様々な活動および情報構造をサポートするためのデータベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素または他の任意のタイプの情報構造を含み得る。メモリ808は、処理回路804を介してプロセッサ806に通信可能に接続することができ、本明細書で説明される1つ以上のプロセスを実行する(例えば、プロセッサ806によって)ためのコンピュータコードを含み得る。プロセッサ806がメモリ808に格納された命令を実行する際、プロセッサ806は、一般に、そのような活動を完了するように低次元空気供給側MPC612(より具体的には、処理回路804)を構成する。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、ゾーン外乱予測器824を含むように示されている。ゾーン外乱予測器824は、空気供給側サブシステム632の各ゾーンiに対する外乱予測を生成することができる。この開示全体を通じて、インデックスiは、個々のゾーンを示すために使用され、i=1…n
zであり、n
zは、所定の空気供給側サブシステムのゾーンの総数である。ゾーンiに対する外乱予測は、外乱値のベクトル
を含み得、ベクトル
の各要素は、最適化期間の特定の時間ステップkに対する予測外乱値
を含む。
ゾーン外乱予測器824は、気象サービス604から気象予報を受信するように示されている。いくつかの実施形態では、ゾーン外乱予測器824は、気象予報の関数として外乱予測を生成する。いくつかの実施形態では、ゾーン外乱予測器824は、規制層620からのフィードバックを使用して外乱予測を生成する。規制層620からのフィードバックは、様々なタイプの感覚入力(例えば、温度、流れ、湿度、エンタルピなど)または制御される建物もしくはキャンパスに関連する他のデータ(例えば、建物占有データ、建物電気負荷など)を含み得る。いくつかの実施形態では、ゾーン外乱予測器824は、外乱予測を生成するために、負荷データ履歴から訓練された決定論的モデルに確率論的モデルを加えたものを使用する。ゾーン外乱予測器824は、様々な予測方法(例えば、決定論的部分に対する線形回帰および確率論的部分に対する自己回帰モデル)のいずれかを使用して外乱予測を生成することができる。
ゾーン外乱予測器824は、各建物ゾーンiに対して1つ以上の異なるタイプの外乱を予測することができる。例えば、ゾーン外乱予測器824は、各建物ゾーンi内の空気と建物の壁を通じる外気との間の熱伝達から生じる熱負荷を予測することができる。ゾーン外乱予測器824は、建物ゾーン内の内部熱生成(例えば、建物ゾーン内の電子機器によって生成された熱、ゾーン占有物によって生成された熱)から生じる熱負荷を予測することができる。いくつかの実施形態では、ゾーン外乱予測器824は、米国特許出願第14/717,593号明細書で説明される予測技法を使用して、外乱予測を行う。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、ゾーン温度モデラ814を含むように示されている。ゾーン温度モデラ814は、空気供給側サブシステム632の各建物ゾーンiに対する温度モデルを生成することができる。空気供給側サブシステム632は、いかなる数のゾーンも有し得る。いくつかの実施形態では、各ゾーンの温度は、独立して制御および/または調整を行うことができる。いくつかの建物ゾーンは互いに熱を交換することができるのに対して(例えば、建物ゾーンが互いに隣接する場合)、他の建物ゾーンは、エネルギーを直接交換しない。一般に、ゾーン温度モデラ814は、nz個のゾーン温度モデルを生成することができ、nzは、空気供給側サブシステム632のゾーンの総数である。
いくつかの実施形態では、ゾーン温度モデラ814は、ゾーン熱伝達モデルを使用して各建物ゾーンの温度をモデル化する。単一の建物ゾーンの暖房または冷房の動力学は、エネルギーバランス
によって説明され、式中、Cは、建物ゾーンの熱キャパシタンスであり、Hは、建物ゾーンに対する周囲の熱伝達係数であり、Tは、建物ゾーンの温度であり、T
aは、建物ゾーン外の周囲温度(例えば、外気温度)であり、
は、建物ゾーンに適用された冷房の量(すなわち、冷却負荷)であり、
は、建物ゾーンによって経験された外部負荷、放射線または他の外乱である。以前の方程式では、
は、HVACシステムによって建物ゾーンから出る熱伝達(すなわち、冷却)を表し、従って、負号を有する。しかし、冷房というよりむしろ、暖房が建物ゾーンに適用される場合は、
の符号は、正号に切り替えることができ、その結果、
は、HVACシステムによって建物ゾーンに適用された暖房(すなわち、加熱負荷)の量を表す。
以前の方程式は、建物ゾーンのすべての質量および空気プロパティを組み合わせて単一のゾーン温度にする。ゾーン温度モデラ814によって使用することができる他の熱伝達モデルは、以下の空気および質量ゾーンモデルを含み、
式中、C
zおよびT
zは、建物ゾーンの空気の熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、周囲の空気温度であり、H
azは、建物ゾーンの空気と建物ゾーン外の周囲の空気(例えば、建物ゾーンの外部壁を通じる)との間の熱伝達係数であり、C
mおよびT
mは、建物ゾーン内の非空気質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
mzは、建物ゾーンの空気と非空気質量との間の熱伝達係数である。
以前の方程式は、建物ゾーンのすべての質量プロパティを組み合わせて単一のゾーン質量にする。ゾーン温度モデラ814によって使用することができる他の熱伝達モデルは、以下の空気、浅部質量および深部質量ゾーンモデルを含み、
C
zおよびT
zは、建物ゾーンの空気の熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、周囲の空気温度であり、H
azは、建物ゾーンの空気と建物ゾーン外の周囲の空気(例えば、建物ゾーンの外部壁を通じる)との間の熱伝達係数であり、C
sおよびT
sは、建物ゾーン内の浅部質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
szは、建物ゾーンの空気と浅部質量との間の熱伝達係数であり、C
dおよびT
dは、建物ゾーン内の深部質量の熱キャパシタンスおよび温度であり、H
dsは、浅部質量と深部質量との間の熱伝達係数である。
いくつかの実施形態では、ゾーン温度モデラ814は、以下のゾーン温度モデルを使用して各建物の温度をモデル化し、
式中、C
iおよびT
iは、ゾーンインデックスiによって指定された建物ゾーンの熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、ゾーンi外の周囲の空気温度(例えば、外気温度)であり、H
iは、ゾーンiと周囲の空気との間の熱伝達係数であり、
は、MPCシステム600によって建物ゾーンiに適用された冷房の量(すなわち、ゾーンから除去された熱の量)であり、
は、ゾーンiによって経験された外部負荷、放射線または外乱である。冷房というよりむしろ、暖房がゾーンに提供される場合は、
の符号は、負号から正号に切り替えることができる。
パラメータβ
ijは、ゾーンiと別のゾーンj(例えば、ゾーンiに隣接する建物ゾーン)との間の結合度を特徴付ける。ゾーンiとjが隣接していないおよび/または互いに熱を直接交換しない場合は、ゾーン温度モデラ814は、β
ijの値を0と等しく設定することができる。ゾーン温度モデルは、ゾーン温度T
i、T
jおよび結合係数β
ijの関数として建物ゾーンiと他の各建物ゾーンj≠iとの間の熱伝達の総和を含み得る。他の実施形態では、ゾーン間の熱伝達は、外部外乱推定
を使用して説明することができる。
ゾーン温度モデラ814は、ゾーン外乱予測器824から受信されたゾーン外乱推定を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各ゾーンiに対する外部外乱
の適切な値を特定することができる。いくつかの実施形態では、ゾーン温度モデラ824は、気象サービス604からの気象予報ならびに/あるいは負荷/料金予測器602によって提供された負荷および料金予測を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各ゾーンiに対する周囲の空気温度T
aおよび/または外部外乱
の適切な値を決定する。C
iおよびH
iの値は、建物ゾーンiを管理するBMSから受信された、ユーザから受信された、メモリ808から回収されたまたはゾーン温度モデラ814に別の方法で提供されたゾーンiのパラメータとして指定することができる。ゾーン温度モデラ714は、各ゾーンiに対してゾーン温度モデルを生成することができ、i=1…n
zであり、n
zは、ゾーンの総数である。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、建物負荷モデラ816を含むように示されている。建物負荷モデラ816は、個々のゾーン負荷
の関数として、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギーの総量Q
total(例えば、建物に送られる暖房または冷房の総量)のモデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、建物負荷モデラ816は、以下の方程式を使用して建物の総負荷をモデル化する。
式中、Q
totalは、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギー(例えば、加熱または冷却)の総量であり、
は、特定のゾーンiにおける熱エネルギーが送られているレート(電力の単位)である。建物負荷モデルは、各建物ゾーンの熱エネルギー負荷
を総和して、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギーの総量Q
totalの微分である空気供給側サブシステムの総熱エネルギー負荷
を計算することができる。
低次元空気供給側MPC612は、冷却/加熱デューティモデラ820を含むように示されている。冷却/加熱デューティモデラ820は、以下の方程式に示されるように、ゾーン温度T
iおよびゾーン温度セットポイントT
sp,iの関数として各建物ゾーンの熱エネルギー負荷
を定義する1つ以上のモデルを生成することができる。
冷却/加熱デューティモデラ820によって生成されたモデルは、ゾーン温度T
iが許容可能なまたは快適な温度範囲から外れることになる値まで熱エネルギー負荷
が低減されないことを保証するために、最適化制約として使用することができる。
いくつかの実施形態では、冷却/加熱デューティモデラ820は、複数のモデルを使用して、ゾーン熱エネルギー負荷
をゾーン温度T
iおよびゾーン温度セットポイントT
sp,iと関係付ける。例えば、冷却/加熱デューティモデラ820は、ゾーン温度T
iおよびゾーン温度セットポイントT
sp,iの関数としてコントローラによって実行される制御動作を決定するためにゾーン規制コントローラのモデルを使用することができる。そのようなゾーン規制コントローラモデルの例は、以下の方程式に示されている。
v
air,i=f
1(T
i,T
sp,i)
式中、v
air,iは、建物ゾーンiへの気流の速度(すなわち、制御動作)である。関数f
1は、データから特定することができる。例えば、冷却/加熱デューティモデラ820は、v
air,iおよびT
iの測定値を収集し、対応するT
sp,iの値を特定することができる。冷却/加熱デューティモデラ820は、そのような変数間の関係を定義する関数f
1を決定するために訓練データとして収集されたv
air,i、T
iおよびT
sp,iの値を使用してシステム識別プロセスを実行することができる。
冷却/加熱デューティモデラ820は、以下の方程式に示されるように、制御動作v
air,iをゾーン熱エネルギー負荷
と関連付けるエネルギーバランスモデルを使用することができ、
式中、関数f
2は、訓練データから特定することができる。冷却/加熱デューティモデラ820は、そのような変数間の関係を定義する関数f
2を決定するために収集されたv
air,iおよび
の値を使用してシステム識別プロセスを実行することができる。
いくつかの実施形態では、
とv
air,iとの間には線形関係が存在する。理想的な比例・積分(PI)コントローラおよび
とv
air,iとの間の線形関係を想定すると、簡略化された線形コントローラモデルを使用して、ゾーン温度T
iおよびゾーン温度セットポイントT
sp,iの関数として各建物ゾーンの熱エネルギー負荷
を定義することができる。そのようなモデルの例は、以下の方程式に示され、
式中、
は、加熱または冷却レートの定常状態レートであり、K
c,iは、スケーリング済みのゾーンPIコントローラ比例利得であり、τ
I,iは、ゾーンPIコントローラ積分時間であり、ε
iは、セットポイント誤差(すなわち、ゾーン温度セットポイントT
i,spとゾーン温度T
spとの差)である。飽和は、
に対する制約によって表すことができる。ゾーンiに対するPIコントローラおよびAHUの熱伝達をモデル化するのに線形モデルが十分に正確ではない場合は、非線形加熱/冷却デューティモデルを代わりに使用することができる。
有利には、低次元空気供給側最適化問題において規制コントローラ(例えば、ゾーンPIコントローラ)をモデル化することにより、低次元空気供給側MPC612は、最適な温度セットポイントを決定する際に、規制コントローラの動力学を使用することができる。いくつかの実施形態では、規制コントローラの応答は、遅い場合がある。例えば、いくつかのゾーンでは、新しい温度セットポイントに達するまでに最大で1時間要し得る。低次元MPC問題において規制コントローラの動力学を使用することにより、低次元空気供給側MPC612は、制御動作から効果までの時間を考慮することができ、その結果、時間変動エネルギー価格を考慮して最適な温度セットポイントを選択することができる。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、制約モデラ810を含むように示されている。制約モデラ810は、最適化制約を生成し、低次元オプティマイザ812によって実行される最適化手順に課すことができる。制約モデラ810によって課される制約は、例えば、機器能力制約およびゾーン温度制約を含み得る。いくつかの実施形態では、制約モデラ810は、ゾーン温度Tiに対する制約を課す。例えば、制約モデラ810は、以下の方程式に示されるように、ゾーン温度Tiを最小温度Tminと最大温度Tmaxとの間に制約することができ、
Tmin≦Ti≦Tmax
式中、TminおよびTmaxの値は、建物の温度セットポイントに基づいて調整することができる。
いくつかの実施形態では、制約モデラ810は、建物ゾーンに対するBMSから受信された情報に基づいてTminおよびTmaxの値を自動的に調整する。例えば、制約モデラ810は、建物ゾーンに対する温度セットポイントスケジュールおよび/または占有スケジュールを使用して、各時間ステップkに対するTminおよびTmaxの値を自動的に調整することができる。これにより、制約モデラ810は、建物温度Tiが時間に応じた温度制限(Tmin~Tmax)内に維持されるように、ゾーンに対する時間変動セットポイント温度範囲に基づいて温度制限を使用することができる。
いくつかの実施形態では、制約モデラ810は、任意の時間ステップkの間の空気供給側サブシステムの総負荷が、高次元MPC608によって空気供給側サブシステムに割り当てられた熱エネルギー負荷以下であることを保証するために制約を課す。例えば、制約モデラ810は、以下のような制約を課すことができる。
式中、Q
total,k+1は、時間ステップk+1において消費された空気供給側サブシステムの総エネルギーであり、Q
total,kは、時間ステップkにおいて消費された空気供給側サブシステムの総エネルギーであり、
は、高次元MPC608によって空気供給側サブシステムbに割り当てられた熱エネルギー負荷であり、Δは、各時間ステップの持続時間である。方程式の左側は、時間ステップkの間の空気供給側サブシステム熱エネルギー負荷(すなわち、連続時間ステップ間に送られた総熱エネルギーの変化を時間ステップ持続時間で除したもの)を表すのに対して、方程式の右側は、高次元MPC608によって時間ステップkの間に空気供給側サブシステムbに割り当てられた熱エネルギー負荷を表す。
いくつかの実施形態では、制約モデラ810は、以下の方程式に示されるように、送られる熱エネルギーの総量が連続時間ステップ間で減少しないことを保証するために追加の制約を課す。
Q
total,k+1-Q
total,k≧0
Q
total,k+1は時間ステップk+1までに送られた熱エネルギーの量の総和であるため、この制約は、低次元オプティマイザ812が時間ステップkにおける熱エネルギー負荷
に対して負の値を選択することを防ぐ。言い換えれば、熱エネルギーが送られるレート、すなわち、
は、最適化期間にわたって送られた熱エネルギーの総量に加えることはできるが、送られた熱エネルギーの総量から減ずることはできない。
低次元オプティマイザ812は、ゾーン温度モデル、建物負荷モデル、冷却/加熱デューティモデルおよび最適化制約を使用して最適化問題を公式化することができる。いくつかの実施形態では、低次元最適化問題は、ゾーン温度制約および本明細書で説明される低次元空気供給側モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、最適化期間にわたって空気供給側サブシステム632によって使用される熱エネルギーの総量Q
total,Nを最小化しようと努める。例えば、低次元オプティマイザ812は、
として低次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
式中、関数fは、以下の
とT
iとT
i,spとの間の関係に従って定義される。
いくつかの実施形態では、低次元オプティマイザ812は、低次元最適化問題での使用のために、上記で識別されたモデルおよび/または制約のうちの1つ以上を状態・空間形態に変換する。例えば、低次元オプティマイザ812は、先行方程式を以下の形態の離散化状態・空間モデルに変換することができ、
x
k+1=Ax
k+Bu
k+B
dd
k
y
k=Cx
k+Du
k
式中、x
kは、時間ステップkにおけるシステム状態のベクトルであり、u
kは、時間ステップkにおけるシステム入力のベクトルであり、y
kは、時間ステップkにおける測定値またはシステム出力のベクトルであり、d
kは、時間ステップkにおける外乱のベクトルであり、x
k+1は、時間k+1におけるシステム状態(予測されたもの)のベクトルである。表2は、これらのベクトルの各々に含めることができる変数を示す。
表2に示されるように、システム状態ベクトルxは、ゾーン温度T
i、ゾーン追跡誤差の積分
および空気供給側サブシステムに送られた総熱エネルギーを含む。いくつかの実施形態では、システム状態ベクトルxは、システム状態ベクトルxの変数の総数nが2n
z+1と等しくなるように、n
z個のゾーンの各々に対するゾーン温度T
iおよび積分されたゾーン追跡誤差
ならびに単一の総熱エネルギー値を含む。入力ベクトルuは、温度セットポイントT
sp,iを含み得る。いくつかの実施形態では、入力ベクトルuは、入力ベクトルuの変数の総数mがn
zと等しくなるように、n
z個のゾーンの各々に対する温度セットポイントT
sp,iを含む。
いくつかの実施形態では、測定値ベクトルyは、システム状態ベクトルxと同じであるが、積分されたゾーン追跡誤差
は含まない。これは、ゾーン温度T
iおよび送られた熱エネルギーの総量Q
totalが直接測定されることを示す。積分されたゾーン追跡誤差
の値は、T
i,spとT
iとの差から計算することができる。外乱ベクトルdは、周囲の空気温度T
a、各ゾーンに対する推定外乱
および各ゾーンに対する加熱/冷却の定常状態レート
を含み得る。いくつかの実施形態では、外乱ベクトルdは、外乱ベクトルdの変数の総数n
dがn
z+1と等しくなるように、n
z個の建物の各々に対する推定外乱
および加熱/冷却の定常状態レート
ならびに単一の周囲の空気温度T
aを含む。
いくつかの実施形態では、システム状態xは、測定値yから構築または予測することができる。例えば、低次元空気供給側MPC612は、カルマンフィルタまたは他の予測技法を使用して、測定値yからシステム状態xを構築することができる。状態・空間表現における行列A、B、CおよびDの値は、システム識別技法を使用して識別することができる。低次元MPC612によって使用することができる状態予測およびシステム識別技法の例は、米国特許第9,235,657号明細書で詳細に説明されている。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、モデルアグリゲータ818を含むように示されている。モデルアグリゲータ818は、低次元最適化で使用される様々な建物パラメータおよび/または変数に対する集計値を生成することができる。例えば、モデルアグリゲータ818は、建物の各ゾーンの個々のゾーン温度T
iを集計することによって、低次元空気供給側サブシステムに対する集計建物温度T
bを生成することができる。いくつかの実施形態では、モデルアグリゲータ818は、以下の方程式を使用して集計建物温度T
bを生成する。
式中、C
iは、ゾーンiの熱キャパシタンスであり、T
iは、ゾーンiの温度である。以前の方程式の分子は、建物の熱の総量を表すのに対して、分母は、建物の総熱キャパシタンスを表す。両方の数量は、すべての建物ゾーンi=1…n
zにわたる総和が求められる。モデルアグリゲータ818は、平均建物温度T
bを推定するために、熱の総量を総熱キャパシタンスで除することができる。モデルアグリゲータ818は、最適化期間の各時間ステップkに対する集計建物温度T
b,kを計算することができる。
モデルアグリゲータ818は、建物熱キャパシタンスC
b、建物熱伝達係数H
b、推定建物外乱
などの他の建物パラメータまたは変数に対する集計値を計算することができる。いくつかの実施形態では、モデルアグリゲータ818は、以下の方程式を使用して、これらの変数およびパラメータに対する集計値を計算する。
式中、建物熱キャパシタンスC
bは、各建物ゾーンに対するゾーン熱キャパシタンスC
i値の総和であり、建物熱伝達係数H
bは、各建物ゾーンに対するゾーン熱伝達係数H
i値の総和であり、推定建物外乱
は、各建物ゾーンに対する推定建物外乱
の総和である。モデルアグリゲータ818は、C
b,k、H
b,kおよび
または最適化期間の各時間ステップkの集計値を計算することができる。
いくつかの実施形態では、モデルアグリゲータ818は、集計建物パラメータおよび変数T
b、C
b、H
bおよび
を高次元MPC608に提供する。高次元MPC608は、高次元最適化で使用される高次元モデル、制約および最適化関数への入力としてそのような値を使用することができる。有利には、モデルアグリゲータ818によって実行されるモデル集計は、各低次元空気供給側MPC612~616と高次元MPC608との間で交換される情報量を低減する上で役立つ。例えば、各低次元MPC612~616は、各建物ゾーンに対するそのような変数およびパラメータの個々の値というよりむしろ、上記で説明される集計値を高次元MPC608に提供することができる。
依然として図8を参照すると、低次元空気供給側MPC612は、温度トラッカ822を含むように示されている。いくつかの実施形態では、温度トラッカ822は、低次元オプティマイザ812によって実行される低次元最適化を補完または交換することができる代替の最適化を実行する。低次元空気供給側サブシステムによって使用される総熱エネルギーQ
total,Nを最小化するというよりむしろ、温度トラッカ822は、高次元最適化の結果として高次元MPC608によって生成される予測建物温度状態
を追跡するゾーン温度セットポイントT
sp,iを生成することができる。例えば、高次元MPC608は、高次元MPC608によって生成された負荷プロファイルからの結果に対して予測された各低次元空気供給側サブシステム632~636に対する建物温度状態
を計算することができる。上記で説明されるように、予測温度状態
は、カルマンフィルタまたは他の任意のタイプの状態予測技法を使用して計算することができる。高次元MPC608は、温度追跡プロセスでの使用のために、各低次元空気供給側MPC612~616に予測温度状態
を提供することができる。
温度トラッカ822は、通信インタフェース802を介して予測温度状態
を受信するように示されている。また、温度トラッカ822は、モデルアグリゲータ818によって生成された集計建物温度T
b,kを受信することもできる。温度トラッカ822は、目的関数を公式化することができ、目的関数は、以下の方程式に示されるように、集計建物温度T
b,kと予測温度状態
との間の誤差を最小化しようと努める。
式中、μは、最適化期間にわたって空気供給側サブシステムによって使用される熱エネルギーの総量Q
total,Nに適用される小さなペナルティ係数である。μの値は、温度追跡誤差に対してエネルギーの総量Q
total,Nに割り当てられる重みを増加または減少するように調整することができる。
温度トラッカ822は、最適化手順において目的関数として以前の方程式を使用して、ゾーン温度セットポイントT
sp,iの最適値を決定することができる。温度トラッカ822によって実行される最適化は、温度トラッカ822が、高次元MPC608によって提供される負荷プロファイルによる制約を受けず、異なる目的関数を最適化しようと努めることを除いて、低次元オプティマイザ812によって実行される最適化と同様のものであり得る。例えば、温度トラッカ822は、目的関数
を最小化することができ、以下の制約を受ける。
式中、関数fは、以下の
とT
iとT
i,spとの間の関係に従って定義される。
いくつかの実施形態では、温度トラッカ822は、低次元最適化問題での使用のために、上記で識別されたモデルおよび/または制約のうちの1つ以上を状態・空間形態に変換する。例えば、温度トラッカ822は、先行方程式を以下の形態の離散化状態・空間モデルに変換することができ、
xk+1=Axk+Buk+Bddk
yk=Cxk+Duk
式中、xkは、時間ステップkにおけるシステム状態のベクトルであり、ukは、時間ステップkにおけるシステム入力のベクトルであり、ykは、時間ステップkにおける測定値またはシステム出力のベクトルであり、dkは、時間ステップkにおける外乱のベクトルであり、xk+1は、時間k+1におけるシステム状態(予測されたもの)のベクトルである。各ベクトルに含まれる変数は、上記の表2に示されるものと同じものであり得る。
シミュレーション研究
ここで図9~13を参照すると、いくつかの実施形態による、シミュレーション研究の結果を示すいくつかのグラフ900~1350が示されている。シミュレーション研究は、大きなアクティブTESタンクを有する5つのゾーンの建物のモニタおよび制御を行うためにモデル予測制御システム600を使用することを伴うものであった。グラフ900~1350の各々は、時間の関数としての特定の変数またはパラメータに対する1組の値を示す。いくつかの変数またはパラメータは、制御システム600への入力データ(例えば、気象データ、公共料金など)として受信することができるのに対して、他の変数またはパラメータは、以前に説明されるように、制御システム600によって計算および/または最適化することができる。
図9は、最適化期間の持続時間中の気象および電気価格データを示す。グラフ900は、時間の関数としての周囲温度902を示す。周囲温度902は、気象サービス604から気象予報として受信し、高次元および低次元最適化における変数Taの適切な値を決定するために使用することができる。グラフ950は、時間の関数としての電気価格952を示す。電気価格954は、公益事業606から入力として受信することおよび/または負荷/料金予測器602によって予測することができる。
図10は、空気供給側電力消費量の費用が高次元最適化関数に含まれない際に高次元MPC608によって実行された高次元最適化の結果を示す。グラフ1000は、時間の関数としての建物温度1002、例えば、建物温度T
b、建物温度
を示す。建物温度1002は、建物の出力として測定すること(例えば、空気供給側サブシステム632の機器を使用して)および/または高次元最適化の結果として予測することができる。空気供給側電力消費量が含まれない際は、高次元MPC608は、建物温度を快適ゾーンの上限(すなわち、T
max)に常に維持することを選ぶことができる。
グラフ1050は、時間の関数としての空気供給側サブシステム632の冷却デューティ1052、例えば、
を示す。冷却デューティ1052は、負荷プロファイルの例であり、負荷プロファイルは、各空気供給側サブシステム耳に対して高次元MPC608によって最適化し、空気供給側サブシステムの低次元空気供給側MPC612~616に提供することができる。冷却デューティ1052は、最適な建物温度1002の結果として高次元MPC608によって計算することができる。いくつかの実施形態では、高次元MPC608は、空気供給側電力消費量が含まれない際は、パッシブ熱エネルギー貯蔵を利用せず、むしろ、水供給側電力負荷をシフトするためのアクティブTES(例えば、TESタンク)のみを使用する。
図11は、空気供給側電力消費量の費用が高次元最適化関数に含まれる際に高次元MPC608によって実行された高次元最適化の結果を示す。グラフ1100は、時間の関数としての建物温度1102、例えば、建物温度T
b、建物温度
を示す。建物温度1102は、建物の出力として測定すること(例えば、空気供給側サブシステム632の機器を使用して)および/または高次元最適化の結果として予測することができる。空気供給側電力消費量が含まれる際は、高次元MPC608は、電気価格が最も高いピーク期間の前に、パッシブTESを使用して建物を事前冷却することを選ぶことができる。
グラフ1150は、時間の関数としての空気供給側サブシステム632の冷却デューティ1152、例えば、
を示す。冷却デューティ1152は、負荷プロファイルの例であり、負荷プロファイルは、各空気供給側サブシステム耳に対して高次元MPC608によって最適化し、空気供給側サブシステムの低次元空気供給側MPC612~616に提供することができる。冷却デューティ1152は、最適な建物温度1102の結果として高次元MPC608によって計算することができる。いくつかの実施形態では、高次元MPC608は、空気供給側電力消費量が含まれる際は、パッシブ熱エネルギー貯蔵を使用し、それにより、高次元MPC608は、ピーク期間から非ピーク期間に負荷をシフトすることができる。冷却デューティプロファイルの平坦な部分1154は、ピークデマンドチャージを低減するために高次元MPC608が冷却デューティ1152の平滑化を試みることから生じ得る。
図12は、低次元空気供給側MPC612によって実行された低次元空気供給側最適化の結果を示す。グラフ1200は、時間の関数としてのいくつかの建物ゾーンに対するゾーン温度1202、1204、1206、1208、1210(例えば、Ti)を示す。ゾーン温度1202~1210は、ゾーンの出力として測定すること(例えば、空気供給側サブシステム632の機器を使用して)および/または低次元最適化の結果として予測することができる。事前冷却が起こると、ゾーン温度1202~1210は、任意の所定の時間における総建物負荷を低減するために、異なる(例えば、ずれたまたはオフセット)時間に減少し始める。これは、低次元空気供給側MPC612が高次元MPC608から受信された冷却デューティ制限(例えば、冷却デューティの値1102または1152)に従った結果である。
グラフ1250は、時間の関数としてのいくつかの建物ゾーンに対する温度セットポイント1252、1254、1256、1258、1260(例えば、T
sp,i)を示す。ゾーン温度セットポイント1252~1260は、低次元空気供給側最適化の結果として低次元空気供給側MPC612によって計算することができる。例えば、低次元空気供給側MPC612は、
とT
sp,iとT
iとの間の関係を定義する冷却デューティモデルを使用して、各建物ゾーンに対する適切な温度セットポイントT
sp,iを決定することができる。いくつかの実施形態では、低次元空気供給側MPC612は、任意の所定の時間における総建物負荷を低減するために、ゾーン温度セットポイント1252~1260が異なる(例えば、ずれたまたはオフセット)時間に減少し始めるようにおよび/またはグラフ1200に示される温度T
iを達成するようにする。
図13は、低次元水供給側MPC618によって実行された低次元水供給側最適化の結果を示す。グラフ1300は、冷凍機からの熱エネルギー生産1304およびTESタンクからの熱エネルギー貯蔵1306の組合せを使用して、高次元最適化からの需要1302がどのように満たされるかを示す。熱エネルギー貯蔵1306は、TESタンクが貯蔵された熱エネルギーを放電していることを示す際は正であるか、または、熱エネルギー生産1304の部分を使用してTESタンクが充電(例えば、充填)していることを示す際は負であり得る。満たされていない負荷1308は、生産1304または貯蔵1306によって満たされていない需要プロファイル1302の量を表す。水供給側機器628が総需要1302を満たすことができない場合を除いて、満たされていない負荷が起こらないことを保証するため、満たされていない負荷1308には、水供給側最適化関数においてペナルティを割り当てることができる。
グラフ1350は、熱エネルギー生産1304を満たすために使用される2つの冷凍機に対する機器動作スケジュール1352、1354を示す。ボックス領域1356は、対応する冷凍機がアクティブであることを示すのに対して、非ボックス領域1358は、冷凍機がアクティブではないことを示す。各冷凍機の負荷割合(例えば、0~1)は、負荷ライン1360、1362によって示されている。アクティブTESが利用可能な場合は、冷凍機は、TESタンクを充電するためにエネルギー価格が低い(例えば、夜間)時により多くの冷却水を生産することができる。次いで、TESタンクは、電気消費量の総費用を低減するためにエネルギー価格が高い(例えば、日中)時に放電することができる。
フロー図
ここで図14を参照すると、いくつかの実施形態による、MPCシステム600によって実行することができるモデル予測制御技法を示すフロー図1400が示されている。フロー図1400は、複数の空気供給側サブシステムの各々に対する最適な負荷プロファイルを生成するために高次元モデル予測コントローラ(MPC)において高次元最適化を実行すること(ブロック1402)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、高次元最適化は、図6~7を参照して説明されるように、高次元MPC608によって実行される。例えば、高次元最適化は、水供給側需要プロファイル
の関数としてエネルギー費用を定義する高次元エネルギー費用関数を生成することを含み得る。いくつかの実施形態では、水供給側需要プロファイル
は、最適化期間の複数の時間ステップkの各々における水供給側システムの熱エネルギー生産を示す。
いくつかの実施形態では、高次元MPC608は、エネルギー費用関数を生成し、エネルギー費用関数は、水供給側システム30の単位エネルギー消費量当たりの費用およびデマンドチャージを説明するが、空気供給側システム50のエネルギー消費量は説明しない。そのようなエネルギー費用関数の例は、以下の方程式に示される。
エネルギー費用関数の第1の項は、最適化期間の各時間ステップkの間に消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。いくつかの実施形態では、c
kは、時間ステップkにおける水供給側総需要
を満たすために時間ステップkにおいて消費された単位エネルギー当たりの費用であり、パラメータη
totは、空気供給側/水供給側システムの集計性能の逆係数であり(例えば、0.1≦η
tot≦0.25)、Δは、時間ステップkの持続時間である。それに従って、
の項は、水供給側需要
を満たすために時間ステップkの間に消費されたエネルギーの総量(例えば、kWh)を表す。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)を乗じることにより、時間ステップkの間に消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。エネルギー費用関数は、最適化期間にわたるエネルギー消費量の総費用を決定するために、各時間ステップkの間のエネルギー費用の総和を含み得る。
エネルギー費用関数の第2の項は、デマンドチャージを説明する。いくつかの実施形態では、c
peakは、デマンドチャージ料金(例えば、$/kW)であり、
は、デマンドチャージ期間の間のピーク水供給側需要であり、例えば、
の最大であり、η
totは、空気供給側/水供給側システムの集計性能の逆係数である。それに従って、
の項は、ピーク水供給側需要
を満たすためのピーク電力消費量を表す。デマンドチャージ料金c
peakを乗じることにより、デマンドチャージの総費用(例えば、$)が得られる。
いくつかの実施形態では、高次元MPC608は、エネルギー費用関数を生成し、エネルギー費用関数は、水供給側システム30の単位エネルギー消費量当たりの費用、デマンドチャージおよび空気供給側システム50のエネルギー消費量を説明する。そのようなエネルギー費用関数の例は、以下の方程式に示される。
エネルギー費用関数の第1の部分は、最適化期間の各時間ステップkの間に水供給側システム30によって消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。いくつかの実施形態では、c
kは、時間ステップkにおいて消費された単位エネルギー当たりの費用であり、Δは、時間ステップkの持続時間であり、η
HVACは、水供給側システム30の性能の逆係数である(例えば、η
HVAC≒0.2)。
の項は、水供給側需要
を満たすための時間ステップkの間の水供給側システム30による電力消費量(例えば、kW)を表す。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)および持続時間Δ(例えば、時間)を乗じることにより、時間ステップkの間に水供給側システム30によって消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。エネルギー費用関数の第1の部分は、最適化期間の間に水供給側システム30によって消費された総エネルギーを決定するために、最適化期間のすべての時間ステップk=0…N-1にわたる総和を求めることができる。
エネルギー費用関数の第2の部分は、最適化期間の各時間ステップkの間に各空気供給側サブシステム(例えば、各建物b)によって消費された単位エネルギー当たりの費用(例えば、$/kWh)を説明する。上記で説明されるように、η
airは、空気供給側サブシステムの性能の逆係数であり(例えば、η
air≒0.1)、
は、時間ステップkにおいて建物bに対する空気供給側サブシステムによって送られた熱エネルギー負荷である。
の項は、建物bに対する空気供給側機器の電力消費量
を表す。エネルギー費用関数の第2の部分は、最適化期間の間のすべての空気供給側サブシステムの総電力消費量を決定するために、すべての建物b=1…n
bにわたるおよびすべての時間ステップk=0…N-1にわたる総和を求めることができる。消費された単位エネルギー当たりの費用c
k(例えば、$/kWh)および持続時間Δ(例えば、時間)を乗じることにより、最適化期間の間に空気供給側サブシステムによって消費されたエネルギーの総費用(例えば、$)が得られる。
エネルギー費用関数の第3の部分は、デマンドチャージを説明する。いくつかの実施形態では、c
peakは、デマンドチャージ料金(例えば、$/kW)であり、
は、適用可能なデマンドチャージ期間の間のピーク集計空気供給側および水供給側電力消費量である。デマンドチャージ料金c
peakを乗じることにより、デマンドチャージの総費用(例えば、$)が得られる。
いくつかの実施形態では、ブロック1402における高次元最適化を実行することは、複数の空気供給側サブシステム負荷プロファイル
の関数として水供給側需要プロファイル
を定義するために水供給側需要モデルを使用することを含む。各空気供給側サブシステム負荷プロファイル
は、複数の時間ステップの各々における空気供給側サブシステムのうちの1つへの熱エネルギー配分を示し得る。
いくつかの実施形態では、水供給側需要モデルは、最適化期間の各時間ステップにおける各空気供給側サブシステムに割り当てられた熱エネルギー負荷
および熱エネルギー貯蔵量
の関数として水供給側システム30における需要を表す。そのような水供給側需要モデルの例は、以下の方程式に示されている。
式中、
は、時間ステップkにおける水供給側需要(例えば、時間ステップkにおける水供給側システム30の熱エネルギー生産)であり、
は、時間ステップkにおける建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷であり、
は、時間ステップkの間にTESタンクに貯蔵された熱エネルギーの量である。以前の方程式は、水供給側システム30における総需要
が各建物bに割り当てられた熱エネルギー負荷
とTESタンクに貯蔵された熱エネルギー
との総和であることを示す。この方程式は、各時間ステップkにおける建物負荷および熱エネルギー貯蔵をカバーするのに十分な熱エネルギーを水供給側システム30が生成することを保証するために、高次元MPC608によって、エネルギーバランス制約として使用することができる。
いくつかの実施形態では、ブロック1402における高次元最適化は、複数の空気供給側サブシステムの各々に対する空気供給側サブシステム温度モデルを生成することを含む。各空気供給側サブシステム温度モデルは、空気供給側サブシステムへの熱エネルギー配分
と空気供給側サブシステムの温度T
bとの間の関係を定義することができる。そのような空気供給側サブシステム温度モデルの例は、以下の方程式に示されている。
式中、C
bおよびT
bは、インデックスbによって指定された空気供給側サブシステムの熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、空気供給側サブシステムb外の周囲の空気温度(例えば、外気温度)であり、H
bは、空気供給側サブシステムbと周囲の空気との間の熱伝達係数であり、
は、MPCシステム600によって空気供給側サブシステムに適用された冷房の量(すなわち、空気供給側サブシステムから除去された熱の量)であり、
は、空気供給側サブシステムbによって経験された外部負荷、放射線または外乱である。冷房というよりむしろ、暖房が空気供給側サブシステムに提供される場合は、
の符号は、負号から正号に切り替えることができる。
高次元最適化は、低次元空気供給側コントローラ612~616から受信された建物外乱推定を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各空気供給側サブシステムbに対する外部外乱
の適切な値を特定することができる。いくつかの実施形態では、高次元最適化は、気象サービス604からの気象予報ならびに/あるいは負荷/料金予測器602によって提供された負荷および料金予測を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各空気供給側サブシステムbに対する周囲の空気温度T
aおよび/または外部外乱
の適切な値を決定する。C
bおよびH
bの値は、空気供給側サブシステムbの低次元空気供給側コントローラから受信された、ユーザから受信された、メモリから回収されたまたは高次元MPC608に別の方法で提供された空気供給側サブシステムbのパラメータとして指定することができる。高次元最適化は、各空気供給側サブシステムbに対して温度モデルを生成することを含み得、b=1…n
bであり、n
bは、空気供給側サブシステムの総数である。
いくつかの実施形態では、ステップ1402における高次元最適化を実行することは、水供給側需要モデルおよび各空気供給側サブシステム温度モデルによって提供される制約を受けることを条件として、エネルギー費用および複数の空気供給側サブシステム負荷プロファイルを最適化することを含む。高次元最適化は、エネルギー費用モデル、デマンドチャージモデル、建物温度モデル、熱エネルギー貯蔵モデル、水供給側需要モデルおよび最適化制約を使用して最適化問題を公式化することができる。
いくつかの実施形態では、高次元最適化は、建物温度制約および本明細書で説明される高次元モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、水供給側システム30によって消費されるエネルギーの総費用(すなわち、エネルギー費用およびデマンドチャージ)を最小化しようと努める。例えば、高次元最適化は、
として高次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
いくつかの実施形態では、高次元最適化は、建物温度制約および本明細書で説明される高次元モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、集計空気供給側/水供給側システムによって消費されるエネルギーの総費用を最小化しようと努める。例えば、高次元最適化は、
として高次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
依然として図14を参照すると、フロー図1400は、高次元MPCから複数の低次元MPCに最適な空気供給側サブシステム負荷プロファイル
を提供すること(ブロック1404)を含むように示されている。各負荷プロファイル
は、図6に示されるように、高次元MPC608から低次元空気供給側MPC612~616のうちの1つに送信することができる。いくつかの実施形態では、各低次元空気供給側MPCは、特定の空気供給側サブシステムのモニタおよび制御を行うように構成される。各低次元空気供給側MPCは、その低次元空気供給側MPCによってモニタおよび制御が行われた空気供給側サブシステムに対する最適なサブシステム負荷プロファイルを受信することができる。
フロー図1400は、空気供給側サブシステムの各々に対する最適な温度セットポイントを生成するために低次元MPCの各々において低次元最適化を実行すること(ブロック1406)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、ブロック1406における低次元最適化は、各空気供給側サブシステムの各ゾーンiに対するゾーン温度モデルを生成することを含む。ゾーン温度モデルは、ゾーンの温度T
iとゾーンに対する熱エネルギー負荷プロファイル
との間の関係を定義することができる。そのようなゾーン温度モデルの例は、以下の方程式に示されている。
式中、C
iおよびT
iは、ゾーンインデックスiによって指定された建物ゾーンの熱キャパシタンスおよび温度であり、T
aは、ゾーンi外の周囲の空気温度(例えば、外気温度)であり、H
iは、ゾーンiと周囲の空気との間の熱伝達係数であり、
は、MPCシステム600によって建物ゾーンiに適用された冷房の量(すなわち、ゾーンから除去された熱の量)であり、
は、ゾーンiによって経験された外部負荷、放射線または外乱である。冷房というよりむしろ、暖房がゾーンに提供される場合は、
の符号は、負号から正号に切り替えることができる。
パラメータβ
ijは、ゾーンiと別のゾーンj(例えば、ゾーンiに隣接する建物ゾーン)との間の結合度を特徴付ける。ゾーンiとjが隣接していないおよび/または互いに熱を直接交換しない場合は、ゾーン温度モデラ814は、β
ijの値を0と等しく設定することができる。ゾーン温度モデルは、ゾーン温度T
i、T
jおよび結合係数β
ijの関数として建物ゾーンiと他の各建物ゾーンj≠iとの間の熱伝達の総和を含み得る。他の実施形態では、ゾーン間の熱伝達は、外部外乱推定
を使用して説明することができる。
低次元最適化は、ゾーン外乱予測器824から受信されたゾーン外乱推定を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各ゾーンiに対する外部外乱
の適切な値を特定することを含み得る。いくつかの実施形態では、低次元最適化は、気象サービス604からの気象予報ならびに/あるいは負荷/料金予測器602によって提供された負荷および料金予測を使用して、最適化期間の各時間ステップにおける各ゾーンiに対する周囲の空気温度T
aおよび/または外部外乱
の適切な値を決定する。C
iおよびH
iの値は、建物ゾーンiを管理するBMSから受信された、ユーザから受信された、メモリ808から回収されたまたはゾーン温度モデラ814に別の方法で提供されたゾーンiのパラメータとして指定することができる。
いくつかの実施形態では、ブロック1406における低次元最適化は、個々のゾーン負荷
の関数として、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギーの総量Q
total(例えば、建物に送られる暖房または冷房の総量)のモデルを生成することを含む。いくつかの実施形態では、低次元最適化は、以下の方程式を使用して建物の総負荷をモデル化することを含む。
式中、Q
totalは、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギー(例えば、加熱または冷却)の総量であり、
は、特定のゾーンiにおける熱エネルギーが送られているレート(電力の単位)である。建物負荷モデルは、各建物ゾーンの熱エネルギー負荷
を総和して、空気供給側サブシステムに送られた熱エネルギーの総量Q
totalの微分である空気供給側サブシステムの総熱エネルギー負荷
を計算することができる。
いくつかの実施形態では、低次元最適化は、以下の方程式に示されるように、ゾーン温度T
iおよびゾーン温度セットポイントT
sp,iの関数として各建物ゾーンの熱エネルギー負荷
を定義する1つ以上のモデルを生成することを含む。
低次元最適化によって生成されたモデルは、ゾーン温度T
iが許容可能なまたは快適な温度範囲から外れることになる値まで熱エネルギー負荷
が低減されないことを保証するために、最適化制約として使用することができる。
いくつかの実施形態では、ブロック1406における低次元最適化は、ゾーン温度制約および本明細書で説明される低次元空気供給側モデルによって提供される他の制約を受けることを条件として、最適化期間にわたって空気供給側サブシステムによって使用される熱エネルギーの総量Q
total,Nを最小化しようと努める。例えば、低次元最適化は、
として低次元最適化問題を公式化することができ、以下の制約を受ける。
式中、関数fは、以下の
とT
iとT
i,spとの間の関係に従って定義される。
依然として図14を参照すると、フロー図1400は、空気供給側サブシステムの各々のHVAC機器を操作するために最適な温度セットポイントを使用すること(ブロック1408)を含むように示されている。例えば、各低次元空気供給側MPC612~616は、対応する空気供給側サブシステム632~636の空気供給側HVAC機器622~626を操作することができる。空気供給側機器622~626は、図1A~1Bおよび図3を参照して説明されるように、空気供給側システム50、空気供給側システム130および/または空気供給側システム300の機器のいくつかまたはすべてを含み得る。空気供給側機器622~626を操作することは、機器を起動もしくは解除すること、動作セットポイントを調整すること、または、空気供給側機器を別の方法で制御することを含み得る。
ここで図15を参照すると、いくつかの実施形態による、MPCシステム600によって実行することができるモデル予測制御技法を示すフロー図1500が示されている。フロー図1500は、複数の空気供給側サブシステムの各々に対する最適な温度プロファイルを生成するために高次元モデル予測コントローラ(MPC)において高次元最適化を実行すること(ブロック1502)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、高次元最適化は、図6~7を参照して説明されるように、高次元MPC608によって実行される。高次元最適化は、図14を参照して説明される高次元最適化と同じものまたは同様のものであり得る。
ブロック1502における高次元最適化は、各空気供給側サブシステムに対する最適な温度プロファイル
を生成することができる。最適な温度プロファイル
は、各低次元空気供給側サブシステム632~636に対する予測温度状態
のベクトルを含み得る。予測温度状態
の各ベクトルは、最適化期間の間の各時間ステップkに対する予測建物温度状態
を含み得る。温度状態
は、例えば、米国特許第9,235,657号明細書で説明されるようなカルマンフィルタを含む、様々な予測技法のいずれかを使用して予測することができる。
フロー図1500は、高次元MPCから複数の低次元MPCに最適な空気供給側サブシステム温度プロファイル
を提供すること(ブロック1504)を含むように示されている。各サブシステム温度プロファイル
は、高次元MPC608から低次元空気供給側MPC612~616のうちの1つに送信することができる。いくつかの実施形態では、各低次元空気供給側MPCは、特定の空気供給側サブシステムのモニタおよび制御を行うように構成される。各低次元空気供給側MPCは、その低次元空気供給側MPCによってモニタおよび制御が行われた空気供給側サブシステムに対する最適なサブシステム温度プロファイル
を受信することができる。
フロー図1500は、空気供給側サブシステムの各々に対する最適な温度セットポイントを生成するために低次元MPCの各々において低次元最適化を実行すること(ブロック1506)を含むように示されている。ブロック1506における低次元最適化は、ブロック1406における低次元最適化と同様のものであり得る。しかし、ブロック1506における低次元最適化は、使用される熱エネルギーの総量を最小化するというよりむしろ、ブロック1502における高次元最適化によって生成された最適な温度を追跡するために、低次元最適化問題を公式化することができる。
いくつかの実施形態では、ブロック1506における低次元最適化は、
として公式化することができ、以下の制約を受ける。
式中、関数fは、以下の
とT
iとT
i,spとの間の関係に従って定義される。
依然として図15を参照すると、フロー図1500は、空気供給側サブシステムの各々のHVAC機器を操作するために最適な温度セットポイントを使用すること(ブロック1508)を含むように示されている。例えば、各低次元空気供給側MPC612~616は、対応する空気供給側サブシステム632~636の空気供給側HVAC機器622~626を操作することができる。空気供給側機器622~626は、図1A~1Bおよび図3を参照して説明されるように、空気供給側システム50、空気供給側システム130および/または空気供給側システム300の機器のいくつかまたはすべてを含み得る。空気供給側機器622~626を操作することは、機器を起動もしくは解除すること、動作セットポイントを調整すること、または、空気供給側機器を別の方法で制御することを含み得る。
例示的な実施形態の構成
様々な例示的な実施形態に示されるようなシステムおよび方法の構築および配列は単なる例示である。この開示ではほんのわずかの実施形態のみを詳細に説明してきたが、多くの変更形態(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および割合、パラメータの値、取り付け方法、材料の使用、色、配向などの変化)が可能である。例えば、要素の位置を逆にするかまたは別の方法で変化させることができ、個別の要素または位置の性質または数を変更するかまたは変化させることができる。それに従って、そのような変更形態はすべて本開示の範囲内に含まれることが意図される。いかなるプロセスまたは方法ステップの順序または順番も代替の実施形態に従って変化させるかまたは並べ替えることができる。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件および配列における他の置換、変更、変化および省略を行うことができる。
本開示は、様々な動作を遂行するためのいかなる機械可読媒体における方法、システムおよびプログラム製品をも企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、このまたは別の目的のために組み込まれた適切なシステム用の専用コンピュータプロセッサによって、あるいは、配線接続されたシステムによって実装することができる。本開示の範囲内の実施形態は、格納された機械実行可能命令またはデータ構造を保持するかまたは有するための機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用もしくは専用コンピュータまたはプロセッサを伴う他の機械によるアクセスが可能な利用可能ないかなる媒体でもあり得る。例示として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROMまたは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、あるいは、機械実行可能命令またはデータ構造の形態の所望のプログラムコードを保持または格納するために使用することができ、汎用もしくは専用コンピュータまたはプロセッサを伴う他の機械によるアクセスが可能な他の任意の媒体を含み得る。上記の組合せもまた、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、ある特定の機能または機能グループを汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは専用処理機械に実行させる命令およびデータを含む。
図は方法ステップの特定の順序を示しているが、ステップの順序は、描写される順序とは異なるものでもよい。また、2つ以上のステップを同時にまたは部分的に同時に実行することもできる。そのような変動は、選ばれるソフトウェアおよびハードウェアシステムならびに設計者の選択に依存する。そのような変動はすべて、本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェア実装形態は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップおよび決定ステップを遂行するために、規則ベースの論理および他の論理を伴う標準プログラミング技法を用いて遂行することができる。