以下、添付図面を参照して、超音波プローブ及び超音波診断装置の実施形態及び各変形例を詳細に説明する。
(実施形態)
まず、実施形態に係る超音波プローブが適用された超音波診断装置の構成の一例について説明する。図1は、実施形態に係る超音波診断装置100の構成の一例を説明するための図である。図1に示すように、実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。そして、反射された超音波は、反射波(エコー)として超音波プローブ1で受信される。反射波は、超音波プローブ1で反射波信号に変換される。反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、反射波信号は、超音波プローブ1で後述する加算信号に変換されて出力される。超音波プローブ1は、コンベックス型でもセクタ型でもよく、様々なタイプの超音波プローブを超音波プローブ1として用いることができる。
なお、超音波プローブ1は、後述する複数の振動素子21(図2参照)を備えている。複数の振動素子21は、ラテラル方向及びエレベーション方向に沿って2次元的に配置されており、複数のサブアレイに分割されている。なお、サブアレイとは、例えば、複数の振動素子21を、所定数の振動素子21ごとのグループに分けた場合の各グループを指す。1つのサブアレイは、所定数の振動素子21で構成されている。超音波プローブ1の構成については後述する。
ディスプレイ2は、超音波診断装置100のユーザが入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像データが示す超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ2は、表示部の一例である。
入力装置3は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、ジョイスティック等により実現される。入力装置3は、超音波診断装置100のユーザからの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して、受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置3は、超音波プローブ1を制御するための各種設定要求を受け付けて、装置本体10に転送する。
装置本体10は、超音波プローブ1による超音波の送信、及び、超音波プローブ1による反射波の受信を制御する。そして、装置本体10は、超音波プローブ1から送信される後述する加算信号に基づいて、超音波画像を生成する。装置本体10は、図1に示すように、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、画像生成回路14と、記憶回路15と、制御回路16とを有する。
送受信回路11は、制御回路16による制御を受けて、超音波プローブ1と装置本体10との間で各種データ等の送受信を行う。例えば、送受信回路11は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波を形成するための送信パルス(レートパルス)を繰り返し発生し、発生した送信パルスを超音波プローブ1に送信する。
また、例えば、送受信回路11は、超音波プローブ1に、超音波プローブ1から送信される超音波に対する遅延時間(送信遅延時間)を送信する。具体例を挙げて説明すると、送受信回路11は、各振動素子21が出力(送信)する超音波に対する送信遅延時間を送信する。
また、送受信回路11は、超音波プローブ1に、反射波信号に対する遅延時間(受信遅延時間)を送信する。具体例を挙げて説明すると、送受信回路11は、超音波プローブ1に、各振動素子21が送信する反射波信号に対する受信遅延時間を送信する。
また、送受信回路11は、A/D(Analog to Digital)変換器と受信ビームフォーマとを有する。送受信回路11が超音波プローブ1から出力されたサブアレイごとのアナログ形式の加算信号を受信すると、まず、A/D変換器が、アナログ形式の加算信号をデジタル形式の加算信号に変換する。そして、受信ビームフォーマは、サブアレイごとのデジタル形式の加算信号に対して整相加算処理を行って反射波データを生成する。そして、受信ビームフォーマは、生成した反射波データをBモード処理回路12及びドプラ処理回路13に送信する。
Bモード処理回路12は、送受信回路11から出力された反射波データを受信する。そして、Bモード処理回路12は、受信した反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路12は、例えば、プロセッサにより実現される。
ドプラ処理回路13は、送受信回路11から出力された反射波データを受信する。そして、ドプラ処理回路13は、受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ドプラ処理回路13は、例えば、プロセッサにより実現される。
画像生成回路14は、Bモード処理回路12及びドプラ処理回路13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路14は、Bモード処理回路12が生成したBモードデータからエコーの強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路14は、ドプラ処理回路13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像データを生成する。画像生成回路14は、例えば、プロセッサにより実現される。
記憶回路15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路15は、画像生成回路14が生成した超音波画像データを記憶する。また、記憶回路15は、Bモード処理回路12やドプラ処理回路13が生成したデータを記憶してもよい。
また、記憶回路15は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
また、記憶回路15は、上述した各種の遅延時間(送信遅延時間及び受信遅延時間)を計算するための要素を記憶する。例えば、このような要素としては、各振動素子21の位置を示す座標、及び、焦点の位置を示す座標等が挙げられる。
制御回路16は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。例えば、制御回路16は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路15から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13及び画像生成回路14の処理を制御する。また、制御回路16は、記憶回路15が記憶する超音波画像データや、記憶回路15が記憶する各種画像データ、又は、画像生成回路14による処理を行なうためのGUI、画像生成回路14の処理結果等を表示するようにディスプレイ2を制御する。本実施形態では、制御回路16は、後述する加算信号から得られた超音波画像データが示す超音波画像を表示するようにディスプレイ2を制御する。すなわち、制御回路16は、加算信号に基づく超音波画像を表示するようにディスプレイ2を制御する。制御回路16は、表示制御部の一例である。
また、制御回路16は、チャンネル毎の送信遅延時間及びチャンネル毎の受信遅延時間を超音波プローブ1に送信するように、送受信回路11を制御する。ここで、本実施形態では、1つの振動素子21に対して1つのチャンネルが割り当てられる。
制御回路16は、記憶回路15に記憶された各種の遅延時間を計算するための要素を記憶回路15から読み出し、読み出した要素に基づいて、振動素子21毎、すなわち、チャンネル毎の上述した各種の遅延時間を計算する。そして、制御回路16は、チャンネル毎の各種の遅延時間を超音波プローブ1に送信するように、送受信回路11を制御する。制御回路16は、例えば、プロセッサにより実現される。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る超音波プローブ1の構成の一例について説明する。図2は、実施形態に係る超音波プローブ1の構成の一例を説明するための図である。
図2に示すように、超音波プローブ1は、複数の振動素子21、複数のサブアレイユニット22及び制御回路23を備える。なお、サブアレイユニット22および制御回路23が装置本体10に備えられていてもよい。また、サブアレイユニット22および制御回路23のうち制御回路23のみが装置本体10に備えられることとしてもよい。
複数の振動素子21は、上述したように、ラテラル方向及びエレベーション方向に沿って2次元的に配置されており、複数のサブアレイに分割されている。本実施形態では、制御回路23により各振動素子21の送信遅延時間が設定され、各振動素子21は、送信遅延時間に応じたタイミングで、駆動信号に基づく超音波を被検体Pに向けて送信する。
1つのサブアレイに対して1つのサブアレイユニット22が設けられる。各サブアレイユニット22は、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d、加算回路22e、バッファ22f及びスイッチS1,S2,S3を備える。これらのうち、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d及びスイッチS1,S2,S3は、各サブアレイユニット22内に、サブアレイを構成するチャンネルの数分存在する。このように、チャンネルごとに、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d及びスイッチS1,S2,S3が設けられる。すなわち、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d及びスイッチS1,S2,S3は、振動素子21毎に設けられる。
一方、加算回路22e及びバッファ22fは、各サブアレイユニット22に、1つずつ設けられる。すなわち、1つのサブアレイに対して1つの加算回路22e及び1つのバッファ22fが設けられる。
また、制御回路23は、超音波プローブ1内に1つ設けられる。
バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d、加算回路22e、バッファ22f及びスイッチS1,S2,S3は、超音波プローブ1に含まれる不図示の1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)上に設けられる。
バッファ22aは、送受信回路11及びスイッチS3に接続されている。送受信回路11は、バッファ22aを介して、送信パルスをアナログ遅延回路22bに送信する。
アナログ遅延回路22bは、アナログ回路により実現される回路である。アナログ遅延回路22bは、スイッチS2及びスイッチS3に接続されている。アナログ遅延回路22bは、複数のスイッチトキャパシタを有する。スイッチトキャパシタは、例えば、メモリ素子の機能を有し、超音波信号を一時的に保持する。スイッチトキャパシタに入力される超音波信号は、例えば、装置本体10の送受信回路11から送信される送信パルス、及び、プリアンプ22dから送信される反射波信号である。
アナログ遅延回路22bは、複数のスイッチトキャパシタを用いて超音波信号を遅延させる遅延処理を実行する。すなわち、アナログ遅延回路22bは、複数のスイッチトキャパシタを用いて超音波信号に対して遅延時間を付与する。
例えば、アナログ遅延回路22bは、振動素子21から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な振動素子21(チャンネル)毎の遅延時間を、装置本体10から供給される送信パルスに対して与える遅延処理を実行する。例えば、アナログ遅延回路22bは、制御回路23による制御を受けて、装置本体10から出力されたチャネル毎の送信パルスに対して、チャンネル毎に設定された遅延時間を与える。そして、アナログ遅延回路22bは、遅延時間が与えられた送信パルスを、スイッチS2を介して、パルサ22cへ送信する。
また、アナログ遅延回路22bは、制御回路23による制御を受けて、プリアンプ22dから送信された反射波信号に対して、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える遅延処理を実行する。そして、アナログ遅延回路22bは、遅延時間が与えられた反射波信号を、スイッチS2を介して、加算回路22eに送信する。アナログ遅延回路は、遅延回路の一例である。
パルサ22cは、スイッチS2に接続されているとともに、振動素子21に接続されている。パルサ22cは、制御回路23による制御を受けて、所定の振幅値の駆動信号を発生する。例えば、パルサ22cは、アナログ遅延回路22bから送信された送信パルスに基づいて駆動信号を発生し、発生した駆動信号を振動素子21に送信する。
プリアンプ22dは、スイッチS1及びスイッチS3に接続されている。プリアンプ22dは、スイッチS1を介して、振動素子21から送信された反射波信号を受信すると、受信した反射波信号を予め設定されたゲインによって増幅する。そして、プリアンプ22dは、増幅した反射波信号を、スイッチS3を介してアナログ遅延回路22bに送信する。
加算回路22eは、スイッチS2及びバッファ22fに接続されている。加算回路22eは、1つのサブアレイを構成する複数のチャンネルに対応する複数のアナログ遅延回路22bから送信された遅延処理後の複数の反射波信号を加算する加算処理を実行する。そして、加算回路22eは、加算処理により複数の反射波信号が加算されることにより得られた1つの信号(加算信号)を送受信回路11に送信する。加算回路22eは、加算部の一例である。また、加算信号は、超音波信号の一例である。
バッファ22fは、加算回路22eから送信された加算信号を送受信回路11へ出力する。加算回路22eは、バッファ22fを介して、加算信号を送受信回路11に送信する。
スイッチS1は、制御回路23による制御を受けて、超音波の送信時には切断され、パルサ22cが発生する大振幅信号がプリアンプ22dへ入力されることを防ぐ。
また、スイッチS1は、振動素子21から送信された反射波信号をプリアンプ22dに供給する場合には、閉じられる。すなわち、スイッチS1は、反射波の受信時には、振動素子21とプリアンプ22dとを接続する。
スイッチS2は、制御回路23による制御を受けて、アナログ遅延回路22bから送信される超音波信号の送信先を、パルサ22c及び加算回路22eのうちのいずれか一方に選択的に切り替える。例えば、スイッチS2は、超音波の送信時には、遅延時間が与えられた送信パルスの送信先をパルサ22cに切り替える。すなわち、スイッチS2は、超音波の送信時には、アナログ遅延回路22bとパルサ22cとを接続する。また、スイッチS2は、反射波の受信時には、遅延時間が与えられた反射波信号の送信先を加算回路22eに切り替える。すなわち、スイッチS2は、反射波の受信時には、アナログ遅延回路22bと加算回路22eとを接続する。
スイッチS3は、制御回路23による制御を受けて、アナログ遅延回路22bに入力される超音波信号の送信元を、バッファ22a及びプリアンプ22dのうちのいずれか一方に選択的に切り替える。例えば、スイッチS3は、超音波の送信時には、送受信回路11から送信された送信パルスがアナログ遅延回路22bに入力されるように、アナログ遅延回路22bとバッファ22aとを接続する。また、スイッチS3は、反射波の受信時には、プリアンプ22dから送信された反射波信号がアナログ遅延回路22bに入力されるように、アナログ遅延回路22bとプリアンプ22dとを接続する。
なお、スイッチS2及びスイッチS3は、アナログ遅延回路22bを送信及び受信で共用するために設けられている。しかしながら、アナログ遅延回路22bを、送信用のアナログ遅延回路及び受信用のアナログ遅延回路に分けてもよい。この場合、スイッチS2及びスイッチS3は、超音波プローブ1に設けられなくてもよい。
制御回路23は、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d、加算回路22e、バッファ22f及びスイッチS1,S2,S3を制御する。以下、バッファ22a、アナログ遅延回路22b、パルサ22c、プリアンプ22d、加算回路22e、バッファ22f及びスイッチS1,S2,S3を制御対象と称する場合がある。例えば、制御回路23は、各制御対象が上述した動作を行うように各制御対象を制御する。また、例えば、制御回路23は、各制御対象に、各種の制御信号を送信することにより、各制御対象を制御する。
例えば、制御回路23は、チャンネル毎に、チャンネルに対応するアナログ遅延回路22bに供給する各種の制御信号を生成する。制御回路23による各種の制御信号の生成方法の一例について説明する。例えば、制御回路23は、装置本体10の送受信回路11から、各チャンネルに対応する送信遅延時間を受信する。そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22bに入力された送信パルスが、送信遅延時間分遅延してアナログ遅延回路22bから出力させるための制御信号を、送信遅延時間に基づいて生成する。そして、制御回路23は、生成した制御信号をアナログ遅延回路22bに送信する。
また、制御回路23は、装置本体10の送受信回路11から、各チャンネルに対応する受信遅延時間を受信する。そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22bに入力された反射波信号が、受信遅延時間分遅延してアナログ遅延回路22bから出力させるための制御信号を、受信遅延時間に基づいて生成する。そして、制御回路23は、生成した制御信号をアナログ遅延回路22bに送信する。制御回路23は、例えば、プロセッサにより実現される。制御回路23は、制御部の一例である。
次に、図3を参照して、本実施形態に係るアナログ遅延回路22bの構成の一例について説明する。図3は、実施形態に係るアナログ遅延回路22bの構成の一例を説明するための図である。
図3に示すアナログ遅延回路22bは、入力された送信パルスの一部を、あるサンプリング周期でサンプリングし、複数のサンプル時点での送信パルスの一部のそれぞれを記憶する。そして、アナログ遅延回路22bは、サンプリングされて記憶された送信パルスの一部のそれぞれを送信遅延時間に対応するタイミングで順次読み出し、再び連続した送信パルスとしてパルサ22cに送信する。
また、アナログ遅延回路22bは、入力された反射波信号の一部を、あるサンプリング周期でサンプリングし、複数のサンプル時点での反射波信号の一部のそれぞれを記憶する。そして、アナログ遅延回路22bは、サンプリングされて記憶された反射波信号の一部のそれぞれを受信遅延時間に対応するタイミングで順次読み出し、再び連続した反射波信号として加算回路22eに送信する。
図3に示すように、アナログ遅延回路22bは、複数のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_n(nは、2以上の自然数)と、入力端子43と、出力端子44とを備える。スイッチトキャパシタSC_k(k=1,2,・・・n)は、書き込み用スイッチ40_kと、メモリ素子としてのキャパシタ(コンデンサ)41_kと、読み出し用スイッチ42_kとを備える。
書き込み用スイッチ40_kの一端は、入力端子43に接続されている。
入力端子43は、スイッチS3に接続されている。入力端子43には、模式的に矢印50により示されるように、送受信回路11から送信された送信パルス、及び、プリアンプ22dから送信された反射波信号が入力される。
書き込み用スイッチ40_kの他端は、キャパシタ41_kの一端に接続されている。キャパシタ41_kの他端は、グランドに接地されている。
読み出し用スイッチ42_kの一端は、キャパシタ41_kの一端に接続されている。読み出し用スイッチ42_kの他端は、出力端子44に接続されている。
出力端子44は、スイッチS2に接続されている。模式的に矢印51により示されるように、出力端子44から、遅延された送信パルス及び遅延された反射波信号がスイッチS2に出力される。
また、書き込み用スイッチ40_kは、制御信号入力端子45_kを備える。
制御信号入力端子45_kは、制御回路23に接続されている。制御信号入力端子45_kには、制御回路23から、書き込み用の制御信号(書き込み用制御信号)が入力される。書き込み用制御信号については後述する。
複数の書き込み用スイッチ40_1〜40_nのそれぞれは、書き込み用制御信号に応じて、入力された送信パルスの一部をサンプリングする。そして、複数の書き込み用スイッチ40_1〜40_nのそれぞれは、サンプリングされた各送信パルスの一部を、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに書き込む。これにより、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれは、サンプリングされた複数の送信パルスの一部のそれぞれを記憶する。
同様に、複数の書き込み用スイッチ40_1〜40_nのそれぞれは、書き込み用制御信号に応じて、入力された反射波信号の一部をサンプリングする。そして、複数の書き込み用スイッチ40_1〜40_nのそれぞれは、サンプリングされた各反射波信号の一部を、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに書き込む。これにより、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれは、サンプリングされた複数の反射波信号の一部のそれぞれを記憶する。
また、読み出し用スイッチ42_kは、制御信号入力端子46_kを備える。
制御信号入力端子46_kは、制御回路23に接続されている。制御信号入力端子46_kには、制御回路23から、読み出し用の制御信号(読み出し用制御信号)が入力される。読み出し用制御信号については後述する。
複数の読み出し用スイッチ42_1〜42_nのそれぞれは、読み出し用制御信号に応じて、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに書き込まれた(記憶された)送信パルスの一部を読み出す。そして、複数の読み出し用スイッチ42_1〜42_nは、読み出された送信パルスの一部を順々に出力することで、連続した送信パルスを出力する。
同様に、複数の読み出し用スイッチ42_1〜42_nのそれぞれは、読み出し用制御信号に応じて、複数のキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに書き込まれた反射波信号の一部を読み出す。そして、複数の読み出し用スイッチ42_1〜42_nは、読み出された反射波信号の一部を順々に出力することで、連続した反射波信号を出力する。
次に、図4を参照して、本実施形態に係る書き込み用制御信号及び読み出し用制御信号の一例について説明する。図4は、実施形態に係る複数の書き込み用制御信号47_1〜47_n、及び、複数の読み出し用制御信号48_1〜48_nの一例を示す図である。
書き込み用制御信号47_kは、制御信号入力端子45_kに入力される。書き込み用スイッチ40_kは、書き込み用制御信号47_kがオン(ハイレベル)を示す期間、入力端子43とキャパシタ41_kとの間を導通させる。すなわち、書き込み用スイッチ40_kは、入力端子43とキャパシタ41_kとを電気的に接続させる。例えば、書き込み用制御信号47_kがオンを示す期間は、超音波診断装置100のシステムクロックの1クロック分の期間に一致する。
また、書き込み用スイッチ40_kは、書き込み用制御信号47_kがオフ(ローレベル)を示す期間、入力端子43とキャパシタ41_kとの電気的な接続を遮断する。
これにより、キャパシタ41_kは、書き込み用制御信号47_kがオンを示す期間、電荷を蓄積する。すなわち、キャパシタ41_kは、入力端子43に入力された送信パルスのうち、書き込み用制御信号47_kがオンを示す期間分の一部(送信パルスの一部)をサンプリングし、サンプリングされた送信パルスの一部を記憶する。同様に、キャパシタ41_kは、入力端子43に入力された反射波信号のうち、書き込み用制御信号47_kがオンを示す期間分の一部(反射波信号の一部)をサンプリングし、サンプリングされた反射波信号の一部を記憶する。
また、キャパシタ41_kには、書き込み用制御信号47_kがオフを示す期間分の送信パルスの一部及び反射波信号の一部が書き込まれない。
複数の書き込み用制御信号47_1〜47_nでは、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。このため、アナログ遅延回路22bでは、模式的に矢印52(図3参照)により示されるように、送信パルスの一部が、あるサンプリング周期でサンプリングされ、キャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに記憶される。同様に、反射波信号の一部が、あるサンプリング周期でサンプリングされ、キャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに記憶される。
また、図4に示すように、複数の書き込み用制御信号47_1〜47_nは、所定の周期T1で、オンを示す状態となる。そして、書き込み用制御信号47_nがオンを示す状態となった後に、再び、書き込み用制御信号47_1がオンを示す状態となる。そして、再び、複数の書き込み用制御信号47_1〜47_nで、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わる。
このため、アナログ遅延回路22bでは、模式的に矢印53(図3参照)により示されるように、キャパシタ41_nに記憶された送信パルスの一部のサンプル時点よりも後の複数のサンプル時点でサンプリングされた複数の送信パルスの一部のそれぞれが、再びキャパシタ41_1〜41_nの順にキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに上書きされて記憶される。同様に、キャパシタ41_nに記憶された反射波信号の一部のサンプル時点よりも後の複数のサンプル時点でサンプリングされた複数の反射波信号の一部のそれぞれが、再びキャパシタ41_1〜41_nの順にキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれに上書きされて記憶される。
読み出し用制御信号48_kは、制御信号入力端子46_kに入力される。読み出し用スイッチ42_kは、読み出し用制御信号48_kがオンを示す期間、出力端子44とキャパシタ41_kとの間を導通させる。すなわち、読み出し用スイッチ42_kは、出力端子44とキャパシタ41_kとを電気的に接続させる。例えば、読み出し用制御信号48_kがオンを示す期間は、上述したシステムクロックの1クロック分の期間に一致する。
また、読み出し用スイッチ42_kは、読み出し用制御信号48_kがオフを示す期間、出力端子44とキャパシタ41_kとの間の電気的な接続を遮断する。
これにより、キャパシタ41_kは、読み出し用制御信号48_kがオンを示す期間、電荷を放出する。すなわち、読み出し用スイッチ42_kは、キャパシタ41_kに記憶された送信パルスの一部を読み出し、読み出された送信パルスの一部を出力端子44から出力する。同様に、読み出し用スイッチ42_kは、キャパシタ41_kに記憶された反射波信号の一部を読み出し、読み出された反射波信号の一部を出力端子44から出力する。
なお、キャパシタ41_kは、読み出し用制御信号48_kがオフを示す期間、記憶済みの送信パルスの一部又は反射波信号の一部を記憶し続ける。
読み出し用制御信号48_kでは、オンを示す状態が、書き込み用制御信号47_kのオンを示す状態から遅延時間T2だけ遅れて現れる。ここで、遅延時間T2は、送信パルスが遅延される場合には、上述した送信遅延時間である。また、遅延時間T2は、反射波信号が遅延される場合には、上述した受信遅延時間である。これにより、キャパシタ41_kに記憶された送信パルスの一部又は反射波信号の一部は、キャパシタ41_kに記憶されてから遅延時間T2後に読み出される。なお、遅延時間T2は、チャンネル毎に固有の値であるため、アナログ遅延回路22b毎に固有の値である。
また、複数の読み出し用制御信号48_1〜48_nでは、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。このため、アナログ遅延回路22bでは、模式的に矢印54(図3参照)により示されるように、サンプリングされた複数の送信パルスの一部のそれぞれが、キャパシタ41_1〜41_nのそれぞれから読み出される。同様に、サンプリングされた複数の反射波信号の一部のそれぞれが、キャパシタ41_1〜41_nのそれぞれから読み出される。
また、複数の読み出し用制御信号48_1〜48_nでは、複数の書き込み用制御信号47_1〜47_nと同様に、所定の周期T1で、オンを示す状態となる。そして、読み出し用制御信号48_nがオンを示す状態となった後に、再び、読み出し用制御信号48_1がオンを示す状態となる。そして、再び、複数の読み出し用制御信号48_1〜48_nで、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わる。
このため、アナログ遅延回路22bでは、キャパシタ41_nから送信パルスの一部が読み出された後に、キャパシタ41_nから読み出された送信パルスの一部のサンプル時点よりも後の複数のサンプル時点でサンプリングされた複数の送信パルスの一部のそれぞれが、再びキャパシタ41_1〜41_nの順でキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれから読み出される。同様に、キャパシタ41_nから反射波信号の一部が読み出された後に、キャパシタ41_nから読み出された反射波信号の一部のサンプル時点よりも後の複数のサンプル時点でサンプリングされた複数の反射波信号の一部のそれぞれが、再びキャパシタ41_1〜41_nの順でキャパシタ41_1〜41_nのそれぞれから読み出される。そして、アナログ遅延回路22bでは、このような読み出し動作が、繰り返される。
ここで、上述した周期T1は、複数のキャパシタ41_1〜41_nの個数に応じた値である。なお、複数のキャパシタ41_1〜41_nの個数は、アナログ遅延回路22bで行われる遅延処理での最大遅延時間に応じた値である。
上述したように、書き込み用制御信号47_k及び読み出し用制御信号48_kは、オンを示す状態を周期T1で繰り返す周期性を有する。このような書き込み用制御信号47_k及び読み出し用制御信号48_kの周期性により、反射波信号に、設計上意図されない周波数成分(スプリアス)がノイズ成分として重畳されてしまう。このようなノイズは、例えば、周期ノイズとも称される。周期ノイズの周期(ノイズ周期)は、周期T1である。そして、反射波信号に周期ノイズが重畳されるため、結果的に、加算信号にも周期ノイズが重畳されてしまう。
例えば、アナログ遅延回路22bから出力される反射波信号、及び、加算回路22eから出力される加算信号に、ノイズ成分が重畳されてしまう。このようなノイズ成分は、超音波画像上の虚像となる。
図5は、反射波信号に重畳されるノイズ成分の一例を説明するための図である。図5は、反射波信号を周波数解析した結果を示す。横軸は、周波数を示し、縦軸は、振幅を示す。
図5に示すように、矢印56aが示す基本周波数(1/T1)の成分には、ノイズ成分が含まれている。また、矢印56b〜56fが示す基本周波数の倍数((2/T1)、(3/T1)、(4/T1)、(5/T1)、(6/T1))の成分にも、ノイズ成分が含まれている。ここで、基本周波数(1/T1)の成分は、基本波成分とも称される。また、基本周波数の2倍(2/T1)の成分、3倍(3/T1)の成分、4倍(4/T1)の成分、5倍(5/T1)の成分及び6倍(6/T1)の成分のそれぞれは、2次高調波成分、3次高調波成分、4次高調波成分、5次高調波成分、6次高調波成分とも称される。また、図5において図示していないが、基本周波数の7倍(7/T1)の成分にも、ノイズ成分が含まれる。基本周波数の7倍の成分は、7次高調波成分とも称される。
これらの成分のうち、基本波成分、3次高調波成分、5次高調波成分及び7次高調波成分は、奇数次高調波成分とも称される。また、2次高調波成分、4次高調波成分及び6次高調波成分は、偶数次高調波成分とも称される。
ここで、図6及び図7を参照して、反射波信号に重畳される周期ノイズが周期性を有する理由の一例について説明する。図6は、図3に示すアナログ遅延回路22bが備えるスイッチトキャパシタSC_1〜SC_nの個数が「5」である場合、すなわち、「n」=「5」である場合のアナログ遅延回路22bを模式的に示す図である。図7は、スイッチトキャパシタSC_1〜SC_5のそれぞれから出力される出力信号に重畳される周期ノイズのパターンの一例を示す図である。
図6に示すように、入力端子43と、スイッチトキャパシタSC_m(m=1,2,・・・,5)とを接続する配線の長さは、スイッチトキャパシタSC_mの位置に応じた長さとなる。例えば、入力端子43とスイッチトキャパシタSC_mとを接続する配線の長さを「L1_m」で表すと、アナログ遅延回路22bの回路レイアウトが図6のようになっている場合、「L1_1」、「L1_2」、「L1_3」、「L1_4」及び「L1_5」は、この順で大きくなり、互いに異なる。
また、図6に示すように、出力端子44と、スイッチトキャパシタSC_mとを接続する配線の長さも、スイッチトキャパシタSC_mの位置に応じた長さとなる。例えば、出力端子44とスイッチトキャパシタSC_mとを接続する配線の長さを「L2_m」で表すと、アナログ遅延回路22bの回路レイアウトが図6のようになっている場合、「L2_1」、「L2_2」、「L2_3」、「L2_4」及び「L2_5」は、この順で大きくなり、互いに異なる。
このため、スイッチトキャパシタSC_m毎に、寄生インピーダンスが異なる。
また、制御回路23と、スイッチトキャパシタSC_mとを接続する配線の長さも、スイッチトキャパシタSC_mの位置に応じた長さとなる。例えば、制御回路23とスイッチトキャパシタSC_mとを接続する配線の長さを「L3_m」で表すと、「L3_1」、「L3_2」、「L3_3」、「L3_4」及び「L3_5」は、互いに異なる。このため、スイッチトキャパシタSC_m毎に、入力される制御信号の波形の立ち上がり速度及び立ち下がり速度が異なる。この結果、スイッチトキャパシタSC_m毎に、フィードスルーの程度が異なる。すなわち、制御信号の一部がノイズとしてスイッチトキャパシタSC_mから出力される出力信号に重畳されるが、このノイズの程度が、スイッチトキャパシタSC_m毎に異なる。
したがって、スイッチトキャパシタSC_mから出力される出力信号に重畳される周期ノイズのパターンを「P_m」で表すと、図7に示すように、パターンP_1とパターンP_2とパターンP_3とパターンP_4とパターンP_5とは、互いに異なる。そして、パターンP_1〜P_5のセットが繰り返し表れる。各スイッチトキャパシタSC_mから重畳されるノイズが同じ波形である場合、そのノイズ周期はサンプリング周期に等しくなる。この場合、ノイズの周波数は、超音波プローブ1の周波数帯域外になるため問題とならない。しかしながら、各スイッチトキャパシタSC_mから重畳されるノイズの波形に違いがある場合、図7に示すように、アナログ遅延回路22bから出力される反射波信号60には、周期T1の周期性を有するノイズである周期ノイズが重畳される。このノイズの周波数は超音波周波数帯域内であるため、問題となる。
ここで、周期ノイズを低減するために、以下で説明する処理を行うことも考えられる。図8は、周期ノイズを低減するための処理の一例を説明するための図である。
図8には、反射波信号200、キャンセル用信号201及び画像信号202が示されている。反射波信号200には、周期ノイズ200aが重畳されている。
キャンセル用信号201は、超音波プローブの振動素子が、超音波を送信せずに出力する反射波信号である。すなわち、キャンセル用信号201は、被検体からの超音波の反射波が含まれていない反射波信号である。キャンセル用信号201には、周期ノイズ201aが重畳されている。
そして、送受信回路の受信部が、反射波信号200からキャンセル用信号201を減じることにより、映像化に用いられる画像信号202を算出する。
図8に示すように、反射波信号200に重畳された周期ノイズ200aが、画像信号202では、抑制されている。このように、画像信号202では、周期ノイズが低減される。
しかしながら、1つの画像信号202を生成する際に、反射波信号200からキャンセル用信号201を減じる減算処理を行う必要がある。すなわち、1レート分の超音波画像データを生成する際に、送受信動作を2回行う必要がある。このため、フレームレートが低下する虞がある。
また、1つの画像信号202を生成する際に、2つの信号(反射波信号200及びキャンセル用信号201)を用いた減算処理が行われる。例えば、一般的に、加減算される信号の個数を「s」とすると、周期性を起因とする周期ノイズ以外のランダム性のノイズの量は、「s1/2」に比例する。上述した方法で周期ノイズを抑制する場合には、1つの反射波信号200を映像化に用いる画像信号202として用いる場合を基準とすると、ランダム性のノイズの量が、「21/2」倍となり、増加する。
そこで、実施形態に係る超音波プローブ1は、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に含まれるノイズを抑制することができるように、以下に説明する処理を実行する。
図9は、実施形態に係る制御回路23が実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、制御回路23は、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、ペアとなる2つのチャンネルを決定する。以下の説明では、ペアとなる2つのチャンネルを、ペアチャンネルと称する場合がある。例えば、制御回路23は、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、任意の2つのチャンネルの組合せをペアチャンネルとして決定する。例えば、制御回路23は、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、1つのペアチャンネルを決定してもよいし、可能な限り多くのペアチャンネルを決定してもよい。すなわち、制御回路23は、サブアレイ毎に、少なくとも1つのペアチャンネルを決定する。制御回路23は、ペアチャンネル毎に以下に説明する処理を行う。
そして、制御回路23は、図9に示すように、ペアチャンネルのうち、一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置と、他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置とが、同一の時刻において、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずれるように、読み出し位置を制御する。以下の説明では、一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bを「アナログ遅延回路22b_1」と表記し、他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bを「アナログ遅延回路22b_2」と表記する。
例えば、図9に示すアナログ遅延回路22b_1,22b_2は、12個のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_12を備える。以下の説明では、12個のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_12を区別しない場合には、単に「スイッチトキャパシタSC」と表記する場合がある。上述した「読み出し位置」とは、反射波信号が読み出されるスイッチトキャパシタSCのことを指す。なお、スイッチトキャパシタSCの数は12個に限定されるものではく任意の数とすることができる。また、アナログ遅延回路22b内に含まれる全てのスイッチトキャパシタSCを必ずしも用いる必要はなく、例えばスイッチトキャパシタSC_1〜SC_12のうち、スイッチトキャパシタSC_1〜SC_6など一部のスイッチトキャパシタSCのみを用いることとしてもよい。
図9に示す場合、12個のスイッチトキャパシタSCが、ノイズ周期T1に対応し、6個のスイッチトキャパシタSCがノイズ周期T1の半周期(T1/2)に対応する。すなわち、1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数の半分の数のスイッチトキャパシタSCが、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)に対応する。
制御回路23は、同一時刻における、アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置とを異なるようにする。アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置は、第1読み出し位置の一例である。アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置は、第2読み出し位置の一例である。
例えば、制御回路23は、模式的に矢印61に示すように、時刻T0において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置がアナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_1となるように、読み出し位置を制御する。
また、制御回路23は、模式的に矢印62に示すように、時刻T0において、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置がアナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_7となるように、読み出し位置を制御する。ここで、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_7は、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_1から6個分のスイッチトキャパシタSCだけずれたスイッチトキャパシタSCに対応する。
ここで、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_kに入力される読み出し用制御信号48_kを、「48_k_1」で表す。また、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_kに入力される読み出し用制御信号48_kを、「48_k_2」で表す。
図9に示すように、時刻T0において、アナログ遅延回路22b_1では、読み出し用制御信号48_1_1がオフを示す状態からオンを示す状態に変化する。そして、複数の読み出し用制御信号48_1_1〜48_12_1では、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。すなわち、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_12により順々に読み出された反射波信号の一部が出力されることで、連続した反射波信号がアナログ遅延回路22b_1から出力される。
すなわち、アナログ遅延回路22b_1は、複数のキャパシタ41_1〜41_nを用いてアナログ遅延回路22b_1に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_1は、第1遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_1に対応するチャンネルは、第1チャンネルの一例である。反射波信号は、超音波信号の一例である。
一方、時刻T0において、アナログ遅延回路22b_2では、読み出し用制御信号48_7_2がオフを示す状態からオンを示す状態に変化する。そして、複数の読み出し用制御信号48_7_2〜48_12_2,48_1_2〜48_6_2では、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。すなわち、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_7〜SC_12,SC_1〜SC_6により順々に読み出された反射波信号の一部が出力されることで、連続した反射波信号がアナログ遅延回路22b_2から出力される。
すなわち、アナログ遅延回路22b_2は、複数のキャパシタ41_1〜41_nを用いてアナログ遅延回路22b_2に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_2は、第2遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_2に対応するチャンネルは、第2チャンネルの一例である。
ここで、図9には、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号に重畳される周期T1の周期ノイズの位相を示す波形63が示されている。また、図9には、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号に重畳される周期T1の周期ノイズの位相を示す波形64が示されている。すなわち、波形63は、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号の位相を示す波形でもある。同様に、波形64は、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号の位相を示す波形でもある。波形63及び波形64は、例えば、正弦波である。
図9に示すように、波形63の位相と波形64の位相との差(位相差)は、同一の時刻において、180度となる。このように、位相差が180度となる理由は、ある時刻Tにおけるアナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、この時刻Tにおけるアナログ遅延回路22b_2の読み出し位置とが、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずれているからである。このように位相差が180度であるため、アナログ遅延回路22b_1から出力された反射波信号とアナログ遅延回路22b_2から出力された反射波信号とが、加算回路22eにより加算されることで、周期ノイズがキャンセルされた加算信号が得られる。
したがって、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、周期ノイズが抑制された加算信号を得ることができる。
また、実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波画像データを生成する際に、上述したキャンセル用信号201を用いずに、反射波信号を用いる。このため、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、図8に示す場合を基準とすると、余計な減算をせずに超音波画像データを得るため、ランダム性のノイズを増加させることがない。
また、実施形態に係る超音波プローブ1では、加算回路22eにおいてビームフォーミングと周期ノイズのキャンセルとが同時に行われる。したがって、実施形態に係る超音波プローブ1では、超音波画像データを生成する際に、先の図8を参照して説明したようなキャンセル用信号201を用いた減算処理を行わずにすむ。このため、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、図8に示す場合と比較して、1レート分の超音波画像データを得るために1回の送受信動作で済むため、フレームレートの低下を抑制することができる。
したがって、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に含まれるノイズを抑制することができる。
ここで、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置とアナログ遅延回路22b_2の読み出し位置とをノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずらすために、読み出し位置の制御に先立って、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置とアナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置と適切に制御する必要がある。なお、書き込み開始位置とは、書き込み開始時刻(例えば、図11において後述する時刻T3)において、反射波信号の書き込みが開始されるスイッチトキャパシタSCのことを指す。
例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1に対応する受信遅延時間と、アナログ遅延回路22b_2に対応する受信遅延時間との差(遅延差)を考慮して、書き込み開始位置を制御する。以下、制御回路23による書き込み開始位置の制御の一例について説明する。
ここで、受信遅延時間を、仮にシステムクロックの数で表わすとする。例えば、受信遅延時間が「r」である場合、実際の受信遅延時間は、システムクロックの「r」個のクロック分の時間に相当する。例えば、受信遅延時間が「r」である場合、キャパシタ41_kへの反射波信号の一部の書き込みが開始されたタイミングから、システムクロックの「r+1」クロック分の時間が経過したタイミングで、キャパシタ41_kから反射波信号の一部の読み出しが開始される。すなわち、受信遅延時間が「r」である場合、キャパシタ41_kへの反射波信号の一部の書き込みが終了したタイミングから、システムクロックの「r」クロック分の時間が経過したタイミングで、キャパシタ41_kから反射波信号の一部の読み出しが開始される。ここでの説明では、書き込み用制御信号47_kがオンを示す期間は、システムクロックの1クロック分の期間に一致する。
以下、本実施形態の説明において、アナログ遅延回路22b_1に対応する受信遅延時間が「0」であり、アナログ遅延回路22b_2に対応する受信遅延時間が「3」である場合を例に挙げて説明する。なお、アナログ遅延回路22b_1に対応する受信遅延時間、及び、アナログ遅延回路22b_2に対応する受信遅延時間は、これらに限られない。
図10を参照して、制御回路23が、ペアチャンネルを決定した後に、書き込み開始位置を制御する場合について説明する。図10は、実施形態に係る制御回路23が実行する処理の一例を説明するための図である。
図10に示すように、制御回路23は、例えば、模式的に矢印65に示すように、書き込み開始時刻T3(図11参照)において、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置がアナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_1となるように、書き込み開始位置を制御する。なお、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の複数のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_12の中から任意のスイッチトキャパシタSCを書き込み開始位置として決定してもよい。
また、制御回路23は、模式的に矢印66に示すように、書き込み開始時刻T3において、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置がアナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_10となるように、書き込み開始位置を制御する。具体例を挙げて説明すると、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2に対応する受信遅延時間「3」から、アナログ遅延回路22b_1に対応する受信遅延時間「0」を減じることにより、遅延差「3」を算出する。そして、制御回路23は、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)に対応するスイッチトキャパシタSCの数「6」に、遅延差「3」を加算することにより、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置(スイッチトキャパシタSC_1)からのずれ量(シフト量)「9」を算出する。
そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置(スイッチトキャパシタSC_1)から、ずれ量「9」分ずれたアナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_10を、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置として決定する。そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置が、決定したアナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_10となるように、書き込み開始位置を制御する。すなわち、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ41_1〜41_nに対する反射波信号の書き込み開始位置と、アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ41_1〜41_nに対する反射波信号の書き込み開始位置とを異なるようにする。
アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ41_1〜41_nに対する反射波信号の書き込み開始位置は、第1書き込み開始位置の一例である。アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ41_1〜41_nに対する反射波信号の書き込み開始位置は、第2書き込み開始位置の一例である。
また、制御回路16は、アナログ遅延回路22b_1又はアナログ遅延回路22b_2に含まれるキャパシタ(使用されるキャパシタ)41_1〜41_nの数の半分の数に基づいて、ずれ量を算出する。そして、制御回路16は、ずれ量に基づいて、同一時刻における、アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置とを異なるようにする。すなわち、制御回路16は、アナログ遅延回路22b_1又はアナログ遅延回路22b_2に含まれるキャパシタ41_1〜41_nの数に基づいて、同一時刻における、アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ44_1〜44_12に対する反射波信号の読み出し位置とを異なるようにする。
図11は、図10に示す2つのアナログ遅延回路22b_1,22b_2に入力される書き込み用制御信号及び読み出し用制御信号の一例を示す図である。ここでも、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_kに入力される読み出し用制御信号48_kを、「48_k_1」で表す。また、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_kに入力される読み出し用制御信号48_kを、「48_k_2」で表す。更に、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_kに入力される書き込み用制御信号47_kを、「47_k_1」で表す。また、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_kに入力される書き込み用制御信号47_kを、「47_k_2」で表す。
図11に示すように、アナログ遅延回路22b_1では、書き込み開始時刻T3において、書き込み用制御信号47_1_1がオフを示す状態からオンを示す状態に変化する。そして、書き込み開始時刻T3から受信遅延時間「0」に対応する時間が経過したタイミング(時刻T5)以降において、複数の読み出し用制御信号48_1_1〜48_12_1では、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。
一方、アナログ遅延回路22b_2では、書き込み開始時刻T3において、書き込み用制御信号47_10_2がオフを示す状態からオンを示す状態に変化する。そして、書き込み開始時刻T3から受信遅延時間「3」に対応する時間が経過したタイミング(時刻T4)以降において、複数の読み出し用制御信号48_10_2〜48_12_2,48_1_2〜48_9_2では、オンを示す状態が、次々に、略連続的に切り替わっている。
ここで、読み出し用制御信号48_10_2が示すように、時刻T4において、アナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSC_10で反射波信号の一部の読み出しが開始されている。また、読み出し用制御信号48_4_1が示すように、時刻T4において、アナログ遅延回路22b_1のスイッチトキャパシタSC_4で反射波信号の一部の読み出しが開始されている。
すなわち、時刻T4において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置とが、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずれている。時刻T4以降の他の時刻においても、同様に、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置とが、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずれている。
したがって、制御回路23が、上述したような方法で書き込み開始位置を制御することで、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置とを、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずらすことができる。具体的には、制御回路23が、アナログ遅延回路22b_1により遅延された反射波信号と、アナログ遅延回路22b_2により遅延された反射波信号の位相差が180度となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置と、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置とを異なるようにすることで、2つの読み出し位置をノイズ周期T1の半周期(T1/2)分ずらす。
この結果、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、上述した奇数次高調波成分(基本波成分、3次高調波成分、5次高調波成分及び7次高調波成分等)を抑制することができる。
図12は、実施形態に係る加算回路22eから出力される加算信号に重畳されるノイズ成分の一例を説明するための図である。図12は、加算信号を周波数解析した結果を示す。横軸は、周波数を示し、縦軸は、振幅を示す。先の図5と図12とを比較すれば分かるように、矢印56aが示す基本波成分、矢印56cが示す3次高調波成分、矢印56eが示す5次高調波成分が、図12に示す場合には含まれていない。このため、実施形態に係る超音波プローブ1によれば、奇数次高調波成分を抑制することができる。
そして、超音波プローブ1の制御回路16は、奇数次高調波成分が抑制された加算信号に基づく超音波画像を表示するようにディスプレイ2を制御する。すなわち、制御回路16は、アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ41_1〜41_nに書き込まれた反射波信号とアナログ遅延回路22b_2のキャパシタ41_1〜41_nに書き込まれた反射波信号とに基づく超音波画像を表示するようにディスプレイ2を制御する。
次に、本実施形態に係る制御回路23が実行する処理の流れの一例について説明する。図13は、実施形態に係る制御回路23が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13に示すように、制御回路23は、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、少なくとも1つのペアチャンネルを決定する(ステップS101)。そして、制御回路23は、ペアチャンネルに含まれる2つのアナログ遅延回路22bのうち、一方のアナログ遅延回路22b_1に対応する受信遅延時間と、他方のアナログ遅延回路22b_2に対応する受信遅延時間との遅延差を算出する(ステップS102)。ここで、一方のアナログ遅延回路22b_1は、ペアチャンネルのうち一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bである。また、他方のアナログ遅延回路22b_2は、ペアチャンネルのうち他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bである。
そして、制御回路23は、ノイズ周期T1の半周期(T1/2)に対応するスイッチトキャパシタSCの数に、遅延差を加算することにより、ずれ量を算出する(ステップS103)。
そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置を決定する(ステップS104)。そして、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置から、ステップS103で算出されたずれ量分ずれたアナログ遅延回路22b_2のスイッチトキャパシタSCを、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置として決定する(ステップS105)。
そして、ステップS106では、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置が、ステップS104で決定した書き込み開始位置となるように、書き込み開始位置を制御する。また、ステップS106では、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置が、ステップS105で決定した書き込み開始位置となるように、書き込み開始位置を制御する。そして、制御回路23は、図13に示す処理を終了する。
以上、実施形態に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100について説明した。実施形態に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、上述したように、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に含まれるノイズを抑制することができる。
(変形例1)
実施形態では、図12を参照して説明したように、奇数次高調波成分が抑制される。しかしながら、図12に示すように、偶数次高調波成分(2次高調波成分、4次高調波成分、6次高調波成分)が抑制されずに残ってしまう。
ここで、制御回路23が、ペアチャンネルのうち、一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置と、他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置とを、ノイズ周期T1の1/4周期(T1/4)分ずらすことで、2次高調波成分及び6次高調波成分を抑制することができる。しかしながら、この場合には、図14に示すように、2次高調波成分及び6次高調波成分以外の高調波成分が残ってしまう。なお、図14は、一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置と、他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置とを、ノイズ周期T1の1/4周期分ずらした場合の、加算信号に含まれるノイズの一例を示す図である。
また、制御回路23が、ペアチャンネルのうち、一方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置と、他方のチャンネルに対応するアナログ遅延回路22bの読み出し位置とを、ノイズ周期T1の1/8周期(T1/8)分ずらすことで、4次高調波成分を抑制することができる。しかしながら、この場合には、4次高調波成分以外の高調波成分が残ってしまう。
そこで、超音波プローブ1が、奇数次高調波成分及び偶数次高調波成分を抑制する変形例を変形例1として説明する。変形例1の説明において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下、変形例1の説明では、実施形態と異なる点を主に説明し、実施形態と同様の構成の説明については、省略する場合がある。
図15を参照して、書き込み開始位置の制御方法の一例について説明する。図15は、変形例1に係る超音波プローブ1の動作の一例を説明するための図である。例えば、変形例1では、制御回路23が、ペアチャンネルを決定するのではなく、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、任意の8つのチャンネルの組合せをグループチャンネルとして決定する。
例えば、制御回路23は、図15に示す8つのアナログ遅延回路22bに対応する8つのチャンネルの組合せをグループチャンネルとして決定する。図15に示すアナログ遅延回路22bは、例えば16個のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_16を備える。ここで、図15に示す8つのアナログ遅延回路22bのそれぞれを区別して説明する場合には、8つのアナログ遅延回路22bのそれぞれを、アナログ遅延回路22b_1〜22b_8のそれぞれと表記する。
そして、制御回路23は、以下の(条件1)〜(条件3)の3つの条件を満たすように、グループチャンネルに属する8つのチャンネルに対応する8つのアナログ遅延回路22bのそれぞれの書き込み開始位置を制御する。
(条件1)8つのアナログ遅延回路22bの中で、読み出し位置の差がノイズ周期T1の半周期(180度)分に相当する差となる2つのアナログ遅延回路22bのペアが4つ存在する。
(条件2)8つのアナログ遅延回路22bの中で、読み出し位置の差がノイズ周期T1の1/4周期(90度)分に相当する差となる2つのアナログ遅延回路22bのペアが4つ存在する。
(条件3)8つのアナログ遅延回路22bの中で、読み出し位置の差がノイズ周期T1の1/8周期(45度)分に相当する差となる2つのアナログ遅延回路22bのペアが4つ存在する。
まず、上記条件1を満たすように、制御回路23が書き込み開始位置を制御する場合について説明する。例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_1)と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_9)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差(8個分のスイッチトキャパシタSC)となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_3の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_4の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_5)と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_13)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_5の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_6の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_3)と、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_11)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_7の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_8の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_7)と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_15)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となっている。
なお、変形例1では、制御回路23が、条件1を満たすように書き込み開始位置を制御する場合においてずれ量を算出する際に、上述した実施形態と同様に、「1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数の半分の数」を用いる。そして、変形例1では、制御回路23は、算出したずれ量を用いて、上述した実施形態と同様の方法で、条件1を満たすように、2つのアナログ遅延回路22bの書き込み開始位置を制御する。
次に、上記条件2を満たすように、制御回路23が書き込み開始位置を制御する場合について説明する。例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_3の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_1)と、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_5)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差(4個分のスイッチトキャパシタSC)となっている。
ここで、変形例1では、制御回路23が、条件2を満たすように書き込み開始位置を制御する場合においてずれ量を算出する際に、「1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数の半分の数」ではなく、「1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数に「1/4」を乗算することにより得られる数」を用いる。
例えば、図15に示すように、1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数が「16」である場合には、制御回路23は、ずれ量を算出する際に、スイッチトキャパシタSCの数「16」に「1/4」を乗算することにより得られる数「4」を用いる。そして、変形例1では、制御回路23は、算出したずれ量を用いて、上述した実施形態と同様の方法で、条件2を満たすように2つのアナログ遅延回路22bの書き込み開始位置を制御する。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_4の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_9)と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_13)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_5の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_7の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_3)と、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_7)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_6の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_8の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_11)と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_15)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となっている。
次に、上記条件3を満たすように、制御回路23が書き込み開始位置を制御する場合について説明する。例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_5の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_1)と、アナログ遅延回路22b_5の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_3)との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差(2個分のスイッチトキャパシタSC)となっている。
ここで、変形例1では、制御回路23が、条件3を満たすように書き込み開始位置を制御する場合においてずれ量を算出する際に、「1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数の半分の数」ではなく、「1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数に「1/8」を乗じることにより得られる数」を用いる。
例えば、図15に示すように、1つのアナログ遅延回路22b内で用いられている全てのスイッチトキャパシタSCの数が「16」である場合には、制御回路23は、ずれ量を算出する際に、スイッチトキャパシタSCの数「16」に「1/8」を乗じることにより得られる数「2」を用いる。そして、変形例1では、制御回路23は、算出したずれ量を用いて、上述した実施形態と同様の方法で、条件3を満たすように2つのアナログ遅延回路22bの書き込み開始位置を制御する。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_6の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_9)と、アナログ遅延回路22b_6の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_11)との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_3の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_7の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_5)と、アナログ遅延回路22b_7の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_7)との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_4の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_8の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図15に示す場合において、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_13)と、アナログ遅延回路22b_8の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_15)との差が、ノイズ周期T1の1/8周期分に相当する差となっている。
そして、変形例1では、図15に示すように、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号80を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分が、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分によりキャンセルされる。
また、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_3から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_4から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号81を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_3から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分が、アナログ遅延回路22b_4から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分によりキャンセルされる。
また、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_5から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_6から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号82を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_5から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分が、アナログ遅延回路22b_6から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分によりキャンセルされる。
また、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_7から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_8から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号83を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_7から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分が、アナログ遅延回路22b_8から出力される反射波信号に重畳された奇数次高調波成分によりキャンセルされる。
そして、加算回路22eは、反射波信号80に反射波信号81を加算することにより反射波信号84を生成する。これにより、反射波信号80に重畳された2次高調波成分及び6次高調波成分が、反射波信号81に重畳された2次高調波成分及び6次高調波成分によりキャンセルされる。
また、加算回路22eは、反射波信号82に反射波信号83を加算することにより反射波信号85を生成する。これにより、反射波信号82に重畳された2次高調波成分及び6次高調波成分が、反射波信号83に重畳された2次高調波成分及び6次高調波成分によりキャンセルされる。
そして、加算回路22eは、反射波信号84に反射波信号85を加算することにより加算信号86を生成する。これにより、反射波信号84に重畳された4次高調波成分が、反射波信号85に重畳された4次高調波成分によりキャンセルされる。そして、加算回路22eは、奇数次高調波成分、2次高調波成分、4次高調波成分及び6次高調波成分が抑制された加算信号86を、装置本体10の送受信回路11に送信する。
なお、図15を参照して説明した加算回路22eによる反射波信号の加算順序は、あくまでも一例に過ぎない。加算回路22eが、他の加算順序で複数の反射波信号を加算しても、最終的に得られる加算信号は、奇数次高調波成分、2次高調波成分、4次高調波成分及び6次高調波成分が抑制された信号となる。
以上、変形例1に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100について説明した。変形例1に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、実施形態と同様に、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に含まれるノイズを抑制することができる。更に、変形例1に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、奇数次高調波成分に加えて、2次高調波成分、4次高調波成分及び6次高調波成分を抑制することができる。
変形例1に係る超音波プローブ1は、基本波成分から7次高調波成分までのノイズ成分を抑制することができる。例えば、基本周波数が1MHz程度である場合、変形例1に係る超音波プローブ1は、1MHzから7MHzまでの範囲のノイズ成分を抑制する。したがって、周波数帯域が1MHzから7MHzまでの範囲内の超音波プローブを変形例1に係る超音波プローブ1として用いる場合には、特に、ノイズ成分が抑制された加算信号を得ることができる。このような超音波プローブとしては、例えば、循環器プローブ等が挙げられる。
(変形例2)
上述した実施形態及び変形例1では、同一のサブアレイ内の複数のチャンネル間で、使用されるスイッチトキャパシタSCの数が同一である場合について説明した。しかしながら、同一のサブアレイ内の複数のチャンネル間で、使用されるスイッチトキャパシタSCの数が異なってもよい。そこで、このような変形例を、変形例2として説明する。変形例2の説明において、実施形態及び変形例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下、変形例2の説明では、実施形態及び変形例1と異なる点を主に説明し、実施形態及び変形例1と同様の構成の説明については、省略する場合がある。
例えば、変形例2において、制御回路23は、チャンネル毎に固有な受信遅延時間に基づいて、各チャンネルに対応するアナログ遅延回路22bにおいて使用されるスイッチトキャパシタSCの数(使用スイッチトキャパシタ数)を決定する。
例えば、上述したようにシステムクロックの数で表される受信遅延時間が「r」である場合、制御回路23は、受信遅延時間「r」に基づいて、使用されるスイッチトキャパシタの数として「r+2」を決定する。
なお、この場合、制御回路23は、「r+2」以上、アナログ遅延回路22bにおいて使用可能なスイッチトキャパシタSCの最大数M以下の範囲内の値を、アナログ遅延回路22bにおいて使用されるスイッチトキャパシタの数として決定してもよい。
ここで、アナログ遅延回路22bが、最大数MのスイッチトキャパシタSCを用いて、反射波信号に対して受信遅延時間を与える遅延処理を実行する場合について説明する。この場合、同一のスイッチトキャパシタSCに対して反射波信号の一部が書き込まれるタイミングの周期、及び、同一のスイッチトキャパシタSCから反射波信号の一部が読み出されるタイミングの周期は、ともに、上述した周期T1である。
以下の説明では、同一のスイッチトキャパシタSCに対して反射波信号の一部が書き込まれるタイミングの周期、及び、同一のスイッチトキャパシタSCから反射波信号の一部が読み出されるタイミングの周期のことを「制御周期」と称する。
変形例2では、制御回路23は、このような周期T1、及び、決定した使用スイッチトキャパシタ数に基づいて、使用スイッチトキャパシタ数分のスイッチトキャパシタSCが使用された場合の制御周期をチャンネル毎に算出する。例えば、制御回路23は、以下の式(1)に従って、制御周期を算出する。
TS=(U/M)×T1 (1)
式(1)において、「TS」は制御周期を示す。また、「U」は、使用スイッチトキャパシタ数を示す。「M」は、アナログ遅延回路22bにおいて使用可能なスイッチトキャパシタSCの最大数Mを示す。「T1」は、周期T1を示す。
制御回路23は、チャンネル毎に、制御周期を算出する。なお、使用スイッチトキャパシタ数が、使用可能なスイッチトキャパシタSCの最大数Mよりも小さい場合には、制御回路23は、周期T1よりも短い制御周期を算出する。
そして、制御回路23は、チャンネル毎に、決定した使用スイッチトキャパシタ数、及び、算出した制御周期に基づいて、各種の制御を行う。例えば、制御回路23は、チャンネル毎に、オンを示す状態が制御周期で繰り返される書き込み用制御信号を生成する。また、制御回路23は、チャンネル毎に、オンを示す状態が制御周期で繰り返される読み出し用制御信号を生成する。そして、制御回路23は、書き込み用制御信号及び読み出し用制御信号を、使用スイッチトキャパシタ数分のスイッチトキャパシタSCに送信することで、使用スイッチトキャパシタ数分のスイッチトキャパシタSCに遅延処理を実行させる。
そして、制御回路23は、チャンネル毎に、制御周期及び超音波プローブ1の周波数帯域に基づいて、周波数帯域に含まれる基本波成分及び高調波成分を特定する。なお、超音波プローブ1の周波数帯域を示す情報は、装置本体10の記憶回路15に予め記憶されている。制御回路23は、装置本体10に対して周波数帯域を示す情報を要求することにより、装置本体10から周波数帯域を示す情報を取得する。そして、制御回路23は、制御周期及び取得した情報が示す周波数帯域を用いて、周波数帯域に含まれる基本波成分及び高調波成分を特定する。
そして、制御回路23は、特定された基本波成分及び高調波成分に基づいて、周波数帯域に含まれる基本波成分及び高調波成分が抑制されるような書き込み開始位置の制御方法を決定する。そして、制御回路23は、決定した書き込み開始位置の制御方法を実行する。
図16〜図19を参照して、超音波プローブ1が実行する処理の一例について説明する。図16〜図19は、変形例2に係る超音波プローブ1が実行する処理の一例について説明するための図である。図16には、制御周期と周期T1とが一致する場合の超音波プローブ1の周波数帯域70と、基本波成分及び高周波成分との関係の一例が示されている。
図16に示すように、制御回路23は、制御周期と超音波プローブ1の周波数帯域70とに基づいて、周波数帯域70に含まれる2次高調波成分から5次高調波成分までの高調波成分を特定する。そして、制御回路23は、2次高調波成分から5次高調波成分までの高調波成分を特定した場合には、これらの特定した高調波成分が抑制されるような書き込み開始位置の制御方法として、図15を参照して説明した書き込み開始位置の制御方法を決定する。そして、制御回路23は、決定した書き込み開始位置の制御方法を実行する。
図17には、超音波プローブ1の周波数帯域70と、制御周期が周期T1の半周期である場合の基本波成分及び高周波成分との関係の一例が示されている。
図17に示すように、矢印71aが示す基本周波数(1/制御周期)の成分には、ノイズ成分が含まれている。また、矢印71bが示す基本周波数の2倍(2/制御周期)の成分にも、ノイズ成分が含まれている。
制御回路23は、制御周期と超音波プローブ1の周波数帯域70とに基づいて、図17に示すように、周波数帯域70に含まれる基本波成分及び2次高調波成分を特定する。図18は、基本波成分及び2次高調波成分が特定された場合の書き込み開始位置の制御方法の一例を示す図である。そして、制御回路23は、基本波成分及び2次高調波成分を特定した場合には、特定した基本波成分及び2次高調波成分が抑制されるような書き込み開始位置の制御方法として、図18に示す書き込み開始位置の制御方法を決定する。そして、制御回路23は、決定した書き込み開始位置の制御方法を実行する。
図18に示す書き込み開始位置の制御方法について説明する。例えば、制御回路23は、同一のサブアレイ内の複数のチャンネルの中から、任意の4つのチャンネルの組合せをグループチャンネルとして決定する。具体的には、制御回路23は、図18に示す4つのアナログ遅延回路22bに対応する4つのチャンネルの組合せをグループチャンネルとして決定する。
図18に示すアナログ遅延回路22bは、32個のスイッチトキャパシタSCを備える。しかしながら、使用スイッチトキャパシタ数が「16」であり、16個のスイッチトキャパシタSC_1〜SC_16が使用される。ここで、図18に示す4つのアナログ遅延回路22bのそれぞれを区別して説明する場合には、4つのアナログ遅延回路22bのそれぞれを、アナログ遅延回路22b_1〜22b_4のそれぞれと表記する。
図18に示すアナログ遅延回路22b_1は、複数のキャパシタ41_1〜41_16(不図示)を用いてアナログ遅延回路22b_1に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_1は、第1遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_1に対応するチャンネルは、第1チャンネルの一例である。アナログ遅延回路22b_1のキャパシタ41_1〜41_16に対する反射波信号の書き込み開始位置は、第1書き込み開始位置の一例である。
アナログ遅延回路22b_2は、複数のキャパシタ41_1〜41_16(不図示)を用いてアナログ遅延回路22b_2に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_2は、第2遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_2に対応するチャンネルは、第2チャンネルの一例である。アナログ遅延回路22b_2のキャパシタ41_1〜41_16に対する反射波信号の書き込み開始位置は、第2書き込み開始位置の一例である。
アナログ遅延回路22b_3は、複数のキャパシタ41_1〜41_16(不図示)を用いてアナログ遅延回路22b_3に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_3は、第3遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_3に対応するチャンネルは、第3チャンネルの一例である。アナログ遅延回路22b_3のキャパシタ41_1〜41_16に対する反射波信号の書き込み開始位置は、第3書き込み開始位置の一例である。
アナログ遅延回路22b_4は、複数のキャパシタ41_1〜41_16(不図示)を用いてアナログ遅延回路22b_4に対応するチャンネルにおける反射波信号を遅延させる。アナログ遅延回路22b_4は、第4遅延回路の一例である。アナログ遅延回路22b_4に対応するチャンネルは、第4チャンネルの一例である。アナログ遅延回路22b_4のキャパシタ41_1〜41_16に対する反射波信号の書き込み開始位置は、第4書き込み開始位置の一例である。
そして、制御回路23は、以下の(条件4)及び(条件5)の2つの条件を満たすように、グループチャンネルに属する4つのチャンネルに対応する4つのアナログ遅延回路22bのそれぞれの書き込み開始位置を制御する。
(条件4)4つのアナログ遅延回路22bの中で、読み出し位置の差がノイズ周期T1の半周期(180度)分に相当する差となる2つのアナログ遅延回路22bのペアが2つ存在する。
(条件5)4つのアナログ遅延回路22bの中で、読み出し位置の差がノイズ周期T1の1/4周期(90度)分に相当する差となる2つのアナログ遅延回路22bのペアが2つ存在する。
まず、上記条件4を満たすように、制御回路23が書き込み開始位置を制御する場合について説明する。例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図18に示す場合において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_1)と、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_9)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差(8個分のスイッチトキャパシタSC)となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_3の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_4の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図18に示す場合において、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_5)と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_13)との差が、ノイズ周期T1の半周期分に相当する差となっている。
次に、上記条件5を満たすように、制御回路23が書き込み開始位置を制御する場合について説明する。例えば、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_1の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_3の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図18に示す場合において、アナログ遅延回路22b_1の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_1)と、アナログ遅延回路22b_3の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_5)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差(4個分のスイッチトキャパシタSC)となっている。
また、制御回路23は、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となるように、アナログ遅延回路22b_2の書き込み開始位置、及び、アナログ遅延回路22b_4の書き込み開始位置を制御する。このような制御により、例えば、図18に示す場合において、アナログ遅延回路22b_2の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_9)と、アナログ遅延回路22b_4の読み出し位置(スイッチトキャパシタSC_13)との差が、ノイズ周期T1の1/4周期分に相当する差となっている。
そして、変形例2では、図18に示すように、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号87を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_1から出力される反射波信号に重畳された基本波成分が、アナログ遅延回路22b_2から出力される反射波信号に重畳された基本波成分によりキャンセルされる。
また、加算回路22eは、例えば、アナログ遅延回路22b_3から出力される反射波信号に、アナログ遅延回路22b_4から出力される反射波信号を加算することにより反射波信号88を生成する。これにより、アナログ遅延回路22b_3から出力される反射波信号に重畳された基本波成分が、アナログ遅延回路22b_4から出力される反射波信号に重畳された基本波成分によりキャンセルされる。
そして、加算回路22eは、反射波信号87に反射波信号88を加算することにより加算信号89を生成する。これにより、反射波信号87に重畳された2次高調波成分が、反射波信号88に重畳された2次高調波成分によりキャンセルされる。そして、加算回路22eは、基本波成分及び2次高調波成分が抑制された加算信号89を、装置本体10の送受信回路11に送信する。
なお、図18を参照して説明した加算回路22eによる反射波信号の加算順序は、あくまでも一例に過ぎない。加算回路22eが、他の加算順序で複数の反射波信号を加算しても、最終的に得られる加算信号は、基本波成分及び2次高調波成分が抑制された信号となる。
ここで、加算回路22eは、位相差が180度異なる2つの反射波信号を加算することにより、2つの反射波信号に重畳された基本波成分や高周波成分等の周期ノイズをキャンセルする。2つの反射波信号に重畳された周期ノイズの振幅が同程度である場合には、周期ノイズが適切にキャンセルされる。一方、周期ノイズの振幅の差が大きい場合には、周期ノイズが完全にキャンセルされずに残ってしまう。そのため、周期ノイズの振幅の差が大きい場合には、キャンセル対象の基本波成分や高周波成分の数が少ないことが好ましい。このため、図17に示すように、制御回路23は、制御周期を周期T1の半分にすることで、基本波成分や高周波成分を高域側にシフトさせ、超音波プローブ1の周波数帯域70内に存在するようなキャンセル対象となる高調波成分の数を少なくする。
図19には、制御周期が周期T1の1/4周期である場合の超音波プローブ1の周波数帯域70と、基本波成分及び高周波成分との関係の一例が示されている。図19に示すように、矢印71cが示す基本周波数(1/制御周期)の成分には、ノイズ成分が含まれている。
制御回路23は、制御周期と超音波プローブ1の周波数帯域70とに基づいて、図19に示すように、周波数帯域70に含まれる基本波成分を特定する。そして、制御回路23は、基本波成分を特定した場合には、基本波成分が抑制されるような書き込み開始位置の制御方法として、図10及び図11を参照して説明した書き込み開始位置の制御方法を決定する。そして、制御回路23は、決定した書き込み開始位置の制御方法を実行する。
図16〜19を参照して説明したように、変形例2では、制御回路23は、複数のアナログ遅延回路22bのうち、超音波プローブ1の周波数帯域70に含まれるノイズ成分の種類に応じた数のアナログ遅延回路22bにおける反射波信号のキャパシタに対する書き込み位置が互いに異なるように制御する。
以上、変形例2に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100について説明した。変形例2に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、実施形態及び変形例1と同様に、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に含まれるノイズを抑制することができる。更に、変形例2に係る超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、周期ノイズの残存量を抑制することができる。
なお、上述した実施形態、変形例1及び変形例2では、複数のキャパシタを用いて反射波信号を遅延させる2N(Nは、1,2,3)個のアナログ遅延回路22bをペア又はグループとして、1つのペア又は1つのグループ毎に書き込み開始位置が制御される。そして、制御回路23は、2N個のアナログ遅延回路22bのそれぞれについて、アナログ遅延回路22bにより遅延された反射波信号との位相差が(360/2t)(t=1,・・・,N)度となるような遅延後の超音波信号を出力する他のアナログ遅延回路22bが存在するように、2N個のアナログ遅延回路22bのそれぞれのキャパシタに対する反射波信号の書き込み開始位置を異ならせるようにする。そして、加算回路22eが、2N個のアナログ遅延回路22bのそれぞれにより遅延された反射波信号を加算して加算信号を生成する。ここで、「N」は、1〜3以外の4以上の自然数であってもよい。すなわち、「N」は、単に、自然数であればよい。
以上述べた少なくとも1つの実施形態の超音波プローブ1及び超音波診断装置100によれば、フレームレートの低下を抑制しつつ、加算信号に重畳されるノイズを抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。