JP2021014734A - 上吊り用引き戸枠とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】取り付け現場以外の場所で製造でき、造作補強が不要な強度を有し、かつ、全ての部材が鋼製の引き戸枠よりも軽量な上吊り用引き戸枠とその製造方法を提供する。【解決手段】一対の縦枠2と、一対の縦枠2の間で鉛直に延びる中方立3と、一対の縦枠2の間及び一方の縦枠2と中方立3との間で吊り戸の移動方向9に延びる上枠4と、上枠4の両端部を一対の縦枠2に固定する支持材13と、を備える。上枠4は、両端部が縦枠2又は中方立3に支持される木製の芯材5と、芯材5の周面5eの一部を覆いながら移動方向9に延びる鋼製枠6と、を備える。【選択図】図9

Description

本発明は、片引きの引き戸に使用する上吊り用引き戸枠とその製造方法に関する。
一般に、片引きの引き戸は、引き戸を引き込むスペースを形成する引き代部と、引き戸の表側と裏側を連通させる開口部を有する。引き戸枠は、開口部だけでなく引き代部も含めて、一つの枠として製造される。
引き戸には、扉を溝に載せてスライドさせる下レールタイプと、扉を上からハンガーレールで吊るして床から浮かせる上吊りタイプとがある。上吊りタイプは、床にレールが無く、床を平らにすることができるため、人気である。
従来、引き戸枠は木製であった。木製の引き戸枠は、例えば特許文献1に開示されている。
特開2017−155470号公報
図1は、従来の上吊りタイプの木製引き戸枠31の説明図である。図1(A)は、縦断面図であり、図1(B)は正面図である。この図では、木製引き戸枠31に破線の斜線の模様を付している。図1(A)に示すように、吊り戸34は、ハンガーレール33に吊るされており、そのハンガーレール33は、上枠32の下面に固定されている。
一般に引き戸枠は、周囲の梁や木軸等に固定されている。下レールタイプの場合、引き戸の重さの多くを床に設置したレールで受けている。
しかし、上吊りタイプの木製引き戸枠31の場合は、吊り戸34の荷重を上枠32だけで受けなければならない。
木材は、長期間一定の荷重が作用すると、撓みが徐々に増加するクリープ現象を発生させることがある。そのため、木製の上枠32が吊り戸34の荷重で撓むのを防ぐには、下レールタイプ用の木製引き戸枠を使用する場合よりも多くの木軸等の補強材36で、上枠32を補強しなければならなかった。
例えば図1(B)では、下レールタイプ用の木製引き戸枠の支持に必要な木軸35を、左下から右上に延びる斜線で表し、上吊りタイプの上枠32を固定するために追加する必要がある補強材(木軸)36を左上から右下に延びる密度の濃い斜線で表している。
このような補強材36を取り付け現場で追加する作業には、多大な労力が必要であった。
その上、木製引き戸枠31は、木製の縦枠37となる木材の上端部と上枠32となる木材の両端部に造作大工が刻み加工を施し、それらを組み立てることで製造される。木材は、水分含有量の変化や荷重等によって、撓み、反り、ねじれ、伸縮、等の変形を生じる。このような木材の特性は、木材の種類や木目の入り方によって変わってくる。造作大工は、木材に関する豊富な知識と経験に基づく高い技術を用いて、取り付け現場で木材の加工や組み立てをする職人である。木材の刻み加工や組み立ては、手間と技能を要する作業であり、熟練した造作大工の技術を必要とする。
近年、造作大工の熟練工が少なくなる中で、木製引き戸枠31を製造するのが難しくなりつつあった。
その上、刻み加工した上で組み立てた木材を輸送すると、輸送中の振動などで、木材同士の連結が緩む可能性がある。そのため、従来は、取り付け現場でしか木製引き戸枠31を製造出来なかった。
さらに木製引き戸枠31は、基材が木材であることから比較的傷が付きやすい。
そこで、本願の発明者は、引き戸枠を鋼材で製造し、完成した引き戸枠を取り付け現場に搬入して取り付けることを検討した。
図2は、構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠41の説明図である。この上吊り用引き戸枠41は、本願の発明者が検討のために制作した。図2(A)は平面図であり、図2(B)は縦断面図である。図2(C)は、図2(B)のQ部分の拡大図である。図2(A)、図2(B)では、鋼製の上吊り用引き戸枠41に破線の斜線の模様を付している。
図2(A)と図2(C)に示すように、上吊り用引き戸枠41は、縦枠42、中方立43、上枠44の全てを鋼製とした。
従来は木製であった引き戸枠を鋼製とすることで、以下の(1)〜(4)のメリットを得た。
まず、部品の全てを鋼製とすることで上枠44の強度を確保できるので、(1)補強材36で造作補強せずに上吊り式の建具を採用でき、(2)引き代部の壁厚を木製引き戸枠31より薄くすることが可能であり、(3)傷指摘数を減らすこともできた。さらに引き戸枠を鋼製とすることで、(4)一か所あたりの造作大工の労務を、引き戸枠を木製にした場合より約0.3人工も削減できることを確認した。
一方、木材よりも鋼材の方が重く、高価である。そのため、木製であった引き戸枠31を鋼製としたことで、上吊り用引き戸枠41が重すぎて作業性が悪く、上吊り用引き戸枠41のコストが高くなってしまうというデメリットも生じた。
そこで、上述した鋼製の上吊り用引き戸枠41のメリット(1)〜(4)を維持しつつ、軽量化とコストダウンを図ることができる新たな上吊り用引き戸枠の開発が求められた。
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、取り付け現場以外の場所で製造でき、造作補強が不要な強度を有し、かつ、全ての部材が鋼製の引き戸枠よりも軽量な上吊り用引き戸枠とその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、一対の縦枠と、
一対の前記縦枠の間で鉛直に延びる中方立と、
一対の前記縦枠の間及び一方の前記縦枠と前記中方立との間で水平な移動方向に延びる上枠と、
前記上枠の両端部を一対の前記縦枠に固定する支持材と、を備え、
前記上枠は、両端部が前記縦枠又は前記中方立に支持される木製の芯材と、
前記芯材の周面の一部を覆いながら前記移動方向に延びる鋼製枠と、を有する、上吊り用引き戸枠が提供される。
また、本発明によれば、上述の上吊り用引き戸枠の製造方法であって、
前記鋼製枠を、鋼製の平板を前記移動方向に延びる仮想折れ線に沿って曲げて製造する工程を含む、上吊り用引き戸枠の製造方法が提供される。
上述した本発明によれば、上枠と縦枠の連結を、支持材を用いて行うので、刻み加工の工程が不要である。そのため、取り付け現場以外の場所で上吊り用引き戸枠を製造し、組み立て終わった上吊り用引き戸枠を現場に搬入することができる。その上、上吊り用引き戸枠の組み立てを造作大工以外の労務者(例えばユニット工)が行うことができる。
したがって、本発明は、熟練した造作大工の労務を削減することができる。
また、本発明の上枠は、木製の芯材の周面の一部を鋼製の鋼製枠が覆う構成なので、鋼製枠で芯材の撓み、反り、ねじれ、等の変形を防ぎ、芯材の強度を補強することができる。それにより木軸等の補強材を用いることなく、上吊り用引き戸枠を設置できる。これによっても、造作大工の労務を削減することができる。
また、鋼製枠が覆うのは、木製の芯材の周面の一部のみであるため、鋼製枠に覆われていない周面がある分、鋼材が占める割合を減らすことができ、部材の全てが鋼製の引き戸枠よりも、上吊り用引き戸枠の総重量を軽くすることができる。そのため、上吊り用引き戸枠の作業性は、構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠よりも良好である。
さらに上吊り用引き戸枠は、鋼材が占める割合が少ない分、構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠よりも低コストで製造することができる。
また、鋼製の平板を曲げて鋼製枠を製造するので、鋼製枠を容易に製作できる。その上、鋼製の平板を移動方向に延びる仮想折れ線に沿って曲げるので、鋼製枠の断面係数が増加し、曲げ剛性を高めることができる。
従来の上吊りタイプの木製引き戸枠の説明図である。 構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠の説明図である。 本実施形態の上吊り用引き戸枠の正面図と横断面図である。 本実施形態の上吊り用引き戸枠の部分斜視図と部分縦断面図である。 取り付け現場に取り付けた上吊り用引き戸枠の断面図である。 長芯材と、これの周面を覆う長枠と中枠の斜視図である。 長枠と中枠で長芯材を覆ったときの斜視図である。 短芯材と、その周面を覆う鋼製枠の斜視図である。 上吊り用引き戸枠の組み立て方法についての説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図3は、本実施形態の上吊り用引き戸枠1の正面図と横断面図である。
図3(A)は上吊り用引き戸枠1の正面図である。
図3(A)に示すように、上吊り用引き戸枠1は、鉛直に延びる一対の縦枠2と、一対の縦枠2の間で鉛直に延びる中方立3と、水平に延びる上枠4とを備える。上吊り用引き戸枠1は、これらの縦枠2、中方立3、上枠4で、引き代部1aと開口部1bを構成する。引き代部1aとは、吊り戸8を引き込むためのスペースを形成する部位である。
なお、この図の符号18は、仮固定材である。仮固定材18は、上吊り用引き戸枠1の搬送時に、上吊り用引き戸枠1の形状を維持するために縦枠2と中方立3の下端部を固定する部材である。また、上吊り用引き戸枠1は、その形状を維持するため、縦枠2と中方立3の下端部に仮固定材18を付けたまま取り付け現場に取り付けられる。その際、仮固定材18は、床見切り材19の受け材(図3(B)と図5を参照)として使用される。
図3(B)は上吊り用引き戸枠1を取り付け現場に取り付けた場合の図3(A)のD−D断面図である。
吊り戸8は、引き代部1aと開口部1bの間で水平に移動する。以下の説明において、吊り戸8が移動する水平方向を移動方向9とする。
図4は、本実施形態の上吊り用引き戸枠1の部分斜視図と部分縦断面図である。
図4(A)は、上吊り用引き戸枠1の上端部の斜視図を表している。
縦枠2と中方立3は、例えば形鋼(チャンネル材等)の鋼材であり、それらの全てが金属で構成される。それらの上端部は、上枠4の両端部を支持材13で取り付けられるように構成されている。
上枠4は、一対の縦枠2の間及び一方の縦枠2と中方立3との間で移動方向9に延びる。上枠4は、木製の芯材5、及び鋼製枠6を備える。上枠4は、移動方向9に延びる木製の芯材5の周面5eの一部を鋼製枠6で覆う構成となっており、いわば、木材(芯材5)と鋼材(鋼製枠6)のハイブリッド材となっている。なお、芯材5の周面5eとは、芯材5を構成する面のうち、移動方向9に平行に延びる面のことである。
芯材5は、縦枠2と中方立3の上端部に取り付けられ、移動方向9に延びる水平な木材である。芯材5は、一対の縦枠2の一方から他方まで延びる長芯材5aと、一方の縦枠2から中方立3まで延びる短芯材5bを有していることが好ましい。しかし、これに限らず、長芯材5aと短芯材5bが一体に設けられていてもよい。
図4(B)は図3(A)のR部分の縦断面図であり、図4(C)は図4(B)の部材を分解したときの断面図である。
図4(C)に示すように、長芯材5aの底面5fには、移動方向9に延びる溝12が設けられている。この溝12は、長芯材5aの全長に渡って設けられており、溝12の両端部には段差12aが設けられている。この段差12aは、長芯材5aの両端部5c,5dを一対の縦枠2に固定する支持材13の厚みと同じ又はそれより深く掘られている。
また、一対の縦枠2の上端部のそれぞれには、スリット2aと、貫通孔2bが設けられている。スリット2aは、支持材13を貫通させるための穴であり、貫通孔2bは、支持材13を長芯材5aに留める木ネジ11を貫通させるための穴である。
上枠4は、図4(B)に示すように、縦枠2のスリット2aを通した支持材13の上に長芯材5aの溝12を載せることによって、縦枠2の上端部に固定される。長芯材5aの溝12に設けられた段差12aは、支持材13の厚みに合わせて設けられているため、段差12aに支持材13を嵌めると、支持材13の下面が溝12の底面と面一になる。使用時には、その溝12に、ハンガーレール7が嵌め込まれる。支持材13を長芯材5aに木ネジ11で留め、その上からハンガーレール7を被せるので、外部(上枠4の下方)からは、支持材13がハンガーレール7に隠される構成となっている。
また支持材13は、貫通孔2bを水平に貫通する木ネジ11によって、間に縦枠2を挟んで長芯材5aの両端部5c、5dに留められる。これによって、長芯材5aの両端部5c、5dが縦枠2に連結されるとともに、縦枠2に対する長芯材5aの高さ方向の位置が固定される。
図5は、取り付け現場に取り付けた上吊り用引き戸枠1の断面図である。図5(A)は、図3(B)のE−E断面図であり、図5(B)は、図3(B)のF−F断面図である。
鋼製枠6は、芯材5の周面5eの一部を覆いながら移動方向9に延びる金属製の部材である。複数ある鋼製枠6のうち、芯材5の一端部5cから他端部5dまで延びる鋼製枠6は、芯材5の周面5eのうちの連続する3面を覆う。例えば鋼製枠6は、3つの枠(長枠6a、中枠6b、開口枠6c)を有していてもよい。この図のように、芯材5の周面5eのうちの鋼製枠6で覆われる部分は、外部から見える部分であることが好ましい。この図において、長枠6aは、長芯材5aの連続する3面の周面5eを覆い、開口枠6cは、短芯材5bの連続する3面の周面5eを覆う。中枠6bは、長枠6aと開口枠6cの間で移動方向9に延びる鋼製枠6である。
使用時には、芯材5の底面5fに、ハンガーレール7が固定される。この図のように、ハンガーレール7は、芯材5の溝12に嵌められて固定されていることが好ましい。ハンガーレール7は、吊り戸8の上端部8aに設けられたローラー8bを移動方向9に案内する。
図6は、(A)長芯材5a、(B)長枠6a、(C)開口部1bの中枠6b、(D)引き代部1aの中枠6bのそれぞれの斜視図である。
図6(A)に示すように、上吊り用引き戸枠1が取り付け現場に設置された状態で鉛直面となる長芯材5aの両端部5c,5dの両端面には、穴11aが設けられている。この穴11aは、支持材13を留める木ネジ11を、長芯材5aを構成する木材を割らずにねじ込むためのものである。
なお、この図の芯材5は、側面5hを平面に表しているが、側面5hが曲面によって構成されていてもよい。
図6(B)に示すように長枠6aは、移動方向9に直交する鉛直面による断面が、コの字型の形状をしている鋼製部材である。この形状によって、長枠6aは、長芯材5aの周面5eのうち、上面5g、底面5f、及び上面5gと底面5fとに連続する側面5hを覆う。
なお、芯材5の側面5hが曲面の場合、鋼製枠6は、曲面に接する部分が湾曲し、芯材5の曲面に沿うように曲げられていることが好ましい。
図6(C)(D)に示すように中枠6bは、引き代部側と開口部側の2つに分割されていることが好ましい。いずれの中枠6bも、長芯材5aの底面5fを覆う底面14aと、溝12の側面12bを覆い底面14aに垂直な第1垂直面14bとを有する。
図6(D)に示す引き代部側の中枠6bは、移動方向9に直交する鉛直面による断面が、Uの字型の形状をしている鋼製部材である。この中枠6bは、底面14aに連続し第1垂直面14bに平行な第2垂直面14cを有する。この平行な第1垂直面14b及び第2垂直面14cと、これらに垂直な底面14aとが、中枠6bのUの字型の断面形状を形成する。
図7は、長枠6aと中枠6bで長芯材5aを覆ったときの斜視図である。図7(A)と図7(B)は、互いに異なる方向から見た図である。
鋼製枠6は、芯材5の周面5eの一部を覆いながら移動方向9に延びる。
長枠6aは、図7(A)に示すように、長芯材5aのそれらの周面5e(上面5g,底面5f,側面5h)を覆いながら、長芯材5aの一端部5cから他端部5dまで移動方向9に延びる。長枠6aは、長芯材5aの周面5eに巻き付く形状となるように、金属製の平板を折り曲げることで製造されていることが好ましい。
このように上吊り用引き戸枠1は、長枠6aが長芯材5aの上面5g,底面5f,側面5hを覆うコの字型形状をしており、長芯材5aの上下を挟み込んでいるので、吊り戸8の重さが長芯材5aに長期間作用し、クリープ現象により長芯材5aに下方へ歪む撓みが生じようとしたとしても、長芯材5aに撓みが生じ得ない。したがって、上吊り用引き戸枠1は、吊り戸8の荷重で上枠4が撓むのを防ぐことができる。
また上述したように木材は、含水率が変化することによっても、木材が撓んだり、反りやねじれを生じたりすることがある。しかし、上吊り用引き戸枠1は、芯材5の連続する3面を鋼製枠6で覆うので、その覆う範囲が芯材5の周面5eの一部であっても、木製の芯材5に反りやねじれが生じるのを押えることができる。
図7(A)と図7(B)に示すように、引き代部側の中枠6bは、この第1垂直面14bと第2垂直面14cで、長芯材5aの引き代部1aの底面5fの一部を挟み、その挟んだ部分の長芯材5aの形状を固定する。
この構成により、長芯材5aの引き代部1aに関しては、中枠6bが長芯材5aの一部を移動方向9に直交した水平方向15に挟むので、その水平方向15への長芯材5aの変形を防ぐことができる。
図8は、短芯材5bと、その周面5eを覆う鋼製枠6の斜視図である。図8(A)は、短芯材5b,開口枠6c及び開口部側の中枠6bのそれぞれの斜視図である。図8(B)は、開口枠6cで覆った短芯材5bの斜視図である。
図5で上述したように、短芯材5bは、その周面5eの一部が、開口枠6cと中枠6bで覆われている。
開口枠6cは、短芯材5bの上面5g,底面5f,側面5hを覆うコの字型形状となっている。
図8(B)に示すように、開口枠6cは、短芯材5bの周面5eのうち、上面5g、底面5f、及び上面5gと底面5fとに連続する側面5hを覆いながら、短芯材5bの一端部5cから他端部5dまで移動方向9に延びる。この構成により、開口枠6cがそのコの字型形状で短芯材5bの上下を挟み込むので、短芯材5bの撓みや、反り、ねじれ、等の発生を抑えることができる。
図8(C)は、長枠6aと中枠6bで覆った長芯材5aの斜視図である。
この図の斜線で示すように、開口部1bの中枠6bは、底面14aがそのまま短芯材5bに向けて延びている。この斜線の部分の中枠6bの底面14aが、短芯材5bの底面5fの一部(図8(B)の格子柄の部分)を覆う。これにより、上枠4の下方から見ると、外観が、長芯材5aと短芯材5bが連続して一体成型されているように見える。
また、中枠6bの底面14aの上で、長芯材5aと短芯材5bが密着し、長芯材5aと短芯材5bの上面5gと底面5fとに連続する側面5hの水平方向15の位置が長枠6aと開口枠6cによって固定される。したがって、長芯材5aの開口部1bと短芯材5bの反りやねじれの発生を抑えることができる。
次に、上吊り用引き戸枠1の製造方法について説明する。上吊り用引き戸枠1の製造は、取り付け現場以外の場所(以下、工場等)で行い、完成した上吊り用引き戸枠1を取り付け現場に搬入することが好ましい。しかしそれに限らず、上吊り用引き戸枠1は、取り付け現場で製造されてもよい。
まず、縦枠2、中方立3、上枠4のそれぞれの部材を製造する。
縦枠2や中方立3は、形鋼(チャンネル材等)の鋼材を必要な長さと形状に切断し、組み立てに必要な穴を設けることで製造する。縦枠2に設けられる穴は、例えば支持材13を挿入するスリット2aと、支持材13を芯材5に留める木ネジ11が縦枠2を貫通するための貫通孔2b、等である。
上枠4は、以下の第1製造工程〜第5製造工程により製造される。第1製造工程,第2製造工程は、順不同である。上枠4の第1製造工程〜第3製造工程については、図6、図7、及び図8を用いて説明する。
第1製造工程では、上枠4の芯材5を製造する。
図6と図8(A)に示すように、上枠4の芯材5は、木材を必要な形状(長芯材5aと短芯材5bの形状)に削り出すことによって製造する。長芯材5aの底面5fには、移動方向9に伸びる溝12を設ける。溝12の移動方向9の両端部には、支持材13の厚み分の段差12aを設ける。
また、長芯材5aの両端部5c,5dには、木ネジ11をねじ込むための穴11aを開けておく。
第2製造工程では、鋼製枠6を製造する。
鋼製枠6は、必要な形状に切り出した鋼製の平板を移動方向9に延びる仮想折れ線17に沿って折り曲げることによって製造することが好ましい。しかしそれに限らず、形鋼(チャンネル材等)の鋼材を切断することによって、製造してもよい。もしくは、複数枚の平板を溶接で繋ぎ合わせることによって製造してもよい。鋼製枠6は、芯材5の周面5eに沿うように設けられる。
第3製造工程では、図7と図8(B)に示すように、鋼製枠6のコの字型形状となっている部分を芯材5に嵌め、芯材5と鋼製枠6を結合させる。芯材5に嵌めた鋼製枠6には、下向きの荷重がかからないので、例えば、鋼製枠6を接着により芯材5に固定してもよい。しかし、それに限らず、鋼製枠6は芯材5にその他の方法で固定してもよい。
具体的には、長枠6aは長芯材5aに嵌め(図7(A))、開口枠6cは短芯材5bに嵌める(図8(B))。
引き代部側の中枠6bは、そのコの字型形状の部分を長芯材5aの引き代部1aに下方から嵌め、接着する。開口部側の中枠6bも、引き代部側の中枠6bに連続するように、長芯材5aの一端部側に接着する。このとき、開口部側の中枠6bの底面14aは、長芯材5aから突出している(図8(C)の斜線部分)。次いで、長芯材5aから突出した中枠6bの開口部1bの底面14a(図8(C)の斜線部分)に短芯材5bの底面5f(図8(B)の格子柄の部分)を載せ、接着する。
上枠4の第4製造工程と第5製造工程は、芯材5と鋼製枠6を結合させたものと、縦枠2を結合させた後に行う。
図9は、上吊り用引き戸枠1の組み立て方法についての説明図である。
長芯材5aと縦枠2の結合は、支持材13を介して行う。支持材13は、例えば平板を直角に折れ曲げた形状の鋼製のアングル(例えばL型アングル、等)であってもよい。
まず、一対の縦枠2のスリット2aに、支持材13を差し込み、縦枠2のスリット2aから突出した支持材13の上に長芯材5aの溝12を載せる。支持材13は、直角に折れ曲がった形状をしているので、長芯材5aにかかる下向きの荷重の一部は、支持材13を縦枠2に押し付ける力となるが、支持材13と縦枠2のいずれも鋼製で硬いため、上枠4の位置は溝12の底面が縦枠2のスリット2aの高さとなる位置で固定される。また長芯材5aにかかる下向きの荷重の多くは、支持材13を介して縦枠2のスリット2aの開口部にかかる。縦枠2と支持材13は金属製で丈夫なので、例え吊り戸8が重くても、十分に上枠4を支持することができる。
長芯材5aの溝12に設けられた段差12aに支持材13を嵌め、支持材13と縦枠2を長芯材5aの両端部5c,5dに木ネジ11で留める。木ネジ11は、支持材13と縦枠2の貫通孔2bを貫通し、長芯材5aに設けられた穴11aにねじ込める。
縦枠2及び中方立3と短芯材5bとは、縦枠2と中方立3に設けられた貫通孔2bを介して木ネジ11で留めて結合する。
次いで、上枠4の第4製造工程を行う。
本工程は、ハンガーレール7を長芯材5aの溝12に留める工程である。
ハンガーレール7を長芯材5aの溝12に嵌め込み、木ネジ11で長芯材5aに留める。木ネジ11は、図5に示したように、長芯材5aを貫通し、上吊り用引き戸枠1の周囲の梁や木軸35にまで到達することが好ましい。
上枠4の第5製造工程は、短芯材5bを周囲の梁や木軸35に固定する工程である。なお、この工程は、取り付け現場で行うことが好ましい。
短芯材5bの底面5fの2本の溝16aの間に、木ネジ11を鉛直にねじ込む。この木ネジ11は、短芯材5bを上下に貫通する長さを有する。
次いで、2本の溝16aに、目隠し部材16の上端部をそれぞれ入れ、木ネジ11の頭を隠す。
これにより、上吊り用引き戸枠1の外部(上枠4の下方)から木製の芯材5が見えなくなり、外観を整えることができる。
また、上枠4は、芯材5が、周囲にある梁や木軸35と同じ木製なので、タッピングネジよりも取り扱いが容易な木ネジ11で固定することができる。
次に、上吊り用引き戸枠1の効果について説明する。
(造作大工の労働省力化)
上枠4と縦枠2の固定を支持材13で行う構成としたので、工場等で縦枠2、中方立3、上枠4、等の上吊り用引き戸枠1の部材を製造できる。
また支持材13と縦枠2は、金属製であり、輸送の振動で連結が緩んでも、木ネジ11を締め直せば、再びしっかり連結させることができるので、予め工場等で組み立てられた状態で、上吊り用引き戸枠1を取り付け現場に搬入することができる。
そのため木製引き戸枠31を使用した場合より、高齢化し絶対数が減少傾向にある造作大工の労務を一か所あたり0.3人工(刻み加工0.1人工+組立0.2人工)も省力化することができる。
(傷の低減)
上吊り用引き戸枠1を構成する部材のうち、設置完成後に視認できる部位(縦枠2、中方立3、鋼製枠6、ハンガーレール7)が鋼製なので、従来の木製引き戸枠31より傷指摘数を減らすことができる。例えば実験では、上吊り用引き戸枠1の件数を木製引き戸枠31の25%〜30%に低減することができた。
(造作補強なしでハンガーレール仕様建具に対応)
上枠4の芯材5を鋼製より安価な木材とし、芯材5と鋼製枠6を一体となるように加工して上枠4とし、上枠4と縦枠2を固定する支持材13を設けたので、製造コストを抑制した構成で、木軸等の補強材36の追加が不要な構成とすることができる。
上吊り用引き戸枠1は、実験により、木軸等の補強材36を追加せずに、10万回の開閉繰り返し試験に合格できる強度があることが確認できている。この強度により、引き代部1aの壁厚を、鋼製の上吊り用引き戸枠41で可能な厚みと同程度に薄くすることができる。
上述した本発明によれば、上枠4と縦枠2の連結を、支持材13を用いて行うので、刻み加工の工程が不要である。そのため、工場等の取り付け現場以外の場所で上吊り用引き戸枠1の部材を製造し、組み立て終わった上吊り用引き戸枠1を現場に搬入することができる。その上、上吊り用引き戸枠1の組み立てを造作大工以外の労務者(例えばユニット工)が行うことができる。
したがって、本発明は、熟練した造作大工の労務を削減することができる。
また、本発明の上枠4は、木製の芯材5の周面5eの一部を鋼製の鋼製枠6が覆う構成なので、鋼製枠6で芯材5の撓み、反り、ねじれ、等の変形を防ぎ、芯材5の強度を補強することができる。それにより木軸等の補強材36を用いることなく、上吊り用引き戸枠1を設置できる。これによっても、造作大工の労務を削減することができる。
さらに、芯材5の周面5eのうち、外部から見える部分を鋼製枠6で覆っているので、上枠4のうち木材が構成する部分(芯材5)が外部に露出しない。縦枠2と中方立3も鋼製である。したがって、上吊り用引き戸枠1は、設置後の傷指摘数を、木製引き戸枠31を用いた場合よりも低減することができる。

また、鋼製枠6が覆うのは、木製の芯材5の周面5eの一部のみであるため、鋼製枠6に覆われていない周面5eがある分、鋼材が占める割合を減らすことができ、全て鋼製の引き戸枠41よりも上吊り用引き戸枠1の総重量を軽くすることができる。そのため、上吊り用引き戸枠1の作業性は、構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠41よりも良好である。
さらに上吊り用引き戸枠1は、鋼材が占める割合が少ない分、構成部品が全て鋼製の上吊り用引き戸枠41よりも低コストで製造することができる。
その上、芯材5の周面5eの一部しか鋼製枠6が覆っていないにもかかわらず、その鋼製枠6が覆っている部分が連続する3面であるため、芯材5の撓み、反り、ねじれ、等の変形が発生するのを鋼製枠6で回避することができる。
また、鋼製の平板を曲げて鋼製枠6を製造するので、鋼製枠6を容易に製作できる。その上、鋼製の平板を移動方向に延びる仮想折れ線17に沿って曲げるので、鋼製枠6の断面係数が増加し、曲げ剛性を高めることができる。
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 上吊り用引き戸枠、1a 引き代部、1b 開口部、
2 縦枠、2a スリット、2b 貫通孔、
3 中方立、4 上枠、
5 芯材、5a 長芯材、5b 短芯材、
5c 芯材の一端部、5d 芯材の他端部、
5e 芯材の周面、5f 芯材の底面、
5g 芯材の上面、5h 芯材の側面、
6 鋼製枠、6a 長枠、6b 中枠、6c 開口枠、
7 ハンガーレール、8 吊り戸、8a 上端部、8b ローラー、
9 移動方向、11 木ネジ、11a 穴、
12 芯材の底面の溝、12a 段差、12b 溝の側面、
13 支持材、
14a 中枠の底面、14b 中枠の第1垂直面、
14c 中枠の第2垂直面、
15 移動方向に直交した水平方向、
16 目隠し部材、16a 溝、
17 仮想折れ線、18 仮固定材、19 床見切り材、
31 従来の上吊りタイプの木製引き戸枠、
32 従来の木製の上枠、33 従来のハンガーレール、
34 従来の吊り戸、
35 下レールタイプ用の木製引き戸枠を支持するのに必要とする木軸、
36 補強材、37 従来の木製の縦枠、
41 鋼製の上吊り用引き戸枠、
42 縦枠、43 中方立、44 上枠

Claims (6)

  1. 一対の縦枠と、
    一対の前記縦枠の間で鉛直に延びる中方立と、
    一対の前記縦枠の間及び一方の前記縦枠と前記中方立との間で水平な移動方向に延びる上枠と、
    前記上枠の両端部を一対の前記縦枠に固定する支持材と、を備え、
    前記上枠は、両端部が前記縦枠又は前記中方立に支持される木製の芯材と、
    前記芯材の周面の一部を覆いながら前記移動方向に延びる鋼製枠と、を有する、上吊り用引き戸枠。
  2. 複数の前記鋼製枠のうち前記芯材の一端部から他端部まで延びる鋼製枠は、前記芯材の前記移動方向に延びる前記周面のうち、連続する3面を覆う、請求項1に記載の上吊り用引き戸枠。
  3. 前記3面は、上面、底面、及び該上面と該底面とに連続する側面を含む、請求項2に記載の上吊り用引き戸枠。
  4. 前記鋼製枠は、前記芯材の周面のうち外部から見える周面を覆う、請求項1〜3のうちの何れか一項に記載の上吊り用引き戸枠。
  5. 前記縦枠と前記中方立とは、鋼製である、請求項1〜4のうちの何れか一項に記載の上吊り用引き戸枠。
  6. 請求項1〜5のうちの何れか一項に記載の上吊り用引き戸枠の製造方法であって、
    前記鋼製枠を、鋼製の平板を前記移動方向に延びる仮想折れ線に沿って曲げて製造する工程を含む、上吊り用引き戸枠の製造方法。
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