JP2021013955A - Tig溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことを可能としたTIG溶接方法TIG溶接方法を提供する。【解決手段】被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させると共に、アークAによって生じた被溶接物Sの溶融池Pに向かってシールドガスGを放出しながら溶接を行うTIG溶接方法であって、アークAの圧力により溶融池Pを凹ませた状態で、溶融池PにキーホールKを形成しながら裏波溶接を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、TIG溶接方法に関する。
金属や非鉄金属などを母材として用いた構造物(被溶接物)の溶接には、従来よりTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)又はプラズマアーク溶接等のGTAW(Gas Tungsten Arc welding)と呼ばれる非消耗電極式のガスシールドアーク溶接が用いられている。
TIG溶接では、非消耗電極と、トーチノズルと、トーチボディとを備えるTIG溶接用トーチを使用し、陰極(−)としての非消耗電極と、正極(+)としての被溶接物との間でアークを発生させて、このアークの熱により被溶接物を溶かして溶融池(プール)を形成しながら溶接が行われる。また、溶接中は電極の周囲を囲むトーチノズルからシールドガスを放出し、このシールドガスで大気(空気)を遮断しながら溶接が行われる。
また、TIG溶接では、溶加材(溶加棒)の供給を手動で行いながら、TIG溶接用トーチを用いて溶接が行われる。この場合、使用者が左右の手で溶加材の供給とTIG溶接用トーチの操作を同時に行わなければならず、そのための熟練技術が必要となる。一方、TIG溶接用トーチにワイヤー狙いガイド(フィラーガイドとも言う。)を取り付けることによって、溶加材である溶接ワイヤー(フィラーとも言う。)の送給を自動で行いながら、半自動のTIG溶接を行うことも可能である。
これに対して、プラズマアーク溶接では、非消耗電極と、水冷のインサートチップ(拘束ノズルとも言う。)と、シールドキャップと、トーチボディとを備えるプラズマアーク用トーチを使用し、非消耗電極とインサートチップとの間で電気的にプラズマ化されたプラズマガス(作動ガスとも言う。)を流す。このとき発生するプラズマ流(プラズマジェット)をインサートチップで絞り込み、インサートチップの内壁形状によるウォール効果(プラズマ流の気流の流れを安定させる効果)や、インサートチップを冷却することで得られるサーマルピンチ効果(プラズマ流を周囲から冷却することで緊縮し高温となる効果)を利用して、エネルギー密度が高められたプラズマアークを発生させる。また、プラズマアークは、シールドキャップから放出されるシールドガスによるサーマルピンチ効果を受けて更に絞り込まれる。
プラズマアーク溶接では、このようなエネルギー密度が高く、アーク形状が円柱状に絞り込まれたプラズマアークを熱源として溶接が行われる。また、プラズマアークには、移行型と非移行型とがある。移行型のプラズマアークは、陰極(−)としての非消耗電極と、正極(+)としての被加工物との間で電流を流す方式であり、導電性の被加工物に対してのみ適用が可能である。一方、非移行型のプラズマアークは、陰極(−)としての非消耗電極と、正極(+)としてのインサートチップとの間で電流を流す方式であり、非導電性の被加工物に対しても適用が可能である。
特開平7−256452号公報
ところで、プラズマアーク溶接では、上述したエネルギー密度が高いプラズマアークを利用して、キーホールと呼ばれる貫通孔を形成しながら、被溶接物の表側だけでなく裏側にも溶接ビードを形成する裏波溶接が行われている。
一方、TIG溶接による裏波溶接では、上述したプラズマアーク溶接のようなエネルギー密度が高いプラズマアークを用いることができない。このため、被溶接物の裏側に溶接ビードが形成されなかったり、溶接ビードが蛇行したりすることがあり、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことが困難であった。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことを可能としたTIG溶接方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 被溶接物と非消耗電極との間でアークを発生させると共に、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出しながら溶接を行うTIG溶接方法であって、
前記アークの圧力により前記溶融池を凹ませた状態で、前記溶融池にキーホールを形成しながら裏波溶接を行うことを特徴とするTIG溶接方法。
〔2〕 前記被溶接物と前記非消耗電極との間でアークを発生させた後に、前記非消耗電極の先端を前記溶融池に接近する側に移動させるステップと、
前記被溶接物から前記非消耗電極の先端までの距離を保ちながら、前記被溶接物に対して前記非消耗電極を溶接線方向に相対的に走査しながら裏波溶接を行うステップと、
前記非消耗電極の先端を前記溶融池に離間する側に移動させるステップとを、この順で含むことを特徴とする前記〔1〕に記載のTIG溶接方法。
〔3〕 前記被溶接物の表面又は開先の底を基準高さとしたときに、この基準高さから前記非消耗電極の先端までの距離を上方に0〜3mmの範囲としながら裏波溶接を行うことを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のTIG溶接方法。
〔4〕 前記被溶接物の表面又は開先の底を基準高さとしたときに、この基準高さから前記非消耗電極の先端までの距離を下方に0〜3mmの範囲としながら裏波溶接を行うことを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のTIG溶接方法。
〔5〕 前記被溶接物を陽極とし、前記非消耗電極を陰極として、少なくとも300A以上の直流電流を流しながら裏波溶接を行うことを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
〔6〕 前記非消耗電極の先端を尖形とすることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
〔7〕 前記溶融池に溶加材を供給しながら裏波溶接を行うことを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
〔8〕 前記被溶接物の裏面側から前記溶融池に向かってシールドガスを放出しながら裏波溶接を行うことを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
〔9〕 前記シールドガスとして、アルゴンに水素又は窒素を添加した混合ガスを用いることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
以上のように、本発明によれば、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことを可能としたTIG溶接方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係るTIG溶接方法により裏波溶接を行った状態を示す断面図である。 本実施形態のTIG溶接方法において、溶接ワイヤーを供給しながら裏波溶接を行った状態を示す断面図である。 本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物に対するTIG溶接用トーチの走査方法を説明するための模式図である。 本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物に対するTIG溶接用トーチの別の走査方法を説明するための模式図である。 本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物に対するTIG溶接用トーチの別の走査方法を説明するための模式図である。 本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物に対するTIG溶接用トーチの別の走査方法を説明するための模式図である。 (A)は被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離を示す模式図、(B)は被溶接物の開先の底から非消耗電極の先端までの距離を示す模式図である。 本実施形態において用いられるTIG溶接用トーチの構成を示す断面斜視図である。 図8に示すTIG溶接用トーチの要部を拡大した断面斜視図である。 第1の実施例において、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも上方に位置した状態で裏波溶接を行ったときの写真である。 第2の実施例において、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、溶接ワイヤーを供給しながら裏波溶接を行ったときの写真である。 第3の実施例において、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも下方に位置した状態で裏波溶接を行ったときの写真である。 実施例1において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。 実施例2において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。 実施例3において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。 実施例4において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。 実施例5において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。 実施例6において裏波溶接を行った後の溶接部の外観を示し、(A)は被溶接物の表側に形成された溶接ビードを示す写真、(B)は被溶接物の裏側に形成された溶接ビードを示す写真である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。
(TIG溶接方法)
先ず、本発明の一本実施形態に係るTIG溶接方法について、図1〜図7を参照しながら説明する。
なお、図1は、本実施形態のTIG溶接方法により裏波溶接を行った状態を示す断面図である。図2は、本実施形態のTIG溶接方法において、溶接ワイヤーWを供給しながら裏波溶接を行った状態を示す断面図である。図3は、本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物Sに対するTIG溶接用トーチ10の走査方法を説明するための模式図である。図4は、本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物Sに対するTIG溶接用トーチ10の別の走査方法を説明するための模式図である。図5は、本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物Sに対するTIG溶接用トーチ10の別の走査方法を説明するための模式図である。図6は、本実施形態のTIG溶接方法において、被溶接物Sに対するTIG溶接用トーチ10の別の走査方法を説明するための模式図である。図7(A)は、被溶接物Sの表面Fから非消耗電極1の先端までの距離hを示す模式図である。図7(B)は、被溶接物Sの開先Bの底から非消耗電極1の先端までの距離hを示す模式図である。
本実施形態のTIG溶接方法は、図1に示すように、非消耗電極1と、トーチノズル2とを備えるTIG溶接用トーチ10を使用する。本実施形態のTIG溶接方法では、溶接対象となる被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させて、このアークの熱により被溶接物Sを溶かして溶融池(プール)Pを形成する。また、非消耗電極1の周囲を囲むトーチノズル2からシールドガスGを放出し、このシールドガスGで大気(空気)を遮断する。さらに、バックシールド治具20を用いて、被溶接物Sの裏面側から溶融池Pに向かってシールドガスGを放出し、このシールドガスGで大気(空気)を遮断する。
本実施形態のTIG溶接方法は、アークAの圧力により溶融池Pを凹ませた状態で、溶融池PにキーホールKを形成しながら裏波溶接を行うことを特徴とする。これにより、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことが可能である。
また、本実施形態のTIG溶接方法では、図2に示すように、TIG溶接用トーチ10にワイヤー狙いガイド(フィラーガイドとも言う。)30を取り付けて、溶加材である溶接ワイヤー(フィラーとも言う。)Wを溶融池Pに供給しながら裏波溶接を行ってもよい。これにより、不足する溶接金属を補うことが可能である。
本実施形態のTIG溶接方法は、図3に示すように、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた後に、非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近する側に移動させる第1のステップS1と、被溶接物Sから非消耗電極1の先端までの距離を保ちながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に相対的に走査しながら裏波溶接を行う第2のステップS2と、非消耗電極1の先端を溶融池Pに離間する側に移動させる第3のステップS3とを、この順で含む。
具体的に、この図3に示す走査方法では、先ず、ステップS1として、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた後に、非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近する側(下方)に移動させながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に走査する。次に、ステップS2として、被溶接物Sから非消耗電極1の先端までの距離を保ちながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に相対的に走査する。次に、ステップS3として、非消耗電極1の先端を溶融池Pに離間する側(上方)に移動させながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に走査する。非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近させることによって、アークAを集中させることができるため、溶接部の仕上がりを良好にすることが可能である。
一方、本実施形態のTIG溶接方法は、図4に示すような走査方法を用いてもよい。具体的に、この図4に示す走査方法では、先ず、ステップS1として、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた後に、非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近する側(下方)に移動させる。次に、ステップS2として、被溶接物Sから非消耗電極1の先端までの距離を保ちながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に相対的に走査する。次に、ステップS3として、非消耗電極1の先端を溶融池Pに離間する側(上方)に移動させる。
一方、本実施形態のTIG溶接方法は、図5に示すような走査方法を用いてもよい。先ず、ステップS1として、非消耗電極1の先端を溶融池Pから離間する側(上方)に移動させながら、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた後に、非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近する側(下方)に移動させながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に走査する。次に、ステップS2として、被溶接物Sから非消耗電極1の先端までの距離を保ちながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に相対的に走査する。次に、ステップS3として、非消耗電極1の先端を溶融池Pに離間する側(上方)に移動させながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に走査する。
一方、本実施形態のTIG溶接方法は、図6に示すような走査方法を用いてもよい。具体的に、この図6に示す走査方法では、先ず、ステップS1として、非消耗電極1の先端を溶融池Pから離間する側(上方)に移動させながら、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた後に、非消耗電極1の先端を溶融池Pに接近する側(下方)に移動させる。次に、ステップS2として、被溶接物Sから非消耗電極1の先端までの距離を保ちながら、被溶接物Sに対して非消耗電極1を溶接線方向に相対的に走査する。次に、ステップS3として、非消耗電極1の先端を溶融池Pに離間する側(上方)に移動させる。
本実施形態のTIG溶接方法では、上述した図3〜図6に示す走査方法を用いることによって、ステップS1において、被溶接物Sと非消耗電極1との間でアークAを発生させた直後は、溶融池Pが凹んでいないため、この溶融池Pと非消耗電極1との接触を防ぐことが可能である。
また、ステップS2において、非消耗電極1の先端から放射状に拡がるアークAのスポットSpを被溶接物Sに対して絞り込みながら、このアークAの圧力を集中させることによって、溶融池Pをより深くまで凹ませた状態とすることが可能である。
また、ステップS3において、溶接の終了時に、溶融池Pと非消耗電極1との接触を回避することによって、非消耗電極1の先端が溶接ビードと溶着してしまうことを防ぐことが可能である。
本実施形態のTIG溶接方法では、図7(A),(B)に示すように、上述したステップS2において、被溶接物Sの表面F又は開先Bの底を基準高さ(0mm)Oとしたときに、この基準高さOから非消耗電極1の先端までの距離hを上下方向(鉛直方向)に±3mmの範囲とすることが好ましく、±1mmの範囲とすることがより好ましい。
具体的に、基準高さOから非消耗電極1の先端までの距離hを上方(+方向)に0〜+3mmの範囲、より好ましくは0〜+1mmの範囲とした場合には、アークAのスポットSpが被溶接物Sに対して拡がるため、被溶接物Sの表側に幅広の溶接ビードを形成することが可能である。
一方、基準高さOから非消耗電極1の先端までの距離hを下方(−方向)に0〜−3mmの範囲、より好ましくは0〜−1mmの範囲とした場合には、アークAのスポットSpが被溶接物Sに対して絞り込まれるため、溶融池Pに形成されるキーホールKを拡げながら、被溶接物Sの裏側に幅広の溶接ビードを形成することが可能である。
なお、被溶接物Sの厚みについては、上述した裏波溶接をTIG溶接により行うことが可能な厚みであればよく、具体的には3〜10mm程度の厚みであるが、開先を取る場合は3〜16mm程度の厚みである。
また、本実施形態のTIG溶接方法では、被溶接物Sを陽極(+)とし、非消耗電極1を陰極(−)として、これら被溶接物Sと非消耗電極1との間で、少なくとも300A以上の直流電流を流しながら裏波溶接を行うことが好ましく、400A以上とすることがより好ましく、500A以上とすることが更に好ましい。
裏波溶接をTIG溶接により行う場合には、被溶接物Sと非消耗電極1との間で流れる直流電流の電流値が大きくなるほど、アークAの圧力を高めることができ、裏波溶接を安定して行うことが可能である。
一方、本実施形態のTIG溶接方法では、上述した被溶接物Sの表面F又は開先Bの底から非消耗電極1の先端までの距離hを近づけることによって、アークAの圧力を集中させながら、溶融池Pを凹ませた状態で裏波溶接を安定して行うことが可能である。
また、本実施形態のTIG溶接方法では、非消耗電極1の先端を尖形とすることが好ましい。具体的には、この非消耗電極1の先端を尖形としたときのテーパー角θを30〜60°とすることが好ましく、35〜50°とすることがより好ましく、40〜45°とすることが更に好ましい。また、非消耗電極の外径は、3.2〜6.4mmとすることが好ましく、4.0〜4.8mmとすることがより好ましい。
これにより、非消耗電極1の先端から放射状に拡がるアークAのスポットSpを絞り込むことができ、このアークAの圧力を集中させながら、溶融池Pを凹ませた状態で裏波溶接を安定して行うことが可能である。
本実施形態のTIG溶接方法では、シールドガスGとして、例えばアルゴン(Ar)やヘリウム(He)等の不活性ガスや、アルゴン(Ar)に水素(H)、ヘリウム(He)、窒素(N)等のガスを添加した混合ガスを用いることができる。また、アルゴン(Ar)とヘリウム(He)との混合ガスに水素(H)、窒素(N)等のガスを添加した混合ガスを用いることができる。
特に、被溶接物Sがステンレス鋼からなる場合には、シールドガスGとして、アルゴン(Ar)に水素(H)又は窒素(N)を添加した混合ガスを用いることで、溶接ビードを安定して形成することが可能である。
以上のようにして、本実施形態のTIG溶接方法では、被溶接物Sの裏側に溶接ビードが形成されなかったり、溶接ビードが蛇行したりすることを防ぎつつ、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことが可能である。
(TIG溶接用トーチ)
次に、上記TIG溶接方法において好適に用いられるTIG溶接用トーチ50について、図8及び図9を参照しながら説明する。
なお、図8は、TIG溶接用トーチ50の構成を示す断面斜視図である。図9は、図8に示すTIG溶接用トーチ50の要部を拡大した断面斜視図である。
本実施形態のTIG溶接用トーチ50は、図8及び図9に示すように、被溶接物(図示せず。)との間でアークを発生させる非消耗電極51と、非消耗電極51を内側に挿入した状態で支持するコレット52と、非消耗電極51を先端側から突出させた状態でコレット52を内側に保持すると共に、冷却液(水)Lが循環されるウォータージャケット(流路)53が設けられたコレットボディ54と、コレットボディ54が取り付けられるトーチボディ55と、非消耗電極51の周囲を囲んだ状態でトーチボディ55に取り付けられると共に、アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かって第1のシールドガスG1及び第2のシールドガスG2を放出するトーチノズル56と、コレットボディ54と熱的に接続された状態で取り付けられると共に、その先端から非消耗電極51を突出させる中心孔57aが設けられた冷却チップ57とを概略備えている。
非消耗電極51は、例えばタングステンなどの融点の高い金属材料を用いて形成された長尺状の電極棒からなる。また、非消耗電極51には、タングステンの他に、例えば酸化トリウムや酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物を添加したものを用いることができる。
コレット52は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた金属材料を用いて形成された概略円筒状の部材からなる。コレット52は、軸線方向に貫通する貫通孔52aを有し、この貫通孔52aの内側に挿入された非消耗電極51を軸線方向にスライド可能に支持する。コレット52の先端側には、複数のスリット52bが周方向に並んで設けられている。複数のスリット52bは、コレット52の先端から軸線方向の中途部に亘って直線状に切り欠かれている。これにより、各スリット52bの間の先端部分52cが縮径方向に弾性変形可能となっている。また、コレット52の先端部には、漸次縮径されたテーパー部52dが設けられている。
コレットボディ54は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料を用いて形成された概略円筒状の部材からなる。コレットボディ54は、軸線方向に貫通する貫通孔54aを有し、この貫通孔54aの基端側から挿入されたコレット52を内側に保持する。
コレットボディ54の先端側には、貫通孔54aを介して供給された第1のシールドガスG1を放出するセンターノズル54bが設けられている。また、コレットボディ54の側面には、貫通孔54aに向けて第1のシールドガスG1を供給するガス供給口(図示せず。)が設けられている。一方、コレットボディ54の後端側には、貫通孔54aの後端側を閉塞するトーチキャップ58が螺合により着脱自在に取り付けられている。トーチキャップ58には、第1のシールドガスG1を貫通孔54aに向けて供給するガス供給口58aが設けられている。
トーチボディ55は、例えば軟鋼やステンレス鋼などの鋼材又は真鍮等を用いて概略円筒状に形成された外筒部材59と、絶縁樹脂を用いて概略円筒状に形成された絶縁部材60とを有している。
外筒部材59は、非消耗電極51に電力を供給する給電部を形成している。また、外筒部材59の内側に形成された貫通孔59aは、その中心に非消耗電極51を配置すると共に、非消耗電極51の周囲からコレットボディ54の貫通孔54aに向けて第1のシールドガスG1を供給する流路を形成している。
一方、コレットボディ54は、貫通孔59aの内側に挿入された状態で、外筒部材59に対して螺合により着脱自在に取り付けられている。また、外筒部材59は、コレットボディ54の外周面との間で第2のシールドガスG2が流れる流路を形成している。
絶縁部材60は、コレットボディ54の外周部を覆うと共に、貫通孔59aの内側に挿入された状態で、外筒部材59に対して螺合により着脱自在に取り付けられている。
コレットボディ54と外筒部材60との間には、冷却液Lが循環されるウォータージャケット(流路)61が設けられている。ウォータージャケット61は、外筒部材59の内周面を周方向に切り欠くリング状の溝部59bと、コレットボディ54の外周面とによって構成されている。また、ウォータージャケット61を構成するコレットボディ54と外筒部材59との間は、Oリング62によって液密に封止(シール)されている。Oリング62は、ウォータージャケット61を挟んだ軸線方向の両側にそれぞれ配置されている。
ウォータージャケット53,61は、冷却液Lの循環によりコレットボディ54を冷却する冷却機構(チラー)(図示せず。)と接続されている。これにより、コレットボディ54は、ウォータージャケット53,61を流れる冷却液Lにより冷却されることになる。
トーチノズル56は、例えば耐熱性に優れたセラミックなどを用いて概略円筒状に形成されたノズル形状を有している。トーチノズル56は、コレットボディ54の外周面との間で第2のシールドガスG2が流れる流路を形成すると共に、外筒部材59の外周面に螺合により着脱自在に取り付けられている。また、トーチノズル56は、その先端側が漸次縮径されたノズル形状を有している。
冷却チップ57は、概略円筒状に形成されて、コレットボディ54の先端側からコレットボディ54の内側に挿入された状態で、コレットボディ54に対して螺合により着脱自在に取り付けられている。また、冷却チップ57は、その先端側が絞り込まれたテーパー形状を有している。
冷却チップ57の中心孔57aは、非消耗電極51と接触した状態で、その先端から非消耗電極51を突出させている。また、冷却チップ57の先端には、拡径方向に突出したフランジ部57bが設けられている。冷却チップ57は、このフランジ部57bがコレットボディ54の先端に当接した状態で取り付けられている。
冷却チップ57は、コレット52と接触している。具体的に、中心孔57aの内側には、コレット52のテーパー部52dが当接される縮径部57cが設けられている。縮径部57cは、非消耗電極51を貫通させる程度に縮径されている。これにより、冷却チップ57の先端部からは、中心孔57aを貫通した非消耗電極51のみを突出させることが可能となっている。
また、冷却チップ57は、コレットボディ54と共に、ウォータージャケット53の一部を構成している。このため、ウォータージャケット53を構成するコレットボディ54と冷却チップ57との間は、Oリング63によって液密に封止(シール)されている。これにより、冷却チップ57は、コレットボディ54と共に、ウォータージャケット53を流れる冷却液Lにより冷却されることになる。
以上のような構成を有するTIG溶接用トーチ50は、電源装置(図示せず。)と接続されている。電源装置は、TIG溶接用トーチ50と溶接ケーブル(図示せず。)を介して接続されて、TIG溶接用トーチ50への電力並びに第1及び第2のシールドガスG1,G2の供給を行う。
電源装置では、図示を省略するものの、マイナス(−)端子側にトーチ側ケーブルを介して非消耗電極51が電気的に接続され、且つ、プラス(+)端子側に母材側ケーブルを介して被溶接物Sが電気的に接続されている。
これにより、非消耗電極51と被溶接物との間でアークを発生させて、このアークの熱により被溶接物を溶かして溶融池(プール)を形成しながら溶接が行われる。また、溶接中は非消耗電極51の周囲を囲むトーチノズル56から第1及び第2のシールドガスG1,G2を放出し、これらのシールドガスG1,G2により大気(空気)を遮断しながら溶接が行われる。
なお、第1及び第2のシールドガスG1,G2については、特に限定されるものではなく、例えばアルゴン(Ar)やヘリウム(He)等の不活性ガスや、アルゴン(Ar)に水素(H)、ヘリウム(He)、窒素(N)等のガスを添加した混合ガスを用いることができる。また、アルゴン(Ar)とヘリウム(He)との混合ガスに水素(H)、窒素(N)等のガスを添加した混合ガスを用いることができる。
また、第2のシールドガスG2については、上述した組成のガスの他に、アルゴン(Ar)又はアルゴン(Ar)とヘリウム(He)との混合ガスに、例えば炭酸ガス(CO)や酸素(O)等の酸化性ガスを添加したものを用いてもよい。
本実施形態のTIG溶接用トーチ50では、上述した冷却チップ57がコレットボディ54及びコレット52と熱的に接続された状態で取り付けられると共に、冷却液Lの循環によりコレットボディ54及び冷却チップ57を冷却している。また、冷却チップ57の中心孔57aから非消耗電極51の先端を突出させた状態で、この非消耗電極51が冷却チップ57と接触している。
すなわち、本実施形態のTIG溶接用トーチ50では、冷却液Lの循環により冷却される冷却チップ57と非消耗電極51が熱的に接続された状態となっている。これにより、非消耗電極51の冷却効果を上げることができ、この非消耗電極51のアークの熱による消耗を抑制することが可能である。また、冷却チップ57の交換も容易である。
特に、本実施形態のTIG溶接方法では、上述した被溶接物Sの表面F又は開先Bの底から非消耗電極1の先端までの距離hを近づけることによって、アークAの圧力を集中させることから、アークAの熱による影響を受け易い。これに対して、本実施形態のTIG溶接用トーチ50を用いることによって、このようなアークAの熱による影響を受け易い非消耗電極51を効率良く且つ十分に冷却することが可能である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(第1の実施例)
先ず、第1の実施例では、実際に本実施形態のTIG溶接方法を用いて、以下の溶接条件により非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも上方に位置した状態で裏波溶接を行った。また、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも上方に位置した状態で裏波溶接を行ったときの写真を図10に示す。
<溶接条件>
・溶接機:WP−T500P(ダイヘン株式会社製)
・センターガス:アルゴンと水素の混合ガス(組成:水素7%、残部アルゴン、流量:2.5L/min)
・アウターガス:アルゴンガス(組成:アルゴン100%、流量15L/min)
・非消耗電極径:φ4mm、テーパー角θ:45°
・インサートチップ径:φ8mm
・インサートチップからの非消耗電極の突き出し長さ:8mm
・溶接電流:400A
・溶接速度:50cm/min
・被溶接物:材質:SUS304、厚み5mm(ビードオン)
・被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離h:+3mm
図10に示すように、本実施形態のTIG溶接方法を用いることによって、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも上方に位置した状態で、アークの圧力により溶融池を凹ませながら裏波溶接を安定して行うことが可能である。
(第2の実施例)
次に、第2の実施例では、実際に本実施形態のTIG溶接方法を用いて、以下の溶接条件により溶接ワイヤーを供給しながら裏波溶接を行った。また、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、溶接ワイヤーを供給しながら裏波溶接を行ったときの写真を図11に示す。
<溶接条件>
・溶接機:WP−T500P(ダイヘン株式会社製)
・センターガス:アルゴンと水素の混合ガス(組成:水素7%、残部アルゴン、流量:2.5L/min)
・アウターガス:アルゴンガス(組成:アルゴン100%、流量15L/min)
・非消耗電極径:φ4mm、テーパー角θ:45°
・インサートチップ径:φ8mm
・インサートチップからの非消耗電極の突き出し長さ:8mm
・溶接電流:400A
・溶接速度:50cm/min
・被溶接物:材質:SUS304、厚み5mm(ビードオン)
・被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離h:+3mm
・溶接ワイヤー:材質(商品名)WEL MIG 308 LSi、外径0.9mm
・送給速度:1.7m/min
図11に示すように、本実施形態のTIG溶接方法を用いることによって、アークの圧力により溶融池を凹ませた状態で、溶接ワイヤーを供給しながら裏波溶接を安定して行うことが可能である。
(第3の実施例)
次に、第3の実施例では、実際に本実施形態のTIG溶接方法を用いて、以下の溶接条件により非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも下方に位置した状態で裏波溶接を行った。また、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも下方に位置した状態で裏波溶接を行ったときの写真を図12に示す。
<溶接条件>
・溶接機:WP−T500P(ダイヘン株式会社製)
・センターガス:アルゴンと水素の混合ガス(組成:水素7%、残部アルゴン、流量:2.5L/min)
・アウターガス:アルゴンガス(組成:アルゴン100%、流量15L/min)
・非消耗電極径:φ4mm、テーパー角θ:45°
・インサートチップ径:φ8mm
・インサートチップからの非消耗電極の突き出し長さ:8mm
・溶接電流:400A
・溶接速度:50cm/min
・被溶接物:材質:SUS304、厚み5mm(ビードオン)
・被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離h:−1mm
図12に示すように、本実施形態のTIG溶接方法を用いることによって、非消耗電極の先端が被溶接物の表面よりも下方に位置した状態で、アークの圧力により溶融池を凹ませながら裏波溶接を安定して行うことが可能である。
(第4の実施例)
次に、第4の実施例では、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、以下の溶接条件により、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを変更しながら、下記実施例1〜6の裏波溶接を行った。
<溶接条件>
・溶接機:WP−T500P(ダイヘン株式会社製)
・センターガス:アルゴンと水素の混合ガス(組成:水素7%、残部アルゴン、流量:2.5L/min)
・アウターガス:アルゴンガス(組成:アルゴン100%、流量15L/min)
・非消耗電極径:φ4mm、テーパー角θ:45°
・インサートチップ径:φ8mm
・インサートチップからの非消耗電極の突き出し長さ:8mm
・溶接電流:400A
・溶接速度:50cm/min
・被溶接物:材質:SUS304、厚み5mm(ビードオン)
<実施例1>
実施例1は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを+3mmとした場合である。この実施例1において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図13(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図13(B)に示す。
図13(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約10mmであった。
<実施例2>
実施例2は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを+2mmとした場合である。この実施例2において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図14(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図14(B)に示す。
図14(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約9.5mmであった。
<実施例3>
実施例1は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを+1mmとした場合である。この実施例3において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図15(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図15(B)に示す。
図15(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約9.5mmであった。
<実施例4>
実施例4は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを0mmとした場合である。この実施例4において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図16(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図16(B)に示す。
図16(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約8mmであった。
<実施例5>
実施例5は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを−0.5mmとした場合である。この実施例5において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図17(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図17(B)に示す。
図17(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約8mmであった。
<実施例6>
実施例6は、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを−1mmとした場合である。この実施例6において裏波溶接を行った後の溶接部の外観のうち、被溶接物の表側に形成された溶接ビードの写真を図18(A)に示し、被溶接物の裏側に形成された溶接ビードの写真図18(B)に示す。
図18(A),(B)に示すように、溶接部は、溶接欠陥のない美しい仕上がりとなった。また、表側の溶接ビードの幅は、約7mmであった。
以上のように、本実施形態のTIG溶接方法を用いることによって、本発明によれば、良好な裏波溶接をTIG溶接により安定して行うことが可能となった。また、溶接ビードの幅が狭いほど、ひずみが小さくなることがわかった。
(第5の実施例)
次に、第5の実施例では、本実施形態のTIG溶接方法を用いて、溶接電流を300A、400A、500Aとし、それぞれ被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hを+3.5〜−1.5の範囲で0.5mm刻みで変更しながら、裏波溶接を行った。
また、溶接電流が300Aのとき、被溶接物の厚みを3mm、溶接速度を80cm/minとし、溶接電流が400Aのとき、被溶接物の厚みを5mm、溶接速度を50cm/minとし、溶接電流が500Aのとき、被溶接物の厚みを7mm、溶接速度を35cm/minとした。それ以外の溶接条件は、以下のとおりである。
<溶接条件>
・溶接機:WP−T500P(ダイヘン株式会社製)
・センターガス:アルゴンと水素の混合ガス(組成:水素7%、残部アルゴン、流量:2.5L/min)
・アウターガス:アルゴンガス(組成:アルゴン100%、流量15L/min)
・非消耗電極径:φ4mm、テーパー角θ:45°
・インサートチップ径:φ8mm
・インサートチップからの非消耗電極の突き出し長さ:8mm
・被溶接物:材質:SUS304
そして、これらの裏波溶接について、溶接部の仕上がりが良好な場合を「○」とし、溶接部に欠陥が生じた又は非消耗電極が溶融池と接触した場合を「×」として、評価を行った。その評価結果をまとめたものを下記表1に示す。
表1に示すように、溶接電流が300Aの場合、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hが+0.5〜0mmの範囲で良好な結果が得られた。一方、溶接電流が400Aの場合、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hが+3〜−0.5mmの範囲で良好な結果が得られた。一方、溶接電流が500Aの場合、被溶接物の表面から非消耗電極の先端までの距離hが+3〜−1mmの範囲で良好な結果が得られた。
1…非消耗電極 2…トーチノズル 10…TIG溶接用トーチ 20…バックシールド治具 30…ワイヤー狙いガイド S…被溶接物 A…アーク P…溶融池 G…シールドガス K…キーホール W…溶接ワイヤー(溶加材) F…被溶接物の表面 B…被溶接物の開先 O…基準高さ
50…TIG溶接用トーチ 51…非消耗電極 52…コレット 53…ウォータージャケット(流路) 54…コレットボディ 55…トーチボディ 56…トーチノズル 57…冷却チップ 58…トーチキャップ 59…外筒部材 60…絶縁部材 61…ウォータージャケット 62,63…Oリング G1…第1のシールドガス G2…第2のシールドガス L…冷却液(水)

Claims (9)

  1. 被溶接物と非消耗電極との間でアークを発生させると共に、前記アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出しながら溶接を行うTIG溶接方法であって、
    前記アークの圧力により前記溶融池を凹ませた状態で、前記溶融池にキーホールを形成しながら裏波溶接を行うことを特徴とするTIG溶接方法。
  2. 前記被溶接物と前記非消耗電極との間でアークを発生させた後に、前記非消耗電極の先端を前記溶融池に接近する側に移動させるステップと、
    前記被溶接物から前記非消耗電極の先端までの距離を保ちながら、前記被溶接物に対して前記非消耗電極を溶接線方向に相対的に走査しながら裏波溶接を行うステップと、
    前記非消耗電極の先端を前記溶融池に離間する側に移動させるステップとを、この順で含むことを特徴とする請求項1に記載のTIG溶接方法。
  3. 前記被溶接物の表面又は開先の底を基準高さとしたときに、この基準高さから前記非消耗電極の先端までの距離を上方に0〜3mmの範囲としながら裏波溶接を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のTIG溶接方法。
  4. 前記被溶接物の表面又は開先の底を基準高さとしたときに、この基準高さから前記非消耗電極の先端までの距離を下方に0〜3mmの範囲としながら裏波溶接を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のTIG溶接方法。
  5. 前記被溶接物を陽極とし、前記非消耗電極を陰極として、少なくとも300A以上の直流電流を流しながら裏波溶接を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
  6. 前記非消耗電極の先端を尖形とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
  7. 前記溶融池に溶加材を供給しながら裏波溶接を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
  8. 前記被溶接物の裏面側から前記溶融池に向かってシールドガスを放出しながら裏波溶接を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
  9. 前記シールドガスとして、アルゴンに水素又は窒素を添加した混合ガスを用いることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のTIG溶接方法。
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