以下、本発明について、実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、樹脂組成物中の各成分の量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対する値である。
なお、以下の説明において、「樹脂成分」とは、別途明示のない限り、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(D)無機充填材(以下、本明細書中「(D)成分」ともいう)を除いた成分をいう。
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)炭素−炭素不飽和結合を有する活性エステル化合物、及び(C)不飽和炭化水素基を有する樹脂を含有する。本発明の樹脂組成物を硬化して形成される硬化物は、(B)成分の不飽和結合部位と、(C)成分の不飽和炭化水素基と、が反応して形成される分子構造部位を含む。この分子構造部位は、(B)成分の不飽和結合部位及び(C)成分の不飽和炭化水素基の作用により、極性が小さい。そのため、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
また、本発明の樹脂組成物を硬化して形成される硬化物は、(B)成分の不飽和結合部位と、(C)成分の不飽和炭化水素基との反応により形成される分子構造部位だけでなく、(B)成分の活性エステル部位と、(A)成分と、が反応して形成される分子構造部位を含む。そのため、架橋密度が密となり(即ち、構造が密となり)、硬化物のガラス転移温度が高くなる。更に、架橋密度が密となることで、硬化物の機械的強度が向上し、硬化物の破壊を伴う剥離が生じ難くなるので、硬化物と導体層との密着性に優れたものとなる。
このように、本発明の樹脂組成物は、(B)成分が、(A)成分及び(C)成分と反応し得る反応部位を化合物中に有するので、(A)成分と(C)成分をそれぞれ単独で用いた場合に発現し得る効果を同時に奏する硬化物を形成することができる。
さらには、(A)成分と反応し得るエステル化合物と、(C)成分と反応し得る不飽和結合を有する化合物と、を別々に用いる場合と(B)成分を用いる場合を比較すると、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混和性を向上させることができる。そのため、硬化物における組成の均一性を向上させることができるので、前記の効果をより高いレベルで得ることができる。
[2.(A)エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、(A)成分を含有する。(A)成分と(B)成分の活性エステル部位とが反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、構造が密となり、硬化物のガラス転移温度が高く、密着性に優れるものとなる。
(A)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中でも、(A)成分としては、密着性を向上させるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂及びアントラセン型エポキシ樹脂が好ましく、平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族骨格とは、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む概念である。芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びナフトール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂が更に好ましい。
また、樹脂組成物は、(A)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。中でも、樹脂組成物は、(A)成分として、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」と称することがある。)を含むことが好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。よって、樹脂組成物は、(A)成分として、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固形状エポキシ樹脂とこれ以外のエポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。中でも、樹脂組成物は、(A)成分として、固体状エポキシ樹脂と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」と称することがある。)とを、組み合わせて含むことが好ましい。(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりすることができる。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL980」、「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER806H」、「jER807」、「YL983U」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鐵化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトールナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱化学社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0.1〜1:15、より好ましくは1:0.5〜1:10、特に好ましくは1:1〜1:8である。
液状エポキシ樹脂の質量比が斯かる範囲にあることで、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取扱い性が向上し、ラミネートの際の十分な流動性を得ることができる。
固体状エポキシ樹脂の質量比が斯かる範囲にあることで、エポキシ樹脂の粘性を低下させ、接着フィルムの形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性を向上させることができる。また、真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性を良好にし、硬化後の耐熱性を向上させることができる。
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、特に好ましくは110〜1000である。(A)成分のエポキシ当量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層を得ることができる。
エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定し得る。
(A)成分の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定し得る。例えば、樹脂の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
樹脂組成物における(A)成分の量は、高ガラス転移温度、高密着性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。(A)成分の量の上限は、本発明の効果が奏される限り任意であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
[3.(B)炭素−炭素不飽和結合を有する活性エステル化合物]
本発明の樹脂組成物は、(B)成分を含有する。(B)成分を用いることにより、(A)成分及び(C)成分の両成分と反応し、硬化物を形成する。
(B)成分の不飽和結合部位と、(C)成分と、が反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
また、(B)成分の活性エステル部位と、(A)成分と、が反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、構造が密となり、硬化物のガラス転移温度が高く、密着性に優れるものとなる。
従来、2つの異なる反応性を有する樹脂を併用した場合、各樹脂の混和性が悪く、硬化物は均一に形成され難いものであった。従って、上記の効果を高いレベルで同時に発現することは困難であった。
一方、本願発明の樹脂組成物においては、(B)成分が、2つの異なる反応性を有する樹脂とそれぞれ反応可能な部位を同一化合物中に有する。そのため、(B)成分が各樹脂を連結して硬化物を形成し、均一な硬化物を形成することができる。従って、上記の特性を高いレベルで同時に発現することができ、本願発明の所望の効果を奏することができる。
さらには、(B)成分を用いると、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混和性を向上させることができる。そのため、硬化物における組成の均一性を向上させることができるので、上記の効果をより高いレベルで得ることができる。
炭素−炭素不飽和結合としては、例えば、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合が挙げられる。中でも、炭素−炭素二重結合が好ましい。炭素−炭素二重結合としては、例えば、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基、プロペニル基が挙げられる。中でも、耐熱性に優れるという観点から、スチリル基が特に好ましい。
(B)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
一般式(1)中、mは1〜6の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。
一般式(1)中、mは、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1〜3の整数である。また、nは、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、特に好ましくは1〜3の整数である。斯かる数値範囲であることにより、(B)成分は(C)成分と適切な割合で反応し、誘電正接の低下を実現し得る。
(B)成分は、一般式(1)で表される化合物のm、nの値が異なる化合物の混合物であってもよい。混合物である場合、(B)成分は、一般式(1)で表される化合物を含む限り、一般式(1)においてnが0の化合物(下記式(0−1)で表される化合物)や、nが1〜20の整数であり、mが0の化合物(下記一般式(0−2)で表される化合物)を含むものであってもよい。
なお、(B)成分100質量%に対して、式(0−1)で表される化合物及び一般式(0−2)で表される化合物の合計の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、0質量%である。斯かる範囲であることで、(B)成分は(C)成分と適切な割合で反応し、誘電正接の低下を実現し得る。
一般式(0−2)中、nは1〜20の整数を表す。
一般式(1)で表される化合物は市販品を用いてもよく、合成品を用いてもよい。市販品としては、例えば、商品名「PC1300−02−65MA」(エア・ウォーター社製)が挙げられる。
樹脂組成物における(B)成分の量は、低誘電正接、高ガラス転移温度、高密着性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。(B)成分の量の上限は、本発明の効果が奏される限り任意であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
[4.(C)不飽和炭化水素基を有する樹脂]
本発明の樹脂組成物は、(C)成分を含有する。(C)成分と(B)成分の不飽和結合部位が反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
(C)成分としては、不飽和炭化水素基を有していれば、特に限定されない。不飽和炭化水素基を使用することで、硬化物の誘電正接を低下させることができる。不飽和炭化水素としては、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、オレフィン基であることが好ましい。中でも、耐熱性に優れるという観点からスチリル基を有することがより好ましい。
ここで、「オレフィン基」とは、分子中に炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素基をいう。例えば、アリル基、ビニル基、プロペニル基が挙げられる。
(C)成分としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
一般式(2)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子である。Aは、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される構造を表す。
一般式(3)中、Bは、下記一般式(B−1)、(B−2)又は(B−3)で表される構造を表す。
一般式(4)中、Dは、下記一般式(5)で表される構造を表す。
一般式(5)中、R
7〜R
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。特にR
7、R
8、R
13、R
14は、より好ましくはメチル基である。a、bは、少なくとも一方が0でない0〜100の整数である。Bは、下記一般式(B−1)、(B−2)又は(B−3)で表される構造を表す。
一般式(B−1)中、R
15〜R
18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
一般式(B−2)中、R
19〜R
26は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
一般式(B−3)中、R
27〜R
34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。Eは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を表す。
(C)成分としては、下記一般式(6)、下記式(7)又は下記式(8)で表される化合物であることがより好ましい。
一般式(6)中、R
1〜R
6は、一般式(2)中のR
1〜R
6と同義であり、Bは、一般式(3)中のBと同義であり、a、bは、一般式(5)中のa、bと同義である。
市販されている(C)成分としては、例えば、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200(数平均分子量1200)」、一般式(6)相当)、ビキシレノールジアリルエーテル樹脂(三菱化学社製「YL7776(数平均分子量331)」、式(7)相当)、ジオキサンアクリルモノマーグリコールジアクリレート(新中村化学工業社製「A−DOG(数平均分子量326)」、式(8)相当)が挙げられる。
(C)成分の数平均分子量は、樹脂ワニス乾燥時の揮発防止、樹脂組成物の溶融粘度が上昇しすぎるのを防止するという観点から、好ましくは100〜10000の範囲であり、より好ましくは200〜3000の範囲である。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量としては、例えば、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
樹脂組成物における(C)成分の量は、硬化物の誘電正接の値を小さくする観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。(C)成分の量の上限は、本発明の効果が奏される限り任意であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
[5.硬化剤]
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、(B)成分とは異なる硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。中でも、導体層との密着性に優れる絶縁層を得る観点からは、活性エステル系硬化剤が好ましい。なお、硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤又はナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトールノボラック硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金社製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤としては、特に限定されない。例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物を用いることができる。該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物の少なくともいずれかの化合物と、の縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物と、から得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、DIC社製の「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「EXB−8000L−65TM」、「HPC−8000H−65M」(ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物)、DIC社製の「EXB−9416L−70BK」(ナフタレン構造を含む活性エステル化合物)、三菱化学社製の「DC808」(フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物)、三菱化学社製の「YLH1026」(フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物)、DIC社製の「EXB−9050L−62M」(リン原子含有活性エステル化合物)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤としては、例えば、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されない。例えば、フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型等の、ノボラック型シアネートエステル系硬化剤;ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等の、ビスフェノール型シアネートエステル系硬化剤;並びに、これらが一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;及び、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーが挙げられる。市販品としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」が挙げられる。
硬化剤は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤の少なくともいずれかであることが更に好ましい。
(A)成分のエポキシ基数を1とした場合、機械的強度の良好な絶縁層を得る観点から、硬化剤の反応基数の下限は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.4以上である。上限は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下である。
ここで、「硬化剤の反応基」は、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中の各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値を全てのエポキシ樹脂について合計した値である。更に、「硬化剤の反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値を全ての硬化剤について合計した値である。(A)エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより向上することができる。
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されない。例えば、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは18質量%以下、15質量%以下である。また、下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上、10質量%以上である。硬化剤の含有量を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の線熱膨張係数、誘電正接、導体層との密着性において一層優れた硬化物を形成し得る。
[6.(D)無機充填材]
樹脂組成物は、通常、(D)成分を含有する。(D)成分を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数を小さくできるので、絶縁層のリフロー反りを抑制することができる。
(D)成分の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウムが挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましく、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカがより好ましく、絶縁層の表面粗さを低下させるという観点から、溶融シリカ、球状シリカがさらに好ましく、球状溶融シリカが特に好ましい。(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
通常、(D)成分は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(D)成分の粒子の平均粒径は、回路埋め込み性を向上させ、表面粗さの小さい絶縁層を得る観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下、0.8μm以下、0.6μm以下、0.4μm以下である。該平均粒径の下限は、樹脂ワニスとした際の、ワニスの粘度が上昇し、取扱い性が低下することを防止する観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上である。
前記のような平均粒径を有する(D)成分の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP60−05」、「SP507−05」;アドマテックス社製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」;デンカ社製「UFP−30」;トクヤマ社製「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」;アドマテックス社製「SC2500SQ」、「SO−C4」、「SO−C2」、「SO−C1」が挙げられる。
(D)成分等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定し得る。例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で測定し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を測定可能である。測定サンプルは、粒子を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用可能である。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」等を使用可能である。
(D)成分は、任意の表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらの表面処理剤で(D)成分を表面処理することにより、(D)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM−22」(ジメチルジメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE−903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM−103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)が挙げられる。また、表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量によって評価し得る。(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、(D)成分の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m2以上、より好ましくは0.1mg/m2以上、特に好ましくは0.2mg/m2以上である。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m2以下、より好ましくは0.8mg/m2以下、特に好ましくは0.5mg/m2以下である。
(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(D)成分を溶媒(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定し得る。例えば、十分な量のメチルエチルケトンと、表面処理剤で表面処理された(D)成分とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。その後、上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量を測定し得る。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」を使用し得る。
樹脂組成物における(D)成分の量の下限は、熱膨張率の低い絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは200質量部以上、更に好ましくは250質量部以上である。上限は、絶縁層の機械的強度、特に伸びの観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、さらに好ましくは350質量部以下である。
[7.(E)硬化促進剤]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、(E)硬化促進剤(以下、本明細書中「(E)成分」ともいう)を更に含有するものであってもよい。(E)成分を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
(E)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤又は金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤又は金属系硬化促進剤がより好ましい。
なお、(E)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセンが挙げられる。中でも、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンのイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学社製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニドが挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体として、例えば、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体;銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体;亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体;鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体;ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体;マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
過酸化物系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、日油社製の「パークミル D」が挙げられる。
樹脂組成物における(E)成分の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.01〜3質量%の範囲が好ましい。
[8.(F)熱可塑性樹脂]
本発明の樹脂組成物は、(F)熱可塑性樹脂(以下、本明細書中「(F)成分」ともいう)を更に含んでもよい。(F)成分としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、インデンクマロン樹脂が挙げられる。中でも、相溶性向上という観点から、インデンクマロン樹脂が好ましい。なお、(F)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(F)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量は、8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。
(F)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。例えば、(F)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、三菱化学社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱化学社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱化学社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱化学社製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891BH30」及び「YL7482」等が挙げられる。
インデンクマロン樹脂としては、例えば、日塗化学社製の「H−100」、「WS−100G」、「WS−100H」、「WS−120V」、「WS−100GC」;ノバレス・ルトガーズ社製の「C10」、「C30」、「CA80」が挙げられる。
樹脂組成物における(F)成分の量の下限は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、その上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。斯かる範囲であることにより、フィルム成型能や機械的強度向上の効果が発揮され、更に溶融粘度の上昇や湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができる。
[9.任意成分]
本発明の樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意成分を含み得る。このような任意成分としては、例えば、難燃剤;有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤等の樹脂添加剤が挙げられる。
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃剤を用いることにより、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をさらに向上し得る。
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA−HQ」、「HCA−HQ−HS」、大八化学工業社製の「PX−200」が挙げられる。なお、難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物における難燃剤の量は、耐熱性を付与する観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.5〜20質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜15質量%の範囲がより好ましく、0.5〜10質量%の範囲がさらに好ましい。
<有機充填材>
本発明の樹脂組成物は、有機充填材を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の柔軟性を向上させられるので、絶縁層の伸び性を改善できる。
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用できる。例えば、ゴム粒子、ポリアミド粒子、シリコーン粒子が挙げられる。また、ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL−2655」、アイカ工業社製の「AC3816N」が挙げられる。なお、有機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
有機充填材の粒子の平均粒径は、樹脂組成物中の分散性に優れるという観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。有機充填材の平均粒径の下限は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上、特に好ましくは0.10μm以上である。
樹脂組成物における有機充填材の量は、樹脂組成物の硬化物の機械的物性を適切な範囲に調整する観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.2〜10質量%の範囲がより好ましく、0.3〜5質量%の範囲がさらに好ましく、0.5〜3質量%の範囲が特に好ましい。
[10.樹脂組成物の製法及び特性]
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサー等を用いて混合・分散する方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度の高い硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、後述の<ガラス転移温度の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、引張加重法で熱機械分析を行うことにより、荷重1g、昇温速度5℃/minで測定することができる。本発明の樹脂組成物の硬化物は、好ましくは158℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは162℃以上のガラス転移温度を示すことができる。ガラス転移温度の上限は特に限定されなく、通常、250℃以下である。
本発明の樹脂組成物は、誘電正接の低い硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述の<誘電正接の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、空洞共振器摂動法により周波数5.8GHz、測定温度23℃で測定することができる。誘電正接の値は、高周波での発熱防止、信号遅延及び信号ノイズの低減の観点から、好ましくは0.0037以下、より好ましくは0.0035以下である。誘電正接の値の下限は、低いほど好ましく、通常、0.0001以上等とし得る。
本発明の樹脂組成物は、導体層との密着性の高い硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の密着性は、後述の<密着性の測定>に記載の方法により評価することができる。得られる導体層と絶縁層との密着性は、好ましくは0.60kgf/cm以上、より好ましくは0.70kgf/cm以上である。密着性の上限は特に限定されなく、通常、1.2kgf/cm以下等とし得る。
本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度が高く、誘電正接が低く、導体層との密着性が良好な硬化物をもたらすことができる。従って、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。
[11.シート状積層材料]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
シート状積層材料としては、以下に示す接着フィルム、プリプレグが好ましい。
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは50μm以下、40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されなく、通常、1μm以上、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上等とし得る。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル;環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」が挙げられる。
支持体の厚さは、特に限定されなく、5〜75μmの範囲が好ましく、10〜60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されなく、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50〜150℃で3〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせて含む樹脂組成物を使用する本発明においては、ガラス転移温度が高く、誘電正接が低く、導体層との密着性が良好な硬化物をもたらす、プリント配線板の製造に際して極めて有用なシート状積層材料を実現することができる。
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
[12.プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物又は本発明のシート状積層材料を熱硬化して得られた絶縁層を含む。
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び導体層の少なくともいずれかが形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい。
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098〜1.77MPa、より好ましくは0.29〜1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20〜400秒間、より好ましくは30〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なる。例えば、硬化温度は120〜240℃の範囲(好ましくは150〜220℃の範囲、より好ましくは170〜200℃の範囲)である。硬化時間は5〜120分間の範囲(好ましくは10〜100分間、より好ましくは15〜90分間)である。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5〜150分間、より好ましくは15〜120分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に接着フィルムを用いる場合と同様である。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマを使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
膨潤液としては特に限定されない。例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液が挙げられる。好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されない。例えば、30〜90℃の膨潤液に絶縁層を1〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40〜80℃の膨潤液に硬化体を5〜15分間浸漬することが好ましい。
酸化剤としては、特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10〜30分間浸漬して行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30〜80℃の中和液に5〜30分間浸漬することにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40〜70℃の中和液に5〜20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3〜35μmであり、好ましくは5〜30μmである。
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT−III箔、三井金属鉱山社製の3EC−III箔、TP−III箔等が挙げられる。
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物を使用してプリント配線板を製造する場合、導体層をメッキにより形成するか金属箔を使用して形成するかの別を問わず、導体層と絶縁層との密着性を著しく向上させることができる。
[13.半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。例えば、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別に断らない限り、質量基準である。
<実施例1>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)25部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828US」、エポキシ当量約180)10部をソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解し、その後室温にまで冷却した。無機充填材(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m2)315部を混合し、3本ロールで混練し分散させた。そこへ、ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199の不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)69.2部、ビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)25部、インデンクマロン樹脂(日塗化学製「H−100」)15部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の5%のMEK溶液2部及びジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミル D」)0.13部を混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
樹脂ワニス1を、アルキド系離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL−5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜110℃(平均95℃)で5分間乾燥し、接着フィルム1を作製した。
<実施例2>
実施例1において、ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199の不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)69.2部中30.8部を活性エステル系硬化剤(DIC者製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)30.8部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス2及び接着フィルム2を作製した。
<実施例3>
実施例1において、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)25部中5部をビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)8.3部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス3及び接着フィルム3を作製した。
<実施例4>
実施例1において、ビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)25部をジオキサンアクリルモノマー(新中村化学工業社製「A−DOG」)15部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス4及び接着フィルム4を作製した。
<比較例1>
実施例1において、ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199の不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)を活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス5及び接着フィルム5を作製した。
<比較例2>
実施例1において、ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199の不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)を活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−8000L−65TM」、活性基当量約220の不揮発分65%のトルエン溶液)に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス6及び接着フィルム6を作製した。
<比較例3>
実施例1において、ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199の不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)69.2部を活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−9416L−70BK」、活性基当量約330の不揮発分70%のトルエン溶液)64.3部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス7及び接着フィルム7を作製した。
[評価方法]
上述した実施例及び比較例で得た接着フィルムを、下記の方法によって評価した。
<硬化物性評価用サンプルの作製>
実施例及び比較例で得た接着フィルムを190℃で90分間熱硬化させ、支持体のPETを剥離することによりシート状の硬化物評価用サンプルを作製した。
<誘電正接の測定>
硬化物性評価用サンプルから、幅2mm、長さ80mmの試験片を切り取った。切り出した試験片について、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製の測定装置「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。
なお、0.0035以下である場合を「優」と評価し、0.0037以下である場合を「良」と評価し、0.0037超である場合を「不良」と評価した。
<ガラス転移温度の測定>
硬化物性評価用サンプルを、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、ガラス転移温度(Tg;℃)を算出した。
なお、138℃超である場合を「良」と評価し、138℃以下である場合を「不良」と評価した。
<密着性の測定>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC−III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック社製メックエッチボンド「CZ−8101」に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、防錆処理(CL8300)を施した。この銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
(2)銅箔のラミネートと絶縁層形成
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。ラミネート処理された接着フィルムから支持体であるPETフィルムを剥離した。その樹脂組成物層上に、「3EC−III」のCZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、ラミネートした。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
(3)銅箔引き剥がし強さ(密着性)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機、「AC−50C−SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定し、「密着性」とした。
なお、0.3kgf/cm超である場合を「良」と評価し、0.3kgf/cm以下である場合を「不良」と評価した。
<結果>
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
YX4000HK:ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」)
828US:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828US」)
PC1300−02:ビニル基を有する活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」)
HPC−8000:活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」)
EXB−8000L:活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−8000L−65TM」)
EXB−9416:活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−9416L−70BK」)
OPE−2St 1200:ビニル基を有する樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」)
A−DOG:ジオキサンアクリルモノマー(新中村化学工業社製「A−DOG」)
H−100:インデンクマロン樹脂(日塗化学製「H−100」)
SOC2:球状シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」)
パークミル D:ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミル D」)
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
なお、表中、配合量は固形分換算値である。
[検討]
活性エステル系硬化剤を用いた比較例1〜3は、ガラス転移温度、及び密着性に劣る。特に、比較例3で用いたナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤では、誘電正接も僅かに劣るものであった。
これに対して、(B)成分を用いた実施例1〜4は、誘電正接の値を低く維持したまましたまま、ガラス転移温度を高くし、且つ、良好な密着性を示した。よって、これら実施例1〜4、比較例1〜3の結果から、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせることによって、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、導電層との密着性の良好な絶縁層を得ることができる樹脂組成物を実現できることが確認された。