JP2021011510A - シリコーンゲル組成物、その硬化物、電子部品封止剤、電子部品、および半導体チップの保護方法 - Google Patents

シリコーンゲル組成物、その硬化物、電子部品封止剤、電子部品、および半導体チップの保護方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 保存安定性、高温下での耐熱性および透明性に優れ、特に部材の一方向のみが高温に曝される条件で長期間使用した場合でも低弾性率、低応力および高透明性を維持することができ、且つクラック・剥離等が生じにくいシリコーンゲル硬化物を与えるシリコーンゲル組成物を提供する。【解決手段】 (A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐状オルガノポリシロキサン、(B−1)分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有し、かつ、T単位またはQ単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(B−2)1分子中に2個のケイ素結合水素原子を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金系付加反応触媒、および(D)セリウム塩の反応生成物を含有してなるシリコーンゲル組成物およびその使用。【選択図】 なし

Description

本発明は、硬化して透明性、耐熱性、特に高温下における部材内部の温度差が生じても耐クラック性に優れたシリコーンゲル硬化物を与える、シリコーンゲル組成物に関する。また、本発明は、当該シリコーンゲル組成物を含む電子部品封止剤および前記シリコーンゲル硬化物を備えた電子部品に関するものである。
シリコーンゲル組成物は、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、および白金系触媒を含有し、前記ケイ素原子に結合した水素原子のアルケニル基への付加反応により低架橋密度でゲル状の硬化物を与える付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である(例えば、特許文献1〜3)。このシリコーンゲル組成物を加熱することにより硬化したシリコーンゲル硬化物は、耐熱性、耐候性、耐油性、耐寒性、および電気絶縁性等に優れ、低弾性率且つ低応力であることにより、車載電子部品および民生用電子部品等の電子部品の保護に用いられている。シリコーンゲル硬化物の特徴である低弾性率且つ低応力であることは他のエラストマー製品には見られない。また、近年では、車載電子部品や民生用電子部品の高信頼性化などの要求から、封止に用いられるシリコーンゲル硬化物からなるシリコーンゲル材料に対する耐熱性の要求が高まってきている。
近年では、パワーデバイスと呼ばれる電子部品用途の普及に伴い、これらの電子部品、特にシリコンチップの動作温度が従来の150℃程度から175℃程度まで上昇し、且つ、SiC半導体の普及により、動作温度は200℃以上が求められることが多くなっている。このため、種々の耐熱性添加剤を加えることにより、当該シリコーンゲルの耐熱性を向上させる方法が提案されている(例えば特許文献3〜5)。これらのシリコーンゲル組成物を用いてなるシリコーンゲル硬化物は200℃を超える温度に長時間晒されてもその低弾性率を保有できるだけの耐熱性を示すものである。
しかしながら、パワーデバイスに使用されるパワー半導体モジュールはその駆動中に発熱するが、その熱源はモジュールの底面であり、デバイスの形状または構造によっては保護に必要なシリコーンゲル硬化物のうち、モジュール底面付近のみが高熱に曝され、同一部材内で多大な温度差が生じる場合がある。このような部材内の温度差に起因する温度勾配は、シリコーンゲル硬化物内部の膨張率の差として内部応力を発生させ、特に時間経過/サーマルサイクルとともに、シリコーンゲル硬化物にクラック(亀裂やひび割れ)が生じ、その保護機能が劣化するという問題があった。特許文献3等に記載のシリコーンゲル組成物は、200℃を超える高温下でも弾性特性に優れたシリコーンゲル硬化物を与えるものであるが、部材内の温度差に起因するクラックの発生防止という技術的課題に対し、未だ改善の余地を残している。
特開昭48−17847号公報 特開昭56−143241号公報 国際公開パンフレットWO2015/034029号 国際公開パンフレットWO2015/111409号 特開2018−53015号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、保存安定性に優れるとともに、高温下での耐熱性および透明性に優れ、高温での長期使用によっても低弾性率、低応力および高透明性を維持することができ、200℃以上の熱源をシリコーンゲル硬化物の底面のみに設置する場合に代表されるように、長時間に亘って部材内部での大きな温度差が生じる場合であっても、そのクラック耐性に優れ、ゲルの劣化を生じにくいシリコーンゲル硬化物を与えるシリコーンゲル組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該シリコーンゲル組成物からなる電子部品封止剤および、当該シリコーンゲル組成物を硬化して得られるシリコーンゲル硬化物を備えた電子部品を提供することを目的とする。
本件発明者は、鋭意検討した結果、上記課題の解決には分子内に一定量以上の分岐シロキサン単位を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤として用いることが有効であることを見出した。すなわち、本件発明者は、(A)25℃における粘度が10〜10,000mPa・sの範囲内であり、分子中に平均して少なくとも2個のアルケニル基を含有する分岐状オルガノポリシロキサン、(B−1)分岐シロキサン単位を全体の20モル%以上含入する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(B−2)分子内に2個のケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金系付加硬化触媒および(D)特定量のアルカリ金属シラノール化合物とセリウム塩の反応生成物を含有するシリコーンゲル組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。なお、上記の(B−2)成分の使用は任意であるが、好適な(B−2)成分は、分子鎖末端のみにケイ素結合水素原子を有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。また、当該シリコーンゲル組成物からなる電子部品封止剤および当該シリコーンゲル組成物を硬化させて得られるシリコーンゲル硬化物を備えた電子部品により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
具体的には、本発明のシリコーンゲル組成物は、
(A)25℃における粘度が10〜10,000mPa・sの範囲内であり、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B−1)25℃における粘度が2〜1,000mPa・sの範囲内であり、分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有し、かつ、R´SiO3/2(式中、R´は一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜0.8個となる量、
(B−2)25℃における粘度が2〜10000mPa・sの範囲内であり、1分子中に2個のケイ素結合水素原子を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りケイ素原子に結合した水素原子が0〜0.9個となる量、
(C)白金系付加反応触媒:白金系金属量が組成物全体に対して0.01〜1000ppmの範囲内となる量、および
(D)(d1)アルカリ金属シラノレートと(d2)塩化セリウムおよびセリウムのカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上のセリウム塩の反応生成物:0.2〜10.0質量部、
を含有してなり、組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当り(B−1)成分と(B−2)成分のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数が0.7〜1.2個となる量である組成物である。
より好適には、本発明のシリコーンゲル組成物は、(A)成分が以下の
(A―1)分子内に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分枝状オルガノポリシロキサン、および
(A―2)25℃における粘度が1.0〜10,000mPa・sの範囲内であり、分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
のいずれかの1種類又は混合物であり、かつ
(B−2)成分が、分子鎖両末端のみにケイ素結合水素原子を有する、25℃における粘度が2〜200mPa・sの範囲内にある直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
前記(A―1)成分の分岐状オルガノポリシロキサン分子を構成する全シロキサン単位のうち、80.0〜99.8モル%がRSiO2/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO3/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO1/2単位である(前記Rはいずれもケイ素原子に結合した一価の炭化水素基を表す)、このすべてのRのうち、0.25〜4.00モル%がケイ素原子に結合したアルケニル基であることが好ましい。
本発明のシリコーンゲル組成物は、前記(D)成分の反応生成物が、0.5〜5.0質量%の金属セリウムを含有することが好ましく、特に、前記(D)成分中の成分(d1)が、(d1−1)1種類以上の環状オルガノポリシロキサンを(d1−2)アルカリ金属水酸化物により開環反応して得られた反応生成物に、(d1−3)25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサンをさらに反応させて得たアルカリ金属シラノレート化合物であるものが好ましい。また、前記(D)成分の配合量は、組成物全体に対して、(D)成分中のセリウム金属含有量が0.005〜0.15質量%となる量であることが好ましい。
本発明のシリコーンゲル組成物は、電子部品封止剤、特に、パワーデバイス用の透明封止剤として好適に用いられる。
本発明のシリコーンゲル硬化物は、実質的に透明であり、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値が10〜150の範囲内である。
本発明のシリコーンゲル硬化物を備えた電子部品、特に、前記シリコーンゲル硬化物を備えたパワーデバイスを与えることができる。同様に、前記シリコーンゲル硬化物を備えた一般照明器具、光学部材または光電子部材を与えることができる。
本発明のシリコーンゲル組成物およびこの硬化物を用いることで、特に耐熱性と耐寒性が要求され、過酷な環境下で使用される半導体チップを保護する方法を提供することができる。なお、当該半導体チップには、LED等の発光半導体素子が含まれる。
本発明の組成物は、シリコーンゲル組成物の保存安定性に優れ、硬化後は、200度を超える高温下での耐熱性および透明性に優れ、高温での長期使用によっても低弾性率、低応力および高透明性を維持することができ、かつ、200℃以上の熱源をシリコーンゲル硬化物の底面のみに設置する場合に代表されるように、長時間に亘って部材内部での大きな温度差が生じる場合であっても、クラックが発生し難いシリコーンゲル硬化物を与えることができる。さらに、本発明により、当該シリコーンゲル組成物からなる電子部品封止剤および前記シリコーンゲル硬化物を備えた電子部品を提供することができる。
本発明のシリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物は、ICやハイブリッドIC等の電子部品の保護用途に用いた場合、SiC半導体で求められるような200℃以上の高温下でも透明性を維持するとともに、耐熱性および耐寒性に優れるので、長期耐久性の向上が期待できるだけでなく、熱源の配置等により、シリコーンゲル硬化物内部での大きな温度差が生じる使用条件でもクラック等の問題を生じ難く、経時劣化を起こし難いことから、高信頼性且つ高耐久性の電子部品を提供できる。
本発明のシリコーンゲル組成物およびこの硬化物を用いることで、熱源の配置や部材内部の温度勾配を含めた回路設計上の自由度が高く、特に耐熱性と耐寒性が要求され、過酷な環境下で使用される半導体チップを保護する方法を提供することができる。上記保護方法用により得られた半導体チップは、宇宙空間、高緯度地域、および極限環境下等で使用した場合であっても、従来のシリコーンゲルによる保護方法に比して、高信頼性且つ高耐久性の電子部品として機能する。
以下、各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において、粘度は、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて、25℃において測定した値である。
[シリコーンゲル組成物]
(A)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(A)成分のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)の一つであり、10〜10,000mPa・sの範囲内の粘度を有し、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有することを特徴とする。より具体的には、(A)成分は以下の(A−1)成分および(A−2)成分のいずれか1種類またはこれらの混合物であり、さらに、任意で(A−3)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂を含んでもよい。特に、シリコーンゲル硬化物の耐寒性および機械的強度を両立させる見地から、(A−1)成分および(A−2)成分の混合物を用いることが特に好ましい。これらの(A)成分を、後述する(B−1)成分を含む架橋剤を用いて架橋することで、部材内の大きな温度差に起因するクラックがほとんど生じないシリコーンゲル硬化物を形成することができる。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサン
(A−1)成分である分岐状オルガノポリシロキサンは、シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)の一つであり、10〜10,000mPa・sの範囲内の粘度を有し、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、且つ好適には、一定量のRSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基)単位により分岐した構造を有することを特徴とする。
当該成分の使用により、本発明のシリコーンゲル組成物は、上記の耐クラック性に加えて、特に、−40℃を下回る低温下においても耐寒性に優れるシリコーンゲル硬化物を与えることができる。また、(D)成分と共に用いることで、200℃を超える高温下での耐熱性および透明性に優れ、高温での長期使用によっても低弾性率、低応力および高透明性を維持することができるシリコーンゲル硬化物を与えることができる。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、以下の平均構造式(1)で表すことができる:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2 (1)
式1中、Rは、一価の炭化水素基を表し、
l、mは、nはそれぞれ1以上の数であり、好ましくはl+m+n+pは200以下である。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、本発明のシリコーン硬化物に良好な耐寒性を付与するために、特定量の分岐構造を有することが好ましい。具体的には、(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンの分子を構成する全シロキサン単位のうち、80.0〜99.8モル%がRSiO2/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO3/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO1/2単位であることが好ましい。すなわち、式1中のm:n:lの比が、80.0〜99.8:0.1〜10.0:0.1〜10.0であることが好ましい。m:n:lは、より好ましくは、80.0〜98.9:1.0〜10.0:0.1〜10.0であり、さらに好ましくは80.0〜96.9:3.0〜10.0:0.1〜10.0である。(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンが、こうした分岐構造を有することにより、特に低温下において耐寒性に優れるシリコーンゲル硬化物を得ることができる。なお、(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンの全シロキサン単位のRSiO2/2単位と、RSiO3/2単位と、RSiO1/2単位のモル比は、核磁気共鳴(NMR)によって測定して求めた値である。
(A−1)分岐状オルガポリノシロキサンにおける、主鎖または分岐鎖の側鎖または末端基である、ポリシロキサン構造単位中のケイ素原子に結合した一価の炭化水素基(すなわち、上述したRである)としては、脂肪族不飽和結合を含まない非置換若しくは置換の一価の炭化水素基、または一価のアルケニル基を挙げることができる。このケイ素原子に結合した一価の炭化水素基Rが、脂肪族不飽和結合を含まない非置換または置換の一価の炭化水素基である場合、その炭素原子数は、通常1〜10、好ましくは1〜6である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;または、これらの基の水素原子の一部または全部を、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子で置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」ともいう)を有する。こうしたアルケニル基は、炭素原子数が通常2〜6、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3のアルケニル基である。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンの上記平均構造単位中のケイ素原子に結合した全ての一価の炭化水素基Rのうち、0.10〜4.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることが好ましく、0.25〜4.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることがより好ましく、0.50〜2.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることがさらに好ましい。(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンがこうした量のケイ素原子結合アルケニル基を含むことにより、JIS K 2220で規定される1/4ちょう度の直読値が10〜150の範囲内である柔軟性をもったシリコーンゲル硬化物を得ることができる。なお、(A−1)分岐状オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の量は、フーリエ変換型近赤外分光分析装置を用いて定量した値である。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、25℃で10〜10,000mPa・sの範囲内の粘度を有する。好ましくは、(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンの粘度は、25℃で10〜5,000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは、10〜1,000mPa・sの範囲内である。こうした粘度を有する(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、組成物の取扱作業性および流動性、並びに得られる硬化物の強度が良好なものになる。
(A−1)分岐状オルガノポリシロキサンは、公知の方法により、所望の粘度および設計構造で合成可能である。例えば、特開昭61−16295号公報の実施例等の記載に準じて、RSiO3/2、RSiO2/2、及びRSiO1/2の各シロキサン単位を有する加水分解物と、ViRSiOSiRVi及び環状ポリシロキサン(RSiO)(各式中、Rはアルキル基等の一価の炭化水素基であり、Viはビニル基等のアルケニル基である)をカリウムシラノレート存在下、加熱し平衡重合することによって調製できる。
(A−2)直鎖状オルガノポリシロキサン
(A−2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)の一つであり、10〜10,000mPa・sの範囲内の粘度を有し、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。
(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサンは、以下の平均構造式(2)で表すことができる:
(RSiO1/2(RSiO2/2 (2)
式2中、Rは、上述した(A)成分の一般式(1)における一価の炭化水素基と同じ基を表し、
pおよびqは、それぞれ1以上の整数を表し、好ましくはp+qは500以下である。
(A−2)直鎖状オルガノポリシロキサンを構成する全シロキサン単位のうち、90.0〜99.9モル%がRSiO2/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO1/2単位であることが好ましい。すなわち、q:pの比が、90.0〜99.9:0.1〜10.0であることが好ましい。q:pは、より好ましくは、95.0〜99.5:0.5〜5.0であり、さらに好ましくは97.0〜99.0:1.0〜3.0である。(A2)直鎖状オルガノポリシロキサンが、こうした構造を有することにより、JIS K 2220で規定される1/4ちょう度の直読値が10〜150の範囲内である柔軟性をもったシリコーンゲル硬化物が得られる。なお、(A2)直鎖状オルガノポリシロキサンの全シロキサン単位のRSiO2/2単位とRSiO1/2単位のモル比は、核磁気共鳴(NMR)によって測定して求めた値である。
上記平均構造式(2)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキ共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
上記例示された直鎖状オルガノポリシロキサンのうち、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、などのいわゆるジメチルポリシロキサンは上述の(A−1)成分の様にシリコーンゲル組成物に耐寒性を付与することはできないが、機械的強度を改善する効果がある。このため、(A)成分としてジメチルポリシロキサンを単独で用いても良いが、(A−1)成分や後述のフェニル基含有ポリシロキサンと併用することで耐寒性と機械的強度の両立が可能となる。
一方で、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、などのいわゆるフェニル基含有オルガノポリシロキサンは、好適には、以下に述べる範囲にフェニル基の含有量を制御することで、必要に応じて、上述の(A−1)成分を用いなくとも、シリコーンゲル組成物に耐寒性を付与することができる、(A)成分としてフェニル基含有のオルガノポリシロキサンのみを用いる組成も設計可能である。
(A)成分の一部または全部として、フェニル基含有のオルガノポリシロキサンを用いる場合、フェニル基の含有量はケイ素原子に結合した官能基全体に対して1〜10モル%の範囲であることであることが好ましく、さらに好ましくは3〜7モル%の範囲である。一方、フェニル基の含有量が前記上限を超えると、硬化物中のフェニル基に由来してシリコーンゲルの硬度が上昇し、ゲルとしての柔軟性が損なわれる場合がありその配合量によっては、応力緩和特性に必要な低硬度を有するシリコーンゲルを形成するのが困難になる場合がある。また、フェニル基の含有量が前記下限未満では、ジメチルポリシロキサン骨格を有するシリコーンゲルに、十分な耐寒性を付与できなくなる場合がある。
なお、前述の(A−1)成分と同様に、フェニル基含有のオルガノポリシロキサンを主剤として、上述のジメチルポリシロキサンを添加することにより、本発明のシリコーンゲル組成物を硬化させて得られるシリコーンゲルの機械的強度を向上させることが可能である。この場合においても、フェニル基の含有量は、前記の範囲内にあることが好ましい。特に、フェニル基の含有量が上記上限を超えると、併用するジメチルポリシロキサンと相互溶解し難くなり、組成物全体の均一性が損なわれる場合がある。
(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサンは、構造単位中のケイ素原子に結合した全ての一価の炭化水素基Rのうち、0.25〜4.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることが好ましく、0.50〜3.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることがより好ましく、1.00%〜2.00モル%がケイ素原子結合アルケニル基であることがさらに好ましい。(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサンがこうした量のケイ素原子結合アルケニル基を含むことにより、JIS K 2220で規定される1/4ちょう度の直読値が10〜150の範囲内である柔軟性をもったシリコーンゲル硬化物が得られる。なお、(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の量は、フーリエ変換型近赤外分光分析装置を用いて定量した値である。
(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が1.0〜10,000mPa・sの範囲内であり、好ましくは1.0〜1000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは5.0〜500mPa・sの範囲内である。こうした粘度を有する(A―2)直鎖状オルガノポリシロキサンは、組成物に良好な取扱作業性および流動性を付与でき、また、得られる硬化物に良好な強度を付与できる。
(A−1)成分と(A―2)成分の量的関係としては、前述の通り、それぞれ単独で用いても、併用しても良いが、得られるシリコーンゲルの耐寒性と機械的強度を両立できる観点から(A−1)成分またはフェニル基含有の(A−2)成分を100質量部に対してジメチルポリシロキサン系の(A−2)成分を2〜150質量部、より好ましくは2〜100質量部である。この量的範囲の割合とすることで、得られるシリコーンゲルの耐寒性を改善しつつ、得られるシリコーンゲル硬化物の物理的特性を改善できるとともに、組成物の安定性および取り扱い性をさらに改善でき、また、コスト的にも有利である。
(A−3)オルガノポシロキサン樹脂
(A−3)成分は、分子内に平均して少なくとも2個のアルケニル基を含み、RSiO3/2(式中、Rは一価有機基)で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれるシロキサン単位を、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂である。
(A−3)成分中のアルケニル基は、ヒドロシリル化反応性を有するため、シリコーンゲルを形成する架橋反応に取り込まれ、得られるゲルの機械的強度を向上される効果が期待できる。このようなアルケニル基は、前記同様の基であり、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
(A−3)成分中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。組成物に含まれる他の成分との相互溶解性の観点から、アルキル基、特にメチル基であることが好ましい。
(A−3)成分の添加量は任意であるが、組成物全体に対して、0.0〜10.0質量%となる範囲で添加することができ、好ましくは0.1〜7.5質量%、特に好ましくは0.1〜5.0質量%添加される。上記の(A−1)成分、(A−2)成分に加えて、(A−3)成分の量をこの範囲内にすることにより、得られるシリコーンゲルの機械的強度を改善することが可能である。(A−3)成分の添加量が0.10質量%未満の場合、機械的強度を向上させる効果が得られず、逆に10.0質量%を超えた場合、シリコーンゲル硬化物が硬くなりすぎるばかりか、得られる組成物の25℃での粘度が高くなりすぎる場合があるので、実用上、好ましくない。
(B−1)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B−1)成分の分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、本発明の特徴的な成分の一つであり、上記(A)成分と反応し、本組成物の架橋剤として作用することにより、得られるシリコーンゲル硬化物の耐クラック性(特に部材内部における温度差に起因する内部応力に基づく亀裂・破損等)を効果的に抑制する成分である。こうした分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、2〜1000mPa・sの範囲内の粘度を有し、分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ、R´SiO3/2またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する。
(B−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも3個以上有する。この様な分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)は、好ましくは3〜500個、より好ましくは4〜200個、更に好ましくは5〜100個、特に好ましくは10〜80個である。なお(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の量は、赤外分光装置によって測定することができる。
(B−1)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子中にR´SiO3/2またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する必要があり、これらの分岐単位量が前記下限未満では、十分な耐クラック性が実現できない場合がある。
好適には、(B−1)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均単位式:
(R´SiO1/2(R´SiO2/2(R´SiO3/2(SiO4/2(R´´O1/2
で表される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
式中、各
は同じか又は異なる、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1〜10の一価炭化水素基もしくは水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも3個のR´は水素原子である。水素原子以外のR´である一価炭化水素基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。工業的見地からは、メチル基またはフェニル基が好ましい。
一方、R´´は水素原子又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、水素原子、メチル基またはエチル基であり、OR´´として、水酸基、メトキシ基またはエトキシ基を形成する。
式中、q、r、s、t及びuは、以下を満たす数である:0.1≦q≦0.80、0≦r≦0.5、0≦s≦0.8、0≦t≦0.6、0≦u≦0.05、但し、s+t≧0.2、かつl+m+n+p=1。ここで、本組成物を成形工程で使用する場合、(d2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は具体的には、MMT樹脂、MMTT樹脂、MMTQ樹脂、MMQ樹脂、MMTTQ、MQ樹脂が好ましい。
特に好適には、(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、
(H(CHSiO1/2l1(SiO4/2p1
で表される、MQ樹脂である。ここで、l1+p1=1であり、0.1≦l1≦0.80かつ、0.20≦p1≦0.90であることが好ましい。
(B−1)成分の分岐状オルガノポリシロキサンの含有量は、(A)成分のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜0.8個となる量が好ましく、0.2〜0.75個となる量がより好ましい。(B−1)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンのシリコーンゲル組成物中における含有量をこの範囲内にすることにより、シリコーンゲル内の温度勾配により発生する内部応力に対するクラック耐性を改善することができる。(B−1)成分からのケイ素原子結合水素原子が、(A)成分のアルケニル基1個に対して前記下限より少なくなると、十分な耐クラック性が得られない。また、前記上限より多い場合は、得られるシリコーンゲルの架橋密度が高くなりすぎて耐クラック性が低下する。
(B−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度が2.0〜1,000mPa・sの範囲内であり、好ましくは、2.0〜500mPa・sの範囲内であり、より好ましくは2.0〜150mPa・sの範囲内である。こうした粘度を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、組成物の取扱作業性および流動性、並びに得られる硬化物の強度が良好なものになる。
(B−2)鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B−2)成分の鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、前述の(B−1)成分とともに上記(A)成分と反応し、本組成物の架橋剤として作用するものである。こうした鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、2〜1000mPa・sの範囲内の粘度を有し、2個のケイ素原子に結合した水素原子を有する。
(B−2)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、鎖状、好適には直鎖状の構造を有し、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個含有する。SiH基の位置は鎖の両末端であることが好ましい。
この様な(B−2)鎖状オルガノポリシロキサンは、好適には、以下の平均構造式4で表すことができる:
(HRSiO1/2(RSiO2/2 (式4)
式4中、Rは、上述した(B−1)成分における脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1〜10の一価炭化水素基と同様の基を表し、工業的見地からは、メチル基またはフェニル基が好ましい。また式中、vは1以上の数であり、好ましくは2+vは500以下である。
(B−2)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度が2.0〜1,000mPa・sの範囲内であり、好ましくは、2.0〜500mPa・sの範囲内であり、より好ましくは2.0〜150mPa・sの範囲内である。こうした粘度を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、組成物の取扱作業性および流動性、並びに得られる硬化物の強度が良好なものになる。
こうした(B−2)鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば
(H(Me)SiO1/2)(MeSiO2/2v1(SiO1/2(Me)H)
で表される分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンが例示される。ここで、v1は、25℃における粘度が2.0〜500mPa・sの範囲内、より好適には、2.0〜150mPa・sの範囲内となる数であり、Meはメチル基である。
その他の(B−2)成分として、以下の鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、v2は1〜100の整数であり、v3は1〜50の整数である。
HMeSiO(PhSiO)v2SiMe
HMePhSiO(PhSiO)v2SiMePhH
HMePhSiO(PhSiO)v2(MePhSiO) v3SiMePhH
HMePhSiO(PhSiO)v2(MeSiO) v3SiMePhH
(B−2)鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンのシリコーンゲル組成物中における含有量は、(A)成分のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が0〜0.9個となる量が好ましく、0.1〜0.9個となる量がより好ましい。
(B−2)成分の使用は任意であるが、主に組成物中の(A)成分のアルケニル基1個に対してのケイ素原子に結合した水素原子が1.0個に近づけるために使用される。前述の通り、(B−1)成分単体で組成物中のアルケニル基とSiH基の比率を1.0:1.0に近づけると架橋密度が高くなりすぎて耐クラック性が低下する傾向にあるため、(B−2)
成分を併用して、シリコーンゲル組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りの、ケイ素原子に結合した水素原子の合計個数が0.7〜1.2個中における含有量に調整することにより、耐熱性及び物理的特性に優れるシリコーンゲル硬化物が得られる。(B−2)成分に由来するケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中のアルケニル基1.0個に対して前記上限より多い場合は、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。また、(B−2)成分を使用しない場合、および前記の使用量の上限を超えると、得られるシリコーンゲル硬化物の硬化性または物理的特性が著しく悪化する場合があり好ましくない。
本発明にかかるシリコーンゲル組成物を硬化させてなるシリコーンゲル硬化物の耐熱・耐寒性および耐クラック性を含む物理的性質の見地から、本組成物全体に含まれるアルケニル基1.0個に対して、(B−1)成分と(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数は0.7〜1.2個の範囲であり、好ましくは0.8〜1.0個となる範囲である。
(C)白金系付加反応触媒
本発明の(C)成分は、前記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(B−1)成分および(B−2)成分中のケイ素原子結合水素原子との付加反応(すなわち、ヒドロシリル化反応のことである)を促進させるための触媒として使用されるものである。こうした(C)成分は白金系(白金または白金を含む化合物)化合物として公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビス(アセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)等の白金−カルボニル錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の白金−アルケニルシロキサン錯体、および塩化白金酸とアセチレンアルコール類との錯体等が挙げられるが、ヒドロシリル化反応の促進効果が高いことから、白金−アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。これらのヒドロシリル化反応用触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
白金−アルケニルシロキサン錯体に用いられるアルケニルシロキサンは、特に限定されないが、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー、およびこれらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー等が挙げられる。特に、生成する白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
また、白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体を、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンオリゴマーやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましく、特にアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましい。
取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、(C)成分である白金系付加反応触媒は、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂中に分散あるいはカプセル化した触媒である、白金含有ヒドロシリル化反応触媒を含む熱可塑性樹脂微粒子であってもよい。また、(C)成分である白金系付加反応触媒の一部または全部は、高エネルギー線の照射がないと活性を示さないが、高エネルギー線の照射により組成物中で活性を示すヒドロシリル化反応用触媒であってよく、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)等に代表される高エネルギー線活性化触媒又は光活性化触媒であってもよい。
(C)成分の配合量は有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、通常、組成物全体の質量に対して、白金系金属量が、通常0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜300ppmの範囲内である。この配合量が前記した範囲の上限を超えても硬化速度の点で優位性がなく、白金の価格(コスト)の点から経済的に不利である。
(D)(d1)アルカリ金属シラノレートと(d2)塩化セリウムまたはセリウムのカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上のセリウム塩の反応生成物
(D)成分は、本組成物の耐熱性を向上させるために用いられる。こうした(D)成分の反応生成物は、0.5〜5.0質量%のセリウム(金属)を含有することが特に好ましい。また、(d1)アルカリ金属シラノレートは、(d1−1)1種類以上の環状オルガノポリシロキサンを(d1−2)アルカリ金属水酸化物により開環反応して得られた反応生成物に、(d1−3)25℃における粘度が10〜10000mPa・sの範囲内であるオルガノポリシロキサンをさらに反応させて得られるアルカリ金属シラノレート化合物であることが好ましい。
(d1−1)成分の環状オルガノポリシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば以下の一般式(3)を有する環状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 2021011510
(3)
式3中、Rは、上述した(A)成分の一般式(1)における一価炭化水素基と同じ基を表し、
sおよびtは、それぞれ0〜8の整数であり、但し、3≦m+n≦8である。
(d1-1)環状オルガノポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1−ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1、1−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(p−ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−アクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(ラウロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。また、これらの各種オルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
(d1−2)成分のアルカリ金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等を挙げることができる。こうした(d1−2)成分の量は、特に限定されないが、一般的に(d1−1)成分100質量部に対して、0.1質量部〜10.0質量部である。
(d1−3)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sの範囲内である従来公知のオルガノポリシロキサンであればよく、これは実質的にジオルガノポリシロキサン単位の繰り返し(直鎖状構造)を主体とし、常温で液体を保つ直鎖状または分岐状のものである。このケイ素原子に結合した有機基(即ち、非置換又は置換の一価炭化水素基)は、(A)成分の一般式(1)におけるRとして例示したものと同じものとすることができ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;シロクヘキシル基などのシクロアルキル基;あるいはこれらの炭素原子に結合した水素原子の1部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、フロロプロピル基、シアノメチル基などから選択される。このオルガノポリシロキサンとしては、その分子鎖末端がトリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基等のアルケニルジアルキルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基等のジアルケニルアルキルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリアルケニルシロキシ基などのトリオルガノシロキシ基や、水酸基、アルコキシ基などで封鎖されたものが挙げられる。
(d1−3)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃における粘度が10〜10,000mPa・sの範囲内であり、好ましくは50〜1,000mPa・sの範囲内である。(d1−3)成分の粘度が10mPa・s以下の場合、高温でのシロキサン蒸発量が多くなりやすく、質量変化が大きくなるという問題がある。こうした(d1−3)成分の量は、特に限定されないが、一般的に(d1−1)成分100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部である。
(d2)成分のセリウム塩は、塩化セリウム又はセリウムのカルボン酸塩であり、セリウムのカルボン酸塩は一般式:(RCOO)で示される。ここで、Rは同種または異種の一価炭化水素基、Mはセリウム又はセリウムを主成分とする希土類元素混合物であり、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などのセリウム塩が例示される。なお、このセリウムのカルボン酸塩はその取り扱いの容易さの面から、有機溶剤溶液として使用されるのがよく、この有機溶剤としては、スタンダードソルベント、ミネラルスピリット、リグロイン、石油エーテルなどの石油系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が例示される。
(d2)成分のセリウム塩の量は、特に限定されないが、上記(d1)成分の全量100質量部に対して、セリウムの量が0.05〜5質量部となる量が好ましく、0.1〜3質量部となる量がより好ましい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.20質量部〜10.0質量部添加され、好ましくは0.2〜5.0質量部添加され、特に好ましくは、0.20〜0.5質量部、より具体的には、0.2質量部、0.3質量部、0.4質量部程度の少量で添加される。さらに、(D)成分の添加量は、組成物全体に対して、(D)成分中のセリウム金属含有量が0.005〜0.15質量%となる量が好ましく、0.01〜0.1重量%となる量がより好ましい。(D)成分の量をこの範囲内にすることにより、得られるシリコーンゲル組成物の耐熱性の面で有利である。(D)成分の添加量が0.20質量部未満の場合、高温での耐熱性向上の効果が見られず、逆に15質量部を超えた場合、シリコーンゲル硬化物の透明性が低下するほか、シリコーンゲル組成物のコスト増となり経済的に不利である。
(D)成分は、(d1)及び(d2)成分を混合後、150℃以上の温度で熱処理することによって得ることができる。その熱処理における加熱温度は、150〜310℃で熱処理するのが好ましく、200〜305℃で熱処理するのがより好ましく、250〜300℃で熱処理するのがさらに好ましい。加熱温度が150℃未満の場合、均一な組成を得ることが難しく、310℃を超えると、例えば(d1−3)成分の熱分解速度が大きくなるという問題がある。
(その他の任意成分)
本発明の組成物には、上記(A)〜(D)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、接着付与剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
接着付与剤は、シリコーンゲルの基材等への接着性を向上させる成分であり、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のシランカップリング剤;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物;特開2002−322364号公報に開示された一般式(RO)nSiR 4−nで示されるシランおよびその部分加水分解縮合物から選ばれる有機ケイ素化合物(ここでR1はアルキル又はアルコキシアルキル基を表し、Rは非置換の又は置換された1価の炭化水素基を表し、nは3又は4である。Rで示されるアルキル基は同種及び異種のどちらでも良く、好ましくは炭素原子数1〜4であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。また、Rで表されるアルコキシアルキル基としては例えばメトキシエチルが挙げられる。Rで表される1価の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基またはフェニル基であり、最も好ましくはメチル基である)を含有してもよい。これらの接着付与剤は、本発明に係る接着付与剤を含むシリコーンゲル硬化物が、本願実施例の項に記載の方法により評価した場合、実質的に透明であり、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値が200以下の範囲となるシリコーンゲル組成物を与える範囲で、任意に使用することができる。特に、接着付与剤は、その種類および量が、シリコーンゲル硬化物の透明性を低下させたり、硬化阻害を発生させたりすることがない接着付与剤または量的範囲を選択して使用することが好適であり、前記のチタン化合物、一般式(RO)SiR 4−nで示されるシランおよびその部分加水分解縮合物またはこれらの組み合わせを使用することが最も好適である。ここで、上述の接着付与剤の含有量は限定されないが、好ましくは、組成物全体に対して0.001〜5.0質量%の範囲内である。
反応抑制剤は、シリコーンゲル組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、エチニルシクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、シリコーンゲル組成物全体の0.001〜5質量%である。特に、シリコーンゲル組成物の取扱作業性を向上させる目的では、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のシクロアルケニルシロキサン;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物等が特に制限なく使用することができる。
無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、シリコーンゲル組成物に低粘度、且つ透明性を要求される場合は、無機質充填剤を配合しないのが好ましいが、配合しても組成物の20質量%以下、特に10質量%以下の量であるのが好ましい。
[シリコーンゲル組成物の調製]
本発明のシリコーンゲル組成物は、上記(A)〜(D)成分(任意成分が配合される場合には、任意成分も含む)を常法に準じて混合することにより調製することができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パートまたはそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部並びに(C)および(D)成分からなるパートと、(A)成分の残部および(B)成分からなるパートとに分割して、それぞれ混合した後、これら2つのパートを混合して調製することもできる。特に、いずれかのパートに、任意成分として前記の反応抑制剤を含むことが好ましい。
シリコーン組成物の各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機質充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
こうして得られるシリコーンゲル組成物は、保存安定性に優れるとともに、電子部品用の封止剤として好適に用いることができる。特に、このシリコーンゲル組成物を半導体チップの封止剤として用いることにより、優れた耐熱性が要求される過酷な環境下でも、熱源や局所的な加熱に対するクラックの問題を生じることなく、半導体チップを効果的に保護することができる。
[シリコーンゲル組成物の硬化]
シリコーンゲル硬化物は、シリコーンゲルのことであり、本発明のシリコーンゲル組成物を、常温もしくは用途に応じた温度条件下で硬化させることにより調製することができる。このシリコーン組成物の硬化のための温度条件は、特に限定されないが、通常60℃〜150℃の範囲内である。
[シリコーンゲル硬化物]
シリコーンゲル硬化物は、200度を超える高温下での耐熱性および透明性に優れ、高温での長期使用によっても低弾性率、低応力および高透明性を維持することができ、且つ高温の熱源をシリコーンゲル硬化物の一面(例えば、底面)のみに設置する場合に代表されるように、シリコーンゲル硬化物の一方向のみが高温にさらされた状態で長時間放置しても、部材内部の温度差及び内部応力に起因してシリコーンゲル硬化物にクラックなどの欠陥が生じにくい特性を有する。さらに、半導体チップ、SiC半導体チップ、IC、ハイブリッドIC、パワーデバイス等の電子部品の保護用途に用いた場合、高温下でも透明性を維持し、耐熱性に優れるので長期耐久性の向上が期待されるだけでなく、低温下でも劣化しにくいので、温度差の激しい過酷な使用条件下であっても高信頼性且つ高耐久性の電子部品を提供できる利点がある。特に、シリコーンゲル硬化物を封止剤等として備える電子部品は、温度差の激しい過酷な使用条件下であっても高信頼性且つ高耐久性を有する。なお、前記の半導体チップには、LED等の発光半導体素子が含まれる。
(1/4ちょう度)
シリコーンゲル硬化物は、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値(読み取りの単位は1/10mm)が10〜150の範囲を満たすことが好ましく、20〜120の範囲を満たすことがより好ましく、30〜100の範囲を満たすことがさらに好ましい。こうした範囲のJIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値を示すシリコーンゲル硬化物は、低弾性率および低応力といったシリコーンゲル硬化物の特徴を有するものになる。この針入度が10より小さい場合には、低弾性率、低応力といったシリコーンゲル硬化物の特徴を発揮することが困難であり、150を超える場合には、シリコーンゲル硬化物としての形態を保持し難く、流動してしまう。なお、「1/4ちょう度の直読値」とは、JIS K2220の1/4ちょう度計を用いて、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度試験と同様に、試料の表面から1/4コーンを落下させ、このコーンが進入した深さを読み取った値である。
(透明性)
シリコーンゲル硬化物は、実質的に透明である。「実質的に透明」とは、例えば、アルミカップに10mm厚になるようにシリコーンゲル組成物を静かに注いで、その後加熱して厚さ10mmのシリコーンゲル硬化物を調製し、このシリコーンゲル硬化物を上面から目視して、アルミカップの底面を目視できる程度に透明であることを意味する。シリコーンゲル硬化物が、こうした透明性を有することにより、パワーデバイス等の半導体の封止剤等として有用である。
以下、本発明のシリコーンゲル組成物およびシリコーン硬化物を実施例により詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。また、実施例中の粘度は25℃における値である。
[成分Dの合成]
以下の方法で成分Dを合成した。ヘキサメチルシクロトリシロキサンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合物を水酸化カリウムにより開環反応して調製したカリウムシラノレート化合物60gに、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン120g、およびヘキサメチルホスホアミド0.5gを加えて、窒素気流下、115℃で2時間反応させてカリウムシラノレート化合物を調製した。このカリウムシラノレート化合物100gを150gのイソプロパノールに溶解し、これを撹拌させながら、無水の塩化セリウム2.5g、エタノール50g、及びメタノール50gの混合物を滴下して加えて反応させた。この反応混合物をろ過した後、ろ液を減圧下、40〜50℃に加熱してエタノール、メタノールを留去した。次に、これを再度ろ過して、淡黄色液状の反応生成物を調製した。この反応生成物中のセリウム濃度は1.4重量%であった。
[シリコーンゲル組成物およびシリコーンゲル硬化物の評価]
本発明のシリコーンゲル組成物の保存安定性、およびシリコーンゲル硬化物の透明性、1/4ちょう度、耐熱性、およびクラック耐性は次のようにして測定した。
(シリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度)
50mlのガラスビーカーにビーカーの底から3cmの高さになるまでシリコーンゲル組成物を静かに注いだ後、80℃で1時間加熱してシリコーンゲル硬化物を作製した。このシリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度をJIS K 2220に規定された方法により測定した。なお、このシリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度は、上述した通り、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値(読み取りの単位は1/10mm)である。
(シリコーンゲル硬化物の耐熱性)
上記の方法で硬化させたシリコーンゲル硬化物を、225℃のオーブン中に静置した後、1000時間後に取り出し、室温で25℃まで冷却した。その後、このシリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度をJIS K 2220に規定された方法により測定した。なお、このシリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度は、上述した通り、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値(読み取りの単位は1/10mm)である。
(シリコーンゲル硬化物のクラック耐性)
上記の方法で硬化させたシリコーンゲル硬化物を、225℃に加熱したホットプレートの上に静置した後、ビーカー越しにシリコーンゲルの外観の状態の観測を1000時間続けた。1000時間以内に目視にてクラックの発生が確認できた場合、その時間を記録した。
[実施例1〜11および比較例1〜5]
下記の成分を表1に示す組成(重量部)で均一に混合して、16種類のシリコーンゲル組成物を調製した。これらのシリコーンゲル組成物を、前記したそれぞれの評価方法に記載した方法で硬化させ、得られたシリコーンゲル硬化物の1/4ちょう度、耐熱性、およびクラック耐性を評価し、結果を以下の表1および表2にまとめた。
なお、表中のSiH(B−1)、SiH(B−2)、及びSiH/SiCH=CHはそれぞれ(A)成分中に含まれるビニル基1モルに対する(B−1)成分、(B−2)成分、及び(B−1)成分と(B−2)成分合計中のケイ素原子結合水素原子のモル数を示したものである。また、(C)成分については、組成物中の白金金属含有量を表中にppmで示した。
成分A−1:前記した方法で得られた、粘度が680mPa・sであり、(CHSiO2/2単位94.5モル%、CHSiO3/2単位2.3モル%、(CHSiO1/2単位2.3モル%および(CH)(CH=CH)SiO1/2単位0.9モル%からなる分岐状ポリオルガノシロキサン(ビニル基の含有量=0.21重量%)
成分A−2−1:粘度が2,200mPa・sであり、(式)
((CH)(CH=CH)SiO1/2((CHSiO2/2300
で表される、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.22重量%)
成分A−2−2:粘度が2,000mPa・sであり、(式)
((CH)(CH=CH)SiO1/2((CHSiO2/2250((CH)(C)SiO2/230
両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.18重量%)
成分B−1:粘度が25mPa/sである(式)
((CH)HSiO1/20.67(SiO4/20.33
で表される分岐状のポリオルガノシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.96重量%)
成分B−2:粘度が16mPa・sである直鎖状の分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.13重量%)
成分B−3:粘度が4mPa・sである直鎖状の分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.70重量%)
成分C:白金含有量が0.5重量%である、白金と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの錯体(ビニル基の含有量=2.48重量%)
成分D:前記した方法で調製したアルカリ金属シラノレートと塩化セリウムとの反応物;
成分A−3:25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeViSiO1/2)0.05(MeSiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表される分岐状ポリオルガノシロキサン(ビニル基の含有量=1.9重量%)

Figure 2021011510

Figure 2021011510

[総括]
本願実施例1〜11においては、得られるシリコーンゲルの耐熱性及び一方向から225℃で長時間加熱した場合の耐クラック性は良好であり、かつ、高温で1000時間経過した後における1/4ちょう度も大きく変化しなかった。
一方、架橋剤であるオルガノハイドロジェンシロキサンの使用量及び種類が本発明外の組成物(比較例1〜5)の実験例においては、耐熱性や耐クラック性が不十分であり、特に、一方向から225℃で長時間加熱した場合、400時間以内にクラックが発生することが確認された。
本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物は、耐熱性、透明性を有するので、各種半導体素子の封止剤、保護材料、光学素子封止剤等に好適に用いられる。特に、本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物は、SiC半導体チップに求められるような200℃以上の耐熱性に加えて一方向からのみ高温が加えられてもクラックを発生し難いので、サーマルマネジメントを含む回路設計上の自由度が高く、デバイスの下部からのみ熱が発生するパワーデバイス用の封止剤または保護材料にも好適に用いられ、こうしたパワーデバイスの耐久性および信頼性を改善することができる。こうした耐熱性および耐クラック性が求められるパワーデバイスとしては、例えば、汎用インバータ制御、サーボモータ制御、工作機械・エレベータなどのモータ制御、電気自動車、ハイブリッドカー、または鉄道の輸送機用モータ制御、太陽光・風力・燃料電池発電等の発電機用システム、宇宙空間で使用される宇宙輸送システム等が挙げられる。
さらに、本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物は、一般照明器具等に用いられる光学部材または光電子部材として有用である。本発明のシリコーンゲル硬化物を用いた光学部材または光電子部材は、特に限定されるものではないが、レンズ(LEDパッケージの外側に設けられる二次的な光学レンズ材料を含む)、発光半導体素子の封止材、ホワイトリフレクター部材、光拡散部材、波長変換部材、光導波路(waveguide)、板状、フィルム状、シート状等の導光材(light guide)等が例示される。特に、本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物は、光半導体素子の封止剤として有用であり、耐熱性、耐寒性、及び透明性という特性を活かし、信頼性および性能に優れた光半導体装置を提供できる利点がある。さらに、本発明のシリコーンゲル組成物は、当該部材の機能を確保するために、硬化前のシリコーンゲル組成物に、蛍光性充填材、光拡散性充填材、透光性充填材、着色性充填材及び補強性充填材等を添加することができる。特に、本発明のシリコーンゲル組成物を、前記のレンズ、光学素子等の封止材または波長変換部材に用いる場合には、蛍光性充填材を含むことが好ましい。これらの蛍光性充填材の種類は特に限定されず、紫外又は可視の励起光を入射すると、当該励起光の波長よりも長波長の蛍光を発する無機微粒子、ナノ結晶構造又は量子ドット等から選ばれるものが、特に制限なく利用できる。また、本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物は、これらの蛍光性充填材等のバインダーとしても用いることができ、LEDパッケージの外側にこれらの蛍光性充填材等を含む部材を設けることで、リモートホスファーのバインダーとしても用いることができる。
本発明のシリコーンゲル組成物から得られるシリコーンゲル硬化物を備えた一般照明器具または光電子部品は特にその構造等が限定されるものではなく、LED等の発光半導体素子を光源とする発光モジュールを備えた照明器具の一例として、電球型ランプ、棒状ランプ等のランプ、それらを備えた各種照明器具が例示される。本発明に係る一般照明器具または光電子部品はシリコーンゲル硬化物からなる保護材(誘電性、物理性あるいはガス/液状性のバリアとして機能する)により、光半導体素子等の光電子部品が封止された構造であってもよく、かつ好ましい。さらに、他の形態として、本発明に係る一般照明器具または光電子部品は、前記の蛍光性充填材を含むリモートホスファー材料(本発明のシリコーンゲル硬化物をリモートホスファーのバインダーとしても用いた場合を含む)、LEDパッケージの外側に設けられる二次的な光学部材(レンズ等)および/または光導波路、ホワイトリフレクター部材、前記の蛍光性充填材を含む波長変換部材、またはダイアタッチフィルムであってもよく、これらの部材を備えた一般照明器具または光電子部品であってよい。本発明に係る一般照明器具または光電子部品は、屋内における照明装置、車・自転車等の輸送機器用の照明装置、屋内外におけるディスプレイ用のバックライト、工場灯、作業灯、街路灯または景観照明灯にも用いることができる。特に、本発明に係るシリコーンゲル硬化物は、耐熱性、耐寒性、及び透明性に優れるので、多様な環境で使用される照明器や屋外ディスプレイ、自動車等の照明装置に用いた場合であっても、当該一般照明器具または光電子部品の耐久性および信頼性を改善することができる利点がある。

Claims (17)

  1. (A)25℃における粘度が10〜10,000mPa・sの範囲内であり、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B−1)25℃における粘度が2〜1,000mPa・sの範囲内であり、分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有し、かつ、R´SiO3/2(式中、R´は一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜0.8個となる量、
    (B−2)25℃における粘度が2〜1,000mPa・sの範囲内であり、1分子中に2個のケイ素結合水素原子を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りケイ素原子に結合した水素原子が0〜0.9個となる量、
    (C)白金系付加反応触媒:白金系金属量が組成物全体に対して0.01〜1000ppmの範囲内となる量、および
    (D)(d1)アルカリ金属シラノレートと(d2)塩化セリウムおよびセリウムのカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上のセリウム塩の反応生成物:0.2〜10.0質量部、
    を含有してなり、組成物全体に占めるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当り(B−1)成分と(B−2)成分のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数が0.7〜1.2個となる量であるシリコーンゲル組成物。
  2. (A)成分が以下の
    (A―1)分子内に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分枝状オルガノポリシロキサン、および
    (A―2)25℃における粘度が1.0〜10,000mPa・sの範囲内であり、分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
    のいずれかの1種類又は混合物であり、かつ
    (B−2)成分が、分子鎖両末端のみにケイ素結合水素原子を有する、25℃における粘度が2〜200mPa・sの範囲内にある直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載のシリコーンゲル組成物。
  3. 前記(A―1)成分の分岐状オルガノポリシロキサン分子を構成する全シロキサン単位のうち、80.0〜99.8モル%がRSiO2/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO3/2単位であり、0.1〜10.0モル%がRSiO1/2単位である(前記Rはいずれもケイ素原子に結合した一価の炭化水素基を表す)、請求項1又は2に記載のシリコーンゲル組成物。
  4. 前記(A―1)成分の、すべての前記ケイ素原子に結合した一価の炭化水素基のうち、0.25〜4.00モル%が、ケイ素原子に結合したアルケニル基である、請求項3に記載のシリコーンゲル組成物。
  5. 前記(D)成分が、該(D)成分中に0.5〜5.0質量%の金属セリウムを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物。
  6. 前記(d1)成分が、(d1−1)1種類以上の環状オルガノポリシロキサンを(d1−2)アルカリ金属水酸化物により開環反応して得られた反応生成物に、(d1−3)25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサンをさらに反応させて得たアルカリ金属シラノレート化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物。
  7. 前記(D)成分の配合量が、組成物全体に対して、(D)成分中のセリウム金属含有量が0.005〜0.15質量%となる量である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物を硬化させてなる、シリコーンゲル硬化物。
  9. 実質的に透明であり、JIS K2220で規定される1/4ちょう度の直読値が10〜150の範囲内である、請求項8に記載のシリコーンゲル硬化物。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物を含む、電子部品封止剤。
  11. 実質的に透明なパワーデバイス用封止剤である、請求項10に記載の電子部品封止剤。
  12. 請求項8若しくは9に記載のシリコーンゲル硬化物を備えた電子部品。
  13. パワーデバイスである、請求項12に記載の電子部品。
  14. 前記パワーデバイスが、モータ制御、輸送機用モータ制御、発電システム、または宇宙輸送システムである、請求項13に記載の電子部品。
  15. 請求項8若しくは9に記載のシリコーンゲル硬化物により光半導体素子が封止された構造を有する、光半導体装置。
  16. 請求項8若しくは9に記載のシリコーンゲル硬化物を備えた一般照明器具、光学部材または光電子部材。
  17. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーンゲル組成物または請求項8若しくは9に記載のシリコーンゲル硬化物を用いることを特徴とする、半導体チップの保護方法。
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