本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の駆動装置は、内燃機関から伝達された回転を変速する変速機と、変速機の動力が伝達されるファイナルドリブンギヤを有し、変速機の動力を左右のドライブシャフトに分配するディファレンシャル装置と、力行および回生が可能な回転電機と、回転電機の回転を減速する減速機と、を備えたハイブリッド車両の駆動装置であって、変速機は、内燃機関から回転が伝達される入力軸と、入力軸から変速ギヤ対を介して伝達された回転をファイナルドリブンギヤに伝達するカウンタ軸と、を有し、減速機は、回転電機に連結されたモータ入力軸と、モータ入力軸とファイナルドリブンギヤとの間で動力伝達を行うモータカウンタ軸と、を有し、モータ入力軸は、カウンタ軸に切替機構を介して動力伝達可能に設けられた変速ギヤに噛み合う第1のモータ出力ギヤと、モータカウンタ軸との間で動力伝達を行う第2のモータ出力ギヤと、を有し、モータカウンタ軸は、第2のモータ出力ギヤに噛み合うモータ側ギヤと、ファイナルドリブンギヤに噛み合うディファレンシャル側ギヤと、を有し、モータ入力軸と第1のモータ出力ギヤとの間に、モータ入力軸から第1のモータ出力ギヤに動力伝達を行う第1のワンウェイクラッチが設けられ、モータ入力軸と第2のモータ出力ギヤとの間に、第2のモータ出力ギヤからモータ入力軸に動力伝達を行う第2のワンウェイクラッチが設けられ、回転電機の正転方向の力行時に、回転電機からファイナルドリブンギヤに、第1のワンウェイクラッチ、入力軸、カウンタ軸を介して正転方向の回転を減速して動力伝達を行い、かつ、ファイナルドリブンギヤから回転電機へのモータカウンタ軸を介した動力伝達を第2のワンウェイクラッチで遮断する第1動力伝達状態が形成され、回転電機の正転方向の回生時に、ファイナルドリブンギヤから回転電機に、モータカウンタ軸および第2のワンウェイクラッチを介して動力伝達を行い、かつ、回転電機からファイナルドリブンギヤへの入力軸およびカウンタ軸を介した動力伝達を第1のワンウェイクラッチで遮断する第2動力伝達状態が形成されることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の駆動装置は、力行時には回転電機からファイナルドリブンギヤに回転を十分に減速して伝達でき、回生時にはファイナルドリブンギヤから回転電機へ効率よく動力伝達を行うことができる。
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置について、図面を用いて説明する。図1から図9は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を示す図である。
まず、構成を説明する。図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、内燃機関としてのエンジン2と駆動装置3とを備えている。エンジン2は、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等から構成されている。
駆動装置3は、エンジン2から伝達された回転を変速する変速機9を備えている。変速機9は、クラッチ17と、このクラッチ17を介してクランクシャフト2Aの回転中心と同軸上に設置された入力軸11と、この入力軸11と平行に配置されるカウンタ軸13とを備えている。入力軸11には、クラッチ17を介してエンジン2の回転が伝達される。カウンタ軸13は、入力軸11から後述する変速ギヤ対を介して伝達された回転をファイナルドリブンギヤ19に伝達する。
クラッチ17は、エンジン2と入力軸11との間の動力伝達を接続または切断する発進装置である。クラッチ17は、エンジン2のクランクシャフト2Aと変速機9の入力軸11との間に設けられており、図示しないアクチュエータにより操作される。
入力軸11には、複数の変速ドライブギヤ10A、10B、10C、10D、10Eが、エンジン2に近い端部側から順次設けられている。変速ドライブギヤ10A、10Bは入力軸11に一体回転可能に固定されており、変速ドライブギヤ10C、10D、10Eは入力軸11に空転可能に配置されている。
カウンタ軸13には、複数の変速ドリブンギヤ12A、12B、12C、12D、12Eが、エンジン2に近い端部側から順次設けられている。変速ドリブンギヤ12C、12D、12Eはカウンタ軸13一体回転可能に固定されており、変速ドリブンギヤ12A、12Bは、カウンタ軸13に空転可能に配置されている。
変速ドライブギヤ10A、10B、10C、10D、10Eと、変速ドリブンギヤ12A、12B、12C、12D、12Eとは、互いに常時噛み合っており、1速段から5速段の変速段をそれぞれ構成している。
変速ドライブギヤ10Aと変速ドリブンギヤ12Aは1速段を、変速ドライブギヤ10Bと変速ドリブンギヤ12Bは2速段を、変速ドライブギヤ10Cと変速ドリブンギヤ12Cは3速段を、変速ドライブギヤ10Dと変速ドリブンギヤ12Dは4速段を、変速ドライブギヤ10Eと変速ドリブンギヤ12Eは5速段を、それぞれ構成している。
1速段における変速ドライブギヤ10Aと変速ドリブンギヤ12Aとのギヤ対のように、変速段を構成するように常時噛み合うギヤ対は、それぞれ本発明における変速ギヤ対を構成している。
また、変速機9は、切替機構としての複数のシフトスリーブ14、15、16を備えている。これらのシフトスリーブ14、15、16は、図示しないアクチュエータの駆動により図示しないシフトアンドセレクトシャフトやシフトフォーク等を介して操作されることにより、変速段を1速段から5速段の前進段、または後進段の何れかに切り替える。シフトスリーブ14、15、16は、これらが配置された軸上を軸線方向に移動可能に配置されており、軸方向に隣接するギヤと側面で係合することによりそのギヤと軸とを一体回転させ、1速段から5速段の前進ギヤ段または後進ギヤ段に対応する動力伝達経路を形成する。シフトスリーブ14、15、16には図示しない同期機構(シンクロナイザ)が設けられている。
シフトスリーブ14は、入力軸11上の変速ドライブギヤ10Cと10Dの間に配置されており、3速段または4速段を形成する。シフトスリーブ15は、入力軸11上の変速ドライブギヤ10Eと隣り合って配置されており、5速段または後進段を形成するように機能する。シフトスリーブ16は、カウンタ軸13上の変速ドリブンギヤ12Aと12Bの間に配置されており、1速段または2速段を形成するように機能する。
入力軸11には、変速ドライブギヤ10Aと10Bの間に、リバースドライブギヤ33が一体回転可能に固定されている。リバース軸34にはリバースドリブンギヤ35が固定されている。後進段を形成する時に、リバース軸34が動いてリバースドリブンギヤ35がシフトスリーブ16とリバースドライブギヤ33に噛み合う。
変速機9は、アクチュエータによりクラッチ17およびシフトスリーブ14、15、16が操作されることにより自動で変速動作が行われるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されている。
駆動装置3は、ディファレンシャル装置18を備えている。ディファレンシャル装置18は、変速機9の動力が伝達されるファイナルドリブンギヤ19を有し、変速機9の動力を左右のドライブシャフト24に分配するようになっている。ディファレンシャル装置18は、外周部にファイナルドリブンギヤ19が取付けられ、ファイナルドリブンギヤ19と共に一体回転するデフケース20と、デフケース20に回転自在に取付けられた図示しない一対のピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛合する左右で一対の図示しないサイドギヤとを備えている。サイドギヤには、左右で一対のドライブシャフトがスプライン嵌合により一体回転可能に固定されている。
ファイナルドリブンギヤ19は、カウンタ軸13のエンジン2に近い側の端部に設けられたファイナルドライブギヤ25に噛合している。ファイナルドライブギヤ25によりファイナルドリブンギヤ19が回転されると、デフケース20がサイドギヤの軸心回りに回転し、デフケース20の回転がピニオンギヤおよびサイドギヤを介して左右のドライブシャフト24に差動回転可能に伝達され、車両1が走行する。
駆動装置3は、バッテリ40と、このバッテリ40との間で電気エネルギと運動エネルギとを相互に変化する回転電機26と、を備えている。回転電機26は、モータおよび発電機の機能を備えたいわゆるモータジェネレータである。つまり、回転電機26は、力行および回生が可能な回転電機である。
駆動装置3は、回転電機26の回転を減速する減速機28を備えている。減速機28は、回転電機26に連結されたモータ入力軸29と、モータ入力軸29とファイナルドリブンギヤ19との間で動力伝達を行うモータカウンタ軸30と、を有している。
モータ入力軸29は、第1のモータ出力ギヤ41と、第2のモータ出力ギヤ42と、を有している。第1のモータ出力ギヤ41は、カウンタ軸13にシフトスリーブ16を介して動力伝達可能に設けられた2速段用の変速ドリブンギヤ12Bに噛み合っている。
これにより、シフトスリーブ16を中立(ニュートラル)の状態にすることにより、第1のモータ出力ギヤ41から変速ドリブンギヤ12Bに伝達された回転を、カウンタ軸13には伝達させず、変速ドライブギヤ10Bを介して入力軸11に伝達させることができる。そして、入力軸11から他の変速段のギヤ対を介してカウンタ軸13に伝達された回転をファイナルドリブンギヤ19に伝達することができる。一方、シフトスリーブ16を変速ドリブンギヤ12Bに係合させた場合は、第1のモータ出力ギヤ41から変速ドリブンギヤ12Bに伝達された回転を、カウンタ軸13からファイナルドリブンギヤ19に伝達することができる。
第2のモータ出力ギヤ42は、モータカウンタ軸30上のモータ側ギヤ43と噛み合っており、モータ側ギヤ43を介してモータカウンタ軸30との間で動力伝達を行う。モータカウンタ軸30は、第2のモータ出力ギヤ42に噛み合うモータ側ギヤ43と、ファイナルドリブンギヤ19に噛み合うディファレンシャル側ギヤ44と、を有している。
モータ入力軸29と第1のモータ出力ギヤ41との間には、モータ入力軸29から第1のモータ出力ギヤ41に動力伝達を行う第1のワンウェイクラッチ51が設けられている。また、モータ入力軸29と第2のモータ出力ギヤ42との間には、第2のモータ出力ギヤ42からモータ入力軸29に動力伝達を行う第2のワンウェイクラッチ52が設けられている。
回転電機26の正転方向の力行による車両1の前進走行時は、第1のワンウェイクラッチ51は、モータ入力軸29の回転速度が第1のモータ出力ギヤ41より速い場合に動力伝達状態(ロック状態)となり、モータ入力軸29の回転を第1のモータ出力ギヤ41に伝達する。したがって、第1のワンウェイクラッチ51は、モータ入力軸29から第1のモータ出力ギヤ41の方向にだけ動力伝達を行う。
また、回転電機26の正転方向の力行による車両1の前進走行時は、第2のワンウェイクラッチ52は、第2のモータ出力ギヤ42の回転速度がモータ入力軸29より速い場合に動力伝達状態(ロック状態)となり、第2のモータ出力ギヤ42の回転をモータ入力軸29に伝達する。したがって、第2のワンウェイクラッチ52は、第2のモータ出力ギヤ42からモータ入力軸29の方向にだけ動力伝達を行う。
駆動装置3において、回転電機26の正転方向の力行時は、第1のワンウェイクラッチ51が動力伝達状態となり、第2のワンウェイクラッチ52が遮断状態となる。このため、図2、図4に示すように、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19に、第1のワンウェイクラッチ51、入力軸11、カウンタ軸13を介して正転方向の回転を減速して動力伝達を行い、かつ、ファイナルドリブンギヤ19から回転電機26へのモータカウンタ軸30を介した動力伝達を第2のワンウェイクラッチ52で遮断する第1動力伝達状態が形成される。
ここで、回転電機26の正転方向とは、変速機9が前進段に設定されている場合に車両1を前進走行させる回転方向をいう。第1動力伝達状態では、例えば、図2に示すように変速機4が2速段に設定されている場合、車両1は2速段で前進走行する。また、第1動力伝達状態において、図4に示すように変速機4が後進段に設定されている場合、車両は後進走行する。
また、駆動装置3において、回転電機26の正転方向の回生時は、第1のワンウェイクラッチ51が遮断状態となり、第2のワンウェイクラッチ52が動力伝達状態となる。このため、図3に示すように、ファイナルドリブンギヤ19から回転電機26に、モータカウンタ軸30および第2のワンウェイクラッチ52を介して動力伝達を行い、かつ、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19への入力軸11およびカウンタ軸13を介した動力伝達を第1のワンウェイクラッチ51で遮断する第2動力伝達状態が形成される。
また、減速機28において、回転電機26の逆転方向の力行時は、第1のワンウェイクラッチ51が遮断状態となり、第2のワンウェイクラッチ52が動力伝達状態となる。このため、減速機28は、図5に示すように、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19に、第2のワンウェイクラッチ52およびモータカウンタ軸30を介して逆転方向の回転を伝達し、かつ、入力軸11から回転電機26への動力伝達を第1のワンウェイクラッチ51で遮断する第3動力伝達状態を形成する。
本実施例では、変速機9の前進用の変速段を形成する全ての変速ギヤ対の各ギヤ比は、図9に一例を示す各ギヤ比に設定されている。このようにすることで、第1のモータ出力ギヤ41の回転数が第2のモータ出力ギヤ42の回転数よりも大きくなる関係が常時成立するため、回転電機26の回転方向および回転速度を制御することにより、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52の動力伝達状態と遮断状態とが切り替わり、第1動力伝達状態、第2動力伝達状態、第3動力伝達状態または第4動力伝達状態への切替えを行うことができる。
詳しくは、回転電機26の回転数に応じて、モータ入力軸29と第1のモータ出力ギヤ41との回転速度の大小関係、および、モータ入力軸29と第2のモータ出力ギヤ42との回転速度の大小関係が決定され、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52が動力伝達状態または遮断状態に切り替わることで、第1動力伝達状態と第2動力伝達状態との切替えが行われる。
また、駆動装置3において、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともに遮断状態となる遮断領域内の回転数で回転電機26を回転させることにより、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともにモータ入力軸29に対して相対回転する第4の動力伝達状態が形成される。
この第4の動力伝達状態では、図6に示すように、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともに遮断状態となり、モータ入力軸29は、カウンタ軸13およびモータカウンタ軸30との間で動力伝達を行わない。また、第4の動力伝達状態において、回転電機26は、第4の動力伝達状態を形成する所定の回転数領域で回転しているため、速やかに第1の動力伝達状態または第2の動力伝達状態に移行することができる。
図7において、所定の前進段(例えば、4速段)における車両1の前進走行時の入力軸11の回転数を横軸とし、その状態でのギヤ回転数(第1のモータ出力ギヤ41および第2のモータ出力ギヤ42の回転数)を縦軸としている。
第1のモータ出力ギヤ41が動力伝達(ロック)状態となり第1動力伝達状態が形成される領域は、第2のモータ出力ギヤ42が動力伝達(ロック)状態となり第2動力伝達状態が形成される領域よりも、高回転側に形成されている。
また、第1動力伝達状態の領域と第2動力伝達状態の領域との間は遮断領域となる。この遮断領域は、第1動力伝達状態の領域と第2動力伝達状態の領域に挟まれた領域である。遮断領域では、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともに遮断状態となるため、第4の動力伝達状態が形成される。
図8において、後進段における車両1の後進走行時の入力軸11の回転数を横軸とし、その状態でのギヤ回転数(第1のモータ出力ギヤ41および第2のモータ出力ギヤ42の回転数)を縦軸としている。
また、第3動力伝達状態は、回転電機26が逆転方向に力行することにより形成される。第1動力伝達状態の領域と第3動力伝達状態の領域との間は遮断領域となる。この遮断領域は、第1動力伝達状態の領域と第3動力伝達状態の領域に挟まれた領域である。この遮断領域では、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともに遮断状態となるため、第4の動力伝達状態が形成される。
次に、作用を説明する。本実施例の駆動装置3において、減速機28は、回転電機26に連結されたモータ入力軸29と、モータ入力軸29とファイナルドリブンギヤ19との間で動力伝達を行うモータカウンタ軸30と、を有している。
また、モータ入力軸29は、カウンタ軸13にシフトスリーブ16を介して動力伝達可能に設けられた変速ドリブンギヤ12Bに噛み合う第1のモータ出力ギヤ41と、モータカウンタ軸30との間で動力伝達を行う第2のモータ出力ギヤ42と、を有している。モータカウンタ軸30は、第2のモータ出力ギヤ42に噛み合うモータ側ギヤ43と、ファイナルドリブンギヤ19に噛み合うディファレンシャル側ギヤ44と、を有している。
また、モータ入力軸29と第1のモータ出力ギヤ41との間には、モータ入力軸29から第1のモータ出力ギヤ41に動力伝達を行う第1のワンウェイクラッチ51が設けられている。モータ入力軸29と第2のモータ出力ギヤ42との間には、第2のモータ出力ギヤ42からモータ入力軸29に動力伝達を行う第2のワンウェイクラッチ52が設けられている。
そして、駆動装置3において、回転電機26の正転方向の力行時は、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19に、第1のワンウェイクラッチ51、入力軸11、カウンタ軸13を介して正転方向の回転を減速して動力伝達を行い、かつ、ファイナルドリブンギヤ19から回転電機26へのモータカウンタ軸30を介した動力伝達を第2のワンウェイクラッチ52で遮断する第1動力伝達状態が形成される。
一方、駆動装置3において、回転電機26の正転方向の回生時は、ファイナルドリブンギヤ19から回転電機26に、モータカウンタ軸30および第2のワンウェイクラッチ52を介して動力伝達し、かつ、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19への入力軸11およびカウンタ軸13を介した動力伝達を第1のワンウェイクラッチ51で遮断する第2動力伝達状態が形成される。
この構成により、回転電機26の前進力行時には、第1動力伝達状態が形成され、変速機9を介して回転を減速して動力伝達を行うことができるので、変速機9の機構を共通で利用し回転電機26の使用する回転範囲を小さくできる。
よって、回転電機26が小型の回転電機であっても、十分なアシストトルクをファイナルドリブンギヤ19に伝達することができる。
一方、回転電機26の前進回生時には、第2動力伝達状態が形成され、モータカウンタ軸30を介して回生が行われる。これにより、力行時の第1動力伝達状態よりも、ディファレンシャル装置18から回転電機26まで、経路上のギヤが少ないモータカウンタ軸30を介した動力伝達経路を経て動力が伝達されるため、動力の伝達効率の低下を抑制できる。
よって、回転電機26の力行時と回生時との両方で、それぞれ有利な動力伝達状態を構成することができる。また、回転電機26の大型化を抑制でき、減速機28を小型化できるので、駆動装置3全体として小型化を達成できる。
さらに、回転電機26の力行時には、回転電機26の出力が小さいものであっても、減速機28における十分な減速比によって必要なトルクをファイナルドリブンギヤ19に伝達できるので、バッテリ40の消費電力を少なくできる。よって、バッテリ40の充電状態(SOC:State of Charge)の減少を抑制でき、燃費を向上することができる。
一方、回転電機26の回生時には、ファイナルドリブンギヤ19から回転電機26までの動力伝達経路上のギヤの数が少ないため、ギヤの摩擦等によるエネルギ損失を少なくでき、回生時の回転電機26の発生電力量を多くすることができる。このため、バッテリ40への充電を速やかに行うことができ、バッテリ40のSOCを高く保つことができ、燃費の向上を達成できる。
また、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52の機能によって力行時と回生時の動力伝達経路を切替えることができるので、他の複雑な切替機構を用いる必要がなくなり、減速機28の構造を簡単にすることができる。よって、駆動装置32を小型化できる。
これに加え、駆動装置3においては、変速機9の変速段を切替える際に、第1のモータ出力ギヤ41の回転数よりもモータ入力軸29の回転数が低くなるように回転電機26を制御して、第1のワンウェイクラッチ51を遮断状態にし、モータ入力軸29と入力軸11との間の動力伝達を遮断することができる。したがって、変速段を切替える際の入力軸11の慣性(イナーシャ)を低下させることができ、変速段の切替え時のシフトスリーブ14、15、16の同期時間を短くすることができる。
また、変速機9の変速段をダウンシフトする際は、回転電機26の回転数を増加させて、アップシフト後の変速段と同期する回転数まで入力軸11の回転数を増加させることにより、シフトスリーブ14、15、16の同期時間を短くすることができる。また、エンジン2よりもトルクの立ち上がりが速い回転電機26によって、入力軸11の回転数を同期回転数にまで増加させるので、同期時間を短縮することができる。
また、シフトスリーブ14、15、16での同期完了後は、クラッチ17の再接続の完了前であっても、エンジン2の動力の代わりに回転電機26の動力を用いて車両1を走行させることができる。このため、変速に伴うクラッチ17の切断中の車両1の減速を回避できる。
本実施例の駆動装置3において、減速機28は、回転電機26の逆転方向の力行時に、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19に、第2のワンウェイクラッチ52およびモータカウンタ軸30を介して逆転方向の回転を伝達し、かつ、入力軸11から回転電機26への動力伝達を第1のワンウェイクラッチ51で遮断する第3動力伝達状態を形成する。
これにより、回転電機26の逆転方向の力行による動力が、回転電機26からファイナルドリブンギヤ19に、第2のワンウェイクラッチ52およびモータカウンタ軸30を介して伝達される。このため、回転電機26の回転方向を切替えるだけで車両1の前進と後進とを切り替えることができる。したがって、車両1の前進と後進とを切り替えるための切替機構を変速機9に設けることを不要にでき、変速機9の部品点数の削減、構成の単純化、小型化を達成できる。
本実施例の駆動装置3において、第1のモータ出力ギヤ41の回転数が第2のモータ出力ギヤ42の回転数よりも大きくなるように、変速機9の前進用の変速段を形成する全ての変速ギヤ対のギヤ比が設定されている。
そして、回転電機26の回転数に応じて、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52が動力伝達状態または遮断状態に切り替わることで、第1動力伝達状態と第2動力伝達状態との切替えが行われる。
また、駆動装置3において、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともに遮断状態となる遮断領域内の回転数で回転電機26を回転させることにより、第1のワンウェイクラッチ51および第2のワンウェイクラッチ52がともにモータ入力軸29に対して相対回転する第4の動力伝達状態が形成される。
これにより、回転電機26の回転数が遮断領域内にあるときは、第4の動力伝達状態が形成されるので、回転電機26とファイナルドリブンギヤ19との間で動力伝達が遮断された状態を安定して形成することができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。