最初に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1はショベル100の側面図であり、図2はショベル100の上面図である。
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。エンドアタッチメントは、法面バケットであってもよい。
ブーム4は、上部旋回体3に対して上下に回動可能に支持されている。そして、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられている。ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度であるブーム角度αを検出できる。ブーム角度αは、例えば、ブーム4を最も下降させた状態からの上昇角度である。そのため、ブーム角度αは、ブーム4を最も上昇させたときに最大となる。
アーム5は、ブーム4に対して回動可能に支持されている。そして、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられている。アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度であるアーム角度βを検出できる。アーム角度βは、例えば、アーム5を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、アーム角度βは、アーム5を最も開いたときに最大となる。
バケット6は、アーム5に対して回動可能に支持されている。そして、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度であるバケット角度γを検出できる。バケット角度γは、バケット6を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、バケット角度γは、バケット6を最も開いたときに最大となる。
図1の実施形態では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3のそれぞれは、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されている。但し、加速度センサのみで構成されていてもよい。また、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7に取り付けられたストロークセンサであってもよく、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、又は慣性計測装置等であってもよい。アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3についても同様である。
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70、向き検出装置71、測位装置73、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、情報入力装置72、表示装置D1、音声出力装置D2、及び通信装置T1等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、掘削アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識するように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含む。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた空間認識装置70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた空間認識装置70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた空間認識装置70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた空間認識装置70Rを含む。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
空間認識装置70は、横方向及び縦方向の所定の検出範囲を有するように構成されている。空間認識装置70は、二次元走査型の装置であってもよく、三次元走査型の装置であってもよく、非走査型の装置であってもよい。本実施形態では、空間認識装置70は、三次元走査型の装置である。
空間認識装置70は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。すなわち、空間認識装置70は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置70は、人と人以外の物体とを区別できるように、若しくは、地面と地面以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100からその認識された物体までの距離を算出するように構成されてもよい。また、空間認識装置70としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等の周囲監視装置が利用される場合には、ショベル100は、単眼カメラ等が撮像した画像を利用するだけでなく、周囲監視装置から多数の信号(レーザ光等)を物体に向けて発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を導き出してもよい。
向き検出装置71は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報を検出するように構成されている。向き検出装置71は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置71は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせで構成されていてもよい。向き検出装置71は、ロータリエンコーダ、ロータリポジションセンサ等、又は、それらの任意の組み合わせであってもよい。旋回電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置71は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置71は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。また、ショベル100は、測位装置73等を用いて上部旋回体3の絶対角度を算出してもよい。
向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられたカメラで構成されていてもよい。この場合、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施して入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。そして、向き検出装置71は、既知の画像認識技術を用いて下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定する。そして、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導き出す。上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導き出される。特に、クローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置71は、クローラ1Cの画像を検出することで下部走行体1の長手方向を特定できる。この場合、向き検出装置71は、コントローラ30に統合されていてもよい。また、カメラは、空間認識装置70であってもよい。また、向き検出装置71は、後述する旋回角速度センサS5の検出値に基づいて、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な角度である旋回角度を算出してもよい。
情報入力装置72は、ショベル100の操作者がコントローラ30に対して情報を入力できるように構成されている。本実施形態では、情報入力装置72は、表示装置D1の表示部に近接して設置されるスイッチパネルである。但し、情報入力装置72は、表示装置D1の表示部の上に配置されるタッチパネルであってもよく、キャビン10内に配置されているマイクロフォン等の音声入力装置であってもよい。また、情報入力装置72は、外部からの情報を取得する通信装置であってもよい。
測位装置73は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。本実施形態では、測位装置73は、GNSS受信機であり、上部旋回体3の位置を検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。測位装置73は、GNSSコンパスであってもよい。この場合、測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを検出できるため、向き検出装置71としても機能する。
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の少なくとも1つは、姿勢検出装置とも称される。掘削アタッチメントATの姿勢は、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づいて検出される。
表示装置D1は、情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置D1は、キャビン10内に設置された液晶ディスプレイである。但し、表示装置D1は、スマートフォン等の携帯端末のディスプレイであってもよい。
音声出力装置D2は、音声を出力する装置である。音声出力装置D2は、キャビン10内の操作者に向けて音声を出力する装置、及び、キャビン10外の作業者に向けて音声を出力する装置の少なくとも1つを含む。携帯端末のスピーカであってもよい。
通信装置T1は、他のショベル100とM2M(Machine to Machine)で通信を行う。通信装置T1は、例えば、Bluetooth(登録商標)又はDSRC等の無線通信規格に対応する通信モジュール等である。なお、通信装置T1の通信は、M2Mに限られるものではない。通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、衛星通信網、インターネット網等を含む所定のネットワークを通じて外部機器(例えば、管理サーバ、他のショベル100)と通信を行う構成であってもよい。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等であってもよい。また、それぞれのショベル100が管理サーバと通信を行うことにより、ショベル100と他のショベル100が管理サーバを介して間接的に通信を行う構成であってもよい。
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を支援したり或いはショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能を含む。コントローラ30は、ショベル100の周囲に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的或いは自律的に動作させたり或いは停止させたりする接触回避機能を含んでいてもよい。
次に、図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図3は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。図3は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線及び点線で示している。
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、及びコントローラ30等を含む。
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して操作装置26を含む油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171〜176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。但し、操作装置26は、上述のようなパイロット圧式ではなく、電気制御式であってもよい。この場合、コントロールバルブ17内の制御弁は、電磁ソレノイド式スプール弁であってもよい。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作の内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
同様に、操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、操作圧センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
具体的には、図3で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
次に、図4を参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。図4は、油圧システムの一部を抜き出した図であり、図4(A)〜図4(D)を含む。具体的には、図4(A)は、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図4(B)は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。図4(C)は、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図4(D)は、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4に示すように、油圧システムは、比例弁31、シャトル弁32、及び比例弁33を含む。比例弁31は、比例弁31AL〜31DL及び31AR〜31DRを含み、シャトル弁32は、シャトル弁32AL〜32DL及び32AR〜32DRを含み、比例弁33は、比例弁33AL〜33DL及び33AR〜33DRを含む。
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有する。2つの入口ポートのうちの1つは操作装置26に接続され、他方は比例弁31に接続されている。出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
比例弁33は、比例弁31と同様に、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁33は、操作装置26とシャトル弁32とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁33は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、操作装置26が吐出する作動油の圧力を減圧した上で、シャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
例えば、図4(A)に示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31ALは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31ARは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31AL、31ARは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を開くことができる。
比例弁33ALは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から左操作レバー26L、比例弁33AL、及びシャトル弁32ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を減圧する。比例弁33ARは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から左操作レバー26L、比例弁33AR、及びシャトル弁32ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を減圧する。比例弁33AL、33ARは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
或いは、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、比例弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。この場合、比例弁33ALは省略されてもよい。操作者によるアーム開き操作が行われている場合にアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
また、以下の図4(B)〜図4(D)を参照しながらの説明を省略するが、操作者によるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
また、図4(B)に示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して制御弁175Lの左側パイロットポート及び制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BL、31BRは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を下げることができる。
また、図4(C)に示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31CLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CL、31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を開くことができる。
また、図4(D)に示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DL、31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を左旋回させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を右旋回させることができる。
ショベル100は、下部走行体1を自動的或いは自律的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、及び、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
また、操作装置26の形態として油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作レバーに関する説明を記載したが、油圧式操作レバーではなく電気式パイロット回路を備えた電気式操作レバーが採用されてもよい。この場合、電気式操作レバーのレバー操作量は、電気信号としてコントローラ30へ入力される。また、パイロットポンプ15と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置される。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、電気式操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。なお、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
次に、図5を参照し、コントローラ30の構成例について説明する。図5は、コントローラ30の構成例を示す図である。図5では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、空間認識装置70、向き検出装置71、情報入力装置72、測位装置73、スイッチNS、及び通信装置T1等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置D1及び音声出力装置D2等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5を含む。コントローラ30は、位置算出部30A、軌道取得部30B、自律制御部30C、地形データ生成部30D、地形データ合成部30E、及び表示画像生成部30Fを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントの所定部位の基準座標系における座標点を算出する。所定部位は、例えば、バケット6の爪先である。基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。基準座標系は、例えば、XYZ直交座標系であり、ショベル100の前後軸に平行なX軸と、ショベル100の左右軸に平行なY軸と、ショベル100の旋回軸に平行なZ軸とを有する。位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部30Aは、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点を算出してもよい。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。また、位置算出部30Aは、測位装置73の出力を利用し、アタッチメントの所定部位の世界座標系における座標点を算出してもよい。
軌道取得部30Bは、ショベル100を自律的に動作させるときにアタッチメントの所定部位が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。本実施形態では、軌道取得部30Bは、自律制御部30Cがショベル100を自律的に動作させるときに利用する目標軌道を取得する。具体的には、軌道取得部30Bは、不揮発性記憶装置に記憶されている目標面に関するデータ(以下、「設計データ」とする。)に基づいて目標軌道を導き出す。軌道取得部30Bは、空間認識装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、揮発性記憶装置に記憶されている姿勢検出装置の過去の出力からバケット6の爪先の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、アタッチメントの所定部位の現在位置と設計データとに基づいて目標軌道を導き出してもよい。
自律制御部30Cは、ショベル100を自律的に動作させることができるように構成されている。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させるように構成されている。具体的には、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させる。
本実施形態では、自律制御部30Cは、アクチュエータを自律的に動作させることで操作者によるショベルの手動操作を支援するように構成されている。例えば、自律制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の爪先を目標軌道に一致させながら、アーム5を閉じることができる。この例では、主な操作対象であるアームシリンダ8は「主要アクチュエータ」と称される。また、主要アクチュエータの動きに応じて動く従動的な操作対象であるブームシリンダ7及びバケットシリンダ9は「従属アクチュエータ」と称される。
本実施形態では、自律制御部30Cは、比例弁31に制御指令(電流指令)を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自律的に動作させることができる。例えば、右操作レバー26Rが傾倒されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
地形データ生成部30Dは、空間認識装置70の取得データに基づいて、作業対象領域の地形データを生成するように構成されている。空間認識装置70の取得データは、空間認識装置70から対象までの距離に関するデータを含む。本実施形態では、空間認識装置70は、LIDARであり、TOF(Time of Flight)法を利用し、空間認識装置70から対象までの距離に関するデータを取得する。地形データは、作業対象領域における地面上の各点の三次元座標を含む。各点の三次元座標は、基準座標系としての世界測地系における座標である。
また、地形データ生成部30Dは、空間認識装置70の視点(例えば光学中心)に関する情報を取得するように構成されている。空間認識装置70の視点は、例えば、対象までの距離を測定する際の基点である。本実施形態では、空間認識装置70の視点は、LIDARで使用されるレンズの光学中心である。
地形データ生成部30Dは、例えば、測位装置73の出力に基づいて空間認識装置70の視点の三次元座標を導き出す。具体的には、地形データ生成部30Dは、空間認識装置70の視点とショベル中心点との間の相対的な位置関係に関する情報と、測位装置73が測定するショベル中心点の三次元座標とに基づき、基準座標系における空間認識装置70の視点の三次元座標を導き出す。
相対的な位置関係に関する情報は、ショベル中心点から見た空間認識装置70の視点の方向、及び、空間認識装置70の視点とショベル中心点との間の距離等を含む。
空間認識装置70が上部旋回体3に取り付けられている場合、ショベル中心点から見た空間認識装置70の視点の方向は、例えば、機体傾斜センサS4及び向き検出装置71等の出力に基づいて導き出される。この場合、空間認識装置70の視点とショベル中心点との間の距離は、不変であり、予め登録されている。測位装置73が上部旋回体3の位置ばかりでなく上部旋回体3の向きも検出できる場合には、相対的な位置関係に関する情報は、機体傾斜センサS4及び向き検出装置71等の出力を用いずに、測位装置73の出力に基づいて導き出されてもよい。ショベル中心点から見た空間認識装置70の視点の方向は、測位装置73の出力に基づいて導き出されるためである。
空間認識装置70が掘削アタッチメントATに取り付けられている場合には、相対的な位置関係に関する情報は、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、及び向き検出装置71等の出力に基づいて導き出される。
なお、ショベル100は、測位装置73とは別に、空間認識装置70の位置を測定するための測位装置を含んでいてもよい。この測位装置は、空間認識装置70に一体化されていてもよい。この場合、地形データ生成部30Dは、この測位装置の出力に基づいて空間認識装置70の視点の三次元座標を導き出してもよい。
空間認識装置70の視点の三次元座標が決まれば、地形データ生成部30Dは、空間認識装置70の検出範囲内に含まれる地面上の各点の三次元座標を一意に導き出すことができる。空間認識装置70の視点と地面上の各点との間の相対的な位置関係は、空間認識装置70としてのLIDARが出力する、視点から見た地面上の各点の方向、及び、視点と地面上の各点との間の距離に基づいて導き出されるためである。
地形データ合成部30Eは、地形データ生成部30Dで生成された複数の地形データを合成して、合成地形データを生成するように構成されている。複数の地形データは、例えば、同じ1つの作業対象領域を、空間認識装置70が複数の異なる方向から走査することによって生成される。複数の地形データは、互いに異なるタイミングで生成されてもよく、同じタイミングで生成されてもよい。複数の地形データの同時生成は、例えば、複数のショベルのそれぞれに取り付けられた複数の空間認識装置を利用することで実現される。或いは、複数の地形データの同時生成は、例えば、1つのショベルに取り付けられた複数の空間認識装置を利用することで実現される。複数の地形データの非同時生成は、例えば、1つのショベルに取り付けられた1つの空間認識装置を利用し、その空間認識装置の位置を変えながら、或いは、そのショベルの位置を変えながら、地形データの生成を繰り返すことで実現される。
例えば、地形データ合成部30Eは、第1時点で第1の位置にあるショベル100に取り付けられた空間認識装置70の出力に基づいて地形データ生成部30Dが生成した作業対象領域に関する第1の地形データと、第2時点で第2の位置にあるショベル100に取り付けられた空間認識装置70の出力に基づいて地形データ生成部30Dが生成した同じ作業対象領域に関する第2の地形データとを合成し、その作業対象領域に関する合成地形データを生成する。この例では、ショベル100は、1つの作業対象領域を2つの異なる方向から空間認識装置70で走査できるように、第1時点で第1の地形データを生成した後で、下部走行体1によって第1の位置から第2の位置に移動する。なお、地形データ生成部30Dは、1つの作業対象領域に関して生成された3つ以上の地形データを合成してもよい。この場合、ショベル100は、1つの作業対象領域を3つ以上の異なる方向から空間認識装置70で走査できるように、下部走行体1による移動と空間認識装置70による走査とを繰り返す。そのため、空間認識装置70は、1つの方向からは死角となってしまう作業対象領域の一部を、別の方向から走査できる。
第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複しない部分(非重複部分)は、互いに補完し合うように結合される。すなわち、第1の地形データに含まれる非重複部分を表す三次元座標と、第2の地形データに含まれる非重複部分を表す三次元座標とは、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。
第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複する部分(重複部分)のうち、一致する部分、或いは、位置ズレが所定値未満の部分(一致部分)については、第1の地形データ又は第2の地形データの何れかに含まれる三次元座標がその一致部分を表す三次元座標として採用され、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。この場合、何れの地形データに含まれる三次元座標が一致部分を表す三次元座標として採用されるかは、予め決められていてもよい。但し、地形データ合成部30Eは、第1の地形データに含まれる三次元座標と、第2の地形データに含まれる対応する三次元座標とに基づいて新たな三次元座標を生成し、その生成した三次元座標を、一致部分を表す三次元座標で且つ合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶してもよい。このように、地形データ合成部30Eは、位置情報としての三次元座標に基づいて複数の地形データを合成して合成地形データを生成する。ここで、第1の地形データと第2の地形データとは同一の作業対象領域に関する地形データである。つまり、地形データ合成部30Eは、同一の作業対象領域を異なる視点から測定して得られた複数の地形データを合成することにより、死角のない合成地形データを生成することができる。地形データ合成部30Eは、位置情報、若しくは、アタッチメントの所定部位の座標に基づいて、取得された複数の地形データが同一の作業対象領域に関するものであるか否かを判定してもよい。
第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複する部分(重複部分)のうち、一致しない部分、或いは、位置ズレが所定値以上の部分(不一致部分)については、地形データ合成部30Eは、第1の地形データに含まれる三次元座標と、第2の地形データに含まれる三次元座標との何れがより正確であるかを判定する。そして、地形データ合成部30Eは、より正確であると判定したほうの地形データに含まれる三次元座標を、その不一致部分を表す三次元座標として採用し、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶する。すなわち、地形データ合成部30Eは、正確でないと判定したほうの地形データに含まれる三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶することなく、消去する。
このように、合成地形データは、典型的には、非重複部分を表す三次元座標と、一致部分を表す三次元座標と、不一致部分を表す三次元座標とを含むように構成される。
表示画像生成部30Fは、表示装置D1に表示する画像を生成するように構成されている。例えば、表示画像生成部30Fは、図6に示すような目標設計面(施工面)610に関する画像を生成するように構成されている。本実施形態では、目標設計面610に関する画像を生成するために必要な設計データ等の情報は、予めコントローラ30の記憶装置等に記憶されている。目標設計面610に関する画像は、例えば、メッシュモデル又はワイヤフレームモデル等で表現されたCG画像である。
また、表示画像生成部30Fは、合成地形データに基づき、図6に示すような現在の地形600に関する画像を生成するように構成されている。現在の地形600に関する画像は、例えば、メッシュモデル又はワイヤフレームモデル等で表現されたCG画像である。
<第1の実施例>
次に、ショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法について更に説明する。図6は、第1の実施例に係るショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法を説明する側面図である。なお、図6(及び後述する図7から図9)において、現状の地形600を実線で示し、目標設計面610を二点鎖線で示す。図6に示す例では、作業対象領域は、ショベル100によって掘削された穴を含んでいる。
現在の地形600は、掘削中、若しくは、掘削後の地形である。つまり、現在の地形600は、前回の地形データをショベル100が取得した後に、ショベル100が掘削等の作業を行った際の地形である。図6で示されるように、目標設計面610と現在の地形600との間には不一致が生じている。このため、ショベル100は、どの程度の不一致が生じているのかを把握する必要がある。更には、ショベル100は、今回の掘削作業により掘削される掘削体積を計測する必要がある。
第1の実施例に係るショベル100は、少なくとも1台の空間認識装置70を備えている。最初に、ショベル100は、第1の位置P1に移動する。ショベル100の地形データ生成部30Dは、第1の位置P1において、空間認識装置70を用いて作業対象領域の地形データ(第1の地形データ)を生成する。次に、ショベル100は、第1の位置P1から、第1の位置P1とは異なる第2の位置P2に移動する。そして、ショベル100の地形データ生成部30Dは、第2の位置P2において、空間認識装置70を用いて作業対象領域の地形データ(第2の地形データ)を生成する。そして、ショベル100の地形データ合成部30Eは、第1の地形データ及び第2の地形データを合成して、合成地形データを生成する。
図7(a)は第1の地形データを説明する図であり、図7(b)は第2の地形データを説明する図であり、図7(c)は合成地形データを説明する図である。なお、図7(a)〜図7(c)は、空間認識装置70(LIDAR)の照射光を一点鎖線で示し、第1の地形データに含まれる三次元座標を表す点群を黒塗り丸で示し、第2の地形データに含まれる三次元座標を表す点群を白抜き丸で示す。
図7(a)に示すように、作業対象領域の地形600に大きな穴が存在することにより、第1の位置P1にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70から死角となる領域701が発生する。また、空間認識装置70によって穴の縁の周囲が走査されるとき等、対象までの距離の急激な変化をもたらす走査が行われるときには、ノイズが発生する場合がある。ノイズは、例えば、空間認識装置70が出力するデータのうちの、実在しない地物と視点との間の距離を含むデータに基づいて導き出される三次元座標である。図7(a)に示す例では、ノイズ710が発生している。
このため、ショベル100は、この段階では、掘削作業を行った領域全体の地形データを取得できない。この場合、ショベル100は、目標設計面610と現在の地形600とが一致しているか否かを評価できないばかりか、掘削される掘削体積を正確に計測することもできない。このように、ショベル100は、掘削作業を行った場所(第1の位置P1)において取得した地形データのみでは、掘削作業を行った作業対象領域の全ての地形データを取得できない場合がある。
そこで、図7(b)に示すように、ショベル100の操作者は、第1の位置P1では死角となってしまう領域(地形データを取得できない領域)である領域701の地形データを取得できる場所(第2の位置P2)へショベル100を走行動作により移動させる。第1の位置P1においてショベル100が作業を行った作業対象領域内に含まれる領域701は、第2の位置P2にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70が走査可能な領域に含まれている。すなわち、領域701は、第2の位置P2にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70にとっては、もはや死角とはなっていない。一方、第2の位置P2にあるショベル100は、空間認識装置70から死角となる領域702を新たに発生させている。
図7(c)に示すように、地形データ合成部30Eは、第1の地形データ及び第2の地形データを合成して、合成地形データを生成する。この場合、第2の位置P2にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70によって走査される領域701に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複しない部分(非重複部分)に対応している。そのため、第2の地形データに含まれる非重複部分(領域701に含まれる地形)を表す三次元座標は、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。同様に、第1の位置P1にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70によって走査される領域702に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複しない部分(非重複部分)に対応している。そのため、第1の地形データに含まれる非重複部分(領域702に含まれる地形)を表す三次元座標は、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。
このように、地形データ合成部30Eは、第1の位置P1にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70からは死角となっていた領域701に含まれる地形を表す地形データとして第2の地形データを利用することができる。同様に、地形データ合成部30Eは、第2の位置P2にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70からは死角となっていた領域702に含まれる地形を表す地形データとして第1の地形データを利用することができる。そのため、地形データ合成部30Eは、第1の地形データでは欠落している領域701に含まれる地形に関する情報を、第2の地形データに含まれる情報で補完でき、第2の地形データでは欠落している領域702に含まれる地形に関する情報を、第1の地形データに含まれる情報で補完できる。その結果、地形データ合成部30Eは、情報の欠落がない合成地形データを生成できる。
領域703〜705に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複する部分(重複部分)のうち、一致する部分、或いは、位置ズレが所定値未満の部分(一致部分)に対応している。そのため、第1の地形データ又は第2の地形データの何れかに含まれる三次元座標がその一致部分を表す三次元座標として採用され、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。図7に示す例では、地形データ合成部30Eは、点群の密度に基づき、第1の地形データ又は第2の地形データの何れに含まれる三次元座標を、その一致部分を表す三次元座標として採用するかを決定する。具体的には、地形データ合成部30Eは、点群の密度が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を、その一致部分を表す三次元座標として採用する。点群の密度は、典型的には、空間認識装置70の視点と点群と間の距離が小さいほど大きい。そのため、領域703では、第1の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度は、第2の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度よりも大きい。したがって、地形データ合成部30Eは、第1の地形データに含まれる、領域703における地形に対応する三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用する。一方、領域704及び705では、第1の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度は、第2の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度よりも小さい。したがって、地形データ合成部30Eは、第2の地形データに含まれる、領域704及び705のそれぞれにおける地形に対応する三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用する。
このように、地形データ合成部30Eは、合成地形データを構成する三次元座標を決定する際に、複数の地形データの何れかに含まれる三次元座標を選択できる場合、点群の密度が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を採用できる。そのため、地形データ合成部30Eは、正確性が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用できる。その結果、地形データ合成部30Eは、合成地形データの正確性を高めることができる。
第1の位置P1にあるショベル100に取り付けられている空間認識装置70から近い側にある穴の縁の周囲にある領域は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複する部分(重複部分)のうち、一致しない部分、或いは、位置ズレが所定値以上の部分(不一致部分)に対応している。この領域は、例えば、空間認識装置70の出力に基づき、1又は複数の三次元座標を含む特定領域として設定される。具体的には、第1の地形データに含まれるノイズ710が表す三次元座標は、この特定領域における地形を表す三次元座標の一群に含まれ、第2の地形データに含まれる三次元座標の何れにも対応していない。すなわち、ノイズ710が表す三次元座標は、第2の地形データに含まれる三次元座標のうち、ノイズ710が表す三次元座標の最も近くに存在する三次元座標までの距離が所定距離以上となっている。そして、ノイズ710は、この距離が大きいほど大きいとされる。そのため、ノイズ710が表す三次元座標は、合成地形データを構成する三次元座標として採用されることなく消去される。このように、地形データ合成部30Eは、穴の縁の周囲にある領域等の特定領域における地形を表す1又は複数の三次元座標を、比較的信頼性の低い三次元座標として、合成地形データを構成する三次元座標から排除することで、合成地形データの正確性を高めることができる。
<第2の実施例>
次に、ショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法について更に説明する。図8は、第2の実施例に係るショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法を説明する側面図である。
第2の実施例に係るショベル100は、少なくとも2台の空間認識装置70(70F,70A)を備えている。図8に示す例において、空間認識装置70Fはキャビン10に固定されており、別の空間認識装置70Aはアーム5に固定されている。つまり、空間認識装置70A(第2の空間認識装置)は空間認識装置70F(第1の空間認識装置)の取り付け位置とは異なる取り付け位置に取り付けられている。その他の構成は、第1の実施例に係るショベル100と同様であり、重複する説明は省略する。
図8は、アーム5に空間認識装置70Aを取り付けた事例を示したが、空間認識装置70Aは、ブーム4に取り付けられていてもよい。更に、ブーム上げ又はアーム開き等によりアタッチメントの姿勢を変化させることにより、或いは、旋回動作により上部旋回体3の向きを変化させることにより、ショベル100の操作者は、空間認識装置70Aを移動させることができる。これにより、ショベル100の操作者は、空間認識装置70A(第2の空間認識装置)の視点を変化させることができる。
ショベル100の地形データ生成部30Dは、空間認識装置70Fを用いて作業対象領域の地形データ(第1の地形データ)を生成する。また、ショベル100の地形データ生成部30Dは、空間認識装置70Aを用いて作業対象領域の地形データ(第2の地形データ)を生成する。ショベル100の地形データ合成部30Eは、第1の地形データ及び第2の地形データを合成して、合成地形データを生成する。この場合、空間認識装置70Aによって走査される領域701に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複しない部分(非重複部分)に対応している。そのため、第2の地形データに含まれる非重複部分(領域701に含まれる地形)を表す三次元座標は、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。同様に、空間認識装置70Fによって走査される領域702に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複しない部分(非重複部分)に対応している。そのため、第1の地形データに含まれる非重複部分(領域702に含まれる地形)を表す三次元座標は、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。
このように、地形データ合成部30Eは、空間認識装置70Fからは死角となっていた領域701に含まれる地形を表す地形データとして第2の地形データを利用することができる。同様に、地形データ合成部30Eは、空間認識装置70Aからは死角となっていた領域702に含まれる地形を表す地形データとして第1の地形データを利用することができる。そのため、地形データ合成部30Eは、第1の地形データでは欠落している領域701に含まれる地形に関する情報を、第2の地形データに含まれる情報で補完でき、第2の地形データでは欠落している領域702に含まれる地形に関する情報を、第1の地形データに含まれる情報で補完できる。その結果、地形データ合成部30Eは、情報の欠落がない合成地形データを生成できる。
領域703及び704に含まれる地形は、第1の地形データから導き出される地形と、第2の地形データから導き出される地形とが重複する部分(重複部分)のうち、一致する部分、或いは、位置ズレが所定値未満の部分(一致部分)に対応している。そのため、第1の地形データ又は第2の地形データの何れかに含まれる三次元座標がその一致部分を表す三次元座標として採用され、合成地形データを構成する三次元座標として区別可能に記憶される。図8に示す例では、地形データ合成部30Eは、点群の密度に基づき、第1の地形データ又は第2の地形データの何れに含まれる三次元座標を、その一致部分を表す三次元座標として採用するかを決定する。具体的には、地形データ合成部30Eは、点群の密度が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を、その一致部分を表す三次元座標として採用する。点群の密度は、典型的には、空間認識装置70の視点と点群と間の距離が小さいほど大きい。そのため、領域703では、第1の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度は、第2の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度よりも大きい。したがって、地形データ合成部30Eは、第1の地形データに含まれる、領域703における地形に対応する三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用する。一方、領域704では、第1の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度は、第2の地形データに含まれる三次元座標を表す点群の密度よりも小さい。したがって、地形データ合成部30Eは、第2の地形データに含まれる、領域704における地形に対応する三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用する。
このように、地形データ合成部30Eは、合成地形データを構成する三次元座標を決定する際に、複数の地形データの何れかに含まれる三次元座標を選択できる場合、点群の密度が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を採用できる。そのため、地形データ合成部30Eは、正確性が高いほうの地形データに含まれる三次元座標を、合成地形データを構成する三次元座標として採用できる。その結果、地形データ合成部30Eは、合成地形データの正確性を高めることができる。
<第3の実施例>
次に、ショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法について更に説明する。図9は、第3の実施例に係るショベル100による作業対象領域の地形データを生成する方法を説明する側面図である。
第3の実施例に係るショベル100は、少なくとも1台の空間認識装置70(第1の空間認識装置)を備えている。また、他のショベル100Cは、少なくとも1台の空間認識装置70C(第2の空間認識装置)を備えている。ショベル100のコントローラ30は、通信装置T1,T1を介して、ショベル100Cのコントローラ30と通信可能に接続される。これにより、ショベル100のコントローラ30は、空間認識装置70Cの地形データを取得することができる。他のショベル100Cの構成は、ショベル100と同様であり、重複する説明は省略する。このように、ショベル100は、地形データを他のショベル100C等と共有することで、移動せずとも作業領域全体の地形データを容易に取得することができる。
ショベル100は、第1の位置P1に移動する。また、ショベル100Cは、第2の位置P2に移動する。ショベル100の地形データ生成部30Dは、第1の位置P1において、空間認識装置70を用いて作業対象領域の地形データ(第1の地形データ)を生成する。また、ショベル100Cの地形データ生成部は、第2の位置P2から空間認識装置70Cを用いて作業対象領域の地形データ(第2の地形データ)を生成する。第2の地形データは、通信装置T1,T1を介して、ショベル100のコントローラ30に送信される。ショベル100の地形データ合成部30Eは、第1の地形データ及び第2の地形データを合成して、合成地形データを生成する。なお、合成方法は、第1の実施例の場合と同様であり、重複する説明を省略する。
以上、本実施形態に係るショベル100によれば、作業対象領域の地形600に大きな凹凸が存在しても、現在の地形600の形状を好適に把握することができる。
図10は、本実施形態に係るショベル100の表示装置D1に表示される画像の一例である。
ショベル100の表示装置D1には、ショベル100の単眼カメラ(空間認識装置70の一例)で撮像された現在の作業対象領域のカメラ画像601が表示される。表示画像生成部30Fは、目標設計面610に関する情報(例えば、施工データ)と、機体傾斜センサS4及び測位装置73等の出力とに基づいて、表示されているカメラ画像601上における目標設計面610に関する画像を表示すべき位置を算出し、目標設計面610に関する画像としてのワイヤフレームモデルを表示装置D1に表示する。撮像されたカメラ画像601に目標設計面610に関する画像が重畳表示されるので、ショベル100の操作者は、作業が施されるべき領域を容易に把握することができる。
また、表示画像生成部30Fは、地形データ合成部30Eが生成した合成地形データと、目標設計面610に関する情報と、に基づいて、ワイヤフレームモデルの表面におけるメッシュ領域の色を変更する。表示画像生成部30Fは、例えば、あるメッシュ領域において、合成地形データから導き出される現在の地形600の表面と目標設計面610が一致(許容誤差以内も含む)する場合、作業が完了しているものとして、そのメッシュ領域を例えば緑色で表示する。また、表示画像生成部30Fは、あるメッシュ領域において、合成地形データから導き出される現在の地形600の表面が目標設計面610よりも低い場合、埋戻し作業が必要であるものとして、そのメッシュ領域を例えば青色で表示する。また、表示画像生成部30Fは、あるメッシュ領域において、合成地形データから導き出される現在の地形600の表面が目標設計面610よりも高い場合、更なる掘削作業が必要であるものとして、そのメッシュ領域を例えば赤色で表示する。なお、図10は、着色されたメッシュ領域611の一例を濃い網掛けで図示している。また、表示画像生成部30Fは、合成地形データから導き出される現在の地形600の表面と目標設計面610との高低差に応じて、色及び濃淡等の少なくとも1つを変更してもよい。これにより、ショベル100の操作者は、作業が施されるべき領域とその作業の内容(埋戻し又は掘削等)を容易に把握することができる。
以上、ショベル100の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は改良等が可能である。
例えば、第1の実施例では、第1の地形データの生成と第2の地形データの生成との間で、空間認識装置70の視点を変えるために、下部走行体1等によるショベル100の移動が行われる事例を説明したが、空間認識装置70の視点を変えるために、下部走行体1等によるショベル100の移動以外の方法が採用されてもよい。例えば、空間認識装置70がアーム5に固定されている場合には、ショベル100の操作者は、掘削アタッチメントATの姿勢を変更することで、空間認識装置70の視点を変えることができる。
また、第1の実施例では、第1の地形データを取得する空間認識装置70と第2の地形データを取得する空間認識装置70とが同じ空間認識装置70である事例を説明したが、第1の地形データを取得する空間認識装置70は、第2の地形データを取得する空間認識装置70とは別の空間認識装置であってもよい。例えば、地形データ合成部30Eは、第1時点で第1の位置にあるショベル100の上部旋回体3の上面左端に取り付けられた空間認識装置70Lの出力に基づく第1の地形データと、第2時点で第2の位置にあるショベル100の上部旋回体3の上面右端に取り付けられた空間認識装置70Rの出力に基づく第2の地形データとを利用して合成地形データを生成してもよい。