最初に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1はショベル100の側面図であり、図2はショベル100の上面図である。
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1は被駆動体としてのクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行用油圧モータ2Mによって駆動される。但し、走行用油圧モータ2Mは、電動アクチュエータとしての走行用電動発電機であってもよい。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行用油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行用油圧モータ2MRによって駆動される。下部走行体1は、クローラ1Cによって駆動されるため、被駆動体として機能する。
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。被駆動体としての旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回用油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。上部旋回体3は、旋回機構2によって駆動されるため、被駆動体として機能する。
上部旋回体3には被駆動体としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には被駆動体としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に被駆動体及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度であるバケット角度を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、コントローラ30、物体検知装置70、撮像装置80、向き検出装置85、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、ブーム4が取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。また、物体検知装置70は、物体検知装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等を含む。物体検知装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等を含む。本実施形態では、物体検知装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rを含む。
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。例えば、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
撮像装置80は、ショベル100の周囲を撮像するように構成されている。本実施形態では、撮像装置80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方カメラ80Rを含む。前方カメラを含んでいてもよい。
後方カメラ80Bは後方センサ70Bに隣接して配置され、左方カメラ80Lは左方センサ70Lに隣接して配置され、且つ、右方カメラ80Rは右方センサ70Rに隣接して配置されている。前方カメラは、前方センサ70Fに隣接して配置されていてもよい。
撮像装置80が撮像した画像は、キャビン10内に設置されている表示装置DSに表示される。撮像装置80は、俯瞰画像等の視点変換画像を表示装置DSに表示できるように構成されていてもよい。俯瞰画像は、例えば、後方カメラ80B、左方カメラ80L及び右方カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される。
撮像装置80は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、物体検知装置70は省略されてもよい。
この構成により、ショベル100は、物体検知装置70が検知した物体の画像を表示装置DSに表示できる。そのため、ショベル100の操作者は、被駆動体の動作が制限或いは禁止された場合、表示装置DSに表示されている画像を見ることで、その原因となった物体が何であるかをすぐに確認できる。
向き検出装置85は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(以下、「向きに関する情報」とする。)を検出するように構成されている。例えば、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせで構成されていてもよい。旋回用電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置85は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置85は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに配置されていてもよい。
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対するショベル100の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸の傾斜角及び左右軸の傾斜角を検出する加速度センサである。加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されていてもよい。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の任意の組み合わせは、集合的に姿勢センサとも称される。
次に、図3を参照し、ショベル100に搭載される基本システムについて説明する。図3は、ショベル100に搭載される基本システムの構成例を示す。図3において、機械的動力伝達ラインは二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電力ラインは細実線、電気制御ラインは一点鎖線でそれぞれ示されている。
基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作圧センサ29、コントローラ30、警報装置49、制御弁60、物体検知装置70、エンジンコントロールユニット(ECU74)、エンジン回転数調整ダイヤル75及び撮像装置80等を含む。
エンジン11は、負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、ECU74により制御される。エンジン11は油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれに接続されている。メインポンプ14は作動油ラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。
コントロールバルブ17は、ショベル100の油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ2A等の油圧アクチュエータに接続されている。具体的には、コントロールバルブ17は、各油圧アクチュエータに対応する複数のスプール弁を含む。各スプール弁は、PCポートの開口面積及びCTポートの開口面積を増減できるように、パイロット圧に応じて変位可能に構成されている。PCポートは、メインポンプ14と油圧アクチュエータとを連通させるポートである。CTポートは、油圧アクチュエータと作動油タンクとを連通させるポートである。
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、油圧式操作装置であり、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応するスプール弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。操作装置26は、例えば、左操作レバー、右操作レバー及び走行操作装置を含む。走行操作装置は、例えば、走行レバー及び走行ペダルを含む。操作装置26は、電気式操作装置であってもよい。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
警報装置49は、ショベル100の作業に携わる人の注意を喚起できるように構成されている。警報装置49は、例えば、室内警報装置及び室外警報装置の組み合わせで構成されていてもよい。室内警報装置は、キャビン10内にいるショベル100の操作者の注意を喚起できるように構成されている。室内警報装置は、例えば、キャビン10内に設けられた音声出力装置、振動発生装置及び発光装置の少なくとも1つを含む。室内警報装置は、表示装置DSであってもよい。室外警報装置は、ショベル100の周囲で作業する作業者の注意を喚起できるように構成されている。室外警報装置は、例えば、キャビン10の外に設けられた音声出力装置及び発光装置の少なくとも1つを含む。室外警報装置としての音声出力装置は、例えば、上部旋回体3の底面に取り付けられている走行アラーム装置であってもよい。室外警報装置は、上部旋回体3上に設けられる発光装置であってもよい。但し、室外警報装置は省略されてもよい。警報装置49は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、ショベル100の作業に携わる人にその旨を報知してもよい。
制御弁60は、操作装置26の有効状態と無効状態とを切り換えできるように構成されている。操作装置26の有効状態は、操作者が操作装置26を用いて油圧アクチュエータを操作できる状態である。操作装置26の無効状態は、操作者が操作装置26を用いて油圧アクチュエータを操作できない状態である。本実施形態では、制御弁60は、コントローラ30からの指令に応じて動作するように構成されているゲートロック弁である。具体的には、制御弁60は、パイロットポンプ15と操作装置26とを繋ぐパイロットラインに配置され、コントローラ30からの指令に応じてパイロットラインの遮断・連通を切り換えできるように構成されている。操作装置26は、例えば、不図示のゲートロックレバーが引き上げられてゲートロック弁が開かれたときに有効状態となり、ゲートロックレバーが押し下げられてゲートロック弁が閉じられたときに無効状態となる。
ECU74は、冷却水温等、エンジン11の状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。メインポンプ14のレギュレータ13は、斜板傾転角に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。作動油タンクとメインポンプ14との間の管路に設けられた油温センサ14cは、その管路を流れる作動油の温度に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。操作圧センサ29は、操作装置26が操作されたときに生成されるパイロット圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。コントローラ30は一時記憶部(メモリ)にこれらのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置DSに向けて出力できる。
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数で一定となるように制御される。
表示装置DSは、制御部DSa、画像表示部DS1、及び、入力部としてのスイッチパネルDS2を有する。制御部DSaは、画像表示部DS1に表示される画像を制御できるように構成されている。本実施形態では、制御部DSaは、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。この場合、制御部DSaは、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。但し、各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。また、画像表示部DS1に表示される画像は、コントローラ30又は撮像装置80によって制御されてもよい。
スイッチパネルDS2は、ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネルDS2は、タッチパネルであってもよい。表示装置DSは、蓄電池BTから電力の供給を受けて動作する。蓄電池BTは、例えば、オルタネータ11aで発電した電気で充電される。蓄電池BTの電力は、コントローラ30等に供給されてもよい。エンジン11のスタータ11bは、例えば、蓄電池BTからの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
レバーボタンLBは、操作装置26に設けられたボタンである。本実施形態では、レバーボタンLBは、操作装置26としての操作レバーの先端に設けられたボタンである。ショベル100の操作者は、操作レバーを操作しながらレバーボタンLBを操作できる。操作者は、例えば、操作レバーを手で握った状態でレバーボタンLBを親指で押すことができる。
次に、図4を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図4は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。図4は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、制御弁60等を含む。
図4において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させている。
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁1756を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右パイロットポートに作動油を導入させる。
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左パイロットポートに作動油を導入させる。
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
同様に、操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、操作圧センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
ここで、絞り18と制御圧センサ19を用いたネガティブコントロール制御について説明する。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
具体的には、図4で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
上述のような構成により、図4の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、図4の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
制御弁60は、操作装置26の有効状態と無効状態とを切り換えるように構成されている。本実施形態では、制御弁60は、スプール式電磁弁であり、コントローラ30からの電流指令に応じて動作するように構成されている。操作装置26の有効状態は、操作者が操作装置26を操作することで関連する被駆動体を動かすことができる状態であり、操作装置26の無効状態は、操作者が操作装置26を操作しても関連する被駆動体を動かすことができない状態である。
本実施形態では、制御弁60は、パイロットポンプ15と操作装置26とを繋ぐパイロットラインCD1の連通状態と遮断状態とを切り換え可能な電磁弁である。具体的には、制御弁60は、コントローラ30からの指令に応じてパイロットラインCD1の連通状態と遮断状態とを切り換えるように構成されている。より具体的には、制御弁60は、第1弁位置になったときにパイロットラインCD1を連通状態とし、第2弁位置になったときにパイロットラインCD1を遮断状態とする。図4は、制御弁60が第1弁位置となっていること、及び、パイロットラインCD1が連通状態となっていることを示している。
制御弁60は、不図示のゲートロックレバーに連動するように構成されていてもよい。具体的には、ゲートロックレバーが押し下げられたときにパイロットラインCD1を遮断状態にし、ゲートロックレバーが引き上げられたときにパイロットラインCD1を連通状態にするように構成されていてもよい。また、制御弁60は、複数の操作装置26のそれぞれの有効状態と無効状態とを別々に切り換えできるように構成されていてもよい。
上述の油圧システムを利用し、コントローラ30は、必要に応じてショベル100の駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。駆動部の制動を自動的に実行することは、例えば、その駆動部に関する操作装置26が操作されている場合であっても、その駆動部の動きを強制的に減速させ或いは停止させることを含んでいてもよい。
コントローラ30は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。この場合、駆動部は、例えば、旋回用油圧モータ2A及び走行用油圧モータ2Mの少なくとも1つを含んでいてもよい。駆動部の制動は、例えば、操作装置26が操作されている状態で、制御弁60によってパイロットラインCD1を連通状態から遮断状態に切り換えることで実現される。操作されている状態の操作装置26に対応する制御弁が中立弁位置に戻るためである。なお、駆動部の制動は、駆動部の動作速度を低下させること、及び、駆動部の動きを停止させることの少なくとも1つを含んでいてもよい。
コントローラ30は、駆動部の制動を実行している場合に、所定の条件が満たされたときに、駆動部の制動を解除できるように構成されていてもよい。
「駆動部の制動を実行している場合」は、例えば、駆動部の動作速度を低下させている場合、駆動部の動きを停止させた場合、及び、駆動部の停止を維持している場合を含んでいてもよい。具体的には、「駆動部の制動を実行している場合」は、制御弁60が第1弁位置と第2弁位置の間に位置している場合、及び、制御弁60が第2弁位置に位置している場合を含んでいてもよい。但し、駆動部の動作速度を低下させている場合、すなわち、制御弁60が第1弁位置と第2弁位置の間に位置している場合は除かれてもよい。
「所定の条件が満たされたとき」は、例えば、操作者が操作継続の意思を有すると判定したときであってもよい。コントローラ30は、例えば、走行レバー26Dが後進方向に操作されているときに走行用油圧モータ2Mを制動させたケースでは、走行レバー26Dが後進方向に再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。この場合、「再操作」は、走行レバー26Dを中立位置に戻した後で再び後進方向に操作することであってもよく、中立位置を超えて走行レバー26Dを前進方向に操作した後で再び後進方向に操作することであってもよく、走行レバー26Dを中立位置の方向に操作した後で再び後進方向に操作することであってもよい。
この場合、コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。或いは、コントローラ30は、キャビン10内の操作者を撮像する室内撮像装置等の操作圧センサ29以外の他の装置の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26が所定の操作方法で操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、左操作レバー26Lが右旋回方向に操作されているときに旋回用油圧モータ2Aを制動させたケースでは、左操作レバー26Lを左右に2往復操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。具体的には、左旋回方向、右旋回方向、左旋回方向及び右旋回方向の順で左操作レバー26Lが操作されたときに、左操作レバー26Lが所定の操作方法で操作されたとして、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26に設けられているレバーボタンLBが押された状態でその操作装置26が再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、右操作レバー26Rがブーム下げ方向に操作されているときにブームシリンダ7を制動させたケースでは、右操作レバー26Rに設けられたレバーボタンLBが押された状態で右操作レバー26Rがブーム下げ方向に再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。
次に、図5を参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。図5は、油圧システムの一部を抜き出した図であり、図5(A)~図5(D)を含む。具体的には、図5(A)は、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図5(B)は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。また、図5(C)は、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図5(D)は、旋回用油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図5に示すように、油圧システムは、比例弁31及びシャトル弁32を含む。比例弁31は、比例弁31AL~31DL及び31AR~31DRを含み、シャトル弁32は、シャトル弁32AL~32DL及び32AR~32DRを含む。
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有する。2つの入口ポートのうちの1つは操作装置26に接続され、他方は比例弁31に接続されている。出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
例えば、図5(A)に示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
操作圧センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31ALは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31ARは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31AL、31ARは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を開くことができる。
また、図5(B)に示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して制御弁175Lの左側パイロットポート及び制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BL、31BRは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を下げることができる。
また、図5(C)に示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31CLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CL、31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を開くことができる。
また、図5(D)に示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DL、31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を左旋回させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を右旋回させることができる。
ショベル100は、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行用油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、及び、右走行用油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
次に、図6を参照し、コントローラ30の機能について説明する。図6は、コントローラ30の機能ブロック図である。図6の例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、物体検知装置70、撮像装置80及びスイッチNS等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置DS及び音声出力装置D2等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5を含む。コントローラ30は、位置算出部30A、軌道取得部30B、自律制御部30C及び較正部30Dを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントの所定部位の基準座標系における座標点を算出する。所定部位は、例えば、バケット6の爪先である。基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部30Aは、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点を算出してもよい。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
軌道取得部30Bは、ショベル100を自律的に動作させるときにアタッチメントの所定部位が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。本実施形態では、軌道取得部30Bは、自律制御部30Cがショベル100を自律的に動作させるときに利用する目標軌道を取得する。軌道取得部30Bは、アタッチメントの所定部位の現在位置と目標施工面に関するデータとに基づいて目標軌道を導き出してもよい。後述の較正モードで用いる目標軌道は、ショベル100の設定の適否を評価し易くするために直線的に形成されていることが好ましい。
自律制御部30Cは、ショベル100を自律的に動作させるように構成されている。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させるように構成されている。具体的には、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させる。
本実施形態では、自律制御部30Cは、アクチュエータを自律的に動作させることで操作者によるショベルの手動操作を支援するように構成されている。例えば、自律制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の爪先を目標軌道に一致させながら、アーム5を閉じることができる。この例では、主な操作対象であるアームシリンダ8は「主要アクチュエータ」と称される。また、主要アクチュエータの動きに応じて動く従動的な操作対象であるブームシリンダ7及びバケットシリンダ9は「従属アクチュエータ」と称される。
本実施形態では、自律制御部30Cは、比例弁31に電流指令を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自律的に動作させることができる。例えば、右操作レバー26Rが傾倒されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
較正部30Dは、自律制御の実行に関する構成要素の較正を支援する。本実施形態では、較正部30Dは、自律制御部30Cが目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させたときの所定部位の位置の推移を表示装置DSに表示させるように構成されている。所定部位の実際の移動軌跡と目標軌道とのズレの大きさを、較正を行う作業者(以下、「較正者」とする。)に認識させることができるようにするためである。
較正者は、例えば、スイッチパネルDS2に設けられた較正開始ボタンを押すことで、較正部30Dによる較正を開始させることができる。較正開始ボタンが押されると、較正部30Dは、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に関する情報を含む較正画面を表示装置DSに表示させる。較正部30Dは、較正者が複数の目標軌道から1つの目標軌道を選択できるように構成されていてもよい。この場合、目標軌道は、例えば、水平引き作業に関する較正用の目標軌道、法面作業に関する較正用の目標軌道、及び、深掘り作業に関する較正用の目標軌道等の少なくとも1つを含む。較正部30Dは、目標軌道を選択するための画面を表示装置DSに表示させてもよい。較正者は、例えば、表示装置DSに表示された複数の目標軌道のそれぞれに対応するアイコンの1つを選択することで、所望の目標軌道を選択できる。
較正画面が表示された状態で、較正者であるショベル100の操作者は、例えば、スイッチNSを押しながら操作装置26を操作して自律制御を実行する。例えば、水平引き作業に関する較正用の目標軌道が選択されている場合、較正者は、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作することで、バケット6の爪先を目標軌道に沿って移動させることができる。水平引き作業に関する較正は、典型的には、掘削アタッチメントを空中で動作させることで行われる。但し、バケット6の爪先を実際に土砂等の被掘削物に接触させた状態で行われてもよい。
位置算出部30Aは、所定の制御周期で繰り返しバケット6の爪先の座標点を算出する。較正部30Dは、較正画面において、目標軌道と共に、バケット6の爪先の座標点の推移を移動軌跡として表示させる。
図7は、水平引き作業に関する較正が行われているときのショベル100の状態を示す。図8は、水平引き作業に関する較正が行われているときに表示装置DSに表示される較正画面の表示例を示す。図7及び図8の例では、水平引き作業に関する較正は、アタッチメントを空中で動作させることで、すなわち、掘削アタッチメントの所定部位であるバケット6の爪先が接地していない状態で行われる。そのため、ショベル100は、接地対象としての地面から反力を受けない状態、つまり、バケット6が地面から離間した状態にある。
操作者は、表示装置DSに表示された較正画面を用い、較正を行う際に利用される動作モードである較正モードを選択する。その後、操作者は、水平引き作業に関する較正用の目標軌道TPを選択する。これにより、ショベル100は、図7に示すように、操作者によりスイッチNSが押された状態で左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、掘削アタッチメントを自律制御する。具体的には、一点鎖線で示される目標軌道TPに沿ってバケット6の爪先を移動させる。なお、この自律制御は、左操作レバー26Lがアーム開き方向に操作されたときに実行されてもよく、右操作レバー26Rが操作されたときに実行されてもよい。また、この自律制御は、操作者が所定のスイッチをONにすることで実行されてもよい。
本実施形態では、目標軌道TPは、始点Ps(Xs、Ys、Zs)から終点Pe(Xe、Ye、Ze)まで伸びる線分として表される。「Xs」は、XYZ直交座標系における始点PsのX座標であり、「Ys(=0)」は、始点PsのY座標であり、「Zs」は、始点PsのZ座標である。また、「Xe」は、終点PeのX座標であり、「Ye(=0)」は、終点PeのY座標であり、「Ze」は、終点PeのZ座標である。バケット6の爪先は、時点tsにおいて始点Psにあり、時点teにおいて終点Peにある。なお、XYZ直交座標系の原点Oは、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。
実線で示す掘削アタッチメントは、時点t1における掘削アタッチメントの姿勢を示す。バケット6の爪先は、時点t1において点P1にある。破線で示す掘削アタッチメントは、時点t2における掘削アタッチメントの姿勢を示す。バケット6の爪先は、時点t2において点P2にある。点線で示す掘削アタッチメントは、時点t3における掘削アタッチメントの姿勢を示す。バケット6の爪先は、時点t3において点P3にある。
較正部30Dは、水平引き作業に関する較正用の目標軌道TPが選択されたときに、バケット6の爪先を始点Psに自動的に移動させてもよい。
また、アーム閉じ動作は自動的に行われてもよい。この場合、較正者は、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾倒させる必要はない。すなわち、較正者は、左操作レバー26Lを操作することなく、水平引き作業に関する較正を行うことができる。具体的には、較正部30Dは、比例弁31ALに電流指令を出力し、制御弁176のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することで、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に実際に傾倒されたときと同様のパイロット圧を生成できる。なお、自律制御部30Cは、アーム閉じ動作が自動的に行われている場合であっても、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に傾倒された場合と同様に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させる。そして、較正部30Dは、バケット6の爪先が終点Peに達した時点で、掘削アタッチメントの動きを停止させる。
較正者は、水平引き作業に関する較正が行われた後で、すなわちバケット6の爪先が終点Peに達した後で、表示装置DSに表示されている較正画面を見ることで、バケット6の爪先の実際の移動軌跡と目標軌道TPとのズレの大きさを認識できる。
較正画面は、例えば図8に示すように、第1グラフ画像G1及び第2グラフ画像G2を含む。
第1グラフ画像G1は、水平距離と誤差との関係を示す。本実施形態では、横軸に配される水平距離は、ショベル100の旋回軸からの距離を表し、縦軸に配される誤差は、バケット6の爪先と目標軌道TPとの間の鉛直距離を表す。誤差に関し、正値はバケット6の爪先が目標軌道TPよりも鉛直上方にあることを表し、負値はバケット6の爪先が目標軌道TPよりも鉛直下方にあることを表す。但し、第1グラフ画像G1の縦軸は、高さ(バケット6の爪先のZ座標)に対応していてもよい。また、第1グラフ画像G1の横軸は時間軸であってもよい。また、水平距離は、掘削アタッチメントの最大水平到達点を原点としたときのその原点からの距離であってもよい。
第1グラフ画像G1において、白丸G10は時点tsにおける誤差を表し、黒丸G11は時点t1における誤差を表し、黒丸G12は時点t2における誤差を表し、黒丸G13は時点t3における誤差を表し、白丸G14は時点teにおける誤差を表す。これらは、説明のためのものであり、実際には表示されない。
第1グラフ画像G1における実線波形は、目標軌道TPに沿って始点Psから終点Peまでバケット6の爪先を移動させたときの誤差の推移を表す。実線波形は、白丸G10から黒丸G11、黒丸G12及び黒丸G13を経て白丸G14まで延びている。
第1グラフ画像G1における一点鎖線は、上限線G15及び下限線G16を示す。上限線G15は誤差の許容範囲の上限を表し、下限線G16は誤差の許容範囲の下限を表す。誤差が許容範囲から逸脱したことを認識した場合、較正者は、自律制御の実行に関する構成要素の較正が適切に行われていないと判断できる。
第2グラフ画像G2は、パイロット圧の時間的推移を示す。本実施形態では、縦軸に配されるパイロット圧は、アームシリンダ8に関する制御弁176に作用するパイロット圧を表す。
第2グラフ画像G2において、白丸G20は時点tsにおけるパイロット圧を表し、黒丸G21は時点t1におけるパイロット圧を表し、黒丸G22は時点t2におけるパイロット圧を表し、黒丸G23は時点t3におけるパイロット圧を表し、白丸G24は時点teにおけるパイロット圧を表す。これらは、説明のためのものであり、実際には表示されない。
第2グラフ画像G2における実線波形は、目標軌道TPに沿って始点Psから終点Peまでバケット6の爪先を移動させたときのパイロット圧の時間的推移を表す。実線波形は、白丸G20から黒丸G21、黒丸G22及び黒丸G23を経て白丸G24まで延びている。
第2グラフ画像G2における破線は、上限線G25及び下限線G26を示す。上限線G25はパイロット圧の許容範囲の上限を表し、下限線G26はパイロット圧の許容範囲の下限を表す。パイロット圧が許容範囲から逸脱したことを認識した場合、較正者は、自律制御の実行に関する構成要素の較正が適切に行われていないと判断できる。左操作レバー26Lの操作量が大き過ぎた或いは小さ過ぎたと判断できるためである。また、ショベル100が較正モードの際に、ショベル100から所定の距離範囲内に物体が存在する場合には、バケット6を停止させてもよい。この場合、較正は一時停止され、物体が所定の距離範囲外へ移動した後、一時停止が解除される。
図8の較正画面を見た較正者は、誤差が許容範囲内に収まっており、且つ、パイロット圧も許容範囲内に収まっていることを認識できる。そのため、自律制御の実行に関する構成要素の較正が適切に行われていることを認識できる。
較正部30Dは、誤差又はパイロット圧が許容範囲を逸脱したと判定した場合、その旨を較正者に報知してもよい。
図9は、水平引き作業に関する較正が行われているときに表示装置DSに表示される較正画面の別の表示例を示す。
図9の表示例では、第1グラフ画像G1において、白丸G17は時点tsにおける誤差を表し、黒丸G18は時点t4における誤差を表し、白丸G19は時点teにおける誤差を表す。また、第2グラフ画像G2において、白丸G27は時点tsにおけるパイロット圧を表し、黒丸G28は時点t4におけるパイロット圧を表し、白丸G29は時点teにおけるパイロット圧を表す。これらは、説明のためのものであり、実際には表示されない。
第2グラフ画像G2に示すように、アームシリンダ8に関する制御弁176に作用するパイロット圧は、時点tsから時点teを通じて許容範囲内に収まっている。そのため、第2グラフ画像G2を見た較正者は、較正の際に左操作レバー26Lが適切に操作されたことを認識できる。
しかしながら、第1グラフ画像G1に示すように、バケット6の爪先と目標軌道TPとの間の鉛直距離を表す誤差は、時点t4において、下限線G16を超えて-35[mm]となっている。
この場合、較正部30Dは、誤差が許容範囲を逸脱したことを較正者に報知してもよい。自律制御の実行に関する構成要素の厳密な較正をやり直すように較正者を促すためである。なお、厳密な較正は、較正部30Dによって支援される上述のような簡易な較正以外の較正を意味し、例えば、計器等を用いた構成要素の動きの測定、及び、構成要素の交換等を含む。本実施形態では、較正部30Dは、較正画面上に警告画像G3を重畳表示するように構成されている。警告画像G3は、例えば、図9に示すような「誤差が下限を超えました」といったテキストメッセージであってもよく、誤差が許容範囲を逸脱したことを表す図形等であってもよい。較正部30Dは、音声出力装置D2から警報を出力させてもよい。厳密な較正のやり直しの対象となる構成要素は、例えば、ブームシリンダ7に関する比例弁31AL、比例弁31AR、制御弁176L及び制御弁176R等の少なくとも1つを含む。誤差が許容範囲を超えた原因の1つとして、ブーム上げ動作の開始時におけるブームシリンダ7の伸長の遅れが挙げられるためである。但し、厳密な較正のやり直しの対象となる構成要素は、比例弁31BL、31BR、31CL、31CR、アームシリンダ8に関する制御弁176、及び、バケットシリンダ9に関する制御弁174等の少なくとも1つであってもよい。
較正部30Dは、通常、第1グラフ画像G1における黒丸G18、及び、第2グラフ画像G2における黒丸G28を表示させていないが、誤差又はパイロット圧が許容範囲から逸脱した場合には、その時点が特定され得るようにそれらを表示させてもよい。
また、較正部30Dは、誤差の波形に基づき、自律制御の実行に関するパラメータを自動的に補正するように構成されていてもよい。例えば、図9に示すように、バケット6の爪先の移動を開始させた直後の水平距離9メートル付近において誤差が負方向に急増して許容範囲を超えた場合、較正部30Dは、ブーム上げ動作の応答速度が遅いことを原因として推定できる。この場合、較正部30Dは、例えば、ブームシリンダ7の制御に関するパラメータの一例であるブームゲインを調整する(例えば高くする)ことで、ブーム上げ動作の応答速度を速めることができる。ブームゲインは、例えば、PID制御における比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインの少なくとも1つを含む。
次に、図10及び図11を参照し、水平引き作業以外の他の作業に関する較正で利用される目標軌道TPについて説明する。図10は、法面作業に関する較正が行われているときのショベル100の状態を示す。図11は、深掘り作業に関する較正が行われているときのショベル100の状態を示す。
図10に示すように、ショベル100は、法面作業に関する較正用の目標軌道TP1が選択された後で、スイッチNSが押された状態で左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、掘削アタッチメントを自律制御する。具体的には、一点鎖線で示される目標軌道TP1に沿ってバケット6の爪先を移動させる。なお、自律制御は、左操作レバー26Lがアーム開き方向に操作されたときに実行されてもよく、右操作レバー26Rが操作されたときに実行されてもよい。
図10の例では、目標軌道TP1は、始点Ps(Xs、Ys、Zs)から終点Pe(Xe、Ye、Ze)まで伸びる線分として表される。また、目標軌道TP1と水平面との間には法面角度としての角度αが形成されている。バケット6の爪先は、時点tsにおいて始点Psにあり、時点teにおいて終点Peにある。実線で示す掘削アタッチメントは、時点tsと時点teとの間の時点t11における掘削アタッチメントの姿勢を示す。バケット6の爪先は、時点t11において点P11にある。較正部30Dは、法面作業に関する較正用の目標軌道TP1が選択されたときに、バケット6の爪先を始点Psに自動的に移動させてもよい。
また、アーム閉じ動作は自動的に行われてもよい。この場合、較正者は、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾倒させる必要はない。すなわち、較正者は、左操作レバー26Lを操作することなく、法面作業に関する較正を行うことができる。
較正者は、法面作業に関する較正が行われた後で、すなわちバケット6の爪先が終点Peに達した後で、表示装置DSに表示されている較正画面を見ることで、バケット6の爪先の実際の移動軌跡と目標軌道TP1とのズレの大きさを認識できる。
また、図11に示すように、ショベル100は、深掘り作業に関する較正用の目標軌道TP2が選択された後で、スイッチNSが押された状態で左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、掘削アタッチメントを自律制御する。具体的には、一点鎖線で示される目標軌道TP2に沿ってバケット6の爪先を移動させる。なお、自律制御は、左操作レバー26Lがアーム開き方向に操作されたときに実行されてもよく、右操作レバー26Rが操作されたときに実行されてもよい。
図11の例では、目標軌道TP2は、始点Ps(Xs、Ys、Zs)から終点Pe(Xe、Ye、Ze)まで伸びる水平な線分として表される。バケット6の爪先は、時点tsにおいて始点Psにあり、時点teにおいて終点Peにある。実線で示す掘削アタッチメントは、時点tsと時点teとの間の時点t21における掘削アタッチメントの姿勢を示す。バケット6の爪先は、時点t21において点P21にある。較正部30Dは、深掘り作業に関する較正用の目標軌道TP2が選択されたときに、バケット6の爪先を始点Psに自動的に移動させてもよい。
また、アーム閉じ動作は自動的に行われてもよい。この場合、較正者は、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾倒させる必要はない。すなわち、較正者は、左操作レバー26Lを操作することなく、深掘り作業に関する較正を行うことができる。
較正者は、深掘り作業に関する較正が行われた後で、すなわちバケット6の爪先が終点Peに達した後で、表示装置DSに表示されている較正画面を見ることで、バケット6の爪先の実際の移動軌跡と目標軌道TP2とのズレの大きさを認識できる。
このように、本発明の実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられたアタッチメントと、アタッチメントを動作させる複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータを動作させてアタッチメントの所定部位を直線的な所定軌道に沿って移動させるように構成された制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。そして、コントローラ30は、空中において所定部位を所定軌道に沿って移動させたときの所定部位の位置を所定の制御周期で繰り返し算出し、且つ、所定部位の位置の推移を表示装置DSに表示させる。
複数のアクチュエータは、例えば、掘削アタッチメントを動作させるブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9であってもよい。この場合、コントローラ30は、操作装置26の一例である左操作レバー26Lのアーム閉じ方向への操作に応じて複数のアクチュエータを動作させて掘削アタッチメントの所定部位であるバケット6の爪先を目標軌道TPに沿って移動させてもよい。
このように、ショベル100は、目標軌道TPに沿ってバケット6の爪先を移動させたときにバケット6の爪先の位置を所定の制御周期で繰り返し算出することで、バケット6の爪先の位置の推移を表示装置DSに表示させることができる。具体的には、ショベル100は、バケット6の爪先と目標軌道TPとの間の鉛直距離である誤差の推移をデジタル表示ではなく波形で表示させることができる。そのため、較正者は、バケット6の爪先の位置の推移が、目標軌道TPに関する適切な範囲内に収まっているか否かを容易に判断できる。
コントローラ30は、所定部位と所定軌道との間の距離が所定値を超えたか否かを判定するように構成されていてもよい。例えば、バケット6の爪先と目標軌道TPとの間の鉛直距離が所定値を超えたか否かを判定するように構成されていてもよい。そして、その鉛直距離が所定値を超えたと判定した場合、その旨を較正者に報知するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ30は、自律制御の実行に関する構成要素の較正が適切に行われていないおそれがあるという事実を較正者により確実に知らせることができる。
また、コントローラ30は、操作装置26が生成するパイロット圧の推移を表示させるように構成されていてもよい。例えば、水平引き作業、法面作業又は深掘り作業等に関する較正が行われたときに左操作レバー26Lが生成するアームシリンダ8に関する制御弁176に作用するパイロット圧の推移を、誤差の推移と共に、表示装置DSに表示させてもよい。この構成により、較正者は、較正の際に操作装置26が適切に操作されていたか否かを容易に確認することができる。そのため、操作装置26が適切に操作されなかったときに得られたデータに基づいて較正の適否が判断されてしまうのを防止できる。
また、コントローラ30は、所定部位と所定軌道との間の距離が所定値を超えた場合に複数のアクチュエータの少なくとも1つの動きを調整するように構成されていてもよい。例えば、バケット6の爪先と目標軌道TPと間の鉛直距離が所定値を超えたと判定した場合に、自律制御で動かされるブームシリンダ7の応答速度を調整するように構成されていてもよい。この構成により、較正者は、自律制御の実行に関する構成要素の厳密な較正をやり直すことなく、アクチュエータの動きを調整することで、バケット6の爪先の位置の推移を、目標軌道TPに関する適切な範囲内に収めることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
例えば、上述の実施形態では、油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作レバーが開示されている。例えば、左操作レバー26Lに関する油圧式パイロット回路では、パイロットポンプ15から左操作レバー26Lへ供給される作動油が、左操作レバー26Lのアーム開き方向への傾倒によって開閉されるリモコン弁の開度に応じた流量で、制御弁176L、176Rのパイロットポートへ伝達される。或いは、右操作レバー26Rに関する油圧式パイロット回路では、パイロットポンプ15から右操作レバー26Rへ供給される作動油が、右操作レバー26Rのブーム上げ方向への傾倒によって開閉されるリモコン弁の開度に応じた流量で、制御弁175L、175Rのパイロットポートへ伝達される。
但し、このような油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作レバーではなく、電気式パイロット回路を備えた電気式操作レバーが採用されてもよい。この場合、電気式操作レバーのレバー操作量は、例えば、電気信号としてコントローラ30へ入力される。また、パイロットポンプ15と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置される。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、電気式操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。
また、ショベル100による作業は、外部の管理装置を通じて管理されてもよく、外部の携帯端末(支援装置)を通じて支援されてもよい。ここで、図12を参照し、ショベル100を管理し且つ/或いは支援するための管理・支援システムについて説明する。図12は、管理・支援システムの一例を示す概略図である。図12で示すように、管理・支援システムは、ショベル100、管理装置FS及び携帯端末MS(支援装置)を含む。ショベル100、管理装置FS及び携帯端末MSは、通信ネットワークCNを通じて互いに接続される通信端末として機能する。管理・支援システムを構成するショベル100、管理装置FS及び携帯端末MSは、それぞれ1台であってもよく、複数台であってもよい。図12の例では、管理・支援システムは、1台のショベル100と、1台の管理装置FSと、1台の携帯端末MSと、を含む。
ショベル100は通信装置D1を有する。通信装置D1はショベル100の外部に向けて情報を発信する。通信装置D1は、例えば、管理装置FS及び携帯端末MSの少なくとも一方が受信可能な情報を発信する。
管理装置FSは、ショベル100の作業を管理する装置であり、例えば、作業現場外の管理センタ等に設置される、表示装置を備えたコンピュータである。管理装置FSは、使用者が持ち運び可能な可搬性のコンピュータであってもよい。携帯端末MSは、表示装置を備えた通信端末であり、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等を含む。
例えば、ショベル100において水平引き作業に関する較正が行われた場合、通信装置D1は、通信ネットワークCNを介して管理装置FS及び携帯端末MSの少なくとも1つに情報を発信する。この情報は、較正画面を表示するために必要な情報を含む。管理装置FS及び携帯端末MSは、それらの情報を受信して較正画面を付属の表示装置に表示する。これにより、ショベル100の管理者等は、管理装置FS及び携帯端末MSの少なくとも一方を用いて水平引き作業に関する較正の結果を確認できる。