JP2021008615A - ダイシングテープ基材用樹脂、それを含む樹脂組成物、ダイシングテープ基材及びダイシングテープ - Google Patents

ダイシングテープ基材用樹脂、それを含む樹脂組成物、ダイシングテープ基材及びダイシングテープ Download PDF

Info

Publication number
JP2021008615A
JP2021008615A JP2020112733A JP2020112733A JP2021008615A JP 2021008615 A JP2021008615 A JP 2021008615A JP 2020112733 A JP2020112733 A JP 2020112733A JP 2020112733 A JP2020112733 A JP 2020112733A JP 2021008615 A JP2021008615 A JP 2021008615A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
dicing tape
copolymer
structural unit
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020112733A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7501157B2 (ja
Inventor
小西 宏明
Hiroaki Konishi
宏明 小西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Polypropylene Corp
Japan Polyethylene Corp
Original Assignee
Japan Polypropylene Corp
Japan Polyethylene Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Polypropylene Corp, Japan Polyethylene Corp filed Critical Japan Polypropylene Corp
Publication of JP2021008615A publication Critical patent/JP2021008615A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7501157B2 publication Critical patent/JP7501157B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Container, Conveyance, Adherence, Positioning, Of Wafer (AREA)
  • Polymerization Catalysts (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Dicing (AREA)

Abstract

【課題】 エキスパンド性を維持しながら切削屑の低減の観点でより優れた、ダイシングテープ提供する。【解決手段】 エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)を必須構成単位として含む共重合体(P)中の、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されてなり、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δが、50度〜75度であることを特徴とするアイオノマーを含んでなることを特徴とするダイシングテープ基材用樹脂である。【選択図】 なし

Description

本発明は、半導体ウェハや半導体パッケージ等を切断する際に使用するダイシングテープに関するものである。
半導体ウェハや各種パッケージ類は大径の状態で製造され、ダイシングテープの上に貼着固定された状態で、小さな半導体チップに切断(ダイシング)、分離される。ダイシングテープに求められる性能としては、ダイシングの際にダイシングテープ樹脂由来の切削屑が少ないこと、分離を行う際に半導体チップの間隔を広げるためにダイシングテープを引っ張るので、エキスパンド性能が良いこと、の2点が主に挙げられる。
ダイシングテープの材料としては各種のものがあり、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂を用いる事が提案されているが、切削屑が少ないことと良好なエキスパンド性能をバランスよく両立させることについて、さらなる改良が望まれている。(特許文献1)
エチレン系アイオノマーは、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体をベース樹脂とし、ナトリウムや亜鉛等の金属イオンで分子間結合した樹脂である(特許文献2)。強靭で弾性に富み、かつ柔軟性があり、耐摩耗性、及び透明性等の特徴がある。
現在、市販されているエチレン系アイオノマーとしては、Dupont社が開発したエチレン−メタクリル酸共重合体のナトリウム塩や亜鉛塩「Surlyn(登録商標)」、及び、三井・ダウポリケミカル社が販売している「ハイミラン(登録商標)」等が知られている。
しかしながら、これら現在市販されているエチレン系アイオノマーに用いられるベース樹脂のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体には、いずれも、エチレンと不飽和カルボン酸等の極性基含有モノマーを、高圧ラジカル重合法により重合した極性基含有オレフィン共重合体が用いられている。高圧ラジカル重合法は、比較的極性基含有モノマーの種類を選ばずに安価に重合可能であるという利点がある。しかし、この、高圧ラジカル重合法で製造される極性基含有オレフィン共重合体の分子構造は、図1に示すイメージ図のように、多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に有する構造であり、強度的には不十分であるという欠点がある。
一方、従来より、触媒を用いた重合方法を用いて、図2に示すイメージ図のように、分子構造が直鎖状の極性基含有オレフィン共重合体を製造する方法が模索されていたが、極性基含有モノマーは一般的に触媒毒となるため重合が難しく、実際に、工業的に安価で安定的な方法で、所望の物性を有する極性基含有オレフィン共重合体を得ることは長年難しいとされていた。
しかしながら近年、本願出願人等により開発された新触媒及び新製造方法を用いることにより、分子構造が実質的に直鎖状の極性基含有オレフィン共重合体を、工業的に安価で安定的に得る方法が提案されている。
そして、エチレン系アイオノマーのベース樹脂となる極性基含有オレフィン共重合体の製造方法として、後周期遷移金属触媒を用い、エチレンとアクリル酸t−ブチルの共重合体を製造し、得られた極性基含有オレフィン共重合体を熱又は酸処理を行うことでエチレン−アクリル酸共重合体に変性した後、金属イオンと反応させ二元アイオノマーを製造することに成功したことが本願出願人等により報告されている(特許文献3)。
特開2017−152499号公報 米国特許第3264272号明細書 特開2016−79408号公報
ダイシングテープには、少なくともエキスパンド性と切削屑の低減ができることが求められる。特に切削屑は、微細化が進む半導体チップにおいては少量でも品質に影響する問題のため、改良が求められている点である。しかしながら特許文献2記載のような従来のアイオノマーは、強度が不十分であり、本発明者らが見出したところによると、切削を伴わない条件でも摩耗するものであることが明らかになっており、この問題の解決には至っていなかった。
本願は、かかる従来技術の状況に鑑み、従来の高圧ラジカル重合法で製造したアイオノマーから成るダイシングテープと比較して、エキスパンド性を維持しながら切削屑の低減の観点でより優れた、新規アイオノマーを用いたダイシングテープ提供することを目的とする。
本発明者は、ダイシングテープの切削屑について鋭意検討した結果、アイオノマー樹脂を用いたダイシングテープにおける切削屑の発生には樹脂の摩耗性が関係しており、摩耗量が小さいほど切削屑が少なる事を見出した。特許文献3記載のエチレン系アイオノマーは、ベース樹脂が実質的に直鎖状の分子構造を有すると共にアイオノマーとしての機能も有する、従来にはない新規のエチレン系アイオノマーであり、その物性等は従来のエチレン系アイオノマーとは大きく異なり、特有の特性及び適した用途についても未知であったが、該アイオノマーが対摩耗性に優れるため、ダイシングテープにおいて、該アイオノマーを含有してなることを特徴とするダイシングテープを用いると、エキスパンド性を維持しながら、切削屑が減少し、切削屑の観点で、その性能が向上することを見出した。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[10]に関する。
[1]下記アイオノマーからなることを特徴とするダイシングテープ基材用樹脂である。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)を必須構成単位として含む共重合体(P)中の、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されてなり、
回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50度〜75度であることを特徴とするアイオノマー。
[2]前記共重合体(P)の13C−NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり50個以下であることを特徴とする、[1]記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[3]前記共重合体(P)の13C−NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり5個以下であることを特徴とする、[1]記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[4]前記共重合体(P)が、共重合体中に前記構造単位(B)を2〜20mol%含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[5]前記構造単位(A)が、エチレンに由来する構造単位であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[6]前記共重合体(P)が周期表第8〜11族の遷移金属を含む遷移金属触媒を用いて製造されることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[7]前記遷移金属触媒がリンスルホン酸又はリンフェノール配位子とニッケル又はパラジウムからなる遷移金属触媒であることを特徴とする、[6]に記載のダイシングテープ基材用樹脂である。
[8](a)前記[1]〜[7]のいずれかのダイシングテープ基材用樹脂と、(b)ポリオレフィン樹脂とを含む、ダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
[9]前記[1]〜[7]のいずれかのダイシングテープ基材用樹脂又は前記[8]のダイシングテープ基材用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする、ダイシングテープ基材である。
[10]前記[9]のダイシングテープ基材を有することを特徴とする、ダイシングテープである。
実質的に直鎖状構造である本発明のアイオノマーを用いたダイシングテープは、従来の高圧ラジカル法で作製されたダイシングテープに比べ、エキスパンド性を維持しながら、切削屑の低減の観点で優れる。
高圧ラジカル法重合プロセスにより重合された多分岐状オレフィン共重合体の分子構造のイメージ図である。 金属触媒を用いて重合された直鎖状オレフィン共重合体の分子構造のイメージ図である。 本発明のダイシングテープの層構造の一例を表す図である。 本発明のダイシングテープの層構造の一例を表す図である。
本発明はエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として、さらに場合により分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有する化合物である構造単位(C)を構成単位として含み、これらが実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合した共重合体(P)をベース樹脂とし、該構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されていることを特徴とするアイオノマーを用いたダイシングテープ基材用樹脂、ダイシングテープ基材及びダイシングテープである。
以下、本発明に関わるアイオノマー、アイオノマーを用いたダイシングテープ及び、その用途などについて、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、共重合体とは、少なくとも一種の単位(A)と、少なくとも一種の単位(B)とを含む、二元系以上の共重合体を意味する。
また、本明細書において、アイオノマーとは、前記構造単位(A)と、前記構造単位(B)の少なくとも一部が金属含有カルボン酸塩に変換されている構造単位(B’)とを含み、更に前記構造単位(B)を含んでいてもよい、2元系以上の共重合体のアイオノマーを意味する。
1.アイオノマー
本発明のアイオノマーは、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として、さらに場合により分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有する化合物である構造単位(C)を構成単位として含み、これらが実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合した共重合体(P)をベース樹脂とし、該構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されていることを特徴とする。
(1)構造単位(A)
構造単位(A)はエチレンに由来する構造単位及び炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位である。
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。α−オレフィンの炭素数は、より好ましくは、3〜12である。
構造単位(A)の具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、及び4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、エチレンであってもよい。エチレンとしては、石油原料由来の他、植物原料由来等の非石油原料由来のエチレンを用いることができる。
また、構造単位(A)は、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
二種の組み合わせとしては、例えば、エチレン−プロピレン、エチレン−1−ブテン、エチレン−1−ヘキセン、エチレン−1−オクテン、プロピレン−1−ブテン、プロピレン−1−ヘキセン、及びプロピレン−1−オクテン等が挙げられる。
三種の組み合わせとしては、例えば、エチレン−プロピレン−1−ブテン、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン、エチレン−プロピレン−1−オクテン、プロピレン−1−ブテン−ヘキセン、及びプロピレン−1−ブテン−1−オクテン等が挙げられる。
本発明においては、構造単位(A)としては、好ましくは、エチレンを必須で含み、必要に応じて1種以上の炭素数3〜20のα−オレフィンをさらに含んでもよい。
構造単位(A)中のエチレンは、構造単位(A)の全molに対して、65〜100mol%であってもよく、70〜100mol%であってもよい。
耐衝撃性の点から前期構造単位(A)が、エチレンに由来する構造単位であってもよい。
(2)構造単位(B)
構造単位(B)は、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位である。なお、構造単位(B)は、カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位と同じ構造であることを表し、後述の製造方法において述べるように、必ずしもカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いて製造されたものでなくてもよい。
カルボキシル基を有するモノマーに由来する構造単位としては例えば、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位としては例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位として、工業的入手の容易さの点から好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が挙げられ、特にアクリル酸であってもよい。
また、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位は、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
なお、ジカルボン酸無水物基は空気中の水分と反応して開環し、一部がジカルボン酸となる場合があるが、本発明の主旨を逸脱しない範囲においてならば、ジカルボン酸無水物基が開環していてもよい。
(3)その他の構造単位(C)
本発明に用いる共重合体(P)としては、構造単位(A)と構造単位(B)のみからなる二元共重合体と、構造単位(A)と構造単位(B)と、それら以外の構造単位(C)をさらに含む多元共重合体を用いることができるが、好ましくは、構造単位(A)及び構造単位(B)で示される構造単位以外の構造単位(C)をさらに含む、多元共重合体である。構造単位(C)を与えるモノマーは、構造単位(A)及び、構造単位(B)を与えるモノマーに包含されるものでなければ、任意のモノマーを使用できる。構造単位(C)を与えるモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有する化合物であれば限定されないが、例えば後掲の一般式(1)で表される非環状モノマーや一般式(2)で表される環状モノマーなどが挙げられる。
構造単位(A)と構造単位(B)のみからなる二元共重合体に比べて、構造単位(C)成分を含む三元以上の多元共重合体をアイオノマーのベース樹脂として用いることにより、アイオノマー樹脂の物性をより細かく制御することができる。構造単位(C)は、1種類のモノマーに基づくものでもよく、2種類以上のモノマーを組み合わせて用いてもよい。
・非環状モノマー
Figure 2021008615

[一般式(1)中、T〜Tはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のエステル基で置換された炭素数3〜20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のエステル基、炭素数炭素数3〜20のシリル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基からなる群より選択される置換基であり、
は、水酸基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のエステル基で置換された炭素数3〜20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のエステル基、炭素数炭素数3〜20のシリル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基からなる群より選択される置換基である。]
〜Tに関する炭化水素基、置換アルコキシ基、置換エステル基、アルコキシ基、アリール基、エステル基、シリル基が有する炭素骨格は、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。
〜Tに関する炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
〜Tに関する置換アルコキシ基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
〜Tに関する置換エステル基の炭素数は、下限値が2以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
〜Tに関するアルコキシ基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
〜Tに関するアリール基の炭素数は、下限値が6以上であればよく、上限値は20以下であればよく、11以下であってもよい。
〜Tに関するエステル基の炭素数は、下限値が2以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
〜Tに関するシリル基の炭素数は、下限値が3以上であればよく、上限値は18以下であればよく、12以下であってもよい。シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリn−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、及びトリフェニルシリル基等が挙げられる。
本発明のアイオノマーにおいては、製造の容易さの点から、T及びT2は水素原子であってもよく、Tは水素原子又はメチル基であってもよく、T〜Tが、いずれも水素原子であってもよい。
また、耐衝撃性の点から、Tは炭素数2〜20のエステル基であってもよい。
非環状モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル等を含むTが炭素数2〜20のエステル基である場合等が挙げられる。
が炭素数2〜20のエステル基である場合、非環状モノマーとしては、構造式:CH=C(R21)CO(R22)で表される化合物が挙げられる。ここで、R21は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。R22は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。さらに、R22内の任意の位置にヘテロ原子を含有してもよい。
構造式:CH=C(R21)CO(R22)で表される化合物として、R21が、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である化合物が挙げられる。また、R21が水素原子であるアクリル酸エステル又はR21がメチル基であるメタクリル酸エステルが挙げられる。
構造式:CH=C(R21)CO(R22)で表される化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
具体的な化合物として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル(nBA)、アクリル酸イソブチル(iBA)、アクリル酸t−ブチル(tBA)、及びアクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、特にアクリル酸n−ブチル(nBA)、アクリル酸イソブチル(iBA)、及びアクリル酸t−ブチル(tBA)であってもよい。
なお、非環状モノマーは、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
・環状モノマー
Figure 2021008615

[一般式(2)中、R〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R及びR10、並びに、R11及びR12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
環状モノマーとしては、ノルボルネン系オレフィン等が挙げられ、ノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、などの環状オレフィンの骨格を有する化合物等が挙げられ、2−ノルボルネン(NB)、及び、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン等であってもよい。
(4)共重合体(P)
本発明で用いるアイオノマーのベース樹脂となる共重合体(P)は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として含み、さらに場合により前記(A)及び(B)以外の任意の構造単位(C)を含み、これら各構造単位が実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合していることを特徴とする。「実質的に直鎖状」とは、共重合体が分岐を有していないか又は分岐構造が現れる頻度が小さく、共重合体を直鎖状とみなしうる状態であることを指す。具体的には、後述する条件下で共重合体の位相角δが50度以上である状態を指す。
本発明に関わる共重合体(P)は、構造単位(A)及び、構造単位(B)をそれぞれ1種類以上含有し、合計2種以上のモノマー単位を含むことが必要であり、前記(A)及び(B)以外の任意の構造単位(C)を含んでいてもよいが、そのような構造単位(C)を含んだ多元共重合体であることが好ましい。
本発明に関わる共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(A)、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)、並びに(A)及び(B)以外の任意のモノマー(C)それぞれ1分子に由来する構造を、共重合体中の1構造単位と定義する。
そして、共重合体中の構造単位全体を100mol%とした時に各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
・エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(A)の構造単位量:
本発明に関わる構造単位(A)の構造単位量は、下限が60.0mol%以上、好ましくは70.0mol%以上、より好ましくは80.0mol%以上、さらに好ましくは85.0mol%以上、さらにより好ましくは90.0mol%以上、特に好ましくは91.2mol%以上であり、上限が97.9mol%以下、好ましくは97.5mol%以下、より好ましくは97.0mol%以下、さらに好ましくは96.5mol%以下から選択される。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン(A)に由来する構造単位量が60.0mol%よりも少なければ共重合体の靱性が劣り、97.9mol%よりも多ければ共重合体の結晶化度が高くなり、透明性が悪くなる場合がある。
・カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)の構造単位量:
本発明に関わる構造単位(B)の構造単位量は、下限が2.0mol%以上、好ましくは2.9mol%以上であり、より好ましくは5.2mol%以上、上限が20.0mol%以下、好ましくは15.0mol%以下、より好ましくは10.0mol%以下、さらに好ましくは8.0mol%以下、特に好ましくは6.0mol%以下、最も好ましくは5.6mol%以下から選択される。
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)に由来する構造単位量が2.0mol%よりも少なければ、共重合体の極性の高い異種材料との接着性が充分ではなく、20.0mol%より多ければ共重合体の充分な機械物性が得られない場合がある。
更に、用いられるカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーは単独でもよく、2種類以上を合わせて用いてもよい。
・任意のモノマー(C)の構造単位量:
本発明のアイオノマーの構成要素に前記(A)又は(B)以外の任意のモノマー(C)が含まれる場合、本発明に関わる構造単位(C)の構造単位量は、下限が0.001mol%以上、好ましくは0.010mol%以上、より好ましくは0.020mol%以上、さらに好ましくは0.1mol%以上、さらにより好ましくは2.0mol%以上であり、上限が20.0mol%以下、好ましくは15.0mol%以下、より好ましくは10.0mol%以下、さらに好ましくは5.0mol%以下、特に好ましくは3.6mol%以下から選択される。
任意のモノマー(C)に由来する構造単位量が0.001mol%以上であると、共重合体の柔軟性が充分となりやすく、20.0mol%以下であると共重合体の充分な機械物性が得られやすい。
更に、用いられる任意のモノマーは単独でもよく、2種類以上を合わせて用いてもよい。
共重合体(P)の炭素1,000個当たりの分岐数:
本発明の共重合体においては、弾性率を高くし、充分な機械物性を得る点から、13C−NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり、上限が50個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。またエチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が3.0個以下であってもよく、2.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。さらにブチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が7.0個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、3.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー、及び非環状モノマーに由来する構造単位量、及び分岐数の測定方法:
本発明の共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー、及び非環状モノマーに由来する構造単位量、及び炭素1,000個当たりの分岐数は13C−NMRスペクトルを用いて求められる。13C−NMRは以下の方法によって測定する。
試料200〜300mgをo−ジクロロベンゼン(CCl)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶媒(CCl/CBr=2/1(体積比))2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定試料とする。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・ジャパン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行う。
13C−NMRは、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を512回以上、逆ゲートデカップリング法で測定する。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
得られた13C−NMRにおいて、共重合体が有するモノマー又は分岐に特有のシグナルを同定し、その強度を比較することで、共重合体中の各モノマーの構造単位量、及び分岐数を解析することができる。モノマー又は分岐に特有のシグナルの位置は公知の資料を参照することもできるし、試料に応じて独自に同定することもできる。このような解析手法は、当業者にとって一般的に行いうるものである。
・重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn):
本発明に関わる共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下限が通常1,000以上であり、好ましくは6,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、上限が通常2,000,000以下であり、好ましくは1,500,000以下であり、更に好ましくは1,000,000以下であり、特に好適なのは800,000以下であり、最も好ましくは100,000以下である。
Mwが1,000未満では共重合体の機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分ではなく、Mwが2,000,000を超えると共重合体の溶融粘度が非常に高くなり、共重合体の成形加工が困難となる場合がある。
本発明に関わる共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常1.5〜4.0、好ましくは1.6〜3.5、更に好ましくは1.9〜2.3の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では共重合体の成形を始めとして各種加工性が充分でなく、4.0を超えると共重合体の機械物性が劣るものとなる場合がある。
また、本明細書においては(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。
本発明に関わる共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
本発明に関わるGPCの測定方法の一例は以下の通りである。
(測定条件)
使用機種:ウォーターズ社製150C
検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm)
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
(試料の調製)
試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(分子量(M)の算出)
標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは例えば、東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄、昭和電工製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S−1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05、の各0.07mg/ml溶液)などである。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式、又は溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似したものなどを用いる。分子量(M)への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαには以下の数値を用いる。
ポリスチレン(PS):K=1.38×10−4、α=0.7
ポリエチレン(PE):K=3.92×10−4、α=0.733
ポリプロピレン(PP):K=1.03×10−4、α=0.78
・融点(Tm、℃):
本発明に関わる共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度の事を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度の事を示している。
融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃であることが最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる場合がある。
本発明において、融点は、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のDSC(DSC7020)を使用し、試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間等温保持後、10℃/分で20℃まで降温し、20℃で5分間等温保持後、再度、10℃/分で200℃まで昇温させる際の吸収曲線より求めることができる。
・結晶化度(%):
本発明の共重合体においては、示差走査熱量測定(DSC)により観測される結晶化度は、特に限定されないが、0%を超えていることが好ましい。5%を超えていることがより好ましく、7%以上であることが更に好ましい。結晶化度が0%であると共重合体の靱性が充分とはならなくなる場合がある。結晶化度は透明性の指標でもあり、透明性がある方が好ましいが、結晶化度の上限は特に限定されない。
結晶化度は、例えば、上記融点の測定と同じ手順でのDSC測定により得られる融解吸熱ピーク面積から融解熱(ΔH)を求め、その融解熱を高密度ポリエチレン(HDPE)の完全結晶の融解熱293J/gで除することにより求めることができる。
・共重合体の分子構造:
本発明に関わる共重合体の分子鎖末端は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンの構造単位(A)であってもよく、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)であってもよく、(A)及び(B)以外の任意の構造単位(C)であってもよい。
また、本発明に関わる共重合体は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンの構造単位(A)、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)、及び任意のモノマーの構造単位(C)のランダム共重合体、ブロック共重合体、並びにグラフト共重合体等が挙げられる。これらの中では、構造単位(B)を多く含むことが可能なランダム共重合体であってもよい。
一般的な三元系の共重合体の分子構造例(1)を下記に示す。
ランダム共重合体とは、下記に示した分子構造例(1)のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンの構造単位(A)とカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)と任意のモノマーの構造単位(C)とが、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。
下記のように、共重合体の分子構造例(1)は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンの構造単位(A)とカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)と任意のモノマーの構造単位(C)とが、ランダム共重合体を形成している。
Figure 2021008615
なお、グラフト変性によってカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)を導入した共重合体の分子構造例(2)も参考に掲載すると、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンの構造単位(A)及び任意のモノマーの構造単位(C)とが共重合された共重合体の一部が、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)にグラフト変性される。
Figure 2021008615
また、共重合体におけるランダム共重合性は種々の方法により確認することが可能であるが、共重合体のコモノマー含量と融点との関係からランダム共重合性を判別する手法が特開2015−163691号公報及び特開2016−079408号公報に詳しく述べられている。上記文献から共重合体の融点(Tm、℃)が−3.74×[Z]+130(ただし、[Z]はコモノマー含量/mol%である)よりも高い場合はランダム性が低いと判断できる。
ランダム共重合体である本発明に関わる共重合体は示差走査熱量測定(DSC)により観測される融点(Tm、℃)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)及び任意のモノマーの構造単位(C)の合計の含有量[Z](mol%)とが下記の式(I)を満たすことが好ましい。
50<Tm<−3.74×[Z]+130・・・(I)
共重合体の融点(Tm、℃)が−3.74×[Z]+130(℃)よりも高い場合はランダム共重合性が低い為、衝撃強度など機械物性が劣り、融点が50℃よりも低い場合は耐熱性が劣る場合がある。
さらに本発明に関わる共重合体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属触媒の存在下で製造されたものであることが好ましい。
なお、高圧ラジカル重合法プロセスによる重合、金属触媒を用いた重合など、製造方法によって共重合体の分子構造は異なることが知られている。
この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば、特開2010−150532号公報に記載されている様に、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。
・複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ:
本発明の共重合体においては、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δは、下限が50度以上であってもよく、51度以上であってもよく、54度以上であってもよく、56度以上であってもよく、58度以上であってもよく、上限が75度以下であってもよく、70度以下であってもよい。
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)が50度以上である場合、共重合体の分子構造は直鎖状の構造であって、長鎖分岐を全く含まない構造か、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む、実質的に直鎖状の構造であることを示す。
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)が50度より低い場合、共重合体の分子構造は長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。
回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δは、分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受ける。しかし、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3である共重合体に限れば長鎖分岐の量の指標になり、その分子構造に含まれる長鎖分岐が多いほどδ(G=0.1MPa)値は小さくなる。なお、共重合体のMw/Mnが1.5以上であれば、当該分子構造が長鎖分岐を含まない構造である場合でもδ(G=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
複素弾性率の測定方法は、以下の通りである。
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持する。その後、試料を表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作成する。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定する。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G(Pa)の常用対数logGに対して位相角δをプロットし、logG=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G=0.1MPa)とする。測定点の中にlogG=5.0に相当する点がないときは、logG=5.0前後の2点を用いて、logG=5.0におけるδ値を線形補間で求める。また、測定点がいずれもlogG<5であるときは、logG値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG=5.0におけるδ値を補外して求める。
・共重合体の製造について
本発明に関わる共重合体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属触媒の存在下で製造されたものであることが好ましい。
・重合触媒
本発明に関わる共重合体の製造に用いる重合触媒の種類は、構造単位(A)、構造単位(B)、及び任意の構造単位(C)を共重合することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物が挙げられる。
好ましい遷移金属の具体例としては、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。これらの中で好ましくは、第8〜11族の遷移金属であり、さらに好ましくは第10族の遷移金属であり、特に好ましくはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、キレート性配位子の構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
キレート性配位子としては、好ましくは、二座アニオン性P、O配位子が挙げられる。二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられる。キレート性配位子としては、他に、二座アニオン性N、O配位子が挙げられる。二座アニオン性N、O配位子として例えば、サリチルアルドイミナートやピリジンカルボン酸が挙げられる。キレート性配位子としては、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、及びジアミド配位子等が挙げられる。
キレート性配位子から得られる金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した下記構造式(a)又は(b)で表される。
Figure 2021008615

Figure 2021008615

[構造式(a)、及び構造式(b)において、
Mは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述したような種々の遷移金属を表す。
は、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。
は、炭素又はケイ素を表す。
nは、0又は1の整数を表す。
は、リン、砒素又はアンチモンを表す。
53及びR54は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
55は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
56及びR57は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR52、CO52、COM’、C(O)N(R51、C(O)R52、SR52、SO52、SOR52、OSO52、P(O)(OR522−y(R51、CN、NHR52、N(R52、Si(OR513−x(R51、OSi(OR513−x(R51、NO、SOM’、POM’、P(O)(OR52M’又はエポキシ含有基を表す。
51は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
52は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。
なお、R56とR57が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。
は、Mに配位したリガンドを表す。
また、R53とLが互いに結合して環を形成してもよい。]
より好ましくは、重合触媒となる錯体は、下記構造式(c)で表される遷移金属錯体である。
Figure 2021008615

[構造式(c)において、
Mは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述したような種々の遷移金属を表す。
は、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。
は、炭素又はケイ素を表す。
nは、0又は1の整数を表す。
は、リン、砒素又はアンチモンを表す。
53及びR54は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
55は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
58、R59、R60及びR61は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR52、CO52、COM’、C(O)N(R51、C(O)R52、SR52、SO52、SOR52、OSO52、P(O)(OR522−y(R51、CN、NHR52、N(R52、Si(OR513−x(R51、OSi(OR513−x(R51、NO、SOM’、POM’、P(O)(OR52M’又はエポキシ含有基を表す。
51は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
52は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。
なお、R58〜R61から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。このとき、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。
は、Mに配位したリガンドを表す。
また、R53とLが互いに結合して環を形成してもよい。]
ここで、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物の触媒としては、代表的に、いわゆる、SHOP系触媒及びDrent系触媒等の触媒が知られている。
SHOP系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010−050256号公報を参照)。
また、Drent系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照)。
・共重合体の重合方法:
本発明に関わる共重合体の重合方法は限定されない。
重合方法としては、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが挙げられる。
重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、又は連続重合のいずれの形式でもよい。
また、リビング重合を行ってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。
更に、重合の際には、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報等に開示されている。
・共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法:
本発明に関わる共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法は特に限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の方法によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入することができる。
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法は、例えば、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するコモノマーを直接共重合する方法や、カルボキシル基を生じる官能基を有する他のモノマーを共重合した後、変性によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入する方法などが挙げられる。
変性によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入する方法としては、例えばカルボン酸を導入する場合、前駆体としてのアクリル酸エステルを共重合した後に加水分解し、カルボン酸に変化する方法や、前駆体としてのアクリル酸t−ブチルを共重合した後、加熱分解によりカルボン酸に変化させる方法等が挙げられる。
上記、加水分解又は加熱分解する際に、反応を促進させる添加剤として、従来公知の酸・塩基触媒を使用してもよい。酸・塩基触媒としては特に制限されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、モンモリロナイトなどの固体酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸などを適宜用いることが出来る。
反応促進効果、価格、装置腐食性等の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸が好ましく、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸がより好ましい。
(5)アイオノマー
本発明に関わるアイオノマーは、前記共重合体(P)中の、構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されており、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50度〜75度であり、実質的に直鎖状構造を有するアイオノマーである。なお、アイオノマーは、後述のとおりアイオノマーベース樹脂に金属塩を作用させることにより得られ、その際に重合体の分子鎖を切断するような反応は通常起こらない。このため、コモノマーのモル比、分岐の程度、ランダム性等の構造に関するパラメーターは、通常はアイオノマーベース樹脂とアイオノマーとの間で保存されている。
・アイオノマーの構造
本発明に関わるアイオノマーは本発明に関わる共重合体と同様に実質的に直鎖状構造を有することから、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50〜75度であることを特徴とする。
前記位相角δ(G=0.1MPa)が50度より低い場合、アイオノマーの分子構造は長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。また、当該分子構造が長鎖分岐を含まない構造である場合でもδ(G=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
本発明のアイオノマーは、機械的強度を向上する点から、前記位相角δの下限が、51度以上であることが好ましく、54度以上であることがより好ましく、56度以上であることが更に好ましく、58度以上であることがより更に好ましく、上限は、特に限定されず、75度に近ければ近いほどよい。
・アイオノマーの融点(Tm、℃)
本発明に関わるアイオノマーの融点(Tm、℃)は、50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる場合がある。
・金属イオン
本発明に関わるアイオノマーに含まれる金属イオンは、特に限定されず、従来公知のアイオノマーに用いられる金属イオンを含むことができる。金属イオンとしては、中でも、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンであることが好ましく、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。特に好ましくは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、及びZn2+、更に好ましくは、Na、及びZn2+からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの金属イオンを必要に応じて2種以上混合して含むことができる。
・中和度(mol%)
金属イオンの含有量としては、ベースポリマーとしての共重合体中のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部又は全部を中和する量を含むことが好ましく、好ましい中和度(平均中和度)としては、5〜95mol%、より好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜80mol%である。
なお、中和度は、共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基に含まれ得るカルボキシ基の合計mol量に対する、金属イオンの価数×mol量の合計mol量の割合から求めることができる。
ジカルボン酸無水物基はカルボン酸塩を形成する際に、開環してジカルボン酸となるため、ジカルボン酸無水物基1molにつき、2molのカルボキシ基を有するものとして前記カルボキシ基の合計mol量を求める。また、例えばZn2+等の二価の金属イオンは、1molにつき、2molのカルボキシ基と塩を形成できるものとして、2×mol量により中和度の分子の合計mol量を算出する。
中和度が高いと、アイオノマーの引張強度及び引張破壊応力が高く、引張破壊ひずみが小さくなるが、アイオノマーのメルトフローレート(MFR)が小さくなる傾向がある。一方、中和度が低いと、適度なMFRのアイオノマーが得られるが、引張弾性率及び引張破壊応力は低く、引張破壊ひずみが高くなる傾向がある。
なお、中和度は、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の量と加えた金属イオンのモル比から計算できる。
・アイオノマーの製造方法
本発明に関わるアイオノマーは、上述のとおりの共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法によって得たエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸の共重合体を、周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属塩により処理し金属含有カルボン酸塩に変換する変換工程を経ることにより得てもよい。また、本発明に関わるアイオノマーはエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、該共重合体中の少なくとも一部のエステル基を、周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換する加熱変換工程を経ることにより得てもよい。
重合体にカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入してからアイオノマーを製造する場合、その製造方法は、例えば、以下のとおりである。すなわち、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体などの金属イオンを捕捉する物質と金属塩を場合により加熱して混練することで金属イオン供給源を作製し、ついでアイオノマーベース樹脂に当該金属イオン供給源を所望の中和度となる量投入し、混練することで得ることができる。
また、加熱変換工程においては、(i)エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、加水分解又は加熱分解によりエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体にした後、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンを含有する化合物と反応させることで、該エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体中のカルボン酸を該金属含有カルボン酸塩に変換してもよく、また、(ii)エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、該共重合体のエステル基を加水分解又は加熱分解させながら、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンを含有する化合物と反応させることで、前記エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体中のエステル基部分を前記金属含有カルボン酸塩に変換してもよい。
金属イオンを含有する化合物は、周期表1族、2族、又は12族の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩などであってもよい。
金属イオンを含有する化合物は、粒状あるいは微粉状で反応系に供給してもよく、水や有機溶媒に溶解又は分散させた後、反応系に供給してもよく、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体やオレフィン共重合体をベースポリマーとするマスターバッチを作製し、反応系に供給してもよい。反応を円滑に進行させるためにはマスターバッチを作製し、反応系に供給する方法が好ましい。
さらにまた、金属イオンを含有する化合物との反応はベント押出機、バンバリーミキサー、ロールミルの如き種々の型の装置により、溶融混練することによって行ってもよく、反応はバッチ式でも連続法でもよい。反応によって副生する水及び炭酸ガスを脱気装置により排出することにより、円滑に反応を行うことができることからベント押出機のような脱気装置付きの押出機を用い連続的に行うことが好ましい。
金属イオンを含有する化合物との反応に際し、反応を促進させるために、少量の水を注入してもよい。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱する温度は、エステルがカルボン酸になる温度であればよく、加熱温度が低すぎる場合はエステルがカルボン酸に変換されず、高すぎる場合には脱カルボニル化や共重合体の分解が進む場合がある。従って、本発明の加熱温度は、好ましくは80℃〜350℃、より好ましくは100℃〜340℃、更に好ましくは150℃〜330℃、更により好ましくは200℃〜320℃の範囲で行われる。
反応時間は加熱温度やエステル基部分の反応性等により変わるが、通常1分〜50時間であり、より好ましくは2分〜30時間であり、更に好ましくは2分〜10時間であり、よりさらに好ましくは2分〜3時間であり、特に好ましくは3分〜2時間である。
上記工程において、反応雰囲気下に特に制限はないが、一般に不活性ガス気流下で行われるほうが好ましい。不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素雰囲気が使用できる。少量の酸素や空気の混入があってもよい。
上記工程で用いる反応器としては、特に制限は無いが、共重合体を実質的に均一に攪拌できる方法であれば何ら限定されず、攪拌器を装備したガラス容器やオートクレーブ(AC)を用いてもよいし、ブラベンダープラストグラフ、一軸あるいは二軸押出機、強力スクリュー型混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られているいかなる混練機も使用することができる。
アイオノマーベース樹脂に対し金属イオンが導入され、アイオノマーとなったかどうかは、得られた樹脂のIRスペクトルを測定してカルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来するピークの減少を調べることによって確認することができる。中和度も同じく、前述のモル比からの計算のほか、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来するピークの減少と、カルボン酸塩基のカルボニル基に由来するピークの増加を調べることによって、確認することができる。
2.ダイシングテープ用樹脂組成物
ダイシングテープの基材フィルムの材料として、これまで説明してきた新規アイオノマーが用いられる。基材フィルムの材料は該アイオノマー100%でもよいが、その他の樹脂と混合した組成物を用いてもよい。すなわち、本発明の一態様は、前記アイオノマーとその他の樹脂を含む、ダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
ダイシング工程では、通常は半導体チップを個片化するブレードがチップ厚みより深く当てられ、ダイシングテープ層まで到達する。ブレードとの接触による摩擦熱で基材の変質、寸法の変化などが起こり、半導体チップの精確な切り出しに悪影響を与えうるので、ダイシングテープは耐熱性が高いことが望ましい。そのため、ダイシングテープ用樹脂組成物には、融点が高い樹脂を配合してもよい。高融点の樹脂としては、ポリアミドやポリウレタンを用いることができる。ポリアミドには、ジカルボン酸とジアミンの重縮合体、ラクタムの開環重合体などを用いることができる。ポリウレタンには、高分子ポリオールとポリイソシアネートの反応生成物などを用いることができる。これらの樹脂は、例えばポリアミドとしてナイロンなど、市販されているものを用いることができる。
また、ダイシング工程ではチップを切断した後に半導体チップの間隔を広げるためにダイシングテープを引っ張るので、テープのエキスパンド性能が良いことが望ましい。本発明のアイオノマーは単独でも良好な伸び特性を有するものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の延伸可能な樹脂を配合してもよい。そのような樹脂として例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、本発明のアイオノマー以外の、例えば高圧ラジカル重合で合成されたアイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニルスルフィド、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。ダイシングテープ用樹脂組成物において、これらのその他の樹脂は、組成物全体の質量を100%としたときに、合計で50質量%未満の量で含まれることが好ましい。本発明のアイオノマーにより切削屑をより低減する観点からは、40質量%未満の量で含まれることがより好ましく、30質量%未満の量で含まれることがさらに好ましく、25質量%未満の量で含まれることが特に好ましく、20質量%未満の量で含まれることが最も好ましい。
・添加剤
本発明に関わるアイオノマーには、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、及び、充填材等の添加剤を配合してもよい。樹脂組成物における添加剤の量は任意であるが、組成物全体の質量に対して0〜20質量%の範囲が好ましい。
ダイシングテープ用樹脂組成物において、本発明のアイオノマーは、組成物全体の質量に対して、50質量%以上の量で含まれることが好ましい。切削屑をより低減する観点からは、本発明のアイオノマーが含まれる量は、60質量%以上の量であることがより好ましく、70質量%以上の量であることがさらに好ましく、75質量%以上の量であることが特に好ましく、80質量%以上の量であることが最も好ましい。
3.ダイシングテープ基材及びダイシングテープ
・層構造
本発明のダイシングテープは、基材フィルム1と基材フィルムの片側に積層された粘着層3を有する(図3)。基材フィルムは単層であってもよいし、多層であってもよい。多層の場合、例えば基材フィルム1、基材フィルム2の積層フィルムの上に、粘着層3を有するフィルムとなる(図4)。ダイシングテープは、使用前には粘着剤層を保護するため、粘着層の上面に剥離フィルムを仮粘着しておくことが好ましい。
基材フィルムは、本発明のアイオノマーを主成分として含む層を有し、この層が粘着層と接するように設けられていることが好ましい。多層構造の基材フィルムは、多層押し出し法で複数の異なる層を有する基材層を一段階工程で作ってもよいし、インフレーション法、単層押し出し法等で作られたテープを接着剤や熱溶着によって張り合わせる等の手法によって作ってもよい。また基材フィルムは粘着層との密着性を制御するため、必要に応じて、マット処理、コロナ処理などの表面粗化処理を施してもよい。
基材フィルム層の厚さは、用途によって適宜選択されるが、フィルムとして扱われる200μm以下である事が好ましい。
・粘着層
粘着層に用いる粘着剤としては、特に制限は無く、放射線硬化型、加熱発泡型、感圧型のものを用いる事ができる。本発明では、紫外線などの放射線硬化型の粘着剤が特に好ましい。放射線硬化型には種々のものがあるが、(メタ)アクリル系粘着剤を用いることが望ましい。また、放射線反応性を付与するために、必要に応じ、アクリル系粘着剤中に炭素―炭素二重結合を持ったモノマー、オリゴマー、ポリマーや光反応開始剤等の添加材を処方し用いることもできる。このような粘着剤自体は任意の物を用いることができ、例えば、特開平1−249877号、特開平5−196768号、特開昭63−17980号公報などに記載のものを用いることができる。
粘着層の厚みは特に限定されるものではなく、求められる性能に応じて適宜設定されるが、5〜30μmが好ましい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。また、表中のnot detectedは検出限界未満を意味する。
<測定と評価>
(1)複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)の測定
1)試料の準備、測定
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作製した。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・プレート:φ25mm(直径) パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G(Pa)の常用対数logGに対して位相角δをプロットし、logG=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG=5.0に相当する点がないときは、logG=5.0前後の2点を用いて、logG=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG<5であるときは、logG値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG=5.0におけるδ値を補外して求めた。
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)の測定
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。
測定は下記の手順及び条件に従って行った。
1)試料の前処理
試料にカルボン酸基が含まれる場合は、例えばジアゾメタンやテトラメチルシラン(TMS)ジアゾメタンなどを用いたメチルエステル化などのエステル化処理を行い測定に用いた。また、試料にカルボン酸塩基が含まれる場合は酸処理を行い、カルボン酸塩基をカルボン酸基へと変性した後、上記のエステル化処理を行い測定に用いた。
2)試料溶液の調製
4mLバイアル瓶に試料3mg及びo−ジクロロベンゼン3mLを秤り採り、スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、センシュー科学製SSC−7300型高温振とう機を用いて150℃で2時間振とうを行った。振とう終了後、不溶成分がないことを目視で確認した。
3)測定
ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型に昭和電工製高温GPCカラムShowdex HT−G×1本及び同HT−806M×2本を接続し、溶離液にo−ジクロロベンゼンを使用し、温度145℃、流量:1.0mL/分下にて測定を行った。
4)較正曲線
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S−1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05、の各0.07mg/ml溶液)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を上記と同様の条件にて行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレン分子量(MPS)とポリエチレン分子量(MPE)の換算には次式を用いた。
PE=0.468×MPS
(3)メルトフローレート(MFR)
MFRは、JIS K−7210(1999年)の表1−条件7に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
(4)引張試験 (エキスパンド性の評価)
試料をJIS K7151(1995年)に記載の方法(冷却方法A)で厚さ1mmのシートを作製し、これを打抜いて作製したJIS K7162(1994年)に記載の5B形小型試験片を用いて、JIS K7161(1994年)に従って温度23℃の条件下において引張試験を行い、引張破断伸びを測定した。なお、試験速度は10mm/分とした。
(5)融点及び結晶化度
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線のうち、最大ピーク温度を融点Tmとし、融解吸熱ピーク面積から融解熱(ΔH)を求め、その融解熱を高密度ポリエチレン(HDPE)の完全結晶の融解熱293J/gで除することにより、結晶化度(%)を求めた。
(6)カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー、及び非環状モノマー由来の構造単位量と炭素1,000個当たりの分岐数の測定方法
本発明の共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー、及び非環状モノマーに由来する構造単位量、炭素1,000個当たりの分岐数は13C−NMRスペクトルを用いて求められる。13C−NMRは以下の方法によって測定した。
試料200〜300mgをo−ジクロロベンゼン(CCl)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶媒(CCl/CBr=2/1(体積比))2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定試料とした。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・ジャパン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行った。
13C−NMRは、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を512回以上、逆ゲートデカップリング法で測定した。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
1)試料の前処理
試料にカルボン酸塩基が含まれる場合は酸処理を行うことにより、カルボン酸塩基をカルボキシ基へと変性した後に測定に用いた。また試料にカルボキシ基が含まれる場合は、例えばジアゾメタンやトリメチルシリル(TMS)ジアゾメタンなどを用いたメチルエステル化などのエステル化処理を適宜行ってもよい。
2)カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー、及び非環状モノマー由来の構造単位量の算出
<E/tBA>
tBAのt−ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C−NMRスペクトルの79.6〜78.8に検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6〜78.8
I(E)=(I180.0〜135.0+I120.0〜5.0−I(tBA)×7)/2
<E/tBA/iBA>
tBAのt−ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C−NMRスペクトルの79.6〜78.8ppm、iBAのイソブトキシ基のメチレンシグナルは70.5〜69.8ppm、イソブトキシ基のメチルシグナルは19.5〜18.9ppmに検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(iBA)+I(E)〕
iBA総量(mol%)=I(iBA)×100/〔I(tBA)+I(iBA)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(iBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6〜78.8
I(iBA)=(I70.5〜69.8+I19.5〜18.9)/3
I(E)=(I180.0〜135.0+I120.0〜5.0−I(iBA)×7−I(tBA)×7)/2
<E/tBA/NB>
tBAのt−ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C−NMRスペクトルの79.6〜78.8ppm、NBのメチン炭素シグナルは41.9〜41.1ppmに検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(NB)+I(E)〕
NB総量(mol%)=I(NB)×100/〔I(tBA)+I(NB)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(NB)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6〜78.8
I(NB)=(I41.9〜41.1)/2
I(E)=(I180.0〜135.0+I120.0〜5.0−I(NB)×7−I(tBA)×7)/2
なお、各モノマーの構造単位量が不等号を含む「<0.1」で示されている場合、共重合体中の構成単位として存在しているが有効数字を考慮して0.1mol%未満の量であることを意味する。
3)炭素1,000個当たりの分岐数の算出
共重合体には、主鎖に分岐が単独で存在する孤立型と、複合型(主鎖を介して分岐と分岐が対面した対面タイプ、分岐鎖中に分岐のあるbranched−branchタイプ、及び連鎖タイプ)が存在する。
以下は、エチル分岐の構造の例である。なお、対面タイプの例において、Rはアルキル基を表す。
Figure 2021008615
炭素1,000個当たりの分岐数は、以下の式のI(分岐)項に、下記のI(B1)、I(B2)、I(B4)のいずれかを代入し求める。B1はメチル分岐、B2はエチル分岐、B4はブチル分岐を表す。メチル分岐数はI(B1)を用い、エチル分岐数はI(B2)を用い、ブチル分岐数はI(B4)を用いて求める。
分岐数(個/炭素1,000個当たり)=I(分岐)×1000/I(total)
ここで、I(total)、I(B1)、I(B2)、I(B4)は以下の式で示される量である。
I(total)=I180.0〜135.0 +I120.0〜5.0
I(B1)=(I20.0〜19.8+I33.2〜33.1+I37.5〜37.3)/4
I(B2)=I8.6〜7.6 +I11.8〜10.5
I(B4)=I14.3〜13.7 −I32.2〜32.0
ここで、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI180.0〜135.0は180.0ppmと135.0ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
帰属は、非特許文献Macromolecules 1984, 17, 1756-1761、Macromolecules 1979,12,41を参考にした。
なお、各分岐数が不等号を含む「<0.1」で示されている場合、共重合体中の構成単位として存在しているが有効数字を考慮して0.1mol%未満の量であることを意味する。また、not detectedは検出限界未満を意味する。
(7)摩耗量の測定
1)摩耗試験サンプルの作製方法
試料を、寸法:150mm×150mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで試料を溶融すると共に試料中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、3分間保持した。その後、4.9MPaの圧力をかけた状態で、10℃/分の速度で徐々に冷却し、温度が室温付近まで低下したところでモールドから成形板を取り出した。得られた成形板を温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で48時間以上、状態調節した。状態調節後のプレス板を直径約115mmの円形に切り抜き、中心に直径約6.5mmの穴をあけ、摩耗試験サンプルとした。
2)摩耗試験条件
上記試験片を用い、JIS K 7204−1999に準拠し下記条件で摩耗損失量(mg)を測定した。
・装置:テーバー摩耗試験機(ロータリーアブレーションテスタ)_(株)東洋精機製作所製
・摩耗輪:CS-17
・回転数:60回転/min
・試験回数:1000回転
・荷重:4.9N
(8)ダイシング評価
1)試験サンプルの作製方法
25mmのφ25mm押し出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成型機を使用し、樹脂温度200度、引取り速度4m/分で厚み80μmのアイオノマーフィルム(基材フィルム)を製造した。また、粘着剤として、紫外線硬化型アクリル粘着剤(荒川化学工業製のビームセット575(ウレタンアクリレート系オリゴマー))を用意した。上記の基材フィルム、粘着剤を用いて、フィルムの上に、紫外線硬化型アクリル粘着剤を酢酸エチルに溶かしたものをバーコート塗布することで、基材フィルム(80μm)/粘着層(15μm、乾燥後厚み)の構造から成るダイシングテープを製造した。
2)ダイシング加工
作成したダイシングテープに300μmのシリコンウェハを貼り付け、下記の条件でシリコンウェハのダイシング加工を実施した。
・サンプルサイズ:20mm角
・ダイシング装置:ディスコ社製 DFD6240
・ダイシング刃:ディスコ社製 ZH05−SD3000−N1−70 FF
・回転数:30000rpm
・切削速度:30mm/s
・ダイシング刃の基材フィルムへの切込み深さ:40μm
・ライン数:3本
3)シリコンウェハの剥離
加工終了後、基材フィルム側から紫外線照射を十分行った後、シリコンウェハを端部から丁寧に剥離した。
4)切削屑観察
シリコンウェハを剥離した後のダイシングラインについて、顕微鏡(400倍)で切削屑の状態確認を実施した。合計3本のラインについて、100μm以上の長さの切削屑を全て集計し、切削屑の状態を比較した。
実施例におけるアイオノマーは、以下に示す方法によって製造した。
<金属錯体の合成>
(1)B−27DM/Ni錯体の合成
B−27DM/Ni錯体は、国際公開第2010/050256号に記載された合成例4に従い、下記の2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノ−6−ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B−27DM)を使用した。国際公開第2010/050256号の実施例1に準じて、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(COD)と称する)を用いて、B−27DMとNi(COD)とが1対1で反応したニッケル錯体(B−27DM/Ni)を合成した。
Figure 2021008615
(2)B−423/Ni錯体の合成
1)配位子B−423:2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノ−6−(2,6−ジイソプロピルフェニル)フェノールの合成
Figure 2021008615

以下のスキームに従って配位子B−423を合成した。
なお、以降の化学式中、−OMOMとはメトキシメトキシ基(−OCHOCH)を表す。
Figure 2021008615
(i)化合物2の合成
特許文献WO2010/050256に従って合成した。
(ii)化合物3の合成
化合物2(2.64g、10.0mmol)のTHF(5.0ml)溶液にiso−PrMgCl(2M、5.25ml)を0℃で加えた。反応混合物を25℃で1時間撹拌した後、PCl(618mg、4.50mmol)を−78℃で加えた。
反応混合物を25℃まで3時間かけて昇温し、黄色懸濁液を得た。溶媒を減圧留去し、黄色固体を得た。この混合物を精製することなく、次の反応に用いた。
(iii)化合物5の合成
化合物4(30g、220mmol)のTHF(250ml)溶液にn−BuLi(2.5M、96ml)を0℃で加え、30℃で1時間撹拌した。この溶液にB(OPr)(123g、651mmol)を−78℃で加え、30℃で2時間撹拌して白色懸濁液を得た。
塩酸(1M)を加えてpH=6〜7に調整し、有機層を濃縮して混合物を得た。
得られた混合物を石油エーテル(80ml)で洗浄し、化合物5を26g得た。
(iv)化合物7の合成
化合物5(5.00g、27.5mmol)、化合物6(4.42g、18.3mmol)、Pd(dba)(168mg、0.183mmol)、s−Phos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)(376mg、0.916mmol)、KPO(7.35g、34.6mmol)を反応容器に量りとり、トルエン(40ml)を加えた。この溶液を110℃で12時間反応させ、黒色懸濁液を得た。
O(50ml)を加え、EtOAc(55ml×3)で抽出した。
有機層を食塩水(20ml)で洗浄してNaSOで脱水した。
有機層を濾過して溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムで精製することにより1.3gのオイル状物質を得た。
(v)化合物8の合成
化合物7(6.5g、22mmol)のTHF(40ml)溶液にn−BuLi(2.5M、9.15ml)を0℃で滴下し、30℃に昇温して1時間撹拌した。この反応溶液を−78℃に冷却してCuCN(2.1g,23mmol)を加え、30℃で1時間撹拌した。
反応溶液を−78℃に冷却して化合物3(6.7g、20mmol)のTHF(40ml)溶液を加え、30℃で12時間撹拌して白色の懸濁液を得た。
懸濁液にHO(50ml)を加えると白色沈殿が生じた。
白色沈殿を濾過で回収してジクロロメタン(20ml)に溶解させ、アンモニア水(80ml)を加えて3時間撹拌した。
生成物をジクロロメタン(50ml×3)で抽出してNaSOで脱水した後、濃縮して黄色のオイル状物質を得た。このオイル状物質をシリカゲルカラムで精製し、化合物8を2.9g得た。
(vi)B−423の合成
化合物8(2.9g、4.8mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液にHCl/EtOAc(4M、50ml)を0℃で加え、30℃で2時間撹拌して淡黄色溶液を得た。
溶媒を減圧留去した後、ジクロロメタン(50ml)を加えた。
飽和NaHCO水溶液(100ml)で洗浄し、B−423を2.5g得た。
得られた配位子B−423のNMR帰属値を以下に示す。
[NMR]
H NMR(CDCl、δ、ppm):7.49(t、1H)、7.33(t、1H)、7.22(m、4H)、6.93(d、1H)、6.81(t、1H)、6.49(dd、4H)、6.46(br、1H)、3.56(s、12H)、2.63(sept、2H)、1.05(d、6H)、1.04(d、6H);
31P NMR(CDCl、δ、ppm):−61.6(s).
2)B−423/Ni錯体の合成
以下の操作は、全て窒素雰囲気下で行った。
以下、ニッケルアセチルアセトンをNi(acac)2と記載する。
Ni(acac)2(90.0mg、0.35mol)をトルエン(30mL)に溶解させ、配位子として上記で得られたB−423(200mg、0.36mmol)に加えた。
反応溶液を室温で10分撹拌後、溶媒を減圧留去して濃赤紫色固体を得た。
この生成物をヘキサン(10mL×2)で洗浄し、減圧乾燥することで赤紫色固体を得た(収量247g、収率99%)。得られた金属錯体のNMR帰属値を以下に示す。
[NMR]
HNMR(C,δ,ppm):7.65(d,1H)、7.25−7.35(m,3H)、7.07(t,2H)、6.97(d,1H)、6.51(t,1H)、6.26(d,4H)、4.83(brs,1H)、3.44(s,12H)、3.14(sept,2H)、1.44(d,6H)、1.29(s,6H)、1.21(d,6H).
<(製造例1〜3):アイオノマーベース樹脂前駆体の製造>
遷移金属錯体(B−27DM/Ni錯体又はB−423/Ni錯体)を用いて、エチレン/アクリル酸tBu共重合体、エチレン/アクリル酸tBu/アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン/アクリル酸tBu/ノルボルネン共重合体を製造した。特開2016−79408号公報に記載された製造例1又は製造例3を参考に共重合体の製造を行い、金属触媒種、金属触媒量、トリオクチルアルミニウム(TNOA)量、トルエン量、コモノマー種、コモノマー量、エチレン分圧、重合温度、重合時間など、適宜変更した製造条件及び製造結果を表1、得られた共重合体の物性を表2に示す。
Figure 2021008615
Figure 2021008615
<(樹脂1〜樹脂3):アイオノマーベース樹脂の製造>
内容積1.6mの攪拌翼付きSUS316L製のオートクレーブに、得られた製造例1〜製造例3の共重合体のうちいずれか1種を100kgとパラトルエンスルホン酸一水和物を2.0kg、トルエンを173L投入し、105℃で4時間撹拌した。イオン交換水173Lを投入し撹拌、静置した後、水層を抜き出した。以後、抜き出した水層のpHが5以上となるまで、イオン交換水の投入と抜き出しを繰り返し行った。残った溶液を42mmφベント装置付二軸押出機(L/D=45.5)に投入し、ベントを真空に引くことで溶媒を留去した。さらに押出機先端のダイスから連続的にストランドの形で押出される樹脂を水中で冷却しカッターで切断することにより樹脂のペレットを得た。
得られた樹脂のIRスペクトルにおいて、tBu基に由来する850cm−1付近のピークの消失及び、エステルのカルボニル基に由来する1730cm−1付近のピークの減少と、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来する1700cm−1付近のピークの増加を観測した。
これにより、t-Buエステルの分解及びカルボン酸の生成を確認し、アイオノマーベース樹脂1〜樹脂3を得た。得られた樹脂の物性を表3に示す。
Figure 2021008615
<実施例1〜5:アイオノマーの製造>
1)Naイオン供給源の作製
東芝機械製26mmφベント装置付き二軸押出機(L/D=64)に、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:Nucrel N1050H)を55wt%、炭酸ナトリウムを45wt%の配合比率となるように連続的に投入し、バレル設定温度150℃、スクリュー回転数150rpmの混練条件で、混練中に発生するガス及び水を真空ポンプにてベント部分より除去しながら押出を行った。さらに押出機先端のダイスから連続的にストランドの形で押出される樹脂を水中で冷却しカッターで切断することによりNaイオン供給源のペレットを得た。
2)Znイオン供給源の作製
東芝機械製26mmφベント装置付き二軸押出機(L/D=64)に、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:Nucrel N1050H)を54.5wt%、酸化亜鉛を45wt%、ステアリン酸亜鉛を0.5wt%の配合比率となるように連続的に投入し、バレル設定温度150℃、スクリュー回転数150rpmの混練条件で、混練中に発生するガス及び水を真空ポンプにてベント部分より除去しながら押出を行った。さらに押出機先端のダイスから連続的にストランドの形で押出される樹脂を水中で冷却しカッターで切断することによりZnイオン供給源のペレットを得た。
3):アイオノマーの作製
東芝機械製26mmφベント装置付き二軸押出機(L/D=65)に、樹脂1〜樹脂3のいずれか1種とNaイオン供給源又はZnイオン供給源を所望の中和度となるような配合比率で連続的に投入し、バレル設定温度200℃、スクリュー回転数150rpmの混練条件で、投入樹脂量100部に対して4部の割合で水を注入しつつ、混練中に発生するガス及び水を真空ポンプにてベント部分より除去しながら押出を行った。さらに押出機先端のダイスから連続的にストランドの形で押出される樹脂を水中で冷却しカッターで切断することによりアイオノマーのペレットを得た。
得られた樹脂のIRスペクトルにおいて、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来する1700cm−1付近のピークが減少し、カルボン酸塩基のカルボニル基に由来する1560cm−1付近のピークが増加していた。カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来する1700cm−1付近のピークの減少量から所望の中和度のアイオノマーが作製できていることを確認した。得られたアイオノマーの物性を表4に示す。
(比較例1):E/MAAベース二元アイオノマー
エチレンとメタクリル酸とメタクリル酸Naの共重合体であって、高圧ラジカル法プロセスによって製造されたアイオノマー樹脂(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:HIMILAN(登録商標) HIM1605)を参考アイオノマーとして用いた。物性を表4に示す。
(比較例2):E/MAAベース二元アイオノマー
エチレンとメタクリル酸とメタクリル酸Znの共重合体であって、高圧ラジカル法プロセスによって製造されたアイオノマー樹脂(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:HIMILAN(登録商標) HIM1652)を参考アイオノマーとして用いた。物性を表4に示す。
Figure 2021008615
<実施例と比較例の結果の考察>
表4の比較より、本発明のアイオノマーと従来の高圧ラジカル法のアイオノマーでエキスパンド性の指標である引張破断伸びはほぼ同等の値であった。従って、エキスパンド性能について両者はほぼ同等であると言える。その一方で、摩耗量は本発明のアイオノマーを用いた場合では非常に小さくなっており、同時に切削屑数も少なくなっている。本発明の新規アイオノマーを用いたダイシングテープは、従来のアイオノマーを用いたダイシングテープと比較し、エキスパンド性は従来品レベルを維持しつつ、切削屑の低減の観点でより優れていると言える。
本開示のアイオノマーを用いたダイシングテープは、従来のアイオノマーを用いたダイシングテープと比較して、切削屑の低減の観点で優れる。

Claims (10)

  1. 下記アイオノマーからなることを特徴とするダイシングテープ基材用樹脂。
    エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(A)と、
    カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)を必須構成単位として含む共重合体(P)中の、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されてなり、
    回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50度〜75度であることを特徴とするアイオノマー。
  2. 前記共重合体(P)の13C−NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり50個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  3. 前記共重合体(P)の13C−NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり5個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  4. 前記共重合体(P)が、共重合体中に前記構造単位(B)を2〜20mol%含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  5. 前記構造単位(A)が、エチレンに由来する構造単位であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  6. 前記共重合体(P)が周期表第8〜11族の遷移金属を含む遷移金属触媒を用いて製造されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  7. 前記遷移金属触媒がリンスルホン酸又はリンフェノール配位子とニッケル又はパラジウムからなる遷移金属触媒であることを特徴とする、請求項6に記載のダイシングテープ基材用樹脂。
  8. (a)請求項1〜7のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂と、(b)ポリオレフィン樹脂とを含む、ダイシングテープ基材用樹脂組成物。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂又は請求項8記載のダイシングテープ基材用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする、ダイシングテープ基材。
  10. 請求項9に記載のダイシングテープ基材を有することを特徴とする、ダイシングテープ。
JP2020112733A 2019-07-02 2020-06-30 ダイシングテープ基材用樹脂、それを含む樹脂組成物、ダイシングテープ基材及びダイシングテープ Active JP7501157B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019123619 2019-07-02
JP2019123619 2019-07-02

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021008615A true JP2021008615A (ja) 2021-01-28
JP7501157B2 JP7501157B2 (ja) 2024-06-18

Family

ID=74198543

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020112733A Active JP7501157B2 (ja) 2019-07-02 2020-06-30 ダイシングテープ基材用樹脂、それを含む樹脂組成物、ダイシングテープ基材及びダイシングテープ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7501157B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2022071065A1 (ja) * 2020-09-29 2022-04-07

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010074136A (ja) 2008-08-20 2010-04-02 Hitachi Chem Co Ltd 半導体装置の製造方法
EP3208285B2 (en) 2014-10-15 2023-01-25 Japan Polyethylene Corporation Production method of an ethylene and/or alpha-olefin-based ionomer

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2022071065A1 (ja) * 2020-09-29 2022-04-07
JP7186329B2 (ja) 2020-09-29 2022-12-08 株式会社クラレ アイオノマー樹脂、樹脂シートおよび合わせガラス

Also Published As

Publication number Publication date
JP7501157B2 (ja) 2024-06-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7175741B2 (ja) 多元系極性基含有オレフィン共重合体
WO2020262482A1 (ja) フィルム状成形体用樹脂及びそれからなる成形品
CN113454127B (zh) 多元离聚物
JP2021008615A (ja) ダイシングテープ基材用樹脂、それを含む樹脂組成物、ダイシングテープ基材及びダイシングテープ
KR20180103950A (ko) 겔 함량이 낮은 작용화된 에틸렌계 폴리머의 제조방법
WO2020262481A1 (ja) 射出成形用又は圧縮成形用樹脂組成物
JP2021008613A (ja) ガスケット用エチレン系アイオノマー及びその成形体
JP2021007744A (ja) ゴルフボール用樹脂
WO2020204063A1 (ja) 特定のアイオノマーを含むポリアミド樹脂組成物
WO2020262369A1 (ja) ラミネート用重合体組成物及びそれを用いた積層体
JP2021001332A (ja) 軟質系シート用エチレン系アイオノマー及びその成形体
JP7484495B2 (ja) 三次元網状構造体用エチレン系アイオノマー及びその成形体
JP2021001333A (ja) フィルム用樹脂組成物及びそれを用いたエチレン系フィルム
WO2023182498A1 (ja) 周期表2族金属含有アイオノマー
JP2021001331A (ja) エチレン系アイオノマー及びその中空成形容器
JP2022150804A (ja) 積層体用樹脂組成物、積層体及び液体包装袋
JP2021008614A (ja) チューブ用エチレン系アイオノマー及びその成形体
JP2023018968A (ja) 帯電防止用樹脂組成物
CN117480228A (zh) 包含官能化聚烯烃的热熔粘合剂

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20210727

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230324

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240116

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240520