JP2021006655A - スパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】内部に蓄積された歪が少なく、反りの発生を抑制可能なスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。【解決手段】クロム粉末の焼結体からなるスパッタリングターゲットであって、スパッタ面において、X線回折分析によって得られる(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きいことを特徴とする。クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程と、前記成形型に充填された前記クロム粉末を熱間等方圧加圧法によって焼結する焼結工程と、を有し、前記粉末充填工程における前記クロム粉末の粉末充填密度が3.5g/cm3以上であることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、クロム薄膜を成膜する際に使用されるスパッタリングターゲット、及び、このスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
クロム薄膜は、例えば、各種ディスプレィの配線膜、タッチパネルの抵抗変化膜等として使用されている。
ここで、例えば特許文献1−3においては、スパッタリングターゲットを用いたスパッタ法によってクロム薄膜を成膜することが開示されている。
ここで、例えば特許文献1−3においては、スパッタリングターゲットを用いたスパッタ法によってクロム薄膜を成膜することが開示されている。
特許文献1に記載されたスパッタリングターゲットにおいては、酸素濃度が5ppm以上500ppm以下であり、スパッタ面に対する結晶相の{200}面集積度が15%以上80%以下、または、{222}面集積度が15%以上80%以下とされている。なお、この特許文献1においては、原料粉末を焼結して得られた焼結体に対して、熱間圧延等の塑性変形処理を行うことにより、スパッタ面を上述の集合組織としている(特許文献1段落番号0040−0045参照)。
特許文献2に記載されたスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面の(200)面からの回折強度が、すべての面からの回折線の強度の合計の20%以上35%未満であり、結晶粒径の平均値が50μm以下、最大値が100μm以下とされている。なお、この特許文献2においては、クロム粉末を焼結して得られた焼結体に対して熱間圧延処理を行うことにより、スパッタ面を上述のような結晶構造にしている(特許文献2段落番号0009参照)。
特許文献3に記載されたスパッタリングターゲットにおいては、クロム粉末を熱間等方圧加圧法(HIP)によって焼結し、得られた焼結体をスライスすることによって製造されている。
ところで、特許文献1,2においては、上述のように、焼結体に対して熱間圧延処理を実施することによって、スパッタ面を(200)面に強く配向した組織としている。
ここで、焼結体に対して熱間圧延等の塑性加工を実施した場合、焼結体の内部に歪が蓄積することになる。このため、熱間圧延後の機械加工時に反りが生じ、製造歩留まりが低下するおそれがあった。また、上述のスパッタリングターゲットをバッキング材にボンディングしてスパッタ成膜した際に、スパッタリングターゲットに反りが生じ、スパッタリングターゲットがバッキング材から剥がれ落ちてしまうおそれがあった。
ここで、焼結体に対して熱間圧延等の塑性加工を実施した場合、焼結体の内部に歪が蓄積することになる。このため、熱間圧延後の機械加工時に反りが生じ、製造歩留まりが低下するおそれがあった。また、上述のスパッタリングターゲットをバッキング材にボンディングしてスパッタ成膜した際に、スパッタリングターゲットに反りが生じ、スパッタリングターゲットがバッキング材から剥がれ落ちてしまうおそれがあった。
また、特許文献3においては、熱間圧延を実施していないが、熱間等方圧加圧法(HIP)によって焼結する前のクロム粉末の粉末充填密度が低いと、クロム粉末に対して均一に圧力が負荷されず、焼結体の内部に歪が生じてしまい、スパッタ面において(200)面が強く配向する。そして、焼結体の内部の歪に起因して、機械加工時やスパッタ成膜時に反りが生じるおそれがあった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、内部に蓄積された歪が少なく、反りの発生を抑制可能なスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリングターゲットは、クロム粉末の焼結体からなるスパッタリングターゲットであって、スパッタ面において、X線回折分析によって得られる(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きいことを特徴とするとしている。
本発明のスパッタリングターゲットによれば、スパッタ面において、X線回折分析によって得られるスパッタ面の(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きくされており、(200)面に強く配向していないことから、スパッタリングターゲットの内部に歪が蓄積していないことになる。このため、機械加工時に反りが発生せず、製造歩留まりを向上させることができる。また、スパッタ成膜時に反りが発生せず、スパッタ成膜を安定して行うことができる。
ここで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、前記スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、X面における(110)面のピーク強度比との差、Y面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下とされていることが好ましい。
この場合、スパッタ面を含む直交する3つの面において、(110)面のピーク強度比の差が10%以下とされているので、スパッタリングターゲット全体が均一化され、さらに歪が蓄積されていないことになる。よって、さらに反りや割れの発生が抑制された高品質なスパッタリングターゲットを提供することができる。
この場合、スパッタ面を含む直交する3つの面において、(110)面のピーク強度比の差が10%以下とされているので、スパッタリングターゲット全体が均一化され、さらに歪が蓄積されていないことになる。よって、さらに反りや割れの発生が抑制された高品質なスパッタリングターゲットを提供することができる。
また、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、理論密度比が98%以上であることが好ましい。
この場合、理論密度比が98%以上とされているので、焼結時に十分に圧力が負荷され、焼結体の内部に歪が生じることが抑制されており、さらに反りや割れの発生を抑制できる。また、焼結体の内部に空孔が多く存在せず、この空孔に起因した反りや割れの発生も抑制することができる。
この場合、理論密度比が98%以上とされているので、焼結時に十分に圧力が負荷され、焼結体の内部に歪が生じることが抑制されており、さらに反りや割れの発生を抑制できる。また、焼結体の内部に空孔が多く存在せず、この空孔に起因した反りや割れの発生も抑制することができる。
本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、上述のスパッタリングターゲットを製造するスパッタリングターゲットの製造方法であって、クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程と、前記成形型に充填された前記クロム粉末を熱間等方圧加圧法によって焼結する焼結工程と、を有し、前記粉末充填工程における前記クロム粉末の粉末充填密度が3.5g/cm3以上であることを特徴としている。
この構成のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程において、前記クロム粉末の粉末充填密度が3.5g/cm3以上とされているので、熱間等方圧加圧法によって焼結する焼結工程において、充填されたクロム粉末に対して、均一に十分な圧力が負荷され、焼結体の内部に歪が蓄積されず、反りの発生を抑制した高品質なスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。また、スパッタリングターゲットの理論密度比を向上させることができる。
ここで、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記粉末充填工程における前記クロム粉末の粉末充填密度が3.8g/cm3以上であることが好ましい。
この場合、クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程において、前記クロム粉末の粉末充填密度が3.8g/cm3以上とされているので、充填されたクロム粉末に対して、さらに均一に十分な圧力を負荷させることができ、反りの発生を抑制した高品質なスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。また、スパッタリングターゲットの理論密度比をさらに向上させることができる。
この場合、クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程において、前記クロム粉末の粉末充填密度が3.8g/cm3以上とされているので、充填されたクロム粉末に対して、さらに均一に十分な圧力を負荷させることができ、反りの発生を抑制した高品質なスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。また、スパッタリングターゲットの理論密度比をさらに向上させることができる。
また、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記クロム粉末における酸素濃度が500質量ppm以下であることが好ましい。
この場合、クロム粉末における酸素濃度が500質量ppm以下に制限されているので、焼結体内への酸素の混入が抑制され、スパッタリングターゲットの理論密度比をさらに向上させることができる。
この場合、クロム粉末における酸素濃度が500質量ppm以下に制限されているので、焼結体内への酸素の混入が抑制され、スパッタリングターゲットの理論密度比をさらに向上させることができる。
さらに、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記クロム粉末の平均粒子径が110μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。
この場合、前記クロム粉末の平均粒子径が110μm以上とされているので、クロム粉末の比表面積が必要以上に大きくならず、クロム粉末における酸素濃度を低く抑えることができる。一方、前記クロム粉末の平均粒子径が250μm以下とされているので、クロム粉末同士の接触面積が十分に確保され、焼結性が向上する。このため、理論密度比を向上させることができ、スパッタリングターゲットの割れの発生を抑制することができる。
この場合、前記クロム粉末の平均粒子径が110μm以上とされているので、クロム粉末の比表面積が必要以上に大きくならず、クロム粉末における酸素濃度を低く抑えることができる。一方、前記クロム粉末の平均粒子径が250μm以下とされているので、クロム粉末同士の接触面積が十分に確保され、焼結性が向上する。このため、理論密度比を向上させることができ、スパッタリングターゲットの割れの発生を抑制することができる。
本発明によれば、内部に蓄積された歪が少なく、反りの発生を抑制可能なスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態であるスパッタリングターゲットについて、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態であるスパッタリングターゲットは、例えば、タッチパネルの抵抗変化膜として利用されるクロム薄膜を成膜する際に用いられるものである。
本実施形態であるスパッタリングターゲットは、例えば、タッチパネルの抵抗変化膜として利用されるクロム薄膜を成膜する際に用いられるものである。
本実施形態であるスパッタリングターゲットは、クロム粉末の焼結体からなり、スパッタ面において、図1に示すように、X線回折分析(XRD)によって得られる(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きくなっている。すなわち、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面が(110)面に配向した結晶組織とされている。
なお、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面において、X線回折分析(XRD)によって得られる(110)面のピーク強度I(110)と、(200)面のピーク強度I(200)と、(211)面のピーク強度I(211)と、から、以下の式で算出される(110)面のピーク強度比R(110)が、(200)面のピーク強度比R(200)及び(211)面のピーク強度比R(211)よりも大きく、かつ、(110)面のピーク強度比R(110)が33.3%を超え95%以下の範囲内とされており、(200)面のピーク強度比R(200)が5%以上50%未満の範囲内とされていることが好ましい。
R(110)(%)={I(110)/(I(110)+I(200)+I(211))}×100
R(200)(%)={I(200)/(I(110)+I(200)+I(211))}×100
R(211)(%)={I(211)/(I(110)+I(200)+I(211))}×100
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R(211)(%)={I(211)/(I(110)+I(200)+I(211))}×100
また、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、図2に示すように、スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、Z面とX面における(110)面のピーク強度比との差、Z面とY面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下とされている。
なお、Z面における(110)面のピーク強度比に対する、Z面とX面における(110)面のピーク強度比との差DX(110)、及び、Z面とY面における(110)面のピーク強度比との差DY(110)は、Z面の(110)面のピーク強度比RZ(110)と、X面の(110)面のピーク強度比RX(110)と、Y面の(110)面のピーク強度比RY(110)と、から、以下の式で算出される。
DX(110)(%)=(|RX(110)−RZ(110)|/RZ(110))×100
DY(110)(%)=(|RY(110)−RZ(110)|/RZ(110))×100
なお、ある面αにおける(110)面のピーク強度比Rα(110)とは、ある面αにおいて、X線回折分析(XRD)によって得られる(110)面、(200)面、(211)面のピーク強度をそれぞれ、Iα(110)、Iα(200)、Iα(211)としたときに、
Rα(110)(%)={Iα(110)/(Iα(110)+Iα(200)+Iα(211))}×100
で表される値である。
DX(110)(%)=(|RX(110)−RZ(110)|/RZ(110))×100
DY(110)(%)=(|RY(110)−RZ(110)|/RZ(110))×100
なお、ある面αにおける(110)面のピーク強度比Rα(110)とは、ある面αにおいて、X線回折分析(XRD)によって得られる(110)面、(200)面、(211)面のピーク強度をそれぞれ、Iα(110)、Iα(200)、Iα(211)としたときに、
Rα(110)(%)={Iα(110)/(Iα(110)+Iα(200)+Iα(211))}×100
で表される値である。
さらに、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、理論密度比が98%以上とされている。なお、理論密度比は、クロムの理論密度を7.19g/cm3とし、以下の式で算出される。
理論密度比(%)=実測密度(g/cm3)/理論密度(g/cm3)×100
理論密度比(%)=実測密度(g/cm3)/理論密度(g/cm3)×100
また、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、酸素濃度が1000質量ppm以下とされている。
さらに、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、平均結晶粒径が100μm以上250μm以下の範囲内とされている。
さらに、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、平均結晶粒径が100μm以上250μm以下の範囲内とされている。
以下に、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいて、スパッタ面の(110)面の強度、直交する3面における(110)面の強度比差、理論密度比、酸素濃度、平均結晶粒径を、上述のように規定した理由について説明する。
(スパッタ面の(110)面の強度)
焼結体に対して塑性加工を実施した場合や、焼結時に加圧圧力が不均一である場合には、焼結体の内部に歪が蓄積し、スパッタ面において(200)面が強く配向することになる。よって、(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度より高い場合には、焼結体の内部に歪が蓄積されておらず、機械加工時の反りの発生や、スパッタ成膜時の反りの発生を抑制することが可能となる。
焼結体に対して塑性加工を実施した場合や、焼結時に加圧圧力が不均一である場合には、焼結体の内部に歪が蓄積し、スパッタ面において(200)面が強く配向することになる。よって、(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度より高い場合には、焼結体の内部に歪が蓄積されておらず、機械加工時の反りの発生や、スパッタ成膜時の反りの発生を抑制することが可能となる。
ここで、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面のX線回折分析において、(110)面、(200)面、(211)面でピークが確認されることから、上述の式で算出される(110)面のピーク強度比R(110)が、(200)面のピーク強度比R(200)及び(211)面のピーク強度比R(211)よりも大きく、かつ、(110)面のピーク強度比R(110)が33.3%以上95%以下の範囲内とされ、(200)面のピーク強度比R(200)が5%以上50%未満の範囲内とされていることにより、焼結体の内部に蓄積された歪が十分に小さく、機械加工時の反りの発生や、スパッタ成膜時の反りの発生を抑制することが可能となる。
(直交する3面における(110)面のピーク強度比差)
図2に示すように、スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、X面における(110)面のピーク強度比との差、Y面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下である場合には、互いに直交する3つの面において、(110)面のピーク強度比の差がなく、焼結体内において等方的に圧力が負荷されていることになり、焼結体内部に歪が蓄積されておらず、機械加工時の反りの発生や、スパッタ成膜時の反りの発生を抑制することが可能となる。
なお、X面における(110)面のピーク強度比との差、Y面における(110)面のピーク強度比との差は、それぞれ9%未満であることが好ましく、8%未満であることがさらに好ましい。
図2に示すように、スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、X面における(110)面のピーク強度比との差、Y面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下である場合には、互いに直交する3つの面において、(110)面のピーク強度比の差がなく、焼結体内において等方的に圧力が負荷されていることになり、焼結体内部に歪が蓄積されておらず、機械加工時の反りの発生や、スパッタ成膜時の反りの発生を抑制することが可能となる。
なお、X面における(110)面のピーク強度比との差、Y面における(110)面のピーク強度比との差は、それぞれ9%未満であることが好ましく、8%未満であることがさらに好ましい。
(理論密度比)
本実施形態において、スパッタリングターゲットの理論密度比を98%以上とされていた場合には、焼結体の内部に存在する空孔が少なく、焼結時に十分に圧力が負荷されていたことになる。よって、焼結体の内部に歪が生じることが抑制され、さらに反りの発生を抑制することが可能となる。また、空孔に起因する反りや割れの発生を抑制することが可能となる。
なお、理論密度比は、99%以上とすることが好ましく、99.5%以上とすることがさらに好ましい。
本実施形態において、スパッタリングターゲットの理論密度比を98%以上とされていた場合には、焼結体の内部に存在する空孔が少なく、焼結時に十分に圧力が負荷されていたことになる。よって、焼結体の内部に歪が生じることが抑制され、さらに反りの発生を抑制することが可能となる。また、空孔に起因する反りや割れの発生を抑制することが可能となる。
なお、理論密度比は、99%以上とすることが好ましく、99.5%以上とすることがさらに好ましい。
(酸素濃度)
本実施形態において、スパッタリングターゲットの酸素濃度を1000質量ppm以下に制限した場合には、焼結体の内部に空孔が少なくなり、空孔に起因する反りや割れの発生を抑制することが可能となる。また、スパッタ成膜時における異常放電の発生を抑制することができる。
なお、酸素濃度は、500質量ppm以下とすることが好ましく、400質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態において、スパッタリングターゲットの酸素濃度を1000質量ppm以下に制限した場合には、焼結体の内部に空孔が少なくなり、空孔に起因する反りや割れの発生を抑制することが可能となる。また、スパッタ成膜時における異常放電の発生を抑制することができる。
なお、酸素濃度は、500質量ppm以下とすることが好ましく、400質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
(平均結晶粒径)
本実施形態において、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径が100μm以上250μm以下の範囲内である場合には、比較的結晶粒が小さくなり、スパッタ成膜が進行した場合であっても、スパッタ面に大きな凹凸が形成されず、スパッタ成膜時における異常放電の発生を抑制することができる。
なお、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径の下限は、110μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。一方、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径の上限は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径が100μm以上250μm以下の範囲内である場合には、比較的結晶粒が小さくなり、スパッタ成膜が進行した場合であっても、スパッタ面に大きな凹凸が形成されず、スパッタ成膜時における異常放電の発生を抑制することができる。
なお、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径の下限は、110μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。一方、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径の上限は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
以下に、本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法について、図3のフロー図を参照して説明する。
(クロム粉末準備工程S01)
まず、焼結原料となるクロム粉末を準備する。このクロム粉末においては、純度が99質量%以上であることが好ましい。
そして、このクロム粉末においては、酸素濃度が500質量ppm以下であることが好ましい。
さらに、クロム粉末の平均粒子径が110μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。
まず、焼結原料となるクロム粉末を準備する。このクロム粉末においては、純度が99質量%以上であることが好ましい。
そして、このクロム粉末においては、酸素濃度が500質量ppm以下であることが好ましい。
さらに、クロム粉末の平均粒子径が110μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。
(粉末充填工程S02)
次に、上述のクロム粉末を成形型に充填する。本実施形態では、成形型としてステンレス等からなる金属缶を用いている。
そして、クロム粉末の粉末充填密度を3.5g/cm3以上とし、好ましくは3.8g/cm3以上とする。本実施形態では、金属缶の側面に振動体を押し付けることでタッピングを施し、このタッピング時間を調整することにより、クロム粉末の粉末充填密度を制御している。
次に、上述のクロム粉末を成形型に充填する。本実施形態では、成形型としてステンレス等からなる金属缶を用いている。
そして、クロム粉末の粉末充填密度を3.5g/cm3以上とし、好ましくは3.8g/cm3以上とする。本実施形態では、金属缶の側面に振動体を押し付けることでタッピングを施し、このタッピング時間を調整することにより、クロム粉末の粉末充填密度を制御している。
(焼結工程S03)
上述のようにして、クロム粉末が充填された金属缶を真空密封する。そして、クロム粉末を真空密封した金属缶を、熱間等方圧加圧法を実施する熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入する。
そして、焼結温度を700℃以上1500℃以下の範囲内、保持時間を20分以上250分以下の範囲内、加圧圧力を70MPa以上150MPa以下の範囲内とし、金属缶に真空密封されたクロム粉末を焼結する。
上述のようにして、クロム粉末が充填された金属缶を真空密封する。そして、クロム粉末を真空密封した金属缶を、熱間等方圧加圧法を実施する熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入する。
そして、焼結温度を700℃以上1500℃以下の範囲内、保持時間を20分以上250分以下の範囲内、加圧圧力を70MPa以上150MPa以下の範囲内とし、金属缶に真空密封されたクロム粉末を焼結する。
(機械加工工程S04)
次に、室温まで冷却した後に、金属缶を切削して除去して焼結体を取り出し、この焼結体を所定の寸法となるように機械加工する。これにより、本実施形態であるスパッタリングターゲットが製造される。
次に、室温まで冷却した後に、金属缶を切削して除去して焼結体を取り出し、この焼結体を所定の寸法となるように機械加工する。これにより、本実施形態であるスパッタリングターゲットが製造される。
以下に、本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法において、粉末充填密度、クロム粉末の酸素濃度、クロム粉末の平均粒子径、焼結条件を、上述のように規定した理由について説明する。
(粉末充填密度)
粉末充填工程S02において、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度が低いと、その後の熱間静水圧プレス装置による焼結時において、成形型に充填されたクロム粉末に均一に圧力が負荷されず、焼結体の内部に歪が生じ、機械加工時等及びスパッタ成膜時に反りが生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、成形型に充填されたクロム粉末に均一に圧力が負荷されるように、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度を3.5g/cm3以上とし、好ましくは3.8g/cm3以上としている。
なお、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度は、4.0g/cm3以上とすることがさらに好ましい。
粉末充填工程S02において、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度が低いと、その後の熱間静水圧プレス装置による焼結時において、成形型に充填されたクロム粉末に均一に圧力が負荷されず、焼結体の内部に歪が生じ、機械加工時等及びスパッタ成膜時に反りが生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、成形型に充填されたクロム粉末に均一に圧力が負荷されるように、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度を3.5g/cm3以上とし、好ましくは3.8g/cm3以上としている。
なお、クロム粉末を成形型に充填する際の粉末充填密度は、4.0g/cm3以上とすることがさらに好ましい。
(クロム粉末の酸素濃度)
クロム粉末の酸素濃度を500質量ppm以下に制限することにより、焼結体の内部に酸素が混入することを抑制でき、焼結体の理論密度比を向上させることが可能となる。また、焼結体の内部に空孔が生じることを抑制でき、空孔に起因する焼結体の反りや割れの発生を抑えることができる。
なお、クロム粉末の酸素濃度は、400質量ppm以下とすることが好ましく、300質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
クロム粉末の酸素濃度を500質量ppm以下に制限することにより、焼結体の内部に酸素が混入することを抑制でき、焼結体の理論密度比を向上させることが可能となる。また、焼結体の内部に空孔が生じることを抑制でき、空孔に起因する焼結体の反りや割れの発生を抑えることができる。
なお、クロム粉末の酸素濃度は、400質量ppm以下とすることが好ましく、300質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
(クロム粉末の平均粒子径)
クロム粉末の平均粒子径を110μm以上とすることにより、クロム粉末の比表面積が必要以上に大きくならず、クロム粉末における酸素濃度を低く抑えることが可能となる。一方、クロム粉末の平均粒子径を250μm以下とすることにより、クロム粉末同士の接触面積が十分に確保され、焼結性を向上させることが可能となる。
なお、クロム粉末の平均粒子径の下限は、120μm以上とすることが好ましく、130μm以上とすることがさらに好ましい。また、クロム粉末の平均粒子径の上限は、240μm以下とすることが好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。
クロム粉末の平均粒子径を110μm以上とすることにより、クロム粉末の比表面積が必要以上に大きくならず、クロム粉末における酸素濃度を低く抑えることが可能となる。一方、クロム粉末の平均粒子径を250μm以下とすることにより、クロム粉末同士の接触面積が十分に確保され、焼結性を向上させることが可能となる。
なお、クロム粉末の平均粒子径の下限は、120μm以上とすることが好ましく、130μm以上とすることがさらに好ましい。また、クロム粉末の平均粒子径の上限は、240μm以下とすることが好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。
(焼結条件)
焼結工程S03における焼結温度を700℃以上1500℃以下の範囲内とすることにより、クロム粉末の焼結を十分に進行させることができ、理論密度比が高い焼結体を得ることが可能となる。
なお、焼結温度の下限は800℃以上とすることが好ましく、900℃以上とすることがさらに好ましい。また、焼結温度の上限は1400℃以下とすることが好ましく、1300℃以下とすることがさらに好ましい。
焼結工程S03における焼結温度を700℃以上1500℃以下の範囲内とすることにより、クロム粉末の焼結を十分に進行させることができ、理論密度比が高い焼結体を得ることが可能となる。
なお、焼結温度の下限は800℃以上とすることが好ましく、900℃以上とすることがさらに好ましい。また、焼結温度の上限は1400℃以下とすることが好ましく、1300℃以下とすることがさらに好ましい。
また、保持時間を20分以上250分以下の範囲内とすることにより、クロム粉末の焼結を十分に進行させることができ、理論密度比が高い焼結体を得ることが可能となる。
なお、保持時間の下限は30分以上とすることが好ましく、60分以上とすることがさらに好ましい。また、保持時間の上限は200分以下とすることが好ましく、150分以下とすることがさらに好ましい。
なお、保持時間の下限は30分以上とすることが好ましく、60分以上とすることがさらに好ましい。また、保持時間の上限は200分以下とすることが好ましく、150分以下とすることがさらに好ましい。
また、加圧圧力を70MPa以上150MPa以下の範囲内とすることにより、成形型に充填されたクロム粉末に均一に、かつ、十分に圧力を負荷させることができ、理論密度比が高く、かつ、歪の少ない焼結体を得ることができる。
なお、加圧圧力の下限は75MPa以上とすることが好ましく、80MPa以上とすることがさらに好ましい。また、加圧圧力の上限は140MPa以下とすることが好ましく、120MPa以下とすることがさらに好ましい。
なお、加圧圧力の下限は75MPa以上とすることが好ましく、80MPa以上とすることがさらに好ましい。また、加圧圧力の上限は140MPa以下とすることが好ましく、120MPa以下とすることがさらに好ましい。
以上のような構成とされた本実施形態であるスパッタリングターゲットによれば、スパッタ面において、X線回折分析(XRD)によって得られるスパッタ面の(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きくされているので、スパッタリングターゲットの内部に塑性加工による歪が蓄積しておらず、機械加工時及びスパッタ成膜時おける反りの発生を抑制することができる。
また、本実施形態においては、スパッタ面における(110)面のピーク強度比R(110)が、(200)面のピーク強度比R(200)及び(211)面のピーク強度比R(211)よりも大きく、かつ、(110)面のピーク強度比R(110)が33.3%以上95%以下の範囲内とされ、(200)面のピーク強度比R(200)が5%以上50%未満の範囲内とされているので、確実に、機械加工時及びスパッタ成膜時おける反りの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、Z面とX面における(110)面のピーク強度比との差、Z面とY面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下とされているので、スパッタ面を含む互いに直交する3つの面において、(110)面のピーク強度比との差がなく、焼結体内において等方的に圧力が負荷されていることになり、焼結体内部に歪が蓄積されておらず、機械加工時及びスパッタ成膜時おける反りの発生を抑制することができる。
また、本実施形態においては、理論密度比が98%以上とされているので、焼結工程S03において、クロム粉末に対して均一に、かつ、十分に圧力が負荷されていることになり、焼結体の内部に歪が生じることが抑制される。また、焼結体の内部に空孔が多く存在しておらず、この空孔に起因した割れ等の発生を抑制することができる。よって、さらに反りや割れの発生が抑制された高品質なスパッタリングターゲットを提供することができる。
本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法によれば、クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程S02において、クロム粉末の粉末充填密度が3.5g/cm3以上、好ましくは3.8g/cm3以上とされているので、熱間静水圧プレス装置によって焼結する焼結工程S03において、成形型に充填されたクロム粉末に対して、均一に十分な圧力が負荷され、焼結体の内部に歪が蓄積されず、反りの発生を抑制した高品質なスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。また、スパッタリングターゲットの理論密度比を向上させることができる。
さらに、本実施形態においては、クロム粉末における酸素濃度が500質量ppm以下に制限されているので、焼結体内への酸素の混入が抑制され、スパッタリングターゲットの理論密度比をさらに向上させることができる。また、スパッタリングターゲットの内部に空孔が生じることを抑制でき、空孔に起因するスパッタリングターゲットの反りや割れの発生を抑えることができる。
また、本実施形態においては、クロム粉末の平均粒子径が110μm以上250μm以下の範囲内とされているので、クロム粉末における酸素濃度を低く抑えることができるとともに、クロム粉末同士の接触面積を十分に確保することができ、理論密度比の高いスパッタリングターゲットを製造することができる。
さらに、本実施形態においては、焼結条件が上述のように規定されているので、成形型に充填されたクロム粉末に対して、均一にかつ十分な圧力を負荷した状態で、焼結を十分に進行させることができ、歪が少なく、かつ、理論密度比が高く、反りや割れの発生を抑制した高品質なスパッタリングターゲットを確実に製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、図2に示すように、矩形平板形状のスパッタリングターゲットを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、円板形状のスパッタリングターゲットや、スパッタ面が円筒面とされた円筒型スパッタリングターゲットであってもよい。なお、円筒型スパッタリングターゲットの場合には、径方向に直交する面をスパッタ面とし、X線回折分析(XRD)を行うことが好ましい。
本実施形態では、図2に示すように、矩形平板形状のスパッタリングターゲットを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、円板形状のスパッタリングターゲットや、スパッタ面が円筒面とされた円筒型スパッタリングターゲットであってもよい。なお、円筒型スパッタリングターゲットの場合には、径方向に直交する面をスパッタ面とし、X線回折分析(XRD)を行うことが好ましい。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
クロム粉末として、純度が99.9質量%であって、平均粒子径及び酸素濃度が表1に示すものを、それぞれ準備した。
ここで、クロム粉末の平均粒子径は、粒度分布測定装置(株式会社堀場製作社製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−960)を用いて、レーザ回折散乱法により測定した。具体的には、クロム粉末0.2gとヘキサメタリン酸水溶液(水:ヘキサメタリン酸(重量比)=1000:6)0.8gを、ディスポカップ内で混合して分散液を調製した。調製した分散液を、粒度分布測定装置内で循環させながら、クロム粉末の平均粒子径を測定した。
また、クロム粉末の酸素濃度は、酸素窒素分析装置(株式会社堀場製作社製EMGA−550)を用いて、不活性ガス−インパルス加熱融解法(非分散赤外線吸収法)によって測定した。
ここで、クロム粉末の平均粒子径は、粒度分布測定装置(株式会社堀場製作社製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−960)を用いて、レーザ回折散乱法により測定した。具体的には、クロム粉末0.2gとヘキサメタリン酸水溶液(水:ヘキサメタリン酸(重量比)=1000:6)0.8gを、ディスポカップ内で混合して分散液を調製した。調製した分散液を、粒度分布測定装置内で循環させながら、クロム粉末の平均粒子径を測定した。
また、クロム粉末の酸素濃度は、酸素窒素分析装置(株式会社堀場製作社製EMGA−550)を用いて、不活性ガス−インパルス加熱融解法(非分散赤外線吸収法)によって測定した。
次に、肉厚が2mmで、内部に縦200mm×横250mm×高さ600mmの空間を有する直方体のステンレス缶本体の中央部に、外径12mm×長さ500mm×厚さ2mmのステンレス管が垂直に取り付けられた構造のステンレス缶の空間内に、上述のクロム粉末を充填した。
このとき、ステンレス缶の側面に振動体を押し付けることによってタッピングを実施した。ここで、タッピング時間を調整することにより、粉末充填密度が表1に示す値となるように制御した。なお、タッピングによって生じた空間には、クロム粉末を随時追加し、最終的に、ステンレス缶の空間がクロム粉末で充填された状態とした。
なお、粉末充填密度(g/cm3)は、ステンレス缶の空間内に充填されたクロム粉末の重量を測定し、空間の容積で割ることによって算出した。
このとき、ステンレス缶の側面に振動体を押し付けることによってタッピングを実施した。ここで、タッピング時間を調整することにより、粉末充填密度が表1に示す値となるように制御した。なお、タッピングによって生じた空間には、クロム粉末を随時追加し、最終的に、ステンレス缶の空間がクロム粉末で充填された状態とした。
なお、粉末充填密度(g/cm3)は、ステンレス缶の空間内に充填されたクロム粉末の重量を測定し、空間の容積で割ることによって算出した。
次に、クロム粉末を400℃に加熱しながら、上述のステンレス管を通してステンレス缶の内部を8時間排気することにより、ステンレス缶内部の真空度を1×10−5Torrとし、ステンレス管の根元をガスバーナで加熱圧着して、クロム粉末をステンレス缶内に真空密封した。
次に、クロム粉末を真空密封したステンレス缶を、熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入し、この圧力容器内の雰囲気を、温度1100℃、圧力100MPaで90分間保持し、クロム粉末を焼結した。
その後、室温まで冷却したステンレス缶をシェーバーで切削し、内部の焼結体(縦180mm×横225mm×高さ540mm)を取り出した。この焼結体を、バンドソーにより、高さ方向に沿って、厚さ8mmの板材16枚に切断後、これらの板材にフライス及びロータリーサーフェイスによって機械加工を施し、厚さ6mm×縦530mm×横215mmの寸法を有するスパッタリングターゲットを製造した。
なお、比較例3においては、焼結体に対して塑性加工を実施した。塑性加工の条件は圧延開始温度800℃、圧延前厚み16mm、全圧下率50%、圧延後厚み8mmとした。また、その後、上述のように機械加工を実施した。
その後、室温まで冷却したステンレス缶をシェーバーで切削し、内部の焼結体(縦180mm×横225mm×高さ540mm)を取り出した。この焼結体を、バンドソーにより、高さ方向に沿って、厚さ8mmの板材16枚に切断後、これらの板材にフライス及びロータリーサーフェイスによって機械加工を施し、厚さ6mm×縦530mm×横215mmの寸法を有するスパッタリングターゲットを製造した。
なお、比較例3においては、焼結体に対して塑性加工を実施した。塑性加工の条件は圧延開始温度800℃、圧延前厚み16mm、全圧下率50%、圧延後厚み8mmとした。また、その後、上述のように機械加工を実施した。
上述のようにして得られたスパッタリングターゲットについて、X線回折分析(XRD測定)、理論密度比、酸素濃度、平均結晶粒径、スパッタリングターゲットの割れの有無、スパッタ成膜時の反りの有無を、以下のようにして評価した。
(スパッタ面のX線回折分析によるピーク強度比)
スパッタ面を含む直方体形状のサンプルを切り出した。スパッタ面(Z面)、Z面に直交するX面、Z面及びX面に直交するY面について、以下の条件でX線回折分析(XRD)を実施した。なお、試料は、SiC−Paper(grit 180)にて研磨の後、測定試料とした。
装置:理学電気社製(RINT−Ultima/PC)
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査範囲(2θ):5°〜80°
スリットサイズ:発散(DS)2/3度、散乱(SS)2/3度、受光(RS)0.8mm
測定ステップ幅:2θで0.02度
スキャンスピード:毎分2度
試料台回転スピード:30rpm
スパッタ面を含む直方体形状のサンプルを切り出した。スパッタ面(Z面)、Z面に直交するX面、Z面及びX面に直交するY面について、以下の条件でX線回折分析(XRD)を実施した。なお、試料は、SiC−Paper(grit 180)にて研磨の後、測定試料とした。
装置:理学電気社製(RINT−Ultima/PC)
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査範囲(2θ):5°〜80°
スリットサイズ:発散(DS)2/3度、散乱(SS)2/3度、受光(RS)0.8mm
測定ステップ幅:2θで0.02度
スキャンスピード:毎分2度
試料台回転スピード:30rpm
スパッタ面(Z面)における(110)面のピーク強度I(110)と、(200)面のピーク強度I(200)と、(211)面のピーク強度I(211)から、〔発明を実施するための形態〕の欄に記載した式により、(110)面のピーク強度比R(110)、(200)面のピーク強度比R(200)及び(211)面のピーク強度比R(211)を算出し、表2の「XRD強度比」の欄にそれぞれ記載した。
また、スパッタ面(Z面)の(110)面のピーク強度比RZ(110)と、X面の(110)面のピーク強度比RX(110)と、Y面の(110)面のピーク強度比RY(110)とから、〔発明を実施するための形態〕の欄に記載した式により、Z面とX面における(110)面のピーク強度比との差DX(110)、Z面とY面における(110)面のピーク強度比との差DY(110)を算出し、表2の「XRD強度比差」の欄にそれぞれ記載した。
(理論密度比)
得られたスパッタリングターゲットから測定試料を採取し、採取した測定試料の寸法および重量を測定して、スパッタリングターゲットの実測密度を算出した。クロムの理論密度を7.19g/cm3とし、〔発明を実施するための形態〕の欄において示した式により、理論密度比を算出した。評価結果を表2に示す。
得られたスパッタリングターゲットから測定試料を採取し、採取した測定試料の寸法および重量を測定して、スパッタリングターゲットの実測密度を算出した。クロムの理論密度を7.19g/cm3とし、〔発明を実施するための形態〕の欄において示した式により、理論密度比を算出した。評価結果を表2に示す。
(スパッタリングターゲットの酸素濃度)
得られたスパッタリングターゲットから測定試料を採取し、酸素窒素分析装置(株式会社堀場製作社製EMGA−550)を用いて、不活性ガス−インパルス加熱融解法(非分散赤外線吸収法)によって測定した。測定結果を表2に示す。
得られたスパッタリングターゲットから測定試料を採取し、酸素窒素分析装置(株式会社堀場製作社製EMGA−550)を用いて、不活性ガス−インパルス加熱融解法(非分散赤外線吸収法)によって測定した。測定結果を表2に示す。
(スパッタリングターゲットの平均結晶粒径)
得られたスパッタリングターゲットの中心からサンプルを切り出した。サンプルの表面(スパッタ面に相当する面)を鏡面研磨した後、研磨された表面の結晶粒界を、エッチング液を用いてエッチング処理した。エッチング液は、水:28vol%アンモニア水:31vol%過酸化水素水を体積比にて、4:1:1に混合することで調製した。次に、光学顕微鏡を用いて、研磨面を観察し、100倍の倍率にて組織写真を撮影した。組織写真中の結晶粒径を、ASTM E 112に記載の切断法にて計測した。
結晶粒径の平均は、切り出した1つのサンプルについて、任意に選択した3ヶ所で結晶粒径を計測し、その計測した結晶粒径の平均とした。評価結果を表2に示す。
得られたスパッタリングターゲットの中心からサンプルを切り出した。サンプルの表面(スパッタ面に相当する面)を鏡面研磨した後、研磨された表面の結晶粒界を、エッチング液を用いてエッチング処理した。エッチング液は、水:28vol%アンモニア水:31vol%過酸化水素水を体積比にて、4:1:1に混合することで調製した。次に、光学顕微鏡を用いて、研磨面を観察し、100倍の倍率にて組織写真を撮影した。組織写真中の結晶粒径を、ASTM E 112に記載の切断法にて計測した。
結晶粒径の平均は、切り出した1つのサンプルについて、任意に選択した3ヶ所で結晶粒径を計測し、その計測した結晶粒径の平均とした。評価結果を表2に示す。
(スパッタリングターゲットの割れ)
得られたスパッタリングターゲットを目視観察し、割れの有無を評価した。評価結果を表2に示す。
得られたスパッタリングターゲットを目視観察し、割れの有無を評価した。評価結果を表2に示す。
(スパッタリングターゲットの反り)
スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートに半田付けし、これをマグネトロン式のDCスパッタ装置に装着した。
次いで、下記のスパッタ条件にて60分間連続して、スパッタリング法による成膜を実施した。
ターゲット−ガラス基板との距離:60mm
到達真空度:5×10−4Pa
Arガス圧:0.3Pa
スパッタ出力:直流1000W
スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートに半田付けし、これをマグネトロン式のDCスパッタ装置に装着した。
次いで、下記のスパッタ条件にて60分間連続して、スパッタリング法による成膜を実施した。
ターゲット−ガラス基板との距離:60mm
到達真空度:5×10−4Pa
Arガス圧:0.3Pa
スパッタ出力:直流1000W
成膜後、スパッタリングターゲットをバッキングプレートから剥離し、その縦方向の反りを測定した。ターゲットは、縦方向長さは530mmであるが、測定した反り量を300mmあたりの反り量に換算し、300mm当たりの反り量が1mm以上であった場合に、反りが「有り」とした。評価結果を表2に示す。
比較例1においては、粉末充填密度が3.3g/cm3と低く、スパッタ面において(200)面の配向が強くなり、(110)面よりもピーク強度比が高くなった。このため、スパッタ成膜時に反りが生じた。
比較例2においては、クロム粉末の平均粒子径が大きく、かつ、粉末充填密度が3.1g/cm3と低く、焼結時に割れが生じ、焼結体を得ることができなかった。このため、その後の評価を中止した。
比較例3においては、焼結体に対して塑性加工を施したため、スパッタ面において(200)面の配向が強くなり、(110)面よりもピーク強度比が高くなった。このため、スパッタ成膜時に反りが生じた。
比較例2においては、クロム粉末の平均粒子径が大きく、かつ、粉末充填密度が3.1g/cm3と低く、焼結時に割れが生じ、焼結体を得ることができなかった。このため、その後の評価を中止した。
比較例3においては、焼結体に対して塑性加工を施したため、スパッタ面において(200)面の配向が強くなり、(110)面よりもピーク強度比が高くなった。このため、スパッタ成膜時に反りが生じた。
これに対して、本発明例1−9においては、粉末充填密度が3.5g/cm3以上とされていることから、焼結時に均一かつ十分な圧力が負荷され、スパッタ面において(110)面の配向が強くなり、(110)面のピーク強度比が最も高くなった。このため、スパッタ成膜時の反りが抑制された。
なお、本発明例8においては、粉末充填密度が比較的低く、スパッタリングターゲットの理論密度比が低くなり、XRD強度比差も大きくなった。このため、微小なクラックが観察されたが実用上問題はなかった。
また、本発明例9においては、クロム粉末の平均粒子径が比較的小さく、クロム粉末の酸素濃度が高かったため、スパッタリングターゲットの理論密度比が低くなった。このため、微小なクラックが観察されたが実用上問題はなかった。
なお、本発明例8においては、粉末充填密度が比較的低く、スパッタリングターゲットの理論密度比が低くなり、XRD強度比差も大きくなった。このため、微小なクラックが観察されたが実用上問題はなかった。
また、本発明例9においては、クロム粉末の平均粒子径が比較的小さく、クロム粉末の酸素濃度が高かったため、スパッタリングターゲットの理論密度比が低くなった。このため、微小なクラックが観察されたが実用上問題はなかった。
以上のように、本発明例によれば、内部に蓄積された歪が少なく、反りの発生を抑制可能なスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提供可能であることが確認された。
Claims (7)
- クロム粉末の焼結体からなるスパッタリングターゲットであって、
スパッタ面において、X線回折分析によって得られる(110)面のピーク強度が、他の面のピーク強度よりも大きいことを特徴とするスパッタリングターゲット。 - 前記スパッタ面をZ面とし、このZ面に対して直交する面をX面とし、Z面及びX面に対して直交する面をY面とした場合に、Z面における(110)面のピーク強度比を基準として、Z面とX面における(110)面のピーク強度比との差、Z面とY面における(110)面のピーク強度比との差が、それぞれ10%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
- 理論密度比が98%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するスパッタリングターゲットの製造方法であって、
クロム粉末を成形型に充填する粉末充填工程と、前記成形型に充填された前記クロム粉末を熱間等方圧加圧法によって焼結する焼結工程と、を有し、
前記粉末充填工程における前記クロム粉末の粉末充填密度が3.5g/cm3以上であることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記粉末充填工程における前記クロム粉末の粉末充填密度が3.8g/cm3以上であることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記クロム粉末における酸素濃度が500質量ppm以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記クロム粉末の平均粒子径が110μm以上250μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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-
2019
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