前記特許文献1に開示された超音波自動疵種別判別方法のニューロ回路は、その[0014]段落に、検査データで総合的に学習される。すなわち、特許文献1に開示された機械学習は、探傷の実施で得られる検査データを用いている。
本発明は、特許文献1とは異なる機械学習を提案するものであり、その目的は、超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報に基づく機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成できる超音波探傷用機械学習装置、超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラム、ならびに、前記超音波探傷用機械学習装置で生成された超音波探傷用の学習モデルを備えた超音波探傷装置を提供することである。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる超音波探傷用機械学習装置は、機械学習に用いられる学習データを記憶する学習データ記憶部と、前記学習データ記憶部に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成する機械学習部とを備え、前記学習データは、互いに対応付けられた、超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報、ならびに、欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を含む。
このような超音波探傷用機械学習装置は、超音波探傷の試験結果情報およびタグ情報だけでなく、試験条件情報も学習データとして用いている。このように上記超音波探傷用機械学習装置は、試験結果だけでなく、試験条件情報に基づく機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成できる。そして、超音波探傷では、試験条件は、試験結果に影響を与えるので、この試験条件も学習データとして用いる上記超音波探傷用機械学習装置は、超音波探傷用の学習モデルにおける推論精度の向上が期待できる。なお、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の信号(例えばAスコープやBスコープやCスコープ等)である。
他の一態様では、上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記試験条件は、被検査物に関わる被検査物情報、前記超音波探傷の探傷条件に関わる探傷条件情報、および、前記被検査物上での前記超音波探傷の探傷位置に関わる探傷位置情報のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記被検査物情報は、前記被検査物の種類(母材、溶接部(溶接部分、熱影響部分および溶接周辺母材等)、積層界面および溶射層等)を表す被検査物種類情報、前記被検査物の材質や特性を表す被検査物材質情報(音速、密度、音響インピーダンス、弾性、粒径等)、前記被検査物の形状を表す被検査物形状情報(ねじ山、開先形状等)、および、前記被検査物の製造方法(溶接、鋳造、鍛造、溶射および積層等)種類を表す被検査物製造方法情報のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記探傷条件情報は、前記超音波探傷に用いられる超音波探触子の諸元を表す探触子諸元情報(周波数、振動子寸法、屈折角度および超音波種類(縦波、横波および表面波)等)、および、超音波探傷装置の設定値を表す超音波探傷条件情報(前記超音波探傷の試験周波数(受信周波数)を表す試験周波数情報、パルス繰り返し周波数、前記超音波探傷の探傷深度を表すゲイン情報、前記超音波探傷における送信開始タイミングからの受信開始タイミング(ディレイ)を表す受信時間情報、および、受信開始タイミングから受信終了タイミングまでの時間(レンジ)を表す受信時間情報(受信信号長情報)、音速、探傷モード、および、送信用探触子と受信用探触子との間の距離である探触子間距離等)のうちの少なくとも1つを含む。
超音波探傷では、試験結果には、被検査物や探傷条件や探傷位置が影響する。上記超音波探傷機械学習装置は、前記試験条件が被検査物に関わる被検査物情報、前記超音波探傷の探傷条件に関わる探傷条件情報、および、前記被検査物上での前記超音波探傷の探傷位置に関わる探傷位置情報のうちの少なくとも1つを含むので、機械学習に、試験結果に影響を与える要素を好適に考慮できる。
他の一態様では、これら上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の第1信号と、前記被検査物における欠陥の無い部分に対する前記超音波探傷の実施によって得られた前記超音波探傷の第2信号との差異を抽出した差異抽出結果である。
このような超音波探傷機械学習装置は、例えば前記第1信号と前記第2信号との差分信号等の差異抽出結果が前記超音波探傷の試験結果とされるので、欠陥に基づく出力信号成分で機械学習できる。
他の一態様では、これら上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の信号における周波数スペクトルである。好ましくは、上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記周波数スペクトルは、前記超音波探傷の信号に対し、時間領域の情報を残した周波数領域の解析によって得られた周波数スペクトルである。好ましくは、上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記周波数スペクトルは、前記超音波探傷の信号を短時間フーリエ変換(ショートタイムフーリエ変換)またはウェーブレット変換によって得られた周波数スペクトルである。
これによれば、超音波探傷の信号における周波数スペクトルで機械学習する超音波探傷機械学習装置が提供できる。
他の一態様では、これら上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の第1信号における第1周波数スペクトルと、前記被検査物における欠陥の無い部分に対する前記超音波探傷の実施によって得られた前記超音波探傷の第2信号における第2周波数スペクトルとの差異を抽出した第2差異抽出結果である。
このような超音波探傷機械学習装置は、例えば前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの差分信号や相関係数等の第2差異抽出結果が前記超音波探傷の試験結果とされるので、欠陥に基づく周波数スペクトル成分で機械学習できる。
他の一態様では、これら上述の超音波探傷用機械学習装置において、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物における2方向以上の各位置での各試験結果の組を含む。
これによれば、被検査物における2方向以上の各位置での各試験結果の組で機械学習する超音波探傷機械学習装置が提供できる。
本発明の他の一態様にかかる超音波探傷用機械学習方法は、機械学習に用いられる学習データを取得する取得工程と、前記取得工程で取得した学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成する機械学習工程とを備え、前記学習データは、互いに対応付けられた、超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報、ならびに、欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を含む。本発明の他の一態様にかかる超音波探傷用機械学習プログラムは、コンピュータを、機械学習に用いられる学習データを記憶する学習データ記憶部、および、前記学習データ記憶部に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成する機械学習部、として機能させるための超音波探傷用機械学習プログラムであって、前記学習データは、互いに対応付けられた、超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報、ならびに、欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を含む。
このような超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、超音波探傷の試験結果情報およびタグ情報だけでなく、試験条件情報も学習データとして用いている。このように上記超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、試験結果だけでなく、試験条件情報に基づく機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成できる。そして、超音波探傷では、試験条件は、試験結果に影響を与えるので、この試験条件も学習データとして用いる上記超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、超音波探傷用の学習モデルにおける推論精度の向上が期待できる。
本発明の他の一態様にかかる超音波探傷装置は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の試験結果を取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果に対する前記超音波探傷の試験条件を入力する入力部と、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果および前記入力部から入力された前記超音波探傷の試験条件に、これら上述のいずれかの超音波探傷機械学習装置によって生成された学習モデルを用いることによって、前記被検査物の欠陥を判定する判定部とを備える。
このような超音波探傷装置は、これら上述のいずれかの超音波探傷機械学習装置によって生成された学習モデルを用いるので、欠陥の有無の判定や欠陥の種類の判定における精度の向上が期待できる。
他の一態様では、上述の超音波探傷装置において、前記学習モデルは、欠陥の種類ごとに、欠陥有りの確率を出力し、前記判定部は、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である場合、欠陥有り、および、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である欠陥の種類を、判定結果とし、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合、欠陥無しを前記判定結果とする。好ましくは、上述の超音波探傷装置において、前記判定結果および前記判定結果に対応する欠陥有りの確率を表示する表示部をさらに備える。
これによれば、欠陥有りの確率に基づいて欠陥の有無を弁別する超音波探傷装置が提供できる。特に、前記判定結果および前記判定結果に対応する欠陥有りの確率を表示するように上記超音波探傷装置を構成することで、試験者(ユーザ、オペレータ)が上記超音波探傷装置による判定結果の妥当性を評価できる。
他の一態様では、上述の超音波探傷装置において、前記学習モデルは、欠陥の種類ごとに、欠陥有りの確率を出力し、前記判定部は、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された閾値以上であるか否か、および、当該欠陥の種類に対応して予め設定された第2閾値以下であるか否かをそれぞれ判定し、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である場合、欠陥有り、および、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である欠陥の種類を、判定結果とし、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記第2閾値以下である場合、欠陥無しを前記判定結果とし、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合であって、かつ、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記第2閾値を越えている場合、判定不能を、判定結果とする。
これによれば、欠陥有りの確率に基づいて欠陥の有無を弁別する超音波探傷装置が提供できる。特に、判定不能を設けることで、欠陥有りおよび欠陥無しの判定結果に関し、信頼性の高い判定結果が得られ、判定不能の試験結果を試験者(ユーザ、オペレータ)が判定することで、全ての試験結果に対し、より信頼性の高い判定結果が得られる。また、判定不能の試験結果のみを判定すればよいので、全ての試験結果を試験者が判定する場合に較べて、試験者の負担が軽減できる。
他の一態様では、これら上述の超音波探傷装置において、前記超音波探傷の試験結果に基づいて欠陥のサイズを求める欠陥サイズ演算部をさらに備える。好ましくは、上述の超音波探傷装置において、前記データ取得部は、被検査物における互いに異なる複数の位置で超音波探傷の実施によって得られた複数の超音波探傷の試験結果を取得し、前記欠陥サイズ演算部は、前記複数の超音波探傷の試験結果に基づいて欠陥のサイズを求める。
これによれば、欠陥のサイズを求める超音波探傷装置が提供できる。例えば、前記試験結果がいわゆるAスコープであれば、Flat Bottom Hole換算した欠陥の面積が前記欠陥のサイズとして求めることができる。また例えば、前記試験結果(いわゆるAスコープ)にきず上端回折波ときず下端回折波とを含む場合、きず高さが前記欠陥のサイズとして求められる。また例えば、前記試験結果が、一方向に沿った複数の位置での試験結果の組(いわゆるBスコープ)であれば、きず長さまたはきず高さが前記欠陥のサイズとして求められる。さらに、前記試験結果の組が被検査物における2方向(例えば互いに直交する2方向や互いに斜行する2方向)以上の探傷面の各位置での各試験結果の組(例えば2方向以上のBスコープ)であれば、より正確なきずの形状や分布が求められる。また例えば、探傷面(例えばXY平面)において、2方向(例えばX方向およびY方向)に沿った任意の複数の位置それぞれで超音波探傷を実施することによって前記複数の試験結果(いわゆるCスコープ)が取得され、前記探傷面(例えばXY平面)での欠陥の面積(例えばX方向に沿った欠陥の長さおよびY方向に沿った欠陥の長さ)が前記欠陥のサイズとして求められる。また例えば、前記AスコープやBスコープからきず高さが求められる場合、前記Cスコープと組み合わせることで、欠陥の体積が前記欠陥のサイズとして求められる。あるいは、複数の探傷面における前記Cスコープを組み合わせることで、欠陥の体積が前記欠陥のサイズとして求められる。
他の一態様では、上述の超音波探傷装置において、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記入力部から入力された前記超音波探傷の試験条件を表す試験条件情報、ならびに、前記判定部で判定された前記欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を、互いに対応付けて前記学習データとして前記学習データ記憶部に記憶する記憶処理部と、機械学習部に、前記学習データ記憶部に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成させる再機械学習部とをさらに備える。
このような超音波探傷装置は、超音波探傷の実施によって得られた試験結果で学習データをアップデート(更新)でき、このアップデートした学習データで再機械学習することで超音波探傷用の学習モデルをアップデートできる。
本発明にかかる超音波探傷用機械学習装置、超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報に基づく機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成できる。本発明によれば、このような超音波探傷用機械学習装置で生成された超音波探傷用の学習モデルを備えた超音波探傷装置が提供できる。
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における超音波探傷用機械学習装置は、機械学習に用いられる学習データを記憶する学習データ記憶部と、前記学習データ記憶部に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成する機械学習部とを備える。ここで、本実施形態では、前記学習データは、互いに対応付けられた、超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報、ならびに、欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を含む。そして、実施形態における超音波探傷装置は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の試験結果を取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果に対する前記超音波探傷の試験条件を入力する入力部と、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果および前記入力部から入力された前記超音波探傷の試験条件に、上述の超音波探傷機械学習装置によって生成された学習モデルを用いることによって、前記被検査物の欠陥を判定する判定部とを備える。このような超音波探傷用機械学習装置および超音波探傷装置について、超音波探傷用機械学習装置を備えた超音波探傷装置の場合を用いて、以下、より具体的に説明する。なお、超音波探傷用機械学習装置は、超音波探傷装置とは別個の単体の装置であっても良く、超音波探傷装置は、超音波探傷用機械学習装置を備えずに、単体の装置であっても良い。
図1は、実施形態における、超音波探傷用機械学習装置を備えた超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。図2は、前記超音波探傷装置に記憶された学習データテーブルを示す図である。
実施形態における超音波探傷装置Dは、例えば、図1に示すように、超音波探触子UPと、制御処理部1と、入力部2と、表示部3と、インターフェース部(IF部)4と、記憶部5とを備える。
超音波探触子(超音波プローブ)UPは、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、被検査物へ超音波を送信し、前記超音波に基づいて前記被検査物から来た、例えば前記超音波の反射波等を受信する素子である。なお、本実施形態では、前記超音波を送信する送信用探触子と前記反射波を受信する受信用探触子とは、1つの素子で兼用されているが、別体の2つ以上の素子で構成されても良い。超音波探触子UPは、電気信号と超音波(超音波信号)との間で相互に信号を変換できる電気機械変換素子である。超音波探触子UPは、主に、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波(超音波信号)との間で相互に信号を変換する圧電素子を備えて構成されるが、これに限定されるものではなく、レーザ超音波や電磁超音波等であっても良い。超音波探触子UPは、制御処理部1から供給された電気信号(送信信号)に応じて超音波を生成して被検査物へ送信し、前記超音波に基づいて前記被検査物から反射した反射波を受信し、前記受信した反射波に応じた電気信号(受信信号)を生成して制御処理部1へ出力する。
好ましくは、超音波探傷装置Dは、制御処理部1、入力部2、表示部3、インターフェース部(IF部)4および記憶部5を備える超音波探傷装置本体と、超音波探触子UPとから成り、超音波探触子UPは、前記超音波探傷装置本体に対し脱着可能に構成され、例えば被検査物や探傷試験目的等に応じた(適した)超音波探触子が前記超音波探傷装置本体に装着される。
入力部2は、制御処理部1に接続され、被検査物の名称(シリアル番号やID等を含む)および超音波探傷の試験結果に対する前記超音波探傷の試験条件等の各種データや、探傷試験の開始を指示するコマンド等の各種コマンドを入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチを備えた操作パネルや、キーボードや、マウス等である。
表示部3は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、入力部2から入力されたコマンドやデータ、および、当該超音波探傷装置Dによって得られた超音波探傷の試験結果等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置である。
なお、入力部2および表示部3からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部2は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置である。このタッチパネルでは、表示部3の表示面上に前記位置入力装置が設けられ、表示部3に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、前記位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として超音波探傷装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い超音波探傷装置Dが提供される。
IF部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS−232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部4は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
記憶部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、超音波探傷装置Dの各部UP、2〜5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、後述の学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成する機械学習プログラムや、超音波探触子UPの出力信号を所定の信号処理を実施することによって超音波探傷の試験結果を生成する超音波信号処理プログラムや、超音波探傷の試験結果および入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件に、後述のように機械学習された超音波探傷用の学習モデルを用いることによって、被検査物の欠陥を判定する判定プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、前記超音波探傷の試験結果における前記超音波探傷の試験条件に関わる試験条件情報、前記超音波探傷の試験結果における欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報、ならびに、被検査物の名称等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部5は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部5は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部5は、比較的大きな記憶容量を持つハードディスク装置を備えても良い。そして、本実施形態では、記憶部5は、学習データ記憶部51および試験結果情報記憶部52を機能的に備える。
学習データ記憶部51は、機械学習に用いられる学習データを記憶するものである。前記学習データは、本実施形態では、例えば、互いに対応付けられた、前記試験結果情報、前記試験条件情報および前記タグ情報を含む。
前記試験結果情報で表される超音波探傷の試験結果は、例えば、本実施形態では、いわゆるAスコープであるが、後述するように、これに限定されるものではなく、適宜な種類の超音波探傷に基づくデータが利用できる。
前記試験条件情報で表される試験条件は、好ましくは、前記超音波探傷の試験結果に影響を与える要素であり、本実施形態では、例えば、被検査物に関わる被検査物情報、前記超音波探傷の探傷条件に関わる探傷条件情報、および、前記被検査物上での前記超音波探傷の探傷位置に関わる探傷位置情報のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、前記被検査物情報は、前記被検査物の種類(母材、溶接部(溶接部分、熱影響部分および溶接周辺母材等)、積層界面および溶射層等)を表す被検査物種類情報、前記被検査物の材質や特性を表す被検査物材質情報(音速、密度、音響インピーダンス、弾性、粒径等)、前記被検査物の形状を表す被検査物形状情報(ねじ山、開先形状等)、および、前記被検査物の製造方法(溶接、鋳造、鍛造、溶射および積層等)種類を表す被検査物製造方法情報のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、前記探傷条件情報は、前記超音波探傷に用いられる超音波探触子の諸元を表す探触子諸元情報(周波数、振動子寸法、屈折角度および、超音波種類(縦波、横波および表面波)等)、および、超音波探傷装置の設定値を表す超音波探傷条件情報(前記超音波探傷の試験周波数(受信周波数)を表す試験周波数情報、パルス繰り返し周波数、前記超音波探傷の探傷深度を表すゲイン情報、前記超音波探傷における送信開始タイミングからの受信開始タイミング(ディレイ)を表す受信時間情報、および、受信開始タイミングから受信終了タイミングまでの時間(レンジ)を表す受信時間情報(受信信号長情報)、音速、探傷モード、および、送信用探触子と受信用探触子との間の距離である探触子間距離等)のうちの少なくとも1つを含む。
ここで、各試験条件は、以下の通り、その試験結果に影響を与える。被検査物の種類によって発生する欠陥の種類や発生位置が異なり、前記試験結果が影響される。音速により、欠陥に起因する信号の発生する伝搬時間が異なり、前記試験結果が影響される。欠陥の密度、音響インピーダンスおよび弾性により、欠陥に起因する信号の強度が異なり、前記試験結果が影響される。材料組織の粒径が大きいほど超音波が散乱する。このため、粒径により、超音波の減衰やノイズの発生等、欠陥に起因する信号の識別性が影響され、前記試験結果が影響される。底面、コーナー、側面、屈折部等の形状によって超音波は、反射し、エコーや多重エコーが発生する。このため、ねじ山や開先形状等により、前記試験結果の信号が、欠陥に起因する信号か否かの判定が影響され、前記試験結果が影響される。超音波は、界面によって反射し、エコーや多重エコーが発生する。このため、溶接、鋳造、鍛造、溶射および積層等の製造方法により、前記試験結果の信号が、欠陥に起因する信号か否かの判定が影響され、前記試験結果が影響される。また、前記製造方法により、欠陥の種類や発生位置が異なり、前記試験結果が影響される。
周波数および振動子寸法により、照射される超音波のビーム幅が異なり、前記試験結果が影響される。屈折角度により、被検査物中を伝播する超音波ビームの中心角度が影響され、前記試験結果が影響される。超音波の種類により、音速や波長が変わり、検出可能な欠陥サイズが影響され、前記試験結果が影響される。また、超音波の種類により、モード変換が生じるため、欠陥に起因する信号の識別性が影響され、前記試験結果が影響される。繰り返し周波数が高いと残留エコー等のノイズが発生する可能性があるため、超音波探傷条件により、前記試験結果が影響される。
このような学習データは、本実施形態では、テーブル形式で学習データ記憶部51に記憶されている。この学習データを登録する学習データテーブルLDは、例えば、図2に示すように、学習データを特定し識別するための識別子である整理番号を登録する整理番号フィールド511と、整理番号フィールド511に登録された整理番号を持つ学習データの試験結果情報を登録する試験結果情報フィールド512と、整理番号フィールド511に登録された整理番号を持つ学習データの試験条件情報を登録する試験条件情報フィールド513と、整理番号フィールド511に登録された整理番号を持つ学習データのタグ情報を登録するタグ情報フィールド514とを備え、学習データごとにレコードを備える。試験条件情報フィールド513は、試験条件情報における被検査物情報、探傷条件情報および探傷位置情報それぞれを登録する被検査物情報フィールド5131、探傷条件情報フィールド5132および探傷位置情報フィールド5133の各サブフィールドを備える。そして、本実施形態では、被検査物情報フィールド5131は、被検査物情報における種類、材質、・・・等それぞれを登録する種類フィールド51311、材質フィールド51312、・・・等の各サブフィールドを備える。探傷条件情報フィールド5132は、探傷条件情報における超音波探触子UPの諸元、周波数、・・・等それぞれを登録する諸元フィールド51321、周波数フィールド51322、・・・等の各サブフィールドを備える。タグ情報フィールド514は、欠陥の有無および欠陥の種類それぞれを登録する欠陥有無フィールド5141および欠陥種類フィールド5142の各サブフィールドを備える。
試験結果情報フィールド512には、試験結果そのものが登録されても良いが、本実施形態では、試験結果の電子データ(電子ファイル)に付されたファイル名が登録される。試験結果の電子データは、学習データテーブルLDとは、別に、学習データ記憶部51に記憶される。
このような学習データは、例えば、入力部2から入力され、学習データ記憶部51に記憶されて良い。あるいは、例えば、学習データを記憶した、例えばUSBメモリやSDカード(登録商標)等の記憶媒体からIF部4を介して前記学習データが入力され、学習データ記憶部51に記憶されて良い。あるいは、例えば、学習データを記録した、例えばCD−R(Compact Disc Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体から、IF部4に接続されたそのドライブ装置を介して前記学習データが入力され、学習データ記憶部51に記憶されて良い。あるいは、例えば、学習データを管理するサーバ装置から、通信ネットワークおよびIF部4を介して前記学習データが入力され、学習データ記憶部51に記憶されて良い。
試験結果情報記憶部52は、超音波探触子UPで測定され、超音波探触子UPの出力信号および前記出力信号を後述の超音波信号処理部13で信号処理した超音波探傷の試験結果を記憶するものである。なお、試験結果情報記憶部52には、超音波探触子UPの出力信号およびその超音波探傷の試験結果のうちのいずれか一方のみが記憶されても良い。
制御処理部1は、超音波探傷装置Dの各部UP、2〜5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成し、超音波探触子UPによる超音波探傷の試験結果および入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件に、前記超音波探傷用の学習モデルを用いることによって、被検査物の欠陥を判定するための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11、機械学習部12、超音波信号処理部13および判定部14を機能的に含む。
制御部11は、超音波探傷装置Dの各部UP、2〜5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、超音波探傷装置D全体の制御を司るものである。
機械学習部12は、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成するものである。前記超音波探傷用の学習モデルは、例えばニューラルネットワーク(neural Network)、サポートベクターマシン(Support Vector Machine、SVM)およびランダムフォレスト(random forest)等の機械学習に用いる手法を利用した学習モデルを備えて構成され、前記超音波探傷の試験結果(例えばAスコープの画像等)が入力されると、機械学習によって獲得した能力(欠陥検出能力)に従って、前記超音波探傷の試験結果および入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件に基づいて、前記被検査物に形成された欠陥の有無に関する確率、例えば欠陥有りの確率を前記欠陥の種類ごとに出力する。本実施形態では、Aスコープの画像が入力されるので、超音波探傷用の学習モデルにニューラルネットワークが利用される場合では、前記ニューラルネットワークは、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の深層学習に利用されるニューラルネットワークであることが好ましい。
超音波信号処理部13は、超音波探触子UPの出力信号を所定の信号処理を実施することによって超音波探傷の測定結果を生成するものである。本実施形態では、超音波探触子UPの出力信号を公知の信号処理を実施することによってAスコープが前記超音波探傷の測定結果として生成される。
判定部14は、超音波信号処理部13で生成された超音波探傷の測定結果を超音波探傷の試験結果とし、この超音波探傷の試験結果および入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件に、機械学習部12で機械学習によって生成された超音波探傷用の学習モデルを用いることによって、被検査物の欠陥を判定するものである。より具体的には、判定部14は、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である場合、欠陥有り、および、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である欠陥の種類を、判定結果とし、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合、欠陥無しを前記判定結果とする。前記閾値は、前記欠陥の種類ごとに予め適宜に設定され、前記欠陥の種類ごとに予め設定された各閾値は、互いに異なって良く、あるいは、同一値を含んで良く、あるいは、全て同一値であって良い。
これら制御処理部1、入力部2、表示部3、IF部4および記憶部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。
次に、本実施形態の動作について説明する。第1に、超音波探傷用の学習モデルの生成について説明する。この超音波探傷用の学習モデルの生成では、まず、学習データが用意され、学習データ記憶部51に記憶される。一例では、前記学習データを管理するサーバ装置から、通信ネットワークおよびIF部4を介してダウンロードされ、学習データ記憶部51に記憶される。
続いて、機械学習の開始を指示するコマンドがオペレータ(ユーザ)等によって入力部2から入力されると、機械学習部12は、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いて機械学習することによって、機械学習済みの超音波探傷用の学習モデルを生成する。このときに、超音波探傷の試験結果情報で表される試験結果ならびにタグ情報で表される欠陥の有無およびその種類だけでなく、前記試験結果に影響を与える、試験条件情報で表される試験条件も学習データとして用いるので、超音波探傷用の学習モデルにおける推論精度の向上が期待できる。
そして、機械学習が終了すると、機械学習部12は、その生成した超音波探傷用の学習モデルを記憶部5に記憶する。
このように超音波探傷用の学習モデルが生成される。
第2に、超音波探傷について説明する。図3は、超音波探傷に関する前記超音波探傷装置の動作を示すフローチャートである。
この超音波探傷では、図3において、まず、超音波探傷の試験結果およびその試験条件が取得される(S1)。より具体的には、例えば、本実施形態では、被検査物に超音波探触子UPから超音波が送信され、前記超音波に基づいて前記被検査物から反射された反射波が超音波探触子UPで受信され、超音波探触子UPの出力信号が制御処理部1へ出力される。この超音波探触子UPの出力信号が超音波信号処理部13によって信号処理され、超音波探傷の測定結果が生成され、この生成された超音波探傷の測定結果が超音波探傷の試験結果とされる。そして、この超音波探傷の試験条件がオペレータ(ユーザ)等によって入力部2から入力される。
なお、超音波探傷の試験結果およびその試験条件は、上述のように、超音波探触子UPを用いて略リアルタイムで取得され、入力部2から入力されるだけでなく、例えば、以前に取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件を記憶あるいは記録した記憶媒体あるいは記録媒体からIF部4を介して取得されて良く、あるいは、例えば、以前に取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件を管理するサーバ装置から、通信ネットワークおよびIF部4を介して取得されて良い。この以前に取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件は、図1に示す超音波探傷装置Dによって取得されたデータであって良く、あるいは、図1に示す超音波探傷装置Dとは別の超音波探傷装置によって取得されたデータであっても良い。このように本実施形態では、超音波探触子UP、入力部2およびIF部4は、それぞれ、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の試験結果を取得するデータ取得部の一例に相当する。
次に、超音波探傷用の学習モデルを用いた第1判定処理が実行される(S2)。より具体的には、判定部14は、処理S1で取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件に、記憶部5に記憶された超音波探傷用の学習モデルを用いることによって、被検査物の欠陥を判定する。本実施形態では、欠陥の種類ごとに、欠陥有りの確率が超音波探傷用の学習モデルから出力される。
次に、閾値を用いた第2判定処理が実行される(S3)。より具体的には、判定部14は、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。この判定の結果、判定部14は、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である場合、欠陥有り、および、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である欠陥の種類を、判定結果とし、一方、前記判定の結果、判定部14は、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合、欠陥無しを前記判定結果とする。
例えば、α種類の欠陥の閾値(α閾値)が80%であり、β種類の欠陥の閾値(β閾値)が85%であり、γ種類の欠陥の閾値(γ閾値)が85%である場合であって、処理S1で取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件に対し、α種類における欠陥有りの確率が40%であり、β種類における欠陥有りの確率が90%であり、γ種類における欠陥有りの確率が30%であると、前記超音波探傷用の学習モデルから出力された場合、判定部14は、欠陥有りおよびβ種類を判定結果として出力する。一方、処理S1で取得した超音波探傷の試験結果およびその試験条件に対し、α種類における欠陥有りの確率が40%であり、β種類における欠陥有りの確率が35%であり、γ種類における欠陥有りの確率が30%であると、前記超音波探傷用の学習モデルから出力された場合、判定部14は、欠陥無しを判定結果として出力する。ここでは、一例として、欠陥の種類がα種類、β種類およびγ種類の3種類である場合について説明したが、欠陥の種類は、3種類に限定されるものではない。
次に、判定結果の表示およびその記憶が実行される(S4)。より具体的には、本実施形態では、例えば、制御部11は、処理S1で取得された超音波探傷の試験結果および処理S3で得られた判定結果を表示部3に表示し、これら超音波探傷の試験結果および判定結果を互いに対応付けて試験結果情報として試験結果情報記憶部52に記憶する。本実施形態では、判定結果の欠陥の種類だけでなく、その欠陥有りの確率も表示部3に表示され、試験結果情報記憶部52に記憶される。なお、参考情報として、判定結果とされなかった欠陥の種類およびその欠陥有りの確率が表示部3に表示されて良く、また、この判定結果とされなかった欠陥の種類およびその欠陥有りの確率が前記試験結果情報と対応付けられて試験結果情報記憶部52に記憶されても良い。
そして、処理の終了か否かが判定される(S5)。例えば、処理の終了を指示するコマンドがオペレータ等によって入力部2から入力されると、処理の終了と判定され(Yes)、制御処理部1は、本処理を終了する。一方、このようなコマンドが入力部2から入力されていない場合には、処理の終了ではないと判定され(No)、制御処理部1は、処理を処理S1に戻す。これによって次の超音波探傷の試験結果およびその試験条件が取得され、上述の各処理が実行される。例えば、次の探傷位置での超音波探傷の試験結果およびその試験条件が取得され、上述の各処理が実行される。なお、超音波探触子UPを被検査物上に当接させながら所定の一方向に走査し、この走査中に所定のサンプリング間隔で超音波を被検査物に対し送受信することによって、複数の探傷位置での超音波探傷が連続的に実施されて良く、あるいは、個々の探傷位置ごとに、超音波探触子UPを接離して超音波探傷が離散的に実施されて良い。
このように超音波探傷用の学習モデルを用いた超音波探傷が実施される。
以上説明したように、本実施形態における超音波探傷装置Dに備えられた超音波探傷用機械学習装置ならびにこれに実装された超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、試験結果だけでなく、試験条件情報に基づく機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成できる。そして、超音波探傷では、試験条件は、試験結果に影響を与えるので、この試験条件も学習データとして用いる上記超音波探傷用機械学習装置、超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムにより生成される超音波探傷用の学習モデルにおいて、推論精度の向上が期待できる。
超音波探傷では、試験結果には、被検査物や探傷条件や探傷位置が影響する。上記超音波探傷用機械学習装置、超音波探傷用機械学習方法および超音波探傷用機械学習プログラムは、前記試験条件が被検査物に関わる被検査物情報、前記超音波探傷の探傷条件に関わる探傷条件情報、および、前記被検査物上での前記超音波探傷の探傷位置に関わる探傷位置情報のうちの少なくとも1つを含むので、機械学習に、試験結果に影響を与える要素を好適に考慮できる。
本実施形態における超音波探傷装置Dは、上述の超音波探傷機械学習装置によって生成された学習モデルを用いるので、欠陥の有無の判定や欠陥の種類の判定における精度の向上が期待できる。
本実施形態によれば、欠陥有りの確率に基づいて欠陥の有無を弁別する超音波探傷装置Dが提供できる。そして、本実施形態における超音波探傷装置Dは、前記判定結果および前記判定結果に対応する欠陥有りの確率を表示するので、試験者(ユーザ、オペレータ)が上記超音波探傷装置Dによる判定の妥当性を評価できる。この結果、超音波探傷の経験や練度の乏しい試験者であっても、より短時間で錬成でき、熟練の試験者と略同等の超音波探傷の実施が可能となる。
前記特許文献1では、疵種的中率が80%あるいは90%であるから(その[0015]段落参照)、疵の見落としや疵種の誤認を生じる可能性があり、このため、場合によっては、全ての超音波探傷の試験結果を試験者自ら再度判定する必要あるが、本実施形態における超音波探傷装置Dは、上述の超音波探傷機械学習装置によって生成された学習モデルを用いるので、欠陥の自動判定を高い精度で行え、試験者がその判定の妥当性も評価できる。
なお、上述の実施形態では、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合に、前記判定結果は、欠陥無しとされたが、欠陥無しを判定する第2閾値がさらに設けられても良い。この場合の処理S3では、まず、判定部14は、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、さらに、前記欠陥の種類それぞれについて、前記学習モデルから出力された当該欠陥の種類における欠陥有りの確率が、当該欠陥の種類に対応して予め設定された第2閾値以下であるか否かを判定する。この判定の結果、判定部14は、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である場合、欠陥有り、および、前記欠陥有りの確率が前記閾値以上である欠陥の種類を、判定結果とし、一方、前記判定の結果、判定部14は、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記第2閾値以下である場合、欠陥無しを前記判定結果とし、そして、前記判定の結果、全ての欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記閾値未満である場合であって、かつ、少なくともいずれかの欠陥の種類において、前記欠陥有りの確率が前記第2閾値を越えている場合、判定不能を、判定結果とする。前記第2閾値は、前記欠陥の種類ごとに予め適宜に設定され、前記欠陥の種類ごとに予め設定された各第2閾値は、互いに異なって良く、あるいは、同一値を含んで良く、あるいは、全て同一値であって良い。このような判定不能を設けることで、欠陥有りおよび欠陥無しの判定結果に関し、信頼性の高い判定結果が得られ、判定不能の試験結果を試験者(ユーザ、オペレータ)が判定することで、全ての試験結果に対し、より信頼性の高い判定結果が得られる。また、判定不能の試験結果のみを判定すればよいので、全ての試験結果を試験者が判定する場合に較べて、試験者の負担が軽減できる。
また、上述の実施形態では、超音波探傷の試験結果は、Aスコープであったが、これに限定されるものではなく、適宜に、変更できる。
例えば、前記超音波探傷の試験結果は、Bスコープであって良く、あるいは、例えば、Cスコープであっても良い。
あるいは、例えば、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の第1信号と、前記被検査物における欠陥の無い部分に対する前記超音波探傷の実施によって得られた前記超音波探傷の第2信号との差異を抽出した差異抽出結果である。これによれば、前記第1信号と前記第2信号との差異抽出結果が前記超音波探傷の試験結果とされるので、上記超音波探傷機械学習装置、該方法および該プログラムは、欠陥に基づく出力信号成分で機械学習できる。
一例として、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の第1信号と、前記被検査物における欠陥の無い部分に対する前記超音波探傷の実施によって得られた前記超音波探傷の第2信号との差分である。図4には、Aスコープの場合が示されている。図4は、他の一例における試験結果を説明するための図である。図4Aは、被検査物に欠陥が有る場合のAスコープを示し、図4Bは、被検査物に欠陥が無い場合のAスコープを示し、図4Cは、これらの差分を示す。図4の横軸は、伝搬時間であり、その縦軸は、振幅である。この図4に示す例では、図4Aに示す被検査物に欠陥が有る場合のAスコープと図4Bに示す被検査物に欠陥が無い場合のAスコープとの差分である図4Cに示す波形が前記超音波探傷の試験結果として用いられる。前記差分は、同一の伝搬時間において、図4Aに示す被検査物に欠陥が有る場合のAスコープの振幅値から、図4Bに示す被検査物に欠陥が無い場合のAスコープの振幅値を減算することによって求められる。なお、図4Bに示す被検査物に欠陥が無い場合のAスコープは、図4Aに示す被検査物に欠陥が有る場合のAスコープを得られた探傷位置に対する周辺の探傷位置で得られたAスコープから、オペレータによって適宜に選択される。また、図4に示す例では、Aスコープであるが、BスコープやCスコープが用いられても良い。ここでは、一例として差分を用いた処理で説明したが、差異を抽出する処理として差分に限定されるものではない。
あるいは、例えば、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の信号における周波数スペクトルであっても良い。前記周波数スペクトルは、例えば、前記超音波探傷の信号に対し、時間領域の情報を残した周波数領域の解析によって得られた周波数スペクトルであって良く、あるいは、例えば、前記周波数スペクトルは、前記超音波探傷の信号を短時間フーリエ変換(ショートタイムフーリエ変換)またはウェーブレット変換によって得られた周波数スペクトルであって良い。これによれば、超音波探傷の信号における周波数スペクトルで機械学習する超音波探傷機械学習装置、該方法および該プログラムが提供できる。あるいは、例えば、前記超音波探傷の試験結果は、被検査物に対する超音波探傷の実施によって得られた超音波探傷の第1信号における第1周波数スペクトルと、前記被検査物における欠陥の無い部分に対する前記超音波探傷の実施によって得られた前記超音波探傷の第2信号における第2周波数スペクトルとを対比して差異を抽出した第2差異抽出結果であっても良い。これによれば、例えば前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの差分信号や相関係数等の第2差異抽出結果が前記超音波探傷の試験結果とされるので、上記超音波探傷機械学習装置、該方法および該プログラムは、欠陥に基づく周波数スペクトル成分で機械学習できる。
図5は、さらに他の一例における試験結果を説明するための図である。図5Aは、被検査物に欠陥がある場合におけるAスコープの周波数スペクトルを示し、図5Bは、被検査物に欠陥が無い場合におけるAスコープの周波数スペクトルを示し、図5Cは、これらの差分の波形を示す。図5の横軸は、伝搬時間であり、その縦軸は、周波数である。図5では、信号強度が画素の濃淡(輝度)で表されており、濃いほど(暗いほど)、レベル値が大きい。図5Aに示す周波数スペクトルは、図4Aに示すAスコープをショートタイムフーリエ変換することによって求められた周波数スペクトルであり、図5Bに示す周波数スペクトルは、図4Bに示すAスコープをショートタイムフーリエ変換することによって求められた周波数スペクトルである。ここでは、図5Aに示す周波数スペクトルと図5Bに示す周波数スペクトルとの違いを抽出する処理として減算処理を用いたが、抽出処理は、減算処理に限定されるものではない。
あるいは、欠陥の種類が前記超音波探傷の試験結果におけるエコーの発生位置、分布および形状に影響するため、例えば、前記超音波探傷の試験結果は、例えば、被検査物における所定の一方向に沿った各位置での各試験結果(例えばBスコープ等)を含んで良い。これによれば、被検査物における所定の一方向に沿った各位置での各試験結果で機械学習する超音波探傷機械学習装置、該方法および該プログラムが提供できる。
一般に、被検査物内の欠陥は、欠陥を含む、或る断面で見ると、2次元的な様々な形状を有する。このため、欠陥の種類を求める超音波探傷の試験結果は、例えば、被検査物における2方向(例えば互いに直交する2方向や互いに斜交する2方向)以上の探傷面の各位置での各試験結果の組(例えば2方向以上のBスコープ)であることが好ましい。これにより、欠陥の種類をより正確に把握できる。
また、上述の実施形態において、超音波探傷装置Dは、例えば、図1に破線で示すように、超音波探傷の試験結果に基づいて欠陥のサイズを求める欠陥サイズ演算部15をさらに備えても良い。図1に示す例では、欠陥サイズ演算部15は、制御処理部1に機能的に構成される。これによれば、欠陥のサイズを求める超音波探傷装置Dが提供できる。
より具体的には、例えば、欠陥サイズ演算部15は、Aスコープに基づいて公知の信号処理によって、きず面積(Flat Bottom Hole換算)を前記欠陥のサイズとして求める。あるいは、例えば、欠陥サイズ演算部15は、超音波探傷の試験結果のきず上端回折波ときず下端回折波とのそれぞれの伝搬時間差から、きず高さを前記欠陥のサイズとして求める。
あるいは、例えば、被検査物における互いに異なる複数の位置で超音波探傷の実施によって得られた複数の超音波探傷の試験結果が取得され、欠陥サイズ演算部15は、前記複数の超音波探傷の試験結果に基づいてきず長さまたはきず高さを求めても良い。例えば、探傷面(例えばXY平面)において、任意の方向(例えばX方向またはY方向)に沿った複数の位置で超音波探傷を実施することによって複数の試験結果(例えば複数のAスコープやBスコープ)が取得され、欠陥サイズ演算部15は、公知の信号処理(6dBダウン法等)によってX方向またはY方向に沿った欠陥の長さを求める。この場合において、例えば、超音波探触子UPがX方向に沿って一定速度で走査され、所定のサンプリング間隔で超音波探傷が実施される場合には、前記一定速度と前記所定のサンプリング間隔に基づいて前記複数の各位置の座標値が求められる。また例えば、超音波探触子UPに、位置を特定するための機器(エンコーダ等)が取り付けられる場合には、前記機器のデータがIF部4から取り込まれ、前記複数の各位置の座標値が求められる。また例えば、X方向に沿った複数の位置およびY方向に沿った複数の位置それぞれで超音波探傷を実施することによって複数の試験結果(例えばCスコープ)が取得され、欠陥サイズ演算部15は、公知の信号処理によってXY平面に展開した欠陥の面積を前記欠陥のサイズとして求める。この場合において、例えば、超音波探触子UPがX方向に沿って一定速度で走査され、所定のサンプリング間隔で超音波探傷が実施され、X方向に沿った走査が終了すると所定のピッチでY方向にステップ(移動)され、同様に、X方向に沿って走査される場合には、前記一定速度と前記所定のサンプリング間隔と前記所定のピッチに基づいて前記複数の各位置の座標値が求められる。また例えば、超音波探触子UPに、位置を特定するための機器(エンコーダ等)が取り付けられる場合には、前記機器のデータがIF部4から取り込まれ、前記複数の各位置の座標値が求められる。また、例えば、AスコープやBスコープからきず高さが求められる場合は、Cスコープと組み合わせることで、欠陥の体積が前記欠陥のサイズとして求められる。もしくは、複数の探傷面における前記Cスコープを組み合わせることで、欠陥の体積が前記欠陥のサイズとして求められる。
また、上述の実施形態において、上記超音波探傷機械学習装置、該方法および該プログラムを備えた超音波探傷装置Dは、再機械学習の機能をさらに備えても良い。
このような超音波探傷装置Dは、例えば、図1に破線で示すように、前記データ取得部で取得した超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件を表す試験条件情報、ならびに、判定部14で判定された前記欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を、互いに対応付けて前記学習データとして学習データ記憶部51に記憶させる記憶処理部16と、機械学習部12に、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成させる再機械学習部17とをさらに備える。図1に示す例では、記憶処理部16および再機械学習部17は、制御処理部1に機能的に構成される。前記データ取得部は、上述したように、超音波探触子UP、入力部2およびIF部4それぞれがその各一例に相当する。
この場合では、上述した処理S4に続けて、記憶処理部16は、処理S1で取得された超音波探傷の試験結果を表す試験結果情報、処理S1で入力部2から入力された前記超音波探傷の試験条件を表す試験条件情報、ならびに、処理S2および処理S3で判定部14によって判定された前記欠陥の有無および前記欠陥の種類を表すタグ情報を、互いに対応付けて学習データとして学習データ記憶部51に記憶させる。より具体的には、本実施形態では、記憶処理部16は、学習データ記憶部51に記憶されている学習データテーブルLDに、新たなレコードを作成し、この新たに作成したレコードにおける整理番号フィールド511、試験結果情報フィールド512、試験条件情報フィールド513およびタグ情報フィールド514それぞれに、整理番号、前記試験結果情報、前記試験条件情報および前記タグ情報それぞれを登録する。前記整理番号は、記憶処理部16によって、前記新たなレコードを作成する前の学習データテーブルLDにおける末尾のレコードの整理番号フィールド511に登録されている整理番号を1だけインクリメントすることによって生成される。これによって学習データがアップデート(更新)される。
なお、学習データを上述のようにアップデートする際に、上述の第2閾値が用いられる場合では、判定不能とされた超音波探傷の試験結果は、学習データとはせずに、学習データ記憶部51に記憶しないことが好ましい。すなわち、欠陥有りと判定された超音波探傷の試験結果および欠陥無しと判定された超音波探傷の試験結果が、学習データとされ、学習データ記憶部51に記憶される。
そして、再機械学習部17は、機械学習部12に、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成させる。すなわち、機械学習部12は、再機械学習部17から再機械学習の通知を受けると、学習データ記憶部51に記憶された学習データを用いた機械学習によって超音波探傷用の学習モデルを生成し、この生成した超音波探傷用の学習モデルを記憶部5に記憶する。これによって再機械学習が実行され、超音波探傷用の学習モデルがアップデート(更新)される。この再機械学習は、所定のタイミングで実行される。例えば、オペレータ等によって入力部2から、再機械学習の実行を指示するコマンドが入力された場合に、再機械学習が実行される。あるいは、例えば、前回の機械学習から、予め設定された所定の期間経過後に、再機械学習が自動的に実行される。あるいは、例えば、新たに追加された学習データの個数が、予め設定された所定数に達した際に、再機械学習が自動的に実行される。
このような超音波探傷装置Dは、超音波探傷の実施によって得られた試験結果で学習データをアップデート(更新)でき、このアップデートした学習データで再機械学習することで超音波探傷用の学習モデルをアップデートできる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。