JP2020530436A - トランケート型vwfによるfviiiの免疫原性の調節 - Google Patents

トランケート型vwfによるfviiiの免疫原性の調節 Download PDF

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Abstract

本願発明は、血液凝固第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、第VIII因子(FVIII)に結合可能なトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドに関するものであり、ここでは、前記組換えポリペプチドおよび血液凝固第VIII因子(FVIII)タンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される。本発明はさらに、前記使用のための医薬組成物およびキットに関する。

Description

本発明は、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、血液凝固第VIII因子(FVIII)に結合可能なトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドに関するものであり、ここでは、前記組換えポリペプチドおよび第VIII因子(FVIII)タンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される。
血液凝固因子の欠損に起因する様々な出血障害がある。最も一般的な障害は、血友病AおよびBであり、それぞれ血液凝固第VIII因子および第IX因子の欠損の結果として生じる。知られている別の出血障害は、フォン・ウィルブランド病(VWD)である。
血友病Aは遺伝性の出血障害である。これは血液凝固第VIII因子のX染色体連鎖性欠損の結果として生じ、10,000人当たり1人から2人の間の頻度でほぼ男性のみに影響を及ぼす。このX染色体の欠陥は、自身は血友病ではない女性の保因者によって伝達される。血友病Aの臨床症状は、出血傾向の増加である。第VIII因子濃縮物を用いた治療を導入する以前は、重度の血友病者の平均寿命は20歳未満であった。血漿由来の第VIII因子の濃縮物の使用は、状況を著しく向上させており、血友病A患者の平均寿命を大幅に増やし、彼らのほとんどにある程度通常の生活を送る可能性をもたらしている。しかし、血漿由来濃縮物とその使用に伴うある種の問題があり、その最も重大なものはウイルスの伝染である。これまで、B型肝炎、非A非B型肝炎、およびAIDSを引き起こすウイルスが、人々に深刻な攻撃を与えてきた。以降、最近では各種ウイルス不活化方法と新しい高度精製第VIII因子濃縮物とが開発されており、それらは血漿由来の第VIII因子についても非常に高い安全性水準を確立した。
第VIII因子のcDNAのクローニング(非特許文献1、2)によって、第VIII因子を組換えにより発現することが可能となり、いくつかの組換え第VIII因子製品の開発に至り、それらの製品は1992年から2003年の間に規制当局によって認可された。アミノ酸Arg−740とGlu−1649との間に存在する第VIII因子のポリペプチド鎖の中央のBドメインは、完全な生物活性には必要ではないようであるという事実は、Bドメインを欠失した第VIII因子製品の開発をも導いてきた。
成熟型第VIII因子の分子は2332アミノ酸からなり、このアミノ酸は3つの相同なAドメイン、2つの相同なCドメイン、および1つのBドメインのグループに分けることができ、それらは:A1−A2−B−A3−C1−C2の順に整列されている。血漿中に分泌される間に、単鎖の第VIII因子がB−A3境界およびBドメイン内の異なる部位で切断されるにつれて、第VIII因子は、細胞内で一連の金属イオン連結型のヘテロ二量体へとプロセシングされる。このプロセシングは、A1ドメイン、A2ドメイン、および様々なBドメインの一部からなる不均一な重鎖分子を生じ、それらの分子は、90kDaから200kDaに及ぶ分子サイズを有する。この重鎖は、A3ドメイン、C1ドメイン、およびC2ドメインからなる軽鎖に、金属イオンを介して結合する(非特許文献3)。血漿中で、このヘテロ二量体の第VIII因子は、高い親和性でフォン・ウィルブランド因子(vWF)に結合し、それにより成熟前の異化から保護される。vWFに結合した活性化されていない第VIII因子の半減期は、血漿中で約12時間である。
VWFは、哺乳類の血漿中に存在する多量体の接着性糖タンパク質であり、複数の生理機能を有する。初期の止血の間、VWFは、血小板表面上の特定の受容体とコラーゲンなどの細胞外マトリックス成分との間のメディエーターとして作用する。さらに、VWFは、凝血原であるFVIIIのためのキャリアおよび安定化タンパク質としての役割を果たす。VWFは、内皮細胞および巨核球で2813アミノ酸の前駆体分子として合成される。野生型VWFのアミノ酸配列およびcDNA配列は、非特許文献4に開示されている。前駆体ポリペプチドであるプレプロVWFは、22残基のシグナルペプチドと、741残基のプロペプチドと、成熟型の血漿VWFに見られる2050残基ポリペプチドとからなる(非特許文献5)。血漿中に分泌されると、プロテアーゼADAMTS13は、VWFのA1ドメイン内でVWFを切断する。
血漿中では、FVIIIは、高い親和性でフォンVWFに結合し、VWFによって成熟前の異化から保護され、初期の止血における役割に加えて血漿レベルを調節するための決定的な役割を果たし、それゆえ二次止血を制御するための中心的な因子でもある。VWFに結合した活性化されていないFVIIIの半減期は、血漿中で約12時間から14時間である。VWFが全くまたはほぼ存在しないフォン・ウィルブランド疾患3型では、FVIIIの半減期は約6時間に過ぎず、FVIII濃度の減少ゆえにそのような患者に軽度から中等度の血友病Aの症状を生じる。このVWFがFVIIIに及ぼす安定化効果は、CHO細胞でのFVIIIの組換え発現の一助とするためにも使用されている(非特許文献6)。VWFに結合していない遊離FVIIIは、およそ2時間の循環内半減期を有する(非特許文献7)。
予防的な治療を受けている重度の血友病A患者では、第VIII因子の血漿中半減期が約12時間と短いために、第VIII因子を週に約3回、静脈内に(i.v.)投与しなければならない。各i.v.投与は、煩わしいものであり、痛みを伴い、感染のリスクを必然的に伴う。特に、ほとんどの場合、血友病Aと診断されている患者自身によって、または子どもの親によって、家庭でこれが行われるためである。
そのため、投与しなければならない頻度がより低い第VIII因子含有医薬組成物の製造を可能にする、機能的半減期を増加させた第VIII因子を作出することが非常に望ましかった。
VWF由来ポリペプチド、具体的にはVWF断片は、in vitroおよびin vivoでFVIIIを安定化することが記載されてきた。特許文献1は、ある特定のVWF断片およびFVIIIタンパク質を含むキメラタンパク質を対象とする。それらのFVIIIとVWF断片とのキメラヘテロ二量体は、VWFとFVIIIとの固定モル比1:1を有する。
特許文献2および特許文献3は、VWF断片および血友病の治療におけるそれらの使用を記載している。FVIIIの生物学的利用能は、同様のモル量のVWF断片と併せて血管外で共投与されると、大幅に向上する場合があることが見出された。非特許文献8では、VWF欠損マウスにおいて、D’D3ドメインを含有するVWF断片が、第VIII因子を安定化するのに充分であることが見出された。
トランケート型VWFの共投与によって第VIII因子のin vivo半減期の延長をもたらすアプローチの1つは、特許文献4に開示されている。
しかし、血友病Aを患う患者の最大30%における主要な合併症は、FVIII活性を不活性化し補充療法(replacement therapy)を無効化しうる阻害物質、具体的にはアロ抗体の発生である。以前に治療されていない血友病Aの患者にFVIII阻害物質が生成するリスクは、組換えFVIII製品を用いて治療される場合にさらに高いことが記載されており、FVIII−LC中の異なるエピトープ(A3およびC2ドメイン)にVWFが結合することにより、これらのエピトープを遮蔽し、それゆえに免疫原性を低減する上で有益な効果を有する可能性があることが推定されている(非特許文献9)。遮蔽されていないFVIIIのエピトープは、阻害物質の生成を誘発するリスクをもたらすものと思われる。さらに、2本鎖のFVIII複合体におけるFVIII−HCとFVIII−LCとの相互作用は、FVIII−HCおよびFVIII−LCにあるその他自由に接近可能なエピトープへの遮蔽効果を有することも想定される。
重度の血友病Aの患者における抗第VIII因子アロ抗体(阻害物質)の中和の発生は、補充療法に使用される濃縮物に依存しうる。フォン・ウィルブランド因子を含有する血漿由来第VIII因子を用いて治療された患者は、組換え第VIII因子を用いて治療された患者よりも阻害物質の発生率が低い。組換えFVIIIを用いて治療された幼年男子(年齢<6歳、重度の血友病A、および以前に何らかの第VIII因子濃縮物を用いた前治療なし)における阻害物質の発生率は、pdFVIIIを用いて治療された患者と比較して1.87倍高いことが測定された。阻害物質の発生率は、組換えFVIIIを用いて治療されたコホートでは26.8%であり、それに対しpdFVIIIのコホートでは44.5%であった(非特許文献10)。
ゆえに、FVIIIのin vivo半減期の増加に加えて、そのようなFVIII阻害物質の発生を回避または低減するための改善された治療法の必要性が継続して存在する。
VWFは、第VIII因子との複合体である際に、重鎖(A2ドメイン)および軽鎖(A3/C2ドメイン)上の公知の潜在的な阻害性抗体部位からFVIIIを遮蔽することによって、第VIII因子に対する免疫反応を減少させる可能性があることが示唆されている(非特許文献11)。
FVIII濃縮物の純度は、議論の余地はあるものの、特にフォン・ウィルブランド因子(VWF)の存在下で外因性FVIIIの免疫原性に影響を与えると主張された。そのため、S.Delignatら(非特許文献12)は、FVIIIに対するVWFの免疫防御効果をin vivoおよびin vitroで評価した。VWFは、FVIII欠損マウスにおいてFVIIIの免疫原性を低減し、in vitroでプロフェッショナル抗原提示細胞(例えばDC)によるFVIIIのエンドサイトーシスを防止した。VWFは、循環内のFVIIIの半減期を増加させることによって、脾臓中の免疫寛容原性の辺縁帯B細胞との接触時間を増加させることを可能としうることが提唱されている。
特許文献5では、VWF断片およびFVIIIタンパク質を含むキメラタンパク質が示されており、そこでは、VWF断片およびFVIIIタンパク質が共有結合で互いに会合しているか、または共有結合で互いに連結されている。このキメラタンパク質は、共有結合で連結された断片VWFを持たないFVIIIタンパク質よりも免疫原性が少ないことが提唱されている。免疫原性に関するデータは示されていない。構築物のモル比は、1:1に固定されている。
特許文献6の開示によれば、第VIII因子とVWFペプチドとの非共有結合複合体を含む組成物は、FVIIIに対する阻害物質の形成を低減することが提唱されている。しかし、このVWFペプチドは、やはりアミノ酸764から1035および1691から1905を示し、免疫原性に関するデータが提示されていない。
特許文献7は、VWFおよびその断片が、ヒト抗原提示細胞による細胞性取り込みからFVIIIを保護しうることを記載している。しかし、完全長の血漿由来VWF(アミノ酸764〜2813)と比較して、供試された断片は、中等度のFVIII取り込みの低減を示したに過ぎなかった。供試されたVWF断片は、VWF断片および/またはFVIIIの半減期を増加するための半減期延長部分を何ら含まなかった。
WO2013/106787A1 WO2014/198699A2 WO2013/083858A2 WO2016/188907A1 WO2013106787A1 WO2015185758A2 WO2013/083858A2
Woodら、1984年、Nature、312巻、330〜336頁 Veharら、1984年、Nature、312巻、337〜342頁 Saenkoら、2002年、Vox Sang、83巻、89〜96頁 Collinsら、1987年、Proc Natl.Acad.Sci.USA、84巻、4393〜4397頁 Fischerら、FEBS Lett 351:345−348,1994 Kaufmanら、Mol Cell Biol、9巻、1233〜1242頁、1989年 Vlotら、Thromb Haemost、2000年、83巻、65〜91頁 Yeeら(2014年)、Blood、124(3)巻、445〜452頁 C.Escuriola Ettinghausen、W.Kreuz、Haemophilia(2006年)、12巻(増刊6号)、102〜106頁 Peyvandi F、N Engl J Med(2016年)、74巻、2054〜64頁 Ragni、J Thromb.Haemost.、10巻、2324〜2327頁、2012年 S. Delignat ら、Haemophilia (2012年)、18巻、248〜254頁
それゆえ、長期の半減期と低減された免疫原性とを有するFVIII製品または組成物を提供するための未対応の臨床的なニーズが依然としてある。
トランケート型VWF、好ましくは配列番号4のアミノ酸764から1242を含むトランケート型VWFを含む二量体の組換えポリペプチドと併せて第VIII因子タンパク質を共投与することによって、抗原提示細胞、具体的には単球由来樹状細胞による第VIII因子取り込みを実質的に低減できることが、発明者らによって見出された。この組換えポリペプチドは、好ましくは半減期延長部分(HLEM)を含み、具体的には、ヒトアルブミンに融合されることがある。
そのため、本発明の一態様は、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、血液凝固第VIII因子(FVIII)に結合可能なトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドに関するものであり、ここでは、前記組換えポリペプチドおよび第VIII因子(FVIII)タンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される。このことは、前記組換えポリペプチドおよび第VIII因子(FVIII)タンパク質が、好ましくは同時に、逐次的に、または別々に投与されることを含み、前記投与様式は、用語「共投与されること」に包含される。第VIII因子(FVIII)の免疫原性は、好ましくは参照治療と比較して低減され、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。
さらに、トランケート型VWFを含むモル過剰の組換えポリペプチドと併せて第VIII因子タンパク質を共投与することによって、抗原提示細胞、具体的には単球由来樹状細胞による第VIII因子取り込みをさらに低減できることが、発明者らによって見出されている。換言すれば、共投与されるFVIIIに対する、トランケート型VWFを含む組換えポリペプチドのモル比を、増加させることによって、抗原提示細胞、具体的には単球由来樹状細胞による第VIII因子取り込みの低減の亢進を達成することができる。
そのため、本発明のさらに別の態様は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、もしくは少なくとも50:1、またはさらにそれよりも高いモル比である、共投与される組換えポリペプチドのFVIIIに対するモル比に関する。
本発明のさらに別の態様は、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、(i)本発明によるトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドと、(ii)第VIII因子タンパク質(FVIII)とを含む医薬組成物を指し、ここでは、前記組成物は、血液凝固障害を患う対象に投与され、好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生することが予想される。
また、さらに別の態様は、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、(i)第VIII因子(FVIII)タンパク質を含む第1の組成物と、(ii)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドを含む第2の組成物とを含む医薬キットを指し、ここでは、前記組成物は、血液凝固障害を患う対象に共投与され、好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生することが予想され、前記FVIIIおよび前記組換えポリペプチドは、投与前に少なくともある割合の前記組換えポリペプチドを前記FVIIIに結合させるために、キット内に提供される。
また、本発明のさらに別の態様は、FVIIIの免疫原性を低減するための方法を指し、本方法は、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む有効量の組換えポリペプチド、および第VIII因子(FVIII)タンパク質を、血液凝固障害を患う対象に共投与することを含み、前記組換えポリペプチドは、FVIIIの免疫原性を低減する。好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生することが予想される。
具体的な態様では、組換えポリペプチドは、二量体であるトランケート型VWFを含む。
さらに別の具体的な態様では、組換えポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインと機能性のVWF D3ドメインとを有し、好ましくは機能性のVWF A1ドメインを欠く、トランケート型VWFを含む。
さらに別の具体的な態様では、組換えポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインと機能性のVWF D3ドメインとを有し、好ましくは任意の他のVWF機能性のドメインを欠く、トランケート型VWFを含む。
さらに別の具体的な態様では、組換えポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインと機能性のVWF D3ドメインとを有し、好ましくは任意の他のVWF機能性ドメインを欠き、FVIIIとの親和性を増加させる1つまたは複数のアミノ酸変異を有するトランケート型VWFを含む。
さらになお別の具体的な実施形態では、組換えポリペプチドは、アルブミンなど、半減期延長部分(HLEM)を含む。
ゆえに、本発明は、以下の好適な実施形態[1]から[44]に関する。
[1]血液凝固第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、第VIII因子(FVIII)に結合可能なトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドであって、前記組換えポリペプチドおよび血液凝固第VIII因子(FVIII)タンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される、前記組換えポリペプチド。第VIII因子(FVIII)の免疫原性は、参照治療と比較して好ましくは低減されており、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。
[2]FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する対象の体液性免疫応答の低減、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体の力価および/もしくは頻度の低下、ならびに/またはFVIIIに対する細胞媒介性免疫応答の低減を含む、実施形態[1]による使用のための組換えポリペプチド。
[3]好ましくは参照治療と比較すると、投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、共投与された組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)内へのFVIIIの取り込みの低減によって達成されるかまたは該低減を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[4]APCは、樹状細胞およびマクロファージからなる群から選択される、実施形態[3]による使用のための組換えポリペプチド。
[5]組換えポリペプチドおよびFVIIIの共投与に続いて、内部移行されたFVIIIを有する対象のAPCの一部は、参照治療と比較すると1.1分の1以下、1.2分の1以下、1.3分の1以下、1.4分の1以下、1.5分の1以下、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、または10分の1以下に低減され、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、実施形態[3]または[4]による使用のための組換えポリペプチド。
[6]APC内へのFVIII取り込み阻害能を表す共投与された組換えポリペプチドのIC50値は、完全長VWFのそれぞれのIC50値と比較すると中等度にのみ増加され、好ましくは、共投与された組換えポリペプチドのIC50値は、完全長VWFのIC50値を3倍以下、2.5倍以下、2.4倍以下、2.3倍以下、2.2倍以下、2.1倍以下、2.0倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.3倍以下、1.2倍以下、または1.1倍以下超過する、実施形態[3]から[5]のいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。本開示内でのIC50値の計算は、組換えポリペプチド単量体のモル濃度に基づき、二量体として存在する場合であっても当該モル濃度に基づく。
[7]APC内へのFVIII取り込み阻害能を表す共投与された組換えポリペプチドのIC50値(単量体のモル濃度に基づく計算)は、完全長VWFのそれぞれのIC50値と比較すると同一であるかそれどころか低減されるかのどちらかであり、好ましくは共投与された組換えポリペプチドのIC50値は、完全長VWFのIC50値と比較して1.2分の1以下、1.5分の1以下、2分の1以下、2.5分の1以下、または3分の1以下に低減される、実施形態[3]から[5]のいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[8]好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドのMHCクラスII型抗原提示の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドの前記MHCクラスII型抗原提示は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)される。
[9]好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるユニークなMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。対象の抗原提示細胞(APC)による前記ユニークなMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)される。
[10]好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるクラスター化されたMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。対象の抗原提示細胞(APC)による前記クラスター化されたMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)される。
[11]対象は、以前にFVIIIを用いて治療されていない対象である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[12]対象は、FVIIIを用いて予め治療されている対象である、および/または治療の変更に付されている、実施形態[1]から[10]のいずれか1項の使用のための組換えポリペプチド。
[13]対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[14]組換えポリペプチドおよびFVIIIは、血液凝固障害を患う対象の予防的または治療的な治療のために共投与される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[15]FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する阻害抗体の力価の低下という特徴を有し、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の力価は、参照治療後の対象におけるFVIII抗体の力価と比較すると少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも80%低減され、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[16]FVIIIの免疫原性の低減は、対象集団におけるFVIIIに対する阻害抗体の頻度の低下という特徴を有し、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の頻度は、参照治療後の対象集団におけるFVIII抗体の頻度と比較すると少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減され、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[17]FVIIIの免疫原性の低減は、治療後少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、少なくとも6か月間、少なくとも7か月間、少なくとも8か月間、少なくとも9か月間、または少なくとも12か月間患者にもたらされる、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[18]組換えポリペプチドは、二量体として、好ましくはホモ二量体として投与される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[19]共投与される組換えポリペプチドのFVIIIに対するモル比は、単量体として算出される組換えポリペプチドの量および単量体として算出されるFVIIIの量に基づき、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも50:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも100:1、または少なくとも150:1である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[20]対象はヒト対象である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[21]前記ポリペプチドは、静脈内に、皮下に、皮内に、経口的に、経皮的に、鼻腔内に、腹腔内に、局所的にまたは局在的に、舌下にまたは筋肉内に、好ましくは静脈内にまたは皮下に投与される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[22]前記ポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインおよび/または機能性のVWF D3ドメインを含む、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[23]前記ポリペプチドは、機能性のVWF A1ドメインを欠く、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[24]前記組換えポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインおよび/または機能性のVWF D3ドメインを含み、組換えポリペプチドは、任意の他のVWF機能性ドメインを欠く、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[25]トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸776から805と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号4のアミノ酸764から1242と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[26]トランケート型VWFが、(a)配列番号4のアミノ酸764から1242からなるか、(b)配列番号4のアミノ酸764から1242と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるか、または(c)(a)もしくは(b)の断片からなる、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[27]組換えポリペプチドは、配列番号4の配列付番を参照する場合に、VWF野生型アミノ酸配列と比較して、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有し、置換は、S764G/S766Y、S764P/S766I、S764P/S766M、S764V/S766Y、S764E/S766Y、S764Y/S766Y、S764L/S766Y、S764P/S766W、S766W/S806A、S766Y/P769K、S766Y/P769N、S766Y/P769RおよびS764P/S766L、S764P/S766W/V1083A、S764G/S766Y/V1083A、S764E/S766Y/V1083A、N1011S/V1083A/K1181E、S766Y/V1083A、V1083A、S1042T、V805A/Q1158L、K912E/T1088S、ならびにL781Pからなる群から選択される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[28]組換えポリペプチドは、アミノ酸置換S764E/S766YまたはS764E/S766Y/V1083Aのうち少なくとも1つを有し、好ましくは組換えポリペプチドは、2つのアミノ酸置換S764E/S766Yを有するか、または3つのアミノ酸置換S764E/S766Y/V1083Aを有する、実施形態[27]による使用のための組換えポリペプチド。
[29]前記ポリペプチドは、半減期延長部分(HLEM)を含む、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[30]HLEMは、トランケート型VWFに融合された異種アミノ酸配列である、実施形態[29]による使用のための組換えポリペプチド。
[31]前記異種アミノ酸配列は、イムノグロブリン定常領域およびその一部分、好ましくはイムノグロブリンのFc部分、アルブミンおよびその断片、トランスフェリンおよびその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモアミノ酸反復(HAP)、プロリン−アラニン−セリン反復(PAS)、アルブミンまたはその断片、アファミン、アルファ−フェトタンパク質、ビタミンD結合タンパク質、生理的条件下でアルブミンまたはイムノグロブリン定常領域に結合可能なポリペプチド、新生仔Fc受容体(FcRn)に結合可能なポリペプチド、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるポリペプチドを含むかまたはそれからなる、実施形態[30]による使用のための組換えポリペプチド。
[32]HLEMは、組換えポリペプチドにコンジュゲーションされている、実施形態[29]による使用のための組換えポリペプチド。
[33]前記HLEMは、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、ヒアルロン酸、およびアルブミン結合性リガンド、例えば脂肪酸鎖、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態[32]による使用のための組換えポリペプチド。
[34]血液凝固障害は血友病Aである、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[35]組換えポリペプチドおよびFVIIIタンパク質の共投与は、(i)組換えポリペプチドおよびFVIIIタンパク質を含む単一組成物で併せて投与することによって、または(ii)併用療法の一部として別々の組成物中に提供された組換えポリペプチド(第1の化合物)およびFVIIIタンパク質(第2の化合物)を投与することによって達成され、第1の化合物は、第2の化合物の前に、後に、または併用で投与される、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[36]投与後、FVIIIに対する過感受性は低減されている、および/またはアナフィラキシーのリスクは低減されている、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[37]FVIIIは、血漿由来FVIIIタンパク質または組換えFVIIIタンパク質である、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[38]共投与されるFVIIIタンパク質の投薬量は、2500IU/kg、1500IU/kg、1000IU/kg、600IU/kg、500IU/kg、または400IU/kgを超えない、前述の実施形態のうちいずれか1項による使用のための組換えポリペプチド。
[39](i)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドであって、具体的には本明細書に開示される任意の実施形態による組換えポリペプチド、および
(ii)場合により、第VIII因子タンパク質(FVIII)、
を含む、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための医薬組成物であって、前記組成物は、血液凝固障害を患う対象に投与され、好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想される、前記医薬組成物。
[40]トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチド、具体的には本明細書に開示される任意の実施形態による組換えポリペプチドを含む医薬組成物であって、該組成物は、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のために提供され、第VIII因子タンパク質(FVIII)を含んでおらず、第VIII因子タンパク質(FVIII)と併用して血液凝固障害を患う対象に投与され、好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想される、前記医薬組成物。
[41]患者は、FVIII製品を用いた予防的な治療の開始時にあるかまたは開始間近である、実施形態[39]から[40]のいずれか1項による医薬組成物。
[42](i)第VIII因子(FVIII)タンパク質を含む第1の組成物、および
(ii)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドであって具体的には本明細書に開示される任意の実施形態による組換えポリペプチドを含む、第2の組成物
を含む医薬キットであって、
該キットは、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のためにもたらされ、前記組成物は、血液凝固障害を患う対象に共投与されるはずのものであり、好ましくは、前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想され、
前記FVIIIおよび前記組換えポリペプチドは、投与前に少なくともある割合の前記組換えポリペプチドを前記FVIIIに結合させるために、キット内に提供される、前記医薬キット。
[43]FVIIIの免疫原性を低減するための方法であって、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む有効量の組換えポリペプチド、好ましくは本明細書に開示される任意の実施形態による組換えポリペプチド、および第VIII因子(FVIII)タンパク質を、血液凝固障害を患う対象に共投与することを含み、前記組換えポリペプチドは、FVIIIの免疫原性を低減する、前記方法。
[44]前記対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想される、実施形態[43]の方法。
MDDCの表面マーカーによる表現型解析を示す図であり、フローサイトメトリーによるCD14についての陰性染色とCD40、HLA−DR、およびCD86についての陽性染色とを示す。 MDDCにおける第VIII因子取り込みのVWFによる阻害を示す図である。市販のFVIIIタンパク質[アドベイト(Advate)、ヘリキセート(Helixate)、およびリファクト(Refacto)]およびrec scFVIII(CSL627)を、(a)pdVWF製品Biostate、(b)トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および(c)完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650の存在下での取り込みについて評価した。4種の異なるFVIII製品、すなわちアドベイト、CSL627、ヘリキセート、およびリファクトに関してMDDCにおけるFVIII取り込みのパーセンテージを、モル比VWF:FVIIIの増加に対して別々にプロットした。モル比VWF:FVIIIは、各種VWF製品についての単量体サブユニットを指す。実験は、3連で(a)を、または4連で(b)および(c)を、それぞれ行った。 図2−1の続き。 MDDCにおける第VIII因子取り込みのVWFによる阻害を示す図である。各種VWFタンパク質(pdVWF製品Biostate、トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650)を、MDDCにおけるFVIII取り込みの阻害について評価した。4種の異なるFVIII製品、すなわち(a)アドベイト、(b)CSL627、(c)ヘリキセート、および(d)リファクトに関してMDDCにおけるFVIII取り込みのパーセンテージを、モル比VWF:FVIIIの増加に対して別々にプロットした。モル比VWF:FVIIIは、各種VWF製品についての単量体サブユニットを指す。 図3−1の続き。 MDDCにおける第VIII因子取り込みのVWFによる阻害の正規化曲線を示す図である。市販のFVIIIタンパク質[アドベイト(登録商標)、ヘリキセート(登録商標)、およびリファクト(登録商標)]ならびにrec scFVIII(CSL627)を、(a)pdVWF製品Biostate、(b)トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および(c)完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650の存在下での取り込みについて評価した。VWF濃度は、各種VWF製品についての単量体サブユニットを指す。実験は、3連で(a)を、または4連で(b)および(c)を、それぞれ行った。データを、個々の実験のそれぞれについて正規化した。個々の実験のそれぞれについて、VWF(0nM)の非存在下での読取りを100%として定義し、最も高いVWF濃度(2222nMまたは4444nM)の存在下での読取りを0%として定義した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて曲線をフィッティングした[log(阻害物質)vs.応答−可変勾配、4パラメーター、最小二乗フィット]。これらのフィッティングした曲線に基づき、それぞれのVWFタンパク質についてのIC50値を算出し、表2にまとめている。 図4−1の続き。 ProPresent(登録商標)MHCクラスII抗原提示アッセイのProImmuneのワークフローを示す図である。(A)HLA型判定済みのPBMCの単球の単離、(B)単球の培養および未成熟な樹状細胞の生成、(C)抗原のローディング(CSL627、pdVWF)、細胞内でのプロセシング、樹状細胞の成熟、および抗原提示、(D)樹状細胞の溶解、(E)免疫親和性工程によるペプチド/MHCクラスII複合体の単離およびペプチドの溶出、(F)LC−MSによるペプチドのシークエンシング(ProImmune ProPresent(登録商標)ホームページから適応させる)。 図5−1の続き。 図5−2の続き。 pdVWFの存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す図である。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、pdVWFの非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)。 CSL626の存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す図である。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、CSL626の非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)。 EYA−FPの存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す図である。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、EYA−FPの非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)。
FVIIIの免疫原性の低減
本開示内では、「組換えポリペプチド」は、代替的に「本発明のポリペプチド」ともよばれる。
本発明は、参照治療後の取り込みと比較すると、トランケート型VWFを含む組換えポリペプチドの存在下では、抗原提示細胞(APC)内へのFVIIIの取り込みが実質的に低減されるという観察に基づくものであり、ここでは、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なくFVIIIが投与されることを除いて、本発明の治療と同一である。
本発明の観点では、FVIIIの免疫原性の低減の達成はまた、FVIIIに対しより少ない免疫原性を誘導するものと理解されることがある。
FVIIIの免疫原性の低減としては、以下に限定されないが、体液性免疫応答の低減、すなわち阻害性抗FVIII抗体の力価および/もしくは頻度の低下、ならびに/またはFVIIIに対する細胞媒介性免疫応答の低減が挙げられる。さらに、免疫原性の低減としては、FVIIIに対する過感受性反応の低減が挙げられ、そのようなものとしては、アナフィラキシーのリスクの低減が挙げられる。例えば、FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する阻害抗体の力価の低下という特徴を有することがあり、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の力価は、参照治療後の対象における阻害抗体の力価と比較すると少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%低減され、ここでは、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。阻害抗体は、本明細書では代替的に「阻害物質」と称される。
さらに、FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する阻害抗体の頻度の低下という特徴を有することがあり、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の頻度は、参照治療後の対象集団における阻害抗体の頻度と比較すると少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも30%低減され、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。FVIIIに対する阻害抗体の力価および/または頻度は、標準的な方法によって、例えばベセスダアッセイによって、決定されることがある。
FVIIIの免疫原性の低減は、共投与された組換えポリペプチドの存在下、抗原提示細胞(APC)内へのFVIIIの取り込みの低減によって達成されることがあり、ここでは、APCは、樹状細胞またはマクロファージからなる群から選択されることがある。例えば、組換えポリペプチドとFVIIIとの共投与は、参照治療と比較するとFVIIIが1.1分の1以下、1.2分の1以下、1.3分の1以下、1.4分の1以下、1.5分の1以下、2分の1以下、3分の1以下、または4分の1以下に、内部移行されている対象のAPCの一部を低減し、ここでは、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。
好適な実施形態によれば、好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドのMHCクラスII型抗原提示の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドの前記MHCクラスII型抗原提示は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)されている。
さらに好適な実施形態によれば、好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるユニークなMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。対象の抗原提示細胞(APC)による前記ユニークなMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)される。
さらに好適な実施形態によれば、好ましくは参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるクラスター化されたMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数の消滅によって達成されるかまたは該消滅を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である。対象の抗原提示細胞(APC)によるクラスター化されたMHCクラスII型結合性FVIIIペプチドの数は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅(すなわち低減)されている。
対象のMHCクラスIIハプロタイプは、具体的にはHLA−DR、HLA−DP、およびHLA−DQからなる群から選択されることがある。
さらに好適な実施形態によれば、少なくとも前記FVIIIペプチドの一部分は、Tヘルパー媒介性のB細胞の活性化/抗体の分泌に必要なステップであるT細胞の増殖を誘発することが可能である。
ユニークなMHCクラスII結合性FVIIIペプチドの数は、FVIIIにユニークに帰属させることができる別個のペプチド配列の数である。これらは、FVIIIタンパク質にユニークなペプチドであり、他のタンパク質に発生しない。ユニークなMHCクラスII結合性FVIIIペプチドの数は、対象の抗原提示細胞(APC)による抗原提示を定量するために使用される。
ユニークなMHCクラス結合性FVIIIペプチドは、重複することがあり、グループ分けされることがある。MHCクラスII結合性FVIIIペプチドクラスターは、重複したユニークなMHCクラスII結合性FVIIIペプチドの埋め込みアライメントである。対象の抗原提示細胞(APC)によって提示されたMHCクラスII結合性FVIIIペプチドクラスターの数も、抗原提示を定量するために使用される。

下記にさらに詳細に記載されるように、本発明のポリペプチドは、単量体、二量体、またはそれらの混合物であることがある。好ましくは、ポリペプチドは二量体である。実際には単量体として存在していても二量体として存在していても、本発明による任意のモル比は、本発明のポリペプチドの単量体サブユニットのモル濃度の比を指す。比は、共投与されたFVIIIのモル濃度に対するものとして得られる。この出願におけるFVIIIに対する本発明のポリペプチドの任意の比は、別段に指示のない限り、好ましくは二量体として存在する投与される本発明のポリペプチドに含まれる単量体の量(モル)を、投与されるFVIIIの量(モル)により除算したものを指す。非限定的な例として、100μMの単量体の本発明のポリペプチドと1μMのFVIIIとの共投与は、比100を意味する。50μMの二量体の本発明のポリペプチドが1μMのFVIIIと共投与される場合、同じ比100が得られる。例えば比100は、代替的に本明細書では100:1と称する。
投与される本発明の組換えポリペプチドの、投与されるFVIIIに対するモル比は、単量体として算出される組換えポリペプチドの量および単量体として算出されるFVIIIの量に基づき、好ましくは少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、または少なくとも50:1である。
投与される本発明のポリペプチドの、投与されるFVIIIに対するモル比は、本発明の別の態様によれば50:1を超え、さらに好ましくは、その比は60:1超、少なくとも75:1、少なくとも100:1、200:1超、少なくとも300:1、少なくとも400:1、少なくとも500:1、少なくとも600:1、少なくとも700:1、少なくとも800:1、少なくとも900:1、少なくとも1,000:1、少なくとも1,500:1、少なくとも2,000:1、少なくとも2,500:1、少なくとも3,000:1少なくとも5,000:1、少なくとも8,000:1、または最大10,000:1である。
投与される本発明のポリペプチドの、投与されるFVIIIに対するモル比は、ある特定の実施形態によれば、比10,000、比5,000、比2,500、比2,000、比1,500、比1,000、比750を超えないかまたは比500を超えない場合がある。
さらに別の実施形態による、投与される本発明のポリペプチドの、投与されるFVIIIに対するモル比は、2から1,000まで、または4から750まで、または10から500までに及ぶことがある。
投与される本発明のポリペプチドの、投与されるFVIIIに対する比は、本発明のポリペプチドの共投与によって、FVIIIの半減期の充分な増加を確実なものとするとともに、本明細書に同定されたFVIIIの免疫原性の低減を確実なものとする範囲で提供される。具体的には、先行して公開された開示の観点から、上記に引用されたDelignetら、2012年を特に考慮すると、ここに非常な驚きを以て、両方の目的をともに達成し得たことが見出された。
本発明に従う治療のさらに進んだ詳細を下記にさらに記載する。
トランケート型VWF
本発明は、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドに関する。用語「フォン・ウィルブランド因子」(VWF)は、本明細書に使用される際には、天然に存在する(天然の)VWFを含むが、少なくとも天然に存在するVWFのFVIII結合活性を保持するそのバリアント、例えば配列バリアントをも含み、そこでは、1つまたはそれ以上の残基が、挿入、欠失、または置換されている。FVIII結合活性は、参照によって本明細書に組み入れるWO2016/188907A1の実施例2に記載されているようなFVIII−VWF結合アッセイによって決定される。
この発明に従う好適なVWFは、配列番号4に示されるアミノ酸配列によって表されるヒトVWFである。配列番号4をコードするcDNAは、配列番号3に示されている。
ヒトの天然のVWFをコードする遺伝子は、9kbのmRNAに転写され、そのmRNAは、推定分子量310,000Daを有する2813アミノ酸のプレプロポリペプチドに翻訳される。このプレプロポリペプチドは、N末端の22アミノ酸のシグナルペプチドと、それに続く741アミノ酸のプロポリペプチド(配列番号4のアミノ酸23〜763)と成熟型サブユニット(配列番号4のアミノ酸764〜2813)とを含有する。N末端からの741アミノ酸のプロポリペプチドが切断されると、結果として2050アミノ酸からなる成熟型VWFが生じる。ヒトの天然のVWFプレプロポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号4に示す。別段に指示のない限り、この出願におけるVWF残基のアミノ酸の付番は、配列番号4を参照し、VWF分子、具体的にはトランケート型VWFが配列番号4の全ての残基を含まない場合であっても当該配列を参照する。
天然VWFのプロポリペプチドは、複数のドメインを含む。各種のドメインアノテーションを文献に見出すことができる[例えばZhouら(2012年)、Blood、120巻2号、449〜458頁を参照]。この出願では、VWFの天然のプレプロポリペプチドの以下のドメインアノテーションが適用される:
D1−D2−D’−D3−A1−A2−A3−D4−C1−C2−C3−C4−C5−C6−CK
配列番号4を参照して、D’ドメインはアミノ酸764〜865からなり;D3ドメインはアミノ酸866〜1242からなる。
本発明の観点からの「トランケート型」という構成は、ポリペプチドが成熟型VWF(配列番号4のアミノ酸764〜2813)の全アミノ酸配列を含まないことを意味する。典型的には、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸764〜2813の全てを含むものではないが、その断片のみを含む。トランケート型VWFは、VWF断片(fragment)または複数でVWF断片(fragments)ともよばれることがある。
典型的には,トランケート型VWFは、第VIII因子に結合可能である。好ましくは、トランケート型VWFは、ヒトの天然の第VIII因子の成熟体に結合可能である。別の実施形態では、トランケート型VWFは、組換えFVIIIに、好ましくは本明細書に記載されるようなFVIIIに、さらに好適には配列番号5のアミノ酸配列からなる単鎖の第VIII因子に、結合可能である。第VIII因子へのトランケート型VWFの結合性は、参照によって本明細書に組み入れるWO2016/188907A1の実施例2に記載されるようなFVIII−VWF結合アッセイによって決定することができる。
本発明のトランケート型VWFは好ましくは、機能性のD’ドメインおよび/または機能性のD3ドメインを、具体的には機能性のD’ドメインおよび機能性のD3ドメインを、含むかまたはそれからなる。本発明のトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)は少なくとも、第VIII因子(FVIII)に結合可能である。さらに好ましくは、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸776から805と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、FVIIIに結合可能である。好適な実施形態では、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸776から805と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、FVIIIに結合可能である。最も好ましくは、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸776から805を含むかまたはそれからなる。本明細書に別段に指示のない限り、配列同一性は、参照配列(例えば配列番号4のアミノ酸776から805)の全体の長さにわたって決定される。
本発明のトランケート型VWFは好ましくは、配列番号4のアミノ酸766から864と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、FVIIIに結合可能である。好適な実施形態では、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸766から864と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、FVIIIに結合可能である。最も好ましくは、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸766から864を含むかまたはそれからなる。
別の好適な実施形態では、トランケート型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、トランケート型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764から1242と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または(b)それらの断片からなる。さらに好ましくは、トランケート型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、トランケート型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764から1242と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または(b)その断片からなる。最も好ましくは、トランケート型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、トランケート型VWFは、(a)配列番号4のアミノ酸764から1242、または(b)その断片からなる。
下記にさらに詳細に記載されるように、本発明のポリペプチドは、トランケート型VWFを含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を使用する方法によって調製されることがある。核酸は、それ自体で公知の手法によって、適切な宿主細胞内に導入される。
好適な実施形態では、トランケート型の成熟型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、宿主細胞の核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1から1242と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または(b)その断片をコードする。さらに好ましくは、トランケート型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1から1242と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または(b)その断片をコードする。最も好ましくは、トランケート型VWFが依然としてFVIIIに結合可能であることを条件として、核酸は、(a)配列番号4のアミノ酸1から1242、または(b)その断片をコードする。特に、この発明に従うポリペプチドが二量体である場合、核酸は、VWF(例えば配列番号4)のアミノ酸1から763をコードする配列を含むみ、ポリペプチド中のトランケート型VWFがVWF(例えば配列番号4)のアミノ酸1から763を含まない場合であっても当該配列を含むむ。
好適な実施形態による本発明の組換えポリペプチドのトランケート型VWFは、配列番号4のVWFのアミノ酸配列の1から763を含みうる。
さらに好適な実施形態によれば、トランケート型VWFは、それぞれが配列番号4を参照する以下のアミノ酸配列のうち1つを含むかまたはそれからなる:
776〜805;766〜805;764〜805;776〜810;766〜810;764〜810;776〜815;766〜815;764〜815;
776〜820;766〜820;764〜820;776〜825;766〜825;764〜825;776〜830;766〜830;764〜830;
776〜835;766〜835;764〜835;776〜840;766〜840;764〜840;776〜845;766〜845;764〜845;
776〜850;766〜850;764〜850;776〜855;766〜855;764〜855;776〜860;766〜860;764〜860;
776〜864;766〜864;764〜864;776〜865;766〜865;764〜865;776〜870;766〜870;764〜870;
776〜875;766〜875;764〜875;776〜880;766〜880;764〜880;776〜885;766〜885;764〜885;
776〜890;766〜890;764〜890;776〜895;766〜895;764〜895;776〜900;766〜900;764〜900;
776〜905;766〜905;764〜905;776〜910;766〜910;764〜910;776〜915;766〜915;764〜915;
776〜920;766〜920;764〜920;776〜925;766〜925;764〜925;776〜930;766〜930;764〜930;
776〜935;766〜935;764〜935;776〜940;766〜940;764〜940;776〜945;766〜945;764〜945;
776〜950;766〜950;764〜950;776〜955;766〜955;764〜955;776〜960;766〜960;764〜960;
776〜965;766〜965;764〜965;776〜970;766〜970;764〜970;776〜975;766〜975;764〜975;
776〜980;766〜980;764〜980;776〜985;766〜985;764〜985;776〜990;766〜990;764〜990;
776〜995;766〜995;764〜995;776〜1000;766〜1000;764〜1000;776〜1005;766〜1005;764〜1005;776〜1010;766〜1010;764〜1010;776〜1015;766〜1015;764〜1015;776〜1020;766〜1020;764〜1020;776〜1025;766〜1025;764〜1025;776〜1030;766〜1030;764〜1030;776〜1035;766〜1035;764〜1035;776〜1040;766〜1040;764〜1040;776〜1045;766〜1045;764〜1045;776〜1050;766〜1050;764〜1050;776〜1055;766〜1055;764〜1055;776〜1060;766〜1060;764〜1060;776〜1065;766〜1065;764〜1065;776〜1070;766〜1070;764〜1070;776〜1075;766〜1075;764〜1075;776〜1080;766〜1080;764〜1080;776〜1085;766〜1085;764〜1085;776〜1090;766〜1090;764〜1090;776〜1095;766〜1095;764〜1095;776〜1100;766〜1100;764〜1100;776〜1105;766〜1105;764〜1105;776〜1110;766〜1110;764〜1110;776〜1115;766〜1115;764〜1115;776〜1120;766〜1120;764〜1120;776〜1125;766〜1125;764〜1125;776〜1130;766〜1130;764〜1130;776〜1135;766〜1135;764〜1135;776〜1140;766〜1140;764〜1140;776〜1145;766〜1145;764〜1145;776〜1150;766〜1150;764〜1150;776〜1155;766〜1155;764〜1155;776〜1160;766〜1160;764〜1160;776〜1165;766〜1165;764〜1165;776〜1170;766〜1170;764〜1170;776〜1175;766〜1175;764〜1175;776〜1180;766〜1180;764〜1180;776〜1185;766〜1185;764〜1185;776〜1190;766〜1190;764〜1190;776〜1195;766〜1195;764〜1195;776〜1200;766〜1200;764〜1200;776〜1205;766〜1205;764〜1205;776〜1210;766〜1210;764〜1210;776〜1215;766〜1215;764〜1215;776〜1220;766〜1220;764〜1220;776〜1225;766〜1225;764〜1225;776〜1230;766〜1230;764〜1230;776〜1235;766〜1235;764〜1235;776〜1240;766〜1240;764〜1240;776〜1242;766〜1242;764〜1242;764〜1464;764〜1250;764〜1041;764〜828;764〜865;764〜1045;764〜1035;764〜1128;764〜1198;764〜1268;764〜1261;764〜1264;764〜1459;764〜1463;764〜1464;764〜1683;764〜1873;764〜1482;764〜1479;764〜1672;および764〜1874。
ある特定の実施形態では、トランケート型VWFは、成熟型の野生型VWFと比較して内部欠失を有する。例えば、A1、A2、A3、D4、C1、C2、C3、C4、C5、C6、CKドメインのうちの1つ、複数、もしくは全て、またはそれらの組合せが欠失しており、D’ドメインおよび/またはD3ドメインが保持されている。さらに別の実施形態によれば、トランケート型VWFは、ドメインA1、A2、A3、D4、C1、C2、C3、C4、C5、C6、またはCKのうちの1つ、複数、または全てを欠いている。さらに別の実施形態によれば、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸1243から2813、すなわちドメインA1−A2−A3−D4−C1−C2−C3−C4−C5−C6−CKを欠いている。
さらに別の実施形態では、トランケート型VWFは、血小板糖タンパク質Ibα(GPIbα)、コラーゲン、および/またはインテグリンαIIbβIII(C1ドメイン内のRGDS配列)との結合部位を含まない。他の実施形態では、トランケート型VWFは、VWFの中央のA2ドメインに位置するADAMTS13のための切断部位(Tyr1605−Met1606)を含まない。さらに別の実施形態では、トランケート型VWFは、GPIbαとの結合部位を含まない、および/またはコラーゲンとの結合部位を含まない、および/またはインテグリンαIIbβIIIとの結合部位を含まない、および/またはそれはVWFの中央のA2ドメインに位置するADAMTS13のための切断部位(Tyr1605−Met1606)を含まない。
他の実施形態では、トランケート型VWFがFVIIIに結合可能であることを条件として、トランケート型VWFは、先の段落に記載されたアミノ酸配列のうち1つと少なくとも90%、または少なくとも91%、または少なくとも92%、または少なくとも93%、または少なくとも94%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかそれからなる。
本発明のポリペプチドの2つの単量体が共有結合で連結されている場合に、本発明のポリペプチドは、本発明では「二量体」と称される。好ましくは、共有結合は、本発明のポリペプチドのトランケート型VWF部分内に位置する。好ましくは、2つの単量体サブユニットは、少なくとも1本のジスルフィド架橋を介して、例えば1本、2本、3本、または4本のジスルフィド架橋によって、共有結合で連結される。少なくとも1本のジスルフィド架橋を形成するシステイン残基は、好ましくは本発明のポリペプチドのトランケート型VWF部分内に位置する。一実施形態では、これらのシステイン残基は、Cys−1099、Cys−1142、Cys−1222、Cys−1225、もしくはCys−1227、またはそれらの組合せである。好ましくは、二量体の本発明のポリペプチドは、ポリペプチドのトランケート型VWF部分内に位置する前記共有結合に加えて、単量体を連結するさらに別の共有結合を何も含まず、具体的には、ポリペプチドのHLEM部分内またはHLEP部分内に位置するさらに別の共有結合を何も含まない。しかし、代替的な実施形態によれば、二量体の本発明のポリペプチドは、単量体を連結するポリペプチドのHLEM部分またはHLEP部分に位置する共有結合を含むことがある。
二量体は、好ましくはホモ二量体であり、各単量体は、好ましくは本明細書に開示されるようなHLEMを含む。本発明のポリペプチドが二量体である場合、トランケート型VWFは、好ましくは、配列番号4のアミノ酸764から1099、アミノ酸764から1142、アミノ酸764から1222、アミノ酸764から1225、またはアミノ酸764から1227と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つのポリペプチドを含むかまたはそれらからなり、FVIIIに結合可能である。好適な実施形態では、トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸764から1099、アミノ酸764から1142、アミノ酸764から1222、アミノ酸764から1225、またはアミノ酸764から1227と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、FVIIIに結合可能である。最も好ましくは,トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸764から1099、アミノ酸764から1142、アミノ酸764から1222、アミノ酸764から1225、アミノ酸764から1227、またはアミノ酸764から1242を含むかまたはそれからなる。
トランケート型VWFは、参照によってその開示を本明細書に組み入れるWO2013/106787A1、WO2014/198699A2、WO2011/060242A2、WO2013/093760A2、またはWO2016/188907A1に開示されたVWF断片のうち、いずれか1つであることがある。
さらに別の好適な実施形態によれば、上記に開示されたようなトランケート型VWFは、WO2016/000039A1に開示されたようなアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含むことがある。それらのトランケート型VWFの改変バージョンは、配列番号4による野生型VWFのD’ドメインのアミノ酸配列と比較して、そのD’ドメイン内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。トランケート型VWFの改変バージョンのアミノ酸配列は、それぞれの野生型配列と比較して、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有し得る。それらのトランケート型VWFの改変バージョンは、前記改変を除いて同じアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドの結合親和性と比較して、好ましくはさらに高いFVIIIとの結合親和性を示す。
別段に指示のない限り、本明細書におけるトランケート型VWF残基のアミノ酸の付番は、配列番号4を参照し、トランケート型VWF分子が配列番号4の全ての残基を含まない場合であっても当該配列を参照する。
改変型のトランケート型VWFのD’ドメインのアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号4のD’ドメインと比較して、1つまたは2つのアミノ酸置換を有する。配列番号2の1位に対応する配列番号4の764位のSが、G、P、V、E、Y、A、およびLからなる群から選択されるアミノ酸に置換されることが好適である。また、配列番号2の3位に相当する配列番号4の766位のSが、Y、I、M、V、F、H、R、Wからなる群から選択されるアミノ酸に置換されることも好適である。好適な置換の組合せとしては、配列番号4の配列を参照して、S764G/S766Y、S764P/S766I、S764P/S766M、S764V/S766Y、S764E/S766Y、S764Y/S766Y、S764L/S766Y、S764P/S766W、S766W/S806A、S766Y/P769K、S766Y/P769N、S766Y/P769R、およびS764P/S766Lが挙げられる。本発明のポリペプチドのFVIIIとの結合親和性は、前記置換の導入によって、前記改変を除いて同じアミノ酸を有する参照ポリペプチドの結合親和性と比較して、さらに増加されることがある。VWFのFVIIIとの相互作用は、典型的には高い結合速度(on−rate)を有することから、解離定数の変化は、解離速度(off−rate)の変化に大きく依存する。したがって、VWFのFVIIIとの会合を増加させる際の主な焦点は、FVIIIとVWFとの間の解離速度を減少させる取り組みを含む。好ましくは、野生型VWFとFVIIIと比較して、前記改変を有するトランケート型VWFバリアントとFVIIIとの解離速度は、2分の1以下であり、さらに好ましくは5分の1以下であり、好ましくは10分の1以下であり、さらに好ましくは20分の1以下である。トランケート型VWF内の前記置換は、共投与されたFVIIIの半減期の増加に寄与することがある、および/または本発明の組換えポリペプチドの投与される用量の低減を可能にすることがある。
さらに好適な実施形態によれば、本明細書に開示されるようなトランケート型VWFは、同時係属中のPCT/AU2017/050010A1に記載されるようなアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含むことがある。それらのトランケート型VWFの改変バージョンは、好ましくは、前記改変を除いて同じアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドの結合親和性と比較して、さらに高いFVIIIとの結合親和性を示す。そのため、本明細書に開示されるようなトランケート型VWFは、以下のアミノ酸置換のうちの1つまたはアミノ酸置換の組合せを含むことがある:S764P/S766W/V1083A、S764G/S766Y/V1083A、S764E/S766Y/V1083A、N1011S/V1083A/K1181E、S766Y/V1083A、V1083A、S1042T、V805A/Q1158L、K912E/T1088S、またはL781P。トランケート型VWF内の前記置換は、共投与されたFVIIIの半減期の増加に寄与することがある、および/または本発明の組換えポリペプチドの投与される用量の低減を可能にすることがある。
前記置換を有する本発明のポリペプチドを好ましくは使用して、共投与されたFVIIIの半減期のいっそうの増加を確実なものとするとともに、FVIIIの免疫原性の低減をもたらすことが可能であり、共投与されるFVIIIよりも中等度にモル過剰であるに過ぎない本発明のポリペプチドを投与する場合であってもこれは可能である。
用語「内因性のVWF」は、二量体化または多量体化の程度とは独立して、本明細書に使用される際には、VWFの単量体サブユニットを指す。
半減期延長部分(HLEM)
トランケート型VWFに加えて、本発明のポリペプチドは、ある好適な実施形態では、半減期延長部分(HLEM)をさらに含むことがある。半減期延長部分は、異種アミノ酸配列、具体的には半減期亢進タンパク質(HLEP)であることがある。代替的には、半減期延長部分は、ペプチド結合とは異なる共有結合によってトランケート型VWFを含むポリペプチドに化学的にコンジュゲーションされた非ペプチド性部分である。
本発明のある特定の実施形態では、本発明の組換えポリペプチドの半減期は、化学修飾、例えばポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシエチルデンプン(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、またはヒアルロン酸などの半減期延長部分の付加によって延長される。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、アルブミンなどのHLEPに化学リンカーを介してコンジュゲーションされる。このコンジュゲーション技術の原理は、Conjuchem LLCにより例示的な方式で記載されている(例えば、米国特許第7,256,253号を参照)。
組換えポリペプチドは、好ましくはトランケート型VWFとHLEMまたはHLEPとの間に位置する化学結合またはリンカー配列をさらに含む。
前記リンカー配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸、具体的には1個から50個、1個から30個、1個から20個、1個から15個、1個から10個、1個から5個、または1個から3個(例えば1個、2個、または3個)のアミノ酸であって互いに等しいことも異なることもあるアミノ酸からなるペプチド性リンカーであることがある。好ましくは、リンカー配列は、野生型VWFの対応する位置に存在しない。前記リンカー配列に存在する好適なアミノ酸としては、GlyおよびSerが挙げられる。リンカー配列は、非免疫原性とするべきである。好適なリンカーは、交互のグリシン残基およびセリン残基から構成されることがある。適したリンカーは、例えばWO2007/090584に記載されている。
本発明の別の実施形態では、トランケート型VWF部分とHLEMとの間のペプチド性リンカーは、ペプチド配列からなり、この配列は、ヒトタンパク質の自然のドメイン間リンカーとして役割を果たす。好ましくはその自然環境でのそのようなペプチド配列は、この配列に対する自然寛容を呈することができるように、タンパク質表面近くに位置し免疫系にアクセス可能である。例は、WO2007/090584に示されている。切断可能なリンカー配列は、例えばWO2013/120939A1に記載されている。
組換えポリペプチドの好適な実施形態では、トランケート型VWFとHLEMとの間のリンカーは、配列番号2のアミノ酸配列480〜510を有するかまたはそれからなるグリシン/セリンペプチド性リンカーである。
一実施形態では、ポリペプチドは、以下の構造を含む:
tVWF−L1−H、(I)
上式で、tVWFはトランケート型VWFであり、L1は化学結合またはリンカー配列であり、HはHLEM、具体的にはHLEPである。
L1は、1つまたはそれ以上のアミノ酸、例えば1個から50個、1個から30個、1個から20個、1個から15個、1個から10個、1個から5個、または1個から3個(例えば1個、2個、または3個)のアミノ酸であって互いに同じであることも異なることもあるアミノ酸からなる化学結合またはリンカー配列である。通常、リンカー配列は、野生型VWFの対応する位置には存在しない。L1に存在する適切なアミノ酸の例としては、GlyおよびSerが挙げられる。リンカーは、非免疫原性とするべきであり、切断不能または切断可能なリンカーである。切断不能なリンカーは、WO2007/090584に例示されるように、交互のグリシン残基およびセリン残基から構成されることがある。本発明の別の実施形態では、トランケート型VWF部分とアルブミン部分との間のペプチド性リンカーは、ペプチド配列からなり、この配列は、ヒトタンパク質の自然のドメイン間リンカーとして役割を果たす。好ましくはその自然環境でのそのようなペプチド配列は、この配列に対する自然寛容を呈することができるように、タンパク質表面近くに位置し免疫系にアクセス可能である。例は、WO2007/090584に示されている。切断可能なリンカー配列は、例えばWO2013/120939A1に記載されている。
好適なHLEP配列は、のちに記載される。同様に本発明により包含されるのは、それぞれのHLEPのまさにその「N末端アミノ酸」とのもしくはまさにその「C末端アミノ酸」との融合体、またはそれぞれのHLEPの「N末端部」もしくは「C末端部」との融合体であり、それらにはHLEPの1つまたはそれ以上のアミノ酸のN末端欠失が含まれる。ポリペプチドは、2つ以上のHLEP配列、例えば2つまたは3つのHLEP配列を含むことがある。これらの複数のHLEP配列は、VWFのC末端部にタンデムに、例えば連続した反復として融合されることがある。
半減期亢進ポリペプチド(HLEP)
好ましくは、半減期延長部分は、半減期延長ポリペプチド(HLEP)である。1つまたはそれ以上のHLEPは、それらがFVIIIへのトランケート型VWFの結合能に干渉しないかまたはそれを無効にしないことを条件として、VWFのC末端部に融合されることがある。さらに好ましくは、HLEPは、新生仔Fc受容体(FcRn)に結合可能なポリペプチド、例えばアルブミンもしくはその断片など、またはイムノグロブリン定常領域およびその一部分、例えばFc断片、流体力学的に大きな体積を有する溶媒和されたランダム鎖[例えばXTEN(Schellenbergerら、2009年;Nature Biotechnol.27巻、1186〜1190頁]、ホモアミノ酸反復(HAP)、プロリン−アラニン−セリン反復(PAS)、アファミン、アルファ−フェトタンパク質、ビタミンD結合タンパク質、トランスフェリンまたはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピン−βサブユニットのカルボキシル末端ペプチド(CTP)、生理的条件下でアルブミンもしくはイムノグロブリン定常領域に結合可能なポリペプチドまたは脂質からなる群から選択される。イムノグロブリン定常領域またはその一部は、好ましくはイムノグロブリンG1のFc断片、イムノグロブリンG2のFc断片、またはイムノグロブリンAのFc断片である。
「半減期亢進ポリペプチド」は、本明細書に使用される際に、好ましくは、アルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、イムノグロブリンGの定常領域およびその断片、生理的条件下でアルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、およびイムノグロブリン定常領域の一部に結合可能な領域およびポリペプチドからなる群から選択される。それは、本明細書に記載される完全長の半減期亢進タンパク質(例えばアルブミン、アルブミンファミリーのメンバー、もしくはイムノグロブリンGの定常領域)、または凝固因子の医薬活性もしくは生物活性を安定化もしくは延長することが可能なその1つもしくはそれ以上の断片である。そのような断片は、HLEPを含まないそれぞれのポリペプチドと比較してHLEP断片が少なくとも25%の機能的な半減期の延長をもたらす限り、長さ10以上のアミノ酸であり、少なくとも約15、少なくとも約20,少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約100、またはさらに多くの連続した、HLEP配列由来のアミノ酸であるか、またはそれぞれのHLEPの特定のドメインの一部もしくは全てを含むことがある。
本発明のポリペプチドのHLEP部分は、野生型HLEPのバリアントであることがある。用語「バリアント」は、保存されているか保存されていないかのどちらかである挿入、欠失、および置換を含み、その場合、そのような変化は、トランケート型VWFのFVIII結合活性を実質的に変えない。
具体的には、本発明の提案されるVWF HLEP融合体構築物は、HLEPおよびHLEPの断片の天然に存在する多型バリアントを含むことがある。HLEPは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、サル、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来する。非哺乳類HLEPとしては、以下に限定されないが、ニワトリおよびサケが挙げられる。
本開示のある特定の実施形態によれば、本発明の組換えポリペプチドのHLEM部分、具体的にはHLEP部分は、代替的な用語「FP」を用いて特定されることがある。好ましくは、用語「FP」はヒトアルブミンを表す。
ある好適な実施形態によれば、組換えポリペプチドは、融合タンパク質である。本発明の観点での融合タンパク質は、トランケート型VWFならびにHLEPをコードする少なくとも2つのDNA配列のインフレーム接合によって作出されるタンパク質である。当業者は、融合タンパク質のDNA配列の翻訳の結果として単一のタンパク質配列が生じることを理解する。さらに好適な実施形態によるペプチド性リンカーをコードするDNA配列のインフレーム挿入の結果として、トランケート型VWF、適切なリンカー、およびHLEPを含む融合タンパク質が得られることがある。
いくつかの実施形態によれば、共投与されるFVIIIは、本明細書に記載されたいかなるHLEM構造もHLEP構造も含まない。ある特定の他の実施形態によれば、共投与されるFVIIIは、本明細書に記載されたHLEM構造またはHLEP構造のうち少なくとも1つを含むことがある。
HLEPとしてのアルブミン
好ましくは、HLEPは、アルブミンまたはその断片である。アルブミンのN末端は、トランケート型VWFのC末端に融合されることがある。代替的には、アルブミンのC末端が、トランケート型VWFのN末端に融合されることがある。
用語「ヒト血清アルブミン」(HSA)および「ヒトアルブミン」(HA)および「アルブミン」(ALB)は、この出願では互換的に用いられる。用語「アルブミン」および「血清アルブミン」はより広範であり、ヒト血清アルブミン(ならびにその断片およびバリアント)ならびに他の種に由来するアルブミン(ならびにその断片およびバリアント)を包含する。
本明細書に使用される際に、「アルブミン」とは、アルブミンのポリペプチドもしくはアミノ酸配列、またはアルブミンの1つもしくはそれ以上の機能的な活性(例えば生物活性)を有するアルブミンの断片もしくはバリアントをまとめて指す。具体的には、「アルブミン」は、ヒトアルブミンもしくはその断片、特に本明細書の配列番号6に示されるようなヒトアルブミンの成熟体、または他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子もしくはその断片の類似体もしくはバリアントを指す。
本開示のある特定の実施形態によれば、代替的な用語「FP」は、HLEPを同定するために、具体的にはアルブミンをHLEPとして定義するために使用される。
さらに好適な実施形態によれば、トランケート型VWFを含む本発明の組換えポリペプチドは、配列番号2として定義されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
具体的には、提案される本発明のポリペプチドは、ヒトアルブミンおよびヒトアルブミン断片の天然に存在する多型のバリアントを含むことがある。概して、アルブミンの断片またはバリアントは、少なくとも10、好ましくは少なくとも40、最も好ましくは70超のアミノ酸長となる。
本発明の好適な実施形態は、FcRn受容体との結合が亢進された本発明のポリペプチドのHLEPとして使用される、アルブミンバリアントを含む。そのようなアルブミンバリアントは、野生型アルブミンを有するトランケート型VWF融合体と比較して、さらに長期のトランケート型VWFアルブミンバリアント融合タンパク質の血漿半減期をもたらすことがある。バリアントとしては、相互参照によりその開示を組み入れるWO2014072481、WO2012150319、WO2013135896、WO2011124718、WO2011051489、およびWO2012059486に記載されたものが挙げられる。本発明のポリペプチドのアルブミン部分は、HAまたはその保存された改変物の少なくとも1つのサブドメインまたはドメインを含むことがある。
HLEPとしてのイムノグロブリン
さらに好適な実施形態では、HLEPは、イムノグロブリン定常領域(Fc)である。イムノグロブリンG(IgG)の定常領域(Fc)は、治療タンパク質の半減期を増加させることが当技術分野に公知である(Dumont J Aら、2006年、BioDrugs 20巻、151〜160頁)。重鎖のIgG定常領域は、3つのドメイン(CH1〜CH3)とヒンジ領域とからなる。イムノグロブリン配列は、任意の哺乳動物、またはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4をそれぞれ由来とすることがある。抗原結合ドメインのないIgGおよびIgG断片もまた、HLEPとして使用されることがある。治療ポリペプチド部分は、IgGまたはIgG断片に好ましくは抗体のヒンジ領域またはペプチド性リンカーを介して接続され、それらはさらに切断できる場合がある。いくつかの特許および特許出願は、治療タンパク質のin vivo半減期を亢進するための、治療タンパク質とイムノグロブリン定常領域との融合体を記載している。米国特許出願公開第2004/0087778号およびWO2005/001025は、融合させていなかったなら急速にin vivoで排除されていたであろう、Fcドメインとの、またはペプチドの半減期を増加させる生物活性ペプチドを含むイムノグロブリン定常領域の少なくとも一部との、融合タンパク質を記載している。Fc−IFN−β融合タンパク質は、生物活性の亢進、循環半減期の延長、およびさらに高い溶解性を達成することが記載された(WO2006/000448)。血清半減期が延長されかつin vivo効能が増加されたFc−EPOタンパク質(WO2005/063808)が開示されたとともに、G−CSF(WO2003/076567)、グルカゴン様ペプチド1(WO2005/000892)、凝血因子(WO2004/101740)、およびインターロイキン10(米国特許第6,403,077号)を含むFc融合体が開示され、それらは全て半減期亢進性を有していた。
この発明に従って使用することができる様々なHLEPが、WO2013/120939A1に詳細に記載されている。
本発明のポリペプチドのN−グリカンおよびシアリル化
本発明のポリペプチドは好ましくは、N−グリカンを含み、前記N−グリカンの少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%は、平均で少なくとも1つのシアル酸部分を含む。好適な実施形態では、前記N−グリカンの少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、平均で少なくとも1つのシアル酸部分を含む。発明者らは、高度にシアリル化されたVWF断片を含むポリペプチドが、さらに延長された半減期をそれ自体で有するだけでなく、共投与されたFVIIIの半減期をさらに延長できることがあることを見出した。言い換えれば、本発明のポリペプチドの投与は、共投与されたFVIIIの半減期の延長および/またはクリアランスの低減をもたらす。
本発明のポリペプチドは、好ましくはN−グリカンを含み、糖タンパク質のN−グリカンのシアリル基の少なくとも50%は、α−2,6連結型シアリル基である。一般に、末端シアリル基は、ガラクトース基にα−2,3連結またはα−2,6連結を介して付加することができる。典型的には,本発明のポリペプチドのN−グリカンは、α−2,3連結型シアリル基よりも多くのα−2,6連結型シアリル基を含む。好ましくは、N−グリカンのシアリル基の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%は、α−2,6連結型シアリル基である。これらの実施形態は、例えば、哺乳類細胞においてヒトα−2,6−シアル酸転移酵素を共発現することによって得ることができる。
そのような糖タンパク質を生産する適切な方法は、WO2016/188905A1に記載されている。よって、シアリル化の増加されたN−グリカンを含む糖タンパク質を生産する方法は、そこに記載されており、この方法は、(i)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供すること、および(ii)前記細胞を36.0℃未満の温度で培養することを含む。さらに、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む二量体の糖タンパク質を生産するか、または前記糖タンパク質の二量体化を増加させるための方法が記載されており、この方法は、(i)上記糖タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸を含む細胞を提供すること、および(ii)前記細胞を36.0℃未満の温度で培養することを含む。さらに、シアリル化の増加されたN−グリカンを含む糖タンパク質を生産する方法が、そこに記載されており、その方法は、(i)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含むポリペプチドをコードする核酸とα−2,6−シアル酸転移酵素をコードする組換え核酸とを含む細胞を提供すること、および(ii)上記糖タンパク質およびα−2,6−シアル酸転移酵素の発現を可能にする条件下で細胞を培養することを含む。
一実施形態では、本発明のポリペプチドのN−グリカンの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、少なくとも1つのシアル酸基を有する。別の実施形態では、本発明のポリペプチドのN−グリカンの少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、少なくとも1つのシアル酸基を含む。
別の実施形態では、本発明のポリペプチドのN−グリカンの15%未満、12%未満、10%未満、または8%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、またはさらに1%未満は、アシアロ−N−グリカンであり、すなわち、それらはシアル酸基を欠いたN−グリカンである。別の実施形態では、本発明のポリペプチドのN−グリカンの15%未満、12%未満、10%未満、または8%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、またはさらに1%未満は、アシアロ−N−グリカンであり、すなわち、それらはシアル酸基を持たない。
本発明の他の実施形態は、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含み、ここでは、前記トランケート型VWFは、第VIII因子(FVIII)に結合可能であり、前記糖タンパク質は、N−グリカンを含み、前記N−グリカンの35%未満、好ましくは34%未満、好ましくは33%未満、好ましくは32%未満、好ましくは31%未満、好ましくは30%未満、好ましくは29%未満、好ましくは28%未満、好ましくは27%未満、好ましくは26%未満、好ましくは25%未満、好ましくは24%未満、好ましくは23%未満、好ましくは22%未満、好ましくは21%未満、好ましくは20%未満、好ましくは19%未満、好ましくは18%未満、好ましくは17%未満、好ましくは16%未満、好ましくは15%未満、好ましくは14%未満、好ましくは13%未満、好ましくは12%未満、好ましくは11%未満、好ましくは10%未満、好ましくは9%未満、好ましくは8%未満、好ましくは7%未満、好ましくは6%未満、および好ましくは5%未満は、平均で2つ以上の末端非シアリル化ガラクトース残基を含む。
本発明のさらに他の実施形態は、トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含み、ここでは、前記トランケート型VWFは、第VIII因子(FVIII)に結合可能であり、前記トランケート型VWFは、N−グリカンを含み、前記N−グリカンの6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、および好ましくは1%未満は、平均で3つ以上の末端非シアリル化ガラクトース残基を含む。
上記に記載された実施形態は、互いに組み合わせることができる。上記に記述されたいかなるN−グリカンのパーセンテージまたはいかなるシアリル化度の標示も、平均のパーセンテージまたは程度として理解されるべきものであり、すなわち、それらは単分子ではなく分子の集団を指す。糖タンパク質の集団内で個別の糖タンパク質分子のグリコシル化またはシアリル化は、いくらかの不均一性を示すはずであることが明らかである。
二量体
この発明のポリペプチドは、高い割合の二量体を有する。そのため、本発明のポリペプチドは、好ましくは二量体として存在する。一実施形態では、ポリペプチドの少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または約100%が、二量体として存在する。別の実施形態では、本発明のポリペプチドの二量体:単量体の比は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、さらに好ましくは少なくとも2.5、または少なくとも3である。最も好ましくは、本発明の全てのポリペプチドは、二量体として存在する。さらに好適なのは、本発明のポリペプチドが多量体の形態を含まないことである。二量体は単量体と比較して第VIII因子との親和性が向上していることから、二量体の使用が好ましい。本発明のポリペプチドの二量体の含有量、および二量体の単量体に対する比は、参照によって本明細書に組み入れるWO2016/188907の実施例2に記載されるように決定することができる。
一実施形態では、第VIII因子との本発明のポリペプチドの親和性は、同じ第VIII因子分子とのヒトの天然VWFのものよりも大きい。第VIII因子の親和性は、ヒトの天然の第VIII因子、または配列番号5の特徴を有する第VIII因子分子を参照することがある。
二量体の割合が高いこの発明のポリペプチドの調製物は、第VIII因子との親和性が増加することが見出されている。そのような第VIII因子との親和性の増加は、本発明のポリペプチドによる第VIII因子の安定化の亢進をもたらす。二量体の割合の増加に代えてまたは組み合わせて、第VIII因子との親和性を増加させる第VIII因子結合ドメイン内の変異を有する本発明に従うポリペプチドもまた、本発明の好適な実施形態である。適した変異は本明細書に開示されている。
ポリペプチドの調製
本発明のポリペプチドをコードする核酸は、当技術分野に公知の方法に従って調製することができる。ヒトの天然VWF(配列番号3)のプレプロ体のcDNA配列に基づき、本発明の上記のトランケート型VWF構築物またはポリペプチドをコードする組換えDNAを設計し生成することができる。
宿主細胞によって分泌されるポリペプチドがヒトの天然VWFのアミノ酸1から763のプレプロ体を含まない場合であっても、ポリペプチドの細胞内前駆体をコードする核酸(例えばDNA)が、配列番号4のアミノ酸23から763、または好ましくはアミノ酸1から763と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むことが好適である。最も好ましくは、ポリペプチドの細胞内前駆体をコードする核酸(例えばDNA)は、配列番号4のアミノ酸23から763または配列番号4のアミノ酸1から763をコードするヌクレオチド配列を含む。
正しい方位で発現プラスミド内に挿入されたオープンリーディングフレーム全体をDNAが含有する構築物は、タンパク質発現のために使用されることがある。典型的な発現ベクターは、プラスミドを有する細胞中の挿入された核酸に対応する大量のmRNAの合成を指示するプロモーターを含有する。それらはまた、宿主生物内での自律複製を可能にする複製配列の起点と、合成されたmRNAが翻訳される効率を増加させる配列とを含有することがある。安定な長期ベクターは、例えばウイルス(例えば、エプスタイン・バーウイルスゲノム由来のOriP配列)の調節配列を用いることによって、自由に複製する実体として維持されることがある。ゲノムDNA内にベクターが組み込まれている細胞株も生産されることがあり、このようにして、遺伝子製品が継続的に生産される。
典型的には、提供される細胞は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を哺乳類宿主細胞内に導入することによって取得される。
細胞培養の可能な、および糖タンパク質の発現の可能な任意の宿主細胞が、本発明に従って利用されることがある。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳類由来である。本発明に従って使用される場合がある哺乳類細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NS0/1、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞[PER.C6(CruCell、ライデン、オランダ)];SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(293細胞、または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.GenVirol.、36巻、59頁、1977年);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻、4216頁、1980年);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23巻、243〜251頁、1980);サル腎臓細胞(CV1、ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(HepG2、HB8065);マウス乳房腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals NY.Acad.Sci.、383巻、44〜68頁、1982年);MRC5細胞;PS4細胞;ヒト羊膜細胞(CAP);およびヒト肝細胞癌株(HepG2)が挙げられる。好ましくは、細胞株は、齧歯類細胞株であり、特にCHOまたはBHKなどのハムスター細胞株である。
哺乳類宿主細胞内への目的の糖タンパク質の発現を達成するのに充分な核酸の導入に適した方法は、当技術分野に公知である。例えば、Gethingら、Nature、293巻、620〜625頁、1981年;Manteiら、Nature、281巻、40〜46巻、1979年;Levinsonら、EP117,060;およびEP117,058を参照されたい。哺乳類細胞について、遺伝子材料を哺乳類細胞内に導入する一般的な方法としては、Grahamおよびvan der Erb(Virology、52巻、456〜457頁、1978年)のリン酸カルシウム沈殿法、またはHawley−Nelson(Focus、15巻、73頁、1993年)のリポフェクタミン(商標)(GibcoBRL)法が挙げられる。哺乳類細胞宿主系の形質転換の一般的な態様は、Axelによって米国特許第4,399,216号に記載されている。遺伝子材料を哺乳類細胞内に導入するための様々な技法については、Keownら、Methods in Enzymology、1989年、Keownら、Methods in Enzymology、185巻、527〜537、1990年、およびMansourら、Nature、336巻、348〜352頁、1988年を参照されたい。
細胞は、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養される。ポリペプチドは、当業者に公知の方法を用いて回収および精製することができる。
凝固障害の治療
上記に記載されるトランケート型VWFを含む組換えポリペプチドは、FVIIIの免疫原性を低減するために使用され、その場合、組換えポリペプチドおよびFVIIIタンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される。具体的には、血液凝固障害としては、血友病Aが挙げられる。用語「血友病A」は、機能性の凝固FVIIIの欠損を指し、この欠損は通常は遺伝性である。
一実施形態では、血液凝固障害は、重度の血友病Aであり、好ましくは、NHP中の内因性のFVIII活性レベルの1%を下回る内因性のFVIII活性レベルを伴う。本発明の観点では、血液凝固障害は、好ましくは重度の血友病Aである。
別の実施形態では、血液凝固障害は、中等度の血友病Aである。中等度の血友病Aは、好ましくは、内因性FVIII活性レベルがNHP中の内因性FVIII活性レベルの約1%から約5%までであるという特徴を有する。典型的には、中等度の血友病Aに罹った対象は、内因性のFVIII活性レベルが血漿中で0.01から0.05IU/mLである。
別の実施形態では、血液凝固障害は、軽度の血友病Aである。軽度の血友病Aは、好ましくは、内因性のFVIII活性レベルがNHP中の内因性のFVIII活性レベルの約5%から約40%までであるという特徴を有する。典型的には、軽度の血友病Aに罹った対象は、内因性のFVIII活性レベルが血漿中で0.05から0.4IU/mLである。
血液凝固障害の治療は、任意の臨床ステージまたは症状にある任意の疾患の形態を有するものと既に診断された患者の治療;疾患の症状もしくは徴候の発生もしくは発展もしくは増悪もしくは悪化の遅延;ならびに/または疾患の重症度の予防および/もしくは低減を包含する。
本発明のポリペプチドが投与される「対象」または「患者」は、好ましくはヒトである。ある態様では、ヒトとは小児患者である。他の態様では、ヒトとは成人患者である。
ある特定の実施形態では、対象は、FVIIIに対する免疫反応を発生することが予想されるおよび/または発生するリスクを有する。
ある特定の実施形態では、対象は、以前にFVIIIを用いて治療されていない対象である。
他の実施形態では、対象は、FVIIIを用いて前治療されている対象、例えば第1のFVIII製品から第2の異なるFVIII製品への治療の変更に付されている対象、具体的には寒冷沈降物および/もしくは新鮮凍結血漿を用いた治療から因子濃縮物を用いた治療への、または血漿由来因子濃縮物を用いた治療から組換え因子濃縮物への、または第1の製造業者のFVIII濃縮物から別の製造業者のFVIII濃縮物への変更に付されている対象である。治療の変更は、ある特定の実施形態に従うものであり、この実施形態はまた、FVIII濃縮物のみの投与から本発明の組換えポリペプチドとの併用でのFVIIIの投与を含む治療への変更を包含する。
具体的な実施形態では、対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有する。患者において、具体的には血友病Aの患者において、FVIII投与後に阻害性の抗FVIII抗体を発達させる、いくつかのタイプのそのようなリスク因子が公知である。例えば、対象は、前記対象においてFVIIIの内因性の産生を排除するかまたは実質的に排除するFVIII遺伝子の逆位、大きな欠失、および/またはナンセンス変異という特徴を有する遺伝子型を示すことがある。そのため、ある特定のタイプのF8遺伝子変異は、遺伝的なリスク因子に関連することが同定されている。さらに遺伝的なリスク因子は、IL10、TNFA、FCGR2A、またはCTLA4に多型を含む。
ある特定の実施形態では、組換えポリペプチドをFVIIIと共投与することは、例えば、上記に記載されるような血液凝固障害を患う対象が組換えポリペプチドとFVIIIとの定期的な共投与を含む継続的な治療を受ける状況下では予防的である。
他の実施形態では、共投与は、例えば、血液凝固障害を患う対象が急性出血のエピソードに遭うかまたは急性出血のエピソードに遭うリスクを有する環境下で、治療的であることがある。
本発明のポリペプチドを含む組成物およびキット、ならびに本発明のポリペプチドおよびFVIIIを含む組成物およびキットは、本明細書に記載されている。組成物は、典型的には、医薬的に許容可能な担体を含む滅菌された医薬組成物の一部として供給される。この組成物は、(それを患者に投与する所望の方法に応じて)任意の適した形態とすることができる。
用語「第VIII因子」および「FVIII」または「第VIII因子タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、血漿由来FVIIIおよび組換えFVIIIの両方を包含する。組換えFVIIIは、限定なく、完全長FVIII、ならびに2本鎖Bドメイン欠失型またはトランケート型バリアント、ならびに単鎖B−ドメイン欠失型またはトランケート型バリアント、例えばWO2004/067566に記載されているもの、およびBドメイン外の変異を含むがFVIIIの生物活性を有する他のFVIIIバリアントを包含する。好適な一実施形態によれば、FVIIIは、配列番号5のアミノ酸配列からなる単鎖の第VIII因子である。
本発明のポリペプチドは、種々の経路によって、例えば経口的に、経皮的に、皮下に、皮内に、鼻腔内に、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、舌下に、局所的にまたは局在的に、患者に投与することができる。任意の所与の症例における投与のための最も適した経路は、具体的なポリペプチド、対象、ならびに疾患の性質および重症度、ならびに対象の健康状態に応じたものとなる。好ましくは、本発明のポリペプチドは、静脈内または皮下に投与される。ポリペプチドおよびFVIIIは、好ましくは共投与される。
本発明のポリペプチドおよびFVIIIを用いた治療の用量投与の総数および長さを決定することは、充分に当業者の能力の範囲内にある。投与される本発明のポリペプチドならびにFVIIIの投薬量は、投与されるFVIIIの濃度、治療される患者の内因性VWFの濃度、またはその両方に依存するものとなる。この出願の発明者らによって規定される比に基づく有効な投薬量は、投与される本発明のポリペプチドの分子量ならびにFVIIIの分子量を考慮して、当業者によって決定することができる。血液凝固障害の重症度の程度もまた、投与される本発明のポリペプチドならびにFVIIIの適切な投薬量を決定するために考慮されることがある。典型的なFVIIIの投薬量は、約20IU/kg体重から約1000IU/kg体重まで、好ましくは約20IU/kg体重から約500IU/kg体重まで、さらに好適には約20IU/kg体重から約400IU/kg体重まで、さらに好適には約20IU/kg体重から約300IU/kg体重までに及ぶことがある。
この発明に従って、本発明のポリペプチドを用いて治療されている患者は、血液凝固第VIII因子を用いてさらに治療されるか、または少なくとも治療されてきている。本発明のポリペプチドおよびFVIIIは、同時に、すなわち併せて、または逐次的な方式で、投与されることがある。代替的には、別々の方式での投与を実施することができる。本明細書の前記投与様式の全てが、用語「組合せ療法」および「共投与」に包含される。
ある特定の実施形態によれば、本発明のポリペプチドおよびFVIIIは、混合物として、すなわち同じ組成物内とするかもしくは2つの組成物の混合工程後とするかのどちらかで投与されることがあるか;または逐次的にもしくは別々に、すなわち別々の組成物として投与されることがある。
組換えポリペプチドとFVIIIタンパク質との共投与は、組換えポリペプチドおよびFVIIIタンパク質を含む単一の組成物にて共に投与することによって達成される好適な一実施形態に従う。さらに好適な実施形態によれば、組換えポリペプチドとFVIIIタンパク質との共投与は、単一組成物に配合された組換えポリペプチドとFVIIIとを含む組合せ製品を提供することによって、または投与前に混合されるように準備された少なくとも2つの別々の製品のセットまたはキットを提供することによって達成され、その場合、第1の製品は組換えポリペプチドを含み、第2の製品はFVIIIを含む。前記組合せ製品は、具体的には同時投与に適している。前記セットまたはキットは、具体的には同時投与または逐次投与に適している。
ある特定の実施形態によれば、本発明のポリペプチドおよびFVIIIは、別々に、すなわち別々の組成物として、かつ適切な場合には異なる用量投与スケジュールで、投与されることがある。好ましくは、本発明のポリペプチドおよびFVIIIは、併用で投与されることがある。本発明のポリペプチドに用いる投与スケジュールは、FVIIIの投与スケジュールと同一であることも異なることもある。特に、この実施形態によれば、本発明のポリペプチドおよびFVIIIの両方がin vivoで少なくとも一過的に共存することが、投与様式よりも重要であることを認識することができる。併用で投与される限り、用量投与レジメンを同一にすることは、本発明のポリペプチドがFVIIIの免疫原性を低減させるというベネフィットを有するためには決定的に重要ではない。ゆえに、in vivoでの共存が達成される限り、本発明のポリペプチドおよびFVIIIの用量投与レジメンおよび/または投与経路については、投与を独立に提供することができる。この実施形態によれば、FVIIIが独立して、しかし好ましくは本発明のポリペプチドと併用で、提供または投与されることから、本発明のポリペプチドを含むがFVIIIを少しも含まない組成物が特に適することがある。
具体的には、組換えポリペプチドおよびFVIIIタンパク質が、共投与の前に混合されるはずのものである別々の組成物または製品中に提供される場合に、混合物は、投与前に少なくともある割合の前記組換えポリペプチドを前記FVIIIに結合させるように、投与前に処理されることがある。例えば,混合物を、ある特定の時間インキュベーションすることができよう。そのようなインキュベーションは、1分弱または5分弱、大気温度または適切であれば昇温のどちらかで、しかし好ましくは40℃を下回る温度で、実施することができよう。そのような急速なインキュベーション工程はまた、単一組成物に配合される組換えポリペプチドおよびFVIIIを含む組合せ製品の復元の間、適切であることがある。
使用される組成物中の第VIII因子の濃度は、典型的には10〜10,000IU/mLの範囲にある。異なる実施形態では、本明細書に定義される本発明のVWFポリペプチドに関する比についての要件が満たされる場合、本発明の組成物中のFVIIIの濃度は、10〜8,000IU/mL、または10〜5,000IU/mL、または20〜3,000IU/mL、または50〜1,500IU/mL、または3,000IU/mL、または2,500IU/mL、または2,000IU/mL、または1,500IU/mL、または1,200IU/mL、または1,000IU/mL、または800IU/mL、または750IU/mL、または600IU/mL、または500IU/mL、または400IU/mL、または300IU/mL、または250IU/mL、または200IU/mL、または150IU/mL、または125IU/mL、または100IU/mL、または62.5IU/mL、または50IU/mLの範囲にある。
「国際単位」または「IU」は、国際標準調製物に対し「IU」で較正された標品を用いて一段階凝血アッセイまたは発色基質FVIII活性アッセイなどのFVIII活性アッセイにより測定された際の、FVIIIの血液凝固活性(能)の測定の単位である。一段階凝血アッセイ、例えばN Lee、Martin Lら、An Effect of Predilution on Potency Assays of FVIII Concentrates、Thrombosis Research(Pergamon Press Ltd.)30巻、511 519頁(1983年)に記載されたものなどが、当技術分野に公知である。一段階アッセイの原理:試験を活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイの改変バージョンとして実施する:血漿をリン脂質および表面活性化因子とインキュベーションすることで、内在的な凝固系の因子の活性化を生じる。カルシウムイオンの添加によって、凝固カスケードを誘発する。測定可能なフィブリン血餅の形成までの時間を決定する。アッセイは、第VIII因子を欠損した血漿の存在下で実施する。この欠損血漿の凝固能は、供試される試料に含まれる凝固第VIII因子によって回復される。凝固時間の短縮は、試料中に存在する第VIII因子の量に比例する。凝固第VIII因子の活性は、第VIII因子の活性が国際単位で既知である標準調製物との直接的な比較によって定量される。
別の標準的なアッセイは、発色基質アッセイである。発色基質アッセイは、商業的に購入される場合があり、例えばcoamatic FVIIIテストキット(Chromogenix−Instrumentation Laboratory SpA V.モンツァ338−20128、ミラノ、イタリア)などがある。発色アッセイの原理:カルシウムおよびリン脂質の存在下、第X因子を第Ixa因子によって第Xa因子に活性化する。補因子として第VIIIa因子によって、この反応を刺激する。測定される試料中のFVIIIから、反応混合物中で少量のトロンビンによってFVIIIaを形成する。最適濃度のCa2+、リン脂質、および第IXa因子、ならびに過剰量の第X因子を使用すると、第X因子の活性化は、第VIII因子の効能に比例する。活性化された第X因子は、発色基質S−2765から発色団pNAを放出する。そのため、405nmで測定されるpNAの放出は、形成されたFxaの量に比例し、ひいては試料の第VIII因子の活性にも比例する。
医薬組成物
本明細書に記載される方法において適した本発明のポリペプチドの治療製剤は、所望の純度のポリペプチドを、当技術分野で典型的に採用される任意選択の医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤(これらの全てが本明細書では「担体」と称される)、すなわち緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤、および他の種々雑多な添加剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液として保管用に調製することができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、(Osol編、1980年)を参照されたい、そのような添加剤は、採用される投薬量および濃度で、レシピエントに対し非毒性でなければならない。
緩衝剤は、ほぼ生理的条件にある範囲にpHを維持するのに役立つ。それらは、約2mMから約50mMに及ぶ濃度を呈することができる。適した緩衝剤としては、有機酸と無機酸の両方、およびそれらの塩、例えばクエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩緩衝液(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩緩衝液(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩緩衝液(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩緩衝液(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)、および酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)などが挙げられる。さらに、リン酸塩緩衝液、ヒスチジン緩衝液、およびトリメチルアミン塩、例えばトリスを使用することができる。
保存剤は、添加して、微生物の増殖を遅延させることができ、0.2%〜1%(w/v)に及ぶ量で添加することができる。適した保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、ならびにメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、ならびに3−ペンタノールなどが挙げられる。「安定化剤」として時には知られる等張剤は、添加して、液体組成物の等張性を確保することができ、多価の糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールが挙げられる。安定化剤とは、機能的には治療剤を可溶化するかまたは変性もしくは容器壁への接着を防止するのに役立つ増量剤から添加剤までに及ぶ、広範なカテゴリーの賦形剤を指す。典型的な安定化剤は、多価の糖アルコール(上記に挙げたもの);アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど、有機糖または糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロールなどであって、イノシトールなどのシクリトールを含む;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;含硫還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウムなど;低分子量ポリペプチド(例えば10残基以下のペプチド);タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;単糖類、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類、例えばラクトース、マルトース、スクロース、および三糖類、例えばラフィノース;ならびに多糖類、例えばデキストランとすることができる。安定化剤は、活性タンパク質の重量の0.1から10,000重量部の範囲で存在することができる。
非イオン性の表面活性剤または界面活性剤(「湿潤剤」としても知られる)は、添加して、治療剤を可溶化するとともに、攪拌により誘導される凝集から治療タンパク質を保護するのに役立てることができ、それによって、タンパク質の変性を引き起こさずに応力の加わる表面を剪断変形させるように製剤を曝露することも可能になる。適した非イオン性表面活性剤としては、ポリソルベート類(20、80など)、ポリオキサマー類(184、188など)、プルロニックポリオール類、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル類[TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80など)が挙げられる。非イオン性表面活性剤は、約0.05mg/mLから約1.0mg/mLの範囲で、または約0.07mg/mLから約0.2mg/mLの範囲で、存在することができる。
追加の種々雑多な賦形剤としては、増量剤(例えばデンプン)、キレート剤(例えばEDTA)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)および共溶媒が挙げられる。
本明細書における製剤はまた、本発明のポリペプチドに加えて、第2の治療剤を含有することができる。適した第2の治療剤の例を下記に示す。
用量投与スケジュールは、1か月に1回から毎日まで、数多くの臨床学的要因に応じて変えることができ、そのような要因としては、疾患のタイプ、疾患の重症度、および本発明のポリペプチドに対する患者の感度が挙げられる。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、週2回、5日毎、週1回、10日毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎、もしくは月1回、または前述の値のうち任意の2つの間の任意の範囲、例えば4週間毎から毎月、10日毎から2週間毎、もしくは週に2回から3回などで投与される。
投与される本発明のポリペプチドの投薬量は、具体的なポリペプチド、対象、ならびに疾患の性質および重症度、対象の健康状態、治療レジメン(例えば、第2の治療剤を使用するか否か)、ならびに選択された投与経路に従って変わるはずである;そして、適切な投薬量は、当業者が容易に決定することができる。
本発明のポリペプチドの個々の投薬の最適な量および間隔は、治療されている状態の性質および程度、投与の形態、経路、および部位、ならびに治療されている具体的な対象の年齢および状態によって決定されるはずであること、ならびに使用される適切な投薬量を医師が最終的に決定するはずであることを、当業者は認識されよう。この投薬は、適切な頻度で繰り返すことができる。副作用が発生した場合、通常の臨床診療に従って、投薬の量および/または頻度を変更または低減することができる。
好ましくは、医薬組成物は、血管外で投与されるように、好ましくは皮下に投与されるように、製剤化される。
ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、活性成分として、本発明のポリペプチドならびにFVIIIのどちらかもしくは両方を含むか、または代替的には、本明細書に開示される投与の様式に応じて、FVIIIを含まず本発明のポリペプチドのみを含む。
本明細書に記載された本発明は特に記載されたもの以外の変形および改変が可能であることを、当業者は認識するはずである。本発明は趣旨および範囲内にある全てのそのような変形および改変を含むことが認識されよう。本発明はまた、この明細書に個々にまたはまとめて言及または標示された構成、組成物、工程、および化合物の全て、ならびに前記の構成、組成物、工程、および化合物のうち任意の2つ以上のいずれかおよび全ての組合せを含む。
配列表に示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、表1にまとめる。
Figure 2020530436
本発明のある特定の実施形態を、以下の実施例を参照して記載するが、これらの実施例は、説明のみを目的とし、先に本明細書に記載された一般概念の範囲を限定することを意図するものではない。
血漿由来VWFおよび組換えトランケート型VWFを用いて処理された際の単球由来樹状細胞による第VIII因子取り込みのレベル
1.1 定義/略称
Figure 2020530436
1.2 材料および方法
BIOSTATE(CSL Behringから得られるヒト血漿由来(pd)VWF)
CSL626[トランケート型VWF(764〜1242)−アルブミン融合体、二量体]
CSL650(CSL Behringから得られる組換えVWF−アルブミン融合体)
CSL627(CSL Behringから得られる組換え単鎖FVIII)
アドベイト(登録商標)(Shireから得られる組換えFVIII)
ヘリキセート(登録商標)(CSL Behringから得られる組換えFVIII)
リファクト(登録商標)(Pfizerから得られる組換えFVIII)
本明細書にトランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626としても特定されるとともに、D’D3−FP二量体がFVIIIと結合するという特徴を有するD’D3アルブミン融合タンパク質(D’D3−FP)の生成は、本明細書に参照によって組み入れるWO2016/188907A1に開示されている。コード配列D’D3−FPのヌクレオチド配列は、配列番号1として示され、成熟型D’D3−FPのアミノ酸配列は、配列番号2として示されている。
組換えBドメイン欠失型単鎖FVIII(CSL627)、すなわちrVIII−SingleChainは、配列番号5に定義されるようなアミノ酸配列を有する。
CSL650(組換えVWF−アルブミン融合体)は、WO2009/156137A1に記載されるようなアミノ酸配列を有する。
1.3 単球由来樹状細胞におけるFVIIIの取り込み
全バフィーコートを50mLファルコンチューブ内にデカントし、1:2に滅菌PBS(Sigma#D8537、血液25mL/PBS25mL)で希釈した。血液を混合し、Ficoll 15mLを含有するFicoll勾配(GE、#17−1440−02)上に重層した。勾配を、1000×g[アクセル(5);ブレーキ(1)]で20分間の遠心分離によって分離した。PBMCを含有する中央の層を採集し、新しい50mL採集チューブ内に移した。
次いで、細胞を遠心分離(1400rpm)によりペレットにして、滅菌PBS 50mLで2回洗浄し、毎回上清をデカントした。次いで、ペレットを塩化アンモニウム(10mL)に再懸濁し、室温(RT)で10分間インキュベーションして残りのRBCを溶解した。溶解後、細胞にPBS 40mLを足して、スピンダウンして残りのPBMCをペレットにした。細胞をPBS 50mLで1回洗浄し、スピンダウン(1200rpm)して最終的な細胞ペレットを採集した。細胞ペレットをPBS 20mL中に再懸濁し、血球計算器を用いて細胞を計数して単球精製用に調製した。
2×10個のPBMCを採取し、遠心分離(1200rpm、10分、4℃)によってペレットにした。細胞ペレットを精製緩衝液[PBS pH7.2、0.5%BSA(Miltenyi Biotec#130−091−376)、2mM EDTA]1600μL中に再懸濁した。次いで、CD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec#130−050−201)を細胞(400μL)に添加し、4℃で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を氷冷精製緩衝液(20mL)で洗浄し、遠心分離(1200rpm、10分、4℃)により再度1回ペレットにした。上清を完全に吸引し、氷冷精製緩衝液(500μL)を用いて再懸濁した。
細胞を70μmセルストレーナーに通して、塊状の細胞を除去し、次いで、平衡化したMACS LSカラム(Miltenyi Biotec#130−041−401)上に直接添加した。カラムを精製緩衝液3mLで3回洗浄し、結合しなかった細胞を除去した。次いで、MACSカラムを磁石から取り出し、精製緩衝液5mLをカラムに添加した。シリンジを通じて圧力をかけることにより細胞をデカントし、遠心分離(1200rpm、5分)によってペレットにした。
細胞を完全増殖培地[10%FBS(GE#SV30176.03)、50U/mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシン(Pen−Strep、Gibco#15070−63)、2mM Glutamax(Gibco#35050)]を補充したRPMI1640(Sigma#R0883)に再懸濁し、計数した。細胞をペトリ皿(1×10細胞個/皿)に播き、サイトカインを細胞に添加して分化を誘導した(500IU IL−4/10細胞個、1000IU GM−CSF/10細胞個、R&D Systems、204−IL−010/CF/215−GM−050/CF)。プレートを37℃、5%COでインキュベーションしておいた。3日目に、細胞に新鮮完全培地5mL中サイトカイン(500IU IL−4/10細胞個、1000IU GM−CSF/10細胞個)を足した。
5日後、培養した細胞を各プレートから取り出し、遠心分離(1200rpm、10分)によりペレットにした。次いで、細胞を予め加温したXVIVO培地(LONZA#04−743Q)で1回洗浄し、XVIVO培地(2mL)に再懸濁して計数した。細胞を、フローサイトメトリーによって、CD14(BD Biosciences CD14−V450、#560349)、CD40(BD Biosciences、CD40−PE、#555589)、CD86(BD Biosciences、CD86−PE、#555658)、およびHLA−DR(BD Biosciences、HLA−DR−PE、#347401)の発現について特性解析した。次いで、細胞を96ウェル丸底プレートに播種した(2.5×10細胞個/ウェル)。37℃での解析に用いるために調製した細胞は、インキュベーター内(37℃、5%CO)に置き、4℃でのベースライン対照として用いるプレートは、氷上に置いた。
VWFタンパク質を体積50μLに希釈し、ウェルに添加した。単量体サブユニットに基づきpdVWFおよびCSL650について終濃度2222nM、1111nM、555.5nM、および0nMを、ならびに単量体サブユニットに基づきCSL626について4444nM、2222nM、および1111nMを達成するように希釈を行った。10分間のVWFタンパク質のプレインキュベーション後、FVIIIタンパク質も希釈し(最終的に88.88nM)、対応の各ウェルに添加した。プレートを2時間インキュベーションしておき、第VIII因子を取り込ませた。
インキュベーション後、プレートをスピンして細胞をペレットとし(1200rpm、5分)、上清を捨てた。ウェルをFACS緩衝液(PBS+2%FBS、GE#SV30176.03)で2回洗浄し、次いで、Intrapep試薬2(Beckman Coulter、#IM2389)100μLに再懸濁して細胞を固定した。細胞をRTで15分間固定しておき、次いでスピンダウンして(1200rpm、5分)、上清を捨てた。細胞をFACS緩衝液200μLで洗浄し、Intrapep試薬2(Beckman Coulter、#IM2389)100μLに再懸濁して細胞を透過処理した。細胞をRTで5分間インキュベーションしておき、次いで、10μg/mLの抗第VIII因子A2抗体(Thermo Fisher#MA1−27389)を用いて15分間処理した。次いで、細胞をペレットとし、FACS洗浄により洗浄し、二次抗体(Jackson#115−115−164、抗マウスIgG、50μL、1:100希釈)を用いてRTで15分間、暗所で染色した。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーによって解析した。
1.4 データ解析
Flowjoを用いて、FSCおよびSSCにより、単一のMDDCについて細胞をゲートし、第VIII因子またはVWFのどちらによっても治療されていないMDDCにベースラインクワドラント(quadrant)を設定した。ベースラインクワドラントを超える陽性の移動をパーセンテージとして表し、同等の治療についての4℃での取り込みを差し引くことによって最終的な値を決定した。prismを用いて、移動の最終パーセンテージを、対応のVWF取り込みの比に対してプロットした。
1.5 結果
MDDCの表面マーカーによる表現型解析は、CD14について陰性染色を、CD40、HLA−DR、およびCD86について陽性染色を示した(図1)。
図2および図3は、MDDCにおける第VIII因子取り込みのパーセンテージを示す。3種の商業的に入手可能なFVIIIタンパク質[アドベイト(登録商標)、ヘリキセート(登録商標)、およびリファクト(登録商標)]ならびにrec scFVIII(CSL627)を、pdVWF製品Biostate、トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650の存在下で、取り込みについて評価した。各種のモル比VWF:FVIIIを適用した。VWF濃度は、各種VWF製品についての単量体サブユニットを指す。VWFの非存在下(モル比VWF:FVIII=0)、最大25倍モル過剰のpdVWF製品Biostateおよび完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650、ならびに最大50倍モル過剰のトランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626で、第VIII因子取り込みを評価した。
図2は、(a)pdVWF製品Biostate、(b)トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および(c)完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650について、3つの個別のパネルで結果を示す。3種の市販のFVIIIタンパク質[アドベイト(登録商標)、ヘリキセート(登録商標)、およびリファクト(登録商標)]およびrec scFVIII(CSL627)の結果を、各パネルに別々にプロットしている。図3は、異なる配置での図2のデータを表す。(a)アドベイト(登録商標)、(b)CSL627、(c)ヘリキセート(登録商標)、および(d)リファクト(登録商標)についての4つの個別のパネルは、モル比VWF:FVIIIの増加の存在下でのMDDCにおけるFVIII取り込みの結果を示す。各パネルでは、pdVWF製品Biostate、トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650の結果を別々にプロットしている。
pdVWF製品Biostate、トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、ならびに完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650を用いてモル比VWF:FVIIIが増加されると、全ての第VIII因子タンパク質について、MDDCにおけるFVIII取り込みが低減された。
図4は、図2に示したデータに基づく、MDDCにおける第VIII因子取り込みの正規化されたパーセンテージを示す。(a)pdVWF製品Biostate、(b)トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626、および(c)完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650の3つの個別のパネルは、3種の市販のFVIIIタンパク質[アドベイト(登録商標)、ヘリキセート(登録商標)、およびリファクト(登録商標)]ならびにrec scFVIII(CSL627)の結果を別々に示す。データをモルVWF濃度に対してプロットした。VWF濃度は、各種VWF製品についての単量体サブユニットを指す。データをそれぞれの個別の実験について正規化した。実験は、3連で(a)を、または4連で(b)および(c)をそれぞれ行った。VWF(0nM)の非存在下での読取りを100%として定義し、最も高いVWF濃度(2222nMまたは4444nM)の存在下での読取りをそれぞれの個別の実験についての0%で定義した。正規化後に負の値ならびに外れ値を除外した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて曲線をフィッティングし[log(阻害物質)vs.応答−可変勾配、4パラメーター、最小二乗フィット]、IC50値を算出した。これらのフィッティング曲線に基づき、それぞれのVWF製品についてのIC50値を算出しており、表2にまとめている。
Figure 2020530436
表2は、MDDCにおける第VIII因子取り込みの阻害についての算出したIC50値を示す。アドベイト(登録商標),CSL627,ヘリキセート(登録商標)、およびリファクト(登録商標)の各FVIII製品についてのIC50値を、3種の異なるVWFタンパク質pdVWF/Biostate、CSL626、およびCSL650について別々に算出した(図4)。全てのFVIIIについてのIC50の平均値および標準偏差も、3種の各種VWFタンパク質について別々に算出した。トランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626の存在下で供試した全てのFVIII製品についてのIC50は、pdVWF製品Biostateおよび完全長recVWF−アルブミン融合体CSL650と比較して中等度に増加されたに過ぎなかった。
図2、図3、および表2に示した結果は、pdVWFと、完全長recVWFとが、しかし驚くべきことにトランケート型VWFアルブミン融合体CSL626までもが、各種FVIII製品の単球樹状細胞内へのエンドサイトーシスを、同様の比率で阻害できることを実証している。VWF濃度の増加は、完全長とBDDの両方のFVIII製品について、FVIII取り込みの低減が増加していることを示す。
特に、供試したトランケート型VWFアルブミン融合体CSL626についてのIC50値は、供試した完全長VWF製品のIC50値に少なくとも同様に匹敵するものであった。
単球樹状細胞などの抗原提示細胞によるFVIIIの取り込みは、投与されたFVIIIに対する免疫反応の第1の段階であることから、この結果は、二量体として存在するトランケート型VWF−アルブミン融合体CSL626の投与によりFVIII免疫が低減されることを実証している。完全長VWF製品と比較した際のCSL626により媒介される細胞性取り込みの定量的な低減は、驚くほど大きいものである。
血漿由来VWFおよび組換えトランケート型VWFを用いて処理された際の単球由来樹状細胞による第VIII因子抗原提示
2.1 定義/略称
Figure 2020530436
2.2 材料および方法
血漿由来のフォン・ウィルブランド因子(pdVWF):pdVWFの供給源はヒト血漿である。pdVWFに結合していた残留の血漿由来FVIIIを、濃縮中間体から、400nMカルシウムを含有するHEPES緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィー工程(HiPrep Sephacryl S500、GE Healthcare)を経て分離した[Josica D.ら、Journal of Chromatography(1998年);796巻2号、289〜298頁]。
CSL627(CSL Behringから得られる組換え単鎖FVIII):は、配列番号5に定義されるようなアミノ酸配列を有する組換えBドメイン欠失型単鎖FVIII、すなわちrVIII−SingleChainである。CSL626[トランケート型VWF(764〜1242)−アルブミン融合体、二量体]を、実施例1下に記載されたように使用した。FVIIIとの結合親和性がさらに増加したCSL626のバリアントを使用したが、このバリアントは、配列番号4の配列付番を参照する場合に、VWF野生型アミノ酸配列と比較してアミノ酸置換を有し、その置換はS764E/S766Y/V1083Aであった。このD’D3−FPバリアントはまた、実施例2では、EYA−FPとも称する。
2.3 ProPresent抗原提示アッセイ
ProPresentアッセイをProImmune(オックスフォード、イギリス)によって実施して、抗原の取り込みおよびプロセシングの後に単球由来樹状細胞(MODC)でHLA分子と結合したユニークなCSL627ペプチドと、pdVWFペプチド、CSL626ペプチド、またはEYA−FPペプチドとを同定した。被験抗原(CSL627、pdVWF、CSL626、およびEYA−FP)は、本発明者らが調製した。
手短に述べれば、12人から24人のHLA型判定済みの健康な非血縁ドナー(表3〜表5)から得たPBMCを、全血から密度勾配遠心分離によって精製した。未成熟な単球由来DC(MODC)をin vitroで生成し、146.4nMのCSL627のみの存在下で、または1.9667μMのpdVWF、CSL626、またはEYA−FPを用いて予め複合体形成された146.4nMのCSL627(単量体の含有量に基づきモル濃度を算出)の存在下で、成熟させた。MODCの成熟を、フローサイトメトリーにより、CD209、CD86、およびHLA−DRの上方制御を介してモニタリングした。MODCを収集して洗浄した後、界面活性剤を含有する緩衝溶液中で溶解した。HLA分子を特異的な免疫親和性工程で回収した。次いで、精製したHLA複合体からペプチドを溶出し、さらに解析するために処理した。続いて、ペプチド試料を高分解能シークエンシング質量分析(LC−MS/MS)によって解析したので、図5を参照されたい。次いで、結果として得られたデータは、取り込ませた被験抗原の配列ならびに6種の内因性の対照タンパク質、すなわちリソソーム関連膜タンパク質1(LAMP−1)、リソソーム関連膜タンパク質3(LAMP−3)、トランスフェリン受容体(TFRC)、低親和性IgE受容体およびFcガンマ結合受容体(FcER2/FcGR2)、アポリポタンパク質B(ApoB)、ならびにインテグリンα−M(ITGAM)に由来するペプチドと併せて、Uniprot Swiss−Prot Complete Proteomeデータベースを参照し、配列解析ソフトウェアを用いて集約し解析した。MHCクラスII関連インバリアント鎖ペプチド(CLIP)は、下方制御され、完全に成熟したMODCには検出されないことがある。LC−MS/MSによるペプチド配列の同定は、スコアリングアルゴリズムおよび統計的有意性の決定に基づくものとした。ペプチドの正体の可能性は、それらの期待値で記載されている[Xue L、Clin Exp Immunol.(2016年);183巻1号:102〜13頁、Leone DA J Immunol(2017年)、199巻2号、531〜546頁、Lamberthら、Sci.Transl.Med.、9巻、eaag1286(2017年)]。図5は、ProPresent(登録商標)MHCクラスII抗原提示アッセイのProImmuneのワークフローを示す:(A)HLA型判定済みのPBMCの単球を単離、(B)単球の培養および未成熟な樹状細胞の生成、(C)抗原のローディング(CSL627、pdVWF)、細胞内でのプロセシング、樹状細胞の成熟、および抗原提示、(D)樹状細胞の溶解、(E)免疫親和性工程によるペプチド/MHCクラスII複合体の単離およびペプチドの溶出、(F)LC−MSによるペプチドのシークエンシング(ProImmune ProPresent(登録商標)ホームページから適応させる)。
2.4 データ解析
同定した全てのペプチドをグループ分けして、各ドナーについてアラインメントした。1つのアラインメントに埋め込まれた重なり合うペプチド群は、被験タンパク質の特定のアミノ酸位置にあるペプチドクラスターを規定する。同定したペプチドクラスターのコアペプチドを、NetMHCII 3.1を用いて予測した。予測した結合親和性の最も高いコアペプチドを使用して、上記の特異的なペプチドクラスターの場所を標示した。ドナーセットの全てのペプチドクラスターの数を、対応の被験タンパク質について、抗原提示効率を定量するために、および潜在的な免疫原性のスコアとして、それぞれ使用した。各ドナーについての全てのペプチドクラスター中のユニークなペプチドの総数も考慮して、抗原提示強度を定量した(下記の例を参照)。
データ解析の例:
Figure 2020530436
pdVWF、CSL626、またはEYA−FPの存在下および非存在下におけるCSL627の抗原提示を比較するために、それぞれのHLA−DR拘束性ペプチドクラスターのユニークなHLA−DR結合ペプチドの数をさらに解析した。HLA−DR拘束性ペプチドクラスター当たりのユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、X−Y−Plotに図示した。X軸上では、pdVWF、CSL626、およびEYA−FPの非存在下におけるCSL627抗原提示の結果として、同定された全てのHLA−DR拘束性ペプチドクラスターに、ユニークなHLA−DR結合ペプチドのそれぞれの数を付して、Y軸上では、pdVWF、CSL626、およびEYA−FPの存在下におけるCSL627抗原提示の結果として、同定された全てのHLA−DR拘束性ペプチドクラスターに、ユニークなHLA−DR結合ペプチドのそれぞれの数を付して、プロットした。簡単な線形回帰を実行して(Microsoft Excel)、MODCのHLA−DRによるCSL627抗原提示効率を比較した。
2.5 ドナーの選択
健康なヒトドナー由来の末梢血単核球(PBMC)試料のパネルを、ProImmune細胞バンクから選択した。各PBMC試料をHLA(ヒト白血球抗原)型判定し、使用前に液体窒素(気相)中で凍結保存した。世界人口に高発現することが知られているHLAクラスII対立遺伝子がよく表されるように、パネルを選択した。ドナーセットのパネルとそれらのHLA−DRB1またはHLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定の情報を、下記の表に一覧にする。
Figure 2020530436
Figure 2020530436
Figure 2020530436
2.6.1 結果
pdVWFの存在下および非存在下におけるMODCによるCSL627のMHCクラスII抗原提示
シークエンシング質量分析による内因性タンパク質の検出(LAMP−1、LAMP−2、TFRC、FcER2/FcGR2、ApoB、ITGAM、CLIP)およびフローサイトメトリーによるDC表面マーカー(CD209、CD86、HLA−DR)のモニタリングは、堅牢性のある試料データを生成するために許容可能であるものとした。
Figure 2020530436
表6は、PBMCの供給源として総計36人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みおよびHLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーの3つの独立したパネルA、B、およびCを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成したデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのpdVWFと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。pdVWFの非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに38.0±7.1個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。pdVWFの存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに14.5±0.7個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。pdVWFは、同定したペプチドクラスターの数に基づくと2.2分の1から3.0分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原提示を低減することが可能であった。1つの、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーのパネルを用いると、pdVWFの存在下でのCSL627抗原提示は、同定したHLA−DQB1拘束性ペプチドクラスターに基づくと10分の1に低減され、同定したHLA−DQB1拘束性ペプチドクラスターに基づくと3.5分の1に低減された。およそ50〜70%のCSL627ペプチドクラスターが、HLA−DRB1拘束性であり、およそ30〜50%のCSL627ペプチドクラスターが、HLA−DQB1およびHLA−DPB1により提示された。CSL627由来、ならびにHLA−DRB1拘束性、HLA−DQB1拘束性、およびHLA−DPB1拘束性ペプチドクラスターの数が、pdVWFの存在下で減少またはいくらか消失したのに対し、pdVWF非存在下のCSL627抗原提示に由来するペプチドクラスター配列と比較して、追加または新しいCSL627由来、ならびにHLA−DRB1拘束性、HLA−DQB1拘束性、およびHLA−DPB1拘束性ペプチドクラスターは検出されず、CSL627由来、ならびにHLA−DRB1拘束性、HLA−DQB1拘束性、およびHLA−DPB1拘束性ペプチドクラスターで増加したものはなかった。
CSL627の存在下または非存在下でのpdVWFの抗原提示を、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーのパネルおよびHLA−DRB1型判定済みのドナーの第2の独立したパネルにおいて検討した。CSL627の非存在下でのpdVWFの抗原提示を、HLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のpdVWF抗原提示を、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーおよびHLA−DRB1型判定済みのドナーの両方のパネルで検討した。CSL627の存在下でのpdVWF抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、2つの独立したドナーパネルに13.0±5.7個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのpdVWF抗原提示によって、1つのドナーパネルに17個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。
モル過剰のpdVWFの存在下でのペプチドクラスターの数に基づくCSL627の抗原提示の複数分の1への低減は、大量のpdVWFタンパク質のロードを介して偏った可能性がある。しかし、pdVWF抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のpdVWFのロードがあったことを考慮すると、pdVWFの抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。過剰量の競合的なpdVWF由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにpdVWFのみをロードした際のpdVWFの抗原提示の増加をもたらした。
Figure 2020530436
表7は、PBMCの供給源として総計36人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みおよびHLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーの3つの独立したパネルA、B、およびCを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成されたデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのpdVWFと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。pdVWFの非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに1035±99個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。pdVWFの存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに192±9.9個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。pdVWFは、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと4.8分の1から6.0分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原の提示を低減することが可能であった。1つの、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーのパネルを用いると、pdVWFの存在下でのCSL627抗原提示は、同定したユニークなHLA−DQB1結合ペプチドに基づくと21.7分の1に低減され、同定したユニークなHLA−DPB1結合ペプチドに基づくと14.2分の1に低減された。およそ80%のユニークなCSL627由来ペプチドが、HLA−DRB1拘束性であり、およそ20%のユニークなCSL627由来ペプチドが、HLA−DQB1およびHLA−DPB1により提示された。
CSL627の存在下または非存在下でのpdVWFの抗原提示を、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーのパネルおよびHLA−DRB1型判定済みのドナーの第2の独立したパネルにおいて検討した。CSL627の非存在下でのpdVWFの抗原提示を、HLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のpdVWFの抗原提示を、HLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーおよびHLA−DRB1型判定済みのドナーの両方のパネルで検討した。CSL627の存在下でのpdVWF抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、2つの独立したドナーパネルに39.0±28.3個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのpdVWF抗原提示によって、1つのドナーパネルに60個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。
モル過剰のpdVWFの存在下でのユニークなペプチドの数に基づくCSL627の抗原提示の複数分の1への低減は、大量のpdVWFタンパク質のロードを介して偏った可能性がある。しかし、pdVWF抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のpdVWFのロードがあったことを考慮すると、pdVWFの抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。CSL627をDCにロードした際に、同定したユニークなペプチドのうちpdVWF由来であったのはおよそ25%に過ぎなかった。過剰量の競合的なpdVWF由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにpdVWFのみをロードした際のpdVWFの抗原提示の増加をもたらした。
図6は、pdVWFの存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、pdVWFの非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)。
図6は、PBMCの供給源として総計36人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みおよびHLA−DRB1/DQB1/DPB1型判定済みのドナーの3つの独立したパネルA、B、およびCを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイを図示する。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのpdVWFと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。
相対的に、各ペプチドクラスターのユニークなHLA−DRB1結合性CSL627由来ペプチドの全体数は、VWFの存在下で低減された。DCにpdVWF非存在下でCSL627をロードした際に、数多くのペプチドクラスターが同定されたが、pdVWFの存在下では、CSL627由来ペプチドクラスターがいくらか消失した(表4および表5)。CSL627をpdVWFの存在下で供試した際に、pdVWF不在でのCSL627と比較して、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと、さらに高い効率で提示されるペプチドクラスターはなかった。
線形回帰は、傾き0.22*X(R=0.73)でデータを相関付けている。pdVWFの存在下では、CSL627抗原提示は、pdVWFの非存在下でのCSL627の抗原提示効率のおよそ5分の1(およそ22%)である。
2.6.2 結果
CSL626の存在下および非存在下におけるMODCによるCSL627のMHCクラスII抗原提示
シークエンシング質量分析による内因性タンパク質の検出(LAMP−1、LAMP−2、TFRC、FcER2/FcGR2、ApoB、ITGAM、CLIP)およびフローサイトメトリーによるDC表面マーカー(CD209、CD86、HLA−DR)のモニタリングは、堅牢性のある試料データを生成するために許容可能であるものとした。
Figure 2020530436
表8は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みのドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成されたデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのCSL626と予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。CSL626の非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに38.0±7.1個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。CSL626の存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに20個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。CSL626は、同定したペプチドクラスターの数に基づくと1.55分の1から2.55分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原の提示を低減することが可能であった。
CSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターの数が、CSL626の存在下で減少またはいくらか消失したのに対し、CSL626非存在下のCSL627抗原提示に由来するペプチドクラスター配列と比較して、追加または新しいCSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターは検出されず、CSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターで増加したものはなかった。
CSL627の存在下または非存在下でのCSL626の抗原提示を、12人のHLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のCSL626抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、12人の健康な非血縁のドナーに3個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのCSL626抗原提示によって、同じドナーセットに2個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。
モル過剰のCSL626の存在下でのペプチドクラスターの数に基づくCSL627の抗原提示の低減は、大量のCSL626タンパク質のロードを介して偏った可能性がある。しかし、CSL626抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のCSL626のロードがあったことを考慮すると、CSL626の抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。過剰量の競合的なCSL626由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにCSL626のみをロードした際のCSL626の抗原提示の増加をもたらした。
Figure 2020530436
表9は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みのドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成されたデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのCSL626と予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。CSL626の非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに1035±99個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。CSL626の存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、12人のドナーセットに212個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。CSL626は、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと4.4分の1から5.4分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原の提示を低減することが可能であった。
CSL627の存在下または非存在下でのCSL626の抗原提示を、HLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のCSL626抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、12人の健康な非血縁のドナーに24個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのCSL626抗原提示によって、同じドナーセットに28個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。
モル過剰のCSL626の存在下でのユニークなペプチドの数に基づくCSL627の抗原提示の複数分の1への低減は、大量のCSL626タンパク質のロードを介して偏ることがある。しかし、CSL626抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のCSL626のロードがあったことを考慮すると、CSL626の抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。CSL627をDCにロードした際に、同定したユニークなペプチドのうちCSL626由来であったのはおよそ10%に過ぎなかった。過剰量の競合的なCSL626由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにCSL626のみをロードした際のCSL626の抗原提示の有意な増加をもたらした。
図7は、CSL626の存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、CSL626の非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)。
図7は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイを図示する。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのCSL626と予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。
相対的に、各ペプチドクラスターのユニークなHLA−DRB1結合性CSL627由来ペプチドの全体数は、CSL626の存在下で低減された。DCにCSL626非存在下でCSL627をロードした際に、数多くのペプチドクラスターが同定されたが、CSL626の存在下では、CSL627由来ペプチドクラスターがいくらか消失した(表6および表7)。CSL627をCSL626存在下で供試した際に、CSL626不在でのCSL627と比較して、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと、さらに高い効率で提示されるペプチドクラスターはなかった。
線形回帰は、傾き0.25*X(R=0.66)でデータを相関付けている。CSL626の存在下では、CSL627抗原提示は、CSL626の非存在下でのCSL627の抗原提示効率のおよそ4分の1(およそ25%)である。
2.6.3 結果
EYA−FPの存在下および非存在下におけるMODCによるCSL627のMHCクラスII抗原提示
シークエンシング質量分析による内因性タンパク質の検出(LAMP−1、LAMP−2、TFRC、FcER2/FcGR2、ApoB、ITGAM、CLIP)およびフローサイトメトリーによるDC表面マーカー(CD209、CD86、HLA−DR)のモニタリングは、堅牢性のある試料データを生成するために許容可能であるものとした。
Figure 2020530436
表10は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みのドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成されたデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのEYA−FPと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。EYA−FPの非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに38.0±7.1個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。EYA−FPの存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに15個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。EYA−FPは、同定したペプチドクラスターの数に基づくと2.1分の1から3.0分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原の提示を低減することが可能であった。
CSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターの数が、EYA−FPの存在下で減少またはいくらか消失したのに対し、EYA−FP非存在下のCSL627抗原提示に由来するペプチドクラスター配列と比較して、追加または新しいCSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターは検出されず、CSL627由来およびHLA−DRB1拘束性ペプチドクラスターで増加したものはなかった。
CSL627の存在下または非存在下でのEYA−FPの抗原提示を、12人のHLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のEYA−FP抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、12人の健康な非血縁のドナーに2個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのEYA−FP抗原提示によって、同じドナーセットに同じ2個のHLA−DRB1ペプチドクラスターが同定された。
モル過剰のEYA−FPの存在下でのペプチドクラスターの数に基づくCSL627の抗原提示の低減は、大量のEYA−FPタンパク質のロードを介して偏ることがある。しかし、EYA−FP抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても大きな影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のEYA−FPのロードがあったことを考慮すると、EYA−FPの抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。過剰量の競合的なEYA−FP由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにEYA−FPのみをロードした際のEYA−FPの抗原提示の増加をもたらした。
Figure 2020530436
表11は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みのドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイによって生成されたデータをまとめたものである。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのEYA−FPと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。EYA−FPの非存在下でのCSL627抗原提示と、それに続くシークエンシング質量分析により、2つの独立したドナーのパネルに1035±99個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。EYA−FPの存在下でのCSL627抗原提示とそれに続くシークエンシング質量分析により、12人のドナーセットに241個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。EYA−FPは、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと3.9分の1から4.7分の1に、CSL627のHLA−DRB1拘束性抗原の提示を低減することが可能であった。
CSL627の存在下または非存在下でのEYA−FPの抗原提示を、HLA−DRB1型判定済みのドナーのパネルにおいて検討した。CSL627の存在下のEYA−FP抗原提示およびそれに続くシークエンシング質量分析によって、12人の健康な非血縁のドナーに21個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定され、そこでは、CSL627の非存在下でのEYA−FP抗原提示によって、同じドナーセットに20個のユニークなHLA−DRB1結合ペプチドが同定された。
モル過剰のEYA−FPの存在下でのユニークなペプチドの数に基づくCSL627の抗原提示の複数分の1への低減は、大量のEYA−FPタンパク質のロードを介して偏ることがある。しかし、EYA−FP抗原提示は、CSL627の存在を介しても不在を介しても影響を受けなかった。CSL627タンパク質のロードと比較してモル過剰のEYA−FPのロードがあったことを考慮すると、EYA−FPの抗原提示は、CSL627よりも有効性の低いものであった。CSL627をDCにロードした際に、同定したユニークなペプチドのうちEYA−FP由来であったのはおよそ8%に過ぎなかった。過剰量の競合的なEYA−FP由来ペプチドを介したCSL627抗原提示の阻害は除外できないが、これはまた、DCにEYA−FPのみをロードした際のEYA−FPの抗原提示の有意な増加をもたらした。
図8は、EYA−FPの存在下および非存在下におけるCSL627のProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示の比較を示す。各データ点は、HLA−DR拘束性ペプチドクラスターを表す。HLA−DR拘束性ペプチドクラスターのCSL627由来のユニークなHLA−DR結合ペプチドの数を、EYA−FPの非存在下(X軸)および存在下(Y軸)でプロットした。X−Y−Plot、線形回帰(MS Excel)
図8は、PBMCの供給源として24人の健康な非血縁のHLA−DRB1型判定済みドナーの2つの独立したパネルAおよびBを用いて、ProImmune ProPresent(登録商標)抗原提示アッセイを図示する。単量体の含有量に基づき146.4nMのCSL627のみ、または1.9667μMのEYA−FPと予め複合体形成させた146.4nMのCSL627のどちらかを、未成熟なDCにロードした。
相対的に、各ペプチドクラスターのユニークなHLA−DRB1結合性CSL627由来ペプチドの全体数は、EYA−FPの存在下で低減された。DCにEYA−FP非存在下でCSL627をロードした際に、数多くのペプチドクラスターが同定されたが、EYA−FPの存在下では、CSL627由来ペプチドクラスターがいくらか消失した(表8および表9)。CSL627をEYA−FPの存在下で供試した際に、EYA−FP不在でのCSL627と比較して、ユニークなHLA−DRB1結合ペプチドの数に基づくと、さらに高い効率で提示されるペプチドクラスターはなかった。
線形回帰は、傾き0.27*X(R=0.63)でデータを相関付けている。EYA−FPの存在下では、CSL627の抗原提示は、EYA−FPの非存在下でのCSL627の抗原提示効率のおよそ4分の1である。

Claims (21)

  1. 血液凝固第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための、第VIII因子(FVIII)に結合可能なトランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチドであって、該組換えポリペプチドおよび血液凝固第VIII因子(FVIII)タンパク質は、血液凝固障害を患う対象に共投与される、前記組換えポリペプチド。
  2. FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する対象の体液性免疫応答の低減、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体の力価および/もしくは頻度の低下、ならびに/またはFVIIIに対する細胞媒介性免疫応答の低減を含む、請求項1に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  3. 好ましくは参照治療と比較すると、投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、共投与された組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)内へのFVIIIの取り込みの低減によって達成されるかまたは該低減を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  4. 組換えポリペプチドおよびFVIIIの共投与に続いて、内部移行されたFVIIIを有する対象のAPCの一部は、参照治療と比較すると1.1分の1以下、1.2分の1以下、1.3分の1以下、1.4分の1以下、1.5分の1以下、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、または10分の1以下に低減され、前記参照治療は、組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、請求項3に記載の組換えポリペプチド。
  5. APC内へのFVIII取り込み阻害能を表す共投与された組換えポリペプチドのIC50値(単量体のモル濃度に基づく計算)は、完全長VWFのそれぞれのIC50値と比較すると中等度にのみ増加され、好ましくは共投与された組換えポリペプチドのIC50値は、完全長VWFのIC50値を3倍以下、2.5倍以下、2.4倍以下、2.3倍以下、2.2倍以下、2.1倍以下、2.0倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.3倍以下、1.2倍以下、または1.1倍以下超過する、請求項3または4に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  6. APC内へのFVIII取り込み阻害能を表す共投与された組換えポリペプチドのIC50値(単量体のモル濃度に基づく計算)は、完全長VWFのそれぞれのIC50値と比較すると同一であるかそれどころか低減されるかのどちらかであり、好ましくは共投与された組換えポリペプチドのIC50値は、完全長VWFのIC50値と比較すると1.2分の1以下、1.5分の1以下、2分の1以下、2.5分の1以下、または3分の1以下に低減される、請求項3または4に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  7. 参照治療と比較すると、組換えポリペプチドの投与後のFVIIIの免疫原性の低減は、組換えポリペプチドの存在下、対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドのMHCクラスII型抗原提示の消滅によって達成されるかまたは該低減を伴うものであり、前記参照治療は、組換えポリペプチドの投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一であり、対象の抗原提示細胞(APC)によるFVIIIペプチドのMHCクラスII型抗原提示は、好ましくは1.5分の1以下、2.0分の1以下、2.5分の1以下、3.0分の1以下、3.5分の1以下、または4.0分の1以下に消滅、すなわち低減される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  8. 対象は、以前にFVIIIを用いて治療されていない対象である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  9. 対象は、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生するリスクを有するおよび/または発生することが予想される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  10. 組換えポリペプチドおよびFVIIIは、血液凝固障害を患う対象の予防的または治療的な治療のために共投与される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  11. FVIIIの免疫原性の低減は、FVIIIに対する阻害抗体の力価の低下という特徴を有し、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の力価は、参照治療後の対象におけるFVIII抗体の力価と比較すると少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも80%低減され、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  12. FVIIIの免疫原性の低減は、対象集団におけるFVIIIに対する阻害抗体の頻度の低下という特徴を有し、好ましくはFVIIIに対する阻害抗体の頻度は、参照治療後の対象集団におけるFVIII抗体の頻度と比較すると少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも80%低減され、前記参照治療は、前記組換えポリペプチドの共投与なく前記FVIIIが投与されることを除いて、前記治療と同一である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  13. 組換えポリペプチドは、二量体として、好ましくはホモ二量体として投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  14. 共投与される組換えポリペプチドのFVIIIに対するモル比は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも50:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも100:1、または少なくとも150:1である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  15. 対象は、ヒト対象であり、血液凝固障害は、好ましくは血友病Aである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  16. 前記ポリペプチドは、静脈内に、皮下に、皮内に、経口的に、経皮的に、鼻腔内に、腹腔内に、局所的にまたは局在的に、舌下にまたは筋肉内に、好ましくは静脈内にまたは皮下に投与される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  17. 前記ポリペプチドは、機能性のVWF D’ドメインおよび/または機能性のVWF D3ドメインを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  18. トランケート型VWFは、配列番号4のアミノ酸776から805と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号4のアミノ酸764から1242と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  19. 組換えポリペプチドは、配列番号4の配列付番を参照する場合に、VWF野生型アミノ酸配列と比較して、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有し、置換は、S764G/S766Y、S764P/S766I、S764P/S766M、S764V/S766Y、S764E/S766Y、S764Y/S766Y、S764L/S766Y、S764P/S766W、S766W/S806A、S766Y/P769K、S766Y/P769N、S766Y/P769RおよびS764P/S766L、S764P/S766W/V1083A、S764G/S766Y/V1083A、S764E/S766Y/V1083A、N1011S/V1083A/K1181E、S766Y/V1083A、V1083A、S1042T、V805A/Q1158L、K912E/T1088S、ならびにL781Pからなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  20. 前記ポリペプチドは、半減期延長部分(HLEM)を含み、HLEMは、好ましくはトランケート型VWFに融合された異種アミノ酸配列であり、前記異種アミノ酸配列は、さらに好ましくは、イムノグロブリン定常領域およびその一部分、好ましくはイムノグロブリンのFc部分、アルブミンおよびその断片、トランスフェリンおよびその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモアミノ酸反復(HAP)、プロリン−アラニン−セリン反復(PAS)、アルブミンまたはその断片、アファミン、アルファ−フェトタンパク質、ビタミンD結合タンパク質、生理的条件下でアルブミンまたはイムノグロブリン定常領域に結合可能なポリペプチド、新生仔Fc受容体(FcRn)に結合可能なポリペプチド、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるポリペプチドを含むかまたはそれからなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用のための組換えポリペプチド。
  21. (i)トランケート型フォン・ウィルブランド因子(VWF)を含む組換えポリペプチド、および
    (ii)場合により、第VIII因子タンパク質(FVIII)
    を含む、第VIII因子(FVIII)の免疫原性を低減する際の使用のための医薬組成物であって、前記組成物は、血液凝固障害を患う対象に投与され、前記対象は好ましくは、FVIIIに対する免疫反応、具体的にはFVIIIに対する阻害抗体という特徴を有する免疫反応を発生することが予想される、前記医薬組成物。
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