JP2020526574A5 - - Google Patents

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ポリペプチド類眼部吸収促進剤およびその応用
発明は薬剤分野に属し、野生型膜透過ペプチド(penetratin)を用いて一連の油性誘導体を設計するものである。これらpenetratin誘導体は強い眼組織透過能力を有し、眼組織に対して毒性を生じずに、眼部吸収促進剤として非侵襲的方法により眼内への薬剤送達を実現でき、眼部での薬剤生物利用度を高める。これらpenetratin誘導体及びそれにより構成される眼部投与システムは点眼投与に用いられ、患者の順応性に劣る眼内注射投与に取って代わることができ、眼内と眼底疾病治療の利便性と安全性を大幅に向上させる。
目は人体で最も重要な感覚器官である。目の独特の生理構造は外来物質の侵入防止と保護を可能にしているが、薬の眼内送達には有利ではない。眼部の生理障壁には静的障壁(例えば角膜上バリア、血液眼関門等)と動的障壁(例えば涙による洗い流し等)があり、これが薬剤吸収を阻害する主な要因(Drug Discovery Today, 2008, 13 (3-4): 135-143; Adv. Drug Delivery Rev., 2006,58(11):1131-1135)となる。現在市販されている眼用製剤は主に点眼剤、眼科用ゲル、および眼軟膏などの形態が主流であり、臨床的には、点眼剤を結膜嚢に落とした後、薬剤が主に角膜または結膜を通って眼に移送される。しかしヒトの目の結膜嚢の容積が大きくないことに加えて、涙液希釈および鼻涙管による流失などの要因から、点眼剤の生物利用度は通常5%未満である。またさらに、眼表面から眼底までの長い拡散距離と眼房水の対流により、眼の後段組織に到達できるのは薬剤のうち極わずかな分量(<0.001%)になる(J. Controlled Release, 2014,193:100-112)。
全身投与は、臨床における眼部疾病治療のもう一つの方法であるが、血液眼関門(例えば血液網膜関門)による阻害があり、全身投与後に薬剤を網膜組織およびガラス体腔内に到達させることは困難であることが実践的に示されている。また、大量の薬剤が体内循環に入るため、大量投与および頻繁な投与は全身的な副作用を引き起こすリスクもある(Invest. Ophthalmol. Visual Sci., 2000,41(5):961-964)。
現在のところ、眼内注射(例えばガラス体内注射)および眼周囲注射(例えば強膜下注射)が臨床での眼内疾患と眼底疾患の治療における最も効果的な投与経路である。これらの侵襲性投与方法を用いれば、薬剤を直接的に眼内に到達させることができ、即効性があり生物利用度も高いが、繰り返して注射すると様々な合併症(例えば網膜剥離、眼内炎症など)を引き起こす可能性がある。患者にとっては受け入れ難く、順応性が悪いと言える(EYE, 2013,27(7):787-794)。
眼内や眼底への各種薬剤送達方法を総合的に考慮すると、眼部に外傷を与えず製造コストが低く、使いやすく患者の順応性が良好であるという点で、点眼剤は臨床上最も理想的な眼用剤型と言える。しかし、薬剤が眼内に吸収されにくく眼底部位に到達させるのはより一層困難であるという点が、主な問題になる。薬理学的方法によって、点眼剤の処方に吸収促進剤を導入すれば、眼内への薬剤到達効率を効果的に向上させることができる。
しかし目は非常に敏感であるため、低分子吸収促進剤(例えばエタノールやジメチルスルホキシド等)は眼部刺激性が強く、容易に代謝されないことから、眼部の応用に適さないと報告する研究がある(Toxicol. Lett., 2001,122(1):1-8)。したがって、新型の眼部吸収促進剤の開発は大いに必要とされるところである。
膜透過ペプチド(cell-penetrating peptides, CPPs)は生理条件で正電荷を持つ短いペプチドであり、共有結合または非共有結合によって接続される分子または投与システム(二本鎖DNA、リポソーム等)を通して細胞に入ることができる(J. Controlled Release, 2011,155(1SI):26-33; Biomaterials, 2013,34(32):7980-7993)。特にショウジョウバエの触角由来の膜透過ペプチドであるpenetratinは強い眼組織透過能力を有し、かつ眼部細胞に対する毒性を生じない(Mol. Pharm. 2014, 11(4): 1218-1227)。いくつかの非侵襲性眼投与システムにおいて、penetratinは吸収促進剤としてレポーター遺伝子を介し眼部後段部位に到達し、網膜において効率的に発現することができるという報道がある(ACS Appl. Mater. Interfaces, 2016,8(30):19256-19267; Nanomedicine: NBM 2017, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.nano.2017.04.011; 中国特許出願:CN201610560173.8)が、野生型penetratinの膜透過能力は更なる向上の余地がある。
本願は、公開文献に基づいて、眼組織の透過能力が強い天然由来のポリペプチドpenetratinについて、人工的に設計、改造されたpenetratin誘導体類を提供することを意図している。この種のポリペプチドは、眼部吸収促進剤として結膜嚢に滴下された後、共有結合または非共有結合の薬剤分子が眼の後段組織に到達するよう、より一層効率的に送達可能でありながら、野生型penetratinの良好な眼部安全性も残せるものである。なお、この局所投与方法は非標的組織における薬剤分布と副作用の発生を回避することもできる。
本発明の目的は、従来の吸収促進剤の眼部応用における欠点を克服し、人工的に改造された膜透過ペプチドおよびその設計方法を提供することである。人工的に改造された膜透過ペプチドは眼部吸収促進剤として非侵襲性経路を通じた点眼投与に使われ、共有結合または非共有結合の薬剤を眼内に送達することができる。
一般的な点眼剤は結膜嚢内の滞留時間が短いうえ吸収効果が悪く、特に遺伝子、ポリペプチド、蛋白質等の生体高分子薬物は、局所的な点眼投与をしても眼部の生物利用度が極めて低く、ほぼ眼の後段に到達できない。眼内注射剤と眼内インプラントは生物利用度が高いが、患者の順応性が悪く、重い合併症を引き起こしやすい。本発明は上記課題に関して、天然由来の膜透過ペプチドpenetratinに基づきアミノ酸変異の方法を用い、眼組織透過性が好ましく生物安全性が高い一連のポリペプチド誘導体を設計、製造し、非侵襲性経路により共有結合分子、ひいては非共有結合分子でさえも眼内へ送達できるようにする。このような人工的に合成したポリペプチドは、眼部吸収促進剤として眼部の吸収障壁を薬剤が効果的に透過できるようにするものであり、薬剤が眼内に入って眼の後段部位に到達するように促し、ひいては薬剤の眼部生物利用度を向上させることができる。
本発明は構造が改造されたpenetratin誘導体を提供する。野生型ポリペプチドpenetratinのアミノ酸配列は以下の通りである。
RQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号1)
出願人は大量の実験データをまとめていた折、野生型penetratinの眼組織への透過能力は分子の疎水性を向上させれば改善できることを思いがけず発見した。したがって、本発明に記載のpenetratin誘導体の設計原理は、野生型penetratinの基本的なアミノ酸配列を変えずに保持する前提において、アミノ酸変異技術を使用して疎水性アミノ酸をその分子に導入することで、得られたpenetratin誘導体の眼組織透過能力を向上させるというものである。
具体的に言えば、本発明は野生型penetratinを基に、元来のアルカリ性アミノ酸であるアルギニン(arginine,R)、リジン(lysine,K)および元来の疎水アミノ酸であるイソロイシン(isoleucine,I)、フェニルアラニン(phenylalanine,F)、トリプトファン(tryptophan,W)、メチオニン(methionine,M)の配列を変えずに保持し、ポリペプチド固相合成技術を用いてpenetratin分子における親水性アミノ酸であるグルタミン(glutamine,Q)とアスパラギン(asparagine,N)を疎水性アミノ酸に置き換えることにより、一連のポリペプチド誘導体を得るものである。
前記penetratin誘導体は、下記アミノ酸配列を有し、
RX 1 IKIWFX 2 X 3 RRMKWKK (配列番号2)
うちX1、X2とX3は疎水性アミノ酸を表し、天然由来のアミノ酸アラニン(alanine,A)、バリン(valine,V)、ロイシン(leucine,L)、イソロイシン(isoleucine,I)、プロリン(proline,P)、フェニルアラニン(phenylalanine,F)、トリプトファン(tryptophan,W)、メチオニン(methionine,M)、非天然由来のアミノ酸α-アミノ酪酸(α-aminobutyric acid)、α-アミノ吉草酸(α-aminopentanoic acid)、α-アミノカプロン酸(α-aminohexanoic acid)、α-アミノヘプタン酸(α-aminoheptanoic acid)等およびそれらの組成物から選択されることを特徴とする。前記組成物は、野生型penetratinの異なる親水性アミノ酸(グルタミンとアスパラギン)を異なる上記疎水性アミノ酸に置き換えたものである。
野生型penetratinを基に構造を改造して得たポリペプチド誘導体のアミノ酸配列は、表1の通りである。ここで変異アミノ酸は下線で示した。なお、この表は非天然アミノ酸変異の実例を示しておらず、異なる疎水アミノ酸の組み合わせ変異に関しては代表的な実例を示すにとどめた。
Figure 2020526574
Figure 2020526574
本発明に記載のpenetratin誘導体は、アミド結合、ジスルフィド結合、テトラヒドロチアゾール環またはその他の化学結合を介して診断または治療の作用を有する薬剤と結合することができ、一つまたは複数のアミノ酸またはその他の二官能基をブリッジとして診断または治療の作用を有する薬剤と結合することもできる。
診断または治療の役割を果たす上記薬剤は、次の薬物のうちの一つまたはそれらの合剤から選択されるが、これに制限されない。
1)白内障治療薬:ビタミンC、ビタミンE、ピレノキシン、グルタチオン、ベンダザックリジン等から選択する。
2)細菌性眼内炎症治療薬:バンコマイシン、セフタジジム、イセパマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、デキサメタゾン、トロバフロキサシン、セフロキシムナトリウム、ミノサイクリン等から選択する。
3)真菌性眼内炎症治療薬:ボリコナゾール、ナイスタチン、アムホテリシンB等から選択する。
4)緑内障治療薬:ピロカルピン、カルバコール、ジピベフリン、チモロール、ベタキソロール、メチプラノロール、レボブノロール、カルテオロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ブリモニジン、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ベメプロスト、タフルプロスト等から選択する。
5)代謝拮抗剤:フルオロウラシル、マイトマイシン等から選択する。
6)葡萄膜疾病治療薬:グルココルチコイド類薬剤、アシクロビル、ペニシリン等から選択する。
7)網膜疾病治療薬:トリアムシノロンアセトニド等から選択する。
8)視神経疾病治療薬:プレドニゾロン、ビタミンB1、ビタミンB12、ナイアシン等から選択する。
本発明に記載のpenetratin誘導体は二官能架橋分子(例えば二官能性ポリエチレングリコール(PEG))によりリポソーム、ミセル、ナノ粒子等の投与システム表面を修飾し、これら投与システムを用いて上記薬剤を封入し、上記薬剤の眼内送達を実現する。
本発明に記載のpenetratin誘導体は生理条件下で正電荷を有するという野生型penetratinの特性が残されており、生理条件下で負電荷を有する遺伝子やポリペプチド、蛋白質等の生体高分子薬物と自己組織化により静電気相互作用を通してナノ複合体を形成したり、又は陽イオン重合物(例えばポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン(DGLs)、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)等)が存在する場合、生理条件において負電荷を有する遺伝子やポリペプチド、蛋白質等の生体高分子薬物と自己組織化によりナノ複合物を形成したりすることができ、上記生体高分子薬の眼内送達を実現する。
上記生体高分子薬物は下記薬剤における一つまたはそれらの合剤から選択されるが、それらに制限されない。
1)遺伝子薬:プラスミドDNA(pDNA)、ペガタニブ(Pegaptanib)、ベバシラニブ(Bevasiranib)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide)等から選択する。
2)モノクローナル抗体薬:ベバシズマブ(Bevacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)等から選択する。
3)そのほかのポリペプチド蛋白類薬剤:抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)融合蛋白コンバーセプト(Conbercept)、上皮成長因子(Epidermal growth factor, EGF)、ディフェンシン、インターフェロン、シクロスポリン等から選択する。
本発明に記載のpenetratin誘導体は、診断または治療の作用を有する薬剤と共有結合複合物を形成する、または診断または治療の薬剤を封入したリポソーム、ミセル、ナノ粒子等の投与システムの表面を修飾する、または生理条件下で負電荷を有する遺伝子やポリペプチド、蛋白質等の生体高分子薬物と自己組織化により非共有ナノ複合体を形成し、結膜嚢内点眼投与を経て、薬剤が多くの眼部吸収障壁(角膜、結膜、強膜等)を通過して眼に入るように促進することができ、それらが運ぶ化学薬品や遺伝子、ポリペプチド、蛋白質類の生体高分子薬物でさえ眼部後段の網膜部位に送達する。penetratin誘導体を用いて構築した前記共有結合複合体や表面が修飾されたナノ投与システム、非共有結合ナノ複合体において、penetratin誘導体の濃度は1nM〜500μMであり、10nM〜300μMが好ましく、100nM〜100μMがさらに好ましい。この非侵襲性経路により投与する眼内薬剤送達システムは、薬剤の眼部への吸収促進と化学薬品や生体高分子薬物の眼部生物利用度の改善に寄与するものであり、眼内注射などの患者の順応性が低い投与方法を臨床において置き換えることができる。
本発明に記載のpenetratin誘導体がそれと共有結合する化学薬品に与える眼部吸収促進効果を直感的に示すために、出願人は単純なトリプトファン(tryptophan,W)によって置き換えたpenetratin誘導体を例として、同誘導体のC端に一つのリジン(lysine,K)を追加する形で結合させ、蛍光プローブとしてのカルボキシフルオレセイン(FAM)をリジンのアミノ側鎖に結合させて共有結合複合体を形成した。そして一連の体外実験と体内実験を通して、penetratin誘導体が修飾した蛍光プローブの眼部細胞取り込み能力、眼部インビトロ組織の透過能力および結膜嚢内点眼投与後の生体動物眼部の吸収と分布を考察した。結果としては、トリプトファンによって置き換えたpenetratin誘導体は野生型penetratinよりも顕著に高い眼部吸収促進能力を有していた。
そしてこれがより重要なのだが、penetratin誘導体は、眼組織に対する透過能力と疎水性(親油性)とが相関性を持ち、疎水性(親油性)が強いほどpenetratin誘導体の眼組織に対する透過能力も強くなるため、他の疎水性アミノ酸を用いて製造したpenetratin誘導体も高い眼部吸収促進効果を得るということを出願人は見出した。このほか、penetratin誘導体は蛍光プローブを眼内に効果的に送達することができ、診断または治療の作用を有する他の薬剤に蛍光プローブを置き換えても同様の眼内送達効果が得られるということも出願人は証明した。
本発明に記載のpenetratin誘導体の、ナノ薬剤キャリアおよびそれと非共有結合された生体高分子薬に対する眼部吸収促進効果を直感的に示すために、出願人は単純なフェニルアラニン(phenylalanine,F)によって置き換えたpenetratin誘導体を例として、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide)を生体高分子薬物のモデルとし、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)とヒアルロン酸(hyaluronic acid,HA)が存在する条件において、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入した非共有結合複合体を構築した。そして一連の体外実験と体内実験を通して、penetratin誘導体が修飾した非共有結合複合体の眼部細胞取り込み能力、眼部インビトロ組織の透過能力および結膜嚢内点眼投与後の生体動物眼部の吸収と分布を考察した。結果としては、フェニルアラニンによって置き換えたpenetratin誘導体は野生型penetratinよりも顕著に高い眼部吸収促進能力を有していた。
本発明に記載のpenetratin誘導体の優位性は、安全性の観点から眼部における応用が極めて少ない小分子吸収促進剤との比較において、このポリペプチド類の吸収促進剤は分解しやすく生物安全性が高いということである。また、ポリペプチド類の吸収促進剤は修飾や改造しやすいため、異なる応用目標を実現できる。そして本発明に記載のpenetratin誘導体は天然由来の野生型penetratinよりも強い眼部吸収促進能力を有する。
penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の細胞取り込み定性評価を実施。 ヒト角膜上皮細胞とヒト結膜上皮細胞をpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体(100 nM)とともにそれぞれ0.5 h、1 h、2 h、4 h培養した。スケールは100 μmである。 penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の細胞取り込み定量評価を実施。 ヒト角膜上皮細胞とヒト結膜上皮細胞をpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体とともにそれぞれ4 h培養した後、測定した。Fmは平均細胞蛍光強度値である。 penetratin誘導体の細胞毒性評価を実施。 ヒト角膜上皮細胞とヒト結膜上皮細胞をpenetratin誘導体とともにそれぞれ12 h培養し、MTT法を用いて陰性対照群に対する実験群の細胞生存率を検出した。 penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体のインビトロ眼組織透過能力評価を実施。 図Aにおいてaはpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体のインビトロウサギ眼角膜透過曲線であり、bはpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体のインビトロウサギ眼強膜透過曲線であり、cは見かけ透過係数であり、図Bはブランク群と実験群のインビトロ組織切片のDAPI蛍光染色であり、スケールは100 μmである。 penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体のインビトロ組織毒性評価を実施。 図Aはブランク群とpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体群の角膜含水率、図Bはブランク群とpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体群の強膜含水率、図Cはブランク群とpenetratin誘導体−FAM共有結合複合体群のインビトロ組織切片のHE染色であり、スケールは100 μmである。 penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の生体マウス眼内の分布を計測。 図Aは結膜嚢投与後それぞれの経過時間(10 min, 0.5 h, 1 h, 2 h, 4 h, 6 h)の、penetratin誘導体−FAM共有結合複合体のマウス眼前部位(角膜)と眼後部位(網膜)における分布状況であり、図Bは結膜嚢投与後10 min経過時の、penetratin誘導体−FAM共有結合複合体のマウス眼前部位(角膜)と眼後部位(網膜)における分布状況であり、図Cは投与後10 min, 1 h, 6 h経過時の、penetratin誘導体−FAM共有結合複合体の眼内分布の半定量分析結果である。 Penetratin誘導体とアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤の非共有結合複合体の眼部吸収を実施。 図Aは結膜嚢投与後それぞれの経過時間(1 h, 2 h, 6 h, 8 h)の、各群の非共有結合複合体(ASO/PG5, ASO/PG5/HA, ASO/PG5/HA/Pene)のマウス網膜分布状況であり、表Bは各群において緑色蛍光標記したASOの網膜各領域分布状況である。 Penetratin誘導体が修飾したフルオロウラシルとアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤のダブルドラッグローディングの非共有結合複合体の細胞取り込み評価を実施。 マウス線維形成性細胞を様々な処方のダブルドラッグローディング非共有結合複合体(dual/PG5, dual/PG5/HA, dual/PG5/HA/Pene)とともに4 h培養した後、各群の細胞平均蛍光強度値を測定した。
以下、本発明の具体的な実施例を組み合わせて本発明について説明するが、これはその請求範囲を制限するものではない。
実施例1
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の製造:野生型penetratinの構造を基に、その本来のアルカリ性アミノ酸の配列と疎水アミノ酸の配列を変えずに保持し、ポリペプチド固相合成技術を用いて、penetratin分子における親水性のグルタミン(glutamine,Q)とアスパラギン(asparagine,N)を疎水性のトリプトファン(tryptophan,W)にそれぞれ置き換えることで、一連のポリペプチド誘導体を得た。上記トリプトファンによって置き換えたpenetratin誘導体のC端に一つのリジン(lysine,K)を追加する形で結合し、蛍光プローブとしてのカルボキシフルオレセイン(FAM)をリジンのアミノ側鎖に結合し、共有結合複合体を形成した。そのアミノ酸配列は表2を参照されたい。
同時に、野生型penetratinの本来のアルカリ性アミノ酸の配列と親水性アミノ酸の配列を変えずに保持し、ポリペプチド固相合成技術を用いて、penetratin分子内で疎水性がより強いイソロイシン(isoleucine,I)、フェニルアラニン(phenylalanine,F)、トリプトファン(tryptophan,W)、メチオニン(methionine,M)をアラニン(alanine,A)にそれぞれ置き換えて親水性のpenetratin誘導体6Aを得て、さらにFAMを用いてそれに蛍光標識を行い、親水性の対照ポリペプチドとする。
Figure 2020526574
出願人は上記方法を用いて、アラニン(alanine,A)、バリン(valine,V)、ロイシン(leucine,L)、イソロイシン(isoleucine,I)、プロリン(proline,P)、フェニルアラニン(phenylalanine,F)、トリプトファン(tryptophan,W)、メチオニン(methionine,M)、α-アミノ酪酸(α-aminobutyric acid)、α-アミノ吉草酸(α-aminopentanoic acid)、α-アミノカプロン酸(α-aminohexanoic acid)、α-アミノヘプタン酸(α-aminoheptanoic acid)等の天然または非天然のアミノ酸およびそれらの組成物によって置き換えたpenetratin誘導体をそれぞれ製造した。そのアミノ酸配列は表1を参照されたい。
出願人は上記方法を用いてさらに、白内障治療薬、細菌性眼内炎症治療薬、真菌性眼内炎症治療薬、緑内障治療薬、代謝拮抗剤、ぶどう膜疾病治療薬、網膜疾病治療薬および視神経疾病治療薬とpenetratin誘導体を共有結合により結合させ、penetratin誘導体と小分子薬剤共有結合複合体を形成した。
実施例2
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の細胞取り込み定性評価:増殖状態が良好であるヒト角膜上皮細胞(HCEC)とヒト結膜上皮細胞(NHC)を採取し、それを5×103個細胞/cm2で24ウェルプレートにそれぞれ播種し、播種後1日1回溶液を交換し、2〜3日培養後に実験を行なった。培養液を除去した後、無菌PBSで3回洗浄し、それぞれに100nM penetratin誘導体とFAM複合体を含む無血清DMEM溶液を加え、37°C、5% CO2の条件下で一定時間(0.5 h、1 h、2 h、4 h)培養した。終了後、薬液を捨て、0.02 mg/mLのヘパリンナトリウムを含むPBS緩衝溶液で正電荷吸着物質を洗い流し、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で細胞核を染色した後、倒立蛍光顕微鏡で観察した。
結果は次の通りであった。野生型penetratinに関して、4 h培養後、細胞においてFAMの蛍光シグナルは依然弱く、親水性penetratin誘導体6Aに関しては更に弱い。親油性penetratin誘導体が強いFAM蛍光シグナルを有したのは明らかであり、特にpenetratin誘導体9-W、28-W、89-W、289-Wに関しては、投与1 h直後には細胞がはっきりとしたFAM蛍光シグナルを発しているのが確認でき、培養時間が長くなるとFAMの蛍光シグナルは強くなった。penetratin分子における本来の親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸に置き換えることは、ポリペプチドが小分子物質を運んで細胞に取り込まれることを促すものであると言える。親水性を高めることは細胞取り込みの減少につながる。
実施例3
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の細胞取り込み定量評価:増殖状態が良好であるHCECとNHC細胞を採取し、それを5×103細胞/cm2で12ウェルプレートにそれぞれ播種し、播種後1日1回溶液を交換し、2〜3日培養後に実験を行なった。培養液を除去した後、無菌PBSで3回洗浄し、それぞれに3 μM penetratin誘導体とFAMの複合体を含む無血清DMEM溶液を加え、37°C、5% CO2条件下で4 h培養した。終了後、薬液を捨て、0.02 mg/mLのヘパリンナトリウムを含むPBS緩衝溶液で正電荷吸着物質を洗い流し、細胞を酵素処理し、200 μLの無菌PBS緩衝溶液に懸濁し、均一になるように吹付けた後にフローサイトメトリーを行なった。各サンプルの細胞数は104であり、未投与の細胞を陰性対照群とした。
HCEC細胞において、親油性penetratin誘導体とFAMの複合体は細胞取り込み量が野生型penetratinとFAMの複合体よりも明らかに多く(p<0.001)、平均蛍光強度が野生型penetratin群の1.7 (29-W) ~7.7 (89-W)倍とまちまちであった一方、親水性penetratin誘導体6Aの平均蛍光強度は野生型penetratin群の1/10(p< 0.001)に過ぎなかった。NHC細胞において、疎水性penetratin誘導体の平均蛍光強度は野生型penetratinの2.8 (2-W) ~18.9 (29-W)とまちまちであった(p< 0.01)一方、親水性penetratin誘導体の平均蛍光強度は野生型penetratinの1/4(p< 0.001)に過ぎなかった。上記結果を総合すると、HCECであってもNHC細胞であっても、親油性penetratin誘導体の細胞取り込み量は野生型penetratinよりも明らかに多い一方で、親水性penetratin誘導体は野生型penetratinよりも明らかに少なく、定性取り込み結果と一致していた。
実施例4
Penetratin誘導体の細胞毒性評価:対数増殖期の増殖状態が良好であるHCECとNHC細胞を採取し、3000 細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートにおける60ウェルに置き、辺縁から無菌PBS緩衝溶液を充填し、プレート底を覆って一つの層になるまで37°C、5%CO2で細胞を培養し、培養液を捨て、無菌PBS緩衝液で3回洗浄した後、異なる濃度のpenetratin誘導体を含む200 μLの培養液を加え、細胞を培養箱で12 h培養した後、薬液を捨て、無菌PBS緩衝液で3回洗浄した後、完全な培地を加えて引き続き12 h培養した。その後、各ウェルに20 μLのチアゾールブルー(MTT)溶液(5 mg/mL)を加え、引き続き4 h培養した後、液体を慎重に捨て、PBS緩衝液で3回洗浄して、各ウェルに150 μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、シェーカーで20分間低速で振とうした後、マイクロプレートリーダーでOD490nmにおける各ウェルの吸光度を測定した。同時にブランク調整ウェル(培地、MTT、DMSO)と陰性対照ウェル(細胞、培地、MTT、DMSO)を設置した。
結果は次の通りであった。考察した濃度範囲条件下(≦ 30 μM)で、細胞増殖状況には顕著な変化が見られず、penetratinおよびその誘導体によるHCECとNHC細胞への毒性作用も認められない。
実施例5
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体のインビトロ組織透過性評価:耳辺縁の静脈にペントバルビタールナトリウム(30 mg/kg)を注射して実験用ウサギに麻酔をかけ、クロラール水和物(150 mg/kg)を過剰注射して殺処理してから、結膜を分離して眼球全体を慎重に取り出し、角膜の縁から約2 mmの位置を輪状に切り、角膜を取り出し、虹彩等の組織を除去し、実験用角膜を得て、残りの眼球部分から網膜等の組織を除去し、実験用強膜を得た。角膜と強膜はいずれもリンゲル溶液で丁寧に3回洗浄した後、実験用とした。実験は動物の殺処理後30 min以内に開始した。そして新鮮なインビトロの角膜と強膜を二つの拡散セルの間に挟み、上皮面を左側の拡散セル(供給セル)に向けた。拡散孔の直径は10.25 mm、拡散孔面積は0.825 cm2である。さらに拡散セルと右側の受け入れセルにそれぞれ3.5 mLのリンゲル溶液を加え、循環水を入れ、水温を34°C ± 0.5°Cに保持し、システムが安定して10 min経ってから供給セル内の溶液を除去し、濃度が7.5 μMになるようにPenetratin誘導体とFAMの複合体の溶液を加えた。拡散装置全体をディフューザーに置き、磁気攪拌を継続し、定温水浴を34°C ± 0.5°Cに維持して、拡散媒体に混合気体(O2 : CO2 = 95 : 5(体積比))を導入した。実験開始後、予め設定された時間でサンプリングしたが、その際は毎回受け入れセルから500 μLサンプリングし、その後直ちに500 μLの新鮮なリンゲル溶液を加えた。サンプルの蛍光強度値は実験終了後直ちに測定した。角膜と強膜を取り外した後、リンゲル溶液で表面を3回丁寧に洗浄し、拡散面以外の部分を除去して残った組織をDavidson's溶液で固定した後、DAPI染色の凍結切片を作成し、ポリペプチドと結合する蛍光プローブの組織分布を観察した。
図4Aの結果が示すように、ポリペプチドと結合する蛍光プローブがインビトロ角膜と強膜を透過する過程は時間に依存する線形プロセスである。各曲線から得た見かけ透過係数(Papp)値から分かるように、インビトロ角膜に関して、親油性誘導体2-W、28-W、289-WのPapp値はそれぞれ野生型penetratinの1.2、1.3、1.4倍(p< 0.05)であり、親水性誘導体6Aは野生型penetratinの1/5(p< 0.001)にとどまる。インビトロ強膜に関して、2-W、28-W、289-WのPapp値はそれぞれ野生型penetratinの1.1、1.5、2.1倍(p< 0.001)であり、6Aは野生型penetratinの2/3(p< 0.001)にとどまる。図4BにおけるDAPI染色後のインビトロ角膜と強膜の切片の蛍光の結果によれば、ブランク組織切片に緑色蛍光は見られず、組織に蛍光のバックグラウンド干渉はない。インビトロ角膜において、親油性penetratin誘導体により処理した角膜は野生型penetratin群よりも蛍光強度が強く、親油性が強いほどに角膜への浸透量が多かったのに対し、親水性penetratin誘導体6A群には明らかな蛍光信号がなかった。インビトロ強膜において、親油性誘導体群の蛍光信号は野生型penetratin群よりも強く、6Aはpenetratin群よりも明らかに弱かった。
実施例6
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体のインビトロ組織毒性評価:Davidson's溶液固定後の組織から一部を採取してヘマトキシリン−エオジン(HE)染色したパラフィン切片を作成し、透過実験後の組織の完全性観察に用いた。その後、前記組織から別の一部を採取し、濾紙を用いて表面の水分を吸い取ってから質量を測りm0とし、60°Cのオーブンで48時間乾燥させてから質量を測りmtとし、次の式に従って組織含水率を計算した。
ΔH=(m0-mt) /m0×100%
図5Aの結果が示すように、penetratin誘導体処理後のインビトロ角膜と強膜の含水率は、未処理の新鮮な角膜と強膜の含水率との比較において顕著な差異がなく、文献で報告されていた正常値と合致した。7.5 μMの濃度条件でpenetratin誘導体はインビトロ眼組織に対して毒性作用がないことが示されている。
また図5BにおいてHE染色切片の結果が示すように、penetratin誘導体に処理された角膜はいずれも完全な角膜上皮構造を保持し、空泡化や損傷がなかった。penetratin誘導体に処理された強膜も完全な構造を保持し、繊維断裂はなかった。penetratin誘導体は7.5 μMの濃度条件でインビトロ角膜と強膜に対して毒性作用がないことが示されている。
実施例7
Penetratin誘導体と小分子物質共有結合複合体の眼内分布評価:5 μL(濃度30 μM)のpenetratin誘導体とFAMの複合体の溶液を雄性マウスの結膜嚢に滴下し、まぶたを軽く閉じさせて溶液を均一に分布させた。これを10 minごとに合計3回投与し、最後の投与時間を零時刻とし、予め設定した時間でクロラール水和物を過剰量腹腔注射してマウスを殺処分し、マウスの眼球を取り出し、Davidson'sの溶液で0.5 h固定してから包埋し、眼球の縦方向の凍結切片を作成した上で、DAPIで細胞核を染色し、倒立蛍光顕微鏡で眼部におけるポリペプチドの分布状況を観察した。
図6Aの結果が示すように、ブランク群のマウス眼球切片の眼部前段部位(角膜)と眼部後段部位(網膜)には緑色蛍光シグナルがなく、眼部組織に蛍光バックグラウンド干渉がないことが示されている。野生型penetratin群との比較において親油性penetratin誘導体群は、点眼の10min後に眼部前段部位と眼部後段部位の両方においてより強い緑色のFAM蛍光シグナルを有し、親油性penetratin誘導体の眼部透過能力がより強いことが示された。他方、親水性penetratin誘導体6A群のFAM蛍光シグナルは弱まっており、その眼透過性が野生型penetratinの眼透過性よりも弱いことが示された。これはインビトロ実験結果と一致する。このほか、図6Bが示すように、結膜嚢を介して投与した後、親油性penetratin誘導体はマウスの角膜マトリックス層および網膜内網膜層に効果的に分布している一方、6Aの角膜における分布は野生型penetratinよりも明らかに少なく、FAMの緑色蛍光シグナルがほぼなく、網膜内にも少量の分布しか見られなかった。
図6Cにおける半定量の分析結果が示すように、野生型penetratinとの比較において親油性penetratin誘導体は、角膜と網膜への浸透量がより多く(p<0.001)、眼内滞留時間はより長く、親油性が強い28-W, 29-W, 89-Wと289-Wに関しては滞留時間が6 hにも及んだ。一方で6Aに関して、眼内への浸透量は野生型penetratinよりも明らかに少なく(p<0.05)、眼部関門に対する透過性が劣ることが示された。
実施例8
Penetratin誘導体とアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤の非共有結合複合体の製造:形質転換成長因子(TGFβ2)遺伝子を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド(anti-TGFβ2-ASO)を60 μg採取し、2 mLの緩衝液を加えて30秒間撹拌し、充分に溶解させ、濃度30 μg/mLのASO溶液を得た。そしてアミノ端を有する第5世代のポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM、略称はPG5)のメチルアルコール溶液を10 μL(PAMAM濃度は0.1 mg/μL)採取し、40°Cの水浴で窒素を吹き付けて乾燥させてから、PAMAMを1 mLの蒸留水に再溶解させて蒸留水で希釈し、実験濃度のPAMAM溶液を得た。また1 mgのヒアルロン酸(HA)を採取し、1 mLの蒸留水に溶解させて蒸留水で希釈し、実験濃度のHA溶液を得た。さらに2-M,8-W,9-Y penetratin誘導体(RMIKIWFWYRRMKWKK(配列番号68)、略称はPene)を採取して緩衝液に溶解させ、濃度500μMのpenetratin誘導体溶液を得た。
実験濃度のPAMAM溶液を500 μL採取し、同じ体積(500 μL)のASO溶液を攪拌条件下で滴下し、滴下完了後も攪拌を30 s続け、室温で30 min放置、安定させ、ASO / PG5複合体を得た。また安定後のASO / PG5複合体を1 mL採取し、攪拌条件下で500 μLの実験濃度のHA溶液を滴下し、添加完了後も攪拌を30 s続け、室温で30 min放置、安定させ、ASO/PG5/HA複合体を得た。さらに安定後のASO/PG5/HA複合体を1.5 mL採取し、攪拌条件下で500 μLの濃度500μMのpenetratin誘導体溶液を滴下し、滴下完了後も攪拌を30s続け、室温で30min放置、安定させ、ASO/PG5/HA/Pene複合体を得た。
実施例9
Penetratin誘導体とアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤の非共有結合複合体の眼部吸収:蛍光で標記したASOを用いてそれぞれASO/PG5、ASO/PG5/HA、ASO/PG5/HA/Peneの複合体を製造したが、実験群にはいずれも30 μg/mLのASOを含ませた。マウスは12匹ごとにそれぞれASO/PG5、ASO/PG5/HA、ASO/PG5/HA/Peneという3組に無作為に分けた。それぞれに関して10 μLの実験群溶液を右目に点眼投与したが、その際は10 minごとに投与し、各組の各マウスに合計3回投与した。各組の最終回投与から1 h、2 h、6 h、8 h経過後に3匹のマウスを無作為に選択して殺処理し、マウス眼球を摘出して30%の蔗糖溶液で一晩脱水し、角膜に対して垂直に切って組織中段部位の組織片を採取し、凍結切片を作成してDAPIワーキング溶液で細胞核を染色し、共焦点顕微鏡下で眼部後段部位の複合体の除去状況を観察した。
凍結切片の観察結果から分かるように、3つの複合体が送達したASOはいずれも点眼1 h後にはマウスの眼部後段部位に分布しており、時間が長くなるにつれて分布量も増加するが、ASO/PG5/HA/Peneが送達したASOのみは、眼部後段部位で明らかな分布を呈し、8 h後も依然として外網層(OPL)と網膜色素上皮細胞(RPE)に分布が見られた。こういった結果によれば、2-M,8-W,9-Y penetratin誘導体を用いて修飾したオリゴヌクレオチド複合体は、点眼投与を通してASOを眼部後段部位に効果的に送達できるほか、網膜色素上皮細胞層(RPE)に分布し、眼部後段部位での残留時間が8 hを超える(図7A)。主なASOそれぞれの分布層の蛍光相対強度比較は図7Bを参照されたい。
実施例10
Penetratin誘導体が修飾したフルオロウラシルとアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤のダブルドラッグローディング非共有結合複合体の精製:アミノ端を有する第5世代のポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM、略称はPG5)のメチルアルコール溶液を10 μL(PAMAM濃度は0.1 mg/μL)採取し、40°Cの水浴で窒素を吹き付けて乾燥させてから、PAMAMを1 mLの蒸留水に再溶解させて蒸留水で希釈し、濃度6.23 μMのPG5溶液を得た。また1 mgのフルオロウラシル(Fu)を採取し、1 mLの蒸留水に溶解させ、40°Cの水浴に5 min放置した後に攪拌し、溶解させ、原液を蒸留水で必要な濃度まで希釈してFu溶液を得た。さらにFu溶液をPG5溶液に滴下し、一定時間攪拌して混合溶液を得た。攪拌を停止したところで混合溶液を分子量3000 Daの限外ろ過遠心チューブに移して分画し、3000 rpm/minの速度で遊離Fuを遠心除去し、Fu/PG5複合体溶液を得た。
TGFβ2を拮抗するアンチセンスオリゴヌクレオチド(anti-TGFβ2-ASO)を30 μg採取し、3 mLの緩衝液を加え、30秒間攪拌し、充分に溶解させ、濃度10 μg/mLのASO溶液を得た。そして攪拌条件下で100μLのASO溶液を同じ体積のFu/PG5溶液に滴下し、滴下完了後も攪拌を30 s続け、室温で30 min放置して安定させ、dual/PG5複合体を得た。また安定後のdual/PG5複合体を200μL採取し、攪拌条件下で100 μLのHA溶液(20 μg/mLのHA を含む)を滴下し、滴下完了後も攪拌を30 s続け、室温で30 min放置して安定させ、dual/PG5/HA複合体を得た。さらにdual/PG5/HA溶液を300 μL採取し、攪拌条件下で100 μLの濃度300μMの289-Fpenetratin誘導体(RFIKIWFFFRRMKWKK(配列番号44)、略称はPene)溶液を滴下し、滴下完了後攪拌を30 s続け、室温で30 min放置して安定させ、dual/PG5/HA/Pene複合体を得た。
実施例11
Penetratin誘導体が修飾したフルオロウラシルとアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤のダブルドラッグローディング非共有結合複合体の細胞取り込み評価:蛍光で標記したPAMAMを用いてdual/PG5、dual/PG5/HA及びdual/PG5/HA/Pene複合体を製造し、遊離フルオレセインFAMを陰性対照とし、Penetratin誘導体が修飾したダブルドラッグローディング非共有結合複合体のL929細胞における取り込み状况を共焦点顕微鏡下で観察し、フローサイトメトリーにより3つの複合体の取り込み比率を検出した。
Penetratin誘導体289-Fが修飾したダブルドラッグローディング非共有結合複合体の細胞内の平均蛍光強度は他の実験群よりも顕著に高かった。dual/PG5/HA/Peneはdual/PG5とdual/PG5/HAよりもL929細胞における取り込み効率がそれぞれ4倍近くと2倍近くまで高まることが統計結果により示されている(図8)。

Claims (2)

  1. 眼部吸収促進剤として非侵襲的経路により眼内への薬剤送達を実現する野生型膜透過ペプチドpenetratinの誘導体であって、
    前記penetratin誘導体は下記アミノ酸配列を有し、
    RX 1 IKIWFX 2 X 3 RRMKWKK (配列番号2)
    ただし、X1、X2、X3は疎水性アミノ酸を表し、天然由来のアミノ酸であるアラニン(alanine,A)、バリン(valine,V)、ロイシン(leucine,L)、イソロイシン(isoleucine,I)、プロリン(proline,P)、フェニルアラニン(phenylalanine,F)、トリプトファン(tryptophan,W)、メチオニン(methionine,M)、及び非天然由来のアミノ酸であるα-アミノ酪酸(α-aminobutyric acid)、α-アミノ吉草酸(α-aminopentanoic acid)、α-アミノカプロン酸(α-aminohexanoic acid)、α-アミノヘプタン酸(α-aminoheptanoic acid)、およびそれらの組成物から選択される
    ことを特徴とする野生型膜透過ペプチドpenetratinの誘導体。
  2. X1、X2、X3はトリプトファン(tryptophan,W)であり、前記penetratin誘導体のアミノ酸配列は
    RWIKIWFQNRRMKWKK (配列番号45)
    RQIKIWFWNRRMKWKK (配列番号47)
    RQIKIWFQWRRMKWKK (配列番号49)
    RWIKIWFWNRRMKWKK (配列番号51)
    RWIKIWFQWRRMKWKK (配列番号53)
    RQIKIWFWWRRMKWKK (配列番号55)
    RWIKIWFWWRRMKWKK (配列番号57)
    であることを特徴とする請求項1に記載のpenetratin誘導体。
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