JP2020511965A - ガス発酵生成物のための方法およびバイオリアクター - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、米国海軍研究事務所から与えられた、政府支援N00014−10−1−0310、N00014−11−1−0391、N00014−12−1−0496、N00014−13−1−0463、N00014−14−1−0054、N00014−15−1−0028、およびN00014−16−1−2116で行われた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
本発明は、ガス発酵生成物を製造する方法、およびその方法を実施するのに用いることができるバイオリアクターに関する。本発明の方法およびバイオリアクターは、CO2を含むガス状原料を用いて、微生物ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を製造するのに特に好適である。
ガス発酵用の、理想のバイオリアクターは、極めて低いガス供給速度であっても、高いガス物質移動係数(kLa)を有するべきである。しかし、従来の撹拌式バイオリアクターにおいて、kLa値は、ガス供給速度の低下と共に減少し、液相における高いエネルギー散逸によって、低いガス供給速度での高いkLaを保証できないことを意味する。
産業界で、スプレーカラムは、ガス吸収用に用いられてきたが、主に液体溶液中の速い反応、例えば、NaOH溶液中のSO2吸収、およびアミン溶液中のCO2吸収のために用いられてきた。そこでは、物質移動抵抗は、主にガス側にある。対照的に、微生物発酵の、CO2、H2、およびO2の物質移動抵抗は、主に液体側にあり、ガス側の物質移動抵抗よりもさらにより高い。
しかし、出願人の知る限りでは、ノズル噴霧は、微生物発酵で用いられていなかった。
出願人らは、上記の利点、および以下の説明から明らかになる他の利点を、バイオリアクターのガス発酵容器に含まれるオーバーヘッド気相中で、噴霧された液滴形態の発酵ブロス(媒地溶液)を、ガス状基質と接触させることによって成し遂げ得ることを見出した。
接触は、いくつかの方法によって成し遂げることができる。第1の好ましい実施形態において、発酵ブロスを、容器から抜き出し、外部ループを通じて循環させ、その後バイオリアクターに含まれるオーバーヘッド気相中に噴霧することによって、バイオリアクター中に再び導入され、そこで、バイオリアクターの気相に個別に供給されるガス状基質と接触させることになる。発酵ブロスは、例えば正置換ポンプによって、外部ループに運ぶことができる。
本発明のバイオリアクターで達成可能なガス物質移動係数(kLa)を、物理吸収および微生物発酵の条件下で測定して、増大させたガス物質移動速度が示された。物質移動速度は、生物的強化のために、89%増加した。従来の撹拌式バイオリアクターとは対照的に、本発明のバイオリアクターは、低いエネルギー消費で高いkLaを示す。ガス物質移動はまた、バイオリアクターの、液体−ガス接触の高い頻度数および小さい噴霧プルーム(spray plume)によっても増進される。極めて低いガス供給速度でのエネルギー消費は、従来の撹拌式バイオリアクターのものよりもより低い。
好都合なことに、高い液体循環速度を、ノズル前後の小さい圧力降下で作動させて、気相への液体暴露の高い頻度数の維持が可能であることを観測した。ノズル前後の小さい圧力降下は、劇的にエネルギー散逸率を減らすので、これによりエネルギーも節約される。好都合なことに、高いエネルギー散逸率は、高い物質移動速度を確保することはできないが、エネルギーを浪費するので、本発明の噴霧式バイオリアクターでは避けるのが好ましい。
さらに、発酵ブロス中に懸濁させた微生物細胞によるバイオガス消費によって、ガス物質移動を大幅に増大させることができる。
最後に、本発明の噴霧式バイオリアクターを、極めて低いガス供給速度で作動させて、希釈する窒素の存在下でさえも、ガス循環なしでも、CO2、H2、およびO2からPHAを製造することができる。
以下に、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートを製造するための、H2およびO2の存在下での微生物CO2固定の方法に関して説明される。具体的には、大量の窒素の存在下、または非存在下で、ポリヒドロキシブチレート(PHB)を、水素、二酸化炭素、および酸素のガス混合物から製造可能であることが観測された。
第1の態様によれば、本発明は、ガス発酵によって少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを製造する方法であって、
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)ガス発酵容器(2)から液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を供給するステップと、
d)気相(15)中で、噴霧された液滴形態の液体発酵ブロス(11)をガス状基質(14)と接触させることによって、ガス状基質(14)を、ガス発酵容器(2)から抜き出された液体発酵ブロス(11)と混合するステップと、
e)ガス発酵微生物を、ステップdで得られた気液混合物と共に培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
f)細胞塊から少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む、方法に関する。
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)ガス発酵容器(2)から液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を供給し、ガス状基質(14)を、ガス発酵容器(2)から抜き出された液体発酵ブロス(11)と混合するステップと、
d)こうして得られた気液混合物をガス発酵容器(2)中に噴霧し、ガス発酵微生物を培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
e)細胞塊から少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む。
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)ガス発酵容器(2)から液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を、気相(15)へ供給するステップと、
d)ガス発酵容器(2)から抜き出された液体発酵ブロス(11)を、気相(15)中へ噴霧するステップと、
e)ガス発酵微生物を、ステップdで得られた気液混合物と共に培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
f)細胞塊から少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む。
好ましくは、上記ガス状基質は、0.001m/秒以下の、好ましくは0.0005m/秒以下のガス供給速度で、ガス発酵容器に供給される。
好ましくは、液体発酵ブロス、またはガス状基質によって生成された気液混合物、および発酵ブロスを気相中に噴霧するステップは、それぞれ、圧力降下1.0・105Pa以下の、1個または複数のノズルを通じて実施される。
好ましくは、ガス状基質は、煙道ガス、すなわち、燃焼過程によって生じるガス流である。
− ガス発酵微生物および発酵性媒地を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する容器(2)であって、容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、容器(2)
− 容器(2)の内部と連通し、それによって液体発酵ブロス(11)の一定分量が抜き出される、少なくとも1つの排出液循環導管(19)であって、導管(19)が、液体発酵ブロス(11)の上記一定分量を、容器(2)の外部で循環させ、次いで、容器(2)に含まれる気相(15)中に再び導入するための循環ライン(6)に接続された、導管(19)
− 液体発酵ブロス(2)を気相(15)中に噴霧するための、排出液循環ライン(6)に接続された、少なくとも1個の噴霧ノズル(12)
− 気相(15)中に1種または複数のガスを含むガス状基質(14)を供給して、ガス発酵微生物を培養するための供給システム(30)であって、容器(2)の内部と連通した注入導管(25)を通じて、気相(15)へ接続された、供給システム(30)
を備える、ガス発酵バイオリアクター(1)に関する。
− ガス発酵微生物および発酵性媒地を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する容器(2)であって、容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、容器(2)
− 容器(2)の内部と連通し、それによって液体発酵ブロス(11)の一定分量が抜き出される、少なくとも1つの排出液循環導管(19)であって、導管(19)が、液体発酵ブロス(11)の上記一定分量を、容器(2)の外部で循環させ、次いで、容器(2)に含まれる気相(15)中に再び導入するための循環ライン(6)に接続された、導管(19)
− 液体発酵ブロス(11)を気相(15)中に噴霧するための、排出液循環ライン(6)に接続された、少なくとも1個の噴霧ノズル(12)
− 容器(2)から抜き出された液体発酵ブロス(11)中に、1種または複数のガスを含むガス状基質(14)を供給して、ガス発酵微生物を培養するための供給システム(30)であって、こうして得られた気液混合物を、上記噴霧ノズル(12)によって、容器(2)に含まれる気相(15)中に噴霧するように、循環ライン(6)に接続された、供給システム(30)
を備える、ガス発酵バイオリアクター(1)に関する。
(式中、添字BioおよびPhyは、それぞれ、水中のバイオガス利用および物理吸収の条件下でのkLa値を示す)。
図1および図2は、本発明の2つの実施形態の、ノズル噴霧式バイオリアクター1を概略的に表したものである。下部の丸型ガラス容器2(φ15cm、3L)に水溶液(発酵ブロス)11(0.5〜1.5L)を入れ、磁器撹拌器および加熱器3で撹拌し、加熱した。ガス状基質14を2つの方法でバイオリアクターに導入することができる。図1のSNBR構成であれば、ガス状基質14は導管25を通じて容器2へ供給される。図2のSNSMBR構成では、ガス状基質14は外部ループ6中に導入される。
水中の酸素の物理吸収
水または無機溶液(すなわち、水および微生物を培養する栄養分を含む発酵性媒地)中の酸素の物理吸収のkLaは、動的方法で測定された。液体溶液(1.5L)は、溶存酸素濃度が0に低下するまでN2でストリップされた。その後、空気が0.3L/分(25℃、1atm)で導入された。溶存酸素濃度は光学DOプローブ(ProODO、YSI、Yellow Springs、OH)を用いて追跡された。kLaは、式6で計算された
微生物ガス発酵の酸素物質移動速度は、定常(または準定常)作動条件の下、酸素利用速度(OUR)を測定することによって決定された。発酵ブロスとして、KH2PO42.4g、Na2HPO42.5g、(NH4)2SO41.2g、MgSO4・7H2O0.5g、NaCl1.0g、NaHCO30.5g、クエン酸第二鉄アンモニウム0.1g、および微量元素溶液1mLを含む(毎リットル)無機溶液中に増殖したカプリアビダス・ネカトールの実験室用株を用いた。媒地溶液は、同じ媒地溶液で調製された100mL瓶培養で、初期光学密度(OD)0.91まで植菌された。瓶(1L)を、H2(70%)、O2(20%)、およびCO2(10%)のガス混合物で24時間毎にフラッシュし、回転培養器で、30℃、200rpmで振盪した。
CO2からのPHB生合成は、噴霧式バイオリアクターにおいて、下部のガラス容器にノズル(開口面積10mm2)を設置することによって、減少した噴霧プルームで実施された。液体媒地(1.5L)を35℃で維持し、ノズル前後の圧力降下48kPaで、4.7L/分で循環させた。媒地のpHは、初めに、窒素栄養分をもたらすためのアンモニア溶液(2M)を、次いでPHB生成を促進するためのNaOH溶液(2M)を用いることによって、6.8で維持された。それぞれの発酵の、注入ガスの組成および流量は、表1に示すように一定のレベルで維持された。N2ガス(40〜60容積/容積%)をバイオリアクターに導入して、その希釈の、ガス発酵に及ぼす影響を調べた。
化学分析
ガス組成は、ガスクロマトグラフ(モデル450、Bruker、Fremont、CA)を用いて測定された。GCは、熱伝導度検出器(TCD)およびCarboxen PLOT1006カラム(0.15mm×30m、Sigma−Aldrich、St Louis、MO)を備えた。温度サイクルは、2分間、35℃で開始し、その後100℃まで3分以内で昇温させた。ピークは、ソフトウェアGalaxieを用いて積分され、ガス標準物質で較正された。様々なモル組成の標準ガス試料は、気密注射器を用いて、バックグラウンドガスである、純粋ガスおよび窒素から調製された。
表2は、様々な作動条件下で観測された、水中の酸素の物理吸収のkLaを示す。
液体ガス供給速度に関して、表面ガス速度は、0.00028m/秒、または0.2vvm(液体容積あたりのガス容積毎分)であった。1個のノズルを用いた場合、kLa値(0.03〜0.04/秒)は、従来の通気バイオリアクターの範囲であった。
噴霧式バイオリアクターは、単純な構造を有する。液体循環ラインのポンプは、液体噴霧と混合との両方に力学的エネルギーをもたらす。図1の2点間(1−1’および2−2’)の力学的エネルギーバランスによれば、ポンプからのエネルギー入力(Ws)から摩擦損失を差し引いたものが、流体の、運動エネルギー、位置エネルギー、および圧力エネルギーの増加に等しい(式8a)。
わずかな摩擦損失、U1、および2点間の高さの差があれば、式8aは式8bで単純化される
(式中、U2は、管(内径6mm)内の液体速度であり、ΔPは、ノズル前後の圧力降下である)。実験条件(表2)の下、動的エネルギーは、ポンプ入力の小さい部分(<8%)についてのみ考慮された。エネルギーは、主に、噴霧用の、液体の圧力を上げるために用いられた。液体容積あたりの電力消費は、式8bを用いて、液体循環速度および圧力降下から計算された。表2に示すように、小さい圧力降下での高い液体循環速度は、大きい圧力降下での低い循環速度よりも(7.3kw・m-3)、さらにより低いエネルギー散逸(2.7kw・m-3)を有する。後者の場合、前述したように、高い界面面積がガス物質移動速度に対してあまり寄与しないものの、エネルギーは、ごく小さい液滴(<50μm(um))形成の、表面エネルギーおよび熱として消散した。
(式中、kLaは、単位/秒の酸素物質移動係数である)。Pは、Wの撹拌器によって消散する電力であり、VLは、単位m3の液体容積である。Usは、単位m/秒の表面ガス速度であり、容積ガス流量を、バイオリアクターの断面積で割ったものとして定義される。多くの相関が、実験データから得られ、および/または理論から導かれてきた。その2つを、比較のために図4にプロットする:実験的相関から1つ(M. Nocentini et al., Ind. Eng. Chem. Res. 32 (1993) 19-26)、および特殊な構成および実験条件に制限されない、Kolmogorov理論からもう1つ(Y. Kawse, M. Moo-Yong, Chem. Eng. Res. Des. 66 (1988) 284-288)。実験的相関のほとんどは、kLaについて、完全に整合性のある予測をもたらすが、理論に基づいた相関は、より高い予測をもたらす(M. Xie, J. Xia, Z. Zhou, J. Chu, Y. Zhuang, S. Zhang, Ind. Eng. Chem. Res. 53 (2014) 5941-5953)。それらを、図4において、同じエネルギー散逸率で、噴霧式バイオリアクターのkLaと比較する。実証的相関が、最小表面ガス速度が0.001m/秒以上である、特殊な実験から得られることに注意されたい。相関が、本発明の記述における極めて低いガス速度(表2および表3の0.00028m/秒)で用いられる場合、それらは参照目的のためだけにある。
図5は、注入ガスI(表1)の発酵時間経過である。H2(60%)、O2(20%)、およびCO2(20%)の一定の流量(140sccm)で、微生物細胞密度は、時間と共に連続的に増加し、最大レベル21.5g/Lに達した。減少した炭素の大部分は、PHBに貯蔵され、最終PHB含量は50質量%に達した。興味深いことに、残留バイオマス、細胞塊とPHBとの質量差は、十分な窒素栄養分と共に、初めに増加し、窒素制限が適用されたとき、プラトーに近づいた。このパターンは、例えば、N. Tanadchangsaeng, J. Yu, Biotechnol. Bioeng. 109 (2012) 2808-2818に記載されたように、有機炭素源の従属栄養培養のものに類似していた。液体溶液の溶存酸素(DO)濃度は、空気飽和のパーセントとして追跡され、細胞密度が5g/Lに達するまで、相当に高いレベル(>70%)で維持された。その期間中に、酸素物質移動速度は、高い微生物活性を支持するのに十分に高かった。バイオマス濃度が9g/L以上に増加したとき、DOは0に急速に低下し、その後、偏性好気性菌株を酸素枯渇状態にさらした。ガス基質の利用可能性は、微生物増殖および生理機能に影響を及ぼした。微生物増殖は、比増殖速度(μ)に応じて、概ね3つの段階に分けることができた。図5に、比増殖速度は、光学密度対時間の、自然対数の曲線勾配で表される。初期誘導期の後、比増殖速度は、0.1/時間(μ1)であり、その後、高い細胞密度での酸素制限ゆえに低下した。比増殖速度は、0.06/時間(μ2)まで低下し、その後さらに、発酵が115時間継続されると、0.01/時間(μ3)まで低下した。
図6は、大量のN2ガス(40mol%)の存在下での、注入ガスIII(表1)の発酵時間経過である。高いバイオマス密度21.9g/Lも得られ、PHB含量は、61質量%にも達した。高いPHB含量は、長期のプラトー後の残留バイオマスの減少に起因すると思われる。興味深いことに、溶存酸素は、大量の細胞塊(16g/L)が形成される間の、75時間まで高いレベル(15〜30%)で維持された。溶存酸素は、細胞密度が17g/Lに達するとき、0に低下した。明らかに、偏性好気性菌株は、相当に長い期間中、良好な代謝活性を維持するのに十分な酸素を含んだ。最大比増殖速度(μmax)は、初期誘導期8時間後の20時間の期間中、0.12/時間(μ1)であった。発酵が、さらに20時間ほど進行したとき、増殖速度は、0.04/時間(μ2)まで低下した。最後に、発酵が終わるまで、比増殖速度は、0.01/時間(μ3)で保たれた。しかし、水素収量は、ガス組成を希釈したN2の存在下で、より低くかった。最も高い瞬間水素収量は、0.7g・g-1であり、累積収量は0.3g・g-1であった。この実験によれば、煙道ガスをCO2源として直接用いることができ、それによってCO2捕捉の費用が節約されることが示される。
極めて少量の水素(10mol%)を注入ガスIVに与えたとき、細胞増殖はほとんど観測されなかった。32時間後の最大光学密度(OD)は、わずか1.68(細胞密度≒0.81g/L)であった。細胞密度は、作動中、同じガス供給速度で、このレベルで維持された。CO2固定および細胞増殖に利用可能な、十分なH2がない状態では、低いH2組成は、細胞を維持する程度であったと考えられる。表4に、様々な注入ガスのガス発酵を比較する。注入ガスCおよび注入ガスDの結果は、N2の希釈の影響(40〜60mol%)を明らかに示す。
従来の卓上バイオリアクター(全容積3リットル、BioFlo110、New Burnswick、Enfield、CT)を用いて、H270mol%、O220mol%、およびCO210mol%のガス混合物で、カプリアビダス・ネカトールを培養した。図7に、極めて一般的な微生物発酵用バイオリアクターである、リアクターの概略構造を示す。気泡から懸濁させた微生物細胞へのガス物質移動は、機械的撹拌器による媒地溶液の撹拌を介してもたらされる。予め調製した溶液である、リン酸カリウム2.3g/L、リン酸一水素ナトリウム4.37g/L、塩化アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、重炭酸ナトリウム0.5g/L、クエン酸第二鉄アンモニウム(FAC)0.05g/L、塩化カルシウム二水和物(calcium chloride dehydrate)0.01g/L、および微量ミネラル1mLからなる無機溶液(1.5L)を、液体媒地として用いた。最大物質移動をもたらすために、撹拌速度を900rpmで維持した。ガススパージャーを用いて、ガス流を溶液中に分散させた。バイオリアクターの媒地が安定な状態(pHおよび温度)に達すると、瓶培養を植菌した。pHおよび温度を、それぞれ6.9および30℃で維持した。DO、pH、温度、および撹拌速度などの作動条件を追跡した。排出ガスは、ガス分析器(TANDEM Pro、Magellan Instruments Ltd、Norfolk、UK)を用いて追跡した。液体試料を収集し、光学密度(620nmでのOD)、細胞密度、およびPHB含量について分析した。
図8に、発酵時間に伴う光学密度の変化を示す。最大OD72.8が、発酵の103時間後に観測された。開始溶存酸素(DO)は、およそ75%であり、作動45時間後、0%まで徐々に低下し、細胞増殖がガス物質移動速度によって制限されたことを示した。最大比増殖速度(μmax)0.08/時間が、発酵の20〜60時間で観測された。次いで、比増殖速度が0.03/時間まで減少し、その後プラトーに達した。実験の最後に、最大細胞密度およびPHB含量は、それぞれ24.16g/Lおよび59%と記録された。
充填層カラムを備えた、従来のガス吸収装置を、カプリアビダス・ネカトールの微生物ガス培養用のバイオリアクターに改造した。図9は、実験の構成の模式図を示す。リアクター(3L)を、上記と同じ液体媒地1.5Lで満たした。実験の間、水溶液を、外部ループを通じて再循環させ、ガラスビーズの20cm充填層カラムの頂上に分散させた。その層は、ガスと液体との接触領域をもたらした。再循環ループの正置換ポンプにより、流量5.3L/分が生じた。ガス流(H270%、O220%、およびCO210%)1.5L/分は、頂上のガス注入口からリアクターへ導入され、排出ガス放出口を通じて、共在の液体と接触させた後、廃棄された。排出ガスのCO2およびO2の正確な濃度は、ガス分析器を用いて追跡された。シード(seed)溶液100mLで植菌した後、従来のバイオリアクターと同じ増殖条件を維持した。液体試料を、OD、細胞密度、およびPHB含量について、時間と共に収集した。
図10は、従来のガス吸収装置の、発酵時間に伴うODの変化を示す。最も高いOD14.0は、発酵期間90時間中に観測された。12時間の誘導期の後、細胞は、初めの25時間、最大比増殖速度(μmax)0.13/時間で、指数関数的な増殖を示した。次いで、比増殖速度を徐々に0.03/時間まで低下させて、細胞密度の線形的な増加、物質移動限界の指標をもたらした。最大細胞密度は、発酵期間90時間の後、対応するOD14で、およそ4.2g/Lであった。
従来のバイオリアクターおよびガス吸収装置では、ガスを、液体の連続相中に分散させた。低いガス溶解度ゆえに、ガスは急速に気泡を形成し、液体溶液から出て、その結果、物質移動の接触時間が短くなる。水溶液中の高いガスホールドアップを維持するために、高いガス流量が必要とされ、その結果、大量のガス廃棄となる。こうした欠点に対処するために、本発明のバイオリアクターは、図1に示すように、逆のガス中液体分布を特徴とする。媒地溶液11を、外部ループ6を通じて3.1L/分で循環させ、噴霧ノズル12(オリフィス0.18cm、Cole Parmer、Vernon Hills、IL)を通じて、ごく小さい液滴として気相中に噴霧する。ガス状基質14を、導管25を通じて、所望の流量で、バイオリアクターに含まれるオーバーヘッド気相15中に導入した。ガス/液体接触は、溶液中のガスホールドアップによるものではなく、液滴によって決定されるので、ガス流は、微生物細胞によってガスがどの程度速く利用され得るかに応じて、極めて低い流量で制御することができる。より重要なことには、高い物質移動速度(kLa)は、ガス流量に関係なく維持することができる。ガス流の保持時間は、バイオリアクターのオーバーヘッド空間の容積を変えることによって調整することもできる。この実証の場合、噴霧ノズルは、液面よりも10cm上に位置する。
図11は、発酵時間に伴う、細胞増殖または光学密度の増加を示す。最も高いOD32.2が、発酵の72時間後に記録された。対応する細胞密度は、12.7g/Lであった。最大比増殖速度(μmax)0.15/時間が、発酵の初めの24時間の期間中に観測され、その後、0.04/時間まで徐々に低下し、推定のガス物質移動限界を示した。ノズル前後の圧力降下は、30.6〜30.9psiで維持された。
噴霧ノズルスタティックミキサーバイオリアクター(SNSMBR)の性能
図1に示すように、上記の噴霧ノズルバイオリアクターを、液体循環ループ6にスタティックミキサー7を添加し、ポンプ4とミキサー7との間にガス流14を導入することによって、さらに改良した。ガスおよび液体流をスタティックミキサー(この場合2個)で予め混合し、その接触を、ノズルの高いせん断応力の下、有意に増大させた。液体−ガス混合物の細かい液滴により、ガス物質移動速度が有意に増加する。kLaは、低い空気流量0.75L/分で377/時間まで増加した。図1の噴霧ノズルリアクター(SNBR)と比較して、図2のSNSMBRは、同じガス流量で60%の増加を示す。従来のバイオリアクターのkLaデータの比較によって(表1)、SNSMBRにより、kLaの150%の増加がもたらされる(空気流量0.75L/分および撹拌900rpm)。
図12は、SNSMBRにおいて、発酵時間に伴う、細胞増殖の時間経過または光学密度増加を示す。シード溶液100mLで植菌した後、発酵ブロスの光学密度は、比増殖速度0.16/時間で指数関数的に増加した。最も高いOD70は、発酵65時間で達した。対応する細胞密度は26.74g/Lであり、乾燥細胞塊の最終PHB含量は52%であった。SNSMBRリアクターシステムの最も重要な功績は、極めて低いガス流量(<0.3L/分)の使用であった。したがって、従来のバイオリアクターと比較して、ガス廃棄は有意に減少した。これにより、特にCO2およびO2を含む煙道ガスが原料として用いられる場合、ガス状基質からのPHB製造の最も高価な原料と考えられるH2ガスが節約される。
Claims (12)
- ガス発酵によって少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを製造する方法であって、
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− 前記ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
前記ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)前記ガス発酵容器(2)から前記液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を供給するステップと、
d)前記気相(15)中で、噴霧された液滴形態の前記液体発酵ブロス(11)を前記ガス状基質(14)と接触させることによって、前記ガス状基質(14)を、前記ガス発酵容器(2)から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)と混合するステップと、
e)前記ガス発酵微生物を、ステップdで得られた気液混合物と共に培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
f)前記細胞塊から前記少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む、方法。 - 請求項1に記載の、ガス発酵によって少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを製造する方法であって、
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− 前記ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
前記ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)前記ガス発酵容器から前記液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を供給し、前記ガス状基質(14)を、前記ガス発酵容器(2)から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)と混合するステップと、
d)こうして得られた気液混合物を前記ガス発酵容器(2)中に噴霧し、前記ガス発酵微生物を培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
e)前記細胞塊から前記少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む、方法。 - 請求項1に記載の、ガス発酵によって少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを製造する方法であって、
a)
− 水、
− 少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを産生できる、懸濁させたガス発酵微生物、
− 前記ガス発酵微生物用の栄養分
を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する、少なくとも1個のガス発酵容器(2)を用意するステップであり、
前記ガス発酵容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、ステップと、
b)前記ガス発酵容器(2)から前記液体発酵ブロス(11)の一定分量を連続的に抜き出すステップと、
c)CO2、H2、およびO2を含むガス状基質(14)を、前記気相(15)へ供給するステップと、
d)前記ガス発酵容器(2)から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)を、前記気相(15)中へ噴霧するステップと、
e)前記ガス発酵微生物を、ステップdで得られた気液混合物と共に培養して、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む細胞塊を形成するステップと、
f)前記細胞塊から前記少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを回収するステップと
を含む、方法。 - 前記液体発酵ブロス(11)が、2L/分以上、好ましくは3L/分以上の循環速度で、抜き出され、前記ガス発酵容器(2)に再び導入される、請求項1に記載の方法。
- 前記ガス状基質(14)が、0.001m/秒以下の、好ましくは0.0005m/秒以下のガス供給速度で、前記ガス発酵容器(2)に供給される、請求項1に記載の方法。
- 前記ガス状基質(14)が、0.001m/秒以下の、好ましくは0.0005m/秒以下のガス供給速度で、前記ガス発酵容器(2)に供給される、請求項4に記載の方法。
- 前記ガス状基質(14)と混合してもよい、前記液体発酵ブロス(11)の噴霧が、それぞれ、圧力降下が1.0・105Pa以下の、1個または複数のノズル(12)を通じて実施される、請求項1に記載の方法。
- 前記ガス状基質(14)を少なくとも1個のスタティックミキサー(7)において、前記ガス発酵容器から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)と混合し、その後循環させ、前記ガス発酵容器(2)中に噴霧する、請求項2に記載の方法。
- 前記ガス状基質(14)が煙道ガスである、請求項1に記載の方法。
- − ガス発酵微生物および発酵性媒地を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する容器(2)であって、前記容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、容器(2)
− 前記容器(2)の内部と連通し、それによって前記液体発酵ブロス(11)の一定分量が抜き出される、少なくとも1つの排出液循環導管(19)であって、前記導管(19)が、前記液体発酵ブロス(11)の前記一定分量を、前記容器(2)の外部で循環させ、次いで、前記容器(2)に含まれる前記気相(15)中に再び導入するための循環ライン(6)に接続されている、導管(19)
− 前記液体発酵ブロス(11)を前記気相(15)中に噴霧するための、前記排出液循環ライン(6)に接続された、少なくとも1個の噴霧ノズル(12)
− 前記気相(15)中に1種または複数のガスを含むガス状基質(14)を供給して、前記ガス発酵微生物を培養するための供給システム(30)であって、前記容器(2)の内部と連通した注入導管(25)を通じて、前記気相(15)へ接続されている、供給システム(30)
を備える、ガス発酵バイオリアクター(1)。 - − ガス発酵微生物および発酵性媒地を含む液体発酵ブロス(11)で部分的に満たされた内部容積を有する容器(2)であって、前記容器(2)の容積の残りの部分が、気相(15)で満たされている、容器(2)
− 前記容器(2)の内部と連通し、それによって前記液体発酵ブロス(11)の一定分量が抜き出される、少なくとも1つの排出液循環導管(19)であって、前記導管(19)が、前記液体発酵ブロス(11)の前記一定分量を、前記容器(2)の外部で循環させ、次いで、前記容器(2)に含まれる前記気相(15)中に再び導入するための循環ライン(6)に接続されている、導管(19)
− 前記液体発酵ブロス(11)を前記気相(15)中に噴霧するための、前記排出液循環ライン(6)に接続された、少なくとも1個の噴霧ノズル(12)
− 前記容器(2)から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)中に、1種または複数のガスを含むガス状基質(14)を供給して、前記ガス発酵微生物を培養するための供給システム(30)であって、前記循環ライン(6)に接続されることにより、こうして得られた気液混合物が、前記噴霧ノズル(12)によって、前記容器(2)に存在する前記気相(15)中に噴霧される、供給システム(30)
を備える、ガス発酵バイオリアクター(1)。 - 前記循環ライン(6)が、前記容器(2)から抜き出された前記液体発酵ブロス(11)と前記ガス状基質(14)を混合して、前記気液混合物を生成するための、少なくとも1個のスタティックミキサー(7)を備える、請求項11に記載のガス発酵バイオリアクター(1)。
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