JP2020510632A - セレブロンに対する小分子の親和性の測定方法 - Google Patents

セレブロンに対する小分子の親和性の測定方法 Download PDF

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Abstract

複合体は、そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、Cy5コンジュゲート小分子を含み、そのCy5コンジュゲート小分子は、そのCRBNと結合し、治療化合物を特定するために、その複合体を使用すること。【選択図】図1

Description

相互参照
本願は、2017年2月3日に出願した米国特許仮出願第62/454,654号の優先権の権利を主張するものであり、この出願の内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
1. 技術分野
本開示は広くは、セレブロンと2つの光感受性分子とを含む複合体と、セレブロンと化合物との親和性の測定方法と、治療効果を持つ可能性のある化合物を特定するために、上記の複合体を用いることに関するものである。
2. 背景技術
タンパク質のセレブロン(CRBN)には、少なくとも2つのアイソフォームが存在し、一方は442個のアミノ酸分の長さであり、もう一方は441個のアミノ酸分の長さであり、CRBNは、植物からヒトまで保存されている。ヒトでは、CRBN遺伝子は、常染色体劣性非症候群性精神遅滞(ARNSMR)の候補遺伝子として同定されている。Higgins,J.J.et al.,Neurology,2004,63:1927−1931を参照されたい。CRBNは当初、ラット脳内でカルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質(SLO1)と相互作用するRGSを含有する新しいタンパク質として特徴付けられ、後に、網膜内でAMPK1及びDDB1とともに電位依存性塩素チャネル(CIC−2)と相互作用することが示された。Jo,S.et al.,J.Neurochem,2005,94:1212−1224、Hohberger B.et al.,FEBS Lett,2009,583:633−637、Angers S.et al.,Nature,2006,443:590−593を参照されたい。DDB1は元々、損傷DNA結合タンパク質2(DDB2)と会合するヌクレオチド除去修復タンパク質として同定された。その活性に異常があると、色素性乾皮症相補性E群(XPE)の患者で修復欠損を引き起こす。DDB1はまた、標的タンパク質のユビキチン化と、それに続くプロテアソーム分解を媒介する多数の異なるDCX(DDB1−CUL4−X−ボックス)E3ユビキチンタンパク質リガーゼ複合体の構成要素として機能すると見られる。CRBNもまた、大脳皮質の疾患に対する治療剤の開発の標的として同定されている。WO2010/137547A1を参照されたい。
CRBNは最近、いくつかの治療化合物、例えば、サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドマイドに結合する重要な分子標的として同定された。これらの薬物は、CRBNを標的とし、そのユビキチンリガーゼの基質特異性を改変して、特定のがん細胞において臨床活性を誘導する。結合した基質は、CRBN−CRL4複合体によってユビキチン化され、その結果、26Sプロテアソームによって分解される。CRBNとこれらの化合物との相互作用を理解することで、有効性及び/または毒性の分子機構を定義可能になり、有効性及び毒性プロファイルが改善した薬物をもたらすことができる。
3. 発明の概要
一態様では、本発明で提供するのは、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含む複合体であって、そのCy5コンジュゲート小分子が、そのCRBNと結合する複合体である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
別の態様では、本発明で提供するのは、化合物がセレブロン(CRBN)に結合するかの判断方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子を含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、その化合物がそのCRBNに結合すると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、この方法は、その第2のFRET効率が、その第1のFRET効率よりも低い場合に、その化合物がそのCRBNに結合すると判断することをさらに含む。
さらに別の態様では、本発明で提供するのは、セレブロン(CRBN)に対する化合物の親和性の測定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、CRBNに対するその化合物の親和性は、その第1のFRET効率とその第2のFRET効率との差を測定することによって求める。
さらに別の態様では、本発明で提供するのは、疾患を治療するための化合物の特定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、その疾患の治療に、その化合物を使用できる可能性があり得ると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、この方法は、その第2のFRET効率が、その第1のFRET効率よりも低い場合に、その疾患の治療に、その化合物を使用できる可能性があると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この疾患は、CRBN介在性疾患である。
さらに別の態様では、本発明で提供するのは、本発明で提供する複合体を含む組成物である。
4. 図面の簡単な説明
小分子がセレブロンに結合する工程を示している。
セレブロンへの小分子の結合を判断するための、HTRFベースのアッセイを示している。
セレブロンに対する化合物B、レナリドマイド及びポマリドミドのTR−FRETによる相対的な結合親和性を示している。これらの条件下でのIC50は、レナリドマイド(○)では1.5μM、ポマリドミド(◇)では1.2μM、化合物B(□)では60nmであった。
化合物Bによる基質分解を示している。パートa)は、化学発光の細胞ベースのアッセイによる、Ikarosの分解の定量結果を示している。求められたEC50は、レナリドマイド(○)では67nM、ポマリドミド(◇)では24nM、化合物B(□)では1nMであった。パートb)は、化学発光の細胞ベースのアッセイによる、Aiolosの分解の定量結果を示している。求められたEC50は、レナリドマイド(○)では87nM、ポマリドミド(◇)では22nM、化合物B(□)では0.5nMであった。パートc)は、示されている濃度でDMSO、レナリドマイド、ポマリドミドまたは化合物Bと5時間インキュベートしたDF15細胞とOPM2細胞の全細胞抽出物のイムノブロット解析結果を示している。
DDB1と化合物との複合体におけるセレブロンの結晶構造を示している。パートa)は、DDB1と化合物Bとの複合体におけるセレブロンの結晶構造を示している。挿入図は、結合した化合物Bの詳細を示しており、そのグルタルイミド環は、トリTrpポケットに収まっており、そのフェニル環は、セレブロンのE377、H378、P352及びH353によって形成されている溝内にあるイソインドリノンから延びている。パートb)は、レナリドマイドとセレブロン(左パネル)及び化合物Bとセレブロン(右パネル)の結合表面相互作用の比較を示している。アミノ酸側鎖F150が表示されている。
5. 詳細な説明
様々ながんを治療するための免疫調節薬を含むいくつかの化合物は、CRL4(CUL4−RBX1−DDB1)ユビキチンリガーゼ複合体に対する基質レセプターであるセレブロン(CRBN)を標的とするとともに、このユビキチンリガーゼの基質特異性を変更して、がん細胞において臨床活性を誘導することが示されてきている。今では、いくつかの研究で、サリドマイドのような抗がん薬の作用機序には、タンパク質のCRBNへの結合が含まれることが示されているので、これらの薬物とCRBNとの結合について理解すれば有益であり、最終的には、治療効果の向上した新たな薬物を開発する助けとなる。
すなわち、当該技術分野では、様々な化合物とCRBNとの親和性の試験方法を開発して、CRBN結合性の新たな治療化合物を特定するニーズが存在する。
本発明で提供するのはとりわけ、化合物とCRBNとの親和性を測定し、CRBNに結合する新たな小分子を特定し、これらの化合物の相対的親和性を定量するための迅速かつ容易に拡張可能なアッセイである。
セレブロン親和性、基質親和性、ならびにユビキチン化と分解の効率を含め、小分子の効能は、作用機序における多くの様々な工程によって誘導できる(図1を参照)。我々は、小分子がセレブロンに結合する工程を分離することによって、セレブロンへの各分子の結合が効能に寄与していると判断して、細胞活性を必要とせずに、化学反応の開始点を見出すことができる。
構造研究により、特定の臨床化合物が、そのグルタルイミド環を通じてセレブロンに結合し、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケットに収まることが示されている。
下記の実施例に記載されているように(6項を参照)、本開示の新たなHTRFベースのアッセイは、CRBNと化合物との高い親和性と低い親和性の両方を判断するための感度のよいハイスループットなスクリーニングフォーマットをもたらす。本開示の新たなHTRFベースのアッセイでは、CRBNと、ドナー発色団またはフルオロフォアと、アクセプター発色団またはフルオロフォアとを含む複合体を使用する。より具体的には、本発明で提供する方法では、そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、セレブロンのトリトリプトファンポケット内で結合するCy5コンジュゲート小分子とを含む複合体を使用する。CRBN結合化合物は、CRBNのN末端のユウロピウム−抗His抗体とCy5コンジュゲート小分子との相互作用及び/または立体配置を妨げることができ、その結果、FRETシグナルが低下する(図2を参照)。したがって、FRETを解析することによって、その化合物とCRBNとの親和性を求めることができる。本発明で提供するアッセイは、高親和性分子と、グルタルイミドのような低親和性断片のIC50を測定できる。このアッセイを用いて、既存の小分子と新規小分子について、小分子の親和性と細胞での効能を比較することもできる。
5.1 定義
特許、出願、公開出願及びその他の刊行物はいずれも、参照により、本明細書に援用される。別段の定めのない限り、本明細書で使用するすべての技術用語と科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書用語に複数の定義が存在する場合には、別段の記載のない限り、本項の定義を優先する。
本明細書で使用する場合、「投与する」または「投与」とは、その物質が体外で存在している際の状態で、物質を患者に、粘膜送達、皮内送達、静脈内送達、筋肉内送達及び/または本明細書に記載されているかもしくは当該技術分野において知られているいずれかの他の物理的送達方法などによって注射したり、または別段の形で物理的に送達したりする行為を指す。疾患、障害もしくは状態、またはその症状を治療するときには、物質の投与は典型的には、疾患、障害もしくは状態、またはその症状の発症後に行う。疾患、障害もしくは状態、またはその症状を予防するときには、物質の投与は典型的には、疾患、障害もしくは状態、またはその症状の発症前に行う。
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には細胞の無秩序な成長によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこの状態を説明するものである。がんの例としては、血液腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫及び白血病)、ならびに固形腫瘍が挙げられるが、これらに限らない。他の例示的ながんは、本明細書の別の箇所に示されている。
「セレブロン」または「CRBN」という用語と、類似の用語は、ヒトCRBNタンパク質(例えば、ヒトCRBNアイソフォーム1、GenBankアクセッション番号NP_057386、またはヒトCRBNアイソフォーム2、GenBankアクセッション番号NP_001166953、それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)のようないずれかのCRBNのアミノ酸配列を含むポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では同義的に用いる)と、関連するポリペプチド(そのSNPバリアントを含む)を指す。関連するCRBNポリペプチドには、特定の実施形態では、CRBN活性を保持し、及び/または抗CRBN免疫応答を起こすのに充分であるアレルバリアント(例えばSNPバリアント)、スプライスバリアント、断片、誘導体、置換バリアント、欠失バリアント、挿入バリアント、融合ポリペプチド及び種間ホモログが含まれる。
本明細書で使用する場合、「セレブロン関連タンパク質」または「CRBN関連タンパク質」という用語は、直接または間接的に、CRBNと相互作用するか、またはCRBNに結合するタンパク質を指す。特定の実施形態では、「セレブロン関連タンパク質」または「CRBN関連タンパク質」とは、CRBNの基質、例えば、CRBNを含むE3ユビキチンリガーゼ複合体のタンパク質基質、またはその下流基質である。特定の実施形態では、「セレブロン関連タンパク質」または「CRBN関連タンパク質」とは、CRBNの結合タンパク質である。
「CRBN改変剤」または「CMA」という用語は、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体を直接または間接的に調節する分子を指す。いくつかの実施形態では、CMAは、CRBNに直接結合して、CRBNタンパク質のコンホメーション変化を誘導できる。別の実施形態では、CMAは、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体の他のサブユニットに直接結合できる。
本明細書で使用する場合、「免疫調節化合物」または「免疫調節薬」という用語は概して、免疫応答を何らかの方法で改変できる分子または薬剤を指す。
本明細書で使用する場合、「組成物」という用語には、所定の成分(例えば、本発明で提供する複合体)を任意に所定の量で含む生成物と、所定の成分を任意に所定の量で組み合わせたことに直接または間接的に起因するいずれかの生成物が含まれように意図されている。
「有効量」または「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、所定の疾患、障害もしくは状態、及び/またはそれに関連する症状の重症度及び/または期間を低減及び/または改善するのに充分である、治療剤の量を指す。この用語には、所定の疾患、障害もしくは状態の進行もしくは増悪の低減もしくは改善、所定の疾患、障害もしくは状態の再発、発現もしくは発症の低減もしくは改善、及び/または別の治療剤の予防効果もしくは治療効果(複数可)の向上もしくは増進に必要な量も含まれる。いくつかの実施形態では、「有効量」または「治療有効量」は、本明細書で使用する場合、本発明で提供する治療剤の量のうち、所定の結果をもたらす量も指す。
「製薬学的に許容可能な」という用語は、本明細書で使用する場合、動物用として、より詳細にはヒト用として、連邦政府もしくは州政府の規制当局に認可されていること、またはU.S.Pharmacopeia、European Pharmacopeiaもしくはその他の概ね認識されているPharmacopeiaに掲載されていることを意味する。
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「製薬学的に許容可能な塩」という用語には、その用語が言及している化合物の無毒の酸付加塩と塩基付加塩が含まれる。許容可能な無毒の酸付加塩には、当該技術分野において知られている有機及び無機の酸または塩基(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボル酸、エナント酸などが挙げられる)に由来する塩が含まれる。
天然において酸性である化合物は、様々な製薬学的に許容可能な塩基と塩を形成できる。このような酸性化合物の製薬学的に許容可能な塩基付加塩を調製するのに用いることができる塩基は、無毒の塩基付加塩、すなわち、薬理学的に許容可能なカチオンを含む塩(以下に限らないが、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特には、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩など)を形成する塩基である。好適な有機塩基としては、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン,ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、リシン及びプロカインが挙げられるが、これらに限らない。
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語(本明細書では同義的に用いられている)は、3つ以上のアミノ酸が連続した配列で、ペプチド結合を通じて連結されているアミノ酸ポリマーを指す。「ポリペプチド」という用語には、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質アナログ、オリゴペプチドなどが含まれる。ポリペプチドという用語は、本明細書で使用する場合、ペプチドも指すことができる。ポリペプチドを構成するアミノ酸は、天然由来であっても、合成したものであってもよい。ポリペプチドは、生体試料から精製できる。
「難治性または耐性」という用語は、患者が、集中的な治療後でも、そのリンパ系、血液及び/または造血組織(例えば骨髄)に残存がん細胞(例えば、白血病細胞またはリンパ腫細胞)を有する状況を指す。
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「溶媒和物」という用語は、本発明で提供する化合物またはその塩であって、非共有結合分子間力により結合された溶媒を化学量論的量または非化学量論的量でさらに含む化合物またはその塩を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「立体異性体的に純粋な」という用語は、化合物の立体異性体を1つ含むとともに、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の逆のエナンチオマーを実質的に含まないことになる。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないことになる。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の1つの立体異性体を約80重量%超と、その化合物の他の立体異性体を約20重量%未満、その化合物の1つの立体異性体を約90重量%超と、その化合物の他の立体異性体を約10重量%未満、その化合物の1つの立体異性体を約95重量%超と、その化合物の他の立体異性体を約5重量%未満、及びその化合物の1つの立体異性体を約97重量%超と、その化合物の他の立体異性体を約3重量%未満含む。本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「立体異性的に濃縮された」という用語は、化合物の1つの立体異性体を約60重量%超、化合物の1つの立体異性体を約70重量%超、約80重量%超を含む組成物を意味する。本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「エナンチオマー的に純粋な」という用語は、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、「立体異性的に濃縮された」という用語は、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性的に濃縮された組成物を意味する。
本明細書で使用する場合、「対象」と「患者」という用語は、同義的に用いられている。本明細書で使用する場合、対象は、霊長類動物以外の動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類動物(例えば、サル及びヒト)のような哺乳動物であることができる。具体的実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は、疾患、障害または状態を有する哺乳動物(例えばヒト)である。別の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態を発症するリスクのある哺乳動物(例えばヒト)である。
本明細書で使用する場合、「療法」という用語は、所定の疾患、障害または状態の予防、管理、治療及び/または改善で使用できるいずれかのプロトコール、方法及び/または薬剤を指す。特定の実施形態では、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、所定の疾患、障害または状態の予防、管理、治療及び/または改善に有用な薬物療法、生物学的療法、支持療法及び/またはその他の療法であって、当業者(医療従事者など)に知られている療法である。
本明細書で使用する場合、別段の定めのない限り、「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、患者が所定の疾患、障害または状態を罹患しているときに行う行為を指す。本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、疾患、障害または状態の増悪、重症度及び/または期間の軽減または改善であって、1つ以上の療法の実施に起因する軽減または改善を指す。
本発明で提供する実施形態の実施の際には、別段に示されていない限り、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来の技法であって、当業者の技術の範囲内である技法を用いることになる。このような技法は、文献で充分に説明されている。参照するのに特に好適なテキストの例としては、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Manual(2d ed.)、D.N Glover,ed.(1985)DNA Cloning,Volumes I and II、M.J.Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis、B.D.Hames & SJ.Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization、B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)Transcription and Translation、R.I.Freshney,ed.(1986)Animal Cell Culture、Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986)、Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、Scopes(1987)Protein Purification:Principles and Practice(2d ed.;Springer Verlag,N.Y.)及びD.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.(1986)Handbook of Experimental Immunology,Volumes I−IVが挙げられる。
5.2 CRBNと光感受性分子とを含む複合体
本発明で提供するのは、例えば、E3ユビキチンリガーゼに結合する化合物をスクリーニングするか、または別段の形で特定する組成物、方法及びキットである。
一態様では、本発明で提供するのは、CRBNを含む複合体であり、その複合体は、ドナー発色団またはフルオロフォアと、アクセプター発色団またはフルオロフォアをさらに含む。いくつかの実施形態では、そのドナー発色団もしくはフルオロフォア、またはアクセプター発色団もしくはフルオロフォアは、CRBNのN末端に結合する。いくつかの実施形態では、そのドナー発色団もしくはフルオロフォア、またはアクセプター発色団もしくはフルオロフォアは、CRBNの化合物結合性ポケットに結合する。より具体的ないくつかの実施形態では、ドナー発色団もしくはフルオロフォア、またはアクセプター発色団もしくはフルオロフォアの一方は、CRBNのN末端に結合し、もう一方は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、色素標識小分子化合物と複合体を形成するCRBNである。いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含む複合体であり、そのCy5コンジュゲート小分子は、そのCRBNと結合する。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含み、DDB1は、CRBNに結合する。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの具体的実施形態では、この複合体は、6×His−CRBN−DDB1複合体と、ユウロピウム−抗His抗体及び式(I)のCy5コンジュゲート小分子とを混合することによって調製する。より具体的な実施形態では、この複合体は、60nMの6×His−CRBN−DDB1と、3nMのユウロピウム−抗His抗体と、30nMの式(I)のCy5コンジュゲート小分子とを混合することによって調製する。
別の態様では、本発明で提供するのは、色素標識小分子化合物と複合体を形成する結晶性CRBNである。
さらに別の態様では、本発明で提供するのは、本発明で提供する各種複合体を含む組成物である。
5.3 CRBNと化合物との親和性の測定方法
一態様では、本発明で提供するのは、化合物がセレブロン(CRBN)に結合するかの判断方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、電子励起状態の2つの分子間の距離依存性相互作用であって、光子の発光なしに、励起がドナーフルオロフォアからアクセプターに移動する相互作用である。エネルギー移動のプロセスにより、ドナーフルオロフォアの蛍光強度の低減(消光)と励起状態寿命の低減が起こり、アクセプターがフルオロフォアである場合には、アクセプターの発光強度を向上させることができる。このエネルギー移動の効率は、ドナーとアクセプターとの距離の6乗に反比例し、これにより、FRETは、距離の小さい変化に対する感度が非常に高くなっている。FRET効率は、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォア(及びそれらが結合している対応分子または原子)との距離の指標として使用でき、FRET効率の低下は、距離の拡大と相関する(すなわち逆相関)。
CRBN結合化合物を、本発明で提供する複合体に接触させると、CRBNのN末端にあるユウロピウム−抗His抗体と、Cy5コンジュゲート小分子との間の距離及び/または立体配置が変化するので、FRET及び/またはFRET効率が変化する。したがって、FRETまたはFRET効率を測定することによって、CRBNに対する化合物の親和性を求めることができる。
FRETは、蛍光または消光という2つの方法のうちの少なくとも1つで検出できる。蛍光においては、検出器をアクセプターフルオロフォアの発光スペクトルに設定し、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動と、アクセプターからの蛍光によって、結合が示される。消光においては、検出器をドナーフルオロフォアの発光スペクトルに設定し、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動と、ドナーからの発光の消光によって、結合が示される。
当業者であれば、FRETとFRET効率の測定方法がわかるであろう。これらの方法も、本開示に含まれている。
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、化合物を本開示の複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、化合物を本開示の複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、化合物を本開示の複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、その化合物がCRBNに結合すると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物を本開示の複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、この方法は、その第2のFRET効率が、その第1のFRET効率よりも低い場合に、その化合物がCRBNに結合すると判断することをさらに含む。
別の態様では、本発明で提供するのは、セレブロン(CRBN)に対する化合物の親和性の測定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、CRBNに対するその化合物の親和性は、その第1のFRET効率とその第2のFRET効率との差を測定することによって求める。
さらに別の態様では、本発明で提供するのは、2つのCRBN結合化合物の親和性の比較方法であって、CRBNに対する第1の化合物の第1の親和性を求めることと、CRBNに対する第2の化合物の第2の親和性を求めることを含む方法である。
本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、試験する化合物は、CRBN改変剤(すなわちCMA)であることができる。本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その化合物は、免疫調節化合物である。本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その化合物は、免疫調節化合物ではない。
より具体的ないくつかの実施形態では、CRBNに対するサリドマイドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。別のより具体的な実施形態では、CRBNに対するポマリドミドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。別のより具体的な実施形態では、CRBNに対するレナリドマイドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。別のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Aの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。別のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Bの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。さらに別のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Dの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。さらに具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Eの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較したりする。
5.4 治療効果のある化合物の特定方法
下記の6.6項と6.7項に示されているように、細胞分解アッセイで示した場合、CRBNに対する生化学的な結合親和性が高い化合物ほど、細胞活性での効能の向上とよく相関する。したがって、本発明で提供する方法であって、CRBNに対する化合物の親和性の測定方法は、生物学的活性または治療効果を有する化合物の特定にも用いることができる。
別の態様では、本発明で提供するのは、疾患を治療するための化合物の特定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、その疾患の治療に、その化合物を使用できる可能性があると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、この方法は、その第2のFRET効率が、その第1のFRET効率よりも低い場合に、その疾患の治療に、その化合物を使用できる可能性があると判断することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この疾患は、CRBN介在性疾患である。
別の態様では、本発明で提供するのは、所定の下流の生物学的活性を有する化合物の特定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
いくつかの実施形態では、その生物学的活性は、殺腫瘍作用である。別の実施形態では、その生物学的活性は、アポトーシス作用である。いくつかの実施形態では、その生物学的活性は、抗増殖性である。さらに別の実施形態では、その生物学的活性は、PBMC生存性である。いくつかの実施形態では、その生物学的活性は、毒性である。特定の実施形態では、その生物学的活性は、基質分解性である。一実施形態では、その生物学的活性は、Aiolos分解性である。別の実施形態では、その生物学的活性は、Ikaros分解性である。別の実施形態では、その生物学的活性は、免疫介在性作用である。別の実施形態では、その生物学的活性は、IL−2の誘導である。いくつかの実施形態では、その生物学的活性は、IL−2の抑制である。さらに別の実施形態では、その生物学的活性は、HbF作用である。いくつかの実施形態では、その作用は、CRBN関連タンパク質に対する作用である。上記の生物学的活性の1つ、2つ、3つまたはそれを超える数を組み合わせたもののいずれも想定されている。
特定の実施形態では、生物学的活性は、1つの細胞種で観察されるが、別の細胞種では観察されない。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、1つの種類の組織で観察されるが、別の種類の組織では観察されない。
特定の実施形態では、生物学的活性は、1つの種類の腫瘍(またはがん)で観察されるが、別の種類の腫瘍(またはがん)では観察されない。
いくつかの実施形態では、生物学的活性は、固形腫瘍(またはがん)で観察されるが、非固形腫瘍(またはがん)(例えば血液腫瘍)では観察されない。
いくつかの実施形態では、生物学的活性は、非固形腫瘍(またはがん)(例えば血液腫瘍)で観察されるが、固形腫瘍(またはがん)では観察されない。
特定の実施形態では、固形腫瘍またはがんは、乳房、腎臓、卵巣、大腸、膀胱、脳、肝臓または前立腺の腫瘍または癌である。いくつかの実施形態では、非固形腫瘍は、血液(blood)(血液(hematological))癌である。
いくつかの実施形態では、例示的な腫瘍またはがんとしては、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、妊娠性絨毛癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性混合リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、横紋筋肉腫、精巣癌、ウィルムス腫瘍、肛門癌、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、頭頸部癌、髄膜腫、神経線維腫、血管線維腫、肺(小細胞)癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、卵巣癌、脳腫瘍(星状細胞腫)、子宮頸癌、大腸癌、肝細胞癌、ヒト巨大肝細胞癌、カポジ肉腫、肺(非小細胞)癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、軟部組織肉腫、乳癌、大腸癌(ステージII)、骨腫瘍、骨原性肉腫、卵巣癌、子宮筋腫、精巣癌またはこれらを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
特定の実施形態では、CMAによって調節される生物学的活性は、対象において、CMAの治療上の有用性に直接的な作用を及ぼす。
別の態様では、本発明で提供するのは、所定の治療効果または所定の治療上の有用性を有する試験化合物の特定方法であって、その化合物を複合体と接触させることを含み、その複合体が、(i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含み、そのCy5コンジュゲート小分子がそのCRBNと結合する方法である。
いくつかの実施形態では、この複合体は、DDB1をさらに含む。
いくつかの実施形態では、そのCy5コンジュゲート小分子は、CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する。
具体的な実施形態では、このCy5コンジュゲート小分子は、下に示されている式(I)の構造を有する。
Figure 2020510632
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、その化合物をその複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察する。
いくつかの実施形態では、その化合物をその複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、その化合物をその複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、このFRET効率は、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である。
本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その治療上の有用性は、CRBN関連疾患、障害またはその症状の管理または治療である。別の実施形態では、その治療上の有用性は、がんもしくは腫瘍、またはその症状の管理または治療である。いくつかの実施形態では、その腫瘍またはがんは、肝臓癌、腎臓癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、妊娠性絨毛癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性混合リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、横紋筋肉腫、精巣癌、ウィルムス腫瘍、肛門癌、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、頭頸部癌、髄膜腫、神経線維腫、血管線維腫、肺(小細胞)癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、卵巣癌、脳腫瘍(星状細胞腫)、子宮頸癌、大腸癌、肝細胞癌、ヒト巨大肝細胞癌、カポジ肉腫、肺(非小細胞)癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、軟部組織肉腫、乳癌、大腸癌(ステージII)、骨腫瘍、骨原性肉腫、卵巣癌、子宮筋腫、精巣癌またはこれらを組み合わせたものである。いくつかの実施形態では、そのがんまたは腫瘍は、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、固形腫瘍、非ホジキンリンパ腫、DLBCL、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性骨髄芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、MDSまたはメラノーマである。
本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その特定する化合物は、CRBN改変剤(すなわちCMA)である。本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その特定する化合物は、免疫調節化合物である。本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その特定する化合物は、免疫調節化合物ではない。
より具体的ないくつかの実施形態では、CRBNに対するサリドマイドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。他のより具体的な実施形態では、CRBNに対するポマリドミドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。他のより具体的な実施形態では、CRBNに対するレナリドマイドの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。他のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Aの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。他のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Bの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。さらに別のより具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Dの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。さらに具体的な実施形態では、CRBNに対する化合物Eの結合親和性を測定したり、及び/またはCRBNに対する別の化合物の親和性と比較して、別の化合物の治療上の有用性を判断したりする。
5.5 細胞の種類
特定の実施形態では、本開示における生物学的活性は、指定の細胞種カテゴリーに基づくものである。このような細胞としては、いずれかのタイプの細胞、例えば、幹細胞、血液細胞(例えば末梢血単核球)、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、免疫細胞、腫瘍細胞またはがん細胞を挙げることができる。
例えば、B細胞(Bリンパ球)としては、血漿B細胞、メモリーB細胞、B1細胞、B2細胞、辺縁帯B細胞及び濾胞性B細胞が挙げられる。B細胞は、免疫グロブリン(抗体、B細胞レセプター)を発現できる。一実施形態では、その細胞は、Karpas422、TMD8、WSU−DLCL2、OCI−LY10、Karpas1106P、HT、SUDHL−10、Riva、OCI−LY19、SUDHL−4、SUDHL−6、OCI−LY3及びFarageである。
特定の細胞集団は、市販の抗体(例えば、Quest Diagnostic(San Juan Capistrano,Calif.)、Dako(Denmark))を組み合わせたものを用いて得たりまたは評価したりできる。
特定の実施形態では、その細胞株は、レナリドマイド耐性WSU−DLCL2またはTMD8細胞株である。特定の実施形態では、その細胞株は、DLBCL細胞株である。いくつかの実施形態では、その細胞株は、ABC−DLBCL(活性化B細胞様DLBCL)細胞株、例えば、TMD8、OCI−LY10、RivaまたはOCI−LY3細胞株である。別の実施形態では、その細胞株は、GCB−DLBCL(胚中心B細胞様DLBCL)細胞株、例えば、Karpas422、WSU−DLCL2、Karpas1106P、HT、SUDHL−10、OCI−LY19、SUDHL−4またはSUDHL−6細胞株である。
いくつかの実施形態では、細胞の数と種類は例えば、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学(例えば、組織特異的抗体もしくは細胞マーカー特異的抗体による染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)のような標準的な細胞検出技法を用いて、形態の変化と細胞表面マーカーを測定することによって、光学顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡を用いて、細胞の形態を調べることによって、及び/またはPCRと遺伝子発現プロファイリングのように、当該技術分野において周知の技法を用いて、遺伝子発現の変化を測定することによって、モニタリングすることができる。これらの技法は、1つ以上の特定のマーカーに対して陽性である細胞を特定するのにも用いることができる。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、細胞を含む粒子の蛍光特性に基づき、その粒子を分離するための周知の方法である(Kamarch,1987,Methods Enzymol,151:150−165)。個々の粒子の蛍光分子をレーザー励起させると、わずかな電荷が付与され、混合物から正の粒子と負の粒子を電磁分離できるようになる。一実施形態では、細胞表面マーカー特異的な抗体またはリガンドを別個の蛍光標識で標識する。細胞をセルソーターにかけて処理し、使用する抗体に結合する能力に基づき、細胞を分離させる。FACSで選別した粒子は、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接入れて、分離とクローニングを容易にしてよい。
特定の実施形態では、本発明で提供する方法において、細胞のサブセットを使用または検出する。特定の細胞集団を選別及び単離する方法は、当該技術分野において周知であり、細胞の大きさ、形態、または細胞内もしくは細胞外マーカーに基づくことができる。このような方法としては、フローサイトメトリー、フローソーティング、FACS、ビーズベースの分離(磁気細胞選別など)、サイズベースの分離(例えば、ふるい、障害物の配列またはフィルター)、マイクロフルイディクスデバイスでの選別、抗体ベースの分離、沈降、親和性吸着、親和性抽出、密度勾配遠心分離、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションなどが挙げられるが、これらに限らない。
一実施形態では、RNA(例えばmRNA)またはタンパク質を精製して、遺伝子またはタンパク質発現解析によって、バイオマーカーの有無を測定する。特定の実施形態では、バイオマーカーの有無は、定量リアルタイムPCR(QRT−PCR)、マイクロアレイ、フローサイトメトリーまたは免疫蛍光法によって測定する。別の実施形態では、バイオマーカーの有無は、酵素結合免疫吸着アッセイベースの方法(ELISA)または当該技術分野において知られているその他の類似の方法によって測定する。
5.6 特定の生物学的活性のアッセイ方法
本発明で提供する方法の特定の実施形態では、その方法は、本発明で提供する結合アッセイによって特定した化合物の特定の生物学的活性をアッセイして、例えば、その化合物の治療効果の可能性を検証することをさらに含む。
特定の実施形態では、その生物学的活性は、基質分解性である。特定の実施形態では、その基質は、CRBN関連タンパク質である。一実施形態では、そのCRBN関連タンパク質は、Ikarosである。別の実施形態では、そのCRBN関連タンパク質は、Aiolosである。いくつかの実施形態では、そのCRBN関連タンパク質を検出及び/または定量する。
いくつかの実施形態では、CRBN関連タンパク質、例えばCRBNの基質のタンパク質レベルを検出または測定する。いくつかのタンパク質検出方法と定量方法を用いて、CRBN関連タンパク質のレベルを測定できる。いずれかの好適なタンパク質定量方法を用いることができる。いくつかの実施形態では、抗体ベースの方法を使用する。使用できる例示的な方法としては、イムノブロッティング(ウエスタンブロット)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫組織化学、フローサイトメトリー、サイトメトリックビーズアレイ、質量分析などが挙げられるが、これらに限らない。直接ELISA、間接ELISA及びサンドイッチELISAを含め、いくつかのタイプのELISAが広く用いられている。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、(a)試料と、そのCRBN関連タンパク質に免疫特異的に結合する第1の抗体とを接触させること、(b)その第1の抗体に結合したその試料と、検出可能な標識を有する第2の抗体とを接触させることであって、その第2の抗体が、そのCRBN関連タンパク質に免疫特異的に結合し、その第2の抗体が、CRBN関連タンパク質上のエピトープのうち、その第1の抗体とは異なるエピトープに免疫特異的に結合することと、(c)その試料に結合した第2の抗体の存在を検出することと、(d)その第2の抗体の検出可能な標識の量に基づき、そのCRBN関連タンパク質のタンパク質レベルを求めることを含む。
別の実施形態では、CRBN関連タンパク質、例えば、CRBNの基質によって調節される下流の標的のmRNAレベルを検出または測定する。mRNAレベルを検出または定量するいくつかの方法が当該技術分野において知られている。例示的な方法としては、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、PCRベースの方法などが挙げられるが、これらに限らない。mRNA配列、例えば、CRBN関連タンパク質のmRNAまたはその断片を用いて、少なくとも部分的に相補的であるプローブを調製できる。そして、そのプローブを用いて、PCRベースの方法、ノーザンブロット、ディップスティックアッセイのようないずれかの好適なアッセイによって、試料中のmRNA配列を検出できる。
別の実施形態では、生体試料における化合物活性について試験するための核酸アッセイを調製できる。アッセイは典型的には、固体支持体と、その支持体と接触している少なくとも1つ核酸を含み、その核酸は、患者において、化合物による治療の際に発現が変化したmRNA(CRBN関連タンパク質のmRNAなど)の少なくとも一部に対応する。そのアッセイは、その試料におけるmRNAの発現の変化を検出するための手段を有することもできる。
アッセイ方法は、所望のmRNA情報の種類によって変化し得る。例示的な方法としては、ノーザンブロット及びPCRベースの方法(例えばqRT−PCR)が挙げられるが、これらに限らない。qRT−PCRのような方法は、試料中のmRNAの量を正確に定量することもできる。
いずれかの好適なアッセイプラットフォームを用いて、試料中のmRNAの存在を判断できる。例えば、アッセイは、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、テストストリップ、フィルター、マイクロスフィア、スライド、マルチウェルプレートまたは光ファイバーの形態であってよい。アッセイシステムは、mRNAに対応する核酸が結合されている固体支持体を有してもよい。この固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、球体、多糖、キャピラリー、フィルム、プレートまたはスライドを含んでよい。アッセイ構成成分は、mRNAを検出するためのキットとして、ともに調製及び包装することができる。
所望の場合、その核酸を標識して、標識mRNAの集団を作製できる。概して、試料は、当該技術分野において周知である方法を用いて標識できる(例えば、DNAリガーゼ、ターミナルトランスフェラーゼを使用して、またはRNA骨格を標識することなどによって標識できる。例えば、Ausubel,et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons 1995及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,2001 Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。いくつかの実施形態では、試料は、蛍光標識で標識する。例示的な蛍光色素としては、キサンテン色素、フルオレセイン色素、ローダミン色素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6カルボキシフルオレセイン(FAM)、6カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6カルボキシ4’,5’ジクロロ2’,7’ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’テトラメチル6カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6カルボキシXローダミン(ROXまたはR)、5カルボキシローダミン6G(R6G5またはG5)、6カルボキシローダミン6G(R6G6またはG6)及びローダミン110、シアニン色素、例えばCy3、Cy5及びCy7色素、Alexa色素、例えばAlexa−fluor−555、クマリン、ジエチルアミノクマリン、ウンベリフェロン、ベンズイミド色素、例えばHoechst33258、フェナントリジン色素、例えばTexas Red、エチジウム色素、アクリジン色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素、BODIPY色素、キノリン色素、ピレン、フルオレセインクロロトリアジニル、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、リサミン、ROX、ナフトフルオレセインなどが挙げられるが、これらに限らない。
典型的なmRNAアッセイ方法は、1)該当する表面結合プローブを得る工程と、2)特異的結合をもたらすのに充分な条件で、mRNA集団をその表面結合プローブにハイブリダイゼーションさせる工程と、(3)ハイブリダイゼーション後の洗浄を行って、ハイブリダイゼーションの際に結合しなかった核酸を除去する工程と、(4)ハイブリダイズしたmRNAを検出する工程を含むことができる。これらの工程のそれぞれで用いる試薬と、使用する条件は、具体的な用途に応じて変化し得る。
ハイブリダイゼーションは、好適なハイブリダイゼーション条件で行うことができ、その条件は、所望に応じて、ストリンジェンシーにおいて変化し得る。典型的な条件は、相補的な結合要素間、すなわち、表面結合プローブと試料中の相補的なmRNAとの間のプローブ/標的複合体を固体表面上に生成させるのに充分な条件である。特定の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いてよい。
ハイブリダイゼーションは典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で行う。標準的なハイブリダイゼーション技法(例えば、試料中の標的mRNAをプローブに特異的に結合させるのに充分な条件下)は、Kallioniemi et al.,Science 258:818−821(1992)及びWO93/18186に記載されている。一般的技法のいくつかの手引きを入手可能である(例えばTijssen,Hybridization with Nucleic Acid Probes,Parts I and II(Elsevier,Amsterdam 1993)。インサイチューハイブリダイゼーションの好適な技法の説明については、Gall et al.Meth.Enzymol.,21:470−480(1981)及びAngerer et al.in Genetic Engineering:Principles and Methods (Setlow and Hollaender,Eds.)Vol 7,pgs43−65(Plenum Press,New York 1985)を参照されたい。温度、塩濃度、ポリヌクレオチド濃度、ハイブリダイゼーション時間及び洗浄条件のストリンジェンシーなどを含む適切な条件の選択は、試料の供給源、捕捉物質の性質、予測される相補性の度合いなどを含む実験設計によって異なり、当業者においては、日常的な実験の要素として決定することができる。
代替的ではあるが、同等のハイブリダイゼーションと洗浄条件を用いて、同様のストリンジェンシーの条件をもたらすことができることを当業者は容易に認識するであろう。
mRNAハイブリダイゼーション手順の後、典型的には、表面に結合したポリヌクレオチドを洗浄して、未結合の核酸を除去する。洗浄は、いずれかの利便的な洗浄プロトコールを用いて行ってよく、その洗浄条件は典型的には、上記のように、ストリンジェントな条件である。そして、標準的な技法を用いて、プローブへの標的mRNAのハイブリダイゼーションを検出する。
PCRベースの方法のような他の方法を用いて、CRBN関連タンパク質の発現を追跡することもできる。PCR法の例は、文献で見ることができる。PCRアッセイの例は、米国特許第6,927,024号で見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。RT−PCR法の例は、米国特許第7,122,799号で見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。蛍光インサイチューPCRの方法は、米国特許第7,186,507号に記載されており、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
いくつかの実施形態では、RNA標的の検出と定量の両方に、リアルタイム逆転写PCR(qRT−PCR)を用いることができる(Bustin,et al.,2005,Clin.Sci.,109:365−379)。qRT−PCRによって得られる定量結果は一般に、定性的データよりも情報量が多い。したがって、いくつかの実施形態では、細胞ベースのアッセイの際にmRNAレベルを測定するには、qRT−PCRベースのアッセイが有用であることがある。qRT−PCR法は、患者への治療をモニタリングするのにも有用である。qRT−PCRベースの方法の例は、例えば、米国特許第7,101,663号で見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
通常の逆転写酵素PCRとアガロースゲルによる解析とは対照的に、リアルタイムPCRからは、定量結果が得られる。リアルタイムPCRの更なる利点は、使用が比較的容易なことと、利便的であることである。Applied Biosystems7500のようなリアルタイムPCR用の機器は、市販されており、配列検出用物質のTaqManのような試薬も市販されている。例えば、メーカーの指示に従って、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysを用いることができる。これらのキットは、ヒト、マウス及びラットのmRNA転写産物を迅速かつ確実に検出及び定量するように、事前に調合した遺伝子発現アッセイである。例示的なPCRプログラムは例えば、50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒を40サイクル行ってから、60℃で1分行うものである。
特定のアンプリコンの蓄積と関連する蛍光シグナルが閾値と交差するサイクル数(CTという)を求めるために、例えば、比較CT相対定量算出方法を用いる7500 Real−Time PCR System Sequence Detectionソフトウェアv1.3を用いて、データを解析できる。この方法を用いると、出力は、発現レベルの変化倍率として表される。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、ソフトウェアによって自動的に判断されるように選択できる。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、ベースラインを上回るが、増幅曲線の指数関数的増加領域内に入るように充分低く設定する。
5.7 化合物
いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法は、化合物とCRBNとの親和性を試験するためのものである。本発明で提供する各種方法のいくつかの実施形態では、その化合物は、いずれかのCRBN改変剤(すなわちCMA)であることができる。
本発明で提供するCMAとしては、特定のがんを含むいくつかのタイプのヒト疾患を治療するのに有用であり得る化合物群である免疫調節化合物が挙げられるが、これらに限らない。本発明で提供する各種組成物及び方法の特定の実施形態では、CMAは、本発明で提供する免疫調節化合物である。別の実施形態では、CMAは、本発明で提供する免疫調節化合物ではない。
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「免疫調節化合物」または「免疫調節剤」という用語には、何らかの方法で免疫応答を改変できる分子または薬剤が含まれる。例えば、この用語には、LPSの誘導による、単球のTNF−α、IL−1β、IL−12、IL−6、MIP−1α、MCP−1、GM−CSF、G−CSF及びCOX−2の産生を阻害する特定の有機小分子を含めることができる。いくつかの実施形態では、本発明で提供する免疫調節化合物は、骨髄系細胞のTNF−αの産生を減少させることができる。いくつかの実施形態では、本発明で開示する免疫調節化合物は、TNF−α mRNAの分解を促進できる。別の実施形態では、本発明で開示する免疫調節化合物は、T細胞の強力な共刺激因子であり、用量依存的に細胞の増殖を大幅に増加させる。さらに別の実施形態では、本発明で開示する免疫調節化合物は、CD4+T細胞サブセットに対する共刺激作用よりも、CD8+T細胞サブセットに対する共刺激作用の方が大きくてもよい。加えて、その化合物は、骨髄系細胞応答に対する抗炎症特性を有するうえに、T細胞を効率的に共刺激して、IL−2、IFN−γの産生量を増加させ、T細胞の増殖とCD8+T細胞の細胞傷害活性を向上させてもよい。さらに別の実施形態では、本発明で開示する免疫調節化合物は、サイトカインの活性化を通じて間接的にでも、直接的にでも、ナチュラルキラー(「NK」)細胞とナチュラルキラーT(「NKT」)細胞に作用できてよいとともに、NK細胞が有益なサイトカイン(IFN−γなどであるが、これに限らない)を産生する能力と、NK細胞とNKT細胞の細胞傷害活性を向上させる能力を高めてよい。
本発明で提供する例示的なCMAとしては、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドミド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D及び化合物Eが挙げられるが、これらに限らない。
具体的な実施形態では、この化合物は、サリドマイドである。
別の具体的な実施形態では、この化合物は、レナリドマイドである。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、ポマリドミドである。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、下記の構造を有する3−(5−アミノ−2−メチル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(「化合物A」)、
Figure 2020510632
またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形である。
化合物Aは、米国特許第7,635,700号に記載されているようにして調製でき、この特許の開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。この化合物は、本明細書の教示に基づけば、当業者には明らかである他の方法に従って合成することもできる。特定の実施形態では、化合物Aは、2011年3月11日に出願された米国特許仮出願第61/451,806号に記載されている結晶体であり、この仮出願は、参照により、その全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法において、化合物Aの塩酸塩を使用する。化合物Aを用いて、がんと他の疾患を治療、予防及び/または管理する方法は、2011年3月11日に出願された米国特許仮出願第61/451,995号に記載されており、この出願は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、下記の構造を有する3−(4−((4−(モルホリノメチル)ベンジル)オキシ)−1−オキソイソインドリン−2−イル)ピペリジン−2,6−ジオン(「化合物B」)、
Figure 2020510632
またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形である。
化合物Bとその調製方法は、米国特許第8,518,972号に記載されており、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。化合物Bの例示的な作製方法は、下記の実施例6.1にも示されている。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、下記の構造を有する1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−((2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)メチル)尿素(「化合物C」)、
Figure 2020510632
またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形である。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、下記の構造を有する2−(4−クロロフェニル)−N−((2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)メチル)−2,2−ジフルオロアセトアミド(「化合物D」)、
Figure 2020510632
またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形である。
さらに別の具体的な実施形態では、この化合物は、下記の構造を有する2−(4−フルオロフェニル)−N−((2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)メチル)−2,2−ジフルオロアセトアミド(「化合物E」)、
Figure 2020510632
またはその製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、アイソトポローグ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形である。
化合物D及びEとその調製方法は、米国特許第9,499,514号に記載されており、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
本発明で開示する様々な化合物は、1つ以上のキラル中心を含み、エナンチオマーのラセミ混合物またはジアステレオマーの混合物として存在できる。したがって、本発明でさらに提供するのは、上記のような化合物の立体異性体的に純粋な形態を使用することと、それらの形態の混合物を使用することである。例えば、特定の免疫調節化合物のエナンチオマーを等量または不等量含む混合物を用いてよい。これらの異性体は、不斉合成しても、キラルカラムまたはキラル分割剤のような標準的な技法を用いて分割してもよい。例えば、Jacques,J.,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions (Wiley Interscience,New York,1981)、Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron33:2725(1977)、Eliel,E.L.,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill,NY,1962)及びWilen,S.H.,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN,1972)を参照されたい。
記載されている化合物はいずれも、市販購入することができ、または本明細書に開示されている特許もしくは特許公開に記載されている方法に従って調製することができる。更に、光学的に純粋な化合物は、不斉合成することができ、または既知の分割剤もしくはキラルカラム及び他の標準的な有機合成化学技術を使用して分割することができる。
示されている構造とその構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合には、示されている構造が優先されることに留意されたい。加えて、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太字または破線で示されていない場合、その構造またはその構造の一部は、そのすべての立体異性体を包含するものと解釈するものとする。
5.8 CRBN介在性疾患の治療
また、本発明で提供するのは、CRBN介在性疾患の治療及び予防方法であって、本発明で提供する各種方法を用いて特定した化合物を患者に投与することを含む方法である。特定の実施形態では、このCRBN介在性疾患または障害は、がんである。特定の実施形態では、本発明で提供するのは、CRBN介在性疾患の治療及び予防方法で用いるものとして、本発明で提供する各種方法によって特定した化合物であって、その方法が、その化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を患者に投与することを含む化合物である。
別の実施形態では、本発明で提供するのは、CRBN介在性疾患の管理方法であって、本発明で提供する各種方法を用いて特定した化合物を患者に投与することを含む方法である。特定の実施形態では、このCRBN介在性疾患または障害は、がんである。特定の実施形態では、本発明で提供するのは、CRBN介在性疾患の管理方法で用いるものとして、本発明で提供する各種方法によって特定した化合物であって、その方法が、その化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を患者に投与することを含む化合物である。
また、本発明で提供するのは、CRBN介在性疾患または障害(例えば、がん)の治療を以前受けたことがあるが、標準療法に応答しない患者と、治療をこれまで受けたことがない患者の治療方法である。いくつかの疾患または障害は、特定の年齢群における方が多く見られるが、本発明でさらに提供するのは、患者の年齢にかかわらず、患者を治療する方法である。また、本発明で提供するのは、問題の疾患または状態を治療しようとして手術を受けたことのある患者と、受けたことのない患者の治療方法である。本発明で提供するいくつかの実施形態では、本発明で提供する化合物は、上述のような、患者の治療方法で用いるためのものである。
がん患者によって、臨床症状は異なり、臨床転帰も様々であるので、患者に対して行う治療は、その患者の予後に応じて様々となり得る。熟練の臨床医は、過度の実験なしに、個々のがん患者の治療に効果的に使用できる具体的な二次薬剤、手術の種類及び非薬物ベースの標準療法の種類を容易に判断できるであろう。
本明細書で使用する場合、「がん」という用語には、固形腫瘍と血液腫瘍が含まれるが、これらに限らない。「がん」という用語は、皮膚組織、器官、血液及び血管の疾患を指し、膀胱、骨、血液、脳、乳房、頸部、胸部、大腸、子宮内膜、食道、眼、頭部、腎臓、肝臓、リンパ節、肺、口腔、首、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、精巣、咽喉及び子宮の癌が挙げられるが、これらに限らない。具体的ながんとしては、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、神経芽腫、髄膜腫、血管周囲細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、神経膠肉腫、脳幹神経膠腫、予後不良悪性脳腫瘍、悪性神経膠腫、再発性悪性神経膠腫、退形星状細胞腫、退形成乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、デュークスC及びD大腸癌、切除不能大腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、核型急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、皮膚B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性メラノーマ、悪性中皮腫、悪性胸水中皮腫症候群、腹膜癌、漿液性乳頭状癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維異形成症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除後のハイリスク軟部組織肉腫、切除不能肝細胞癌、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無症候性骨髄腫、卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン非依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌及び平滑筋腫が挙げられるが、これらに限らない。
特定の実施形態では、がんは、血液腫瘍である。特定の実施形態では、その血液腫瘍は、転移性である。特定の実施形態では、その血液腫瘍は、薬物耐性である。特定の実施形態では、そのがんは、骨髄腫またはリンパ腫である。
特定の実施形態では、そのがんは、固形腫瘍である。特定の実施形態では、その固形腫瘍は、転移性である。特定の実施形態では、その固形腫瘍は、薬物耐性である。特定の実施形態では、その固形腫瘍は、肝細胞癌、前立腺癌、卵巣癌または神経膠肉腫である。
特定の実施形態では、その化合物の治療有効量または予防有効量は、1日あたり約0.005〜約1,000mg、1日あたり約0.01〜約500mg、1日あたり約0.01〜約250mg、1日あたり約0.01〜約100mg、1日あたり約0.1〜約100mg、1日あたり約0.5〜約100mg、1日あたり約1〜約100mg、1日あたり約0.01〜約50mg、1日あたり約0.1〜約50mg、1日あたり約0.5〜約50mg、1日あたり約1〜約50mg、1日あたり約0.02〜約25mgまたは1日あたり約0.05〜約10mgである。
特定の実施形態では、治療有効量または予防有効量は、1日あたり約0.005〜約1,000mg、1日あたり約0.01〜約500mg、1日あたり約0.01〜約250mg、1日あたり約0.01〜約100mg、1日あたり約0.1〜約100mg、1日あたり約0.5〜約100mg、1日あたり約1〜約100mg、1日あたり約0.01〜約50mg、1日あたり約0.1〜約50mg、1日あたり約0.5〜約50mg、1日あたり約1〜約50mg、1日あたり約0.02〜約25mgまたは1日おきに約0.05〜約10mgである。
特定の実施形態では、この治療有効量または予防有効量は、1日あたり約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mgまたは約150mgである。
一実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形の1日あたりの推奨投与量範囲であって、本明細書に記載されている状態に対する投与量範囲は、1日あたり約0.5mg〜約50mgの範囲内であり、好ましくは、単一の1日1回用量として投与するか、または1日をかけて数回に分けて投与する。いくつかの実施形態では、その用量は、1日あたり約1mg〜約50mgの範囲である。別の実施形態では、その用量は、1日あたり約0.5〜約5mgの範囲である。1日あたりの具体的用量としては、1日あたり0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mgまたは50mgが挙げられる。
具体的な実施形態では、推奨開始投与量は、1日あたり0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mgまたは50mgであってよい。別の実施形態では、推奨開始投与量は、1日あたり0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mgまたは5mgであってよい。その用量は、15mg/日、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日、45mg/日及び50mg/日まで増やしてよい。
特定の実施形態では、この治療有効量または予防有効量は、約0.001〜約100mg/kg/日、約0.01〜約50mg/kg/日、約0.01〜約25mg/kg/日、約0.01〜約10mg/kg/日、約0.01〜約9mg/kg/日、0.01〜約8mg/kg/日、約0.01〜約7mg/kg/日、約0.01〜約6mg/kg/日、約0.01〜約5mg/kg/日、約0.01〜約4mg/kg/日、約0.01〜約3mg/kg/日、約0.01〜約2mg/kg/日または約0.01〜約1mg/kg/日である。
投与量は、mg/kg/日以外の単位で表すこともできる。例えば、非経口投与用の用量は、mg/m/日で表すことができる。当業者は、対象の身長もしくは体重、またはこれらの両方を与えられれば、用量をmg/kg/日からmg/m/日に変換する方法が容易にわかるであろう(www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htmを参照されたい)。例えば、65kgのヒトでは、1mg/kg/日の用量は、38mg/m/日とおおよそ等しい。
特定の実施形態では、本開示の化合物の投与量は、化合物の定常状態での血漿中濃度を約0.001〜約500μM、約0.002〜約200μM、約0.005〜約100μM、約0.01〜約50μM、約1〜約50μM、約0.02〜約25μM、約0.05〜約20μM、約0.1〜約20μM、約0.5〜約20μMまたは約1〜約20μMの範囲にするのに充分な量である。
別の実施形態では、本開示の化合物の投与量は、化合物の定常状態での血漿中濃度を約5〜約100nm、約5〜約50nm、約10〜約100nM、約10〜約50nMまたは約50〜約100nMの範囲にするのに充分な量である。
本明細書で使用する場合、「定常状態での血漿中濃度」という用語は、本発明で提供する化合物、例えば、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形の投与期間後に達する濃度である。定常状態に達すると、その化合物の血漿中濃度の時間依存性曲線には、微小ピークとトラフが見られる。
特定の実施形態では、本開示の化合物の投与量は、その化合物の最高血漿中濃度(ピーク濃度)を約0.001〜約500μM、約0.002〜約200μM、約0.005〜約100μM、約0.01〜約50μM、約1〜約50μM、約0.02〜約25μM、約0.05〜約20μM、約0.1〜約20μM、約0.5〜約20μMまたは約1〜約20μMの範囲にするのに充分な量である。
特定の実施形態では、本開示の化合物の投与量は、その化合物の最低血漿中濃度(トラフ濃度)を約0.001〜約500μM、約0.002〜約200μM、約0.005〜約100μM、約0.01〜約50μM、約1〜約50μM、約0.01〜約25μM、約0.01〜約20μM、約0.02〜約20μM、約0.02〜約20μMまたは約0.01〜約20μMの範囲にするのに充分な量である。
特定の実施形態では、本開示の化合物の投与量は、その化合物の曲線下面積(AUC)を約100〜約100,000ng・hr/mL、約1,000〜約50,000ng・hr/mL、約5,000〜約25,000ng・hr/mLまたは約5,000〜約10,000ng・hr/mLの範囲にするのに充分な量である。
治療する疾患と、対象の状態に応じて、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、経口投与経路、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、CIV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射または埋入)投与経路、吸入投与経路、経鼻投与経路、膣内投与経路、直腸投与経路、舌下投与経路、あるいは局所(例えば、経皮または局部)投与経路によって投与してよい。本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、各投与経路に適するように、単独でまたは組み合わせて、好適な投与単位で、製薬学的に許容可能な賦形剤、担体、アジュバント及びビヒクルとともに調合してよい。
一実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、経口投与する。別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、非経口投与する。さらに別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、静脈内投与する。
本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、例えば単回ボーラス注射、経口用錠剤もしくは経口用丸剤のような単回用量として、または例えば、経時的な持続注入または経時的な分割ボーラス投与のように経時的に送達できる。本開示の化合物は、必要な場合、例えば、患者の疾患が安定するかもしくは退縮するまで、または患者の疾患が増悪するか、もしくは許容できない毒性が見られるまで、反復投与できる。例えば、固形腫瘍では、疾患の安定とは概して、測定可能な病巣の垂直直径が、直近の測定値から25%以上増大していないことを意味する。Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)Guidelines,Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216(2000)。疾患の安定または安定の欠如は、患者の症状の評価、身体診察、X線、CAT、PETまたはMRIスキャン及び一般的に受け入れられているその他の評価モダリティを用いてイメージングした腫瘍の可視化のように、当該技術分野において知られている方法によって判断する。
本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、1日に1回(QD)投与することも、または1日に2回(BID)、1日に3回(TID)及び1日に4回(QID)など、1日あたりの投与量を複数回に分けて投与することもできる。加えて、投与は、持続投与(すなわち、連日にわたって毎日または毎日)、間欠投与、例えば、サイクルでの投与(すなわち、数日間、数週間または数ヶ月の休薬期間を含む)であることができる。本明細書で使用する場合、「毎日」という用語は、例えば、ある期間にわたって、治療化合物を各日に1回または2回以上投与することを意味するように意図されている。「持続的」という用語は、少なくとも10日連続〜52週間連続の期間で、治療化合物を毎日投与することを意味するように意図されている。「間欠的」または「間欠的に」という用語は、本明細書で使用する場合、規則的な間隔または不規則な間隔のいずれかで、停止したり開始したりすることを意味するように意図されている。例えば、本発明で提供する化合物の間欠投与は、1週間に1〜6日投与すること、サイクルで(例えば、2〜8週間連続して毎日投与した後に、最大で1週間、投与を行わない休薬期間を設けて)投与すること、または隔日で投与することである。「サイクル」という用語は、本明細書で使用する場合、治療化合物を毎日または持続的に投与するが、休薬期間を設けることを意味するように意図されている。
いくつかの実施形態では、投与頻度は、1日あたり約1回〜1カ月あたり約1回の範囲である。特定の実施形態では、投与は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日おき、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回である。一実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、1日に1回投与する。別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を1日に2回投与する。さらに別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を1日に3回投与する。さらに別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を1日に4回投与する。
特定の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を1日〜6カ月、1週間〜3カ月、1週間〜4週間、1週間〜3週間または1週間〜2週間、1日に1回投与する。特定の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を1週間、2週間、3週間または4週間、1日に1回投与する。一実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を1週間、1日に1回投与する。別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を2週間、1日に1回投与する。さらに別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を3週間、1日に1回投与する。さらに別の実施形態では、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形を4週間、1日に1回投与する。
さらに本発明で提供するのは、AML及び/またはMDSのような各種血液癌と関連する1つ以上の臨床エンドポイントを得るための方法であって、本発明で提供する各種方法を用いて特定した化合物を治療有効量投与する必要のある患者に、その化合物を治療有効量投与することを含む方法である。
さらに本発明で提供するのは、血液癌である患者の全生存期間(OS)、完全寛解率(CRR)、客観的奏効率(ORR)、無増悪期間、無再発生存期間(RFS)、無増悪生存期間(PFS)、無イベント生存期間、寛解持続期間、奏効期間及び/または寛解/奏効までの時間を向上させる方法であって、本発明で提供する各種方法を用いて特定した化合物を有効量投与することを含む方法である。特定の実施形態では、ORRには、完全寛解(CR)(すなわち、形態学的無白血病状態、形態学的CR、細胞遺伝学的CR、分子的CR及び不完全な血液の回復を伴う形態学的CR)と、部分寛解のすべての奏効が含まれる。
本明細書で使用する場合、全生存期間(OS)とは、臨床試験で無作為化した時点から、何らかの原因によって死亡するまでの時間を意味する。無増悪生存期間(PFS)とは、臨床試験で無作為化した時点から、増悪または死亡するまでの時間を意味する。無イベント生存期間(EFS)とは、試験に登録してから、疾患の増悪、何らかの理由による治療の中止または死亡を含め、治療のあらゆる失敗までの時間を意味する。全奏効率(ORR)とは、完全奏功と部分奏効を示した患者の割合(%)の合計を意味する。奏効期間(DoR)は、再発するかまたは疾患が憎悪するまで、奏効を示した時間である。
本明細書で使用する場合、「血液癌」には、骨髄腫、リンパ腫及び白血病が含まれる。一実施形態では、骨髄腫は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、白血病は例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)白血病、肥満細胞症またはB細胞急性リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、リンパ腫は例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、B細胞免疫芽球性リンパ腫、小非分割細胞性リンパ腫、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)白血病/リンパ腫、成人T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、AIDS関連性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換リンパ腫、縦隔原発(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、リヒタートランスフォーメーション、節性辺縁帯リンパ腫またはALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫である。一実施形態では、血液癌は、例えば、DLBCL、濾胞性リンパ腫または辺縁帯リンパ腫を含む緩慢性リンパ腫である。
本発明で提供する各種方法を用いて特定した化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形は、組み合わせることも、本明細書に記載されているがんの治療及び/または予防に有用な他の治療剤と組み合わせて用いることもできる。
本明細書で使用する場合、「組み合わせて」という用語は、2つ以上の療法剤(例えば、1つ以上の予防剤及び/または治療剤)を使用することを含む。しかしながら、「組み合わせて」という用語を使用しても、疾患または障害のある患者に療法剤(例えば、予防剤及び/または治療剤)を投与する順序は制約されない。対象に第2の療法剤(例えば予防剤または治療剤)を投与する前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前もしくは12週間前)に、第2の療法剤の投与と同時に、または第2の療法剤の投与後(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後もしくは12週間後)に、第1の療法剤(例えば、本発明で提供する化合物のような予防剤または治療剤、本発明で提供する化合物、例えば、本発明で提供する化合物、またはそのエナンチオマー、そのエナンチオマーの混合物、その製薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物、その水和物、その共結晶、その包接化合物もしくはその結晶多形など)を投与できる。三剤併用療法も本発明で想定されている。
本発明で提供する化合物と1つ以上の第2の活性剤の患者への投与は、同時または順次に、同じ投与経路または異なる投与経路によって行うことができる。特定の活性剤で用いる特定の投与経路の適性は、活性剤自体(例えば、血流に入る前に分解することなく、活性剤を経口投与できるか)と、治療するがんによって決まることになる。
本発明で提供する化合物の投与経路は、第2の療法剤の投与経路から独立している。一実施形態では、本発明で提供する化合物は、経口投与する。別の実施形態では、本発明で提供する化合物は、静脈内投与する。したがって、これらの実施形態によれば、本発明で提供する化合物は、経口投与または静脈内投与し、第2の療法剤は、経口投与、非経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、経皮投与、舌下投与、筋肉内投与、直腸投与、経口腔投与、鼻腔内投与、リポソーム投与、吸入を介した投与、膣内投与、眼内投与、カテーテルもしくはステントによる局部送達を介した投与、皮下投与、脂肪内投与、関節内投与、髄腔内投与または徐放剤形での投与をすることができる。一実施形態では、本発明で提供する化合物と第2の療法剤は、同じ投与方法で、経口またはIV投与する。別の実施形態では、本発明で提供する化合物は、1つの投与方法、例えばIVによって投与するが、第2の薬剤(抗がん剤)は、別の投与方法、例えば経口で投与する。
一実施形態では、第2の活性剤は、1日に1回または2回、約1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mgまたは約50〜約200mgの量で、静脈内または皮下投与する。第2の活性剤の具体的な量は、使用する具体的な薬剤、治療または管理する疾患の種類、疾患の重症度及びステージ、ならびに患者に同時に投与する、本発明で提供する化合物と、いずれかの任意の追加の活性剤との量によって決まることになる。
下記の実施例は、例示として示されており、限定するために示されているものではない。
6.実施例
6.1 3−[4−(4−モルホリン−4−イルメチル−ベンジルオキシ)−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ピペリジン−2,6−ジオン(化合物B)の調製
Figure 2020510632
この合成は、光学的に純粋な(S)3−(4−ヒドロキシ−1−オキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)ピペリジン−2,6−ジオン(1)で開始し、これを、カリウムカーボネートの存在下で1,4−ビス(ブロモメチル)ベンゼン(2)でアルキル化して、ブロマイド3を得た。ブロマイド(3)をモルホリン(4)と反応させて、5を好収率で得た。その後、−78℃でカリウムtert−ブトキシドによる5の環化を進行させて、キラル中心をそのまま残した状態で、イミド6を82%の収率で得た。
実験:
4−[4−(4−ブロモメチルベンジルオキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−4−カルバモイル酪酸メチルエステル(3):2Lの丸底フラスコに、(S)−メチル5−アミノ−4−(4−ヒドロキシ−1−オキソイソインドリン−2−イル)−5−オキソペンタノエート(1)(30g、103mmol)と、1,4−ビス(ブロモメチル)ベンゼン(2)(81g、308mmol)と、カリウムカーボネート(14.19g、103mmol)と、アセトニトリル(1.2L)を入れた。この混合物を50℃で12時間攪拌してから、室温まで冷却した。この混合物をろ過し、そのろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をCH2Cl2に溶解し、シリカゲルカラムでCH2Cl2/MeOHで溶出して精製して、4−[4−(4−ブロモメチルベンジルオキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−4−カルバモイル酪酸メチルエステル(3)を白色固体として得た(40g、収率82%)。1H NMR (DMSO−d6) δ 1.98−2.13 (m,1H,CHH),2.14−2.23 (m,1H,CHH),2.23−2.32 (m,2H,CHH,CHH),3.50 (s,3H,CH3),4.34−4.63 (m,2H,CH2),4.67−4.80 (m,3H,CH2,NCH),5.25 (s,4H,CH2),7.19 (s,1H,NHH),7.24−7.34 (m,2H,Ar),7.41−7.54 (m,5H,Ar),7.58 (br.s,1H,NHH)
4−カルバモイル−4−[4−(4−モルホリン−4−イルメチル−ベンジルオキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−酪酸メチルエステル(5):メチル5−アミノ−4−(4−(4−(ブロモメチル)ベンジルオキシ)−1−オキソイソインドリン−2−イル)−5−オキソペンタノエート(3)(36.5g、77mmol)のCH2Cl2溶液に、モルホリン(4)(14.72ml、169mmol)を室温で加えた。その混合物を室温で1時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、そのろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油をEtOAcに溶解し、水で洗浄した(50mL×3)。その有機層をロータリーエバポレーターで濃縮して、4−カルバモイル−4−[4−(4−モルホリン−4−イルメチル−ベンジルオキシ)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−酪酸メチルエステル(5)を泡状固体として得た(39g、収率95%)。1H NMR (DMSO−d6) δ 2.00−2.12 (m,1H,CHH),2.14−2.22 (m,1H,CHH),2.22−2.29 (m,2H,CHH,CHH),2.30−2.39 (m,4H,CH2,CH2),3.46 (s,2H,CH2),3.50 (s,3H,CH3),3.53−3.63 (m,4H,CH2,CH2),4.28−4.59 (m,2H,CH2),4.73 (dd,J=4.7,10.2 Hz,1H,NCH),5.22 (s,2H,CH2),7.14−7.23 (m,1H,NHH),7.26−7.39 (m,4H,Ar),7.41−7.51 (m,3H,Ar),7.58 (s,1H,NHH)
3−[4−(4−モルホリン−4−イルメチル−ベンジルオキシ)−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ピペリジン−2,6−ジオン(6):メチル5−アミノ−4−(4−(4−(モルホリノメチル)ベンジルオキシ)−イル−オキソイソインドリン−2−イル)−5−オキソペンタノエート(5)(40g、83mmol)のTHF溶液に、カリウムtert−ブトキシド(9.80g、87mmol)を−78℃で加えた。この混合物をこの温度で30分攪拌した。この反応混合物に、45mLの1N HCl溶液を加えてから、200mLの飽和NaHCO3溶液を加えた。この混合物を500mLのEtOAcによって0℃で希釈し、5分攪拌し、分離した。その有機層を水(50mL×3)、ブライン(100mL)で洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、白色固体を得て、この固体をジエチルエーテル(300mL)中で攪拌して、懸濁液を得た。この懸濁液をろ過して、3−[4−(4−モルホリン−4−イルメチル−ベンジルオキシ)−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ピペリジン−2,6−ジオン(6)を白色固体として得た(28.5g、収率72%)。HPLC:Waters Symmetry C18、5μM、3.9×150mm、1mL/分、240nm、5分で95/5アセトニトリル/0.1%H3PO4までグラジエント:T=4.78分(98.5%)、mp:209〜211℃、1H NMR (DMSO−d6) δ 1.86−2.09 (m,1H,CHH),2.29−2.38 (m,4H,CH2,CH2),2.44 (dd,J=4.3,13.0 Hz,1H,CHH),2.53−2.64 (m,1H,CHH),2.82−2.99 (m,1H,CHH),3.46 (s,2H,CH2),3.52−3.61 (m,4H,CH2,CH2),4.18−4.51 (m,2H,CH2),5.11 (dd,J=5.0,13.3 Hz,1H,NCH),5.22 (s,2H,CH2),7.27−7.38 (m,5H,Ar),7.40−7.53 (m,3H,Ar),10.98 (s,1H,NH)、13C NMR (DMSO−d6) 8 22.36,31.21,45.09,51.58,53.14,62.10,66.17,69.41,114.97,115.23,127.64,128.99,129.81,129.95,133.31,135.29,137.68,153.50,168.01,170.98,172.83、LCMS:M+1 465、元素分析 C25H27N3O5+0.86 H2Oに対する計算値:C: 64.63、H: 6.22、N: 9.04、実測値:C: 64.39、H: 6.11、N: 8.89、H2O: 3.24
6.2 化合物BによるCRBN−DDB1の環化
Matyskiela et al.,Nature 2016,535(7611),252−7で以前説明されたようにして、環化に備えてCRBN−DDB1の精製を行った。化合物BによるCRBN−DDB1の環化は、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて行った。1mMの化合物Bの存在下での30mg/mLのCRBN−DDB1と1:1で混合してから、20℃にて、200mMのフッ化ナトリウム及び20%PEG3350を含む母液に対して平衡化した。20%エチレングリコールを添加したリザーバー溶液において、結晶を凍結保護し、液体窒素下で冷却した。データをAdvance Photon SourceのビームラインLS−CAT21ID−Fで収集した。4TZ4のサーチモデルとともに、Phaserを用いて、分子置換法によって、複合体結晶構造を解明した(Chamberlian et al.,Nature structural & molecular biology 2014,21(9),803−9を参照されたい)。その後、Refmac5を用いて、Cootを用いたマニュアルモデル構築と精密化を行った(Emsley et al.,Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 2011,67(Pt4),355−67を参照されたい)。
6.3 TR−FRETアッセイ
トロンビン切断/オルトニッケル工程を除外する以外は、他の箇所に記載されているようにして、このアッセイで使用する、完全長ヒトDDB1に結合した6×Hisタグ化完全長ヒトCRBNを精製した。このアッセイでは、20mMのHEPES(pH7)、150mMのNaCl、0.005%のTween−20のアッセイバッファーにおいて、60nMの6×Hisタグ化CRBN−DDB1と、30nMのCy5コンジュゲートセレブロンモジュレーター及び3nMのLanthaScreen(登録商標)Eu−anti−His Tag Antibody(ThermoFisherカタログ番号PV5596)とを混ぜ合わせた。FRETは、340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによって観察し、Non−FRET発光に対するFRETの比率(665nm/615nm)によって、FRET効率を求める。競合するセレブロン調節化合物またはDMSO担体を滴定し、10分インキュベートしてから、ディレイが60マイクロ秒のプレートリーダーEnvisionでスキャンして、FRET効率の喪失を定量する。
6.4 細胞ベースの化学発光基質分解アッセイ
化合物を事前に点着した384ウェルプレート(Corning#3712)に、セレブロン基質のIkaros、Aiolos及びGSPT1を発現しているDF15多発性骨髄腫細胞であって、ePLタグ(DiscoverX)に融合した細胞を分注した。化合物は、音響ディスペンサー(EDC BiosystemsのATS Acoustic Transfer System)によって、384ウェルプレートに、10点用量応答曲線で、3倍希釈を用いて、10μMで開始して0.0005μMまで低下させて分注した。1ウェルあたりに、5000個の細胞を含む25μLの培地(RPMI−1640+10%熱不活化FBS+25mMのHepes+1mMのピルビン酸ナトリウム+1×NEAA+0.1%Pluronic F−68+1×Pen Strep Glutamine)を分注した。アッセイプレートを37℃で、5%CO2とともに4時間インキュベートした。インキュベート後、25μlのInCELL Hunter(商標)Detection Reagent Working Solution(DiscoverX、カタログ番号96−0002、Fremont,CA)を各ウェルに加え、室温で30分、光から保護した状態でインキュベートした。30分後、発光を発光測定装置PHERAstar(Cary,NC)で計測した。化合物が所定の基質を分解するEC50値(50%効果濃度)を求めるために、4パラメーターロジスティックモデル(シグモイド型用量応答モデル)(FIT=(A+((B−A)/1+((C/x)^D))))(式中、Cは変曲点(EC50)、Dは相関係数、それぞれ、Aは適合度の下限、Bは適合度の上限である)を使用した。コントロール基質分解曲線の割合はいずれも、Activity Base(IDBS)を用いて処理及び評価した。
6.5 内因性基質タンパク質レベルのイムノブロット解析
1×10個の細胞(DF15及びOPM2のいずれか)をレナリドマイド、ポマリドミドまたは化合物Bで5時間処理してから回収した。1×冷PBSで速やかにリンスした後、細胞溶解バッファー(Cell Signaling‘s Technologies)によって細胞を溶解した。10ugの全溶解液を各レーンに入れた。Bio−RadのTurbo Systemを用いて、タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。ウェスタンで用いた抗体には、Ikaros(14859S、Cell Signaling Technologies)、Aiolos(15103S、Cell Signaling Technologies)、アクチン(A5316、Sigma)及びCRBN(Celgeneの自家作製抗体)が含まれていた。
6.6 化合物Bは、CRBNに対して高い親和性を示す
レナリドマイドとポマリドミドのように、化合物Bは、セレブロンのトリTrpポケット内で結合するグルタルイミド環と、セレブロンと基質の両方と相互作用できるイソインドリノン環とを含む。加えて、化合物Bの化学構造は、レナリドマイドとポマリドミドよりも延伸されており、追加のフェニルとモルホリノ部分を含み、それにより、セレブロンまたは基質とのさらなる相互作用が可能になる(図3を参照)。レナリドマイドとポマリドミドと化合物Bとの相対的な結合親和性を判断するために、我々は、TR−FRETセレブロン結合アッセイ(上記の6.3項に説明されている)を用いて、これらの化合物のIC50値を求めた。このアッセイでは、CRBNのトリTrpポケットからのCy5コンジュゲートセレブロン調節化合物の変位をモニタリングする。これらのアッセイ条件下では、それぞれ、レナリドマイドのIC50値は1.5μMで、ポマリドミドのIC50値は1.2μMで、同程度であったが、化合物Bでは、これらよりも親和性が有意に高く、IC50は約60nmであった(図3を参照)。
6.7 細胞分解アッセイでは、化合物Bの方が、効能が高い
化合物Bは、生化学的な結合親和性の向上と一致して、IkarosまたはAiolosのリガンド依存性枯渇を測定した細胞分解アッセイでの効能も高かった(図4のパートa)とb)を参照)。しかしながら、化合物Bは、GSPT1またはCK1αをあまり分解しない。細胞において、化合物による処理が、IkarosとAiolosの分解に及ぼす作用を測定するために、我々は、ePLタグを組み込んだタンパク質の化学発光シグナルを追跡する細胞ベースのアッセイを用いた。化合物Bによる処理によって、Ikarosタンパク質レベルが喪失し、EC50は、レナリドマイドでの67nMとポマリドミドでの24nMに対して、1nMとなることを我々は見出している。化合物Bは、Aiolosに対しても同様に強力であり、EC50は、レナリドマイドでの87nMとポマリドミドでの22nMに対して、0.5nMである。加えて、基質の枯渇度は、化合物Bの方が大きく、タンパク質の再合成速度よりも、基質分解の方が効率的であることが示されている。化合物Bの細胞分解能が高いことは、生化学的アッセイで観察された結合親和性の向上と一致することから、セレブロン親和性の向上が、細胞での効能の向上に寄与する可能性が高いことが示唆されている。これに対して、レナリドマイドよりも、ポマリドミドで観察された、細胞での効能が3〜4倍高いのは、基質親和性の変化のような他の要因によるものである可能性が高い。
これらの作用が、内因性タンパク質と関連していることを確かめるために、我々は、DF15細胞とOPM2細胞をレナリドマイド、ポマリドミド及び化合物Bで5時間処理した。化合物Bで処理したところ、レナリドマイドとポマリドミドよりも、IkarosとAiolosの分解が促進され(図4、パートc)を参照)、化学発光ベースの細胞内分解アッセイの結果と整合していた。
6.8 DDB1及び化合物Bとの複合体におけるCRBNの結晶構造
化合物Bの方が、結合親和性が高くなる機序を調べるために、我々は、ヒトセレブロン(40〜442番目のアミノ酸)とヒトDDB1(完全長)に結合した化合物Bの三元複合体の結晶構造を3.1Aの分解能で求めた(図5のパートa)を参照)。全体構造は、以前我々が報告した、セレブロン−DDB1の構造によく似ており、セレブロンの面のうち、DDB1相互作用部位とは反対側の面に、セレブロンモジュレーターの結合部位を有していた。
化合物Bのグルタルイミド環は、レナリドマイド、ポマリドミド及び1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−((2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)メチル)尿素(化合物C)と同様の結合様式で、トリTrpポケット内で結合し、イソインドリノン環は、レナリドマイド(図5)、ポマリドミド及び化合物Cと同様の結合様式で、表面上に結合している。化合物Bは、レナリドマイドとポマリドミドよりも延伸した構造を有し、その結晶構造によって、化合物Bのフェニル環は、セレブロン表面にE377、H378、P352及びH353によって形成された溝の中に位置することが示されている。モルホリン環は、残基I154及びF102で形成された疎水性ポケットの方に向いているが、この部分は、おそらくは動きが原因で、電子密度が充分には定義されていない。F150は、いくつかの他の構造とは対照的に、化合物Bのモルホリノ基に隣接して位置し、F150は、延伸したコンホメーションで見られる。しかしながら、このコンホメーションは、慎重に解釈する必要がある。F150は、他の構造では、移動性を示しているループの頂点に見られ、結晶格子定数に関与することが多いからである。
CK1a及びGSPT1との複合体におけるセレブロンの構造によって、セレブロン基質との主要な相互作用部位が、特徴付けられている基質間で共有されていることが明らかになったとともに、ドッキング及び変異誘発試験により、IkarosとAiolosにおいて、同じ相互作用部位が予測された。この相互作用部位は、セレブロンの3つの水素結合ドナーであるN351、H357及びW400によって形成されており、これらのドナーは、結合しているセレブロンモジュレーターのイソインドリノンまたはフタルイミド環に近い位置にある。これらの残基は、化合物Bのフェニル環とモルホリン環からは離れた位置にあるので、化合物活性の違いは、これらの部分とIkarosまたはAiolosとの直接的な基質相互作用に起因する可能性は低い。その代わりに、セレブロン−DDB1に結合したレナリドマイドと化合物Bの結晶構造を比較すると、親和性の向上が観察されるのは、化合物Bとセレブロンとの表面相互作用の向上とよく相関することが明らかになる(図5のパートb)を参照)。
本願を通じて、様々な刊行物が参照されている。本発明が関連する分野の現状をさらに充分に説明する目的で、これらの刊行物の開示内容は、本願での参照により、その全体が、本明細書に援用される。上に示した実施例と実施形態を参照して、本発明について説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しなければ、様々な修正を行えることを理解されたい。

Claims (35)

  1. (i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、(ii)Cy5コンジュゲート小分子とを含む複合体であって、前記Cy5コンジュゲート小分子が前記CRBNと結合する前記複合体。
  2. DDB1をさらに含む、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、前記CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する、請求項1または2に記載の複合体。
  4. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、下記の式(I)の構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
    Figure 2020510632
  5. 化合物がセレブロン(CRBN)に結合するかの判断方法であって、前記化合物を複合体と接触させることを含み、前記複合体が、
    (i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、
    (ii)Cy5コンジュゲート小分子と、を含み、前記Cy5コンジュゲート小分子が前記CRBNと結合する前記方法。
  6. 前記複合体がDDB1をさらに含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、前記CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、下記の式(I)の構造を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
    Figure 2020510632
  9. 前記化合物を前記複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記化合物を前記複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、前記化合物が前記CRBNに結合すると判断することをさらに含む、請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによってFRETを観察する、請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、前記化合物を前記複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、FRET効率が、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記第2のFRET効率が、前記第1のFRET効率よりも低い場合に、前記化合物が前記CRBNに結合すると判断することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  15. セレブロン(CRBN)に対する化合物の親和性の測定方法であって、前記化合物を複合体と接触させることを含み、前記複合体が、
    (i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、
    (ii)Cy5コンジュゲート小分子と、を含み、前記Cy5コンジュゲート小分子が前記CRBNと結合する前記方法。
  16. 前記複合体が、DDB1をさらに含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、前記CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、下記の式(I)の構造を有する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
    Figure 2020510632
  19. 前記化合物を前記複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによってFRETを観察する、請求項19〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、前記化合物を前記複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、FRET効率が、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記第1のFRET効率と前記第2のFRET効率との差を測定することによって、CRBNに対する前記化合物の親和性を求める、請求項22に記載の方法。
  24. 疾患を治療するための化合物の特定方法であって、前記化合物を複合体と接触させることを含み、前記複合体が、
    (i)そのCRBNのN末端にユウロピウム−抗His抗体を有するCRBNと、
    (ii)Cy5コンジュゲート小分子と、を含み、前記Cy5コンジュゲート小分子が前記CRBNと結合する前記方法。
  25. 前記複合体がDDB1をさらに含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、前記CRBNにおいてTrp380、Trp386及びTrp400によって形成された疎水性のトリトリプトファンポケット内で結合する、請求項24または25に記載の方法。
  27. 前記Cy5コンジュゲート小分子が、下記の式(I)の構造を有する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
    Figure 2020510632
  28. 前記化合物を前記複合体と接触させた後に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を測定することをさらに含む、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、FRETを測定することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記化合物を前記複合体と接触させた後に、FRETが減少した場合に、前記疾患の治療に、前記化合物を使用できる可能性があると判断することをさらに含む、請求項28〜29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 340nmで励起して、615nmでの発光(Non−FRET発光)と665nmでの発光(FRET発光)をモニタリングすることによってFRETを観察する、請求項28〜29のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記化合物を前記複合体と接触させる前に、第1のFRET効率を求め、前記化合物を前記複合体と接触させた後に、第2のFRET効率を求め、FRET効率が、615nmでのNon−FRET発光に対する665nmでのFRET発光の比率である、請求項31に記載の方法。
  33. 前記第2のFRET効率が、前記第1のFRET効率よりも低い場合に、前記疾患の治療に、前記化合物を使用できる可能性があると判断することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記疾患が、CRBN介在性疾患である、請求項24に記載の方法。
  35. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体を含む組成物。
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