本開示は、その増殖期の間に細胞結合型異種タンパク質を発現する組換え酵母宿主細胞を提供する。本開示の文脈で使用される場合、「増殖期」という表現は、基質のバイオマスへの変換を最大化する好気的条件下で酵母を増殖させる商業プロセスの拡張期を指す。一部の例では、増殖したバイオマスを、その後の発酵ステップ(通常は嫌気的条件下)において使用して、1つまたは複数の所望の代謝物の産生を最大化することができる。有利には、本開示の組換え酵母宿主細胞は細胞結合型異種タンパク質を発現するため、それは、遊離形態の(細胞結合型でも、係留されてもいない)異種タンパク質を発現する組換え酵母宿主細胞と比較した場合、異種タンパク質が富化された酵母組成物または酵母製品を提供する。ある実施形態では、酵母組成物または酵母製品は、酵母組成物または酵母製品の総タンパク質の少なくとも1%(乾燥重量で)の異種タンパク質を含んでもよい。一部の実施形態では、酵母組成物または酵母製品は、組換え酵母宿主細胞、酵母組成物または酵母製品のタンパク質の総重量と比較した場合、少なくとも0.1重量%の異種タンパク質を含む。一部の実施形態では、組換え酵母宿主細胞、酵母組成物または酵母製品は、酵母組成物または酵母製品のタンパク質の総重量と比較した場合、少なくとも0.001gの異種タンパク質を含む。一部の実施形態では、酵母組成物または酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総重量と比較した場合、少なくとも0.05重量%の異種タンパク質を含む。一部の実施形態では、酵母組成物または酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の乾燥重量1gあたり、少なくとも0.0005gの異種タンパク質を含む。異種タンパク質が酵素である一部の実施形態では、酵素、酵母組成物または酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の乾燥細胞重量1gあたり、または組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも50酵素活性単位の最小酵素活性を提供する。ある実施形態では、細胞結合型異種タンパク質の細胞結合型活性は、遊離形態(例えば、分泌型)で発現される対応する異種タンパク質の細胞結合型活性と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはさらには25倍高い。一部の実施形態では、組換え酵母宿主細胞は、異種タンパク質を発現しない(しかしながら、それにも拘わらず、対応する天然タンパク質を発現する)酵母宿主細胞と比較した場合、少なくとも5、10、15、20、25、20、35、40、45、50%以上の異種タンパク質を有する。ある実施形態では、細胞結合型異種タンパク質について、細胞培養上清(例えば、遊離)と関連する活性と比較した、細胞と関連する活性の比は、1:33よりも高く、それは、例えば、約1:12〜1:1.4である。別の実施形態では、細胞結合型異種タンパク質について、細胞と関連する活性のパーセンテージ(総活性と比較した場合)は、8〜42%の間の任意のパーセンテージである。本開示の組換え酵母宿主細胞は、それらが伝統的に使用される精製された製品よりも費用の低い酵素活性供給源を提供するため、有利である。さらに、組換え酵母宿主細胞中での異種タンパク質の活性は、有利には、工業プロセスにそれらを含ませる前に容易に測定し、投与し、製剤化することができる。
組換え酵母宿主細胞
本開示の組換え酵母宿主細胞は、酵母製品を作製するための様々なプロセスにおいて使用することができる酵母組成物を作製するためのプロセスにおいて使用されることが意図される。本開示の組換え酵母宿主細胞(ならびに、同様に、酵母組成物および酵母製品)は、細胞内型の、またはその膜に結合した、細胞結合型の異種タンパク質を含む。本開示の文脈で使用される場合、「酵母組成物」は、増殖させた本開示の組換え酵母宿主細胞を含む組成物である。酵母の組合せを、例えば、その後の発酵(発酵中にin situで異種タンパク質を提供するため)において、または酵母製品を作製するために使用することができる。ある実施形態では、組換え酵母宿主細胞は、酵母組成物中で活性形態または半活性形態で提供される。例えば、酵母組成物の実施形態は、本開示の組換え酵母宿主細胞から作製されるクリームである。
また、本開示の文脈で使用される場合、「酵母製品」は、本開示の組換え酵母宿主細胞によって作製される製品を含み、異種タンパク質を含む組成物である。ある実施形態では、酵母製品を、本開示の酵母提供細胞中で不活性形態として提供することができる。さらに別の実施形態では、酵母製品は、本開示の組換え酵母宿主細胞によって産生される代謝物、例えば、組換え酵母宿主細胞によって産生される異種タンパク質であってもよい。
本開示の組換え酵母宿主細胞を、必要に応じて、発酵プロセスにおいて使用してもよい。ある実施形態では、発酵プロセスは、比較的長いものであってもよく、組換え酵母宿主細胞を、例えば、バイオ燃料、蒸留製品、ワインおよびビールの作製において使用することができる。別の実施形態では、発酵プロセスは、比較的短いものであってもよく、組換え酵母宿主細胞を、例えば、酵母で発酵させたパン製品の作製において使用することができる。
本開示の組換え酵母宿主細胞を、発酵ステップを含まないプロセスにおいて使用することもできる。例えば、組換え酵母宿主細胞を、食品および飲料(例えば、酵母で発酵させていない(化学的に発酵させた)パン製品、乳製品、酵母抽出物、ジュース、脂肪および油ならびにデンプン)、飼料または他の工業製品(例えば、界面活性剤、繊維製品、革製品、パルプおよび紙、油およびガスならびに/またはバイオポリマー)を作製するために使用することができる。
本開示の組換え酵母宿主細胞を、活性形態(例えば、液体、圧縮された、または流動床で乾燥された酵母)、半活性形態(例えば、液体、圧縮された、または流動床で乾燥された)、不活性形態(例えば、ドラム乾燥または噴霧乾燥された)ならびにその混合物で提供することができる。例えば、組換え酵母宿主細胞は、酵母組成物を作製するのに必要とされる異種タンパク質の比および用量を提供するために、活性形態と、半活性形態または不活性形態との組合せであってもよい。
本開示は、遺伝子操作された組換え酵母宿主細胞に関する。遺伝子改変は、特定の標的遺伝子(酵母宿主細胞にとって異種であると考えられる)の発現を増加させることを目的とし、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8もしくはそれより多い)遺伝子位置において作製することができる。本開示の文脈では、組換え酵母細胞が「遺伝子操作されている」としての資格がある場合、それは少なくとも1つまたは複数の異種または外因性核酸残基を付加するように操作されていることを意味すると理解される。一部の実施形態では、付加される1つまたは複数の核酸残基は、異種細胞、または組換え宿主細胞自体に由来するものであってもよい。後者のシナリオでは、核酸残基は、天然のゲノム位置とは異なる1つまたは複数のゲノム位置に付加される。遺伝子操作は、天然に起こったものではなく、酵母のin vitroでの操作の結果である。
組換え酵母宿主細胞中で発現される場合、本明細書に記載の異種タンパク質は、1つまたは複数の異種核酸分子上にコードされる。核酸分子(プロモーター、ターミネーターもしくはコード配列)またはタンパク質を参照して使用される場合の用語「異種」とは、組換え宿主細胞中には天然に見出されない核酸分子またはタンパク質を指す。「異種」はまた、起源生物から除去された後、対応する天然遺伝子とは異なる形態で、例えば、生物のゲノム中でその天然の位置にはない形態で起源生物中に再導入された、天然のコード領域/プロモーター/ターミネーター、またはその一部も含む。異種核酸分子は、組換え宿主細胞中に目的をもって導入される。例えば、異種エレメントは、異なる株の宿主細胞、または異なる分類群(例えば、異なる界、門、綱、目、科、属、もしくは種、またはこれらの分類の1つの中の任意の亜群)の生物に由来するものであってよい。
組換え宿主細胞中に存在する異種核酸分子を、宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。本明細書で使用される用語「組み込まれた」とは、分子生物学技術によって、宿主細胞のゲノム中に入れられる遺伝子エレメントを指す。例えば、遺伝子エレメントを、宿主細胞によって担持されるプラスミドなどのベクター中とは対照的に、宿主細胞の染色体中に入れることができる。遺伝子エレメントを宿主細胞のゲノム中に組み込むための方法は、当業界で周知であり、相同組換えを含む。異種核酸分子は、酵母宿主細胞のゲノム中に1または複数のコピー(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはさらにより多くのコピー)中に存在してもよい。あるいは、異種核酸分子を、酵母のゲノムから独立に複製させることができる。そのような実施形態では、核酸分子は、安定であり、自己複製性であってもよい。
本開示の文脈で使用することができる好適な酵母宿主細胞は、例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、Arxula、Debaryomyces、Candida、Pichia、Phaffia、Schizosaccharomyces、Hansenula、Kloeckera、Schwanniomyces、TorulaまたはYarrowia属に由来するものであってもよい。好適な酵母種としては、例えば、S.cerevisiae、S.bulderi、S.barnetti、S.exiguus、S.uvarum、S.diastaticus、C.utilis、K.lactis、K.marxianusまたはK.fragilisが挙げられる。一部の実施形態では、酵母は、Saccharomyces cerevisiae、Schizzosaccharomyces pombe、Candida albicans、Pichia pastoris、Pichia stipitis、Yarrowia lipolytica、Hansenula polymorpha、Phaffia rhodozyma、Candida utilis、Arxula adeninivorans、Debaryomyces hansenii、Debaryomyces polymorphus、Schizosaccharomyces pombeおよびSchwanniomyces occidentalisからなる群から選択される。1つの特定の実施形態では、酵母は、Saccharomyces cerevisiaeである。一部の実施形態では、宿主細胞は、油性酵母細胞であってもよい。例えば、油性酵母宿主細胞は、Blakeslea、Candida、Cryptococcus、Cunninghamella、Lipomyces、Mortierella、Mucor、Phycomyces、Pythium、Rhodosporidum、Rhodotorula、TrichosporonまたはYarrowia属に由来するものであってもよい。一部の代替的な実施形態では、宿主細胞は、油性微細藻類宿主細胞(例えば、ThraustochytriumまたはSchizochytrium属に由来する)であってもよい。ある実施形態では、組換え酵母宿主細胞は、Saccharomyces属に由来し、一部の実施形態では、Saccharomyces cerevisiae種に由来する。
本開示の組換え酵母宿主細胞は、1つまたは複数の異種タンパク質の発現を可能にするように意図される(例えば、コードする)異種核酸分子を含む。ある実施形態では、異種タンパク質は、異種酵素である。本出願の文脈では、異種酵素は、限定されるものではないが、異種オキシドレダクターゼ、異種トランスフェラーゼ、異種ヒドロラーゼ、異種リアーゼ、異種イソメラーゼ、異種ホスファターゼおよび/または異種リガーゼであってもよい。
本開示の文脈で使用される場合、「オキシドレダクターゼ」という表現(オキシダーゼ、E.C.1とも呼ばれる)は、酵素活性を有し、ある分子(還元剤または電子供与体)から別の分子(酸化剤または電子受容体)への電子の移動を触媒することができるタンパク質を指す。ある実施形態では、オキシドレダクターゼは、ヘキソースオキシダーゼ(E.C.1.1.3.5)であり、例えば、ヘキソースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼ(E.C.1.1.3.4)であってもよい。一部の実施形態では、オキシダーゼ(グルコースオキシダーゼなど)は、生地被削性を改善することができる。ある実施形態では、1つまたは複数のオキシドレダクターゼは、Aspergillus nigerに由来するグルコースオキシダーゼ(例えば、配列番号44または103のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)であってもよい。オキシドレダクターゼを、バイオ燃料、蒸留製品、ワイン、ビールおよび酵母で発酵させたパン製品を作製するための発酵プロセスにおいて使用することができる。オキシドレダクターゼを、食品および飲料(例えば、酵母で発酵させない(化学的に発酵させた)パン製品)、飼料または他の工業製品(例えば、界面活性剤、繊維製品、革製品、パルプおよび紙、油およびガスならびに/またはバイオポリマー)を作製するために使用することができる。
本開示の文脈で使用される場合、「トランスフェラーゼ」(E.C.2)という表現は、酵素活性を有し、ある分子(供与体と呼ばれる)から別の分子(受容体と呼ばれる)への特定の官能基(例えば、メチルまたはグリコシル基)の移動を触媒することができるタンパク質を指す。例えば、トランスフェラーゼは、アシルトランスフェラーゼ(例えば、トランスグルタミナーゼ(E.C.2.3.2.13)などのE.C.2.3)またはグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、アミロマルターゼ(E.C.2.4.1.3)などのE.C.2.4)であってもよい。トランスグルタミナーゼを、ベーキング商品において使用して、生地の強度を改善することができる。
本開示の文脈で使用される場合、「リアーゼ」(E.C.4)という表現は、酵素活性を有し、加水分解(例えば、「置換」反応)および酸化以外の手段による様々な化学結合の除去を触媒することができるタンパク質を指す。例えば、リアーゼは、マロラクティック酵素(EC4.1.1.101)、アセト乳酸デカルボキシラーゼ(もしくは、アルファ−アセト乳酸デカルボキシラーゼ、EC4.1.1.5)および/またはペクチン酸リアーゼ(E.C.4.2.2.2)であってもよい。リアーゼを、バイオ燃料、蒸留製品、ワイン、ビールおよび酵母で発酵させたパン製品を作製するための発酵プロセスにおいて使用することができる。リアーゼを、食品および飲料(例えば、酵母で発酵させない(化学的に発酵させた)パン製品)、飼料または他の工業製品(例えば、界面活性剤、繊維製品、革製品、パルプおよび紙、油およびガスならびに/またはバイオポリマー)を作製するために使用することもできる。
本開示の文脈で使用される場合、「イソメラーゼ」(E.C.5)という表現は、酵素活性を有し、分子のある異性体から別の異性体への変換を触媒することができるタンパク質を指す。例えば、イソメラーゼは、グルコースイソメラーゼ(E.C.5.1.3)またはキシロースイソメラーゼ(E.C.5.1.3.5)であってもよい。イソメラーゼを、バイオ燃料、蒸留製品、ワイン、ビールおよび酵母で発酵させたパン製品を作製するための発酵プロセスにおいて使用することができる。イソメラーゼを、食品および飲料(例えば、酵母で発酵させない(化学的に発酵させた)パン製品)、飼料または他の工業製品(例えば、界面活性剤、繊維製品、革製品、パルプおよび紙、油およびガスならびに/またはバイオポリマー)を作製するために使用することもできる。
本開示の文脈で使用される場合、「リガーゼ」(E.C.6)という表現は、酵素活性を有し、新しい化学結合を形成させることによって2つの分子の結合を触媒することができるタンパク質を指す。例えば、リガーゼは、尿素アミドリアーゼ(E.C.6.3.4.6)であってもよい。リガーゼを、バイオ燃料、蒸留製品、ワイン、ビールおよび酵母で発酵させたパン製品を作製するための発酵プロセスにおいて使用することができる。リガーゼを、食品および飲料(例えば、酵母で発酵させない(化学的に発酵させた)パン製品)、飼料または他の工業製品(例えば、界面活性剤、繊維製品、革製品、パルプおよび紙、油およびガスならびに/またはバイオポリマー)を作製するために使用することもできる。
本開示の文脈で使用される場合、「ヒドロラーゼ」(E.C.3)という表現は、酵素活性を有し、化学結合の加水分解を触媒することができるタンパク質を指す。例えば、ヒドロラーゼは、エステラーゼ(E.C.3.1、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼA1および/またはホスホリパーゼA2)であってもよく、C−N非ペプチド結合を切断することができ(E.C.3.5、例えば、アスパラギナーゼ)、グリコシラーゼ(E.C.3.2、例えば、アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)、グルカナーゼ、グリコシダーゼ(E.C.3.2.1)、セルラーゼ(E.C.3.2.1.4))、ペクチナーゼおよび/またはラクターゼ(E.C.3.2.1.108)、プロテアーゼ(E.C.3.4、例えば、細菌プロテアーゼ、植物プロテアーゼもしくは真菌プロテアーゼ)であってもよい。ヒドロラーゼがアミラーゼである場合、それは、例えば、真菌アルファアミラーゼ、細菌アルファアミラーゼ、マルトース生成アルファアミラーゼ、マルトテトラヒドロラーゼ、植物(例えば、大麦)アルファもしくはベータアミラーゼおよび/またはグルコアミラーゼであってもよい。ヒドロラーゼがグリコシダーゼである場合、それは、例えば、ベータグルコシダーゼであってもよい。ヒドロラーゼがセルラーゼである場合、それは、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよび/またはキシラナーゼであってもよい。
本明細書で使用される場合、「ホスファターゼ」という表現は、酵素活性を有し、水の存在下で、リン酸モノエステルの、リン酸イオンおよびアルコールへの切断を触媒することができるタンパク質を指す。ホスファターゼの実施形態は、酵素活性を有し、フィチン酸(ミオ−イノシトールヘキサキスリン酸)の無機リンへの加水分解を触媒することができる、フィターゼである。4つの異なるクラスのフィターゼ:ヒスチジン酸ホスファターゼ(HAPS)、β−プロペラフィターゼ、紫酸性ホスファターゼおよびタンパク質チロシンホスファターゼ様フィターゼ(PTP様フィターゼ)が存在する。フィチン酸は、異なる速度および異なる順序でフィターゼによって放出され得る6個のリン酸基を有する。フィターゼは、段階的様式でフィチン酸に由来するリン酸を加水分解し、さらなる加水分解のための基質に再びなる生成物をもたらす。フィターゼは、加水分解されるフィチン酸の第1のリン酸の位置に基づいてグループ化されており、3−フィターゼ(EC3.1.3.8)、4−フィターゼ(EC3.1.3.26)および5−フィターゼ(EC3.1.3.72)である。ある実施形態では、フィターゼは、例えば、Citrobacter属種またはEscherichia属種などの細菌種に由来する。特定の実施形態では、異種フィターゼは、例えば、Citrobacter braakiiなどのCitrobacter属種に由来し、例えば、配列番号66のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有してもよい。別の実施形態では、異種フィターゼは、例えば、Escherichia coliなどのEscherichia属種に由来し、例えば、配列番号67のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有してもよい。
本明細書で使用される場合、「デンプン分解酵素」という表現は、デンプンまたは加水分解デンプンを加水分解することができる酵素のクラスを指す。デンプン分解酵素としては、限定されるものではないが、アルファ−アミラーゼ(EC3.2.1.1、真菌アルファ−アミラーゼと呼ばれることもある、以下を参照)、マルトース生成アミラーゼ(EC3.2.1.133)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)、グルカン1,4−アルファ−マルトテトラヒドロラーゼ(EC3.2.1.60)、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)、イソ−アミラーゼ(EC3.2.1.68)およびアミロマルターゼ(EC2.4.1.25)が挙げられる。ある実施形態では、1つまたは複数のデンプン分解酵素は、Aspergillus oryzaeに由来するアルファ−アミラーゼ(例えば、配列番号2もしくは105のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Geobacillus stearothermophilusに由来するマルトース生成アルファ−アミラーゼ(例えば、配列番号1、51、65、もしくは108のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Saccharomycopsis fibuligeraに由来するグルコアミラーゼ(例えば、配列番号3のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Pseudomonas saccharophilaに由来するグルカン1,4−アルファ−マルトテトラヒドロラーゼ(例えば、配列番号4のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Bacillus naganoensisに由来するプルラナーゼ(例えば、配列番号5のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Bacillus acidopullulyticusに由来するプルラナーゼ(例えば、配列番号6のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Pseudomonas amyloderamosaに由来するイソ−アミラーゼ(例えば、配列番号7のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、および/またはThermus thermophilusに由来するアミロマルターゼ(例えば、配列番号8のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)であってもよい。
本明細書で使用される場合、「セルラーゼ/ヘミセルラーゼ」という表現は、それぞれ、セルロースまたはヘミセルロースを加水分解することができる酵素のクラスを指す。セルラーゼ/ヘミセルラーゼとしては、限定されるものではないが、セルラーゼ(E.C.3.2.1.4)およびエンドB(1,4)D−キシラナーゼ(E.C.3.2.1.8)が挙げられる。ある実施形態では、1つまたは複数のセルラーゼ/ヘミセルラーゼは、Penicillium funiculosumに由来するセルラーゼ(例えば、配列番号42のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)および/またはRasamsonia emersoniiに由来するエンドB(1,4)D−キシラナーゼ(例えば、配列番号43のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)であってもよい。
本明細書で使用される場合、「リパーゼ」という表現は、脂質を加水分解することができる酵素のクラスを指す。ある実施形態では、1つまたは複数のリパーゼは、Thermomyces lanuginosisに由来するトリアシルグリセロールリパーゼ(例えば、配列番号45のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Sus scrofaに由来するホスホリパーゼA2(例えば、配列番号46のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)、Streptomyces vialaceoruberに由来するホスホリパーゼA2(例えば、配列番号47のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)および/またはAsperugillus oryzeaに由来するホスホリパーゼA2(例えば、配列番号48のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する)であってもよい。
本開示で使用される場合、用語「マルトース生成アミラーゼ」とは、デンプンまたは加水分解デンプンをマルトースに加水分解することができるポリペプチドを指す。マルトース生成アミラーゼとしては、限定されるものではないが、真菌アルファ−アミラーゼ(例えば、Aspergillus属種(例えば、A.Niger、A.kawachiおよびA.oryzae);Trichoderma属種(例えば、T.reesie)、Rhisopus属種、Mucor属種、およびPenicillium属種に由来する)、酸安定性真菌アミラーゼ(例えば、Aspergillus nigerに由来する)、β−アミラーゼ(例えば、植物(小麦、大麦、ライ麦、ソルガム、大豆、サツマイモ、コメ)および微生物(Bacillus cereus、Bacillus polymixa、Bacillus megaterium、Arabidopsis thaliana)に由来する)、マルトース生成アミラーゼ(E.C.3.2.1.133)(例えば、Bacillus subtilis、Geobacillus stearothermophilus、Bacillus thermoalkalophilus、Lactobacillus gasseri、Thermus属種などの微生物に由来する)が挙げられる。特定の実施形態では、本開示の組換え酵母宿主細胞は、Geobacillus stearothermophilusに由来し、例えば、配列番号1、51、65もしくは108のアミノ酸配列、そのバリアントまたはその断片を有する異種マルトース生成アミラーゼをコードする異種核酸分子を含む。
異種タンパク質は、既知/天然のタンパク質のバリアントであってもよい。バリアントは、天然/既知のタンパク質のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸の相違を含む。本明細書で使用される場合、バリアントとは、異種タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列中の変化を指す。置換、挿入または欠失は、変化した配列が異種タンパク質と関連する生物学的機能を防止する、または破壊する場合、タンパク質に悪影響を及ぼすと言われる。例えば、タンパク質の全電荷、構造または疎水−親水特性を、生物活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることができる。したがって、アミノ酸配列を変化させて、例えば、異種タンパク質の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドをより疎水性または親水性にすることができる。タンパク質バリアントは、本明細書に記載の異種タンパク質に対する少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。当業界で公知のように、用語「パーセント同一性」は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。同一性のレベルを、公知のコンピュータープログラムを使用して従来通り決定することができる。同一性を、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.) Oxford University Press、NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press、NY(1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.,eds.)Humana Press、NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.,eds.)Stockton Press、NY(1991)に記載されたものなどの公知の方法によって容易に算出することができる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最良の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公共的に利用可能なコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよびパーセント同一性の算出を、LASERGENE bioinformatics computing suite(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMegalighプログラムを使用して実施することができる。本明細書に開示される配列の複数のアラインメントを、アラインメントのClustal法(HigginsおよびSharp(1989)CABIOS.5:151〜153頁)を、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)と共に使用して実施した。Clustal法を使用するペアワイズアラインメントのためのデフォルトパラメータは、KTUPLB1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であった。
本明細書に記載の異種タンパク質バリアントは、(i)1つもしくは複数のアミノ酸残基が保存された、もしくは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)で置換され、そのような置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードによってコードされたものであっても、なくてもよいもの、または(ii)1つもしくは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの別の化合物と融合されているもの、または(iv)さらなるアミノ酸が、ポリペプチドの精製のために成熟ポリペプチドに融合されているものであってもよい。異種タンパク質の「バリアント」は、保存的バリアントまたは対立遺伝子バリアントであってもよい。
異種タンパク質は、既知/天然のタンパク質の断片または既知/天然のタンパク質のバリアントの断片であってもよい。ある実施形態では、断片は、シグナルペプチド配列が除去された既知/天然のタンパク質に対応する。一部の実施形態では、異種タンパク質「断片」は、異種タンパク質の少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900個以上の連続するアミノ酸を有する。断片は、既知/天然の異種タンパク質のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1個少ないアミノ酸残基を含み、完全長異種タンパク質の酵素活性を依然として有する。ある実施形態では、断片は、シグナルペプチドを欠くタンパク質のアミノ酸配列に対応する。一部の実施形態では、異種タンパク質の断片を、ペプチド合成によって対応する完全長異種タンパク質を産生するために使用することができる。したがって、断片を、完全長タンパク質を産生するための中間体として使用することができる。
本開示の組換え酵母宿主細胞において、異種タンパク質は、それが発現され、組換え酵母宿主細胞と物理的に結合したままであるように設計されるため、組換え酵母宿主細胞にとって「細胞結合型」である。ある実施形態では、異種タンパク質を、組換え酵母宿主細胞の内部(細胞内)で発現させることができる。そのような実施形態では、異種タンパク質は、組換え酵母宿主細胞の壁と結合している必要はない。異種タンパク質を細胞内で発現させることが意図される場合、天然配列中に存在する場合、そのシグナル配列を欠失させて、細胞内発現を可能にすることができる。
別の実施形態では、本開示の異種タンパク質を分泌させることができるが、その場合、それは組換え酵母宿主細胞と物理的に結合したままである必要がある。ある実施形態では、異種タンパク質の少なくとも1つの部分(通常、少なくとも一方の末端)は、細胞壁(一部の実施形態では、細胞質膜)に、例えば、共有的、非共有的および/または静電気的に結合する。例えば、異種タンパク質を、1つもしくは複数の膜貫通ドメインを担持する、1つもしくは複数の脂質改変(ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネシル化および/もしくはプレニル化)を有する、1つもしくは複数の膜結合タンパク質と相互作用する、ならびに/または細胞脂質ラフトと相互作用するように改変することができる。異種タンパク質は細胞膜または細胞壁に直接的に結合していなくてもよい(例えば、結合が係留部分によって起こる場合など)が、それにも拘わらず、タンパク質は、本開示によれば「細胞結合型」異種タンパク質であると考えられる。
一部の実施形態では、異種タンパク質を、組換え酵母宿主細胞の細胞壁に位置し、それと結合するように発現させることができる。一部の実施形態では、異種タンパク質を、宿主細胞の細胞壁の外表面に位置し、それと結合するように発現させる。組換え酵母宿主細胞は全て、細胞内(例えば、核に内部的に面する)および細胞外(例えば、外部に面する)環境を規定する細胞壁(細胞質膜を含む)を有する。異種タンパク質は、組換え酵母宿主細胞の細胞壁の外部面、さらなる実施形態では、組換え酵母宿主細胞の細胞質膜の外部面に位置してもよい(一部の実施形態では、それと物理的に結合していてもよい)。本開示の文脈では、「組換え酵母宿主細胞の細胞壁/細胞質膜の外部面と結合している」という表現は、異種タンパク質が、少なくとも部分的には、組換え酵母宿主細胞の細胞壁(一部の実施形態では、細胞質膜)に物理的に組み込まれる(共有または非共有様式で)能力を指す。物理的組込みは、例えば、異種タンパク質上の膜貫通ドメイン、異種タンパク質上の細胞質膜タンパク質と相互作用することができるドメイン、異種タンパク質に対して行われる翻訳後改変(例えば、脂質化)などの存在に起因してもよい。
一部の異種タンパク質は、組換え酵母宿主細胞の細胞壁に位置し、それと結合する本質的な能力を有する(例えば、細胞結合型である)。細胞結合型である本質的な能力を有する異種タンパク質の一例を、図1A部分(例えば、図1中のT2994株)に示す。この図面において、結果は、係留部分の非存在下でS.cerevisiae中で発現されたGeobacillus stearothermophilusのマルトース生成アルファ−アミラーゼについて提供されており、この異種タンパク質が本質的に「細胞結合型」であり、酵素活性(例えば、マルトース生成アルファ−アミラーゼ活性)を示すことを明確に示している。
しかしながら、一部の状況では、一部の異種タンパク質は不十分な本質的な細胞結合を示すか、または単に本質的な細胞結合を欠くため、それらに対する細胞結合を増加させるか、または提供することが保証されていてもよい。そのような実施形態では、異種タンパク質を、組換え酵母宿主細胞の細胞壁への結合を提供するか、または増加させる係留アミノ酸部分と組み合わせることによって、異種タンパク質をキメラ構築物として提供することが可能である。そのような実施形態では、キメラ異種タンパク質は、「係留された」と考えられるであろう。キメラタンパク質のアミノ酸係留部分は、異種タンパク質の生物活性に関して中性である、例えば、異種タンパク質の生物活性(例えば、酵素活性など)を妨げないことが好ましい。一部の実施形態では、アミノ酸係留部分と異種タンパク質との結合は、異種タンパク質の生物活性を増加させることができる(係留されていない「遊離」形態と比較した場合)。
ある実施形態では、係留部分を使用して、異種タンパク質と共に発現させて、異種タンパク質を組換え酵母宿主細胞の壁に位置させることができる。様々な係留アミノ酸部分が当業界で公知であり、本開示のキメラタンパク質において使用することができる。係留部分は、別のタンパク質上に見出される膜貫通ドメインであってよく、キメラタンパク質が膜貫通ドメインを有するようにする。そのような実施形態では、係留部分は、FLO1タンパク質に由来する(例えば、配列番号10のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号9の核酸配列によってコードされる)ものであってもよい。
さらに別の例では、アミノ酸係留部分を翻訳後改変して、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを含み、キメラタンパク質がGPIアンカーを有するようにすることができる。GPIアンカーは、タンパク質の、細胞膜の細胞質膜への固定を可能にするタンパク質の末端(一部の実施形態では、タンパク質のカルボキシル末端)に結合した糖脂質である。GPIアンカーを提供することができる係留アミノ酸部分としては、限定されるものではないが、SED1タンパク質(例えば、配列番号12のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号11の核酸配列によってコードされる)、TIR1タンパク質(例えば、配列番号14のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号13の核酸配列によってコードされる)、CWP2タンパク質(例えば、配列番号16のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号15の核酸配列によってコードされる)、CCW12タンパク質(例えば、配列番号18もしくは84のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号17の核酸配列によってコードされる)、SPI1タンパク質(例えば、配列番号20もしくは74のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号19の核酸配列によってコードされる)、PST1タンパク質(例えば、配列番号22のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号21の核酸配列によってコードされる)またはAGA1とAGA2タンパク質との組合せ(例えば、配列番号24のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号23の核酸配列によってコードされる、または例えば、配列番号26のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号25の核酸配列によってコードされる)と結合したもの/それに由来するものが挙げられる。ある実施形態では、係留部分は、GPIアンカーを提供し、さらなる実施形態では、係留部分は、SPI1タンパク質(例えば、配列番号20のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号19の核酸配列によってコードされる)、またはCCW12タンパク質(例えば、配列番号18のアミノ酸配列、そのバリアントもしくはその断片を有するか、または配列番号17の核酸配列によってコードされる)に由来する。
ある実施形態では、係留部分は、細胞膜に局在化する能力を保持したSPI1タンパク質の断片である。SPI1タンパク質の断片は、配列番号74のアミノ酸配列の129アミノ酸未満の連続する残基を含む。例えば、SPI1タンパク質に由来する係留部分断片は、配列番号74のアミノ酸配列に由来する少なくとも10、20、21、30、40、50、51、60、70、80、81、90、100、110、111または120個の連続するアミノ酸残基を含んでもよい。さらに別の実施形態では、SPI1タンパク質に由来する係留部分断片は、配列番号76、78、80または82のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなってもよい。
別の実施形態では、係留部分は、細胞膜に局在化する能力を保持したCCW12タンパク質の断片である。CCW12タンパク質の断片は、配列番号84のアミノ酸配列の112アミノ酸未満の連続する残基を含む。例えば、CCW12タンパク質に由来する係留部分断片は、配列番号84のアミノ酸配列に由来する少なくとも10、20、24、30、40、49、50、60、70、74、80、90、99、100または110個の連続するアミノ酸残基を含んでもよい。さらに別の実施形態では、CCW12タンパク質に由来する係留部分断片は、配列番号86、88、90または92のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなってもよい。
係留アミノ酸部分は、既知/天然の係留アミノ酸部分のバリアント、例えば、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、74、76、78、80、82、84、86、88、90または92のアミノ酸配列を有する係留アミノ酸部分のバリアントであってもよい。バリアントは、天然の係留アミノ酸部分のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1個のアミノ酸の相違を含む。本明細書で使用される場合、バリアントとは、係留アミノ酸部分の生物学的機能(例えば、細胞質膜中の異種タンパク質の外部面および固定での位置)に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の変化を指す。置換、挿入または欠失は、変化した配列が係留アミノ酸部分と関連する生物学的機能(例えば、細胞質膜中の異種タンパク質の外部面および固定での位置)を防止する、または破壊する場合、タンパク質に悪影響を及ぼすと言われる。例えば、タンパク質の全電荷、構造または疎水−親水特性を、生物活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることができる。したがって、アミノ酸配列を変化させて、例えば、係留アミノ酸部分の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドをより疎水性または親水性にすることができる。係留アミノ酸部分バリアントは、本明細書に記載の係留アミノ酸部分に対する少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。当業界で公知のように、用語「パーセント同一性」は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。同一性のレベルを、公知のコンピュータープログラムを使用して従来通り決定することができる。同一性を、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.) Oxford University Press、NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press、NY(1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.,eds.)Humana Press、NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.,eds.)Stockton Press、NY(1991)に記載されたものなどの公知の方法によって容易に算出することができる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最良の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公共的に利用可能なコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよびパーセント同一性の算出を、LASERGENE bioinformatics computing suite(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMegalighプログラムを使用して実施することができる。本明細書に開示される配列の複数のアラインメントを、アラインメントのClustal法(HigginsおよびSharp(1989)CABIOS.5:151〜153頁)を、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)と共に使用して実施した。Clustal法を使用するペアワイズアラインメントのためのデフォルトパラメータは、KTUPLB1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であった。
本明細書に記載の係留アミノ酸部分バリアントは、(i)1つもしくは複数のアミノ酸残基が保存された、もしくは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)で置換され、そのような置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードによってコードされたものであっても、なくてもよいもの、または(ii)1つもしくは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの別の化合物と融合されているもの、または(iv)さらなるアミノ酸が、ポリペプチドの精製のために成熟ポリペプチドに融合されているものであってもよい。係留アミノ酸部分の「バリアント」は、保存的バリアントまたは対立遺伝子バリアントであってもよい。
係留アミノ酸部分は、既知/天然の係留アミノ酸部分の断片または既知/天然の係留アミノ酸部分のバリアントの断片(例えば、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、74、76、78、80、82、84、86、88、90もしくは92のアミノ酸配列を有する係留アミノ酸部分の断片またはそのバリアント)であってもよい。係留アミノ酸部分「断片」は、係留アミノ酸部分の少なくとも10、20、30、40、60、70、80、90、100個以上の連続するアミノ酸を有する。断片は、既知/天然の係留アミノ酸部分のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1個少ないアミノ酸残基を含み、完全長係留アミノ酸部分の生物活性を依然として有する(例えば、細胞壁に対する位置)。
アミノ酸係留部分が望ましい実施形態では、異種タンパク質を、組換え酵母宿主細胞によって発現され、以下の式(アミノ(NH2)からカルボキシル(COOH)への向きに提供される)の1つを有するキメラタンパク質として提供することができる:
HP−L−TT(I)またはTT−L−HP(II)。
これらの式の両方において、残基「HP」は、異種タンパク質部分を指し、残基「L」は任意選択のリンカーの存在を指すが、残基「TT」は、アミノ酸係留部分を指す。式(I)のキメラタンパク質において、アミノ酸テザーのアミノ末端は、異種タンパク質部分のカルボキシル(COOHまたはC)末端に(直接的または間接的に)位置する。式(II)のキメラタンパク質においては、アミノ酸テザーのカルボキシ末端は、異種タンパク質部分のアミノ(NH2またはN)末端に(直接的または間接的に)位置する。
アミノ酸リンカー(L)が存在しない場合、係留アミノ酸部分は、異種タンパク質と直接結合する。式(I)のキメラにおいては、これは、異種タンパク質部分のカルボキシル末端が係留アミノ酸部分のアミノ末端と直接結合する(アミド結合によって)ことを意味する。式(II)のキメラにおいては、これは、係留アミノ酸部分のカルボキシル末端が異種タンパク質のアミノ末端と直接結合する(アミド結合によって)ことを意味する。
一部の実施形態では、アミノ酸リンカー(L)の存在は、例えば、異種タンパク質部分と係留アミノ酸部分との間のいくらかの可撓性を提供するために、または異種核酸分子の構築を容易にするために望ましい。本開示で使用される場合、「アミノ酸リンカー」または「L」とは、異種タンパク質部分HPと、アミノ酸係留部分TTとを分離する(例えば、異種タンパク質HPをアミノ酸係留部分TTに間接的に連結する)1つまたは複数のアミノ酸の伸長物を指す。アミノ酸リンカーは中性である、例えば、異種タンパク質の生物活性とも、アミノ酸係留部分の生物活性とも干渉しないことが好ましい。一部の実施形態では、アミノ酸リンカーLは、異種タンパク質部分および/またはアミノ酸係留部分の生物活性を増加させることができる。リンカー(L)が式(I)のキメラ中に存在する例では、そのアミノ末端は、異種タンパク質部分のカルボキシル末端に結合し(アミド結合によって)、そのカルボキシル末端は、アミノ酸係留部分のアミノ末端に結合する(アミド結合によって)。リンカー(L)が式(II)のキメラ中に存在する例では、そのアミノ末端は、アミノ酸係留部分のカルボキシル末端に結合し(アミド結合によって)、そのカルボキシル末端は、異種タンパク質部分のアミノ末端に結合する(アミド結合によって)。様々なアミノ酸リンカーが存在し、限定されるものではないが、(G)n、(GS)n;(GGS)n;(GGGS)n;(GGGGS)n;(GGSG)n;(GSAT)n(式中、nは1〜8(以上)の整数である)が挙げられる。ある実施形態では、アミノ酸リンカーLは、(GGGGS)n(G4Sとも呼ばれる)であり、さらなる実施形態では、アミノ酸リンカーLは、1より多いG4S(配列番号41)モチーフを含む。例えば、アミノ酸リンカーLは、(G4S)3であり、配列番号93のアミノ酸配列を有してもよい。別の例では、アミノ酸リンカーLは、(G)8であり、配列番号94のアミノ酸配列を有してもよい。さらに別の例では、アミノ酸リンカーLは、(G4S)8であり、配列番号95のアミノ酸配列を有してもよい。
アミノ酸リンカーはまた、一部の実施形態では、GSAGSAAGSGEF(配列番号96)であってもよい。
さらなるアミノ酸リンカーが存在し、限定されるものではないが、(EAAK)nおよび(EAAAK)n(式中、nは、1〜8(以上)の整数である)が挙げられる。一部の実施形態では、1つまたは複数の(EAAK)n/(EAAAK)nモチーフを、1つまたは複数のさらなるアミノ酸残基によって分離することができる。ある実施形態では、アミノ酸リンカーは、1つもしくは複数のEA2K(配列番号100)またはEA3K(配列番号101)モチーフを含む。ある実施形態では、アミノ酸リンカーは、(EAAK)3であってもよく、配列番号97のアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、アミノ酸リンカーは、(A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A)であってもよく、配列番号99のアミノ酸配列を有する。
さらなるアミノ酸リンカーとしては、1つまたは複数の(AP)nモチーフ(式中、nは1〜10(以上)の整数である)を有するものが挙げられる。ある実施形態では、リンカーは、(AP)10であり、配列番号98のアミノ酸を有する。
一部の実施形態では、リンカーはまた、1つまたは複数のHAタグ(配列番号53)を含む。
組換え酵母宿主細胞を作製するための手段
組換え酵母宿主細胞を作製するために、異種核酸分子(発現カセットとも呼ばれる)をin vitroで作製し、酵母宿主細胞中に導入して、異種タンパク質の組換え発現を可能にする。
本開示の異種核酸分子は、異種ポリペプチド、例えば、異種タンパク質またはそれを含むキメラタンパク質のためのコード領域を含む。DNAまたはRNA「コード領域」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、in vitroまたはin vivoで細胞中で異種タンパク質に転写および/または翻訳されるDNAまたはRNA分子(好ましくは、DNA分子)である。「好適な調節領域」とは、コード領域の上流(5’非コード配列)、中、または下流(3’非コード配列)に位置し、結合したコード領域の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響する核酸領域を指す。調節領域としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造が挙げられる。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード領域としては、限定されるものではないが、原核領域、mRNAに由来するcDNA、ゲノムDNA分子、合成DNA分子、またはRNA分子が挙げられる。コード領域が真核細胞中での発現を意図される場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード領域の3’側に位置するであろう。ある実施形態では、コード領域を、オープンリーディングフレームと呼ぶことができる。「オープンリーディングフレーム」はORFと省略され、翻訳開始シグナルまたはATGもしくはAUGなどの開始コドンと、終止コドンを含み、ポリペプチド配列に潜在的に翻訳され得る、DNA、cDNAまたはRNAのいずれかである核酸の長さを意味する。
本明細書に記載の異種核酸分子は、転写および/または翻訳制御領域を含んでもよい。「転写および翻訳制御領域」は、宿主細胞中でのコード領域の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどのDNA調節領域である。真核細胞中で、ポリアデニル化シグナルは制御領域である。
一部の実施形態では、本開示の異種核酸分子は、異種タンパク質(それを含むキメラタンパク質を含む)のためのプロモーターならびにコード配列を含む。異種核酸配列はまた、ターミネーターを含んでもよい。本開示の異種核酸分子において、プロモーターおよびターミネーター(存在する場合)は、異種タンパク質(それを含むキメラタンパク質を含む)の核酸コード配列に作動可能に連結される、例えば、それらは異種タンパク質(それを含むキメラタンパク質を含む)の核酸配列の発現および発現の終結を制御する。本開示の異種核酸分子はまた、シグナルペプチド、例えば、異種タンパク質を宿主細胞の外部に輸送するための短いペプチド配列をコードする核酸も含んでもよい。存在する場合、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、異種タンパク質(それを含むキメラタンパク質を含む)をコードする核酸配列のすぐ上流に位置し、それと読み枠が合っている。
本明細書に記載の異種核酸分子において、プロモーターと、異種タンパク質(それを含むキメラタンパク質を含む)をコードする核酸分子とは、互いに作動可能に連結される。本開示の文脈では、「作動可能に連結された」または「作動可能に結合された」という表現は、プロモーターが、ある特定の条件下で、核酸分子からの異種タンパク質の発現を可能にする様式で異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド酸分子に物理的に結合しているという事実を指す。ある実施形態では、プロモーターは、異種タンパク質をコードする核酸配列の上流(5’側)に位置してもよい。さらに別の実施形態では、プロモーターは、異種タンパク質をコードする核酸配列の下流(3’側)に位置してもよい。本開示の文脈では、1つまたは1つより多いプロモーターを、異種核酸分子中に含ませることができる。1つより多いプロモーターが異種核酸分子中に含まれる場合、それぞれのプロモーターを、異種タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結する。プロモーターは、異種タンパク質をコードする核酸分子を考慮して、上流、下流ならびに上流と下流の両方に位置してもよい。
「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA断片を指す。本明細書で使用される用語「発現」とは、本明細書に記載の異種核酸分子からのセンス(mRNA)の転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指してもよい。プロモーターは、その全体が天然の遺伝子に由来するか、または天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されるか、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターが発生の異なる段階で、または異なる環境条件もしくは生理的条件に応答して発現を指令することができることが、当業者によって理解される。実質的に類似するレベルで最も多くの時間で最も多くの細胞中で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。酵母細胞の増殖期に遺伝子を発現させるプロモーターは、本明細書では「増殖プロモーター」と呼ばれる。増殖プロモーターは、例えば、グルコース調節、糖蜜調節、ストレス応答プロモーター(浸透圧ストレス応答プロモーターを含む)および好気的調節プロモーターなどの構成的および誘導性プロモーターの両方を含む。本開示の文脈では、選択されるプロモーターは、十分な量の細胞結合型異種タンパク質を発現させるために組換え酵母宿主細胞の増殖期に異種核酸分子の発現を可能にすることが重要である。多くの場合、調節配列の正確な境界は完全に規定されていないため、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有してもよいことがさらに認識される。プロモーターは、一般的には、転写開始部位によってその3’末端に境界があり、上流(5’方向)に向かって伸長し、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター内に、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を用いてマッピングすることによって都合良く定義される)、ならびにポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。
プロモーターは、異種ポリペプチドをコードする核酸分子に対して天然であるか、または異種であってよい。プロモーターは、異種であってよいか、または組換え宿主細胞と同じ属もしくは種に由来する株に由来してもよい。ある実施形態では、プロモーターは、酵母宿主細胞の同じ属または種に由来し、異種ポリペプチドは、宿主細胞とは異なる属に由来する。プロモーターは、単一のプロモーターまたは異なるプロモーターの組合せであってもよい。
本開示では、組換え酵母宿主細胞の増殖期の異種タンパク質の発現を可能にするか、または好むプロモーターが好ましい。通性嫌気性菌である酵母は、好気条件下で呼吸的に繁殖し、嫌気的条件下で発酵的に繁殖することができる。多くの商業的適用では、酵母を、基質からバイオマスへの変換を最大化するために好気的条件下で増殖させる。必要に応じて、バイオマスを、嫌気的条件下でその後の発酵において使用して、所望の代謝物を産生することができる。本開示の文脈では、異種核酸中に存在するプロモーターまたはプロモーターの組合せは、組換え酵母宿主細胞の増殖期に異種タンパク質またはその対応するキメラの発現を可能にすることができることが重要である。これは、発酵におけるその後の使用(もしあれば)の前に組換え酵母宿主細胞と結合した異種タンパク質の蓄積を可能にするであろう。一部の実施形態では、プロモーターは、組換え酵母宿主細胞の生活環の発酵期(もしあれば)ではなく、増殖期に異種タンパク質またはその対応するキメラの発現を可能にする。
プロモーターは、天然であるか、または異種タンパク質をコードする異種遺伝子にとって異種であってもよい。異種核酸分子中に含ませることができるプロモーターは、構成的または誘導性プロモーターであってもよい(Perez−Torradoら、2005に記載されたものなど)。誘導性プロモーターとしては、限定されるものではないが、グルコース調節プロモーター(例えば、hxt7遺伝子のプロモーター(hxt7pと呼ばれる)であり、配列番号30、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;ctt1遺伝子のプロモーター(ctt1pと呼ばれる)であり、配列番号60、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;glo1遺伝子のプロモーター(glo1pと呼ばれる)であり、配列番号59、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;ygp1遺伝子のプロモーター(ygp1pと呼ばれる)であり、配列番号61、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;gsy2遺伝子のプロモーター(gsy2pと呼ばれる)であり、配列番号53、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、糖蜜調節プロモーター(例えば、Praekeltら、1992に記載のmol1遺伝子のプロモーター(mol1pと呼ばれる)であり、配列番号64、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、熱ショック調節プロモーター(例えば、glo1遺伝子のプロモーター(glo1pと呼ばれる)であり、配列番号59、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;sti1遺伝子のプロモーター(sti1pと呼ばれる)であり、配列番号56、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;ygp1遺伝子のプロモーター(ygp1pと呼ばれる)であり、配列番号61、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;gsy2遺伝子のプロモーター(gsy2pと呼ばれる)であり、配列番号53、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、酸化ストレス応答プロモーター(例えば、cup1遺伝子のプロモーター(cup1pと呼ばれる)であり、配列番号58、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;ctt1遺伝子のプロモーター(ctt1pと呼ばれる)であり、配列番号60、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;trx2遺伝子のプロモーター(trx2pと呼ばれる)であり、配列番号55、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;gpd1遺伝子のプロモーター(gpd1pと呼ばれる)であり、配列番号57、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;hsp12遺伝子のプロモーター(hsp12pと呼ばれる)であり、配列番号63、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、浸透圧ストレス応答プロモーター(例えば、ctt1遺伝子のプロモーター(ctt1pと呼ばれる)であり、配列番号60、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;glo1遺伝子のプロモーター(glo1pと呼ばれる)であり、配列番号59、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;gpd1遺伝子のプロモーター(gpd1pと呼ばれる)であり、配列番号57、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する;ygp1遺伝子のプロモーター(ygp1pと呼ばれる)であり、配列番号61、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)および窒素調節プロモーター(例えば、ygp1遺伝子のプロモーター(ygp1pと呼ばれる)であり、配列番号61、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)が挙げられる。
本開示の異種核酸分子中に含ませることができるプロモーターとしては、限定されるものではないが、tdh1遺伝子のプロモーター(tdh1pと呼ばれ、例えば、配列番号27、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、hor7遺伝子のプロモーター(hor7pと呼ばれ、例えば、配列番号28、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、hsp150遺伝子のプロモーター(hsp150pと呼ばれ、例えば、配列番号29、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、hxt7遺伝子のプロモーター(hxt7pと呼ばれ、例えば、配列番号30、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、gpm1遺伝子のプロモーター(gmp1pと呼ばれ、例えば、配列番号31、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)、pgk1遺伝子のプロモーター(pgk1pと呼ばれ、例えば、配列番号32、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)および/またはstl1遺伝子のプロモーター(stl1pと呼ばれ、例えば、配列番号33、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有する)が挙げられる。ある実施形態では、プロモーターは、tdh1pおよび/またはhor7pであるか、またはそれを含む。さらに別の実施形態では、プロモーターは、tdh1pおよびhor7pを含むか、または本質的にそれからなる。さらなる実施形態では、プロモーターは、thd1pである。
1つまたは複数のプロモーターを使用して、組換え酵母宿主細胞中でのそれぞれの異種ポリペプチドの発現を可能にすることができる。本開示の文脈では、プロモーターと共に使用される場合の「プロモーターの機能的断片」という表現は、組換え酵母宿主細胞の増殖期に異種タンパク質またはそのキメラをコードする核酸配列の発現を制御する能力を保持する天然のプロモーターよりも短い核酸配列を指す。通常、機能的断片は、天然プロモーターの核酸配列に由来する1つまたは複数の核酸残基の5’および/または3’トランケーションである。
一部の実施形態では、核酸分子は、異種タンパク質(またはそれを含むキメラタンパク質)の翻訳を終了させるための1つのターミネーター配列またはターミネーター配列の組合せを含む。ターミネーターは、天然であるか、または異種タンパク質もしくはその対応するキメラをコードする核酸配列に対して異種であってもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数のターミネーターを使用することができる。一部の実施形態では、ターミネーターは、dit1遺伝子に由来するターミネーター(dit1tと呼ばれ、例えば、配列番号34、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、idp1遺伝子に由来するターミネーター(idp1tと呼ばれ、例えば、配列番号35、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、gpm1遺伝子に由来するターミネーター(gpm1tと呼ばれ、例えば、配列番号36、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、pma1遺伝子に由来するターミネーター(pma1tと呼ばれ、例えば、配列番号37、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、tdh3遺伝子に由来するターミネーター(tdh3tと呼ばれ、例えば、配列番号38、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、hxt2遺伝子に由来するターミネーター(hxt2tと呼ばれ、例えば、配列番号39、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、adh3遺伝子に由来するターミネーター(adh3tと呼ばれ、例えば、配列番号70、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)、および/またはira2遺伝子に由来するターミネーター(ira2tと呼ばれ、例えば、配列番号40、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)を含む。ある実施形態では、ターミネーターは、dit1遺伝子を含むか、またはそれに由来する(dit1tと呼ばれ、例えば、配列番号34、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)。別の実施形態では、ターミネーターは、adh3遺伝子を含むか、またはそれに由来する(例えば、配列番号70、その機能的バリアントもしくはその機能的断片の核酸配列を有してもよい)。本開示の文脈では、「ターミネーターの機能的バリアント」という表現は、異種タンパク質またはその対応するキメラをコードする核酸配列の発現を終了させる能力を保持する天然ターミネーターと比較した場合、少なくとも1個の核酸位置において置換された核酸配列を指す。本開示の文脈では、「ターミネーターの機能的断片」という表現は、異種タンパク質またはその対応するキメラをコードする核酸配列の発現を終了させる能力を保持する天然ターミネーターよりも短い核酸配列を指す。
一部の実施形態では、異種核酸分子は、異種タンパク質(またはそれを含むキメラタンパク質)酵母宿主細胞の壁の外部への輸送を可能にする1つのシグナル配列またはシグナル配列の組合せを含む。シグナル配列は、単に核酸分子に付加する(通常は、異種タンパク質をコードする配列と読み枠を合わせて)か、または異種タンパク質中に既に存在するシグナル配列を置き換えることができる。シグナル配列は、天然であるか、または異種タンパク質もしくはその対応するキメラをコードする核酸配列に対して異種であってもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数のシグナル配列を使用することができる。一部の実施形態では、シグナル配列は、インベルターゼタンパク質(例えば、配列番号68のアミノ酸配列を有する、配列番号68のアミノ酸配列のバリアントである、もしくは配列番号68のアミノ酸配列の断片であってもよい)、AGA2タンパク質(例えば、配列番号69のアミノ酸配列を有する、配列番号69のアミノ酸配列のバリアントである、もしくは配列番号69のアミノ酸配列の断片であってもよい)または真菌アミラーゼ(例えば、配列番号107のアミノ酸配列を有する、配列番号107のアミノ酸配列のバリアントである、もしくは配列番号107のアミノ酸配列の断片であってもよい)をコードする遺伝子に由来する。本開示の文脈では、「シグナル配列の機能的バリアント」という表現は、細胞の外部での異種食品および/または飼料酵素またはその対応するキメラの発現を指令する能力を保持する天然のシグナル配列と比較した場合、少なくとも1つの核酸位置において置換された核酸配列を指す。本開示の文脈では、「シグナル配列の機能的断片」という表現は、細胞の外部での異種食品および/または飼料酵素またはその対応するキメラの発現を指令する能力を保持する天然のシグナル配列よりも短い核酸配列を指す。
異種タンパク質を組換え酵母宿主細胞の内部で発現させることが望ましい一部の実施形態では、異種核酸分子は、食品および/または飼料酵素をコードする天然遺伝子に見出されるシグナル配列をコードする部分を含まなくてもよい。
異種タンパク質、そのキメラ、バリアントまたは断片をコードする異種核酸分子を、酵母宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。本明細書で使用される用語「組み込まれた」とは、分子生物学技術によって、宿主細胞のゲノム中に入れられる遺伝子エレメントを指す。例えば、遺伝子エレメントを、宿主細胞によって担持されるプラスミドなどのベクター中とは対照的に、宿主細胞の染色体中に入れることができる。遺伝子エレメントを宿主細胞のゲノム中に組み込むための方法は、当業界で周知であり、相同組換えを含む。異種核酸分子は、酵母宿主細胞のゲノム中に1または複数のコピーで存在してもよい。あるいは、異種核酸分子を、酵母のゲノムから独立に複製させることができる。そのような実施形態では、核酸分子は、安定かつ自己複製性であってよい。
本開示はまた、異種タンパク質、そのキメラ、バリアントまたは断片の発現を可能にするための酵母宿主細胞を改変するための核酸分子も提供する。核酸分子は、DNA(相補的DNA、合成DNAもしくはゲノムDNA)またはRNA(合成RNAを含む)であってもよく、一本鎖(センスもしくはアンチセンス鎖のいずれかで)または二本鎖形態で提供することができる。企図される核酸分子は、コード領域、非コード領域、またはその両方に変化を含んでもよい。例は、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コードされる異種タンパク質、キメラ、バリアントまたは断片の特性または活性を変化させない変化を含有する核酸分子バリアントである。
一部の実施形態では、組換え宿主細胞中に導入することができる異種核酸分子は、意図されるレシピエント組換え酵母宿主細胞に関してコドン最適化される。本明細書で使用される用語「コドン最適化されたコード領域」は、少なくとも1つ、または1つより多いコドンを、その生物の遺伝子においてより頻繁に使用される1つまたは複数のコドンで置き換えることによって所与の生物の細胞中での発現のために適合された核酸コード領域を意味する。一般に、生物において高度に発現される遺伝子は、その生物における最も豊富なtRNA種によって認識されるコドンに向かって偏っている。この偏りの1つの尺度は、特定の遺伝子中のそれぞれのアミノ酸をコードするために使用されるコドンが、生物に由来する高度に発現される遺伝子の参照セットにおいて最も頻繁に出現する程度を測定する「コドン最適化指数」または「CAI」である。本明細書に記載のコドン最適化された異種核酸分子のCAIは、約0.8〜1.0、約0.8〜0.9、または約1.0に対応する。
異種核酸分子を、ベクターを使用して酵母宿主細胞中に導入することができる。「ベクター」、例えば、「プラスミド」、「コスミド」または「人工染色体」(例えば、酵母人工染色体など)は、染色体外エレメントであり、通常、環状二本鎖DNA分子の形態にある。そのようなベクターは、いくつかのヌクレオチド配列が、適切な3’非翻訳配列と共に選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を細胞中に導入することができるユニークな構築物に連結されるか、またはその中に組み換えられる、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、線状、環状、またはスーパーコイルの自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってもよい。
本開示はまた、異種ポリペプチドならびにバリアントまたは断片をコードする相補的核酸分子にハイブリダイズする核酸分子も提供する。一本鎖形態の核酸分子が温度および溶液イオン強度の適切な条件下で他の核酸分子にアニーリングすることができる場合、核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸分子に「ハイブリダイズ」する。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、例えば、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor(1989)、特に、その第11章および表11.1に例示されている。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定付ける。ストリンジェンシー条件を調整して、遠縁の生物に由来する相同配列などの中程度に類似する断片について、近縁の生物に由来する機能的酵素を複製する遺伝子などの高度に類似する断片に対してスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、ストリンジェンシー条件を決定付ける。1セットの条件は、室温で15分の6X SSC、0.5%SDSで開始した後、45℃で30分、2X SSC、0.5%SDSで反復し、次いで、50℃で30分、0.2X SSC、0.5%SDSで2回反復する一連の洗浄を使用する。よりストリンジェントな条件については、洗浄は、より高温で行われ、洗浄が0.2X SSC、0.5%SDS中での最後の2回の30分の洗浄の温度を60℃に上昇させる以外は上記のものと同一である。別のセットの高度にストリンジェントな条件は、0.1X SSC、0.1%SDS中、65℃で2回の最終的な洗浄を使用する。さらなるセットの高度にストリンジェントな条件は、0.1X SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーションによって規定され、2X SSC、0.1%SDS、次いで、0.1X SSC、0.1%SDSで洗浄される。
ハイブリダイゼーションには、2つの核酸分子が相補配列を含有することが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間の不一致も可能である。核酸をハイブリダイズさせるための適切なストリンジェンシーは、当業界で周知の変数である、核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高いほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTmの値は高くなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに対応する)は、以下の順序で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さ100ヌクレオチドを超えるハイブリッドについて、Tmを算出するための式が導かれている。より短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションについては、不一致の位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定付ける。一実施形態では、ハイブリダイズする核酸のための長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリダイズする核酸のための最小の長さは、少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは、少なくとも約20ヌクレオチドであり、最も好ましくは、長さは少なくとも30ヌクレオチドである。さらに、当業者であれば、温度および洗浄溶液の塩濃度を、プローブの長さなどの因子に応じて必要に応じて調整することができることを認識するであろう。
酵母組成物および酵母組成物を作製するためのプロセス
本明細書に示されるように、本開示は、本開示の組換え酵母宿主細胞から酵母組成物を作製するのを可能にする。ある実施形態では、酵母組成物は、酵母組成物の総タンパク質と比較した場合、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0重量%以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母組成物は、酵母組成物の総タンパク質と比較した場合、少なくとも0.2重量%の異種タンパク質を含む。別の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.021、0.022、0.023、0.024、0.025g以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも0.02gの異種タンパク質を含む。さらに別の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総重量と比較した場合、少なくとも0.05、0.075、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5重量%以上の異種タンパク質を含む。さらに別の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総重量と比較した場合、少なくとも0.1重量%の異種タンパク質を含む。さらなる実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の乾燥重量と比較した場合、少なくとも0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.0011、0.0012、0.0013、0.0014、0.0015、0.0016、0.0017、0.0018、0.0019、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01g以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の(乾燥重量)1gあたり、少なくとも0.0011gの異種タンパク質を含む。組換え酵母宿主細胞が酵母クリームとして製剤化される実施形態では、酵母クリームは、酵母クリームの総重量と比較した場合、少なくとも45、46、47、48、49、50、50.2、51、52、53、54、55重量%以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母クリームは、酵母クリームの総重量と比較した場合、少なくとも50.2重量%の異種タンパク質を含む。そのような実施形態は、その後の発酵ステップにおいて酵母組成物に外因性タンパク質(外因性酵素など)を補充する必要性を減少させるか、または放棄する。異種タンパク質が異種酵素である別の実施形態では、本開示は、特定の最小酵素活性および/または特定の範囲の酵素活性を有するプロセスならびに酵母組成物を提供する。例えば、酵母組成物は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり少なくとも150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上の酵素活性単位であってもよい、乾燥細胞重量1gあたりの最小酵素活性を提供することができる酵素活性の最小量を含んでもよい。特定の実施形態では、酵母組成物は、乾燥細胞重量1gあたり少なくとも約300酵素活性単位の酵素活性の最小量を含んでもよい。代替的に、または組み合わせて、酵母組成物は、例えば、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gまたは1mgあたり、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950以上の酵素活性単位であってもよい、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gまたは1mgあたりの最小酵素活性を提供することができる。特定の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gまたは1mgあたり、少なくとも約200酵素活性単位の酵素活性の最小量を含んでもよい。別の例では、異種酵素がマルトース生成アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母組成物は、例えば、組換え酵母宿主細胞の乾燥細胞重量1gあたり、少なくとも約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のMANUまたは総タンパク質1gあたり、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950以上のMANUであってもよいであってもよい、マルトース生成アミラーゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのMANUとして測定される)の最小量を含んでもよい。特定の実施形態では、酵母組成物は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質の乾燥細胞重量1gあたり少なくとも約1000MANUであってよいマルトース生成アミラーゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのMANUとして測定される)の最小量を含んでもよい。さらに別の例では、異種酵素がグルコアミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母組成物は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のグルコアミラーゼ単位であってよい、グルコアミラーゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのグルコアミラーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がグルコアミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母組成物は、乾燥細胞重量1gあたり300グルコアミラーゼ単位の最小量を含んでもよい。さらなる実施形態では、異種酵素がアルファ−アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母組成物は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のアルファ−アミラーゼ単位であってよい、アルファ−アミラーゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのアルファ−アミラーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がアルファ−アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母組成物は、乾燥細胞重量1gあたり300アルファ−アミラーゼ単位の最小量を含んでもよい。さらに別の実施形態では、異種酵素がフィターゼなどのホスファターゼである場合、酵母組成物は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のフィターゼ活性単位であってよい、フィターゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのフィターゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がフィターゼなどのホスファターゼである場合、酵母組成物は、乾燥細胞重量1gあたり300フィターゼ活性単位のフィターゼ活性の最小量を含んでもよい。さらに別の例では、異種酵素がグルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼである場合、酵母組成物は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のグルコースオキシダーゼ活性単位であってもよい、グルコースオキシダーゼ活性(例えば、酵母組成物の乾燥重量1gあたりのグルコースオキシダーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がグルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼである場合、酵母組成物は、乾燥細胞重量1gあたり300グルコースオキシダーゼ活性単位の最小量を含んでもよい。
酵母組成物を作製するためのプロセスは、広くは2つのステップ:組換え酵母宿主細胞を増殖させる第1のステップおよび酵母組成物を製剤化する第2のステップを含む。
本明細書に記載の組換え酵母宿主細胞を用いる伝統的なパン酵母生産法に従って、増殖を行うことができる。このプロセスは、組換え酵母宿主細胞中で天然に発現される相同タンパク質のものと少なくとも類似するレベル(1桁分以内)での異種タンパク質の発現を可能にする(組換え酵母宿主細胞に対する生理学的利益を有しない)ため、有利である(例えば、一部の実施形態では、乾燥酵母クリーム中で測定された場合、11700U/g;総タンパク質の比活性2900U/mg酵素;組換え酵母宿主細胞の乾燥重量1gあたり0.004g;組換え酵母宿主細胞の重量と比較した場合0.4重量%;酵母クリーム中、50.2重量%;総タンパク質1gあたり0.008g;Gascon、1968年に示されたように総タンパク質の0.8重量%として存在してもよいインベルターゼタンパク質など)。増殖プロセスは、連続法、バッチ法またはフェドバッチ法であってもよい。(培養)培地は、炭素源(例えば、糖蜜、スクロース、グルコース、デキストロースシロップ、エタノール、コーン、グリセロール、コーン浸出液および/またはリグノセルロース系バイオマスなど)、窒素源(例えば、アンモニアまたは別の無機窒素源など)およびリン源(例えば、リン酸または別の無機リン源など)を含んでもよい。培養培地はさらに、組換え酵母宿主細胞の増殖を支援するためのビタミンおよび/またはミネラルなどのさらなる微量栄養素を含んでもよい。
増殖プロセスにおいて、組換え酵母宿主細胞は、一部の実施形態では、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21、0.20、0.19、0.18、0.17、0.16または0.15h−1以下の比増殖速度を可能にし得る培養培地中に入れられる。組換え酵母宿主細胞の増殖速度を制限するために、一部の実施形態では、プロセスは、炭水化物などの栄養素の添加を制御することをさらに含んでもよい。増殖中の組換え酵母宿主細胞の増殖速度の制限を、培養培地の容量に関して0.1、0.01、0.001または0.0001重量%より低い炭水化物の濃度を維持することによって達成することができる。培養培地の炭水化物濃度の制御を、当業界で公知の様々な手段によって行うことができ、様々な間隔で培養培地をサンプリングすること、これらの試料中の炭水化物濃度、アルコール濃度および/または気体(CO2)濃度を決定すること、ならびに必要に応じて、組換え酵母宿主細胞の増殖を加速または減速させるために、培養培地中にさらなる炭水化物を添加すること、または添加を控えることを含んでもよい。一部の実施形態では、プロセスは、組換え酵母宿主細胞の増殖速度を一致/支援するために、窒素および/またはリンを添加することを提供する。
増殖プロセスは、好ましくは、高通気条件下で行われる。例えば、一部の実施形態では、プロセスは、容器の通気を制御して、例えば、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2または1.3空気容量/容器容量/分の特定の通気速度を達成することを含んでもよい。
増殖プロセスを、異種タンパク質の発現にとって最適である特定のpHおよび/または特定の温度で行うことができる。そのため、酵母がSaccharomyces属に由来する実施形態では、プロセスは、培養培地のpHを、約3.0〜約6.0、約3.5〜約5.5または約4.0〜約5.5に制御することを含んでもよい。特定の実施形態では、pHは、約4.5で制御される。別の例では、酵母がSaccharomyces属に由来する実施形態では、プロセスは、培養培地の温度を、約20℃〜約40℃、約25℃〜約30℃または約30℃〜約35℃に制御することを含んでもよい。特定の実施形態では、温度は、約30℃〜約35℃(例えば、32℃)で制御される。
増殖プロセスの終わりに、特定の濃度を求めるか、または達成することができる。一部の実施形態では、培養培地中の増殖した組換え酵母宿主細胞の濃度は、培養培地の容量に対して少なくとも約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0重量%以上である。組換え酵母宿主細胞がフェドバッチプロセスを使用して増殖される特定の実施形態では、培養培地中の増殖した組換え酵母宿主細胞の濃度は、培養培地の容量に対して少なくとも約0.25重量%である。
製剤化ステップにおいては、増殖後に得られた混合物(増殖した組換え酵母宿主細胞を含む)を改変して、酵母組成物を提供する。本開示の組換え酵母宿主細胞の利点の1つは、異種タンパク質が組換え酵母宿主細胞と結合しており、したがって、増殖後のバイオマスの濃縮も、異種タンパク質の量/活性を増加させるということである。酵母組成物を提供するための実施形態では、増殖後に得られた混合物の少なくとも1つの成分を培養培地から取り出して、酵母組成物を提供する。この成分は、限定されるものではないが、水、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質、核酸残基および核酸分子、細胞破片、発酵産物などであってもよい。ある実施形態では、製剤化ステップは、培養培地の成分から、増殖した組換え酵母宿主細胞(例えば、バイオマス)を実質的に単離することを含む。本開示の文脈で使用される場合、「実質的に単離すること」という表現は、増殖した組換え酵母宿主細胞からの培養培地の成分の大部分の除去を指す。一部の実施形態では、「実質的に単離すること」とは、単離前の組換え酵母宿主細胞の濃度と比較した場合、増殖した組換え酵母宿主細胞を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、45%以上まで濃縮することを指す。酵母組成物を提供するために、増殖した組換え酵母宿主細胞を、遠心分離(必要に応じて、増殖した組換え酵母宿主細胞を含む得られる細胞ペレットを洗浄してもよい)、濾過および/または乾燥(必要に応じて、減圧乾燥技術を使用する)することができる。次いで、単離された組換え酵母宿主細胞を、酵母組成物に製剤化することができる。製剤化ステップは、一部の実施形態では、組換え酵母宿主細胞の生存能力(少なくとも一部)を保持することができる。そのため、酵母組成物を、活性または半活性形態で提供することができる。酵母組成物を、液体、半固体または乾燥形態で提供することができる。ある実施形態では、酵母組成物を、クリーム酵母の形態で提供することができる。
酵母製品および酵母製品を作製するためのプロセス
本開示の組換え酵母宿主細胞を、最終的には酵母製品を作製するために酵母組成物の調製において使用することができる。ある実施形態では、酵母製品は、酵母製品の総タンパク質と比較した場合、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0重量%以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母製品は、酵母製品の総タンパク質と比較した場合、少なくとも0.2重量%の異種タンパク質を含む。別の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.021、0.022、0.023、0.024、0.025g以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも0.02gの異種タンパク質を含む。さらに別の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総重量と比較した場合、少なくとも0.05、0.075、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5重量%以上の異種タンパク質を含む。さらに別の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総重量と比較した場合、少なくとも0.1重量%の異種タンパク質を含む。さらなる実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の乾燥重量と比較した場合、少なくとも0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.0011、0.0012、0.0013、0.0014、0.0015、0.0016、0.0017、0.0018、0.0019、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01g以上の異種タンパク質を含む。特定の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞1g(乾燥重量)あたり、少なくとも0.0011gの異種タンパク質を含む。そのような実施形態は、その後の発酵ステップにおいて酵母製品に外因性タンパク質(外因性酵素など)を補充する必要性を減少させるか、または放棄する。異種タンパク質が異種酵素である別の実施形態では、本開示は、特定の最小酵素活性および/または特定範囲の酵素活性を有するプロセスならびに酵母製品を提供する。例えば、酵母製品は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上の酵素活性単位であってもよい、乾燥細胞重量1gあたりの最小酵素活性を提供することができる酵素活性の最小量を含んでもよい。特定の実施形態では、酵母製品は、乾燥細胞重量1gあたり少なくとも約300酵素活性単位の酵素活性の最小量を含んでもよい。代替的に、または組み合わせて、酵母製品は、例えば、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950以上の酵素活性単位であってもよい、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gまたは1mgあたりの最小酵素活性を提供することができる。特定の実施形態では、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の総タンパク質1gあたり、少なくとも約200酵素活性単位の酵素活性の最小量を含んでもよい。別の実施形態では、異種酵素がマルトース生成アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母製品は、例えば、組換え酵母宿主細胞の乾燥細胞重量1gあたり、少なくとも約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のMANUまたは総タンパク質1gあたり、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000以上のMANUであってもよい、マルトース生成アミラーゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのMANUとして測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、酵母製品は、組換え酵母宿主細胞の乾燥細胞重量1gあたり、少なくとも約1000MANUであってもよい、マルトース生成アミラーゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのMANUとして測定される)の最小量を含んでもよい。さらに別の実施形態では、異種酵素がグルコアミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母製品は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のグルコアミラーゼ単位であってよい、グルコアミラーゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのグルコアミラーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がグルコアミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母製品は、乾燥細胞重量1gあたり300グルコアミラーゼ単位の最小量を含んでもよい。さらなる実施形態では、異種酵素がアルファ−アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母製品は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のアルファ−アミラーゼ単位であってよい、アルファ−アミラーゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのアルファ−アミラーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がアルファ−アミラーゼなどのアミラーゼである場合、酵母製品は、乾燥細胞重量1gあたり300アルファ−アミラーゼ単位の最小量を含んでもよい。さらに別の実施形態では、異種酵素がフィターゼなどのホスファターゼである場合、酵母製品は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のフィターゼ活性単位であってよい、フィターゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのフィターゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がフィターゼなどのホスファターゼである場合、酵母製品は、乾燥細胞重量1gあたり300フィターゼ活性単位のフィターゼ活性の最小量を含んでもよい。さらに別の実施形態では、異種酵素がグルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼである場合、酵母製品は、例えば、乾燥細胞重量1gあたり150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000以上のグルコースオキシダーゼ活性単位であってもよい、グルコースオキシダーゼ活性(例えば、酵母製品の乾燥重量1gあたりのグルコースオキシダーゼ活性の単位として測定される)の最小量を含んでもよい。例えば、異種酵素がグルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼである場合、酵母製品は、乾燥細胞重量1gあたり300グルコースオキシダーゼ活性単位の最小量を含んでもよい。
異種タンパク質が異種酵素である別の実施形態では、本開示は、特定の最小酵素活性および/または特定範囲の酵素活性を有するプロセスならびに酵母製品を提供する。有利には、酵母組成物中に存在する細胞結合型異種タンパク質を、プロセシング中に濃縮することができ、それは酵母製品中でその意図される機能を果たすために生物活性を保持し得る。
酵母製品を作製するためのプロセスは、広くは、2つのステップ:増殖した組換え酵母宿主細胞を提供する第1のステップ(例えば、本明細書に示されるような酵母組成物を作製するためのプロセスによって取得することができる)および増殖した酵母宿主細胞を溶解する第2のステップを含む。このプロセスは、任意選択の分離ステップおよび任意選択の乾燥ステップを含んでもよい。
酵母製品を作製するためのプロセスの実施形態を、図11に示す。ステップ010では、増殖した組換え宿主細胞を提供する。図11に示される実施形態では、増殖した組換え宿主細胞は、20%のクリーム酵母として提供されるが、増殖した組換え宿主細胞のさらなる実施形態(図11には示されない)を提供することができる。次いで、ステップ020では、増殖した組換え酵母宿主細胞を溶解して、溶解された組換え酵母宿主細胞を提供する。例えば、細胞を、自己溶解(必要に応じて、さらなる外因性酵素の存在下で実施することができる)を使用して溶解するか、またはホモジェナイズする(例えば、ビーズ粉砕技術を使用する)ことができる。ある実施形態では、増殖した組換え酵母宿主細胞を、自己溶解を使用して溶解することができる。図11に示される実施形態では、増殖した組換え細胞を、増殖した組換え酵母宿主細胞の自己溶解を引き起こして、溶解された組換え酵母宿主細胞を提供するために、特定の時間量(例えば、24時間)にわたって熱処理とpH処理との組合せにかけることができる。例えば、増殖した組換え細胞を、約40℃〜約70℃または約50℃〜約60℃の温度にかけることができる。増殖した組換え細胞を、少なくとも約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃または70℃の温度にかけることができる。代替的に、または組み合わせて、増殖した組換え細胞を、約70℃、69℃、68℃、67℃、66℃、65℃、64℃、63℃、62℃、61℃、60℃、59℃、58℃、57℃、56℃、55℃、54℃、53℃、52℃、51℃、50℃、49℃、48℃、47℃、46℃、45℃、44℃、43℃、42℃、41℃または40℃以下の温度にかけることができる。別の例では、増殖した組換え細胞を、約4.0〜8.5または約5.0〜7.5のpHにかけることができる。増殖した組換え細胞を、少なくとも約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4または8.5のpHにかけることができる。代替的に、または組み合わせて、増殖した組換え細胞を、8.5、8.4、8.3、8.2、8.1、8.0、7.9、7.8、7.7、7.6、7.5、7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7、4.6または4.5以下のpHにかけることができる。
プロセスはまた、乾燥ステップを含んでもよい。乾燥ステップは、例えば、噴霧乾燥および/または流動床乾燥を含んでもよい。このステップは、図11にステップ031、032、033または034として示される。酵母製品が自己溶解物である場合、プロセスは、溶解した混合物のさらなる分離を実施することなく、溶解ステップの後に溶解された組換え酵母宿主細胞を直接乾燥することを含む。溶解ステップ後の直接乾燥ステップは、図11にステップ031として示される。
さらなる酵母製品を提供するために、溶解された組換え酵母宿主細胞の成分をさらに分離することが必要であり得る。例えば、溶解された組換え酵母宿主細胞の細胞壁成分(「不溶性画分」と呼ばれる)を、溶解された組換え酵母宿主細胞の他の成分(「可溶性画分」と呼ばれる)から分離することができる。この分離ステップを、例えば、遠心分離および/または濾過を使用することによって行うことができる。分離ステップは、図11にステップ040として示される。
図11に示される実施形態では、酵母製品として細胞壁(「図11で「CW」)を提供するために、その後の乾燥ステップ032の前に、または酵母製品として酵母抽出物(図11で「YE」)を提供するために、その後の乾燥ステップ033の前に、不溶性画分を洗浄ステップにかけない。しかしながら、本開示のプロセスは、細胞壁を提供するためにステップ040と032との間に、または酵母抽出物を提供するためにステップ040と033との間に1つまたは複数の洗浄ステップを含んでもよい。
プロセスの実施形態では、不溶性画分を、乾燥の前にさらに分離することができる。例えば、図11にステップ050として示されるように、10kDaより大きい分子量を有する可溶性画分の成分を、可溶性画分から分離することができる。この分離を、例えば、濾過(より具体的には、限外濾過)を使用することによって達成することができる。濾過を使用して成分を分離する場合、約10kDa未満の分子量を有する成分を濾過除去(例えば、除去)し、約10kDaより大きい分子量を有する成分を保持することができる。次いで、10kDaより大きい分子量を有する可溶性画分の成分を、必要に応じて、ステップ034で乾燥して、保持物を酵母製品として提供することができる。
本明細書に記載のプロセスでは、酵母製品は、不活性形態として提供される。酵母製品を、液体、半液体または乾燥形態で提供することができる。
ある実施形態では、プロセスはまた、酵母製品から異種タンパク質を実質的に単離/精製することを含んでもよい。本開示の文脈で使用される場合、「溶解された組換え酵母宿主細胞から異種タンパク質を実質的に単離/精製すること」という表現は、異種タンパク質から溶解された組換え酵母宿主細胞の成分の大部分を除去すること、およびそれを単離/精製された形態で提供することを指す。異種タンパク質を、液体形態または固体(乾燥)形態で提供することができる。そのため、本開示は、本明細書に記載のプロセスによって得られる、または得られた単離された異種タンパク質を提供する。ある実施形態では、単離された異種タンパク質は、そのシグナル配列が、例えば、原核生物、細菌などの異種生物中で天然に発現されるタンパク質に由来するシグナルペプチドで交換された組換え酵母宿主細胞によって産生される。代替的な実施形態では、シグナル配列は、異種タンパク質に付加されており、この新しいシグナル配列は、細菌などの原核生物中で天然に発現されるタンパク質に由来する。
本発明は、その範囲を限定するよりもむしろ本発明を例示するために与えられる以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
(実施例I)
材料および方法
細胞増殖。細胞を、5mLのYPD(10g/Lの酵母抽出物、20g/Lの細菌用ペプトン、40g/Lのグルコース)中で一晩増殖させた。1mLの全培養物を収獲し、細胞を遠心分離によって沈降させた。無細胞上清を除去し、後の分析のために確保した。細胞ペレットを1回洗浄し、脱イオン水中に再懸濁した。
クリーム酵母および不活化クリーム酵母。発酵後、収獲された発酵培養液を遠心分離し、実験室規模の分離器(GEAから)を使用して洗浄して、20%に近い最終乾燥重量を有する酵母クリームを調製した。不活化クリーム酵母を作製するために、約600gのクリーム酵母を、75℃に達するまで温度制御された撹拌/ホットプレート上で加熱した。クリームを75℃で15分間保持した後、熱源を除去した。
噴霧乾燥。噴霧乾燥された試料を、ミニスプレードライヤー(Buchi B−290)を用いて150℃で乾燥することによって調製した。排出温度を約80〜85℃に維持するために、供給速度を維持した。
ビーズ粉砕/ビーズ粉砕されたホモジェネートの作製。クリーム酵母を、以下のビーズ粉砕条件下でのビーズ粉砕によって破壊した(典型的な破壊効率は95%を超える細胞である)。クリーム酵母(約20%の固体)を、1.6g/mLの充填容量で80%までチャンバーを充填する0.5〜0.75mmのガラスビーズおよび10m/sの周速度で64mm直径の撹拌子を使用して、4℃で0.6Lチャンバー容量を有するDyno KDLを用いてビーズ粉砕した。クリーム酵母の流量は、6kg/L/hであった。
即時乾燥酵母(IDY)の調製。IDY試料の産生を標的とする商業的発酵の後、収獲された培養液を、実験室規模のGEA分離器を使用して遠心分離し、洗浄して、20%に近い最終乾燥重量を有する酵母クリームを調製した。次いで、クリームを減圧濾過システム中で濾過して、ケーキ酵母を作製した。さらなる水を除去するために、酵母ケーキをさらに圧縮して、押出しの前に約35%の乾燥重量を達成した。次いで、5分間のスピンによってよく混合した後、圧縮されたケーキを押し出した。スピン付加速度は、酵母乾燥物質ベースで1%であった。押出し後、酵母を実験室規模の流動床乾燥器(Aeromatic AG)中で乾燥した。乾燥温度を、35〜40℃に設定し、制御した。乾燥を約20〜25分間継続して、94%を超える固体含量を達成した。発酵レシピに関しては、IDY発酵レシピに関する大きな差異は、それが、アンモニア(N)が停止され、発酵温度が35℃まで上昇する発酵の終わりに向かって2時間の成熟期間を有することである。
発酵器の自己溶解。少なくとも3L(最小作業容量)の20%固体クリームを、20Lの発酵器(BiOENGiNEERiNG)に移した。自己溶解を、70rpmで穏やかに撹拌しながら、55℃およびpH5.5(2N硫酸を用いる自動化されたpH制御)で実施した。自己溶解物(約20%の乾燥重量)を、24時間のインキュベーション後に収獲し、以下に記載のように分離した。
実験室規模の自己溶解。この自己溶解は、上記の発酵器による自己溶解と類似しているが、より小さい規模で、わずかに異なるパラメーターを用いて実施した。クリーム酵母(20%固体)を自己溶解にかけ、pHをpH7に調整した。混合物を50mLの円錐チューブ中、55℃の水浴中で48時間インキュベートした。
洗浄しない自己溶解物の分離。発酵器による自己溶解の後、総自己溶解物を、Sorvall Lynx 6000遠心分離器中、1Lボトル中で11,000RCFで10分間分離して、可溶性画分(11〜13%乾燥重量、酵母抽出物)および不溶性画分(酵母細胞壁)を得た。乾燥重量および酵素活性を、総自己溶解物、酵母抽出物および細胞壁画分について、乾燥重量およびMANU平衡に関して測定した。
洗浄する自己溶解物の分離。50mL円錐チューブ中、3,000RCFで10分間、発酵器による自己溶解物を遠心分離することによって、分離を実施した。遠心分離ステップから得られた上清の重量に等しい水を添加することによって、2回のさらなる洗浄を実施した。YE(酵母抽出物)の分離収率を、自己溶解物中の出発固体に対する、分離のみ(WF=0)に由来する、および分離+1回または2回の洗浄(それぞれ、WF=1または2)に由来する固体の回収として算出する。YEのMANU回収を、自己溶解物中の出発総Phadebas MANUに対する、分離のみ(WF=0)に由来する、および分離+1回または2回の洗浄(WF=1または2)に由来する活性(Phadebas MANU)として算出する。
限外濾過。発酵器による自己溶解物を、1Lボトル中、11,000RCFで遠心分離することによって分離し、酵母抽出物画分を、10kDa分子量カットオフのPES膜(Millipore、Biomax−10)を用いる限外濾過によってさらに濃縮した。保持物画分は膜によって保持され、透過画分は膜を通過する。
マルトース生成アミラーゼアッセイ。1マルトース生成アミラーゼNovo単位、MANUは、標準的な条件下で、1分あたりに1マイクロモルのマルトトリオースを切断する酵素の量である。酵素活性についてアッセイする前に、クリーム酵母試料を、MANUアッセイバッファー(0.1Mクエン酸、pH5.0)中、60℃で10分間インキュベートすることによって不活化した。次いで、試料を20mg/mlのマルトトリオース基質と混合し、37℃で30分間インキュベートした。等量の1N水酸化ナトリウム停止試薬の添加によって、反応を停止させた。マルトース生成アミラーゼ活性によって加水分解されたグルコースを、グルコース(HK)アッセイ試薬(Sigma G3293)との15分間の室温でのインキュベーション後に測定した。分光光度計中、340nmで吸光度を読み取った。未知の試料を、既知の酵素活性を有するNovamyl(登録商標)の用量曲線と比較した。図1の結果だけを生成するために、この方法を適用した。
Phadebas MANU酵素活性アッセイ。Phadebas錠剤は、水に不溶性のデンプン基質と、架橋で染料に結合した青色染料とを含有する。基質は、マルトース生成アミラーゼによって加水分解され、可溶性である青色染料を放出する。反応を停止させ、遠心分離した後、溶液の吸光度を分光測光的に測定し、酵素活性の代理と考える。それぞれの試料について、1個のPhadebas錠剤を、4.9mLのクエン酸−リン酸バッファー(70mMリン酸水素二ナトリウム、30mMクエン酸、pH5.5)に添加し、60℃の水浴中で5分間インキュベートした。次いで、クエン酸−リン酸バッファー中に希釈された、0.1mLの標準物または試料を錠剤およびバッファー溶液に添加し、60℃水浴中で15分間インキュベートした。1mLの0.5M水酸化ナトリウム溶液を添加し、混合することによって反応を停止させた。チューブを遠心分離して固体を除去し、基質の吸光度を、分光光度計を用いて620nmで測定した。試料(乾燥または液体)を、既知の活性を有するNovamyl(登録商標)の用量曲線と比較する。図1を除く、全てのMANU結果を生成するために、この方法を適用した。
グルコースオキシダーゼアッセイ。細胞を、酵母抽出物ペプトン培地+2%グルコース中、30℃で24時間、バッチ式で増殖させた。破壊され、洗浄された細胞上清を得るために、合間に1分間休止しながら、アッセイバッファー中、2x1分、ガラスビーズでデッドビートした。上清を、遠心分離によって全溶解物から分離した。全培養物、上清、破壊され洗浄された細胞上清(細胞内細胞結合型活性を反映する)、洗浄された細胞またはGluzyme(登録商標)の陽性対照(10000BGに対応する2.40 GODU/mL)を、K−GLOX(商標)キット(Megazyme)を用いて測定した:アッセイバッファー(0.5mg/mLのBSAおよび0.02%(w/v)のアジ化ナトリウムを含有する100mMリン酸カリウム、pH7)中の試料を、90mg/mLのグルコースおよびPOD混合物と混合し、室温で20分間インキュベートした。吸光度を、510nmで分光光度計を用いて測定した。
アルファ−アミラーゼアッセイ(図3)。25μLの洗浄された細胞または無細胞上清を、50mMの酢酸ナトリウムpH5中の25μLの5mM p−ニトロフェニルα−D−ヘキサオシドに添加することによって、アルファ−アミラーゼ活性を測定した。反応を35℃で2時間インキュベートし、50μLの1M重炭酸ナトリウムの添加によって終結させた。細胞を沈降させ、50μLのアッセイ混合物をマイクロタイタープレートに移し、405nmでの吸光度を測定した。細胞画分の活性を、総活性(「結合」+「遊離」)のパーセンテージとして表した。
アルファ−アミラーゼアッセイ(図12〜15)。株を、900rpmの振盪器上、96ウェルプレート中、35℃で48時間、600μLのYPD40中で最初に増殖させた。25μLの洗浄された細胞または無細胞上清を、50mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH5.2)を含む100μLの1%生デンプンに添加することによって、アルファ−アミラーゼ活性を決定した。Eppendorf Gradient Cyclerを使用して、85℃で30分、アッセイを処理した。2:1のDNS:デンプンアッセイ比を使用する、ジニトロサリチル酸試薬溶液(DNS)法を使用して還元糖を測定し、100℃で5分間沸騰させた。吸光度を540nmで測定した。
小麦デンプン活性アッセイ。細胞を、酵母抽出物ペプトン培地+4%グルコース中、35℃で48時間、バッチ式で増殖させた。アッセイバッファー(50mM酢酸ナトリウム、pH5)中に再懸濁された全培養物、上清および洗浄された細胞を、アッセイバッファー中の1%小麦デンプンと混合し、60℃で5分間インキュベートした。次いで、3,5−ジニトロサリチル酸を添加して、還元末端と反応させ、99℃で5分間沸騰させた。吸光度を、540nmで分光光度計を用いて測定した。
真菌アミラーゼ活性。細胞を、酵母抽出物ペプトン培地+2%グルコース中、30℃で24時間、バッチ式で増殖させた。全培養物、上清、および破壊された細胞上清または洗浄された細胞のいずれかを、アッセイバッファー(70mMリン酸水素二ナトリウム、30mMクエン酸、pH5.5)中に再懸濁し、アッセイバッファー中の1%ゼラチン化小麦デンプンと混合し、30℃で1時間インキュベートした。3,5−ジニトロサリチル酸(DNS)を添加して、還元末端と反応させ、99℃で5分間沸騰させた。吸光度を、540nmで分光光度計を用いて測定した。
フィターゼ活性アッセイ。1Mリン酸二水素カリウムの2倍連続希釈液を、FTUを算出するための標準物として調製した。190μlの5mMフィチン酸ナトリウム溶液pH5.5を、96ウェルPCRプレートの各ウェルに添加した。標準物または酵母抽出物ペプトン培地+4%グルコース中の酵母の一晩培養物の上清を、5mMフィチン酸ナトリウム溶液pH5.5と混合し、37℃で30分インキュベートした。細胞に結合した試料を、2時間のインキュベーション後、再度測定した。等量の反応物および着色変化溶液(4部の試薬Aと1部の試薬B、ここで、試薬Aは水中の12mMヘプタモリブデン酸アンモニウム−HClであり、試薬Bは水中の2.7%硫酸鉄である)を混合し、室温で10分間インキュベートした後、3500rpmで3分間沈降させた。各試料または標準物の吸光度を、分光光度計中、700nmで読み取った。
SDS−PAGE。等量の試料およびローディングバッファー(250mM Tris、pH6.8、30%グリセロール、10%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー;それぞれ、還元条件または非還元条件のために50mM DTTを含む、または含まない)を混合し、100℃で2分間加熱した。20μlの各試料+バッファーを、4〜20%Trisグリシンゲル上にロードし、175Vで75分間泳動した。電気泳動後、ゲルを水中で洗浄し、SimplyBlue SafeStain(登録商標)で染色して、総タンパク質を可視化した。Bio−rad All Blue(登録商標)タンパク質標準を、分子量参照として使用した。
(実施例II)
細胞結合型マルトース生成アルファ−アミラーゼの発現
特に、テザーの存在下での、異種MAAの発現は、細胞ペレット(図1A)と、より大規模では、クリーム酵母(図1B)との両方において、マルトース生成アミラーゼ活性を有する組換え酵母を提供した。比較すると、対応する野生型株は、いかなるマルトース生成アミラーゼ活性も示すことができなかった(図1Aおよび1B)。
図1に示される結果は、tdh1遺伝子のプロモーターから異種MAAを発現させることによって得られたものであった。2つのプロモーターの組合せ(tdh1遺伝子およびhor7遺伝子に由来する、データは示さない)の場合にも同様の結果が得られた。酵素活性は、異種マルトース生成アミラーゼを発現する株においてより高い。
細胞内G.stearothermophilusのMAAを発現する酵母株(M15532)を、糖蜜上で好気的フェドバッチによって増殖させた後、酵母クリームを作製した。そのMANU活性を決定した。表2に示されるように、異種酵素は、総細胞タンパク質の3.7%であると算出される。
細胞内G.stearothermophilusのMAAを発現する別の株(M14851)を増殖させ(糖蜜上でのフェドバッチ)、MANU活性を決定した。表3に示されるように、未処理の総培養液中、25.6〜39.3のMANU活性が検出された。クリームを洗浄および濃縮した後、112〜288のMANU活性が検出された。
係留されたG.stearothermophilus MAAを発現する別の株(M13879)を増殖させ(糖蜜上でのフェドバッチ)、様々な酵母調製物中でMANU活性を決定した。その結果を表4に示す。商業的増殖の1日後のクリーム酵母の活性データは、その元の形態のクリームの最も代表的な尺度である。全ての他のデータを、商業的増殖の8日後に得た。
MANUおよび小麦デンプン活性を、G.stearothermophilusに由来するマルトース生成アルファアミラーゼを細胞内的に発現する、糖蜜上でフェドバッチ式に増殖させた酵母株(M15532)の異なる調製物中で決定した。その結果を、観察された酵素活性のレベルに対する異なる調製物の効果を示す表5〜9に提供する。
G.stearothermophilusに由来するマルトース生成アルファアミラーゼを発現する酵母株の様々な調製物を作製し、そのMANU活性を決定した。一部の株は、分泌型でMAAを発現し(M13822)、他の株は係留型でMAAを発現した(M13819およびM13979)が、別の株は細胞内的にMAAを発現した(T3892)。図4に見られるように、最も高い活性は、MAAを細胞内的に発現する株において観察された(T3892)。
図8の凡例で説明されるように、分泌型、係留型で発現された、または細胞内で発現されたG.stearothermophilusに由来するマルトース生成アルファアミラーゼを発現する様々な酵母株の全培養物、培養上清および洗浄された細胞中で、細胞密度に対して正規化された小麦デンプン活性を決定した。その結果を図8に示し、MAAが細胞内で発現される場合に最も高い活性が観察されることを示した。
Novamyl(登録商標)酵素のタンパク質含量を、SDS−page上で、酵母株M15532の未処理のクリーム、熱処理されたクリームおよびビーズ粉砕処理されたクリームのタンパク質含量と比較した。その結果を図9に示す。図9上の矢印は、全ての処理された調製物ならびにNovamyl(登録商標)酵素に見られた主なタンパク質バンドを指示する。
図10では、Novamyl(登録商標)酵素のタンパク質含量を、SDS−page上で、非還元条件(レーン3〜5)および還元条件(レーン7〜9)下での酵母株M14851およびM15532に由来するタンパク質含量と比較した。主なタンパク質バンドは、試験した全てのタンパク質試料において見られる。
(実施例III)
異種アルファ−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、フィターゼ、グルコースオキシダーゼおよび真菌アミラーゼの発現
異種グルコアミラーゼ(GA)を、tef2遺伝子のプロモーターから、S.cerevisiae中で発現させた。GAを係留された酵素として発現させた場合、細胞ペレットと関連する活性が増加する(図2)。
異種アルファ−アミラーゼ(AA)を、tef2遺伝子のプロモーターから発現させた。AAを係留された酵素として発現させた場合、ペレットと関連する活性は、特に、リンカーの存在下で増加する(図3)。
C.braakiiに由来するフィターゼを発現する酵母株の様々な調製物を作製し、そのFTU活性を決定した。一部の株は分泌型のフィターゼを発現し(T2633)、他の株は異なるテザーを使用して係留型のフィターゼを発現した(T2634、T2635、T2636、T2637およびT2638)。その結果を、上清と細胞自体の両方について、図5Aおよび5Bに示す。
E.coliに由来するフィターゼを発現する酵母株の様々な調製物を作製し、そのFTU活性を決定した。一部の株は分泌型のフィターゼを発現し(M11312)、他の株は異なる構成のテザーを使用して係留型のフィターゼを発現した(T2705、T2706、M12795、M12938、T2816)。その結果を、上清と細胞自体の両方について、図6および7に示す。
異種キメラ耐熱性P.furiosusアルファ−アミラーゼ−SPI1構築物およびT.hydrothermalisアルファ−アミラーゼ−CCW12構築物を、係留部分の様々なトランケーションを使用して作製した。トランケートされたGPIアンカー部分を有するキメラポリペプチドを発現する株の洗浄された細胞と関連するアルファ−アミラーゼ活性を、トランケートされていないGPIアンカー部分と比較し、図12および13に示す。
図12に見られるように、完全長係留部分を有するキメラポリペプチド(M15222株から発現される)は、トランケートされた係留部分を有するポリペプチド(M15774株(21アミノ酸長のトランケーション)、M15771株(51アミノ酸長のトランケーション)、M1577株(81アミノ酸長のトランケーション)またはM15772株(130アミノ酸長のトランケーション)から発現される)と同じであるか、またはそれよりも高いアルファ−アミラーゼ活性を示した。
図13に見られるように、完全長係留部分を有するキメラポリペプチド(M15215株からの発現)は、トランケートされた係留部分を有するキメラポリペプチド(M15773株(24アミノ酸長のトランケーション)、M15776株(49アミノ酸長のトランケーション)、M16251株(74アミノ酸長のトランケーション)またはM15775株(99アミノ酸長のトランケーション)から発現される)と類似するか、またはそれより高いアルファ−アミラーゼ活性を示した。
異種キメラ耐熱性P.furiosusアルファ−アミラーゼ−SPI1構築物およびT.hydrothermalisアルファ−アミラーゼ−CCW12構築物を、様々なリンカーおよび同じ係留部分を使用して作製した。異なるリンカーを有するキメラポリペプチドを発現する株の洗浄された細胞と関連するアルファ−アミラーゼ活性を、図14および15に示す。
図14に見られるように、全ての株のアルファ−アミラーゼ活性は、使用したリンカーの種類に関係なく、対照株(M2390)よりも高かった。アルファ−アミラーゼ活性は、リンカー7(配列番号99)を使用した場合(M16222株)に最も高かった。
図15に見られるように、全ての株のアルファ−アミラーゼ活性は、使用したリンカーの種類に関係なく、対照株(M2390)よりも高かった。アルファ−アミラーゼ活性は、リンカー5(配列番号97)を使用した場合(M15780株)に最も高かった。
異種キメラグルコースオキシダーゼ(GO)構築物を、細胞内で、または分泌型で発現させた。様々な細胞画分から得られたGO活性を、対照株(M10474)または陽性対照酵素調製物Gluzyme Mono(登録商標)と比較した(図16)。M16780株およびM16273株と関連するGO活性は、親株であるM10474と関連する対照GO活性よりも高かった(図17)。
異種キメラ真菌アミラーゼ(FA)構築物を、分泌型で発現させた。様々な細胞画分から得られたFA活性を、対照株M10474または陽性対照酵素調製物Fungamyl(登録商標)と比較した(図18)。M16772株およびM16540株と関連するFA活性は、親株であるM10474と関連する対照活性よりも高かった(図19)。
本発明をその特定の実施形態に関連して記載してきたが、特許請求の範囲は実施例に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではないが、全体として記載と一致する最も広い解釈を与えられるべきであることが理解されるであろう。
参考文献
Gascon S, Neumann NP, Lampen JO. Comparative study of the properties of the purified internal and external invertases from yeast. J Biol Chem. 1968 Apr 10;243(7):1573-7.
Perez-Torrado R, Bruno-Barcena JM, Matallana E. Monitoring stress-related genes during the process of biomass propagation of Saccharomyces cerevisiae strains used for wine making. Appl Environ Microbiol. 2005 Nov;71(11):6831-7.
Praekelt UM, Meacock PA. MOL1, a Saccharomyces cerevisiae gene that is highly expressed in early stationary phase during growth on molasses. Yeast. 1992 Sep;8(9):699-710.